図1は、本発明の一の実施の形態に係る欠陥検出装置1の構成を示す図である。図2は、欠陥検出装置1の本体11を示す平面図である。欠陥検出装置1は、鏡面でない表面を有する立体的な対象物9の外観を検査する装置であり、対象物9の表面の欠陥を検出する。
<検査の対象物について>
対象物9は、例えば、鍛造や鋳造により形成された金属部品である。対象物9の表面は微小な凹凸を有する梨地状、すなわち、艶消し状態である。換言すれば、対象物9の表面は、光を乱反射しつつ、光沢を有する。対象物9の表面の光沢度は、好ましくは、約20〜約60である。光沢度とは、正反射光の割合や、拡散反射光の方向分布等に注目して、物体表面の光沢の程度を一次元的に表す指標である。光沢度は、JIS等の工業規格の光沢度測定方法に準拠した光沢計を利用して測定される。
対象物9の表面は、サンドブラストや、スチールショットブラスト等、所定の投射材を用いたショットブラストにより処理され、上下面と側面との境界部やエッジにおける角部や成形時のバリが除去された形状(いわゆる、R形状)となっている。対象物9は、例えば、自在継手に用いられる各種部品であり、例えば車両、航空機または発電機の駆動部分に用いられる金属部品である。
対象物9の表面における欠陥とは、理想的な形状に対して凹状または凸状となっている部位である。欠陥は、例えば、打痕、傷、加工不良等である。欠陥は、表面に付着している異物であってもよい。
<欠陥検出装置の構成>
図1に示すように、欠陥検出装置1は、本体11と、コンピュータ12とを備える。本体11は、保持部2と、複数の撮像部3(図1では、符号3a,3b,3cを付すが、これらを区別しない場合は符合3を付す。)と、光照射部4とを備える。対象物9は保持部2に保持される。本体11には、外部の光が保持部2上に到達することを防止する図示省略の遮光カバーが設けられ、保持部2、撮像部3および光照射部4は、遮光カバー内に設けられる。
対象物9の全表面を自動で検査する場合は、もう1つの本体11が設けられる。そして、2つの本体11の間に対象物9の上下を反転して対象物9を搬送する機構が設けられる。
図1および図2に示すように、複数の撮像部3には、1個の上方撮像部3aと、8個の斜方撮像部3bと、8個の側方撮像部3cとが含まれる。上方撮像部3aは、保持部2の上方に配置される。上方撮像部3aにより保持部2上の対象物9を真上から撮像した画像が取得可能である。
図2に示すように、上側から下方を向いて本体11を見た場合に(すなわち、本体11を平面視した場合に)、8個の斜方撮像部3bは保持部2の周囲に配置される。8個の斜方撮像部3bは、保持部2の中心を通り、上下方向を向く中心軸J1を中心とする周方向に45°の角度間隔(角度ピッチ)にて配列される。図1に示すように、各斜方撮像部3bの光軸K2と中心軸J1とを含む面において、光軸K2と中心軸J1とがなす角度θ2は、およそ45°である。各斜方撮像部3bにより保持部2上の対象物9を斜め上から撮像した画像が取得可能である。対象物9を斜め上から撮像するのであれば、角度θ2は45°には限定されず、好ましくは、15〜75°の範囲で任意に設定されてよい。
本体11を平面視した場合に、8個の側方撮像部3cも、8個の斜方撮像部3bと同様に保持部2の周囲に配置される。8個の側方撮像部3cは、周方向に45°の角度間隔にて配列される。各側方撮像部3cの光軸K3と中心軸J1とを含む面において、光軸K3と中心軸J1とがなす角度θ3は、およそ90°である。各側方撮像部3cにより保持部2上の対象物9を横から撮像した画像が取得可能である。
上方撮像部3a、斜方撮像部3bおよび側方撮像部3cは、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の2次元イメージセンサを有し、多階調の画像が取得される。上方撮像部3a、斜方撮像部3bおよび側方撮像部3cは、図示省略の支持部により支持される。
光照射部4は、1個の上方光源部4aと、8個の斜方光源部4bと、8個の側方光源部4cとを含む。上方光源部4aは上方撮像部3aに隣接する。上方光源部4aでは、複数のLED(発光ダイオード)が中心軸J1に垂直に、すなわち、水平に配列される。上方光源部4aにより保持部2上の対象物9に対してほぼ真上から光が照射される。
本体11を平面視した場合に、8個の斜方光源部4bは保持部2の周囲に配置される。斜方光源部4bはそれぞれ斜方撮像部3bに隣接する。8個の斜方光源部4bは、周方向に45°の角度間隔にて配列される。各斜方光源部4bでは、複数のLEDが光軸K2にほぼ垂直に配列される。各斜方光源部4bでは、保持部2上の対象物9に対して斜め上から光が照射可能である。
本体11を平面視した場合に、8個の側方光源部4cは保持部2の周囲に配置される。側方光源部4cはそれぞれ側方撮像部3cに隣接する。8個の側方光源部4cは、周方向に45°の角度間隔にて配列される。各側方光源部4cでは、複数のLEDが光軸K3にほぼ垂直に、かつ、水平方向に配列される。そのため、平面視では8個の側方光源部4cは略八角形をなす。各側方光源部4cでは、保持部2上の対象物9に対して横から光が照射可能である。上方光源部4a、斜方光源部4bおよび側方光源部4cでは、LED以外の種類の光源が用いられてよい。本実施の形態では光の色は白であるが、光の色や波長帯は様々に変更されてよい。光照射部4により、対象物9に様々な方向から拡散光を照射することができる。以下、特定の少なくとも1つの光源部から光が照射されて対象物9が偏った光で照明される各状態を「照明状態」と呼ぶ。光照射部4は、互いに異なる複数の偏った照明状態にて、対象物9に光を照射することができる。
図3はコンピュータ12の構成を示す図である。コンピュータ12は各種演算処理を行うCPU121、基本プログラムを記憶するROM122および各種情報を記憶するRAM123を含む一般的なコンピュータシステムの構成となっている。コンピュータ12は、情報記憶を行う固定ディスク124、画像等の各種情報の表示を行うディスプレイ125、操作者からの入力を受け付けるキーボード126aおよびマウス126b(以下、「入力部126」と総称する。)、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体8から情報の読み取りを行う読取装置127、並びに、欠陥検出装置1の他の構成との間で信号を送受信する通信部128をさらに含む。
コンピュータ12では、事前に読取装置127を介して記録媒体8からプログラム80が読み出されて固定ディスク124に記憶されている。CPU121は、プログラム80に従ってRAM123や固定ディスク124を利用しつつ演算処理を実行する。CPU121は、コンピュータ12において演算部として機能する。CPU121以外に演算部として機能する他の構成が採用されてもよい。
図4は、コンピュータ12がプログラム80に従って演算処理を実行することにより実現される機能を示す図である。図4において、撮像制御部51と、欠陥取得部52と、記憶部53とが、コンピュータ12が実現する機能に相当する。これらの機能の全部または一部は専用の電気回路により実現されてもよい。また、複数のコンピュータによりこれらの機能が実現されてもよい。
撮像制御部51は、撮像部3と、光照射部4とを制御し、対象物9の画像(正確には、画像を示すデータ)を取得する。画像データは記憶部53に保存される。図4では、撮像部3を1つのブロックにて示しているが、実際には、上方撮像部3a、斜方撮像部3bおよび側方撮像部3cが撮像制御部51に接続される。
後述するように、撮像制御部51が光照射部4の各光源部を制御して照明状態を変化させる毎に、17台の撮像部3の少なくとも1つにて画像のデータが取得される。以下、撮像により取得される画像を「撮像画像」と呼び、そのデータを「撮像画像データ」と呼ぶ。撮像画像データ911は、記憶部53に保存される。記憶部53には、各照明状態での理想的な対象物9の画像のデータが、参照画像データ912として保存されている。すなわち、各撮像部3の各照明状態に対応する理想的な画像データが、参照画像データ912として記憶部53に準備されている。
光照射部4による光の照明状態とは、特定の照射方向から対象物9に光が照射される状態を指す。照射方向は厳密に定められるものではなく、およその光の照射方向を意味する。照射方向は、光がその方向からのみ照射される場合の平行光であることを限定するものでもない。光がある方向から照射されることは、その方向から偏って照射されることを意味する。また、1回の撮影における光の照射方向の数は1つには限定されない。例えば、互いに離れた複数の光源部から同時に光が照射されてもよい。
欠陥取得部52は、第1欠陥取得部521と、第2欠陥取得部522とを含む。なお、「第1欠陥」は、本実施形態においては画像中に暗く現れる欠陥、すなわち「暗欠陥」を意味する。「第2欠陥」は、本実施形態においては画像中に明るく現れる欠陥、すなわち「明欠陥」を意味する。
以下、第1欠陥取得部521の各種構成について、図5から図8を参照しつつ、説明する。
図5は、第1欠陥取得部521の構成を示す図である。第1欠陥取得部521は、第1欠陥候補取得部541と、第3欠陥候補取得部551と、欠陥候補限定部581とを含む。入力される撮像画像データ911および参照画像データ912に基づいて、第1欠陥取得部521が処理を行うことで、第1欠陥領域を示す画像データである第1欠陥データ931が取得される。第1欠陥領域は、撮像画像において参照画像に対して暗い領域のうち、後述する各種処理によってノイズ(撮像画像において、本来は第1欠陥ではない領域であって、後述する第1欠陥候補領域として検出した領域)を除去した領域である。
図6は、第1欠陥候補取得部541の構成を示す図である。第1欠陥候補取得部541は、2つのフィルタ処理部542と、プリアライメント部543と、膨張処理部544と、収縮処理部545と、比較部546と、2値化部547と、面積フィルタ部548とを含む。入力される撮像画像データ911および参照画像データ912に基づいて、第1欠陥候補取得部541が処理を行うことで、第1欠陥候補領域を示す画像データである第1欠陥候補データ921が取得される。第1欠陥候補領域は、撮像画像において参照画像に対して暗い領域である。
図7は、第3欠陥候補取得部551の構成を示す図である。第3欠陥候補取得部551は、2つのフィルタ処理部552と、プリアライメント部553と、ゆすらせ比較部554と、2値化部555と、面積フィルタ部556とを含む。入力される撮像画像データ911および参照画像データ912に基づいて、第3欠陥候補取得部551が処理を行うことで、第3欠陥候補領域を示す画像データである第3欠陥候補データ923が取得される。第3欠陥候補領域は、撮像画像において参照画像に対して暗い領域である。後述するように、第3欠陥候補領域を取得する手法は、第1欠陥候補領域を取得する手法とは異なる。
図8は、欠陥候補限定部581の構成を示す図である。欠陥候補限定部581は、2個以上の論理積演算部582,583と、領域選択部584とを含む。入力される第1欠陥候補データ921および第3欠陥候補データ923に基づいて、欠陥候補限定部581が処理を行うことで、第1欠陥データ931が取得される。
次に、第2欠陥取得部522の各種構成について、図9から図12を参照しつつ、説明する。
図9は、第2欠陥取得部522の構成を示す図である。第2欠陥取得部522は、第2欠陥候補取得部561と、第4欠陥候補取得部571と、欠陥候補限定部591とを含む。入力される撮像画像データ911および参照画像データ912に基づいて、第2欠陥取得部522が処理を行うことで、第2欠陥領域を示す画像データである第2欠陥データ932が取得される。第2欠陥領域は、撮像画像において参照画像に対して明るい領域のうち、後述する各種処理によってノイズ(撮像画像において、本来は第2欠陥ではない領域であって、後述する第2欠陥候補領域として検出した領域)を除去した領域である。
図10は、第2欠陥候補取得部561の構成を示す図である。第2欠陥候補取得部561は、2つのフィルタ処理部562と、プリアライメント部563と、収縮処理部564と、膨張処理部565と、比較部566と、2値化部567と、面積フィルタ部568とを含む。入力される撮像画像データ911および参照画像データ912に基づいて、第2欠陥候補取得部561が処理を行うことで、第2欠陥候補領域を示す画像データである第2欠陥候補データ922が取得される。第2欠陥候補領域は、撮像画像において参照画像に対して明るい領域である。
図11は、第4欠陥候補取得部571の構成を示す図である。第4欠陥候補取得部571は、2つのフィルタ処理部572と、プリアライメント部573と、ゆすらせ比較部574と、2値化部575と、面積フィルタ部576とを含む。入力される撮像画像データ911および参照画像データ912に基づいて、第4欠陥候補取得部571が処理を行うことで、第4欠陥候補領域を示す画像データである第4欠陥候補データ924が取得される。第4欠陥候補領域は、撮像画像において参照画像に対して明るい領域である。後述するように、第4欠陥候補領域を取得する手法は、第2欠陥候補領域を取得する手法とは異なる。
図12は、欠陥候補限定部591の構成を示す図である。欠陥候補限定部591は、2個以上の論理積演算部592,593と、領域選択部594とを含む。入力される第2欠陥候補データ922および第4欠陥候補データ924に基づいて、欠陥候補限定部591が処理を行うことで、第2欠陥データ932が取得される。
ここで、高速に処理を行う場合は、多数の第1欠陥候補取得部541および第3欠陥候補取得部551が第1欠陥取得部521に設けられ、また、多数の第2欠陥候補取得部561および第4欠陥候補取得部571が第2欠陥取得部522に設けられ、複数の撮像画像に対して処理が並行して行われる。
<欠陥検出装置の動作>
図13は、欠陥検出装置1の動作の流れを示す図である。まず、保持部2上に検査対象となる対象物9が保持される。保持部2には、例えば、位置合わせ用の当接部が設けられており、対象物9の予め定められた部位と当接部とが接することにより、所定位置に対象物9が所定の向きにて配置される。保持部2は、位置決めピンを設けたステージであってもよい。
次に、撮像制御部51が、点灯する光源部を変更することにより照明状態を変更しながら、選択された撮像部3にて撮像が行われる(ステップS11〜S13)。すなわち、撮像制御部51が光照射部4に対し点灯命令を出し、選択された光照射部4が点灯する光照射工程(ステップS11)と、光照射部4の点灯中に、撮像制御部51により選択された撮像部3にて対象物9の撮像を行い、撮像画像を取得する撮像工程(ステップS12)と、撮像工程後に、撮像制御部51が、次の撮像を行うか否かを判断する撮像継続判断工程(ステップS13)とを実行する。
具体的には、1つの側方撮像部3cが選択され、当該側方撮像部3cを中央として水平方向に連続する5個の側方光源部4cの1つが順に選択されて点灯し、点灯毎に側方撮像部3cが画像を取得する。上記動作が側方撮像部3cを変更しつつ繰り返される。実際には、各照明状態で複数の側方撮像部3cにて撮像を行うことにより、動作時間の短縮が図られる。さらに、全ての側方光源部4cを点灯して全ての側方撮像部3cにて撮像が行われる。これにより、各側方撮像部3cにて6枚の画像が取得される。
斜方撮像部3bの場合は、1つの斜方撮像部3bが選択され、8個の斜方光源部4bの1つが順に選択されて点灯し、点灯毎に斜方撮像部3bが画像を取得する。上記動作が斜方撮像部3bを変更しつつ繰り返される。実際には、各照明状態で全ての斜方撮像部3bにて撮像を行うことにより、動作時間の短縮が図られる。さらに、全ての斜方光源部4bを点灯して全ての斜方撮像部3bにて撮像が行われる。上方光源部4aのみが点灯した状態でも全ての斜方撮像部3bにて撮像が行われる。これにより、各斜方撮像部3bにて10枚の画像が取得される。
上方撮像部3aの場合は、斜方撮像部3bと同様に照明状態が変更されて10枚の画像が取得される。実際の動作では、斜方撮像部3bの撮像時に上方撮像部3aにて撮像を行うことにより、動作時間の短縮が図られる。
撮像された画像のデータは、撮像画像データ911として記憶部53に記憶される。記憶部53には、既述のように、各撮像画像に対応する参照画像のデータが参照画像データ912として準備されている。参照画像は、撮像画像と同様の照明状態下での欠陥検査の基準として抽出された対象物9(いわゆる、良品)を示す。参照画像データ912は、欠陥の存在しない対象物9を撮像することにより取得されてもよく、多数の対象物9の画像の平均画像のデータとして取得されてもよい。
撮像制御部51が予定する全ての撮像工程が終了すると、次に、欠陥取得部52が、第1欠陥取得工程(ステップS14)および第2欠陥取得工程(ステップS15)を実行する。第1欠陥取得工程S14は、撮像画像に含まれる第1欠陥を取得する工程である。第2欠陥取得工程S15は、撮像画像に含まれる第2欠陥を取得する工程である。第1欠陥取得工程S14および第2欠陥取得工程S15は、本実施形態においては、欠陥取得部52において並行して実行されるが、本発明の実施に関してはこれに限られず、第1欠陥取得工程S14が第2欠陥取得工程S15よりも先に実行されても良いし、その逆順であっても良い。
以下、表現を簡素化するために、画像データに対する処理を、単に画像に対する処理として表現する場合がある。また、1つの撮像部3に注目した処理のみを説明する。他の撮像部3に対しても同様の処理が行われる。欠陥検出装置1では、第1欠陥(暗欠陥)の存在と第2欠陥(明欠陥)の存在とを検出することができるが、以下の説明では、第1欠陥に注目して説明し、第2欠陥の検出処理において第1欠陥の検出処理と共通する点については説明を適宜省略する。
図14は、第1欠陥取得工程S14の詳細を示す図である。第1欠陥取得工程S14は、第1欠陥候補取得工程S141と、第3欠陥候補取得工程S142と、欠陥候補限定工程S143とを含む。
図15は、第2欠陥取得工程S15の詳細を示す図である。第2欠陥取得工程S15は、第2欠陥候補取得工程S151と、第4欠陥候補取得工程S152と、欠陥候補限定工程S153とを含む。
図16は、第1欠陥候補取得工程S141の詳細を示す図である。第1欠陥候補取得工程S141は、第1欠陥候補領域を検出する第1欠陥候補領域検出工程S1411と、第1マスク領域を検出する第1マスク領域検出工程S1412と、第1欠陥候補領域のうち、第1マスク領域と所定条件以上重なるものを第1欠陥候補から除外する欠陥候補除外工程S1413と、後処理工程S1414とを含む。
図17は、第2欠陥候補取得工程S151の詳細を示す図である。第2欠陥候補取得工程S151は、第2欠陥候補領域を検出する第2欠陥候補領域検出工程S1511と、第2マスク領域を検出する第2マスク領域検出工程S1512と、第2欠陥候補領域のうち、第2マスク領域と所定条件以上重なるものを第2欠陥候補から除外する欠陥候補除外工程S1513と、後処理工程S1514とを含む。
以下、図5から図20までを適宜参照しつつ、第1欠陥取得工程S14について説明する。
第1欠陥取得工程S14が開始すると、まず、第1欠陥候補取得工程S141が実行される。第1欠陥候補取得工程S141では、まず、第1欠陥取得部521により1つの撮像画像が選択され、当該撮像画像に対応する参照画像が選択される。図6に示すように、第1欠陥候補取得部541では、撮像画像の撮像画像データ911がフィルタ処理部542に入力され(撮像画像データ入力工程S201)、参照画像の参照画像データ912がフィルタ処理部542に入力される(参照画像データ入力工程S211)。
図16を参照する。次に、フィルタ処理部542およびプリアライメント部543が、撮像画像および参照画像に対してフィルタ処理およびプリアライメント処理を行う前処理工程S202、S212を実行する。2つのフィルタ処理部542では、撮像画像および参照画像に対してメディアンフィルタやガウスフィルタ等のノイズを低減するフィルタ処理がそれぞれ行われる。フィルタ処理済みの撮像画像および参照画像は、プリアライメント部543に出力される。プリアライメント部543では、所定のパターンを利用したパターンマッチングにより、参照画像の撮像画像に対する相対的な位置および角度のずれ量が特定される。そして、両画像の間における位置および角度のずれ量だけ、参照画像を撮像画像に対して平行移動および回転することにより、参照画像のおよその位置および角度が撮像画像に合わせられる。これにより、両画像に対するプリアライメントが行われる。
図18を参照する。図18は、第1欠陥候補取得工程S141における処理の内容を示す画像例である。撮像画像データ入力工程S201により入力され、前処理工程S202が実行された撮像画像を撮像画像811として例示する。また、参照画像データ入力工程S211により入力され、前処理工程S212が実行された参照画像を参照画像812として例示する。対象物9の検査対象となる表面のうち、撮像画像811および参照画像812に表れる領域を「対象領域70」と称し、撮像画像811および参照画像812の中に矩形にて示す。撮像部3と対象領域70とは一対一に対応し、各撮像部3は常に同じ対象領域70の画像を取得する。
撮像画像811の対象領域70には、周囲よりも暗く写る第1欠陥711および周囲よりも明るく写る第2欠陥721を確認することができる。これらは、例えば打痕や傷である。撮像画像811の対象領域70には、パターン部分712、722が含まれる。パターン部分712は、周囲よりも明るく写る凹部または凸部であり、パターン部分722は、周囲よりも暗く写る凹部または凸部である。これらパターン部分712、722は、対象物9に従来形成されている形状に由来するものであり、欠陥ではない。
参照画像812の対象領域70には、周囲よりも明るく写る第2欠陥721を確認することができる。通常、参照画像としては欠陥のない対象物9を抽出して取得することが理想であるが、参照画像用に抽出した対象物9にも欠陥が含まれているおそれがある。また、参照画像812の対象領域70には、撮像画像811と同じ位置に、パターン部分712、722が含まれる。
なお、図18に示す撮像画像811および参照画像812は、説明のために第1欠陥、第2欠陥およびパターン部分等を誇張して表現したものであり、実際の欠陥等は、より小さい画素によって表されることもある。また、撮像画像811および参照画像812では、便宜上、欠陥およびパターン部分の別を記載しているが、実際の画像においては、暗く写る領域が第1欠陥とパターン部分のいずれであるか、あるいは明るく映る部分が第2欠陥とパターン部分のいずれであるかは、後述する処理を通じてはじめて判明するものであり、撮像画像811および参照画像812の段階では欠陥およびパターン部分の別は不明である。
図16を参照する。次に、膨張処理部544が、プリアライメント済みの撮像画像および参照画像に対して膨張処理を行う膨張処理工程S203、S213を実行する。
図6に示すように、第1欠陥候補取得部541では、プリアライメント部543から撮像画像データ911および参照画像データ912が膨張処理部544に入力され、撮像画像および参照画像に膨張処理が行われる。ここでの膨張処理は、多値画像における明るい領域を膨張させる処理である。膨張処理では、公知の最大値フィルタが用いられる。最大値フィルタは、注目画素を中心とするカーネルサイズ内の画素中で、画素値が最大のものを抽出し、他の画素の画素値を当該最大の画素値に変更するフィルタである。最大値フィルタを通すことで、画素値の高い(すなわち、明るい)1ピクセルの画素が、3ピクセル×3ピクセルに膨張される。
これにより、図18の膨張画像811aおよび膨張画像812aが生成される。膨張画像811aおよび膨張画像812aは、多値画像である。膨張画像811aおよび膨張画像812aでは、明るい領域である第2欠陥721aおよびパターン部分712aが膨張された状態で確認される一方、小さな暗い領域は消滅する。
なお、本発明の実施に関しては、最大値フィルタのカーネルサイズは3ピクセル×3ピクセルに限られず、他の各種のサイズを採用してもよい。
図16を参照する。次に、収縮処理部545が、膨張処理済みの撮像画像および参照画像に対して収縮処理を行う収縮処理工程S204、S214を実行する。
図6に示すように、膨張処理済みの撮像画像および参照画像のデータは、収縮処理部545に入力され、撮像画像および参照画像に収縮処理が行われる。ここでの収縮処理は、多値画像における明るい領域を収縮させる処理である。収縮処理では、例えば膨張処理で用いた最大値フィルタと同サイズの最小値フィルタが用いられ、明るい領域がほぼ元の大きさに戻される。最小値フィルタは、注目画素を中心とするカーネルサイズ内の画素中で、画素値が最小のものを抽出し、他の画素の画素値を当該最小の画素値に変更するフィルタである。
これにより、図18に示す収縮画像811bおよび収縮画像812bが生成される。収縮画像811bおよび収縮画像812bは、多値画像である。収縮画像811bおよび収縮画像812bでは、明るい領域である第2欠陥721bおよびパターン部分712bがほぼ元の大きさに戻った状態で確認される。膨張処理および収縮処理によって、元の撮像画像および参照画像において大きな暗い領域はほぼ元の状態が維持され、小さな暗い領域は消滅する。なお、図18の画像例においては、暗い領域はすべて膨張処理により消滅する。
図16を参照する。次に、比較部546が、収縮処理済みの撮像画像および参照画像に対して比較処理を行う比較処理工程S205、S215を実行する。
図6に示すように、収縮処理済みの撮像画像および参照画像のデータは、比較部546に入力され、比較部546は、まず撮像画像と、当該撮像画像を膨張・収縮処理した収縮画像との差および比の少なくとも一方に基づいて比較画像を生成し(比較処理工程S205)、これと並行して、参照画像と、当該参照画像を膨張・収縮処理した収縮画像との差および比の少なくとも一方に基づいて比較画像を生成する(比較処理工程S215)。
比較処理工程S205は、撮像画像と、当該撮像画像を膨張・収縮処理した収縮画像との差および比の少なくとも一方に基づいて比較画像を生成する。本願の欠陥検査装置1において、差に基づくか、比に基づくかは、プログラム80により予め定められたパラメータ、またはユーザが入力部126を用いて指示したパラメータに基づいて決定される。また、本願の欠陥検査装置1において用いられる各種の所定値、基準値および閾値は、プログラム80により予め定められたパラメータ、またはユーザが入力部126を用いて指示したパラメータに基づいて決定される。以下、差に基づく比較画像の生成と、比に基づく比較画像の生成について、説明する。
比較処理工程S205の具体例の一つとして、差(例えば、減算処理)によって比較画像を取得する。具体的には、撮像画像の各画素の値から、当該撮像画像を膨張・収縮処理した収縮画像の当該撮像画像と重なる領域における画素の値を減算することで、両画像の差分を示す差画像が取得される。そして、当該差画像のうち、画素の絶対値が所定の閾値よりも大きい領域を、第1欠陥候補領域として抽出した比較画像を取得する。
本実施形態では、差画像のうち画素の絶対値が所定の閾値以下となる画素の値を「0」とし、画素値が0よりも大きい領域を第1欠陥候補領域として抽出する。なお、本願発明における第1欠陥候補領域の抽出手法としてはこれに限られず、所定の閾値によって差画像に対し2値化処理を実行することで第1欠陥候補領域を抽出してもよい。
一般的に表現すれば、比較処理工程S205では、撮像画像において、当該撮像画像を膨張・収縮処理した収縮画像よりも明度が低く、かつ、明度の差の絶対値が第1基準値以上である領域が第1欠陥候補領域として比較画像に表現される。第1基準値は正の値である。さらに換言すれば、撮像画像において当該撮像画像を膨張・収縮処理した収縮画像よりも明度が所定値よりも低い領域が第1欠陥候補領域として比較画像に表現される。画像がモノクロである場合は、画素値を明度と捉えてもよく、カラー画像の場合は、色成分毎の画素値に対して所定の演算を行うことにより求められる値が明度として扱われる。
また、比較処理工程S205の他の具体例として、第1欠陥候補領域は、撮像画像の各画素の値と当該撮像画像を膨張・収縮処理した収縮画像の対応する画素の値との比から求められてもよい。具体的には、撮像画像を膨張・収縮処理した収縮画像の各画素の値を当該撮像画像の対応する画素の値で除算することにより、比画像の画素の値が求められる。予め1よりも大きい第1基準値が準備されており、比画像において第1基準値以上の値を有する画素により構成される領域が第1欠陥候補領域として抽出され、当該第1欠陥候補領域を含む比較画像が取得される。
もちろん、撮像画像の各画素の値を当該撮像画像を膨張・収縮処理した収縮画像の対応する画素の値で除算することにより、比画像の画素の値が求められてもよい。この場合、比画像において1よりも小さい第1基準値以下の値を有する画素により構成される領域が第1欠陥候補領域として抽出され、当該第1欠陥候補領域を含む比較画像が取得される。
第1基準値は定数でなくてもよい。第1基準値は撮像画像の明度または画素値の関数でもよい。第1基準値は、撮像画像の明度または画素値の差および比を用いて定められてもよく、さらに他の演算が利用されてもよい。第1基準値が様々に定められてよい点は、後述の第2、第3および第4基準値についても同様である。第1ないし第4基準値は同じ値である必要はなく、算出方法も異なってもよい。一般的に表現すれば、撮像画像において、明度が、参照画像の明度よりも低く、かつ、予め定められた条件を満たす値よりも低い領域が第1欠陥候補領域として取得される。「予め定められた条件」は、各撮像画像に対して個別に設定されてもよい。さらに、複数の「予め定められた条件」が、1つの撮像画像に用いられてもよい。例えば、撮像画像中のエッジのように、撮像毎に画素値が変化しやすい位置では、欠陥候補の領域として検出されにくいように第1基準値が設定されてよい。上記説明は、以下の第2欠陥候補領域、第3欠陥候補領域、第4欠陥候補領域の抽出に関しても同様である。
比較処理工程S215は、参照画像と、当該参照画像を膨張・収縮処理した収縮画像との差および比の少なくとも一方に基づいて比較画像を生成する。差画像または比画像の取得については、撮像画像についての比較処理工程S205と同様の処理を行う。比較処理工程S215では、比較処理工程S205と同様の処理により、第1欠陥候補領域に代えて、参照画像から第1マスク領域を抽出する。
比較処理工程S215の具体例の一つとして、差(例えば、減算処理)によって比較画像を取得する。具体的には、参照画像の各画素の値から、当該参照画像を膨張・収縮処理した収縮画像の当該参照画像と重なる領域における画素の値を減算することで、両画像の差分を示す差画像が取得される。そして、当該差画像のうち、画素の絶対値が所定の閾値よりも大きい領域を、第1マスク領域として抽出した比較画像を取得する。
また、比較処理工程S215の他の具体例として、第1マスク領域は、参照画像の各画素の値と当該参照画像を膨張・収縮処理した収縮画像の対応する画素の値との比から求められてもよい。具体的には、参照画像を膨張・収縮処理した収縮画像の各画素の値を当該参照画像の対応する画素の値で除算することにより、比画像の画素の値が求められる。予め1よりも大きい第1基準値が準備されており、比画像において第1基準値以上の値を有する画素により構成される領域が第1マスク領域として抽出され、当該第1マスク領域を含む比較画像が取得される。
このとき、比較処理工程S205における所定の閾値および第1基準値と、比較処理工程S215における所定の閾値および第1基準値とは、同一であっても良いし、異なっていても良い。同一である場合には、処理を共通させることができ、処理メモリの削減や処理時間の削減に資する。
以上の処理により、図18に示す比較画像811cおよび比較画像812cが取得される。比較画像811cでは、撮像画像811よりも暗い領域として第1欠陥候補領域711c、722cが抽出されている。なお、711cは第1欠陥(真の欠陥)に対応し、722cはパターン部分(偽の欠陥)に対応する。また、比較画像812cでは、参照画像812よりも暗い領域として第1マスク領域722cが抽出されている。なお、722cはパターン部分(偽の欠陥)に対応する。
以上に説明した、撮像画像データ入力工程S201と、前処理工程S202と、膨張処理工程S203と、収縮処理工程S204と、比較処理工程S205とが、本実施形態における第1欠陥候補領域検出工程S1411を構成する。なお、前処理工程S202は、撮像画像の状態や検査条件によっては省略することができる。
また、以上に説明した、参照画像データ入力工程S211と、前処理工程S212と、膨張処理工程S213と、収縮処理工程S214と、比較処理工程S215とが、本実施形態における第1マスク領域検出工程S1412を構成する。なお、前処理工程S212は、参照画像の状態や検査条件によっては省略することができる。
図16を参照する。次に、比較部546が、撮像画像に基づく比較画像に対して欠陥候補除外処理を行う欠陥候補除外工程S1413を実行する。
欠陥候補除外工程S1413が開始されると、まず比較部546が、第1マスク領域を太らせる太らせ処理を実行する。具体的には、比較画像812cに対して、膨張処理工程S213と同様に最大値フィルタを用いて膨張処理を、太らせ処理として施す。
なお、本発明の実施に関しては、最大値フィルタを用いた太らせ処理に限られず、各種の太らせ処理を採用することができる。
ここで、参照画像に写る対象物と、撮像画像に写る対象物との間には、公差が存在する場合がある。また、参照画像を撮像する際の対象物の姿勢と、撮像画像を撮像する際の対象物の姿勢との間には、位置ずれが存在する場合がある。したがって、後述するようにそのまま第1マスク領域と第1欠陥候補領域とが重なる領域を除外するのみでは、第1欠陥候補領域のうち欠陥ではない領域(すなわち、パターン部分)が第1マスク領域と良好に重ならず、位置ずれした部分については欠陥ではない領域がそのまま第1欠陥候補領域として残留することになる。そこで、第1マスク領域に対し太らせ処理を行い、位置ずれに起因する第1欠陥候補領域と第1マスク領域との非重複部分を低減する。これにより、より過検出を抑制することができる。
続いて、欠陥候補除外工程S1413では、撮像画像の比較画像における第1欠陥候補領域の一部領域を、第1マスク領域に基づいて、第1欠陥候補から除外した第1欠陥候補画像を生成する欠陥候補除外処理を実行する。より具体的には、比較部546において生成された撮像画像に基づく比較画像の第1欠陥候補領域のうち、参照画像に基づく比較画像の第1マスク領域と所定条件以上重なるものを、第1欠陥候補から除外した第1欠陥候補画像を生成する。
ここで、第1欠陥候補領域と第1マスク領域との重なりの評価方法としては、撮像画像の比較画像における各画素と、参照画像の比較画像における各画素との差または和をとり、所定の閾値と比較して第1欠陥候補領域を抽出する方法が使用される。差および和のいずれの抽出方法を使用するかは、プログラム80により予め定められたパラメータ、またはユーザが入力部126を用いて指示したパラメータに基づいて決定される。
差に基づいて第1欠陥候補画像を取得する場合、具体的には、撮像画像の比較画像における各画素の値から、参照画像の比較画像の対応する位置の画素の値を減算することで、両画像の差分を示す差画像を取得する。そして、当該差画像のうち、画素の値が所定の閾値よりも大きい領域を、第1欠陥候補として残し、他の領域を「0」とした状態で、第1欠陥候補画像を取得する。
和に基づいて第1欠陥候補画像を取得する場合、具体的には、撮像画像の比較画像における各画素の値と、参照画像の比較画像の対応する位置の画素の値を加算することで、両画像の和を示す和画像を取得する。そして、当該和画像のうち、画素の値が所定の閾値よりも大きい領域を画素値「0」とすることで、第1マスク領域と第1欠陥候補領域とが重複する領域として除外し、第1マスク領域と重複しない第1欠陥候補領域を残した状態で、第1欠陥候補画像を取得する。
なお、本発明の実施に関してはこれに限られず、撮像画像の比較画像と、参照画像の比較画像について、それぞれ所定の閾値以上の画素値を有する画素を「1」とし、当該閾値より低い画素値を有する画素を「0」とする2値化処理を施した後に、参照画像の比較画像について画素値「1」と「0」を反転する処理を施し、撮像画像の比較画像の各画素の画素値と、参照画像の比較画像の反転画像における対応する各画素の画素値との論理積を取って、画素値が「1」となる領域を第1欠陥候補領域とする第1欠陥候補画像を取得してもよい。この場合、後述する後処理工程S1414のうち、2値化部547による2値化処理を省略できる。
また、本実施形態では、欠陥候補除外工程S1413において太らせ処理を行ったが、本発明の実施に関してはこれに限られず、太らせ処理を省略し、欠陥候補除外工程S1413では欠陥候補除外処理のみを実行してもよい。
図16を参照する。次に、2値化部547および面積フィルタ部548が、第1欠陥候補画像に対して後処理を行う後処理工程S1414を実行する。
図6に示すように、比較部546から出力される第1欠陥候補画像は2値化部547にて所定の閾値にて2値化される。ここで、第1欠陥候補画像は、第1欠陥候補領域が多値で表され、それ以外の領域は「0」で表されている。2値化部547における2値化処理により、第1欠陥候補領域を「1」とし、それ以外の領域を「0」とする。
続いて、2値化処理済みの第1欠陥候補画像は、面積フィルタ部548に入力される。面積フィルタ部548により、面積が予め定められた値よりも小さい第1欠陥候補領域が削除され、残りの第1欠陥候補領域を示す画像が最終的な第1欠陥候補画像(正確には、第1欠陥候補領域を示す画像データである第1欠陥候補データ921)として取得される。
以上の処理により、図18に示す第1欠陥候補画像821が取得される。第1欠陥候補画像821では、比較画像811cで抽出された第1欠陥候補領域722cが、比較画像812cとの差分をとることで除外されている。これにより、本来は欠陥ではないパターン部分722に起因する虚報を抑制することができる。但し、図18の画像例では、撮像画像811と参照画像812との間の、対象物9の公差に起因して、一部の第1欠陥候補領域722cが第1マスク領域によって除外しきれず、第1欠陥候補画像821において第1欠陥候補領域722dとして残留している。
撮像部3にて取得された複数の撮像画像は、処理対象として順次選択され、撮像画像の数に等しい数の第1欠陥候補データ921が取得される。
図14を参照する。次に、第3欠陥候補取得部551が、第3欠陥候補取得工程S142を実行する。
図7に示すように、第3欠陥候補取得工程S142が開始されると、まず第1欠陥候補取得工程S141にて選択された1つの撮像画像と、当該撮像画像に対応する参照画像が選択される。そして、第3欠陥候補取得部551において、撮像画像の撮像画像データ911がフィルタ処理部552に入力され、参照画像の参照画像データ912がフィルタ処理部552に入力される。
次に、フィルタ処理部542およびプリアライメント部543が、撮像画像および参照画像に対してフィルタ処理およびプリアライメント処理を行う。これらの処理は、第1欠陥候補取得工程S141における前処理工程S202、S212と同様であるため、説明を省略する。
続いて、ゆすらせ比較部554が、前処理済みの撮像画像および参照画像を用いて、ゆすらせ比較処理を行い、2値化部555がゆすらせ比較処理済みの画像に対し2値化処理を行うことで、第3欠陥候補画像を生成する。ゆすらせ比較部554では、参照画像をプリアライメント済みの位置から、上下左右に少しずつ移動しながら、撮像画像と参照画像との差異を示す評価値が求められる。評価値としては、例えば、両画像が重なる領域における画素の値の(符号付きの)差の絶対値の和が求められる。そして、評価値が最小となる位置における両画像の画素の値の符号付き差分を示す画像が生成される。符号付き差分画像は、2値化部555により所定の値にて2値化され、第3欠陥候補領域を示す第3欠陥候補画像が生成される。
実際には、処理を簡素化するために、符号付き差分画像は求められない。具体的には、参照画像の各画素の値から撮像画像の対応する画素の値が減算され、値が負の場合に0とすることにより、差分画像の画素の値が求められる。予め正の値が準備されており、差分画像において当該正の値以上の値を有する画素により構成される領域が第3欠陥候補領域として取得される。
一般的に表現すれば、撮像画像において参照画像よりも明度が低く、かつ、明度の差の絶対値が第2基準値以上である領域が第3欠陥候補領域として取得される。第2基準値は正の値である。さらに換言すれば、撮像画像において参照画像よりも明度が所定値よりも低い領域が第3欠陥候補領域として取得される。画像がモノクロである場合は、画素値を明度と捉えてもよく、カラー画像の場合は、色成分毎の画素値に対して所定の演算を行うことにより求められる値が明度として扱われる。
第3欠陥候補領域は、参照画像の各画素の値と撮像画像の対応する画素の値との比から求められてもよい。具体的には、参照画像の各画素の値を撮像画像の対応する画素の値で除算することにより、比画像の画素の値が求められる。予め1よりも大きい第2基準値が準備されており、比画像において第2基準値以上の値を有する画素により構成される領域が第3欠陥候補領域として取得される。もちろん、撮像画像の各画素の値を参照画像の対応する画素の値で除算することにより、比画像の画素の値が求められてもよい。この場合、比画像において1よりも小さい第2基準値以下の値を有する画素により構成される領域が第3欠陥候補領域として取得される。
第2基準値は定数でなくてもよい。第2基準値は参照画像および/または撮像画像の明度または画素値の関数でもよい。第2基準値は、参照画像および撮像画像の明度または画素値の差および比を用いて定められてもよく、さらに他の演算が利用されてもよい。
図19は、第3欠陥候補取得工程S142における処理の内容を示す画像例である。入力される撮像画像811および参照画像812は、図18にて例示した画像と同様である。ゆすらせ比較部554によるゆすらせ比較処理および2値化部555による2値化処理が実行された結果、生成される第3欠陥候補画像を第3欠陥候補画像823として例示する。
第3欠陥候補画像823では、ゆすらせ比較処理によって撮像画像811のうち参照画像812と比べて暗い領域が第3欠陥候補領域711i、721iとして抽出されている。このうち、第3欠陥候補領域711iは、撮像画像811に存在する第1欠陥711に対応する真の欠陥である一方、第3欠陥候補領域721iは、撮像画像811には存在しないものの、参照画像812において第2欠陥721(すなわち、周囲よりも明るく写る欠陥)として存在するために、ゆすらせ比較処理によって参照画像812よりも暗い領域として抽出されてしまった、いわゆる偽の欠陥である。このように、ゆすらせ比較処理では、参照画像中に欠陥領域が含まれると、それに起因して撮像画像には含まれない欠陥領域をノイズとして抽出することがある。
図7を参照する。ゆすらせ比較処理および2値化処理によって第3欠陥候補領域711i、721iが取得されると、面積フィルタ部556により、面積が予め定められた値よりも小さい第3欠陥候補領域が削除され、残りの第3欠陥候補領域を示す画像が最終的な第3欠陥候補画像(正確には、第3欠陥候補領域を示す画像データである第3欠陥候補データ923)として取得される。
撮像部3にて取得された複数の撮像画像は、処理対象として順次選択され、撮像画像の数に等しい数の第3欠陥候補データ923が取得される。
図14を参照する。第1欠陥候補データ921および第3欠陥候補データ923が取得されると、次に欠陥候補限定工程S143が実行され、第1欠陥候補データ921および第3欠陥候補データ923に基づいて、第1欠陥データ931が取得される。
図8に示すように、欠陥候補限定工程S143が開始されると、第1欠陥候補データ921および第3欠陥候補データ923が、論理積演算部582に入力される。ここで、論理積演算部582に入力される第1欠陥候補データ921は、所定の第1の撮像部3が所定の第1の照明条件のもとで取得した1個の撮像画像および当該撮像画像に対応する参照画像から生成されたデータである。そして、同じ論理積演算部582に入力される第3欠陥候補データ923は、第1の撮像部3が第1の照明条件のもとで取得した同じ撮像画像および当該撮像画像に対応する参照画像から生成されたデータである。
そして、論理積演算部582とは異なる論理積演算部583には、別の撮像画像および当該撮像画像に対応する参照画像から生成された第1欠陥候補データ921および第3欠陥候補データ923が入力される。ここで、論理積演算部583に入力される第1欠陥候補データ921は、論理積演算部582のものと同じ第1の撮像部3が、論理積演算部582のものと異なる第2の照明条件のもとで取得した1個の撮像画像および当該撮像画像に対応する参照画像から生成されたデータである。そして、同じ論理積演算部583に入力される第3欠陥候補データ923は、第1の撮像部3が第2の照明条件のもとで取得した撮像画像および当該撮像画像に対応する参照画像から生成されたデータである。
そして、領域選択部584には、第1欠陥候補データ921と第3欠陥候補データ923との各組み合わせから得られる論理積画像のデータが入力される。換言すれば、各論理積画像は、それぞれ同じ撮像部が異なる照明条件のもとで取得した撮像画像および参照画像から生成される画像である。論理積演算部582で得られる第1の論理積画像は、第1の撮像部3により第1の照明条件のもとで取得した画像に基づいて生成され、論理積演算部583で得られる第2の論理積画像は、第1の撮像部3により第2の照明条件のもとで取得した画像に基づいて生成される。
各論理積画像は、第1欠陥候補領域と第3欠陥候補領域とから生成される第1欠陥領域を示す画像である。
図20は、図18の第1欠陥候補領域711d、722dと図19の第3欠陥候補領域711i、721iとから生成される第1欠陥領域731を示す第1欠陥画像831を例示する図である。
第1欠陥候補領域711d、722dは、撮像画像のいわゆる自己比較により抽出した比較画像811cにおける第1欠陥候補領域711c、722cを、参照画像のいわゆる自己比較により抽出した比較画像812cにおける第1マスク領域722cでマスクすることで得られるため、参照画像812に含まれる欠陥に起因するノイズを検出する可能性が低い。しかし、処理時間の都合上、正確な位置合わせを行っていないことによる偽欠陥(図20では、第1欠陥候補領域722d)を検出するおそれがある。
一方、第3欠陥候補領域711i、721iは、撮像画像811と参照画像812との位置合わせを行った後に、これらの画像の差分画像から得られるため、欠陥の存在を示す信頼性が高い。しかし、第3欠陥候補領域は、参照画像812に含まれる欠陥を偽欠陥(図20では第3欠陥候補領域721i)として検出するおそれがある。
そこで、本実施形態では、第1欠陥候補画像821と第3欠陥候補画像823との論理積画像を求めることにより、信頼性を向上した第1欠陥領域731を示す第1欠陥画像831を得る。
領域選択部584では、複数の第1欠陥画像831を重ねた場合に、所定数以上の第1欠陥領域が重なる領域を、第1欠陥領域として維持し、所定数未満の領域を第1欠陥領域から除外する。ここで、「重なる領域」は、重なる複数の領域における画素値の論理和であってもよく、当該画素値の論理積であってもよい。本実施の形態では重なる領域の数が2以上の場合に第1欠陥領域として維持する。領域選択部584により、第1欠陥領域731を示す複数の第1欠陥画像831から、限定された第1欠陥領域を示す1つの第1欠陥画像が取得され、これに対応する第1欠陥データ931が領域選択部584から出力される。これにより、複数の照明状態にて取得された複数の撮像画像から、対応する参照画像を参照しつつ参照画像に対して暗い領域が第1欠陥領域として抽出される。
領域選択部584から出力された第1欠陥データ931は、欠陥取得部52から記憶部53へ出力されて、記憶部53にて記憶される。
以上により、撮像画像における第1欠陥の存在を取得する第1欠陥取得工程S14が終了する。
第1欠陥取得工程S14と並行して、撮像画像における第2欠陥の存在を取得する第2欠陥取得工程S15が実行される。第2欠陥は、撮像画像のうち参照画像に対して明るく現れる欠陥である。第2欠陥取得工程S15が第1欠陥取得工程S14と異なるところは、参照画像や撮像画像内部の他の領域に比して撮像画像のうち明るい領域を検出するために、膨張処理工程と収縮処理工程の順序が逆である点、減算や除算の順序が逆である点であり、その他の部分では第1欠陥取得工程S14と共通するため、共通部分については説明を適宜省略する。
以下、図9から図23までを適宜参照しつつ、第2欠陥取得工程S15について説明する。
第2欠陥取得工程S15が開始すると、まず、第2欠陥候補取得工程S151が実行される。第2欠陥候補取得工程S151では、まず、第2欠陥取得部522により1つの撮像画像が選択され、当該撮像画像に対応する参照画像が選択される。図9に示すように、第2欠陥候補取得部561では、撮像画像の撮像画像データ911がフィルタ処理部562に入力され(撮像画像データ入力工程S301)、参照画像の参照画像データ912がフィルタ処理部562に入力される(参照画像データ入力工程S311)。
図17を参照する。前処理工程S302、S312は、前処理工程S201、S211(図16)と同様に行われる。次に、収縮処理部564が、プリアライメント済みの撮像画像および参照画像に対して収縮処理を行う収縮処理工程S303、S313を実行する。
図10に示すように、第2欠陥候補取得部561では、プリアライメント部563から撮像画像データ911および参照画像データ912が収縮処理部564に入力され、撮像画像および参照画像に収縮処理が行われる。ここでの収縮処理は、多値画像における明るい領域を収縮させる処理であり、暗い領域に対する膨張処理でもある。これにより、明るい小さな領域が消滅する。収縮処理では、例えば公知の最小値フィルタが用いられ、画素値の低い(すなわち、暗い)1ピクセルの画素が、3ピクセル×3ピクセルに膨張される。
図21は、第2欠陥候補取得工程S151における処理の内容を示す画像例であり、入力される撮像画像811および参照画像812は、図18と同様の画像である。
収縮処理により、図21の収縮画像811eおよび収縮画像812eが生成される。収縮画像811eおよび収縮画像812eでは、暗い領域である第1欠陥711eおよびパターン部分722eが膨張された状態で確認される一方、小さな明るい領域は消滅する。
なお、本発明の実施に関しては、最小値フィルタのカーネルサイズは3ピクセル×3ピクセルに限られず、他の各種のサイズを採用してもよい。
図17を参照する。次に、膨張処理部565が、収縮処理済みの撮像画像および参照画像に対して膨張処理を行う膨張処理工程S304、S314を実行する。
図10に示すように、収縮処理済みの撮像画像および参照画像のデータは、膨張処理部565に入力され、撮像画像および参照画像に膨張処理が行われる。ここでの膨張処理は、多値画像における明るい領域を膨張させる処理である。膨張処理では、例えば収縮処理で用いた最小値フィルタと同サイズの最大値フィルタが用いられ、膨張していた暗い領域がほぼ元の大きさに戻される。
これにより、図21に示す膨張画像811fおよび膨張画像812fが生成される。膨張画像811fおよび膨張画像812fでは、暗い領域である第1欠陥711fおよびパターン部分722fがほぼ元の大きさに戻った状態で確認される。収縮処理および膨張処理によって、元の撮像画像および参照画像において大きな明るい領域はほぼ元の状態が維持され、小さな明るい領域は消滅する。なお、図21の画像例においては、明るい領域はすべて収縮処理により消滅する。
図17を参照する。次に、比較部566が、膨張処理済みの撮像画像および参照画像に対して比較処理を行う比較処理工程S305、S315を実行する。
図10に示すように、膨張処理済みの撮像画像および参照画像のデータは、比較部566に入力され、比較部566は、まず撮像画像と、当該撮像画像を収縮・膨張処理した膨張画像との差および比の少なくとも一方に基づいて比較画像を生成し(比較処理工程S305)、これと並行して、参照画像と、当該参照画像を収縮・膨張処理した膨張画像との差および比の少なくとも一方に基づいて比較画像を生成する(比較処理工程S315)。
比較処理工程S305、S315における処理は、比較処理工程S205、S215と閾値として用いる基準値や、比に基づいて比較画像を生成する際の分子分母の順が異なる点以外は、共通するため、共通する点については適宜説明を省略する。
比較処理工程S305の具体例の一つとして、差(例えば、減算処理)によって比較画像を取得する。具体的には、撮像画像の各画素の値から、当該撮像画像を収縮・膨張処理した膨張画像の当該撮像画像と重なる領域における画素の値を減算することで、両画像の差分を示す差画像が取得される。そして、当該差画像のうち、画素の絶対値が所定の閾値よりも大きい領域を、第2欠陥候補領域として抽出した比較画像を取得する。
一般的に表現すれば、比較処理工程S305では、撮像画像において、当該撮像画像を収縮・膨張処理した膨張画像よりも明度が高く、かつ、明度の差の絶対値が第3基準値以上である領域が第2欠陥候補領域として比較画像に表現される。第3基準値は正の値である。さらに換言すれば、撮像画像において当該撮像画像を収縮・膨張処理した膨張画像よりも明度が所定値以上高い領域が第2欠陥候補領域として比較画像に表現される。画像がモノクロである場合は、画素値を明度と捉えてもよく、カラー画像の場合は、色成分毎の画素値に対して所定の演算を行うことにより求められる値が明度として扱われる。
また、比較処理工程S305の他の具体例として、第2欠陥候補領域は、撮像画像の各画素の値と当該撮像画像を収縮・膨張処理した膨張画像の対応する画素の値との比から求められてもよい。具体的には、撮像画像の対応する画素の値を当該撮像画像を収縮・膨張処理した膨張画像の各画素の値で除算することにより、比画像の画素の値が求められる。予め1よりも大きい第3基準値が準備されており、比画像において第3基準値以上の値を有する画素により構成される領域が第2欠陥候補領域として抽出され、当該第2欠陥候補領域を含む比較画像が取得される。
もちろん、撮像画像を収縮・膨張処理した膨張画像の画素の値を当該撮像画像の対応する各画素の値で除算することにより、比画像の画素の値が求められてもよい。この場合、比画像において1よりも小さい第3基準値以下の値を有する画素により構成される領域が第2欠陥候補領域として抽出され、当該第2欠陥候補領域を含む比較画像が取得される。
比較処理工程S315は、参照画像と、当該参照画像を収縮・膨張処理した膨張画像との差および比の少なくとも一方に基づいて比較画像を生成する。差画像または比画像の取得については、撮像画像についての比較処理工程S305と同様の処理を行う。比較処理工程S315では、比較処理工程S305と同様の処理により、第2欠陥候補領域に代えて、参照画像のうち明るい領域を第2マスク領域として抽出する。
比較処理工程S315の具体例の一つとして、差(例えば、減算処理)によって比較画像を取得する。具体的には、参照画像の各画素の値から、当該参照画像を収縮・膨張処理した膨張画像の当該参照画像と重なる領域における画素の値を減算することで、両画像の差分を示す差画像が取得される。そして、当該差画像のうち、画素の絶対値が所定の閾値よりも大きい領域を、第2マスク領域として抽出した比較画像を取得する。
また、比較処理工程S315の他の具体例として、第2マスク領域は、参照画像の各画素の値と当該参照画像を収縮・膨張処理した膨張画像の対応する画素の値との比から求められてもよい。
以上の処理により、図21に示す比較画像811gおよび比較画像812gが取得される。比較画像811gでは、撮像画像811よりも明るい領域として第2欠陥候補領域712g、721gが抽出されている。また、比較画像812gでは、参照画像812よりも明るい領域として第2マスク領域712g、721gが抽出されている。なお、721gは第2欠陥(真の欠陥)に対応し、712gはパターン部分(偽の欠陥)に対応する。
以上に説明した、撮像画像データ入力工程S301と、前処理工程S302と、収縮処理工程S303と、膨張処理工程S304と、比較処理工程S305とが、本実施形態における第2欠陥候補領域検出工程S1511を構成する。なお、前処理工程S302は、撮像画像の状態や検査条件によっては省略することができる。
また、以上に説明した、参照画像データ入力工程S311と、前処理工程S312と、収縮処理工程S313と、膨張処理工程S314と、比較処理工程S315とが、本実施形態における第2マスク領域検出工程S1512を構成する。なお、前処理工程S312は、参照画像の状態や検査条件によっては省略することができる。
図17を参照する。次に、比較部566が、撮像画像に基づく比較画像に対して欠陥候補除外処理を行う欠陥候補除外工程S1513を実行する。
欠陥候補除外工程S1513では、撮像画像の比較画像における第2欠陥候補領域の一部領域を、第2マスク領域に基づいて、第2欠陥候補から除外した第2欠陥候補画像を生成する。より具体的には、欠陥候補除外工程S1413と同様に、比較部566において生成された撮像画像に基づく比較画像の第2欠陥候補領域のうち、参照画像に基づく比較画像の第2マスク領域と所定条件以上重なるものを、第2欠陥候補から除外した第2欠陥候補画像を生成する。
次に、2値化部567および面積フィルタ部568が、第2欠陥候補画像に対して後処理を行う後処理工程S1514を実行し、最終的な第2欠陥候補画像(正確には、第2欠陥候補領域を示す画像データである第2欠陥候補データ922)が取得される。後処理工程S1514は、後処理工程S1414と同様の処理であるため、説明を省略する。
以上の処理により、図21に示す第2欠陥候補画像822が取得される。第2欠陥候補画像822では、比較画像811gで抽出された第2欠陥候補領域712gが、比較画像812gとの差分をとることで除外され、第2欠陥候補領域721hのみが残留している。これにより、本来は欠陥ではないパターン部分712に起因する過検出を抑制することができる。
また、比較画像812gにおいて、参照画像812に含まれる第2欠陥721が第2マスク領域721gとして残っていたとしても、第2欠陥候補画像822に影響することは防止される。第2欠陥候補領域721hは、比較画像811gの第2欠陥候補領域712g、721gのうちから抽出されるため、参照画像812のみで生じる第2欠陥721に起因して第2欠陥候補画像822にノイズ(すなわち、偽欠陥)が生じることはない。
撮像部3にて取得された複数の撮像画像は、処理対象として順次選択され、撮像画像の数に等しい数の第2欠陥候補データ922が取得される。
図15を参照する。次に、第4欠陥候補取得部571が、第4欠陥候補取得工程S152を実行する。
図11に示すように、第4欠陥候補取得工程S152が開始されると、まず第2欠陥候補取得工程S151にて選択された1つの撮像画像と、当該撮像画像に対応する参照画像が選択される。そして、第4欠陥候補取得部571において、撮像画像の撮像画像データ911がフィルタ処理部572に入力され、参照画像の参照画像データ912がフィルタ処理部572に入力される。
次に、フィルタ処理部572およびプリアライメント部573が、撮像画像および参照画像に対してフィルタ処理およびプリアライメント処理を行う。これらの処理は、第2欠陥候補取得工程S151における前処理工程S302、S312と同様であるため、説明を省略する。
続いて、ゆすらせ比較部574が、前処理済みの撮像画像および参照画像を用いて、ゆすらせ比較処理を行い、2値化部575がゆすらせ比較処理済みの画像に対し2値化処理を行うことで、第4欠陥候補画像を生成する。ゆすらせ比較部574では、参照画像をプリアライメント済みの位置から、上下左右に少しずつ移動しながら、撮像画像と参照画像との差異を示す評価値が求められる。評価値としては、例えば、両画像が重なる領域における画素の値の(符号付きの)差の絶対値の和が求められる。そして、評価値が最小となる位置における両画像の画素の値の符号付き差分を示す画像が生成される。符号付き差分画像は、2値化部575により所定の値にて2値化され、第4欠陥候補領域を示す第4欠陥候補画像が生成される。
実際には、処理を簡素化するために、符号付き差分画像は求められない。具体的には、撮像画像の各画素の値から参照画像の対応する画素の値が減算され、値が負の場合に0とすることにより、差分画像の画素の値が求められる。予め正の値が準備されており、差分画像において当該正の値以上の値を有する画素により構成される領域が第4欠陥候補領域として取得される。
一般的に表現すれば、撮像画像において参照画像よりも明度が高く、かつ、明度の差の絶対値が第4基準値以上である領域が第4欠陥候補領域として取得される。第4基準値は正の値である。さらに換言すれば、撮像画像において参照画像よりも明度が所定値以上高い領域が第4欠陥候補領域として取得される。画像がモノクロである場合は、画素値を明度と捉えてもよく、カラー画像の場合は、色成分毎の画素値に対して所定の演算を行うことにより求められる値が明度として扱われる。
第4欠陥候補領域は、参照画像の各画素の値と撮像画像の対応する画素の値との比から求められてもよい。具体的には、撮像画像の各画素の値を参照画像の対応する画素の値で除算することにより、比画像の画素の値が求められる。予め1よりも大きい第4基準値が準備されており、比画像において第4基準値以上の値を有する画素により構成される領域が第4欠陥候補領域として取得される。もちろん、参照画像の各画素の値を撮像画像の対応する画素の値で除算することにより、比画像の画素の値が求められてもよい。この場合、比画像において1よりも小さい第4基準値以下の値を有する画素により構成される領域が第4欠陥候補領域として取得される。
第4基準値は定数でなくてもよい。第4基準値は参照画像および/または撮像画像の明度または画素値の関数でもよい。第4基準値は、参照画像および撮像画像の明度または画素値の差および比を用いて定められてもよく、さらに他の演算が利用されてもよい。
図22は、第4欠陥候補取得工程S152における処理の内容を示す画像例である。入力される撮像画像811および参照画像812は、図21にて例示した画像と同様である。ゆすらせ比較部574によるゆすらせ比較処理および2値化部575による2値化処理が実行された結果、生成される第4欠陥候補画像を第4欠陥候補画像824として例示する。
第4欠陥候補画像824では、ゆすらせ比較処理によって撮像画像811のうち参照画像812と比べて明るい領域が第4欠陥候補領域721jとして抽出されている。
図10を参照する。ゆすらせ比較処理および2値化処理によって第4欠陥候補領域721jが取得されると、面積フィルタ部576により、面積が予め定められた値よりも小さい第4欠陥候補領域が削除され、残りの第4欠陥候補領域を示す画像が最終的な第4欠陥候補画像(正確には、第4欠陥候補領域を示す画像データである第4欠陥候補データ924)として取得される。
撮像部3にて取得された複数の撮像画像は、処理対象として順次選択され、撮像画像の数に等しい数の第4欠陥候補データ924が取得される。
図15を参照する。第2欠陥候補データ922および第4欠陥候補データ924が取得されると、次に欠陥候補限定工程S153が実行され、第2欠陥候補データ922および第4欠陥候補データ924に基づいて、第2欠陥データ932が取得される。
図12に示すように、欠陥候補限定工程S153が開始されると、第2欠陥候補データ922および第4欠陥候補データ924が、論理積演算部592、593に入力される。入力される第2欠陥候補データ922および第4欠陥候補データ924と、論理積演算部592、593との関係(すなわち、撮像部と照明条件の関係)は、欠陥候補限定工程S143における関係と同様であるため、説明を省略する。
領域選択部594には、第2欠陥候補データ922と第4欠陥候補データ924との各組み合わせから得られる論理積画像のデータが入力される。
図23は、図21の第2欠陥候補領域721hと図22の第4欠陥候補領域721jとから生成される第2欠陥領域732を示す第2欠陥画像832を例示する図である。
欠陥候補除外工程S1513では、第2欠陥候補画像822と第4欠陥候補画像824との論理積画像を求めることにより、信頼性を向上した第2欠陥領域732を示す第2欠陥画像832を得ることができる。
領域選択部594では、複数の第2欠陥画像832を重ねた場合に、所定数以上の第2欠陥領域が重なる領域を、第2欠陥領域として維持し、所定数未満の領域を第2欠陥領域から除外する。ここで、「重なる領域」は、重なる複数の領域の論理和であってもよく、論理積であってもよい。本実施の形態では重なる領域の数が2以上の場合に第2欠陥領域として維持する。領域選択部594により、第2欠陥領域732を示す複数の第2欠陥画像832から、限定された第2欠陥領域を示す1つの第2欠陥画像が取得され、これに対応する第2欠陥データ932が領域選択部594から出力される。これにより、複数の照明状態にて取得された複数の撮像画像から、対応する参照画像を参照しつつ参照画像に対して明るい領域が第2欠陥領域として抽出される。
領域選択部594から出力された第2欠陥データ932は、欠陥取得部52から記憶部53へ出力されて、記憶部53にて記憶される。
以上により、撮像画像における第2欠陥の存在を取得する第2欠陥取得工程S15が終了する。
以上の処理により、1つの撮像部3から見た対象領域70において、欠陥が存在する場合の欠陥の位置が検出される。
コンピュータ12の表示部には、1つの撮像画像が表示され、対象領域70上に、第1欠陥領域および第2欠陥領域がそれぞれ異なる色が付いた領域として併せて表示される。なお、本願発明の実施に関してはこれに限られず、表示部において第1欠陥領域および第2欠陥領域のいずれか一方を表示し、ユーザの入力に基づいて他方を表示できるよう切り替え可能に表示されても良い。
1つの撮像部3により取得される撮像画像の最小数は2であるが、好ましくは3以上である。すなわち、光照射部4は互いに異なる3以上の照明状態とすることができ、例えば、対象物9に3以上の方向から光を照射することができ、撮像制御部51の制御により、3以上の照明状態の間に撮像部3が画像を取得する。好ましい照明状態が既知の場合は、その情報に基づいて取得された3以上の撮像画像の少なくとも1つが処理対象の撮像画像として選択されてもよい。3以上の撮像画像を準備することにより、より適切な欠陥検出を容易に行うことができる。
上記説明において、第1欠陥候補取得部541および第2欠陥候補取得部561の少なくとも一方が、本願発明における「自己比較欠陥候補取得部」に相当する。また、上記説明において、第1欠陥候補取得部541が本願発明における「自己比較欠陥候補取得部」に相当する場合、第3欠陥候補取得部551が本願発明における「他画像比較欠陥候補取得部」に相当し、欠陥候補限定部581が本願発明における「欠陥候補限定部」に相当する。また、上記説明において、第2欠陥候補取得部561が本願発明における「自己比較欠陥候補取得部」に相当する場合、第4欠陥候補取得部571が本願発明における「他画像比較欠陥候補取得部」に相当し、欠陥候補限定部591が本願発明における「欠陥候補限定部」に相当する。
上記説明において、撮像工程S13が本願発明における「撮像工程」に相当し、第1欠陥候補取得工程S141および第2欠陥候補取得工程S151の少なくとも一方が、本願発明における「自己比較欠陥候補取得工程」に相当する。また、上記説明において、第1欠陥候補取得工程S141が本願発明における「自己比較欠陥候補取得工程」に相当する場合、第3欠陥候補取得工程142が本願発明における「他画像比較欠陥候補取得工程」に相当し、欠陥候補限定工程S143が本願発明における「欠陥候補限定工程」に相当する。また、上記説明において、第2欠陥候補取得工程S151が本願発明における「自己比較欠陥候補取得部」に相当する場合、第4欠陥候補取得工程S152が本願発明における「他画像比較欠陥候補取得工程」に相当し、欠陥候補限定工程S153が本願発明における「欠陥候補限定工程」に相当する。
上記欠陥検出装置1では様々な変形が可能である。
光源部4a,4b,4cおよび撮像部3の配置および数は適宜変更されてよい。光照射部4による照明状態は様々に変更されてよい。複数の光源部のうち2つずつが点灯されてもよいし、3つずつが点灯されてもよい。光照射部4では光源部が移動することにより状明状態が変更されてもよい。
また、欠陥検出方法において、第1欠陥取得工程S14における第1マスク領域検出工程S1412および欠陥候補除外工程S1413を省略し、第1欠陥候補領域検出工程S1411にて取得された第1欠陥候補領域を第1欠陥候補領域として取得してもよい。すなわち、第1マスク領域による第1欠陥候補領域の限定を行わずに、第1欠陥候補データ921を取得してもよい。この場合においても、第1欠陥候補取得工程S141において検出された当該第1欠陥候補領域のうち、第3欠陥候補領域と所定条件以上重なる領域を、第1欠陥候補領域として維持し、当該第1欠陥候補領域に基づいて撮像画像における欠陥の存在を取得するため、過検出を抑制することができる。
同様に、第2欠陥取得工程S15における第2マスク領域検出工程S1512および欠陥候補除外工程S1513を省略し、第2欠陥候補領域検出工程S1511にて取得された第2欠陥候補領域を第2欠陥領域として取得してもよい。すなわち、第2マスク領域による第2欠陥候補領域の限定を行わずに、第2欠陥候補データ922を取得してもよい。この場合においても、第2欠陥候補取得工程S151において第2欠陥候補領域のうち、第4欠陥候補領域と所定条件以上重なるものを、第2欠陥候補領域として維持し、当該第2欠陥候補領域に基づいて撮像画像における欠陥の存在を取得するため、過検出を抑制することができる。
コンピュータ12は、専用のハードウェアであってもよく、部分的に専用のハードウェアが用いられてもよい。高速に外観検査を行う場合は、コンピュータや専用のハードウェアによる並列処理が行われることが好ましい。
実質的に同じ処理が行われるのであれば、処理順序は適宜変更可能である。上記実施の形態にて説明した処理順序は一例にすぎない。
欠陥検出装置1は、パターンが形成される各種基板やフィルム等、他の対象物の表面における欠陥の検出に利用されてよい。欠陥検出装置1は、梨地状の領域(金属の表面には限定されない。)を表面に有することにより過検出が生じやすい対象物の検査に特に適している。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。