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JP2017161602A - 液晶配向剤、液晶配向膜、液晶素子、重合体及び化合物 - Google Patents

液晶配向剤、液晶配向膜、液晶素子、重合体及び化合物 Download PDF

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JP2017161602A
JP2017161602A JP2016043623A JP2016043623A JP2017161602A JP 2017161602 A JP2017161602 A JP 2017161602A JP 2016043623 A JP2016043623 A JP 2016043623A JP 2016043623 A JP2016043623 A JP 2016043623A JP 2017161602 A JP2017161602 A JP 2017161602A
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organic group
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利之 秋池
Toshiyuki Akiike
利之 秋池
伊藤 賢一
Kenichi Ito
賢一 伊藤
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JSR Corp
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Abstract

【課題】表示安定性が良好な液晶素子を得ることができる液晶配向剤を提供する。【解決手段】下記式(a1)で表される構造が環の一部を構成する環状構造を有する重合体(PM)を液晶配向剤に含有させる。(R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基であり、R1とR2は互いに結合して環を形成していてもよい。「*1」及び「*2」は、それぞれ結合手であることを表す。ただし、「*1」は、カルボニル基又は>C=C(R12)−*3(R12は水素原子又は1価の有機基であり、「*3」は、式(a1)中の酸素原子に結合する結合手である。)に結合している。)【選択図】なし

Description

本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜、液晶素子、重合体及び化合物に関する。
従来、液晶素子としては、液晶の動作原理が異なる種々の方式のものが開発されており、例えばTN(Twisted Nematic)型やSTN(Super Twisted Nematic)型、VA(Vertical Alignment)型、IPS型(In-Plane Switching)、FFS(fringe field switching)型、OCB(Optically Compensated Bend)型等の各種液晶素子が知られている。これら液晶素子は、液晶分子を配向させるための液晶配向膜を有する。液晶配向膜の材料としては、耐熱性、機械的強度、液晶との親和性などの各種特性が良好である点から、ポリアミック酸やポリイミドが一般に使用されている。液晶配向膜は、通常、重合体成分が溶剤に溶解又は分散された重合体組成物を基板に塗布し、好ましくは加熱することにより形成される(例えば、特許文献1参照)。
特開2010−97188号公報
近年、液晶表示パネルの表示性能の要求はさらに厳しくなっており、例えば、応答速度が速い液晶を用いたときにも安定した表示性能を長い期間維持できる特性、つまり表示安定性が要求されている。また、こうした表示安定性を改善可能な新たな材料が求められている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、表示安定性が良好な液晶素子を得ることができる液晶配向剤を提供することを一つの目的とする。
本発明者らは、上記のような課題を達成するべく鋭意検討した結果、特定の構造を有する重合体又は化合物を液晶配向剤に含有させることにより、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本開示により以下の手段が提供される。
<1> 下記式(a1)で表される構造が環の一部を構成する環状構造を有する重合体(PM)を含有する液晶配向剤。
Figure 2017161602
(式(a1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基であり、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。「*」及び「*」は、それぞれ結合手であることを表す。ただし、「*」は、カルボニル基又は>C=C(R12)−*(R12は水素原子又は1価の有機基であり、「*」は、式(a1)中の酸素原子に結合する結合手である。)に結合している。)
<2> 下記式(c1)で表される化合物を含有する液晶配向剤。
Figure 2017161602
(式(c1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基であり、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。R12は、水素原子又は1価の有機基である。R13は、単結合又は2価の連結基である。R14はn価の有機基であり、nは1〜10の整数である。nが2以上の場合、複数のR、R、R12及びR13は、それぞれ独立して上記定義を有する。)
<3> 上記<1>又は上記<2>の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
<4> 上記<3>の液晶配向膜を具備する液晶素子。
<5> 下記式(a1−2)及び式(a1−3)で表される部分構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有する重合体。
Figure 2017161602
(式(a1−2)及び式(a1−3)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基であり、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。R12は、水素原子又は1価の有機基である。R13は、単結合又は2価の連結基である。R41は、水素原子又は1価の有機基である。「*」は、重合体の主鎖に結合する結合手であることを表す。)
<6> 上記式(c1)で表される化合物。
本開示によれば、表示安定性が良好な液晶素子を得ることができる。
<液晶配向剤>
本開示の液晶配向剤は、上記式(a1)で表される構造が環の一部を構成する環状構造(以下「特定環状構造」とも略す。)を有する重合体(PM)及び上記式(c1)で表される化合物(以下「化合物(AM)」と略す。)の少なくとも一方を含有する。以下に、本開示の液晶配向剤に含まれる各成分、及び必要に応じて任意に配合されるその他の成分について説明する。
なお、本明細書において「繰り返し単位」は単量体単位を意味する概念である。したがって、1種の単量体を用いた連鎖重合の場合には、単量体と繰り返し単位とが一致し、得られる重合体の化学式は繰り返し単位の整数倍で表される。一方、逐次重合の場合には単量体と繰り返し単位とが一致せず、例えば単量体Aと単量体Bとを用いた逐次重合により得られる重合体の繰り返し単位は「−A−B−」で表される。「有機基」は、炭化水素基を含む基を意味し、構造中にヘテロ原子を含んでいてもよい。
「炭化水素基」とは、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む概念である。「鎖状炭化水素基」とは、環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状又は分岐状の炭化水素基を意味する。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含む炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有していてもよい。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。
[重合体(PM)]
上記式(1)において、R,Rの1価の有機基としては、置換又は無置換の1価の炭化水素基等が挙げられる。また、R及びRは、互いに結合して環を形成していてもよい。この場合に形成される環としては、例えばシクロペンタン環、シクロヘキサン環等の脂肪族環が好ましい。R,Rがハロゲン原子である場合の具体例としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。R,Rは、好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基又はフルオロアルキル基である。
12の1価の有機基は、炭素数1〜6のアルキル基又はフルオロアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。
重合体(PM)は、特定環状構造を含む部分構造として、下記式(a1−1)〜式(a1−3)のそれぞれで表される部分構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有する重合体であることが好ましい。重合体(PM)は、これらの部分構造を側鎖に有することが好ましい。
Figure 2017161602
(式(a1−1)〜式(a1−3)中、R11は、水素原子又は1価の有機基であり、R13は、単結合又は2価の連結基である。R、R及びR12は、上記式(a1)と同義である。R41は、水素原子又は1価の有機基である。「*」は、重合体の主鎖に結合する結合手であることを表す。)
上記式(a1−1)〜式(a1−3)において、R11、R41の1価の有機基は、炭素数1〜6のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。R11、R41は、好ましくは水素原子又はメチル基である。
13の2価の連結基としては、例えば、−O−、−CO−、−COO−、−NR−、−CONR−(ただし、Rは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は保護基である。以下同じ。)、炭素数1〜40の置換又は無置換の炭化水素基、当該炭化水素基の少なくとも1個のメチレン基を−NR−、−O−、−CO−、−COO−等で置き換えた基などが挙げられる。炭化水素基の置換基としては、例えばハロゲン原子等が挙げられる。
13は、好ましくは単結合、−O−、−CO−、−COO−、−NR−、−CONR−又は炭素数1〜6の2価の有機基である。R13が炭素数1〜6の2価の有機基である場合の好ましい具体例としては、炭素数1〜6のアルカンジイル基、当該アルカンジイル基の少なくとも1個のメチレン基を−NR−で置き換えた基等が挙げられる。
重合体(PM)は、特定環状構造を有していれば特に限定されないが、好ましい具体例としては、下記の<I>〜<III>の重合体が挙げられる。
<I>下記式(d1)で表される繰り返し単位を有する重合体(PM−D)。
<II>下記式(b1)で表される繰り返し単位を有する重合体(PM−A)。
<III>ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選ばれる少なくとも一種であって、かつ特定環状構造を有するジアミンに由来する構造単位を有する重合体(PM−B)。
Figure 2017161602
(式(d1)中、R34は3価の有機基であり、R36は2価の有機基である。)
Figure 2017161602
(式(b1)中、R32は特定環状構造を有する基であり、R37は2価の有機基である。)
<I>重合体(PM−D)について
上記式(d1)において、R32は、特定環状構造を有していれば特に限定されないが、上記式(a1−1)〜式(a1−3)のそれぞれで表される部分構造のいずれかであることが好ましい。R34は、芳香環の環部分から3個の水素原子を取り除いた基が好ましい。当該芳香環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられ、ベンゼン環であることが好ましい。
重合体(PM−D)は、中でも、下記式(2)で表されるジカルボン酸と、エポキシ基、ハロゲン原子、下記式(6)で表される基及び水酸基よりなる群から選ばれる一種の官能基を2個以上有する多官能化合物(以下、「多官能化合物(D)」という。)と、を反応させて得られる重合体であることが好ましい。この場合、上記式(d1)中のR36は、多官能化合物(D)に由来する2価の基である。
Figure 2017161602
(式(2)中、R32は特定環状構造を有する基であり、R33は3価の有機基である。)
Figure 2017161602
(式(6)中、R30は1価の有機基である。)
上記式(2)において、R33については上記式(d1)中のR34の説明が適用され、R32については上記式(d1)中のR32の説明が適用される。
上記式(2)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(21)及び式(22)のそれぞれで表される化合物等を挙げることができる。中でも、下記式(21)で表される化合物を好ましく用いることができる。なお、上記式(2)で表される化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
Figure 2017161602
(式(21)及び式(22)中、R及びRは、上記式(a1)と同義である。)
多官能化合物(D)は、エポキシ基、ハロゲン原子、上記式(6)で表される基及び−COXよりなる群から選ばれる一種の官能基を2個以上有していればよく、その余の構造は特に限定されない。多官能化合物(D)がエポキシ基含有化合物である場合、例えば下記スキーム2により、重合体(PM−D)として、下記式(1−1)で表される繰り返し単位を有する重合体を得ることができる。
Figure 2017161602
(スキーム2中、R32及びR33は上記式(2)と同義であり、Rは、単結合又は2価の有機基である。)
上記式(3)で表されるエポキシ基含有化合物としては、一般に市販されている多官能エポキシ化合物を用いることができる。好ましい具体例としては、例えば下記式(3−1)〜式(3−3)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
Figure 2017161602
(式(3−1)〜式(3−3)中、R18は2価の有機基であり、Zは単結合又は2価の連結基であり、mは1〜6の整数であり、kは0〜12の整数である。)
上記式(3−1)のR18は、置換又は無置換の炭素数1〜30の炭化水素基、当該炭化水素基の少なくとも1個のメチレン基を−O−、−CO−等で置き換えた基等が挙げられる。表示安定性の改善効果が高い点で、R18は、芳香族環又は縮合環を有する基であることが好ましく、具体例としては、例えば下記式で表される基が挙げられる。
Figure 2017161602
(式中、「*」は結合手であることを表す。)
上記式(3−1)中のmは1〜3が好ましく、1がより好ましい。上記式(3−2)中のkは0〜8が好ましく、0〜4がより好ましい。上記式(3−3)中、Zの2価の連結基の具体例としては、上記式(a1−1)〜式(a1−3)のR13で例示した基などが挙げられる。Zは、好ましくは−COO−である。
上記式(2)で表される化合物とエポキシ基含有化合物との反応は、好ましくは有機溶媒中で行われる。モノマーの使用割合は、上記式(2)で表される化合物1モルに対し、エポキシ基含有化合物を0.5〜1.5モルとすることが好ましく、0.8〜1.2モルとすることがより好ましい。上記反応に使用する溶媒としては、例えばアミド系、エーテル系、エステル系、炭化水素系溶剤を用いることができる。中でも、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、アニソール、ジフェニルエーテル等が好ましい。溶媒の使用割合は、モノマーの濃度が1〜50質量%となる量とすることが好ましく、10〜40質量%とすることがより好ましい。反応温度は、好ましくは20〜200℃、より好ましくは50〜180℃である。
上記反応に際しては、必要に応じて触媒を用いてもよい。使用する触媒としては、エポキシ化合物の効果促進剤が好ましく、具体的には、イミダゾール類、テトラブチルアンモニウムブロミド等の3級アミン塩等が挙げられる。触媒の使用割合は、上記式(2)で表される化合物とエポキシ基含有化合物との合計100質量部に対して、0.1〜20質量部とすることが好ましく、1〜15質量部とすることがより好ましい。
<II>重合体(PM−A)について
上記式(b1)において、R32は、上記式(a1−1)〜式(a1−3)のそれぞれで表される部分構造のいずれかであることが好ましい。重合体(PM−A)の合成方法は特に制限されず、重合体(PM)中のR37に応じて適宜選択することができる。好ましい合成方法としては、下記式(11)で表される繰り返し単位又は下記式(12)で表される繰り返し単位を有する重合体と、特定環状構造を有する化合物と、を反応させる方法が挙げられる。
Figure 2017161602
(式(11)及び式(12)中、R31及びR37は、それぞれ独立に2価の有機基である。)
上記式(b1)、式(11)及び式(12)中のR37は、炭素数1〜6のアルカンジイル基であることが好ましく、エチレン基がより好ましい。
上記式(11)で表される繰り返し単位又は上記式(12)で表される繰り返し単位を有する重合体と、特定環状構造を有する化合物との反応は、有機化学の定法に従って行うことができる。一例としては、例えば下記スキーム5のように、ギ酸トリエチルを過剰量存在させて付加反応させることで、重合体(PM−A)として下記式(1−4)で表される繰り返し単位を有する重合体を得ることができる。
Figure 2017161602
(スキーム5中、R及びRは上記式(a1)と同義であり、R37は上記式(b1)と同義である。)
<III>重合体(PM−B)について
・ポリアミック酸
重合体(PM−B)がポリアミック酸である場合、該ポリアミック酸は、例えばテトラカルボン酸二無水物と、特定環状構造を有するジアミン(以下、「特定ジアミン」と略す。)を含むジアミン化合物と、を反応させることにより得ることができる。
上記反応に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸2:4,6:8−二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、エチレンジアミン四酢酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、1,3−プロピレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)などを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物などを;それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。テトラカルボン酸二無水物は、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
特定ジアミンは、特定環状構造を有していれば特に制限されないが、例えば下記式(7)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2017161602
(式(7)中、R35は特定環状構造を有する1価の有機基である。)
上記式(7)のR35は、上記式(a1−1)〜式(a1−3)のそれぞれで表される部分構造のいずれかであることが好ましい。2つの1級アミノ基は、R35に対して2,4−位又は3,5−位であることが好ましい。上記式(7)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(7−1)〜式(7−4)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。なお、特定ジアミンは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
Figure 2017161602
(式(7−1)〜式(7−4)中、R及びRは、上記式(a1)と同義である。)
ポリアミック酸の合成に際しては、特定ジアミンを単独で用いてもよいが、特定ジアミン以外のジアミン(以下、「その他のジアミン」と略す。)を併用してもよい。その他のジアミンの具体例としては、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン等が挙げられる。これらの具体例としては、例えばm−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート、4,4’−ジアミノアゾベンゼン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,7−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、ビス[2−(4−アミノフェニル)エチル]ヘキサン二酸、N,N−ビス(4−アミノフェニル)メチルアミン、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、o−トリジン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)−2−プロペン酸、1,4−ジアミノ−2,5−ジメチルベンゼン、1,4−ジアミノ−2,3,5,6−テトラメチルベンゼン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメトキシビフェニル、ドデカノキシジアミノベンゼン、オクタデカノキシジアミノベンゼン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン、下記式(E−1)
Figure 2017161602
(式(E−1)中、XI及びXIIは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−COO−又は−OCO−であり、Rは炭素数1〜3のアルカンジイル基であり、RIIは単結合又は炭素数1〜3のアルカンジイル基であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜20の整数であり、dは0又は1である。但し、a及びbが同時に0になることはない。)
で表される化合物などを挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のジアミン化合物を用いることができる。
上記式(E−1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(E−1−1)及び式(E−1−2)のそれぞれで表される化合物などが挙げることができる。
Figure 2017161602
その他のジアミンは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリアミック酸は、上記のようなテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを、必要に応じて分子量調整剤とともに反応させることにより得ることができる。ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との使用割合は、ジアミン化合物のアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましい。ポリアミック酸の合成に際し、特定ジアミンの使用割合は、表示安定性の改善効果を十分に得る観点から、合成に使用するジアミン化合物の全体に対して、10モル%以上とすることが好ましく、20〜80モル%とすることがより好ましく、25〜70モル%とすることがさらに好ましい。
分子量調整剤としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸などの酸一無水物、アニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミンなどのモノアミン化合物、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどのモノイソシアネート化合物等を挙げることができる。分子量調整剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の合計100質量部に対して、20質量部以下とすることが好ましい。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は、−20℃〜150℃が好ましい。反応時間は、0.1〜24時間が好ましい。反応に使用する有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。特に好ましい有機溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、m−クレゾール、キシレノール及びハロゲン化フェノールよりなる群から選択される1種以上を溶媒として使用するか、あるいはこれらの1種以上と他の有機溶媒(例えば、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールジエチルエーテルなど)との混合物を使用することが好ましい。有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の合計量(b)が、反応溶液の全量(a+b)に対して、0.1〜50質量%になる量とすることが好ましい。
以上のようにして、ポリアミック酸を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
・ポリアミック酸エステル
重合体(PM−B)としてのポリアミック酸エステルは、例えばテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミン化合物とを反応させる方法などによって得ることができる。使用するテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物は、例えばポリアミック酸の合成で例示したテトラカルボン酸二無水物を、メタノールやエタノール等のアルコール類と反応させてテトラカルボン酸ジエステルを得た後、次いで、塩化チオニル等の適当な塩素化剤と反応させることにより得ることができる。ジアミン化合物としては、特定ジアミンを単独で使用してもよく、その他のジアミンを併用してもよい。使用するジアミン化合物の具体例としては、ポリアミック酸の合成の説明で例示した特定ジアミン及びその他のジアミンが挙げられる。
重合体(PM−B)の合成反応に供されるテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミン化合物との使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物の基「−COX(Xはハロゲン原子)」が、0.2〜2当量となる割合が好ましい。テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミン化合物との反応は、好ましくは塩基の存在下、有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は、好ましくは−30℃〜150℃である。反応時間は、好ましくは0.1〜48時間である。反応に使用する有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成反応に使用することができる有機溶媒の説明を適用することができる。上記反応に使用する塩基としては、例えばピリジン、トリエチルアミン、N−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン等の3級アミン;水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類などを好ましく使用することができる。塩基の使用量は、ジアミン1モルに対して、2〜4モルとすることが好ましい。
以上のようにして、ポリアミック酸エステルを溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸エステルを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸エステルは、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。なお、ポリアミック酸エステルの合成方法は上記に限らず、例えば重合体(PM−B)としてのポリアミック酸と、アルコール類又はハロゲン化アルキルとを反応させる方法、テトラカルボン酸ジエステルとジアミン化合物とを反応させる方法などによって得ることもできる。
・ポリイミド
重合体(PM−B)としてのポリイミドは、例えば上記の如くして合成されたポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。ポリアミック酸を脱水閉環してポリイミドとする場合には、ポリアミック酸の反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよい。
ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存する部分イミド化物であってもよい。反応に使用するポリイミドは、そのイミド化率が20%以上であることが好ましく、30〜99%であることがより好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、又はポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。このうち、後者の方法によることが好ましい。ポリアミック酸の溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃である。反応時間は、好ましくは1.0〜120時間である。
このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
重合体(PM)の溶液粘度は主骨格に応じて適宜選択されるが、これを濃度10質量%の溶液としたときに、10〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、15〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、重合体(PM)の溶液粘度(mPa・s)は、重合体(PM)の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10質量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
重合体(PM)につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜500,000であり、より好ましくは2,000〜300,000である。また、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。
液晶配向剤中の重合体(PM)の配合割合は、表示安定性が良好な液晶素子を得る観点から、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。
[化合物(AM)]
上記式(c1)において、R,Rの1価の有機基については、上記式(a1)の説明を適用でき、R12の1価の有機基については、上記式(a1−3)の説明を適用することができる。R14は、炭素数1〜20の炭化水素基又は当該炭化水素基の少なくとも1個のメチレン基を−O−、−CO−、−COO−等で置き換えた基等が挙げられる。R13の説明は、上記式(a1−1)〜式(a1−3)中のR13の説明が適用される。R14は、炭素数1〜12であることが好ましい。nは2〜6が好ましく、2〜4がより好ましい。
化合物(AM)の好ましい具体例としては、例えば下記式(8−1)〜式(8−3)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
Figure 2017161602
(式(8−1)及び式(8−2)中、aは1〜12の整数である。)
化合物(AM)は、有機化学の定法に従って合成することができる。一例としては、「X−R40−X(R40は2価の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子である。)」とt−ブチルアセトアセテートとを塩基の存在下で反応させ、次いでジハロゲンを縮合させることによって得ることができる。ただし、化合物(AM)の合成方法は上記に限定されるものではない。
液晶配向剤中の化合物(AM)の配合割合は、液晶配向剤中の重合体成分の合計100質量部に対して、1質量部以上とすることが好ましく、5〜50質量部とすることがより好ましい。なお、化合物(AM)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
<その他の成分>
本開示の液晶配向剤は、重合体(PM)及び化合物(AM)以外のその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えば、特定環状構造を有さない重合体(以下「その他の重合体」ともいう。)、メルドラム酸構造を有する分子量500以下の低分子化合物(以下「メルドラム酸構造含有化合物」ともいう。)等が挙げられる。
上記その他の重合体は、液晶配向剤及び液晶素子に要求される各種特性(例えば、印刷性や電気特性等)を改善するために使用することができる。その他の重合体としては、例えばポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリオルガノシロキサン、ポリエステル、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、又はポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。その他の重合体としては、これらの中でも、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル及びポリオルガノシロキサンよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体を好ましく使用することができる。なお、その他の重合体は、公知の方法に従って合成して得たものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。
本開示の液晶配向剤にその他の重合体を配合する場合、重合体(PM)の配合割合は、液晶素子の表示安定性の良化を十分に図る点で、液晶配向剤に含有される重合体(PM)及びその他の重合体の合計量100質量部に対して、5〜90質量部とすることが好ましく、10〜80質量部とすることがより好ましい。
化合物(AM)を用いて液晶配向剤を調製する場合、化合物(AM)とともに、ポリアミック酸、ポリイミド及びポリアミック酸エステルよりなる群から選ばれる少なくとも一種の重合体を液晶配向剤中に含有させることが好ましい。この場合のポリアミック酸、ポリイミド及びポリアミック酸エステルは、重合体(PM)であってもよく、その他の重合体であってもよい。
液晶配向剤の調製に際し、化合物(AM)とともに使用するポリアミック酸、ポリイミド及びポリアミック酸エステルの配合割合は、液晶配向性及び電気特性が良好な液晶素子を得る観点から、液晶配向剤中に含まれるポリアミック酸、ポリイミド及びポリアミック酸エステルと化合物(AM)との合計100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは60〜99質量部、さらに好ましくは70〜95質量部である。
液晶配向剤に配合させるメルドラム酸構造含有化合物としては、上記式(a1−1)又は式(a1−2)で表される部分構造を1個又は2個以上有する化合物が挙げられ、例えば下記式(9−1)〜式(9−5)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
Figure 2017161602
(式(9−2)及び式(9−3)中、j、kはそれぞれ独立に2〜10の整数である。)
上記式(9−2)、式(9−3)中のj、kは、2〜6であることが好ましい。
メルドラム酸構造含有化合物を液晶配向剤に配合する場合、その配合割合は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100質量部に対して、30質量部以下とすることが好ましく、0.1〜20質量部とすることがより好ましい。
なお、その他の成分としては、上記のほか、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物、官能性シラン化合物、分子内に少なくとも一つのオキセタニル基を有する化合物、酸化防止剤、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、充填剤、分散剤、光増感剤などを挙げることができる。これらの配合割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、各化合物に応じて適宜選択することができる。
(溶剤)
本開示の液晶配向剤は、重合体(PM)及び化合物(AM)の少なくとも一方、並びに必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは適当な溶媒中に分散又は溶解してなる液状の組成物として調製される。
使用する有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、1,2−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10質量%の範囲である。すなわち、液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより、液晶配向膜である塗膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。このとき、固形分濃度が1質量%未満である場合には、塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜が得にくくなる。一方、固形分濃度が10質量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜が得にくく、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布性が低下する傾向にある。
<液晶素子>
本開示の液晶素子は、上記で説明した液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する。液晶素子における液晶の動作モードは特に限定せず、例えばTN型、STN型、VA型(VA−MVA型、VA−PVA型などを含む。)、IPS型、FFS型、OCB型など種々のモードに適用することができる。本開示の液晶素子は、例えば以下の工程1〜工程3を含む方法により製造することができる。工程1は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程2及び工程3は各動作モード共通である。
[工程1:塗膜の形成]
先ず基板上に液晶配向剤を塗布し、次いで塗布面を加熱することにより基板上に塗膜を形成する。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができる。TN型、STN型又はVA型の液晶素子を製造する場合には、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を用いる。IPS型又はFFS型の液晶素子を製造する場合には、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜又は金属膜からなる電極が設けられている基板と、電極が設けられていない対向基板とを用いる。金属膜としては、例えばクロムなどの金属からなる膜を使用することができる。基板への塗布は、電極形成面上に、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法により行う。
液晶配向剤を塗布した後、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃である。プレベーク時間は、好ましくは0.25〜10分である。その後、溶剤を完全に除去し、必要に応じて重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、好ましくは80〜300℃であり、ポストベーク時間は、好ましくは5〜200分である。このようにして形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmである。基板上に液晶配向剤を塗布した後、有機溶媒を除去することによって、液晶配向膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。
[工程2:配向処理]
TN型、STN型、IPS型、FFS型又はOCB型の液晶素子を製造する場合、上記工程1で形成した塗膜に液晶配向能を付与する処理(配向処理)を実施する。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。配向処理としては、塗膜を例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦ることによって塗膜に液晶配向能を付与するラビング処理、基板上に形成した塗膜に光照射を行って塗膜に液晶配向能を付与する光配向処理などが挙げられる。一方、垂直配向型の液晶素子を製造する場合には、上記工程1で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対し配向処理を施してもよい。
[工程3:液晶セルの構築]
上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造する方法としては、例えば、(1)それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止する方法、(2)2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、さらに液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせるとともに液晶を基板の全面に押し広げ、次いでシール剤を硬化する方法、などが挙げられる。
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレステリック液晶、カイラル剤、強誘電性液晶などを添加して使用してもよい。
続いて、必要に応じて液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより液晶素子が得られる。偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板が挙げられる。
本開示の液晶素子は種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビなどの各種表示装置や、調光フィルム等に用いることができる。また、本開示の液晶配向剤を用いて形成された液晶素子は位相差フィルムに適用することもできる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
以下の例において、重合体のイミド化率及び重合体溶液の溶液粘度は以下の方法により測定した。以下では、式Xで表される化合物を単に「化合物X」と記すことがある。
[重合体の重量平均分子量Mw]:以下の条件におけるGPCにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGRCXLII
溶剤:N,N−ジメチルホルムアミド(臭化リチウム30mM、リン酸5.6mLを含む。)
温度:40℃
圧力:68kgf/cm
[重合体溶液の溶液粘度(mPa・s)]:E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
[エポキシ当量]:JIS C2105の「塩酸−メチルエチルケトン法」に準じて測定した。
[合成例1]
下記スキーム10に従って化合物(2−1)を合成した。
Figure 2017161602
還流管及び窒素導入管を備えた500mLのナスフラスコにメルドラム酸14.4g及びオルトギ酸トリメチル300gを加えて1時間還流した後、5−アミノイソフタル酸16.3gを加えて2時間還流した。反応終了後、析出物をろ過、ヘキサン洗浄、真空乾燥することで化合物(2−1)を26.8g得た。
[合成例2]
下記スキーム11に従って化合物(8−1−1)を合成した。
Figure 2017161602
・化合物(8−1A)の合成
温度計及び窒素導入管を備えた1Lの三口フラスコにt−ブチルアセトアセテート15.8g、テトラヒドロフラン600mL及び50%(ミネラルオイル)水素化ナトリウム5.28gを加えて10分間撹拌した。続いて、1,4−ジブロモブタン10.8gを加えて0℃で3時間、室温に戻して一昼夜撹拌した。反応終了後、1M塩酸水を400mL及びジエチルエーテルを加えて水層を除去し、さらに水で3回分液洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮、乾固した。続いて、シリカカラム(展開溶剤:ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で分取、濃縮、乾固することで化合物(8−1A)を11.1g得た。
・化合物(8−1−1)の合成
温度計及び窒素導入管を備えた100mLの三口フラスコに化合物(8−1A)11.1g、アセトン12mL、無水酢酸4.3mL及び濃硫酸1mLを加えて30℃で24時間反応させた。反応終了後、ジエチルエーテルを加えて、水で3回分液洗浄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮、乾固した。続いて、シリカカラム(展開溶剤:ヘキサン:酢酸エチル=9:1)で分取、濃縮、乾固することで化合物(8−1−1)を6.09g得た。
[重合例1A]
温度計及び窒素導入管を備えた100mLの三口フラスコに、ジカルボン酸として化合物(2−1)3.35g、多官能化合物(D)として下記式(EP1)で表される化合物3.40g、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)35.3g(モノマー濃度が20質量%となる量)及びイミダゾール0.44g(モノマー100質量部に対して5質量部に相当)を仕込み、80℃で12時間反応させた。反応終了後、反応液を10倍量のメタノールに注いで析出した沈殿をろ過で回収し、メタノール洗浄した後、真空乾燥することで重合体(PM1)を6.08g得た。Mwは11000であった。
Figure 2017161602
[重合例2A〜5A]
下記表1に示すモノマー組成で、重合例1Aと同様の方法で重合を行った。
Figure 2017161602
上記表1中、化合物(EP1)〜(EP5)は、それぞれ以下の式で表される化合物である。
Figure 2017161602
[重合例6A]
還流管及び窒素導入管を備えた500mLのナスフラスコにメルドラム酸14.4g及びオルトギ酸トリメチル200gを加えて1時間還流した後、エポミンSP−200(日本触媒社製)11.8gを加えて2時間還流した。反応終了後、反応液をシクロヘキサンに注いで析出した沈殿をろ過、メタノール洗浄、真空乾燥することで重合体(PM6)を21.0g得た。
[重合例1B]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物200g(1.0モル)、ジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル210g(1.0モル)をNMP370g及びγ−ブチロラクトン3300gの混合溶媒に溶解させ、40℃で3時間反応させて、固形分濃度10質量%、溶液粘度160mPa・sのポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸を重合体(PA1)とした。
[重合例2B]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物6.41g(100モル部)、ジアミンとして下記式(D−1)で表される化合物4.11g(40モル部)及び下記式(D−2)で表される化合物9.48g(60モル部)をNMP80gに溶解させ、40℃で3時間反応させて、固形分濃度20質量%、溶液粘度100mPa・s(固形分濃度10質量%での測定値)のポリアミック酸溶液を得た。得られたポリアミック酸を重合体(PA2)とした。
Figure 2017161602
[重合例3B]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応させた。反応終了後、有機層を取り出し、0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄したのち、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、ポリオルガノシロキサン(EPS−1)を粘調な透明液体として得た。
このポリオルガノシロキサン(EPS−1)について、H−NMR分析を行ったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にオキシラニル基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。ポリオルガノシロキサン(EPS−1)のMwは2200、エポキシ当量は186g/モルであった。
[重合例4B]
100mLの三口フラスコに、上記重合例3Bで合成したポリオルガノシロキサン(EPS−1)を1.77g、シクロペンタノン22.3g、下記式(C−1)で表されるカルボン酸0.84g(ポリオルガノシロキサン(EPS−1)が有する珪素原子に対して20モル%に相当)及び商品名「UCAT 18X」(サンアプロ(株)製、エポキシ化合物の硬化促進剤)0.71gを仕込み、5時間還流させた。反応終了後、反応混合物にメタノールを加えて沈殿を生成させ、この沈殿物を酢酸エチルに溶解して得た溶液を3回水洗した後、溶剤を留去することにより、重合体(S1)の白色粉末2.1gを得た。重合体(S1)の重量平均分子量は9800であった。
Figure 2017161602
[実施例1]
(1)液晶配向剤の調製
重合体として上記重合例4Bで得た重合体(S1)10質量部、及び重合例1Aで得た重合体(PM1)90質量部に、有機溶媒としてNMP及び2−フェノキシエタノール(PE)を加え、溶媒組成がNMP:PE=50:50(質量比)、固形分濃度5.0質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いてろ過することにより液晶配向剤を調製した。
(2)垂直配向性評価用の液晶表示素子の製造
ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上に、上記(1)で調製した液晶配向剤をスピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレート上で1分間プレベークを行った後、庫内を窒素置換したオーブン中200℃で1時間加熱して膜厚0.1μmの塗膜を形成した。次いでこの塗膜表面に、Hg−Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線200J/mを、基板法線から40°傾いた方向から照射して液晶配向膜とした。同じ操作を繰り返して、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)作成した。
上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を対向させ、各基板の紫外線の光軸の基板面への投影方向が逆平行となるように圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間の間隙に、ネガ型液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で加熱してから室温まで徐冷した。次に、基板の外側両面に、偏光板を、その偏光方向が互いに直交し、且つ、液晶配向膜の紫外線の光軸の基板面への射影方向と45°の角度をなすように貼り合わせることにより垂直配向型の液晶表示素子を製造した。
(3)垂直配向型液晶表示素子の評価
上記のようにして製造した液晶表示素子につき、プレチルト角、電圧保持率の評価、及びプレチルト角の安定性の評価を行った。
(3−1)プレチルト角の評価
上記(2)で製造した液晶表示素子につき、非特許文献2(T. J. Scheffer et. al. J. Appl. Phys. vo. 19. p2013(1980))に記載の方法に準拠し、He−Neレーザー光を用いる結晶回転法によりプレチルト角を測定した。測定値が87°以上かつ89°未満の場合を「良好」、87°未満又は89°以上であった場合を「不良」としたところ、実施例1では「良好」の評価であった。
(3−2)電圧保持率の評価
上記(2)で製造した液晶表示素子に対し、60℃において1Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167マイクロ秒のスパンで印加した後、電圧印加の解除から167ミリ秒後の電圧保持率VHR[%]を測定した。測定は、(株)東陽テクニカ製「VHR−1」を用いて行った。このとき、VHRが99%以上であった場合を「良好」、98%以上99%未満であった場合を「可」、98%未満であった場合を「不良」と評価したところ、実施例1では「良好」であった。
(3−3)表示安定性の評価
上記(2)で製造した液晶表示素子に、上記(3−2)の電圧保持率の評価と同様の条件で電圧保持率VHRを測定し、これを初期値VHRA1とした。その後、100ワット型白色蛍光灯下5cmの距離に配置し、500時間光を照射してから再度上記(3−2)と同条件で電圧保持率(これを「VHRA2」とした。)を測定した。下記数式(2)により求めた電圧保持率の低下率ΔVHRAによって、液晶表示素子につき、光に対する表示安定性を評価した。このとき、ΔVHRAが1%以下であった場合を表示安定性「良好」、1%を超えて2%以下であった場合を「可」、2%を超えた場合を「不良」としたところ、実施例1では表示安定性「良好」の結果であった。
ΔVHRA[%]=((VHRA1−VHRA2)/VHRA1)×100 …(2)
[実施例2〜7]
下記表2に示す組成で実施例1と同様に液晶配向剤を調製するとともに、液晶表示素子を製造して各種評価を行った。なお、実施例7では、添加剤として化合物(8−1−1)を液晶配向剤に配合した。添加剤の配合量は、重合体(PM)とその他の重合体との合計量100質量部に対する比率(質量部)を示す。評価結果は下記表2に示した。
[比較例1]
重合体として上記重合例4Bで得た重合体(S1)10質量部、及び重合例1Bで得た重合体(PA1)90質量部に、有機溶媒としてNMP及びブチルセロソルブ(BC)を加え、溶媒組成がNMP:BC=50:50(質量比)、固形分濃度5.0質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いてろ過することにより液晶配向剤を調製した。評価は実施例1と同様に行った。評価結果を下記表2に示した。
Figure 2017161602
[実施例8]
(1)液晶配向剤の調製
上記重合例2Bで得た重合体(PA2)20質量部に、溶剤としてNMP及びブチルセロソルブ(BC)を加え、さらに上記重合例1Aで得た重合体(PM1)を80質量部加え、溶媒組成がNMP:BC=50:50(質量比)、固形分濃度6.0質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いてろ過することにより液晶配向剤を調製した。
(2)FFS型液晶セルの製造
片面に櫛歯状に設けられたクロム電極を有する厚さ1mmのガラス基板上に、上記で調製した液晶配向剤をスピンナーにより塗布した。次いで、80℃のホットプレート上で1分間のプレベークを行った後、230℃のホットプレート上で10分間ポストベークして、膜厚約0.08μmの塗膜を形成した。形成された塗膜面に対し、ナイロン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンを用いて、ロールの回転数1000rpm、ステージの移動速度25mm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmにてラビング処理を行い、液晶配向能を付与した。さらにこの基板を超純水中で1分間超音波洗浄し、100℃クリーンオーブンで10分間乾燥して、櫛歯状のクロム電極を有する面上に液晶配向膜を有する基板を製造した。この液晶配向膜を有する基板を「基板A」とした。
これとは別に、電極を有さない厚さ1mmのガラス基板の一面に、上記と同様にして液晶配向剤の塗膜を形成し、ラビング処理を行い、洗浄、乾燥して、片面上に液晶配向膜を有する基板を製造した。この液晶配向膜を有する基板を「基板B」とした。
続いて、基板Aの液晶配向膜を有する面の外縁に、直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、各液晶配向膜におけるラビング方向が逆平行となるように、間隙を介して2枚の基板A,Bを対向配置し、外縁部同士を当接させて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック液晶(メルク社製、MLC−2042)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することによりFFS型液晶セルを製造した。
(3)表示安定性の評価
上記(2)で製造した液晶セルを用いて、熱に対する表示安定性を評価した。評価は以下のようにして行った。まず、上記の液晶セルに、5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率(VHRB1)を測定した。次いで、液晶セルを、80℃オーブン中で200時間静置した後、室温中に静置して室温まで自然冷却した。冷却後、液晶セルに5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率(VHRB2)を測定した。なお、測定装置は(株)東陽テクニカ製「VHR−1」を使用した。このときのVHRの変化率(ΔVHRB)を下記数式(3)により算出し、ΔVHRBによって液晶セルの表示安定性を評価した。評価は、ΔVHRBが1%未満であった場合を表示安定性「良好」、1%以上2%未満であった場合を「可」、2%以上であった場合を「不良」と判定した。その結果、この実施例では表示安定性「可」であった。
ΔVHRB[%]=(VHRB1−VHRB2)/VHRB1)×100 …(3)
(4)液晶配向性の評価
上記(2)で製造した液晶セルにつき、電圧をオン・オフ(印加・解除)したときの異常ドメインの有無を偏光顕微鏡で観察し、異常ドメインのない場合を液晶配向性「良好」、異常ドメインがひとつでもある場合を液晶配向性「不良」と判定した。その結果、この実施例の液晶セルは、液晶配向性「良好」であった。
(5)残像特性(焼き付き特性)
基板として、櫛歯状にパターニングされたクロムからなる2系統の金属電極(電極a及び電極b)を片面に有するガラス基板と、電極が設けられていない対向ガラス基板とを一対として用いた以外は上記(2)と同様にしてFFS型液晶セルを製造した。次いで、液晶セルの基板の外側両面に偏光板を貼り合わせた。このFFS型液晶表示素子を25℃、1気圧の環境下に置き、電極bには電圧をかけずに、電極aには交流電圧3.5Vと直流電圧5Vの合成電圧を2時間印加した。その直後、電極a及び電極bの双方に交流4Vの電圧を印加した。両電極に交流4Vの電圧を印加し始めた時点から、電極a及び電極bの光透過性の差が目視で確認できなくなるまでの時間を測定した。この時間が100秒未満であった時の残像特性を「良好」、100秒以上150秒未満であった時の残像特性を「可」、そして150秒を超えた場合の残像特性を「不良」と評価した。その結果、この実施例の液晶セルでは残像特性「良好」の結果であった。
[実施例9〜13、比較例2]
使用する重合体の種類及び量を下記表3に示す通り変更した以外は上記実施例8と同じ溶剤比及び固形分濃度で液晶配向剤をそれぞれ調製した。また、それぞれの液晶配向剤を用いて、実施例8と同様にして液晶セル及び液晶表示素子を製造して各種評価を行った。その結果を下記表3に示した。
Figure 2017161602
上記の結果から、重合体(PM)及び化合物(AM)の少なくとも一方を含む液晶配向剤(実施例1〜13)は、初期の液晶配向性が良好であり、また表示安定性も良好又は可の評価であった。これに対し、重合体(PM)及び化合物(AM)のいずれも含まない液晶配向剤(比較例1、2)は、表示安定性が実施例よりも劣っていた。また、比較例のものは残像特性が実施例のものよりも劣っていた。

Claims (11)

  1. 下記式(a1)で表される構造が環の一部を構成する環状構造を有する重合体(PM)を含有する液晶配向剤。
    Figure 2017161602
    (式(a1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基であり、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。「*」及び「*」は、それぞれ結合手であることを表す。ただし、「*」は、カルボニル基又は>C=C(R12)−*(R12は水素原子又は1価の有機基であり、「*」は、式(a1)中の酸素原子に結合する結合手である。)に結合している。)
  2. 重合体(PM)は、前記環状構造を含む部分構造として、下記式(a1−1)〜式(a1−3)のそれぞれで表される部分構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有する、請求項1に記載の液晶配向剤。
    Figure 2017161602
    (式(a1−1)〜式(a1−3)中、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子又は1価の有機基である。R13は、単結合又は2価の連結基である。R41は、水素原子又は1価の有機基である。R及びRは、上記式(a1)と同義である。「*」は、重合体の主鎖に結合する結合手であることを表す。)
  3. 前記重合体(PM)は、下記式(d1)で表される繰り返し単位を有する重合体である、請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
    Figure 2017161602
    (式(d1)中、R32は前記環状構造を有する基であり、R34は3価の有機基であり、R36は2価の有機基である。)
  4. 前記重合体(PM)は、下記式(2)で表される化合物と、エポキシ基、ハロゲン原子、下記式(6)で表される基及び水酸基よりなる群から選ばれる一種の官能基を2個以上有する多官能化合物と、を反応させて得られる重合体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶配向剤。
    Figure 2017161602
    (式(2)中、R32は前記環状構造を有する基であり、R33は3価の有機基である。)
    Figure 2017161602
    (式(6)中、R30は1価の有機基である。)
  5. 前記重合体(PM)は、下記式(b1)で表される繰り返し単位を有する重合体である、請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
    Figure 2017161602
    (式(b1)中、R32は前記環状構造を有する基であり、R37は2価の有機基である。)
  6. 前記重合体(PM)は、下記式(11)で表される繰り返し単位又は下記式(12)で表される繰り返し単位を有する重合体と、前記環状構造を有する化合物とを反応させて得られる重合体である、請求項5に記載の液晶配向剤。
    Figure 2017161602
    (式(11)及び式(12)中、R31及びR37は、それぞれ独立に2価の有機基である。)
  7. 下記式(c1)で表される化合物を含有する液晶配向剤。
    Figure 2017161602
    (式(c1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基であり、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。R12は、水素原子又は1価の有機基である。R13は、単結合又は2価の連結基である。R14はn価の有機基であり、nは1〜10の整数である。nが2以上の場合、複数のR、R、R12及びR13は、それぞれ独立して上記定義を有する。)
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
  9. 請求項8に記載の液晶配向膜を具備する液晶素子。
  10. 下記式(a1−2)及び式(a1−3)で表される部分構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種を有する重合体。
    Figure 2017161602
    (式(a1−2)及び式(a1−3)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基であり、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。R12は、水素原子又は1価の有機基である。R13は、単結合又は2価の連結基である。R41は、水素原子又は1価の有機基である。「*」は、重合体の主鎖に結合する結合手であることを表す。)
  11. 下記式(c1)で表される化合物。
    Figure 2017161602
    (式(c1)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子又は1価の有機基であり、RとRは互いに結合して環を形成していてもよい。R12は、水素原子又は1価の有機基である。R13は、単結合又は2価の連結基である。R14はn価の有機基であり、nは1〜10の整数である。nが2以上の場合、複数のR、R、R12及びR13は、それぞれ独立して上記定義を有する。)
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