JP2017160406A - 部分脱アシル化ジェランガム - Google Patents
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Abstract
【課題】溶解性の高められた部分脱アシル化ジェランガムを提供する。【解決手段】直鎖状の糖鎖と、糖鎖に結合する複数のアシル基とを含む部分脱アシル化ジェランガムであって、部分脱アシル化ジェランガムに対するNMR測定において、メチル基のピーク強度に対するアシル基のピーク強度の比をアシル化度とし、アシル化度が、0.03以上0.10以下であり、体積基準のメジアン径が250μm以下である。【選択図】なし
Description
本発明は、複数のアシル基のうちの一部が脱離されたジェランガムである部分脱アシル化ジェランガムに関する。
ネイティブジェランガムは直鎖状の糖鎖と、複数のアシル基とを含んでいる。改質されたネイティブジェランガムには、全てのアシル基が脱離されたジェランガムと、一部のアシル基が脱離された部分脱アシル化ジェランガムとが知られている。部分脱アシル化ジェランガムは、例えば、ネイティブジェランガムの水溶液に対してアルカリを加えて、ネイティブジェランガムを構成する糖から複数のアシル基のうちの一部を脱離することによって得られる(例えば、特許文献1参照)。
部分脱アシル化ジェランガムは、ジェランガムのかたく脆い食感とネイティブジェランガムのやわらかく弾力のある食感とを併せ持ち、両者にはない独特の食感を食品に付与するため、食品への応用が期待されている。しかしながら、上述した従来の製法、すなわち水に溶解させた状態で脱アシル化を行った後に、乾燥させる方法によって得られた部分脱アシル化ジェランガムは、粒径が大きくなってしまう。それゆえに、部分脱アシル化ジェランガムを液体に溶解するために必要な時間によって、食品の製造が律速してしまう。
本発明は、溶解性の高められた部分脱アシル化ジェランガムを提供することを目的とする。
本発明は、溶解性の高められた部分脱アシル化ジェランガムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための部分脱アシル化ジェランガムは、直鎖状の糖鎖と、前記糖鎖に結合する複数のアシル基と、を含む部分脱アシル化ジェランガムであって、前記部分脱アシル化ジェランガムに対するNMR測定において、メチル基のピーク強度に対するアシル基のピーク強度の比をアシル化度とし、前記アシル化度が、0.03以上0.10以下であり、体積基準のメジアン径が250μm以下である。
上記構成によれば、体積基準のメジアン径が250μm以下であるため、部分脱アシル化ジェランガムの溶解性が高まる。
上記構成によれば、体積基準のメジアン径が250μm以下であるため、部分脱アシル化ジェランガムの溶解性が高まる。
上記部分脱アシル化ジェランガムにおいて、CIELAB表色系における明度指数Lが、80以上95以下であることが好ましい。
上記構成によれば、明度指数Lが80以上95以下であるため、明度指数Lがより低い構成と比べて、部分脱アシル化ジェランガムを含むゲルを生成したときに、ゲルにおける明度が高まる。
上記構成によれば、明度指数Lが80以上95以下であるため、明度指数Lがより低い構成と比べて、部分脱アシル化ジェランガムを含むゲルを生成したときに、ゲルにおける明度が高まる。
上記部分脱アシル化ジェランガムにおいて、CIELAB表色系における知覚色度指数bが、5以上16以下であってもよい。
上記構成によれば、知覚色度指数bが5以上16以下であるため、部分脱アシル化ジェランガムが黄色系あるいは青色系に偏った色を有しないため、部分脱アシル化ジェランガムを用いたゲルに対して、所望とする色が着色されやすくなる。
上記構成によれば、知覚色度指数bが5以上16以下であるため、部分脱アシル化ジェランガムが黄色系あるいは青色系に偏った色を有しないため、部分脱アシル化ジェランガムを用いたゲルに対して、所望とする色が着色されやすくなる。
上記部分脱アシル化ジェランガムにおいて、ネイティブジェランガムを含むゲルにおける動的粘弾性の速度定数が0.06min−1であり、前記部分脱アシル化ジェランガムを含むゲルにおける前記速度定数が0.25min−1以上0.55min−1以下であるように、前記複数のアシル基が前記糖鎖に対して分布していてもよい。
上記構成によれば、動的粘弾性の速度定数が0.25min−1以下である構成と比べて、部分脱アシル化ジェランガムを含む水溶液のゲル化が開始してから終了するまでに要する時間が短くなる。
上記部分脱アシル化ジェランガムにおいて、前記部分脱アシル化ジェランガムは、水を含む有機化合物中にて脱アシル化された部分脱アシル化ジェランガム(A)である。一方で、ネイティブジェランガム水溶液中での脱アシル化によって生成されるとともに、前記アシル化度が、前記部分脱アシル化ジェランガム(A)の前記アシル化度にほぼ等しい部分脱アシル化ジェランガムが部分脱アシル化ジェランガム(B)である。NMR測定から推定されるゲル化の開始温度と、前記ゲル化の開始温度よりも10℃だけ低い温度とによって定められる温度の範囲が比較範囲であり、前記NMR測定の結果から算出された横緩和率における標準偏差のうち、前記比較範囲に含まれる温度における前記標準偏差が比較標準偏差である。前記部分脱アシル化ジェランガムにおける前記比較標準偏差は、前記部分脱アシル化ジェランガム(B)における前記比較標準偏差よりも大きいことが好ましい。
上記構成によれば、部分脱アシル化ジェランガム(A)は、部分脱アシル化ジェランガム(B)と比べて、自由度の高い構造を有することが推定される。これにより、部分脱アシル化ジェランガム(A)の分子内におけるアシル基の分布が、部分脱アシル化ジェランガム(B)に比べて、不規則であることが推定される。
本発明によれば、部分脱アシル化ジェランガムの溶解性が高められる。
図1から図13を参照して、部分脱アシル化ジェランガムを具体化した1つの実施形態を説明する。以下では、部分脱アシル化ジェランガムの構造、部分脱アシル化ジェランガムの特性、ネイティブジェランガムの改質方法、および、実施例を順番に説明する。
[部分脱アシル化ジェランガムの構造]
部分脱アシル化ジェランガムの構造を、ネイティブジェランガムの構造を示す構造式1と、ネイティブジェランガムの脱アシル化によって得られるジェランガムの構造を示す構造式2とを参照して説明する。
部分脱アシル化ジェランガムの構造を、ネイティブジェランガムの構造を示す構造式1と、ネイティブジェランガムの脱アシル化によって得られるジェランガムの構造を示す構造式2とを参照して説明する。
構造式1が示すように、ネイティブジェランガムは、複数の繰り返し単位を有し、各繰り返し単位において、β‐D‐グルコース、β‐グルクロン酸、β‐D‐グルコース、および、L‐ラムノースが、この順番に結合している。これらの糖が、主鎖である糖鎖を構成している。構造式1において、M+は、Na+、K+、および、1/2Ca2+のいずれかである。
繰り返し単位に含まれる2つのβ‐D‐グルコースのうち、β‐グルクロン酸のみと結合したβ‐D‐グルコースにおいて、2位の炭素にグリセリル基が結合し、かつ、6位の炭素にアセチル基が結合している。なお、β‐D‐グルコースの6位の炭素は、2つの繰り返し単位ごとに1つの割合でアセチル基と結合している。アセチル基およびグリセリル基はアシル基の一例である。1分子のネイティブジェランガムは、複数のアシル基を含んでいる。
構造式2が示すように、ジェランガムは、ネイティブジェランガムの脱アシル化によって得られる高分子多糖であり、ネイティブジェランガムの有するアセチル基の全て、および、グリセリル基の全てが、脱アシル化されることによって得られる高分子多糖である。すなわち、ジェランガムは、ネイティブジェランガムの有するアセチル基の全て、および、グリセリル基の全てが、加水分解された高分子多糖である。構造式2において、M+は、Na+、K+、および、1/2Ca2+のいずれかである。
ネイティブジェランガム、ジェランガム、および、部分脱アシル化ジェランガムの各々に対するNMR測定において、メチル基のピーク強度に対するアシル基のピーク強度の比がアシル化度である。メチル基のピーク強度は、アシル基のピーク強度を正規化するための基準となるピークである。
アシル基は、上述したようにアセチル基とグリセリル基とから構成され、アシル化度は、アセチル化度とグリセリル化度との和である。アセチル化度は、メチル基のピーク強度に対するアセチル基のピーク強度の比であり、グリセリル化度は、メチル基のピーク強度に対するグリセリル基のピーク強度の比である。
ネイティブジェランガムにおいて、アセチル化度は0.43程度であり、グリセリル化度は0.63程度であり、アシル化度は、1.06程度である。ジェランガムにおいて、アセチル化度およびグリセリル化度はいずれも0であり、アシル化度も0である。
部分脱アシル化ジェランガムにおいて、アシル化度が、0.03以上0.10以下であり、0.054以上0.088以下であることが好ましい。
部分脱アシル化ジェランガムにおいて、アシル化度が、0.03以上0.10以下であり、0.054以上0.088以下であることが好ましい。
[部分脱アシル化ジェランガムの特性]
部分脱アシル化ジェランガムは、複数の高分子から構成される粒体を形成し、部分脱アシル化ジェランガムにおいて、体積基準のメジアン径が250μmであり、200μm以下であることが好ましい。体積基準のメジアン径が250μm以下であるため、メジアン径がより大きい構成と比べて、部分脱アシル化ジェランガムの溶解性が高まる。
部分脱アシル化ジェランガムは、複数の高分子から構成される粒体を形成し、部分脱アシル化ジェランガムにおいて、体積基準のメジアン径が250μmであり、200μm以下であることが好ましい。体積基準のメジアン径が250μm以下であるため、メジアン径がより大きい構成と比べて、部分脱アシル化ジェランガムの溶解性が高まる。
なお、部分脱アシル化ジェランガムの粒体において、例えば、ロールミル、ジェットミル、ピンミル、および、ハンマーミルなどの粉砕機を用いて外部から粒体に対して力を加えることにより、力を加える前よりも粒体の粒径を小さくすることは可能ではある。しかしながら、粒体に対して粒体を物理的に粉砕する程度の力を加えることにより、粒体が熱を帯びることによって着色するなどの部分脱アシル化ジェランガムの変性が認められる。そのため、部分脱アシル化ジェランガムを変性させることなく粒体のメジアン径を上述した範囲とするためには、ネイティブジェランガムの改質によって部分脱アシル化ジェランガムが得られた時点で、粒体が上述した範囲のメジアン径を有する必要がある。
部分脱アシル化ジェランガムにおいて、CIELAB表色系における明度指数Lが、80以上95以下であることが好ましく、アシル化度が0.054であり、かつ、明度指数Lが、80以上85以下であることがより好ましい。これにより、明度指数Lがより低い構成と比べて、部分脱アシル化ジェランガムを含むゲルを生成したときに、ゲルにおける明度が高まる。
部分脱アシル化ジェランガムにおいて、CIELAB表色系における知覚色度指数bが、5以上16以下であってもよく、アシル化度が0.054以上0.088以下であり、かつ、知覚色度指数bが、11以上16以下であることはより好ましい。知覚色度指数bにおいて、知覚色度指数bが正の値であるとき、知覚色度指数bの絶対値が大きいほど、物体が黄色味を帯びていることを示し、知覚色度指数bが負の値であるとき、知覚色度指数bの絶対値が大きいほど、物体が青色味を帯びていることを示している。
部分脱アシル化ジェランガムでは、知覚色度指数bが5以上16以下であるため、部分脱アシル化ジェランガムが黄色系あるいは青色系に偏った色を有しない。それゆえに、部分脱アシル化ジェランガムを用いたゲルに対して、所望とする色が着色されやすくなる。
部分脱アシル化ジェランガムにおいて、ネイティブジェランガムを含むゲルにおける動的粘弾性の速度定数が0.06min−1であり、部分脱アシル化ジェランガムを含むゲルにおける動的粘弾性の速度定数が0.25min−1以上0.55min−1以下であるように、複数のアシル基が糖鎖に対して分布していてもよい。
部分脱アシル化ジェランガムにおいて、アシル化度が0.054よりも大きく、かつ、0.088以下である。このとき、部分脱アシル化ジェランガムを含むゲルにおける動的粘弾性の速度定数が0.24min−1よりも大きく、かつ、0.38min−1以下であるように、複数のアシル基が糖鎖に対して分布していてもよい。
こうした部分脱アシル化ジェランガムによれば、アシル化度が上述の範囲に含まれる部分脱アシル化ジェランガムであって、動的粘弾性の速度定数が0.25min−1よりも小さい構成と比べて、部分脱アシル化ジェランガムを含む水溶液のゲル化が開始してから終了するまでに要する時間が短くなる。
また、部分脱アシル化ジェランガムにおいて、水を含む有機化合物中にて脱アシル化された部分脱アシル化ジェランガムが、部分脱アシル化ジェランガム(A)である。一方で、ネイティブジェランガム水溶液中での脱アシル化によって生成されるとともに、アシル化度が部分脱アシル化ジェランガム(A)のアシル化度にほぼ等しい部分脱アシル化ジェランガムが、部分脱アシル化ジェランガム(B)である。
これら部分脱アシル化ジェランガムにおいて、異なる複数の温度におけるNMR測定で得られるメチル基のピーク強度からゲル化の開始温度を推定することができる。そして、NMR測定から推定されるゲル化の開始温度と、ゲル化の開始温度よりも10℃だけ低い温度とによって定められる温度の範囲が比較範囲である。NMR測定で得られた横緩和率における標準偏差のうち、比較範囲に含まれる温度における標準偏差が比較標準偏差である。
部分脱アシル化ジェランガム(A)における比較標準偏差は、部分脱アシル化ジェランガム(B)における比較標準偏差よりも大きいことが好ましい。
こうした部分脱アシル化ジェランガム(A)は、部分脱アシル化ジェランガム(B)と比べて、自由度の高い構造を有することが推定される。これにより、部分脱アシル化ジェランガム(A)の分子内におけるアシル基の分布が、部分脱アシル化ジェランガム(B)に比べて、不規則であることが推定される。
また、アシル化度が0.054である部分脱アシル化ジェランガム(A)において、部分脱アシル化ジェランガム(A)における比較標準偏差が、部分脱アシル化ジェランガム(B)における比較標準偏差よりも大きいことがより好ましい。
[ネイティブジェランガムの改質方法]
ネイティブジェランガムの改質方法を説明する。
ネイティブジェランガムの改質方法は、ネイティブジェランガムを液体に分散させる工程と、脱アシル化剤を用いて液体に分散させたネイティブジェランガムを処理する工程とを含む。ネイティブジェランガムの改質方法は、さらに、脱アシル化剤を中和する工程と、部分脱アシル化ジェランガムを分離する工程、および、部分脱アシル化ジェランガムを乾燥させる工程を含むことが好ましく、分離された部分脱アシル化ジェランガムを洗浄する工程を含んでもよい。
ネイティブジェランガムの改質方法を説明する。
ネイティブジェランガムの改質方法は、ネイティブジェランガムを液体に分散させる工程と、脱アシル化剤を用いて液体に分散させたネイティブジェランガムを処理する工程とを含む。ネイティブジェランガムの改質方法は、さらに、脱アシル化剤を中和する工程と、部分脱アシル化ジェランガムを分離する工程、および、部分脱アシル化ジェランガムを乾燥させる工程を含むことが好ましく、分離された部分脱アシル化ジェランガムを洗浄する工程を含んでもよい。
ネイティブジェランガムを液体に分散させる工程では、まず、水に脱アシル化剤を溶解し、脱アシル化剤の水溶液に、水に溶解し、かつ、ネイティブジェランガムの溶解度が水よりも低い液体状の有機化合物を加える。そして、脱アシル化剤が溶解した水と、有機化合物とを含む液体に、ネイティブジェランガムを加える。これにより、水、有機化合物、および、脱アシル化剤を含む液体に、ネイティブジェランガムを分散させる。
液体状の有機化合物は、常温かつ常圧の雰囲気において、すなわち、10℃以上65℃以下程度の温度、かつ、大気圧程度の圧力である雰囲気において、液体状の有機化合物であればよい。有機化合物は、アルコール、ケトン系溶媒、および、アセトニトリルなどのいずれか1つであればよい。有機化合物がケトンを含むとき、有機化合物は、アセトン、および、メチルエチルケトンなどのいずれか1つであればよい。
有機化合物がアルコールであるとき、有機化合物は、メタノール、エタノール、および、プロパノールであることが好ましく、プロパノールは、直鎖状の炭素鎖を有する1‐プロパノールであってもよいし、分岐鎖状の炭素鎖を有する2‐プロパノールであってもよい。有機化合物がエタノールであるとき、水とエタノールとの全量に対して、エタノールの濃度は、例えば、45%以上95%以下であることができる。
脱アシル化剤は、酸またはアルカリであり、酸には強酸および弱酸が含まれ、アルカリには強アルカリおよび弱アルカリが含まれる。脱アシル化剤が酸であるとき、脱アシル化剤は、例えば、塩酸、硫酸、および、硝酸などのいずれか1つであればよい。
脱アシル化剤がアルカリであるとき、脱アシル化剤は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、リン酸ナトリウム(Na3PO4)、アルコキシド、アンモニア、および、水酸化アンモニウム(NH4OH)などのいずれか1つであればよい。このうち、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、および、リン酸ナトリウムが脱アシル化剤として好ましい。
脱アシル化剤がアルカリであるとき、液体における脱アシル化剤の濃度は、有機化合物の種類、および、有機化合物の濃度などに応じて、液体が白濁しない範囲に設定されることが好ましい。
ここで、ネイティブジェランガムを水に溶解させる方法では、水溶液におけるネイティブジェランガムの濃度が高まるほど、水溶液の粘度が高まる。そのため、ネイティブジェランガムの脱アシル化反応を進めるためには、水溶液の粘度が水溶液の全体において脱アシル化反応が進む程度の粘度に抑えられるように、水溶液におけるネイティブジェランガムの濃度が定められる必要がある。
これに対して、本実施形態では、ネイティブジェランガムが液体に分散されるため、液体におけるネイティブジェランガムの濃度が高くなっても、液体の粘度が高まりにくい。そのため、液体におけるネイティブジェランガムの濃度が、液体の粘度によって制約されにくい分、ネイティブジェランガムを水に溶解させる方法と比べて、液体におけるネイティブジェランガムの濃度が高い状態で脱アシル化反応を行うことができる。
脱アシル化剤を用いてネイティブジェランガムを処理する工程では、ネイティブジェランガムが分散した液体を攪拌しながら加熱してもよい。液体の温度である反応温度は、液体中に含まれる有機化合物が蒸発しない温度であることが好ましく、例えば、10℃以上65℃以下であることが好ましい。
脱アシル化剤を用いてネイティブジェランガムを処理する工程における反応時間は、例えば、1分以上300分以下であることが好ましく、5分以上300分以下であることがより好ましい。また、ネイティブジェランガムの脱アシル化反応は、反応時間が300分である時点までにほぼ完結しているため、反応時間が300分以下であることは、反応時間が長くなることが抑えられる点で好ましい。なお、反応時間は、液体の温度が所定の温度に加熱されて以降の時間である。また、液体の攪拌は、液体の加熱を開始した時点から反応時間が経過するまでの間にわたって継続される。
脱アシル化剤を中和する工程では、液体を攪拌しながら、液体に対して脱アシル化剤を中和する中和剤を加える。脱アシル化剤が酸であるとき、中和剤はアルカリであり、脱アシル化剤がアルカリであるとき、中和剤は酸である。
中和剤がアルカリであるとき、中和剤は、弱アルカリおよび強アルカリのいずれであってもよい。ただし、親水性を有する部分脱アシル化ジェランガムが接する水の量を少なくしつつ、液体の中和を行う上では、中和剤は強アルカリ、例えば、水酸化ナトリウムなどであることが好ましい。これにより、部分脱アシル化ジェランガムが接する水の量を少なくすることができるため、部分脱アシル化ジェランガムの収率が低くなりにくい。
また、中和剤が酸であるとき、中和剤は、弱酸および強酸のいずれであってもよいが、中和剤がアルカリであるときと同様の理由から、中和剤は強酸であることが好ましい。なお、中和剤は揮発性を有する酸、例えば、塩酸や硝酸などであることがより好ましい。中和剤が揮発性を有する酸であれば、中和剤が分離後の部分脱アシル化ジェランガムに付着していたとしても、部分脱アシル化ジェランガムの乾燥中に中和剤が揮発するため、分離後の部分脱アシル化ジェランガムには、中和剤が含まれにくくなる。
中和工程によれば、脱アシル化反応後の部分脱アシル化ジェランガムを単に洗浄する場合と比べて、脱アシル化剤が脱アシル化する機能を有しない状態とすることができるため、中和工程よりも後において、部分脱アシル化ジェランガムがさらに脱アシル化されることが抑えられる。
これに対して、部分脱アシル化ジェランガムを洗浄するのみによって、部分脱アシル化ジェランガムから脱アシル化剤を取り除く場合には、複数回にわたって部分脱アシル化ジェランガムを洗浄する必要があるため、多量の洗浄液が必要になる。
なお、ネイティブジェランガムの脱アシル化反応が水中で行われる場合には、ネイティブジェランガムが水に溶解するため、粘性の高いゲルが生成される。それゆえに、ゲルの全体に対して、中和剤を均一に混合することが困難であり、ひいては、ゲルの中和に必要な中和剤の量が多くなりやすい。
部分脱アシル化ジェランガムを分離する工程では、液体を濾過することによって、液体中に分散している部分脱アシル化ジェランガムと、水および有機化合物とを分離する。なお、脱アシル化剤と中和剤との中和反応によって生成された塩は、水中に溶解しているため、液体を濾過するのみによって、液体に含まれるほとんどの塩が、部分脱アシル化ジェランガムから分離される。
これに対して、ネイティブジェランガムの脱アシル化反応が水中で行われる場合には、水中から部分脱アシル化ジェランガムのみを分離するためには、多量のエタノールを用いて部分脱アシル化ジェランガムを析出させる必要がある。それゆえに、部分脱アシル化ジェランガムの生成にかかるコストが高くなってしまう。
この点で、ネイティブジェランガムを液体に分散させつつ、ネイティブジェランガムの脱アシル化を行う方法によれば、液体の濾過のみによって、部分脱アシル化ジェランガムと、塩を含む液体とを分離することが可能であるため、部分脱アシル化ジェランガムの生成に掛かるコストを大幅に低くすることができる。
また、ネイティブジェランガムは、有機化合物と水とを含む液体に分散され、かつ、脱アシル化剤である酸またはアルカリが水中に存在する。そのため、ネイティブジェランガムのうちで水に接している部分において選択的に脱アシル化反応を進めることができる。それゆえに、水溶液にネイティブジェランガムを溶解させた状態で脱アシル化反応を行う方法と比べて、脱アシル化反応の制御が容易である。
濾過によって分離された部分脱アシル化ジェランガムを洗浄する工程が行われてもよく、部分脱アシル化ジェランガムを洗浄する洗浄液は、例えば、含水エタノールであればよい。
部分脱アシル化ジェランガムを乾燥する工程では、部分脱アシル化ジェランガムが、例えば、40℃以上60℃以下の雰囲気にて風乾される。これにより、部分脱アシル化ジェランガムが得られる。
なお、有機化合物としてエタノール、脱アシル化剤として水酸化ナトリウム、中和剤として塩酸を用いる場合であれば、エタノール、水酸化ナトリウム、および、塩酸の各々が食品添加物であるため、反応生成物である部分脱アシル化ジェランガムを食品素材として用いることができる。
[実施例]
[実施例1]
実施例1では、6375gのエタノール、1125gの水、37.5gの水酸化ナトリウム、300gのネイティブジェランガム(ケルコゲルLT100、CPケルコ社製)(ケルコゲルは登録商標)をそれぞれ用いた。そして、部分脱アシル化ジェランガムを生成するときの反応温度を45℃に設定し、反応時間を10分に設定した。反応後の溶液を濾過して、部分脱アシル化ジェランガムと塩とを分離した後、部分脱アシル化ジェランガムを含水エタノールによって洗浄した。そして、部分脱アシル化ジェランガムを60℃にて一晩風乾することによって、実施例1の部分脱アシル化ジェランガムを得た。
[実施例1]
実施例1では、6375gのエタノール、1125gの水、37.5gの水酸化ナトリウム、300gのネイティブジェランガム(ケルコゲルLT100、CPケルコ社製)(ケルコゲルは登録商標)をそれぞれ用いた。そして、部分脱アシル化ジェランガムを生成するときの反応温度を45℃に設定し、反応時間を10分に設定した。反応後の溶液を濾過して、部分脱アシル化ジェランガムと塩とを分離した後、部分脱アシル化ジェランガムを含水エタノールによって洗浄した。そして、部分脱アシル化ジェランガムを60℃にて一晩風乾することによって、実施例1の部分脱アシル化ジェランガムを得た。
[実施例2]
実施例2では、反応時間を30分に変更する以外は、実施例1と同じ方法を用いて、実施例2の部分脱アシル化ジェランガムを得た。
実施例2では、反応時間を30分に変更する以外は、実施例1と同じ方法を用いて、実施例2の部分脱アシル化ジェランガムを得た。
[比較例1]
比較例1では、2000gの水に対して20gのネイティブジェランガム(実施例1と同じ)を溶解し、約1.0%のネイティブジェランガム水溶液を生成した。そして、ネイティブジェランガム水溶液を加熱し、ネイティブジェランガム水溶液の温度が、反応温度である45℃に達してから、6gの水酸化ナトリウム(NaOH)をネイティブジェランガム水溶液に加えて、反応溶液を生成した。
比較例1では、2000gの水に対して20gのネイティブジェランガム(実施例1と同じ)を溶解し、約1.0%のネイティブジェランガム水溶液を生成した。そして、ネイティブジェランガム水溶液を加熱し、ネイティブジェランガム水溶液の温度が、反応温度である45℃に達してから、6gの水酸化ナトリウム(NaOH)をネイティブジェランガム水溶液に加えて、反応溶液を生成した。
反応時間である3分間が経過したところで、8倍に希釈した塩酸を反応溶液に加えて、反応溶液に含まれる水酸化ナトリウムを中和した。その後、反応溶液に対して11332gのエタノールを加えて、反応溶液中に含まれる部分脱アシル化ジェランガムを沈殿させた。沈殿した部分脱アシル化ジェランガムを回収した後、60℃の雰囲気にて2日間にわたって乾燥させることで、比較例1の部分脱アシル化ジェランガムを得た。
[比較例2]
比較例2では、反応時間を5分に変更する以外は、比較例1と同じ方法を用いて、比較例2の部分脱アシル化ジェランガムを得た。
比較例2では、反応時間を5分に変更する以外は、比較例1と同じ方法を用いて、比較例2の部分脱アシル化ジェランガムを得た。
[比較例3]
比較例3として、ネイティブジェランガム(実施例1と同じ)を用いた。
比較例3として、ネイティブジェランガム(実施例1と同じ)を用いた。
[比較例4]
比較例4として、ジェランガム(ケルコゲル、CPケルコ社製)(ケルコゲルは登録商標)を用いた。
比較例4として、ジェランガム(ケルコゲル、CPケルコ社製)(ケルコゲルは登録商標)を用いた。
[アシル化度]
NMRを用いて実施例1,2、および、比較例1,2の部分脱アシル化ジェランガムにおけるアシル化度を分析した結果を説明する。
NMRを用いて実施例1,2、および、比較例1,2の部分脱アシル化ジェランガムにおけるアシル化度を分析した結果を説明する。
[NMR分析方法]
重水と、重水の質量に対して0.01%のDSSとを用いて溶液を作成し、溶液の質量に対する1%の実施例1,2、および、比較例1,2の各々の部分脱アシル化ジェランガムを溶液に混合して混合液を生成した。そして、混合液を40℃の雰囲気に一晩静置した後、混合液を加熱し、混合液の温度が90℃に達した時点から10分間にわたって、混合液の温度を90℃に保ちつつ、混合液を攪拌した。これにより、NMR用のサンプルを得た。サンプルの分析には、600MHzのNMR装置(Bruker Biospin (株)製)を用いた。このとき、積算回数を128回に設定し、かつ、緩和時間を1秒に設定した。
重水と、重水の質量に対して0.01%のDSSとを用いて溶液を作成し、溶液の質量に対する1%の実施例1,2、および、比較例1,2の各々の部分脱アシル化ジェランガムを溶液に混合して混合液を生成した。そして、混合液を40℃の雰囲気に一晩静置した後、混合液を加熱し、混合液の温度が90℃に達した時点から10分間にわたって、混合液の温度を90℃に保ちつつ、混合液を攪拌した。これにより、NMR用のサンプルを得た。サンプルの分析には、600MHzのNMR装置(Bruker Biospin (株)製)を用いた。このとき、積算回数を128回に設定し、かつ、緩和時間を1秒に設定した。
これにより、図1および図2が示すスペクトルが得られた。なお、図1(a)は比較例1のスペクトルであり、図1(b)は実施例1のスペクトルである。また、図2(a)は比較例2のスペクトルであり、図2(b)は実施例2のスペクトルである。
図1(a)、図1(b)、図2(a)、および、図2(b)の各々において、DSSのピークを0ppmとした化学シフトが1.2ppmから1.4ppmの間であるピークがメチル基のピークであり、化学シフトが4.7ppmから5ppmの間である3つのピークがグリセリル基のピークである。
なお、図1(a)、図1(b)、図2(a)、および、図2(b)の各々では、ネイティブジェランガムでは認められるピークであって、化学シフトが2ppmから2.2ppmの間であるアセチル基のピークが認められなかった。すなわち、実施例1,2および比較例1,2の各々におけるネイティブジェランガムを改質する条件によれば、ネイティブジェランガムに結合したアセチル基の全てが脱離することが認められた。
これに対して、DSSのピークの面積、すなわちピーク強度を1に設定し、メチル基のピークの面積、および、グリセリル基のピークの面積の各々をDSSのピークの面積を基準として算出したところ、表1に示す値であった。
なお、アシル化度は、メチル基のピークにおける面積に対するグリセリル基のピークにおける面積の比、すなわち、メチル基のピーク強度に対するグリセリル基のピーク強度の比である。
表1が示すように、実施例1におけるメチル基のピーク強度は9.17であり、グリセリル基のピーク強度は0.81であり、アシル化度は0.088であることが認められた。実施例2におけるメチル基のピーク強度は8.78であり、グリセリル基のピーク強度は0.47であり、アシル化度は0.054であることが認められた。
比較例1におけるメチル基のピーク強度は11.76であり、グリセリル基のピーク強度は1.02であり、アシル化度は0.086であることが認められた。比較例2におけるメチル基のピーク強度は7.58であり、グリセリル基のピーク強度は0.42であり、アシル化度は0.055であることが認められた。
すなわち、実施例1におけるアシル化度と比較例1におけるアシル化度とが互いにほぼ等しい値であり、実施例2におけるアシル化度と比較例2におけるアシル化度とが互いにほぼ等しい値であることが認められた。
なお、本願発明者らにより、ネイティブジェランガムにおけるメチル基のピーク強度が8.0であり、アセチル基のピーク強度が3.4であり、グリセリル基のピーク強度が5.0であることが認められている。また、このネイティブジェランガムにおいて、アセチル化度が0.43であり、グリセリル化度が0.63であり、アシル化度が1.06である。
[メジアン径]
実施例1,2、および、比較例1から4の各々において、体積基準のメジアン径を以下の方法で測定した。すなわち、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置LMS−30((株)セイシン企業製)を用いて、実施例1,2、および、比較例1から4の各々を構成する複数の粒子において、積算体積が50%に達したときの粒径としてメジアン径を測定した。
実施例1,2、および、比較例1から4の各々において、体積基準のメジアン径を以下の方法で測定した。すなわち、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置LMS−30((株)セイシン企業製)を用いて、実施例1,2、および、比較例1から4の各々を構成する複数の粒子において、積算体積が50%に達したときの粒径としてメジアン径を測定した。
メジアン径を測定するときには、まず、粒度分布測定装置の測定ユニットにエタノールを注入し、エタノールに超音波振動を与えた状態で、センサー電圧が500mVから1500mVになるようにエタノールに測定するための試料を加えた。このとき、スターラーの強度を「1」に設定し、循環ポンプのレベルを「1」に設定して、実施例1,2、および、比較例1から4の各々における粒径の体積分布を得た。そして、得られた体積分布からメジアン径を算出した。
図3が示すように、実施例1のメジアン径は170.5μmであり、実施例2のメジアン径は161.3μmであることが認められた。すなわち、実施例におけるメジアン径は200μm以下であることが認められた。
これに対して、比較例1のメジアン径は625.4μmであり、比較例2のメジアン径は427.4μmであることが認められた。このように、実施例におけるネイティブジェランガムの改質方法によって得られた部分脱アシル化ジェランガムではメジアン径が200μm以下である一方で、比較例における部分脱アシル化ジェランガムの製造方法によって得られた部分脱アシル化ジェランガムではメジアン径が200μmよりも大きいことが認められた。
また、比較例3のメジアン径が139.5μmであり、比較例4のメジアン径が131.3μmであることが認められた。つまり、実施例におけるネイティブジェランガムの改質方法によれば、ネイティブジェランガム、および、ジェランガムと同程度のメジアン径を有する部分脱アシル化ジェランガムの製造が可能であることが認められた。
これに対して、比較例1,2におけるネイティブジェランガムの改質方法によれば、ネイティブジェランガム、および、ジェランガムに対して大幅に大きいメジアン径を有する部分脱アシル化ジェランガムが製造されることが認められた。
[溶解性]
実施例1,2および比較例1,2の各々における部分脱アシル化ジェランガムの溶解性を以下の条件で比較した。実施例1,2および比較例1,2の各々における部分脱アシル化ジェランガムを0.1%の濃度となるように水に加え、400rpmの速度で攪拌し、常温にて溶解した。
実施例1,2および比較例1,2の各々における部分脱アシル化ジェランガムの溶解性を以下の条件で比較した。実施例1,2および比較例1,2の各々における部分脱アシル化ジェランガムを0.1%の濃度となるように水に加え、400rpmの速度で攪拌し、常温にて溶解した。
このとき、実施例1,2の各々における部分脱アシル化ジェランガムは、3分以内で溶解することが認められる一方で、比較例1,2の各々における部分脱アシル化ジェランガムは、30分以上にわたって攪拌しないと溶解しないことが認められた。
このように、実施例1,2の各々における部分脱アシル化ジェランガムは、メジアン径が200μm以下であることによって、溶解性が高まることが認められた。
[色]
実施例1,2および比較例1から4の各々において、CIELAB表色系による色を測色色差計(ZE−2000、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。測色色差計が有する測定試料用のセルに試料を満たし、試料からの反射光に基づき、明度指数Lと知覚色度指数bとを測定した。
実施例1,2および比較例1から4の各々において、CIELAB表色系による色を測色色差計(ZE−2000、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。測色色差計が有する測定試料用のセルに試料を満たし、試料からの反射光に基づき、明度指数Lと知覚色度指数bとを測定した。
[明度指数L]
図4が示すように、実施例1における明度指数Lが84.37であり、実施例2における明度指数Lが84.59であることが認められた。また、比較例1における明度指数Lが83.94であり、比較例2における明度指数Lが77.38であり、比較例3における明度指数Lが85.15であり、比較例4における明度指数Lが88.69であることが認められた。
図4が示すように、実施例1における明度指数Lが84.37であり、実施例2における明度指数Lが84.59であることが認められた。また、比較例1における明度指数Lが83.94であり、比較例2における明度指数Lが77.38であり、比較例3における明度指数Lが85.15であり、比較例4における明度指数Lが88.69であることが認められた。
このように、実施例2によれば、脱アシル化の程度が進んでも明度指数Lが80以上85以下であることが認められた。一方で、実施例2と同程度に脱アシル化の程度が進んだ比較例2では、明度指数Lが80に満たないことが認められた。
[知覚色度指数b]
図5が示すように、実施例1では知覚色度指数bが14.06であり、実施例2では知覚色度指数bが13.57であることが認められた。また、比較例1では知覚色度指数bが9.68であり、比較例2では知覚色度指数bが10.19であり、比較例3では知覚色度指数bが12.02であり、比較例4では知覚色度指数bが9.08であることが認められた。
このように、実施例1,2によれば、脱アシル化の程度に関わらず、知覚色度指数bが11以上であることが認められた。
図5が示すように、実施例1では知覚色度指数bが14.06であり、実施例2では知覚色度指数bが13.57であることが認められた。また、比較例1では知覚色度指数bが9.68であり、比較例2では知覚色度指数bが10.19であり、比較例3では知覚色度指数bが12.02であり、比較例4では知覚色度指数bが9.08であることが認められた。
このように、実施例1,2によれば、脱アシル化の程度に関わらず、知覚色度指数bが11以上であることが認められた。
[動的粘弾性]
実施例1,2および比較例1から4の各々を含む試料における動的粘弾性を測定した。実施例1,2および比較例1から4の各々を含む試料であって、動的粘弾性を測定するための測定用試料を以下の組成で生成した。
実施例1,2および比較例1から4の各々を含む試料における動的粘弾性を測定した。実施例1,2および比較例1から4の各々を含む試料であって、動的粘弾性を測定するための測定用試料を以下の組成で生成した。
表2が示すように、実施例1,2および比較例1から4の各々を1.00質量%とし、クエン酸を0.20質量%とし、クエン酸三ナトリウムを0.07質量%とし、乳酸カルシウムを0.20質量%とし、残りを水として、測定用試料を生成した。
[貯蔵剛性率G’の測定]
動的粘弾性測定装置(MG−Rheo、(有)サンズコーポレーション製)の有するセルであって、25mm×40mm×2.6mmの大きさを有するセルを予め85℃まで加熱し、加熱した測定用試料をセルに注いだ。そして、10mm×25mm×0.6mmの大きさを有するブレード状のプランジャーを測定用試料に差し込み、プランジャーを上下方向に沿って微小に振動させながら、貯蔵剛性率G’を測定した。なお、プランジャーの振動における周波数を1Hzとし、プランジャーの歪みを10μmに設定した。また、測定用試料の温度を2℃/分の速度で85℃から10℃まで冷却しながら、貯蔵剛性率G’を測定した。
動的粘弾性測定装置(MG−Rheo、(有)サンズコーポレーション製)の有するセルであって、25mm×40mm×2.6mmの大きさを有するセルを予め85℃まで加熱し、加熱した測定用試料をセルに注いだ。そして、10mm×25mm×0.6mmの大きさを有するブレード状のプランジャーを測定用試料に差し込み、プランジャーを上下方向に沿って微小に振動させながら、貯蔵剛性率G’を測定した。なお、プランジャーの振動における周波数を1Hzとし、プランジャーの歪みを10μmに設定した。また、測定用試料の温度を2℃/分の速度で85℃から10℃まで冷却しながら、貯蔵剛性率G’を測定した。
図6が示すように、実施例1における貯蔵剛性率G’と比較例1における貯蔵剛性率G’との間では、測定の開始時である0分から25分までにおける推移の仕方が異なるものの、貯蔵剛性率G’は、ほぼ同じ値の範囲内で推移することが認められた。また、測定を開始してから25分以降は、実施例1における貯蔵剛性率G’と比較例1における貯蔵剛性率G’とが、ほぼ同じ値で推移することが認められた。
図7が示すように、実施例2における貯蔵剛性率G’と比較例2における貯蔵剛性率G’との間では、測定の開始時である0分から25分までにおける推移の仕方が異なるものの、貯蔵剛性率G’は、ほぼ同じ値の範囲内で推移することが認められた。一方で、測定を開始してから25分以降は、実施例2における貯蔵剛性率G’が、比較例2における貯蔵剛性率G’を上回ることが認められた。
図8が示すように、比較例3における貯蔵剛性率G’と比較例4における貯蔵剛性率G’とは、測定の開始時から終了時までにわたって、全く異なる値であることが認められた。
[速度定数Kの算出]
実施例1,2および比較例1から4の各々において、測定用試料における貯蔵剛性率G’が急激に増加する温度をゲル化温度とし、測定用試料がゲル化温度を迎えた後に、貯蔵剛性率G’が飽和したときの値を貯蔵剛性率G’の飽和値とした。言い換えれば、貯蔵剛性率G’の測定を開始してから60分後の貯蔵剛性率G’の値を貯蔵剛性率G’の飽和値とした。
実施例1,2および比較例1から4の各々において、測定用試料における貯蔵剛性率G’が急激に増加する温度をゲル化温度とし、測定用試料がゲル化温度を迎えた後に、貯蔵剛性率G’が飽和したときの値を貯蔵剛性率G’の飽和値とした。言い換えれば、貯蔵剛性率G’の測定を開始してから60分後の貯蔵剛性率G’の値を貯蔵剛性率G’の飽和値とした。
ゲル化の開始からの経時的な貯蔵剛性率G’の変化を定量的に分析するために、最小二乗法を用いた以下の一次反応式で経過時間に対応する貯蔵剛性率G’を近似した。
G’=G’sat{1−exp[−K(t−t0)]} … 式(1)
G’=G’sat{1−exp[−K(t−t0)]} … 式(1)
なお、式(1)において、tは測定開始からの経過時間であり、G’は経過時間tにおける貯蔵剛性率G’であり、G’satは測定の開始時から60分後における貯蔵剛性率G’の飽和値であり、K(min−1)は速度定数であり、t0はゲル化温度に対応する時間である。なお、速度定数Kはゲル化に必要な時間を示し、速度定数Kが大きいほど、ゲル化に必要な時間が短くなる。
表3が示すように、実施例1の測定用試料における速度定数Kは0.24min−1であり、実施例2の測定用試料における速度定数Kは0.38min−1であることが認められた。比較例1の測定用試料における速度定数Kは0.24min−1であり、比較例2の測定用試料における速度定数Kは0.21min−1であり、比較例3の測定用試料における速度定数Kは0.06min−1であり、比較例4の測定用試料における速度定数Kは0.60min−1であることが認められた。
なお、実施例1の測定用試料ではt0が25.5分であり、実施例2の測定用試料ではt0が23.9分であることが認められた。比較例1の測定用試料ではt0が24.9分であり、比較例2の測定用試料ではt0が24.9分であり、比較例3の測定用試料ではt0が8.4分であり、比較例4の測定用試料ではt0が26.0分であることが認められた。
このように、実施例1の測定用試料における速度定数Kと、比較例1の測定用試料における速度定数Kとが等しい値であることが認められた。一方で、実施例2の部分脱アシル化ジェランガムと、比較例2の部分脱アシル化ジェランガムとでは、アシル化度の程度がほぼ同じであるにもかかわらず、実施例2の測定用試料における速度定数Kと、比較例2の測定用試料における速度定数Kとが互いに異なる値であることが認められた。
実施例2の部分脱アシル化ジェランガムと、比較例2の部分脱アシル化ジェランガムとは、アシル化の程度がほぼ同じであり、また、ネイティブジェランガムを改質する過程において、アシル基の脱離反応以外の反応は起こっていないことが、本願発明者らにより認められている。そのため、実施例2の部分脱アシル化ジェランガムと、比較例2の部分脱アシル化ジェランガムとの間において、糖鎖に結合する複数のアシル基の状態が異なっていると推察される。
ここで、比較例2の部分脱アシル化ジェランガムが製造されるときには、ネイティブジェランガムと、脱アシル化剤であるアルカリとが、水に溶解された状態でアシル基を脱離する反応が進む。そのため、ネイティブジェランガムを構成する高分子の全体において、ネイティブジェランガムが有するアシル基と、ネイティブジェランガムを取り囲む溶媒中のアルカリとがほぼ同じ確率で衝突する。それゆえに、比較例2の部分脱アシル化ジェランガムが製造されるときには、ネイティブジェランガムを構成する高分子の全体において、ほぼ同じ確率で脱アシル化反応が進み、結果として、比較例2の部分脱アシル化ジェランガムでは、直鎖状の糖鎖に対する複数のアシル基の分布が、高分子の全体においてほぼ等しいと推察される。
一方で、実施例2の部分脱アシル化ジェランガムが製造されるときには、ネイティブジェランガムは、水と有機化合物とを含む液体に分散し、かつ、脱アシル化剤であるアルカリは、水に含まれている。そのため、ネイティブジェランガムを構成する高分子のうち、水に膨潤した部分でのみアシル基を脱離する反応が進む。それゆえに、実施例2の部分脱アシル化ジェランガムでは、直鎖状の糖鎖に対する複数のアシル基の分布が、偏りを有することが推察される。
また、実施例2の部分脱アシル化ジェランガムでは、アシル基の分布における偏り、言い換えれば不均一さが、測定用試料の物性において、比較例2の部分脱アシル化ジェランガムとの間に差を生じさせる程度に顕著であることが推察される。
言い換えれば、実施例2の部分脱アシル化ジェランガムにおいて、部分脱アシル化ジェランガムを含むゲルにおける速度定数Kが、0.24min−1よりも大きく、かつ、0.38min−1以下であるように、複数のアシル基が糖鎖に対して分布している。
このように、実施例2の部分脱アシル化ジェランガムと、比較例2の部分脱アシル化ジェランガムとは互いに異なる構造を有し、実施例2の部分脱アシル化ジェランガムと、比較例2の部分脱アシル化ジェランガムとの間において、特に、糖鎖に対する複数のアシル基の分布の仕方が異なることが推察される。
[破断応力および破断距離]
実施例1,2および比較例1から4の各々における上述した測定用試料を用いて、破断強度および破断距離を測定した。
実施例1,2および比較例1から4の各々における上述した測定用試料を用いて、破断強度および破断距離を測定した。
口径が45mmであり、高さが75mmである中空の円柱形状を有した容器を準備し、各測定用試料を加熱して容器に流し込んだ。その後、容器を20℃の恒温水槽内で冷却し、測定用ゲルを得た。
レオメーター(CR−500DX、(株)サン科学製)を用いて、測定用ゲルに対する圧縮試験を行った。圧縮試験には、直径が10mmである円柱状を有したプランジャーを用い、測定用ゲルに対するプランジャーの進入速度を60mm/分に設定した。そして、測定用ゲルが破断したときの破断応力(N)と破断距離(mm)とを測定した。
表4が示すように、実施例1の測定用ゲルにおける破断応力は3.3Nであり、実施例2の測定用ゲルにおける破断応力は9.9Nであることが認められた。比較例1の測定用ゲルにおける破断強度は3.8Nであり、比較例2の測定用ゲルにおける破断応力は5.3Nであり、比較例3の測定用ゲルにおける破断応力は2.3Nであり、比較例4の測定用ゲルにおける破断応力は20.9Nであることが認められた。
また、実施例1の測定用ゲルにおける破断距離は4.2mmであり、実施例2の測定用ゲルにおける破断距離は2.9mmであることが認められた。比較例1の測定用ゲルにおける破断距離は4.3mmであり、比較例2の測定用ゲルにおける破断距離は4.0mmであり、比較例3の測定用ゲルにおける破断距離は17.0mmであり、比較例4の測定用ゲルにおける破断距離は3.0mmであることが認められた。
このように、実施例2の測定用ゲルと、比較例2の測定用ゲルとの間では、破断応力と破断距離との両方が大きく異なっている。そして、破断応力と破断距離とにおける値の差も、実施例2の部分脱アシル化ジェランガムにおけるアシル基の分布の仕方と、比較例2の部分脱アシル化ジェランガムにおけるアシル基の分布の仕方とが互いに異なることを示唆するものであると推察される。
[NMR測定]
[測定方法]
重水と、重水の質量に対する1%の実施例2および比較例2の各々の部分脱アシル化ジェランガム、比較例3のネイティブジェランガム、または、比較例4のジェランガムとを混合して溶液を生成した。そして、溶液を40℃の恒温槽に一晩静置した後、溶液を加熱し、溶液の温度が90℃に達した時点から10分間にわたって、溶液の温度を90℃に保ちつつ、溶液を攪拌した。これにより、NMR用のサンプルを得た。
[測定方法]
重水と、重水の質量に対する1%の実施例2および比較例2の各々の部分脱アシル化ジェランガム、比較例3のネイティブジェランガム、または、比較例4のジェランガムとを混合して溶液を生成した。そして、溶液を40℃の恒温槽に一晩静置した後、溶液を加熱し、溶液の温度が90℃に達した時点から10分間にわたって、溶液の温度を90℃に保ちつつ、溶液を攪拌した。これにより、NMR用のサンプルを得た。
サンプルの分析には、600MHzのNMR装置(Bruker Biospin (株)製)を用いた。このとき、エコー回数nを2回、4回、8回、16回、30回、50回、80回、および、120回とし、エコー間隔τを0.002msとした。
すなわち、エコー時間が0.004ms、0.008ms、0.016ms、0.032ms、0.06ms、0.1ms、0.16ms、および、0.24msであるときの信号をそれぞれ測定した。なお、各サンプルの温度を95℃から35℃まで10℃ずつ下げながら、各温度において各サンプルからの信号を測定した。
[エコー時間とメチル基のピーク強度との関係]
実施例2と比較例2とにおいて、サンプルの温度が55℃、45℃、および、35℃の各々であるときの信号に基づき、メチル基のピーク強度、すなわち、メチル基のピークの面積を算出した。
実施例2と比較例2とにおいて、サンプルの温度が55℃、45℃、および、35℃の各々であるときの信号に基づき、メチル基のピーク強度、すなわち、メチル基のピークの面積を算出した。
図9が示すように、実施例2では、サンプルの温度が35℃、45℃、および、55℃のいずれであっても、エコー時間が長くなるほど、エコー時間の経過に対してピーク強度が低下する度合いが小さくなることが認められた。
これに対して、比較例2では、サンプルの温度が35℃、45℃、および、55℃のいずれであっても、エコー時間にかかわらず、エコー時間の経過に対してピーク強度の低下する度合いがほぼ一定であることが認められた。
サンプルの温度に関わらず、エコー時間が0.004msから0.016msの間は、実施例2と比較例2とにおいて、サンプルの中での分子の自由度が同程度であるため、実施例2と比較例2におけるメチル基のピーク強度がほぼ等しいと考えられる。
一方で、エコー時間が0.06ms以降は、実施例2では、ピーク強度の低下する度合いが小さくなることから、実施例2のピーク強度は、0.24msにおけるピーク強度程度で飽和することが示唆される。これに対して、比較例2では、ピーク強度の低下する度合いがほぼ一定であることから、比較例2のピーク強度は、0.24msにおけるピーク強度よりもさらに小さくなることが示唆される。
このように、実施例2では、比較例2に比べてメチル基のピーク強度が高く保たれる。そのため、実施例2の部分脱アシル化ジェランガムは、比較例2の部分脱アシル化ジェランガムに比べて、より自由度の高い分子構造を有していると推察される。
ここで、上述したように、実施例2の部分脱アシル化ジェランガムでは、糖鎖に対して不均一に複数のアシル基が分布する一方で、比較例2の部分脱アシル化ジェランガムでは、糖鎖に対して均一に複数のアシル基が分布していると仮定する。この場合には、比較例2の部分脱アシル化ジェランガムでは、高分子のほぼ全体においてアシル基による分子間の相互作用が生じて、各高分子の分子構造がほぼ定まる。これに対して、実施例2の部分脱アシル化ジェランガムでは、高分子の一部においてアシル基による分子間の相互作用が生じる一方で、残りの部分では分子間の相互作用が生じにくい。このように、実施例2の部分脱アシル化ジェランガムは、他の高分子との相互作用が生じにくい部分を有する分だけ、比較例2の部分脱アシル化ジェランガムよりもより自由度の高い構造であると推察される。
つまり、実施例2と比較例2とにおける上述した測定結果からも、実施例2の部分脱アシル化ジェランガムでは、糖鎖に対して不均一に分布していることが支持される。
[エコー時間が0msであるときのピーク強度と温度との関係]
図10から図13に、エコー時間が0msであるときのメチル基のピーク強度と、各サンプルの温度との関係を示す。
図10から図13に、エコー時間が0msであるときのメチル基のピーク強度と、各サンプルの温度との関係を示す。
実施例2、および、比較例2から4の各々において、ピーク強度の急激な変化は、実施例2、および、比較例2から4の各々のサンプルにおいて物性が変わり始めたこと、すなわち、液体状のサンプルがゲル化し始めたことを示している。そのため、サンプルが液体状である、すなわち定常状態である各温度におけるピーク強度から得られた近似直線と、サンプルが液体状からゲル状に遷移している、すなわち遷移状態である各温度におけるピーク強度から得られた近似直線との交点が、ゲル化の開始温度であるとみなすことができる。
図10が示すように、実施例2では、95℃から55℃の間において、サンプルが定常状態である一方で、45℃から35℃において、サンプルが遷移状態であることが認められた。そして、定常状態における近似直線である第1直線として、以下の式(2)が算出され、遷移状態における近似直線である第2直線として、以下の式(3)が算出された。
y=−0.08x+118.6 … 式(2)
y=8.3x−257.5 … 式(3)
これらの近似直線から、実施例2におけるゲル化の開始温度を算出したところ、ゲル化の開始温度は44.8℃であった。
y=8.3x−257.5 … 式(3)
これらの近似直線から、実施例2におけるゲル化の開始温度を算出したところ、ゲル化の開始温度は44.8℃であった。
図11が示すように、比較例2では、95℃から65℃の間において、サンプルが定常状態である一方で、55℃から35℃において、サンプルが遷移状態であることが認められた。そして、第1直線として以下の式(4)が算出され、第2直線として以下の式(5)が算出された。
y=−0.04x+115.2 … 式(4)
y=3.6x−79.333 … 式(5)
これらの近似直線から、比較例2におけるゲル化の開始温度を算出したところ、ゲル化の開始温度は53.4℃であった。
y=3.6x−79.333 … 式(5)
これらの近似直線から、比較例2におけるゲル化の開始温度を算出したところ、ゲル化の開始温度は53.4℃であった。
図12が示すように、比較例3では、95℃から85℃において、サンプルが定常状態であり、75℃から55℃において、サンプルが遷移状態であり、45℃から35℃において、サンプルが再び定常状態であることが認められた。そして、遷移状態よりも高温であるときの定常状態における近似直線である第1直線として、以下の式(6)が算出され、遷移状態における近似直線である第2直線として、以下の式(7)が算出された。また、遷移状態よりも低温であるときの定常状態における近似直線である第3直線として、以下の式(8)が算出された。
y=0.5x+63.5 … 式(6)
y=3.5x−181.5 … 式(7)
y=−0.2x+18 … 式(8)
これらの近似直線から、比較例3におけるゲル化の開始温度を算出したところ、ゲル化の開始温度は81.7℃であった。
y=3.5x−181.5 … 式(7)
y=−0.2x+18 … 式(8)
これらの近似直線から、比較例3におけるゲル化の開始温度を算出したところ、ゲル化の開始温度は81.7℃であった。
図13が示すように、比較例4では、95℃から55℃において、サンプルが定常状態であり、45℃から35℃において、サンプルが遷移状態であることが認められた。そして、第1直線として以下の式(9)が算出され、第2直線として以下の式(10)が算出された。
y=−0.22x+133.9 … 式(9)
y=6.3x−155.5 … 式(10)
これらの近似直線から、比較例4におけるゲル化の開始温度を算出したところ、ゲル化の開始温度は44.5℃であった。
y=6.3x−155.5 … 式(10)
これらの近似直線から、比較例4におけるゲル化の開始温度を算出したところ、ゲル化の開始温度は44.5℃であった。
[横緩和時間T2]
実施例2、および、比較例2から4の各々のサンプルにおいて、上述した条件にて測定したメチル基のピーク強度に基づき、各温度における横緩和時間T2を算出した。横緩和時間T2は、時間に対するメチル基のピーク強度の変化として、最小二乗法を用いて算出した。なお、ピーク強度の値として、各メチル基のピークにおける積分値、すなわちピークの面積を用いた。
実施例2、および、比較例2から4の各々のサンプルにおいて、上述した条件にて測定したメチル基のピーク強度に基づき、各温度における横緩和時間T2を算出した。横緩和時間T2は、時間に対するメチル基のピーク強度の変化として、最小二乗法を用いて算出した。なお、ピーク強度の値として、各メチル基のピークにおける積分値、すなわちピークの面積を用いた。
[横緩和率1/T2における標準偏差]
実施例2、および、比較例2から4の各々のサンプルにおいて、上述した条件にて測定したメチル基のピーク強度に基づき、各温度における横緩和率1/T2を算出した。横緩和率は1/T2は、縦軸をメチル基のピーク強度とし横軸を時間としたときに得られる減衰曲線において、互いに隣り合うエコー時間での測定値における減衰曲線の傾き、すなわち減衰率である。そして、各温度において、複数の減衰率の中で標準偏差を算出した。
実施例2、および、比較例2から4の各々のサンプルにおいて、上述した条件にて測定したメチル基のピーク強度に基づき、各温度における横緩和率1/T2を算出した。横緩和率は1/T2は、縦軸をメチル基のピーク強度とし横軸を時間としたときに得られる減衰曲線において、互いに隣り合うエコー時間での測定値における減衰曲線の傾き、すなわち減衰率である。そして、各温度において、複数の減衰率の中で標準偏差を算出した。
横緩和率1/T2は、試料が励起された状態におけるエネルギー準位に相関を有する値である。そのため、横緩和率1/T2における標準偏差の幅が小さいほど、試料の分子内における構造の均一性、および、分子間における構造の均一性が高く、横緩和率1/T2における標準偏差の幅が大きいほど、試料の分子内における構造の不均一性、および、分子間における構造の不均一性が高い。
実施例2、および、比較例2から4の各々において、ゲル化の開始温度と、各ゲル化の開始温度よりも10℃だけ低い温度とによって定められる温度範囲が比較範囲である。なお、ゲル化の開始温度は、上述したように、NMR測定において、エコー時間が0msであるときのメチル基におけるピークの強度から得られる温度である。また、実施例2、および、比較例2から4の各々において、比較範囲に含まれる温度が比較温度であり、比較温度での横緩和率における標準偏差が、比較標準偏差である。
実施例2におけるゲル化の開始温度は44.8℃であり、比較範囲は、34.8℃以上44.8℃以下であり、比較温度は35℃である。実施例2において、比較温度における横緩和時間T2は、31.007であり、比較標準偏差は、±13.3である。
比較例2におけるゲル化の開始温度は53.4℃であり、比較範囲は、43.4℃以上53.4℃以下であり、比較温度は45℃である。比較例2において、比較温度における横緩和時間T2は、32.108であり、比較標準偏差は、±10.9である。
比較例3におけるゲル化の開始温度は81.7℃であり、比較範囲は、71.7℃以上81.7℃以下であり、比較温度は75℃である。比較例3において、比較温度における横緩和時間T2は、53.673であり、比較標準偏差は、±8.1である。
比較例4におけるゲル化の開始温度は44.5℃であり、比較範囲は、34.5℃以上44.5℃以下であり、比較温度は35℃である。比較例4において、比較温度における横緩和時間T2は、30.673であり、比較標準偏差は、±12.2である。
実施例2の部分脱アシル化ジェランガムは、ネイティブジェランガムから複数のアシル基の一部が脱離している一方で、主鎖の構造はネイティブジェランガムとは変わらない。そのため、実施例2の部分脱アシル化ジェランガムにおける比較標準偏差は、複数のアシル基が、糖鎖に対して不規則に分布していること、すなわち、ネイティブジェランガムから複数のアシル基の一部が不均一に脱離したことを示唆していると考えられる。
また、実施例2の部分脱アシル化ジェランガムにおける比較標準偏差は、比較例2の部分脱アシル化ジェランガムにおける比較標準偏差よりも大きい。こうした結果は、比較例2の部分脱アシル化ジェランガムでは、糖鎖に対して複数のアシル基がより均一性の高い状態で分布している一方で、実施例2の部分脱アシル化ジェランガムでは、糖鎖に対して複数のアシル基がより不均一な状態で分布していることを示唆していると考えられる。言い換えれば、実施例2の部分脱アシル化ジェランガムと、比較例2の部分脱アシル化ジェランガムとの間では、アシル化度が互いにほぼ等しい一方で、分子構造は互いに異なっていることが示唆される。
以上説明したように、部分脱アシル化ジェランガムの1つの実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)体積基準のメジアン径が250μm以下であるため、部分脱アシル化ジェランガムの溶解性が高まる。
(1)体積基準のメジアン径が250μm以下であるため、部分脱アシル化ジェランガムの溶解性が高まる。
(2)明度指数Lが80以上95以下であるため、明度指数Lがより低い構成と比べて、部分脱アシル化ジェランガムを含むゲルを生成したときに、ゲルにおける明度が高まる。
(3)知覚色度指数bが5以上16以下であるため、部分脱アシル化ジェランガムが黄色系あるいは青色系に偏った色を有しないため、部分脱アシル化ジェランガムを用いたゲルに対して、所望とする色が着色されやすくなる。
(4)動的粘弾性の速度定数が0.24min−1以下である構成と比べて、部分脱アシル化ジェランガムを含む水溶液のゲル化が開始してから終了するまでに要する時間が短くなる。
(5)部分脱アシル化ジェランガム(A)は、部分脱アシル化ジェランガム(B)と比べて、自由度の高い構造を有することが推定される。これにより、部分脱アシル化ジェランガム(A)の分子内におけるアシル基の分布が、部分脱アシル化ジェランガム(B)に比べて、不規則であることが推定される。
Claims (5)
- 直鎖状の糖鎖と、
前記糖鎖に結合する複数のアシル基と、を含む部分脱アシル化ジェランガムであって、
前記部分脱アシル化ジェランガムに対するNMR測定において、メチル基のピーク強度に対するアシル基のピーク強度の比をアシル化度とし、
前記アシル化度が、0.03以上0.10以下であり、
体積基準のメジアン径が250μm以下である
部分脱アシル化ジェランガム。 - CIELAB表色系における明度指数Lが、80以上95以下である
請求項1に記載の部分脱アシル化ジェランガム。 - CIELAB表色系における知覚色度指数bが、5以上16以下である
請求項1または2に記載の部分脱アシル化ジェランガム。 - ネイティブジェランガムを含むゲルにおける動的粘弾性の速度定数が0.06min−1であり、
前記部分脱アシル化ジェランガムを含むゲルにおける前記速度定数が0.25min−1以上0.55min−1以下であるように、前記複数のアシル基が前記糖鎖に対して分布している
請求項1から3のいずれか一項に記載の部分脱アシル化ジェランガム。 - 前記部分脱アシル化ジェランガムは、水を含む有機化合物中にて脱アシル化された部分脱アシル化ジェランガム(A)であり、
ネイティブジェランガム水溶液中での脱アシル化によって生成されるとともに、前記アシル化度が、前記部分脱アシル化ジェランガム(A)の前記アシル化度にほぼ等しい部分脱アシル化ジェランガムが部分脱アシル化ジェランガム(B)であり、
NMR測定から推定されるゲル化の開始温度と、前記ゲル化の開始温度よりも10℃だけ低い温度とによって定められる温度の範囲が比較範囲であり、
前記NMR測定の結果から算出された横緩和率における標準偏差のうち、前記比較範囲に含まれる温度における前記標準偏差が比較標準偏差であり、
前記部分脱アシル化ジェランガム(A)における前記比較標準偏差は、前記部分脱アシル化ジェランガム(B)における前記比較標準偏差よりも大きい
請求項1から4のいずれか一項に記載の部分脱アシル化ジェランガム。
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