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JP2017155112A - 近赤外線吸収性粘着剤組成物とその製造方法、および、近赤外線吸収性粘着フィルム - Google Patents

近赤外線吸収性粘着剤組成物とその製造方法、および、近赤外線吸収性粘着フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】近赤外領域の光の透過率が低い複合タングステン酸化物微粒子を、アクリル樹脂粘着剤中へ分散させる方法を提供し、さらに、当該複合タングステン酸化物微粒子が当該アクリル樹脂粘着剤中へ分散している近赤外線吸収性粘着剤組成物、当該近赤外線吸収性粘着剤組成物が、基材フィルム上に形成されていることを特徴とする近赤外線吸収性粘着フィルムを提供する。【解決手段】(メタ)アクリル重合体と、架橋剤と、複合タングステン酸化物微粒子と、分散剤とを含む近赤外線吸収性粘着剤組成物であって、前記複合タングステン酸化物微粒子が六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子であり、前記近赤外線吸収性粘着組成物が、層状珪酸塩を含有し、前記分散剤がポリアミノアマイド塩を含み、前記(メタ)アクリル重合体100重量部に対し、前記架橋剤が0.1重量部以上5重量部以下含まれ、前記複合タングステン酸化物微粒子100重量部に対し、前記層状珪酸塩が30重量部以上200重量部以下含まれていることを特徴とする近赤外線吸収性粘着剤組成物を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、複合タングステン酸化物微粒子をアクリル樹脂粘着剤に分散させた近赤外線吸収性粘着剤組成物とその製造方法、および、当該近赤外線吸収性粘着剤組成物を用いた近赤外線吸収性粘着フィルムに関する。
従来、太陽光などからの熱成分を除去・減少させる方法として、樹脂フィルムやガラス表面に可視・赤外域の波長を反射する金属酸化物や金属薄膜を形成することが行なわれていた。
例えば、特許文献1には、アンチモン含有酸化錫(ATO)や錫含有酸化インジウム(ITO)の微粒子を粘着剤中に分散させた、熱線遮蔽性粘着剤や透明シートが提案されている。特許文献2には、6ホウ化物微粒子をハードコート層中に分散させた日射遮蔽膜が提案されている。特許文献3には、ATOやITO微粒子と6ホウ化物微粒子とを併用し、ハードコート層中にこれらの微粒子を分散させた日射遮蔽膜が提案されている。特許文献4には、複合タングステン酸化物微粒子をハードコート層中に分散させた日射遮蔽膜が提案されている。また、特許文献5には、複合タングステン酸化物微粒子が溶媒中に分散された分散液により構成され、かつ、皮膜形成用材料である未硬化のアクリル樹脂が使用時に添加される赤外線遮蔽膜形成用分散液であって、粘土鉱物が上記溶媒中に含まれている赤外線遮蔽膜形成用分散液が開示されている。
特開平10−8010号公報 特開2000−96034号公報 特開2000−169765号公報 WO2005−037932号公報 特開2010−019974号公報
従来、太陽光などからの熱成分を除去・減少させるために用いられる薄膜タイプとして、代表的な無機系材料であるFeO、CoO、CrO、TiO、等の金属酸化物や、Ag、Au、Cu、Ni、Al等の金属材料が用いられていた。
一方、樹脂フィルムタイプとしては、有機系の近赤外線遮蔽剤を樹脂バインダー中に添加した物が使用されていた。ここで、有機系の近赤外線吸収剤としては、フタロシアニン系化合物や各種金属錯体化合物がよく知られている。
しかし、本発明者らの検討によると、上述した従来の無機材料系薄膜タイプは、太陽光線において熱効果に大きく寄与する近赤外線以外に、可視光領域の光も同時に反射もしくは吸収する性質がある。この為、鏡のようなギラギラした外観となって美観を損ねたり、可視光透過率が低下してしまう欠点があった。
住宅、ビル、乗り物などの窓部に用いられる透明基材に、これらの無機材料系薄膜タイプを使用する場合は、高い可視光透過率が必要とされるため、これら無機材料系薄膜の膜厚を非常に薄くする操作が必要であった。従って、スプレー焼き付け法やCVD法、あるいはスパッタ法や真空蒸着法などの物理成膜法を用いて、厚さ10nm程度の極めて薄い無機材料系薄膜を成膜しなければならなかった。このため、大がかりな装置や真空設備を必要とし、生産性、大面積化課題があり、さらに膜の製造コストが高いという欠点があった。
さらに、これらの無機材料系薄膜においては膜の導電性が高くなるものが多い。このため、携帯電話やTV受信、車内にアンテナを搭載したカーナビゲーションシステムの電波等を反射して受信不能となったり、周辺地域に電波障害を引き起こすなどの欠点があった。
一方、上述した従来の有機系の近赤外線遮蔽剤は、無機系の材料に比べて熱や湿度による劣化が著しいという、耐候性において致命的な欠陥がある。また、可視光透過率を高くしようと、有機系の近赤外線遮蔽剤の含有量を削減すると日射遮蔽特性が低下する。そこで、日射遮蔽特性を高くしようと、有機系の近赤外線遮蔽剤の含有量を増加すると可視光透過率が低下してしまうという課題があった。
ここで、可視光透過率が高く、かつ日射遮蔽機能を持つ無機材料としてはアンチモン含有酸化錫(ATO)や、錫含有酸化インジウム(ITO)が知られている。そして特許文献1においては、粘着剤へこれらの微粒子を分散させる技術が提案されている。しかし、これらの微粒子は単位重量あたりの日射遮蔽力が低い為、日射遮蔽効果を出現させるためには大量添加が必要となる。この為、これらの微粒子を用いた膜は非常に高価であった。また、これらの微粒子の吸収波長領域は比較的長波長側にあり、可視光に近い近赤外領域におけるこれらの膜の反射・吸収効果は十分ではなかった。
これに対し、可視光領域の光の透過率が高く、近赤外領域の光の透過率が低い材料として、6ホウ化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子が知られている。特許文献2には、ハードコート層中に6ホウ化物微粒子や複合タングステン酸化物微粒子を分散させた日射遮蔽膜に係る技術が提案されている。特許文献3では、6ホウ化物をATOやITOと併用し、ハードコート層中にこれらの微粒子を分散させた日射遮蔽膜を得る技術が提案されている。また、特許文献4には、タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子などの赤外線遮蔽材料微粒子をハードコート層中に分散させ日射遮蔽膜を得る技術が提案されている。
しかしながら、特許文献2〜4に記載の発明は、いずれも、紫外線硬化樹脂などを用いて形成されたハードコート層中に日射遮蔽成分を分散させた物であり、ハードコートを必要としないフィルムや、既にハードコートを施されているフィルムに日射遮蔽機能を付与することは困難であった。この課題に対して、基材フィルム上に、可視光領域で高い透明性を有するとともに優れた日射遮蔽特性を有する近赤外線吸収性層を形成した近赤外線吸収性樹脂フィルムであって、曲面ガラスに貼付しても剥がれが生じにくく、かつ耐擦傷性にも優れ、建物や車輌の窓ガラスに簡便な方法で貼付することができる近赤外線吸収性樹脂フィルムはいまだ提供されていなかった。
本発明は上述の状況の下で為されたもので、その解決しようとする課題は、近赤外領域の光の透過率が低い複合タングステン酸化物微粒子を含有する、可視光領域で高い透明性を有するとともに優れた日射遮蔽特性を有する近赤外線吸収性層を形成した近赤外線吸収性樹脂フィルムであって、曲面にガラス貼付しても剥がれが生じにくく、かつ耐擦傷性にも優れ、建物や車輌の窓ガラスに簡便な方法で貼付することができる近赤外線吸収性樹脂フィルムを提供することであり、さらには、上記近赤外線吸収性層を、(メタ)アクリル重合体、好ましくは架橋性を有する反応性官能基として水酸基および/またはカルボキシル基を有するアクリル重合体を主成分とする樹脂粘着剤へ、上記赤外線遮蔽材料微粒子を分散させた近赤外線吸収性粘着剤組成物を得て、当該近赤外線吸収性粘着剤組成物が、基材フィルム上に形成されていることを特徴とする近赤外線吸収性粘着フィルムを提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成するために研究を続け、曲面ガラスに貼付しても剥がれが生じにくく、かつ耐擦傷性にも優れ、建物や車輌の窓ガラスに貼付するのに好適であって、可視光領域の光の透過率が高く、近赤外領域の光の透過率が低い日射遮蔽フィルムを簡便に得ることが出来る方法として、基材フィルム上に、粘着剤に日射遮蔽成分として複合タングステン酸化物微粒子を分散させた粘着剤組成物を塗布した塗布粘着層を形成する構成に想到した。
さらに、上記粘着剤に日射遮蔽成分として複合タングステン酸化物微粒子を分散させた粘着剤組成物を塗布した塗布粘着層として、近赤外線吸収材料である複合タングステン酸化物微粒子をアクリル樹脂粘着剤中に分散させる際、分散剤としてポリアミノアマイド塩を含む分散剤と、分散助剤として層状珪酸塩を含有させることで、複合タングステン酸化物微粒子をアクリル樹脂粘着剤中に均一に分散させることが出来るという画期的な知見を得た。そして、近赤外線領域の光をより効率良く吸収しヘイズ値の低い近赤外線吸収性粘着剤組成物、当該近赤外線吸収性粘着剤組成物が、基材フィルム上に形成されている近赤外線吸収性粘着フィルムを得ることが出来、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
(メタ)アクリル重合体と、架橋剤と、複合タングステン酸化物微粒子と、分散剤とを含む近赤外線吸収性粘着剤組成物であって、
前記複合タングステン酸化物微粒子が六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子であり、
前記近赤外線吸収性粘着組成物が、層状珪酸塩を含有し、
前記分散剤がポリアミノアマイド塩を含み、
前記(メタ)アクリル重合体100重量部に対し、前記架橋剤が0.1重量部以上5重量部以下含まれ、
前記複合タングステン酸化物微粒子100重量部に対し、前記層状珪酸塩が30重量部以上200重量部以下含まれていることを特徴とする近赤外線吸収性粘着剤組成物である。
第2の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子の粒子径が1nm以上800nm以下であることを特徴とする近赤外線吸収性粘着剤組成物である。
第3の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子が、一般式MWO(M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snの内から選択される1種類以上の元素、0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0)であることを特徴とする近赤外線吸収性粘着剤組成物である。
第4の発明は、
前記M元素が、Cs、Rb、K、Tlから選択される1種類以上であることを特徴とする近赤外線吸収性粘着剤組成物である。
第5の発明は、
前記(メタ)アクリル重合体が、反応性官能基として水酸基および/またはカルボキシル基を含有することを特徴とする近赤外線吸収性粘着剤組成物である。
第6の発明は、
前記架橋剤が、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物から選択される1種類以上であることを特徴とする近赤外線吸収性粘着剤組成物である。
第7の発明は、
前記(メタ)アクリル重合体100重量部に対し、前記複合タングステン酸化物微粒子が0.5重量部以上30重量部以下含まれていることを特徴とする近赤外線吸収性粘着剤組成物である。
第8の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子の表面が、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムから選択される1種以上を含む化合物で被覆されていることを特徴とする近赤外線吸収性粘着剤組成物である。
第9の発明は、
さらに、紫外線吸収剤を含有することを特徴とする近赤外線吸収性粘着剤組成物である。
第10の発明は、
第1から第9の発明のいずれかに記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物の塗布膜が、基材フィルム上に形成されていることを特徴とする近赤外線吸収性粘着フィルムである。
第11の発明は、
所定量の複合タングステン酸化物微粒子と分散剤と分散媒とを混合して、複合タングステン酸化物微粒子分散液を作製する工程と、
前記複合タングステン酸化物微粒子分散液へ、分散助剤を添加して混合し、混合物を作製する工程と、
前記混合物へ、アクリル樹脂粘着剤と架橋剤とを添加して混合し、近赤外線吸収性粘着剤組成物を作製する工程とを、有することを特徴とする近赤外線吸収性粘着剤組成物の製造方法である。
本発明の近赤外線吸収性粘着剤組成物は、高い透明性と優れた日射遮蔽特性を有する。また、当該近赤外線吸収性粘着剤組成物より得られる粘着剤層や近赤外線吸収性粘着フィルムを、簡便な方法で車両やビル等の窓ガラスに使用することによって夏場の冷房負荷を低減する効果があり、省エネルギーにも役立ち、環境的にも有用性が高い。
本発明に係る近赤外線吸収性粘着剤組成物は、複合タングステン酸化物微粒子をアクリル樹脂粘着剤に均一に含有させて作製されたものである。
以下、本発明を実施するための形態に関し、まず、本発明に係る近赤外線吸収性粘着剤組成物の成分について、[1]複合タングステン酸化物微粒子、[2]アクリル樹脂粘着剤、[3]分散剤、[4]分散助剤としての層状珪酸塩、[5]分散媒、[6]紫外線吸収剤、[7]粘着付与剤、[8]その他の添加剤、の順で詳細に説明する。そして、次に、[9]近赤外線吸収性粘着剤組成物の製造、[10]近赤外線吸収性粘着フィルムの製造、[11]まとめ、の順で詳細に説明する。
[1]複合タングステン酸化物微粒子
本発明に適用される日射遮蔽機能を有する微粒子として、一般式MWO(M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snの内から選択される1種類以上の元素、0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0、さらに好ましくは0.01≦Y≦0.5、2.45≦Z≦3.0)で示され、且つ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子が用いられる。
さらに好ましくは、M元素がCs、Rb、K、Tlから選択される1種類以上を含むような複合タングステン酸化物微粒子が挙げられる。添加元素Mの添加量は、0.1以上0.5以下が好ましく、さらには0.33付近が好ましい。これは六方晶の結晶構造から理論的に算出される値が0.33であり、この前後の添加量で好ましい光学特性が得られるからである。典型的な例としてはCs0.33WO、Rb0.33WO、K0.33WOなどを挙げることができるが、Y、Zが上記の範囲に収まるものであれば、有用な熱線吸収特性を得ることができる。
一般に、自由電子を含む材料は、プラズマ振動によって波長200nmから2600nmの太陽光線の領域周辺にある電磁波に反射吸収応答を示すことが知られている。このような材料の粉末を光の波長より小さい微粒子とすると、可視光領域(波長380nmから780nm)の幾何学散乱が低減されて可視光領域の透明性が得られる。
一般に、3酸化タングステン(WO)中には有効な自由電子が存在しないため、近赤外領域の吸収反射特性が少なく、赤外線遮蔽材料としては有効ではない。一方、酸素欠損を持つ3酸化タングステンや、3酸化タングステンにNa等の陽性元素を添加したいわゆるタングステンブロンズは、導電性材料であり、自由電子を持つ材料である。さらに、これら材料の単結晶等を分析した結果からも、赤外線領域の光に対する自由電子の応答が示唆されている。
本発明者等は、酸素欠損を持つ3酸化タングステンやタングステンブロンズにおいて、タングステンと酸素との組成範囲が特定範囲にあるとき、赤外線遮蔽材料として特に有効なものとなることを見出した。
以上、説明した本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子は、粘着剤に適用された場合、熱線吸収成分として有効に機能する。
ここで、意匠性を考慮すると、透明性を保持したまま近赤外線の効率良い遮蔽を行なうことが必要となる。本発明に係る、複合タングステン酸化物微粒子を含有する熱線吸収成分は近赤外領域、特に波長900〜2200nm付近の光を大きく吸収するため、その透過色調は青色系から緑色系となる物が多い。そして、当該微粒子の粒子径が800nmよりも小さい場合、当該微粒子が光を遮蔽せず、可視光領域の透明性を保持したまま効率良く近赤外線を遮蔽することが可能となる。
従って、特に可視光領域の透明性を重視する場合には、微粒子の粒子径は200nm以下がよく、さらに好ましくは100nm以下がよい。微粒子の粒子径が小さければ、幾何学散乱もしくは回折散乱によって、波長400〜780nmの可視光領域の光を散乱して曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が担保出来なくなる事態を回避出来るからである。
これは、微粒子の粒子径が200nm以下になると、上述した散乱が低減して、ミー散乱もしくはレイリー散乱領域になる為である。特に、微粒子の粒子径がレイリー散乱領域まで減少すると、散乱光は分散粒子径の6乗に反比例して低減するため、粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上する。更に粒子径が100nm以下になると散乱光は非常に少なくなり好ましい。
光の散乱を回避する観点からは、粒子径が小さい方が好ましく、粒子径が1nm以上であれば工業的な製造は容易である。
以上説明したように、複合タングステン酸化物微粒子の粒子径を800nm以下とすることにより、赤外線遮蔽材料微粒子分散体の可視光透過率を85%以上、ヘイズ値を30%以下とすることが出来る。ヘイズ値が30%以下であれば、鮮明な透明性を得ることが出来る。
更に、耐候性を向上させるために、複合タングステン酸化物微粒子の表面がケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムから選択される1種類以上を含む化合物で被覆されていてもよい。これらの化合物は基本的に透明であり、添加したことで可視光透過率を低下させることがないため、意匠性を損なうことがない。また、これらの化合物は酸化物であることが好ましい。
また、複合タングステン酸化物微粒子の単位重量あたりの熱線吸収能力は非常に高く、ITOやATOと比較して、4分の1〜10分の1程度の使用量でその効果を発揮する。詳しくは、本発明に係る近赤外線吸収性粘着剤組成物における、複合タングステン酸化物微粒子の含有量は、(メタ)アクリル重合体(固形成分)100重量部に対して、0.5〜30重量部の間で使用されることが好ましく、1〜20重量部の間で使用されることが更に好ましい。0.5重量部以上の使用量で十分な日射遮蔽効果を得ることが出来、30重量部以下であればアクリル樹脂粘着剤の粘着力が担保出来好ましい。
[2]アクリル樹脂粘着剤
本発明に係る近赤外線吸収性粘着剤組成物に用いる粘着剤としては、再剥離性があり、剥離時に糊残りが無いこと、高温、高湿下で剥がれや泡の発生がないことが望まれる。このような特性を有する粘着剤としては、アクリル樹脂を含むもの、ゴムを含むもの、ポリビニルエーテル樹脂を含むもの、シリコーン樹脂を含むもの、等を挙げることが出来るが、最も好ましいのはアクリル樹脂を含むものである。
アクリル樹脂粘着剤(本発明において「粘着樹脂」または「PSA(Pressure Sensitive Adhesive)」と記載する場合がある。)は、(メタ)アクリル重合体を主たる構成成分とするものであり、主成分たるアクリル重合体と反応する架橋剤をさらに使用することが好ましい。
アクリル樹脂粘着剤の主成分であるアクリル重合体は、種々のアクリルモノマーをラジカル重合して得られる。本発明に用いられる、アクリル重合体は、架橋剤と反応する反応性官能基とアルキレンオキサイド鎖を有するものであり、反応性官能基を有するアクリルモノマーとアルキレンオキサイド鎖を有するアクリルモノマーから合成することができる。当該反応性官能基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、マレイミド基、イタコンイミド基、スキシンイミド基、エポキシ基、等が挙げられるが、本発明では、水酸基および/またはカルボキシル基が好ましい。
尚、水酸基を反応性官能基に多く有する粘着樹脂は、一般的に「水酸基タイプ」と呼ばれる。当該水酸基タイプは、粘着性がカルボキシル基を有する粘着樹脂より低いため、リワーク性に富む。一方、酸基を反応性官能基として多く有する粘着樹脂は「酸基タイプ」と呼ばれ、高粘着性能を有する。
以上のことから、当該粘着樹脂の使用用途に応じて、適宜「水酸基タイプ」または「酸基タイプ」のアクリル樹脂が選択されている。
「水酸基タイプ」のアクリルモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。本発明では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
「酸基タイプ」のアクリルモノマーとしては、カルボキシル基を有するアクリルモノマーとして(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、無水フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸ブチル等が挙げられる。本発明では、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレートが好ましい。
本発明に用いるアルキレンオキサイド鎖を有するアクリルモノマーとしては、エチレンオキサイド鎖を有するモノマー、プロピレンオキサイド鎖を有するモノマー、およびその両者を有するモノマーが挙げられる。
エチレンオキサイド鎖を有するモノマーとしては、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。プロピレンオキサイド鎖を有するモノマーとしては、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等を挙げることができる。本発明では、エチレンオキサイド鎖を有するモノマーが好ましく、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが特に好ましい。
本発明に用いられる、上述したアクリルモノマーと共重合可能なモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ヘンイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。
本発明においては粘着物性を確保するという観点から、炭素数が4〜12のアクリルモノマーを共重合に供することが好ましい。さらに好ましくは、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートを挙げることが出来る。
これらは、粘着剤としての望ましい物性を得る目的のため、適宜選択して単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することが出来る。
上述の反応性官能基を有するアクリルモノマー、アルキレンオキサイド鎖を有するアクリルモノマー、及びその他のモノマー等を共重合してなるアクリル重合体の重量平均分子量(Mw)は、5万〜100万であることが好ましい。
重量平均分子量が5万以上あると、形成されるアクリル樹脂粘着剤層の凝集力が担保され、被着体から剥離する際に糊残りを生じ難くなり好ましい。一方、重量平均分子量が100万を以下であれば、取扱いが容易な上、さらには凝集力が高くなり過ぎず、光学部材に対する適宜な接着力を発揮し好ましい。
上述したようにアクリル樹脂粘着剤は、粘着剤の凝集力を向上させる目的で、上記アクリル重合体と反応可能な官能基を少なくとも2個有する多官能性化合物を架橋剤として添加することが好ましい。
反応性官能基を少なくとも2個有する多官能性化合物としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アミン化合物、アジリジン化合物等が挙げられる。本発明では、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物が好ましく、単独で、あるいは複数を組み合わせて使用することもできる。
イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアネート、ヘキサヘチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメリルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等の分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物;それらをトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールと付加させた化合物、これらポリイソシアネート化合物のビュレット型化合物やイソシアヌレート化合物;これらポリイソシアネート化合物と公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等と付加反応させたウレタンプレポリマー型の分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物等が挙げられる。
エポキシ化合物としては、ビスフェノールAエピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジアミングリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等の分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられる。
金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属にアセチレン、アセト酢酸エチルが配位した化合物が挙げられる。
本発明に係る近赤外線吸収性粘着剤組成物における、架橋剤(固形成分)の最適含有量としては、一般に、(メタ)アクリル重合体(固形成分)100重量部に対して、0.1〜5重量部、好ましくは、0.3〜3重量部使用される。架橋剤の含有量が0.1重量部以上あれば十分な硬化が得られ、実用的な基板密着性が得られる。また、5重量部以下であれば、アクリル重合体の架橋反応が速過ぎず、基材に対する塗工性が担保され好ましい。
[3]分散剤
上述した複合タングステン酸化物微粒子を近赤外線吸収性粘着剤組成物として適用する場合、工業的に安価で簡便な方法として微粒子分散法が挙げられる。微粒子分散法とは、微粒子を基材上に形成した被膜内に均一に分散して、そこを透過する近赤外線を遮蔽する方法である。
上記複合タングステン酸化物微粒子を、被膜内に均一に分散させる方法としては、乾式法、湿式法等各種挙げられる。ここで、微粒子は、その平均分散粒径が小さくなるに従って、レイリー散乱が減衰し、ヘイズ値が減少する特徴をもつ観点からは、複合タングステン酸化物微粒子の微細化には湿式法が有効であり、例えば、媒体撹拌ミル、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ペイントシェーカー、超音波分散などの方法が挙げられる。
そして、微粒子分散時に各種分散剤を添加することで、複合タングステン酸化物微粒子を安定に液体中に分散保持することが容易になる。各種分散剤は、使用する溶媒やバインダー等との相性で各種選択可能である。
尤も、本発明においては粘着物性を確保するという観点から、上述したように、炭素数が4〜12のアクリルモノマーの共重合体という粘着剤をバインダーとして用いる。そして、当該粘着剤へ、複合タングステン酸化物微粒子を安定且つ均一に分散保持させて、本発明に係る近赤外線吸収性粘着剤組成物を得る為には、分散剤としてポリアミノアマイド塩を含む分散剤を用い、後述する分散助剤として層状珪酸塩を含有させる構成が好ましいことを本発明者らは知見した。
ここで、ポリアミノアマイド塩を含む分散剤とは、ポリアミノアマイドのカルボン酸塩やポリアミノアマイドとエステルの塩、等を含む化合物のことである。
具体的には、ポリアミノアマイドとポリエステル酸の塩、ポリアミノアマイドと高分子酸ポリエステルの塩、長鎖ポリアミノアマイドとエステル酸の塩、ポリアミノアマイドとポリエステルの塩、脂肪酸ポリアミノアマイドとポリエステル酸の塩、ポリアミノアマイドのカルボン酸塩、等を含む化合物を、好ましい例として挙げることが出来る。
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子に対する、ポリアミノアマイド塩を含む分散剤(有効成分)の含有量は、複合タングステン酸化物微粒子100重量部に対して、30〜200重量部、好ましくは、30〜150重量部である。当該ポリアミノアマイド塩を含む分散剤の含有量が、複合タングステン酸化物微粒子100重量部に対して30重量部以上であれば、複合タングステン酸化物微粒子の分散液を得ることが出来、200重量部以下であれば、塗布膜の機械的強度を担保出来る。
[4]分散助剤としての層状珪酸塩
[3]にて説明したように、複合タングステン酸化物微粒子分散液のアクリル樹脂粘着剤への混合時は、微粒子の再凝集等による分散性の悪化を回避するため、分散助剤として層状珪酸塩を用いる構成が好ましい。層状珪酸塩は、有機カチオンが層間にインターカレートしているため、界面活性効果によりアクリル樹脂粘着剤中の複合タングステン酸化物微粒子は、分散安定性を保持できると推定される。
層状珪酸塩について、さらに説明する。
層状珪酸塩は、粘土を構成する代表的な層状無機化合物であり、その構造は、厚さ10Å前後の珪酸塩層(層間空隙を含む)が数〜数十層平行に積層して形成された一次凝集体がさらに無秩序に凝集して形成した粒径数百nm〜数μmの二次凝集体からなるものである。スメクタイト、バーミュキュライト、タルク、マイカなどはこのような構造を有する代表的な層状珪酸塩化合物である。中でもスメクタイトやマイカは、程よい層間電荷密度を有するため、水中では二次粒子をといて、品種によっては強固な一次凝集さえ解き放ち単層剥離分散すると考えられている。
ここで本発明においては、上述したようにポリアミノアマイド塩を含む分散剤の添加により、当該層状珪酸塩化合物の凝集を解き、当該層状珪酸塩が複合タングステン酸化物微粒子へ作用して、当該微粒子がバインダー中に安定且つ均一に分散保持させる効果を、十分に発揮させると考えられる。
本発明に使用する層状珪酸塩は、スメクタイト類であれば天然のものであっても合成されたものであっても、適用可能である。スメクタイト類としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライトなどが挙げられる。なかでも、好ましい例として、親油性のスメクタイトを挙げることが出来る。
本発明に係る複合タングステン酸化物微粒子に対する、分散助剤である層状珪酸塩の含有量は、複合タングステン酸化物微粒子100重量部に対して、30〜200重量部、好ましくは、50〜150重量部である。30重量部以上であれば、複合タングステン酸化物微粒子の分散性を得ることが出来、200重量部以下であれば、近赤外線吸収性粘着剤の基板密着性を担保出来る。
一方、上述したように本出願人は特許文献5において、複合タングステン酸化物微粒子が溶媒中に分散された分散液により構成され、皮膜形成用材料である未硬化のアクリル樹脂を使用時に添加する赤外線遮蔽膜形成用分散液であって、粘土鉱物(スメクタイト)が上記溶媒中に含まれている赤外線遮蔽膜形成用分散液を開示している。
しかしながら、特許文献5において粘土鉱物を添加する目的は、熱線遮蔽膜の耐湿熱特性改善であって、本発明とは異なっている(特許文献5(0013)段落参照。)。
また、特許文献5には、分散剤であるポリアミノアマイド塩を含む分散剤と、分散助剤である層状珪酸塩との協働効果を用いて、複合タングステン酸化物微粒子を(メタ)アクリル重合体へ分散させる構成については記載も示唆もない。
以上のことから、本発明は特許文献5とは異なる発明であり、特許文献5から容易に導出される発明ではないと考えられる。
[5]分散媒
上記複合タングステン酸化物微粒子の分散媒は特に限定されるものではなく、用途に合わせて選択可能であり、例えば、水、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、芳香族化合物などの一般的な有機溶媒の各種が使用可能である。また、必要に応じて酸やアルカリを添加してpHを調整しても良い。更に微粒子の分散安定性を一層向上させるために、各種の界面活性剤、カップリング剤などを添加することも可能である。
[6]紫外線吸収剤
本発明に係る近赤外線吸収性粘着剤組成物には、紫外線吸収剤を添加することができる。紫外線吸収剤としては、無機系あるいは有機系のいずれも使用できるが、有機系の紫外線吸収剤が実用的である。有機系紫外線吸収成分としては、吸収効果の大きいベンゾフェノン系またはベンゾトリアゾール系が好ましい。また、トリアジン系、蓚酸アニリド系、シアノアクリレート系、サリシレート系など他の市販の材料も使用することが可能である。
これらの有機系紫外線吸収材料では、無機紫外線吸収材料に比べて吸収能率は格段に優れているが、熱や空気中の水分の影響により滲みだしや析出が起こり易い。こうした事態を避けるには、当該近赤外線吸収性粘着剤組成物の全固形成分に対し、おおよそ5重量部以下の少量添加とすることが好ましい。またこれらの有機紫外線吸収材料は、紫外線や空気中の酸素により劣化するため、当該近赤外線吸収性粘着剤組成物中に、光安定剤(HALS)、過酸化物分解剤、消光剤などを適宜添加することも好ましい。
[7]粘着付与剤
本発明に係る近赤外線吸収性粘着剤組成物へは、含有されるアクリル樹脂粘着剤の粘着力向上を目的として、粘着付与剤を含有させてもよい。粘着付与剤としては、ロジン、ロジンエステルおよびその誘導体、テルペン樹脂、フェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、炭化水素樹脂等が使用される。
[8]その他の添加剤
また、本発明に係る近赤外線吸収性粘着剤組成物には、粘着特性を損なわない程度に、ネオンカット色素、色調補正色素、レベリング剤、帯電防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、滑剤、可塑剤等を含有させてもよい。
[9]近赤外線吸収性粘着剤組成物の製造
本発明にかかる近赤外線吸収性粘着剤組成物は、複合タングステン酸化物微粒子を、その平均粒径が100nm以下となるように、溶液中へ均一分散させることで得られる。
具体的には、所定量の複合タングステン酸化物微粒子と分散剤と分散媒とを、例えば媒体撹拌ミルを用いて分散処理して混合し、複合タングステン酸化物微粒子の分散液を作製する。得られた複合タングステン酸化物微粒子分散液に分散助剤を添加して混合し、混合物を作製する。その後、当該混合物へ、アクリル樹脂粘着剤、架橋剤、さらに、所望により粘着付与剤などを添加する。そして攪拌器を用いて当該混合物を撹拌して混合し、近赤外線吸収性粘着剤組成物を作製する。
尚、上述した媒体撹拌ミルとしては、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、ペイントシェーカー、等を用いることができる。また超音波分散などの方法を用いることもできる。
[10]近赤外線吸収性粘着フィルムの製造
本発明に係る近赤外線吸収性粘着フィルムは、上述した近赤外線吸収性粘着剤組成物を基材上に塗布形成して塗布膜とし、当該塗布膜をエージング処理することで得られる。
当該エージング処理の一例として、架橋反応が進行する水準の温度での加熱処理が挙げられる。
そして、近赤外線吸収性粘着剤組成物(塗布液)が塗布される被成膜体は、所望によりフィルムでもボードでも良く、形状は限定されない。透明の被成膜体基材の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETということがある)等のポリエチレン樹脂類、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ふっ素樹脂等が各種目的に応じて使用可能である。また、樹脂以外ではガラスを用いることができる。
また、当該塗布液の塗布方法としては、対象基材面上に塗布膜を均一に形成できればよく、特に限定されないが、ドクターブレード法、バーコート法、グラビヤコート法、ディップコート法、スリットコート法、ロールコート法、リバースコート法等が例示される。塗布前に、コロナ放電処理、プラズマ処理等の公知の方法で基材の表面処理を行なってもよい。
乾燥方法は特に限定されないが、熱風乾燥や遠赤外線乾燥を用いることができる。乾燥温度は乾燥ラインの長さ、ライン速度、塗布量、残存溶剤量、基材の種類等を考慮して決定すればよい。基材がPETフィルムであれば、一般的な乾燥温度は50〜150℃である。
[11]まとめ
このように本発明によれば、熱線吸収成分として複合タングステン酸化物微粒子を均一に粘着剤に分散させることにより、可視光領域の透明性に優れ、近赤外線吸収能が高い粘着剤を提供することを可能とした。本発明の近赤外線吸収性粘着剤組成物は、赤外線をカットする必要があるフィルターやフィルムとして使用できる。例えば、車両、ビル、事務所、一般住宅などの窓、ショーウインドー、照明用ランプ、農園芸用ハウスの屋根や外壁材など、日射遮蔽を必要とするガラス、透明樹脂などの基材等、種々の用途に使用することができる。
以下、実施例を参照しながら、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
本実施例において、可視光透過率および日射透過率は、日立製作所製の分光光度計を用い、波長200〜2100nmの領域における光の透過率を測定し、算出したものである。そして、膜のヘイズ値は、JIS K 7105に基づいて測定を行った。
尚、本実施例に係る膜の光学特性値(可視光透過率、ヘイズ値)は、基材フィルム(帝人デュポンフィルム(株)製50μm厚PETフィルム、商品名テトロン(登録商標)HPE)を含む値である。また、当該基材フィルム自体の可視光透過率は90%、ヘイズ値は0.9%である。
(実施例1)
Cs0.33WO微粒子(比表面積20m/g)を20重量部、キシレン74重量部、ポリアミノアマイド塩を含む分散剤6重量部を混合し、ビーズミルで分散処理を行ない、平均分散粒子径80nmのCs0.33WO微粒子の分散液(A液)を作製した。
尚、当該分散液(A液)は、後述する実施例2〜3、6〜9、比較例1〜5、7においても使用した。
A液25重量部と、層状珪酸塩として親油性合成スメクタイト5重量部とを混合し、その後、水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(綜研化学製、SKダイン1811L、固形成分23質量%)435重量部、イソシアネート架橋剤(綜研化学製、TD−75)1.6重量部を混合した。即ち、水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(固形成分)は、435重量部×23質量%=100重量部、イソシアネート架橋剤(有効成分)は、1.6重量部×75質量%=1.2重量部となった。
当該実施例1に係る近赤外線吸収性粘着剤組成物(塗布液)の配合比、および、得られた塗布液の組成比を表1に示す。以下、実施例2〜9、比較例1〜7も同様である。
塗布液を厚さ50μmのPETフィルムにドクターブレードを用いて塗布し、80℃×2分乾燥させ、塗布膜厚25μmとなるように粘着層を形成し、これを3mm厚ガラス基板に張り合わせ、目的とする塗布膜を得た。
当該膜に含まれる水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(固形成分)100重量部に対するイソシアネート架橋剤(有効成分)は1.2重量部である。一方、当該膜に含まれるCs0.33WO微粒子100重量部に対する親油性合成スメクタイトは100重量部である。
この膜の初期特性を測定したところ、ヘイズは0.9%であり、透明性が極めて高いことが確認できた。
また、この膜の機械的強度(脆さ)を評価するため膜強度を測定した。
測定方法はJIS Z 0237に準拠し、当該ガラス基板からPETフィルムを剥がそうとするときにかかる力を測定した。
すると、膜強度は5.3N/mであり、密着性が極めて高いことが確認できた。
当該膜強度および粘着性は、当該塗布液における樹脂成分と微粒子成分との比率によると考えされる。
当該測定結果を表2に示す。
以下、実施例2〜9、比較例1〜7も同様である。
(実施例2)
A液25重量部と、層状珪酸塩として親油性合成スメクタイト5重量部を混合し、その後、カルボキシル基を含むアクリル樹脂粘着剤(綜研化学製、SKダイン2094、固形成分25質量%)400重量部、エポキシ架橋剤(綜研化学製、E−AX)1.08重量部を混合して塗布液を作製した。
塗布液を厚さ50μmのPETフィルムにドクターブレードを用いて塗布し、80℃×2分乾燥させ、塗布膜厚25μmとなるように粘着層を形成し、これを3mm厚ガラス基板に張り合わせ、目的とする塗布膜を得た。
当該塗布液に含まれるカルボキシル基を含むアクリル樹脂粘着剤(固形成分)100重量部に対するエポキシ架橋剤(固形成分)は0.54重量部である。一方、当該塗布液に含まれるCs0.33WO微粒子100重量部に対する親油性合成スメクタイトは100重量部である。
この膜の初期特性を測定したところ、ヘイズは1.1%であり、透明性が極めて高いことが確認できた。また、膜強度は8.0N/mであり、密着性が極めて高いことも確認できた。
(実施例3)
A液25重量部と、層状珪酸塩として親油性合成スメクタイト5重量部とを混合し、その後、カルボキシル基/水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(綜研化学製、SKダイン2300、固形成分18質量%)555重量部、イソシアネート架橋剤(綜研化学製、L−45)0.89重量部、エポキシ架橋剤(綜研化学製、C−50)0.38重量部を混合して塗布液を作製した。
塗布液を厚さ50μmのPETフィルムにドクターブレードを用いて塗布し、90℃×3分乾燥させ、塗布膜厚25μmとなるように粘着層を形成し、これを3mm厚ガラス基板に張り合わせ、目的とする塗布膜を得た。
当該塗布液に含まれるカルボキシル基/水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(固形成分)100重量部に対するイソシアネート架橋剤(有効成分)は0.40重量部、エポキシ架橋剤(有効成分)は0.20重量部である。一方、当該塗布液に含まれるCs0.33WO微粒子100重量部に対する親油性合成スメクタイトは100重量部である。
この膜の初期特性を測定したところ、ヘイズは1.0%であり、透明性が極めて高いことが確認できた。また、膜強度は6.0N/mであり、密着性が極めて高いことも確認できた。
(実施例4)
Rb0.33WO微粒子(比表面積20m/g)を20重量部、キシレン74重量部、ポリアミノアマイド塩を含む分散剤6重量部を混合し、ビーズミルで分散処理を行ない、平均分散粒子径80nmのRb0.33WO微粒子の分散液を作製した(B液)。
B液25重量部と、層状珪酸塩として親油性合成スメクタイト5重量部とを混合し、その後、水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(綜研化学製、SKダイン1811L、固形成分23質量%)435重量部、イソシアネート架橋剤(綜研化学製、商品名TD−75、有効成分75%)1.6重量部を混合して塗布液を作製した。
塗布液を厚さ50μmのPETフィルムにドクターブレードを用いて塗布し、80℃×2分乾燥させ、塗布膜厚25μmとなるように粘着層を形成し、これを3mm厚ガラス基板に張り合わせ、目的とする塗布膜を得た。
当該塗布液に含まれる水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(固形成分)100重量部に対するイソシアネート架橋剤(有効成分)は1.20重量部である。一方、当該塗布液に含まれるRb0.33WO微粒子100重量部に対する親油性合成スメクタイトは100重量部である。
この膜の初期特性を測定したところ、ヘイズは0.9%であり、透明性が極めて高いことが確認できた。また、膜強度は5.5N/mであり、密着性が極めて高いことも確認できた。
(実施例5)
イソプロピルアルコール(IPA)3480gにCs0.33WO粉末(比表面積20m/g)520gを攪拌混合し、これをビーズミルで分散処理して平均分散粒子径100nmの分散液Cを調製した。
次いで、上記分散液C200gとエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(川研ファインケミカル(株)製、商品名アルミキレートALCH)20gとIPA540gとを混合攪拌した後、超音波ホモジナイザーを用いて分散処理した。
次いで、当該分散処理物を攪拌しながら、当該分散処理物へ、水100gを1時間かけて滴下添加し、さらに攪拌しながら、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製、正珪酸エチル、SiO換算量28.8%)140gを2時間かけて滴下添加した後、20℃にて15時間の攪拌を行った後、この液を70℃で2時間加熱熟成した。
次いで、この熟成液を真空乾燥して溶媒を蒸発させた後、200℃で1時間加熱処理して得られた粉状体を乾式粉砕することで、Cs0.33WO微粒子に対して約5重量%のAlおよび約2倍重量のSiOで被覆された、Cs0.33WO微粒子を得た。
このAl/SiO被覆Cs0.33WO微粒子を30重量部、キシレン61重量部、ポリアミノアマイド塩を含む分散剤9重量部を混合し、ビーズミルで分散処理を行ない、平均分散粒子径80nmの分散液を作製した(C液)。
C液50重量部と、層状珪酸塩として親油性合成スメクタイト5重量部とを混合し、その後、水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(綜研化学製、SKダイン1811L、固形成分23質量%)435重量部、イソシアネート架橋剤(綜研化学製、TD−75)1.6重量部を混合して塗布液を作製した。
塗布液を厚さ50μmのPETフィルムにドクターブレードを用いて塗布し、80℃×2分乾燥させ、塗布膜厚25μmとなるように粘着層を形成し、これを3mm厚ガラス基板に張り合わせ、目的とする塗布膜を得た。
当該塗布液に含まれる水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(固形成分)100重量部に対するイソシアネート架橋剤(有効成分)は1.20重量部である。一方、当該塗布液に含まれるAl/SiO被覆Cs0.33WO微粒子100重量部に対する親油性合成スメクタイトは33.3重量部である。
この膜の初期特性を測定したところ、ヘイズは1.3%であり、透明性が極めて高いことが確認できた。また、膜強度は5.0N/mであり、密着性が極めて高いことも確認できた。
(実施例6)
A液25重量部と、層状珪酸塩として親油性合成スメクタイト5重量部とを混合し、その後、水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(綜研化学製、SKダイン1429DT、固形成分30質量%)333重量部、金属キレート架橋剤(綜研化学製、AD−5A、)9.99重量部を混合して塗布液を作製した。
塗布液を厚さ50μmのPETフィルムにドクターブレードを用いて塗布し、80℃×2分乾燥させ、塗布膜厚25μmとなるように粘着層を形成し、これを3mm厚ガラス基板に張り合わせ、目的とする塗布膜を得た。
当該塗布液に含まれる水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(固形成分)100重量部に対する金属キレート架橋剤(有効成分)は0.49重量部である。一方、当該塗布液に含まれるCs0.33WO微粒子100重量部に対する親油性合成スメクタイトは100重量部である。
この膜の初期特性を測定したところ、ヘイズは0.9%であり、透明性が極めて高いことが確認できた。また、膜強度は5.4N/mであり、密着性が極めて高いことも確認できた。
(実施例7)
A液25重量部と、層状珪酸塩として親油性合成スメクタイト5重量部とを混合し、その後、水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(綜研化学製、SKダイン1811L、固形成分23質量%)435重量部、イソシアネート架橋剤(綜研化学製、TD−75)4重量部を混合して塗布液を作製した。
塗布液を厚さ50μmのPETフィルムにドクターブレードを用いて塗布し、80℃×2分乾燥させ、塗布膜厚25μmとなるように粘着層を形成し、これを3mm厚ガラス基板に張り合わせ、目的とする塗布膜を得た。
当該塗布液に含まれる水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(固形成分)100重量部に対するイソシアネート架橋剤(有効成分)は3.00重量部である。一方、当該塗布液に含まれるCs0.33WO微粒子100重量部に対する親油性合成スメクタイトは100重量部である。
この膜の初期特性を測定したところ、ヘイズは1.0%であり、透明性が極めて高いことが確認できた。また、膜強度は6.1N/mであり、密着性が極めて高いことも確認できた。
(実施例8)
A液25重量部と、層状珪酸塩として親油性合成スメクタイト5重量部とを混合し、その後、カルボキシル基を含むアクリル樹脂粘着剤(綜研化学製、SKダイン2094、固形成分25質量%)400重量部、エポキシ架橋剤(綜研化学製、E−AX)4重量部を混合して塗布液を作製した。
当該塗布液に含まれるカルボキシル基を含むアクリル樹脂粘着剤(固形成分)100重量部に対するエポキシ架橋剤(有効成分)は2.00重量部である。一方、当該塗布液に含まれるCs0.33WO微粒子100重量部に対する親油性合成スメクタイトは100重量部である。
塗布液を厚さ50μmのPETフィルムにドクターブレードを用いて塗布し、80℃×2分乾燥させ、塗布膜厚25μmとなるように粘着層を形成し、これを3mm厚ガラス基板に張り合わせ、目的とする塗布膜を得た。
この膜の初期特性を測定したところ、ヘイズは1.2%であり、透明性が極めて高いことが確認できた。また、膜強度は8.5N/mであり、密着性が極めて高いことも確認できた。
(実施例9)
A液25重量部と、層状珪酸塩として親油性合成スメクタイト2.5重量部とを混合し、その後、水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(綜研化学製、SKダイン1811L、固形成分23質量%)435重量部、イソシアネート架橋剤(綜研化学製、TD−75)1.6重量部を混合して塗布液を作製した。
塗布液を厚さ50μmのPETフィルムにドクターブレードを用いて塗布し、80℃×2分乾燥させ、塗布膜厚25μmとなるように粘着層を形成し、これを3mm厚ガラス基板に張り合わせ、目的とする塗布膜を得た。
当該塗布液に含まれる水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(固形成分)100重量部に対するイソシアネート架橋剤(有効成分)は1.20重量部である。一方、当該塗布液に含まれるCs0.33WO微粒子100重量部に対する親油性合成スメクタイトは50重量部である。
この膜の初期特性を測定したところ、ヘイズは1.0%であり、透明性が極めて高いことが確認できた。また、膜強度は5.1N/mであり、密着性が極めて高いことも確認できた。
(比較例1)
A液25重量部、水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(綜研化学製、SKダイン1811L、固形成分23質量%)435重量部、イソシアネート架橋剤(綜研化学製、TD−75)1.6重量部を混合して塗布液を作製した。
塗布液を厚さ50μmのPETフィルムにドクターブレードを用いて塗布し、80℃×2分乾燥させ、塗布膜厚25μmとなるように粘着層を形成し、これを3mm厚ガラス基板に張り合わせ、目的とする塗布膜を得た。
当該塗布液に含まれる水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(固形成分)100重量部に対するイソシアネート架橋剤(有効成分)は1.20重量部である。一方、親油性合成スメクタイトは含まれていない。
この膜の初期特性を測定したところ、ヘイズは33.5%であり、透明性が極めて低く、不良であった。また、膜強度は5.9N/mであり、密着性は極めて高いことが確認できた。
層状珪酸塩を添加しなかったことで、水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤への分散性が悪化したと考えられる。
(比較例2)
A液25重量部と、層状珪酸塩として親油性合成スメクタイト12.5重量部とを混合し、その後、水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(綜研化学製、SKダイン1811L、固形成分23質量%)435重量部、イソシアネート架橋剤(綜研化学製、TD−75)1.6重量部を混合して塗布液を作製した。
塗布液を厚さ50μmのPETフィルムにドクターブレードを用いて塗布し、80℃×2分乾燥させ、塗布膜厚25μmとなるように粘着層を形成し、これを3mm厚ガラス基板に張り合わせ、目的とする塗布膜を得た。
当該塗布液に含まれる水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(固形成分)100重量部に対するイソシアネート架橋剤(有効成分)は1.20重量部である。一方、当該塗布液に含まれるCs0.33WO微粒子100重量部に対する親油性合成スメクタイトは250重量部である。
この膜の初期特性を測定したところ、ヘイズは1.1%であり、透明性が極めて高いことが確認できた。しかし、膜強度は1.0N/mであり、密着性が極めて低く、不良であった。
層状珪酸塩を多量に添加したことで、塗膜の架橋を阻害したと考えられる。
(比較例3)
A液175重量部と、層状珪酸塩として親油性合成スメクタイト35重量部とを混合し、その後、水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(綜研化学製、SKダイン1811L、固形成分23質量%)435重量部、イソシアネート架橋剤(綜研化学製、TD−75)1.6重量部を混合して塗布液を作製した。
塗布液を厚さ50μmのPETフィルムにドクターブレードを用いて塗布し、80℃×2分乾燥させ、塗布膜厚25μmとなるように粘着層を形成し、これを3mm厚ガラス基板に張り合わせ、目的とする塗布膜を得た。
当該塗布液に含まれる水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(固形成分)100重量部に対するイソシアネート架橋剤(有効成分)は1.20重量部である。一方、当該塗布液に含まれるCs0.33WO微粒子100重量部に対する親油性合成スメクタイトは100重量部である。
この膜の初期特性を測定したところ、ヘイズは1.5%であり、透明性が極めて高いことが確認できた。しかし、膜強度は0.5N/mであり、密着性が極めて低く、不良であった。
Cs0.33WO微粒子の添加量が多く、複合タングステン酸化物微粒子/PSA(固形成分)比率が高かったためと考えられる。
(比較例4)
A液25重量部と、層状珪酸塩として親油性合成スメクタイト5重量部とを混合し、その後、水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(綜研化学製、SKダイン1811L、固形成分23質量%)435重量部、イソシアネート架橋剤(綜研化学製、TD−75)7.33重量部を混合して塗布液を作製した。
当該塗布液に含まれる水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(固形成分)100重量部に対するイソシアネート架橋剤(有効成分)は5.50重量部である。一方、当該塗布液に含まれるCs0.33WO微粒子100重量部に対する親油性合成スメクタイトは100重量部である。
しかし、架橋剤の添加量が多すぎたため、塗布液がすぐに硬化してしまい、塗布できなかった。
(比較例5)
A液1.5重量部と、層状珪酸塩として親油性合成スメクタイト1.5重量部とを混合し、その後、水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(綜研化学製、SKダイン1811L、固形成分23質量%)435重量部、イソシアネート架橋剤(綜研化学製、TD−75)1.6重量部を混合して塗布液を作製した。
塗布液を厚さ50μmのPETフィルムにドクターブレードを用いて塗布し、80℃×2分乾燥させ、塗布膜厚25μmとなるように粘着層を形成し、これを3mm厚ガラス基板に張り合わせ、目的とする塗布膜を得た。
当該塗布液に含まれる水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(固形成分)100重量部に対するイソシアネート架橋剤(有効成分)は1.20重量部である。一方、当該塗布液に含まれるCs0.33WO微粒子100重量部に対する親油性合成スメクタイトは500重量部である。
この膜の初期特性を測定したところ、ヘイズは1.0%であり、透明性が極めて高いことが確認できた。また、膜強度は5.7N/mであり、密着性が極めて高いことも確認できた。しかし、近赤外線吸収成分である複合タングステン酸化物微粒子の添加量が少なく複合タングステン酸化物微粒子/PSA(固形成分)比率が低かったため、充分な日射遮蔽効果が得られなかった。
(比較例6)
Cs0.33WO微粒子(比表面積20m/g)を20重量部、キシレン74重量部、ウレタンを含む分散剤6重量部を混合し、媒体攪拌ミルで分散処理を行ない、平均分散粒子径85nmのCs0.33WO微粒子の分散液を作製した(D液)。
D液25重量部と、層状珪酸塩として親油性合成スメクタイト5重量部とを混合し、その後、水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(綜研化学製、SKダイン1811L、固形成分23質量%)435重量部、イソシアネート架橋剤(綜研化学製、TD−75、有効成分75%)1.6重量部を混合して塗布液を作製しようとしたが、D液とアクリル樹脂粘着剤との相溶性が悪く、複合タングステン酸化物微粒子が凝集してしまい、塗布液を作製することができなかった。
複合タングステン酸化物微粒子分散液を作製する時の分散剤が、ポリアミノアマイド塩を含む分散剤ではなかったため、アクリル樹脂粘着剤との相溶性が悪かったと考えられる。
(比較例7)
A液25重量部と、層状珪酸塩として親油性合成スメクタイト1.0重量部とを混合し、その後、水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(綜研化学製、SKダイン1811L、固形成分23質量%)435重量部、イソシアネート架橋剤(綜研化学製、商品名TD−75、有効成分75%)1.6重量部を混合して塗布液を作製した。
当該塗布液に含まれる水酸基を含むアクリル樹脂粘着剤(固形成分)100重量部に対するイソシアネート架橋剤(有効成分)は1.20重量部である。一方、当該塗布液に含まれるCs0.33WO微粒子100重量部に対する親油性合成スメクタイトは20重量部である。
しかしながら、当該塗布液において、層状珪酸塩の添加量が少なかったため、アクリル樹脂粘着剤中でCs0.33WO微粒子が凝集してしまった為、当該塗布液をフィルム上へ塗布することはできなかった。
(まとめ)
(メタ)アクリル重合体と、架橋剤と、複合タングステン酸化物微粒子と、分散剤とを含む近赤外線吸収性粘着剤組成物であって、前記複合タングステン酸化物微粒子が六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子であり、前記近赤外線吸収性粘着組成物が、層状珪酸塩を含有し、前記分散剤がポリアミノアマイド塩を含み、前記(メタ)アクリル重合体100重量部に対し、前記架橋剤が0.1重量部以上5重量部以下含まれ、前記複合タングステン酸化物微粒子100重量部に対し、前記層状珪酸塩が30重量部以上200重量部以下含まれている実施例1〜7に記載の近赤外線吸収性粘着組成物は、いずれも良好な光学的特性と膜強度とを示した。
Figure 2017155112
Figure 2017155112

Claims (11)

  1. (メタ)アクリル重合体と、架橋剤と、複合タングステン酸化物微粒子と、分散剤とを含む近赤外線吸収性粘着剤組成物であって、
    前記複合タングステン酸化物微粒子が六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子であり、
    前記近赤外線吸収性粘着組成物が、層状珪酸塩を含有し、
    前記分散剤がポリアミノアマイド塩を含み、
    前記(メタ)アクリル重合体100重量部に対し、前記架橋剤が0.1重量部以上5重量部以下含まれ、
    前記複合タングステン酸化物微粒子100重量部に対し、前記層状珪酸塩が30重量部以上200重量部以下含まれていることを特徴とする近赤外線吸収性粘着剤組成物。
  2. 前記複合タングステン酸化物微粒子の粒子径が1nm以上800nm以下であることを特徴とする請求項1記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物。
  3. 前記複合タングステン酸化物微粒子が、一般式MWO(M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snの内から選択される1種類以上の元素、0.001≦Y≦1.0、2.2≦Z≦3.0)であることを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物。
  4. 前記M元素が、Cs、Rb、K、Tlから選択される1種類以上であることを特徴とする請求項3に記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物。
  5. 前記(メタ)アクリル重合体が、反応性官能基として水酸基および/またはカルボキシル基を含有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物。
  6. 前記架橋剤が、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物から選択される1種類以上であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物。
  7. 前記(メタ)アクリル重合体100重量部に対し、前記複合タングステン酸化物微粒子が0.5重量部以上30重量部以下含まれていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物。
  8. 前記複合タングステン酸化物微粒子の表面が、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムから選択される1種以上を含む化合物で被覆されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物。
  9. さらに、紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物。
  10. 請求項1から9のいずれかに記載の近赤外線吸収性粘着剤組成物の塗布膜が、基材フィルム上に形成されていることを特徴とする近赤外線吸収性粘着フィルム。
  11. 所定量の複合タングステン酸化物微粒子と分散剤と分散媒とを混合して、複合タングステン酸化物微粒子分散液を作製する工程と、
    前記複合タングステン酸化物微粒子分散液へ、分散助剤を添加して混合し、混合物を作製する工程と、
    前記混合物へ、アクリル樹脂粘着剤と架橋剤とを添加して混合し、近赤外線吸収性粘着剤組成物を作製する工程とを、有することを特徴とする近赤外線吸収性粘着剤組成物の製造方法。
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