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JP2017155105A - 赤外線遮蔽材料微粒子分散液と赤外線遮蔽膜形成用塗布液および赤外線遮蔽膜と赤外線遮蔽光学部材 - Google Patents

赤外線遮蔽材料微粒子分散液と赤外線遮蔽膜形成用塗布液および赤外線遮蔽膜と赤外線遮蔽光学部材 Download PDF

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JP2017155105A JP2016038395A JP2016038395A JP2017155105A JP 2017155105 A JP2017155105 A JP 2017155105A JP 2016038395 A JP2016038395 A JP 2016038395A JP 2016038395 A JP2016038395 A JP 2016038395A JP 2017155105 A JP2017155105 A JP 2017155105A
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infrared shielding
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fine particles
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三信 見良津
Mitsunobu Miratsu
三信 見良津
東福 淳司
Junji Tofuku
淳司 東福
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Sumitomo Metal Mining Co Ltd
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Sumitomo Metal Mining Co Ltd
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Abstract

【課題】微細化に伴う赤外線遮蔽特性の経時的低下と紫外線硬化樹脂が適用された場合のヘイズ悪化を防止できる赤外線遮蔽材料微粒子分散液と塗布液を提供しかつ赤外線遮蔽膜と赤外線遮蔽光学部材を提供する。
【解決手段】タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子から選択された赤外線遮蔽材料微粒子が有機系溶媒中に分散された赤外線遮蔽材料微粒子分散液であって、該分散液に含まれない紫外線硬化樹脂が分散液に添加されて赤外線遮蔽膜形成用塗布液を構成する赤外線遮蔽材料微粒子分散液において、Cs、Sr、Ba、Ti、Zr、Cr等の元素から成る金属塩で構成された第一添加剤とアンモニア、アミン化合物で構成された第二添加剤を含有し、第一添加剤に対する第二添加剤の含有量が重量比で5%以上300%以下であることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、可視光領域においては透明で、近赤外線領域においては吸収を持つタングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子から選ばれる1種以上の赤外線遮蔽材料微粒子が溶媒中に分散された赤外線遮蔽材料微粒子分散液と赤外線遮蔽膜形成用塗布液に係り、特に、赤外線遮蔽材料微粒子の微細化に伴う赤外線遮蔽特性の経時的低下を防止できると共に紫外線硬化樹脂が適用された場合におけるヘイズの悪化も防止できる赤外線遮蔽材料微粒子分散液と赤外線遮蔽膜形成用塗布液の改良と、当該赤外線遮蔽材料微粒子分散液と赤外線遮蔽膜形成用塗布液を用いて得られる赤外線遮蔽膜と赤外線遮蔽光学部材の改良に関するものである。
近年、赤外線遮蔽体の需要が急増しており、赤外線遮蔽体に関する特許が多く提案されている。機能的観点からは、例えば、各種建築物や車両の窓材等の分野において、可視光線を十分に取り入れながら近赤外領域の光を遮蔽し、明るさを維持しつつ室内の温度上昇を抑制することを目的としたもの、プラズマディスプレイパネルから前方に放射される近赤外線が、コードレスフォンや家電機器のリモコンに誤動作を引き起こしたり、伝送系光通信に悪影響を及ぼしたりすることを防止することを目的としたもの等がある。
また、遮光部材の観点からは、例えば、窓材等に使用される遮光部材として、可視光領域から近赤外線領域に吸収特性があるカーボンブラック、チタンブラック等の無機顔料、可視光領域のみに強い吸収特性のあるアニリンブラック等の有機顔料等黒色系顔料を含有する遮光フィルムや、アルミ等の金属を蒸着したハーフミラータイプの遮光部材が提案されている。
特許文献1では、透明なガラス基板上に、基板側より第1層として周期律表のIIIa族、IVa族、Vb族、VIb族およびVIIb族から成る群から選ばれた少なくとも1種の金属イオンを含有する複合酸化タングステン膜を設け、前記第1層上に第2層として透明誘電体膜を設け、当該第2層上に第3層として周期律表のIIIa族、IVa族、Vb族、VIb族およびVIIb族から成る群から選ばれた少なくとも1種の金属イオンを含有する複合酸化タングステン膜を設け、かつ、前記第2層の透明誘電体膜の屈折率を第1層および第3層の複合酸化タングステン膜の屈折率よりも低くすることにより、高い可視光透過率および良好な赤外線遮断性能が要求される部位に好適に使用できる赤外線遮断ガラスが提案されている。
特許文献2では、特許文献1と同様の方法で、透明なガラス基板上に、基板側より第1層として第1の誘電体膜を設け、当該第1層上に第2層として酸化タングステン膜を設け、当該第2層上に第3層として第2の誘電体膜を設けた赤外線遮断ガラスが提案されている。
特許文献3では、特許文献1と同様な方法で、透明な基板上に、基板側より第1層として同様の金属元素を含有する複合酸化タングステン膜を設け、前記第1層上に第2層として透明誘電体膜を設けた熱線遮断ガラスが提案されている。
また、特許文献4では、水素、リチウム、ナトリウムまたはカリウム等の添加元素を含有する三酸化タングステン(WO3)、三酸化モリブデン(MoO3)、五酸化ニオブ(Nb25)、五酸化タンタル(Ta25)、五酸化バナジウム(V25)および二酸化バナジウム(VO2)の1種以上から選択された金属酸化物膜を、CVD法またはスプレー法でガラスシートに被覆しかつ250℃程度で熱分解して形成された太陽光遮蔽特性を有する太陽光制御ガラスシートが提案されている。
特許文献5には、タングステン酸を加水分解して得られた酸化タングステン(タングステン酸化物)を用い、当該酸化タングステンに、ポリビニルピロリドンという特定の構造の有機ポリマーを添加することにより、太陽光が照射されると光線中の紫外線が酸化タングステンに吸収されて励起電子とホールとが発生し、少量の紫外線量により5価タングステンの出現量が著しく増加して着色反応が速くなり、これに伴って着色濃度が高くなると共に、光を遮断することによって5価タングステンが極めて速やかに6価に酸化されて消色反応が速くなる特性を用い、太陽光に対する着色および消色反応が速く、着色時に近赤外域の波長1250nmに吸収ピークが現れ、太陽光の近赤外線を遮断することができる太陽光可変調光断熱材料が提案されている。
また、特許文献6には、六塩化タングステンをアルコールに溶解し、そのまま溶媒を蒸発させるか、または加熱還流した後溶媒を蒸発させ、その後100℃〜500℃で加熱することにより、三酸化タングステン若しくはその水和物または両者の混合物から成る粉末を得ること、当該酸化タングステン微粒子を用いてエレクトロクロミック素子が得られること、多層の積層体を構成し膜中にプロトンを導入したときに当該膜の光学特性を変化させることができること等が提案されている。
また、特許文献7には、メタ型タングステン酸アンモニウムと水溶性の各種金属塩を原料とし、その混合水溶液の乾固物を約300〜700℃の加熱温度で加熱し、この加熱中に不活性ガス(添加量;約50vol%以上)または水蒸気(添加量;約15vol%以下)が添加された水素ガスを供給することにより、MxWO3(M;アルカリ、アルカリ土類、希土類等の金属元素、0<x<1)で表される種々のタングステンブロンズを作製する方法が提案されている。また、同様の操作を支持体上で行わせ、種々のタングステンブロンズ被覆複合体を製造する方法が提案され、燃料電池等の電極触媒材料として用いることが提案されている。
更に、特許文献8には、赤外線遮蔽材料微粒子が樹脂やガラス等の媒体中に分散してなる赤外線遮蔽材料微粒子分散体であって、赤外線遮蔽材料微粒子が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子、または/および、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子で構成され、かつ、当該赤外線遮蔽材料微粒子の粒子直径が1nm以上800nm以下であることを特徴とする赤外線遮蔽材料微粒子分散体、および、この赤外線遮蔽材料微粒子分散体の光学特性や導電性、製造方法等について開示されている。
ところで、特許文献8に開示された一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子、または/および、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表記される複合タングステン酸化物微粒子を樹脂やガラス等の媒体中に分散して成る赤外線遮蔽材料微粒子分散体は、可視光透過率を高く保ったまま赤外線の透過率を低くできるという優れた機能を発揮することから、この赤外線遮蔽材料微粒子分散体を、各種建築物や車両の窓材等に用いることが検討されている。
そして、これ等用途においては、赤外線遮蔽特性と高い透明性(低いヘイズ値)が要求されているため、ヘイズ値を低下させることを目的として、前記タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子の粒子径を更に微細化する試みがなされている。
しかし、タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子の粒子径を更に微細化した場合、当該微細化されたタングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子を溶媒中に分散させた赤外線遮蔽材料微粒子分散液、および、この分散液を用いて得られる赤外線遮蔽膜(赤外線遮蔽材料微粒子分散体)や赤外線遮蔽光学部材においては、タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子の微細化に伴い赤外線遮蔽特性が経時的に低下してしまうことが課題となり、特許文献9において、当該赤外線遮蔽材料微粒子分散液に、Cs、Sr、Ba、Ti、Zr、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、In、Snの内から選択される1種類以上の元素から成る金属塩を添加して前記課題を解決する方法を提案している。
特開平8−59300号公報 特開平8−12378号公報 特開平8−283044号公報 特開2000−119045号公報 特開平9−127559号公報 特開2003−121884号公報 特開平8−73223号公報 国際公開WO2005/37932号公報 特開2009−197146号公報
赤外線遮蔽材料微粒子分散液に金属塩を添加する特許文献9の方法によれば、赤外線遮蔽材料微粒子の赤外線遮蔽特性を経時的に低下させてしまう成分(空気中から侵入してきた水分や紫外線の照射等により発生したラジカル等)を金属塩が捕捉する作用を有するため、これ等成分に起因した赤外線遮蔽特性の経時的な低下を防止できるとしている。
ところで、特許文献9の赤外線遮蔽膜形成用塗布液を用いて赤外線遮蔽膜を製造する際、バインダー樹脂として紫外線硬化樹脂を適用した場合、得られた赤外線遮蔽膜の混濁が多くなってしまう(すなわち、ヘイズが悪化してしまう)問題が確認された。
すなわち、紫外線硬化樹脂が適用された赤外線遮蔽膜形成用塗布液を用いて基材表面に塗布膜を形成し、該塗布膜から溶媒を蒸発させかつ紫外線を照射して赤外線遮蔽膜を製造しようとした場合、塗布膜の乾燥時において赤外線遮蔽材料微粒子が凝集して赤外線遮蔽膜のヘイズを悪化させてしまう問題が確認された。
本発明はこのような問題に着目してなされたもので、その課題とするところは、赤外線遮蔽材料微粒子の微細化に伴う赤外線遮蔽特性の経時的低下を防止できると共に紫外線硬化樹脂が適用された場合におけるヘイズの悪化も防止できる赤外線遮蔽材料微粒子分散液と赤外線遮蔽膜形成用塗布液を提供し、併せて、当該赤外線遮蔽材料微粒子分散液と赤外線遮蔽膜形成用塗布液を用いて得られる赤外線遮蔽膜と赤外線遮蔽光学部材を提供することにある。
そこで、金属塩が添加された特許文献9の赤外線遮蔽膜形成用塗布液を用いて赤外線遮蔽膜を製造する際、バインダー樹脂として紫外線硬化樹脂が適用された場合に赤外線遮蔽膜のヘイズが悪化してしまう原因について本発明者等が鋭意探究したところ、タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子から成る赤外線遮蔽材料微粒子と紫外線硬化樹脂との相溶性に難があり、塗布膜の乾燥時に赤外線遮蔽材料微粒子の凝集が起こって紫外線硬化樹脂中に赤外線遮蔽材料微粒子が均一に分散されないためであることが確認された。そして、金属塩が添加された特許文献9の赤外線遮蔽膜形成用塗布液にアンモニアおよびアミン化合物から選ばれる1種以上を添加したところ赤外線遮蔽材料微粒子と紫外線硬化樹脂との相溶性が向上し、ヘイズの悪化が改善されることを発見するに至った。本発明はこのような技術的発見により完成されている。
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3)で表記される複合タングステン酸化物微粒子から選択される1種以上の微粒子で構成される赤外線遮蔽材料微粒子が有機系溶媒中に分散された赤外線遮蔽材料微粒子分散液であって、該分散液に含まれない紫外線硬化樹脂が前記分散液に添加されて赤外線遮蔽膜形成用塗布液を構成する赤外線遮蔽材料微粒子分散液において、
Cs、Sr、Ba、Ti、Zr、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、In、Snの内から選択される1種類以上の元素から成る金属塩で構成される第一添加剤と、アンモニアおよびアミン化合物から選ばれる1種以上で構成される第二添加剤を含有し、かつ、前記第一添加剤に対する第二添加剤の含有量が重量比で5%以上300%以下であることを特徴とする。
また、本発明に係る第2の発明は、
第1の発明に記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散液において、
前記アミン化合物が、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンの内から選択される1種類以上であることを特徴とし、
第3の発明は、
第1の発明または第2の発明に記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散液において、
前記第一添加剤の含有量が、前記赤外線遮蔽材料微粒子100重量部に対し0.01重量部以上20重量部以下であることを特徴とし、
第4の発明は、
第1の発明〜第3の発明のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散液において、
前記タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子から選ばれる1種以上が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.45≦z/y≦2.999)で表記される組成比のマグネリ相を含むことを特徴とし、
第5の発明は、
第1の発明〜第4の発明のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散液において、
一般式MxWyOzで表記される前記複合タングステン酸化物微粒子が、六方晶、正方晶若しくは立方晶の結晶構造の1つ以上を含むことを特徴とし、
第6の発明は、
第5の発明に記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散液において、
前記M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snの内の1種類以上を含み、かつ、六方晶の結晶構造を有することを特徴とする。
次に、本発明に係る第7の発明は、
赤外線遮蔽膜形成用塗布液において、
第1の発明〜第6の発明のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散液に紫外線硬化樹脂が添加されて成ることを特徴とし、
第8の発明は、
赤外線遮蔽膜において、
第7の発明に記載の赤外線遮蔽膜形成用塗布液を基材表面に塗布して塗布膜を形成し、該塗布膜から溶媒を蒸発させかつ紫外線を照射して得られることを特徴とし、
また、第9の発明は、
赤外線遮蔽光学部材において、
基材と、この基材表面に形成された第8の発明に記載の赤外線遮蔽膜とで構成されることを特徴とするものである。
本発明に係る赤外線遮蔽材料微粒子分散液は、一般式WyOzで表記されるタングステン酸化物微粒子、一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物微粒子から選ばれる1種以上の微粒子で構成される赤外線遮蔽材料微粒子と、Cs、Sr、Ba、Ti、Zr、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、In、Snの内から選択される1種類以上の元素から成る金属塩で構成される第一添加剤と、アンモニアおよびアミン化合物から選ばれる1種以上で構成される第二添加剤を含有することを特徴としている。
そして、第一添加剤の作用により赤外線遮蔽材料微粒子の微細化に伴う赤外線遮蔽特性の経時的低下を防止することが可能となり、第二添加剤の作用により紫外線硬化樹脂が適用された場合におけるヘイズの悪化も防止することが可能となる。
従って、紫外線硬化樹脂が添加された本発明に係る赤外線遮蔽膜形成用塗布液を用いて製造される赤外線遮蔽膜と赤外線遮蔽光学部材は、赤外線遮蔽特性の経時的安定性に優れ、かつ、従来にない低ヘイズ化が可能となるため、各種建築物や車両の窓材等に使用される遮光フィルム、遮光部材等に適用できる効果を有する。
本発明において適用される六方晶を有する複合タングステン酸化物微粒子の結晶構造の模式図。 本発明に係る赤外線遮蔽膜等のブランク透過光強度の測定原理を示す説明図。 本発明に係る赤外線遮蔽膜等の拡散透過光強度の測定原理を示す説明図。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、本発明に係る赤外線遮蔽材料微粒子分散液は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3)で表記される複合タングステン酸化物微粒子から選択される1種以上の微粒子で構成される赤外線遮蔽材料微粒子が有機系溶媒中に分散された赤外線遮蔽材料微粒子分散液であって、該分散液に含まれない紫外線硬化樹脂が前記分散液に添加されて赤外線遮蔽膜形成用塗布液を構成する赤外線遮蔽材料微粒子分散液において、Cs、Sr、Ba、Ti、Zr、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、In、Snの内から選択される1種類以上の元素から成る金属塩で構成される第一添加剤と、アンモニアおよびアミン化合物から選ばれる1種以上で構成される第二添加剤を含有し、かつ、前記第一添加剤に対する第二添加剤の含有量が重量比で5%以上300%以下であることを特徴とするものである。
1.タングステン酸化物微粒子と複合タングステン酸化物微粒子
一般に、自由電子を含む材料は、プラズマ振動によって波長200nmから2600nmを有する太陽光線等の電磁波に反射吸収応答を示すことが知られている。このような材料の粉末を、光の波長より小さい微粒子とすると、可視光領域(波長380nmから780nm)の幾何学散乱が低減されて可視光領域の透明性が得られることが知られている。尚、本明細書において、「透明性」とは、可視光領域の光に対して散乱が少なく透過性が高いという意味で用いている。
そして、WO3中には有効な自由電子が存在しないため、WO3は近赤外線領域の吸収反射特性が少なく、赤外線遮蔽材料としては有効ではない。一方、酸素欠損を持つ3酸化タングステンや、3酸化タングステンにNa等の陽性元素を添加した所謂タングステンブロンズは、導電性材料で自由電子を持つ材料であることが知られており、これ等材料の単結晶等の分析により赤外線領域の光に対する自由電子の応答が示唆されている。そして、タングステンと酸素との化合物における組成範囲の特定部分において、赤外線遮蔽材料として特に有効な範囲があり、可視光領域においては透明で、近赤外線領域においては吸収を持つタングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子が見出され、当該タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子から選ばれる1種以上を樹脂やガラス等の媒体に分散させた赤外線遮蔽材料微粒子分散体、当該赤外線遮蔽材料微粒子分散体より製造した赤外線遮蔽体等が得られている(特許文献8参照)。
まず、本発明に係る赤外線遮蔽材料微粒子分散液において、溶媒中に含まれる赤外線遮蔽材料微粒子は、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3)で表記される複合タングステン酸化物微粒子から選ばれる1種以上により構成される。
そして、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子において、タングステンと酸素との好ましい組成範囲は、タングステンに対する酸素の組成比が3よりも少なく、更に、当該赤外線遮蔽材料微粒子をWyOzと記載したとき2.2≦z/y≦2.999である。このz/yの値が2.2以上であれば、赤外線遮蔽材料中に目的以外であるWO2の結晶相が現れるのを回避することができると共に、材料としての化学的安定性を得ることができるため有効な赤外線遮蔽材料として適用できる。一方、このz/yの値が2.999以下であれば、必要とされる量の自由電子が生成され、効率のよい赤外線遮蔽材料となる。
また、WyOzに、元素M(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種類以上の元素)を添加することで、z/y=3.0の場合も含めて当該WyOz中に自由電子が生成され、近赤外線領域に自由電子由来の吸収特性が発現し、1000nm付近の近赤外線吸収材料として有効となるため好ましい。ここで、WyOzに対し、上述した酸素量の制御と自由電子を生成する元素の添加とを併用することでより効率の良い赤外線遮蔽材料を得ることができる。酸素量の制御と自由電子を生成する元素の添加とを併用した赤外線遮蔽材料の一般式をMxWyOz(但し、Mは、前記M元素、Wはタングステン、Oは酸素)と表記したとき、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0の関係を満たす赤外線遮蔽材料が望ましい。
まず、元素Mの添加量を示すx/yの値について説明する。x/yの値が0.001より大きければ、十分な量の自由電子が生成され目的とする赤外線遮蔽効果を得ることができる。そして、元素Mの添加量が多いほど、自由電子の供給量が増加し、赤外線遮蔽効率も上昇するが、x/yの値が1程度で当該効果も飽和する。また、x/yの値が1より小さければ、当該赤外線遮蔽材料中に不純物相が生成されるのを回避できるので好ましい。
また、元素Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種類以上であることが好ましい。
ここで、元素Mが添加された当該MxWyOzにおける安定性の観点からは、元素Mは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reの内から選択される1種類以上の元素であることがより好ましい。そして、赤外線遮蔽材料としての光学特性、耐候性を向上させる観点からは、前記元素Mにおいて、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、4B族元素、5B族元素に属するものが更に好ましい。
次に、酸素量の制御を示すz/yの値について説明する。z/yの値については、MxWyOzで表記される赤外線遮蔽材料においても、上述したWyOzで表記される赤外線遮蔽材料と同様の機構が働くことに加え、z/y=3.0においても、上述した元素Mの添加量による自由電子の供給があるため、2.2≦z/y≦3.0が好ましく、更に好ましくは2.45≦z/y≦3.0である。
更に、複合タングステン酸化物微粒子が六方晶の結晶構造を有する場合、当該微粒子の可視光領域の透過性が向上し、近赤外領域の吸収が向上する。この六方晶の結晶構造を模式的に示す図1の平面図を参照しながら説明する。図1において、符号1で示すWO6単位にて形成される8面体が6個集合して六角形の空隙が構成され、当該空隙中に符号2で示す元素Mが配置して1個の単位を構成し、この1個の単位が多数集合して六方晶の結晶構造を構成する。
本発明において可視光領域の透過性を向上させ、近赤外領域の吸収を向上させる効果を得るためには、複合タングステン酸化物微粒子中に、図1で説明した単位構造(WO6単位で形成される8面体が6個集合して六角形の空隙が構成され、当該空隙中に元素Mが配置した構造)が含まれていればよく、当該複合タングステン酸化物微粒子が結晶質であっても非晶質であっても構わない。この六角形の空隙に元素Mの陽イオンが添加されて存在するとき、可視光領域の透過性が向上し、近赤外領域の吸収が向上する。ここで、一般的には、イオン半径の大きな元素Mを添加したとき当該六方晶が形成され、具体的には、Cs、K、Rb、Tl、In、Ba、Sn、Li、Ca、Sr、Feを添加したとき六方晶が形成されやすい。勿論これ等以外の元素でも、WO6単位で形成される六角形の空隙に添加元素Mが存在すればよく、前記元素に限定される訳ではない。
六方晶の結晶構造を有する複合タングステン酸化物微粒子が均一な結晶構造を有するとき、添加元素Mの添加量は、x/yの値で0.2以上0.5以下が好ましく、更に好ましくは0.33である。x/yの値が0.33となることで、添加元素Mが六角形の空隙の全てに配置されると考えられる。
また、六方晶以外では、正方晶、立方晶のタングステンブロンズも赤外線遮蔽材料として有効である。そして、これ等の結晶構造によって、近赤外線領域の吸収位置が変化する傾向があり、立方晶<正方晶<六方晶の順に吸収位置が長波長側に移動する傾向がある。また、それに付随して可視光線領域の吸収が少ないのは、六方晶<正方晶<立方晶の順である。よって、より可視光領域の光を透過して、より赤外線領域の光を遮蔽する用途には、六方晶のタングステンブロンズを用いることが好ましい。但し、ここで述べた光学特性の傾向は、あくまで大まかな傾向であり、添加元素の種類や、添加量、酸素量によって変化するものであり、本発明がこれに限定されるわけではない。
本発明に係るタングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子は、近赤外線領域、特に波長1000nm付近の光を大きく吸収するためその透過色調は青色系から緑色系となる物が多い。
また、前記赤外線遮蔽材料微粒子の粒子径は、その使用目的によって各々選定することができる。まず、透明性を保持した応用に使用する場合は800nm以下の分散粒子径を有していることが好ましい。これは、800nmよりも小さい粒子は散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光線領域の視認性を保持し、同時に効率良く透明性を保持することができるからである。特に、可視光領域の透明性を重視する場合は、更に粒子による散乱を考慮することが好ましい。この粒子による散乱の低減を重視するとき、分散粒子径は200nm以下、好ましくは100nm以下がよい。この理由は、当該粒子の分散粒子径が小さければ、幾何学散乱若しくはミー散乱に起因する波長400nm〜780nmの可視光線領域の光の散乱が低減される結果、赤外線遮蔽膜が曇りガラスのようになり鮮明な透明性が得られなくなる、のを回避できるからである。すなわち、分散粒子径が200nm以下になると、前記幾何学散乱若しくはミー散乱が低減し、レイリー散乱領域になる。レイリー散乱領域では、散乱光は分散粒子径の6乗に反比例して低減するため、分散粒子径の減少に伴い散乱が低減し透明性が向上するからである。更に、分散粒子径が100nm以下になると、散乱光は非常に少なくなり好ましい。光の散乱を回避する観点からは、分散粒子径が小さい方が好ましく、粒子径が1nm以上あれば工業的な製造は容易である。
尚、本発明において、微粒子の分散粒子径とは、媒体中に分散している微粒子が凝集して生成した凝集粒子の径を意味するものであり、市販されている種々の粒度分布計で測定することができる。例えば、微粒子分散液から微粒子の単体や凝集体が存在する状態のサンプルを採取し、当該サンプルを、動的光散乱法を原理とした粒度分布計を用いて測定し求めることができる。
前記分散粒子径を800nm以下と選択することにより、赤外線遮蔽材料微粒子を樹脂等の媒体中に分散させた赤外線遮蔽材料微粒子分散体(赤外線遮蔽膜)のヘイズ値は、可視光透過率85%以下においてヘイズ30%以下とすることができる。ここで、ヘイズが30%よりも大きい値であると曇りガラスのようになり、鮮明な透明性が得られない。
また、本発明に係る赤外線遮蔽材料微粒子の表面が、Si、Ti、Zr、Alの一種類以上を含有する酸化物で被覆されていることは、当該赤外線遮蔽材料の耐候性向上の観点から好ましい。
また、タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子から選ばれる1種以上において、一般式WyOzと表記したとき、2.45≦z/y≦2.999で表される組成比を有する、所謂「マグネリ相」は化学的に安定であり、近赤外線領域の吸収特性も良いので赤外線遮蔽材料として好ましい。
2.タングステン酸化物微粒子と複合タングステン酸化物微粒子の製造方法
一般式WyOzで表記されるタングステン酸化物微粒子、および、MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物微粒子は、タングステン化合物出発原料を不活性ガス雰囲気若しくは還元性ガス雰囲気中で熱処理して得ることができる。
そして、前記タングステン化合物出発原料として、3酸化タングステン粉末、酸化タングステンの水和物粉末、6塩化タングステン粉末、タングステン酸アンモニウム粉末、6塩化タングステンをアルコール中に溶解させた後乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、6塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち水を添加して沈殿させこれを乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、タングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末、金属タングステン粉末から選ばれたいずれか一種類以上であることが好ましい。
ここで、タングステン酸化物微粒子を製造する場合、製造工程の容易さの観点より、タングステン酸化物の水和物粉末、若しくは、タングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末を用いることが更に好ましく、複合タングステン酸化物微粒子を製造する場合には、出発原料が溶液であると各元素を容易に均一混合可能となる観点より、タングステン酸アンモニウム水溶液や6塩化タングステン溶液を用いることが更に好ましい。これ等原料を用い、これ等を不活性ガス雰囲気若しくは還元性ガス雰囲気中で熱処理して、上述した粒径のタングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子を得ることができる。
また、前記元素Mを含む一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物微粒子は、上述した一般式WyOzで表されるタングステン酸化物微粒子のタングステン化合物出発原料と同様であり、更に元素Mを、元素単体または化合物のかたちで含有するタングステン化合物を出発原料とする。ここで、各成分が分子レベルで均一混合した出発原料を製造するためには各原料を溶液で混合することが好ましく、元素Mを含むタングステン化合物出発原料が、水や有機溶媒等の溶媒に溶解可能なものであることが好ましい。例えば、元素Mを含有するタングステン酸塩、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、シュウ酸塩、酸化物、等が挙げられるが、これ等に限定されず、溶液状になるものであれば好ましい。
ここで、不活性雰囲気中における熱処理条件としては、650℃以上が好ましい。出発原料を650℃以上で熱処理して得られるタングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子は十分な赤外線遮蔽特性を有し赤外線遮蔽材料微粒子として比較的少量で実用性能を得ることが可能であり効率が良い。不活性ガスとしてはAr、N等の不活性ガスを用いることが良い。また、還元性雰囲気中の熱処理条件としては、まず出発原料を還元性ガス雰囲気中にて100℃以上650℃以下で熱処理し、次いで不活性ガス雰囲気中で650℃以上1200℃以下の温度で熱処理することが良い。この時の還元性ガスは、特に限定されないがHが好ましい。また還元性ガスとしてHを用いる場合は、還元雰囲気の組成として、Hが体積比で0.1%以上が好ましく、更に好ましくは2%以上が良い。0.1%以上であれば効率よく還元を進めることができる。
原料粉末を水素で還元して得られるタングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子は、マグネリ相を含み、良好な赤外線遮蔽特性を示し、この状態で赤外線遮蔽材料微粒子として使用可能である。しかし、酸化タングステン中に含まれる水素が不安定であるため、耐候性の面で応用が限定される可能性がある。そこで、この水素を含む酸化タングステン化合物を、不活性雰囲気中、650℃以上で熱処理することで、更に安定な赤外線遮蔽材料微粒子を得ることができる。この650℃以上の熱処理時の雰囲気は特に限定されないが、工業的観点から、N、Arが好ましい。当該650℃以上の熱処理により、赤外線遮蔽材料微粒子中にマグネリ相が得られ耐候性が向上する。
上述したように、得られた赤外線遮蔽材料微粒子の表面が、Si、Ti、Zr、Alの一種類以上の金属を含有する酸化物で被覆されていることは、耐候性の向上の観点から好ましい。被覆方法は特に限定されないが、当該赤外線遮蔽材料微粒子を分散した溶液中に、前記金属のアルコキシドを添加することで、赤外線遮蔽材料微粒子の表面を被覆することが可能である。
3.金属塩(第一添加剤)
前記赤外線遮蔽材料微粒子分散液に含まれる第一添加剤としての金属塩が赤外線遮蔽材料微粒子分散液に作用してその赤外線遮蔽特性の経時的な低下を低減させる理由として、本発明者等は、以下のように推察している。すなわち、赤外線遮蔽材料微粒子分散液中において金属塩は赤外線遮蔽材料微粒子の近傍または/および表面に存在し、この金属塩の作用により、空気中等から浸入してきた水分を十分に捕捉し、また、紫外線等によって発生したラジカルも十分に捕捉して、有害ラジカルが連鎖的に発生するのを抑制する結果、前記赤外線遮蔽特性の経時的な低下を低減させていると推察している。但し、金属塩の作用については未解明な点も多く、前記以外の作用が働いている可能性もあるため、前記作用に限定されるわけではない。
そして、本発明に適用される金属塩としては、Cs、Sr、Ba、Ti、Zr、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、In、Snの内から選択される金属と、無機酸若しくは有機酸から成る塩で構成され、これ等1種または2種以上を用いることが好ましい。尚、前記金属以外のアルカリ金属、アルカリ土類金属、Sc、Y、V、Al、Pb、Biとの塩についても、若干その効果は落ちるが、赤外線遮蔽材料微粒子分散液の赤外線遮蔽特性の経時的な低下を低減でき有効である。また、これ等以外の金属塩は効果がないため不適である。
また、本発明に適用される金属塩は、前記金属の塩であって、カルボン酸塩、カルボニル錯塩、炭酸塩、リン酸塩、過塩素酸塩、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩の内から選択されることが好ましい。
そして、前記カルボン酸塩を構成するカルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、オクチル酸、ナフテン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、アミノ酸等が挙げられる。また、前記カルボニル錯塩を構成するβ-ジケトンとしては、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ベンゾイルトリフルオロアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、2-テノイルトリフルオロアセトン等が例示される。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液における前記金属塩の含有量は、一般式WyOzで表記されるタングステン酸化物微粒子、一般式MxWyOzで表記される複合タングステン酸化物微粒子から選ばれる1種以上の微粒子で構成される赤外線遮蔽材料微粒子100重量部に対して0.01重量部以上20重量部以下であることが好ましい。
前記含有量が0.01重量部未満であると、空気中等から浸入してきた水分を十分に捕捉することが困難で、また、紫外線等によって発生したラジカルも十分に捕捉することが難しくなり、有害ラジカルが連鎖的に発生するのを抑制できなくなって赤外線遮蔽特性の経時的な低下を低減させる効果が不十分になる場合がある。他方、前記含有量が20重量部を越えると、赤外線遮蔽材料微粒子分散液と赤外線遮蔽膜形成用塗布液およびこれ等を用いて得られる赤外線遮蔽膜や赤外線遮蔽光学部材中における赤外線遮蔽材料微粒子の分散性が悪くなり、ヘイズを悪化させてしまう場合がある。
従って、赤外線遮蔽材料微粒子分散液における金属塩の含有量は、前記タングステン酸化物微粒子、前記複合タングステン酸化物微粒子から選ばれる1種以上の微粒子で構成される赤外線遮蔽材料微粒子100重量部に対して0.01重量部以上20重量部以下であることが好ましい。
4.アンモニア、アミン化合物(第二添加剤)
前記赤外線遮蔽材料微粒子分散液に含まれる第二添加剤としてのアンモニアおよびアミン化合物から選ばれる1種以上が紫外線硬化樹脂を添加した赤外線遮蔽材料微粒子分散液(すなわち、赤外線遮蔽膜形成用塗布液)に作用して赤外線遮蔽材料微粒子と紫外線硬化樹脂との相溶性を改善させる理由として、本発明者等は、以下のように推察している。すなわち、赤外線遮蔽膜形成用塗布液中において、第二添加剤としてのアンモニアおよびアミン化合物は第一添加剤としての金属塩の金属イオンに配向し、立体障害や表面改質等の効果により赤外線遮蔽材料微粒子と紫外線硬化樹脂との相溶性を改善し、特に、乾燥時における赤外線遮蔽材料微粒子の凝集を抑止する結果、製造される赤外線遮蔽膜の低ヘイズ化を可能にしていると推察している。但し、アンモニアおよびアミン化合物の作用については未解明な点も多く、前記以外の作用が関係している可能性もあるため、前記作用に限定されるわけではない。
そして、本発明に適用されるアンモニアの溶液としては、メタノール溶液、エタノール溶液、2−プロパノール溶液の内から選択される溶液を用いることが好ましい。アンモニア水を用いた場合、赤外線遮蔽材料微粒子分散液の分散性が悪化するため不適である。
また、本発明に適用されるアミン化合物は、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルアミン、エチルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ベヘニルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ビペリジン、ピリジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンエキサミン、オレイルプロピレンジアミン、N−ヒドロキシエチルラウリルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミンの内から選択されることが好ましい。
また、金属塩で構成される第一添加剤に対するアンモニアおよびアミン化合物から選ばれる1種以上で構成される第二添加剤の含有量は、重量比で5%以上300%以下であることを要する。第一添加剤に対する第二添加剤の含有量が5%未満である場合、第二添加剤が金属イオンに配向して赤外線遮蔽材料微粒子と紫外線硬化樹脂との相溶性を改善させる作用が不十分となり、乾燥時に赤外線遮蔽材料微粒子が凝集してヘイズを悪化させてしまう。他方、第一添加剤に対する第二添加剤の含有量が300%を越えた場合、塩基性成分の増加により赤外線遮蔽材料微粒子分散液が塩基性に振られて当該分散液の液安定性が悪くなり、粘度変化が大きくなってしまう。このため、金属塩で構成される第一添加剤に対するアンモニアおよびアミン化合物から選ばれる1種以上で構成される第二添加剤の含有量は、重量比で5%以上300%以下であることを要する。
5.溶媒
アンモニアおよびアミン化合物から選ばれる1種以上で構成される第二添加剤を含有する本発明に係る赤外線遮蔽材料微粒子分散液に用いられる有機系溶媒は、特に限定されることなく公知の有機溶剤を使用することができる。具体的には、メタノール(MA)、エタノール(EA)、1−プロパノール(NPA)、イソプロパノール(IPA)、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤、3−メチル−メトキシ−プロピオネート(MMP)等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル(MCS)、エチレングリコールモノエチルエーテル(ECS)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(IPC)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、プロピレングリコールエチルエーテル(PE)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート(PE−AC)等のグリコール誘導体、フォルムアミド(FA)、N−メチルフォルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチレンクロライド、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素類等を挙げることができる。中でも極性の低い有機溶剤が好ましく、特にMIBK、MEK等のケトン類や、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、PGMEA、PE−AC等のグリコールエーテルアセテート類等、疎水性の高いものがより好ましい。これ等の有機系溶媒は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
6.赤外線遮蔽膜と赤外線遮蔽光学部材およびその製造方法
本発明に係る赤外線遮蔽材料微粒子分散液の好ましい使用方法は、この分散液に紫外線硬化樹脂を添加して赤外線遮蔽膜形成用塗布液を構成し、かつ、この赤外線遮蔽膜形成用塗布液を適宜基材表面に塗布して塗布膜を形成した後、この塗布膜から溶媒を蒸発させ、所定量の紫外線を照射して赤外線遮蔽膜を製造する方法が挙げられる。
そして、この使用方法では、予め高温で焼成して得られた赤外線遮蔽材料微粒子を含有する赤外線遮蔽材料微粒子分散液を用いて、前記赤外線遮蔽材料微粒子が含まれる赤外線遮蔽膜を基材表面に結着させることができる。このため、耐熱温度の低い基材への適用が可能となり、赤外線遮蔽膜形成の際に大型の装置を必要とせず安価であるという利点がある。
また、赤外線遮蔽材料微粒子と金属塩(第一添加剤)および紫外線硬化樹脂が含まれる赤外線遮蔽材料微粒子分散液(赤外線遮蔽膜形成用塗布液)中にアンモニアおよびアミン化合物から選ばれる1種以上で構成される第二添加剤を必要量添加し、塗布膜を形成するだけで赤外線遮蔽材料微粒子、金属塩(第一添加剤)およびアンモニアおよびアミン化合物から選ばれる1種以上で構成される第二添加剤を含有する赤外線遮蔽膜が得られることから、赤外線遮蔽特性の経時的低下が防止されかつ低ヘイズな赤外線遮蔽光学部材を簡便に製造することが可能となる。この赤外線遮蔽光学部材を用いることにより、太陽光を受ける屋外用途等への用途拡大が図れ、極めて有用である。
(6-1)紫外線硬化樹脂
赤外線遮蔽材料微粒子分散液に添加されて赤外線遮蔽膜形成用塗布液を構成する紫外線硬化樹脂としては、その目的に応じて選定可能である。例えば、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルエポキシ樹脂、アクリルポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ふっ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ビニルブチラール樹脂が挙げられる。
(6-2)塗布膜を形成する基材と塗布方法
また、赤外線遮蔽膜形成用塗布液が塗布される基材としては所望によりフィルムでもボードでもよく、形状は限定されない。透明基材の材料としては、PET、アクリル、ウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ふっ素樹脂等が各種目的に応じて使用可能である。また、樹脂以外ではガラスの適用が可能である。
次に、赤外線遮蔽膜形成用塗布液の塗布方法としては基材表面に塗布膜を均一に形成できればよく、特に限定されないが、バーコート法、グラビヤコート法、スプレーコート法、ディップコート法等が例示される。
7.赤外線遮蔽材料微粒子分散液、赤外線遮蔽膜形成用塗布液と赤外線遮蔽膜の透過散乱プロファイル測定
赤外線遮蔽材料微粒子分散液、赤外線遮蔽膜形成用塗布液、あるいは赤外線遮蔽膜におけるヘイズの測定方法として、試料である赤外線遮蔽材料微粒子分散体(赤外線遮蔽材料微粒子が樹脂やガラス等の適宜媒体中に分散して成る分散体:特許文献8参照)に光を当てたときの透過光の成分として直線入射光と散乱光とに着目し、波長毎の透過散乱率を求めることによりヘイズを直接評価する方法を本発明者は既に提案している(特開2009−150979号公報参照)。
すなわち、特開2009−150979号公報の段落0029に記載されているように、従来のヘイズメータ(特開2000−211063号公報の段落0015参照)を用いた測定では波長毎の透過散乱率(散乱透過率)を求めることはできず、散乱透過の全光線透過光に対する割合が求められているに過ぎないため、赤外線遮蔽材料微粒子分散体の「ブルーヘイズ」を評価(散乱透過率の波長360nm〜500nm間における極大値からブルーヘイズの大きさを評価)することは困難であった。因みに、「ブルーヘイズ」が大きい場合、赤外線遮蔽材料微粒子分散体が車のフロントガラス等に適用されていると視界不良を引き起こし、建築用窓ガラス等に適用されていると美観を損ねる弊害がある(特開2009−150979号公報の段落0007参照)。
このため、赤外線遮蔽材料微粒子分散体における「ヘイズ」を厳密に評価する場合、従来のヘイズメータを用いて測定した「ヘイズ値(濁度)」と、本発明者が開発した透過散乱プロファイル測定装置を用いて測定した「透過散乱率」の両方で行うことが望ましい。
以下、波長毎の透過散乱率(すなわち、透過散乱プロファイル)を測定する原理を図2および図3を用いて説明する。
(7-1)透過散乱プロファイルの測定装置
まず、透過散乱プロファイルを測定する測定装置は、図2および図3に示すように球状本体内面が拡散反射性を有しかつ測定試料(赤外線遮蔽材料微粒子分散液、この赤外線遮蔽材料微粒子分散液を用いて得られた赤外線遮蔽膜若しくは赤外線遮蔽光学部材)4が取り付けられる第一開口部(図示せず)、標準反射板7またはライトトラップ部品8が取り付けられる第二開口部(図示せず)、受光器5が取り付けられる第三開口部(図示せず)を球状本体外面に有する積分球6と、前記第一開口部を介し球状空間内に入射される直線光を出射する光源3と、前記受光器5に取り付けられかつ受光された反射光または散乱光を分光する分光器(図示せず)と、前記分光器に接続されかつ分光された反射光または散乱光の分光データを保存するデータ保存手段(図示せず)と、保存された前記ブランク透過光強度と拡散透過光強度の各分光データから拡散透過光強度とブランク透過光強度の波長毎の比をそれぞれ演算して波長毎の透過散乱率を得る演算手段(図示せず)を具備している。
ここで、球状本体外面に第一、第二および第三開口部(図示せず)を有する積分球6は、球状本体内面に硫酸バリウム若しくはスペクトラロン(SPECTRALON:登録商標)等が塗布されて拡散反射性を有するもので、前記標準反射板7への入射角は、標準側、対照側とも10°であればよい。また、前記受光器5としては、例えば、光電子倍増管(紫外・可視域)、冷却硫化鉛(近赤外域)を使用したものを用いることができる。また、受光器5に取り付けられる分光器(図示せず)については、紫外・可視域の波長測定範囲、測光正確さ(±0.002Abs)が必要である。
次に、球状空間内に入射される直線光を出射する光源3としては、例えば、紫外域は重水素ランプ、可視・近赤外域は50Wハロゲンランプが適用される。
また、標準反射板7には、例えば材質がスペクトラロン(SPECTRALON:登録商標)の白板を用いることができ、前記ライトトラップ部品8には、入射された直線光を反射させずにトラップする機能が必要で、例えば、入射された直線光をほぼ完全に吸収するダークボックスが用いられる。
(7-2)透過散乱プロファイルの極大値を評価する方法
次に、透過散乱プロファイルの測定装置を用いて、測定試料である赤外線遮蔽材料微粒子分散液あるいは赤外線遮蔽膜の透過散乱プロファイルの極大値を評価するには、「ブランク透過光強度測定工程」と、「拡散透過光強度測定工程」と、「拡散透過率演算工程」との各工程を要する。
(7-2-1)まず、「ブランク透過光強度測定工程」においては、図2に示すように積分球6の第二開口部に標準反射板7を取り付け、第一開口部に測定試料(赤外線遮蔽材料微粒子分散液、赤外線遮蔽膜形成用塗布液、この赤外線遮蔽材料微粒子分散液を用いて得られた赤外線遮蔽膜若しくは赤外線遮蔽光学部材)を取り付けない状態で外部光源3からの直線光を第一開口部を介し球状空間内に入射させると共に、標準反射板7で反射された反射光を受光器5で受光し、かつ、受光器5に取り付けられた分光器(図示せず)により分光して前記反射光の分光データを得る。
(7-2-2)次に、「透過散乱光強度測定工程」においては、図3に示すように積分球6の第二開口部にライトトラップ部品8を取り付け、第一開口部に測定試料(赤外線遮蔽材料微粒子分散液、この赤外線遮蔽材料微粒子分散液を用いて得られた赤外線遮蔽膜若しくは赤外線遮蔽光学部材)4を取り付けた状態で外部光源3からの直線光を測定試料4と第一開口部を介し球状空間内に入射させると共に、ライトトラップ部品8でトラップされた光以外の散乱光を前記受光器5で受光し、かつ、受光器5に取り付けられた分光器(図示せず)により分光して散乱光の分光データを得る。
(7-2-3)「透過散乱率演算工程」において、データ保存手段(図示せず)により保存されたブランク透過光強度と透過散乱光強度の各分光データに基づき、演算手段(図示せず)により透過散乱光強度とブランク透過光強度の波長毎の比をそれぞれ演算して波長毎の透過散乱率を求めると共に、得られた波長毎の透過散乱率から、測定試料である赤外線遮蔽材料微粒子分散液、この赤外線遮蔽材料微粒子分散液を用いて得られた赤外線遮蔽膜若しくは赤外線遮蔽光学部材の透過散乱プロファイルにおける波長360nm〜500nm領域の極大値を求めることができる。
(7-2-4)そして、可視光透過率を40%から60%に設定した赤外線遮蔽材料微粒子分散液の波長360nm〜500nm領域における透過散乱プロファイルの極大値が、1.5%以下となっていることが好ましい。この条件を満たしている場合、この赤外線遮蔽材料微粒子分散液を用いて製造された赤外線遮蔽材料微粒子分散体(赤外線遮蔽膜と赤外線遮蔽光学部材)は、ヘイズ(上述した「ブルーヘイズ」)がほとんど観測されないことが確認されている。
(7-3)尚、透過散乱プロファイルを測定する前記測定装置においては、前記光源3と測定試料(赤外線遮蔽材料微粒子分散液、この赤外線遮蔽材料微粒子分散液を用いて得られた赤外線遮蔽膜若しくは赤外線遮蔽光学部材)4との間に光線調整用の光学系を設けてもよい。そして、この光学系では、例えば複数枚のレンズを組み合わせて平行光を調整し、絞りにより光量の調整を行う。場合によっては、フィルターによって特定波長のカットを行ってもよい。
8.赤外線遮蔽光学部材
本発明に係る赤外線遮蔽材料微粒子分散液は、タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子から選ばれる1種以上の微粒子で構成される赤外線遮蔽材料微粒子と、Cs、Sr、Ba、Ti、Zr、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、In、Snの内から選択される1種類以上の元素から成る金属塩で構成される第一添加剤と、アンモニアおよびアミン化合物から選ばれる1種以上で構成される第二添加剤を含有する。
そして、第一添加剤の作用により赤外線遮蔽材料微粒子の微細化に伴う赤外線遮蔽特性の経時的低下を防止することが可能となり、第二添加剤の作用により紫外線硬化樹脂が適用された場合におけるヘイズの悪化も防止することが可能となる。
従って、本発明に係る赤外線遮蔽膜形成用塗布液、紫外線硬化樹脂を添加した赤外線遮蔽材料微粒子分散液(すなわち、赤外線遮蔽膜形成用塗布液)を用いて製造される赤外線遮蔽膜および基材と赤外線遮蔽膜とで構成される赤外線遮蔽光学部材においては、赤外線遮蔽特性の経時的安定性に優れかつ低ヘイズ化が可能なため、各種建築物や車両の窓材等に使用される遮光フィルム、遮光部材等に適用することができる。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれ等実施例に当然のことながら限定されるわけではない。
また、実施例中の可視光透過率とは、試料に垂直入射する昼光の光束について透過光束の入射光束に対する比である。ここで、昼光とは、国際照明委員会が定めたCIE昼光を意味する。このCIE昼光では、観測データに基づき黒体放射の色温度と同じ色温度の昼光の分光照度分布を波長560nmの値に対する相対値で示している。また、光束とは、放射の波長ごとの放射束と視感度(人の目の光に対する感度)の値の積の数値を波長について積分したものである。つまり、「可視光透過率(%)」とは波長380nm〜780nmの領域の光透過量を人の目の視感度で規格化した透過光量の積算値で人の目の感じる明るさを意味する値である。
「透過率(%)」の測定は、分光光度計(日立製作所製U−4100)を使用して波長300nm〜2600nmの範囲において5nmの間隔で測定している。
「透過散乱率(%)」の測定は、分光光度計(日立製作所製U−4100)を用い、上述した方法により波長300nm〜800nmの範囲で1nmの間隔で測定している。
膜の「ヘイズ値(%)」は、JIS K 7105に基づき測定を行なった。
[実施例1]
Cs0.33WO3粉末を100重量部、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKと略称する場合がある)320重量部、分散剤80重量部を混合し、分散処理を行い、平均分散粒子径5nmの分散液(A液)とした。
ハードコート用紫外線硬化樹脂 UV−7600B(日本合成化学株式会社)350重量部、光重合開始剤「IRGACURE184」(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社)20重量部、溶媒MIBK 130重量部を混合し紫外線硬化樹脂(B液)とした。
前記A液500重量部とB液500重量部、酢酸ニッケル5重量部とアンモニア0.25重量部(金属塩に対し5%)とを混合して赤外線遮蔽材料微粒子分散液とした。
この赤外線遮蔽材料微粒子分散液(塗布液)を厚さ50μmのPETフィルム上にバーコーターを用い塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を70℃で60秒乾燥して溶剤を蒸発させた後、高圧水銀ランプで硬化させ赤外線遮蔽膜を得た。
この赤外線遮蔽膜の光学特性を測定したところ、可視光透過率は65%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。更に、ヘイズは0.8%であり、透明性が極めて高く内部の状況が外部からもはっきり確認できた。
上述した拡散透過プロファイルの測定原理に従って波長360nm〜500nm領域における透過散乱プロファイルの極大値(透過散乱率)を測定したところ1.4%と低散乱率であった。また、波長820nmにおける透過率Tは6.5%であり、良好な近赤外線フィルターであることが確認された。
この赤外線遮蔽膜を80℃の95RH%の高温恒湿に48時間暴露し、同様に透過プロファイルを測定したところ、820nmにおける透過率は9.3%であった。80℃の95RH%の高温恒湿暴露による820nmの透過率の上昇量(ΔT)は2.8%と小さいことが分かった。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液を40℃で1ヶ月保管後も粘度上昇は見られなかった。
[実施例2]
アンモニアの添加量を5重量部(金属塩に対し100%)とした以外は、実施例1と同様にして赤外線遮蔽膜を作製した。
得られた赤外線遮蔽膜について、実施例1と同様の評価を行った。
まず、可視光透過率は67%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。更に、ヘイズは0.8%であり、透明性が極めて高いことも確認できた。波長360nm〜500nm領域における透過散乱の極大値(透過散乱率)は1.1%であった。また、波長820nmにおける透過率Tは7.3%であり、良好な近赤外線フィルターであることが確認された。
そして、80℃の95RH%の高温恒湿に48時間暴露後の820nmにおける透過率の上昇量(ΔT)は2.7%と小さいことが分かった。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液を40℃で1ヶ月保管後も粘度上昇は見られなかった。
[実施例3]
アンモニアの添加量を15重量部(金属塩に対し300%)とした以外は、実施例1と同様にして赤外線遮蔽膜を作製した。
得られた赤外線遮蔽膜について、実施例1と同様の評価を行った。
まず、可視光透過率は68%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。更に、ヘイズは0.8%であり、透明性が極めて高いことも確認できた。波長360nm〜500nm領域における透過散乱の極大値(透過散乱率)は1.3%であった。また、波長820nmにおける透過率Tは7.9%であり、良好な近赤外線フィルターであることが確認された。
そして、80℃の95RH%の高温恒湿に48時間暴露後の820nmにおける透過率の上昇量(ΔT)は2.9%と小さいことが分かった。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液を40℃で1ヶ月保管後も粘度上昇は見られなかった。
[実施例4]
アンモニアの添加量を5重量部(金属塩に対し100%)、金属塩を酢酸亜鉛に変えた以外は、実施例1と同様にして赤外線遮蔽膜を作製した。
得られた赤外線遮蔽膜について、実施例1と同様の評価を行った。
まず、可視光透過率は67%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。更に、ヘイズは0.8%であり、透明性が極めて高いことも確認できた。波長360nm〜500nm領域における透過散乱の極大値(透過散乱率)は1.1%であった。また、波長820nmにおける透過率Tは7.6%であり、良好な近赤外線フィルターであることが確認された。
そして、80℃の95RH%の高温恒湿に48時間暴露後の820nmにおける透過率の上昇量(ΔT)は2.6%と小さいことが分かった。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液を40℃で1ヶ月保管後も粘度上昇は見られなかった。
[実施例5]
アンモニアをジエタノールアミンに変えた以外は、実施例1と同様にして赤外線遮蔽膜を作製した。
得られた赤外線遮蔽膜について、実施例1と同様の評価を行った。
まず、可視光透過率は64%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。更に、ヘイズは0.8%であり、透明性が極めて高いことも確認できた。波長360nm〜500nm領域における透過散乱の極大値(透過散乱率)は1.4%であった。また、波長820nmにおける透過率Tは6.3%であり、良好な近赤外線フィルターであることが確認された。
そして、80℃の95RH%の高温恒湿に48時間暴露後の820nmにおける透過率の上昇量(ΔT)は2.1%と小さいことが分かった。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液を40℃で1ヶ月保管後も粘度上昇は見られなかった。
[実施例6]
アンモニアをジエタノールアミンに変えて添加量を5重量部(金属塩に対し100%)とした以外は、実施例1と同様にして赤外線遮蔽膜を作製した。
得られた赤外線遮蔽膜について、実施例1と同様の評価を行った。
まず、可視光透過率は66%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。更に、ヘイズは0.8%であり、透明性が極めて高いことも確認できた。波長360nm〜500nm領域における透過散乱の極大値(透過散乱率)は1.1%であった。また、波長820nmにおける透過率Tは7.1%であり、良好な近赤外線フィルターであることが確認された。
そして、80℃の95RH%の高温恒湿に48時間暴露後の820nmにおける透過率の上昇量(ΔT)は2.3%と小さいことが分かった。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液を40℃で1ヶ月保管後も粘度上昇は見られなかった。
[実施例7]
アンモニアをジエタノールアミンに変えて添加量を15重量部(金属塩に対し300%)とした以外は、実施例1と同様にして赤外線遮蔽膜を作製した。
得られた赤外線遮蔽膜について、実施例1と同様の評価を行った。
まず、可視光透過率は68%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。更に、ヘイズは0.8%であり、透明性が極めて高いことも確認できた。波長360nm〜500nm領域における透過散乱の極大値(透過散乱率)は1.3%であった。また、波長820nmにおける透過率Tは8.0%であり、良好な近赤外線フィルターであることが確認された。
そして、80℃の95RH%の高温恒湿に48時間暴露後の820nmにおける透過率の上昇量(ΔT)は2.6%と小さいことが分かった。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液を40℃で1ヶ月保管後も粘度上昇は見られなかった。
[実施例8]
アンモニアをモノエタノールアミンに変えた以外は、実施例1と同様にして赤外線遮蔽膜を作製した。
得られた赤外線遮蔽膜について、実施例1と同様の評価を行った。
まず、可視光透過率は66%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。更に、ヘイズは0.8%であり、透明性が極めて高いことも確認できた。波長360nm〜500nm領域における透過散乱の極大値(透過散乱率)は1.0%であった。また、波長820nmにおける透過率Tは6.9%であり、良好な近赤外線フィルターであることが確認された。
そして、80℃の95RH%の高温恒湿に48時間暴露後の820nmにおける透過率の上昇量(ΔT)は2.3%と小さいことが分かった。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液を40℃で1ヶ月保管後も粘度上昇は見られなかった。
[実施例9]
アンモニアをモノエタノールアミンに変えて添加量を5重量部(金属塩に対し100%)とした以外は、実施例1と同様にして赤外線遮蔽膜を作製した。
得られた赤外線遮蔽膜について、実施例1と同様の評価を行った。
まず、可視光透過率は67%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。更に、ヘイズは0.8%であり、透明性が極めて高いことも確認できた。波長360nm〜500nm領域における透過散乱の極大値(透過散乱率)は1.3%であった。また、波長820nmにおける透過率Tは7.7%であり、良好な近赤外線フィルターであることが確認された。
そして、80℃の95RH%の高温恒湿に48時間暴露後の820nmにおける透過率の上昇量(ΔT)は2.6%と小さいことが分かった。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液を40℃で1ヶ月保管後も粘度上昇は見られなかった。
[実施例10]
アンモニアをモノエタノールアミンに変えて添加量を15重量部(金属塩に対し300%)とした以外は、実施例1と同様にして赤外線遮蔽膜を作製した。
得られた赤外線遮蔽膜について、実施例1と同様の評価を行った。
まず、可視光透過率は68%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。更に、ヘイズは0.8%であり、透明性が極めて高いことも確認できた。波長360nm〜500nm領域における透過散乱の極大値(透過散乱率)は1.0%であった。また、波長820nmにおける透過率Tは8.2%であり、良好な近赤外線フィルターであることが確認された。
そして、80℃の95RH%の高温恒湿に48時間暴露後の820nmにおける透過率の上昇量(ΔT)は2.3%と小さいことが分かった。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液を40℃で1ヶ月保管後も粘度上昇は見られなかった。
[実施例11]
アンモニアをトリエタノールアミンに変えた以外は、実施例1と同様にして赤外線遮蔽膜を作製した。
得られた赤外線遮蔽膜について、実施例1と同様の評価を行った。
まず、可視光透過率は65%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。更に、ヘイズは0.8%であり、透明性が極めて高いことも確認できた。波長360nm〜500nm領域における透過散乱の極大値(透過散乱率)は1.4%であった。また、波長820nmにおける透過率Tは6.8%であり、良好な近赤外線フィルターであることが確認された。
そして、80℃の95RH%の高温恒湿に48時間暴露後の820nmにおける透過率の上昇量(ΔT)は2.1%と小さいことが分かった。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液を40℃で1ヶ月保管後も粘度上昇は見られなかった。
[実施例12]
アンモニアをトリエタノールアミンに変えて添加量を5重量部(金属塩に対し100%)とした以外は、実施例1と同様にして赤外線遮蔽膜を作製した。
得られた赤外線遮蔽膜について、実施例1と同様の評価を行った。
まず、可視光透過率は67%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。更に、ヘイズは0.8%であり、透明性が極めて高いことも確認できた。波長360nm〜500nm領域における透過散乱の極大値(透過散乱率)は1.1%であった。また、波長820nmにおける透過率Tは7.4%であり、良好な近赤外線フィルターであることが確認された。
そして、80℃の95RH%の高温恒湿に48時間暴露後の820nmにおける透過率の上昇量(ΔT)は2.2%と小さいことが分かった。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液を40℃で1ヶ月保管後も粘度上昇は見られなかった。
[実施例13]
アンモニアをトリエタノールアミンに変えて添加量を15重量部(金属塩に対し300%)とした以外は、実施例1と同様にして赤外線遮蔽膜を作製した。
得られた赤外線遮蔽膜について、実施例1と同様の評価を行った。
まず、可視光透過率は69%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。更に、ヘイズは0.8%であり、透明性が極めて高いことも確認できた。波長360nm〜500nm領域における透過散乱の極大値(透過散乱率)は1.3%であった。また、波長820nmにおける透過率Tは8.3%であり、良好な近赤外線フィルターであることが確認された。
そして、80℃の95RH%の高温恒湿に48時間暴露後の820nmにおける透過率の上昇量(ΔT)は2.4%と小さいことが分かった。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液を40℃で1ヶ月保管後も粘度上昇は見られなかった。
[実施例14]
アンモニアをエチレンジアミンに変えて添加量を5重量部(金属塩に対し100%)とした以外は、実施例1と同様にして赤外線遮蔽膜を作製した。
得られた赤外線遮蔽膜について、実施例1と同様の評価を行った。
まず、可視光透過率は67%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。更に、ヘイズは0.8%であり、透明性が極めて高いことも確認できた。波長360nm〜500nm領域における透過散乱の極大値(透過散乱率)は1.1%であった。また、波長820nmにおける透過率Tは7.4%であり、良好な近赤外線フィルターであることが確認された。
そして、80℃の95RH%の高温恒湿に48時間暴露後の820nmにおける透過率の上昇量(ΔT)は2.3%と小さいことが分かった。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液を40℃で1ヶ月保管後も粘度上昇は見られなかった。
[実施例15]
アンモニアをオレイルアミンに変えて添加量を10重量部(金属塩に対し200%)とした以外は、実施例1と同様にして赤外線遮蔽膜を作製した。
得られた赤外線遮蔽膜について、実施例1と同様の評価を行った。
まず、可視光透過率は68%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。更に、ヘイズは0.8%であり、透明性が極めて高いことも確認できた。波長360nm〜500nm領域における透過散乱の極大値(透過散乱率)は1.5%であった。また、波長820nmにおける透過率Tは7.8%であり、良好な近赤外線フィルターであることが確認された。
そして、80℃の95RH%の高温恒湿に48時間暴露後の820nmにおける透過率の上昇量(ΔT)は2.5%と小さいことが分かった。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液を40℃で1ヶ月保管後も粘度上昇は見られなかった。
Figure 2017155105
[比較例1]
酢酸ニッケルおよびアンモニアを添加しない以外は、実施例1と同様にして赤外線遮蔽膜を作製し、かつ、実施例1と同様の評価を行った。
まず、可視光透過率は65%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。更に、ヘイズは0.8%であり、透明性が極めて高いことも確認できた。波長360nm〜500nm領域における透過散乱の極大値(透過散乱率)は1.1%であった。また、波長820nmにおける透過率Tは6.6%であり、良好な近赤外線フィルターであることが確認された。
そして、80℃の95RH%の高温恒湿に48時間暴露後の820nmにおける透過率の上昇量(ΔT)は4.2%と大きいことが分かった。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液を40℃で1ヶ月保管後も粘度上昇は見られなかった。
[比較例2]
アンモニアを添加しない以外は、実施例1と同様にして赤外線遮蔽膜を作製し、かつ、実施例1と同様の評価を行った。
まず、可視光透過率は66%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。しかし、ヘイズは1.4%であり、透明性が極めて低いことも確認できた。波長360nm〜500nm領域における透過散乱の極大値(透過散乱率)は4.5%と散乱率も大きかった。また、波長820nmにおける透過率Tは7.0%であり、良好な近赤外線フィルターであることが確認された。
そして、80℃の95RH%の高温恒湿に48時間暴露後の820nmにおける透過率の上昇量(ΔT)は2.3%と小さいことが分かった。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液を40℃で1ヶ月保管後も粘度上昇は見られなかった。
[比較例3]
アンモニアを添加しないことと、金属塩を酢酸亜鉛に換えた以外は、実施例1と同様にして赤外線遮蔽膜を作製し、かつ、実施例1と同様の評価を行った。
まず、可視光透過率は66%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。しかし、ヘイズは1.4%であり、透明性が極めて低いことも確認できた。波長360nm〜500nm領域における透過散乱の極大値(透過散乱率)は4.8%と散乱率も大きかった。また、波長820nmにおける透過率Tは7.3%であり、良好な近赤外線フィルターであることが確認された。
そして、80℃の95RH%の高温恒湿に48時間暴露後の820nmにおける透過率の上昇量(ΔT)は2.5%と小さいことが分かった。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液を40℃で1ヶ月保管後も粘度上昇は見られなかった。
[比較例4]
アンモニアの添加量を0.1重量部(金属塩に対し2%)とした以外は、実施例1と同様にして赤外線遮蔽膜を作製し、かつ、実施例1と同様の評価を行った。
まず、可視光透過率は67%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。しかし、ヘイズは1.3%であり、透明性が極めて低いことも確認できた。波長360nm〜500nm領域における透過散乱の極大値(透過散乱率)は3.8%と散乱率も大きかった。また、波長820nmにおける透過率Tは7.6%であり、良好な近赤外線フィルターであることが確認された。
そして、80℃の95RH%の高温恒湿に48時間暴露後の820nmにおける透過率の上昇量(ΔT)は2.1%と小さいことが分かった。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液を40℃で1ヶ月保管後も粘度上昇は見られなかった。
[比較例5]
アンモニアの添加量を17.5重量部(金属塩に対し350%)とした以外は、実施例1と同様にして赤外線遮蔽膜を作製し、かつ、実施例1と同様の評価を行った。
まず、可視光透過率は69%で可視光領域の光を十分透過していることが分かった。しかし、ヘイズは1.2%であり、透明性が極めて低いことも確認できた。波長360nm〜500nm領域における透過散乱の極大値(透過散乱率)は2.5%と散乱率も大きかった。また、波長820nmにおける透過率Tは8.1%であり、良好な近赤外線フィルターであることが確認された。
そして、80℃の95RH%の高温恒湿に48時間暴露後の820nmにおける透過率の上昇量(ΔT)は3.2%と大きいことが分かった。
また、赤外線遮蔽材料微粒子分散液を40℃で1ヶ月保管後において分散液はゲル化していた。
Figure 2017155105
[評 価]
(1)実施例1〜実施例3では酢酸ニッケル(金属塩)とアンモニアを添加しているため、金属塩が添加されていない比較例1と較べて高温恒湿による加速試験での近赤外線遮蔽特性の劣化が抑制されていることが表1と表2の上昇量(ΔT)から確認される。
また、金属塩は添加されているがアンモニアが添加されていない比較例2と較べてヘイズおよび透過散乱の極大値が低く透明性が高いことが表1と表2のヘイズおよび透過散乱の極大値(透過散乱率)から確認される。
これ等の結果、本発明に係る赤外線遮蔽膜(赤外線遮蔽光学部材)が従来にない赤外線遮蔽特性の経時安定性および高い透明性を有することが分かる。
(2)実施例5〜実施例7はアンモニアに変えてジエタノールアミンを添加し、実施例8〜実施例10はアンモニアに変えてモノエタノールアミンとし、実施例11〜実施例13はアンモニアに変えてトリエタノールアミンとし、実施例14はアンモニアに変えてエチレンジアミンとし、実施例15はアンモニアに変えてオレイルアミンにした実施例に関し、表1の上昇量(ΔT)およびヘイズ、透過散乱率から確認されるように耐湿熱性の改良効果と良好なヘイズ値が得られることが分かる。
(3)実施例4は実施例2に対し添加する金属塩の種類を変更した実施例に係り、実施例2の酢酸ニッケルに変えて、実施例4では酢酸亜鉛を添加したものである。
そして、表1の上昇量(ΔT)およびヘイズ、透過散乱率から確認されるように耐湿熱性の改良効果と良好なヘイズ値が得られることが分かる。
(4)比較例3は比較例2の金属塩を酢酸亜鉛に変更した比較例に関する。
そして、表1のヘイズおよび透過散乱率から確認されるようにヘイズ値が高くかつ透明性が低いことが分かる。
(5)比較例4は、実施例1〜実施例3に較べるとアンモニアの添加量が0.1重量部(金属塩に対し2%)と少ないため、表1のヘイズおよび透過散乱率から確認されるようにヘイズ値が高くかつ透明性が低いことが分かる。
また、比較例5は、実施例1〜実施例3に較べるとアンモニアの添加量が17.5重量部(金属塩に対し350%)と多いため赤外線遮蔽材料微粒子分散液の安定性が悪化し、表1のヘイズおよび透過散乱率から確認されるようにヘイズ値が高くかつ透明性が低いことが分かる。
本発明に係る赤外線遮蔽材料微粒子分散液は金属塩で構成される第一添加剤とアンモニア、アミン化合物で構成される第二添加剤を含有しており、第一添加剤の作用により赤外線遮蔽材料微粒子の微細化に伴う赤外線遮蔽特性の経時的低下を防止でき、第二添加剤の作用により紫外線硬化樹脂が適用された場合におけるヘイズの悪化も防止することができる。従って、紫外線硬化樹脂が添加された本発明に係る赤外線遮蔽膜形成用塗布液を用いて製造される赤外線遮蔽膜と赤外線遮蔽光学部材は赤外線遮蔽特性の経時的安定性に優れ、従来にない低ヘイズ化が可能となるため各種建築物や車両の窓材等に使用される遮光フィルム、遮光部材等に適用できる産業上の利用可能性を有している。
1 WO単位
2 元素M
3 光源
4 測定試料
5 受光器
6 積分球
7 標準反射板
8 ライトトラップ部品

Claims (9)

  1. 一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表記されるタングステン酸化物微粒子、一般式MxWyOz(但し、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iの内から選択される1種類以上の元素、Wはタングステン、Oは酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3)で表記される複合タングステン酸化物微粒子から選択される1種以上の微粒子で構成される赤外線遮蔽材料微粒子が有機系溶媒中に分散された赤外線遮蔽材料微粒子分散液であって、該分散液に含まれない紫外線硬化樹脂が前記分散液に添加されて赤外線遮蔽膜形成用塗布液を構成する赤外線遮蔽材料微粒子分散液において、
    Cs、Sr、Ba、Ti、Zr、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、In、Snの内から選択される1種類以上の元素から成る金属塩で構成される第一添加剤と、アンモニアおよびアミン化合物から選ばれる1種以上で構成される第二添加剤を含有し、かつ、前記第一添加剤に対する第二添加剤の含有量が重量比で5%以上300%以下であることを特徴とする赤外線遮蔽材料微粒子分散液。
  2. 前記アミン化合物が、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンの内から選択される1種類以上であることを特徴とする請求項1に記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散液。
  3. 前記第一添加剤の含有量が、前記赤外線遮蔽材料微粒子100重量部に対し0.01重量部以上20重量部以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散液。
  4. 前記タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子から選ばれる1種以上が、一般式WyOz(但し、Wはタングステン、Oは酸素、2.45≦z/y≦2.999)で表記される組成比のマグネリ相を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散液。
  5. 一般式MxWyOzで表記される前記複合タングステン酸化物微粒子が、六方晶、正方晶若しくは立方晶の結晶構造の1つ以上を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散液。
  6. 前記M元素が、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Snの内の1種類以上を含み、かつ、六方晶の結晶構造を有することを特徴とする請求項5に記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散液。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の赤外線遮蔽材料微粒子分散液に紫外線硬化樹脂が添加されて成ることを特徴とする赤外線遮蔽膜形成用塗布液。
  8. 請求項7に記載の赤外線遮蔽膜形成用塗布液を基材表面に塗布して塗布膜を形成し、該塗布膜から溶媒を蒸発させかつ紫外線を照射して得られることを特徴とする赤外線遮蔽膜。
  9. 基材と、この基材表面に形成された請求項8に記載の赤外線遮蔽膜とで構成されることを特徴とする赤外線遮蔽光学部材。
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