[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を図1〜図24を参照して以下に説明する。図1を参照して、本実施形態の電力供給システム1は、電気負荷の一例としての電動モータ100に電力を供給するシステムである。
この電力供給システム1は、本実施形態の一例では、電動モータ100を推進力発生源として使用する輸送機器、例えば電動車両(図示省略)に搭載される。この場合、電動モータ100は、電力の供給を受けて駆動力を発生する力行運転の他、電動車両(以降、単に車両ということがある)の運動エネルギーにより回生電力を出力する回生運転を行うことが可能である。
電力供給システム1は、電源としての第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3と、電動モータ100、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の間に配設された電力伝送路4と、電力供給システム1の作動制御を行う機能を有する制御装置5と、電動モータ100に付与する制動力を発生する制動装置6とを備える。なお、電力供給システム1の電気負荷は、電動モータ100の他、補機類等の電気負荷がさらに含まれていてもよい。
第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3は、本実施形態では、それぞれの特性が異なる蓄電装置であると共に、いずれも充電可能な蓄電装置である。具体的には、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3は以下のような特性を有する。
第1蓄電装置2は、第2蓄電装置3よりもエネルギー密度が高い蓄電装置である。該エネルギー密度は、単位重量当たり又は単位体積当たりに貯蔵し得る電気エネルギー量である。かかる第1蓄電装置2は、例えば、リチウムイオン電池等により構成され得る。
また、第2蓄電装置3は、第1蓄電装置2よりも出力密度が高い蓄電装置である。該出力密度は、単位重量当たり、又は単位体積当たりに出力可能な電気量(単位時間当たりの電気エネルギー量又は単位時間当たりの電荷量)である。かかる第2蓄電装置3は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、キャパシタ等により構成され得る。
エネルギー密度が相対的に高い第1蓄電装置2は、第2蓄電装置3に比して、多くの電気エネルギーを貯蔵し得る。また、出力密度が相対的に高い第2蓄電装置3は、第1蓄電装置2に比して、インピーダンスが小さいために、瞬時的に大きな電力を出力することが可能である。
さらに、第1蓄電装置2は、その入出力(放電量及び充電量の両方又は一方)の変動に対する劣化耐性が第2蓄電装置3に比して低い蓄電装置である。このため、第1蓄電装置2は、その入出力の変動が頻繁に生じるような形態で放電又は充電を行うと、第2蓄電装置3に比して、劣化の進行が生じ易い。かかる第1蓄電装置2は、その入出力の変動が頻繁に生じるような形態で放電又は充電を行うよりも、該入出力の変動が生じ難い形態で定常的な放電又は充電を行う方が、劣化の進行が抑制される。
これに対して、入出力の変動に対する劣化耐性が相対的に高い第2蓄電装置3は、その入出力の変動が頻繁に生じるような形態で放電を行っても、第1蓄電装置に比して、劣化の進行が生じ難い。
また、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの充電に関する特性については、第1蓄電装置2は、第2蓄電装置3よりも、充電(特に、高レートでの充電)に対する劣化耐性が低い(充電に起因する劣化が進行し易い)。これに対して、第2蓄電装置3は、第1蓄電装置2よりも充電に対する劣化耐性が高い(充電に起因する劣化が進行し難い)。
また、第2蓄電装置3は、その残容量が高容量側又は低容量側に偏った状態で放電又は充電を行うよりも、該残容量が中程度の値に維持されるようにして放電又は充電を行う方が劣化の進行が抑制されるという特性を有する。より詳しく言えば、第2蓄電装置3は、その残容量が中程度の値から、高容量側に増加又は低容量側に減少するほど、該第2蓄電装置3の劣化が進行しやすくなるという特性を有する。
制動装置6は、本実施形態では、車両のブレーキ装置(ディスクブレーキ等)により構成される。この場合、制動装置6は、車両の走行時に電動モータ100により回転駆動される駆動輪101に制動力を付与することで、間接的に、電動モータ100に制動力を付与する。
電力伝送路4は、通電線、あるいは、基板の配線パターン等により構成される。この電力伝送路4には、第1蓄電装置2、第2蓄電装置3及び電動モータ100の間の電力伝送を制御するための電力伝送回路部11が介装されている。
そして、電力伝送路4は、第1蓄電装置2及び電力伝送回路部11の間の電力伝送を行う電力伝送路4aと、第2蓄電装置3及び電力伝送回路部11の間の電力伝送を行う電力伝送路4bと、電動モータ100と電力伝送回路部11との間の電力伝送を行う電力伝送路4cとを含む。電力伝送路4a,4bには、それぞれの継断を行うスイッチ部としてのコンタクタ12,13が介装されている。
電力伝送回路部11は、制御装置5から与えられる制御信号に応じて、第1蓄電装置2、第2蓄電装置3及び電動モータ100の間の電力伝送を制御し得るように構成されている。より詳しくは、電力伝送回路部11は、電力の供給元及び供給先の選択的な切替え、並びに、供給元から供給先への電力の供給量(給電量)を、与えられる制御信号に応じて制御することが可能である。
具体的には、電力伝送回路部11は、第1蓄電装置2から入力される電圧を昇圧又は降圧して出力可能な電圧変換器15と、第2蓄電装置3から入力される電圧を昇圧又は降圧して出力可能な電圧変換器16と、直流電力を交流電力に変換して出力可能なインバータ17とを備える。
この場合、電圧変換器15,16は、インバータ17の入力側に並列に接続されている。また、インバータ17の入力側(電圧変換器15,16の出力側)には、インバータ17に入力される直流電圧(電圧変換器15又は16から出力される直流電圧)を平滑化するコンデンサ18が介装されている。
なお、電力伝送回路部11は、前記コンタクタ12,13を含めた回路部であってもよい。
電圧変換器15,16は、所謂、DC/DCコンバータであり、それぞれ公知のものを採用し得る。かかる電圧変換器15,16の一例の回路構成を図2に示す。図示の回路構成の電圧変換器15又は16は、第1蓄電装置2又は第2蓄電装置3の出力電圧を昇圧して出力可能な電圧変換器である。この電圧変換器15又は16は、第1蓄電装置2又は第2蓄電装置3に接続される一対の一次側端子21a,21bと、インバータ17に接続される一対の二次側端子22a,22bとの間に、コンデンサ23と、コイル24と、ハイサイド及びローサイドの2つのスイッチ部27a,27bとを図示の如く接続して構成されている。該スイッチ部27a,27bのそれぞれは、トランジスタ等の半導体スイッチ素子25とダイオード26とを並列に接続して構成されている。
かかる構成の電圧変換器15又は16は、スイッチ部27a,27bのそれぞれの半導体スイッチ素子25のオン・オフを所定のデューティー比を有する制御信号(所謂、デューティー信号)により制御することで、一次側端子21a,21bに入力される直流電圧を所要の昇圧率で昇圧してなる直流電圧を二次側端子22a,22bから出力すること、あるいは、二次側端子22a,22bに入力される直流電圧を所要の降圧率で降圧してなる直流電圧を一次側端子21a,21bから出力することが可能である。そして、上記昇圧率又は降圧率を可変的に制御することも可能である。
さらに電圧変換器15又は16は、両方のスイッチ部27a,27bの半導体スイッチ素子25,25をオフに制御することで、二次側から一次側への通電(電力伝送)を遮断することも可能である。
補足すると、電圧変換器15,16は、図2に示したもの以外の回路構成のものであってもよい。また、電圧変換器15,16のいずれか一方又は両方は、第1蓄電装置2又は第2蓄電装置3から入力される電圧を降圧して出力し得るように構成されていてもよい。また、電圧変換器15,16のいずれか一方を省略することもできる。電圧変換器15又は16の要否、あるいは、電圧変換器15又は16の電圧変換の種別(昇圧又は降圧)は、電気負荷の作動に必要な電圧、並びに、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの出力電圧等に応じて種々様々な組合せパターンで選定し得る。
例えば、第1蓄電装置2が第2蓄電装置3よりも高電圧の蓄電装置である場合において、前記電圧変換器15,16のいずれか一方を省略する場合には、第1蓄電装置2に接続された電圧変換器15を省略することが好ましい。このように、電圧変換器15,16の一方を省略することで、電力供給システムの実現に要するコストを削減できる。
インバータ17は、公知の回路構成のものを採用し得る。例えば電動モータ100が3相の電動モータである場合におけるインバータ17の一例の回路構成を図3に示す。図示のインバータ17は、直流電圧が印加される一対の電源端子31a,31bの間に、U相、V相、W相の3相のアーム32u,32v,32wを並列に接続して構成されたものである。各相のアーム32u,32v,32wは、ハイサイド及びローサイドの2つのスイッチ部35a,35bを直列に接続して構成されている。該スイッチ部35a,35bのそれぞれは、トランジスタ等の半導体スイッチ素子33及びダイオード34を並列に接続して構成されている。そして、各相のアーム32u,32v,32wのスイッチ部35a,35bの間の中点が、3相の交流電力の出力部となっている。
かかる構成のインバータ17は、各相のアーム32u,32v,32wのスイッチ部35a,35bのそれぞれの半導体スイッチ素子33のオン・オフをPWM制御方式等により生成した制御信号により制御することで、電源端子31a,31bに入力される直流電力を3相の交流電力に変換し、該交流電力を電動モータ100(力行運転時の電動モータ100)に出力することが可能である。
さらに、電動モータ100の回生運転時(発電時)には、各相のアーム32u,32v,32wのスイッチ部35a,35bのそれぞれの半導体スイッチ素子33のオン・オフを所定のデューティー比を有する制御信号(所謂、デューティー信号)により制御することで、電動モータ100から入力される3相の交流電力を直流電力に変換して電源端子31a,31bから出力させることも可能である。
補足すると、インバータ17の相数(アームの個数)は、電気負荷の作動に必要な交流電力の相数に合わせて設定される。また、電気負荷が直流電力の通電により作動する電気負荷(例えば直流モータ)である場合には、インバータ17を省略できる。
以上の如く構成された電力伝送回路部11は、電圧変換器15,16及びインバータ17を制御する(詳しくは、前記半導体スイッチ素子25,33をオン・オフさせる制御信号(所定のデューティー比を有するデューティー信号)を電圧変換器15,16及びインバータ17のそれぞれに与える)ことで、第1蓄電装置2、第2蓄電装置3及び電動モータ100の間の電力伝送を制御することができる。
例えば、電動モータ100の力行運転時に、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の一方又は両方から電動モータ100に給電すること、第1蓄電装置2から第2蓄電装置3に給電して、該第2蓄電装置3を充電すること、あるいは、電動モータ100の回生運転時の回生電力を第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の一方又は両方に充電すること等を行うことができる。
なお、本実施形態では、第2蓄電装置3により第1蓄電装置2を充電することは行わないものの、当該充電を行うように電力伝送回路部11を制御することも可能である。
制御装置5は、CPU、RAM、ROM、インターフェース回路等を含む電子回路ユニットにより構成されている。なお、制御装置5は、相互に通信可能な複数の電子回路ユニットにより構成されていてもよい。
この制御装置5は、実装されるハードウェア構成又は実装されるプログラム(ソフトウェア構成)により実現される機能として、電力伝送回路部11を制御することで、第1蓄電装置2、第2蓄電装置3及び電動モータ100の間の電力伝送を制御する電力伝送制御部41と、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの残容量(所謂、SOC)を検出する残容量検出部42と、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの故障の有無を検知する故障検知部43と、制動装置6を制御する制動装置制御部44とを含む。
そして、制御装置5には、上記の機能を実現するために必要な情報として、力行運転時の電動モータ100で発生すべき駆動力(駆動トルク)の要求値である要求駆動力又は車両の減速時に電動モータ100に作用させるべき制動力の要求値である要求制動力から成る要求駆動/制動力と、電動モータ100の力行運転時における電力伝送回路部11の制御形態を規定する制御モードと、各種のセンシングデータとが入力される。
上記要求駆動/制動力は、本実施形態の電力供給システム1が搭載された電動車両の走行時に、例えばアクセルペダルの操作量及びブレーキペダルの操作量のそれぞれの検出値等に応じて図示しない車両制御装置により設定される。
なお、要求駆動/制動力を設定する機能を制御装置5に持たせることも可能である。
上記制御モードは、例えば電動車両の運転者が、図示しないモード切替操作器を操作することで設定される。本実施形態では、後述する第1〜第3制御モードの3種類の制御モードが選択的に制御装置5に対して設定される。なお、制御モードは、電動車両の走行状態、走行環境等に応じて自動的に設定されるようになっていてもよい。
上記センシングデータとしては、例えば次のようなデータが制御装置5に入力される。すなわち、第1蓄電装置2の通電電流を検出する電流センサ51、第1蓄電装置2の出力電圧を検出する電圧センサ52、第1蓄電装置2の温度を検出する温度センサ53、第2蓄電装置3の通電電流を検出する電流センサ54、第2蓄電装置3の出力電圧を検出する電圧センサ55、第2蓄電装置3の温度を検出する温度センサ56、電圧変換器15の入力側(第1蓄電装置2側)の電流及び電圧をそれぞれ検出する電流センサ57及び電圧センサ58、電圧変換器15の出力側(インバータ17側)の電流を検出する電流センサ59、電圧変換器16の入力側(第2蓄電装置3側)の電流及び電圧をそれぞれ検出する電流センサ60及び電圧センサ61、電圧変換器16の出力側(インバータ17)側の電流を検出する電流センサ62、並びに、インバータ17の入力側の電圧(電圧変換器15,16のそれぞれの出力側の電圧)を検出する電圧センサ63のそれぞれの検出データが制御装置5に入力される。
そして、制御装置5の残容量検出部42は、例えば、第1蓄電装置2に係る上記電流センサ51、電圧センサ52、及び温度センサ53の検出データを用いて第1蓄電装置2の残容量を逐次検出(推定)する。また、残容量検出部42は、例えば、第2蓄電装置3に係る上記電流センサ54、電圧センサ55、及び温度センサ56の検出データを用いて第2蓄電装置3の残容量を逐次検出(推定)する。
ここで、蓄電装置の残容量の検出手法は、従来より種々様々な手法が提案されている。そして、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の残容量を検出する手法としては、公知の手法を採用できる。
なお、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの残容量を検出する手法は、通電電流、出力電圧及び温度のいずれかの検出データを使用しない手法、あるいは、その他の検出データを使用する手法であってもよい。また、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの残容量の検出処理は、制御装置5とは別の検出装置で行ってもよい。
故障検知部43は、例えば、第1蓄電装置2に係る上記電流センサ51、電圧センサ52、及び温度センサ53の検出データを用いて該第1蓄電装置2の故障の有無を検知する。
また、故障検知部43は、例えば、第2蓄電装置3に係る上記電流センサ54、電圧センサ55、及び温度センサ56の検出データを用いて該第2蓄電装置3の故障の有無を検知する。
この場合、故障検知部43は、例えば、第1蓄電装置2に係る電流センサ51、電圧センサ52、及び温度センサ53のいずれかの検出値が、正常時の既定の範囲を逸脱した場合に、該第1蓄電装置2の故障が発生したことを検知する。同様に、故障検知部43は、例えば、第2蓄電装置3に係る上記電流センサ54、電圧センサ55、及び温度センサ56のいずれかの検出値が、正常時の既定の範囲を逸脱した場合に、該第2蓄電装置3の故障が発生したことを検知する。
なお、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの故障の有無の検知処理は、制御装置5とは別の検出装置で行ってもよい。
また、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの故障には、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3が正常であっても、第1蓄電装置2に係る電流センサ51、電圧センサ52、及び温度センサ53、並びに、第2蓄電装置3に係る上記電流センサ54、電圧センサ55、及び温度センサ56のいずれかのセンサが故障した場合が含まれていてもよい。
また、電力伝送制御部41は、例えば、上記電流センサ57,59,60,62及び電圧センサ58,61,63の検出データと、電動モータ100の要求駆動/制動力と、残容量検出部42による第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの残容量の検出値とを適宜使用して、電力伝送回路部11の電圧変換器15,16及びインバータ17を制御する。
さらに、電力伝送制御部41は、電動モータ100制動を行う状況(車両の減速時)において、電動モータ100の回生運転により発生する回生制動力の代わりに、又は該回生制動力に加えて、制動装置6から電動モータ100に付与すべき制動力(非回生制動力)の目標値Br_cmdを適宜設定し、該目標値Br_cmd(以下、目標制動力Br_cmdという)を制動装置制御部44に指令する。
そして、制動装置制御部44は、電力伝送制御部41から目標制動力Br_cmdが与えられた場合に、該目標制動力Br_cmdに応じて制動装置6を制御する。
(電力伝送制御部の制御処理)
次に、制御装置5の電力伝送制御部41の制御処理を以下に詳細に説明する。なお、本実施形態では、第1蓄電装置2が正常である状態(第1蓄電装置2の故障が検知されていない状態)での電力伝送制御部41の制御処理を説明し、第1蓄電装置2の故障が検知された状態での制御処理の説明は省略する。
第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の両方が正常である場合には、車両の走行時において、制御装置5は、電力伝送制御部41により図4のフローチャートに示す制御処理を所定の制御処理周期で逐次実行する。なお、図4のフローチャートに示す制御処理は、電動モータ100の力行運転時の制御処理である。
STEP1において、電力伝送制御部41は現在設定されている制御モードを取得する。さらにSTEP2において、電力伝送制御部41は、第1蓄電装置2の残容量SOC1(以降、第1残容量SOC1ということがある)の検出値と、第2蓄電装置3の残容量SOC2(以降、第2残容量SOC2ということがある)の検出値とをそれぞれ残容量検出部42から取得する。
次いで、電力伝送制御部41は、第1残容量SOC1の検出値が所定の閾値B1_th1以上であり、且つ、第2残容量SOC2の検出値が所定の下限値B2_min以上であるという条件が成立するか否かをSTEP3で判断する。
第1残容量SOC1に関する上記閾値B1_th1は、後述の通常併用制御処理を行う上で必要な第1残容量SOC1の限界値としてあらかじめ定められた閾値である。この閾値B1_th1としては、例えば、電動モータ100に一定の出力を発生させるために必要な給電量(例えば、車両を所定の車速でクルーズ走行させるために必要な給電量)を第1蓄電装置2だけから電動モータ100に給電することが可能な限界の残容量値を採用することができる。該閾値B1_th1は、第1蓄電装置2の劣化を生じさせないように該第1蓄電装置2から外部に給電を行い得る限界の残容量値である下限値B1_min(ゼロに近い値)よりも若干高い値に設定されている。
また、第2残容量SOC2に関する下限値B2_minは、第2蓄電装置3の劣化を生じさせないように該第2蓄電装置3から外部に給電を行い得る限界の残容量値(ゼロに近い値)である。
上記STEP3の判断結果が肯定的となる状況は、第1残容量SOC1及び第2残容量SOC2が通常的な範囲(常用域)の値となっている状況である。この状況では、電力伝送制御部41は、現在設定されている制御モードに対応する通常併用制御処理をSTEP4で実行する。詳細は後述するが、該通常併用制御処理は、制御モードに応じた態様で、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の一方又は両方から電動モータ100への給電を行うと共に、第1蓄電装置2から電動モータ100への給電時に、第1蓄電装置2から第2蓄電装置3への充電を適宜行うように電力伝送回路部11を制御する処理である。
上記通常併用制御処理の実行により、第2蓄電装置3は、適宜、第1蓄電装置2から充電されるものの、第1蓄電装置2の残容量SOC1は減少していく。このため、第1残容量SOC1が、やがて閾値B1_th1よりも小さくなってSTEP3の判断結果が否定的となる。
このようにSTEP3の判断結果が否定的になると、電力伝送制御部41は、次に、第1残容量SOC1の検出値が前記下限値B1_min以上であり、且つ、第2残容量SOC2の検出値が前記下限値B2_min以上であるという条件が成立するか否かをSTEP5で判断する。
このSTEP5の判断結果が肯定的となる状況は、特に、第1蓄電装置2の残容量が残り少ない状況であるものの、ある程度の期間は、第1蓄電装置2と第2蓄電装置3との協働によって、電動モータ100に要求駆動力を発生せるように該電動モータ100に給電し得る状況である。
この状況では、電力伝送制御部41は、停止延長制御処理をSTEP6で実行する。詳細は後述するが、停止延長制御処理は、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の両方の残容量を極力消費するように電力伝送回路部11を制御する処理である。
また、STEP5の判断結果が否定的となる状況は、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3から電動モータ100に給電することが困難な状況である。この状況では、電力伝送制御部41は、停止処理をSTEP7で実行する。この停止処理では、電力伝送制御部41は、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の出力(負荷側への放電)を遮断し、且つその遮断状態を保持するように、電圧変換器15,16又はコンタクタ12,13を制御する。
なお、この停止処理では、制御装置5は、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の残容量不足によって、車両の走行を行うことができなくなった旨、あるいは、電動モータ100を作動させることができなくなった旨等を車両の運転者に報知するための報知出力(視覚的な出力又は聴覚的な出力)を発生する。
(通常併用制御処理)
次に、前記STEP4の通常併用制御処理を詳細に説明する。ここで、以降の説明における用語に関して補足しておく。
以降の説明においては、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの「出力」もしくは「入力」、あるいは、「給電量」もしくは「充電量」は、例えば電力値(単位時間当たりの電気エネルギー量)により表される電気量であるとする。
また、電動モータ100の「要求駆動力DT_dmdに対応する給電量」というのは、その給電量を電動モータ100に給電したときに、該電動モータ100が発生する駆動力が要求駆動力DT_dmdに一致もしくはほぼ一致することとなる給電量を意味する。
この「要求駆動力DT_dmdに対応する給電量」は、「給電量」が電力値により表される電気量である場合、要求駆動力DT_dmdと電動モータ100の回転速度(詳しくは電動モータ100のロータ又は出力軸の回転速度)とに応じたものとなる。この場合、「要求駆動力DT_dmdに対応する給電量」の値は、例えば、該要求駆動力DT_dmdと電動モータ100の回転速度の検出値とから、マップ又は演算式により求めることができる。
また、要求駆動力DT__dmdに関する任意の「閾値に対応する給電量」というのは、要求駆動力DT_dmdを該閾値に一致させた場合における該要求駆動力DT_dmdに対応する給電量を意味する。
(第1制御モード)
以上を前提事項として、制御モードが、第1〜第3制御モードのうちの基本の制御モードとしての第1制御モードに設定されている場合について図5〜図10を参照して説明する。
第1制御モードは、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の劣化の進行をできるだけ抑制し得るように電力伝送回路部11の制御を行う制御モードである。
この第1制御モードにおける通常併用制御処理の概要を図5を参照して説明しておく。図5は、第1制御モードにおいて、電動モータ100の要求駆動力DT_dmdに応じて該電動モータ100に給電すべき電気量(給電量)に対する第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの出力の負担形態と、第2残容量SOC2との関係をマップ形態で表した図である。
図5の斜線領域は、電動モータ100への給電量の全体又は一部を第1蓄電装置2が負担する領域、点描領域は、該給電量の全体又は一部を第2蓄電装置3が負担する領域を表している。
より詳しくは、要求駆動力DT_dmd=0となるライン(横軸)に接する斜線領域は、第1蓄電装置2だけが、電動モータ100への給電量の全体を負担する領域を表し、該ライン(横軸)に接する点描領域は、第2蓄電装置3だけが、電動モータ100への給電量の全体を負担する領域を表している。
また、斜線領域の上側の点描領域、又は点描領域の上側の斜線領域は、電動モータ100への給電量を、第1蓄電装置2と第2蓄電装置との両方が負担する領域を表している。
第1制御モードにおける通常併用制御処理では、図5に示すように、第2残容量SOC2の値が、SOC2≧B2_th1となる高残容量領域(満充電状態の残容量値(100%)を含む)に属する場合と、B2_th1>SOC2≧B2_th2となる中残容量領域に属する場合と、B2_th2>SOC2となる低残容量領域に属する場合とで、電動モータ100の要求駆動力DT_dmdに応じた第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの出力の負担形態が大別されている。そして、高、中、低の各残容量領域に対応する負担形態で、電動モータ100の要求駆動力DT_dmdに対応する給電量が、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の一方、又は両方から電動モータ100に給電される。
なお、本実施形態では、通常併用制御処理は、第2残容量SOC2の検出値が前記下限値B2_min以上である場合に行われる処理であるので、前記低残容量領域は、より詳しくは、B2_th2>SOC2≧B2_minとなる残容量領域である。
ここで、図5において、第2残容量SOC2を区分する上記閾値B2_th1,B2_th2は、第1制御モード用として、あらかじめ定められた閾値(固定値)である。これらの閾値B2_th1,B2_th2は、該閾値B2_th1,B2_th2により範囲が規定される中残容量領域が、第2蓄電装置3の劣化の進行を極力抑制する上で、実際の第2残容量SOC2の値が属することが好ましい残容量領域となるように、あらかじめ実験等に基づき設定されている。従って、閾値B2_th1,B2_th2により範囲が規定される中残容量領域は、実際の第2残容量SOC2の値を極力、該中残容量領域に維持するようにして第2蓄電装置3の充放電を行った場合に、第2蓄電装置3の劣化の進行を好適に抑制し得る残容量領域である。
以下、第1制御モードにおける通常併用制御処理を具体的に説明する。
通常併用制御処理では、電力伝送制御部41は、図6〜図8のフローチャートに示す処理を所定の制御処理周期で逐次実行する。
STEP11において、電力伝送制御部41は、電動モータ100の要求駆動力DT_dmdを取得する。そして、電力伝送制御部41は、前記STEP2で取得した第2残容量SOC2の検出値が、前記高残容量領域の下限値である前記閾値B2_th1以上であるか否かをSTEP12で判断する。
このSTEP12の判断結果が肯定的となる状況は、SOC2の検出値が高残容量領域に属する状況である。この場合には、電力伝送制御部41は、次に、STEP13において、要求駆動力DT_dmdが所定の閾値DT_th1よりも大きいか否かを判断する。
上記閾値DT_th1は、本実施形態の一例では、あらかじめ定められた所定の一定値(固定値)である。この閾値DT_th1としては、例えば、第2残容量SOC2が高残容量領域に属する状態で、第2蓄電装置3だけからの給電によって電動モータ100で発生させ得る上限の駆動力値又はそれに近い駆動力値を採用し得る。なお、より適切に第2蓄電装置3の劣化を抑制すべく、閾値DT_th1は温度センサ56による第2蓄電装置3の温度の検出値などによって可変に設定されてもよい。
STEP13の判断結果が肯定的となる状況は、図5の高残容量領域のうちの斜線領域の状況である。この場合には、電力伝送制御部41は、STEP14において、第2蓄電装置3の出力P2が、閾値DT_th1に対応する給電量に一致し、且つ、第1蓄電装置2の出力P1が、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量から、第2蓄電装置3の負担分の出力P2を差し引いた不足分の給電量に一致するように電力伝送回路部11を制御する。
なお、第1蓄電装置2の出力P1は、詳しくは、第1蓄電装置2から出力される電気量(放電量)であり、第2蓄電装置3の出力P2は、詳しくは、第2蓄電装置3から出力される電気量(放電量)である。
これにより、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの出力P1,P2の総和が、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量に一致するようにして、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の両方から電動モータ100に要求駆動力DT_dmdに対応する給電量が給電される。また、このとき、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量のうちの第2蓄電装置3の負担分(出力P2)は、閾値DT_th1に対応する給電量とされる。
上記STEP14の処理は、具体的には、例えば次のように実行することができる。すなわち、電動モータ100の回転速度の検出値等に応じて、インバータ17の入力電圧(=電圧変換器15,16の出力電圧)の目標値が設定される。さらに、閾値DT_th1に対応する給電量が、電圧変換器16の出力電力の目標値として設定されると共に、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量から、第2蓄電装置3の負担分の出力P2(=閾値DT_th1に対応する給電量)を差し引いた給電量が、電圧変換器15の出力電力の目標値として設定される。
そして、インバータ17の入力電圧の目標値と電圧変換器15,16のそれぞれの出力電力の目標値を実現するように電圧変換器15,16が制御信号(デューティ信号)により制御される。同時に、インバータ17は、要求駆動力DT_dmdに応じて設定される目標電力、又は該目標電力をリミット処理(各蓄電装置2,3の出力を制限するためのリミット処理)により制限してなる目標電力を実現し得る目標電流を電動モータ100に通電するように、制御信号(デューティー信号)を通じてフィードバック制御される。
一方、STEP13の判断結果が否定的となる状況は、図5の高残容量領域のうちの点描領域の状況である。この場合には、電力伝送制御部41は、STEP15において、第2蓄電装置3の出力P2が、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量に一致するように電力伝送回路部11を制御する。
これにより、第1蓄電装置2を使用せずに、第2蓄電装置3だけから要求駆動力DT_dmdに対応する給電量が電動モータ100に給電される。
上記STEP15の処理は、具体的には、例えば次のように実行することができる。すなわち、電動モータ100の回転速度の検出値等に応じて、インバータ17の入力電圧(=電圧変換器16の出力電圧)の目標値が設定される。さらに、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量が、電圧変換器16の出力電力の目標値として設定される。
そして、インバータ17の入力電圧の目標値と電圧変換器16の出力電力の目標値を実現するように電圧変換器16が制御される。同時に、インバータ17は、要求駆動力DT_dmdに対応する目標電流を電動モータ100に通電するようにフィードバック制御される。
また、電圧変換器15は通電遮断状態に制御される。あるいは、第1蓄電装置2側のコンタクタ12がオフ状態に制御される。
以上のように、第2残容量SOC2の検出値が高残容量領域に属する場合には、電動モータ100の力行運転中に、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のうちの少なくとも第2蓄電装置3を含む蓄電装置から電動モータ100への給電が行われる。従って、第2蓄電装置3を積極的に放電させ、該第2蓄電装置3の残容量SOC2を中残容量領域に近づけていくようにすることができる。従って、電動モータ100の要求駆動力DT_dmdを満たしつつ、前記第2蓄電装置3の劣化の抑制を図ることができる。
補足すると、前記STEP13の判断処理で使用する閾値DT_th1は、上記と異なる態様で設定することも可能である。例えば、閾値DT_th1に対応する給電量が所定の一定値(例えば、第2蓄電装置3が高残容量領域において出力可能な上限の給電量又はそれに近い一定値の給電量)となるように該閾値DT_th1を設定してもよい。また、閾値DT_th1を、第2残容量SOC2の検出値に応じて変化させるように設定してもよい。
前記STEP12の判断結果が否定的である場合には、電力伝送制御部41は、さらに、STEP16において、第2残容量SOC2の検出値が、前記中残容量領域の下限値である前記閾値B2_th2以上であるか否かを判断する。
このSTEP16の判断結果が肯定的となる状況は、SOC2の検出値が中残容量領域に属する状況である。この状況では、電力伝送制御部41は、次に、STEP17(図7を参照)において、要求駆動力DT_dmdが所定の閾値DT_th2よりも大きいか否かを判断する。
この場合、所定の閾値DT_th2は、本実施形態の一例では、例えば図5に示すように、第2残容量SOC2の検出値に応じて可変的に設定される閾値である。詳しくは、SOC2の検出値が小さくなるに伴い、閾値DT_th2が大きくなるように設定される。また、閾値DT_th2は、後述する基本給電量P1_baseを電動モータ100に給電した場合に該電動モータ100が発生し得る駆動力よりも大きい駆動力値に設定される。
STEP17の判断結果が肯定的となる状況は、図5の中残容量領域のうちの点描領域の上側の斜線領域の状況である。この場合には、電力伝送制御部41は、STEP18において、第2蓄電装置3の出力P2が、所定値の給電量に一致し、且つ、第1蓄電装置2の出力P1が、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量から、第2蓄電装置3の負担分の出力P2を差し引いた不足分の給電量に一致するように電力伝送回路部11を制御する。
この場合の電力伝送回路部11の具体的な制御は、図6のSTEP14と同様に行うことができる。
これにより、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの出力P1,P2の総和が、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量に一致するようにして、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の両方から電動モータ100に要求駆動力DT_dmdに対応する給電量が給電される。また、このとき、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量のうちの第2蓄電装置3の負担分は、所定値の給電量とされる。
この場合、第2蓄電装置3から出力させる所定値の給電量としては、例えば、第2蓄電装置3が中残容量領域において出力可能な上限の給電量又はそれに近い一定値の給電量を採用し得る。また、当該所定値の給電量として、例えば、第2残容量SOC2の検出値に応じて変化するように設定した給電量を使用することも可能である。
一方、STEP17の判断結果が否定的となる場合には、電力伝送制御部41は、次に、STEP19において、第1蓄電装置2の出力P1の基本値である基本給電量P1_baseを第2残容量SOC2の検出値に応じて決定する。
ここで、上記基本給電量P1_baseは、第2残容量SOC2の検出値が中残容量領域又は低残容量領域に属する状態で、要求駆動力DT_dmdによらずに、第1蓄電装置2から出力させる下限の電気量である。すなわち、本実施形態では、第2残容量SOC2の検出値が中残容量領域又は低残容量領域に属する状態では、要求駆動力DT_dmdによらずに、第1蓄電装置2から、基本給電量P1_base、又はそれよりも大きい給電量が出力されるように電力伝送回路部11が制御される。
上記基本給電量P1_baseは、例えば図9のフローチャートで示す如く設定される。すなわち、電力伝送制御部41は、STEP31において、第2残容量SOC2の検出値に応じた基本給電量P1_baseの変化のパターンを規定する係数αを該SOC2の検出値に応じて決定する。
この場合、係数αは、SOC2の検出値から、あらかじめ作成されたマップあるいは演算式を用いて、例えば図10のグラフで示すパターンで設定される。この例では、係数αの値は、「0」から「1」までの範囲内の値である。そして、該係数αの値は、第2蓄電装置3の中残容量領域及び低残容量領域を合わせた残容量領域(低側残容量領域)において、基本的には、SOC2の検出値が小さいほど、大きくなるように設定される。
より詳しくは、SOC2の検出値が中残容量領域に属する場合には、係数αの値は、SOC2の検出値が中残容量領域の上限の閾値B2_th1から下限の閾値B2_th2まで減少するに伴い、「0」から「1」まで連続的に増加していくように設定される。
また、第2残容量SOC2の検出値が低残容量領域に属する場合には、αの値は、最大値「1」に設定される。
次いで、STEP32において、電力伝送制御部41は、上記の如く決定した係数αの値を、あらかじめ定めた所定値(固定値)の給電量P1bに乗じることによって、基本給電量P1_base(=α×P1b)を算出する。給電量P1bは、基本給電量P1_baseの最大値である。
これにより、基本給電量P1_baseは、第2残容量SOC2の検出値に応じて、係数αと同じパターンで変化するように決定される。
なお、例えば、第1残容量SOC1の検出値等に応じて第1蓄電装置2の出力P1の上限値を設定しておき、上記の如く算出した基本給電量P1_baseが当該上限値を超えた場合に、該基本給電量P1_baseを強制的に当該上限値に制限するリミット処理をSTEP32の処理に続いて実行することで、基本給電量P1_baseを確定するようにしてもよい。
また、例えば、STEP31,32の処理の代わりに、第2残容量SOC2の検出値から、あらかじめ作成されたマップあるいは演算式を用いて、直接的に基本給電量P1_baseを決定するようにしてもよい。
図7に戻って、上記の如くSTEP19の処理を実行した後、電力伝送制御部41は、次に、STEP20において、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量が、基本給電量P1_base以下であるか否かを判断する。このSTEP20の判断処理は、要求駆動力DT_dmdが、基本給電量P1_baseを電動モータ100の回転速度の検出値に応じて駆動力値に換算してなる閾値以下であるか否かを判断する処理と等価である。そして、この場合における当該閾値が、図5に破線で示す閾値DT_th4である。なお、図5に破線で示す閾値DT_th4は、電動モータ100の回転速度を一定とした場合の閾値である。
STEP20の判断結果が肯定的となる状況は、図5の中残容量領域のうちの最下段の斜線領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部41は、STEP21において、第1蓄電装置2の出力P1が、基本給電量P1_baseに一致し、第2蓄電装置3の入力、すなわち充電量が、基本給電量P1_baseから要求駆動力DT_dmdに対応する給電量を差し引いた余剰分の給電量(余剰分給電量)に一致するように電力伝送回路部11を制御する。
これにより、要求駆動力DT_dmdによらずに、第2残容量SOC2の検出値に応じて前記した如く設定された基本給電量P1_baseを第1蓄電装置2から出力させつつ、該基本給電量P1_baseのうちの要求駆動力DT_dmdに対応する給電量が第1蓄電装置2から電動モータ100に給電され、且つ、基本給電量P1_baseから要求駆動力DT_dmdに対応する給電量を差し引いた余剰分給電量が第1蓄電装置2から第2蓄電装置3に充電される。
上記STEP21の処理は、具体的には、例えば次のように実行することができる。すなわち、電動モータ100の回転速度の検出値等に応じて、インバータ17の入力電圧(=電圧変換器15の出力電圧)の目標値が設定される。さらに、基本給電量P1_baseが、電圧変換器15の出力電力の目標値として設定されると共に、基本給電量P1_baseから要求駆動力DT_dmdに対応する給電量を差し引いた給電量が、電圧変換器16の入力側(第2蓄電装置3側)から第2蓄電装置3への供給電力の目標値として設定される。
そして、インバータ17の入力電圧の目標値と電圧変換器15の出力電力の目標値を実現するように電圧変換器15が制御されると共に、電圧変換器16から第2蓄電装置3への供給電力の目標値を実現するように電圧変換器16が制御される。同時に、インバータ17は、要求駆動力DT_dmdに対応する目標電流を電動モータ100に通電するようにフィードバック制御される。
なお、基本給電量P1_baseが、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量に一致する場合には、第2蓄電装置3の入力(充電量)がゼロとなるので、電圧変換器16は通電遮断状態に制御され、あるいは、第2蓄電装置3側のコンタクタ13がオフ状態に制御される。
一方、STEP20の判断結果が否定的となる状況は、図5の中残容量領域のうちの点描領域の状況である。この場合には、電力伝送制御部41は、STEP22において、第1蓄電装置2の出力P1が、基本給電量P1_baseに一致し、且つ、第2蓄電装置の出力P2が要求駆動力DT_dmdに対応する給電量から基本給電量P1_baseを差し引いた不足分の給電量に一致するように電力伝送回路部11を制御する。
この場合の電力伝送回路部11の具体的な制御は、図6のSTEP14と同様に行うことができる。
これにより、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの出力P1,P2の総和が、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量に一致するようにして、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の両方から電動モータ100に要求駆動力DT_dmdに対応する給電量が給電される。また、このとき、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量のうちの第1蓄電装置2の負担分(出力P1)は、第2残容量SOC2の検出値に応じて前記の如く設定された基本給電量P1_baseとされる。
補足すると、上記STEP22において、第2蓄電装置3の出力P2(要求駆動力DT_dmdに対応する給電量から基本給電量P1_baseを差し引いた不足分の給電量)が、中残容量領域における第2蓄電装置3が出力可能な上限の給電量を超える場合には、該第2蓄電装置3の出力P2を当該上限の給電量に制限し、前記STEP18と同様の処理により電力伝送回路部11を制御するようにしてもよい。
あるいは、前記STEP17の判断処理における閾値DT_th2を、該閾値DT_th2に対応する給電量が、前記基本給電量P1_baseに、第2蓄電装置3の上限の給電量又はそれに近い一定値の給電量を加算した値に一致するように設定してもよい。
以上のように、第2残容量SOC2の検出値が中残容量領域に属する場合には、電動モータ100の力行運転中に、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のうちの少なくとも第1蓄電装置2を含む蓄電装置から電動モータ100への給電が行われる。
また、要求駆動力DT_dmdが前記閾値DT_th2以下である場合において、第1蓄電装置2の出力P1は、第2残容量SOC2の検出値に応じて設定された基本給電量P1_baseに保持される。そして、基本給電量P1_baseが、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量よりも大きい場合(換言すれば、要求駆動力DT_dmdが、基本給電量P1_baseを電動モータ100の駆動力値に換算してなる閾値DT_th4よりも小さい場合)には、基本給電量P1_baseのうちの要求駆動力DT_dmdに対応する給電量が第1蓄電装置2だけから電動モータ100に給電されると同時に、余剰分の給電量が第2蓄電装置3に充電される。
さらに、要求駆動力DT_dmdが前記閾値DT_th2以下である場合において、基本給電量P1_baseが、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量よりも小さい場合(換言すれば、要求駆動力DT_dmdが、閾値DT_th4よりも大きい場合)には、第1蓄電装置2から基本給電量P1_baseが電動モータ100に給電されると共に、不足分の給電量が第2蓄電装置3から電動モータ100に給電される。
従って、第2残容量SOC2の検出値が中残容量領域に属する場合には、高残容量領域に属する場合に比して、第2蓄電装置3から電動モータ100への給電を行う状況が生じ難くなる。さらに、第2残容量SOC2が低下していくに伴い、第1蓄電装置2から第2蓄電装置3への充電が行われることとなる要求駆動力DT_dmdの範囲が拡大すると共に、第2蓄電装置3の充電量が増加しやすくなる。
この結果、第2残容量SOC2が、中残容量領域に極力保たれるようにすることができる。ひいては、第2蓄電装置3の劣化の進行を極力抑制することができる。
また、要求駆動力DT_dmdが前記閾値DT_th2以下である場合においては、第1蓄電装置2から出力させる基本給電量P1_baseが、要求駆動力DT_dmdによらずに、第2残容量SOC2に応じて設定される。このため、第2蓄電装置3の出力P2又は入力は、要求駆動力DT_dmdの変動に追従して変動する一方、第1蓄電装置2の出力P1の変動は、要求駆動力DT_dmdの変動に対して低感度なものとなる。
この結果、第1蓄電装置2の出力P1は、頻繁な変動を生じ難い、安定性の高いものとなる。ひいては、第1蓄電装置2の劣化の進行を極力抑制できることとなる。
次に、前記STEP16の判断結果が否定的となる状況は、第2残容量SOC2の検出値が低残容量領域に属する状況である。この状況では、電力伝送制御部41は、次に、STEP23(図8を参照)において、要求駆動力DT_dmdが所定の閾値DT_th3よりも大きいか否かを判断する。
この場合、所定の閾値DT_th3は、本実施形態の一例では、所定の一定値に設定される。また、閾値DT_th3は、第2残容量SOC2に応じて前記した如く設定される基本給電量P1_baseを電動モータ100に給電した場合に該電動モータ100が発生し得る駆動力よりも大きい駆動力値に設定される。
なお、閾値DT_th3を、該閾値DT_th3に対応する給電量が、第1蓄電装置2の上限の給電量(>P1_base)又はそれに近い一定値の給電量となるように設定してもよい。
STEP23の判断結果が肯定的となる状況は、図5の低残容量領域のうちの点描領域の状況である。この場合には、電力伝送制御部41は、STEP24において、第1蓄電装置2の出力P1が、所定値の給電量に一致し、且つ、第2蓄電装置3の出力P2が、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量から、第1蓄電装置2の負担分の出力P1を差し引いた不足分の給電量に一致するように電力伝送回路部11を制御する。
この場合の電力伝送回路部11の具体的な制御は、図6のSTEP14と同様に行うことができる。
これにより、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの出力P1,P2の総和が、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量に一致するようにして、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の両方から電動モータ100に要求駆動力DT_dmdに対応する給電量が給電される。また、このとき、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量のうちの第1蓄電装置2の負担分は、所定値の給電量とされる。
この場合、第1蓄電装置2から出力させる所定値の給電量としては、例えば、第1蓄電装置2が出力可能な上限の給電量又はそれに近い一定値の給電量を採用し得る。また、当該所定値の給電量として、第1残容量SOC1の検出値及び第2残容量SOC2の検出値の一方又は両方に応じて変化するように設定した給電量を使用することも可能である。
一方、STEP23の判断結果が否定的となる場合には、電力伝送制御部41は、次に、STEP25において、第1蓄電装置2の出力P1の基本値である基本給電量P1_baseを第2残容量SOC2の検出値に応じて決定する。
このSTEP25の処理は、前記STEP19の処理と同じである。ここで、本実施形態では、低残容量領域における前記係数αが最大値「1」であるので、STEP25で決定される基本給電量P1_baseは、最大値P1bである。
なお、STEP19の処理の場合と同様に、例えば、第1残容量SOC1の検出値等に応じて第1蓄電装置2の出力P1の上限値を設定しておき、第2残容量SOC2に応じて決定した基本給電量P1_baseが当該上限値を超えた場合に、該基本給電量P1_baseを強制的に当該上限値に制限するようにしてもよい。
また、例えば、STEP25で図9のフローチャートの処理を実行する代わりに、第2残容量SOC2の検出値から、あらかじめ作成されたマップあるいは演算式を用いて、直接的に基本給電量P1_baseを決定するようにしてもよい。
STEP25の処理を実行した後、電力伝送制御部41は、次に、STEP26において、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量が、基本給電量P1_base以下であるか否かを判断する。このSTEP26の判断処理は、前記STEP20の判断処理と同様に、要求駆動力DT_dmdが、基本給電量P1を電動モータ100の回転速度の検出値に応じて駆動力値に換算してなる閾値DT_th4(図5参照)以下であるか否かを判断する処理と等価である。
STEP26の判断結果が肯定的となる状況は、図5の低残容量領域のうちの斜線領域で、且つ、要求駆動力DT_dmdが閾値DT_th4以下となる状況である。この状況では、電力伝送制御部41は、STEP27において、第1蓄電装置2の出力P1が、基本給電量P1_baseに一致し、且つ、第2蓄電装置3の入力(充電量)が、基本給電量P1_baseから要求駆動力DT_dmdに対応する給電量を差し引いた余剰分の給電量に一致するように電力伝送回路部11を制御する。
この場合の電力伝送回路部11の具体的な制御は、図7のSTEP21と同様に行うことができる。
これにより、要求駆動力DT_dmdによらずに、第2残容量SOC2の検出値に応じて前記した如く設定された基本給電量P1_baseを第1蓄電装置2から出力させつつ、該基本給電量P1_baseのうちの要求駆動力DT_dmdに対応する給電量が第1蓄電装置2から電動モータ100に給電され、且つ、基本給電量P1_baseから要求駆動力DT_dmdに対応する給電量を差し引いた余剰分の給電量が第1蓄電装置2から第2蓄電装置3に充電される。
一方、STEP26の判断結果が否定的となる状況は、図5の低残容量領域のうちの斜線領域で、且つ要求駆動力DT_dmdが閾値DT_th4よりも大きい状況である。この場合には、電力伝送制御部41は、STEP28において、第1蓄電装置2の出力P1が、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量に一致するように電力伝送回路部11を制御する。
これにより、第2蓄電装置3を使用せずに、第1蓄電装置2だけから要求駆動力DT_dmdに対応する給電量が電動モータ100に給電される。
上記STEP28の処理は、具体的には、例えば次のように実行することができる。すなわち、電動モータ100の回転速度の検出値等に応じて、インバータ17の入力電圧(=電圧変換器15の出力電圧)の目標値が設定される。さらに、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量が、電圧変換器15の出力電力の目標値として設定される。
そして、インバータ17の入力電圧の目標値と電圧変換器15の出力電力の目標値を実現するように電圧変換器15が制御信号(デューティ信号)により制御される。同時に、インバータ17は、要求駆動力DT_dmdに応じて設定される目標電力、又は該目標電力をリミット処理(第1蓄電装置2の出力を制限するためのリミット処理)により制限してなる目標電力を実現し得る目標電流を電動モータ100に通電するように、制御信号(デューティー信号)を通じてフィードバック制御される。
また、電圧変換器16は通電遮断状態に制御される。あるいは、第2蓄電装置3側のコンタクタ13がオフ状態に制御される。
以上のように、第2残容量SOC2の検出値が低残容量領域に属する場合には、電動モータ100の力行運転中に、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のうちの少なくとも第1蓄電装置2を含む蓄電装置から電動モータ100への給電が行われる。
また、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量が、基本給電量P1_base以下である場合には、第1蓄電装置2の出力P1は、要求駆動力DT_dmdによらずに、基本給電量P1_baseに保持される。そして、基本給電量P1_baseのうちの要求駆動力DT_dmdに対応する給電量が第1蓄電装置2だけから電動モータ100に給電されると同時に、余剰分の給電量が第2蓄電装置3の充電に使用される。このため、第2蓄電装置3の入力は、要求駆動力DT_dmdの変動に追従して変動する一方、第1蓄電装置2の出力P1(=P1_base)の変動は、要求駆動力DT_dmdの変動に対して低感度なものとなる。
また、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量が、基本給電量P1_baseよりも大きい場合には、要求駆動力DT_dmdが閾値DT_th3を超えるまでは、第1蓄電装置2だけから電動モータ100に要求駆動力DT_dmdに対応する給電量が給電され、要求駆動力DT_dmdが閾値DT_th3を超えた場合にだけ、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量の一部を第2蓄電装置3が負担する。
従って、第2残容量SOC2の検出値が低残容量領域に属する場合には、高残容量領域又は中残容量領域に属する場合に比して、第2蓄電装置3から電動モータ100への給電を行う状況が生じ難くなる。
さらに、低残容量領域での基本給電量P1_baseが最大値P1bであることから、第1蓄電装置2から第2蓄電装置3への充電が行われることとなる要求駆動力DT_dmdの範囲及び充電量が中残容量領域に比して大きいものとなる。
この結果、要求駆動力DT_dmdが閾値DT_th3よりも大きなものとなる状態が継続しないい限り、第2残容量SOC2が、低残容量領域から中残容量領域に復帰しやすくなる。
また、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量が、基本給電量P1_base以下である場合においては、第1蓄電装置2から出力させる基本給電量P1_baseが、要求駆動力DT_dmdによらずに、第2残容量SOC2に応じて設定される。そして、特に、低残容量領域における基本給電量P1_baseは、一定値(=P1b)である。このため、第1蓄電装置2の出力P1は、要求駆動力DT_dmdの変動に応じた変動が生じないものとなる。
さらに、要求駆動力DT_dmdが閾値DT_th3よりも大きい状況で、第1蓄電装置2の出力P1を所定の一定値とすることで、該第1蓄電装置2の出力P1が要求駆動力DT_dmdに応じて変動することがないようにすることができる。
この結果、低残容量領域における第1蓄電装置2の出力P1は、頻繁な変動を生じ難い、安定性の高いものとなる。ひいては、第1蓄電装置2の劣化の進行を極力抑制できることとなる。
以上が、制御モードが、第1〜第3制御モードのうちの基本の制御モードとしての第1制御モードに設定されている場合における通常併用制御処理の詳細である。
(第2制御モード)
次に、制御モードが、第2制御モードに設定されている場合の通常併用制御処理を説明する。
図11は、第2制御モードにおいて、電動モータ100の要求駆動力DT_dmdに応じて該電動モータ100に給電すべき電気量(給電量)に対する第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの出力の負担形態と、第2残容量SOC2との関係をマップ形態で表した図である。なお、図11における斜線領域及び点描領域の意味は図5と同様である。また、図11中の二点鎖線は、第1制御モードとの比較のために、図5に破線で示した閾値DT_th4のラインを示している。
第1制御モードに係る図5と、第2制御モードに係る図11とを対比して判るように、第2制御モードは、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの出力の負担形態を区分する閾値を第1制御モードと異ならせた制御モードである。
本実施形態における第2制御モードでは、第2残容量SOC2が比較的低い状態では、第1制御モードに比して第2蓄電装置3が充電されやすくなり、また、第2残容量SOC2が比較的高い状態では、第2蓄電装置3から電動モータ100に給電を行うこととなる要求駆動力DT_dmdの範囲が第1制御モードに比して拡大される。
より詳しくは、本実施形態における第2制御モードでは、第2残容量SOC2の中残容量領域の上限の閾値B2_th1が、あらかじめ第1制御モードよりも高い値に設定されている。
また、第2蓄電装置3の低残容量領域及び中残容量領域における第1蓄電装置2の基本給電量P1_baseが、第1制御モードよりも大きくなるように(換言すれば、基本給電量P1_baseを、電動モータ100の回転速度に応じて駆動力値に換算してなる閾値DT_th4(回転速度を一定とした場合の換算値)が、第1制御モードよりも大きくなるように)、第2残容量SOC2の検出値に応じて決定される。
このような基本給電量P1_baseは、第1制御モードの場合と同様の仕方で決定できる。例えば、第1制御モードの場合と同様に、図9のフローチャートに示す処理と同様の処理により、基本給電量P1_base(=α×P1b)を決定できる。ただし、この場合、基本給電量P1_baseの最大値P1bは、あらかじめ、第1制御モードよりも大きい値に設定される。第2制御モードにおける基本給電量P1_baseの最大値P1bとしては、例えば、第1蓄電装置2から出力可能な上限の給電量又はこれに近い給電量を採用し得る。
なお、第2制御モードにおける基本給電量P1_baseを、例えば第2残容量SOC2の検出値から、あらかじめ作成されたマップあるいは演算式を用いて、直接的に決定することも可能である。
また、第2制御モードでは、高残容量領域における要求駆動力DT_dmdの閾値DT_th1と、中残容量領域における要求駆動力DT_dmdの閾値DT_th2とがいずれも、第1制御モードよりも大きな値になるように設定されている。
さらに、図11に示す例では、低残容量領域における要求駆動力DT_dmdの閾値DT_th3は、これに対応する給電量が、基本給電量P1_baseに一致するように設定されている。ただし、閾値DT_th3に対応する給電量は、第1蓄電装置2から出力可能な上限の給電量以下であれば、基本給電量P1_baseよりも大きくてもよい。
第2制御モードにおける第2残容量SOC2及び要求駆動力DT_dmdに関する閾値の設定態様は、以上説明した事項以外は、第1制御モードと同じである。
そして、第2制御モードにおける通常併用制御処理は、第1制御モードと同様に、前記した図6〜図8のフローチャートに従って実行される。なお、低残容量領域における要求駆動力DT_dmdの閾値DT_th3を、これに対応する給電量が、基本給電量P1_baseに一致するように設定した場合、図8のSTEP26,28の処理は省略できる。
第2制御モードにおける通常併用制御処理は、以上の如く実行される。
この第2制御モードでは、低残容量領域及び中残容量領域を合わせた残容量領域(低側残容量領域)が、第1制御モードよりも広いと共に、該残容量領域において、第1蓄電装置2から第2蓄電装置3への充電が行われることとなる要求駆動力DT_dmdの範囲が第1制御モードよりも拡大されている。このため、第2残容量SOC2は、高残容量領域に近い状態に保たれやすくなる。
また、中残容量領域及び高残容量領域において、第2蓄電装置3から電動モータ100に給電を行うこととなる要求駆動力DT_dmdの範囲も、第1制御モードよりも拡大されている。
この結果、要求駆動力DT_dmdが比較的大きい状態(DT_dmd>DT_th4となる状態)では、幅広い要求駆動力DT_dmdの範囲で、該要求駆動力DT_dmdの変動に対して高い応答性で、電動モータ100への給電量を変化させることができる。ひいては、要求駆動力DT_dmdの変化に対する電動モータ100の実際の駆動力の応答性を高めることができる。
なお、本実施形態では、第2残容量SOC2の中残容量領域の上限の閾値B2_th1と、第1蓄電装置2の基本給電量P1_baseとの両方を、第1制御モードよりも大きな値に設定したが、閾値B2_th1及び基本給電量P1_baseのいずれか一方だけを第1制御モードよりも大きな値に設定してもよい。このようにしても第1蓄電装置2から第2蓄電装置3への充電が行われることとなる領域を第1制御モードよりも拡大することができる。
(第3制御モード)
次に、制御モードが、第3制御モードに設定されている場合の通常併用制御処理を説明する。
図12は、第3制御モードにおいて、電動モータ100の要求駆動力DT_dmdに応じて該電動モータ100に給電すべき電気量(給電量)に対する第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの出力の負担形態と、第2残容量SOC2との関係をマップ形態で表した図である。なお、図12における斜線領域及び点描領域の意味は図5と同様である。また、図12中の二点鎖線は、第1制御モードとの比較のために、図5に破線で示した閾値DT_th4のラインを示している。
第1制御モードに係る図5と、第3制御モードに係る図12とを対比して判るように、第3制御モードは、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの出力の負担形態を区分する閾値を第1制御モードと異ならせた制御モードである。
本実施形態における第3制御モードでは、第2残容量SOC2が比較的低い状態でも第2蓄電装置3が第1制御モードに比して充電され難くなり、また、第2残容量SOC2が比較的高い状態では、第1蓄電装置2から電動モータ100に給電を行うこととなる要求駆動力DT_dmdの範囲が第1制御モードに比して拡大される。
より詳しくは、本実施形態における第3制御モードでは、第2残容量SOC2の中残容量領域の上限の閾値B2_th1が、第1制御モードよりも低い値にあらかじめ設定されている。
また、第2蓄電装置3の低残容量領域及び中残容量領域における第1蓄電装置2の基本給電量P1_baseが、第1制御モードよりも小さくなるように(換言すれば、基本給電量P1_baseを、電動モータ100の回転速度に応じて駆動力値に換算してなる閾値DT_th4(回転速度を一定とした場合の換算値)が、第1制御モードよりも小さくなるように)、第2残容量SOC2の検出値に応じて設定される。
このような基本給電量P1_baseは、第1制御モードの場合と同様の仕方で決定できる。例えば、第1制御モードの場合と同様に、図9のフローチャートに示す処理と同様の処理により、基本給電量P1_base(=α×P1b)を決定できる。ただし、この場合、基本給電量P1_baseの最大値P1bは、あらかじめ、第1制御モードよりも小さい値に設定される。
なお、第3制御モードにおける基本給電量P1_baseを、例えば第2残容量SOC2の検出値から、あらかじめ作成されたマップあるいは演算式を用いて、直接的に設定することも可能である。
また、第3制御モードでは、高残容量領域における要求駆動力DT_dmdの閾値DT_th1と、中残容量領域における要求駆動力DT_dmdの閾値DT_th2とがいずれも、第1制御モードよりも小さい値になるように設定されている。
第3制御モードにおける第2残容量SOC2及び要求駆動力DT_dmdに関する閾値の設定態様は、以上説明した事項以外は、第1制御モードと同じである。
そして、第3制御モードにおける通常併用制御処理は、第1制御モードと同様に、前記した図6〜図8のフローチャートに従って実行される。
第3制御モードにおける通常併用制御処理は、以上の如く実行される。
この第3制御モードでは、低残容量領域及び中残容量領域を合わせた残容量領域(低側残容量領域)が、第1制御モードよりも狭いと共に、該残容量領域において、第1蓄電装置2から第2蓄電装置3への充電が行われることとなる要求駆動力DT_dmdの範囲が第1制御モードよりも縮小されている。このため、第1蓄電装置2から第2蓄電装置3への充電を行う状態は発生し難くなる。
このため、当該充電に伴う電力損失を第1制御モード及び第2制御モードに比して低減することができる。その結果、車両の単位走行距離当たりに第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の全体が消費する電気エネルギー量を、第1制御モード及び第2制御モードに比して低減できる。ひいては、車両の航続可能距離を伸ばすことができる。
なお、本実施形態では、第2残容量SOC2の中残容量領域の上限の閾値B2_th1と、第1蓄電装置2の基本給電量P1_baseとの両方を、第1制御モードよりも小さな値に設定したが、閾値B2_th1及び基本給電量P1_baseのいずれか一方だけを第1制御モードよりも小さな値に設定してもよい。このようにしても、第1蓄電装置2から第2蓄電装置3への充電を行うこととなる領域を第1制御モードよりも縮小できる。
これまで述べてきた第1〜3制御モードを整理すると、第1制御モードは、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3を極力劣化させないことを主目的とした、いわゆる「長持ちモード」である。第2制御モードは、電動モータ100の要求駆動力DT_dmdに対する応答性を高めることを主目的とした、いわゆる「スポーツモード」である。第3制御モードは、車両の電費性能(電気エネルギーの単位消費量当たりの車両の航続距離)を高める点を主目的とした、いわゆる「エコモード」である。
(停止延長制御処理)
次に、前記STEP6の停止延長制御処理を詳細に説明する。
停止延長制御処理では、電力伝送制御部41は、電動モータ100の力行運転時に、第1蓄電装置2からできるだけ継続的に電動モータ100に給電しつつ、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量に対する不足分だけを第2蓄電装置3から電動モータ100に給電するように電力伝送回路部11を制御する。
この停止延長制御処理では、電力伝送制御部41は、図13のフローチャートに示す処理を所定の制御処理周期で実行する。具体的には、電力伝送制御部41は、STEP41において、第1残容量SOC1の検出値に応じて、第1蓄電装置2から出力可能な上限給電量P1_maxを決定する。
該上限給電量P1_maxは、例えば、図15のグラフで示す形態で、SOC1の検出値から、あらかじめ作成されたマップ又は演算式により決定される。該上限給電量P1_maxは、SOC1が小さいほど、小さい値となるように決定される。
次いで、電力伝送制御部41は、上記上限給電量P1_maxが、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量よりも大きいか否かをSTEP42で判断する。
このSTEP42の判断結果が肯定的である場合には、電力伝送制御部41は、STEP43において、第1蓄電装置2の出力P1が、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量に一致するように、電力伝送回路部11を制御する。
この場合の電力伝送回路部11の具体的な制御は、図8のSTEP28と同様に行うことができる。
一方、STEP42の判断結果が否定的である場合には、電力伝送制御部41は、STEP44において、第1蓄電装置2の出力P1が、上限給電量P1_maxに一致し、且つ、第2蓄電装置3の出力P2が、要求駆動力DT_dmdに対応する給電量から第1蓄電装置2の出力P1(=P1_max)を差し引いた不足分の給電量に一致するように、電力伝送回路部11を制御する。
この場合の電力伝送回路部11の具体的な制御は、図6のSTEP14と同様に行うことができる。
なお、STEP44では、第1残容量SOC1の検出値が下限値B1_minに達して、上限給電量P1_max=0となっている状態では、第2蓄電装置3だけから要求駆動力DT_dmdに対応する給電量が電動モータ100に給電されることとなる。この状況では、電力伝送回路部11の電圧変換器15は、通電遮断状態に制御され、あるいは、第1蓄電装置2側のコンタクタ12がオフ状態に制御される。
停止延長制御処理は、以上の如く実行される。かかる停止延長制御処理では、大きな給電量を出力し難い第1蓄電装置2を優先的に使用して、電動モータ100への給電が行われる。そして、第1蓄電装置2が出力可能な上限給電量P1_maxが要求駆動力DT_dmdに対応する給電量に満たない場合でも、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の両方から電動モータ100に給電することで、第1蓄電装置2を下限値B1_minの残容量まで放電させることができる。
そして、その後は、大きな給電量を出力し易い第2蓄電装置3から電動モータ100への給電を行うことで、第2蓄電装置3を下限値B2_minの残容量もしくはこれに近い残容量まで放電させることができる。
ここで、以上説明した通常併用制御処理及び停止延長制御処理によって、第1残容量SOC1及び第2残容量SOC2がどのような形態で変化していくかの一例を図14〜図16を参照して説明する。
なお、この例では、通常併用制御処理における制御モードは、例えば、第1制御モードであるとする。
図14に示すグラフSは、通常併用制御処理を実行しながら、車両の走行が行われている状況で、第1残容量SOC1及び第2残容量SOC2の組がどのようなパターンで変化していくかを例示するものである。
このグラフSに見られるように、第2残容量SOC2は、第1蓄電装置2から第2蓄電装置3への充電が適宜行われることで、例えば閾値B2_th1の近辺の値に保たれるように増減する一方、第1残容量SOC1は減少していく。
また、図14中の太線矢印a1〜a4は、例えば、第1残容量SOC1及び第2残容量SOC2の組が点Qの状態となっている時点(時刻t0)から、車両のクルーズ走行を開始した場合における第1残容量SOC1及び第2残容量SOC2の組の変化の仕方を示している。クルーズ走行は、電動モータ100の要求駆動力DT_dmdと回転速度とがほぼ一定に維持される状態での車両の走行である。
そして、図15中の点b1及び太線矢印b2〜b4は、上記時刻t0からの第1残容量SOC1の変化を示し、図16中の太線矢印c1,c2、点c3、及び太線矢印c4は、上記時刻t0からの第2残容量SOC2の変化を示している。
a1,b1,c1は、時刻t0からt1までの期間、a2,b2,c2は、時刻t1からt2までの期間,a3,b3,c3は、時刻t2からt3までの期間、a4,b4,c4は、時刻t3以後の期間のものである。なお、時刻t3は、第1残容量SOC1が閾値B1_th1に達することで、停止延長制御処理が開始される時刻である。また、クルーズ走行における電動モータ100の要求駆動力DT_dmdは、例えば、図16のc1,c2,c3,c4の高さ位置の値である。
時刻t0〜t1の期間では、第1制御モードでの通常併用制御処理によって、第1蓄電装置2から電動モータ100への給電又は第2蓄電装置3への充電は行われず、第2蓄電装置3だけから電動モータ100への給電が行われる(図16を参照)。このため、図14の矢印a1及び図15の点b1で例示するように、第1残容量SOC1は一定に維持される。また、図14の矢印a1及び図16の矢印c1で例示するように、第2残容量SOC2は減少していく。
時刻t1で第2残容量SOC2が閾値B2_th1に到達すると、次に、時刻t1〜t2の期間では、第1制御モードでの通常併用制御処理によって、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の両方から電動モータ100に給電される(図16を参照)。このため、図14の矢印a2及び図15の矢印b2で例示するように、第1残容量SOC1が減少していくと共に、図14の矢印a2及び図16の矢印c2で例示するように、第2残容量SOC2が減少していく。
時刻t2において、第2残容量SOC2が図16の点c3に対応する値に達すると、第1制御モードでの通常併用制御処理によって、第1蓄電装置2だけから電動モータ100に給電されるようになる。このため、時刻t2〜t3の期間では、図14の矢印a3及び図16の点c3で例示するように、第2残容量SOC2は一定に維持される。そして、図14の矢印a3及び図15の矢印b3で例示するように、第1残容量SOC1が減少していく。
時刻t3において、第1残容量SOC1が閾値B1_th1まで減少すると、停止延長制御処理が開始される。このため、時刻t3以後は、図14の矢印a4及び図15の矢印b4で例示するように、第1蓄電装置2が前記上限給電量P1_maxを出力しつつ、第1残容量SOC1が下限値B1_minまで減少していく。また、図14の矢印a4及び図16の矢印c4で例示するように、第2残容量SOC2が下限値B2_minまで減少していく。
図17は、停止延長制御処理での第1残容量SOC1及び第2残容量SOC2の経時変化の一例を示している。図示例は、停止延長制御処理の開始後、電動モータ100への出力(給電量)がある一定値に維持される状況(すなわち、車両のクルーズ走行状態)での、第1残容量SOC1及び第2残容量SOC2の経時変化の一例を示している。
図示の如く、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の両方から電動モータ100への給電を行うことで、電動モータ100への一定値の給電量を確保しつつ、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの残容量SOC1,SOC2をそれぞれの下限値B1_min,B2_minまで消費することが可能となる。
このように第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の双方によって電動モータ100への給電可能期間の延長を図ることで、一方の蓄電装置(例えば、第1蓄電装置2)のみで給電可能期間の延長を図る場合よりも、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の双方の電力を十分に使いきれるため、より一層、電動モータ100への給電可能期間、ひいては、車両の航続可能距離を延長できる。
以上のように、特に第1制御モードでの通常併用制御処理では、第2残容量SOC2を中残容量領域又はその近辺の値に保持するようにしつつ、第1残容量SOC1を減少させていくようにすることができる。
また、停止延長制御処理では、電動モータ100への給電による第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の放電を、それぞれの下限値B1_min,B2_minまで、もしくはこれに近い残容量値まで十分に行うことができる。
なお、以上説明した通常併用制御処理及び停止延長制御処理は、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の両方が正常(故障無の状態)である場合に実行される処理である。
第1蓄電装置2が正常であり、且つ第2蓄電装置3が故障有りの状態である場合における電動モータ100の力行運転時には、電力伝送制御部41は、第2蓄電装置3側のコンタクタ13をオフにした状態で、電動モータ100の要求駆動力DT_dmdに対応する給電量を第1蓄電装置2だけから電動モータ100に給電するように、電力伝送回路部11の電圧変換器15及びインバータ17を制御する。この場合の電力伝送回路部11の制御処理は、前記STEP28と同様に実行される。
(制動時の制御処理)
次に、電動モータ100の制動を行う状況(車両の減速時)における電力伝送制御部41の制御処理を説明する。
本実施形態では、電力伝送制御部41は、電動モータ100の制動時に、図18のフローチャートに示す処理を所定の制御処理周期で実行する。なお、この処理は、詳しくは、第1蓄電装置2の正常時における処理である。
この処理では、電力伝送制御部41は、まず、第2蓄電装置3の故障検知情報(故障の有無の検知情報)と、第1蓄電装置2の残容量SOC1の検出値とに応じて、電動モータ100の制動のための制御処理の態様を規定する制動処理モードを設定する。
具体的には、電力伝送制御部41は、STEP51において、第2蓄電装置3の故障検知情報を故障検知部43から取得すると共に、第1蓄電装置2の残容量SOC1(第1残容量SOC1)の検出値を残容量検出部42から取得する。
次いで、STEP52において、電力伝送制御部41は、故障検知情報が、第2蓄電装置3の故障無しの状態(正常状態)を示す情報であるか否かを判断する。
この判断結果が肯定的である場合(第2蓄電装置3が正常である場合)には、電力伝送制御部41は、STEP53において、制動処理モードを第1制動モードに設定する。詳細は後述するが、該第1制動モードは電動モータ100の要求制動力を、該電動モータ100の回生運転により発生する回生制動力により実現しつつ、該電動モータ100が出力する回生電力を、図19Aに示す如きマップに基づいて第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の一方又は両方に(主に、第2蓄電装置3に)充電するモードである。
また、STEP52の判断結果が否定的である場合(第2蓄電装置3の故障が検知されている場合)には、電力伝送制御部41は、STEP55において、第2蓄電装置3側のコンタクタ13をオフ(遮断状態)にする。これにより、第2蓄電装置3の充放電が禁止される。
さらに電力伝送制御部41は、STEP56において、第1残容量SOC1の検出値が所定の残容量閾値B1_th2以上であるか否かを判断する。
このSTEP56の判断結果が肯定的となる状況は、第1蓄電装置2に回生電力を充電せずとも、しばらくの間、車両の走行(電動モータ100の力行運転)を継続し得る程度に、第1残容量SOC1が比較的大きい状況である。換言すれば、第1蓄電装置2が満充電であるか、又は満充電に近いため、充電による劣化抑制などの観点から、第1蓄電装置2に対する充電が不要な状況である。
この状況では、電力伝送制御部41は、STEP57において、制動処理モードを第2制動モードに設定する。詳細は後述するが、該第2制動モードは、電動モータ100の要求制動力を、電動モータ100の回生運転を行うことなく、制動装置6による制動力だけで実現するモードである。
また、STEP56の判断結果が否定的となる状況は、第1残容量SOC1が比較的小さいものとなっており、車両の走行(電動モータ100の力行運転)を継続すると、比較的早期に第1残容量SOC1が不足して、車両の走行(電動モータ100の力行運転)を継続することが困難となる可能性が高い状況である。
この状況では、電力伝送制御部41は、STEP58において、制動処理モードを第3制動モードに設定する。詳細は後述するが、該第3制動モードは、電動モータ100の要求制動力を、回生制動力によって、又は該回生制動力と制動装置6による制動力(非回生制動力)との両方によって実現しつつ、該電動モータ100が出力する比較的少量の回生電力を第1蓄電装置2に充電するモードである。
電力伝送制御部41は、以上の如く制動処理モードを設定した後、STEP54において、設定した制動処理モードに応じて、電動モータ100に制動力を作用させるための制動処理を実行する。
次に、第1制動モード、第2制動モード及び第3制動モードのそれぞれにおける制動処理を具体的に説明する。
(第1制動モードでの制動処理)
第1制動モードでの制動処理では、電力伝送制御部41は、図20のフローチャートに示す処理を実行する。
具体的には、電力伝送制御部41は、STEP54−1において、第2蓄電装置3の残容量SOC2(第2残容量SOC2)の検出値と、電動モータ100の要求回生量G_dmdとを取得する。該要求回生量G_dmdは、本実施形態では、電動モータ100の要求制動力を、電動モータ100の回生運転時の回生制動力だけで実現すると仮定した場合における電動モータ100の発電電力(単位時間当たりの発電エネルギー量)の要求値である。
かかる要求回生量G_dmdは、例えば、電動モータ100の要求制動力と、電動モータ100の回転速度の検出値とから、あらかじめ作成されたマップ又は演算式により求められる。
次いで、STEP54−2において、電力伝送制御部41は、SOC2の検出値と、電動モータ100の要求回生量G_dmdとから、あらかじめ作成されたマップに基づいて、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの目標入力Pc1,Pc2(目標充電量)を決定する。該目標入力Pc1,Pc2は、それらの総和が要求回生量G_dmdに一致する(ひいては、電動モータ100の回生制動力が要求制動力に一致する)ように決定される。
図19Aは当該マップを視覚的に表している。このマップにおいて、要求回生量G_dmdが所定の閾値G_th1以下となる点描領域は、第2蓄電装置3だけに回生電力の充電を行う領域(Pc1=0とする領域)を表し、要求回生量G_dmdが閾値G_th1よりも大きなものとなる斜線領域は、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の両方に回生電力の充電を行う領域を表している。
上記閾値G_th1は、第2残容量SOC2の検出値に応じて設定された閾値である。図示例では、閾値G_th1は、第2残容量SOC2が所定値SOC2a以下となる領域では、あらかじめ定められた一定値(固定値)であり、所定値SOC2aよりも大きい領域では、第2残容量SOC2の増加に伴い小さくなるように設定されている。所定値SOC2a以下の領域における閾値G_th1は、要求回生量G_dmdの最大値G_maxに近い値に設定されている。
上記STEP54−2では、SOC2の検出値と、要求回生量G_dmdとの組が、点描領域に属する場合には、第1蓄電装置2の目標入力Pc1がゼロに設定されると共に、第2蓄電装置3の目標入力Pc2として要求回生量G_dmdが設定される。従って、要求回生量G_dmdが閾値G_th1よりも小さい場合には、第2蓄電装置3だけに回生電力を充電するように目標入力Pc1,Pc2が設定される。
また、SOC2の検出値と、要求回生量G_dmdとの組が、斜線領域に属する場合には、第2蓄電装置3の目標入力Pc2として、閾値G_th1に一致する回生量が設定されると共に、要求回生量G_dmdから第2蓄電装置3の目標入力Pc2を差し引いた残余の回生量が第1蓄電装置2の目標入力Pc1として設定される。
従って、要求回生量G_dmdが、閾値G_th1よりも大きく、且つ、第2残容量SOC2の検出値が所定値SOC2aよりも大きい場合には、要求回生量G_dmdのうちの第2蓄電装置3の目標入力Pc2の割合が、SOC2の検出値が大きいほど、小さくなるように(換言すれば、要求回生量G_dmdのうちの第1蓄電装置2の目標入力Pc1の割合が、SOC2の検出値が大きいほど、大きくなるように)、目標入力Pc1,Pc2が設定される。
次いで、STEP54−3において、電力伝送制御部41は、要求回生量G_dmdが、上記閾値G_th1よりも大きいか否かを判断する。
このSTEP53の判断結果が肯定的となる状況は、図19Aの斜線領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部41は、STEP54−4において、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3をそれぞれ目標入力Pc1,Pc2で充電するように、電力伝送回路部11を制御する。
上記STEP54−4の処理は、具体的には、例えば次のように実行することができる。すなわち、電動モータ100の回転速度の検出値等に応じて、インバータ17の出力電圧(=電圧変換器15,16の入力電圧)の目標値が設定される。さらに、目標入力Pc1が電圧変換器15から第1蓄電装置2への出力電力の目標値として設定されると共に、目標入力Pc2が電圧変換器16から第2蓄電装置3への出力電力の目標値として設定される。
そして、インバータ17の出力電圧の目標値を実現するようにインバータ17が制御される。同時に、電圧変換器15,16のそれぞれから第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれへの出力電力の目標値を実現するように電圧変換器15,16が制御される。
一方、前記STEP54−3の判断結果が否定的となる状況は、図19Aの点描領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部41は、STEP54−5において、第2蓄電装置3だけを目標入力Pc2で充電するように、電力伝送回路部11を制御する。
上記STEP54−5の処理は、具体的には、例えば次のように実行することができる。すなわち、電動モータ100の回転速度の検出値等に応じて、インバータ17の出力電圧(=電圧変換器16の入力電圧)の目標値が設定される。さらに、目標入力Pc2が電圧変換器16から第2蓄電装置3への出力電力の目標値として設定される。
そして、インバータ17の出力電圧の目標値を実現するようにインバータ17が制御される。同時に、電圧変換器16から第2蓄電装置3への出力電力の目標値を実現するように電圧変換器16が制御される。
さらに、電圧変換器15は通電遮断状態に制御される。あるいは、第1蓄電装置2側のコンタクタ12がオフ状態に制御される。これにより、第1蓄電装置2から第2蓄電装置3への放電と、インバータ17側から第1蓄電装置2への充電とが禁止される。
以上の如く、第1制動モードでの制動処理が電力伝送制御部41により実行される。
上記の如く第1制動モードでの制動処理を実行することで、電動モータ100の要求制動力を、電動モータ100の回生制動力により実現するように電動モータ100の回生運転が行われる。
このとき、電動モータ100が出力する回生電力は、基本的には第2蓄電装置3に充電される。そして、第2蓄電装置3に充電し切れない回生電力(閾値G_th1を超える回生量)だけが第1蓄電装置2に充電される。
これにより、第1蓄電装置2による第2蓄電装置3の充電を行うことが必要となる状況の発生が極力少なくなるようにしつつ、第2残容量SOC2を、中残容量領域又はその近辺の残容量値に維持するようにすることができる。ひいては、システム全体のエネルギー利用効率が上昇する。
また、第1蓄電装置2は、一般に高レートでの充電(単位時間当たりの充電量が大きい高速充電)に対する劣化耐性が低いものの、第1蓄電装置2に対する回生量を極力削減することで、第1蓄電装置2の劣化を極力抑制できる。
(第2制動モードでの制動処理)
次に、第2制動モードでの制動処理では、電力伝送制御部41は、図21のフローチャートに示す処理を実行する。
具体的には、電力伝送制御部41は、STEP54−11において、電動モータ100の要求回生量G_dmdを取得する。
そして、電力伝送制御部41は、STEP54−12において、制動装置6の目標制動力Br_cmdを設定する。この場合、目標制動力Br_cmdとして、要求回生量G_dmdに対応する制動力、すなわち、電動モータ100の要求制動力が設定される。
次いで、STEP54−13において、電力伝送制御部41は、目標制動力Br_cmdを制動装置制御部44に指令する。このとき、該制動装置制御部44は、目標制動力Br_cmdを電動モータ100に付与するように制動装置6を制御する。
以上の如く、第2制動モードでの制動処理が電力伝送制御部41により実行される。
なお、第2制動モードでは、電動モータ100の回生運転を行わないので、電力伝送制御部41は、電圧変換器15,16の両方を通電遮断状態に維持し、あるいは、コンタクタ12,13の両方をオフ状態に維持する。
上記の如く第1残容量SOC1が所定の残容量閾値B1_th2以上となっている状態での第2蓄電装置3の故障時に、第2制動モードでの制動処理を実行することで、図19Bに示す如く、要求回生量G_dmdに対応する制動力(=電動モータ100の要求制動力)を、制動装置6の制動力だけにより実現するように、制動装置6が制御される。従って、要求制動力のうちの回生制動力の負担分はゼロとされる。
なお、図19Bでは、図19Aと整合させるために、横軸を第2残容量SOC2の値としているが、第2制動モードでは、第2蓄電装置3が故障しているので、第2残容量SOC2の値は不要である。
かかる第2制動モードでは、電動モータ100の回生運転による第1蓄電装置2への充電は行われないため、第1蓄電装置2の充電に起因する劣化の進行を防止することができる。
また、電動モータ100の制動時に、第2制動モードでの制動処理が実行される状況では、第1蓄電装置2の残容量SOC1が比較的大きいので、電動モータ100の力行運転時には、第1蓄電装置2から要求駆動力DT_dmdに対応する給電量を、電動モータ100に給電することを継続できる。
(第3制動モードでの制動処理)
次に、第3制動モードでの制動処理では、電力伝送制御部41は、図22のフローチャートに示す処理を実行する。
具体的には、電力伝送制御部41は、STEP54−21において、電動モータ100の要求回生量G_dmdを取得する。
次いで、電力伝送制御部41は、STEP54−22において、電動モータ100の要求回生量G_dmdが所定の閾値G_th3以下であるか否かを判断する。
上記閾値G_th3は、第1蓄電装置2の充電による劣化を極力防止する上で望ましい充電量(単位時間当たりの充電量)の上限値に一致するように設定された閾値である。
ここで、図23は、第1蓄電装置2の充電時の充電速度(単位時間当たりの充電量)を表す充電レート(単位は、例えば[C])と、第1蓄電装置2の容量の劣化度合いを表す容量劣化係数との関係を例示するグラフである。なお、容量劣化係数は、所謂、ルート則により算出された値である。また、1[C]の充電レートでの充電は、放電済の蓄電装置の充電を1[h]で完了し得る電流量での定電流充電を意味する。例えば、蓄電装置の公称容量が、X[Ah]であるとした場合、1[C]の充電レートでの充電は、X[A]での定電流充電を意味する。
図23に示されるように、充電レートが所定値Crxよりも大きなものとなる高レートでの第1蓄電装置2の充電を行うと、充電レートが所定値Crxよりも小さなものとなる低レートでの第1蓄電装置2の充電を行った場合に比して、充電レートの増加に対する容量劣化係数の増加(第1蓄電装置2の劣化度合いの増加)が急激に大きくなる。
そこで、本実施形態では、所定値Crx以下の充電レートを、第1蓄電装置2の充電速度の許容範囲としている。そして、STEP54−22の判断処理における上記閾値G_th3は、該閾値G_th3以下の回生量であれば、所定値Crx以下の充電レート(許容範囲の充電レート)で第1蓄電装置2への充電を行い得るように設定されている。
STEP54−22の判断結果が肯定的となる状況は、要求回生量G_dmdの回生電力を、充電レートの許容範囲で第1蓄電装置2に充電し得る状況である。この場合には、電力伝送制御部41は、STEP54−23において、第1蓄電装置2の目標入力Pc1として、要求回生量G_dmdを設定する。
そして、電力伝送制御部41は、STEP54−24において、第1蓄電装置2を目標入力Pc1で充電するように、電力伝送回路部11を制御する。
上記STEP54−24の処理は、具体的には、例えば次のように実行することができる。すなわち、電動モータ100の回転速度の検出値等に応じて、インバータ17の出力電圧(=電圧変換器15の入力電圧)の目標値が設定される。さらに、目標入力Pc1が電圧変換器15から第1蓄電装置2への出力電力の目標値として設定される。
そして、インバータ17の出力電圧の目標値を実現するようにインバータ17が制御される。同時に、電圧変換器15から第1蓄電装置2への出力電力の目標値を実現するように電圧変換器15が制御される。この場合、第2蓄電装置3側のコンタクタ13がオフ状態とされている。
STEP54−22の判断結果が否定的となる状況は、要求回生量G_dmdの回生電力をそのまま第1蓄電装置2に充電しようとすると、充電レートの許容範囲で第1蓄電装置2に充電することができない状況である。この場合には、電力伝送制御部41は、STEP54−25において、第1蓄電装置2の目標入力Pc1として、前記閾値G_th3を設定すると共に、制動装置6の目標制動力Br_cmdとして、要求回生量G_dmdから閾値G_th3(=Pc1)を差し引いた残余の回生量に対応する制動力を設定する。
この制動力(=Br_cmd)は、当該残余の回生量で電動モータ100の回生運転を行ったと仮定した場合に、該電動モータ100で発生する回生制動力に一致する制動力である。かかる制動力は、当該残余の回生量(=G_dmd−G_th3)と電動モータ100の回転速度の検出値とから、あらかじめ作成されたマップ又は演算式により求めることができる。
従って、STEP54−25では、閾値G_th3の回生量で電動モータ100の回生運転を行った場合に発生する回生制動力と、目標制動力Br_cmdとの総和の制動力が、要求回生量G_dmdで電動モータ100の回生運転を行ったと仮定した場合に発生する回生制動力に一致するように目標制動力Br_dmdが設定される。
次いで、電力伝送制御部41は、STEP54−26において、第1蓄電装置2を目標入力Pc1で充電するように、電力伝送回路部11を制御すると共に、目標制動力Br_cmdを制動装置制御部44に指令する。このとき、該制動装置制御部44は、目標制動力Br_cmdを電動モータ100に付与するように制動装置6を制御する。なお、STEP54−26における電力伝送回路部11の制御は、STEP54−24と同様に行われる。
以上の如く、第3制動モードでの制動処理が電力伝送制御部41により実行される。
上記の如く第3制動モードでの制動処理を実行することで、図19Cに示す如く、要求回生量G_dmdが閾値G_th3以下である場合には、該要求回生量G_dmdに対応する制動力(=電動モータ100の要求制動力)を、電動モータ100から第1蓄電装置2への充電を要求回生量G_dmdに一致する回生電力で行うことにより該電動モータ100が発生する回生制動力だけによって実現するように、電力伝送回路部11が制御される。この状況では、制動装置6のよる制動力の発生は行われない。
また、要求回生量G_dmdが閾値G_th3よりも大きい場合には、該要求回生量G_dmdに対応する制動力(=電動モータ100の要求制動力)を、電動モータ100から第1蓄電装置2への充電を閾値G_thに一致する回生電力で行うことにより該電動モータ100が発生する回生制動力と、制動装置6の制動力との両方によって実現するように、電力伝送回路部11と制動装置6とが制御される。
なお、図19Cでは、図19Aと整合させるために、横軸を第2残容量SOC2の値としているが、第3制動モードでは、第2蓄電装置3が故障しているので、第2残容量SOC2の値は不要である。
かかる第3制動モードでは、電動モータ100の回生運転による第1蓄電装置2への充電量(単位時間当たりの充電量)が、許容範囲の充電レートで第1蓄電装置2への充電を行い得るように設定された閾値G_th3以下の充電量に制限される。
このため、第1蓄電装置2の劣化の進行を十分に抑制し得る範囲で、該第1蓄電装置2への回生電力の充電が行われる。その結果、第2蓄電装置3が故障した状態での車両の走行中に、第1蓄電装置2の劣化の進行を極力抑制しつつ、該第1蓄電装置2から電動モータ100に給電を行い得る期間を極力延長させることができる。
図24は、第2蓄電装置3の故障が発生する前後における第1蓄電装置2の残容量SOC1の経時変化と、第2蓄電装置3の故障が発生する前の該第2蓄電装置3の残容量SOC2の経時変化とを例示的に示すグラフである。
図24では、時刻t1にて第2蓄電装置3の故障が発生し、時刻t2にて、第1残容量SOC1が前記残容量閾値B1_th2まで低下している。従って、時刻t1以前の期間は、電動モータ100の制動時に第1制動モードでの制動処理が実行される期間、時刻t1からt2までの期間は、電動モータ100の制動時に第2制動モードでの制動処理が実行される期間、時刻t2以後の期間は、電動モータ100の制動時に第3制動モードでの制動処理が実行される期間である。
この場合、時刻t2以後において、Δt1の期間、及びΔt2の期間が、電動モータ100の制動時に、回生電力が第1蓄電装置2に充電される期間である。このように、電動モータ100の制動時に、第1蓄電装置2に回生電力が充電されることによって、第1残容量SOC1がある程度回復する。このため、時刻t2以後に、電動モータ100に給電し得る期間を極力延長することができる。
ここで、以上説明した第1実施形態と本発明との対応関係について補足しておく。
本実施形態では、前記第1制動モードでの制動処理が、本発明における第1制動処理に相当し、前記第2制動モードでの制動処理と第3制動モードでの制動処理とを合わせた制動処理が、本発明における第2制動処理に相当する。
また、電動モータ100(電気負荷)の制動時の要求回生量G_dmdは、本発明における回生量指標値に相当する。
また、図23に示した充電レートの所定値Crxが、本発明における充電速度に関する速度閾値に相当する。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図25及び図26を参照して説明する。なお、本実施形態は、電動モータ100の制動時における第1制動モードでの制動処理だけが第1実施形態と相違するものである。このため、第1実施形態と同一事項については説明を省略する。
本実施形態では、電動モータ100の制動時における第1制動モードでの制動処理は、所定の制御処理周期で、図25のフローチャートに示す如く実行される。
具体的には、電力伝送制御部41は、STEP61において、第2残容量SOC2の検出値と、電動モータ100の要求回生量G_dmdとを取得する。このSTEP61の処理は、第1実施形態のSTEP54−1の処理と同じである。
次いで、STEP62において、電力伝送制御部41は、SOC2の検出値と、電動モータ100の要求回生量G_dmdとからあらかじめ作成されたマップに基づいて、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの目標入力Pc1,Pc2(目標充電量)を決定する。
図26は本実施形態における当該マップを視覚的に表している。このマップにおいて、要求回生量G_dmdが所定の閾値G_th2以下となる斜線領域は、第1蓄電装置2だけに充電を行う領域(Pc2=0とする領域)を表し、要求回生量G_dmdが閾値G_th2よりも大きく、且つ、所定の閾値G_th1以下となる点描領域と、要求回生量G_dmdが閾値G_th1よりも大きなものとなる斜線領域とは、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の両方に充電を行う領域を表している。
上記閾値G_th1,G_th2のうち、閾値G_th1は第1実施形態と同様に、SOC2の検出値に応じて設定される閾値である。
また、閾値G_th2は、本実施形態では、あらかじめ定められた所定の一定値である。該閾値G_th2は、比較的小さい値(ゼロに近い値)である。この閾値G_th2としては、例えば前記第1実施形態の第3制動モードでの制動処理で使用する閾値G_th3を用いることができる。
上記STEP62では、SOC2の検出値と、要求回生量G_dmdとの組が、最下段の斜線領域に属する場合には、第2蓄電装置3の目標入力Pc2がゼロに設定されると共に、第1蓄電装置2の目標入力Pc1として要求回生量G_dmdが設定される。
従って、回生電力を第1蓄電装置2だけに充電するように、目標入力Pc1,Pc2が設定される。
また、SOC2の検出値と、要求回生量G_dmdとの組が、点描領域に属する場合には、第1蓄電装置2の目標入力Pc1として、閾値G_th2に一致する回生量が設定されると共に、要求回生量G_dmdから第1蓄電装置2の目標入力Pc1を差し引いた残余の回生量が第2蓄電装置3の目標入力Pc2として設定される。
また、SOC2の検出値と、要求回生量G_dmdとの組が、最上段の斜線領域に属する場合には、第2蓄電装置3の目標入力Pc2として、閾値G_th1に一致する給電量が設定されると共に、要求回生量G_dmdから第2蓄電装置3の目標入力Pc2を差し引いた残余の回生量が第1蓄電装置2の目標入力Pc1として設定される。
次いで、STEP63において、電力伝送制御部41は、要求回生量G_dmdが、上記閾値G_th2以下であるか否かを判断する。
このSTEP63の判断結果が肯定的となる状況は、図26の最下段の斜線領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部41は、STEP64において、第1蓄電装置2だけを目標入力Pc1で充電するように、電力伝送回路部11を制御する。
上記STEP64の処理は、第1実施形態における第3制動モードでのSTEP54−24の処理と同様に実行することができる。
一方、STEP63の判断結果が否定的となる状況は、図26の点描領域又は最上段の斜線領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部41は、STEP65において、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3をそれぞれ目標入力Pc1,Pc2で充電するように、電力伝送回路部11を制御する。
この場合の電力伝送回路部11の具体的な制御処理は、第1実施形態における第1制動モードでのSTEP54−4の処理と同様に実行できる。
本実施形態では、以上の如く、電動モータ100の回生運転時の電力伝送制御部41の制御処理が実行される。
上記の如く回生運転時の電力伝送制御部41の制御処理を実行することで、要求回生量が閾値G_th1よりも大きい場合を除いて、閾値G_th2以下の少量の回生電力が第1蓄電装置2に充電される。この場合、第1蓄電装置2の充電量が小さいので、小さな充電レート(低レート)で第1蓄電装置2の充電を行うことができる。そのため、回生運転時に、第1蓄電装置2の劣化の進行を抑制しつつ、第1蓄電装置2の充電を行うことができる。ひいては、車両の航続可能距離を延ばすことができる。
また、閾値G_th2を超える分の回生電力は、第2蓄電装置3に充電されるので、第1蓄電装置2による第2蓄電装置3の充電を行うことが必要となる状況の発生が少なくなるようにしつつ、第2残容量SOC2を、中残容量領域又はその近辺の残容量値に維持するようにすることができる。
ここで、以上説明した第2実施形態と本発明との対応関係について補足しておく。
本実施形態では、要求回生量G_dmdに関する前記閾値G_th2が本発明における第A閾値に相当する。これ以外は、第2実施形態と本発明との対応関係は、第1実施形態と同じである。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を、図27を参照して説明する。なお、本実施形態は、電動モータ100の制動時における第1制動モードでの制動処理だけが第2実施形態と相違するものである。このため、第2実施形態と同一事項については説明を省略する。
本実施形態では、電動モータ100の回生運転時における電力伝送制御部41の制御処理は、所定の制御処理周期で、図27のフローチャートに示す如く実行される。
具体的には、電力伝送制御部41は、STEP71において、第2残容量SOC2の検出値と、電動モータ100の要求回生量G_dmdとを取得する。このSTEP71の処理は、第1実施形態のSTEP51の処理と同じである。
次いで、STEP72において、電力伝送制御部41は、SOC2の検出値と、電動モータ100の要求回生量G_dmdとからあらかじめ作成されたマップに基づいて、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの目標入力Pc1,Pc2(目標充電量)を決定する。
この場合、本実施形態における上記マップの形態(閾値G_th1,G_th2による領域の区分形態)は、第2実施形態のもの(図26に示したもの)と同じである。ただし、本実施形態では、要求回生量G_dmdが閾値G_th2よりも大きく、且つ、閾値G_th1以下となる点描領域における充電対象の蓄電装置が第2実施形態と相違する。
すなわち、本実施形態では、図26の点描領域は、第2蓄電装置3だけに充電を行う領域である。そして、SOC2の検出値と、要求回生量G_dmdとの組が、図26の点描領域に属する場合には、第1蓄電装置2の目標入力Pc1がゼロに設定されると共に、第2蓄電装置3の目標入力Pc2として、要求回生量G_cmdが設定される。
なお、図26の最下段の斜線領域と、最上段の斜線領域とにおける目標入力Pc1,Pc2の設定の仕方は第2実施形態と同じである。
次いで、STEP73において、電力伝送制御部41は、要求回生量G_dmdが、閾値G_th2以下であるか否かを判断する。
このSTEP73の判断結果が肯定的となる状況は、図26の最下段の斜線領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部41は、STEP74において、第1蓄電装置2だけを目標入力Pc1で充電するように、電力伝送回路部11を制御する。
この場合の電力伝送回路部11の具体的な制御処理は、第2実施形態におけるSTEP64の処理と同様に実行できる。
一方、STEP73の判断結果が否定的である場合には、電力伝送制御部41は、さらに、STEP75において、要求回生量G_dmdが、閾値G_th1よりも大きいか否かを判断する。
このSTEP75の判断結果が肯定的となる状況は、図26の最上段の斜線領域の状況である。この状況では、電力伝送制御部41は、STEP76において、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3をそれぞれ目標入力Pc1,Pc2で充電するように、電力伝送回路部11を制御する。
この場合の電力伝送回路部11の具体的な制御処理は、第1実施形態におけるSTEP54−4の処理と同様に実行できる。
また、STEP75の判断結果が否定的となる状況は、図26の点描領域の状況である。この場合には、電力伝送制御部41は、STEP77において、第2蓄電装置3だけを目標入力Pc2で充電するように、電力伝送回路部11を制御する。
この場合の電力伝送回路部11の具体的な制御処理は、第1実施形態におけるSTEP54−5の処理と同様に実行できる。
本実施形態では、以上の如く、電動モータ100の回生運転時の電力伝送制御部41の制御処理が実行される。
上記の如く回生運転時の電力伝送制御部41の制御処理を実行することで、要求回生量がG_th2以下の少量の回生量である場合に、当該少量の回生量の電力が第1蓄電装置2に充電される。この場合、第2実施形態と同様に、小さな充電レートで第1蓄電装置2の充電をゆっくり行うことができるため、第1蓄電装置2の劣化の進行を抑制しつつ、第1蓄電装置2の充電を行うことができる。ひいては、車両の航続可能距離を延ばすことができる。
また、要求回生量がG_th2よりも大きい場合には、閾値G_th1を超えない限り、第2蓄電装置3だけに要求回生量に対応する回生電力が充電される。そして、この場合は、第2蓄電装置3は、小さい充電レートで充電せずとも、劣化の進行が生じ難いので、該第2蓄電装置3を素早く充電することもできる。このため、回生運転時の電力伝送回路部11の制御の安定性を高めることができる。
なお、本実施形態と本発明との対応関係は、第2実施形態と同じである。
補足すると、前記第2実施形態、又は第3実施形態では、要求回生量G_dmdが閾値G_th1よりも大きい場合には、第2蓄電装置3の目標入力Pc2として、閾値Gth1と閾値G_th2との差分の回生量(閾値G_th1に一致する回生量から、閾値G_th2に一致する回生量を差し引いた差分の回生量)を設定し、要求回生量G_dmdから第2蓄電装置3の目標入力Pc2を差し引いた残余の回生量を、第1蓄電装置2の目標入力Pc1として設定するようにしてもよい。
[変形態様]
次に、以上説明した第1〜第3実施形態に関連する変形態様をいくつか説明する。
前記各実施形態では、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3の両方が正常(故障無しの状態)である場合における第1制動モードの制動処理において、電動モータ100の要求制動力を回生制動力だけで実現するようにした。ただし、第1制動モードの制動処理において、一時的に、要求制動力の一部または全部を、制動装置6の制動力(非回生制動力)で負担するようにしてもよい。例えば、第2蓄電装置3の残容量SOC1が満充電状態の値に近いものとなっている状況等において、要求制動力の一部又は全部を、制動装置6の制動力(非回生制動力)で負担するようにしてもよい。
また、第1制動モードでの制動処理において、電動モータ100の回生運転時における第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの充電量の割合は、第1残容量SOC1及び第2残容量SOC2のいずれか一方だけに応じて調整することも可能である。さらには、当該充電量の割合を、第1蓄電装置2及び第2蓄電装置3のそれぞれの温度に応じて変化させることも可能である。
また、前記各実施形態では、第3制動モードの制動処理において、第1蓄電装置2に充電する回生電力の上限値(すなわち、前記閾値G_th3に対応する回生量)を一定値とした。ただし、当該回生電力の上限値を、例えば第1蓄電装置2の残容量SOC1あるいは温度等に応じて変化させるようにしてもよい。例えば、当該回生電力の上限値を、第1蓄電装置2の残容量SOC1が小さいほど、大きくなるようにしたり、あるいは、第1蓄電装置2の温度が低いほど、小さくなるようにしてもよい。
また、前記各実施形態では、電動モータ100の力行運転時に、第1〜第3制御モードの3つの制御モードで電力伝送回路部11の制御を行う電力供給システム1を示した。ただし、電動モータ100の力行運転時の電力伝送回路部11の制御モードは、2つ又は4つ以上であってもよい。さらに、第1〜第3制御モードのいずれか1つの制御モードだけで、電力伝送回路部11を行うように電力供給システム1を構成してもよい。
また、電動モータ100の力行運転時における互いに異なる制御モードは、基本給電量P1_baseと、第2残容量に関する閾値B2_th1とのうちのいずれか一方だけが異なっていてもよい。例えば、基本給電量P1_baseの最大値P1bと、閾値B2_th1とのうちの一方だけが、第1制御モードと異なる制御モードをさらに追加し、あるいは第2制御モード又は第3制御モードの代わりに採用するようにしてもよい。
また、前記停止延長制御処理を省略してもよい。
また、前記各実施形態では、電動モータ100の要求駆動力DT_dmdを電動モータ100(電気負荷)の要求出力として使用した。ただし、例えば、要求駆動力DT_dmdに対応して電動モータ100に単位時間当たりに給電すべきエネルギー量、あるいは、要求駆動力DT_dmdに対応する電動モータ100の通電電流の要求値(単位時間当たりの電荷量の要求値)を電動モータ100(電気負荷)の要求出力として使用することも可能である。
また、前記各実施形態では、電動モータ100の要求回生量G_dmdを回生量指標値として使用した。ただし、例えば、電動モータ100の要求制動力、あるいは、該要求制動力に対応する電動モータ100の通電電流の要求値を、回生量指標値として使用することも可能である。
また、前記各実施形態では、電気負荷が電動モータ100である場合を一例として説明した。ただし、電気負荷は、回生電力を出力可能なものであれば、電動モータ100以外の電気負荷であってもよい。
また、電力供給システム1を搭載する輸送機器は、電動車両に限らない。例えば、該輸送機器は、ハイブリッド車両であってもよく、あるいは、船舶、鉄道車両等であってもよい。