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JP2017145501A - チタン‐アルミニウム合金 - Google Patents

チタン‐アルミニウム合金 Download PDF

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Abstract

【課題】主にデュプレックス組織(層)及び軟質層並びにそれらの層の積層構造を考慮して室温での延性(伸び)を改善したチタン‐アルミニウム合金を提供する。
【解決手段】チタン及びアルミニウム又はチタン‐アルミニウム合金の粉末を積層させて成るチタン‐アルミニウム合金において、前記チタン‐アルミニウム合金は、硬質層及び軟質層から成り、前記硬質層及び前記軟質層が、交互に積層された構造を有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、室温での延性(伸び)を改善したチタン‐アルミニウム合金に関する。
チタン‐アルミニウム合金は、ニッケル基超合金の半分以下の比重(<4.0)を有する軽量耐熱材料として、特に高温使用に用いられるのに非常に適しているという性質を有していることから、航空機エンジン及び静止ガスタービンにおけるタービン翼、エンジンバルブ、熱風換気装置等に使用されている。
チタン‐アルミニウム合金を使用したタービン翼を例にした場合、その多くは従来、精密鋳造(ロストワックス)法で作製される。ここで言う、精密鋳造法の概要は、次のようなものである。まず、予めタービン翼のロウ型を作製の後、該ロウ型を基に鋳型を作製し、その後脱ロウ焼成を経て、タービン翼を鋳造し、周りの鋳型を切り取って完成に至るというものである。
もっとも、精密鋳造法では、タービン翼だけでなく、エンジンバルブや熱風換気装置等の部品のようなその他のチタン‐アルミニウム合金製品をも作製することが可能である。しかしながら、チタン‐アルミニウム合金材料と反応器によるコンタミネーションの発生、チタン‐アルミニウム合金材料自体の表面酸化、製品仕上げ時の表面切削による耐摩耗性に影響が出るといった懸念材料があった。そしてまた、精密鋳造法等の既知の方法で作製したチタン‐アルミニウム合金それ自体は、室温(凡そ50℃以下まで)での延性(以下、「室温延性」という。)が1%程度であり、例えばニッケル基超合金等に比べて室温延性が乏しいものである。それゆえ、タービン翼自体並びにエンジンバルブ及び熱風換気装置の部品の大量生産や実用化に関する懸念材料があった。
このような懸念、特に室温延性を改善したチタン‐アルミニウム合金としては、例えば特許第4467637号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1に記載されているチタン‐アルミニウム合金は、該合金のベースとなるチタン及びアルミニウムの他、ニオブやモリブデン、更に炭素やホウ素を含んでいるものである。
チタン‐アルミニウム合金の室温延性の改善に関し、更に近年では、チタン‐アルミニウム合金の微細(ミクロ)組織に着目した研究開発が成されている。このような微細(ミクロ)組織に着目して室温延性を改善したチタン‐アルミニウム合金が、例えば特開2014−227601号公報(特許文献2)に開示されている。
通常、チタン‐アルミニウム合金は、大まかにTiAl相(γ相)及びTiAl(α)相の二相構造である。更に、チタン‐アルミニウム合金は、単一γ相組織(ほぼγ単相の等軸粒から成る組織)、γ相及びα相が層状構造を成すラメラ組織、γ相の等軸微細粒並びにγ/αラメラ組織を有する微細粒の両方から成るデュプレックス組織等の組織を有する。ちなみに、これらの組織は、熱処理温度やチタン及びアルミニウムの組成比によって変化する。そして、チタン‐アルミニウム合金をタービン翼等に応用する場合、その製品の強度に係る微細(ミクロ)組織は、ラメラ組織又はデュプレックス組織に依存することが大きい。中でも室温延性に関しては、デュプレックス組織に依存する(例えば特許文献3として提示する特開平10−237567号公報を参照のこと)。
特許第4467637号公報 特開2014−227601号公報 特開平10−237567号公報
しかしながら、特許文献1に記載のチタン−アルミニウム合金における室温延性は、基となるチタンやアルミニウムよりも、その他のニオブやモリブデン、更に炭素やホウ素に依存しており、チタン−アルミニウム合金に係る微細組織については何ら開示や示唆する記載が無い。また、特許文献2に記載の合金(インゴット)については、微細組織については、ラメラ組織を改質したのみで、デュプレックス組織については何ら開示や示唆する記載が無く、室温延性の改善については、特許文献1同様に基となるチタンやアルミニウムよりも、その他の金属や炭素やケイ素に依存している。また、特許文献3には、上述したように、デュプレックス組織と室温延性の関係性について記載があるが、結局は対象の合金がラメラ組織(構造)に室温延性が依存しており、対象の合金におけるデュプレックス組織と室温延性の関係性はむしろ良くないことを示唆している(特許文献3比較例参照)。
仮に、特許文献1乃至3を駆使したとしても、デュプレックス組織と室温延性の関係性が明確にはならない。
以上の事情を鑑み、本発明は、主にデュプレックス組織(層)及び軟質層並びにそれらの層の積層構造を考慮して室温での延性(伸び)を改善したチタン‐アルミニウム合金を提供する。
本発明の上記目的は、チタン及びアルミニウム又はチタン‐アルミニウム合金の粉末を積層させて成るチタン‐アルミニウム合金において、前記チタン‐アルミニウム合金は、硬質層及び軟質層から成り、前記硬質層及び前記軟質層が、交互に積層された構造を有することを特徴とすることにより効果的に達成される。
更に、造形角度が、両方とも40°〜60°であることにより、或いは前記硬質層が、デュプレックス組織で成ることにより、或いは前記軟質層が、γ単相の等軸粒で成ることにより、或いは前記硬質層は、前記軟質層の1.1〜3倍の大きさであることにより、或いは前記チタン‐アルミニウム合金の室温延性が2〜3.5%であることにより、或いはアルミニウムの組成濃度が、45〜49at%であることにより、より効果的に達成される。
本発明に係るチタン−アルミニウム合金は、硬質層及び軟質層の層構造及びその積層造形角度を考慮することにより、室温での延性や種々の強度の改善が達成できた。
本発明のチタン−アルミニウム合金の積層構造を示す概略図である。 本発明に係るチタン−アルミニウム合金から、長方形片を切り出す際に係る造形角度毎に切り出した場合の様子を示す模式図である(造形角度θ=0°)。 本発明に係るチタン−アルミニウム合金から、長方形片を切り出す際に係る造形角度毎に切り出した場合の様子を示す模式図である(造形角度θについては、0°〜90°の間で種々変わる。但し、0°及び90°は除く)。 本発明に係るチタン−アルミニウム合金から、長方形片を切り出す際に係る造形角度毎に切り出した場合の様子を示す模式図である(造形角度θ=90°)。 比較例1及び2並びに実施例1に係る各試験片の概略を示す図である。 比較例1及び2並びに実施例1に係る各試験片の表面を示す光学顕微鏡画像である。 比較例1及び2並びに実施例1に係る各試験片に係る造形角度と、延性(%)との関係性について記したグラフである。 実施例1(造形角度θ=45°)に係る軟質層の変形の様子を示す光学顕微鏡画像及び模式図である。 比較例1及び2並びに実施例1に係る各試験片に係る造形角度と、降伏応力(MPa)との関係性について記したグラフである。 実施例1、2及び3に係る各試験片の表面を示す走査電子顕微鏡画像である。 実施例1、2及び3に係る各試験片に係る造形角度と、延性(%)との関係性について記したグラフである。 実施例1、4及び5に係る各試験片の表面を示す走査電子顕微鏡画像である。 実施例1、4及び5に係る各試験片の延性(%)について記したグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のチタン−アルミニウム合金の積層構造を示す概略図である。また、図1における矢印Aは、チタン及びアルミニウムの混合粉末又はチタン−アルミニウム合金粉末を積層させる方向を示す。本発明のチタン−アルミニウム合金1は、図1に示すように、硬質層2及び軟質層3が交互に積層して成る。
次に、図1に示す本発明のチタン−アルミニウム合金1の積層構造における硬質層2について説明する。
一般的に、強度については、背景技術の項で先述したように、TiAl(γ)相及びTiAl(α)相が層状構造を成すラメラ組織、又はγ単相の等軸粒及びγ/αラメラ組織を有する微細粒から成るデュプレックス組織に依存することが大きい。
ここで、本発明に係るチタン−アルミニウム合金の積層構造を成す硬質層2は、主にデュプレックス組織とすることが望ましい。
次に、本発明に係るチタン−アルミニウム合金の積層構造を成す軟質層3について説明する。
本発明に係るチタン−アルミニウム合金の積層構造を成す軟質層3は、原則γ単相の等軸粒で成るのが望ましい。但し、該γ単相の等軸粒に対して2%以下の含有量であれば、α相の微粒子(微細粒)の混在が許容される。なお、α相の微粒子の混在が2%よりも多くなると、延性が低くなるといった懸念がある。また、α相の微粒子の混在が2%よりも多くなると、γ単相の等軸粒にならない可能性がある。
ちなみに、硬質層2の厚みTと、軟質層3の厚みTの比は、T=1.1〜3T、即ち厚みTが、厚みTの1.1〜3倍になることが望ましい。1.1倍未満であると、強度は低下する。逆に3倍以上であると、延性は低下するが、強度が増加する。なお、本明細書では、発明を実施するための形態として、硬質層2の厚みTと、軟質層3の厚みTの比を例に記したが、例えばそれぞれの層の大きさ(面積や容積)をそのパラメータにしても構わない。
また、本発明のチタン−アルミニウム合金1において、チタン及びアルミニウムの組成比であるが、α相及びγ相、それらの混合組織(γ/α混合組織)ができるような比率であって、なおかつ図1に示すような硬質層2及び軟質層3が交互に積層して成るような構造になれば特に制限はない。但し、当該構造を形成させるためには、アルミニウムの組成(濃度)は、45〜49at%(原子組成百分率)であることが望ましい。アルミニウムの濃度が、45at%未満であると、α相の割合が増加し、デュプレックス組織並びに等軸γ単相組織が形成されない。また、49at%より多くても、α相が存在しないため、デュプレックス組織が形成されない。ちなみに、アルミニウムの濃度が45〜49at%の場合、その残部は、チタン及び後述する第三元素で形成され、チタンについては、特に組成(濃度)の限定はない。なお、本発明に限らず、一般的にチタン−アルミニウム合金には、第三元素(添加元素)を含んでいる場合が多いが、第三元素の組成比に関しても、本発明に係るチタン‐アルミニウム合金の積層構造に影響を与えなければ、特に制限はない。ちなみに、ここで言う第三元素(添加元素)とは、クロム、ニオブ、バナジウム、モリブデン、タングステン、マンガン等といった第5〜7族元素や、炭素やケイ素等の第15族元素、そして、チタン及びアルミニウムのそれぞれと同族の元素を言う。
また、本発明のチタン−アルミニウム合金1の作製においては、チタン及びアルミニウムを合金化した粉末を積層させる積層造形法が採用されるが、積層造形法の種類については特に限定はなく、例えば熱処理やHIP(熱間等方圧加圧法)処理などを伴う積層造形法や特開2015−182419号公報に開示されている三次元積層造形方法などの任意の従来技術を適宜採用すればよい。そして、どの積層造形法を採用するかによるが、例えば熱処理やHIP(熱間等方圧加圧法)処理などを伴う場合は、熱処理温度に注意すればよい。即ち、デュプレックス組織がラメラ組織に変形するのを極力防ぐためである。ちなみに、ここで言う熱処理温度は、1050℃〜1150℃で、なおかつ、その時の熱処理時間は、1〜3時間が望ましい。理由としては、この温度範囲及び時間範囲以外であると、上限下限かかわらず、先述のようにデュプレックス組織がラメラ組織に変形する可能性と、伸びが無い、即ち2%未満の延性になってしまうためである。なお、硬質層2及び軟質層3の積層については、交互に積層されるということを順守すれば、図1に示すような、硬質層2及び軟質層3が積層方向に対して垂直な層状構造にこだわることはない。
次に、チタン−アルミニウム合金についての造形角度について、図2乃至図4を基に説明する。
図2乃至4は、本発明に係るチタン−アルミニウム合金から、長方形片4a、4b及び4cを切り出す際に係る造形角度毎に切り出した場合の様子を示す模式図である。なお、本発明で言う「造形角度」とは、チタン及びアルミニウム又はチタン‐アルミニウム合金の粉末の積層方向(図2乃至4においても、図1と同様に矢印Aで表す。以下、単に「積層方向」とする。)と、長方形片の長手(長軸)方向(図2乃至4においては、統一して同様に破線矢印Eで表す。以下、単に「長手(長軸)方向」とする。)とで成す角度θ(図2乃至4並びに後述する図5乃至8参照)を言う。また、長方形片4a、4b及び4cを切り出す前のチタン−アルミニウム合金については、図1で示した、硬質層2及び軟質層3が積層方向に対して垂直な層状構造のものを使用するものとする。
先ず、図2は、積層方向と、長方形片の長手(長軸)方向とを一致(若しくは平行)させた場合、即ち造形角度θ=0°としたときの切り出しの様子を示す模式図である。もっとも、図2における態様は、従来の積層造形技術で十分に作製される。つまり、硬質層2及び軟質層3の積層が、積層方向に対して垂直に積層されることになる。この場合、図2(A)に示すように、積層されたチタン−アルミニウム合金1の中において、破線で囲まれた長方形片4aを、切り出す形になる。ちなみに、従来の積層構造法若しくは三次元積層(造形)方法で、例えばチタン−アルミニウム合金で成るタービン翼やエンジンバルブといった構造体を製造する場合は、図2で示すようにチタン−アルミニウム合金粉末の積層方向と、本発明で言う長方形片(この場合は製造しようとする構造体に置き換えるものする。)の長手方向(この場合は製造しようとする構造体の造形方向と置き換えるものとする。)とを一致(若しくは平行に)させて製造することが一般的である。なお、長方形片4aの切り出しについては、従来技術で可能である。また、長方形片4aの大きさについては適宜変更可能である。そして、図2(B)に示すように、長方形片4aは、切り出す前と同じ、硬質層2及び軟質層3が積層方向に対して垂直な層状構造と成っている。
次に、図3は、積層方向と、長方形片4bの長手(長軸)方向との間に角度(0°〜90°の範囲で、0°と90°を除く。)を設けた場合、即ち造形角度θを設けた場合の切り出しの様子を示す模式図である。この場合、図3(A)に示すように、積層されたチタン−アルミニウム合金1の中において、破線で囲まれた長方形片4bを、切り出す形になる。なお、長方形片4bの切り出しについては、図2で示した態様と同様に従来技術で可能である。また、長方形片4bの大きさについてもまた、図2で示した態様と同様に適宜変更可能である。そして、図3(B)に示すように、長方形片4bは、図2(B)に示した態様と共通して、硬質層2及び軟質層3が交互に積層された構造になるが、硬質層2及び軟質層3はそれぞれ、傾き角度θ及びθを伴って傾いて積層されている。ちなみに、傾き角度θ及びθの双方とも、90°−θと略同値である。なお、造形角度θの詳細については後述する。
次に、図4は、積層方向と、長方形片4bの長手(長軸)方向とが垂直になる場合、即ち造形角度θが90°である場合の切り出しの様子を示す模式図である。この場合、図4(A)に示すように、積層されたチタン−アルミニウム合金1の中において、破線で囲まれた長方形片4cを、切り出す形になる。なお、長方形片4cの切り出しについては、図2で示した態様と同様に従来技術で可能である。また、長方形片4cの大きさについてもまた、図2で示した態様と同様に適宜変更可能である。そして、長方形片4cは、図2(B)や図3(B)に示した態様と違い、図3(B)に示すように、硬質層2及び軟質層3が交互に入った構造、又は図示しないが、切り出す箇所によっては、硬質層2若しくは軟質層3のどちらか一方のみになる。なお、造形角度θの詳細については後述する。
次に、造形角度について説明する。先ず、図2に示した態様、即ち造形角度θの値が0°の場合は、例えば引張強度などの各強度については、図3に示した態様とさほど変わらないものの、室温(凡そ50℃以下)における延性(引張延性)が、従来技術で製造されたチタン−アルミニウム合金と同じくらいの引張延性、即ち1%若しくはそれ以下であって、本発明の目的にはそぐわない。
次に、図4で示した態様、即ち造形角度θの値が90°である場合は、例えば引張強度などの各強度については、強くなったり弱くなったりする。理由としては、硬質層2と、軟質層3とのバランスが関係する。また、室温(凡そ50℃以下)における延性(引張延性)については、図2に示す態様よりも幾分良い(例えば2%くらい)が、本発明に係るチタン−アルミニウム合金の延性よりも低いこと、また上述のように強度にばらつきがあることから、本発明の目的にはそぐわない。
このようなことを鑑みると、図3で示した態様、即ち造形角度を0°〜90°の範囲内(但し0°及び90°は除く。)で、角度を持たせた方が良いと思われる。なお、この場合の効果については、実施例の項で詳細を後述する。そして、造形角度は、40°〜60°が望ましく、より望ましくは40°〜50°(45°±5°)が望ましい。造形角度が40°未満であると、引張延性に係る伸びがでない。また、60°よりも大きい角度であると、強度にばらつきが生じ、且つ引張延性に係る伸びもさほど伸びない。ちなみに、図3に示した態様にて、硬質層2及び軟質層3それぞれの傾き角度θ及びθの双方とも、90°−θと略同値であると先述したが、その範囲についてもまた造形角度と同じ、0°〜90°の範囲である。しかしながら、室温(凡そ50℃以下)延性が図2や図4に示すような態様に比べて、率が高い。ちなみに、その延性については、2〜3.5%くらいである。なお、延性については、それと共にそのほかの強度(例えば降伏応力等)との両立が望ましい。
なお、長方形片を試験片の例として説明したが、これに限定されるものではなく、チタン‐アルミニウム合金の試験片の形状については限定されずに、例えばタービン翼といった構造体を使用しても構わない。また、本明細書にて長方形片を「切り出す」と記しているが、試験片の形状や採用する積層造形の方法によって「切り出す」という表現がふさわしくない場合は、例えば「(チタン‐アルミニウム合金粉末を)積層させる(構造物の長手方向と積層方向とのなす角がθとなるよう積層造形する)」等といった表現に適宜表現を改めてよいものとする。
以上、本発明の実施形態を述べたが、この実施形態に限定されるものではなく、本願の明細書、特許請求の範囲及び/又は図面に記載の事項の範囲内で、様々な態様を採ることは言うまでもない。
以上に述べた実施形態に記載の事項を裏付けるべく、本発明に係るチタン‐アルミニウムの試験片を作製し、当該試験片について効果試験を行った。なお、当該試験片の作製や効果試験はあくまで一例であり、また、次に述べるものに限定されるものではなく、本願の明細書、特許請求の範囲及び/又は図面に記載の事項の範囲内で、様々な態様を採ることは言うまでもない。
また、必要に応じて、図1乃至4の図面を用いて説明することもある。
(1)比較例1及び2並びに実施例1に係る試験片の作製
先ず、後述する(2)及び(3)に用いる試験片として、チタン‐アルミニウム合金の丸棒(以下「丸棒試験片」若しくは単に「試験片」とする。)を、電子ビーム三次元積層造形方法(3D−EBM法)により、造形角度が0°(以下、「比較例1」とする。)、45°(以下、「実施例1」とする。)、及び90°(以下、「比較例2」とする。)として計3片を作製した。ここで言う、造形角度とは、図5に示すように、チタン‐アルミニウム合金の積層方向(図2乃至図4で言うところの矢印Aに相当する。また、図5では「Building direction」に相当する。)と、各例に係る丸棒試験片の長軸方向(図2乃至図4で言うところの破線矢印Eに相当する。また、図5では「Cylinder direction」に相当する。)とで成す角度を言う。ちなみに、実施例1、比較例1及び2に係る各試験片の組成比はそれぞれ、Ti−48Al−2Cr−2Nb(at%(原子組成百分率))であった。なお、この組成比については、あくまで一例であり、上記実施形態や特許請求の範囲に記載の範囲内であれば、適宜変更可能であるということは言うまでもない。また、各試験片の切り出しについては、特に本発明のチタン‐アルミニウム合金の根幹、即ち構成や表面の状況に影響を与えるものではなく、いかなる既知の方法で足りるため、説明を割愛する。
また、3D−EBM法で試験片を作製したが、その限りではなく、造形角度を適宜設定すれば他の積層造形法でも試験片の作製は適宜可能である。また、試験片の形状を本実施例では丸棒としたが、その形にとらわれるものではなく、場合によってはタービン翼等の構造体を用いても良い。
(2)各試験片の表面観察
次に、実施例1、比較例1及び2に係る各試験片について、光学顕微鏡にて表面観察を行った。各試験片に係る表面の光学顕微鏡画像を図6に示す。
各試験片とも、硬質層及び軟質層の2層構造になっていた。ここで、デュプレックス層(DP層。硬質層に相当。)の厚さについては、実施例1では約55μm、比較例1では約57μm、比較例2では約54μmであった。また、軟質層(等軸γ組織)の厚さは、実施例1では約33μm、比較例1では約36μm、比較例2では約33μmであった。また、硬質層及び軟質層の比、即ち(硬質層/軟質層)の値については、実施例1では1.7、比較例1では1.6、比較例2では1.6となった。
(3)室温における引張延性及び強度(降伏応力)の造形角度依存性
次に、実施例1並びに比較例1及び2に係る各試験片について、室温(20〜25℃)での引張延性を試験した。なお、試験条件については、実施例1並びに比較例1及び2に係る各試験片から、ゲージ部が幅1.5×厚さ1×長さ5mmの引張試験片を切り出し、大気中(約1気圧=1.013×10Pa)、ひずみ速度を1.7×10−4−1として測定した。
各試験片に係る造形角度と、延性(%)との関係性について記したグラフを図7として示す。比較例1における伸び(延性)については1%未満であった。比較例2における伸びについては約2%であった。それらに対し、実施例1における伸びについては、約3%となった。このことから、上記実施形態の項でも記したように、造形角度については、0°〜90°の範囲内(但し0°と90°を除く。)で、且つその造形角度についてはある程度の角度(40°〜60°が望ましく、より望ましくは40°〜50°(45°±5°)が望ましい)を設けた方が良いことが実証された。
この引張延性試験の後、更に実施例1に係る試験片の表面を光学顕微鏡にて撮影した。その図を図8(A)として記す。軟質層(等軸γ組織)にて何かしらの変形が起こっていることが分かった。そのことについては、試験片の長軸方向に負荷をかけた場合、軟質層に矢印で示すようなせん断変形(図8(B)参照)が集中することにより、延性に伸びが出るものと思われる。
また、実施例1並びに比較例1及び2に係る各試験片について、強度(降伏応力)の測定を行った。各試験片に係る造形角度と、降伏応力(MPa)との関係性について記したグラフを図9として示す。このグラフにおいては、実施例1の降伏応力が比較例1及び2に比べるとやや下がっているが、実質上の変化が見られたというものではない。言い換えると、造形角度の如何に依らず、降伏応力は略一定であることが分かった。しかしながら、本発明に係るチタン‐アルミニウム合金においては、実施例1(造形角度θ=45°)のように造形角度を設けた方が、延性と降伏応力の両方が成立することを示唆する結果となった。
(4)実施例2及び3に係る試験片の作製
次に、後述する(5)及び(6)に用いる試験片としてチタン‐アルミニウム合金の丸棒(以下「丸棒試験片」若しくは単に「試験片」とする。)を、上記(1)同様に電子ビーム三次元積層造形方法(3D−EBM法)により、2種類作製した。ここで、2種類の試験片のうち、本実施例では、造形角度θ=40°のものを「実施例2」とし、造形角度θ=60°のものを「実施例3」とする。ちなみに、造形角度については、上記(1)にて既に説明しているのでその説明については割愛する。また、実施例2及び3に係る試験片共に、組成比は、Ti−48Al−2Cr−2Nb(at%(原子組成百分率))であった。なお、この組成比については、あくまで一例であり、上記実施形態や特許請求の範囲に記載の範囲内であれば、適宜変更可能であるということは言うまでもない。また、各試験片の切り出しについては、特に本発明のチタン‐アルミニウム合金の根幹、即ち構成や表面の状況に影響を与えるものではなく、いかなる既知の方法で足りるため、上記(1)同様に説明を割愛する。
また、上記(1)同様、3D−EBM法で試験片を作製したが、その限りではなく、造形角度を適宜設定すれば他の積層造形法でも試験片の作製は適宜可能である。また、試験片の形状を本実施例では丸棒としたが、その形にとらわれるものではなく、場合によってはタービン翼等の構造体を用いても良い。
(5)各試験片の表面観察
次に、実施例1、2及び3に係る各試験片について、走査電子顕微鏡にて表面観察を行った。各試験片に係る表面の走査電子顕微鏡画像を図10に示す。
各試験片とも、硬質層及び軟質層の2層構造になっていた。ここで、デュプレックス層(DP層。硬質層に相当。)の厚さについては、実施例1では約55μm、実施例2では約59μm、実施例3では約60μmであった。また、軟質層(等軸γ組織)の厚さは、実施例1では約33μm、実施例2では約33μm、実施例3では約32μmであった。ただし、実施例1のデュプレックス層及び軟質層の厚さについては、上記(2)と実質的に同値であった。また、硬質層及び軟質層の比、即ち(硬質層/軟質層)の値については、実施例1では1.7、実施例2では1.8、実施例3では1.9となった。
(6)室温における引張延性の造形角度依存性
次に、実施例1、2及び3に係る各試験片について、室温(20〜25℃)での引張延性を試験した。なお、試験条件については、実施例1、2及び3に係る各試験片から、ゲージ部が幅1.5×厚さ1×長さ5mmの引張試験片を切り出し、ひずみ速度を1.7×10−4−1として測定した。
各試験片に係る造形角度と、延性(%)との関係性について記したグラフを図11として示す。実施例2及び3ともに伸び(延性)については約2.5%前後であった。それらに対し、実施例1における伸びについては、約3%だった。このことから、上記実施形態や上記(3)の項でも記したように、造形角度については、0°〜90°の範囲内(但し0°と90°を除く。)で、且つその造形角度についてはある程度の角度(40°〜60°が望ましく、より望ましくは40°〜50°(45°±5°)が望ましい)を設けた方が良いことが実証された。なお、図11中の比較例1及び比較例2は、上記(2)及び(3)と同様に、造形角度θ=0°の場合が比較例1であり、造形角度θ=90°の場合が比較例2である。
(7)実施例4及び5に係る試験片の作製
次に、後述する(8)及(9)に用いる試験片としてチタン‐アルミニウム合金の丸棒(以下「丸棒試験片」若しくは単に「試験片」とする。)を、上記(1)及(4)同様に電子ビーム三次元積層造形方法(3D−EBM法)により、2種類作製した。ここで、2種類の試験片においては共に造形角度θ=45°として、3D−EBM法に係る3Dプリンタの電子ビームの走査速度を速くしたものを「実施例4」とする。ここで、実施例4に関して「3D−EBM法に係る3Dプリンタの電子ビームの走査速度を速くした」と記しているが、この場合は、比較例1及び2並びに実施例1、2、3及び後述する実施例5に係る試験片作製時の3Dプリンタの走査速度よりも1.25倍の速さである(なお、比較例1及び2並びに実施例1、2、3及び後述する実施例5に係る試験片作製時の3Dプリンタの走査速度は同じである)。また、熱処理(1100℃、2時間)を加えたものを「実施例5」とする。ちなみに、造形角度については、上記(1)にて既に説明しているのでその説明については割愛する。また、実施例4及び5に係る試験片共に、組成比は、Ti−48Al−2Cr−2Nb(at%(原子組成百分率))であった。なお、この組成比については、あくまで一例であり、上記実施形態や特許請求の範囲に記載の範囲内であれば、適宜変更可能であるということは言うまでもない。また、各試験片の切り出しについては、特に本発明のチタン‐アルミニウム合金の根幹、即ち構成や表面の状況に影響を与えるものではなく、いかなる既知の方法で足りるため、上記(1)及び(4)同様に説明を割愛する。
また、上記(1)及び(4)同様、3D−EBM法で試験片を作製したが、その限りではなく、造形角度を適宜設定すれば他の積層造形法でも試験片の作製は適宜可能である。また、試験片の形状を本実施例では丸棒としたが、その形にとらわれるものではなく、場合によってはタービン翼等の構造体を用いても良い。
(8)各試験片の表面観察
次に、実施例1、4及び5に係る各試験片について、走査電子顕微鏡にて表面観察を行った。各試験片に係る表面の走査電子顕微鏡画像を図12に示す。
各試験片とも、硬質層及び軟質層の2層構造になっていた。ここで、デュプレックス層(DP層。硬質層に相当。)の厚さについては、実施例1では約55μm、実施例4では約66μm、実施例5では約64μmであった。また、軟質層(等軸γ組織)の厚さは、実施例1では約33μm、実施例4では約29μm、実施例5では約55μmであった。ただし、実施例1のデュプレックス層及び軟質層の厚さについては、上記(2)、(5)と実質的に同値であった。また、硬質層及び軟質層の比、即ち(硬質層/軟質層)の値については、実施例1では1.7、実施例4では2.3、実施例5では1.2となった。
(9)室温における引張延性のプロセス条件依存性
次に、実施例1、4及び5に係る各試験片について、室温(20〜25℃)での引張延性を試験した。なお、試験条件については、実施例1、4及び5に係る各試験片から、ゲージ部が幅1.5×厚さ1×長さ5mmの引張試験片を切り出し、ひずみ速度を1.7×10−4−1として測定した。
各試験片の延性(%)について記したグラフを図13として示す。実施例4は約2.2%であった。また、実施例5では、約2%であった。それらに対し、実施例1における伸び(延性)については、約3%だった。このことから、本発明に係るチタン‐アルミニウム合金作製の際、製造に用いる3Dプリンタ等のパラメータ(例えば、3Dプリンタならばその走査速度)を変更したり、熱処理を施したりすることにより、デュプレックス層及び軟質層の厚さや伸びの制御が可能であることを示唆する結果となった。
本発明のチタン−アルミニウム合金を使用することにより、航空機の低圧タービン翼、自動車等のターボチャージャのロータ、レース用車両(例えばF1マシン)のエンジンバルブの製造が期待される。
1 チタン‐アルミニウム合金
2 硬質層
3 軟質層
4a、4b、4c (チタン‐アルミニウム合金)の長方形片

Claims (7)

  1. チタン及びアルミニウム又はチタン‐アルミニウム合金の粉末を積層させて成るチタン‐アルミニウム合金において、
    前記チタン‐アルミニウム合金は、硬質層及び軟質層から成り、
    前記硬質層及び前記軟質層が、交互に積層された構造を有することを特徴とするチタン‐アルミニウム合金。
  2. 造形角度が、40°〜60°である請求項1に記載のチタン‐アルミニウム合金。
  3. 前記硬質層が、デュプレックス組織で成る請求項1又は2に記載のチタン‐アルミニウム合金。
  4. 前記軟質層が、γ単相の等軸粒から成る請求項1乃至3のいずれか1項に記載のチタン‐アルミニウム合金。
  5. 前記硬質層は、前記軟質層の1.1〜3倍の大きさである請求項1乃至4のいずれか1項に記載のチタン‐アルミニウム合金。
  6. 前記チタン‐アルミニウム合金の室温延性が2〜3.5%である請求項1乃至5のいずれか1項に記載のチタン‐アルミニウム合金。
  7. アルミニウムの組成濃度が、45〜49at%である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のチタン‐アルミニウム合金。
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