以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る硬化体は、硬化物と、上記硬化物中に複数の粒子とを含む。本発明に係る硬化体では、上記粒子は、熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導性粒子である。
本発明に係る硬化体の走査型電子顕微鏡写真を撮影する。
本発明に係る硬化体において、上記走査型電子顕微鏡写真に基づいて、下記式:
g(r)={1/〈ρ〉}×{dn/da}
[式中、g(r)は動径分布関数を示し、〈ρ〉は平面内の平均粒子密度を示し、dnは任意の第一粒子からの距離rの円と距離r+drの円との間の領域中に存在する第一粒子の数を示し、daは前記領域の面積(2πr・dr)を示す。]
を計算する。
本発明に係る硬化体では、上記の計算において、g(r)が信頼区間に入るときのrが25μm以下である。好ましくは、g(r)が極大値から減少して信頼区間に入るときのrが25μm以下である。本発明では、g(r)が信頼区間に入るときのrが上記上限以下であるので、熱伝導性粒子が過度に分散しすぎておらず、適度に凝集及び分散している。
本発明に係る硬化体では、上述した構成が備えられているので、硬化体の放熱性を高めることができる。このため、半導体素子の表面上に硬化体を配置することによって、半導体素子の表面から硬化体を経由して、熱を充分に放散させることができる。従って、半導体装置の熱劣化を効果的に抑制することができる。
特開2010−058091号公報に記載のように、粒子が均一に分散されすぎていると、放熱性が低くなる傾向がある。本発明に係る硬化体では、熱伝導性粒子が適度に凝集及び分散しているので、放熱性を高めることができる。
上記式に基づく計算自体は、特開2010−058091号公報に記載されており、公知である。但し、上記式に基づく計算により求められるrの値は、本願と、特開2010−058091号公報とで異なる。
上記走査型電子顕微鏡写真の撮影及び該写真に基づく測定は、具体的には、以下のようにして行うことができる。
硬化体をクロスセクションポリッシャーで切断し、断面を走査型電子顕微鏡で観察し、走査電子顕微鏡写真を得る。画像解析ソフト「Win ROOF2013」を用いて観察した断面の写真を2値化し、粒子部位を着色する。全ての粒子において算出した重心を点として扱う。また、重心を通る最大及び最小の切断長の平均値を粒子径とする。ある点から任意の点に対して距離r離れた円の中に点が入る期待値を関数で示す。完全にランダムに配置した場合をg(r)=1として、g(r)>1の場合を「凝集」、g(r)<1の場合を「分散」として、内部構造が「凝集」でなくなる距離rを規定する。
図3は、本発明の一実施形態に係る硬化体の電子顕微鏡写真の一例である。本発明に係る硬化体では、例えば、図3に例示されるような走査型電子顕微鏡写真が得られる。
放熱性を効果的に高める観点からは、上記の計算において、g(r)が信頼区間に入るときのrが20μm以下であることがより好ましい。
放熱性を効果的に高める観点からは、上記の計算において、g(r)の極大値におけるrが15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
信頼区間に入るときのrの値を調整する方法としては、具体的には材料の攪拌速度、攪拌時間、材料(例えば半導体素子保護用材料)の硬化条件、熱伝導性粒子の表面処理、熱伝導性粒子の粒子径、分散剤の添加、及び結着剤の添加等により制御する方法を適宜用いることができる。
放熱性を効果的に高める観点からは、上記熱伝導性粒子の粒度分布において、少なくとも2つのピークが存在することが好ましい。ピーク強度が1番目に大きいピークにおける粒子径と、2番目に大きいピークにおける粒子径との差は好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。
放熱性及び絶縁性を効果的に高める観点からは、上記熱伝導性粒子の粒子径のCV値は10%を超えることが好ましく、11%を超えることが好ましい。但し、上記熱伝導性粒子の粒子径のCV値は10%以下であってもよく、5%以上であってもよい。
上記硬化体は、(A)熱硬化性化合物と、(B)硬化剤又は硬化触媒((B1)硬化剤)又は(B2)硬化触媒)と、(C)熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導性粒子とを含む材料(以下、材料(X)と記載することがある)の硬化体であることが好ましい。この材料(X)は、半導体素子保護用材料として用いることができる。
硬化性をより一層高める観点からは、材料(X)は、(B1)硬化剤と、(D)硬化促進剤とを含むことが好ましい。
また、材料(X)の半導体素子の表面に対する濡れ性を高め、硬化体の柔軟性をより一層高め、更に硬化体の耐湿性をより一層高める観点からは、材料(X)は、(E)カップリング剤を含むことが好ましい。
以下、材料(X)に用いることができる各成分の詳細を説明する。
((A)熱硬化性化合物)
(A)熱硬化性化合物としては、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。(A)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
本発明の効果を効果的に発揮し、耐熱性をより一層高くし、かつクラックをより一層生じ難くする観点からは、(A)熱硬化性化合物は、(A1)エポキシ化合物又は(A2)シリコーン化合物を含むことが好ましい。(A)熱硬化性化合物は、(A1)エポキシ化合物を含んでいてもよく、(A2)シリコーン化合物を含んでいてもよい。
上記材料(X)100重量%中、(A)熱硬化性化合物の含有量は好ましくは5重量%以上、より好ましくは8重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。(A)熱硬化性化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、材料(X)の塗布性、硬化体の柔軟性、耐湿性、硬化体の半導体素子に対する接着性がより一層良好になり、保護フィルムに対する貼り付きをより一層抑えることができる。
材料(X)100重量%中、(A1)エポキシ化合物と(A2)シリコーン化合物との合計の含有量は、好ましくは5重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。(A1)エポキシ化合物と(A2)シリコーン化合物との合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、材料(X)の塗布性、硬化体の柔軟性、耐湿性、硬化体の半導体素子に対する接着性がより一層良好になり、保護フィルムに対する貼り付きをより一層抑えることができる。
(A1)エポキシ化合物:
材料(X)100重量%中、(A1)エポキシ化合物の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは8重量%以上、好ましくは15重量%以下、より好ましくは12重量%以下である。(A1)エポキシ化合物の含有量の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、材料(X)の塗布性、硬化体の柔軟性、耐湿性、硬化体の半導体素子に対する接着性がより一層良好になり、保護フィルムに対する貼り付きをより一層抑えることができる。
(A1)エポキシ化合物としては、(A11)可撓性エポキシ化合物及び(A12)可撓性エポキシ化合物とは異なるエポキシ化合物が挙げられる。本発明の効果を効果的に発揮する観点からは、(A)熱硬化性化合物は、(A11)可撓性エポキシ化合物と、(A12)可撓性エポキシ化合物とは異なるエポキシ化合物とを含むことが好ましい。
(A12)可撓性エポキシ化合物とは異なるエポキシ化合物は、可撓性を有さない。(A11)可撓性エポキシ化合物とともに(A12)エポキシ化合物を用いることによって、材料(X)の硬化体の耐湿性が高くなり、保護フィルムに対する貼り付き性を低下させることができる。(A12)エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
(A)熱硬化性化合物は、(A11)可撓性エポキシ化合物を含むことが好ましい。(A11)可撓性エポキシ化合物を用いることによって、硬化体の柔軟性を高めることができる。(A11)可撓性エポキシ化合物を用いることによって、半導体素子の変形応力などによって、半導体素子の損傷が生じ難くなり、更に半導体素子の表面から硬化体を剥離し難くすることができる。(A11)可撓性エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
(A11)可撓性エポキシ化合物としては、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテル、サルファイド変性エポキシ樹脂、及びポリアルキレンオキサイド変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。硬化体の柔軟性をより一層高める観点からは、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
硬化体の柔軟性をより一層高めて接着力を向上させる観点からは、上記ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルは、アルキレングリコール基が9以上繰り返された構造単位を有することが好ましい。アルキレン基の繰り返し数の上限は特に限定されない。アルキレン基の繰り返し数は、30以下であってもよい。上記アルキレン基の炭素数は、好ましくは2以上、好ましくは5以下である。
上記ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルとしては、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル及びポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
材料(X)100重量%中、(A11)可撓性エポキシ化合物の含有量は好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下である。(A11)可撓性エポキシ化合物の含有量が上記下限以上であると、硬化体の柔軟性がより一層高くなる。(A11)可撓性エポキシ化合物の含有量が上記上限以下であると、材料(X)の塗布性がより一層高くなる。
材料(X)100重量%中、(A11)可撓性エポキシ化合物と(A12)エポキシ化合物との合計の含有量は好ましくは5重量%以上、より好ましくは8重量%以上、好ましくは15重量%以下、より好ましくは12重量%以下である。(A11)可撓性エポキシ化合物と(A12)エポキシ化合物との合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、材料(X)の塗布性、硬化体の柔軟性、耐湿性、硬化体の半導体素子に対する接着性がより一層良好になり、保護フィルムに対する貼り付きをより一層抑えることができる。
(A12)エポキシ化合物としては、ビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ化合物、ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物、アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物、ビフェニル骨格を有するエポキシ化合物、バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシ化合物、キサンテン骨格を有するエポキシ化合物、アントラセン骨格を有するエポキシ化合物、及びピレン骨格を有するエポキシ化合物等が挙げられる。これらの水素添加物又は変性物を用いてもよい。(A12)エポキシ化合物は、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテルではないことが好ましい。
本発明の効果がより一層優れることから、(A12)エポキシ化合物は、ビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物(ビスフェノール型エポキシ化合物)であることが好ましい。
上記ビスフェノール骨格を有するエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型又はビスフェノールS型のビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ化合物としては、ジシクロペンタジエンジオキシド、及びジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシモノマー等が挙げられる。
上記ナフタレン骨格を有するエポキシ化合物としては、1−グリシジルナフタレン、2−グリシジルナフタレン、1,2−ジグリシジルナフタレン、1,5−ジグリシジルナフタレン、1,6−ジグリシジルナフタレン、1,7−ジグリシジルナフタレン、2,7−ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、及び1,2,5,6−テトラグリシジルナフタレン等が挙げられる。
上記アダマンタン骨格を有するエポキシ化合物としては、1,3−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン、及び2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン等が挙げられる。
上記フルオレン骨格を有するエポキシ化合物としては、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、及び9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン等が挙げられる。
上記ビフェニル骨格を有するエポキシ化合物としては、4,4’−ジグリシジルビフェニル、及び4,4’−ジグリシジル−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル等が挙げられる。
上記バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシ化合物としては、1,1’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、及び1,2’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン等が挙げられる。
上記キサンテン骨格を有するエポキシ化合物としては、1,3,4,5,6,8−ヘキサメチル−2,7−ビス−オキシラニルメトキシ−9−フェニル−9H−キサンテン等が挙げられる。
(A11)可撓性エポキシ化合物100重量部に対して、(A12)エポキシ化合物の含有量は好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上、好ましくは100重量部以下、より好ましくは90重量部以下である。(A12)エポキシ化合物の含有量が上記下限以上であると、材料(X)の塗布性がより一層高くなり、硬化体の半導体素子に対する接着性がより一層高くなる。(A12)エポキシ化合物の含有量が上記上限以下であると、硬化体の柔軟性がより一層高くなる。
(A2)シリコーン化合物は、例えば、珪素原子に結合したアルケニル基を有するシリコーン化合物と、珪素原子に結合した水素原子を有するシリコーン化合物とを含む。珪素原子に結合したアルケニル基を有するシリコーン化合物は、珪素原子に結合した水素原子を有さなくてもよい。
上記珪素原子に結合したアルケニル基を有するシリコーン化合物は、下記式(1A)で表されるシリコーン化合物、下記式(2A)で表されるシリコーン化合物、又は下記式(3A)で表されるシリコーン化合物であることが好ましい。
(R1R2R3SiO1/2)a(R4R5SiO2/2)b …(1A)
上記式(1A)中、a及びbは、0.01≦a≦0.2、0.8≦b≦0.99を満たし、R1〜R5の1mol%以上、20mol%以下はアルケニル基を表し、R1〜R5の80mol%以上、99mol%以下はメチル基及びフェニル基を表し、アルケニル基、メチル基及びフェニル基以外のR1〜R5は、炭素数2〜6のアルキル基を表す。
(R1R2R3SiO1/2)a(SiO4/2)b …(2A)
上記式(2A)中、a及びbは、0.7≦a≦0.9、0.1≦b≦0.3を満たし、R1〜R3の1mol%以上、33mol%以下はアルケニル基を表し、R1〜R3の80mol%以上、99mol%以下はメチル基及びフェニル基を表し、アルケニル基、メチル基及びフェニル基以外のR1〜R3は、炭素数2〜6のアルキル基を表す。
(R1R2R3SiO1/2)a(R4R5SiO2/2)b(R6SiO3/2)c …(3A)
上記式(3A)中、a、b及びcは、0.15≦a≦0.3、0≦b≦0.2、0.6≦c≦0.85を満たし、R1〜R6の5mol%以上、20mol%以下はアルケニル基を表し、R1〜R6の80mol%以上、95mol%以下はメチル基及びフェニル基を表し、アルケニル基、メチル基及びフェニル基以外のR1〜R6は、炭素数2〜6のアルキル基を表す。
上記珪素原子に結合した水素原子を有するシリコーン化合物は、下記式(1B)で表されるシリコーン化合物であることが好ましい。
(R1R2R3SiO1/2)a(R4R5SiO2/2)b …(1B)
上記式(1B)中、a及びbは、0.1≦a≦0.67、0.33≦b≦0.9を満たし、R1〜R5の1mol%以上、25mol以下%は水素原子を表し、R1〜R5の75mol%以上、99mol%以下はメチル基及びフェニル基を表し、水素原子、メチル基及びフェニル基以外のR1〜R5は、炭素数2〜6のアルキル基を表す。
(A2)シリコーン化合物は、上記式(1A)で表されるシリコーン化合物を含むことが好ましい。(A2)シリコーン化合物は、上記式(1A)で表されるシリコーン化合物と、上記式(2A)で表されるシリコーン化合物とを含むか、又は、上記式(1A)で表されるシリコーン化合物と、上記式(3A)で表されるシリコーン化合物とを含むことが好ましい。
材料(X)100重量%中、(A2)シリコーン化合物の含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは8重量%以上、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。(A2)シリコーン化合物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、材料(X)の塗布性、硬化体の柔軟性、耐湿性、硬化体の半導体素子に対する接着性がより一層良好になり、保護フィルムに対する貼り付きをより一層抑えることができる。
上記珪素原子に結合した水素原子を有するシリコーン化合物100重量部に対して、上記珪素原子に結合したアルケニル基を有するシリコーン化合物の含有量は好ましくは10重量部以上、好ましくは400重量部以下である。この含有量の関係を満足すると、材料(X)の塗布性、硬化体の柔軟性、耐湿性、硬化体の半導体素子に対する接着性がより一層良好になり、保護フィルムに対する貼り付きをより一層抑えることができる。
((B)硬化剤又は硬化触媒)
(B)硬化剤又は硬化触媒として、(B1)硬化剤を用いてもよく、(B2)硬化触媒を用いてもよい。(A1)エポキシ化合物を用いる場合には、(B1)硬化剤が好ましい。(A2)シリコーン化合物を用いる場合には、(B2)硬化触媒が好ましい。
(B1)硬化剤は、23℃で液状であってもよく、固形であってもよい。材料(X)の塗布性をより一層高める観点からは、(B1)硬化剤は、23℃で液状である硬化剤であることが好ましい。また、23℃で液状である硬化剤の使用により、材料(X)の半導体素子の表面に対する濡れ性が高くなる。(B1)硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。(B2)硬化触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
(B1)硬化剤としては、アミン化合物(アミン硬化剤)、イミダゾール化合物(イミダゾール硬化剤)、フェノール化合物(フェノール硬化剤)及び酸無水物(酸無水物硬化剤)等が挙げられる。(B1)硬化剤はイミダゾール化合物でなくてもよい。
硬化体中でのボイドの発生をより一層抑え、硬化体の耐熱性をより一層高める観点からは、(B1)硬化剤は、フェノール化合物であることが好ましい。
材料(X)の塗布性をより一層高め、硬化体中でのボイドの発生をより一層抑え、硬化体の耐熱性をより一層高める観点からは、(B1)硬化剤は、アリル基を有することが好ましく、上記フェノール化合物がアリル基を有することが好ましい。
上記フェノール化合物としては、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、ポリパラビニルフェノール、ビスフェノールA型ノボラック、キシリレン変性ノボラック、デカリン変性ノボラック、ポリ(ジ−o−ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ−m−ヒドロキシフェニル)メタン、及びポリ(ジ−p−ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。
(B1)硬化剤を用いる場合に、(A)熱硬化性化合物100重量部に対して、(B1)硬化剤の含有量は、好ましくは10重量部以上、より好ましくは20重量部以上、更に好ましくは30重量部以上、好ましくは100重量部以下、より好ましくは90重量部以下、更に好ましくは80重量部以下である。(B1)硬化剤の含有量が上記下限以上であると、材料(X)を良好に硬化させることができる。(B1)硬化剤の含有量が上記上限以下であると、硬化体内における硬化に寄与しなかった(B1)硬化剤の残存量が少なくなる。
(B2)硬化触媒としては、ヒドロシリル化反応用触媒及び縮合触媒などの金属触媒等が挙げられる。
上記硬化触媒としては、例えば、錫系触媒、白金系触媒、ロジウム系触媒及びパラジウム系触媒等が挙げられる。透明性を高くすることができるため、白金系触媒が好ましい。
上記ヒドロシリル化反応用触媒は、シリコーン化合物中の珪素原子に結合した水素原子と、シリコーン化合物中のアルケニル基とをヒドロシリル化反応させる触媒である。上記ヒドロシリル化反応用触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記白金系触媒としては、白金粉末、塩化白金酸、白金−アルケニルシロキサン錯体、白金−オレフィン錯体及び白金−カルボニル錯体が挙げられる。特に、白金−アルケニルシロキサン錯体又は白金−オレフィン錯体が好ましい。
上記白金−アルケニルシロキサン錯体におけるアルケニルシロキサンとしては、例えば、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及び1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。上記白金−オレフィン錯体におけるオレフィンとしては、例えば、アリルエーテル及び1,6−ヘプタジエン等が挙げられる。
上記白金−アルケニルシロキサン錯体及び白金−オレフィン錯体の安定性を向上させることができるため、上記白金−アルケニルシロキサン錯体又は白金−オレフィン錯体に、アルケニルシロキサン、オルガノシロキサンオリゴマー、アリルエーテル又はオレフィンを添加することが好ましい。上記アルケニルシロキサンは、好ましくは1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンである。上記オルガノシロキサンオリゴマーは、好ましくはジメチルシロキサンオリゴマーである。上記オレフィンは、好ましくは1,6−ヘプタジエンである。
(B2)硬化触媒を用いる場合に、(A)熱硬化性化合物100重量部に対して、(B2)硬化触媒の含有量は、好ましくは0.001重量部以上、より好ましくは0.01重量部以上、更に好ましくは0.05重量部以上、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下、更に好ましくは0.5重量部以下である。(B2)硬化触媒の含有量が上記下限以上であると、材料(X)を良好に硬化させることができる。(B2)硬化触媒の含有量が上記上限以下であると、硬化体内における硬化に寄与しなかった(B2)硬化触媒の残存量が少なくなる。
((C)熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導性粒子)
(C)熱伝導率が10W/m・K以上である熱伝導性粒子を用いることによって、放熱性に優れ、ボイドが少なく、絶縁性に優れている硬化体を得ることができる。(C)熱伝導性粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化体の放熱性をより一層高める観点からは、(C)熱伝導性粒子の熱伝導率は、好ましくは10W/m・K以上、より好ましくは15W/m・K以上、更に好ましくは20W/m・K以上である。(C)熱伝導性粒子の熱伝導率の上限は特に限定されない。熱伝導率が300W/m・K程度である無機フィラーは広く知られており、また熱伝導率が200W/m・K程度である無機フィラーは容易に入手できる。
硬化体の放熱性を効果的に高める観点からは、(C)熱伝導性粒子は、アルミナ、窒化アルミニウム又は炭化ケイ素であることが好ましい。これらの好ましい熱伝導性粒子を用いる場合に、これらの熱伝導性粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。(C)熱伝導性粒子として、上記以外の熱伝導性粒子を適宜用いてもよい。
(C)熱伝導性粒子は、カップリング剤による表面処理物であることが好ましい。表面処理に用いるカップリング剤としては、エポキシ基、芳香族基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、又はイソシアヌレート基を有するカップリング剤等が挙げられる。塗布性、ボイドの抑制及び絶縁性を効果的に高める観点からは、表面処理に用いるカップリング剤は、エポキシ基、芳香族基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、又はイソシアヌレート基を有するカップリング剤であることが好ましく、エポキシ基、又は芳香族基を有するシランカップリング剤であることが好ましい。表面処理に用いるカップリング剤としては、具体的には、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、トリエトキシフェニルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ(p−トリル)シラン、トリメトキシ(2−フェニルエチル)シラン、トリメトキシ(4−ビニルフェニル)シラン、及び1−(トリメトキシシリル)ナフタレン等が挙げられる。
表面処理の方法としては、ヘンシェルミキサー等で熱伝導性粒子にカップリング剤の加水分解溶液を噴霧する乾式法、熱伝導性粒子を加水分解液中で攪拌後に乾燥する湿式法、及び液状の樹脂中で熱伝導性粒子と加水分解溶液とを一緒に加熱攪拌するインテグラルブレンド法等が挙げられる。
材料(X)の塗布性を効果的に高く維持しつつ、かつ硬化体の柔軟性を効果的に高く維持しつつ、硬化体の放熱性を効果的に高める観点からは、(C)熱伝導性粒子は、熱伝導率が10W/m・K以上であり、かつ球状である熱伝導性粒子であることが好ましい。球状とは、アスペクト比(長径/短径)が1以上、2以下であることをいう。
(C)熱伝導性粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上、好ましくは150μm以下である。(C)熱伝導性粒子の平均粒子径が上記下限以上であると、(C)熱伝導性粒子を高密度で容易に充填できる。(C)熱伝導性粒子の平均粒子径が上記上限以下であると、材料(X)の塗布性がより一層高くなる。
上記「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒子径である。
材料(X)100重量%中、(C)熱伝導性粒子の含有量は好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは82重量%以上、好ましくは92重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。(C)熱伝導性粒子の含有量が上記下限以上であると、硬化体の放熱性がより一層高くなる。(C)熱伝導性粒子の含有量が上記上限以下であると、材料(X)の塗布性がより一層高くなる。本発明では、(C)熱伝導率が10W/m・K以上であり、かつカップリング剤で表面処理された熱伝導性粒子を用いているため、(C)熱硬化性粒子の含有量を多くしても、高い塗布性を維持することができ、放熱性を効果的に高めることができる。
((D)硬化促進剤)
(D)硬化促進剤の使用によって、硬化速度を速くし、材料(X)を効率的に硬化させることができる。(D)硬化促進剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
(D)硬化促進剤としては、イミダゾール化合物、リン化合物、アミン化合物、及び有機金属化合物等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより一層優れることから、イミダゾール化合物が好ましい。
上記イミダゾール化合物としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、等が挙げられる。また、公知のイミダゾール系潜在性硬化剤を用いることができる。具体例としては、PN23、PN40、PN−H(商品名、いずれも味の素ファインテクノ社製)が挙げられる。また、マイクロカプセル化イミダゾールとも呼ばれる、アミン化合物のエポキシアダクトの水酸基に付加反応させた硬化促進剤が挙げられ、例えばノバキュアHX−3088、ノバキュアHX−3941、HX−3742、HX−3722(商品名、いずれも旭化成イーマテリアルズ社製)等が挙げられる。さらに、包摂イミダゾールを用いることもできる。具体例としては、TIC−188(商品名、日本曹達社製)が挙げられる。
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
上記アミン化合物としては、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン、4,4−ジメチルアミノピリジン、及びジアザビシクロウンデセンのオクチル酸塩等が挙げられる。
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
(A)熱硬化性化合物との合計100重量部に対して、(D)硬化促進剤の含有量は、好ましくは0.1重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上、好ましくは10重量部以下、より好ましくは8重量部以下である。(D)硬化促進剤の含有量が上記下限以上であると、材料(X)を良好に硬化させることができる。(D)硬化促進剤の含有量が上記上限以下であると、硬化体内における硬化に寄与しなかった(D)硬化促進剤の残存量が少なくなる。
(他の成分)
材料(X)は、カップリング剤を更に含んでもよい。カップリング剤の使用により、材料(X)の硬化体の耐湿性がより一層高くなる。カップリング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
材料(X)100重量%中、カップリング剤の含有量は好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。カップリング剤の含有量が上記下限以上であると、硬化体の耐湿性がより一層高くなる。カップリング剤の含有量が上記上限以下であると、材料(X)の塗布性がより一層高くなる。
上記カップリング剤は、100℃での重量減少が10重量%以下であるシランカップリング剤、100℃での重量減少が10重量%以下であるチタネートカップリング剤、又は100℃での重量減少が10重量%以下であるアルミネートカップリング剤を含むことが好ましい。これらの好ましいカップリング剤を用いる場合に、これらのカップリング剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
100℃における重量減少が10重量%以下であると、硬化中にカップリング剤の揮発が抑制され、半導体素子に対する濡れ性がより一層高くなり、硬化体の放熱性がより一層高くなる。
なお、100℃における重量減少は、赤外水分計(ケツト科学研究所社製「FD−720」)を用い、50℃/分の昇温速度で100℃まで昇温し、10分後の重量減少を測定することにより求めることができる。
材料(X)は、必要に応じて、カルナバワックス等の天然ワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス、ステアリン酸やステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩類若しくはパラフィン等の離型剤;カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤;臭素化エポキシ樹脂、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、フォスファゼン等の難燃剤;酸化ビスマス水和物等の無機イオン交換体;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力化成分;酸化防止剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
材料(X)は、ポリエチレンワックス等の合成ワックスを含むことが好ましい。材料(X)100重量%中、ポリエチレンワックス等の合成ワックスの含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
(硬化体の他の詳細及び半導体装置)
上記硬化体は、半導体装置において、半導体素子を保護するために、上記半導体素子の表面上に配置されて好適に用いられる。上記硬化体は、半導体素子を保護するために、上記半導体素子の表面上に配置されて好適に用いられ、かつ上記硬化体の上記半導体素子側とは反対の表面上に保護フィルムを配置して、半導体装置を得るために好適に用いられる。
本発明に係る半導体装置は、半導体素子と、上記半導体素子の第1の表面上に配置された硬化体とを備える。
上記硬化体は、半導体素子を保護するために、上記半導体素子の表面上に配置され、かつ上記硬化体の上記半導体素子側とは反対の表面上に保護フィルムを配置して、半導体装置を得るために用いられるか、又は、半導体素子を保護するために、上記半導体素子の表面上に配置され、かつ上記硬化体の上記半導体素子側とは反対の表面が露出している半導体装置を得るために用いられることが好ましい。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る硬化体を用いた半導体装置を示す部分切欠正面断面図である。
図1に示す半導体装置1は、半導体素子2と、半導体素子2の第1の表面2a上に配置された硬化体3とを備える。硬化体3は、上述した材料(X)などの硬化体である。硬化体3は、半導体素子2の第1の表面2a上の一部の領域に配置されている。
半導体素子2は、第1の表面2a側とは反対の第2の表面2b側に、第1の電極2Aを有する。半導体装置1は、接続対象部材4をさらに備える。接続対象部材4は、表面4aに第2の電極4Aを有する。半導体素子2と接続対象部材4とは、他の硬化体5(接続部)を介して接着及び固定されている。半導体素子2の第1の電極2Aと、接続対象部材4の第2の電極4Aとが対向しており、導電性粒子6により電気的に接続されている。第1の電極2Aと第2の電極4Aとが接触することで、電気的に接続されていてもよい。硬化体3は、半導体素子2の第1の電極2Aが配置されている側と反対側の第1の表面2a上に配置されている。
硬化体3の半導体素子2側とは反対の表面上に、保護フィルム7が配置されている。それによって、硬化体3によって放熱性及び半導体素子の保護性を高めるだけでなく、保護フィルム7によっても、半導体素子の保護性をより一層高めることができる。また、硬化体3の保護フィルム7に対する貼り付きを抑えることができる。
上記接続対象部材としては、ガラス基板、ガラスエポキシ基板、フレキシブルプリント基板、及びポリイミド基板等が挙げられる。
半導体素子の表面上において、硬化体の厚みは、好ましくは400μm以上、より好ましくは500μm以上、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1900μm以下である。硬化体の厚みは、半導体素子の厚みよりも薄くてもよい。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る硬化体を用いた半導体装置を示す部分切欠正面断面図である。
図2に示す半導体装置1Xは、半導体素子2と、半導体素子2の第1の表面2a上に配置された硬化体3Xとを備える。硬化体3Xは、上述した材料(X)などの硬化体である。硬化体3Xは、半導体素子2の第1の表面2a上の全体の領域に配置されている。硬化体3Xの半導体素子2側とは反対の表面上に、保護フィルムは配置されていない。硬化体3Xの半導体素子2側とは反対の表面は露出している。
上記半導体装置では、上記硬化体の上記半導体素子側とは反対の表面上に、保護フィルムが配置されているか、又は、上記硬化体の上記半導体素子側とは反対の表面が露出していることが好ましい。
なお、図1,2に示す構造は、半導体装置の一例にすぎず、硬化体の配置構造等には適宜変形され得る。
硬化体の熱伝導率は特に限定されないが、1.8W/m・K以上であることが好ましい。
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
以下の材料を用いた。
(A1)エポキシ化合物
EX−821(n=4)((A11)可撓性エポキシ化合物、ナガセケムテックス社製、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量:185)
EX−830(n=9)((A11)可撓性エポキシ化合物、ナガセケムテックス社製、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量:268)
EX−931(n=11)((A11)可撓性エポキシ化合物、ナガセケムテックス社製、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量:471)
EX−861(n=22)((A11)可撓性エポキシ化合物、ナガセケムテックス社製、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、エポキシ当量:551)
jER828((A12)エポキシ化合物、三菱化学社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量:188)
jER834((A12)エポキシ化合物、三菱化学社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、軟化点:30℃、エポキシ当量:255)
(A2)シリコーン化合物
[シリコーン化合物であるポリマーAの合成]
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジメチルジメトキシシラン164.1g、メチルフェニルジメトキシシラン20.1g及び1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン4.7gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、水酸化カリウム2.2gを水35.1gに溶かした溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去し、反応液に酢酸2.4gを加え、減圧下で加熱した。その後、酢酸カリウムをろ過により除去して、ポリマーAを得た。
得られたポリマーAの数平均分子量は15000であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマーAは、下記の平均組成式を有していた。
(Me2SiO2/2)0.85(PhMeSiO2/2)0.10(ViMe2SiO1/2)0.05
上記式中、Meはメチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を示す。得られたポリマーAのフェニル基及びメチル基の含有比率は97.6モル%、ビニル基の含有比率は2.4モル%であった。
なお、各ポリマーの分子量は、10mgにテトラヒドロフラン1mLを加え、溶解するまで攪拌し、GPC測定により測定した。GPC測定では、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)×2本、測定温度:40℃、流速:1mL/min、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いた。
[シリコーン化合物であるポリマーB〜Dの合成]
合成に用いる有機珪素化合物の種類及び配合量をかえたこと以外はポリマーAの合成と同様にして、ポリマーB〜Dを得た。
ポリマーB:
(SiO4/2)0.20(ViMe2SiO1/2)0.40(Me3SiO1/2)0.40
数平均分子量 2000
フェニル基及びメチル基の含有比率は83.3モル%、ビニル基の含有比率は16.7モル%
ポリマーC:
(MeSiO3/2)0.20(PhMeSiO2/2)0.70(ViMe2SiO1/2)0.10
数平均分子量 4000
フェニル基及びメチル基の含有比率は94.7モル%、ビニル基の含有比率は5.3モル%
ポリマーD:
(PhSiO3/2)0.80(ViMe2SiO1/2)0.20
数平均分子量 1700
フェニル基及びメチル基の含有比率は85.7モル%、ビニル基の含有比率は14.3モル%
[シリコーン化合物であるポリマーEの合成]
温度計、滴下装置及び攪拌機を備えた1000mLのセパラブルフラスコに、ジフェニルジメトキシシラン80.6g、及び1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン45gを入れ、50℃で攪拌した。その中に、酢酸100gと水27gの溶液をゆっくりと滴下し、滴下後に50℃で6時間攪拌し、反応させて、反応液を得た。次に、減圧して揮発成分を除去してポリマーを得た。得られたポリマーにヘキサン150gと酢酸エチル150gとを添加し、イオン交換水300gで10回洗浄を行い、減圧して揮発成分を除去してポリマーEを得た。
得られたポリマーEの数平均分子量は850であった。29Si−NMRより化学構造を同定した結果、ポリマーEは、下記の平均組成式を有していた。
(Ph2SiO2/2)0.67(HMe2SiO1/2)0.33
上記式中、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す。得られたポリマーEのフェニル基及びメチル基の含有比率は74.9モル%、珪素原子に結合した水素原子の含有比率は25.1%であった。
(B)硬化剤又は硬化触媒
フジキュアー7000(富士化成社製、23℃で液状、アミン化合物)
MEH−8005(明和化成社製、23℃で液状、アリルフェノールノボラック化合物)
白金の1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体
(D)硬化促進剤
SA−102(サンアプロ社製、DBUオクチル酸塩)
(C)熱伝導率が10W/m・K以上であり、かつカップリング剤による表面処理物である熱伝導性粒子:表面処理品
FAN−f05(古河電子社製、窒化アルミニウム、熱伝導率:100W/m・K、球状、平均粒子径:6μm)が表面処理された熱伝導性粒子
FAN−f50(古河電子社製、窒化アルミニウム、熱伝導率:100W/m・K、球状、平均粒子径:30μm)が表面処理された熱伝導性粒子
CB−P05(昭和電工社製、酸化アルミニウム、熱伝導率:20W/m・K、球状、平均粒子径:4μm)が表面処理された熱伝導性粒子
CB−P40(昭和電工社製、酸化アルミニウム、熱伝導率:20W/m・K、球状、平均粒子径:44μm)が表面処理された熱伝導性粒子
SSC−A15(信濃電気精錬社製、窒化ケイ素、熱伝導率:100W/m・K、球状、平均粒子径:19μm)が表面処理された熱伝導性粒子
SSC−A30(信濃電気精錬社製、窒化ケイ素、熱伝導率:100W/m・K、球状、平均粒子径:34μm)が表面処理された熱伝導性粒子
表面処理に用いたカップリング剤
KBM−403(信越化学工業社製、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシ基を有する)
T2869(東京化成工業社製、トリメトキシ(2−フェニルエチル)シラン、芳香族基を有する)
KBM−903(信越化学工業社製、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノ基を有する)
KBM−803(信越化学工業社製、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、チオール基を有する)
KBE−9007(信越化学工業社製、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、イソシアネート基を有する)
KBM−9659(信越化学工業社製、トリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシエアヌレート、イソシアヌレート基を有する)
(C’)その他の熱伝導性粒子:未表面処理品
HS−306(マイクロン社製、酸化ケイ素、熱伝導率:2W/m・K、球状、平均粒子径:2.5μm)
HS−304(マイクロン社製、酸化ケイ素、熱伝導率:2W/m・K、球状、平均粒子径:25μm)
(他の成分)
カップリング剤:KBM−403(信越化学工業社製、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシ基を有する)
ハイワックス200PF(三井化学社製、ポリエチレンワックス)
(実施例1)
湿式法による熱伝導性粒子の表面処理:
熱伝導性粒子100重量部をアンモニア水でpH10に調整した水:イソプロピルアルコール=1:1(体積比)の溶液200重量部中に分散し、さらに熱伝導性粒子に対して1重量%のカップリング剤を添加し、1時間攪拌を行った。攪拌後、遠心分離で上澄みを除去し、熱伝導性粒子を真空オーブン中で60℃で12時間加熱乾燥を行うことで、カップリング剤による表面処理物熱伝導性粒子を得た。尚、本実施例においては粒子径の大きい熱伝導性粒子にのみ表面処理を行った。
半導体素子保護用材料の作製:
EX−821(n=4)を6.5重量部、jER828を2.5重量部、フジキュアー7000を5重量部、SA−102を0.5重量部、CB−P05の表面処理品を42.5重量部CB−P40の表面処理品を42.5重量部、及びハイワックス200PFを0.5重量部混合し、脱泡を行い、半導体素子保護用材料を得た。
硬化体の作製:
得られた半導体素子保護用材料をスキージーを用いてPET基材上に均一に塗布し、150℃のオーブンで2時間加熱し、硬化体を得た。硬化体をカミソリ刃で5mm角に切断し、クロスセクションポリッシャー用のサンプル台に接着剤で固定し、クロスセクションポリッシャー(日本電子社製「IB−09010CP」)で印加電圧を5kV、時間を14時間に設定し、断面を均一に加工した硬化体を得た。
(実施例2〜18及び比較例1〜3)
配合成分の種類及び配合量を下記の表1,2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、半導体素子保護用材料を得た。
なお、実施例2〜18及び比較例3では、カップリング剤による表面処理物である熱伝導性粒子を用いた。比較例1,2では、熱伝導性粒子をカップリング剤により表面処理せずに、熱伝導性粒子とカップリング剤とを別途添加した。
得られた半導体素子保護用材料を用いて、実施例1と同様にして、硬化体を得た。
(評価)
(1)走査型電子顕微鏡写真に基づく計算
実施例2〜18及び比較例1〜3で得られた硬化体の断面を、走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製「電界放射形走査電子顕微鏡S−4800」)により測定した。観察倍率は500倍、加速電圧を12kV、電流を20μAに固定して、走査型電子顕微鏡で得られた画像を、画像解析ソフトウェア「WinROOF2013」を用いて100μm×200μmの任意の観察領域で、熱伝導性粒子とそれ以外(樹脂成分)に関して2値化画像処理を行った。まず、2値化画像から粒子の重心座標位置(X座標、Y座標)を算出した。ついで、粒子の重心座標位置を通る最大、及び最小の切断長の平均値から円相当径を求め、粒子径とした。
次に数値解析用フリーソフト「R」のパッケージspatstatを用いて、粒子の重心座標位置(X座標、Y座標)から、半径50μmの円形の範囲における動径分布関数g(r)を求めた。動径分布関数は、g(r)=1のときに「ランダム分布」、g(r)>1の場合は「集中分布(凝集)」、g(r)<1の場合は「規則分布(分散)」として分布様式を捉えることができる。
それぞれの分布様式の判定は、フリーソフト「R」の一様乱数を用いて、観察領域と同一範囲内に解析粒子数と同数の点座標をランダムに発生させ、ランダム分布の範囲を求めることで行った。具体的には、一様乱数を199回試行して、それぞれ動径分布関数を算出し、ランダム分布の上下限(範囲)を求めた。ここで、ランダム分布の95%を信頼区間とした。
観察サンプルの動径分布関数が、乱数から求めたランダム分布の信頼区間における上下限の範囲に入れば「ランダム分布」、上限を超えれば「集中分布」、下限を下回れば「規則分布」(あるいは「一定間隔型分布」)とした。
2値化画像の周縁部において、ある粒子の平面重心座標値(X座標、Y座標)から半径r内に存在する他の粒子数が、2値化画像の中央部に比べて減る傾向があることから、動径分布関数の算出にはエッジ補正としてRipleyのエッジ補正法を用いた。
(2)放熱性
得られた半導体素子保護用材料を150℃で2時間加熱し、硬化させ、100mm×100mm×厚さ50μmの硬化体を得た。この硬化体を評価サンプルとした。
得られた評価サンプルの熱伝導率を、京都電子工業社製熱伝導率計「迅速熱伝導率計QTM−500」を用いて測定した。熱伝導率が高いほど、放熱性に優れている。
組成及び結果を下記の表1,2に示す。