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JP2017034194A - 限流器、過電流検出機構および超電導コイルの駆動回路 - Google Patents

限流器、過電流検出機構および超電導コイルの駆動回路 Download PDF

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JP2017034194A
JP2017034194A JP2015155438A JP2015155438A JP2017034194A JP 2017034194 A JP2017034194 A JP 2017034194A JP 2015155438 A JP2015155438 A JP 2015155438A JP 2015155438 A JP2015155438 A JP 2015155438A JP 2017034194 A JP2017034194 A JP 2017034194A
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coil
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智洋 高木
Tomohiro Takagi
智洋 高木
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Furukawa Electric Co Ltd
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Furukawa Electric Co Ltd
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Abstract

【課題】超電導コイルの過電流通電を未然に防ぎ、またそのクエンチの前兆が検出された際にその通電電流を減衰させることで、超電導コイルのクエンチを回避することができる限流器を提供する。
【解決手段】超電導コイル10と直列に挿入される限流器12が、超電導コイル10より臨界電流の小さい巻き線22を備え、その少なくとも一方の面は、電気絶縁層21を介して熱浴である巻枠20に密着されている。また、限流動作時に電流が巻き線22を迂回する迂回路用導体線41が設けられ、その少なくとも一方の面は、電気絶縁層を介して専用の熱浴に密着させられている。
【選択図】図2

Description

本発明は、限流器、過電流検出機構および超電導コイルの駆動回路に関する。
1つないし複数の超電導コイルとその駆動電源が直列に配置された回路が複数あり、前記超電導コイル同士が磁気的に結合している場合、そのうちの1つの超電導コイルの通電電流が急激に減少すると、それによる磁場の低減を補うためにその周囲の超電導コイルに追加の電流が流れるような誘導起電力が生じ、それ以外の回路に配置されている周囲の超電導コイルは過電流状態となる。
超電導コイルには、通電電流がある値を上回ると急激に発熱が生じてクエンチ・焼損してしまう性質があり、このような事態がシステム全体の連鎖的な破損をもたらすおそれがある。
また、複数の超電導コイルを並列回路で定電流駆動する場合も同様で、並列経路のうちの1つの経路が断絶すると、残る経路で同じ定電流が再分配されるため、やはり同様の事態が発生してしまう。
超電導ケーブルに過電流が流れる事態を防ぐ技術として、従来、金属の保護層を持つ超電導線材を利用した抵抗型限流器を回路に挿入する技術が知られている。正常時の電流上限よりも大きく、超電導ケーブルで発熱を伴う電圧が発生するよりも小さな電流が回路内に流れた時点で前記超電導線材に電圧が発生し、回路内にそれよりも大きな電流が流れて超電導ケーブルが過電流状態となる事態を防ぐものである。
同様の保護を超電導ケーブルではなく超電導コイルに対して行う技術も開示されている(例えば、特許文献1および2)。その他の技術として、例えば、超電導線材からなるヒューズを回路に挿入し、過電流時にヒューズが溶断して電流を保護回路に流す技術も開示されている(例えば、特許文献3)。
特許第5255425号公報 特開2012−178485公報 特開2013−251516公報
前記従来の技術においては、超電導を含む回路に過電流が流れた場合に対してフェイルセーフ的に働き、超電導ケーブル同様、超電導コイルでも過電流通電という状況を安全に回避できそうに思える。
しかしながら、コイルの場合は通電時に磁気エネルギーを蓄積しており、コイルの通電電流を下げるためにはこの蓄積された磁気エネルギーがどこかで吸収または散逸されなければならない。回路中の限流器が動作してそこに電圧が発生しても、蓄積された磁気エネルギーが限流器内部で熱に変換されて散逸されない限り、電流はすぐには下がらない。そしてこの時、限流器内部であまりに多くの熱が生じると、限流器を構成する超電導線材が焼け切れてしまうことになる。
例えば、インダクタンスが2H(ヘンリー)のコイルに100Aの定電流を通電しているとき、コイルには10kJの磁気エネルギーが蓄積されている。これは通常の限流器を焼き切るのに十分なエネルギーである。超電導ケーブル、あるいはそれが接続されている送電系統の負荷はこのような形でエネルギーを蓄積してはいないので、既存の送電系統用の限流器には通常発熱への対策は施されていない。
特許文献1および特許文献2では、送電系統ではなくコイルに限流器を用いようという意図が示されている。コイルに蓄積されている磁気エネルギーへの対処についても示されてはいるものの、特許文献1に示されている形式では不十分である。
特許文献2においては、特許文献1のこの問題点を指摘して改善を主張しているが、これでもやはり不十分である。特許文献2では、「第2の保護抵抗11」が「限流器9の温度上昇を抑制する」としているが、これは実際には逆効果である。電流経路が第1の保護抵抗群を通る経路と第2の保護抵抗を通る経路に分かれてしまい、抵抗の並列回路になって直列回路の場合よりも正味の抵抗が低下してしまうためである。
前述のように、いくら保護抵抗を加えても、コイルやそれと直列に組み込まれている限流器での発熱を完全になくすことはできない。ゆえに、コイルでの発熱が始まる前にどこか別の場所で全ての蓄積エネルギーを散逸させることが重要なのである。特許文献1および特許文献2には、その点についての開示がなく、そのために必要となる工夫についての言及も当然されていない。
特許文献3では、この限流器に相当する部位での熱対策をあえて行わず、限流動作時の発熱によって積極的に溶断させ、「限流器」から「ヒューズ」としての役割を果たすようにしている。この方式であれば、確かにコイル保護の役割を果たすことはできる。しかしながら、ヒューズは冷却された低温側にあり、ヒューズを交換するためにはシステム全体を一度室温まで昇温させる必要があることから、ヒューズが切れた後の交換が非常に面倒であり、復旧に時間がかかるという問題が生じる。
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、超電導回路に過電流が流れた場合に、フェイルセーフ的に働き、過電流通電を安全に回避することができ、なおかつ復旧の際に交換の手間を必要としない超電導コイル用の限流器、過電流検出機構および超電導コイルの駆動回路を提供することを目的とするものである。
前記目的を達成するために、本発明に係る限流器は、 超電導コイルに接続される限流器であって、前記超電導コイルより臨界電流の小さい超電導線材を備え、前記臨界電流の小さい超電導線材の少なくとも一方の面は、電気絶縁体を介して第一の熱浴を備えていることを特徴とする。
ここで「臨界電流」とは、ある条件下にある超電導体に通電した時、一定量の電圧が生じる電流のことである。超電導線材に関しては、慣習的に、長さ1cmあたりに1μVの電圧が生じる電流として定められる。コイルの場合、誘導電圧が生じる上に磁場の影響も受けるため複雑ではあるが、「定電流を通電してある基準電圧が生じる電流」という形で同様の臨界電流を定めることができる。本発明においては、コイルを構成する線材の長さあたりの電圧として1cmあたり0.1μVの電圧が生じる電流をコイルの臨界電流とする。
この構成によれば、超電導コイルより臨界電流の小さい超電導線材を、電気絶縁層を介して熱浴に密着させるようにしているので、超電導コイルの駆動回路に過電流が流れた場合に、超電導コイルがクエンチを起こすよりも先に限流器で電圧が生じ、それによってコイルに蓄積されていた磁気エネルギーが熱に変換され、熱浴に散逸させられる。その結果、過剰な温度上昇を引き起こすことなく安全に過電流通電を回避することができる。
また、本発明は、前記構成において、前記臨界電流の小さい超電導線材の両端に、迂回路用導体線が接続され、前記迂回路用導体線は、第二の熱浴を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、臨界電流の小さい超電導線材を迂回する迂回路用導体線が設けられているので、過電流により前記臨界電流の小さい超電導線材で電圧が発生した場合に、電流の一部を迂回路用導体に転流させることができる。その結果、前記臨界電流の小さい超電導線材の過度の温度上昇およびそれによる焼損を回避することができる。
また、本発明は、前記構成において、前記第二の熱浴を備える迂回路用導体線は、導体線に複数の金属体が接合され、前記金属体の間に絶縁層を有していることを特徴とする。
この構成によれば、迂回路用導体線がテープ型の導体に垂直方向に複数本の金属板の辺の一部を金属的に接合させた構造となっており、前記金属板は絶縁層を介して隣接する金属板と密着されているので、迂回路用導体線を流れる電流によって生じた熱が、熱浴である金属的に接合された金属板へと速やかに散逸されるため、迂回路用導体線の過度の温度上昇およびそれによる焼損を確実に回避することができる。
また、本発明は、前記構成において、前記臨界電流の小さい超電導線材は、前記超電導コイルの幅より細いことを特徴とする。
この構成によれば、臨界電流の小さい超電導線材を、超電導コイルの幅寸法より細く形成しているので、超電導コイルよりも臨界電流を小さくすることができる。
また、本発明は、前記構成において、前記第一の熱浴は柱状または筒状に形成され、前記臨界電流の小さい超電導線材は、前記第一の熱浴の外周もしくは内周に巻回されていることを特徴とする。
この構成によれば、臨界電流の小さい超電導線材およびその熱浴をコンパクトにまとめることができる。
また、本発明は、前記構成において、前記第一の熱浴は、前記超電導コイルとの伝熱経路を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、第1の熱浴と超電導コイルとを結ぶ伝熱経路を備えているので、超電導コイルの温度が上昇した場合に、熱浴の温度も連動して上昇し、それに合わせて前記臨界電流の小さい超電導線材の温度も上昇し、その結果、臨界電流の小さい超電導線材の臨界電流がさらに小さくなることにより、超電導コイルの回路に過電流が通電されなくても限流機能を発動させることができる。
また、本発明は、前記構成において、前記臨界電流の小さい超電導線材に、外部磁場を形成する外部磁場形成手段を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、臨界電流の小さい超電導線材に選択的に外部磁場を形成する外部磁場形成手段を備えているので、臨界電流の小さい超電導線材を磁場にさらすことでその臨界電流をさらに低下させ、正常な電流での通電時であっても選択的に限流機能を発動させることができる。
また、本発明は、前記構成において、前記超電導コイルのクエンチの前兆を検出する検出機構を備え、前記超電導コイルのクエンチの前兆を検出したときに、前記外部磁場形成手段により前記臨界電流の小さい超電導線材に外部磁場を形成することを特徴とする。
この構成によれば、検出機構が超電導コイルのクエンチの前兆を検出した場合に、外部磁場形成手段により臨界電流の小さい超電導線材を外部磁場にさらすことでその臨界電流をさらに低下させ、その結果正常な電流での通電時であっても選択的に限流機能を発動させ、超電導コイルのクエンチを回避することができる。
また、本発明に係る過電流検出機構は、請求項1から請求項8に記載の限流器の前記臨界電流の小さい超電導線材の両端電圧を測定して、前記超電導コイルの駆動回路の過電流を検出することを特徴とする。
この構成によれば、臨界電流の小さい超電導線材の両端電圧を測定して超電導コイルを含む回路の過電流状態を検出するようにしているので、電流の時間変化による誘導電圧に惑わされることなく、超電導コイルを含む回路の過電流状態の発生を超電導コイル自身が過電流状態に陥るよりも前に確実に検出することができる。
また、本発明に係る超電導コイルの駆動回路は、請求項1から請求項6に記載の前記限流器と、前記超電導コイルとが、直列に接続されていることを特徴とする。
この構成によれば、限流器を超電導コイルと直列に接続しているので、限流器が動作することにより超電導コイルの通電電流を減少させることができる。
また、本発明は、前記構成において、請求項9に記載の前記過電流検出機構と、前記超電導コイルと、過電流を検出したときに通電電流を減衰させる電源とを、備えていることを特徴とする。
この構成によれば、過電流検出機構により超電導コイルを含む回路の過電流を検出した場合に通電電流を減衰させる電源を備えているので、回路の過電流時に限流器の限流機能と合わせて確実かつ速やかに回路の通電電流を減衰させることができる。
また、本発明は、請求項8に記載の前記限流器と、前記超電導コイルと、前記超電導コイルのクエンチの前兆を検出した場合に、通電電流を減衰させる電源と、を備え、
請求項8に記載の前記限流器と、前記超電導コイルとが、直列に接続されていることを特徴とする。
この構成によれば、超電導コイルのクエンチの前兆を検出した場合に通電電流を減衰させる電源を備えているので、超電導コイルのクエンチの前兆を検出した場合に、限流器の限流機能と合わせて確実かつ速やかに回路の通電電流を減衰させることができる。
本発明によれば、超電導コイルの駆動回路に過電流が流れた場合に、超電導コイルが過電流によりクエンチするよりも早く限流器で発熱し、超電導コイルに蓄えられていた磁気エネルギーを限流器に付属する熱浴に散逸させることができ、その結果過電流通電による超電導コイルのクエンチをフェイルセーフ的に回避することができる。
また、超電導コイルのクエンチの前兆が検出された場合に、外部磁場の形成により臨界電流の小さい超電導線材の臨界電流をさらに低下させることで、正常な電流での通電時であっても選択的に限流機能を発動させることができる。
本発明に係る限流器を用いた超電導コイルの駆動回路の第1実施形態を示す概略構成図である。 第1実施形態の限流器を示す概略断面図である。 第1実施形態の限流器を示す概略斜視図である。 超電導線材の構成を示す断面図である。 迂回路用導体に付属する熱浴の構成を示す断面図である。 本実施例による超電導コイルの駆動回路の例を示す概略構成図である。 本発明の第2実施形態を示す概略断面図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る限流器が適用される超電導コイルの駆動回路の第1実施形態を示す概略斜視図である。
超電導コイルの駆動回路1は、超電導コイル10と、電源11とを直列に接続してなる回路であり、超電導コイル10と電源11との間には、限流器12が接続されている。
本実施形態においては、超電導コイル10の駆動回路1は、3つ設けられており、これら各超電導コイル10の駆動回路1の各超電導コイル10は、磁気的に結合している。
図2は、限流器12の概略を示す構成図であり、図3は、限流器12の概略を示す斜視図である。
図2および図3に示すように、限流器12は、円筒状の巻枠20を備えている。巻枠20は、例えば、金属で構成されており、熱的に接触している周囲の部材の急激な温度変化を妨げる熱浴としても機能する。
また、本実施形態においては、巻枠20は円筒状に形成されているが、これに限定されるものではなく、長円筒状、楕円筒状などいずれの筒状に形成するようにしてもよいし、例えば、円柱状、長円柱状、楕円柱状などいずれの柱状に形成するようにしてもよい。
この場合に、巻枠20を筒状に形成することにより、内部が中空とされるので、巻枠20の全体としての熱容量を下げることができるものであり、巻枠20に求められる熱容量に応じて、筒状あるいは柱状などの形状や筒の中空容積などを適宜設定することができるものである。
そして、巻枠20の外周には、電気絶縁層21が形成されており、電気絶縁層21の表面には、臨界電流の小さい超電導線材による巻き線22がソレノイド状に巻回されている。さらに、巻き線22の外側には、図示しない金属シートが絶縁シートを挟んで巻き付けられている。なお、巻き線22の巻数は、求められる電気抵抗値に応じて適宜設定されるものである。
また、巻枠20の両側には、それぞれ冷却板25が配置されており、冷却板25の上には、超電導コイル10の駆動回路1に接続される超電導線材26がそれぞれ設置されている。超電導線材26と巻き線22とは、厚い金属保護層によって補強された線材27を介して接続されている。また、巻き線22は、超電導線材26より臨界電流が小さくなるようにその幅寸法が超電導線材26より狭くなるように形成されている。
図4は巻き線22をなすY系超電導線材の構造を示す概略断面図である。
図4に示すように、巻き線22をなすY系超電導線材26は、テープ状に形成された基板30を備えており、この基板30の材料としては、例えば、ハステロイ(登録商標)が用いられる。
基板30の一面側には、中間層31を介して超電導層32が形成されており、超電導層32の表面には、銀などからなる保護層33が形成されている。
Y系超電導線材26には、保護層33の上面を含む線材表面に銅などからなる安定化層が形成されているものもあるが、本実施形態における巻き線22をなすY系超電導線材26では、限流動作の際の電気抵抗を高くするために、安定化層は形成されていない。
そして、巻枠20および金属シートは、巻き線22に過電流が流れた際に発生する熱を吸収する熱浴として機能するものである。巻枠20と巻き線22との間に電気的に絶縁するための電気絶縁層21を形成するようにしている。金属シートと巻き線22との間にも電気絶縁シートが挟み込まれている。
なお、超電導線材26の銀からなる保護層33は、基板30と比較して特に低温において電気伝導度が高く、限流動作の際には多くの電流が流れるため発熱量も大きい。限流動作の際の発熱量がそれほど大きくならない場合には、金属シートを巻き線22の外側に巻き付けない構造としてもよいが、その場合、発熱量の大きな保護層33が巻枠20に接するような向きで巻回することが好ましい。
正常な通電時には、電流は巻き線22の超電導層32を流れる。電流が巻き線22の臨界電流を超えて増大した場合には、巻き線22で電圧が発生して発熱し、超電導層32の温度が上昇してついには常電導化する。この場合には、保護層33が電流のバイパスとして機能し、電流の大部分は保護層33を流れる。
本実施形態においては、各超電導線材26の上方には、それぞれ巻き線22の迂回路となる迂回路用導体線41が設けられており、迂回路用支持材40を介して各超電導線材26と接続されている。迂回路用導体線41は超電導体ではなく、金属などの常電導材料からなる。そして、迂回路用導体線41の上面には、絶縁シート42を介して熱浴43が設けられている。
図5は、迂回路用導体線41および熱浴43の構成の別の例を示す断面図である。
図5に示すように、迂回路用導体線41はテープ型導体であり、その上面が断片的に熱浴43と金属接合されている。熱浴43は複数の金属板44が絶縁層としての絶縁シート45を介して重ね合わされたものであり、それぞれの金属板44は迂回路用導体線41と接合する側の一辺に薄い突出部46が設けられている。金属板44と迂回路用導体線41とはこの突出部46のみで接合され、それ以外の部位は接合されていない。
この迂回路を電流が流れるとき、電流は迂回路用導体線41をまっすぐに流れるが、その時に生じる熱は、金属的に接合された突出部46を経由して速やかに金属板44からなる熱浴43へと拡散していく。また、迂回路用導体線41のうち突出部46と接合されていない領域は自由に変形できるため、温度が上昇して熱膨張が生じてもそれによる応力を変形によって逃がすことができる。
なお、本実施形態においては、複数の金属板44の間に絶縁シート45を設けた構成としたが、例えば、各金属板44の間に間隙を形成し、この間隙により各金属板44の間の絶縁層を形成するようにしてもよい。
次に、本実施形態の作用について説明する。
正常な通電時には、電流は入口側の超電導線材26から補強された線材27を経由して巻き線22を流れ、出口側の超電導線材26から超電導コイル10に送られる。そして、超電導コイル10を流れる電流により、磁場が形成される。
一般に、コイルには自己磁場を含めた自身を貫く磁束を維持しようとする性質があるため、仮に電源11が誤って過電流を流そうとしてもすぐに過電流状態に至ることはない。しかし、例えば、超電導コイル10aの内部に別の回路に属する超電導コイル10bが磁束を発生させていたところで、超電導コイル10bがクエンチして急激に超電導コイル10a内部を貫く磁束が縮小した場合、超電導コイル10aは自ら磁束を追加して正味の磁束減少を妨げようとする。コイルによる自らの磁束の追加は自身の通電電流の増大によって実現されるため、この場合超電導コイル10aを含む回路の通電電流が増大しようとする。
これは電磁気学的には、磁束の変化による誘導起電力がコイルを流れる電流の時間変化を引き起こすものとして説明される。超電導コイル10には電気抵抗がないため、生じた誘導起電力のすべてがコイルの電流変化として作用し、効率的に電流を増大させてしまう。
巻き線22にその臨界電流を超える過電流が流れると、巻き線22で電圧が発生して発熱し、温度が上昇して巻き線22の臨界電流はさらに低下し、電流の大部分は超電導層32から保護層33に転流する。ここで、保護層33は通常銀により形成されているため電気抵抗の温度依存性が大きく、巻き線22の温度がさらに上昇すると保護層33の電気抵抗が増大する。すると、今度は電流の大部分が巻き線22自体を迂回して迂回路用導体線41を流れるようになり、巻き線22を流れる電流は小さくなる。これにより、巻き線22での発熱が抑えられ、巻き線22の過度の温度上昇が回避されることになる。
なお、銀からなる保護層33に多少の金を添加すると、電気抵抗の温度依存性が小さくなる。この場合は、超電導層32が常電導化すると同時に電流の多くが迂回路用導体線41に転流するので、巻き線22の温度上昇をさらに低く抑えられ、好ましい。
このように、超電導コイル10の駆動回路1に過電流が発生した場合に、本実施形態においては、巻き線22の保護層33と迂回路用導体線41が並列した電流経路を電流が流れるようになる。この並列した電流経路の正味の電気抵抗と電流の積で表される電圧降下が回路内に生じ、それに見合う誘導起電力が超電導コイル10に生じるように通電電流の減衰が生じる。その量が前記磁束の変化による電流の増大量を上回れば、全体として超電導コイル10の駆動回路1の通電電流は時間的に減衰していくことになる。このようなメカニズムにより、人為的な操作やコンピュータによる判定を経ることなくシステムを安全かつフェイルセーフ的に停止させることが可能となる。
正常な通電時には限流器12に電圧降下はなく、過電流通電時に自動的に大きな電圧降下が生じるため、巻き線22の両端部における電圧を測定することで、異常な過電流状態の発生を確実かつ速やかに検出することもできる。
この仕組みを利用した過電流通電の検出機構により過電流状態の発生を検出した場合に電源11にさらに電流を減衰させるようにすれば、超電導コイル10の駆動回路1をより確実かつ速やかに停止させることができる。
次に、本実施形態について具体的な実施例について説明する。
(巻き枠および巻き線の構成)
本実施形態においては、超電導コイル10に用いられている超電導線材、およびそこに接続される主超電導線材26と補強された線材27の幅は共に4mmである。
幅2mmのY系高温超電導(HTS)線材1.0m分を巻き線22とし、径φ6.4cmの真ちゅう製の巻枠20に5周分、超電導層32を巻枠20に向ける向きでソレノイド状に巻回した。ただし、この巻き線22は銅の安定化層を備えていない。超電導層32の上に銀を厚さ1.0μm分蒸着させて保護層33を形成した。また、巻き線22の基板30は幅2mm、厚さ50μmのハステロイ(登録商標)とした。
巻枠20の表面には、電気絶縁層21として厚さ25μmのポリイミドシートが沿わされており、巻き線22との間には電気的な絶縁が図られている。また、巻き線22の外側にも同じポリイミドシートを巻きつけ、さらにその外側に厚さ200μmの銅シートを巻きつけた。この状態でエポキシ接着剤に浸し、硬化させて固めた。
巻き線22の両端は、補強された線材27にはんだ接続されている。これは、主超電導線材26に用いられている超電導線材の片面全体に厚さ200mmの銅箔をはんだ接続し、温度上昇や過電流の際に生じる発熱を抑え、さらに発生した熱を速やかに排除できるように電気伝導度および熱伝導度を補強したものである。この補強された線材27のもう一方の端部は、冷却板25に密着させた主超電導線材26の端部とはんだ接続されている。
(迂回路用導体線の構成)
主超電導線材26の上部、巻き線22を迂回する位置に、銅製の迂回路用支持材40を介して、長さ10cm、幅2mm、厚さ50μmのテープ形状をしたハステロイ(登録商標)からなる迂回路用導体線41をはんだ付けした。この迂回路用導体線41の上面は、絶縁シート42である厚さ25μmのポリイミドテープを介して銅製の熱浴43にエポキシ接着剤により密着させられている。
次に、各部位の電気抵抗の具体例について説明する。
主超電導線材26と補強された線材27、補強された線材27と巻き線22の間にはそれぞれ金属接合があり、そこには正常通電時にも電気抵抗が生じるが、その大きさはすべて合わせても0.1μΩ以下である。
本実施形態において、巻き線22の基板30の材質はハステロイ(登録商標)であり、その電気抵抗率は温度によらず0.13mΩ・cmである。その断面の寸法は幅2mm、厚さ50μmであり、長さ1cm当たりの電気抵抗は温度によらず0.13Ω/cmとなる。また、銀の電気抵抗率は室温で1.5μΩ・cmであり、銀からなる保護層33の電気抵抗は、その断面の寸法が幅2mm、厚さ1.0μmであることから、長さ1cm当たりで0.075Ω/cmとなる。ただし低温ではこれよりも低くなる。
巻き線22の温度がY系超電導体の臨界温度(〜90K)よりも高いとき、その電流経路は基板30と保護層33の並列経路となる。その正味の電気抵抗は室温(300K)でおよそ0.05Ω/cm、200Kでおよそ0.03Ω/cmとなる。巻き線22の長さが1.0mであることを考慮すると、室温でおよそ5Ωとなる。
本実施形態における迂回路用導体線41は、材質、断面形状ともに基板30と同じで、その長さあたりの電気抵抗は温度によらず0.13Ω/cmである。長さが10cmであることを考慮すると、全体での電気抵抗は1.3Ωとなる。
迂回路用導体線41は、巻き線22と並列の電流経路になっており、限流器全体での正味の電気抵抗は、巻き線22の温度が室温程度まで上昇した時およそ1Ωとなる。また、それぞれの電流経路の電気抵抗の比率から、この時限流器を流れる電流のうち7割以上が迂回路用導体線41を流れていることになる。
(超電導コイルの回路構成)
図6は、本実施例における超電導コイルの回路構成を示す概略構成図である。
図6に示すように、超電導コイル10を電源11で駆動する回路構成であり、保護抵抗15が超電導コイル10と並列に接続されている。限流器12は、保護抵抗15側の経路との合流部より超電導コイル10側に直列に接続されている。
超電導コイル10および限流器12は、クライオスタット16の中で冷却されており、電源11および保護抵抗15はクライオスタット16の外部に配置されている。
超電導コイル10は自己インダクタンスが1Hで、正常時は100Aで駆動される。最大130Aまで通電することが可能であるが、それ以上の電流が流れるとクエンチ・焼損を起こすおそれがある。これに対して、限流器12は上限電流が120Aのものであり、それ以上の電流が回路17に流れると限流機能が動作する。保護抵抗15の電気抵抗は1Ωである。
(超電導コイルがクエンチした場合の動作)
このように構成された複数の回路が設けられ、各超電導コイルは磁気的に結合している。
あるとき、隣接する回路の超電導コイルがクエンチして電流が急低下し、その周囲の磁場強度が減衰した。これに伴い、本超電導コイル10を貫く磁束が急減衰し、本超電導コイル10には100Vの誘導起電力が生じた。一般に、コイルに起電力が生じると、それを自己インダクタンスで割った電流の時間変化が生じる。超電導コイル10の自己インダクタンスは1Hであることから、このとき本超電導コイル10には+100A/secの急激な電流増加が生じる。
電源11は変わらず100Aの電流を流し続けるが、超電導コイル10と保護抵抗15とからなる回路に追加の電流が生じ、超電導コイル10に正常時の100Aを上回る電流が通電される状態となってしまう。ここで、超電導コイル10を流れる電流が120Aまで上昇した時、限流器12が動作を開始した。すなわち、巻き線22で発熱が生じ、その温度が上昇して限流器12に電圧降下が発生した。そして、すぐにその温度は室温程度まで上昇し、限流器12全体の正味の電気抵抗は1Ωとなった。
このとき、限流器12には、120Aの電流が流れているため、その電圧降下は120Vとなる。また、電気抵抗が1Ωである保護抵抗15にも20Aの電流が流れており、そこに20Vの電圧降下が生じる。こうして、合わせて140Vの電圧降下が超電導コイル10を含む回路17に生じる。なお、電源11では100Aを流し続けるために相応の電圧降下を作り出している。その値は並列の関係にある保護抵抗15における電圧降下と一致するので、この場合は20Vの電圧降下が生じているはずである。
一方、超電導コイル10に生じる誘導電位は100Vなので、合計で40Vの負の電圧(逆起電力)が生じることになる。これが超電導コイル10の電流変動をもたらし、先ほどとは逆に−40A/secの電流減少となる。このように、超電導コイル10の通電限界電流である130Aに至る前にコイル電流は減少へと転じて、超電導コイル10は過電流通電から保護されることが確認された。
このとき、限流器12は、特に迂回路用導体線41の熱浴43が超電導コイル10の磁気エネルギーを吸収してその温度を上昇させているが、再度冷却されればそのまま限流機能が動作する以前の状態に復旧させることができる。
以上述べたように、本実施形態においては、臨界電流の小さい巻き線22を、電気絶縁層21を介して巻枠20に密着させて巻回したものを限流器12として超電導コイル10の駆動回路1に挿入しており、駆動回路1に過電流が流れた時に限流機能が動作し、超電導コイル10の通電限界電流に到達する前にフェイルセーフ的に通電電流を減衰させることができる。
また、巻き線22を迂回する迂回路用導体線41を設けるようにしているので、巻き線22の温度がある程度上昇したのち限流器に流れる電流の大部分は巻き線22を迂回して迂回路用導体線41を流れるようになり、その結果、巻き線22での発熱が大幅に低減されて巻き線22における過度な温度上昇を回避することができる。こうして各部位の過度な温度上昇を免れた限流器12は、再度冷却されればそのまま限流機能が動作する以前の状態に復旧させることができる。
なお、超電導コイル10と限流器12の巻枠20とを熱伝導性のよい伝熱経路(図示せず)によって熱的に結合させれば、超電導コイル10の温度が上昇した場合にも限流器12の限流機能が動作することになる。
一般に、超電導物質は温度が上昇するとその臨界電流が低下するため、例えば、冷却システムの不具合により電導コイル10の温度が上昇した場合にも、過電流通電と同様クエンチの危険が生じる。しかし、その前に巻き線22の温度が上昇して限流器12の限流機能が動作し、駆動回路1の通電電流が安全かつ速やかに減衰されることになる。こうして、超電導コイル10の温度上昇によるクエンチの危機もフェイルセーフ的に回避される。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図7は本発明の第2実施形態を示す概略構成図である。
本実施形態においては、図7に示すように、巻枠20は、断面形状長円状に形成されており、前記第1実施形態と同様に、巻枠20の外周には、巻き線22がソレノイド状に巻回されている。
また、本実施形態においても前記第1実施形態と同様に、熱浴43を備えた迂回路用導体線41が設けられている。
また、巻枠20の両側には、外部磁場形成手段としての磁場形成用コイル50を備えた電磁石51が配置されている。そして、磁場形成用コイル50に通電することにより、巻き線22を磁場にさらすことができるように構成されている。
電磁石51による磁場は、巻き線22のできるだけ広範囲を一様にさらす方がよい。そのため、本実施形態においては、巻き線22を長円状に形成し、電磁石51と対向する面を直線状に形成するようにしている。ただし、巻枠20は、この形状に限定されるものではなく、いずれの形状に形成するようにしてもよい。
あるいは、より広く巻き線22を磁場にさらすため、巻枠20の曲線部分にも別の電磁石を配置するようにしてもよい。
さらに、本実施形態においては、超電導コイル10のクエンチの前兆を検出する図示しない検出機構が設けられている。検出機構としては、例えば、超電導コイル10の温度を測定してその異常な温度上昇を検出する機構が考えられる。すなわち、超電導コイル10部分の温度を測定して、その異常な温度上昇を検出することで、超電導コイル10のクエンチの前兆を検出することができるものである。
そして、本実施形態においては、検出機構により超電導コイル10のクエンチの前兆を検出した場合に、磁場形成用コイル50に通電するように構成されている。
超電導線材からなる巻き線22は磁場の影響を受けやすく、磁場にさらされると臨界電流が低下する。その結果、本来正常な電流でも巻き線22の臨界電流を上回ってしまい、電圧が発生して発熱する。その後は第1実施形態において駆動回路1に過電流が通電されて限流機能が動作した時と同じで、超電導コイル10の駆動回路1に流れている電流を安全かつ速やかに減衰させることができるものである。
標準的なY系HTS線材は、30Kに冷却されている場合、0.5Tの垂直磁場にさらされるとその臨界電流が半分程度まで低下する。0.3Tの垂直磁場だと7割程度まで低下する。ゆえに、磁場形成用コイル50はこの程度の磁場を形成できる性能のものでよい。超電導コイルでなくてもよい。
なお、狭い領域に0.5Tの磁場を作り出すことは永久磁石でも可能である。それゆえ、本実施形態において用いられている磁場形成用コイル50を永久磁石で置き換え、超電導コイル10のクエンチの前兆を検出した場合に、永久磁石を巻き線22に近づけて磁場にさらすようにしてもよい。
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態においても前記第1実施形態と同様に、正常な通電時には、限流器12に流入する電流は、入口側の超電導線材26から巻き線22に流れ、出口側の超電導線材26を経て超電導コイル10に送られる。
本実施形態のシステムが備えている図示されないクエンチ前兆検出機構が超電導コイル10のクエンチの前兆を検出した場合には、磁場形成用コイル50に通電して、巻き線22を磁場にさらす。巻き線22が磁場にさらされると、巻き線22の臨界電流が低下して、本来正常な電流でも限流器12の限流機能が発動する。その結果、超電導コイル10の駆動回路1に流れている電流を安全かつ速やかに減衰させることができる。
次に、本実施形態について具体的な実施例について説明する。
(超電導コイルの回路構成)
超電導コイル10のインダクタンスは1Hである。電源11と超電導コイルとの間には限流器12が挿入されており、それは超電導コイル11と共にクライオスタットの内部で冷却されている。ただし、第1実施形態とは異なり、その駆動回路には並列の保護抵抗が接続されていない。電源11のエネルギー吸収(散逸)の能力は大きくなく、単体では−10A/secの速度でしか超電導コイル10の消磁(駆動電流の降下)ができない。
また、超電導コイル10の通電限界電流は、第1実施形態と同じく130Aで、これを上回る電流が通電されるとクエンチ・焼損を起こす危険が生じる。正常時はそれよりも十分低い100Aで通電されるようにシステムが設計されている。
(巻枠および巻き線の構成)
巻枠20は、φ3.2cmの円周の間に、長さ5.0cmの直線部を挿入してなる長円形状に形成されている。巻き枠20の外周表面の構成は、面積換算で円周部と直線部が1:1となる。巻枠20の外周には、10周分、合計2.0m程度のY系HTS線材からなる巻き線22が電気絶縁層21となる絶縁シートを挟んで巻回されている。巻き線22は前記第1実施形態のものと同様で、通電電流が120Aを超えると電圧が生じて発熱し、限流機能が動作する。ただし、超電導層32を外側に向けて巻回している点が異なっている。
そして、巻き線22の外周には、厚さ200μmの銅箔が絶縁シートを挟んで巻きつけてある。また、この銅箔には巻枠20上下方向に突出した部位が数箇所設けられており、それが折り曲げられて巻枠20に接合されている。この銅箔の温度が上昇した場合は、この突出した部位を経由して熱が巻枠20へと散逸されていくことになる。
(電磁石の構成)
巻枠20の両直線部の外側には、所定の通電により直線部表面(5cm×3cm)の7割に垂直方向成分が0.3T以上の磁場を形成させられる電磁石51(鉄芯を含む)が配置されている。電磁石51の磁場形成用コイル50は通常の銅線から構成されており、大電流を長く通電させると発熱してしまう。しかし、電磁石51が磁場を形成しなければならないのはせいぜい数秒であるため、その程度の発熱は問題にならない。
電磁石51を駆動するための電源は超電導コイル10の電源11とは別に用意されており、その駆動回路も独立している。
(クエンチ前兆の検出機構)
本実施形態においては、超電導コイル10のクエンチ前兆検出は、その温度の異常な上昇を検出する方式で行う。高温超電導コイルがクエンチを起こす原因として、主に通電中の温度上昇と過電流通電が挙げられるが、第1実施形態の説明で記したように過電流通電によるクエンチは事前に検出できなくてもフェイルセーフ的に保護できるためである。
超電導コイル10の温度は、熱電対やセルノックス(登録商標)温度計によって測定される。正常な状態では、超電導コイル10の通電の有無にかかわらず所定の温度に冷却されているが、冷凍機の停止や不調、異常な熱流入などにより超電導コイル10の温度が上昇することがある。超電導コイル10も超電導線材同様、その温度が上昇すると臨界電流が低下する。正常時の通電電流はその通電限界電流よりも十分低く設定されているため、温度が多少上昇して臨界電流が多少低下しても、超電導コイル10は安全に通電を続けることができる。
しかし、その臨界電流が通電電流よりも低くなるまで温度が上昇すると、コイル内部で発熱が生じてその結果クエンチに至ってしまう。そこで、超電導コイル10の温度が正常時の温度よりは高いがその臨界電流が通電電流よりも低くなるまでには至らない温度に上昇した時点でその異常事態を検出すれば、コイルの温度上昇によるクエンチの前兆が検出できることになる。
本実施形態のクエンチ前兆の検出機構は、超電導コイル10の温度測定の結果が常時入力され、それが事前に設定されていたクエンチ判定温度を上回った時点で、限流器12の限流機能を発動させるために超電導磁石51への通電を開始するものである。
(クエンチの前兆を検出した場合の動作)
クエンチ前兆検出機構により超電導コイル10のクエンチの前兆が検出された場合、限流器12に付属する電磁石51が起動され、巻き線22の所定の範囲に0.3T程度の磁場が形成される。
そして、形成される磁場により、巻枠20の両直線部に位置している巻き線22の7割がその臨界電流を8割以下に低下させる。すると、磁場がないとき120Aの通電で電圧を発生させる巻き線22は、磁場にさらされ臨界電流が低下した部位では正常な100Aの通電でも電圧を発生させ発熱することになる。その領域は巻き枠外周表面の5割を占める直線部のうち7割で3割5分、巻き線22の長さ2.0mのうちの0.7m分であり、この領域の温度が室温程度まで上昇した時の電気抵抗は3.5Ωである。
迂回路用導体線41を考慮した限流器12全体での正味の電気抵抗は0.95Ωとなり、この時点で100Aの電流が流れている限流器12で95Vの電圧降下が生じる。これにより、自己インダクタンスが1Hである超電導コイル10には−95A/sec分の電流減衰が生じ、超電導コイル10は焼損を免れることができる。
ところで、第1実施形態と同様に、超電導コイル10の回路に1Ωの保護抵抗を含む並列経路が存在しているとすると、電源11が印加する逆電圧に応じた電流が保護抵抗側に分流することになる。例えば、電源11がクエンチ前兆検出機構からの指示を受けて回路に−10Vの逆電圧を印加したとすると、超電導コイル10を流れる全電流(〜100A)のうち10A分が保護抵抗側を流れ、保護抵抗にてその分のエネルギーが散逸されることになる。とはいえそれは保護抵抗の並列経路がない回路において電源11が吸収(散逸)するはずだった分であり、結局、保護抵抗の並列経路は電源11の負担を軽減させるだけで超電導コイル10の消磁に対しては影響しない。
電源11の前後にスイッチを設け、クエンチの前兆検出時にそれを開くことで強制的に全電流を保護抵抗側に流すようにすれば、より速やかな消磁を実現させられる。しかしながら、それとともに超電導コイル10の両端に生じる誘導起電力の増大や周辺のコイルへの急激な磁場強度変化を引き起こしてしまう。それらの影響も考慮して、適切な消磁速度を実現するように回路を設計することが望ましい。
以上述べたように、本実施形態においては、クエンチ前兆検出機構が超電導コイル10のクエンチの前兆を検出した場合に、電磁石51に通電して巻き線22を磁場にさらすようにしているので、正常な通電時でも限流器12の限流機能を発動させることができる。これにより、過電流通電以外の原因による超電導コイルのクエンチの前兆が検出された場合でも、その通電電流を安全かつ速やかに減衰させ、超電導コイルのクエンチ・焼損という事態を回避することができる。
なお、前記各実施形態においては迂回路用導体線41を設けるようにしているが、超電導コイル10の自己インダクタンスが小さく、通電時に蓄積される磁気エネルギーが小さい場合には、必ずしも迂回路用導体線41を設けなくてもよい。この場合には、限流器12が動作したのち回路の通電電流が途絶するまで全電流が巻き線22を流れ続け、超電導コイル10に蓄積されていたすべての磁気エネルギーが巻き線22(および電源11)で熱に変換されることになるが、その量は熱浴である巻枠20の温度を過剰に上昇させるには少なく、ゆえに巻き線22も過剰な温度上昇による焼損に至ることはない。その後冷却すれば限流機能が動作する以前の状態に復旧させることができる。
また、本発明は、前記各実施形態のものに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、任意に変更することが可能である。
1 駆動回路
10 超電導コイル
11 電源
12 限流器
20 巻枠
21 電気絶縁層
22 巻き線
25 冷却板
26 超電導線材
27 補強された線材
30 基板
32 超電導層
33 保護層
40 迂回路用支持材
41 迂回路用導体線
42 絶縁シート
43 熱浴
50 磁場形成用コイル
51 電磁石

Claims (12)

  1. 超電導コイルに接続される限流器であって、
    前記超電導コイルより臨界電流の小さい超電導線材を備え、
    前記臨界電流の小さい超電導線材の少なくとも一方の面は、電気絶縁体を介して第一の熱浴を備えていることを特徴とする限流器。
  2. 前記臨界電流の小さい超電導線材の両端に、迂回路用導体線が接続され、
    前記迂回路用導体線は、第二の熱浴を備えていることを特徴とする請求項1に記載の限流器。
  3. 前記第二の熱浴を備える迂回路用導体線は、導体線に複数の金属体が接合され、前記金属体の間に絶縁層を有していることを特徴とする請求項2に記載の限流器。
  4. 前記臨界電流の小さい超電導線材は、前記超電導コイルの幅より細いことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の限流器。
  5. 前記第一の熱浴は柱状または筒状に形成され、前記臨界電流の小さい超電導線材は、前記第一の熱浴の外周もしくは内周に巻回されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の限流器。
  6. 前記第一の熱浴は、前記超電導コイルとの伝熱経路を備えていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の限流器。
  7. 前記臨界電流の小さい超電導線材に、外部磁場を形成する外部磁場形成手段を備えていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の限流器。
  8. 前記超電導コイルのクエンチの前兆を検出する検出機構を備え、前記超電導コイルのクエンチの前兆を検出したときに、前記外部磁場形成手段により前記臨界電流の小さい超電導線材に外部磁場を形成することを特徴とする請求項7に記載の限流器。
  9. 請求項1から請求項8に記載の限流器の前記臨界電流の小さい超電導線材の両端電圧を測定して、前記超電導コイルの駆動回路の過電流を検出することを特徴とする過電流検出機構。
  10. 請求項1から請求項6に記載の前記限流器と、前記超電導コイルとが、直列に接続されていることを特徴とする超電導コイルの駆動回路。
  11. 請求項9に記載の前記過電流検出機構と、前記超電導コイルと、過電流を検出したときに通電電流を減衰させる電源とを、備えていることを特徴とする請求項10に記載の超電導コイルの駆動回路。
  12. 請求項8に記載の前記限流器と、前記超電導コイルと、前記超電導コイルのクエンチの前兆を検出した場合に、通電電流を減衰させる電源と、を備え、
    請求項8に記載の前記限流器と、前記超電導コイルとが、直列に接続されていることを特徴とする超電導コイルの駆動回路。
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