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JP2017026423A - コンプトンカメラ及びその変位検出方法 - Google Patents

コンプトンカメラ及びその変位検出方法 Download PDF

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JP2017026423A JP2015144163A JP2015144163A JP2017026423A JP 2017026423 A JP2017026423 A JP 2017026423A JP 2015144163 A JP2015144163 A JP 2015144163A JP 2015144163 A JP2015144163 A JP 2015144163A JP 2017026423 A JP2017026423 A JP 2017026423A
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Kazunori Ishii
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Abstract

【課題】複数のコンプトンカメラ間の相対的な位置、コンプトンカメラと他の撮像手段の間の相対的な位置にずれがある場合等の問題点を解消する技術を提供する。【解決手段】散乱体と電子ドリフト手段12と電子収集器11を有する電子検出器1、及びガンマ線検出器2を備えたコンプトンカメラの変位検出方法である。散乱体の中に線状又は面状の第1の基準放射線束を入射させ、第1の基準放射線束と散乱体との相互作用により発生した電離電子を、ドリフト手段によって電子収集器に移動させ、電子収集器により検出された電離電子の第1の検出信号の分布に基づいて、電子検出器の所定位置からの変位を検出する。【選択図】図1

Description

本発明は、放射線(典型的にはガンマ線)の入射方向を取得し、例えば、その強度分布を画像として表示するコンプトンカメラ、及びコンプトンカメラの変位検出方法に関する。
ガンマ線検出方法の1つとして、次のアドバンストコンプトン法が知られている。該方法では、コンプトン散乱により生じた散乱ガンマ線のエネルギーと散乱方向ベクトルに加えて、コンプトン散乱により生じた反跳電子のエネルギーとコンプトン散乱点における反跳方向ベクトルを利用して入射ガンマ線の入射方向を算出する。また、この方法を用いて、放射線源が放出するガンマ線の強度分布を計測し、イメージングすることが可能なガンマカメラの一種であるコンプトンカメラが知られている。
非特許文献1には、このようなアドバンストコンプトン法を利用した検出装置であるTPC(Time Projection Chamber)について開示されている。TPC内は、散乱体であるガスで満たされ、電離電子を増幅して検出する平板状の電子収集器(μPIC)が配置される。またTPC内には、電子収集器に略垂直で一様な電界が作用する電子ドリフト領域が形成されている。入射ガンマ線(光子)は、この電子ドリフト領域内で、散乱体であるガス分子中の電子と相互作用してコンプトン散乱を生じさせる。その結果発生した反跳電子は連続的にガス分子を電離しながら飛行し、その飛跡上に、多数の電離電子から成る電子雲を発生させる。この電子雲は、電子ドリフト領域で、電界から受ける力によって反跳電子の飛跡とほぼ同一の形状を維持しながら電子収集器までドリフト(移動)する。電子収集器は電子の2次元検出器であり、電子雲(飛跡)の電子収集器への到達位置(X,Y座標)を検出する。散乱ガンマ線検出器による散乱ガンマ線の検出時点、即ちコンプトン散乱を生じた時点と、電子収集器による電離電子の検出時点との差、及び電離電子のドリフト速度から、電子収集部から飛跡までの距離(Z座標)が検出される。このようにして反跳電子の飛跡の3次元位置を取得することができる。一般的にこのような検出器(TPC)においては、1keV〜2000keV程度の広いエネルギー範囲のガンマ線の検出が可能であることが知られている。
Kabuki S. et al. , "Imaging Study of a phantom and Small animal with a two-head electron-tracking Compton gamma-ray camera", Nuclear Science Symposium Conference Record (NSS/MIC 2010)
コンプトンカメラを用いてガンマ線強度の3次元分布画像を得る場合には、検査対象に対して異なる方向に配置した複数のコンプトンカメラを用いる。そして、各コンプトンカメラから得られるガンマ線の位置情報を合成して3次元分布画像を得る。さらに、一般的にはコンプトンカメラで得られるガンマ線の強度分布画像は、他の撮像手段によって得られた形態画像、例えばX線の透過画像と重ね合わせて表示され、医学診断等に用いられる。
ここで、複数のコンプトンカメラ間の相対的な位置、又はコンプトンカメラと他の撮像手段との間の相対的な位置にずれ(正規の位置からの変位)がある場合、正しい3次元分布画像が得られないことがある。又は、重ね合わせたガンマ線分布画像と形態画像との間にずれが発生することがある。この様なことに起因して、正確な診断の支障となることがある。
本発明による変位検出方法は、散乱体と電子ドリフト手段と電子収集器を有する電子検出器、及びガンマ線検出器を備えたコンプトンカメラの変位検出方法であって、次の工程を有する。前記散乱体の中に線状又は面状の第1の基準放射線束を入射させる工程。前記第1の基準放射線束と前記散乱体との相互作用により発生した電離電子を、前記ドリフト手段によって前記電子収集器に移動させる工程。前記電子収集器により検出された前記電離電子の第1の検出信号の分布に基づいて、前記電子検出器の所定位置からの変位を検出する工程。
また本発明による変位補正方法は、散乱体と電子ドリフト手段と電子収集器を有する電子検出器、及びガンマ線検出器を備えたコンプトンカメラの配置補正方法であって、上記の変位検出方法により得られた変位の情報に応じて、前記電子検出器の配置を補正する。
本発明による変位検出方法によれば、電子検出器の正規の位置からの変位の検出が可能である。また本発明による配置補正方法によれば、電子検出器の配置の補正が可能である。このような変位検出方法及び配置補正方法をコンプトンカメラに適用することにより、複数のコンプトンカメラ間の相対的な位置のずれを補正することができて、例えば、正しい3次元分布画像が得られる。また、コンプトンカメラと他の撮像手段との間の相対的な位置のずれを補正することができて、例えば、ガンマ線分布画像と形態画像とを精度良く重ね合わせることができ、より正確な診断が可能となる。
コンプトンカメラの実施形態1の概略構成を示す図。 電子検出器と散乱ガンマ線検出器との検出原理を説明する図。 実施形態1における電子検出回路とガンマ線検出回路の詳細を示す図。 実施形態1における検出器の変位検出及び配置補正のフローチャート図。 実施形態1におけるコリメータと基準放射線源の配置を説明する図。 実施形態1におけるコリメータの斜視図。 電子検出器及び散乱ガンマ線検出器の適正配置状態を示す斜視図。 電子検出器及び散乱ガンマ線検出器の変位状態を示す斜視図。 変位のない電子検出器をY軸方向から見た図。 変位のない電子検出器における電子塊の検出位置とカウント数の関係を示すヒストグラム。 変位のある電子検出器をY軸方向から見た図。 変位のある電子検出器における電子塊の検出位置とカウント数の関係を示すヒストグラム。 変位のある散乱ガンマ線検出器をY軸方向から見た図。 変位のある散乱ガンマ線検出器における基準放射線の検出位置とカウント数の関係を示すヒストグラム。 コンプトンカメラの実施形態2の概略構成を示す図。 実施形態2における検出器の変位検出のフローチャートを示す図。 実施形態2におけるコリメータと基準放射線源の配置を説明する図。 実施形態2における電子検出回路とガンマ線検出回路との詳細を示す図。 コンプトンカメラの実施形態3の概略構成を示す図。 実施形態3におけるコリメータと基準放射線源の配置を説明する図。 実施形態3におけるコリメータの斜視図。
本発明によれば、放射線の直接検出ではなく、コンプトン散乱により発生した電離電子をドリフトさせて検出することで電子検出器の所定位置からの変位を検出する。この変位の情報に応じて、電子検出器の配置を補正することもできる。
(実施形態1)
本発明による検出器の変位検出方法及び検出器の配置補正方法を適用したコンプトンカメラの実施形態1の概略構成を図1に示す。ここで、1は電子検出器、2は散乱ガンマ線検出器ないしガンマ線検出器、3は調整機構、4は信号処理装置、5は表示装置、6は検査対象物に含まれる放射線源、7は検査対象物の保持部である。
電子検出器1は、散乱体であるガス(例えばアルゴン、キセノンなど)を密閉した容器であるチャンバー10と、チャンバー10に内蔵された平板状の電子収集器11と、電極12と、を含む。電子収集器11と電極12とは平行に対向し、電極12は、チャンバー10の前端側(ガンマ線入射側)に取り付けられる。電圧発生器13により、電極12と電子収集器11とに対してそれぞれ所定の電圧を印加することにより、電極12と電子収集器11との間に電子ドリフト領域が形成される。この電子ドリフト領域内では、電子収集器11に垂直な方向に一様な電界が作用する。電子ドリフト領域内の電界をより均一にするため、電子ドリフト領域の周囲にガイド電極(不図示)を設けてもよい。電子検出器1は、散乱ガンマ線検出器2とともに、電子の3次元位置検出器であるTPCを構成している。
検査対象物は例えば人体(被検体)であり、その場合の放射線源6は投与した放射性薬剤である。放射線源6は、100keV〜2000keV程度のエネルギーのガンマ線を放出する放射性物質から成る。対象物の検査を行う場合、放射線源6から到来してチャンバー10の前端部と電極12を透過し、電子ドリフト領域内に入射した個々の入射ガンマ線(光子)は、ガスの分子内の電子との間の相互作用であるコンプトン散乱を受ける。その結果、反跳電子と散乱ガンマ線を生じる。この反跳電子は電子収集器11によって検出され、また散乱ガンマ線は散乱ガンマ線検出器2によって検出される。
図1に示すように、信号処理装置4は、電子検出回路20、ガンマ線検出回路21、ガンマ線入射方向算出回路22(以下、単に算出回路とも称する)、画像再構成装置23を含む。電子検出回路20は、反跳電子の検出信号から反跳電子のエネルギー、コンプトン散乱点の位置、及び反跳方向ベクトルを算出する。またガンマ線検出回路21は、散乱ガンマ線の検出信号から散乱ガンマ線のエネルギー、及び散乱方向ベクトルを算出する。
算出回路22は、入射ガンマ線(光子)から生じる個々のコンプトン散乱事象について、反跳電子のエネルギー、反跳方向ベクトル、散乱ガンマ線のエネルギー、及び散乱方向ベクトルをもとに、入射ガンマ線の入射方向を算出する。画像再構成装置23は、複数のコンプトン散乱事象について算出した入射ガンマ線の入射方向の情報から強度分布画像のデータを生成する。表示装置5は、この画像データを用いて、放射線の強度分布を濃淡や色の違いによって表示する。
次に、電子検出器1と散乱ガンマ線検出器2との検出原理について図2により説明する。尚、図2においてチャンバー10は省略する。放射線源6から放出され電子ドリフト領域に入射した100keV〜2000keV程度のエネルギーを持つ入射ガンマ線30(光子)は、ガスの分子内の電子との相互作用であるコンプトン散乱を受ける。その結果、入射ガンマ線30よりも小さいエネルギーを持つ反跳電子31と散乱ガンマ線32とが生じる。入射ガンマ線30のエネルギーをE0、反跳電子31のエネルギーをKe、散乱ガンマ線32のエネルギーをEγとすると、E0=Ke+Eγの関係が成立する。
反跳電子31は電子ドリフト領域内を飛行しながら次々とガスの分子と相互作用して散乱を受け、その都度、電離電子を発生させる。尚、図2において、Pcはコンプトン散乱点、Ptは反跳電子の飛跡上の通過点、Paは散乱ガンマ線検出器2による散乱ガンマ線32の吸収点(散乱ガンマ線が光電吸収された位置)である。また、sは入射ガンマ線30の入射方向ベクトル(入射方向の単位ベクトル)、gは散乱ガンマ線32の散乱方向ベクトル(散乱方向の単位ベクトル)、eは反跳電子31の反跳方向ベクトル(コンプトン散乱点Pcにおける反跳方向の単位ベクトル)である。
反跳電子31の飛跡に沿う線上には多数の電離電子からなる電子雲24が生じる。反跳電子31は、電離の度に徐々にエネルギーを失い、全てのエネルギーを失うと停止する。電子ドリフト領域の寸法をX、Y、Z方向とも100mmとすると、反跳電子31のエネルギーKeが30keV以下であればその飛程は100mm以下であり、殆どの反跳電子31は電子ドリフト領域内で停止する。また、反跳電子31が受ける散乱の間隔や散乱方向は不規則であるため、飛跡即ち電子雲24の形状も図示するように不規則に屈折した線状となる。このようにして電子ドリフト領域内に生じた電子雲24は、電界から受ける力によって、大きさ、形状をほぼ保ったまま電子収集器11に向かって垂直にドリフトする。
電子収集器11はMSGC(Micro Strip Gas Chamber)等の平板状の2次元検出器である。これは、図2中に示すY方向に平行でX方向に微小な間隔で配列した多数のカソード電極線Cと、カソード電極線Cに対して90度の角度でY方向に配列した多数のアノード電極線Aと、を検出素子として備える。アノード電極線Aとカソード電極線Cとの間に電位差を付与することにより電極線間に強電界を発生させ、これにより、ドリフトして電子収集器11に到達した電子をなだれ増幅する。その結果生成された多数の電離電子と陽イオンを、それぞれ、アノード電極線Aとカソード電極線Cとによって収集する。電子収集器11で検出可能な電子の最小エネルギーは、回路のノイズ等で制限され、反跳電子のエネルギーKe=5keV程度に相当する。また、検出可能な電子の最大エネルギーは、電子ドリフト領域の大きさに対する反跳電子31の飛程で制限され、一般的にはKe=30keV程度に相当する。
散乱ガンマ線検出器2は、電子検出器1の後方に配置されており、X方向及びY方向にシンチレータ素子を2次元配列したシンチレータ25と光電検出器26とで構成される。光電検出器26として、例えば、光電子増倍管やアバランシェフォトダイオードが使用できる。散乱ガンマ線32は、シンチレータ25で光電吸収されて可視光に変換され、さらに光電検出器26によって該可視光が電気信号に変換される。
次に図1に示した信号処理装置4の動作の詳細について説明する。電子収集器11による反跳電子の検出信号に対しては、電子検出回路20による処理が行われ、散乱ガンマ線検出器による散乱ガンマ線の検出信号に対しては、ガンマ線検出回路21による処理が行われる。図3に電子検出回路20とガンマ線検出回路21との詳細を示す。1つの電子雲24の各部分は電子収集器11の複数のアノード電極線A及びカソード電極線Cで検出され、その電荷(電子数)に応じた電気信号を発生する。これらの電気信号は、電子雲24の前端の到達から後端の到達までの間継続する。アノード電極線A及びカソード電極線Cからの電気信号は、それぞれ増幅部40a、40bによって増幅され、データ取り込み部41に出力される。
一方、散乱ガンマ線の検出信号は、ガンマ線検出回路21の増幅部47によって増幅される。増幅部47は、ガンマ線の検出に対応した信号をトリガ信号として電子検出回路20のデータ取り込み部41に出力する。データ取り込み部41は、このトリガ信号を開始点として、所定時間分の電気信号をすべて取り込む。ここで所定時間は電子収集器11と電極12の間隔をD、電子雲のドリフト速度をVとした時、D/V以上となるように設定されるものとする。これにより、1つの電子雲24に対応した各電極線からの電気信号がすべて取り込まれる。
データ取り込み部41に取り込まれた電気信号から、電子エネルギー算出部46によって反跳電子のエネルギーKeが算出される。さらにデータ取り込み部41に取り込まれた電気信号は、トリガ信号を起点とする時間情報とセットにして、飛跡座標計算部42に出力される。計算部42は、収集器11で検出の電子雲の各部について、検出したアノード電極線Aとカソード電極線Cとの位置(X,Y座標)と、トリガ信号基準のドリフト時間ΔTとドリフト速度Vとの積による収集器11に垂直な方向の位置(Z座標)と、を計算する。そして、これらを元に電子雲24の各部の3次元位置データを生成する。
次にコンプトン散乱点算出部43は、抽出された個々の電子雲の3次元位置データよりコンプトン散乱点Pcの位置(X,Y,Z座標)を算出し、これを反跳方向ベクトル算出部45、ガンマ線散乱方向ベクトル算出部51、及び画像再構成装置23に出力する。図2に示すように入射ガンマ線30は電極12の側から入射するため、電子ドリフト領域内でコンプトン散乱により生じた反跳電子31は電子収集器11の方向に飛行する。従って、電子雲24の両端の位置データのうち電子収集器11から遠い方をコンプトン散乱点Pcとする。また通過点算出部44は、電子雲24の3次元位置データよりコンプトン散乱点Pcから所定の距離だけ離れた飛跡上にある通過点Ptの位置(X,Y,Z座標)を算出し、これを電子反跳方向ベクトル算出部45に出力する。所定の距離は、反跳電子31の飛程よりも十分に小さければよく、例えば2mmである。反跳方向ベクトル算出部45は、これらのデータをもとに、個々の電子雲24についてコンプトン散乱点Pcから通過点Ptに向かう方向の単位ベクトルである反跳方向ベクトルeを算出し、これをガンマ線入射方向算出回路22に出力する。
一方、ガンマ線検出回路21の増幅部47によって増幅された個々の散乱ガンマ線の検出信号は、データ取り込み部48に取り込まれた後、ガンマ線吸収点算出部49とガンマ線エネルギー算出部50に出力される。ガンマ線吸収点算出部49は散乱ガンマ線が到達し検出された吸収点Paの位置を算出し、データをガンマ線散乱方向ベクトル算出部51に出力する。ガンマ線エネルギー算出部50は、検出した散乱ガンマ線のエネルギーEγを算出し、データをガンマ線入射方向算出回路22に出力する。ガンマ線散乱方向ベクトル算出部51は、コンプトン散乱点算出部43からのコンプトン散乱点Pcのデータと散乱ガンマ線の吸収点Paのデータより、散乱ガンマ線の散乱方向ベクトルg(散乱方向の単位ベクトル)を算出する。そして、データをガンマ線入射方向算出回路22に出力する。
図1に示すガンマ線入射方向算出回路22は、個々のコンプトン散乱事象についての反跳電子のエネルギーKe、散乱ガンマ線のエネルギーEγ、電子の反跳方向ベクトルe、ガンマ線の散乱方向ベクトルgを元に、入射方向ベクトルsを算出する。すなわち、Ke、Eγ、e、gを元に、以下の式(1)、(2)、(3)により入射ガンマ線の入射方向ベクトルs(入射方向の単位ベクトル)を算出する。尚、式においてmは電子の静止質量、cは光速である。
Figure 2017026423
尚、ここまでの処理では、後述する電子検出器座標系及び散乱ガンマ線検出器座標系上での値を用いる。図1の画像再構成装置23は、複数のコンプトン散乱事象について、まず入射ガンマ線の入射方向ベクトルsとコンプトン散乱点Pcとのデータを、後述する装置座標系上の値に変換する。さらに、変換した入射ガンマ線の入射方向ベクトルsとコンプトン散乱点Pcとのデータから放射線源6の放射線強度分布画像のデータを生成する。表示装置5は、この画像データを用いて放射線の強度分布を濃淡や色の違いによって表示する。
次に、検出器の配置補正手段である調整機構3について説明する。図1に示すように、本実施形態の調整機構3は全体駆動装置60と散乱ガンマ線検出器駆動装置61とで構成される。全体駆動装置60は、面内駆動機構63と第1の回動機構64とを含む。面内駆動機構63は、電子検出器1と散乱ガンマ線検出器2を一体的に支持する支持体62を図1中に示すX方向及びY方向に駆動する。第1の回動機構64は、面内駆動機構63に搭載され、支持体62を、図1中に示すα方向(X軸回りの回転方向)、β方向(Y軸回りの回転方向)に回動させる。尚、第1の回動機構64の回動中心は電子検出器座標系の検出器原点Oeに設定されている。また、本実施形態において、散乱ガンマ線検出器2は、予め電子検出器1に対して平行となるように取り付けられて一体化されているものとする。
次に、本実施形態における変位検出方法及び配置補正方法を上記のコンプトンカメラにおける電子検出器1及び散乱ガンマ線検出器2に適用する方法について説明する。図4に変位検出及び配置補正のフローチャートを示す。図4において、ステップ1〜4は電子検出器1の変位の検出と配置の補正に対応し、ステップ5〜8は散乱ガンマ線検出器2の変位の検出と配置の補正に対応する。
[ステップ1:コリメータ及び基準放射線源の設置]
電子検出器1の変位を検出するため、図5に示すように保持部7上に第1の基準放射線源66aとコリメータ65とを設置する。コリメータ65は、放射線遮蔽能力の高い鉛等の材料から成り、第1の基準放射線源66aを収容する内部空間と内部空間からコリメータ外まで貫通する出射孔67が形成されている。第1の基準放射線源66aが放出する第1の基準放射線は、電子ドリフト領域で光電吸収される割合が十分に高い必要がある。そのため、第1の基準放射線源66aは、エネルギーが5keV〜30keV程度の第1の基準放射線(ガンマ線やX線)を発生する放射線源とする。本実施形態においては、例えば、第1の基準放射線源66aとしてエネルギーが5.9keVのX線を放出する放射性同位元素Fe−55を使用するものとする。
コリメータ65の斜視図を図6に示す。出射孔67は本実施形態では(a)に示すような細い円形ピンホールとするが、これに限られるものではなく、(b)に示すような十字形の貫通孔(スリット)であってもよく、いずれも十分な深さを有する。ここで、保持部7には、位置基準としての装置座標系、即ち装置原点O及び装置基準軸Xo、Yo、Zoが設定されている。この装置座標系は、コンプトンカメラの電子検出回路20とガンマ線検出回路21とによって得られた入射ガンマ線に関する情報からガンマ線の分布画像を求める際に用いられる。また複数のコンプトンカメラを検査対象物の周囲に配置する場合には、すべてのコンプトンカメラに共通する基準座標となる。コリメータ65は、出射孔67が装置座標系において所定の位置になるように設置される。本実施形態においては、例えば、出射孔67であるピンホールの中心線が装置基準軸Zoに一致し、出射孔67の出射端が装置原点Oとなるように設置する。
第1の基準放射線源66aが放出する第1の基準放射線の大半はコリメータ65中で吸収され、一部のみが図6(a)、(b)に示すように出射孔67から細い線状又は薄い面状の第1の基準放射線束68aとして出射される。この第1の基準放射線束68aは装置基準軸Zoに沿って直進してコンプトンカメラに入射する。
一方、電子検出器1には電子検出器座標系、即ち検出器原点Oeと検出器基準軸Xe、Ye、Zeが定義される。本実施形態においては、例えば、検出器原点Oeは電子検出器1の幾何学的な中心とし、検出器基準軸Zeは電子収集器11に垂直な中心軸、検出器基準軸Xe、Yeは検出器基準軸Zeに垂直な2軸とする。また散乱ガンマ線検出器2には、散乱ガンマ線検出器座標系、即ち検出器原点Ogと検出器基準軸Xg、Yg、Zgが定義される。本実施形態においては、例えば、検出器原点Ogはシンチレータ25の表面の幾何学的な中心とし、検出器基準軸Zgはシンチレータ25の表面に垂直な中心軸、検出器基準軸Xg、Ygは検出器基準軸Zgに垂直な2軸とする。
これらの電子検出器座標系及び散乱ガンマ線検出器座標系は、電子検出器1及び散乱ガンマ線検出器2で検出した情報から電子検出回路20及びガンマ線検出回路21によって入射ガンマ線に関する位置情報を求める際に用いられる。電子検出器座標系及び散乱ガンマ線検出器座標系が装置座標系と所定の位置関係にあるように電子検出器1及び散乱ガンマ線検出器2が位置している状態が、変位(位置ずれ)のない適正配置である。所定の位置関係とは、例えば、X,Y,Zの各方位が一致し、原点を所定位置にオフセットさせた位置関係である。電子検出回路20とガンマ線検出回路21によって得られた入射ガンマ線に関する情報は、ガンマ線の分布画像を求める際に、装置座標系への座標変換が行われる。
ここで、電子検出器1及び散乱ガンマ線検出器2の変位は以下(1)〜(6)の成分を持つ。
(1)装置基準軸Xo方向の平行変位
(2)装置基準軸Yo方向の平行変位
(3)装置基準軸Zo方向の平行変位
(4)装置基準軸Xo回り(α方向)の角度変位
(5)装置基準軸Yo回り(β方向)の角度変位
(6)装置基準軸Zo回り(γ方向)の角度変位
このうち本実施形態において検出の対象とするのは、(3)と(6)を除く4つの成分である。(3)と(6)については、別の所で言及する。
[ステップ2:電子検出器の変位検出]
最初に、検出される変位に対する基準値(リファレンス)について説明する。電子検出器1の電子検出器座標系及び散乱ガンマ線検出器2の散乱ガンマ線検出器座標系の装置座標系に対する相対位置が変位していない(配置のずれがない)適正配置状態を仮定する。図7はこのような状態を示す斜視図である。尚、図においてチャンバー10は省略する。電子検出器座標系の検出器基準軸Ze及び散乱ガンマ線検出器座標系の検出器基準軸Zgは、ともに装置座標系の装置基準軸Zoに重なる。また、電子検出器座標系の検出器原点Oe及び散乱ガンマ線検出器座標系の検出器原点Ogは、それぞれ、装置座標系の装置原点OからZ方向に所定距離隔たった位置にある。
このような適正配置状態においては、図7に示すように第1の基準放射線束68aは装置基準軸Zoに沿って電子ドリフト領域に入射する。第1の基準放射線はエネルギーが小さいため、ガスの分子内の電子と相互作用して光電吸収される確率が非常に高い。光電吸収の結果、電離電子を発生するが、そのエネルギーは小さいためガス中での飛程は非常に短かい。その結果、この電離電子は光電吸収位置の周囲のみで次々にガスの分子と相互作用して散乱を受け、新たな電離電子を発生させる。このようにして多数の電離電子の集団である電子塊69が発生する。電子塊69の大きさは、電子検出器1の分解能と同程度、すなわち検出器から見るとほぼ点である。この電子塊69は、電子ドリフト領域内で電界から受ける力によって、大きさをほぼ保ったまま電子収集器11に向かって垂直にドリフトする。そして電子収集器11に到達すると、到達位置にあるアノード電極線Aとカソード電極線Cにより増幅されて電離電子と陽イオンが検出される。電子検出器1の平行変位と角度変位がともに無いので、電子塊69の発生位置はすべて第1の基準放射線束68aに重なる装置基準軸Zo上となる。
例えば図7に示すように電子塊69の発生位置である点G1(電子ドリフト領域の上部)、点G2(電子ドリフト領域の中心)、及び点G3(電子ドリフト領域の下部)はすべて装置基準軸Zo上であり、かつ検出器基準軸Ze上でもある。従って、これらの電子塊69はすべて電子収集器11に垂直な検出器基準軸Zeに沿ってドリフトする。そして電子収集器11に到達すると、検出器基準軸Ze上にある特定のアノード電極線Aとカソード電極線Cにより増幅され、電離電子と陽イオンが検出される。
図9(a)は平行変位及び角度変位のない電子検出器1をY軸方向から見た図である。また、(b)は電子収集器11の電子塊69の到達位置付近を拡大して示す。ここで、C−3〜CはX軸方向に配列したカソード電極線である。検出器基準軸Ze上(X座標=0の位置)にはカソード電極線Cが位置しており、電子塊69は、その発生位置に関わらず全てカソード電極線Cの近傍に到達し検出される。実際には、電子ドリフト領域における電界の不均一性などの理由で、電子塊69の到達位置はカソード電極線の幅の2〜3倍程度のゆらぎを持つ。この状態で所定時間、電子塊69の計測(各カソード電極線Cで検出した信号のカウント)を行う。検出した位置(カソード電極線C)とカウント数の関係(ヒストグラム)の一例を図10に示す。カソード電極線Cの配列ピッチをpとすると、カソード電極線C−3〜CのX座標位置は−3p〜3pとなる。検出される信号は、検出器基準軸Ze上のカソード電極線Cを中心とした2〜3本に集中し、狭い幅と高いピークを有する対称分布を成すことになる。尚、このような測定は、コンプトンカメラの組立工程において予め実施しておき、この分布の半値幅D0の値を基準値(リファレンス)として記憶装置に保持しておくものとする。図示した例においてはD0=2pである。
次に電子検出器1の変位検出方法について説明する。図8は、電子検出器1の電子検出器座標系及び散乱ガンマ線検出器2の散乱ガンマ線検出器座標系の装置座標系に対する相対位置が変位している(配置のずれがある)変位状態を示す斜視図である。尚、図においてチャンバー10は省略する。図示したように電子検出器1の平行変位がある状態では、第1の基準放射線束68aが検出器基準軸Zeから隔たっているので、電子塊69の発生位置である点G1、G2、G3は検出器基準軸Ze上には無い。これらの電子塊69はそれぞれの発生位置から電子収集器11に対して垂直に、即ち検出器基準軸Zeに平行にドリフトする。その結果電子収集器11の検出器基準軸Zeから離れた位置に到達し、到達位置にあるアノード電極線Aとカソード電極線Cにより増幅されて電離電子と陽イオンが検出される。
さらに電子検出器1の角度変位がある場合には第1の基準放射線束68aは検出器基準軸Zeに平行ではない。電子収集器11からの距離が異なる点G1、G2、G3で発生した電子塊69は、電子収集器11に垂直に、即ち検出器基準軸Zeに平行にドリフトすると、それぞれ、電子収集器11の異なる位置に到達する。そして到達位置にある複数のアノード電極線Aとカソード電極線Cにより増幅されて電離電子と陽イオンが検出される。図11(a)は平行変位及び角度変位のある電子検出器1をY軸方向から見た図である。また、(b)は電子収集器11の電子塊69の到達位置付近を拡大して示す。ここで、C−8〜CはX軸方向に配列したカソード電極線である。検出器基準軸Ze上にはカソード電極線Cが位置しているが、電子塊69は、その発生位置の電子収集器11からの距離によって、それぞれ、異なるカソード電極線Cに到達して検出される。即ち、電子収集器11から最も遠い点G1で発生した電子塊69はカソード電極線C−2に到達し、中間点G2で発生した電子塊69はカソード電極線C−4に到達し、最も近い点G2で発生した電子塊69はカソード電極線C−6に到達する。
ここで、電子ドリフト領域内に入射した第1の基準放射線がガスの分子内の電子と相互作用して光電吸収される割合は、第1の基準放射線束68aが入射する前端で大きく、後端では小さくなる。例えば、電極12と電子収集器11の間隔Lを100mmとしたとき、エネルギーが5.9keVのX線が光電吸収される割合は電極12の近傍を1とすると、電子ドリフト領域の中間では約0.15、電子収集器11近傍では約0.02である。このように光電吸収の割合が位置によって異なる結果、後述する様に、電子収集器11でカウント数の分布が非対称になり、これを利用して角度変位の大きさ(絶対値)のみでなく、どの方向に傾いているかも分かる。
この状態で所定時間電子塊69の計測(各カソード電極線で検出した信号のカウント)を行う。検出した位置(カソード電極線C)とカウント数の関係(ヒストグラム)の一例を図12に示す。カソード電極線C−8〜CのX座標位置は−8p〜2pとなる。検出される信号は、検出器基準軸Ze上のカソード電極線Cから隔たったC−4中心とした6〜7本に分散し、広い幅と偏ったピークを有する非対称形の分布を成す。ここで、この分布の中心からカソード電極線C(X座標=0)までの距離D1(分布の位置)が、電子検出器1の検出器基準軸Zeの装置基準軸Zoに対するX方向の平行変位に相当する。即ち、電子検出器1の装置基準軸Zoに対するX軸方向の平行変位をΔXeとするとΔXe=D1となる。図示した例においては分布の中心のX座標は−4pであるからΔXe=4pとなる。
さらに分布の幅D2、即ちカウント数が小さい分布の端からカウント数が大きい分布の端までの距離が、電子検出器1の検出器基準軸Zeの装置基準軸Zoに対するβ方向(Y軸回り)の角度変位に対応する。その値をΔθβとするとΔθβ=(D2−D0)/Lとなる。D0は、前述した変位のない適正配置状態における分布の幅(広がり)であり、記憶装置に保持しておいた基準値を使用する。図示した例においては、カウント数が少ない分布の端のX座標は−7p、カウント数が多い分布の端のX座標は−pであり、Δθβ=4p/Lとなる。前述したように、分布の両端のカウント数の大小を区別することにより、角度変位の大きさのみでなく方向も検出できる。
同様にして、アノード電極線Aによる検出信号から、電子検出器1の装置基準軸Zoに対するY軸方向の平行変位ΔYeとα方向(X軸回り)の角度変位Δθαを検出することができる。上記の電子塊の計測、及び平行変位や角度変位の大きさと方向の検出は、コンプトンカメラ内或いはその外部に設けた検出手段により実行される。
[ステップ3:許容可/不可判断]
検出した平行変位ΔXe、ΔYeと角度変位Δθβ、Δθαを予め設定した上限値と比較し、許容範囲内か否かの判断を行う。変位が許容範囲内(上限値よりも小)であれば補正不要として、図4のステップ5の散乱ガンマ線検出器の変位検出に移行する。変位が許容範囲外(上限値以上)であれば、ステップ4の電子検出器の配置の補正を行う。
[ステップ4:電子検出器の配置の補正]
次に電子検出器1の配置を補正する。本実施形態においては電子検出器1の配置の補正には調整機構3を用いる。図4の上記のステップ2で検出した電子検出器1の平行変位ΔXe、ΔYeと角度変位Δθβ、Δθαを修正するように調整機構3を駆動する。手順は以下(1)〜(4)の通りである。(1)、(2)、(3)、(4)の順である必要はなく、順番は全く任意である。
(1)第1の回動機構64により支持体62をβ方向に−Δθβ駆動する
(2)第1の回動機構64により支持体62をα方向に−Δθα駆動する
(3)面内駆動機構63により支持体をX方向に−ΔXe駆動する
(4)面内駆動機構63により支持体をY方向に−ΔYe駆動する
この補正の結果を確認するため、再度、図4のステップ2の電子検出器の変位検出とステップ3の許容可/不可判断を繰り返す。ステップ3において変位が許容範囲内(上限値よりも小)であれば、電子検出器1の配置の補正は終了して散乱ガンマ線の変位の検出と配置の補正(図4のステップ5〜8)に移行する。図4のフローチャートの手順について、例えば、1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介して装置に供給し、その装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理で実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。このことは、後述のフローチャートの手順についても、同様である。
[ステップ5:基準放射線源の設置]
散乱ガンマ線検出器2の変位を検出するため、図5に示すように保持部7上に第2の基準放射線源66bとコリメータ65を設置する。コリメータ65は、ステップ1で電子検出器1の変位の検出に使用したものを兼用することもできるが、厚さを増して放射線遮蔽能力をより高めた専用のものを使用してもよい。第2の基準放射線源66bが放出する第2の基準放射線は、電子検出器1を透過して散乱ガンマ線検出器2に到達しなければならない。そのため第2の基準放射線源66bは、少なくとも第1の基準放射線よりも大きい100keV〜1000keV程度のエネルギーの第2の基準放射線(ガンマ線)を発生する放射線源とする。本実施形態においては、例えば、エネルギーが662keVのガンマ線を放出する放射性同位元素Cs−137を使用するものとする。図6に示したように第2の基準放射線源66bが放出する第2の基準放射線の一部のみが出射孔67から細い線状又は薄い面状の第2の基準放射線束68bとして出射される。この第2の基準放射線束68bは装置基準軸Zoに沿って直進してコンプトンカメラの電子検出器1を透過し、散乱ガンマ線検出器2に入射する。
[ステップ6:散乱ガンマ線検出器の変位検出]
前述したように、散乱ガンマ線検出器2は予め電子検出器1に対して平行となるように取り付けられている。従って、図4のステップ3で電子検出器1の変位が許容範囲内と判断された段階で、散乱ガンマ線検出器2の角度変位も許容範囲内である。よって、本実施形態においては散乱ガンマ線検出器2の平行変位の検出及び配置の補正のみを行うものとする。
散乱ガンマ線検出器2の変位検出方法について説明する。図13は、平行変位がある散乱ガンマ線検出器2をY軸方向から見た図である。ここで、S−5〜SはX方向に配列したシンチレータ素子である。検出器基準軸Zg上にはシンチレータ素子Sが位置しているが、第2の基準放射線束68bは検出器基準軸Zgから隔たっているので、第2の基準放射線の検出位置は検出器基準軸Zg上には無い。
この状態で、所定時間、第2の基準放射線の計測(各シンチレータ素子で検出した信号のカウント)を行う。検出した位置(シンチレータ素子S)とカウント数の関係(ヒストグラム)の一例を図14に示す。シンチレータ素子の配列ピッチをqとすると、シンチレータ素子S−5〜SのX座標位置は−5q〜5qとなる。検出される信号は、検出器基準軸Zg上にあるシンチレータ素子Sから隔たったシンチレータ素子S−2に集中する。ここで、信号が集中するシンチレータ素子S−2(X座標=−2q)からシンチレータ素子S(X座標=0)までの距離D3が、散乱ガンマ線検出器2の検出器基準軸Zgの装置基準軸Zoに対するX方向の平行変位である。即ち、散乱ガンマ線検出器2の装置基準軸Zoに対するX軸方向の平行変位をΔXgとするとΔXg=D3であり、図示した例においてはΔXg=2qとなる。また同様にして、装置基準軸Zoに対するY方向の平行変位ΔYgを検出することができる。上記の第2の基準放射線の計測、及び平行変位の大きさと方向の検出も、コンプトンカメラ内或いはその外部に設けた検出手段により実行される。
[ステップ7:許容可/不可判断]
検出した平行変位ΔXgとΔYgを予め設定した上限値と比較し、許容範囲内か否かの判断を行う。変位が許容範囲内(上限値よりも小)であれば、補正不要として作業を終了する。また、変位が許容範囲外(上限値以上)であれば、ステップ8の散乱ガンマ線検出器の配置の補正を行う。
[ステップ8:散乱ガンマ線検出器の配置の補正]
次に、検出した変位に応じて散乱ガンマ線検出器2の配置を補正する方法について説明する。本実施形態においては、散乱ガンマ線検出器2の配置の補正には調整機構3を用いる。図4の上記のステップ6で検出した散乱ガンマ線検出器2の平行変位ΔXg、ΔYgを修正するように調整機構3を駆動する。手順は以下(1)、(2)の通りである。順序は問わない。
(1)散乱ガンマ線検出器駆動装置61により、散乱ガンマ線検出器2をX方向に−ΔXg駆動する
(2)散乱ガンマ線検出器駆動装置61により、散乱ガンマ線検出器2をY方向に−ΔYg駆動する
この補正の結果を確認するため、再度、図4のステップ6の散乱ガンマ線検出器の変位検出とステップ7の許容可/不可判断を繰り返す。ステップ7において変位が許容範囲内(上限値よりも小)であれば、散乱ガンマ線検出器2の配置の補正は終了する。本実施形態では、散乱ガンマ線検出器の変位検出と変位補正を先に行って、その後に、電子検出器の変位検出と変位補正を行うことはできない。つまり、ステップ4で第1の回動機構64を駆動する際に散乱ガンマ線検出器2の水平方向位置も変化するので、散乱ガンマ線検出器の変位検出と位置調整(ステップ8)は必ずその後(電子検出器の変位検出と変位補正の後)でなければならない。
(実施形態2)
本発明による検出器の変位検出方法及び検出器の配置補正方法を適用したコンプトンカメラの実施形態2の概略構成を図15に示す。図1に示した実施形態1では検出器の配置の補正には調整機構3を使用した。これに対して、実施形態2は、電子検出器1及び散乱ガンマ線検出器2の配置の補正には調整機構は使用せず、検出器から得られる位置情報を補正する補正部を含む信号処理装置4を使用する点が実施形態1とは異なる。その他のコンプトンカメラの構成と動作は、実施形態1と同一であるので説明は省略する。また、検出器の変位の検出に使用するコリメータ65、第1の基準放射線源66a、第2の基準放射線源66b、装置座標系、電子検出器座標系、散乱ガンマ線検出器座標系もすべて実施形態1と同一であるので説明は省略する。
本実施形態における電子検出器1及び散乱ガンマ線検出器2の配置の補正方法について説明する。図18に、本実施形態の電子検出回路20とガンマ線検出回路21の詳細を示す。ここで、71は記憶装置、72a、72b、72cは位置補正部である。その他の構成及び動作はすべて図3に示した実施形態1のものと同一であるので説明は省略する。ここで、電子検出器1及び散乱ガンマ線検出器2は、装置座標系に対して平行変位及び角度変位を有するものとする。これらの変位は、予め後述する方法によって検出され、その情報はすべて記憶装置71に保存されている。そして本実施形態においては検出器の配置の補正は、対象である放射線源6のガンマ線の分布画像を求める際の信号処理の中で以下のように行われる。
前述したように1つの電子雲の各部分に対応した電気信号は増幅部40a、40bによって増幅され、データ取り込み部41に出力される。データ取り込み部41に取り込まれた電気信号から、電子エネルギー算出部46により個々の反跳電子のエネルギーKeが算出される。またデータ取り込み部41に取り込まれた信号より、飛跡座標計算部42によって電子雲各部の3次元位置データが生成される。コンプトン散乱点算出部43は、このデータからコンプトン散乱点Pcの位置を算出する。ここで算出されるのは変位した電子検出器座標系上での座標値である。そこで位置補正部72aはこの座標値に対して、記憶装置71に保存された電子検出器1の平行変位と角度変位の情報を参照して補正を加える。その結果、電子検出器1に変位がないものと仮定した時の正しいコンプトン散乱点Pcの座標値が得られる。
同様に、通過点算出部44により通過点Ptの位置が算出される。ここで算出されるのも変位した電子検出器座標系上での座標値である。そこで位置補正部72bはこの座標値に対して、記憶装置71に保存された電子検出器1の平行変位と角度変位の情報を参照して補正を加える。その結果、電子検出器1に変位がないものと仮定した時の正しい通過点Ptの座標値が得られる。電子反跳方向ベクトル算出部45は、これらの補正されたデータを基に、個々の電子雲についてコンプトン散乱点Pcから通過点Ptに向かう方向の単位ベクトルである反跳方向ベクトルeを算出し、これを図1のガンマ線入射方向算出回路22に出力する。
一方、ガンマ線検出回路21の増幅部47によって増幅された個々の散乱ガンマ線の検出信号は、データ取り込み部48に取り込まれた後、ガンマ線吸収点算出部49とガンマ線エネルギー算出部50に出力される。ガンマ線エネルギー算出部50は、検出した散乱ガンマ線のエネルギーEγを算出し、データをガンマ線入射方向算出回路22に出力する。また、ガンマ線吸収点算出部49は、散乱ガンマ線が到達し検出された吸収点Paの位置を算出する。ここで算出されるのは変位した散乱ガンマ線検出器座標系上での座標値である。そこで位置補正部72cはこの座標値に対して、記憶装置71に保存された散乱ガンマ線検出器2の平行変位と角度変位(実施形態1の構成では、電子検出器1の角度変位と同等である)の情報を参照して補正を加える。その結果、散乱ガンマ線検出器2に変位がないものと仮定した時の正しい吸収点Paの座標値が得られる。
ガンマ線散乱方向ベクトル算出部51は、補正されたコンプトン散乱点Pcのデータと補正された散乱ガンマ線の吸収点Paのデータより、散乱ガンマ線の散乱方向ベクトルg(散乱方向の単位ベクトル)を算出する。そして、データをガンマ線入射方向算出回路22に出力する。
ガンマ線入射方向算出回路22は、反跳電子のエネルギーKe、散乱ガンマ線のエネルギーEγ、補正された電子の反跳方向ベクトルe、補正されたガンマ線の散乱方向ベクトルgをもとに、入射ガンマ線の入射方向ベクトルsを算出する。即ち、前述の式(1)、(2)、(3)を用いて入射ガンマ線の入射方向ベクトルs(入射方向の単位ベクトル)を算出する。画像再構成装置23は、各入射ガンマ線の入射方向ベクトルsとコンプトン散乱点Pcの算出値を装置座標系上の値に変換する。さらにこれらのデータから放射線源6の放射線強度分布画像のデータを生成し、この画像データを用いて表示装置5は放射線の強度分布を濃淡や色の違いによって表示する。
次に本実施形態における検出器の変位検出方法について説明する。図16に変位検出のフローチャートを示す。図16において、ステップ1〜3は電子検出器1の変位の検出に対応し、ステップ4〜6は散乱ガンマ線検出器2の変位の検出に対応する。
[ステップ1:コリメータ及び基準放射線源の設置]
電子検出器1の変位を検出するため、図17に示すように保持部7上に第1の基準放射線源66aとコリメータ65を設置する。このステップは実施形態1のステップ1と同一であるので、詳細な説明は省略する。
[ステップ2:電子検出器の変位検出]
電子ドリフト領域で発生した電子塊69を所定時間、計測(各カソード電極線C及びアノード電極線Aで検出した信号をカウント)する。その結果より電子検出器1の装置基準軸Zoに対する平行変位ΔXe、ΔYe及び角度変位Δθα、Δθβを検出する。このステップは実施形態1のステップ2と同一であるので、詳細な説明は省略する。
[ステップ3:変位量を記憶装置に保存]
ステップ2で検出した電子検出器1の平行変位ΔXe、ΔYe及び角度変位Δθα、Δθβの情報を記憶装置71に保存し、電子検出器1の変位検出を終了する。
[ステップ4:基準放射線源の設置]
散乱ガンマ線検出器2の変位を検出するため、図17に示すように保持部7上に第2の基準放射線源66bとコリメータ65を設置する。このステップは実施形態1のステップ5と同一であるので、詳細な説明は省略する。
[ステップ5:散乱ガンマ線検出器の変位検出]
第2の基準放射線を所定時間、計測(各シンチレータ素子Sで検出した信号をカウント)する。その結果より散乱ガンマ線検出器2の装置基準軸Zoに対する平行変位ΔXg、ΔYgを検出する。このステップは実施形態1のステップ6と同一であるので、詳細な説明は省略する。
[ステップ6:変位量を記憶装置に保存]
ステップ5で検出した散乱ガンマ線検出器2の平行変位ΔXg、ΔYgの情報を記憶装置71に保存し、散乱ガンマ線検出器2の変位検出を終了する。
尚、以上説明した実施形態1及び実施形態2において、コリメータ65の出射孔67は図6(a)に示す細い円形のピンホールとしたが、(b)に示す十字形の貫通孔(スリット)であっても同様の方法で変位の検出が可能である。なぜなら、放射線の束の断面が十字形などであっても、含まれる放射線1本ずつは直線なので、それが発生する電子雲や散乱ガンマ線に、細い円形のピンホールの場合と相違はないからである。後者の場合、十字の方向はX方向とY方向に向けておくものとする。このようにそれぞれX方向及びY方向の幅Wが狭い2つスリットを組み合わせれば、単一の細いピンホールよりも出射孔67全体の面積を増大できるので、基準放射線源の放射能を大きくすることなく基準放射線の強度(光子数)を増大できる。その結果、変位検出における計測時間を短縮できるなど、効率を改善できる。図6(b)においては基準放射線束は平行線束として描いたが、少なくとも幅W方向の放射角が十分に制限されていればよい。
(実施形態3)
本発明による検出器の変位検出方法及び検出器の配置補正方法を適用したコンプトンカメラの実施形態3の概略構成を図19に示す。本実施形態は実施形態1と同様に電子検出器1及び散乱ガンマ線検出器2の配置の補正に調整機構3を用いるが、その構成は異なる。
調整機構3は、全体駆動装置60と散乱ガンマ線検出器駆動装置61で構成される。全体駆動装置60は、面内駆動機構63と第2の回動機構70と第1の回動機構64から構成される。面内駆動機構63は、電子検出器1と散乱ガンマ線検出器2を一体的に支持する支持体62を図19中に示すX方向及びY方向に駆動する。第2の回動機構70は、面内駆動機構63に搭載され、支持体62を図19中に示すγ方向(Z軸回りの回転方向)に回動させる。第1の回動機構64は、第2の回動機構70に搭載され、支持体62を図19中に示すα方向(X軸回りの回転方向)とβ方向(Y軸回りの回転方向)に回動させる。
本実施形態において、調整機構3を除くコンプトンカメラの構成と動作については実施形態1と同一であるので、説明は省略する。また本実施形態においては、後述するように検出器の変位の検出に使用するコリメータ65も実施形態1と異なる。その他の装置座標系、電子検出器座標系、散乱ガンマ線検出器座標系についてはすべて実施形態1と同一であるので説明は省略する。
次に、検出器の変位検出方法及び検出器の配置補正方法を電子検出器1及び散乱ガンマ線検出器2に適用する方法について説明する。変位検出及び配置補正のフローチャートは図4に示した実施形態1と同一であり、ステップ1〜4は電子検出器1の変位の検出と配置の補正に対応し、ステップ5〜8は散乱ガンマ線検出器2の変位の検出と配置の補正に対応する。
[ステップ1:コリメータ及び基準放射線源の設置]
電子検出器1の変位を検出するため、図20に示すように保持部7上に第1の基準放射線源66aとコリメータ65を設置する。コリメータ65は放射線遮蔽能力の高い鉛等の材料から成り、内部空間と内部空間からコリメータ外まで貫通する2つの出射孔67−1、67−2が形成されている。第1の基準放射線源66aは、エネルギーが5keV〜30keV程度の第1の基準放射線(ガンマ線やX線)を発生する放射線源であり、コリメータ65の内部空間に収容される。本実施形態においては、例えば、第1の基準放射線源66aとしてエネルギーが5.9keVのX線を放出する放射性同位元素Fe−55を使用するものとする。
コリメータ65の斜視図を図21に示す。出射孔67−1、67−2は図示するような細径の円形ピンホールであり十分な深さを有する。
ここで保持部7には位置基準としての装置座標系、即ち装置原点O及び装置基準軸Xo、Yo、Zoが設定されている。この装置座標系は、コンプトンカメラの電子検出回路20とガンマ線検出回路21とによって得られた入射ガンマ線に関する情報からガンマ線の分布画像を求める際に用いられる。コリメータ65は、出射孔67−1、67−2がそれぞれ装置座標系において所定の位置になるように設置される。例えば、出射孔67−1、67−2であるピンホールの中心線がそれぞれ装置基準軸Zoに平行であり、出射孔67−1の出射端の装置座標系での座標は(u,−u,0)、出射孔67−2の出射端の装置座標系での座標は(−u,u,0)、となる様に設置する。即ち、出射孔67−1の出射端と出射孔67−2の出射端は装置原点Oに対して対称な位置にあり、両者を結ぶ線は装置基準軸Xo及び装置基準軸Yoに対して45度の角度を成す。本実施形態においては、出射孔67−1から出射される第1の基準放射線束68a−1と出射孔67−2から出射される第1の基準放射線束68a−2とを用いて電子検出器1の変位を検出する。
ここで、電子検出器1及び散乱ガンマ線検出器2の変位は次の(1)〜(6)の成分を持つ。
(1)装置基準軸Xo方向の平行変位
(2)装置基準軸Yo方向の平行変位
(3)装置基準軸Zo方向の平行変位
(4)装置基準軸Xo回り(α方向)の角度変位
(5)装置基準軸Yo回り(β方向)の角度変位
(6)装置基準軸Zo回り(γ方向)の角度変位
このうち本実施形態において検出の対象とするのは、(3)を除く5つの成分である。(3)は後述する様に、別の簡易な方法で検出、補正することができる。
[ステップ2:電子検出器1の変位検出]
以下、本実施形態における検出器の変位検出方法及び検出器の配置補正方法をコンプトンカメラに適用した場合の具体的な実施形態について説明する。まず、第1の基準放射線束68a−1、68a−2のそれぞれが対応する位置における電子検出器1の平行変位と、第1の基準放射線束68a−1、68a−2のいずれかが対応する位置における角度変位を検出する。ここで第1の基準放射線束68a−1について、基準となるのは、検出器基準軸Xe上でX座標=uであるカソード電極線Cと、検出器基準軸Ye上でY座標=−uであるアノード電極線A−uである。また第1の基準放射線束68a−2については、基準となるのは、検出器基準軸Xe上でX座標=−uであるカソード電極線C−uと、検出器基準軸Ye上でY座標=uであるアノード電極線Aである。
変位の検出方法は実施形態1のステップ2と同様で、第1の基準放射線束68a−1について、所定時間、電子塊69の計測(各カソード電極線Cとアノード電極線Aで検出した信号のカウント)を行う。そしてカソード電極線Cの検出信号の分布の中心位置Xe1から、基準となるカソード電極線Cの位置uまでの距離、即ちX軸方向の変位ΔXe1を求める。また、アノード電極線Aの検出信号の分布の中心位置Ye1から、基準となるアノード電極線A−uの位置−uまでの距離、即ちY軸方向の変位をΔYe1を求める。つまり、検出した位置と変位の関係は、Xe1=ΔXe1+u及びYe1=ΔYe1−uとなる。
また第1の基準放射線束68a−2についても、同様に所定時間、電子塊69の計測を行う。そしてカソード電極線Cの検出信号の分布の中心位置Xe2から、基準となるカソード電極線C−uの位置−uまでの距離、即ちX軸方向の変位ΔXe2を求める。また、アノード電極線Aの検出信号の分布の中心位置Ye2から、基準となるアノード電極線Aの位置uまでの距離、即ちY軸方向の変位をΔYe2を求める。つまり、電子検出器座標系での位置と変位の関係は、Xe2=ΔXe2−u及びYe2=ΔYe2+uとなる。
得られたXe1、Ye1、Xe2、及びYe2より、電子検出器1の装置基準軸Zoに対して垂直な変位の3つの成分、即ち装置基準軸Zo回り(γ方向)の角度変位Δθγ、X方向の平行変位ΔXe、Y方向の平行変位ΔYeを算出する。これには以下の式(4)、(5)、(6)を用いる。
Figure 2017026423
さらに第1の基準放射線束68a−1又は68a−2について、カソード電極線Cとアノード電極線Aで検出した信号の分布の幅から、X軸回りの角度変位ΔθαとY軸回りの角度変位Δθβとを求める。この信号の分布の幅は、カウント数が小さい分布の端からカウント数が大きい分布の端までの距離である。
[ステップ3:許容可/不可判断]
検出した変位を予め設定した上限値と比較し、許容範囲内か否かの判断を行う。変位が許容範囲内(上限値よりも小)であれば補正不要として、図4のステップ5の散乱ガンマ線検出器の変位検出に移行する。また、変位が許容範囲外(上限値以上)であればステップ4の電子検出器の配置の補正を行う。
[ステップ4:電子検出器の配置の補正]
次に電子検出器1の配置を補正する。本実施形態においては電子検出器1の配置の補正には調整機構3を用いる。上記のステップ2で検出した電子検出器1の平行変位ΔXe、ΔYeと角度変位Δθγ、Δθα、Δθβを修正するように調整機構3を駆動する。手順は以下(1)〜(5)の通りである。
(1)第1の回動機構64により支持体62をβ方向に−Δθβ駆動する
(2)第1の回動機構64により支持体62をα方向に−Δθα駆動する
(3)第2の回動機構70により支持体62をγ方向に−Δθγ駆動する
(4)面内駆動機構63により支持体をX方向に−ΔXe駆動する
(5)面内駆動機構63により支持体をY方向に−ΔYe駆動する
この補正の結果を確認するため、再度、図4のステップ2の電子検出器の変位検出とステップ3の許容可/不可判断を繰り返す。ステップ3において、変位が許容範囲内(上限値よりも小)であれば電子検出器1の配置の補正は終了して、散乱ガンマ線検出器の変位の検出と配置の補正(ステップ5〜8)に移行する。
以下、ステップ5(基準放射線源の設置)からステップ8(散乱ガンマ線検出器の配置の補正)は実施形態1と同一であるので説明は省略する。
尚、電子検出器1及び散乱ガンマ線検出器2の装置基準軸Zo方向の平行変位の検出は、ゲージや様々な距離計測の手段など一般的な方法を用いることで容易に行える。そこで、そのような一般的な方法と本発明による変位検出方法とを組み合わせれば、電子検出器1及び散乱ガンマ線検出器2の変位のすべての成分、即ち次の(1)〜(6)の成分の検出が可能となる。
(1)装置基準軸Xo方向の平行変位
(2)装置基準軸Yo方向の平行変位
(3)装置基準軸Zo方向の平行変位
(4)装置基準軸Xo回り(α方向)の角度変位
(5)装置基準軸Yo回り(β方向)の角度変位
(6)置基準軸Zo回り(γ方向)の角度変位
また、検査対象物の周囲に複数のコンプトンカメラを配置する場合には、個々のコンプトンカメラについて本発明による検出器の変位検出方法及び検出器の配置補正方法を適用することができる。その際には、第1の基準放射線源、第2の基準放射線源及びコリメータは共通とし、各コンプトンカメラに対して個別に第1の基準放射線束及び第2の基準放射線束を出射させてもよい。
1 電子検出器
2 ガンマ線検出器(散乱ガンマ線検出器)
3 調整機構
4 信号処理装置
6 放射線源
11 電子収集器
12 電極(電子ドリフト手段)

Claims (18)

  1. 散乱体と電子ドリフト手段と電子収集器を有する電子検出器、及びガンマ線検出器を備えたコンプトンカメラの変位検出方法であって、
    前記散乱体の中に線状又は面状の第1の基準放射線束を入射させる工程と、
    前記第1の基準放射線束と前記散乱体との相互作用により発生した電離電子を、前記ドリフト手段によって前記電子収集器に移動させる工程と、
    前記電子収集器により検出された前記電離電子の第1の検出信号の分布に基づいて、前記電子検出器の所定位置からの変位を検出する工程と、
    を有することを特徴とする変位検出方法。
  2. 前記第1の検出信号は、前記電子収集器からの距離が異なる前記散乱体の中の複数の位置で発生した電離電子の検出信号を含むことを特徴とする請求項1に記載の変位検出方法。
  3. 前記第1の検出信号の前記電子収集器における分布の位置に基づいて、前記電子検出器の前記第1の基準放射線束の入射方向に対して垂直な方向の平行変位を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の変位検出方法。
  4. 前記第1の検出信号の前記電子収集器における分布の広がりに基づいて、前記電子検出器の前記第1の基準放射線束の入射方向に対する角度変位を検出することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の変位検出方法。
  5. 前記第1の基準放射線束を、前記電子収集器の異なる位置に入射する複数の基準放射線束で構成し、前記第1の検出信号の前記電子収集器における分布に基づいて、前記電子検出器の前記第1の基準放射線束の入射方向に垂直な方向の平行変位及び入射方向の回りの角度変位を検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の変位検出方法。
  6. 前記ガンマ線検出器に、前記第1の基準放射線束よりもエネルギーの大きい線状又は面状の第2の基準放射線束を入射させる工程と、前記ガンマ線検出器による第2の検出信号に基づいて前記ガンマ線検出器の所定位置からの変位を検出する工程と、を更に有することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の変位検出方法。
  7. 散乱体と電子ドリフト手段と電子収集器を有する電子検出器、及びガンマ線検出器を備えたコンプトンカメラの配置補正方法であって、
    請求項1から5の何れか1項に記載の変位検出方法により得られた変位の情報に応じて、前記電子検出器の配置を補正することを特徴とする配置補正方法。
  8. 散乱体と電子ドリフト手段と電子収集器を有する電子検出器、及びガンマ線検出器を備えたコンプトンカメラの配置補正方法であって、
    請求項6に記載の変位検出方法により得られた変位の情報に応じて、前記ガンマ線検出器の配置を補正することを特徴とする配置補正方法。
  9. 散乱体と電子ドリフト手段と電子収集器を有する電子検出器、及びガンマ線検出器を備えたコンプトンカメラであって、
    前記電子検出器の配置を補正する駆動機構を備えたことを特徴とするコンプトンカメラ。
  10. 前記駆動機構は、請求項1から5の何れか1項に記載の変位検出方法により得られる変位の情報に応じて、前記電子検出器の配置を補正することを特徴とする請求項9に記載のコンプトンカメラ。
  11. 散乱体と電子ドリフト手段と電子収集器を有する電子検出器、及びガンマ線検出器を備えたコンプトンカメラであって、
    前記電子検出器から得られる、基準放射線束と前記散乱体との相互作用により発生する電離電子の位置情報を補正する補正部を備えたことを特徴とするコンプトンカメラ。
  12. 前記補正部は、請求項1から5の何れか1項に記載の変位検出方法により得られる変位の情報に応じて、前記電離電子の位置情報を補正することを特徴とする請求項11に記載のコンプトンカメラ。
  13. 散乱体と電子ドリフト手段と電子収集器を有する電子検出器、及びガンマ線検出器を備えたコンプトンカメラであって、
    前記ガンマ線検出器の配置を補正する駆動機構を備えたことを特徴とするコンプトンカメラ。
  14. 前記駆動機構は、請求項6に記載の変位検出方法により得られる変位の情報に応じて、前記ガンマ線検出器の配置を補正することを特徴とする請求項13に記載のコンプトンカメラ。
  15. 散乱体と電子ドリフト手段と電子収集器を有する電子検出器、及び前記電子ドリフト手段に入射した光子と前記散乱体の電子との間の相互作用であるコンプトン散乱による散乱ガンマ線を検出するガンマ線検出器を備えたコンプトンカメラであって、
    前記ガンマ線検出器から得られる散乱ガンマ線の位置情報を補正する補正部を備えたことを特徴とするコンプトンカメラ。
  16. 前記補正部は、請求項5に記載の変位検出方法により得られる変位の情報に応じて、前記散乱ガンマ線の位置情報を補正することを特徴とするコンプトンカメラ。
  17. 前記配置の補正の後に前記電子検出器及び前記ガンマ線検出器によりそれぞれ得られる、前記電子ドリフト手段に入射した光子と前記散乱体の電子との間の相互作用であるコンプトン散乱による電離電子と散乱ガンマ線との情報に基づいて、入射ガンマ線の入射方向の情報を取得することを特徴とする請求項9、10、13、及び14の何れか1項に記載のコンプトンカメラ。
  18. 前記補正部により得られる、前記電子ドリフト手段に入射した光子と前記散乱体の電子との間の相互作用であるコンプトン散乱による電離電子または散乱ガンマ線の情報を用いて、入射ガンマ線の入射方向の情報を取得することを特徴とする請求項11、12、15、及び16の何れか1項に記載のコンプトンカメラ。
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