JP2017020820A - 放射能検出装置、放射能測定装置および放射能測定方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、除染作業に際しては、放射性物質で汚染されている領域の放射能を検出し測定して、ホットスポットを探索する必要がある。このための簡便な方法として、放射能を可視化する装置(ガンマカメラ)がある。
従来のピンホールカメラ方式の放射能検出器は特許文献1、コンプトン散乱方式の放射能検出器は特許文献2、符号化マスク方式は特許文献3が知られている。
その他の方式として、コリメータを用いた放射能検出器があり、特許文献4が知られている。
特許文献2のようなコンプトン散乱方式は、入射γ線と、それによる散乱線を別の検出器で同時検出する信号を利用するため、感度が低く、しかも原理上円錐状の重なり点が位置となるために、1散乱だけでは位置を特定することが出来ないという問題点がある。
特に、符号化マスク方式では、単なる開口、すなわち薄い板に開けた孔であるため、放射線を通過させる確率を低くすることが困難であり、本来放射線源のあるべき方向でない方向にも寄与(又は影響)が生じやすい。しかも、符号化マスク方式は、複雑な計算を行う必要があり、測定誤差や統計的変動により、疑似的なピーク(アーティファクト)を生じ易い。
また、特許文献4の検出部は、ガンマ線だけでなく、アルファ線やベータ線やX線でも蛍光板を発光させることに加えて、ガンマ線に限っても別の核種によるガンマ線、例えばカリウム40とセシウム137および134のガンマ線の寄与を分離することが不可能である。
従って、放射能汚染起源の放射線源(セシウム137および134)とその他の放射線源(例えば、自然起源のカリウム40)の寄与を分けることが不可能であり、除染等の目的でのホットスポットの可視化のためには全く役に立たない。
この発明の他の目的は、装置を軽量化でき、取扱いが容易で、アーティファクトを解消可能な、放射能検出装置を提供することである。
マルチコリメータは、球殻状の形状に選ばれた遮蔽体であって、放射線の入射方向を制限するために、球殻上に複数の筒状の透孔を形成することによって複数のコリメータを配置して構成される。
複数のγ線検出器は、マルチコリメータに含まれる複数のコリメータの夫々に対応して配置され、対応するコリメータによって制限された特定の視野の放射線を個別に検出する。
また、エネルギー分別することにより、ガンマ線強度のエネルギー分布を取得可能な放射能検出装置が得られる。さらに、装置を軽量化でき、取扱いが容易で、アーティファクトを解消できる。
マルチコリメータは、球殻状の形状に選ばれ、放射線の入射方向を制限するために、球殻上に複数の筒状の透孔を形成することによって複数のコリメータを配置して構成される。複数のγ線検出器は、マルチコリメータが測定対象面に向けられた反対側の面であって、マルチコリメータに含まれる複数のコリメータの夫々に対応し、かつマルチコリメータの球殻とは異なる球殻上に配置され、対応するコリメータによって制限された特定の視野の放射線を個別に検出する。
処理手段は、各γ線検出器の夫々の取得信号を基にして、平滑化処理した後、補間処理することにより、1個のγ線検出器の検出視野よりも微細な仮想検出器メッシュに細分化することにより、細分化された信号強度分布を算出する。
それによって、放射能検出領域の空間分解能を向上させたことを特徴とする。
第5の発明によれば、検出効率が高く、短時間でホットスポットを特定することに有益な、放射能測定装置が得られる。
撮影手段は、放射能検出装置の向けられた放射能検出領域を写真撮影する。表示手段は、撮影手段によって撮影された写真を表示する。
処理手段は、各γ線検出器の夫々の取得信号を基にして、平滑化処理した後、補間処理するとともに、1個のγ線検出器の検出視野よりも微細な仮想検出器メッシュに細分化して、細分化された信号強度分布を算出することによって、前記各コリメータと対応する前記各γ線検出器との組合せにより、1メートルオーダーの距離での放射能分布を測定する。さらに、処理手段は、細分化された信号強度分布を基にして、装置関数でデコンボリューションすることにより、ホットスポットの位置を特定し、撮影手段によって撮影された放射能検出領域の写真を表示手段に表示させるとともに、特定したホットスポットの位置を放射能検出領域の映像に重ね合せて表示させる。
第7の発明によれば、検出効率が高く、短時間でホットスポットを特定でき、エネルギー分別することによりガンマ線強度のエネルギー分布を可視的に表示できる。
第8の発明によれば、検出効率が高く、短時間でホットスポットを特定することに有益な、放射能測定方法が得られる。
また、この発明によれば、エネルギー分別することによりガンマ線強度のエネルギー分布を取得することができる。装置を軽量化でき、取扱いが容易で、アーティファクトを解消することもできる。
図1はこの発明の一実施例の放射能検出装置10の外観図であり、図2は放射能検出装置におけるマルチコリメータの斜視図である。図3は放射能検出装置の拡大断面図である。図4は放射能検出装置の内部構造を示す斜視図である。
次に、図1ないし図4を参照して、この発明の一実施例の放射能検出装置10の構成を説明する。
そして、マルチコリメータ11及びPSD15が四角枠状の支持枠13内で固定的に保持される。
具体的には、球殻状部分の形状は、中空球体の一部を切り出して、平面から見て略正方形の形状であって、表面側が球体の球面に沿った縦方向と横方向に二重の湾曲面に形成され、裏面側が中心を同一とする球面、すなわち同心球の球面の湾曲面からなる。
球殻状部分の厚みは、球殻の厚み方向に形成される複数の透孔(筒状の開口)が放射線の飛来方向を放射状に特定し、かつ周囲からのバックグラウンドとしての放射線を一定レベルに低減させ得る長さ(厚み)となるように、適度の厚みに選ばれる。例えば、肉厚の厚い鉛板の表面(図1の右向き面、図2の上面)が半径R1からなる球面の一部面となるように、表面を凸状の球面となるように削り加工した後、裏面(図1の左向き面、図2の下面)が半径R2の球面の一部面となるように、裏面を凹状の球面となるように削り加工する。このとき、半径R1−R2の値が球殻部分の肉厚となる。
複数のコリメータの形成に際しては、表面の球面と裏面の球面のぞれぞれの半径R1,R2の中心が一致し、複数の透孔の放射線入射方向が球体の中心点となるように、複数のコリメータの孔開け方向を選ぶと、複数のコリメータ12がマルチコリメータ11全体から見て放射状に形成されることになる。このように構成すれば、筒状の透孔の孔開け位置の計算や角度の決定が容易となるので、設計及び製造が容易となる利点がある。
また、複数のコリメータ12となる透孔は、円筒状に形成する場合であれば、ドリルで孔開けすれば良いので、製造が容易となるが、これを四角柱や他の形状に形成する、またはテーパーを付けるように形成したもの等、各種変形した形状でもよいことは勿論である。
また、球殻部は、縦横とも対象であることが設計および製造の容易化の点で好ましいが、これに限定されるものではなく、楕円状の球殻面でも差支えない。
具体的には、複数のガンマ線検出器16は、図3に示すように、マルチコリメータ11の内側の球面の半径R2と同等かそれより小さな半径の球殻状の取付部(又は基台部)17に、複数のコリメータ12の夫々に対応するように孔開けし、各孔に放射線を検出可能な素子(例えばCsIの結晶、すなわちタリウム活性化ヨウ化セシウム単結晶シンチレータ)を埋設し、各素子に検出信号を導出するリード線18を接続して構成される。取付部17は樹脂等で一体成型すればよい。
なお、上述の構造説明では、複数のガンマ線検出器に共通の符号(16)を付して示すが、各ガンマ線検出器を配置位置との関係で区別して説明する必要のある図6では、D1〜D64で示すものとする。
図1〜図3に示す放射能検出装置10では、マルチコリメータ11の裏面側に配置されるPSD15がマルチコリメータ11の裏面側に沿う球殻状の取付部17の場合、すなわちガンマ線検出器16を球面状に配置する場合を説明したが、これに限らず、図5(a)又は図5(b)に示すように平面状にガンマ線検出器16を配置してもよい。
図5(a)の実施例の放射能検出装置10Aは、マルチコリメータ11が図1〜図3のものと同様に構成され、当該マルチコリメータ11の裏面側に配置されるPSD15の取付部17を次のように構成したものである。すなわち、放射能検出装置10Aは、マルチコリメータ11の平面形状に近似する板厚の厚い平板を準備し、この平板状の取付部17bに複数のコリメータ12に対応して飛来する放射線を受ける角度となるように位置決めした複数の孔(又は穴)を形成しておき、これらの複数の孔に複数のガンマ線検出器16を埋め込んで固定する。
そして、放射能検出装置10Aは、複数のガンマ線検出器16のガンマ線受光面とは反対側の面から検出信号を取り出すリード線18を引き出している。
また、角度による各ガンマ線検出器16の検出感度の補正計算をおこなうのであれば、図5(b)に示すように、2次元に等間隔かつ垂直にガンマ線検出器を配列した、複数のガンマ線検出器16からなる一般的な形状のPSDを用いてもかまわない。この場合の放射能検出装置10Bでは、平板状の取付部17cが平板に対して直交する方向(図示の上下方向)に複数のガンマ線検出器16を等間隔で配列した状態で保持又は固定する。
図6は、この発明の放射能検出装置10を用いた、この発明の他の実施例の放射能測定装置20の外観図である。特に、図6(a)は放射能測定装置20を正面から見た斜視図、図6(b)は背面から見た斜視図を示す。
放射能測定装置20は、6面のうちの1面だけを開口部とした箱状の筐体21に、マルチコリメータ11が開口部から外(図6(a)の正面)を向くように放射能検出装置10を収納し、開口部に蓋部材22を装着して構成される。また、筐体21の上面には、持ち運び用の把持部(取っ手)23が装着される。
蓋部材22には、放射線を測定する周囲環境(又は景色)を写真撮影するときに周囲環境の画像を筐体11内部に取り込むための透視孔24が形成される。
また、筐体21の内部には、PSD15によって検出された放射線の飛来する方向別のエネルギーと強度を測定処理するための回路基板(図示せず)が放射線検出器10の裏側に収納されるとともに、蓋部材22の透視孔24の近傍に撮像カメラ(例えば、CCDセンサとレンズ)が内蔵される。ここで、検出対象の放射線は、素材が鉛の遮蔽体を通さないが、CCDのような鉛以外の物質を通す性質を有するので、マルチコリメータ11の前面にCCDセンサを配置したり、アルミニュームや鉄板等からなる蓋部材22で開口部の蓋をしても、飛来する放射線のエネルギー及び強度を検出する上で何ら支障がない。
必要に応じて、放射能測定装置20は、筐体21内にGPS情報検出部(図7の31)および距離計35を収納して構成される。
放射能測定装置20は、複数のγ線検出器15(D1〜D64)と、A/D変換回路AD1〜AD64と、GPS情報検出部31と、撮像カメラ(CCDセンサ)32と、計測処理のための中央処理ユニット(CPU;又はコンピュータ)33と、記憶装置34と、距離計35と、送受信回路36を含む。
CPU33は、例えば図9のフローチャートに示す処理プログラム又はその他のプログラムを実行して、放射能汚染の状況を測定する。CPU33は、機能的には位置・エネルギー及び強度を測定し表示処理する位置・エネルギー・強度測定回路33aと、撮像カメラ32によって撮影された放射能汚染地域の環境に関連する写真を画像処理する画像処理回路33bとしての機能を有する。
処理用メモリ34bは、測定地点毎(別)でありかつ各γ線検出器D1〜D64に対応して、所定範囲の複数種類のエネルギー(例えばエネルギー1〜930)別の強度を記憶する領域を含み、測定地点毎の名称(住所又は地域)とGPS情報に基づく位置情報(例えば、緯度情報と経度情報)を記憶する記憶領域を含む。
表示用メモリ34cは、液晶表示器25に表示すべき画像データをビットマップ形式で記憶するメモリである。放射能測定装置20が、例えば、後述の図8に示すような測定結果を表示するものとすれば、その表示を実現するための各種表示データを記憶する。
さらに、放射能測定装置20は、必要に応じて、USB端子37が設けられる。USB端子35には、各種データ入力のためのキーボード38が外付け接続される。
放射能測定装置20の測定結果は、液晶表示器25に表示される。例えば、液晶表示器25に表示される画面は、図8に示すように、複数の表示領域25a〜25dに分割される。
表示領域25aの濃度分布表示領域には、撮像カメラ32によって撮影された放射能検出装置10の周辺の測定地域の景色等の画像が最下層に表示され、景色画像の上に測定地点別の桝目が重ねて表示され、さらにその上に測定地点別の濃度分布の図柄(図示では右上角の桝目に示すような濃度を色調で諧調化した図柄または模様)が重ねて表示される。
また、濃度分布表示領域の1つの桝目が、放射能検出装置10による1回の検出範囲(すなわち、放射能測定装置20によって測定される1地点)に相当する。そして、濃度分布表示領域の縦横の桝目の数だけ放射能測定装置20の位置を縦又は横にずらせながら各桝目に対応する地点を測定することにより、その測定結果が1枚のマップ上に濃度分布として表示されることになる。
さらに、濃度分布表示領域の右横には、濃度別の色見本表示部が縦長の帯状に表示される。
表示領域25bと表示領域25cの間の小さな表示領域25dは、プロファイル選択領域であり、「累計」か「個別」を選択するとともに、「較正」,「保存」等のアイコンを表示する。
次に、図1〜図9を参照して、図9に示すフローチャートに沿って放射能測定装置20の動作を説明する。
ここで、距離Lと測定範囲との関係は、マルチコリメータ11(放射能測定装置20の蓋部材22の面)を真下に向けて視野角度を60度とすれば、2L/√3となる。例えば、距離L=3mの場合は、1地点における1回の測定によって、2×3/√3m=3.4mの範囲を測定できる。この1地点測定範囲が表示領域25aの1つの枡目分となる。
なお、放射能測定装置20を用いた放射能測定において、マルチコリメータ11を真下に向ける使用方法に代えて、斜め下向きとし、斜め下向きの角度情報に基づいて補正をかけて、1つ桝目の測定範囲(長さ)を決めてもよい。
すなわち、複数のガンマ線検出器D1〜D64は、測定対象範囲の各位置から飛来する放射線を検出する。ガンマ線検出器D1〜D64のそれぞれの検出値(アナログ値)は、対応するA/D変換回路AD1〜AD64によってアナログ−ディジタル変換されて、CPU33へ入力される。
そして、ステップ1において、CPU33は、検出位置(すなわちガンマ線検出器D1〜D64)毎のエネルギーと強度データを取得して、メモリ34bの対応する記憶領域へ書き込む。この検出位置(ガンマ線検出器D1〜D64)毎のエネルギーと強度データは、或る1つの桝目(例えば、始めは濃度分布表示領域の1段目右端)に対応するメモリ34bの記憶領域の各ガンマ線検出器別に書き込まれ、刻々検出されるデータを累計しながら、結果として各ガンマ線検出器別の積算値が記憶されることになる。
このエネルギー分布図の作成では、データ的には64個のガンマ線検出器D1〜D64のエネルギー・強度分布(スペクトル)を有しているが、代表的な1個分のみのエネルギー・強度分布(スペクトル)を、図8の表示領域25cに表示することになる。但し、スペクトル表示するガンマ線検出器を選択できるようにプログラムしてもよい。
ここで、放射線強度は、測定核種のエネルギー領域のガンマ線強度のことであり、ガンマ線検出器D1〜D64によって検出される地点に対応するピクセルの階調として表示される。
ここでの三次元関数は、検出における測定誤差や統計的変動によるバラツキの影響を除く目的で、2次元の3次曲面を用いて、検出値の強度分布を近似するための関数のことを指す。また、平滑化とは、複数のガンマ線検出器D1〜D64のうちのバラツキが大きい検出器による強度の検出値を誤差として無視することにより、2次元の3次曲面を用いて、検出値の強度分布が滑らかな変化をする曲面になるように処理することである。補間処理とは、各ガンマ線検出器の検出値がその検出器の中心位置での検出値を表すとして、ある検出器の中心とその検出器の近傍の別の3つの検出器の中心が作るメッシュの内部の任意の点に対して、その位置に対応した検出値の強度を得る処理である。したがって、PSD15(64個のガンマ線検出器D1〜D64)が作るメッシュ、すなわち何も処理しない場合の位置分解能よりも、さらに小さな細分化したメッシュであって、より良い位置分解能を与えうるために、細分化処理を行う。
メッシュの細分化処理は、平滑化及び補間処理によって、複数(64個)のガンマ線検出器D1〜D64によって検出できる最小単位の範囲(広さ)をさらにメッシュ状に細分化して、ガンマ線検出器の個数を何倍かに増やしたのと同等の検出精度を高める処理である。
このデコンボリューション処理としては、一般的な機器分析・計測手法等で用いられる一般的なスキームで実施すればよい。
具体的には、各検出素子で作るメッシュ、もしくはそれを細分化した細分化メッシュのあるメッシュ位置を(i,j)(但し、i,jは整数)で表すと、あるメッシュ(k,l;「l」は小文字エルを表す)で測定もしくは算出された放射能強度I(k,l)は、本来の放射能強度分布F(i,j)とその分布を鈍らせる原因となる装置関数をG(i,j)とすれば、第(1)式の積算和の畳み込みの形で表せる。
この場合、装置関数G(k−i,l−j)は、i,k方向のメッシュ間隔をΔx、j,l方向のメッシュ間隔をΔyとすると、この放射能測定装置20では両方向とも等方的なために、装置関数の寄与はある測定メッシュと、本来の放射能強度のある、例えばピークに相当するメッシュ位置との距離と、測定メッシュにおける感度係数関数A(x,y)の2つに依存して、第(2)式で表せる。
さらに、この場合には装置関数が距離にのみ依存するので、例えば一般的なガウス分布の形で1次近似できる。
同時にそのガウス分布の寄与に比べて、感度係数の位置依存性は無視しても良い大きさであると仮定できる。
従って、この3つの条件により、第(2)式はより単純な数式の第(3)式となる。
すなわち、メッシュ位置k,l,i,jと定数A,aだけのガウス分布で近似できる。
この第(3)式を第(1)式に代入すれば、i方向すなわちx方向が全nメッシュ、j方向すなわちy方向が全mメッシュあるとすると、i=1〜n, j=1〜mに対して第(4)式となる。
これは、F(i,j)に対してのn×m元の連立1次方程式に他ならない。
従って、各F(i,j)の係数Aexp{−a[(k−i)2+(j−l)2 ]}を要素とする行列Bの逆行列B−1を測定もしくは算出強度が作るベクトルI(k,l)に作用させれば、本来の強度分布F(i,j)を容易に導くことができる。
なお、装置関数の寄与がガウス分布近似から外れるような場合にも、関数Aにその寄与を入れ込み、各メッシュ位置での係数Aを変えることによって、同様のデコンボリューション処理が可能となる。
なお、ステップ4ではガンマ線検出器の1個の位置分解能に対応した位置分解能でしか位置を特定していないので、可視画像と結びついていないが、ステップ10ではホットスポットの位置の角度を計算して、見ている位置を決めることにより、ホットスポットの位置を特定している。
その後、放射能測定装置20の配置位置を横及び/又は縦に1枡分ずつずらせて、上述の測定処理を縦横所定数の桝目分(例えば8×8回)の測定処理を行うことにより、濃度分布表示領域の範囲の全域(1の名称で特定される地域)の測定処理を行う。
以上の処理を繰り返すことにより、広範囲における放射能汚染状況の測定結果がメモリ34bに累積的に記憶される。そして、適宜のタイミングにおいて、メモリ34bに累積的に記憶されている広範囲における放射能汚染状況の測定結果のデータが送受信回路36によってパソコン40へ送信され、パソコン40側でも累積的に記憶される。パソコン40側では、これらの測定データに基づいて、除染作業すべき地点又は範囲の選定(割り出し)が行われる。
また、エネルギー分別することによりガンマ線強度のエネルギー分布を取得しているので、放射能汚染された地点又は地域を迅速に作業効率よく特定でき、除染作業の効率を大幅に高めることができる。
11 球殻状のマルチコリメータ
12 コリメータ
15 PSD(ポジション・センシティブ・ディテクタ)
16(D1〜D64),16a ガンマ線検出器
17,17a 取付部
20 放射能測定装置
21 筐体
22 蓋部材
25 液晶表示器
25a〜25d 表示領域
31 GPS情報検出部
32 撮像カメラ
33 中央処理ユニット(CPU)
34 記憶装置
34a プログラム記憶用メモリ
34b 処理用メモリ
34c 表示用メモリ
35 距離計
36 送受信回路
37 USB端子
38 キーボード
40 パソコン(PC)
図6は、この発明の放射能検出装置10を用いた、この発明の他の実施例の放射能測定装置20の外観図である。特に、図6(a)は放射能測定装置20を正面から見た斜視図、図6(b)は背面から見た斜視図を示す。
放射能測定装置20は、6面のうちの1面だけを開口部とした箱状の筐体21に、マルチコリメータ11が開口部から外(図6(a)の正面)を向くように放射能検出装置10を収納し、開口部に蓋部材22を装着して構成される。また、筐体21の上面には、持ち運び用の把持部(取っ手)23が装着される。
蓋部材22には、放射線を測定する周囲環境(又は景色)を写真撮影するときに周囲環境の画像を筐体11内部に取り込むための透視孔24が形成される。
また、筐体21の内部には、PSD15によって検出された放射線の飛来する方向別のエネルギーと強度を測定処理するための回路基板(図示せず)が放射能検出装置10の裏側に収納されるとともに、蓋部材22の透視孔24の近傍に撮像カメラ(例えば、CCDセンサとレンズ)が内蔵される。ここで、検出対象の放射線は、素材が鉛の遮蔽体を通さないが、CCDセンサのような鉛以外の物質を通す性質を有するので、マルチコリメータ11の前面にCCDセンサを配置したり、アルミニュームや鉄板等からなる蓋部材22で開口部の蓋をしても、飛来する放射線のエネルギー及び強度を検出する上で何ら支障がない。
CPU33は、例えば図9のフローチャートに示す処理プログラム又はその他のプログラムを実行して、放射能汚染の状況を測定する。CPU33は、機能的には位置・エネルギー及び強度を測定し表示処理する位置・エネルギー・強度測定回路33aと、撮像カメラ32によって撮影された放射能汚染地域の環境に関連する写真を画像処理する画像処理回路33bとしての機能を有する。
表示領域25aの濃度分布表示領域には、撮像カメラ32によって撮影された放射能検出装置10の周辺の測定地域の景色等の画像が最下層に表示され、景色画像の上に測定地点別の桝目が重ねて表示され、さらにその上に測定地点別の濃度分布の図柄(図示では右上角の桝目に示すような濃度を色調で諧調化した図柄または模様)が重ねて表示される。
また、濃度分布表示領域の1つの桝目が、放射能検出装置10による1回の検出範囲(すなわち、放射能測定装置20によって測定される1地点)に相当する。そして、濃度分布表示領域の縦横の桝目の数だけ放射能測定装置20の位置を縦又は横にずらせながら各桝目に対応する地点を測定することにより、その測定結果が1枚のマップ上に濃度分布として表示されることになる。
さらに、濃度分布表示領域の右横には、濃度別の色見本表示部が縦長の帯状に表示される。
すなわち、複数のガンマ線検出器D1〜D64は、測定対象範囲の各位置から飛来する放射線を検出する。ガンマ線検出器D1〜D64のそれぞれの検出値(アナログ値)は、対応するA/D変換回路AD1〜AD64によってアナログ−ディジタル変換されて、CPU33へ入力される。
そして、ステップ1において、CPU33は、検出位置(すなわちガンマ線検出器D1〜D64)毎のエネルギーと強度データを取得して、メモリ34bの対応する記憶領域へ書き込む。この検出位置(ガンマ線検出器D1〜D64)毎のエネルギーと強度データは、或る1つの桝目(例えば、始めは濃度分布表示領域の1段目右端)に対応するメモリ34bの記憶領域の各ガンマ線検出器別に書き込まれ、刻々検出されるデータを累計しながら、結果として各ガンマ線検出器別の積算値が記憶されることになる。
このエネルギー分布図の作成では、データ的には64個のガンマ線検出器D1〜D64のエネルギー・強度分布(スペクトル)を有しているが、代表的な1個分のみのエネルギー・強度分布(スペクトル)を、図8の表示領域25cに表示することになる。但し、スペクトル表示するガンマ線検出器を選択できるようにプログラムしてもよい。
ここで、放射能強度は、測定核種のエネルギー領域のガンマ線強度のことであり、ガンマ線検出器D1〜D64によって検出される地点に対応するピクセルの階調として表示される。
Claims (10)
- 球殻状の形状に選ばれ、放射線の入射方向を制限するために、球殻上に複数の筒状の透孔を形成することによって複数のコリメータを配置して構成されるマルチコリメータ、および
前記マルチコリメータに含まれる前記複数のコリメータの夫々に対応して配置され、対応するコリメータによって制限された特定の視野の放射線を個別に検出する複数のガンマ線検出器を備えた、放射能検出装置。 - 前記複数のガンマ線検出器は、前記マルチコリメータが測定対象面に向けられた反対側の面における平面上に配置される、請求項1に記載の放射能検出装置。
- 前記複数のガンマ線検出器は、前記マルチコリメータが測定対象面に向けられた反対側の面であって、マルチコリメータの球殻とは異なる球殻上に配置される、請求項1に記載の放射能検出装置。
- 球殻状の形状に選ばれ、放射線の入射方向を制限するために、球殻上に複数の筒状の透孔を形成することによって複数のコリメータを配置して構成されるマルチコリメータ、および
前記マルチコリメータが測定対象面に向けられた反対側の面であって、前記マルチコリメータに含まれる前記複数のコリメータの夫々に対応し、かつマルチコリメータの球殻とは異なる球殻上に配置され、対応するコリメータによって制限された特定の視野の放射線を個別に検出する複数のガンマ線検出器を備えた、放射能検出装置。 - 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放射能検出器を用いて放射能分布を測定する放射能測定装置であって、
処理手段をさらに備え、
前記処理手段は、前記各ガンマ線検出器の夫々の取得信号を基にして、平滑化処理した後、補間処理することにより、1個のガンマ線検出器の検出視野よりも微細な仮想検出器メッシュに細分化することにより、細分化された信号強度分布を算出し、
それによって、放射能検出領域の空間分解能を向上させたことを特徴とする、放射能測定装置。 - 前記処理手段は、細分化された信号強度分布を基にして、装置関数でデコンボリューションすることにより、ホットスポットの位置を特定することを特徴とする、請求項5に記載の放射能測定装置。
- 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放射能検出装置を用いて放射能分布を測定する、放射能測定装置であって、
前記放射能検出装置の向けられた放射能検出領域を写真撮影する撮影手段と、撮影手段によって撮影された写真を表示する表示手段と、処理手段とをさらに備え、
前記処理手段は、
前記各ガンマ線検出器の夫々の取得信号を基にして、平滑化処理した後、補間処理し、
1個のガンマ線検出器の検出視野よりも微細な仮想検出器メッシュに細分化して、細分化された信号強度分布を算出することによって、前記各コリメータと対応する前記各ガンマ線検出器との組合せにより、1メートルオーダーの距離での放射能分布を測定し、さらに
細分化された信号強度分布を基にして、装置関数でデコンボリューションすることにより、ホットスポットの位置を特定し、
前記撮影手段によって撮影された放射能検出領域の写真を前記表示手段に表示させるとともに、前記特定したホットスポットの位置を放射能検出領域の映像に重ね合せて表示させる、放射能測定装置。 - 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放射能検出装置を用いて放射能分布を測定する放射能測定方法であって、
前記各コリメータと対応するガンマ線検出器との組合せにより、1メートルオーダーの距離での放射能分布を測定するステップを含む、放射能測定方法。 - 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の放射能検出装置を用いて放射能分布を測定する放射能測定方法であって、
前記各ガンマ線検出器の夫々の取得信号を基にして、平滑化処理するステップと、補間処理するステップと、1個のガンマ線検出器の検出視野よりも微細な仮想検出器メッシュに細分化するステップとを含み、
それによって、放射能検出領域の空間分解能を向上させるようにしたことを特徴とする、放射能測定方法。 - 細分化された信号強度分布を基にして、装置関数でデコンボリューションするステップと、ホットスポットの位置を特定するステップとをさらに含む、請求項9に記載の放射能測定方法。
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