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JP2017019998A - インクジェット用油中水型エマルションインク - Google Patents

インクジェット用油中水型エマルションインク Download PDF

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JP2017019998A
JP2017019998A JP2016105934A JP2016105934A JP2017019998A JP 2017019998 A JP2017019998 A JP 2017019998A JP 2016105934 A JP2016105934 A JP 2016105934A JP 2016105934 A JP2016105934 A JP 2016105934A JP 2017019998 A JP2017019998 A JP 2017019998A
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俊介 魚住
Shunsuke Uozumi
俊介 魚住
大佑 岡本
Daisuke Okamoto
大佑 岡本
祥史 渡辺
Yoshifumi Watanabe
祥史 渡辺
一行 安藤
Kazuyuki Ando
一行 安藤
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Riso Kagaku Corp
Original Assignee
Riso Kagaku Corp
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Abstract

【課題】貯蔵安定性及び吐出安定性が優れるとともに画像濃度が高いインクジェット用油中水型エマルションインクを提供する。
【解決手段】水と酸性基を有する液体有機化合物とを含む水相、及び非水溶性有機溶剤と塩基性乳化剤とを含む油相を有し、水相及び油相のうち少なくとも一方が色材を含む、インクジェット用油中水型エマルションインクである。また、水と塩基性基を有する液体有機化合物とを含む水相、及び非水溶性有機溶剤と酸性乳化剤とを含む油相を有し、水相及び油相のうち少なくとも一方が色材を含む、インクジェット用油中水型エマルションインクである。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット用油中水型エマルションインクに関する。
油中水(W/O)型エマルションは、医薬品、化粧品、インク等に用いられている。このうち、水分の含有量が少なく低粘度な油中水型エマルションは、インクジェットヘッドからの吐出が可能であるため、インクジェット用インクに好適である。
インクジェット用油中水型エマルションインクは、普通紙に印刷した場合、水性インクに比べ、印刷用紙にカ−ルを生じさせることが少なく、油性インクに比べ、画像濃度が高くなるとともに裏抜けが低減されるため、普通紙を対象とした高速印刷を可能にすることができる。しかし、水分の含有量が少なく低粘度な油中水型エマルションは、時間の経過とともに水相が分離しやすいという問題がある。
特許文献1及び特許文献2では、油相に着色剤を配合するとにじみが発生するため、水溶性染料を含む水相を油相中に分散させてなるインクジェット印刷に適した油中水型エマルションインキが開示されている。特許文献1及び2では、乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて、水相を油相に分散させている。
特許文献3では、インクジェット用油中水型エマルションインキにおいて乳化剤としてポリグリセリン脂肪酸エステルを用いることが開示されている。特許文献3では、油相に顔料が含まれる例や、水相に水溶性染料が含まれる例が開示されている。特許文献3では、水相に水溶性染料が含まれる例では、アミン系界面活性剤等の溶解助剤が水相にさらに含まれることが記載されている。
特許文献4では、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤を用いて、顔料を含む油相に、ポリグリセリンを含む水相を分散させて、吐出性及び貯蔵安定性に優れたインクジェット用油中水型エマルションインクを提供することが開示されている。
特許文献5では、乳化剤としてポリグリセリンヒドロキシ脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤を含有するインクジェットエマルションインクが開示されている。特許文献5の実施例5及び6では、それぞれ水相に染料及び顔料が含まれる。
特開2013−72057号公報 特開2013−177483号公報 特開2012−122047号公報 特開2013−18819号公報 特開2006−56931号公報
特許文献1〜5では、乳化剤として非イオン性の脂肪酸エステルを用いて、エマルションを調整している。しかし、インクジェット用エマルションインクでは、水相及び/または油相に染料や顔料が含まれるため、乳化剤に非イオン性の脂肪酸エステルを用いるだけでは貯蔵安定性が十分に得られないことがある。
特許文献3では、水相に水溶性染料とともにアミン系界面活性剤等の溶解助剤が含まれる。しかし、水相にアミン系界面活性剤を用いることで、エマルションインクの油相と水相の電荷バランスが崩れて、貯蔵安定性が十分に維持できない可能性がある。
特許文献5では、エマルションインクの水相に顔料が含まれる。顔料とともに顔料分散剤が水相に含まれると、エマルションインクの油相と水相の電荷バランスが崩れる可能性がある。
エマルションインクでは、特に顔料を用いる場合では、エマルションの電荷バランスが崩れることで、貯蔵安定性が低下することがある。それゆえ、従来のエマルションのように単に乳化剤を用いるだけでは、インクジェットインクに適するように貯蔵安定性を得ることが難しい。
また、水相に色材を含ませることで、裏抜けを防止し画像濃度を高めることができる。しかし、水相に色材を含ませる場合では、色材を分散ないし溶解させるために水相の水分量が多くなるため、貯蔵安定性が低下するという問題がある。
本発明の一目的としては、貯蔵安定性及び吐出安定性が優れるとともに画像濃度が高いインクジェット用油中水型エマルションインクを提供することである。
本発明は、以下の構成を要旨とする。
(1)水と酸性基を有する液体有機化合物とを含む水相、及び非水溶性有機溶剤と塩基性乳化剤とを含む油相を有し、前記水相及び前記油相のうち少なくとも一方が色材を含む、インクジェット用油中水型エマルションインク。
(2)前記酸性基を有する液体有機化合物は、酸価が10mgKOH/g以上である、(1)に記載のインクジェット用油中水型エマルションインク。
(3)前記酸性基を有する液体有機化合物はリン酸基を有する、(1)または(2)に記載のインクジェット用油中水型エマルションインク。
(4)前記塩基性乳化剤は、アミノ基、イミノ基及びピロリドン基のうち1種以上の塩基性基を有する、(1)から(3)のいずれかに記載のインクジェット用油中水型エマルションインク。
(5)前記塩基性乳化剤は、ポリエステルポリアミン、ポリエステルポリイミン、ポリアルキロールアミノアマイドとその塩、ポリエーテルポリアミン、及びビニルピロリドン系共重合体のうち1種以上である、(1)から(4)のいずれかに記載のインクジェット用油中水型エマルションインク。
(6)水と塩基性基を有する液体有機化合物とを含む水相、及び非水溶性有機溶剤と酸性乳化剤とを含む油相を有し、前記水相及び前記油相のうち少なくとも一方が色材を含む、インクジェット用油中水型エマルションインク。
(7)前記酸性乳化剤は、カルボキシ基、リン酸基及びリン酸エステル基のうち1種以上の酸性基を有する、(6)に記載のインクジェット用油中水型エマルションインク。
(8)前記酸性乳化剤は、酸性基を有するポリエステル及び酸性基を有するポリエーテルのうち1種以上である、(6)または(7)に記載のインクジェット用油中水型エマルションインク。
(9)前記水相がアセチレンジオール系化合物及びポリエーテル変性シロキサンのうち1種以上を含む、(1)から(8)のいずれかに記載のインクジェット用油中水型エマルションインク。
(10)前記水相が色材を含み、前記色材が自己分散顔料である、(1)から(9)のいずれかに記載のインクジェット用油中水型エマルションインク。
本発明によれば、貯蔵安定性及び吐出安定性が優れるとともに画像濃度が高いインクジェット用油中水型エマルションインクを提供することができる。
(第1の実施形態)
本発明の一実施形態による油中水型エマルションインクジェットインクは、水と酸性基を有する液体有機化合物とを含む水相、及び非水溶性有機溶剤と塩基性乳化剤とを含む油相を有し、前記水相及び前記油相のうち少なくとも一方が色材を含む、ことを特徴とする。
これによれば、貯蔵安定性及び吐出安定性が優れるとともに画像濃度が高いインクジェット用油中水型エマルションインクを提供することができる。
以下の説明において、酸性基を有する液体有機化合物を単に「酸性化合物」と称することがある。
本実施形態によれば、水相に酸性化合物を含み、油相に塩基性乳化剤を含むことで、水相からなるエマルション液滴を油相に安定して分散させることができる。
色材が水相に含まれるエマルションインクでは、色材の水に対する分散性または溶解性を高めるように、親水性の官能基が導入された色材を用いたり、顔料とともに顔料分散剤を用いたりする。このようなエマルションインクでは、電荷バランスが崩れて、貯蔵安定性が低下しやすい。本実施形態では、水相に酸性化合物を含み、油相に塩基性乳化剤を含むことで、色材や顔料分散剤の種類によらないで、貯蔵安定性を高めることができる。
また、色材が水相に含まれるエマルションインクでは、色材を水に分散または溶解させるために水分量が多くなる傾向がある。このように水分量が多くなっても、本実施形態によれば、貯蔵安定性を良好に維持することができる。
色材が油相に含まれるエマルションインクにおいても、同様に貯蔵安定性を高めることができる。特に、顔料が顔料分散剤とともに油相に含まれるエマルションインクにおいても、電荷バランスが崩れることを防止し、貯蔵安定性を良好に維持することができる。
また、水相に酸性化合物を含み、油相に塩基性乳化剤を含むことで、低粘度で吐出安定性に優れたエマルションインクを得ることができる。
また、水分量が少なく低粘度であっても、インク中の色材の含有量を多くすることができ、印刷物の画像濃度を高めることができる。特に、エマルションインクでは水相の水分量が制限されるが、水相に色材を含ませる場合も、貯蔵安定性を良好に維持しながら色材の含有量を多くし、高画像濃度のインクを提供することができる。
「水相」
水相には、水とともに酸性基を有する液体有機化合物が含まれる。
酸性基を有する液体有機化合物(酸性化合物)としては、23℃で液体状であり酸性基を有する有機化合物である。
水相に酸性化合物が添加されることで、水相からなるエマルション液滴を、油相中に安定して分散させて、油中水型エマルションの乳化安定性を高めることができる。
酸性化合物の融点としては、室温で液体状を維持するために、23℃以下であることが好ましく、より好ましくは15℃以下である。酸性化合物は炭素数が2以上であることが好ましい。
酸性化合物は、水相の水に対する溶解度が23℃で5g/100g以上であることが好ましく、より好ましくは10g/100g以上である。
また、酸性化合物は、油相の非水溶性有機溶剤に対する溶解度が23℃で3g/100g以下であることが好ましく、より好ましくは0.5g/100g以下である。
一層好ましくは、酸性化合物は、油中水型エマルションの配合割合において、水相の溶剤である水に実質的に全て溶解し、非水溶性有機溶剤に実質的に溶解しないものである。
酸性化合物が水相の水に溶解し、油相の非水溶性有機溶剤に溶解しないことで、水相からなるエマルション液滴に酸性化合物を閉じ込めて、エマルション液滴の分散安定性をより高めることができる。
酸性化合物のpHは、10質量%水溶液において、好ましくは2〜7であり、より好ましくは2.5〜6.5である。
酸性化合物の酸性基としては、リン酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸エステル基、硫酸エステル基、硝酸エステル基、亜リン酸基、ホスホン酸基、スルフィン酸基等を挙げることができる。これらは、1分子中に1種、または2種以上組み合わせて含まれてもよい。酸性基は、酸性化合物1分子中に2個以上有することが好ましい。
酸性化合物は、オリゴマー、ポリマー、低分子量化合物のいずれであってもよい。
オリゴマーまたはポリマーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂等を、単独で、または併用して用いることができる。また、これらの樹脂を構成するモノマーまたはオリゴマーの共重合体を用いてもよい。
酸性基としては、オリゴマーまたはポリマーを構成するモノマーに由来して、各構成単位の主鎖または側鎖に酸性基が結合して導入されていてもよい。例えば、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸の共重合体等を挙げることができる。この場合、カルボキシ基がアクリル酸の割合に応じて導入される。また、(メタ)アクリル酸エステルとアシッド・ホスホキシ・(メタ)アクリレートの共重合体等を挙げることができる。この場合、リン酸基が導入される。
また、酸性基としては、オリゴマーまたはポリマーをリン酸エステル化して導入されていてもよい。この場合、水酸基の位置及び割合に応じてリン酸基が導入される。オリゴマーまたはポリマーの両末端に水酸基を有する場合、オリゴマーまたはポリマーの両末端にリン酸基が導入されて、合計2個のリン酸基を有する。
酸性化合物がオリゴマーまたはポリマーである場合は、重量平均分子量が500〜10000であることが好ましく、より好ましくは1000〜5000である。
酸性化合物としてのオリゴマーまたはポリマーの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンリン酸エステル等のポリオキシアルキルのリン酸エステル、ポリエーテルポリエステルリン酸エステル等のリン酸エステル化合物;アルキルポリホスホン酸;カルボキシ基含有(メタ)アクリルポリマー等を挙げることができる。これらは、単独で、または複数種を併用してもよい。
酸性化合物としては、リン酸エステル、硫酸エステル、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸等の低分子量化合物を用いてもよい。
酸性化合物は、酸価を持つことが好ましい。酸性化合物の酸価は3〜200mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは10〜150mgKOH/gである。
ここで、酸価は、不揮発分1g中の全酸性成分を中和するのに必要な水酸化カリウムのミリグラム数である。以下同じである。
中でも、酸価が10mgKOH/g以上であるリン酸基、ホスホン酸基、リン酸エステル基及びカルボキシ基の1種以上を有する液体有機化合物であることが好ましく、リン酸基が特に好ましい。また、酸性化合物の両末端にリン酸基を有するものが一層好ましい。
市販されているもののなかから、酸性化合物として用いることができるものとしては、例えば、ビックケミー・ジャパン社製「DISPERBYK102、106、110、111、180、190、194N、2015」(いずれも商品名)、巴工業社製「TEGODispers655」、EFKA社製「Efka6230」、キレスト株式会社製「PH−210」、東亞合成株式会社製「ARUFON UC3510」、ユニケミカル株式会社製「CM294P」、Evonik社製「TEGO(R) Dispers 651(特殊変性ポリエーテル重合物のリン酸エステル)」等を挙げることができる。
酸性化合物の含有量としては、水相全量に対し0.1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%である。
酸性化合物の含有量としては、インク全量に対し0.01〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜6質量%である。
酸性化合物と色材の質量比は、1.5≧(酸性化合物の質量)/(色材の質量)≧0.5であることが好ましい。この範囲で、乳化安定性に優れた油中水型エマルションを提供することができる。
酸性化合物は、色材、特に自己分散顔料との併用時に色材が凝集しないものを選択することが好ましい。
水相は、表面張力低下剤をさらに含むことができる。
水相に表面張力低下剤が添加されることで、水相の各成分と水との界面張力の差を小さくし、より微細なエマルション液滴を得ることができる。さらに、水相に表面張力添加材を添加することで、高温での貯蔵安定性をより高めることができる。
表面張力低下剤は、水相の酸性化合物の表面張力を低下させる成分であることが好ましい。水相に色材が配合される場合は、表面張力低下剤としては、水相の酸性化合物とともに色材の表面張力を低下させる成分であることが好ましい。
表面張力低下剤は、水相の酸性化合物及び色材の混合物の表面張力を30〜50mN/mにするものが好ましく、より好ましくは35〜45mN/m、さらに好ましくは37.5〜42.5mN/mにするものである。
表面張力低下剤としては、特に制限されないが、水相の酸性化合物及び色材の混合物との併用時に色材が凝集しないように選択することが好ましい。
表面張力低下剤としては、例えば、アセチレンジオール系化合物、ポリエーテル変性シロキサン、シリコーン系化合物、フッ素系化合物等を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なかでも、表面張力低下剤として、アセチレンジオール系化合物、ポリエーテル変性シロキサンを好ましく用いることができる。
アセチレンジオール系化合物としては、エチレンオキサイド(EO)が50〜90質量%付加されたアセチレンジオールを用いることができる。この場合、1分子中にEOが5〜50モル付加していることが好ましい。
アセチレンジオール系化合物としては、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製);
オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、EXP.4123、EXP.4300、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製);
アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等を挙げることができる。
ポリエーテル変性シロキサンとしては、例えば、BYK345、346、347、348、349、3455、302、307、322、323、331、333、342、377、378(以上全て商品名、ビックケミー・ジャパン社製)等を挙げることができる。
水相の溶媒は、蒸留水やイオン交換水等の水であることが好ましい。
水は、水相の溶媒の70〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは80〜100質量%である。
水相は、水溶性有機溶剤をさらに含むことができる。
水溶性有機溶剤としては、室温で液体であり、水に溶解可能な有機化合物を使用することができ、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合する水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、2−メチル−2−プロパノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のグリコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン類;モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン等のアセチン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;トリエタノールアミン、1−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、β−チオジグリコール、スルホラン等を用いることができる。
水溶性有機溶剤の沸点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。一方、水溶性溶剤の沸点の下限値は、水溶性溶剤が−20〜90℃の範囲で液状であれば特に制限されない。水溶性有機溶剤は、油相に用いる非水溶性有機溶剤と実質的に相溶しないように選択されることが好ましい。
これらの水溶性有機溶剤は、単独で使用してもよく、水と単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。水溶性有機溶剤のインク中の含有量は、2種以上が用いられる場合はその合計含有量として、5〜50質量%であることが好ましく、10〜35質量%であることがより好ましい。
水溶性有機溶剤を用いることで、乳化時に水相の表面張力を低下させて、油相と水相の界面張力の差を小さくすることができる。これによって、乳化時に強い機械力でせん断しなくても微細なエマルションを形成することが可能になり、乳化時の温度上昇を抑制することができる。
水溶性有機溶剤は、エマルション調整時に油相と水相の界面張力の差を小さくすることに役立つため、エマルション調整後に除去してもよい。
水溶性有機溶剤の除去は、エバポレ−タ−やホットプレ−ト等を用いて、減圧及び/または加熱により行われる。このとき、減圧及び/または加熱の程度は、水溶性有機溶剤が除去されるが、水の一部及び非水溶性有機溶剤は残るように調整する。
この場合、水溶性有機溶剤は、沸点が100℃以下であることが好ましく、より好ましくは90℃以下である。
水相には、本発明の効果を損なわない範囲で、金属塩、電解質、保湿剤、水溶性高分子、水中油(O/W)型樹脂エマルション、防黴剤、防腐剤、pH調整剤、凍結防止剤等のその他の任意成分を添加してもよい。
「油相」
油相には、非水溶性有機溶剤とともに塩基性乳化剤が含まれる。
非水溶性有機溶剤としては、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤の何れも使用できる。これらは、単独で使用してもよく、組み合わせて使用することもできる。なお、本発明において、非水溶性有機溶剤としては、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合しない有機溶剤である。非水溶性有機溶剤としては、水に実質的に相溶しない有機溶剤であることが好ましい。
非極性有機溶剤としては、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤等の石油系炭化水素溶剤を好ましく挙げることができる。
脂肪族炭化水素溶剤及び脂環式炭化水素溶剤としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系等の非水溶性有機溶剤を挙げることができ、市販品としては、0号ソルベントL、0号ソルベントM、0号ソルベントH、カクタスノルマルパラフィンN−10、カクタスノルマルパラフィンN−11、カクタスノルマルパラフィンN−12、カクタスノルマルパラフィンN−13、カクタスノルマルパラフィンN−14、カクタスノルマルパラフィンN−15H、カクタスノルマルパラフィンYHNP、カクタスノルマルパラフィンSHNP、アイソゾール300、アイソゾール400、テクリーンN−16、テクリーンN−20、テクリーンN−22、AFソルベント4号、AFソルベント5号、AFソルベント6号、AFソルベント7号、ナフテゾール160、ナフテゾール200、ナフテゾール220(いずれもJX日鉱日石エネルギー株式会社製);アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、エクソールD40、エクソールD60、エクソールD80、エクソールD95、エクソールD110、エクソールD130(いずれも東燃ゼネラル石油株式会社製)等を好ましく挙げることができる。
芳香族炭化水素溶剤としては、グレードアルケンL、グレードアルケン200P(いずれもJX日鉱日石エネルギー株式会社製)、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、ソルベッソ200ND(いずれも東燃ゼネラル石油株式会社製)等を好ましく挙げることができる。
石油系炭化水素溶剤の蒸留初留点は、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがいっそう好ましい。蒸留初留点はJIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定することができる。
極性有機溶剤としては、脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等を好ましく挙げることができる。
例えば、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸イソオクチル、パルミチン酸イソステアリル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸イソブチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソオクチル、イソステアリン酸イソプロピル、ピバリン酸2−オクチルデシル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル等の1分子中の炭素数が13以上、好ましくは16〜30の脂肪酸エステル系溶剤;
イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソエイコシルアルコール、デシルテトラデカノール等の1分子中の炭素数が6以上、好ましくは12〜20の高級アルコール系溶剤;
ラウリン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、α−リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の1分子中の炭素数が12以上、好ましくは14〜20の高級脂肪酸系溶剤等が挙げられる。
脂肪酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等の極性有機溶剤の沸点は、150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることがさらに好ましい。なお、沸点が250℃以上の非水溶性有機溶剤には、沸点を示さない非水溶性有機溶剤も含まれる。
これらの非水溶性有機溶剤は、単独で使用してもよく、単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。また、使用する非水溶性有機溶剤と単一相を形成できる範囲で他の有機溶剤を含ませてもよい。
これらの中でも、油相の非水溶性有機溶剤として、非極性有機溶剤が好ましく、より好ましくはナフテン系、パラフィン系、イソパラフィン系等の炭化水素溶剤である。
非水溶性有機溶剤は、Hansenの溶解性パラメーター(HSP値)が14〜18MPa/cm3であることが好ましい。また、非水溶性有機溶剤は、分散項δdが12〜20、極性項δpが0〜4、水素結合項δhが0〜4であることが好ましい。
非水溶性有機溶剤の50%留出点としては、400℃以下であることが好ましく、より好ましくは300℃以下である。一方、非水溶性有機溶剤の50%留出点の下限値は、非水溶性有機溶剤の揮発を防止してエマルションインクの安定性を保つために、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。油相に非水溶性有機溶剤が2種以上含まれる場合は、油相を構成する2種以上の非水溶性有機溶剤の混合物の50%留出点がこの範囲であることが好ましい。
50%留出点は、JIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定される、質量で50%の溶剤が揮発したときの温度を意味する。
塩基性乳化剤は、塩基性基を有する乳化剤である。
塩基性乳化剤は、塩基性乳化剤を非水溶性有機溶剤に溶解させるときに、塩基性乳化剤の濃度が高くなるほど酸化還元電位(ORP値)が低くなるものであることが好ましい。
例えば、塩基性乳化剤を溶解可能な溶媒に塩基性乳化剤を溶解させる際に、塩基性乳化剤を0.5質量%溶解させたときのORP値に比べて、塩基性乳化剤を5.0質量%溶解させたときのORP値が低い値を示すものであることが好ましい。
また、塩基性乳化剤をドデカンに5.0質量%溶解させたときのORP値は、0mV以下であることが好ましい。
一方、塩基性乳化剤に塩基性基とともに酸性基が含まれる場合は、このORP値が低くなる傾向を示す範囲内であれば、酸性基が含まれていても、塩基性乳化剤として好ましく用いることができる。
塩基性乳化剤の塩基性基としては、例えばアミノ基、アミド基、ピリジル基、イミノ基、ピロリドン基等を挙げることができ、中でもアミノ基、イミノ基、ピロリドン基であることが好ましい。また、塩基性乳化剤の塩基性基としては、ウレタン結合等を有する窒素含有の官能基を挙げることができる。また、ウレタン結合等の窒素含有の構成単位が塩基性乳化剤に導入されていてもよい。
塩基性乳化剤としては、例えば、変性ポリウレタン、塩基性基含有ポリ(メタ)アクリレート、塩基性基含有ポリエステル、ポリエステルアミン、第4級アンモニウム塩、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、脂肪酸アミン塩、ポリエステルポリアミン、ポリエステルポリイミン、ポリアルキロールアミノアマイドとその塩、ポリエーテルポリアミン、ビニルピロリドン系共重合体から選択される塩基性乳化剤等を挙げることができる。なかでも、高分子乳化剤が好ましく、特に、ポリエステルポリアミン、ポリエステルポリイミン、ポリアルキロールアミノアマイドとその塩、ポリエーテルポリアミン、ビニルピロリドン系共重合体が好ましい。これらは、単独で、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
また、塩基性乳化剤としては、炭素数12以上のアルキル基を有する単位を含む第1ブロックと、塩基性基を有する単位を含む第2ブロックとを有するブロック共重合体等を用いることができる。
塩基性乳化剤として、市販されているものとしては、例えば、
日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース11200、13940(以上、ポリエステルポリイミン)、17000、18000、19000(以上、ポリエステルポリアミン)、24000、32000、38500、39000、71000(以上、ポリエーテルポリアミン)、22000、28000」(いずれも商品名)、
ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK109(ポリアルキロールアミノアマイドとその塩)、116、2096、2163」(いずれも商品名);
花王株式会社製「アセタミン24、86(以上、アルキルアミン塩系)」(いずれも商品名);
楠本化成株式会社製「ディスパロンKS−860、KS−873N4(以上、高分子ポリエステルのアミン塩)」(いずれも商品名);
クローダジャパン株式会社製「Hypermer KD−3(塩基性の高分子アミド)」;
味の素ファインテクノ株式会社製「アジスパーPB−821」;
ISP社製「ANTARON V−216((ビニルピロリドン/ヘキサデセン)共重合体)、V−220((ビニルピロリドン/エイコセン)共重合体)」等を挙げることができる。
塩基性乳化剤は、アミン価を持つことが好ましい。塩基性乳化剤のアミン価は、好ましくは3〜200mgKOH/gであり、より好ましくは10〜150mgKOH/gであり、一層好ましくは30〜100mgKOH/gである。これによって、微細かつ安定なエマルション液滴を作製することができる。
ここで、アミン価は、不揮発分1gに含まれる全塩基性成分を中和するのに必要な塩酸と当量の水酸化カリウムのミリグラム数である。以下同じである。
油相中の塩基性乳化剤は、エマルションの安定性の観点から、連続相全体に対し0.1〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
塩基性乳化剤は、インク全量に対し、0.05〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
油相には、本発明の効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、表面張力調整剤、消泡剤等のその他の任意成分を添加してもよい。
「色材」
色材は水相及び油相のうち少なくとも一方に含まれればよく、両方に含まれてもよい。色材としては、染料及び顔料のいずれも使用可能である。
水相に色材が含まれる場合、顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料及び染付レーキ顔料等の有機顔料並びに無機顔料を用いることができる。アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキシサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。無機顔料としては、代表的にはカーボンブラック及び酸化チタン等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
染料としては、たとえば、塩基性染料、酸性染料、直接染料、可溶性バット染料、酸性媒染染料、媒染染料、反応染料、バット染料、硫化染料等のうち水溶性の染料、および、還元等により水溶性になった水溶性染料を好ましく用いることができる。また、アゾ系、アントラキノン系、アゾメチン系、ニトロ系等の分散染料も好ましく用いることができる。
一方、油相に色材が含まれる場合、顔料としては、上記水相に含有させることができる顔料と同様の公知の顔料を用いることができる。
染料としては、たとえば、アゾ系、アントラキノン系、アジン系等の油溶性染料を用いることができる。
色材として顔料を使用する場合、水相または油相中における顔料の分散を良好にするために、水相または油相に顔料分散剤をさらに添加することができる。エマルションの安定性に影響しないように、ノニオン系の顔料分散剤を用いることが好ましい。
ノニオン系の顔料分散剤の具体例としては、BASF社製「EFKA4520(変性ポリウレタン)、4510、4530、4540、4550、4570、4590(変性ポリアクリレート)」(いずれも商品名);第一工業製薬社製「ディスコールN−509(ポリアルキレンポリアミンアルキレンオキシド付加物)」;ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK−193」等が挙げられる。
顔料分散剤の含有量は、上記顔料を十分に油相中に分散可能な量であれば足り、適宜設定すればよい。
水相に色材が配合される場合、水相の色材としては、自己分散顔料を好ましく用いることができる。
自己分散顔料は、水に自己分散可能な顔料であり、顔料表面にカルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン基等の水に対する可溶化基を数多く有し、高分子分散剤が存在しなくても安定に分散する顔料である。自己分散顔料は、通常の顔料に対して、酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等の表面処理等を施すことにより得ることができる。
自己分散顔料としては、特に限定されず、例えば、特開平8−3498号公報、特表2000−513396号公報等に記載の方法によって表面処理された自己分散顔料を用いることができる。
また、顔料の表面に水溶性官能基を直接導入する方法としては、例えばカ−ボンブラックを次亜塩素酸ソ−ダで酸化処理する方法等が挙げられる。この方法によれば、カ−ボンブラック表面に、−COO(M)基やラクトン基を導入させることができる。
上記自己分散型顔料に用いることができる顔料としては、特に限定されず、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。また、上記表面処理を行うのに適した顔料としては、MA8及びMA100(以上、三菱化学株式会社製)、カラーブラックFW200(デグサ社製)等のカ−ボンブラック等を挙げることができる。
自己分散顔料の平均粒子径(直径)は、好ましくは60nm以上であり、より好ましくは70nm以上、さらに好ましくは75nm以上である。また、好ましくは145nm以下であり、より好ましくは140nm以下、さらに好ましくは130nm以下である。
ここで、平均粒子径は、液中での動的光散乱法により求められたものである。
具体的な平均粒子径の測定方法としては、動的光散乱式粒径分布測定装置「LB−500」(株式会社堀場製作所製)、FPAR−1000(大塚電子株式会社製、キュムラント法解析)、ナノトラックUPA 150EX(日機装株式会社製、50%の積算値の値とする)等を使用して測定することができる。以下同じである。
黒色の自己分散顔料の市販品としては、例えば、CAB−O−JET200、300、400(キャボットジャパン株式会社製);BONJET BLACK CW−1S、CW−2、CW−3、CW−4、CW−5、CW−6(オリヱント化学工業株式会社製);LIOJET WD BLACK 002C(東洋インキ株式会社製);Aqua−BLACK001、162(東海カ−ボン株式会社製);SDP BLACK 100、1000、2000(センシエント社製)等を挙げることができる。
また、カラーの自己分散顔料を用いてもよい。カラーの自己分散顔料としては、センシエントカラーズ株式会社製SMART CYAN、MAGENTA、YELLOW、ULTRA CYAN、MAGENTA、YELLOW;キャボットジャパン株式会社製CAB−O−JET250C、270C、450C、260M、265M、465M、270Y、470Y、740Y等を挙げることができる。
自己分散顔料は、必要に応じて2種類以上を組み合わせて同一インク中に用いることができる。
色材の含有量は、所望される画像濃度や色彩に応じて変更されるが、インク全量に対し、固形分質量基準で、1〜15質量%が好ましく、より好ましくは3〜10質量%である。色材が1重量%以上であることで、十分な画像濃度を得ることができる。色材が15質量%以下であることで、インクジェット印刷に適した低粘度のインクを得ることができる。また、色材の含有量がこの範囲であることで、インクの貯蔵安定性を良好に維持することができる。
色材が水相に含まれる場合、色材は、水相全量に対し、0.1〜10質量%で含まれることが好ましい。
色材が油相に含まれる場合、色材は、油相全量に対し、0.1〜10質量%で含まれることが好ましい。
「エマルションインクの調整方法」
油中水(W/O)型エマルションは、上記した油相と水相とを混合、乳化させることにより製造することができる。水相と油相は、予め別々に調製しておくことが好ましい。次いで、油相中に水相を添加しながら乳化させることができる。あるいは、水相に、油相を構成する成分を一括または個別に添加した後に、乳化させてもよい。水相と油相の乳化には、ディスパーミキサー、ホモミキサ−等の乳化機を用いることができる。
水相は、それぞれ例えばディスパ-等の撹拌混合機又はビ-ズミル等の分散機に全成分を一括又は分割して投入して分散ないし混合させ、所望により、メンブレンフィルタ-等のろ過機を通すことにより調製することができる。油相も水相と同様に調整することができる。
本発明の油中水型エマルションは、油相40〜95質量%及び水相60〜5質量%となるように配合することが好ましい。水相の比率が60質量%を越えると、油中水型エマルション中で水相が分離することがある。水相の比率が5質量%に満たないと、インクとして使用した場合、画像濃度が低くなったり、印刷物に裏抜けが発生したりすることがある。一般に、水相の比率が高くなると、エマルション粘度が上昇する傾向があるため、インク中の両相の配合比率は、油相50〜95質量%及び水相50〜5質量%がより好ましく、油相60〜95質量%及び水相40〜10質量%がさらにより好ましく、油相70〜95質量%及び水相30〜15質量%が特に好ましい。
エマルション液滴の平均粒子径は、500nm以下程度であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることが一層好ましい。
エマルション液滴の平均粒子径は、動的光散乱法にしたがって測定することができる。
エマルションの平均粒子径は、油相に配合される塩基性乳化剤の量や、水相の水分量等を調整することで制御することができる。
インク中の水分量は、高い印刷物の印刷濃度と裏抜け低減を維持しつつ、インクの低粘度化が図れるため、インク全量に対して、好ましくは3〜50質量%であり、より好ましくは5〜40質量%であり、一層好ましくは10〜35質量%である。
色材として水相に自己分散顔料を用いる場合では、自己分散顔料は通常、固形分質量基準で5〜20質量%で市販されており、インク中の顔料の含有量を高くすると、水分量も多くなり、インク粘度も高くなることがある。そのため、インク中の顔料の含有量を高くしつつ、水分量を低減させるために、エマルション調整の際に水分の一部を除去することが好ましい。水分の除去は、乳化前、乳化中、乳化後のいずれでもよい。水分の除去は、自己分散顔料の析出を防ぐために、酸性化合物の存在下で行うことが好ましい。また、自己分散顔料はエマルション中では塩基性乳化剤と酸性化合物の存在下、安定状態にあると推定されるため、水の除去は乳化後に行うことがより好ましい。
水分の除去は、上記した水溶性有機溶剤の除去と同様の方法を用いることができる。
(第2の実施形態)
本発明の他の実施形態による油中水型エマルションインクジェットインクは、水と塩基性基を有する液体有機化合物とを含む水相、及び非水溶性有機溶剤と酸性乳化剤とを含む油相を有し、前記水相及び前記油相のうち少なくとも一方が色材を含む、ことを特徴とする。
これによれば、貯蔵安定性及び吐出安定性とともに画質に優れる油中水型エマルションインクを提供することができる。
以下の説明において、上記した第1の実施形態と重複する部分については説明を省略する。また、塩基性基を有する液体有機化合物を単に「塩基性化合物」と称することがある。
本実施形態によれば、水相に塩基性化合物を含み、油相に酸性乳化剤を含むことで、水相からなるエマルション液滴を油相に安定して分散させることができる。
色材が水相に含まれるエマルションインクでは、色材の水に対する分散性または溶解性を高めるように、親水性の官能基が導入された色材を用いたり、顔料とともに顔料分散剤を用いたりする。このようなエマルションインクでは、電荷バランスが崩れて、貯蔵安定性が低下しやすい。本実施形態では、水相に塩基性化合物を含み、油相に酸性乳化剤を含むことで、色材や顔料分散剤の種類によらないで、貯蔵安定性を高めることができる。
また、色材が水相に含まれるエマルションインクでは、色材を水に分散または溶解させるために水分量が多くなる傾向がある。このように水分量が多くなっても、本実施形態によれば、貯蔵安定性を良好に維持することができる。
色材が油相に含まれるエマルションインクにおいても、同様に貯蔵安定性を高めることができる。特に、顔料が顔料分散剤とともに油相に含まれるエマルションインクにおいても、電荷バランスが崩れることを防止し、貯蔵安定性を良好に維持することができる。
また、水相に塩基性化合物を含み、油相に酸性乳化剤を含むことで、低粘度で吐出安定性に優れたエマルションインクを得ることができる。
また、水分量が少なく低粘度であっても、インク中の色材の含有量を多くすることができ、印刷物の画像濃度を高めることができる。特に、エマルションインクでは水相の水分量が制限されるが、水相に色材を含ませる場合も、貯蔵安定性を良好に維持しながら色材の含有量を多くし、高画像濃度のインクを提供することができる。
「水相」
水相には、水とともに塩基性基を有する液体有機化合物が含まれる。
塩基性基を有する液体有機化合物(以下、単に「塩基性化合物」と称することがある。)としては、23℃で液体状であり塩基性基を有する有機化合物である。
水相に塩基性化合物が添加されることで、水相からなるエマルション液滴を、油相中に安定して分散させて、油中水型エマルションの乳化安定性を高めることができる。
塩基性化合物の融点としては、室温で液体状を維持するために、23℃以下であることが好ましく、より好ましくは15℃以下である。また、塩基性化合物の炭素数は2以上であることが好ましい。
塩基性化合物は、水相の水に対する溶解度が23℃で5g/100g以上であることが好ましく、より好ましくは10g/100g以上である。
塩基性化合物としては、油相の非水溶性有機溶剤に対し溶解度が3g/100g以下であることが好ましく、より好ましくは0.5g/100g以下である。
一層好ましくは、塩基性化合物は、油中水型エマルションの配合割合において、水相の溶剤である水に実質的に全て溶解し、非水溶性有機溶剤に実質的に溶解しないものである。
塩基性化合物が水相の水に溶解し、油相の非水溶性有機溶剤に溶解しないことで、水相からなるエマルション液滴に塩基性化合物を閉じ込めて、エマルション液滴の分散安定性をより高めることができる。
塩基性化合物のpHは、10質量%水溶液において、好ましくは7〜9であり、より好ましくは7.5〜8.5である。
塩基性化合物の塩基性基としては、例えばアミノ基、ピリジル基等を挙げることができる。アミノ基としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、及びこれらの組み合わせのいずれであってもよい。中でも、塩基性化合物に第2級アミノ基(イミノ基)が含まれることが好ましい。また、塩基性化合物の塩基性基としては、ウレタン結合やアミド結合等を有する窒素含有の官能基を挙げることができる。また、ウレタン結合やアミド結合等の窒素含有の構成単位が塩基性化合物に導入されていてもよい。
塩基性化合物としては、1分子中に塩基性基を2個以上有する液体有機化合物であることが好ましい。
塩基性化合物は、オリゴマー、ポリマー、低分子量化合物のいずれであってもよい。
オリゴマーまたはポリマーとしては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエチレンイミン等を、単独で、または併用して用いることができる。また、これらの樹脂を構成するモノマーまたはオリゴマーの共重合体を用いてもよい。
塩基性基としては、オリゴマーまたはポリマーを構成するモノマーに由来して、各構成単位の主鎖または側鎖に酸性基が結合して導入されていてもよい。
また、塩基性基としては、オリゴマーまたはポリマーのアルキルアンモニウム塩やアミン塩等として導入されていてもよい。
塩基性化合物がオリゴマーまたはポリマーである場合は、重量平均分子量が500〜10000であることが好ましく、より好ましくは1000〜5000である。
塩基性化合物としては、例えば、変性ポリウレタン、塩基性基含有ポリ(メタ)アクリレート、塩基性基含有ポリエステル、ポリエステルアミン、ポリエチレンイミン、第4級アンモニウム塩、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、脂肪酸アミン塩等を挙げることができる。これらは、単独で、または複数種を組み合わせて使用してもよい。
塩基性化合物は、アミン価を持つことが好ましい。塩基性化合物のアミン価は、好ましくは2〜200mgKOH/gであり、より好ましくは4〜100mgKOH/gである。
塩基性化合物としては、塩基性基を有し酸性基を有さない液体有機化合物であっても、塩基性基とともに酸性基を有する液体有機化合物であってもよい。塩基性基とともに酸性基を有する液体有機化合物としては、上記した酸性化合物のうち塩基性基をともに有する化合物を用いることができる。
市販されているもののなかから、塩基性化合物として用いることができるものとしては、例えば、
ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK106、180、185、191、198」;日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース20000」(いずれも商品名)等を用いることができる。
塩基性化合物の含有量としては、水相全量に対し0.1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜15質量%である。
塩基性化合物の含有量としては、インク全量に対し0.01〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜6質量%である。
塩基性化合物と色材の質量比は、1.5≧(塩基性化合物の質量)/(色材の質量)≧0.5であることが好ましい。この範囲で、乳化安定性に優れた油中油型エマルションを提供することができる。
塩基性化合物は、色材、特に自己分散顔料との併用時に色材が凝集しないものを選択することが好ましい。
水相の溶媒は水であることが好ましく、さらに表面張力低下剤及び/または水溶性有機溶剤を含むことができる。詳細については、第1の実施形態で説明した通りである。
「油相」
油相には、非水溶性有機溶剤とともに酸性乳化剤が含まれる。
非水溶性有機溶剤の詳細については、第1の実施形態で説明した通りである。
酸性乳化剤は、酸性基を有する乳化剤である。
酸性乳化剤は、酸性乳化剤を非水溶性有機溶剤に溶解させるときに、酸性乳化剤の濃度が高くなるほど酸化還元電位(ORP)値が高くなるものであることが好ましい。
例えば、酸性乳化剤を溶解可能な溶媒に酸性乳化剤を溶解させる際に、酸性乳化剤を0.5質量%溶解させたときのORP値に比べて、酸性乳化剤を5.0質量%溶解させたときのORP値が高い値を示すものであることが好ましい。
また、酸性乳化剤をドデカンに5.0質量%溶解させたときのORP値は、500mV以上であることが好ましく、より好ましくは1000mV以上である。
酸性乳化剤の酸性基としては、リン酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸エステル基、硫酸エステル基、硝酸エステル基、亜リン酸基、ホスホン酸基、スルフィン酸基等を挙げることができる。なかでも、リン酸基、カルボキシ基、リン酸エステル基が好ましい。これらは、1分子中に1種、または2種以上組み合わせて含まれてもよい。
酸性乳化剤は、オリゴマー、ポリマー、低分子量化合物のいずれであってもよい。
オリゴマーまたはポリマーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂等を用いることができる。また、これらの樹脂を構成するモノマーまたはオリゴマーの共重合体を用いてもよい。
酸性基としては、オリゴマーまたはポリマーを構成するモノマーに由来して、各構成単位の主鎖または側鎖に酸性基が結合して導入されていてもよい。
また、酸性基としては、オリゴマーまたはポリマーをリン酸エステル化して導入されていてもよい。
酸性乳化剤がオリゴマーまたはポリマーである場合は、重量平均分子量が500〜10000であることが好ましく、より好ましくは1000〜5000である。
酸性乳化剤としては、酸性基を有するポリエステル、酸性基を有するポリエーテルを好ましく用いることができる。
酸性基を有するポリエステルとしては、例えば、ポリエステルのリン酸エステル、硝酸エステル、炭酸エステル、カルボン酸エステル等を挙げることができる。なかでも、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトンのリン酸エステル、硝酸エステル、炭酸エステル、カルボン酸エステルを好ましく用いることができる。また、酸性基を有するポリエステルとしては、12−ヒドロキシステアリン酸等の水酸基を有する高級脂肪酸の多量体を用いることができる。
酸性基を有するポリエーテルとしては、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリエーテルのリン酸エステル、硝酸エステル、炭酸エステル、カルボン酸エステル等を挙げることができる。なかでも、ポリエーテルのリン酸エステルを好ましく用いることができる。
また、酸性乳化剤としては、12−ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸等の低分子量化合物を用いることができる。
以上の酸性乳化剤は、単独で、または併用して用いることができる。
酸性乳化剤は、酸価を持つことが好ましい。酸性乳化剤の酸価は、好ましくは10〜200mgKOH/gであり、より好ましくは20〜150mgKOH/gであり、一層好ましくは30〜100mgKOH/gである。
市販されているもののなかから、酸性乳化剤として用いることができるものとしては、例えば、
日本ルーブルゾール株式会社製「ソルスパース3000(ポリエステルポリアシッド)」(12―ヒドロキシステアリン酸の6量体、酸価32mgKOH/g)、「ソルスパース21000(ポリエステルポリアシッド)」(12―ヒドロキシステアリン酸の多量体、酸価72mgKOH/g)、「ソルスパース36000(ポリエステルポリアシッド)」(ポリカプロラクトンのリン酸エステル、酸価45mgKOH/g)、「ソルスパース41000」(ポリエーテルのリン酸塩、酸価50mgKOH/g);
クローダジャパン株式会社製「Hypermer KD−4(酸性の縮合脂肪酸)」、「Hypermer KD−8」;
ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK2096」(酸価40mgKOH/g)等を挙げることができる。
油相中の酸性乳化剤は、エマルションの安定性の観点から、油相全量に対し0.1〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
酸性乳化剤は、インク全量に対し、0.05〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
色材は、水相及び油相のうち少なくとも一方に含まれる。色材の詳細については、第1の実施形態で説明した通りである。
油中水(W/O)型エマルションは、上記した第1の実施形態と同様にして、油相と水相とを混合、乳化させることによって調整することができる。
油相及び水相には、上記した第1の実施形態と同様に、任意の添加剤が含まれてもよい。
(インクジェットインク)
本実施形態によるインクジェットインクとしては、上記した油中水型エマルションをそのまま用いることも可能であり、また、必要に応じて、本発明の目的を阻害しない範囲内で、当該分野において通常用いられている各種添加剤を含ませることができる。例えば、ノズルの目詰まり防止剤、酸化防止剤、導電率調整剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、酸素吸収剤等を適宜添加することができる。これらの種類は、特に限定されることはなく、当該分野で使用されているものを用いることができる。
インクジェットインクとしての粘度は、インクジェット記録システムの吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において5〜100mPa・sであることが好ましく、5〜50mPa・sであることがより好ましく10〜20mPa・sであることが一層好ましい。
インクの粘度は、油相の構成成分の種類及び量、水相の量を調節することによって調整することができる。
インクジェットインクを用いた印刷方法としては、特に限定されず、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、いずれの方式のものであってもよい。インクジェット記録装置を用いる場合は、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドから本実施形態によるインクを吐出させ、吐出されたインク液滴を記録媒体に付着させるようにすることが好ましい。
本実施形態において、記録媒体は、特に限定されるものではなく、普通紙、コート紙、特殊紙等の印刷用紙、布、無機質シート、フィルム、OHPシート等、これらを基材として裏面に粘着層を設けた粘着シート等を用いることができる。これらの中でも、インクの浸透性の観点から、普通紙、コート紙等の印刷用紙を好ましく用いることができる。
ここで、普通紙とは、通常の紙の上にインクの受容層やフィルム層等が形成されていない紙である。普通紙の一例としては、上質紙、中質紙、PPC用紙、更紙、再生紙等を挙げることができる。普通紙は、数μm〜数十μmの太さの紙繊維が数十から数百μmの空隙を形成しているため、インクが浸透しやすい紙となっている。
また、コート紙としては、インクジェット用コート紙や、いわゆる塗工印刷用紙を好ましく用いることができる。ここで、塗工印刷用紙とは、従来から凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等で使用されている印刷用紙であって、上質紙や中質紙の表面にクレーや炭酸カルシウム等の無機顔料と、澱粉等のバインダーを含む塗料により塗工層を設けた印刷用紙である。塗工印刷用紙は、塗料の塗工量や塗工方法により、微塗工紙、上質軽量コート紙、中質軽量コート紙、上質コート紙、中質コート紙、アート紙、キャストコート紙等に分類される。塗工印刷用紙は、普通紙、インクジェット用コート紙と比較して紙表面の空隙が少ないため、インクの浸透が遅く、インク成分が紙表面に留まりやすい。そのため、本実施形態によるインクは、塗工印刷用紙に対する定着性を向上させることに適している。
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されない。特に説明のない限り、「%」は「質量%」を示す。
<インク調整>
表1〜4に示す油相の成分を各配合量で混合し油相を調製した。次に、各表に示す水相の成分を各配合量で混合し水相を調製した。表中の各成分の配合量は、質量%で示す。
各表において、液体有機化合物の酸価およびアミン価の単位は「mgKOH/g」である。
各成分に揮発分が含まれる場合は、各成分の全体量とともに不揮発分量をカッコ内に併せて示す。また、水相に含まれる揮発分のうち水分を含めたインク中の水分の合計量を各表に併せて示す。実施例20では、水相に水を別途添加した。
調製した油相に、高速ホモジナイザ−「ヒスコトロン」(商品名、マイクロテック・ニチオン社製)を用いて5000rpmで攪拌しながら上記水相を滴下した。その後、12000rpmで3分間攪拌して油中水(W/O)型エマルションインクを得た。
なお、比較例1〜4、6、7では、乳化の直後から分離が始まったため、その後の評価は行わなかった。
Figure 2017019998
Figure 2017019998
Figure 2017019998
Figure 2017019998
各成分の詳細は、以下の通りである。
「水相」
(自己分散顔料)
BONJET BLACK CW−5:オリヱント化学工業株式会社製「BONJET BLACK CW−5」、不揮発分13%、表面官能基−COONa。
SMART Magenta :センシエントカラーズ株式会社製「SMART Magenta」、不揮発分14%、表面官能基−COONa。
Cab−O−Jet 270Y:キャボットジャパン株式会社製「Cab−O−Jet 270Y」、不揮発分10%、表面官能基−SONa。
(顔料)カーボンブラック:三菱化学株式会社製「#970」。
(顔料分散剤)ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK−193」、顔料に親和性のある共重合物、ノニオン系、不揮発分40%。
(液体有機化合物)
酸価132、アミン価74の化合物:ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK−106」、酸性基を有するポリマー塩、不揮発分91%、酸価132mgKOH/g、アミン価74mgKOH/g。
酸価94、アミン価94の化合物:ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK −180」、酸基を含む共重合物のアルキロールアンモニウム塩、不揮発分81%、酸価94mgKOH/g、アミン価94mgKOH/g。
酸価30、アミン価20の化合物:ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK−191」、顔料に親和性のある共重合物、不揮発分98%、酸価30mgKOH/g、アミン価20mgKOH/g。
酸価10、アミン価0の化合物:ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK−2015」、コントロール重合のアクリル系共重合物、不揮発分40%、酸価10mgKOH/g。
酸価75、アミン価0の化合物:ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK−194N」、顔料に親和性のある共重合物、不揮発分57%、酸価75mgKOH/g。
酸価129、アミン価0の化合物:ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK−111」、酸基を含む共重合物(共重合体の両末端にリン酸基を有するリン酸エステル化合物)、不揮発分95%、酸価129mgKOH/g。
酸価10、アミン価0の化合物:ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK−190」、顔料に親和性のあるブロック共重合物、不揮発分40%、酸価10mgKOH/g。
酸価0、アミン価4の化合物:ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK−198」、塩基性の顔料親和性基を有する共重合物、不揮発分40%、アミン価4mgKOH/g。
(比較化合物)酸価0、アミン価0の化合物:TEGO(R) Dispers 652:Evonik社製「TEGO(R) Dispers 652」、有効成分100%、酸価0mgKOH/g、アミン価0mgKOH/g。
(固体樹脂)ポリビニルアルコール:株式会社クラレ製「クラレポバールPVA224」。
(表面張力低下剤)
サーフィノール465:アセチレンジオール系化合物、エアープロダクツジャパン株式会社製「サーフィノール465」。EO(エチレンオキサイド)65%付加(質量%)であり、EOが10モル付加しています。
サーフィノール485:アセチレンジオール系化合物、エアープロダクツジャパン株式会社製「サーフィノール485」。EO85%付加(質量%)であり、EOが30モル付加しています。
オルフィンEXP.4123:アセチレンジオール系化合物、日信化学工業株式会社製「オルフィンEXP.4123」。
BYK−348:ポリエーテル変性シロキサン、ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK−348」。
シリコーン系化合物「シルフェイスSAG503A」:ポリエーテル変性シリコーン、日信化学工業株式会社製「シルフェイスSAG503A」。
フッ素系化合物「サーフロンS−243」:パーフルオロアルキルEO付加物、AGCセイミケミカル株式会社社製「サーフロンS−243」。
(水溶性有機溶剤)グリセリン:和光純薬工業株式会社製「グリセリン」。
「油相」
(塩基性乳化剤)
ソルスパース11200:日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース11200」、不揮発分50%。
ソルスパース17000:日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース17000」、不揮発分100%。
ソルスパース18000:日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース18000」、不揮発分100%。
ソルスパース19000:日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース19000」、不揮発分100%。
Hypermer KD−3:クローダジャパン株式会社製「Hypermer KD−3」、不揮発分100%。
ソルスパース71000:日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース71000」、不揮発分100%。
DISPERBYK−109:ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYK−109」、不揮発分100%。
ANTARON V−216:ISP社製「ANTARON V−216」、不揮発分100%。
(酸性乳化剤)
Hypermer KD−4:クローダジャパン株式会社製「Hypermer KD−4」、不揮発分100%。
Hypermer KD−8:クローダジャパン株式会社製「Hypermer KD−8」、不揮発分100%。
ソルスパース3000:日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース3000」、不揮発分100%。
ソルスパース21000:日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース21000」、不揮発分100%。
ソルスパース41000:日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース41000」、不揮発分100%。
(比較乳化剤)
ジイソステアリン酸デカグリセリル:日光ケミカルズ株式会社製「Decaglyn2−ISV」、ジイソステアリン酸デカグリセリル。
モノイソステアリルグリセリルエーテル:花王株式会社製「ペネトールGE−IS」、モノイソステアリルグリセリルエーテル。
(非水溶性有機溶剤)
AFソルベント4号:JX日鉱日石エネルギー株式会社製「AFソルベント4号」、ナフテン系炭化水素。
アイソパーM:東燃ゼネラル石油株式会社製「アイソパーM」、イソパラフィン系炭化水素。
オレイン酸メチル:花王株式会社製「エキセパール M−OL」、脂肪酸エステル。
用いた液体有機化合物は、酸価を有する化合物は酸性基を有する液体有機化合物であり、アミン価を有する化合物は塩基性基を有する液体有機化合物であり、酸価及びアミン価をともに有する化合物は酸性基及び塩基性基を有する液体有機化合物である。酸価及びアミン価が0の化合物は、酸性基及び塩基性基を有さない液体有機化合物である。
<評価>
上記した各インクを用いて、以下の各評価を行った。結果を各表に併せて示す。
(インク粘度)
得られたエマルションインクをサンプリングし、インク粘度を測定した。インク粘度は、レオメーターARG2(ティ−・エイ・インスツルメント社製)を用いて、コーン角度2°、直径40mmで、室温(23℃)で測定した。
(貯蔵安定性)
貯蔵安定性は、エマルションインク調整直後のインク粘度と、一定条件で放置した後のインク粘度とを比較することによって評価した。
得られたエマルションインクを10mlのスクリュ−バイアル瓶に入れて、23℃1か月、50℃1か月、及び70℃1週間の条件下でそれぞれ放置した。その後、インクをサンプリングし、目視評価するとともにインク粘度を測定した。
インク粘度は、レオメーターARG2(ティ−・エイ・インスツルメント社製)を用いて、コーン角度2°、直径40mmで、室温(23℃)で測定した。
インク粘度の測定結果から、下記式によりインク粘度変化率を求めた。
インク粘度変化率(%)=100−{放置後のインク粘度(mPa・s)/調製直後のインク粘度(mPa・s)}×100
放置後のインクの目視評価及びインク粘度変化率から、以下の基準で貯蔵安定性を評価した。
A:どの放置環境でもインクの分離、顔料の凝集沈降物は見られず、インク粘度変化率が±5%以内である。
B:どの放置環境でもインクの分離、顔料の凝集沈降物は見られない。23℃1ヵ月放置ではインク粘度変化率が±5%以内であるが、50℃1ヵ月もしくは70℃1週間放置後のインク粘度変化率が±5%以上10%未満である。
C:23℃1ヵ月放置ではインクの分離、顔料の凝集沈降物は見られないが、50℃1ヵ月もしくは70℃1週間放置後にインクの分離、顔料の凝集沈降物が見られる、もしくはインク粘度変化率が±10%以上である。
D:23℃1ヵ月放置後にインクの分離、顔料の凝集沈降物が見られる、もしくはインク粘度変化率が±10%以上である。
(吐出安定性)
ライン型インクジェットプリンタ−「オルフィスEX9050」(商品名、理想科学工業株式会社製)を用いて、普通紙「理想用紙薄口」(商品名、理想科学工業株式会社製)にベタ画像を10枚連続で印刷し、インクの不吐出の様子を観察し、以下の基準で評価した。
A:不吐出がほとんど無く、1枚目と10枚目でほぼ同じ画像が印刷できた。
B:不吐出が多く、1枚目と10枚目で同じ画像が印刷できない。
C:吐出不可能、または不吐出が多過ぎてベタ画像が印刷できない。
(画像濃度)
ライン型インクジェットプリンタ−「オルフィスEX9050」(商品名:理想科学工業(株)製)を用いて、普通紙「理想用紙薄口」(商品名、理想科学工業株式会社製)にベタ画像を印刷した。ベタ画像部分の表面のOD値を分光測色計(X−Rite exact アドバンス、エックスライト社製)を用いて測定し、以下の基準で評価した。
実施例3、6、11及び12のカラー画像は、自動的にフィルターで選別される色の領域(シアン/マゼンタ/イエロー)の画像濃度の値を用いて、上記黒画像と同様に以下の基準で評価した。
A:OD値が1.15以上。
B:OD値が1.05以上1.15未満。
C:OD値が1.05未満。
上記各表に示す通り、各実施例のインクは、いずれの評価も良好であり、また、エマルションインクの粘度も適正な範囲であった。
実施例1〜9では、油相に塩基性乳化剤を含み、水相に酸性基を有する液体有機化合物を含み、貯蔵安定性及び吐出安定性とともに画質に優れる結果を得た。
実施例1〜9を通して、油相の各種塩基性乳化剤、水相の各種酸性基を有する液体有機化合物、油相の各種非水溶性有機溶剤で良好な結果が得られることがわかった。
実施例10〜14では、油相に酸性乳化剤を含み、水相に塩基性基を有する液体有機化合物を含み、貯蔵安定性及び吐出安定性とともに画質に優れる結果を得た。
実施例10〜14を通して、油相の各種酸性乳化剤、水相の各種塩基性基を有する液体有機化合物、油相の各種非水溶性有機溶剤で良好な結果が得られることがわかった。
実施例10〜14に対して実施例1〜9を比較すると、油相に塩基性乳化剤を含み、水相に酸性基を有する液体有機化合物を含むインクでは、高温での貯蔵安定性がより改善された。
実施例15〜20では、油相に塩基性乳化剤を含み、水相に酸性基を有する液体有機化合物を含み、貯蔵安定性及び吐出安定性とともに画質に優れる結果を得た。
実施例15及び16では、水相にそれぞれアセチレンジオール系表面張力低下剤及びポリエーテル変性シロキサン系表面張力低下剤を含み、貯蔵安定性及び吐出安定性がより改善された。
実施例20では、水相に顔料及び顔料分散剤を用いて、油相に塩基性乳化剤を含み、水相に酸性基を有する液体有機化合物を含み、貯蔵安定性及び吐出安定性とともに画質に優れる結果を得た。
実施例20では、水相にアセチレンジオール系表面張力低下剤を含み、貯蔵安定性及び吐出安定性がより改善された。
比較例1では、油相に酸性乳化剤を含むものの、水相に液体有機化合物を含まず、乳化安定性が低下した。
比較例2〜4では、油相に酸性乳化剤を含み、水相に酸性基を有するものの塩基性基を有さない液体有機化合物を含み、乳化安定性が低下した。
比較例5では、油相に低分子量乳化剤を含み、水相に酸性基を有する液体有機化合物を含み、十分な評価結果が得られなかった。
比較例6では、油相に塩基性乳化剤を含み、水相に酸性基を有さず塩基性基を有する液体有機化合物を含み、十分な評価結果が得られなかった。
比較例7では、油相に塩基性乳化剤を含むものの、水相の液体有機化合物が酸性基及び塩基性基を有さないものであり、乳化安定性が低下した。
比較例8では、油相に塩基性乳化剤を含むものの、水相に液体有機化合物を含まず固体樹脂を含み、乳化安定性が低下した。
比較例9では、比較例5に対して顔料を少なくしたものであり、十分な評価結果が得られなかった。
比較例10では、比較例5に対して水相に液体有機化合物を含まないものであり、乳化安定性が低下した。

Claims (10)

  1. 水と酸性基を有する液体有機化合物とを含む水相、及び
    非水溶性有機溶剤と塩基性乳化剤とを含む油相を有し、
    前記水相及び前記油相のうち少なくとも一方が色材を含む、
    インクジェット用油中水型エマルションインク。
  2. 前記酸性基を有する液体有機化合物は、酸価が10mgKOH/g以上である、請求項1に記載のインクジェット用油中水型エマルションインク。
  3. 前記酸性基を有する液体有機化合物はリン酸基を有する、請求項1または2に記載のインクジェット用油中水型エマルションインク。
  4. 前記塩基性乳化剤は、アミノ基、イミノ基及びピロリドン基のうち1種以上の塩基性基を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のインクジェット用油中水型エマルションインク。
  5. 前記塩基性乳化剤は、ポリエステルポリアミン、ポリエステルポリイミン、ポリアルキロールアミノアマイドとその塩、ポリエーテルポリアミン、及びビニルピロリドン系共重合体のうち1種以上である、請求項1から4のいずれか1項に記載のインクジェット用油中水型エマルションインク。
  6. 水と塩基性基を有する液体有機化合物とを含む水相、及び
    非水溶性有機溶剤と酸性乳化剤とを含む油相を有し、
    前記水相及び前記油相のうち少なくとも一方が色材を含む、
    インクジェット用油中水型エマルションインク。
  7. 前記酸性乳化剤は、カルボキシ基、リン酸基及びリン酸エステル基のうち1種以上の酸性基を有する、請求項6に記載のインクジェット用油中水型エマルションインク。
  8. 前記酸性乳化剤は、酸性基を有するポリエステル及び酸性基を有するポリエーテルのうち1種以上である、請求項6または7に記載のインクジェット用油中水型エマルションインク。
  9. 前記水相がアセチレンジオール系化合物及びポリエーテル変性シロキサンのうち1種以上を含む、請求項1から8のいずれか1項に記載のインクジェット用油中水型エマルションインク。
  10. 前記水相が色材を含み、前記色材が自己分散顔料である、請求項1から9のいずれか1項に記載のインクジェット用油中水型エマルションインク。
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