JP2017018018A - 可塑性油脂組成物及び該可塑性油脂組成物を使用してなる練りパイ生地 - Google Patents
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しかしながら、チップ状マーガリンには、チップ状に成形しやすくするために、高融点の油脂が配合されており、そのため、チップ状マーガリンを使用して製造した層状食品は、食感がサックリと軽いものにならなかったり、口溶けも悪くなるという問題があった。また、チップ状マーガリンは、マーガリン同士がくっ付きやすいことから、冷凍保存する必要があり、そのため、チップ状マーガリンを使用する場合は冷凍設備が必要であった。また、チップ状マーガリンを冷凍保存したとしても、結露によりマーガリン同士がくっ付く場合があった。マーガリン同士がくっ付いたものを使用すると、マーガリンが生地に均一に展延しにくいことから、チップ状マーガリンを使用して製造した場合、層状食品は形状が不均一で安定しないものとなる場合があった。また、チップ状マーガリンを使用して製造した場合、焼成前の生地は硬く締まりやすい傾向になるため、手作業での生地の成形が困難になることがあり、作業性に問題があった。
本発明の第2の発明は、前記可塑性油脂組成物が練りパイ方式で製造する層状食品用である第1の発明に記載の可塑性油脂組成物である。
本発明の第3の発明は、第1の発明又は第2の発明に記載の可塑性油脂組成物を使用してなる練りパイ生地である。
本発明の第4の発明は、第3の発明に記載の練りパイ生地を焼成してなる層状食品である。
本発明の第5の発明は、全油脂の固体脂含量が10℃で30〜55%、20℃で10〜26%、30℃で16%以下である切れ目入り可塑性油脂組成物であって、該可塑性油脂組成物の大きさが縦150〜400mm、横150〜400mm、厚さ3〜65mmであり、該可塑性油脂組成物の切れ目が一方向又は二方向に10〜60mm間隔で設けられている切れ目入り可塑性油脂組成物である。
なお、油脂のSFCは、社団法人 日本油化学会編、「基準油脂分析試験法」の2.2.9−2003 固体脂含量(NMR法)に準じて測定することができる。
また、本発明において、全油脂とは、可塑性油脂組成物に含まれる全ての油脂を合わせたもののことである。
なお、本発明において、融点とは、上昇融点のことである。また、油脂の融点は、社団法人 日本油化学会編、「基準油脂分析試験法」の2.2.4.2−1996 融点(上昇融点)に準じて測定することができる。
本発明の実施の形態に係る可塑性油脂組成物に配合するパーム系油脂は、好ましくはパーム油、ヨウ素価40〜50のパーム中融点部、ヨウ素価50〜60のパーム分別軟質油のランダムエステル交換油、ヨウ素価25〜40のパーム分別硬質油である。
なお、油脂のランダムエステル交換は、通常の方法で行うことができる。油脂のランダムエステル交換は、ランダムエステル交換反応であれば、ナトリウムメトキシド等の化学触媒を触媒とした化学的エステル交換、リパーゼを触媒とした酵素的エステル交換のどちらでも行うことができる。
また、油脂のヨウ素価は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.3.4.1−1996 ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)」に準じて測定することができる。
ランダムエステル交換油Aは、ヨウ素価が10以下であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下である。ランダムエステル交換油Aのヨウ素価が10を超える場合、水素添加を行うこともできる。ランダムエステル交換油Aに水素添加を行う場合、水素添加はエステル交換反応前、エステル交換反応後のどちらでも行うことができる。
ランダムエステル交換油Aの原料油脂のラウリン系油脂は、好ましくはパーム核オレインである。また、ランダムエステル交換油Aの原料油脂のパーム系油脂は、好ましくはパームステアリンである。
また、ランダムエステル交換油Aは、エステル交換反応前のラウリン系油脂とパーム系油脂との配合比(ラウリン系油脂:パーム系油脂)が好ましくは30:70〜70:30であり、より好ましくは40:60〜60:40である。
また、前記したように、油脂のランダムエステル交換は、化学的エステル交換、酵素的エステル交換のどちらでも行うことができる。
また、油脂の構成脂肪酸の分析は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f−96準拠)を用いて行うことができる。
また、本発明の実施の形態に係る可塑性油脂組成物は、全油脂の構成脂肪酸中のトランス脂肪酸含量が好ましくは5質量%未満であり、より好ましくは3質量%未満であり、さらに好ましくは1質量%未満である。
本発明の実施の形態に係る切れ目入り可塑性油脂組成物は、全油脂の固体脂含量が10℃で30〜55%、20℃で10〜26%、30℃で16%以下である切れ目入り可塑性油脂組成物であって、該可塑性油脂組成物の大きさが縦150〜400mm、横150〜400mm、厚さ3〜65mmであり、該可塑性油脂組成物の切れ目が一方向又は二方向に10〜100mm間隔で設けられている。
なお、本発明において、練りパイ方式での層状食品の製造とは、小麦粉にマーガリン等の可塑性油脂組成物を加え混ぜ合わせた生地に、水、食塩等を加えて生地をまとめた後、必要に応じて圧延、折り込みを行った生地を焼成することによって層状食品を製造することである。また、練りパイ方式では、焼成前の生地にシートマーガリン等のシート状の可塑性油脂組成物を包み込むことを行わずに製造する。
なお、本発明において、練りパイ生地は、穀粉、油脂成分、砂糖、粉乳、卵、食塩、水等を原料とし、練りパイ方式で製造される層状食品の焼成前の生地のことである。また、本発明において、層状食品とは、パイ等の焼成後の生地が層状に膨らむ食品のことである。また、本発明において、穀粉とは、穀物を挽いて粉状にしたもののことである。
本発明の実施の形態に係る練りパイ生地の原料として使用する穀粉は、通常、焼菓子に配合されるものであれば、特に制限なく使用することができる。穀粉の具体例としては、小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉等)、大麦粉、米粉、とうもろこし粉、ライ麦粉等が挙げられるが、好ましくは小麦粉である。
本発明の実施の形態に係る練りパイ生地は、その他の成分として、通常、練りパイ生地に配合される成分を、通常量配合することができる。
本発明の実施の形態に係る層状食品の具体例としては、包餡パイ(パイ饅頭、リーフパイ、アメリカンパイ等)スティックパイ、キッシュ、タルト、ピザ、ビスケット、スコーン等が挙げられる。
以下に示す油脂のSFC、ヨウ素価、融点、脂肪酸含量の測定は以下の方法により測定した。
油脂のSFCは、社団法人 日本油化学会編、「基準油脂分析試験法」の2.2.9−2003 固体脂含量(NMR法)に準じて測定した。
油脂のヨウ素価は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.3.4.1−1996 ヨウ素価(ウィイス−シクロヘキサン法)」に準じて測定した。
油脂の融点は、社団法人 日本油化学会編、「基準油脂分析試験法」の2.2.4.2−1996 融点(上昇融点)に準じて測定した。
油脂の脂肪酸含量は、AOCS Ce1f−96に準じて測定した。
パーム核オレイン10kg(ラウリン酸含量41質量%)とパームステアリン(ヨウ素価32)10kgとを混合して減圧下115〜120℃で加熱乾燥した後、触媒としてナトリウムメトキシド20gを添加し、30分間減圧下で攪拌しながらランダムエステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、水洗、脱色した後、ニッケル触媒を用いて160〜200℃にて、ヨウ素価が2以下になるまで水素添加を行った。ヨウ素価が2以下になった後、温度を100℃以下に下げ、ニッケル触媒をろ過により除去し、脱色、脱臭を行うことで、ランダムエステル交換油Aを得た。
パームオレイン(ヨウ素価56)20kgを、115〜120℃で減圧乾燥し、ナトリウムメトキシド20gを添加し、30分間減圧下で攪拌し、ランダムエステル交換反応を行った。エステル交換反応終了後、水洗、脱色、脱臭を行うことで、油脂B1(ヨウ素価56)得た。
パーム中融点部(ヨウ素価45)を油脂B2とした。
パームステアリン(ヨウ素価32)を油脂B3とした。
パーム油(ヨウ素価52)を油脂B4とした。
ヤシ油の極度硬化油(ラウリン酸含量46.5質量%)を油脂Cとした。
菜種油(5℃で流動性及び透明性を有する)を油脂Dとした。
ランダムエステル交換油A(4.08質量部)、油脂B1(19.59質量部)、油脂B2(45.715質量部)、油脂D(12.25質量部)、乳化剤(0.8質量部)、香料(0.165質量部)、着色料(カロテン)(0.001質量部)を溶解混合することで油相を調製した。次に、水(16.0質量部)、食塩(0.2質量部)、脱脂粉乳(0.5質量部)、風味補強材(0.5質量部)、調味料(0.2質量部)を混合することで水相を調製し、調製した油相82.601質量部と水相17.4質量部とを混合して予備乳化を行った。得られた予備乳化物を、オンレーターを用いて急冷可塑化することで、比較例1の可塑性油脂組成物(油中水型乳化物)を得た。比較例1の可塑性油脂組成物の全油脂中の各油脂の含量、SFC、融点、トランス脂肪酸含量を表1に示した。なお、比較例1の可塑性油脂組成物は、特定の大きさ、形状には成形されていない。
比較例1の可塑性油脂組成物を圧延機で縦220mm、横220mm、厚さ11mmの直方体に成形した後、カッターを使用して、横方向に44mm間隔で深さ7mmの切れ目を入れることで、切れ目入り可塑性油脂組成物を得た。得られた切れ目入り可塑性油脂組成物を切れ目で切り離し、さらに4等分に割ることで、縦55mm、横44mm、厚さ11mmで直方体の可塑性油脂組成物を得て、これを実施例1の可塑性油脂組成物とした。実施例1の可塑性油脂組成物の全油脂中の各油脂の含量、SFC、融点、トランス脂肪酸含量を表1に示した。
ランダムエステル交換油A(8.17質量部)、油脂B2(21.41質量部)、油脂B3(7.2質量部)、油脂B4(16.3質量部)、油脂C(12.3質量部)、油脂D(16.35質量部)、乳化剤(0.9質量部)、香料(0.25質量部)、着色料(カロテン)(0.001質量部)を溶解混合することで油相を調製した。次に、水(12.52質量部)、食塩(0.2質量部)、乳製品(4.2質量部)、調味料(0.2質量部)を混合することで水相を調製し、調製した油相82.881質量部と水相17.12質量部とを混合して予備乳化を行った。得られた予備乳化物を、オンレーターを用いて急冷可塑化することで、可塑性油脂組成物(油中水型乳化物)を得た。得られた可塑性油脂組成物を圧延機で縦220mm、横220mm、厚さ11mmの直方体に成形した後、カッターを使用して、横方向に44mm間隔で深さ7mmの切れ目を入れることで、切れ目入り可塑性油脂組成物を得た。得られた切れ目入り可塑性油脂組成物を切れ目で切り離し、さらに4等分に割ることで、縦55mm、横44mm、厚さ11mmで直方体の可塑性油脂組成物を得て、これを実施例2の可塑性油脂組成物とした。実施例2の可塑性油脂組成物の全油脂中の各油脂の含量、SFC、融点、トランス脂肪酸含量を表1に示した。
市販のチップ状マーガリン(長さ30〜40mm、直径6mm)を比較例2の可塑性油脂組成物とした。比較例2の可塑性油脂組成物の全油脂中のSFC、融点、トランス脂肪酸含量を表1に示した。
市販のチップ状マーガリン(長さ10mm、直径6mm)を比較例3の可塑性油脂組成物とした。比較例3の可塑性油脂組成物の全油脂中のSFC、融点、トランス脂肪酸含量を表1に示した。
表2の配合及び以下の製造工程で包餡パイを製造した。なお、実施例1、2の可塑性油脂組成物及び比較例1の可塑性油脂組成物は冷蔵保存されたものを使用し、比較例2、3の可塑性油脂組成物は冷凍保存されたものを使用した。
工程1:可塑性油脂組成物、ふるった小麦粉(薄力粉、強力粉)と脱脂粉乳を合わせて、ビーターにて良くすり合わせる。(低速3分)
工程2:上白糖、食塩を加える。
工程3:全卵と加水をして、生地をまとめる。(低速1分、中低速30秒、低速30秒)
工程4:乾かないように、ラップやビニール包み、冷蔵庫で一晩休ませる。
工程5:生地を20gに分割し丸めて中に餡(並白餡100質量部、オレンジピール10質量部、オレンジセック0.2質量部)を15g包む。
工程6:平らに押さえ(直径40mm位)、天板に等間隔に並べる。
工程7:艶出し用の卵をハケで塗る(2度塗り)。
工程8:以下の条件で焼成する。
焼成条件
焼成温度:上火200℃、下火180℃
焼成時間:約20分
焼成前の生地調製時の作業性、焼成後の包餡パイのボリューム、焼成後の包餡パイを食したときの食感、口溶けを下記評価基準により評価した。評価結果は3点又は4点である場合を良好であると判断した。結果を表2に示した。
4点:非常に良い
3点:良い
2点:悪い
1点:非常に悪い
4点:非常にある
3点:ある
2点:あまりない
1点:ほとんどない
4点:非常に軽くサックリした食感
3点:軽くサックリした食感
2点:もろい食感
1点:ザクザクした食感
4点:非常に良い
3点:良い
2点:悪い
1点:非常に悪い
一方、表2から分かるように、比較例の包餡パイは、全ての評価が良好ではなかった。
表2の包餡パイの実施例4の配合と同じ配合で、包餡パイの製造工程の工程4まで同じ操作を行い、生地を調製した。その後、以下の製造工程で実施例5のスティックパイを製造した。実施例2の可塑性油脂組成物は冷蔵保存されたものを使用した。
工程5:生地をリバースシーターで3つ折り3回、最終厚5mmまでのばす。
工程6:幅約10mm(約13g)にカットし、グラニュー糖をまぶす。
工程7:以下の条件で焼成する。
焼成条件
焼成温度:上火190℃、下火180℃
焼成時間:約18分
焼成前の生地調製時の作業性、焼成後のスティックパイのボリューム、焼成後のスティックパイを食したときの食感、口溶けを包餡パイの評価基準と同様の基準により評価した。その結果、実施例5のスティックパイは、全ての評価項目が4点であり、生地調製時の作業性が良く、食感がサックリと軽く、口溶けが良く、ボリュームがあるものであった。
Claims (5)
- 全油脂の固体脂含量が10℃で30〜55%、20℃で10〜26%、30℃で16%以下である可塑性油脂組成物であって、該可塑性油脂組成物の大きさが縦30〜400mm、横10〜100mm、厚さ3〜65mmである可塑性油脂組成物。
- 前記可塑性油脂組成物が練りパイ方式で製造する層状食品用である請求項1に記載の可塑性油脂組成物。
- 請求項1又は請求項2に記載の可塑性油脂組成物を使用してなる練りパイ生地。
- 請求項3に記載の練りパイ生地を焼成してなる層状食品。
- 全油脂の固体脂含量が10℃で30〜55%、20℃で10〜26%、30℃で16%以下である切れ目入り可塑性油脂組成物であって、該可塑性油脂組成物の大きさが縦150〜400mm、横150〜400mm、厚さ3〜65mmであり、該可塑性油脂組成物の切れ目が一方向又は二方向に10〜100mm間隔で設けられている切れ目入り可塑性油脂組成物。
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C22 | Notice of designation (change) of administrative judge |
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