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JP2017003727A - 液晶配向剤、液晶配向膜、液晶表示素子、重合体及びジアミン - Google Patents

液晶配向剤、液晶配向膜、液晶表示素子、重合体及びジアミン Download PDF

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JP2017003727A
JP2017003727A JP2015116443A JP2015116443A JP2017003727A JP 2017003727 A JP2017003727 A JP 2017003727A JP 2015116443 A JP2015116443 A JP 2015116443A JP 2015116443 A JP2015116443 A JP 2015116443A JP 2017003727 A JP2017003727 A JP 2017003727A
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Japan
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liquid crystal
group
polymer
acid
formula
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JP2015116443A
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利之 秋池
Toshiyuki Akiike
利之 秋池
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Original Assignee
JSR Corp
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Abstract

【課題】電圧保持率、残像特性及び印刷性をバランス良く兼ね備えた液晶配向剤を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される部分構造及び下記式(2)で表される部分構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造を有する重合体[P]を液晶配向剤に含有させる。
Figure 2017003727

(式(1)中、Rは、水素原子又はカルボキシル基の保護基である。「*」は、共役構造に結合する結合手であることを示す。式(2)中、Rは、水素原子又はカルボキシル基の保護基である。「*」は結合手であることを示す。)
【選択図】なし

Description

本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜、液晶表示素子、重合体及びジアミンに関する。
従来、液晶表示素子としては、電極構造や使用する液晶分子の物性、製造工程等が異なる種々の駆動方式のものが開発されており、例えばTN(Twisted Nematic)型やSTN(Super Twisted Nematic)型、VA(Vertical Alignment)型、IPS型(In-Plane Switching)、FFS(fringe field switching)型等の各種液晶表示素子が知られている。これら液晶表示素子は、液晶分子を配向させるための液晶配向膜を有する。液晶配向膜の材料としては、耐熱性、機械的強度、液晶との親和性などの各a種特性が良好である点から、ポリアミック酸やポリイミドが一般に使用されている。
近年、液晶表示素子の表示性能の更なる向上を図るべく、種々の液晶配向剤が提案されている。例えば、残像の低減を目的として、イミド基以外に窒素原子を有するポリイミドやその前駆体を含む液晶配向剤を用いて液晶配向膜を形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物を含むテトラカルボン酸二無水物と、4,4’−ジアミノベンズアミドなどのアミド基含有ジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸、及びテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるポリアミック酸のイミド化重合体、を液晶配向剤に含有させるとともに、液晶配向剤中におけるイミド化重合体の有するイミド環の数の割合を特定範囲とすることが提案されている。特許文献1では、こうした液晶配向剤を用いることで、電圧保持性能及び残像特性の改善を図るようにしている。
特開2009−294274号公報
重合体の構造を剛直化すると、得られる液晶表示素子の電圧保持性能や残像特性が改善するが、溶剤に対する溶解性が低下し、印刷性が低下するおそれがある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電圧保持率、残像特性及び印刷性をバランス良く兼ね備えた液晶配向剤を提供することを一つの目的とする。
本発明者らは、上記のような従来技術の課題を達成するべく鋭意検討した結果、特定の構造を有する重合体を液晶配向剤に含有させることにより、上記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明により以下の液晶配向剤、液晶配向膜、液晶表示素子、重合体及びジアミンが提供される。
本発明は一つの側面において、下記式(1)で表される部分構造及び下記式(2)で表される部分構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造を有する重合体[P]を含有する液晶配向剤を提供する。
Figure 2017003727
(式(1)中、Rは、水素原子又はカルボキシル基の保護基である。「*」は、共役構造に結合する結合手であることを示す。)
Figure 2017003727
(式(2)中、Rは、水素原子又はカルボキシル基の保護基である。「*」は結合手であることを示す。)
本発明は他の一つの側面において、上記液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を提供する。また、他の一つの側面において、上記液晶配向膜を具備する液晶表示素子を提供する。また、他の一つの側面において、ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル又はポリアリーレンからなる骨格を主鎖とし、かつ上記式(1)で表される部分構造及び上記式(2)で表される部分構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造を有する重合体を提供する。
本発明は他の一つの側面において、下記式(1A)で表される部分構造又は下記式(2)で表される部分構造を有するジアミンを提供する。
Figure 2017003727
(式(1A)中、R1Aは、カルボキシル基の保護基である。「*」は、共役構造に結合する結合手であることを示す。)
Figure 2017003727
(式(2)中、Rは、水素原子又はカルボキシル基の保護基である。「*」は結合手であることを示す。)
上記によれば、電圧保持率、残像特性及び印刷性をバランス良く兼ね備えた液晶配向剤を提供することができる。
FFS型液晶表示素子の概略構成図。 ラビング配向型液晶表示素子の製造に用いたトップ電極の平面模式図。(a)はトップ電極の上面図であり、(b)はトップ電極の部分拡大図である。 4系統の駆動電極を示す図。 光配向型液晶表示素子の製造に用いたトップ電極の平面模式図。(a)はトップ電極の上面図であり、(b)はトップ電極の部分拡大図である。
以下に、本開示の液晶配向剤に含まれる各成分、及び必要に応じて任意に配合されるその他の成分について説明する。
<重合体[P]>
本開示の液晶配向剤は、下記式(1)で表される部分構造及び下記式(2)で表される部分構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造(以下、「特定構造」ともいう。)を有する重合体[P]を含有する。
Figure 2017003727
(式(1)中、Rは、水素原子又はカルボキシル基の保護基である。「*」は、共役構造に結合する結合手であることを示す。)
Figure 2017003727
(式(2)中、Rは、水素原子又はカルボキシル基の保護基である。「*」は結合手であることを示す。)
上記式(1)中のR及び上記式(2)中のRについて、カルボキシル基の保護基としては、カルボキシル基を不活性な官能基にしておく基であれば特に限定されないが、好ましくは、熱により脱離する基である。基「−COOR」及び基「−COOR」の具体例としては、例えば、カルボン酸のアセタールエステル構造、カルボン酸のケタールエステル構造、下記式(Y−1)で表される構造等が挙げられ、中でも、カルボン酸のアセタールエステル構造、又は下記式(Y−1)で表される構造であることが好ましい。
Figure 2017003727
(式(Y−1)中、R11,R12及びR13は、下記の条件1又は条件2を満たす。条件1:R11,R12及びR13は、それぞれ独立に炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数3〜8の1価の脂環式炭化水素基である。条件2:R11及びR12は、相互に結合して、R11及びR12が結合している炭素原子とともに炭素数4〜10の2価の脂環式炭化水素基を形成しており、R13は、炭素数1〜6のアルキル基である。「*」は結合手であることを示す。)
上記条件1の場合、R11,R12及びR13の炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられ、これらは直鎖状でも分岐状でもよい。炭素数3〜8の1価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のモノシクロアルキル基;ノルボルニル基、イソボルニル基等のビシクロアルキル基;アダマンチル基、トリシクロデカニル基等のトリシクロアルキル基、などが挙げられる。なお、R11,R12及びR13は、互いに同じでも異なっていてもよい。
条件1の場合のR11,R12及びR13は、熱による脱離性の観点から、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。
上記条件2の場合、R11及びR12が相互に結合して形成される2価の脂環式炭化水素基としては、例えばシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ノルボルナン、アダマンタンなどの脂肪族環から2個の水素原子を取り除いた基などが挙げられる。なお、これらの環には、メチル基、エチル基等がさらに結合していてもよい。
13の炭素数1〜6のアルキル基については、条件1の説明を適用することができる。好ましくは炭素数1〜4である。
カルボン酸のアセタールエステル構造は、下記式(X−1)で表される基が好ましい。
Figure 2017003727
(式(X−1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rは炭素数1〜12のアルキル基である。R及びRは互いに結合して、R及び「−OR」が結合する炭素原子と共に環構造を形成していてもよい。「*」は結合手であることを示す。)
式(X−1)中のRは、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられ、これらは直鎖状でも分岐状でもよい。R及びRが互いに結合して形成される環構造としては、テトラヒドロピラン環が好ましい。上記式(X−1)で表される基の具体例としては、例えば1−メトキシエトキシカルボニル基、1−エトキシエトキシカルボニル基、1−プロポキシエトキシカルボニル基、1−ブトキシエトキシカルボニル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル基などが挙げられる。
上記式(1)中のR及び上記式(2)中のRは、熱分解性の観点から、上記の中でも、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
上記式(1)中のメチレン基が結合する共役構造は、芳香環基又は炭素−炭素二重結合であることが好ましい。ここで、芳香環基は、芳香環を構成する環からn個の水素原子を取り除いたn価の基である。当該芳香環の具体例としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、好ましくはベンゼン環である。
重合体[P]において、上記式(1)中のメチレン基が結合する共役構造は、重合体の主鎖中にあってもよいし、側鎖にあってもよい。ここで、本明細書において重合体の「主鎖」とは、重合体のうち最も長い原子の連鎖からなる「幹」の部分をいう。なお、この「幹」の部分が環構造を含むことは許容される。したがって、「共役構造を主鎖に有する」とは、この構造が主鎖の一部分を構成することをいう。また、重合体の「側鎖」とは、重合体の「幹」から分岐した部分をいう。
上記共役構造が主鎖中にある場合、当該共役構造は、3価の芳香環基又は下記式(3)
Figure 2017003727
(式(3)中、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。「*」は、重合体の主鎖を構成する原子に結合する結合手であることを示し、「*」は、上記式(1)で表される部分構造に結合する結合手であることを示す。)
で表される3価の基であることが好ましい。また、上記共役構造が側鎖にある場合、当該共役構造は、2価の芳香環基又は下記式(4)
Figure 2017003727
(式(4)中、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。「*」は、重合体の主鎖に直接又は連結基を介して結合する結合手であることを示し、「*」は、上記式(1)で表される部分構造に結合する結合手であることを示す。)
で表される2価の基であることが好ましい。
液晶表示素子の電気特性及び残像特性の改善効果を好適に得る観点から、上記共役構造は重合体[P]の主鎖にあることが好ましい。
上記式(2)で表される部分構造は、重合体の主鎖に直接結合していてもよいし、連結基を介して主鎖に結合していてもよい。連結基の具体例としては、例えば−COO−、炭素数1〜5の鎖状炭化水素基、炭素数5〜12の2価の脂環式炭化水素基、炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
ここで、本明細書において「炭化水素基」は、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された飽和又は不飽和の直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。
上記式(1)で表される部分構造の好ましい具体例としては、下記式(1−1)〜式(1−8)のそれぞれで表される部分構造を挙げることができる。また、上記式(2)で表される部分構造の好ましい具体例としては、下記式(2−1)〜式(2−4)のそれぞれで表される部分構造を挙げることができる。
Figure 2017003727
Figure 2017003727
(式(1−1)〜式(1−8)及び式(2−1)〜式(2−4)中、R22は炭素数1〜6のアルキル基であり、R23は炭素数1〜6のアルカンジイル基である。「*」は、重合体の主鎖を構成する原子に結合する結合手であることを示す。R、Rは、上記式(X−1)と同義である。)
重合体[P]が有する部分構造は、中でも、上記式(1−1)、式(1−2)、式(1−7)、上記式(2−1)及び上記式(2−2)、式(2−4)のそれぞれで表される構造が好ましい。
なお、重合体[P]が有する特定構造は、下記スキーム0に示すように、加熱等により脱保護や脱炭酸を起こすものと考えられる。このため、液晶配向膜の層分離状態を制御することによって電気特性を改良したり、剛直性が高いポリマーの溶解性を高めたりすることができ、その結果、良好な印刷性、液晶配向性及び残像特性をバランス良く兼ね備えた液晶配向膜が得られたものと推測される。
Figure 2017003727
重合体[P]の主骨格は特に限定されないが、ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル又はポリアリーレンからなる骨格を有する重合体であることが好ましい。なお、ポリイミド前駆体は、ポリアミック酸及びポリアミック酸エステルを含む。液晶配向剤に配合される重合体[P]は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。以下、これら好ましい重合体について詳細に説明する。
<ポリアミック酸>
重合体[P]としてのポリアミック酸(以下、「ポリアミック酸[P]」ともいう。)は、例えばジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物とを反応させることにより得ることができる。
(ジアミン化合物)
上記反応に使用するジアミン化合物は、特定構造を有するジアミン(以下、「特定ジアミン」ともいう。)を含むことが好ましい。特定ジアミンの好ましい具体例としては、下記式(5)〜式(10)のそれぞれで表される化合物が挙げられる。なお、こうした特定ジアミンを用いることにより、重合体[P]として、特定構造を含む基を側鎖に有する重合体が得られる。
Figure 2017003727
(式(5)〜式(7)中、Rは水素原子又はカルボキシル基の保護基であり、R14はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のアルコキシ基であり、R15はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は上記式(1)で表される部分構造を有する1価の基であり、L及びLは、それぞれ独立に単結合又は2価の連結基である。n1は1〜4の整数であり、n2及びn3は、それぞれ独立に0〜4の整数であり、n4は0又は1である。一分子内にR、R14、R15が複数存在する場合、複数のR、R14、R15は互いに同じでも異なってもよい。)
Figure 2017003727
(式(8)〜式(10)中、Rは水素原子又はカルボキシル基の保護基であり、R16はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のアルコキシ基であり、R17はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は上記式(2)で表される部分構造を有する1価の基であり、L及びLは、それぞれ独立に単結合又は2価の連結基である。m1は1〜4の整数であり、m2及びm3は、それぞれ独立に0〜4の整数であり、m4は0又は1である。一分子内にR、R16、R17が複数存在する場合、複数のR、R16、R17は互いに同じでも異なってもよい。)
特定ジアミンの好ましい具体例としては、下記式(5−1)〜式(5−6)及び式(6−1)〜式(6−16)のそれぞれで表される化合物が挙げられる。なお、特定ジアミンは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
Figure 2017003727
(式(5−3)中、R22は炭素数1〜6のアルキル基であり、R23は炭素数1〜6のアルカンジイル基である。式(5−4)中のR24は水素原子又はメチル基であり、R25は炭素数1〜12のアルキル基である。)
Figure 2017003727
Figure 2017003727
(式(6−14)中、mは1〜12の整数である。)
上記反応に使用するジアミン化合物は、特定ジアミンのみであってもよいが、特定ジアミンと共にその他のジアミンを使用してもよい。その他のジアミンとしては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えばメタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)などを;脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
芳香族ジアミンとして、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−5−アミン、1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−6−アミン、3,5−ジアミノ安息香酸、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノ−N,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン、及び下記式(E−1)
Figure 2017003727
(式(E−1)中、XI及びXIIは、それぞれ独立に、単結合、−O−、*−COO−又は*−OCO−(ただし、「*」はXとの結合手を示す。)であり、Rは炭素数1〜3のアルカンジイル基であり、RIIは単結合又は炭素数1〜3のアルカンジイル基であり、aは0又は1であり、bは0〜2の整数であり、cは1〜20の整数であり、dは0又は1である。但し、a及びbが同時に0になることはない。)
で表される化合物などを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを;
それぞれ挙げることができるほか、特開2010−97188号公報に記載のジアミンを用いることができる。その他のジアミンとしては、これらを1種単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
上記式(E−1)における「−X−(R−XII−」で表される2価の基としては、炭素数1〜3のアルカンジイル基、*−O−、*−COO−又は*−O−C−O−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。基「−C2c+1」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などを挙げることができ、これらは直鎖状であることが好ましい。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位又は3,5−位にあることが好ましい。
上記式(E−1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(E−1−1)〜式(E−1−4)のそれぞれで表される化合物などを挙げることができる。
Figure 2017003727
特定ジアミンの使用割合は、ポリアミック酸の合成に使用するジアミンの全量に対して、1モル%以上とすることが好ましく、10モル%以上とすることがより好ましく、50モル%以上とすることがさらに好ましい。特定ジアミンの含有割合を1モル%以上とすることにより、剛直性の高い骨格を有しながら溶解性の高いポリアミック酸を得ることができる。特定ジアミンの使用割合の上限値は特に制限されず、その他のジアミンの使用割合に応じて、100モル%以下の範囲で任意に選定することができる。
ポリアミック酸[P]の合成に使用するテトラカルボン酸二無水物としては、例えば2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−8−メチル−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物などの脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;
ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
これらのうち好ましいものとして、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−8−メチル−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、及び3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
(ポリアミック酸の合成)
ポリアミック酸[P]は、上記のようなテトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、必要に応じて分子量調整剤とともに反応させることによって得ることができる。ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.8〜1.2当量となる割合がより好ましい。
分子量調整剤としては、例えば無水マレイン酸、無水フタル酸、無水イタコン酸などの酸一無水物、アニリン、シクロヘキシルアミン、n−ブチルアミンなどのモノアミン化合物、フェニルイソシアネート、ナフチルイソシアネートなどのモノイソシアネート化合物等を挙げることができる。分子量調整剤の使用割合は、使用するテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計100重量部に対して、20重量部以下とすることが好ましく、10重量部以下とすることがより好ましい。
ポリアミック酸の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は、−20℃〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。また、反応時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
反応に使用する有機溶媒としては、例えば非プロトン性極性溶媒、フェノール系溶媒、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素、炭化水素などを挙げることができる。これらの有機溶媒のうち、非プロトン性極性溶媒及びフェノール系溶媒よりなる群(第一群の有機溶媒)から選択される1種以上、又は、第一群の有機溶媒から選択される1種以上と、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、ハロゲン化炭化水素及び炭化水素よりなる群(第二群の有機溶媒)から選択される1種以上との混合物を使用することが好ましい。後者の場合、第二群の有機溶媒の使用割合は、第一群の有機溶媒及び第二群の有機溶媒の合計量に対して、好ましくは50重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、更に好ましくは30重量%以下である。
特に好ましい有機溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド、m−クレゾール、キシレノール及びハロゲン化フェノールよりなる群から選択される1種以上を溶媒として使用するか、あるいはこれらの1種以上と他の有機溶媒との混合物を、上記割合の範囲で使用することが好ましい。有機溶媒の使用量(x)は、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの合計量(y)が、反応溶液の全量(x+y)に対して、0.1〜50重量%になる量とすることが好ましい。
以上のようにして、ポリアミック酸[P]を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸[P]を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリアミック酸[P]を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸[P]を脱水閉環してポリイミドとする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸[P]を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、又は単離したポリアミック酸[P]を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。ポリアミック酸の単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
(特定ジアミンの合成)
特定ジアミンは、有機化学の定法を適宜組み合わせることによって合成することができる。一例を挙げると、例えば、上記式(1)で表される部分構造又は上記式(2)で表される部分構造を有するジアミン中の1級アミノ基に代えてニトロ基を有するジニトロ中間体を合成し、次いで、得られたジニトロ中間体のニトロ基を適当な還元系を用いてアミノ化する方法が挙げられる。
ジニトロ中間体を合成する方法は、目的とする化合物に応じて適宜選択することができる。ジニトロ中間体の還元反応は、好ましくは有機溶媒中、例えばパラジウム炭素、酸化白金、亜鉛、鉄、スズ、ニッケル等の触媒を用いて実施することができる。ここで使用する有機溶媒としては、例えば酢酸エチル、トルエン、テトラヒドロフラン、アルコール系等が挙げられる。但し、特定ジアミンの合成手順は上記方法に限定されるものではない。
<ポリアミック酸エステル>
重合体[P]の主鎖がポリアミック酸エステルの場合、該重合体[P]は、例えば、[I]上記で得られたポリアミック酸[P]とエステル化剤とを反応させる方法、[II]テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを反応させる方法、[III]テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミンとを反応させる方法、などによって得ることができる。
なお、本明細書において「テトラカルボン酸ジエステル」とは、テトラカルボン酸が有する4個のカルボキシル基のうち2個がエステル化され、残りの2個がカルボキシル基である化合物を意味する。「テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物」とは、テトラカルボン酸が有する4個のカルボキシル基のうち2個がエステル化され、残りの2個がハロゲン化された化合物を意味する。
方法[I]で使用するエステル化剤としては、例えば水酸基含有化合物、アセタール系化合物、エポキシ基含有化合物等が挙げられる。これらの具体例としては、水酸基含有化合物として、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール等のフェノール類などを;アセタール系化合物として、例えばN,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N−ジエチルホルムアミドジエチルアセタールなどを;エポキシ基含有化合物として、例えばプロピレンオキシドなどを、それぞれ挙げることができる。
方法[II]で使用するテトラカルボン酸ジエステルは、例えばポリアミック酸[P]の合成で例示したテトラカルボン酸二無水物を、メタノールやエタノール等のアルコール類を用いて開環することにより得ることができる。なお、方法[II]で使用するテトラカルボン酸誘導体はテトラカルボン酸ジエステルのみであってもよいが、テトラカルボン酸二無水物を併用してもよい。使用するジアミンとしては、ポリアミック酸[P]の説明で例示した特定ジアミン及びその他のジアミンが挙げられる。
方法[II]の反応は、有機溶媒中、適当な脱水触媒の存在下で行うことが好ましい。有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水触媒としては、例えば4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムハライド、カルボニルイミダゾール、リン系縮合剤などが挙げられる。このときの反応温度は、−20〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。反応時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
方法[III]で使用するテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物は、例えば上記の如くして得たテトラカルボン酸ジエステルを、塩化チオニル等の適当な塩素化剤と反応させることにより得ることができる。なお、方法[III]で使用するテトラカルボン酸誘導体はテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物のみであってもよいが、テトラカルボン酸二無水物を併用してもよい。使用するジアミンとしては、ポリアミック酸[P]の説明で例示した特定ジアミン及びその他のジアミンが挙げられる。
方法[III]の反応は、有機溶媒中、適当な塩基の存在下で行うことが好ましい。有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。塩基としては、例えばピリジン、トリエチルアミン等の3級アミン;水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類などを好ましく使用することができる。このときの反応温度は、−20〜150℃が好ましく、0〜100℃がより好ましい。反応時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.5〜12時間がより好ましい。
液晶配向剤に含有させるポリアミック酸エステルは、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。なお、ポリアミック酸エステルを溶解してなる反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸エステルを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリアミック酸エステルを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸エステルの単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
<ポリイミド>
重合体[P]の主鎖がポリイミドの場合、該重合体(以下、「ポリイミド[P]」ともいう。)は、例えばポリアミック酸[P]を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。
ポリイミド[P]は、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存する部分イミド化物であってもよい。ポリイミド[P]は、そのイミド化率が30%以上であることが好ましく、50〜99%であることがより好ましく、60〜99%であることが更に好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよい。
ポリアミック酸の脱水閉環は、好ましくはポリアミック酸を加熱する方法により、又はポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行われる。
ポリアミック酸の溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、ポリアミック酸のアミック酸構造の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は、好ましくは0〜180℃であり、より好ましくは10〜150℃である。反応時間は、好ましくは1.0〜120時間であり、より好ましくは2.0〜30時間である。
このようにしてポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリイミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。これらの精製操作は公知の方法に従って行うことができる。その他、ポリイミドは、ポリアミック酸エステルのイミド化により得ることもできる。
以上のようにして得られる重合体[P]としてのポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドは、これを濃度10重量%の溶液としたときに、10〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、15〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、上記重合体の溶液粘度(mPa・s)は、当該重合体の良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
上記ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは500〜300,000であり、より好ましくは1,000〜200,000である。Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。
<ポリアミド>
重合体[P]としてのポリアミド(以下「ポリアミド[P]」ともいう。)は、例えばジカルボン酸とジアミンとを反応させる方法などによって得ることができる。ジカルボン酸は、例えば塩化チオニル等の適当な塩素化剤を用いて酸クロリド化した後にジアミンとの反応に供することが好ましい。
上記反応に使用するジアミンとしては、ポリアミック酸の合成で例示した特定ジアミン及びその他のジアミンが挙げられる。特定ジアミンの使用割合は、ポリアミドの合成に使用するジアミンの全量に対して、1モル%以上とすることが好ましく、10モル%以上とすることがより好ましく、50モル%以上とすることがさらに好ましい。
ジカルボン酸としては、特に制限されないが、例えばシュウ酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3−ジエチルコハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、フマル酸、ムコン酸などの脂肪族ジカルボン酸;
シクロブタンジカルボン酸、1−シクロブテンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式構造を有するジカルボン酸;
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−tert−ブチルイソフタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルプロパンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−カルボニル二安息香酸、4−カルボキシ桂皮酸、p−フェニレンジアクリル酸、3,3’−[4,4’−(メチレンジ−p−フェニレン)]ジプロピオン酸、4,4’−[4,4’−(オキシジ−p−フェニレン)]二酪酸、3,4−ジフェニル−1,2−シクロブタンジカルボン酸、アゾベンゼン−4,4’−ジカルボン酸等の芳香族環を有するジカルボン酸;などを挙げることができる。なお、ジカルボン酸は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記反応におけるジカルボン酸とジアミンとの使用割合は、ジアミンのアミノ基1当量に対して、ジカルボン酸のカルボキシル基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.8〜1.2当量となる割合がより好ましい。
ジカルボン酸とジアミンとの反応は、好ましくは塩基の存在下、有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は、0℃〜200℃とすることが好ましく、10〜100℃とすることがより好ましい。また、反応時間は、0.5〜48時間とすることが好ましく、1〜36時間とすることがより好ましい。
反応に使用する有機溶媒としては、有機溶媒を使用することが好ましく、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンなどを好ましく使用することができる。有機溶媒の使用量は、ジカルボン酸ジハロゲン化物及びジアミンの合計量100重量部に対して、400〜900重量部とすることが好ましく、500〜700重量部とすることがより好ましい。
上記反応に使用する塩基としては、例えばピリジン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、N−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン、ジアザビシクロウンデセン等の3級アミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムジイソプロピルアミド、カリウムジイソプロピルアミド、t−ブチルリチウム等のアルカリ金属類;を好ましく使用することができる。塩基の使用量は、ジアミン1モルに対して、2〜4モルとすることが好ましく、2〜3モルとすることがより好ましい。
以上のようにして、ポリアミド[P]を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミドを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリアミドを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミドの単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
ポリアミド[P]の溶液粘度は、これを濃度10重量%の溶液としたときに、5〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、10〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、ポリアミドの溶液粘度(mPa・s)は、ポリアミドの良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
また、ポリアミド[P]につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜500,000であり、より好ましくは2,000〜300,000である。また、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。
<ポリエステル>
重合体[P]の主鎖がポリエステルの場合、該重合体(以下「ポリエステル[P]」ともいう。)は、例えばジカルボン酸ハロゲン化物とジアルコールとを反応させて得ることができる。なお、本明細書において「ジカルボン酸ジハロゲン化物」とは、ジカルボン酸が有する2個のカルボキシル基がハロゲン化された化合物を意味する。
上記反応に使用するジカルボン酸ハロゲン化物としては、ポリアミドの合成で例示したジカルボン酸を、例えば塩化チオニル等の適当な塩素化剤を用いて酸クロリド化した化合物等が挙げられる。
上記反応に使用するジアルコールとしては、液晶配向性の観点から、ジフェノール化合物を好ましく使用することができ、具体的には、特定構造を有するジアルコールとして、例えば下記式(11)〜式(16)のそれぞれで表される化合物が挙げられる。
Figure 2017003727
(式(11)〜式(13)中、Rは水素原子又はカルボキシル基の保護基であり、R18はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のアルコキシ基であり、R19はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は上記式(1)で表される部分構造を有する1価の基であり、L及びLは、それぞれ独立に単結合又は2価の連結基である。n5は1〜4の整数であり、n6及びn7は、それぞれ独立に0〜4の整数であり、n8は0又は1である。一分子内にR、R18、R19が複数存在する場合、複数のR、R18、R19は互いに同じでも異なってもよい。)
Figure 2017003727
(式(14)〜式(16)中、Rは水素原子又はカルボキシル基の保護基であり、R20はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のアルコキシ基であり、R21はハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は上記式(2)で表される部分構造を有する1価の基であり、L及びLは、それぞれ独立に単結合又は2価の連結基である。m5は1〜4の整数であり、m6及びm7は、それぞれ独立に0〜4の整数であり、m8は0又は1である。一分子内にR、R20、R21が複数存在する場合、複数のR、R20、R21は互いに同じでも異なってもよい。)
上記反応に使用するジアルコールとしては、下記式(11−1)及び式(11−2)のそれぞれで表される化合物が特に好ましい。
Figure 2017003727
ポリエステル[P]の合成に際し、ジアルコールとしては、特定構造を有するジアルコールのみを用いてもよいが、特定構造を有さないジアルコール(以下、「その他のジアルコール」ともいう。)を使用してもよい。特定構造を有するジアルコールの使用割合は、ポリエステルの合成に使用するジアルコールの全量に対して、1モル%以上とすることが好ましく、10モル%以上とすることがより好ましく、50モル%以上とすることがさらに好ましい。
上記反応におけるジカルボン酸ジハロゲン化物とジアルコールとの使用割合は、ジアルコールの水酸基1当量に対して、ジカルボン酸ジハロゲン化物の基「−COX(Xはハロゲン原子)」が0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.8〜1.2当量となる割合がより好ましい。また、ポリアミック酸[P]で使用したジアミン化合物を、ジアルコールの代わりに共重合させてポリエステルアミドを得ることもできる。
ジカルボン酸ジハロゲン化物とジアルコールとの反応は、好ましくは塩基の存在下、有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は、0℃〜200℃とすることが好ましく、10〜100℃とすることがより好ましい。また、反応時間は、0.5〜48時間とすることが好ましく、1〜36時間とすることがより好ましい。反応に使用する有機溶媒及び塩基は、ポリアミドの合成で使用したものと同様のものを用いることができる。
以上のようにして、ポリエステル[P]を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリエステルを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリエステルを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリエステルの単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
ポリエステル[P]の溶液粘度及び重量平均分子量(Mw)は、主骨格に応じて適宜選択することができる。具体的には、溶液粘度は、これを濃度10重量%の溶液としたときに、5〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、10〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、ポリエステルの溶液粘度(mPa・s)は、ポリエステルの良溶媒(例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
また、ポリエステル[P]につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜500,000であり、より好ましくは2,000〜300,000である。また、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。
<ポリエーテル>
重合体[P]の主鎖がポリエーテルの場合、該重合体(以下「ポリエーテル[P]」ともいう。)は、例えばジハロゲン化物又はスルホ基含有化合物と、ジアルコールとを反応させて得ることができる。
上記反応に使用するジハロゲン化物又はスルホ基含有化合物としては、例えば下記式(17)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2017003727
(式(17)中、R40は2価の有機基であり、Xはハロゲン原子又は基「−SO41」である。R41は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のフルオロアルキル基、又はフッ素原子により置換若しくは無置換の芳香環基である。)
のハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、中でも塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であることが好ましい。R41はトリフルオロメチル基が好ましい。
上記式(17)で表される化合物としては、下記式(17−1)で表される化合物が好ましい。
Figure 2017003727
(式(17−1)中、Yは水素原子又はフッ素原子であり、複数のYは同じでも異なっていてもよい。Arは、2価の芳香環基又は複素環基である。Xは上記式(17)と同義である。)
Arについて、2価の芳香環基としては、例えば、ベンゼン環などの単環;ナフタレン環やアントラセン環などの縮合環における環部分から2個の水素原子を取り除いた基などが挙げられる。2価の複素環基としては、例えばピリジン、ピペリジン、ピラジンなどの複素環の環部分から2個の水素原子を取り除いた基などが挙げられる。Arは、好ましくは1,4−フェニレン基である。
は水素原子であることが好ましい。
上記反応に使用するジアルコールとしては、ポリエステル[P]の合成で使用したものと同様のものを用いることができる。なお、ジアルコールとして、特定構造を有するジアルコールとその他のジアルコール」とを併用する場合、特定構造を有するジアルコールの使用割合はポリエステルの説明を適用することができる。ポリエーテル[P]の合成に際し、ジハロゲン化物とジアルコールとの使用割合は、ジアルコールの水酸基1当量に対して、ジハロゲン化物のハロゲン基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、0.8〜1.2当量となる割合がより好ましい。
上記反応は、好ましくは塩基の存在下、有機溶媒中において行われる。このときの反応温度は、0℃〜200℃とすることが好ましく、10〜100℃とすることがより好ましい。また、反応時間は、0.5〜48時間とすることが好ましく、1〜36時間とすることがより好ましい。
有機溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンなどを好ましく使用することができる。有機溶媒の使用量は、モノマーの合計量100重量部に対して、400〜900重量部とすることが好ましく、500〜700重量部とすることがより好ましい。
上記反応に使用する塩基としては、例えばピリジン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、N−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン、ジアザビシクロウンデセン等の3級アミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムジイソプロピルアミド、カリウムジイソプロピルアミド、t−ブチルリチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属類;を好ましく使用することができる。塩基の使用量は、ジアルコール1モルに対して、2〜4モルとすることが好ましく、2〜3モルとすることがより好ましい。
以上のようにして、ポリエーテル[P]を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリエーテルを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリエーテルを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリエーテルの単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
ポリエーテル[P]の溶液粘度は、これを濃度10重量%の溶液としたときに、5〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、10〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、重合体(P)の溶液粘度(mPa・s)は、ポリエーテル[P]の良溶媒(例えばN−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜500,000であり、より好ましくは2,000〜300,000である。また、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。
<ポリアリーレン>
重合体[P]の主鎖がポリアリーレンの場合、該重合体(以下「ポリアリーレン[P]」ともいう。)は、例えば、ジハロゲン化アリーレンやジフェノールを原料として、スキーム1のようなスズキカップリングや、スキーム2のようなゼロ価ニッケルを用いて重合することができる。
Figure 2017003727
(スキーム1中、Ar及びArは、それぞれ独立に2価の芳香環基又は複素環基であり、少なくともいずれか一方の環部分に、上記式(1)で表される部分構造又は上記式(2)で表される部分構造を有する。R42及びR43は、それぞれ独立に水素原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜12のアルキル基であり、R42とR43とが互いに結合して環を形成していてもよい。Xは、ハロゲン原子又は基「−SO41」であり、R41は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のフルオロアルキル基、又はフッ素原子により置換若しくは無置換の芳香環基である。)
Figure 2017003727
(スキーム2中、Arは、2価の芳香環基又は複素環基であり、上記式(1)で表される部分構造又は上記式(2)で表される部分構造を環部分に有する。Xは、上記スキーム1中のXと同義である。)
ポリアリーレン[P]の高分子量化の観点から、上記のうち、スズキカップリングによることが好ましい。スキーム1中の化合物(19)は、ジフェノールを原料として下記スキーム3の合成を行うことにより得ることができる。
Figure 2017003727
(スキーム3中、Ar及びR41は、それぞれスキーム1と同義である。)
上記スキーム1及びスキーム2において、Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素又は基「−SOCF」が好ましい。
スズキカップリングに使用するモノマーのうち、特定構造を有する化合物としては、例えば式(18−1)、式(18−2)、式(19−1)及び式(19−2)のそれぞれで表される化合物等を挙げることができる。なお、これらの化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
Figure 2017003727
上記反応に使用するモノマーは、特定構造を有さない化合物(以下、「その他のモノマー」ともいう。)を含んでいてもよい。その他のモノマーとしては、例えば下記式(20−1)〜式(20−5)のそれぞれで表される化合物等を挙げることができる。
Figure 2017003727
(式(20−1)〜式(20−5)中、Xは、上記スキーム1中のXと同義である。R44は、単結合又は2価の連結基である。)
44の2価の連結基としては、メチレン基、エチレン基、エーテル結合、エステル結合、エチニル基、アゾ基、イソプロピリデン基、又はヘキサフルオロイソプロピリデン基が好ましい。なお、その他のモノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
その他のモノマーの使用割合は、ポリアリーレン[P]の合成に使用するモノマーの全量に対して、95モル%以下とすることが好ましく、80モル%以下とすることがより好ましい。
スズキカップリングに使用する触媒は、Pd化合物が好ましい。具体的には、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、酢酸パラジウム等を挙げることができる。反応に際しては、配位子としてリン化合物を加えることが好ましく、その具体例としてはトリフェニルホスフィン等を挙げることができる。また、反応系に塩基を加えることが好ましい。塩基の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムを挙げることができる。
上記反応は、好ましくは有機溶媒中で行われる。使用する有機溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、アニソール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンなどを好ましく使用することができる。反応温度は、0℃〜200℃とすることが好ましく、10〜100℃とすることがより好ましい。また、反応時間は、0.5〜48時間とすることが好ましく、1〜36時間とすることがより好ましい。
以上のようにして、ポリアリーレン[P]を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアリーレンを単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、又は単離したポリアリーレンを精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアリーレンの単離及び精製は公知の方法に従って行うことができる。
ポリアリーレン[P]の溶液粘度は、これを濃度10重量%の溶液としたときに、5〜800mPa・sの溶液粘度を持つものであることが好ましく、10〜500mPa・sの溶液粘度を持つものであることがより好ましい。なお、溶液粘度(mPa・s)は、ポリアリーレン[P]の良溶媒(例えばN−メチル−2−ピロリドンなど)を用いて調製した濃度10重量%の重合体溶液につき、E型回転粘度計を用いて25℃において測定した値である。
また、ポリアリーレン[P]につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000〜500,000であり、より好ましくは2,000〜300,000である。また、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。
本開示の液晶配向剤は、重合体[P]以外のその他の成分を含有していてもよい。かかるその他の成分としては、例えば、上記式(1)で表される部分構造及び上記式(2)で表される部分構造よりなる群から選ばれる構造を側鎖に有さない重合体(以下、「その他の重合体」ともいう。)、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物、分子内に少なくとも一つのオキセタニル基を有する化合物、官能性シラン化合物、光重合性化合物、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、酸化防止剤、増感剤、防腐剤、安定化剤、粘度調整剤などを挙げることができる。その他の成分の配合割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、各化合物に応じて適宜選択することができる。
例えば、その他の重合体としては、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリエーテル、ポリアリーレン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
その他の重合体を液晶配向剤に添加する場合、その配合比率は、該組成物中の全重合体量に対して50重量%以下が好ましく、0.1〜40重量%がより好ましく、0.1〜30重量%が更に好ましい。
<溶剤>
本開示の液晶配向剤は、重合体[P]及び必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは適当な溶媒中に分散又は溶解してなる液状の組成物として調製される。
使用する有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1〜10重量%の範囲である。すなわち、液晶配向剤は、後述するように基板表面に塗布され、好ましくは加熱されることにより、液晶配向膜である塗膜又は液晶配向膜となる塗膜が形成される。このとき、固形分濃度が1重量%未満である場合には、塗膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜が得にくくなる。一方、固形分濃度が10重量%を超える場合には、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜が得にくく、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布性が低下する傾向にある。
特に好ましい固形分濃度の範囲は、液晶配向剤の用途や、基板に液晶配向剤を塗布する際に用いる方法によって異なる。例えば、スピンナー法により基板に塗布する場合には、固形分濃度が1.5〜4.5重量%の範囲であることが特に好ましい。印刷法による場合には、固形分濃度を3〜9重量%の範囲とし、それにより溶液粘度を12〜50mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。インクジェット法による場合には、固形分濃度を1〜5重量%の範囲とし、それにより、溶液粘度を3〜15mPa・sの範囲とすることが特に好ましい。液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは10〜50℃であり、より好ましくは20〜30℃である。
<液晶表示素子>
上記に説明した液晶配向剤を用いることにより液晶配向膜を製造することができる。また、上記液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜は、液晶表示素子用の液晶配向膜に適用することができる。本開示の液晶表示素子は、上記液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜を具備する。液晶表示素子の動作モードは特に限定されず、例えばTN型、STN型、VA型(VA−MVA型、VA−PVA型などを含む。)、IPS型、FFS型、OCB型など種々の動作モードに適用することができる。
液晶表示素子は、例えば以下の工程1〜工程3を含む方法により製造することができる。工程1は、所望の動作モードによって使用基板が異なる。工程2及び工程3は各動作モード共通である。
[工程1:塗膜の形成]
先ず、基板上に液晶配向剤を塗布し、基板上に塗膜を形成する。
(1−1)例えばTN型、STN型又はVA型の液晶表示素子を製造する場合、まず、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板二枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に液晶配向剤を、好ましくはオフセット印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法によりそれぞれ塗布する。基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラスなどのガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリ(脂環式オレフィン)などのプラスチックからなる透明基板を用いることができる。基板の一面に設けられる透明導電膜としては、酸化スズ(SnO)からなるNESA膜(米国PPG社登録商標)、酸化インジウム−酸化スズ(In−SnO)からなるITO膜などを用いることができる。パターニングされた透明導電膜を得るには、例えばパターンなし透明導電膜を形成した後、フォト・エッチングによりパターンを形成する方法;透明導電膜を形成する際に所望のパターンを有するマスクを用いる方法;などによることができる。液晶配向剤の塗布に際しては、基板表面及び透明導電膜と塗膜との接着性を更に良好にするために、基板表面のうち塗膜を形成する面に、官能性シラン化合物、官能性チタン化合物などを予め塗布する前処理を施しておいてもよい。
液晶配向剤を塗布して塗膜を形成した後、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30〜200℃であり、より好ましくは40〜150℃であり、特に好ましくは40〜100℃である。プレベーク時間は、好ましくは0.25〜10分であり、より好ましくは0.5〜5分である。その後、溶剤を完全に除去し、必要に応じて重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。このときの焼成温度(ポストベーク温度)は、好ましくは80〜300℃であり、より好ましくは120〜250℃である。ポストベーク時間は、好ましくは5〜200分であり、より好ましくは10〜100分である。このようにして形成される膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
(1−2)IPS型又はFFS型の液晶表示素子を製造する場合、櫛歯型にパターニングされた透明導電膜又は金属膜からなる電極が設けられている基板の電極形成面と、電極が設けられていない対向基板の一面とに液晶配向剤をそれぞれ塗布して塗膜を形成する。このとき使用される基板及び透明導電膜の材質、塗布方法、塗布後の加熱条件、透明導電膜又は金属膜のパターニング方法、基板の前処理、並びに形成される塗膜の好ましい膜厚については上記(1−1)と同様である。金属膜としては、例えばクロムなどの金属からなる膜を使用することができる。
上記(1−1)及び(1−2)のいずれの場合も、基板上に液晶配向剤を塗布した後、有機溶媒を除去することによって液晶配向膜又は液晶配向膜となる有機薄膜が形成される。このとき、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドの少なくともいずれかが液晶配向剤に配合されている場合には、塗膜形成後に更に加熱することによって、液晶配向剤に配合されるポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドの脱水閉環反応を進行させ、よりイミド化された塗膜としてもよい。基板上に液晶配向剤を塗布した後、加熱処理を行うことにより、重合体[P]を含有する液晶配向膜又は液晶配向膜となる有機薄膜が得られる。
[工程2:配向能付与処理]
TN型、STN型、IPS型又はFFS型の液晶表示素子を製造する場合、上記工程1で形成した塗膜に液晶配向能を付与する処理を実施する。これにより、液晶分子の配向能が塗膜に付与されて液晶配向膜となる。配向能付与処理としては、塗膜を例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦るラビング処理、塗膜に対して偏光又は非偏光の放射線を照射する光配向処理などが挙げられる。一方、VA型液晶表示素子を製造する場合には、上記工程1で形成した塗膜をそのまま液晶配向膜として使用することができるが、該塗膜に対し配向能付与処理を施してもよい。
光配向処理における光照射は、[1]ポストベーク工程後の塗膜に対して照射する方法、[2]プレベーク工程後であってポストベーク工程前の塗膜に対して照射する方法、[3]プレベーク工程及びポストベーク工程の少なくともいずれかにおいて塗膜の加熱中に塗膜に対して照射する方法、などにより行うことができる。これらのうち、得られる液晶表示素子の信頼性をより高くできる点で、[2]の方法によることが好ましい。
光配向処理において、塗膜に照射する放射線としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。放射線が偏光である場合、直線偏光であっても部分偏光であってもよい。また、用いる放射線が直線偏光又は部分偏光である場合には、照射は基板面に垂直の方向から行ってもよく、斜め方向から行ってもよく、又はこれらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向とする。
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーなどを使用することができる。好ましい波長領域の紫外線は、光源を、例えばフィルター、回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。放射線の照射量は、好ましくは100〜50,000J/mであり、より好ましくは300〜20,000J/mである。また、塗膜に対する光照射は、反応性を高めるために塗膜を加温しながら行ってもよい。加温の際の温度は、通常30〜250℃であり、好ましくは40〜200℃であり、より好ましくは50〜150℃である。
なお、ラビング処理後の液晶配向膜に対して更に、液晶配向膜の一部に紫外線を照射することによって液晶配向膜の一部の領域のプレチルト角を変化させる処理や、液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成した上で先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにしてもよい。この場合、得られる液晶表示素子の視界特性を改善することが可能である。VA型の液晶表示素子に好適な液晶配向膜は、PSA(Polymer sustained alignment)型の液晶表示素子にも好適に用いることができる。
[工程3:液晶セルの構築]
(3−1)上記のようにして液晶配向膜が形成された基板を2枚準備し、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法が挙げられる。第一の方法は、従来から知られている方法である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。また、第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、更に液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせるとともに液晶を基板の全面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。いずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、更に、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
液晶としては、ネマチック液晶及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましく、例えばシッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶などを用いることができる。また、これらの液晶に、例えばコレスチルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネートなどのコレステリック液晶;商品名「C−15」、「CB−15」(メルク社製)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメートなどの強誘電性液晶などを、添加して使用してもよい。
(3−2)PSA型液晶表示素子を製造する場合には、液晶と共に光重合性化合物を注入又は滴下する点以外は上記(3−1)と同様にして液晶セルを構築する。その後、一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する。ここで印加する電圧は、例えば5〜50Vの直流又は交流とすることができる。また、照射する光としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができるが、300〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーなどを使用することができる。なお、上記の好ましい波長領域の紫外線は、光源を、例えばフィルター回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。光の照射量としては、好ましくは1,000〜200,000J/mであり、より好ましくは1,000〜100,000J/mである。
(3−3)光重合性基を有する化合物を含む液晶配向剤を用いて基板上に塗膜を形成した場合、上記(3−1)と同様にして液晶セルを構築し、その後、一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する工程を経ることにより液晶表示素子を製造する方法を採用してもよい。印加する電圧は、例えば0.1〜30Vの直流又は交流とすることができる。照射する光の条件については、上記(3−2)の説明を適用することができる。
そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより液晶表示素子を得ることができる。液晶セルの外表面に貼り合わされる偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
本開示の液晶表示素子は、種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイなどの各種表示装置に用いることができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
合成例における各重合体の重量平均分子量、ポリイミドのイミド化率、各重合体溶液の溶液粘度及びエポキシ当量は以下の方法により測定した。なお、下記の例では、「式(X)で表される化合物」を単に「化合物(X)」と記すことがある。
[重合体の重量平均分子量]
重合体の重量平均分子量Mwは、以下の条件におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGRCXLII
溶剤:テトラヒドロフラン、又は、リチウムブロミド及びリン酸含有のN,N−ジメチルホルムアミド溶液
温度:40℃
圧力:68kgf/cm
[重合体溶液の溶液粘度]
重合体溶液の溶液粘度[mPa・s]は、所定の溶媒を用い、重合体濃度10重量%に調製した溶液について、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
[ポリイミドのイミド化率]
ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH−NMRを測定した。得られたH−NMRスペクトルから、下記数式(1)で示される式によりイミド化率[%]を求めた。
イミド化率[%]=(1−A/A×α)×100 …(1)
(数式(1)中、Aは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、Aはその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
[エポキシ当量]
エポキシ当量は、JIS C2105の「塩酸−メチルエチルケトン法」に準じて測定した。
<化合物の合成(1)>
[合成例M1]
下記スキーム4に従って化合物(5−1)を合成した。
Figure 2017003727
2Lのオートクレーブに2,4−ジニトロフェニル酢酸22.6g、テトラヒドロフラン200mL、エタノール200mL及び5%Pd/Cを1.13g仕込んだ。次に、水素を吹き込み1.4kg/cmとした後、室温で20時間反応させた。反応終了後、セライトろ過を行って得たろ液を50mLまで減圧濃縮し、得られた溶液を1Lのヘキサンで再沈殿させた。沈殿をろ過にて回収し、真空乾燥することで化合物(5−1)を15.8g得た。
[合成例M2]
下記スキーム5に従って化合物(5−2)を合成した。
Figure 2017003727
・化合物(5−2B)の合成
還流管及び窒素導入管を備えた500mLナスフラスコに2,4−ジニトロフェニル酢酸22.6g、テトラヒドロフラン300mL及び化合物(5−2A)24.4gを加えて8時間還流させた。反応終了後、濃縮し、アルミナカラムで精製(展開溶剤:ヘキサン:酢酸エチル=8:2(v/v))し、濃縮・乾固することで化合物(5−2B)を22.6g得た。
・化合物(5−2)の合成
2Lのオートクレーブに化合物(5−2B)22.6g、テトラヒドロフラン200mL、エタノール200mL及び5%Pd/Cを1.13g仕込んだ。次に、水素を吹き込み1.4kg/cmとした後、室温で20時間反応させた。反応終了後、セライトろ過を行って得たろ液を50mLまで減圧濃縮し、得られた溶液を1Lの水で再沈殿させた。沈殿をろ過にて回収し、真空乾燥することで化合物(5−2)を16.7g得た。
[合成例M3]
下記スキーム6に従って化合物(5−6)を合成した。
Figure 2017003727
・化合物(5−6A)の合成
温度計及び窒素導入管を備えた1Lの三口フラスコに2,4−ジニトロヨードベンゼン29.4g、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)アセテート0.75g、ヨウ化銅0.19gを加え、系内を真空/窒素置換により脱気した後、N,N−ジメチルホルムアミド300mL、トリイソプロピルアミン40.5g及びプロピオール酸−t−ブチル13.9gを加えて50℃で8時間反応させた。反応終了後、セライトろ過して得たろ液に酢酸エチル300mL、テトラヒドロフラン300mL及び希塩酸300mLを加えて水層を除去した後、水で3回分液洗浄を行い、硫酸マグネシウムで乾燥させた。続いて、減圧濃縮して析出した結晶をろ過、乾燥することで化合物(5−6A)の結晶を23.4g得た。
・化合物(5−6)の合成
温度計及び窒素導入管を備えた1Lの三口フラスコに化合物(5−6A)23.4g、テトラヒドロフラン200mL、亜鉛粉末104.6g、塩化アンモニウム17.2g及びエタノール85mLを加えて5℃以下に氷冷した。続いて、水43.2mLをゆっくり加えた後、室温に戻して一昼夜反応させた。反応終了後、セライトろ過して得たろ液を50mLまで減圧濃縮した後、500mLの水に注ぎ、生じた沈殿をろ過した。この沈殿をテトラヒドロフランに溶かし、アルミナカラム(展開溶剤:ヘキサン:酢酸エチル=5:5(v/v))で精製し、濃縮・乾固することで化合物(5−6)を11.1g得た。
[合成例M4]
下記スキーム7に従って化合物(6−7)を合成した。
Figure 2017003727
・化合物(6−7A)の合成
窒素導入管を備えた500mLのナスフラスコに4−ニトロブロモベンゼン20.2g、N,N−ジメチルホルムアミド200mL、クロロ酢酸−t−ブチル16.6g及びピバル酸カリウム12.3gを加え、室温で2時間反応させた。反応終了後、2Lのメタノールに注いで生じた沈殿をろ過により回収し、沈殿を水で洗浄、乾燥することで化合物(6−7A)を25.3g得た。
・化合物(6−7B)の合成
窒素導入管及び温度計を備えた500mLの三口フラスコに化合物(6−7A)25.3g、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)ジクロリド1.53gを仕込み、系内を窒素で置換した。つづいて、N,N−ジメチルホルムアミド300mL及びテトラキスジアミノエチレン32.0gを加え、50℃で8時間反応させた。反応終了後、セライトろ過して得たろ液に酢酸エチルを1L加え、500mLの水で3回分液洗浄を行った後、硫酸マグネシウムで乾燥した。次に、50mLまで減圧濃縮し、アルミナカラム(展開溶剤:ヘキサン:酢酸エチル=8:2(v/v))で精製し、濃縮、乾固することで化合物(6−7B)を15.1g得た。
・化合物(6−7)の合成
1Lのオートクレーブに化合物(6−7B)15.1g、テトラヒドロフラン100mL、エタノール100mL及び5%Pd/Cを0.76g仕込んだ。次に、水素を吹き込み1.4kg/cmとした後、室温で20時間反応させた。反応終了後、セライトろ過を行って得たろ液を50mLまで減圧濃縮し、得られた溶液を1Lの水で再沈殿させた。沈殿をろ過にて回収し、真空乾燥することで化合物(6−7)を11.9g得た。
[合成例M5]
下記スキーム8に従って化合物(6−12)を合成した。
Figure 2017003727
・化合物(6−12B)の合成
温度計及び窒素導入管を備えた1Lの三口フラスコに化合物(6−12A)22.4g、N,N−ジメチルアセトアミド500mL、炭酸カリウム30.4g及び4−ニトロフルオロベンゼン31.0gを加えて100℃で8時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル1L及びテトラヒドロフラン1Lを加えて、500mLの水で3回分液洗浄を行った後、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して析出した結晶をろ過、乾燥することで化合物(6−12B)37.3gを得た。
・化合物(6−12)の合成
2Lのオートクレーブに化合物(6−12B)37.3g、テトラヒドロフラン200mL、エタノール200mL及び5%Pd/Cを1.87g仕込んだ。次に、水素を吹き込み1.4kg/cmとした後、室温で20時間反応させた。反応終了後、セライトろ過を行って得たろ液を100mLまで減圧濃縮し、得られた溶液を1Lの水で再沈殿させた。沈殿をろ過にて回収し、真空乾燥することで化合物(6−12)を26.0g得た。
<重合体の合成(1)>
[合成例P1]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物4.79g、ジアミンとして化合物(5−1)2.99g(重合に使用したジアミンの全量に対して80モル%)及びコレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン2.22g(同20モル%)を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)40gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を20重量%含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は98mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、NMPを追加してポリアミック酸濃度7重量%の溶液とし、ピリジン2.53g及び無水酢酸3.27gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換(本操作によって脱水閉環反応に使用したピリジン及び無水酢酸を系外に除去した。以下同じ。)することにより、イミド化率約63%のポリイミド(PI−1)を26重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は51mPa・sであった。次いで、反応溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、ポリイミド(PI−1)を得た。
[合成例P2]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物6.22g、ジアミンとして化合物(6−7)13.8gを、NMP80gに溶解し、40℃で3時間反応を行い、固形分濃度10重量%、溶液粘度110mPa・sのポリアミック酸溶液を得た。次いで、このポリアミック酸溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、ポリアミック酸(PAA−1)を得た。
[合成例P3]
下記表1のモノマー組成で合成例P2と同様に重合を行い、固形分濃度10重量%、溶液粘度170mPa・sのポリアミック酸溶液を得た。また、得られたポリアミック酸溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、ポリアミック酸(PAA−2)を得た。
[合成例P4、P5]
イミド化条件をピリジン500モル%、無水酢酸300モル%、90℃、12時間に変えた以外は下記表1に示すモノマー組成で合成例P1と同様に行い、ポリイミド(PI−2),(PI−3)をそれぞれ得た。
[比較合成例1,2,4]
下記表1のモノマー組成で合成例P1と同様に重合を行い、ポリイミド(RPI−1),(RPI−2),(RPI−3)をそれぞれ得た。
[比較合成例3]
下記表1のモノマー組成で合成例P2と同様に重合を行い、ポリイミド(RPAA−1)を得た。
[比較合成例5]
下記表1のモノマー組成で合成例P4と同様に重合を行い、ポリイミド(RPI−4)を得た。
Figure 2017003727
表1中、モノマー組成の数値は、重合に使用したテトラカルボン酸二無水物の全量に対する各化合物の使用割合[モル%]、及び重合に使用したジアミンの全量に対する各化合物の使用割合[モル%]をそれぞれ示す。化合物の略称は以下の通りである。
<テトラカルボン酸二無水物>
TCA:2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物
CB:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
<ジアミン>
(D1):コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン
DAB:3,5−ジアミノ安息香酸
TLDA:2,4−トルエンジアミン
OTL:オルトトリジン
(E−1−4):上記式(E−1−4)で表される化合物
なお、(5−1)、(5−2)、(5−6)、(6−7)、(6−12)は、対応する番号の特定ジアミンを示す。
[合成例S1]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECETS)100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で撹拌しつつ、80℃で6時間反応を行った。反応終了後、有機層を取り出し、0.2重量%硝酸アンモニウム水溶液により、洗浄後の水が中性になるまで洗浄した後、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、反応性ポリオルガノシロキサン(EPS−1)を粘調な透明液体として得た。この反応性ポリオルガノシロキサンについて、H−NMR分析を行ったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。得られた反応性ポリオルガノシロキサンの重量平均分子量Mwは3,500、エポキシ当量は180g/モルであった。
次いで、200mLの三口フラスコに、反応性ポリオルガノシロキサン(EPS−1)を10.0g、溶媒としてメチルイソブチルケトン30.28g、反応性化合物として4−ドデシルオキシ安息香酸3.98g、及び触媒としてUCAT 18X(商品名、サンアプロ(株)製)0.10gを仕込み、100℃で48時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に酢酸エチルを加えて得た溶液を3回水洗し、有機層を硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、溶剤を留去することにより、液晶配向性ポリオルガノシロキサン(APS−1)を9.0g得た。得られた重合体の重量平均分子量Mwは9,900であった。
[実施例PSA1]
(1)液晶配向剤の調製
下記表2に示す組成でポリイミド(PI−1)及びポリオルガノシロキサン(APS−1)を用い、これに溶剤として、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びダイアセトンアルコール(DAA)を加え、溶剤組成がNMP:DAA=60:40(重量比)、固形分濃度6.5重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより液晶配向剤(PSA−1)を調製した。なお、液晶配向剤(PSA−1)は、主にPSA型の液晶表示素子の製造用である。
(2)印刷性の評価
上記で調製した液晶配向剤(PSA−1)につき、基板への印刷を連続して行った場合の印刷性(連続印刷性)について評価した。評価は以下のようにして行った。まず、調製した液晶配向剤(PSA−1)につき、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷機(株)製、オングストローマー形式「S40L−532」)を用いて、アニロックスロールへの液晶配向剤の滴下量を往復20滴(約0.2g)の条件にて、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面に印刷した。基板への印刷は、1分間隔で新しい基板を用いながら20回実施した。
続いて、液晶配向剤を1分間隔でアニロックスロール上にディスペンス(片道)し、その都度、アニロックスロールと印刷版とを接触させる作業(以下、空運転という)を合計10回行った(この間、ガラス基板への印刷は行わない)。なお、この空運転は、液晶配向剤の印刷を意図的に過酷な状況下で実施するようにするために行った操作である。
10回の空運転の後、続いてガラス基板を用いて本印刷を行った。本印刷では、空運転後、基板を30秒間隔で5枚投入し、印刷後のそれぞれの基板を80℃で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、200℃で10分間加熱(ポストベーク)して、膜厚約80nmの塗膜を形成した。この塗膜を倍率20倍の顕微鏡で観察することにより印刷性(連続印刷性)を評価した。評価は、空運転後の本印刷1回目から重合体の析出が観察されない場合を連続印刷性「良好(○)」、空運転後の本印刷1回目では重合体の析出が観察されるが、本印刷を5回実施する間に重合体の析出が観察されなくなる場合を連続印刷性「可(△)」、本印刷を5回繰り返した後においても重合体の析出が観察される場合を連続印刷性「不良(×)」として行った。なお、印刷性が良好な液晶配向剤では、連続で基板を投入している間に重合体の析出が良化(消失)することが実験により分かっている。その結果、この実施例では、「良好」の評価であった。
さらに、空運転の回数を15回、20回、25回に変更し、それぞれについて上記と同様にして液晶配向剤の印刷性を評価した。その評価結果について下記表2に示した。
(3)液晶組成物の調製
(液晶組成物LC1の調製)
ネマチック液晶(メルク社製、MLC−6608)10gに対し、下記式(L1−1)で表される液晶性化合物を5重量%、及び下記式(L2−1)で表される光重合性化合物を0.3重量%、を添加して混合することにより液晶組成物LC1を得た。
Figure 2017003727
(4)パターンなし透明電極を有する液晶セルの製造
上記で調製した液晶配向剤(PSA−1)を、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いてITO膜からなる透明電極を有するガラス基板の透明電極面上に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、150℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚0.6μmの塗膜を形成した。この塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数400rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押し込み長さ0.1mmでラビング処理を行った。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行い、次いで100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。なお、このラビング処理は、液晶の倒れ込みを制御し、配向分割を簡易な方法で行う目的で行った弱いラビング処理である。
次に、上記一対の基板のうちの1枚につき、液晶配向膜を有する面の外縁に直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、上記で調製した液晶組成物LC1を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより、液晶セルを製造した。
上記の操作を繰り返し行い、パターンなし透明電極を有する液晶セルを2個製造した。そのうちの1個はそのまま電圧保持率の評価に供した。残りの1個の液晶セルについては、導電膜間に周波数60Hzの交流10Vを印加し、液晶が駆動している状態で、光源にメタルハライドランプを使用した紫外線照射装置を用いて、100,000J/mの照射量にて紫外線を照射した。なお、この照射量は、波長365nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。
(5)電圧保持率の測定
上記で製造した液晶表示素子に、60℃において1Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、1670ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から1670ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置は(株)東陽テクニカ製VHR−1を使用した。電圧保持率が98%以上であった場合を「良好A(◎)」、電圧保持率が96%以上98%未満であった場合を「良好B(○)」、電圧保持率が94%以上95%未満であった場合を「可(△)」、電圧保持率が94%未満であった場合を「不良(×)」とした。その結果、この実施例では電圧保持率の評価は「良好A」であった。
(6)高速応答性の評価
上記で製造したパターンなし透明電極を有する液晶セルを用いて、液晶分子の高速応答性の評価を行った。上記で製造した液晶セルをクロスニコル状態に配置した2枚の偏光板で挟持したうえで、まず、電圧を印加せずに可視光ランプを照射して、液晶セルを透過した光の輝度をフォトマルチメーターにて測定し、この値を相対透過率0%とした。次に、液晶セルの電極間に交流5Vを5秒間印加したときの透過率を上記と同様にして測定し、この値を相対透過率100%とした。各液晶セルに対して交流5Vを印加したときに、相対透過率が10%から90%に移行するまでの時間を測定し、この時間を応答速度と定義した。応答速度が5msec未満であった場合を高速応答性「良好(◎)」、応答速度が5msec以上10msec未満であった場合を高速応答性「可(○)」、応答速度が10msec以上であった場合を高速応答性「不良(×)」と評価した。その結果、この実施例では、高速応答性の評価は「可」であった。
[実施例PSA2、3及び比較例PSA1、2]
使用する重合体を、それぞれ下記表2に記載のとおりに変更した以外は、実施例PSA1と同様の方法により液晶配向剤(PSA−2)、(PSA−3)及び(RPSA−1)、(RPSA−2)をそれぞれ調製した。また、それぞれの液晶配向剤を用いて、実施例PSA1と同様にして各種評価を行った。それらの結果を下記表2に示した。
Figure 2017003727
表2中、重合体組成の数値は、液晶配向剤の調製に使用した重合体成分の合計100重量部に対する各化合物の配合割合[重量部]を示す。
[実施例VA1]
(1)液晶配向剤の調製
重合体成分としてポリイミド(PI−2)を用い、これに溶剤として、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びダイアセトンアルコール(DAA)を加え、溶剤組成がNMP:DAA=60:40(重量比)、固形分濃度6.5重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより液晶配向剤(VA−1)を調製した。なお、液晶配向剤(VA−1)は、主に垂直配向型の液晶表示素子の製造用である。
(2)印刷性の評価
上記で調製した液晶配向剤(VA−1)を用い、実施例PSA1の(2)と同様にして印刷性の評価を行った。その結果、この実施例では、空運転の回数を10回、15回、20回、25回のいずれにした場合にも、空運転後の本印刷1回目から重合体の析出が観察されず、印刷性「良好(○)」の結果であった。
(3)VA型液晶表示素子の製造
厚さ1mmのガラス基板の一面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上に、スピンナーにより上記の液晶配向剤を塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)した後、230℃のホットプレート上で60分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚0.08μmの塗膜(液晶配向膜)を形成した。これらの操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
次に、上記一対の基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外縁に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止して液晶セルとし、さらにこの液晶セルの外側両面に偏光板を貼り合わせることにより、VA型液晶表示素子を製造した。
(4)液晶配向性の評価
(4−1)垂直配向性評価用の液晶表示素子の製造
厚さ1mmのガラス基板の一面に設けられたITO膜からなる透明導電膜上に、液晶配向剤(VA−1)をスピンナーにより塗布し、ホットプレートで80℃、1分間、プレベークを行い、200℃で60分間加熱することにより、膜厚0.08μmの塗膜を形成した。
この塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数400rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押しこみ長さ0.4mmでラビング処理を行った。その後、超純水中で1分間、超音波洗浄を行い、次いで200℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、ラビング処理を施した液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
次いで上記一対の基板の液晶配向膜を有するそれぞれの外縁に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、液晶配向膜面がアンチパラレルとなるように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止して液晶セルとし、さらにこの液晶セルの外側両面に偏光板を貼り合わせることにより、垂直配向性評価用の液晶表示素子を製造した。
(4−2)垂直配向性の評価
上記の垂直配向性評価用の液晶表示素子について、結晶回転角法によってプレチルト角を測定した。評価は、プレチルト角が87°以上の場合を垂直配向性「良好(○)」、87°未満の場合を垂直配向性「不良(×)」として行った。その結果、本実施例では垂直配向性「良好」の結果であった。
なお、垂直配向性評価用の液晶表示素子を製造する際において、基板上に形成した塗膜に対してラビング処理を行ったが、このラビング処理は、液晶配向膜の垂直配向規制力を減殺する効果があることが知られている。したがって、ラビング処理を施したにもかかわらず87°以上のプレチルト角を示す場合には、その液晶配向膜は、液晶分子の垂直配向性が極めて優れていると言える。また、かかる結果を与える液晶配向剤は、ODF方式による垂直配向型液晶表示素子の製造に用いた場合にも、表示ムラ(ODFムラ)が殆ど発生しないことが経験的に明らかになっている。
(5)耐熱安定性(信頼性)の評価
上記(3)で製造した液晶表示素子につき、交流6.0V(ピーク−ピーク)を重畳した30Hz、3.0Vの矩形波を、70℃の環境温度で500時間印加した。500時間経過後のセルを目視で観察したときに、表示不良(異常ドメイン)が見られなかった場合を耐熱安定性「良好(○)」、表示不良が見られた場合を耐熱安定性「不良(×)」と評価した。その結果、この実施例では、耐熱安定性「良好」の評価であった。
(6)電圧保持率の測定
上記(3)で製造した液晶表示素子につき、実施例PSA1の(5)と同様にして電圧保持率の測定及び評価を行った。その結果、この実施例では電圧保持率の評価は「良好B」であった。
[実施例VA2、比較例VA1,2]
使用する重合体をそれぞれ下記表3に記載のとおりに変更した以外は、実施例VA1と同様の方法により液晶配向剤(VA−2)及び(RVA−1)、(RVA−2)をそれぞれ調製した。また、それぞれの液晶配向剤を用いて、実施例VA1と同様にして各種評価を行った。それらの結果を下記表3に示した。
Figure 2017003727
<重合体の合成(2)>
[合成例PES1]
下記スキーム9に従ってポリエステル(PES−1)を合成した。
Figure 2017003727
窒素導入管及び温度計を備えた1Lの三口フラスコに炭酸カリウム27.6g、水200mL及び化合物(6−12A)22.4gを仕込んだ後、テレフタル塩化ベンゾイル20.3gをクロロホルム200mLに溶かした溶液をゆっくり加え、室温で4時間激しく撹拌した。反応終了後、水層を除去し、100mLの水で3回分液洗浄した。次いで、このポリエステル溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、ポリエステル(PES−1)の溶液を固形分濃度10%で得た。Mwは35,000であった。
[比較合成例PES1]
化合物(6−12A)に代えてメチルヒドロキノン12.4gを用いた以外は合成例PES1と同様に重合を行ったが、析出が起こり、シクロペンタノンの均一溶液を得ることができなかった。
Figure 2017003727
[合成例PE1]
下記スキーム11に従ってポリエーテル(PE−1)を合成した。
Figure 2017003727
窒素導入管及び温度計を備えた1Lの三口フラスコに化合物(6−12A)22.4g、N,N−ジメチルアセトアミド400mL、炭酸カリウム26.4g及びα、α’−ジブロモ−p−キシレン26.4gを加えて100℃で4時間反応させた。反応終了後、シクロペンタノン700mLを加えて、200mLの水で3回分液洗浄を行った後、減圧濃縮にて350mLまで濃縮し、再度シクロペンタノンを350mL加え、350gまで減圧濃縮し、次いで、このポリエーテル溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、ポリエーテル(PE−1)の溶液を固形分濃度10%で得た。Mwは24,000であった。
<化合物の合成(2)>
[合成例M7]
下記スキーム12に従って化合物(15−2)を合成した。
Figure 2017003727
・化合物(15−2A)の合成
2Lのオートクレーブに化合物(6−7A)31.6g、テトラヒドロフラン500mL、エタノール500mL及び5%Pd/Cを1.58g仕込んだ。次に、水素を吹き込み1.4kg/cmとした後、室温で20時間反応させた。反応終了後、セライトろ過を行って得たろ液を100mLまで減圧濃縮し、得られた溶液を1Lの水で再沈殿させた。沈殿をろ過にて回収し、真空乾燥することで化合物(15−2A)を25.8g得た。
・化合物(15−2)の合成
温度計及び窒素導入管を備えた300mLの三口フラスコに化合物(15−2A)25.8g、アセトニトリル300mL、臭化銅12.9g、1,2−ビス(1,1−ジメチル)−3−ジアジリドン15.3gを仕込み、室温で4時間反応させた。反応終了後、反応液を3Lの水に注いで析出した沈殿をろ過した後、200mLのテトラヒドロフラン溶かした後、ろ過して得られたろ液を硫酸マグネシウムで乾燥後、100mLまで濃縮した。次に、アルミナカラム(展開溶剤:ヘキサン:酢酸エチル=8:2(v/v))で精製し、濃縮、乾固することで化合物(15−2)を17.9g得た。
<重合体の合成(3)>
[合成例PP1]
下記スキーム13に従ってポリアリーレン(PP−1)を重合した。
Figure 2017003727
還流管、温度計及び窒素導入管を備えた300mLの三口フラスコに化合物(15−2)5.68g、1,4−ベンゼンジボロン酸ビス(ピナコール)3.3g、トルエン100mL、水50mL、炭酸カリウム2.77g及びテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)0.46gを仕込み、80℃で12時間反応させた。反応終了後、水層を除去した後、有機層をセライトろ過して得られたろ液を1Lのメタノールに注ぎ、析出した沈殿をろ過して沈殿を回収した。この沈殿を100mLのシクロペンタノンに溶かした後、50mLの水で3回分液洗浄した後、約40mLまで濃縮し、次いで、このポリアリーレン溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。この沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、ポリアリーレン(PP−1)の固形分濃度10%溶液を得た。
[合成例PA1]
下記スキーム14に従ってポリアミド(PA−1)を重合した。
Figure 2017003727
温度計及び窒素導入管を備えた200mLの三口フラスコに化合物(6−7)を4.12g、N−メチル−2−ピロリドン100mL、縮合剤1を8.42g、化合物(DC−1)を3.30g及びトリエチルアミン0.80gを加えて室温で一昼夜撹拌した。反応終了後、反応液を1Lのメタノールに注いで生じた沈殿をろ過、乾燥することでポリアミド(PA−1)を5.6g得た。
<化合物の合成(3)>
[合成例M8]
下記スキーム15に従って化合物(DC−2C)を合成した。
Figure 2017003727
・化合物(DC−2A)の合成
温度計、窒素導入管及びアスピレーターを備えた500mL三口フラスコにp−ヨード安息香酸24.8g、塩化メチレン250mL及び濃硫酸2.5gを仕込んだ。次に、系内をアスピレーターで減圧にした後、イソブテンガスで満たした3Lの風船を取り付けて系内をイソブテンガスで満たし、室温で3時間反応させた。その後、再び減圧にした後、風船を取り付けて、さらに室温で3時間反応させた。反応終了後、飽和炭酸ナトリウム水溶液で分液洗浄した後、水で3回分液洗浄を行った。続いて有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過して得られたろ液を減圧濃縮して乾固し、酢酸エチルとヘキサンの混合溶剤で再結晶させることで化合物(DC−2A)を21.2g得た。
・化合物(DC−2B)の合成
滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた500mLの三口フラスコにヘキサメチレンジオール11.8g、テトラヒドロフラン200mL及びトリエチルアミン22.2gを仕込み5℃以下に氷冷した。続いて、塩化メタクリロイル23.0gをテトラヒドロフラン50mLに希釈した液を滴下ロートに仕込み、30分かけて滴下し、室温に戻して2時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル200mLを加えて、希塩酸で1回、水で3回分液洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥後、50mLまで減圧濃縮し、シリカカラム(展開溶剤:ヘキサン:酢酸エチル=8:2(重量比))で精製した後、4−メトキシフェノールを10mg加えて濃縮乾固、真空乾燥することで化合物(DC−2B)を15.3g得た。
・化合物(DC−2C)の合成
還流管、温度計及び窒素導入管を備えた500mLの三口フラスコに化合物(DC−2A)21.2g、化合物(DC−2B)7.65g、酢酸パラジウム0.26g及びトリ(o−トリル)ホスフィン1.46gを加えた後、系内を真空乾燥した。続いて、窒素で常圧に戻した後、N,N−ジメチルアセトアミド250mL及びトリエチルアミン12.1gを加えて、90℃で4時間反応させた。反応終了後、セライトろ過して得られたろ液に酢酸エチル500mL、テトラヒドロフラン200mL及び希塩酸300mLを加えて水層を除去した後、水で3回洗浄した。続いて、硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過した後、減圧濃縮して析出した結晶をろ過、乾燥することで白色結晶を得た。次に、この白色結晶を、窒素導入管を備えた500mLのナスフラスコに仕込み、塩化メチレン100mL及びトリフルオロ酢酸100mLを加えて室温で2時間撹拌した。反応終了後、減圧下で濃縮乾固し、酢酸エチル200mL及びテトラヒドロフラン200mLを加えて、水で5回分液洗浄した後、濃縮、乾固、真空乾燥することで化合物(DC−2C)10.4gを得た。
<重合体の合成(4)>
[合成例PA2]
下記スキーム16に従ってポリアミド(PA−2)を重合した。
Figure 2017003727
温度計及び窒素導入管を備えた200mLの三口フラスコに化合物(6−7)を4.12g、N−メチル−2−ピロリドン100mL、縮合剤1を8.43g、化合物(DC−2C)を4.94g及びトリエチルアミン0.81gを加えて室温で一昼夜撹拌した。反応終了後、反応液を1Lのメタノールに注ぎ、生じた沈殿をろ過、乾燥することでポリアミド(PA−2)を6.96g得た。
[比較合成例PA1]
化合物(6−7)に代えてo−トリジンを用いた以外は合成例PA−2と同様に重合を行ったが、析出が起こり、N−メチル−2−ピロリドンの均一溶液を得ることができなかった。
[実施例FFS1]
(1)液晶配向剤の調製
重合体成分としてポリエステル(PES−1)を用い、これに溶剤として、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びブチルセロソルブ(BC)を加え、溶剤組成がNMP:BC=80:20(重量比)、固形分濃度6.5重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより液晶配向剤(FFS−1)を調製した。なお、液晶配向剤(FFS−1)は、主にFFS型の液晶表示素子の製造用である。
(2)印刷性の評価
上記で調製した液晶配向剤(FFS−1)を用い、実施例PSA1の(2)と同様にして印刷性の評価を行った。その結果、この実施例では、空運転の回数を10回、15回、20回、25回のいずれにした場合にも、空運転後の本印刷1回目から重合体の析出が観察されず、印刷性「良好(○)」であった。
(3)FFS型液晶表示素子の製造(ラビング配向)
図1に示すFFS型液晶表示素子10を作製した。先ず、パターンを有さないボトム電極15、絶縁層14としての窒化ケイ素膜、及び櫛歯状にパターニングされたトップ電極13がこの順で形成された電極対を片面に有するガラス基板11aと、電極が設けられていない対向ガラス基板11bとを一対とし、ガラス基板11aの透明電極を有する面と対向ガラス基板11bの一面とに、それぞれ上記(1)で調製した液晶配向剤(FFS−1)を、スピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレート上で1分間のプレベークを行った後、230℃のホットプレート上で10分間ポストベークした。形成された塗膜面に対し、ナイロン製の布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンを用いて、ロールの回転数1,000rpm、ステージの移動速度25mm/秒、毛足押し込み長さ0.4mmにてラビング処理を行い、液晶配向能を付与した。さらにこの基板を超純水中で1分間超音波洗浄し、100℃クリーンオーブンで10分間乾燥することにより、平均膜厚0.1μmの塗膜(液晶配向膜12)を形成した。
使用したトップ電極13の平面模式図を図2に示した。なお、図2(a)は、トップ電極13の上面図であり、図2(b)は、図2(a)の破線で囲った部分C1の拡大図である。本実施例では、電極の線幅d1を4μm、電極間の距離d2を6μmとした。また、トップ電極13としては、電極A、電極B、電極C及び電極Dの4系統の駆動電極を用いた(図3)。なお、ボトム電極15は、4系統の駆動電極のすべてに作用する共通電極として働き、4系統の駆動電極の領域のそれぞれが画素領域となる。
次いで、上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に、直径3.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜12の面を対向させ、偏光紫外線の偏光面を基板へ投影した方向が平行となるように重ね合わせて圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化した。次いで、液晶注入口から基板間隙に、メルク社製液晶「MLC−7028」を充填した後、エポキシ樹脂接着剤で液晶注入口を封止した。その後、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃まで加熱してから室温まで徐冷した。なお、符号16は液晶層を示す。
次に、基板の外側両面に偏光板を貼り合わせることによりFFS型液晶表示素子を製造した。このとき、偏光板のうちの1枚は、その偏光方向が液晶配向膜の偏光紫外線の偏光面の基板面への射影方向と平行となるように貼付し、もう1枚はその偏光方向が先の偏光板の偏光方向と直交するように貼付した。
(4)残像特性(焼き付き特性)の評価
上記(3)で製造したFFS型液晶表示素子を25℃、1気圧の環境下においた。ボトム電極を4系統の駆動電極すべての共通電極として、ボトム電極の電位を0V電位(グランド電位)に設定した。電極B及び電極Dを共通電極と短絡して0V印加状態としつつ、電極A及び電極Cに交流電圧5Vからなる合成電圧を100時間印加した。100時間経過後、直ちに電極A〜電極Dのすべてに交流1.5Vの電圧を印加した。そして、電極A〜電極Dのすべてに交流1.5Vの電圧を印加し始めた時点から、駆動ストレス印加領域(電極A及び電極Cの画素領域)と駆動ストレス非印加領域(電極B及び電極Dの画素領域)との輝度差が目視で確認できなくなるまでの時間を測定し、これを残像消去時間Tsとした。なお、この時間が短いほど、残像(AC残像)が生じ難いこととなる。残像消去時間Tsが30秒未満であった場合を残像特性「良好(○)」、30秒以上120秒未満であった場合を「可(△)」、120秒以上であった場合を「不良(×)」として評価したところ、本実施例の液晶表示素子は残像特性「良好」と評価された。
(5)電圧保持率の測定
上記(3)で製造した液晶表示素子につき、実施例PSA1の(5)と同様にして電圧保持率の測定を行った。評価は、電圧保持率が96%以上であった場合を「良好A(◎)」、電圧保持率が94%以上96%未満であった場合を「良好B(○)」、電圧保持率が92%以上94%未満であった場合を「可(△)」、電圧保持率が92%未満であった場合を「不良(×)」とした。その結果、この実施例では「良好B」の評価であった。
[実施例FFS2〜FFS4]
使用する重合体をそれぞれ下記表4に記載のとおりに変更した以外は、実施例FFS1と同様の方法により液晶配向剤(FFS−2)〜(FFS−4)をそれぞれ調製した。また、それぞれの液晶配向剤を用いて、実施例FFS1と同様にして各種評価を行った。それらの結果を下記表4に示した。
Figure 2017003727
[実施例PFFS1]
(1)液晶配向剤の調製
重合体成分としてポリアリーレン(PP−1)を用い、これに溶剤として、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)及びブチルセロソルブ(BC)を加え、溶剤組成がNMP:BC=80:20(重量比)、固形分濃度6.5重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより液晶配向剤(PFFS−1)を調製した。なお、液晶配向剤(PFFS−1)は、主に光FFS型の液晶表示素子の製造用である。
(2)印刷性の評価
上記で調製した液晶配向剤(PFFS−1)を用い、実施例PSA1の(2)と同様にして印刷性の評価を行った。その結果、この実施例では、空運転の回数を10回、15回、20回、25回のいずれにした場合にも、空運転後の本印刷1回目から重合体の析出が観察されず、印刷性「良好(○)」であった。
(3)FFS型液晶表示素子の製造(光配向)
液晶配向剤(PFFS−1)を使用した点、及びラビング処理に代えて光配向処理を行った点以外は実施例FFS1の(3)と同様にしてFFS型液晶表示素子を作製した。光配向処理は以下のようにして行った。
スピンナーにより基板上に液晶配向剤(PFFS−1)を塗布した後、塗膜を80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った。次いで、塗膜の各表面に、Hg−Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて偏光紫外線5,000J/mを照射して、液晶配向膜を有する一対の基板を得た。このとき、偏光紫外線の照射方向は基板法線方向からとし、偏光紫外線の偏光面を基板に投影した線分の方向が図4(b)中の両頭矢印の方向となるように偏光面方向を設定したうえで光照射処理を行った。光照射した後、庫内を窒素置換したオーブン中で、230℃で1時間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚0.1μmの塗膜を形成した。
なお、偏光板を貼り合わせる際には、偏光板のうちの1枚を、その偏光方向が液晶配向膜の偏光紫外線の偏光面の基板面への射影方向と平行となるように貼付し、もう1枚をその偏光方向が先の偏光板の偏光方向と直交するように貼付した。
また、上記の一連の操作を、ポストベーク前の紫外線照射量を100〜10,000J/mの範囲でそれぞれ変更して実施することにより、紫外線照射量が異なる3個以上の液晶表示素子を製造した。
(4)液晶表示素子の評価
上記(3)で製造した液晶表示素子を用いて、実施例FFS1の(5)と同様にして電圧保持率の測定を行った。また、偏光板の貼り合わせをしなかった点以外は上記(3)と同様の操作を行うことにより液晶表示素子(偏光板の貼り合わせをしていない液晶セル)を製造し、実施例FFS1の(4)と同様にして残像特性の評価を行った。なお、評価結果については、紫外線照射量が異なる3個以上の液晶表示素子の中から最良な結果を選び出し、液晶表示素子の評価に用いた。その結果、この実施例では、電圧保持率は「良好B」の評価であり、残像特性は「良好」の評価であった。
[実施例PFFS2]
使用する重合体を下記表5に記載のとおりに変更した以外は、実施例PFFS1と同様の方法により液晶配向剤(PFFS−2)を調製した。また、調製した液晶配向剤を用いて、実施例PFFS1と同様にして各種評価を行った。それらの結果を下記表5に示した。
Figure 2017003727
以上の結果から、上記式(1)で表される部分構造又は下記式(2)で表される部分構造を側鎖に有する重合体[P]を含む液晶配向剤によれば、良好な印刷性、液晶配向性及び残像特性をバランス良く兼ね備えた液晶配向膜が得られることが分かった。
10…液晶表示素子、11a,11b…基板、12…液晶配向膜、13…トップ電極、14…絶縁層、15…ボトム電極、16…液晶層。

Claims (6)

  1. 下記式(1)で表される部分構造及び下記式(2)で表される部分構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造を有する重合体[P]を含有する液晶配向剤。
    Figure 2017003727
    (式(1)中、Rは、水素原子又はカルボキシル基の保護基である。「*」は、共役構造に結合する結合手であることを示す。)
    Figure 2017003727
    (式(2)中、Rは、水素原子又はカルボキシル基の保護基である。「*」は結合手であることを示す。)
  2. 前記重合体[P]は、ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル及びポリアリーレンよりなる群から選ばれる少なくとも一種を主鎖とする重合体である、請求項1に記載の液晶配向剤。
  3. 請求項1又は2に記載の液晶配向剤を用いて形成された液晶配向膜。
  4. 請求項3に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
  5. ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル又はポリアリーレンからなる骨格を主鎖とし、かつ下記式(1)で表される部分構造及び下記式(2)で表される部分構造よりなる群から選ばれる少なくとも一種の構造を有する重合体。
    Figure 2017003727
    (式(1)中、Rは、水素原子又はカルボキシル基の保護基である。「*」は、共役構造に結合する結合手であることを示す。)
    Figure 2017003727
    (式(2)中、Rは、水素原子又はカルボキシル基の保護基である。「*」は結合手であることを示す。)
  6. 下記式(1A)で表される部分構造又は下記式(2)で表される部分構造を有するジアミン。
    Figure 2017003727
    (式(1A)中、R1Aは、カルボキシル基の保護基である。「*」は、共役構造に結合する結合手であることを示す。)
    Figure 2017003727
    (式(2)中、Rは、水素原子又はカルボキシル基の保護基である。「*」は結合手であることを示す。)
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