JP2017001384A - 成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形体の量産性や耐久性を維持した上で、撥液性を向上させることを課題とする。【解決手段】本発明の成形体は、表面に施された微細な凹凸形状によって撥液性を有する成形体であって、基材表面に規則的に配列された複数の突起部を有する成形体であって、前記突起部の頂点部を通る平面上において、前記突起部が占める面積率が0.3以下であり、前記突起部と隣接する突起部との凹部幅wが40μm以下であり、基材表面上に位置する液滴の転落角が90°以下とすることで、製造時や使用時の破損のリスクが少ない微細凹凸であっても、液滴が成形体から転落しやすくなることから、防汚性を求められる部材表面や各種包装容器内面部への適用が可能となる。【選択図】図3
Description
本発明は、基材表面に備えた微細な凹凸構造によって撥液性を有する成形体に関するものである。
従来、部品の基材表面に撥液性を持たせることにより、表面に付着した水滴や油滴を撥き、防汚をはじめ、耐指紋、防曇、着氷防止といった機能を発揮することが知られている。
また、近年では、シャンプーやリンス、液体洗剤、ソースやマヨネーズといった調味料、歯磨き粉、レトルト食品の容器や包装体の内面や注ぎ口に同様の表面処理を施すことで、液切れ性を向上させることにより、充填物の使いきりを容易にする効果や注ぎ口を衛生的に保つ効果が着目され、研究が進められている。
ここで、撥液性とは、基材表面上に到達した液滴の非付着性および易除去性を表す指標である。基材表面と液滴との接触角が大きい程、また転落角が小さい程、撥液性が高いと規定される。
接触角とは、図1(a)に記す通り、基材表面に液滴が付着した状態において、基材の接触面と液滴の界面とがつくる角度である。
接触角が0度に近づくほど基材と液滴がなじみやすく、180度に近づくほど、基材に付着しにくくなる。
接触角が0度に近づくほど基材と液滴がなじみやすく、180度に近づくほど、基材に付着しにくくなる。
また、転落角とは、図1(b)に記す通り、液滴が載った基材表面を、水平な位置から除々に傾斜させていき、液滴が滑り始める角度のことである。
転落角が0度に近づくほど、液滴は基材から除去されやすくなり、転落角が90度より大きくなると、液滴は基材から離れにくくなる。
しかしながら、撥液性を与える表面処理技術の分野において、表面材料の化学構造のみに依存した撥液効果の向上は限界を迎えており、近年では、撥液材料と微細な凹凸構造の組合せにより、より高い撥液性を備えたコート剤もしくはシートが提案されている(例えば、特許文献1または2)。
特許文献1には、アルコール、アルコキシシラン、パーフルオロアルキルシラン、シリカ微粒子、アルコキシシランの加水分解反応を促進する触媒、および水を含むコーティング組成物をコーティングして得られる撥水・撥油性コーティング物品が記載されている。その物品の表面における二乗平均粗さ値は150nm以上であり、水に対する接触角は150度以上、油に対する接触角は150度以上、水滴に対する転落角は10度以下である。
高い撥水・撥油性をもつ材料にシリカ微粒子を配合して特定値以上の表面粗さを持たせることで、特に水に対する転落性を向上させることができるとされている。
特許文献2には、一方の表面側に微細な凹凸形状を有する凹凸形状層と、凹凸形状層の一方の表面側にほぼ一定厚みで形成された撥水層とを備え、凹凸形状層の一方の表面側の少なくとも表面部が、加熱延伸後も微細な凹凸形状を維持する架橋体であり、撥水層が疎
水性酸化物微粒子を含有するオレフィン系共重合体樹脂からなる、撥水性を備えた熱可塑性樹脂シートおよび成形品が記載されている。
水性酸化物微粒子を含有するオレフィン系共重合体樹脂からなる、撥水性を備えた熱可塑性樹脂シートおよび成形品が記載されている。
これにより、優れた撥水性が得られ、食品用包装材料として使用した場合、食品が付着してしまうことがほとんどないとされている。
また、微細な凹凸構造を微粒子の積層ではなく、基材表面に直接加工し撥水性をもたせる方法も提案されている(例えば、特許文献3)。
特許文献3には、基材の凹凸表面が、円形又は多角形の底面を有し、円形底面の径又は底面多角形に外接する円の径が50μm以下である無数の錐体状突起が50μm以下のピッチで二次元的に配置されている微細凹凸構造を備えており、フルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物又はフルオロアルキル基を有するエタノール化合物からなる第1の撥水性化合物と、第1の撥水性化合物よりも炭素数の少ないフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物からなる含炭素化合物および/または三酸化アンチモンからなる第2の撥水性化合物を備えている撥水性構造および撥水性構造体が記載されている。
基材表面に形成している微細な凹凸構造と撥水性の高い化合物によるコート剤の組み合わせにより、より高い撥水性を発揮できるとされている。
しかしながら、前記従来の特許文献1および特許文献2に記載の技術は、コート剤に含まれる微粒子の積層もしくはコート層をもつ微粒子の積層によって凹凸構造を形成しているため、触手等によって簡単に磨耗し、微粒子が剥離してしまうことがある。これにより性能が著しく劣化してしまうという課題や、場合によっては容器や包装体の内容物に微粒子が付着してしまうという課題があった。
また、前記従来の特許文献3に記載の技術は、コート剤の種類に加えて、突起の底面部の寸法や、突起間のピッチの寸法やその相関を示してはいるものの、その凹凸形状は微細ではあるが、液滴の付着抑制の理論に基づいたものではなく、突起の底面部の寸法やピッチの寸法の規定は、撥液性を発揮する構造としては意味を成さない。よって、一定以上の撥水性を有するコート剤との組合せであっても、十分な撥液性を確実に発揮するとは言いがたい。また、液滴の転落性に対する効果の記載はない。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、コート剤を塗布しない、もしくは耐熱性や耐久性に優れた汎用な防汚コート剤とを用いるだけで、高い撥液性を有する成形体を提供するものである。
前記従来の課題を解決するために、本発明の成形体は、基材表面に規則的に配列された複数の突起部を有する成形体であって、前記突起部と隣接する突起部の頂点部を通る仮想平面上において、前記突起部が占める面積率が0.3以下であり、前記仮想平面上における前記突起部と隣接する突起部との距離である凹部幅wが40μm以下であり、前記基材
表面に位置する液滴の転落角が90°以下であるものである。
表面に位置する液滴の転落角が90°以下であるものである。
これによれば、製造が容易であり、比較的耐久性の高いμmオーダーの凹凸構造であっても、液滴の侵入を抑制し転落性に優れる。
本発明の成形体は、表面に到達した液滴の付着しにくく、また除去しやすくするμmオーダーの凹凸構造を有しているため、成形性や耐久性に優れており、耐久性消費財の防汚表面や、容器や包装材の内面として使用することが可能となる。
第1の発明の成形体は、基材表面に規則的に配列された複数の突起部を有する成形体であって、前記突起部と隣接する突起部の頂点部を通る仮想平面上において、前記突起部が占める面積率が0.3以下であり、前記仮想平面上における前記突起部と隣接する突起部との距離である凹部幅wが40μm以下であり、前記基材表面に位置する液滴の転落角が90°以下であるものである。
基材表面の凹凸構造のうち、特に突起部が占める面積率、凹部幅、転落角を規定することにより、高い撥液性を得ることができる。
また、液滴の転落角が90°以下であることから、例えば包装材や容器の内部に本発明の成形体を使用する際、包装材や容器を静置しておいたり傾斜させると充填物が転落し液切れ性が向上するため、充填物の使いきりを容易にしたり、注ぎ口を衛生的に保つ効果がある。
また、略垂直面もしくはそれより低い角度を有する製品や部材の表面に用いることにより、表面に付着した液滴が転落し、液切れ性や防汚性を向上させることができる。
第2の発明は、第1の発明において、突起部の高さHと、前記凹部幅wとが、H/w≧0.7となるものである。
これにより、高い撥液性はもちろん成形性と耐久性に優れた成形体を得ることができる。
第3の発明は、第1または第2の発明において、突起部の高さHが1μm以上50μm以下であるものである。
これにより、液滴の体積の影響を受けにくく、凹部に液滴が接触してしまうことを防ぎ、また、構造の破損の心配がなく、耐久性が優れた成形体を提供できる。
第4の発明は、第1〜3のいずれか1つの発明において、突起部の頂点部から当該突起部の高さHの0.2倍の距離を下がった位置を通る仮想平面と、0.8倍の距離を下がった位置を通る仮想平面との間の当該突起部の稜線の傾斜角が60°以上90°以下であるものである。
突起部に傾斜角をつけることで、成形性が高くなり、種々の製造方法に対応可能となる。また、傾斜角が60度以上であれば、液滴の侵入が抑制され、さらに高い撥液性が発揮できる。
第5の発明は、第1〜4のいずれか1つの発明において、突起部と隣接する突起部の頂点部を通る仮想平面上において、前記突起部が占める面積率が0.2以下であるものである。
これにより、基材と液滴との非付着性がさらに向上し、より高い撥液性が発揮される。
第6の発明は、特に第1から第5のいずれか1つの発明の成形体において、突起部と隣接する突起部の頂点部を通る仮想平面上において、突起部の形成する平面形状が長方形であるものである。
液滴が、突起部の頂点部を通る仮想平面上を通って移動する際、突起部の平面形状が長方形である場合は、液滴の移動経路に突起部間に形成される凹部の数をなくす、もしくは少なくでき、連続した突起部に沿って液滴が速やかに移動することから、より高い撥液性を発揮できる。特に、突起部間に形成される凹部に液滴が入り込み、液滴が基材表面上に残留するリスクを著しく軽減できる。
第7の発明は、第1〜5のいずれか1つの発明において、転落角が45°以下であるものである。
これにより、より高い撥液性が発揮され、包装材や容器の内面、あるいは防汚や撥液性、液切れ性を要求される製品や部材表面等に用いた際、さらに高い効果が得られる。
第8の発明は、特に第1から第7のいずれか1つの発明の成形体において、前記突起部が占める面積率が0.05以下であるものである。
第8の発明は、特に第1から第7のいずれか1つの発明の成形体において、前記突起部が占める面積率が0.05以下であるものである。
液滴と基材との非付着性がさらに向上し、比較的表面エネルギーの小さい材質の基材であっても、高い撥液性を発揮することができるため、成形体の材質選択性が向上できる。
第9の発明は、第1〜8のいずれか1つの発明において、突起部と隣接する突起部の頂点部を通る仮想平面上において、突起部の形成する平面形状が円形であることを特徴としている。
液滴が、突起部の頂点部を通る仮想平面上を通って移動する際、突起部の平面形状が多角形である場合は、液滴界面の移動経路上に存在する突起部の角部や直線部によってピン止め効果と呼ばれる液滴移動抑制が起こる。突起部の平面形状が円形のような角部や直線部を持たない形状であれば、液滴が凹凸表面上を滑りやすくなり、より高い撥液性を発揮できる。
第10の発明は、第1〜9のいずれか1つの発明において、基材表面に、防汚コート層を備えるものである。
防汚コート層によって成形体の表面張力を制御することにより、より高い撥液性を発揮
することが可能となる。
することが可能となる。
第11の発明は、第1〜10のいずれか1つの発明において、凹部幅wが1μm以上であるものである。
これにより、防汚コート層を備える際も塗装性への影響が少なく、成形時の転写性も確保することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における成型体について、図2〜図5を用いて説明する。図2は成形体の断面図、図3および図4は、成形体の凹凸表面の断面拡大図、図5は突起部の頂点部を通る平面上における突起部の平面図である。
本発明の実施の形態1における成型体について、図2〜図5を用いて説明する。図2は成形体の断面図、図3および図4は、成形体の凹凸表面の断面拡大図、図5は突起部の頂点部を通る平面上における突起部の平面図である。
図2において、成形体1の基材表面に、規則的に配列された複数個の突起部2を備えた凹凸表面3が形成されている。
成形体1は、撥液性を求められる箇所に用いられる部品構造体もしくはフィルムを想定しているが、これに限定されるものではない。
成形体1の基材の材質としては、耐久的に形状を維持できるものであれば良く、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタラート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、塩化ビニル、ポリ乳酸、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、環状オレフィンなどの樹脂類やガラス類、銅・ステンレスなどの金属類等、特に指定するものではなく、求められる外観品位、透明性、機械物性、コスト等を考慮して自由に選択できる。
また、求められる機械特性や撥液性を付与するための添加剤を含んでいてもよい。
成形体1と凹凸表面3は一体構造であっても良いが、製造方法や求められる撥液性に合わせて選定されるものであり、別の素材であってもよい。
図3に記すように、突起部2は、先端面が基材に水平な平坦面である台形体、もしくは台形錐体(図3(a)参照)である。なお、これに限定されるものではなく、先端面が基材に対して傾斜を持った平坦面である略台形錐体、先端面の端部が丸みを帯びた錐体(図3(b)参照)、先端部が尖った錐体や、先端部が丸みを帯びた錐体(図3(c)参照)でも良い。または、突起部2は、先端部が丸みを帯びた三角形体である。または、突起部2は先端部が尖った略三角形体(図4(a)〜(c)参照)である。
なお、突起部2は、これに限定されるものではなく、先端面が円弧状である略台形、先端面が基材に対して傾斜を持った平坦面である略台形であっても良い。
また、突起部2を含む凹凸表面3は、微視的に平滑面でなくてもよく、性能に影響を与えない程度の表面粗さやキズは許容されるものとする。
本実施の形態では、突起部2の高さHは、以下のように定義する。突起部2が先端面を備える場合(図3(a)、(b)参照)には、凹凸表面3の凹部の底面と突起部2の先端面を通る仮想的な平面との距離と定義する。突起部2が先端面を備えない場合、つまり、
突起部2が先端部を備える場合(図3(c)、図4(a)〜(c)参照)には、凹凸表面3の凹部の底面と突起部2の先端を通る仮想的な平面との距離と定義する。なお、上記の仮想的な平面は、必ずしもすべての突起部の先端面、または、先端部を通る必要は無く、少なくとも突起部とその突起部に隣接する2つの突起部の先端面、または、先端部を通ればよい。
突起部2が先端部を備える場合(図3(c)、図4(a)〜(c)参照)には、凹凸表面3の凹部の底面と突起部2の先端を通る仮想的な平面との距離と定義する。なお、上記の仮想的な平面は、必ずしもすべての突起部の先端面、または、先端部を通る必要は無く、少なくとも突起部とその突起部に隣接する2つの突起部の先端面、または、先端部を通ればよい。
突起部2の高さHは、全ての突起部2で一定値であることが望ましい。ただし、製造上避けられない程度のバラつきは許容されるものとする。
本実施の形態では、突起部2の傾斜角は、凹凸表面3の凹部を形成する平面と突起部2の稜線がなす角と定義する。稜線は、突起部2の高さ方向に平行な任意の平面と突起部2の側面とが交わる交線である。
突起部2の傾斜角は、製造上全て一定値であることが望ましいが、突起部2の頂点部から0.2Hだけ下がった位置を通る仮想平面と突起部2の頂点部から0.8Hだけ下がった位置を通る仮想平面と間の突起部2の稜線の傾斜角が60°以上90°以下であれば、任意に変動されることが可能である。
また、突起部2の稜線は、直線である必要はなく、成形性を考慮して自由に設計することが可能であり、曲線であっても、直線および曲線を組み合わせた線であってもよい。
本実施の形態では、凹部幅wは、突起部2の頂点部を通る仮想的な平面における突起部2と当該突起部2とも最も近接して隣接する突起部2との距離と定義する。突起部2の頂点部は、以下のように定義する。突起部2が先端面を備える場合(図3(a)、(b)参照)には、先端面を頂点部とする。突起部2が先端面を備えない場合、つまり、突起部2が先端部を備える場合(図3(c)、図4(a)〜(c)参照)には、先端部の先端から0.5μmだけ凹部側に下がった位置を頂点部とする。
凹部幅wは、一定値であることが望ましいが、突起部2の高さHとの間に、H/w≧0.7が成り立つ寸法域であり、かつ40μm以下であれば、任意に変動されることが可能である。
また、図4(a)、(b)に記すように、突起部2の頂点部を通る仮想平面における断面形状(以下、平面形状と呼ぶ)は円形であることが望ましい。
これにより、転落角が低くなり、性能を高くすることが可能である。なお、平面形状は、これに限定されるものではなく、楕円形(図5(c)参照)や多角形(図5(d)、(e)参照)でも良い。
また、図5(d)に記すように、突起部2の平面形状は、長方形であることが、より望ましい。
これにより、転落角が低くなり、性能を高くすることが可能である。さらには、突起部2の間に連続した凹溝が形成されるため、凹凸表面3の構造に液滴が捕捉されることがなく、凹凸表面3に付着しづらくなる。
液滴が、突起部の頂点部を通る仮想平面上を通って移動する際、図5(d)に示すように突起部の平面形状が長方形である場合、液滴の移動経路に突起部間に位置する凹部の数をなくす、もしくは少なくでき、連続した突起部に沿って液滴が速やかに移動することから、より高い撥液性を発揮できる。特に、突起部間に液滴が入り込み、基材表面上に残留
するリスクを著しく軽減できる。
するリスクを著しく軽減できる。
表面に微細凹凸加工を施す場合、目的とする凹凸表面3の反転構造を備えたモールドを基材表面に形状転写する方法が一般的であるが、その際に密着したモールドと成形体とを分離する型抜きが課題となる。しかし、突起部2の平面形状が長方形であれば、高さHが大きい突起部であっても、突起部2に沿ってモールドを外すことが容易となり、成形性が向上する。
さらには、射出成形を行う場合は、金型の抜き勾配を小さくすることができ、成形体の形状設計が容易となる。
さらに、突起部2の平面形状は、全て同一形状であってもなくても良い。
本実施の形態では、突起部2が占める面積率は、突起部2の頂点部を通る仮想的な平面において、凹凸表面3が存在している領域全体の面積のうち、突起部2が占めている面積の割合と定義する。
突起部2の占める面積率が0.3以下、好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.05以下であれば、異なる形状や大きさを設定することが可能である。特に、突起部2の占める面積率が0.05以下であれば、基材との液滴の非付着性が向上し、比較的表面エネルギーの小さい材質の基材であっても、高い撥液性を発揮することができるため、成形体の材質選択性が向上できる。
凹凸表面3は、成形体1の基材表面全域に配置されている必要はなく、撥液性を求められる箇所にのみ限定的に配置されていてもよい。
突起部2は、成形体と別部品として製造してもよいが、耐久性の観点から、一体成形が望ましい。もしくは、凹凸表面3が成形体表面として密着性良く接着されていることが望ましい。
次に、成形体1の製造方法について説明する。
成形体1の表面に凹凸表面3を設ける製造方法は、特に限定されないが、規定した寸法で規則的に凹凸を配列させる方法として、転写方式が挙げられる。転写方式には、射出成形、熱プレス成形、ナノインプリント技術を利用した熱インプリント加工、光インプリント加工などがある。
射出成形とは、予め内表面に凹凸形状が施された型(モールド)の容器(コア、キャビティ)の中に、溶融樹脂を流し込んで、冷却し、モールド表面の凹凸形状を転写するものである。
熱プレス成形とは、モールドと樹脂とを加熱し、モールドを樹脂に押し当てることによって表面の凹凸形状を樹脂に転写するものである。特に、モールドが円柱形状のもで、円柱が回転しながら転写するものをエンボスロール加工という。
熱インプリント加工とは、基材にポリメタクリル酸メチルなどの熱可塑性樹脂を塗布し、ガラス転移温度以上に昇温してモールドを押し付けて形状を転写させるものであり、光インプリント加工とは、基材に光硬化性樹脂を塗布し、モールドを押し付けてUV照射することによって樹脂を硬化させ、形状を転写させるものである。
熱インプリント加工は、熱可塑性樹脂の選択性が広いという特長があるが、昇温および降温に時間を要するためスループットが上がらないという問題がある。一方、光インプリント加工は、光硬化性樹脂の選択性の問題があるものの、一般に粘度が低いために転写性が良く、また紫外線を照射して硬化するためにスループットが高いという特長がある。
ここでモールドは、ダイヤモンド切削などの機械加工や、レーザー加工、エッチング法、リソグラフィ法の特殊加工などにより作製することもできる。
本実施の形態の成形体1は、望ましくは、基材表面に規則的に配列された複数の突起部2を有する成形体であって、突起部2の頂点部を通る仮想平面上において、突起部2が占める面積率が0.3以下であり、突起部2の高さHと、凹部幅wとが、H/w≧0.7となる成形体である。
微細な凹凸構造によって液滴をはじき付着しにくくなることは、従来より知られており、構造が微細である程、撥液性が向上すると認識されている。しかし、凹凸構造を基材表面に形成する場合は、微細化によって製造上のリスクが高くなり、また耐久性も悪化という懸念がある。
検討の結果、製造が容易であり、比較的耐久性の高いμmオーダーの凹凸構造であっても、本発明に記載の構造をとれば、液滴の侵入を抑制する効果があることを見出した。
ここで、規則的に配列した突起部とは、上述の条件を満たすよう制御して配列されておればよく、全ての突起部2の高さHや凹部幅wが一定である必要はない。
さらに、突起部2の頂点部を通る仮想平面とは、突起部が錐台形状であるような突起部の先端面が略平坦である場合は、その平坦面を含む平面を指すものとした。これは平坦面の縁にR加工が施されているものを含む。それ以外に、突起部の先端面が尖っていたり、丸みを帯びているもの、傾斜がついている場合には、突起部の高さが最も高い位置から基材側に0.5μmの位置を通る基材に水平な平面と規定した。このように設定した理由としては、先端面が略平坦でない場合は、液滴が凹部に僅かに侵入した状態で留まるためであり、0.5μmの寸法については、本発明を見出すに当たって用いた実験値と照らし合わせて決定した。
また、突起部が占める面積率とは、突起部の頂点部を通る平面において、基材表面に施された凹凸構造が存在している領域全体の面積のうち、突起部が占めている面積の割合を指す。
空気中では液滴は球体であるため、空気と液滴との接触角は180°と考えることができる。このため、基材と液滴との接触面において、突起部が占める面積率が低い程、基材に付着しにくくなる。検討の結果、突起部が占める面積率が0.3以下であれば、基材と液滴との付着性が十分に下がり、高い撥液性が発揮されることがわかった。
また、突起部の高さHと凹部幅wとに起因する値であるH/wが影響するメカニズムは、以下のように推測する。
基材表面に液滴が付着するとき、まず点接触し、図6(a)に示すとおり、その後、液滴界面が基材表面の形状に沿って濡れ拡がっていくという経路を辿る。
凹部のアスペクト比にあたるH/wの値が大きい場合、液滴の界面は、幅wに相当する距離を進む間に、高さHに相当する位置エネルギー分の仕事をする必要が生じる。このた
め、H/wの値が一定以上であるとき、図5(b)に示すとおり、準安定的に、液滴界面の拡大経路が凹凸形状に沿わず、ほぼ直線的に移行すると考えられる。
め、H/wの値が一定以上であるとき、図5(b)に示すとおり、準安定的に、液滴界面の拡大経路が凹凸形状に沿わず、ほぼ直線的に移行すると考えられる。
検討の結果、H/wが0.7以上であれば、凹部への液滴の侵入が抑制され、高い撥液性が発揮される。
なお、本発明に記載の寸法は、測定装置として、形状測定用のレーザー顕微鏡もしくは、走査型電子顕微鏡を用い、誤差範囲として±20%の寸法のずれは許容することとした。
(変形例)
図7は本発明の実施の形態1の変形例である成形体を示す断面図である。
図7は本発明の実施の形態1の変形例である成形体を示す断面図である。
この変形例が実施の形態1と異なる点は、防汚コート層4の有無である。このため、実施の形態1と同一部品については同一符号を付して説明を省略する。
図7に記すように、凹凸表面3が防汚コート層4に覆われている。
防汚コート層4に用いられるコーティング剤は、凹凸表面の表面自由エネルギーを制御するために塗布され、その材料については特に限定されるものではなく、フッ素系、シリコーン系、ポリシラン系、アルキル系、アクリル系、シリカ系等を用いることができる。特に、撥液性を向上させる、すなわち表面自由エネルギーを低減させるため、コーティング剤成分の官能基としてフッ化炭素基、シリコーン基、炭化水素基等を有するものが用いることができる。
フッ素系コーティング剤として、フルオロアルキル基、フルオロエーテル基等を含むもの、また、フッ素系シラン化合物や、膜強度を向上させるためにシロキサン結合を有していてもよい。フルオロエーテル基を含むことにより、さらに摩擦抵抗を低減することが可能である。
シリコーン系コーティング剤として、ポリシロキサンを骨格とし、側鎖にメチル基やフェニル基を有するものを用いてもよい。変性基を含んでいてもよい。
また、アルキルポリシラン、フッ化アルキルポリシラン等のポリシラン系、アルキル系、アクリル系、シリカ系、その他汎用的なコーティング剤を用いることができる。
コーティング剤を塗布する際、基材との密着性を向上させるため、例えばシリカ層や有機層等を形成するようなプライマーを用いてもよく、また前処理として基材にコロナ処理やプラズマ処理等の放電処理を行ってもよい。
また、コーティング層の膜厚は、好ましくは突起部2の高さHの30%以下、さらに好ましくは10%以下がよい。コーティング剤の膜厚が大きければ基材の凹凸構造の特性が発揮できないためである。
このとき膜厚は、突起部2間の凹部ではなく、突起部、好ましくは突起の頂点部付近を含む垂直断面、もしくは平行断面における膜厚を評価することが好ましい。基材表面に液滴が付着するとき、まず突起部2で接触するため、突起部2におけるコーティング剤の膜厚を評価することが好ましい。また、膜厚評価が困難な場合、例えば基材には非含有で、コーティング剤に含まれている元素の分析を行うことにより、コーティング剤の有無を確認することも可能である。
さらに、成形体の性能を阻害しないのであれば、シリカ等の無機微粒子を成形体表面に付着させ、防汚コート層4の一部とすることも可能である。このとき、無機バインダー・有機バインダーに関わらず、バインダー成分を用いることも可能である。
コーティング剤の塗布方法は、ドライ、ウェット等、一般的に知られている方法で塗布可能である。
また、防汚コート層4は、成形前の基材にあらかじめ表面自由エネルギーを変更可能な添加剤、例えばフッ素系、シリコーン系等の添加剤を混合しておき、成形後に表面に防汚コート層を形成するものでもよい。
以上のように、汚れの原因となる液滴、求められる耐久性や外観に合わせて、自由に選択することが出来る。
本発明に係る実施例を以下に述べて、より具体的に説明する。なお、この実施例によって本発明が限定されるものではない。
各実施例および比較例において、図2〜3に示した凹凸表面を有する成形体の製造を試みた。
まず、公知のリソグラフィ法により、ニッケル基板の表面に各例の目的とする凹凸表面の反転構造を備えたモールドを作製した。
次に、厚み100μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを、前記モールドとニッケル平板とで、モールド表面の凹凸構造がフィルム側となるように挟み、熱プレス機の下側ステージ上に配置した。
続いて、下側ステージをフィルムのガラス転移温度以下の温度に維持しつつ、上側ステージをフィルムのガラス転移温度以上の温度に保ちながらステージを稼動させ、一定時間加圧して転写させる。
最後に、自然放冷後、モールドからフィルムを引き剥がし、各例の成形体であるフィルムを得た。
以上のようにして、凹凸表面を有する成形体を得た。表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、フィルムの熱収縮による寸法のずれを考慮しても、誤差範囲内にてマスターモールドのパターン形状を再現していることが確認された。
次に、一部の実施例および比較例において、凹凸表面に防汚コート層となるコーティングを施した。
コーティング剤は、全ての実施例と比較例において、同じフルオロエーテル基を含むフッ素系コート剤を選定し、また密着性を上げるプレコート剤を併せて用いた。
次に、成形体の凹凸表面における撥液性の評価方法を以下に記す。
撥液性の代表的な指標として、5μLの蒸留水の接触角および転落角を選定した。接触角および転落角の計測には、協和界面科学株式会社の接触角計CA−DT型を用いた。
ここで、上述のように製造した成形体は、非常に非粘着性が高く、接触角計のシリンジ針の先についた液滴を凹凸表面に押さえつけても全く付着しない場合がある。このような場合、正確な接触角を測定することが出来ない為、接触角を180度とした。
転落角については、凹凸表面を垂直にしても液滴が転落しない場合は、90度以上(>90度と表記)とした。
また、成形体の凹凸表面において、液滴が凹部内へ侵入しているか否かを、拡大鏡を用いて観察し、下記のように評価した。
○:凹部内への液体の侵入なし
×:凹部内への液体の侵入あり
ここで、凹部内への液滴の侵入の有無の判断方法について説明する。成形体の凹凸表面に液滴が載った状態もしくはシリンジ針の先の液滴を凹凸表面に押さえつけた状態で、後方から光を当て、凹部の形状が視認できる場合は凹部への侵入なし、液体で埋まり凹部が見えない場合は、凹部内への液体の侵入ありと判断した。
(実施例1)
上記製造方法にて基材表面に凹凸構造を持つ成形体を作製した。凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(c)に示す通りに配列し、平面形状は一辺が5μmの正方形、また、突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
×:凹部内への液体の侵入あり
ここで、凹部内への液滴の侵入の有無の判断方法について説明する。成形体の凹凸表面に液滴が載った状態もしくはシリンジ針の先の液滴を凹凸表面に押さえつけた状態で、後方から光を当て、凹部の形状が視認できる場合は凹部への侵入なし、液体で埋まり凹部が見えない場合は、凹部内への液体の侵入ありと判断した。
(実施例1)
上記製造方法にて基材表面に凹凸構造を持つ成形体を作製した。凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(c)に示す通りに配列し、平面形状は一辺が5μmの正方形、また、突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に記す。
(実施例2)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(c)に示す通りに配列し、平面形状は一辺が25μmの正方形、また、突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計した。
(実施例2)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(c)に示す通りに配列し、平面形状は一辺が25μmの正方形、また、突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計した。
さらに、凹凸表面に上記フッ素系コーティング剤を塗布することで、本実施例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に併せて記す。
(実施例3)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(a)に示す通りに配列し、平面形状は直径が5μmの円形、また、突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
(実施例3)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(a)に示す通りに配列し、平面形状は直径が5μmの円形、また、突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に併せて記す。
(実施例4)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(b)に示す通りに配列し、平面形状は直径が25μmの円形、また、突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
(実施例4)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(b)に示す通りに配列し、平面形状は直径が25μmの円形、また、突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に併せて記す。
(実施例5)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起からなり、突起部は図5(c)に示す通りに配列し、平面形状は一辺が30μmの正方形、また突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
(実施例5)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起からなり、突起部は図5(c)に示す通りに配列し、平面形状は一辺が30μmの正方形、また突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に併せて記す。
(実施例6)
凹凸構造は、傾斜角75度の断面が台形の突起部からなり、突起部は、図5(d)に示す通りに配列し、突起部の幅=5μm、また、突起部の高さH=15μm、凹部幅w=15μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
(実施例6)
凹凸構造は、傾斜角75度の断面が台形の突起部からなり、突起部は、図5(d)に示す通りに配列し、突起部の幅=5μm、また、突起部の高さH=15μm、凹部幅w=15μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に併せて記す。
(実施例7)
凹凸構造は、図4(b)に示すような、断面が傾斜角60度の先端が尖った三角形の突起部からなる。また、突起部は、図5(d)に示す通りに配列されている、つまり、突起部2の平面形状は、長方形である。突起部の幅=0.5μm、また、突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
(実施例7)
凹凸構造は、図4(b)に示すような、断面が傾斜角60度の先端が尖った三角形の突起部からなる。また、突起部は、図5(d)に示す通りに配列されている、つまり、突起部2の平面形状は、長方形である。突起部の幅=0.5μm、また、突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に併せて記す。
(比較例1)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(c)に示す通りに配列し、平面形状は一辺が50μmの正方形、また、突起部の高さH=15μm、凹部幅w=15μmとなるように設計した。さらに、凹凸表面に上記フッ素系コーティング剤を塗布することで、本比較例の成形体を得た。
(比較例1)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(c)に示す通りに配列し、平面形状は一辺が50μmの正方形、また、突起部の高さH=15μm、凹部幅w=15μmとなるように設計した。さらに、凹凸表面に上記フッ素系コーティング剤を塗布することで、本比較例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に併せて記す。
(比較例2)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(c)に示す通りに配列し、平面形状は一辺が50μmの正方形、また、突起部の高さH=15μm、凹部幅w=50μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
(比較例2)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(c)に示す通りに配列し、平面形状は一辺が50μmの正方形、また、突起部の高さH=15μm、凹部幅w=50μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に併せて記す。
(比較例3)
平板のマスターモールドを用いて、上記製造方法にて基材表面が平滑な成形体を作製し、本比較例の成形体を得た。
(比較例3)
平板のマスターモールドを用いて、上記製造方法にて基材表面が平滑な成形体を作製し、本比較例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に併せて記す。
(比較例4)
平板のマスターモールドを用いて、上記製造方法にて基材表面が平滑な成形体を作製した。さらに、基材の平滑表面に上記フッ素系コーティング剤を塗布することで、本比較例の成形体を得た。
(比較例4)
平板のマスターモールドを用いて、上記製造方法にて基材表面が平滑な成形体を作製した。さらに、基材の平滑表面に上記フッ素系コーティング剤を塗布することで、本比較例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に併せて記す。
表1において、前記突起部が占める面積率が0.3以下であり、前記突起部と隣接する突起部との凹部幅wが40μm以下であり、基材表面上に位置する液滴の転落角が90°以下である成形体においては、実施例1〜実施例6に示すように、表面に付着した液滴が凹部に液体が侵入しない状態で留まる為、高い撥液性を発揮することが出来る。
一方、突起部の占める面積率もしくは凹部幅、転落角の値が本発明に記載の条件を満たさない場合は、比較例1〜比較例4に示すように、十分な撥液性は得られなかった。
以上のように、本発明にかかる表面に施された微細な凹凸形状によって撥液性を有する成形体は、防汚コート剤を用いない場合であっても、十分な撥液性を発揮することが可能となり、また、製造性および耐久性に優れていることから、包装材の内面や、液切り性が求められる注ぎ口やキャップ部品、掃除機や冷蔵庫、エアコン、洗濯機、温水洗浄便座、電子レンジ、炊飯器などの家電製品を含む耐久消費財、または、自動車や内装および外装の建材に適用可能である。
1 成形体
2 突起部
3 凹凸表面
4 防汚コート層
2 突起部
3 凹凸表面
4 防汚コート層
本発明は、基材表面に備えた微細な凹凸構造によって撥液性を有する成形体に関するものである。
従来、部品の基材表面に撥液性を持たせることにより、表面に付着した水滴や油滴を撥き、防汚をはじめ、耐指紋、防曇、着氷防止といった機能を発揮することが知られている。
また、近年では、シャンプーやリンス、液体洗剤、ソースやマヨネーズといった調味料、歯磨き粉、レトルト食品の容器や包装体の内面や注ぎ口に同様の表面処理を施すことで、液切れ性を向上させることにより、充填物の使いきりを容易にする効果や注ぎ口を衛生的に保つ効果が着目され、研究が進められている。
ここで、撥液性とは、基材表面上に到達した液滴の非付着性および易除去性を表す指標である。基材表面と液滴との接触角が大きい程、また転落角が小さい程、撥液性が高いと規定される。
接触角とは、図1(a)に記す通り、基材表面に液滴が付着した状態において、基材の接触面と液滴の界面とがつくる角度である。
接触角が0度に近づくほど基材と液滴がなじみやすく、180度に近づくほど、基材に付着しにくくなる。
接触角が0度に近づくほど基材と液滴がなじみやすく、180度に近づくほど、基材に付着しにくくなる。
また、転落角とは、図1(b)に記す通り、液滴が載った基材表面を、水平な位置から除々に傾斜させていき、液滴が滑り始める角度のことである。
転落角が0度に近づくほど、液滴は基材から除去されやすくなり、転落角が90度より大きくなると、液滴は基材から離れにくくなる。
しかしながら、撥液性を与える表面処理技術の分野において、表面材料の化学構造のみに依存した撥液効果の向上は限界を迎えており、近年では、撥液材料と微細な凹凸構造の組合せにより、より高い撥液性を備えたコート剤もしくはシートが提案されている(例えば、特許文献1または2)。
特許文献1には、アルコール、アルコキシシラン、パーフルオロアルキルシラン、シリカ微粒子、アルコキシシランの加水分解反応を促進する触媒、および水を含むコーティン
グ組成物をコーティングして得られる撥水・撥油性コーティング物品が記載されている。その物品の表面における二乗平均粗さ値は150nm以上であり、水に対する接触角は150度以上、油に対する接触角は150度以上、水滴に対する転落角は10度以下である。
グ組成物をコーティングして得られる撥水・撥油性コーティング物品が記載されている。その物品の表面における二乗平均粗さ値は150nm以上であり、水に対する接触角は150度以上、油に対する接触角は150度以上、水滴に対する転落角は10度以下である。
高い撥水・撥油性をもつ材料にシリカ微粒子を配合して特定値以上の表面粗さを持たせることで、特に水に対する転落性を向上させることができるとされている。
特許文献2には、一方の表面側に微細な凹凸形状を有する凹凸形状層と、凹凸形状層の一方の表面側にほぼ一定厚みで形成された撥水層とを備え、凹凸形状層の一方の表面側の少なくとも表面部が、加熱延伸後も微細な凹凸形状を維持する架橋体であり、撥水層が疎水性酸化物微粒子を含有するオレフィン系共重合体樹脂からなる、撥水性を備えた熱可塑性樹脂シートおよび成形品が記載されている。
これにより、優れた撥水性が得られ、食品用包装材料として使用した場合、食品が付着してしまうことがほとんどないとされている。
また、微細な凹凸構造を微粒子の積層ではなく、基材表面に直接加工し撥水性をもたせる方法も提案されている(例えば、特許文献3)。
特許文献3には、基材の凹凸表面が、円形又は多角形の底面を有し、円形底面の径又は底面多角形に外接する円の径が50μm以下である無数の錐体状突起が50μm以下のピッチで二次元的に配置されている微細凹凸構造を備えており、フルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物又はフルオロアルキル基を有するエタノール化合物からなる第1の撥水性化合物と、第1の撥水性化合物よりも炭素数の少ないフルオロアルキル基を有するアルコキシシラン化合物からなる含炭素化合物および/または三酸化アンチモンからなる第2の撥水性化合物を備えている撥水性構造および撥水性構造体が記載されている。
基材表面に形成している微細な凹凸構造と撥水性の高い化合物によるコート剤の組み合わせにより、より高い撥水性を発揮できるとされている。
しかしながら、前記従来の特許文献1および特許文献2に記載の技術は、コート剤に含まれる微粒子の積層もしくはコート層をもつ微粒子の積層によって凹凸構造を形成しているため、触手等によって簡単に磨耗し、微粒子が剥離してしまうことがある。これにより性能が著しく劣化してしまうという課題や、場合によっては容器や包装体の内容物に微粒子が付着してしまうという課題があった。
また、前記従来の特許文献3に記載の技術は、コート剤の種類に加えて、突起の底面部の寸法や、突起間のピッチの寸法やその相関を示してはいるものの、その凹凸形状は微細ではあるが、液滴の付着抑制の理論に基づいたものではなく、突起の底面部の寸法やピッチの寸法の規定は、撥液性を発揮する構造としては意味を成さない。よって、一定以上の撥水性を有するコート剤との組合せであっても、十分な撥液性を確実に発揮するとは言い
がたい。また、液滴の転落性に対する効果の記載はない。
がたい。また、液滴の転落性に対する効果の記載はない。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、コート剤を塗布しない、もしくは耐熱性や耐久性に優れた汎用な防汚コート剤とを用いるだけで、高い撥液性を有する成形体を提供するものである。
前記従来の課題を解決するために、本発明の成形体は、基材表面に規則的に配列された複数の突起部を有する成形体であって、前記突起部は、前記突起部と隣接する突起部の頂点部を通る仮想平面上において、前記突起部の形成する平面形状が長方形であって、前記突起部の長手方向に垂直な断面において、前記突起部の断面形状が台形または三角形であり、前記突起部の長手方向と隣接する突起部の長手方向とが、平行に配列され、前記仮想平面上において、前記突起部が占める面積率が0.3以下であり、前記仮想平面上における前記突起部と隣接する突起部との距離である凹部幅wが40μm以下であり、前記基材表面に位置する液滴の転落角が90°以下であるものである。
これによれば、製造が容易であり、比較的耐久性の高いμmオーダーの凹凸構造であっても、液滴の侵入を抑制し転落性に優れる。
本発明の成形体は、表面に到達した液滴の付着しにくく、また除去しやすくするμmオーダーの凹凸構造を有しているため、成形性や耐久性に優れており、耐久性消費財の防汚表面や、容器や包装材の内面として使用することが可能となる。
第1の発明の成形体は、基材表面に規則的に配列された複数の突起部を有する成形体であって、前記突起部は、前記突起部と隣接する突起部の頂点部を通る仮想平面上において、前記突起部の形成する平面形状が長方形であって、前記突起部の長手方向に垂直な断面において、前記突起部の断面形状が台形または三角形であり、前記突起部の長手方向と隣接する突起部の長手方向とが、平行に配列され、前記仮想平面上において、前記突起部が占める面積率が0.3以下であり、前記仮想平面上における前記突起部と隣接する突起部との距離である凹部幅wが40μm以下であり、前記基材表面に位置する液滴の転落角が90°以下であるものである。
基材表面の凹凸構造のうち、特に、突起部の形状と、突起部が占める面積率、凹部幅、転落角を規定することにより、高い撥液性を得ることができる。
また、液滴の転落角が90°以下であることから、例えば包装材や容器の内部に本発明の成形体を使用する際、包装材や容器を静置しておいたり傾斜させると充填物が転落し液切れ性が向上するため、充填物の使いきりを容易にしたり、注ぎ口を衛生的に保つ効果が
ある。
ある。
また、略垂直面もしくはそれより低い角度を有する製品や部材の表面に用いることにより、表面に付着した液滴が転落し、液切れ性や防汚性を向上させることができる。
液滴が、突起部の頂点部を通る仮想平面上を通って移動する際、突起部の平面形状が長方形である場合は、液滴の移動経路に突起部間に形成される凹部の数をなくす、もしくは少なくでき、連続した突起部に沿って液滴が速やかに移動することから、より高い撥液性を発揮できる。特に、突起部間に形成される凹部に液滴が入り込み、液滴が基材表面上に残留するリスクを著しく軽減できる。
液滴が、突起部の頂点部を通る仮想平面上を通って移動する際、突起部の平面形状が長方形である場合は、液滴の移動経路に突起部間に形成される凹部の数をなくす、もしくは少なくでき、連続した突起部に沿って液滴が速やかに移動することから、より高い撥液性を発揮できる。特に、突起部間に形成される凹部に液滴が入り込み、液滴が基材表面上に残留するリスクを著しく軽減できる。
第2の発明は、第1の発明において、突起部の高さHと、前記凹部幅wとが、H/w≧0.7となるものである。
これにより、高い撥液性はもちろん成形性と耐久性に優れた成形体を得ることができる。
第3の発明は、第1または第2の発明において、突起部の高さHが1μm以上50μm以下であるものである。
これにより、液滴の体積の影響を受けにくく、凹部に液滴が接触してしまうことを防ぎ、また、構造の破損の心配がなく、耐久性が優れた成形体を提供できる。
第4の発明は、第1〜3のいずれか1つの発明において、突起部の頂点部から当該突起部の高さHの0.2倍の距離を下がった位置を通る仮想平面と、0.8倍の距離を下がった位置を通る仮想平面との間の当該突起部の稜線の傾斜角が60°以上90°以下であるものである。
突起部に傾斜角をつけることで、成形性が高くなり、種々の製造方法に対応可能となる。また、傾斜角が60度以上であれば、液滴の侵入が抑制され、さらに高い撥液性が発揮できる。
第5の発明は、第1〜4のいずれか1つの発明において、突起部と隣接する突起部の頂点部を通る仮想平面上において、前記突起部が占める面積率が0.2以下であるものである。
これにより、基材と液滴との非付着性がさらに向上し、より高い撥液性が発揮される。
第6の発明は、第1〜5のいずれか1つの発明において、転落角が45°以下であるものである。
これにより、より高い撥液性が発揮され、包装材や容器の内面、あるいは防汚や撥液性、液切れ性を要求される製品や部材表面等に用いた際、さらに高い効果が得られる。
第7の発明は、特に第1〜6のいずれか1つの発明の成形体において、前記突起部が占める面積率が0.05以下であるものである。
第7の発明は、特に第1〜6のいずれか1つの発明の成形体において、前記突起部が占める面積率が0.05以下であるものである。
液滴と基材との非付着性がさらに向上し、比較的表面エネルギーの小さい材質の基材であっても、高い撥液性を発揮することができるため、成形体の材質選択性が向上できる。
第8の発明は、第1〜7のいずれか1つの発明において、基材表面に、防汚コート層を備えるものである。
防汚コート層によって成形体の表面張力を制御することにより、より高い撥液性を発揮することが可能となる。
第9の発明は、第1〜8のいずれか1つの発明において、凹部幅wが1μm以上であるものである。
これにより、防汚コート層を備える際も塗装性への影響が少なく、成形時の転写性も確保することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における成型体について、図2〜図5を用いて説明する。図2は成形体の断面図、図3および図4は、成形体の凹凸表面の断面拡大図、図5は突起部の頂点部を通る平面上における突起部の平面図である。
本発明の実施の形態1における成型体について、図2〜図5を用いて説明する。図2は成形体の断面図、図3および図4は、成形体の凹凸表面の断面拡大図、図5は突起部の頂点部を通る平面上における突起部の平面図である。
図2において、成形体1の基材表面に、規則的に配列された複数個の突起部2を備えた凹凸表面3が形成されている。
成形体1は、撥液性を求められる箇所に用いられる部品構造体もしくはフィルムを想定しているが、これに限定されるものではない。
成形体1の基材の材質としては、耐久的に形状を維持できるものであれば良く、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタラート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、塩化ビニル、ポリ乳酸、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、環状オレフィンなどの樹脂類やガラス類、銅・ステンレスなどの金属類等、特に指定するものではなく、求められる外観品位、透明性、機械物性、コスト等を考慮して自由に選択できる。
また、求められる機械特性や撥液性を付与するための添加剤を含んでいてもよい。
成形体1と凹凸表面3は一体構造であっても良いが、製造方法や求められる撥液性に合わせて選定されるものであり、別の素材であってもよい。
図3に記すように、突起部2は、先端面が基材に水平な平坦面である台形体、もしくは台形錐体(図3(a)参照)である。なお、これに限定されるものではなく、先端面が基材に対して傾斜を持った平坦面である略台形錐体、先端面の端部が丸みを帯びた錐体(図3(b)参照)、先端部が尖った錐体や、先端部が丸みを帯びた錐体(図3(c)参照)でも良い。または、突起部2は、先端部が丸みを帯びた三角形体である。または、突起部2は先端部が尖った略三角形体(図4(a)〜(c)参照)である。
なお、突起部2は、これに限定されるものではなく、先端面が円弧状である略台形、先端面が基材に対して傾斜を持った平坦面である略台形であっても良い。
また、突起部2を含む凹凸表面3は、微視的に平滑面でなくてもよく、性能に影響を与えない程度の表面粗さやキズは許容されるものとする。
本実施の形態では、突起部2の高さHは、以下のように定義する。突起部2が先端面を
備える場合(図3(a)、(b)参照)には、凹凸表面3の凹部の底面と突起部2の先端面を通る仮想的な平面との距離と定義する。突起部2が先端面を備えない場合、つまり、突起部2が先端部を備える場合(図3(c)、図4(a)〜(c)参照)には、凹凸表面3の凹部の底面と突起部2の先端を通る仮想的な平面との距離と定義する。なお、上記の仮想的な平面は、必ずしもすべての突起部の先端面、または、先端部を通る必要は無く、少なくとも突起部とその突起部に隣接する2つの突起部の先端面、または、先端部を通ればよい。
備える場合(図3(a)、(b)参照)には、凹凸表面3の凹部の底面と突起部2の先端面を通る仮想的な平面との距離と定義する。突起部2が先端面を備えない場合、つまり、突起部2が先端部を備える場合(図3(c)、図4(a)〜(c)参照)には、凹凸表面3の凹部の底面と突起部2の先端を通る仮想的な平面との距離と定義する。なお、上記の仮想的な平面は、必ずしもすべての突起部の先端面、または、先端部を通る必要は無く、少なくとも突起部とその突起部に隣接する2つの突起部の先端面、または、先端部を通ればよい。
突起部2の高さHは、全ての突起部2で一定値であることが望ましい。ただし、製造上避けられない程度のバラつきは許容されるものとする。
本実施の形態では、突起部2の傾斜角は、凹凸表面3の凹部を形成する平面と突起部2の稜線がなす角と定義する。稜線は、突起部2の高さ方向に平行な任意の平面と突起部2の側面とが交わる交線である。
突起部2の傾斜角は、製造上全て一定値であることが望ましいが、突起部2の頂点部から0.2Hだけ下がった位置を通る仮想平面と突起部2の頂点部から0.8Hだけ下がった位置を通る仮想平面と間の突起部2の稜線の傾斜角が60°以上90°以下であれば、任意に変動されることが可能である。
また、突起部2の稜線は、直線である必要はなく、成形性を考慮して自由に設計することが可能であり、曲線であっても、直線および曲線を組み合わせた線であってもよい。
本実施の形態では、凹部幅wは、突起部2の頂点部を通る仮想的な平面における突起部2と当該突起部2とも最も近接して隣接する突起部2との距離と定義する。突起部2の頂点部は、以下のように定義する。突起部2が先端面を備える場合(図3(a)、(b)参照)には、先端面を頂点部とする。突起部2が先端面を備えない場合、つまり、突起部2が先端部を備える場合(図3(c)、図4(a)〜(c)参照)には、先端部の先端から0.5μmだけ凹部側に下がった位置を頂点部とする。
凹部幅wは、一定値であることが望ましいが、突起部2の高さHとの間に、H/w≧0.7が成り立つ寸法域であり、かつ40μm以下であれば、任意に変動されることが可能である。
また、図4(a)、(b)に記すように、突起部2の頂点部を通る仮想平面における断面形状(以下、平面形状と呼ぶ)は円形であることが望ましい。
これにより、転落角が低くなり、性能を高くすることが可能である。なお、平面形状は、これに限定されるものではなく、楕円形(図5(c)参照)や多角形(図5(d)、(e)参照)でも良い。
また、図5(d)に記すように、突起部2の平面形状は、長方形であることが、より望ましい。
これにより、転落角が低くなり、性能を高くすることが可能である。さらには、突起部2の間に連続した凹溝が形成されるため、凹凸表面3の構造に液滴が捕捉されることがなく、凹凸表面3に付着しづらくなる。
液滴が、突起部の頂点部を通る仮想平面上を通って移動する際、図5(d)に示すように突起部の平面形状が長方形である場合、液滴の移動経路に突起部間に位置する凹部の数
をなくす、もしくは少なくでき、連続した突起部に沿って液滴が速やかに移動することから、より高い撥液性を発揮できる。特に、突起部間に液滴が入り込み、基材表面上に残留するリスクを著しく軽減できる。
をなくす、もしくは少なくでき、連続した突起部に沿って液滴が速やかに移動することから、より高い撥液性を発揮できる。特に、突起部間に液滴が入り込み、基材表面上に残留するリスクを著しく軽減できる。
表面に微細凹凸加工を施す場合、目的とする凹凸表面3の反転構造を備えたモールドを基材表面に形状転写する方法が一般的であるが、その際に密着したモールドと成形体とを分離する型抜きが課題となる。しかし、突起部2の平面形状が長方形であれば、高さHが大きい突起部であっても、突起部2に沿ってモールドを外すことが容易となり、成形性が向上する。
さらには、射出成形を行う場合は、金型の抜き勾配を小さくすることができ、成形体の形状設計が容易となる。
さらに、突起部2の平面形状は、全て同一形状であってもなくても良い。
本実施の形態では、突起部2が占める面積率は、突起部2の頂点部を通る仮想的な平面において、凹凸表面3が存在している領域全体の面積のうち、突起部2が占めている面積の割合と定義する。
突起部2の占める面積率が0.3以下、好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.05以下であれば、異なる形状や大きさを設定することが可能である。特に、突起部2の占める面積率が0.05以下であれば、基材との液滴の非付着性が向上し、比較的表面エネルギーの小さい材質の基材であっても、高い撥液性を発揮することができるため、成形体の材質選択性が向上できる。
凹凸表面3は、成形体1の基材表面全域に配置されている必要はなく、撥液性を求められる箇所にのみ限定的に配置されていてもよい。
突起部2は、成形体と別部品として製造してもよいが、耐久性の観点から、一体成形が望ましい。もしくは、凹凸表面3が成形体表面として密着性良く接着されていることが望ましい。
次に、成形体1の製造方法について説明する。
成形体1の表面に凹凸表面3を設ける製造方法は、特に限定されないが、規定した寸法で規則的に凹凸を配列させる方法として、転写方式が挙げられる。転写方式には、射出成形、熱プレス成形、ナノインプリント技術を利用した熱インプリント加工、光インプリント加工などがある。
射出成形とは、予め内表面に凹凸形状が施された型(モールド)の容器(コア、キャビティ)の中に、溶融樹脂を流し込んで、冷却し、モールド表面の凹凸形状を転写するものである。
熱プレス成形とは、モールドと樹脂とを加熱し、モールドを樹脂に押し当てることによって表面の凹凸形状を樹脂に転写するものである。特に、モールドが円柱形状のもで、円柱が回転しながら転写するものをエンボスロール加工という。
熱インプリント加工とは、基材にポリメタクリル酸メチルなどの熱可塑性樹脂を塗布し、ガラス転移温度以上に昇温してモールドを押し付けて形状を転写させるものであり、光インプリント加工とは、基材に光硬化性樹脂を塗布し、モールドを押し付けてUV照射す
ることによって樹脂を硬化させ、形状を転写させるものである。
ることによって樹脂を硬化させ、形状を転写させるものである。
熱インプリント加工は、熱可塑性樹脂の選択性が広いという特長があるが、昇温および降温に時間を要するためスループットが上がらないという問題がある。一方、光インプリント加工は、光硬化性樹脂の選択性の問題があるものの、一般に粘度が低いために転写性が良く、また紫外線を照射して硬化するためにスループットが高いという特長がある。
ここでモールドは、ダイヤモンド切削などの機械加工や、レーザー加工、エッチング法、リソグラフィ法の特殊加工などにより作製することもできる。
本実施の形態の成形体1は、望ましくは、基材表面に規則的に配列された複数の突起部2を有する成形体であって、突起部2の頂点部を通る仮想平面上において、突起部2が占める面積率が0.3以下であり、突起部2の高さHと、凹部幅wとが、H/w≧0.7となる成形体である。
微細な凹凸構造によって液滴をはじき付着しにくくなることは、従来より知られており、構造が微細である程、撥液性が向上すると認識されている。しかし、凹凸構造を基材表面に形成する場合は、微細化によって製造上のリスクが高くなり、また耐久性も悪化という懸念がある。
検討の結果、製造が容易であり、比較的耐久性の高いμmオーダーの凹凸構造であっても、本発明に記載の構造をとれば、液滴の侵入を抑制する効果があることを見出した。
ここで、規則的に配列した突起部とは、上述の条件を満たすよう制御して配列されておればよく、全ての突起部2の高さHや凹部幅wが一定である必要はない。
さらに、突起部2の頂点部を通る仮想平面とは、突起部が錐台形状であるような突起部の先端面が略平坦である場合は、その平坦面を含む平面を指すものとした。これは平坦面の縁にR加工が施されているものを含む。それ以外に、突起部の先端面が尖っていたり、丸みを帯びているもの、傾斜がついている場合には、突起部の高さが最も高い位置から基材側に0.5μmの位置を通る基材に水平な平面と規定した。このように設定した理由としては、先端面が略平坦でない場合は、液滴が凹部に僅かに侵入した状態で留まるためであり、0.5μmの寸法については、本発明を見出すに当たって用いた実験値と照らし合わせて決定した。
また、突起部が占める面積率とは、突起部の頂点部を通る平面において、基材表面に施された凹凸構造が存在している領域全体の面積のうち、突起部が占めている面積の割合を指す。
空気中では液滴は球体であるため、空気と液滴との接触角は180°と考えることができる。このため、基材と液滴との接触面において、突起部が占める面積率が低い程、基材に付着しにくくなる。検討の結果、突起部が占める面積率が0.3以下であれば、基材と液滴との付着性が十分に下がり、高い撥液性が発揮されることがわかった。
また、突起部の高さHと凹部幅wとに起因する値であるH/wが影響するメカニズムは、以下のように推測する。
基材表面に液滴が付着するとき、まず点接触し、図6(a)に示すとおり、その後、液滴界面が基材表面の形状に沿って濡れ拡がっていくという経路を辿る。
凹部のアスペクト比にあたるH/wの値が大きい場合、液滴の界面は、幅wに相当する距離を進む間に、高さHに相当する位置エネルギー分の仕事をする必要が生じる。このため、H/wの値が一定以上であるとき、図5(b)に示すとおり、準安定的に、液滴界面の拡大経路が凹凸形状に沿わず、ほぼ直線的に移行すると考えられる。
検討の結果、H/wが0.7以上であれば、凹部への液滴の侵入が抑制され、高い撥液性が発揮される。
なお、本発明に記載の寸法は、測定装置として、形状測定用のレーザー顕微鏡もしくは、走査型電子顕微鏡を用い、誤差範囲として±20%の寸法のずれは許容することとした。
(変形例)
図7は本発明の実施の形態1の変形例である成形体を示す断面図である。
図7は本発明の実施の形態1の変形例である成形体を示す断面図である。
この変形例が実施の形態1と異なる点は、防汚コート層4の有無である。このため、実施の形態1と同一部品については同一符号を付して説明を省略する。
図7に記すように、凹凸表面3が防汚コート層4に覆われている。
防汚コート層4に用いられるコーティング剤は、凹凸表面の表面自由エネルギーを制御するために塗布され、その材料については特に限定されるものではなく、フッ素系、シリコーン系、ポリシラン系、アルキル系、アクリル系、シリカ系等を用いることができる。特に、撥液性を向上させる、すなわち表面自由エネルギーを低減させるため、コーティング剤成分の官能基としてフッ化炭素基、シリコーン基、炭化水素基等を有するものが用いることができる。
フッ素系コーティング剤として、フルオロアルキル基、フルオロエーテル基等を含むもの、また、フッ素系シラン化合物や、膜強度を向上させるためにシロキサン結合を有していてもよい。フルオロエーテル基を含むことにより、さらに摩擦抵抗を低減することが可能である。
シリコーン系コーティング剤として、ポリシロキサンを骨格とし、側鎖にメチル基やフェニル基を有するものを用いてもよい。変性基を含んでいてもよい。
また、アルキルポリシラン、フッ化アルキルポリシラン等のポリシラン系、アルキル系、アクリル系、シリカ系、その他汎用的なコーティング剤を用いることができる。
コーティング剤を塗布する際、基材との密着性を向上させるため、例えばシリカ層や有機層等を形成するようなプライマーを用いてもよく、また前処理として基材にコロナ処理やプラズマ処理等の放電処理を行ってもよい。
また、コーティング層の膜厚は、好ましくは突起部2の高さHの30%以下、さらに好ましくは10%以下がよい。コーティング剤の膜厚が大きければ基材の凹凸構造の特性が発揮できないためである。
このとき膜厚は、突起部2間の凹部ではなく、突起部、好ましくは突起の頂点部付近を含む垂直断面、もしくは平行断面における膜厚を評価することが好ましい。基材表面に液滴が付着するとき、まず突起部2で接触するため、突起部2におけるコーティング剤の膜厚を評価することが好ましい。また、膜厚評価が困難な場合、例えば基材には非含有で、
コーティング剤に含まれている元素の分析を行うことにより、コーティング剤の有無を確認することも可能である。
コーティング剤に含まれている元素の分析を行うことにより、コーティング剤の有無を確認することも可能である。
さらに、成形体の性能を阻害しないのであれば、シリカ等の無機微粒子を成形体表面に付着させ、防汚コート層4の一部とすることも可能である。このとき、無機バインダー・有機バインダーに関わらず、バインダー成分を用いることも可能である。
コーティング剤の塗布方法は、ドライ、ウェット等、一般的に知られている方法で塗布可能である。
また、防汚コート層4は、成形前の基材にあらかじめ表面自由エネルギーを変更可能な添加剤、例えばフッ素系、シリコーン系等の添加剤を混合しておき、成形後に表面に防汚コート層を形成するものでもよい。
以上のように、汚れの原因となる液滴、求められる耐久性や外観に合わせて、自由に選択することが出来る。
本発明に係る実施例を以下に述べて、より具体的に説明する。なお、この実施例によって本発明が限定されるものではない。
各実施例および比較例において、図2〜3に示した凹凸表面を有する成形体の製造を試みた。
まず、公知のリソグラフィ法により、ニッケル基板の表面に各例の目的とする凹凸表面の反転構造を備えたモールドを作製した。
次に、厚み100μmの無延伸ポリプロピレンフィルムを、前記モールドとニッケル平板とで、モールド表面の凹凸構造がフィルム側となるように挟み、熱プレス機の下側ステージ上に配置した。
続いて、下側ステージをフィルムのガラス転移温度以下の温度に維持しつつ、上側ステージをフィルムのガラス転移温度以上の温度に保ちながらステージを稼動させ、一定時間加圧して転写させる。
最後に、自然放冷後、モールドからフィルムを引き剥がし、各例の成形体であるフィルムを得た。
以上のようにして、凹凸表面を有する成形体を得た。表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、フィルムの熱収縮による寸法のずれを考慮しても、誤差範囲内にてマスターモールドのパターン形状を再現していることが確認された。
次に、一部の実施例および比較例において、凹凸表面に防汚コート層となるコーティングを施した。
コーティング剤は、全ての実施例と比較例において、同じフルオロエーテル基を含むフッ素系コート剤を選定し、また密着性を上げるプレコート剤を併せて用いた。
次に、成形体の凹凸表面における撥液性の評価方法を以下に記す。
撥液性の代表的な指標として、5μLの蒸留水の接触角および転落角を選定した。接触角および転落角の計測には、協和界面科学株式会社の接触角計CA−DT型を用いた。
ここで、上述のように製造した成形体は、非常に非粘着性が高く、接触角計のシリンジ針の先についた液滴を凹凸表面に押さえつけても全く付着しない場合がある。このような場合、正確な接触角を測定することが出来ない為、接触角を180度とした。
転落角については、凹凸表面を垂直にしても液滴が転落しない場合は、90度以上(>90度と表記)とした。
また、成形体の凹凸表面において、液滴が凹部内へ侵入しているか否かを、拡大鏡を用いて観察し、下記のように評価した。
○:凹部内への液体の侵入なし
×:凹部内への液体の侵入あり
ここで、凹部内への液滴の侵入の有無の判断方法について説明する。成形体の凹凸表面に液滴が載った状態もしくはシリンジ針の先の液滴を凹凸表面に押さえつけた状態で、後方から光を当て、凹部の形状が視認できる場合は凹部への侵入なし、液体で埋まり凹部が見えない場合は、凹部内への液体の侵入ありと判断した。
(実施例1)
上記製造方法にて基材表面に凹凸構造を持つ成形体を作製した。凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(c)に示す通りに配列し、平面形状は一辺が5μmの正方形、また、突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
×:凹部内への液体の侵入あり
ここで、凹部内への液滴の侵入の有無の判断方法について説明する。成形体の凹凸表面に液滴が載った状態もしくはシリンジ針の先の液滴を凹凸表面に押さえつけた状態で、後方から光を当て、凹部の形状が視認できる場合は凹部への侵入なし、液体で埋まり凹部が見えない場合は、凹部内への液体の侵入ありと判断した。
(実施例1)
上記製造方法にて基材表面に凹凸構造を持つ成形体を作製した。凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(c)に示す通りに配列し、平面形状は一辺が5μmの正方形、また、突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に記す。
(実施例2)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(c)に示す通りに配列し、平面形状は一辺が25μmの正方形、また、突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計した。
(実施例2)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(c)に示す通りに配列し、平面形状は一辺が25μmの正方形、また、突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計した。
さらに、凹凸表面に上記フッ素系コーティング剤を塗布することで、本実施例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に併せて記す。
(実施例3)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(a)に示す通りに配列し、平面形状は直径が5μmの円形、また、突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
(実施例3)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(a)に示す通りに配列し、平面形状は直径が5μmの円形、また、突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に併せて記す。
(実施例4)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(b)に示す通りに配列し、平面形状は直径が25μmの円形、また、突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
(実施例4)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(b)に示す通りに配列し、平面形状は直径が25μmの円形、また、突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に併せ
て記す。
(実施例5)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起からなり、突起部は図5(c)に示す通りに配列し、平面形状は一辺が30μmの正方形、また突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
て記す。
(実施例5)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起からなり、突起部は図5(c)に示す通りに配列し、平面形状は一辺が30μmの正方形、また突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に併せて記す。
(実施例6)
凹凸構造は、傾斜角75度の断面が台形の突起部からなり、突起部は、図5(d)に示す通りに配列し、突起部の幅=5μm、また、突起部の高さH=15μm、凹部幅w=15μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
(実施例6)
凹凸構造は、傾斜角75度の断面が台形の突起部からなり、突起部は、図5(d)に示す通りに配列し、突起部の幅=5μm、また、突起部の高さH=15μm、凹部幅w=15μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に併せて記す。
(実施例7)
凹凸構造は、図4(b)に示すような、断面が傾斜角60度の先端が尖った三角形の突起部からなる。また、突起部は、図5(d)に示す通りに配列されている、つまり、突起部2の平面形状は、長方形である。突起部の幅=0.5μm、また、突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
(実施例7)
凹凸構造は、図4(b)に示すような、断面が傾斜角60度の先端が尖った三角形の突起部からなる。また、突起部は、図5(d)に示す通りに配列されている、つまり、突起部2の平面形状は、長方形である。突起部の幅=0.5μm、また、突起部の高さH=25μm、凹部幅w=25μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に併せて記す。
(比較例1)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(c)に示す通りに配列し、平面形状は一辺が50μmの正方形、また、突起部の高さH=15μm、凹部幅w=15μmとなるように設計した。さらに、凹凸表面に上記フッ素系コーティング剤を塗布することで、本比較例の成形体を得た。
(比較例1)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(c)に示す通りに配列し、平面形状は一辺が50μmの正方形、また、突起部の高さH=15μm、凹部幅w=15μmとなるように設計した。さらに、凹凸表面に上記フッ素系コーティング剤を塗布することで、本比較例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に併せて記す。
(比較例2)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(c)に示す通りに配列し、平面形状は一辺が50μmの正方形、また、突起部の高さH=15μm、凹部幅w=50μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
(比較例2)
凹凸構造は、傾斜角75度の台形錐状の突起部からなり、突起部は、図5(c)に示す通りに配列し、平面形状は一辺が50μmの正方形、また、突起部の高さH=15μm、凹部幅w=50μmとなるように設計することで、本実施例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に併せて記す。
(比較例3)
平板のマスターモールドを用いて、上記製造方法にて基材表面が平滑な成形体を作製し、本比較例の成形体を得た。
(比較例3)
平板のマスターモールドを用いて、上記製造方法にて基材表面が平滑な成形体を作製し、本比較例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に併せて記す。
(比較例4)
平板のマスターモールドを用いて、上記製造方法にて基材表面が平滑な成形体を作製した。さらに、基材の平滑表面に上記フッ素系コーティング剤を塗布することで、本比較例の成形体を得た。
(比較例4)
平板のマスターモールドを用いて、上記製造方法にて基材表面が平滑な成形体を作製した。さらに、基材の平滑表面に上記フッ素系コーティング剤を塗布することで、本比較例の成形体を得た。
この成形体の基材表面に位置する凹凸表面の撥液性につい評価した結果を、表1に併せ
て記す。
て記す。
表1において、前記突起部が占める面積率が0.3以下であり、前記突起部と隣接する突起部との凹部幅wが40μm以下であり、基材表面上に位置する液滴の転落角が90°以下である成形体においては、実施例1〜実施例6に示すように、表面に付着した液滴が凹部に液体が侵入しない状態で留まる為、高い撥液性を発揮することが出来る。
一方、突起部の占める面積率もしくは凹部幅、転落角の値が本発明に記載の条件を満たさない場合は、比較例1〜比較例4に示すように、十分な撥液性は得られなかった。
以上のように、本発明にかかる表面に施された微細な凹凸形状によって撥液性を有する成形体は、防汚コート剤を用いない場合であっても、十分な撥液性を発揮することが可能となり、また、製造性および耐久性に優れていることから、包装材の内面や、液切り性が求められる注ぎ口やキャップ部品、掃除機や冷蔵庫、エアコン、洗濯機、温水洗浄便座、電子レンジ、炊飯器などの家電製品を含む耐久消費財、または、自動車や内装および外装の建材に適用可能である。
1 成形体
2 突起部
3 凹凸表面
4 防汚コート層
2 突起部
3 凹凸表面
4 防汚コート層
Claims (11)
- 基材表面に規則的に配列された複数の突起部を有する成形体であって、
前記突起部と隣接する突起部の頂点部を通る仮想平面上において、前記突起部が占める面積率が0.3以下であり、前記仮想平面上における前記突起部と隣接する突起部との距離である凹部幅wが40μm以下であり、
前記基材表面に位置する液滴の転落角が90°以下であることを特徴とする成形体。 - 前記突起部の高さHと、前記凹部幅wとが、H/w≧0.7となることを特徴とする請求項1に記載の成形体。
- 前記突起部の高さHが1μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の成形体。
- 前記突起部の頂点部から当該突起部の高さHの0.2倍の距離を下がった位置を通る仮想平面と、0.8倍の距離を下がった位置を通る仮想平面との間の当該突起部の稜線の傾斜角が60°以上90°以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形体。
- 前記突起部と隣接する突起部の頂点部を通る仮想平面上において、前記突起部が占める面積率が0.2以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形体。
- 前記突起部と隣接する突起部の頂点部を通る仮想平面上において、
前記突起部の形成する平面形状が長方形であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の成形体。 - 前記転落角が45°以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の成形体。
- 前記突起部の頂点部を通る仮想平面上において、前記突起部が占める面積率が0.05以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の成形体。
- 前記突起部と隣接する突起部の頂点部を通る仮想平面上において、
前記突起部の形成する平面形状が円形であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の成形体。 - 前記基材表面に、防汚コート層を備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の成形体。
- 前記凹部幅wが1μm以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の成形体。
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