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JP2017081160A - 機能性シート - Google Patents

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JP2017081160A JP2016207501A JP2016207501A JP2017081160A JP 2017081160 A JP2017081160 A JP 2017081160A JP 2016207501 A JP2016207501 A JP 2016207501A JP 2016207501 A JP2016207501 A JP 2016207501A JP 2017081160 A JP2017081160 A JP 2017081160A
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森 力宏
Rikihiro Mori
力宏 森
利光 平連
Toshimitsu Hiraren
利光 平連
真奈美 置塩
Manami Okishio
真奈美 置塩
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Tokuyama Corp
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Abstract

【課題】優れた機能性を維持しながら、外観良好な機能性シート、更には機能性成型体を提供することである。
【解決手段】1対の光学シート又はフィルムの間に、機能層を有する機能性シートの少なくとも一方の表面に該表面を保護する保護フィルムが積層された機能性シートであって、前記保護フィルムが少なくとも2層以上からなり、少なくとも1層が100℃以上125℃未満の融点を有する機能性シートに接合するフィルム(第一フィルム層)であり、少なくとも1層が150℃以上175℃以下の融点を有する外層側に配置されるフィルム(第二フィルム層)である機能性シートを提供する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、1対のポリカーボネート樹脂製などの光学シート又は光学フィルムの間に、機能層を有する機能性シートに関する。詳しくは、ポリカーボネート樹脂製などの光学シート又は光学フィルム表面の外観を保護しながら、該機能性シートを所望の形状に型抜きすることが可能な機能性シートに関する。
近年米国を中心として、防眩性を有するサングラスなどに、透明で優れた耐衝撃性を有するポリカーボネートなどを用いたプラスチック基材の需要が急速に高まっている。そして、このようなプラスチック製サングラスにおいては、偏光機能やフォトクロミック機能と付与することによって、防眩性を調節する方法が種々検討されている。このようなサングラスは、以下の方法により製造されている。
例えば、2枚のプラスチックシートまたはフィルムの間に、防眩性を有する機能層を積層する方法としては、2枚のポリカーボネートシート間にフォトクロミック層を積層する方法(特許文献1参照)が知られている。具体的には、溶媒を含むフォトクロミック塗工液を一方のプラスチックシートに塗布し、それを特定の温度の乾燥器に、特定の速度で通過させることにより乾燥した後、他方のプラスチックシートを接合する方法(積層体を製造する方法)が示されている。この方法によれば、連続して、平滑性の優れたフォトクロミック層を有する機能性シートを製造することができる。
また、2枚のポリカーボネートシート間に偏光層を積層する方法(特許文献2参照)も知られている。具体的には、2色性色素を高分子フィルム上に配向させた偏光性薄層の両側にポリカーボネートフィルムあるいはシートを積層する方法が示されている。この方法によれば、平滑性の優れた偏光層を有する機能性シートを製造することができる。
さらに、上記フォトクロミック層、または偏光層を有する機能性シートは、予め所望される形状に掘り込み加工が施された金型などを用いて、加熱環境下(積層体のガラス転移温度近辺の温度下)のもと、加圧あるいは減圧(真空)下で賦形する、熱曲げ加工を行うことにより所望の形状に加工することが可能である。また、該機能性シートは、前述の熱曲げ加工前、もしくは後に、通常は所望の形状に型抜きされる。
一方、ポリカーボネートなどの合成プラスチックシートには、キズや汚れ、或いは異物がつきやすいことが知られており、上記熱曲げ加工時、保管時、及び輸送時における合成プラスチックシートの表面を保護する為に、合成プラスチックシート表面に、保護フィルムを貼付して熱曲げ加工などに使用することが知られている。このような保護フィルムとして、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルムが用いられている。
例えば特許文献3には、アクリル基板用の一体熱曲げ加工用保護フィルムとして、低密度ポリエチレン層とエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)層の二層構成の保護フィルムが提案されている。しかしながら、該保護フィルムは耐熱性に問題があり、ポリカーボネート樹脂表面の保護シートとして用いた場合には、熱曲げ加工時の加熱の際に低密度ポリエチレン層の金型への溶着が発生してしまうという問題があった。
また、熱曲げ加工時の耐熱性を向上するために、少なくとも金型に接する側に配置された第一フィルム層とポリカーボネートシートに接する側に配置された第二フィルム層からなり、該第一フィルム層の融点が150℃以上のポリオレフィン系フィルム層であり、該第二フィルム層の融点が125〜145℃のポリオレフィン系フィルム層である保護フィルムが提案されている(特許文献4参照)。この保護フィルムを用いることにより、熱曲げ加工後に保護フィルムの金型やポリカーボネートシートへの溶着を抑制することが可能である。
更には、熱曲げ加工時の耐熱性の向上、及び型抜き加工時の糸状の不良の発生を抑制するために、保護フィルムの基材層が1層、及び接着剤層が1層であり、105℃以上130℃以下の融解ピーク(A)および160℃以上175℃未満の融解ピーク(B)の少なくとも2つの融解ピークを有し、融解ピークの面積比[(A)/(B)]が35/65以上80/20以下である保護フィルムが提案されている(特許文献5参照)。この保護フィルムを用いることにより、型抜き加工時の糸状の不良が抑制できるとともに、熱曲げ加工後に保護フィルムの金型やポリカーボネートシートへの溶着を抑制することが可能である。
日本国特許第4661017号 日本国特許第2130732号 特開平8−192501号公報 特開2003−145616号公報 日本国特許第5724174号
しかしながら、上記特許文献4記載の保護フィルムを用いて、レンズサイズ等への型抜き加工を行った場合には、型抜きしたシートの端部に糸状の異物が発生し、また特許文献4または5記載の保護フィルムのいずれの場合でも、端部に保護フィルムの浮き(剥離)が発生する場合があることが本発明者らの検討によって判明した。更には、上記特許文献4の保護フィルムは粘着層を介して機能性シートと密着しており、また上記特許文献5記載の保護フィルムは、水添テルペン樹脂等の粘着性付与成分等が添加された接着層を介して機能性シートと密着しており、熱曲げ加工後における保護フィルムのポリカーボネートシートへの接着力が強くなり過ぎて剥がしにくくなったり、熱曲げ加工時に保護フィルムに気泡が発生することによりポリカーボネートシート表面に外観不良が発生する場合があることも本発明者らの検討によって判明した。
したがって、本発明の目的は、優れた機能性を維持しながら、型抜き加工後に糸状の異物や端部の保護フィルムの浮き等の外観不良が少ない、更には熱曲げ加工後の保護フィルムの剥離性が良好であり、且つ外観不良が少ない、外観良好な機能性シート、更には機能性成型体を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、機能性シートの少なくとも一方の表面に貼り付ける保護フィルムの特性を調整することにより、粘着層や水添テルペン樹脂等の粘着性付与成分等が添加された接着層を用いずに保護フィルムを機能性シートに密着させることができることを見出した。そして保護フィルムを密着させた機能性シートをレンズサイズ等への型抜き加工を行った際の、型抜きしたシートの端部に発生する糸状の異物や、保護フィルムの浮きを抑制できること、更には熱曲げ加工後においても良好な保護フィルムの剥離性を保持し、且つ熱曲げ加工後でも保護フィルムの気泡の発生を抑制できること、を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、1対の光学シート又はフィルムの間に、機能層を有する機能性シートの少なくとも一方の表面に該表面を保護する保護フィルムが積層された機能性シートであって、
前記保護フィルムが少なくとも2層以上からなり、少なくとも1層が100℃以上125℃未満の融点を有する機能性シートに接合するフィルム(第一フィルム層)であり、少なくとも1層が150℃以上175℃以下の融点を有する前記第一フィルム層の外層側に配置されるフィルム(第二フィルム層)からなる保護フィルムを貼り付けた機能性シートである。
上記本発明の機能性シートは、次の態様を好適に採り得る。
(1)上記記載の機能性シートにおいて、所望の形状に成型する型抜き工程後の機能性シートの端部に発生する長さ2mm以上の糸状の異物が20個以下であること。
(2)上記機能性シートの機能層が、フォトクロミック機能、及び/または偏光機能を有すること。
(3)さらに、上記保護フィルムが、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体およびプロピレン−α−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1種または2種以上の混合品を各層に用いた積層品であり、該保護フィルムの厚みが10〜150μmであること。
本発明の機能性シートを用いることにより、型抜き工程後の機能性シート端部に発生する糸状の異物の発生を抑制することが可能であり、また型抜き工程後の機能性シート端部に発生する保護フィルムの浮きも抑制できる。更に、本発明の機能性シートは、熱曲げ加工後における保護フィルムの剥離性が良好であり、また熱曲げ加工時に生じるポリカーボネートシートなどの機能性シート表面の外観不良を抑制できることから、効率的に機能性を有するプラスチックレンズ等の二次加工品を得ることが可能である。このような効果が得られた理由として詳細は不明であるが、本発明者らは、以下の通り推測している。
すなわち、本発明の機能性シートは、機能層の両面にポリカーボネートシート等の光学シート又は光学フィルムが積層し、更にその光学シート又は光学フィルムの少なくとも一方の表面に保護フィルムが積層した構成となっている。通常、本発明の機能性シートは、レンズサイズ等に型抜きされ使用されるため、型抜き加工後の外観、及び形状がその後の熱曲げ加工等の二次加工時の加工性や収率へ影響する。つまり、機能性シートの型抜き加工後に、機能性シート端部に糸状の異物や保護フィルムの浮きが発生すると、その部分が熱曲げ加工等の二次加工時に光学シート又は光学フィルム表面に転写され、凹みなどの外観不良が生じると推測される。また、本発明の機能性シートに対しては、上述の通り熱曲げ加工等の二次加工も実施されるため、保護フィルムの耐熱性が熱曲げ加工後の保護フィルムの剥離性や外観に影響する。つまり、保護フィルムを接着層を介して機能性シートに密着させた場合には、機能性シートの熱曲げ加工における加熱によって、機能性シートに対する保護フィルムの接着性が向上しすぎてしまい、熱曲げ加工後の保護フィルムの剥離性が低下することによって剥がし残りが生じたり、或いは、熱曲げ加工における加熱時に前記層に気泡が発生することで機能性シート表面に気泡の跡が転写されて凹みなどの外観不良が生じると推測される。
本発明の機能性シートは、型抜き加工後の機能性シート端部に発生する糸状の異物や保護フィルムの浮きを抑制でき、更に熱曲げ加工時の保護フィルムの融着や気泡の発生を抑制できるため、熱曲げ加工を実施しても光学シート又は光学フィルムの表面に生じる凹みなど外観不良を抑制することが可能であると共に、熱曲げ加工後でも良好な保護フィルムの剥離性を保持できるものと推測している。
本発明は、1対の光学シート又は光学フィルムの間に、機能層が接合されてなる機能性シートの少なくとも一方の表面に該表面を保護する保護フィルムを有する機能性シートであって、該機能性シートを所望の形状に成型する型抜き工程後の機能性シートの端部に発生する糸状の異物や保護フィルムの浮きを抑制可能であること、更には熱曲げ加工後においても良好な保護フィルムの剥離性を保持し、且つ熱曲げ加工後でも保護フィルムの気泡の発生を抑制できることが特徴である。この様な機能性シートを用いることにより、熱曲げ加工における外観不良の発生を抑制することが可能である。
ここで、上記糸状の異物とは、機能性シートを円形に型抜きした際に、外縁部(端部)に生成する長さ2mm以上の異物を示すものであり、本発明の機能性シートにおいては、直径80mmに型抜きした際の上記糸状の異物が20個以下であることが好ましい。糸状の異物の測定は、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX−2000)を用いて、直径80mmの円形状に型抜きしたシートの外周に存在する長さ2mm以上の糸状異物を確認し、当該糸状の異物の個数を数えることにより、測定可能である。
以下、本発明の機能性シートについて説明する。
(保護フィルム)
本発明の機能性シートにおける保護フィルムは、ポリカーボネートなどの合成樹脂から成る光学シート又は光学フィルムの表面に貼ることにより、該光学シート又は光学フィルムの表面をキズや汚れから保護するために使用されるものである。
前記のとおり、本発明の保護フィルムは、少なくとも2層以上からなり、少なくとも100℃以上125℃未満の融点、特に100℃以上123℃以下の融点を有する機能性シートに接合するフィルム(第一フィルム層)であり、少なくとも1層が150℃以上175℃以下の融点を有する、前記第一フィルム層の外層側に配置されるフィルム(第二フィルム層)からなる保護フィルムである。このような保護フィルムを用いることにより、本発明の機能性シートは、型抜きした機能性シートの端部に糸状の異物の発生を抑制することが出来る。また、本発明の保護フィルムを用いれば、機能性シート表面との密着力が良く、型抜き加工を実施した後でも、型抜きした機能性シートの端部に保護フィルムの浮きも抑制することが可能となる。さらに、熱曲げ加工等の二次加工時に加熱された後でも、保護フィルムが加熱前と同等の剥離性を有し、且つ気泡等の外観不良を抑制することが出来る。
上記保護フィルムの融点とは、DSC(示唆走査熱量計)を用いたJIS K7121記載の方法により測定した際のピークトップである。
本発明の機能性シートに接合する保護フィルム(第一フィルム層)の融点が100℃未満の樹脂からなる樹脂フィルムを保護フィルムに用いた場合には、熱曲げ加工などの熱がかかる工程後に保護フィルムと機能性シートの接着力が強くなり過ぎ、操作性に支障をきたすと共に、保護フィルムが機能性シート表面に融着し残存する場合がある。また、第一フィルム層の融点が125℃以上の場合には、機能性シートとの接着力が低下するため、型抜き加工後の機能性シート端部に発生する保護フィルムの浮きが生じやすくなる。但し、機能性シートへの接着力の観点から、該第一フィルム層の融解開始温度は80〜90℃程度であることが好ましい。また、保護フィルムの外層側に配置されるフィルム(第二フィルム層)の融点が150℃未満よりも低いと、熱曲げ加工に際して金型表面への融着が生じ易くなり、成形不良等を生じ易くなってしまい、175℃を超える樹脂からなる樹脂フィルムを保護フィルムに用いた場合には、熱曲げ加工時における機能性シートの変形に追随し難くなるため、機能性シートの加工安定性に問題が生じる場合がある。
本発明の機能性シートに接合する保護フィルム(第一フィルム層)に使用される樹脂としては、融点が100℃以上125℃未満である公知の樹脂が何ら制限なく使用可能である。型抜きした機能性シートの端部の保護フィルムの浮きを抑制する観点からすれば、ポリオレフィン、ポリオレフィン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体などが好ましく、ポリエチレンエラストマーなどが含まれていてもよい。これらの中でも、機能性シートの表面、つまりは、ポリカーボネートなどの合成樹脂から成る光学シート又は光学フィルムの表面との密着性が良好であることから、低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1種または2種以上の混合品であることが好ましい。本発明の低密度ポリエチレンは、線状低密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレンの単独またはこれらのブレンド物である。
また、本発明の第一フィルム層には、テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、ロジン樹脂、フェノール樹脂などの粘着性付与成分は添加されていないのが好ましい。前記粘着性付与成分が第一フィルム層に添加されことにより、機能性シートに対する保護フィルムの接着性が向上するが、熱曲げ加工後の保護フィルムの接着性が強くなるために剥離性が低下傾向になり、耐熱性が不十分であるために第一フィルム層に気泡が発生し、機能性シート表面に気泡の跡が転写されて凹みなどの外観不良が生じ易くなるためである。
なお、本発明の第一フィルム層と機能性シートの間には、上記粘着性付与成分が添加された接着層、更には、アクリル系、シリコーン系、長鎖アルキル系、ステアリン酸系、またはウレタン系などのいかなる粘着剤も積層されていない。該粘着剤が機能性シートと第一フィルム層間に積層されている場合には、機能性シートに対する第一フィルム層の接着性の向上は大きいが、熱曲げ加工後の保護フィルムの接着性もより強くなるため剥離性の低下が顕著になる。また、耐熱性が不十分であるための粘着層への気泡の発生も激しくなり、機能性シート表面に気泡の跡が転写されての凹みなどの外観不良もより顕著になるからである。
本発明の第一フィルム層としては、型抜き時に使用する刃に対する切れが良く、型抜きした機能性シートの端部に糸状の異物の発生を抑制する観点から、引張り強度が30MPa以下、特に20MPa以下の樹脂からなるフィルムを用いることが好ましい。その理由は定かではないが、引張り強度が30MPaを超える樹脂フィルムを用いた場合には、型抜き時に使用する刃に対する切れが悪く、樹脂フィルムが伸びて引きちぎられるようにして切断されるためと推定している。型抜きした際に糸状の異物の発生を抑制する観点から、引張り強度は20MPa以下であることがより好ましい。
また、本発明の保護フィルムの第一フィルム層の外層側に配置されるフィルム(第二フィルム層)、すなわち熱曲げ加工時に金型に接する側に配置されたフィルムに使用される樹脂としては、融点が150℃以上175℃以下である公知の樹脂が何ら制限なく使用可能であるが、耐熱性の観点から、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、またはプロピレン−α−オレフィン共重合体などからなるポリオレフィン系フィルムであることが好ましい。
第二フィルム層に好適に使用される上記の様なポリオレフィン系フィルム層(ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、及びプロピレン−α−オレフィン共重合体など)は、30MPaを超える引張り強度を有するが、第一フィルム層に引張り強度30MPa以下の樹脂フィルムを積層することにより、第一フィルム層の引張り強度が緩和され、型抜き加工時に発生する機能性シート端部の糸状の異物を抑制することが可能となる。
また、本発明の第一フィルム層と第二フィルム層との間にも、上述の様なアクリル系、シリコーン系、長鎖アルキル系、ステアリン酸系、またはウレタン系などのいかなる粘着剤も積層されていない。該粘着剤が第一フィルム層と第二フィルム層間に積層されている場合には、第一フィルム層と第二フィルム層間の接着性は向上するものの、熱曲げ加工時などの熱により粘着剤がはみ出し、金型を汚染すると共に、機能性シート表面に外観不良を生じる可能性があるため、本発明の保護フィルムには粘着剤を使用しない。
本発明の保護フィルムは、少なくとも2層以上からなり、少なくとも1層の第一フィルム層と、少なくとも1層の第二フィルム層を有するが、該第一フィルム層と該第二フィルム層との間に別のフィルム層(以下「第三フィルム層」とも言う)を有していることがより好ましい。第三フィルム層を積層することにより、厚膜の保護フィルムを製造する場合においても、最終的な膜厚が均一な保護フィルムを製造することができるため、後述する塗工方法により本発明の機能層をポリカーボネートシートなどに塗布する際に均一な膜厚で塗布することが可能となる。また、本発明の第三フィルム層に使用される樹脂は、前述の第一フィルム層、及び第二フィルム層に使用される樹脂の中から適宜選択される。
本発明の上記保護フィルムは、ポリカーボネートシートなどの表面に貼り付け、そのまま加熱した金型などを用いた熱曲げ加工等の二次加工に使用される。本発明の機能性シートに光学シート又は光学フィルムとして後述するポリカーボネートシートを用いた場合には、ポリカーボネートシートのガラス転移温度が145〜150℃であることから、通常150℃程度の温度で熱曲げ加工等の二次加工が実施される。よって、本発明の保護フィルムは、二次加工時の耐熱性、熱曲げ加工時の柔軟性、及びポリカーボネートシートと保護フィルムの接着性の観点から、更に、主に第一フィルム層由来の80℃以上135℃以下の融解熱量(I)と、主に第二フィルム層由来の145℃以上175℃以下の融解熱量(II)との面積比[(I)/(II)]が60/40〜99/1の範囲になるように層構造を形成することが好ましい。
上記保護フィルムの融解熱量は、DSC(示唆走査熱量計)を用いてJIS K7121記載の方法により測定することができる。なお、上記保護フィルムは、前述のとおり2層以上の層構成を有しているが、融解熱量の測定では、各層を分離することなく2層以上の層構成のまま測定する。具体的な測定方法は以下のとおりである。
<DSC測定方法>
JIS K7121の測定方法に準拠し、保護フィルムの試験片をアルミニウム容器に5mg量り取り、示差走査熱量計(リガク製DSC8230)に装着し、窒素ガス雰囲気下にて、0℃から昇温速度10℃/minにより測定する。
また、本発明に使用される保護フィルムは、該保護フィルムに含まれる異物の深さ方向の大きさが、保護フィルムの厚みに対して100%を超えて200%未満である異物の含有量が、100cmあたり10個以下であることが好ましい。
すなわち、保護フィルムは、使用時には引き剥がされてしまうものであるため、一般に安価なローグレードの前記樹脂製のフィルムが使用されている。このようなローグレードのフィルムは、原料樹脂の溶融不足、フィルム成形時での温度ムラ等に起因してフィッシュアイ(所謂ブツ)と呼ばれる硬く、白く濁たり、逆に光が散乱して光って見える光学的不純物粒子等を多く含んでおり、本発明者らは、このような光学的不純物粒子の内、大きなサイズのものに対応して熱曲げ加工時に機能性シートの機能層表面に凹みが形成されるものと考えている。
詳細には、本発明における機能性シートは、1対の光学シート又は光学フィルムの間に、フォトクロミック特性や偏光特性などの機能性を有する機能層が接合されてなる機能性シートであって、該機能層の両面にポリカーボネートシート等の光学シート又は光学フィルムが積層した構成となっている。本発明の機能層には、ウレタン樹脂やポリビニルアルコール樹脂が使用されるが、これらの樹脂はポリカーボネートシートと比べて軟化点が低く、前記異物を含有する保護フィルムを貼付した機能性シートの熱曲げ加工を行うと、中心部にある機能層が軟化し、さらに加工時の機能層が両面からの圧力によって押される結果、異物が機能性シートに押しつけられるために機能層が凹み、従って、熱曲げ加工時に該異物の形状の応じた凹みが形成されるものと推測される。従って、保護フィルムに含有する異物の大きさと個数を制御することによって、機能性シート表面に生じる熱加工時の異物の形状の応じた凹みの形成を抑制することが可能であるものと推測している。
熱加工後の外観不良の抑制効果の点から、保護フィルムに存在する異物の大きさとしては、上記保護フィルムの厚みに対する深さ方向の大きさが100%を超えて180%未満であり、最も好ましくは100%を超えて150%未満の範囲とすることが好ましい。また、同様の点から、上記異物の個数は、保護フィルム100cmあたりより好ましくは5個以下、最も好ましくは3個以下が好ましい。
上記異物は、以下の方法によって測定することが可能である。まず、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX−2000)を用いて、保護フィルム100cmあたりに含まれる異物の形状等の確認を行う。そして、確認された異物の個数を数えることにより、測定可能である。また、平面方向及び深さ方向の大きさに関しては、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK−8700/8710)にて、異物が存在する個所の保護フィルムの表面粗さを見ることにより測定することができる。
上記保護フィルムの厚みは、二次加工における作業性、及び保護フィルムによる不良発生の抑制の観点から10〜150μmであることが好ましい。保護フィルムの厚みが10μmよりも薄い場合には熱曲げ加工時にシワ不良を生じたり、熱曲げ加工時に金型や保護フィルム表面に付着した異物の形状を機能性シート表面に転写しやすくなる。また、保護フィルムの厚みが150μmよりも厚い場合には、型抜き工程時に糸状の異物が発生しやすくなったり、熱曲げ加工時に所望の形状に曲げにくくなったり、更には耐熱性が低い保護フィルムの場合には該フィルム層がポリカーボネートシート等よりはみ出してしまい外観不良を生じやすくなる。保護フィルムの厚みは、より好ましくは25〜110μmである。その中でも、本発明の保護フィルムは、金型に接する側に配置された第二フィルム層と機能性シート等に接する側に配置された第一フィルム層からなることが好ましく、第二フィルム層、及び第一フィルム層それぞれの厚みは以下の値であることが好ましい。つまり、第二フィルム層の厚みは5〜100μmであることが好ましく、20〜100μmであることがより好ましく、第一フィルム層の厚みは5〜100μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましく、10〜30μmであることが最も好ましい。
さらに、保護フィルム表面へのゴミや埃の付着を抑制するため、更には保護フィルム剥離時の静電気の発生を抑制し、機能性シート自体へのゴミや埃の付着を抑制するために、保護フィルムのいずれか、もしくは複数の層にポリピロール系などの導電材を塗布してあってもよく、また界面活性剤などの帯電防止剤を保護フィルム中に添加してあってもよい。更には、酸化防止剤、光安定剤などの各種添加剤を本発明の保護フィルム中に添加したり、表面に塗布することで、長期に渡り光学シート又は光学フィルムや曲げ加工品を安定的に保管することもできる。
本発明に使用する保護フィルムは、各層を構成するフィルムを共押し出ししながら接着させることで得ることができる。
(光学シート又は光学フィルム)
本発明の機能性シートにおける、光学シート又は光学フィルムとしては、光透過性を有するシート又はフィルムが特に制限なく使用できるが、入手の容易性および加工のし易さなどの観点から樹脂製のものを使用することが好適である。光学シート又は光学フィルムの原料として好適な樹脂を例示すれば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが挙げられる。その中でも、接着性が良好で射出成形法に対する適用性が高いという理由からポリカーボネート樹脂が特に好ましい。これらの光学シート又はフィルムは、異なるものを組み合わせて使用することも可能である。なお、染色した光学シート又はフィルムを使用する場合には、元々、染色されたものを使用することもできるし、本発明の機能性シートを作製した後、表面の光学シート又はフィルムを染色してもよい。
光学シート又は光学フィルムに使用されるポリカーボネート樹脂は、一般的なビスフェノールA骨格などを有する芳香族フェノール類を主体にする芳香族ポリカーボネート樹脂、さらには芳香族ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABS、ASなどの合成樹脂などとのポリマーアロイなどを用いることが出来る。具体的には、以下のようなジオールに由来する構造単位を含んでなるポリカーボネート樹脂を使用することが好ましい。
Figure 2017081160
(式中、
1〜R は、それぞれ独立に、炭素数1〜20アルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基または炭素数6〜20のアリールオキシ基であり、
Aは、酸素原子、硫黄原子、スルホキシド基、スルホン基、カルボニル基、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルキリデン基、炭素数6〜20のシクロアルキレン基、炭素数6〜20のシクロアルキリデン基、炭素数6〜20のアリーレン基、または炭素数6〜20のアルキレンアリーレンアルキレン基である。)
Figure 2017081160
(式中、
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のシクロアルキル基、または、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリール基を表し、
Bは、置換若しくは無置換の炭素数2〜10のアルキレン基、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のシクロアルキレン基、または、置換若しくは無置換の炭素数6〜20のアリーレン基を表し、
m及びnは、それぞれ独立に0〜5の整数である。)
Figure 2017081160
(式中、
は、水素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基であり、
10は、水素原子、または炭素数1〜10のアルキル基であり、
pは、1〜3の整数である。)
Figure 2017081160
(式中、
Yは、炭素数2〜10のアルキレン基、または炭素数2〜10のオキシアルキレン基であり、
qは、1〜10の整数である。)
Figure 2017081160
光学シート又は光学フィルムに使用されるポリカーボネート樹脂は、重量平均分子量が10,000〜200,000であることが好ましく、15,000〜80,000であることがより好ましい。
また、光学シート又は光学フィルムに使用されるポリエステル樹脂は、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸のような多価カルボン酸と、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのポリアルコールとの重縮合体であるものが、強度や透明性などの観点から好適である。その中でも、テレフタル酸とエチレングリコールからなるポリエチレンテレフタレートが好ましい。
また、光学シート又は光学フィルムに使用されるポリアミド樹脂は、アミド結合によって多数のモノマーが結合してできたポリマーであり、n−ナイロン、n、m−ナイロンなどが好適に使用される。n−ナイロンは、ε−カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタムなどの開環重縮合反応によって得ることが出来る。n、m−ナイロンは、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、メチルペンタジアミンなどのジアミンと、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのジカルボン酸との共重縮合反応によって得ることが出来る。その中でも、ε−カプロラクタムの開環重縮合反応によって得られるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸との共重縮合反応によって得られるナイロン6,6などが好ましい。
また、光学シート又は光学フィルムに使用されるセルロース樹脂は、β−グルコース分子がグリコシド結合により直線状に重合した樹脂であり、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロースなどを挙げることが出来る。
また、光学シート又は光学フィルムに使用されるポリアクリル樹脂としては、アクリル酸エステル、あるいはメタクリル酸エステルの重合体であり、メチルメタアクリレートやシクロヘキシルメタクリレートなどのメタクリレート類を主成分にするメタクリレート系重合体、あるいは共重合体が、硬さや強度、透明性などの観点から好ましい。
また、光学シート又は光学フィルムに使用されるウレタン系樹脂は、芳香族イソシアネート、脂環式イソシアネート、及び脂肪族イソシアネートなどのポリイソシアネート化合物、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、及びポリエーテルポリオールなどのポリオール化合物、さらには低分子量のジオール、及びジアミン化合物などの鎖延長剤からなる市販のウレタン系樹脂を用いることが出来る。
また、光学シート又は光学フィルムに使用されるポリオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類やアルケンを単位分子として合成される樹脂であり、ポリエチレン、ポリプロピレンなどに加え、ポリシクロオレフィン樹脂も用いることが出来る。
本発明において使用する光学シート又はフィルムの好適な厚みとしては、100〜1500μmが好ましく、200〜1000μmがより好ましい。また、これらの光学シート又はフィルムは、異なる厚みを組み合わせて使用することも可能である。
また、本発明の光学シート及びフィルムの表面(上面および下面)には、塗膜層が形成されていてもよい。塗膜層は、水分散ポリウレタン樹脂、水分散ポリエステル樹脂、水分散アクリル樹脂、水分散ポリウレタン・アクリル樹脂などの水分散性ポリマー;前記水分散性ポリマーの内、カルボニル基を有するポリマーとヒドラジド化合物との架橋体;ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーの架橋体;(メタ)アクリル基を有する重合性モノマー、及び/またはエポキシ基、(メタ)アクリル基、ビニル基、アミノ基、及びメルカプト基などから選ばれる基を有する加水分解性有機ケイ素化合物の組成物;シラノール基あるいは加水分解してシラノール基を形成しうる基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、及びビニル基から選ばれる重合性基を有するウレタンウレア樹脂の組成物;プロペニルエーテル基含有化合物、ポリエン化合物及びチオール化合物とを含むエン/チオール系組成物、オキセタン化合物などを含む光硬化性組成物などの、樹脂、架橋体、組成物から形成されればよい。該塗膜層を特に最表面(フォトクロミック接着性シートが存在しない側)に形成することにより、(メタ)アクリレート系モノマー組成物、アリル系モノマー組成物、チオウレタン系モノマー組成物、ウレタン系モノマー組成物、チオエポキシ系モノマー組成物などの熱硬化性樹脂(光学基材)を形成するモノマー組成物中に、馴染みよく、本発明の積層シートを埋設することができる。その結果、該熱硬化性樹脂(光学基材)と該積層シートとの密着性が良好な、該熱硬化性樹脂(光学基材)中に該積層シートが埋設した光学物品を得ることもできる。
次に、本発明の機能層について説明する。本発明の機能層は、防眩性を付与する層であれば特に制限されないが、フォトクロミック特性を有する機能層、及び偏光特性を有する機能層の中から選ばれる少なくとも1つの機能層であることが好ましい。
(フォトクロミック特性を有する機能層)
本発明の機能性シートにおける、フォトクロミック特性を有する機能層は、ウレタン樹脂及びフォトクロミック化合物を含有する接着層(以下「フォトクロミック接着層」とも言う)であることが好ましく、該フォトクロミック接着層はウレタン樹脂及びフォトクロミック化合物を含んでなる。
本発明のフォトクロミック接着層は、単層であってもよいし、複数層から形成されてもよい。単層である場合には、上記のウレタン樹脂とフォトクロミック化合物とを含む接着層とすればよい。複数層である場合には、ウレタン樹脂とフォトクロミック化合物とを含む第一の接着層の両面に第二の接着層を積層すればよい。
なお、得られる機能性シートにおけるフォトクロミック接着層の厚みは、特に制限されるものではないが、単層である場合には、5〜100μmであることが好ましい。また、第二接着層/第一接着層/第二接着層の構成にした場合には、第一接着層が5〜100μmであることが好ましく、より好ましくは10〜50μmであり、第二接着層が2〜40μmであることが好ましく、より好ましくは5〜15μmである。
以下、上記フォトクロミック接着層を構成する各成分について説明する。
(ウレタン樹脂)
上記フォトクロミック接着層の構成成分であるウレタン樹脂は、両面に一対のポリカーボネートシートなどの光学シート又は光学フィルムを貼り合わせる目的で使用される。該ウレタン樹脂は、熱可塑性樹脂、または熱硬化性樹脂のどちらであってもよい。
該ウレタン樹脂は、分子内にウレタン結合を有する樹脂であって1対の光学シート又はフィルムを接合できるものであれば、特に制限されるものではない。具体的には、ジイソシアネート化合物、ポリオール化合物、及び鎖延長剤から得られるウレタン樹脂を使用することができる。その中でも特に、鎖延長剤にジアミン、もしくはトリアミンを用いたウレタン−ウレア樹脂であることが好適である。鎖延長剤として、ジアミン、もしくはトリアミンを用いることによりウレタン樹脂中にウレア結合(−R−NH−CO−NH−)が導入され、ウレタン−ウレア樹脂となる。
(ジイソシアネート化合物)
前記イソシアネート化合物としては、分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物であり、脂肪族イソシアネート化合物、脂環式イソシアネート化合物、芳香族イソシアネート化合物、及びこれらの混合物が使用される。これらの中でも、耐候性の観点から脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環式イソシアネート化合物を使用することが好ましい。また、同様の理由からジイソシアネート化合物の30〜100質量%、特に50〜100質量%が脂肪族ジイソシアネート化合物であることが好ましい。
具体的には、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;
シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,9−ジイソシアナト−5−メチルノナン、1,1−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]−1−メチルシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキシルイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート化合物;
フェニルシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)の異性体混合物、トルエン−2,3−ジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、フェニレン−1,3−ジイソシアネート、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトメチルベンゼン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメトキシ(1,1’−ビフェニル)、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル、1,2−ジイソシアナトベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)−2,3,5,6−テトラクロロベンゼン、2−ドデシル−1,3−ジイソシアナトベンゼン、1−イソシアナト−4−[(2−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]2−メチルベンゼン、1−イソシアナト−3−[(4−イソシアナトフェニル)メチル)−2−メチルベンゼン、4−[(2−イソシアナトフェニル)オキシ]フェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物
などを挙げることができる。
これらの中でも、良好な接着力、耐熱性、及び塗工性の観点から、上記の通り、イソシアネート化合物の30〜100質量%、特に50〜100質量%が、脂肪族ジイソシアネート化合物、及び脂環式ジイソシアネート化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート化合物であることが好ましい。好適な化合物を具体的に例示すると、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネートが挙げられる。これらのジイソシアネート化合物は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。
(ポリオール化合物)
上記ウレタン樹脂の構成成分の一つであるポリオール化合物としては、生成するウレタン樹脂が高架橋体になり過ぎないという理由から分子中に含まれる水酸基数が2〜6であることが好ましく、有機溶剤への溶解性を考慮すれば、分子中に含まれる水酸基数は2〜3であることがより好ましい。ポリオール化合物として具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールが好ましい。これらのポリオール化合物は、単独で使用しても良く、2種類以上を併用しても構わないが、耐熱性、接着性、耐候性、耐加水分解性などの観点から、特にポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールを使用することが好ましい。
上記ポリエーテルポリオールとしては、分子中に活性水素含有基を2個以上有する化合物とアルキレンオキサイドとの反応により得られるポリエーテルポリオール化合物及び該ポリエーテルポリオール化合物の変性体である、ポリマーポリオール、ウレタン変性ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルコポリマーポリオール等を挙げることが出来る。
なお、上記分子中に活性水素含有基を2個以上有する化合物としては、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの分子中に水酸基を1個以上有するグリコール、グリセリン等のポリオール化合物が挙げられ、これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。
また、上記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物が挙げられ、これらは単独で使用しても2種類以上を混合して使用しても構わない。
上記ポリエステルポリオールとしては、多価アルコールと多塩基酸との縮合反応により得られるポリエステルポリオールなどを挙げることができる。ここで、前記多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられ、これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。また、前記多塩基酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。
上記ポリカーボネートポリオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−4−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA のエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種類以上のホスゲン化より得られるポリカーボネートポリオール、或いはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びジフェニルカーボネート等によるエステル交換法により得られるポリカーボネートポリオール等を挙げることができる。この低分子ポリオール類なかでも、最終的に得られるウレタンウレア樹脂の接着性、及び耐熱性の観点から、直鎖のアルキル鎖を有する低分子ポリオール類がより好ましく、側鎖にアルキル基を有する低分子ポリオールから合成されたポリカーボネートポリオールは、接着性が低下する傾向が見られる。
また、ウレタン樹脂の末端には、ピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造などの機能性を有する基を導入することが好ましい。この機能性を付与する末端を修飾する化合物としては、ピペリジン構造を有する1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−アミノピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノブチルピペリジンなどの化合物を挙げることができる。その他にも末端を修飾する化合物として、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ノルマルブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミンなどのアミン類なども挙げることができる。
上記ウレタン樹脂の合成方法としては、所謂ワンショット法又はプレポリマー法を採用することができる。合成に使用するイソシアネート化合物、ポリオール化合物、鎖延長剤、および末端を修飾する化合物の量比は適宜決定すればよいが、得られる接着性ウレタン系樹脂の耐熱性、接着強度、フォトクロミック特性(発色濃度、退色速度、耐候性など)などのバランスの観点から、次のような量比とすることが好ましい。すなわち、ポリオール化合物に含まれる水酸基の総モル数をn1とし、イソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2とし、鎖延長剤に含まれるイソシアネート基と反応しうる基の総モル数をn3とし、末端を修飾する化合物に含まれるイソシアネート基と反応しうる基(具体的にはアミノ基、水酸基、メルカプト基及び/又はカルボキシル基等)の総モル数をn4としたときに、n1:n2:n3:n4=0.30〜0.89/1/0.10〜0.69/0.01〜0.20となる量比、特にn1:n2:n3:n4=0.40〜0.83/1/0.15〜0.58/0.02〜0.15となる量比とすることが好ましく、n1:n2:n3:n4=0.55〜0.78/1/0.20〜0.43/0.02〜0.10となる量比とすることが最も好ましい。ここで、上記n1〜n4は、各成分として用いる化合物の使用モル数と該化合物1分子中に存在する各基の数の積として求めることができる。
上記ウレタン樹脂の製造においては、イソシアネート化合物、ポリオール化合物、及び鎖延長剤がそれ同士、或いは各化合物同士で反応するため、得られるウレタン樹脂は一定の分子量分布有する混合物として得られる。従って、得られたウレタン樹脂の機能を特定することは困難である。
(好適なウレタン樹脂)
また、ウレタン樹脂は、後述する光学物品(積層体)の接着(密着)強度を向上するためには、分子鎖中にウレタン結合、及びウレア結合を有するウレタン−ウレア樹脂の該ウレタン結合、または/及び該ウレア結合とポリイソシアネート化合物とを反応して得られる、橋架け構造を有する樹脂とすることが好ましい。ウレタン−ウレア樹脂は、鎖延長剤として、アミノ基を分子内に2つ以上有する化合物を使用すればよい。
そして、ウレア結合と反応させるポリイソシアネート化合物としては、前述のイソシアネート化合物に加えて、1,3,5−トリス(6−イソシアナトヘキシル)ビュレット、(2,4,6−トリオキトリアジン−1,3,5(2H,4H,6H)トリイル)トリス(ヘキサメチレン)イソシアネート、1−メチルベンゼン−2,4,6−トリイルトリイソシアネート、4,4’,4’ ’−メチリジントリス(イソシアナトベンゼン)、メチルシラントリイルトリスイソシアネート、2,6−ジイソシアナトカプロン酸2−イソシアナトエチル、2,6−ビス[(2−イソシアナトフェニル)メチル]フェニルイソシアネート、トリス(3−メチル−6−イソシアナトベンゾイル)メタン、トリス(4−メチル−3−イソシアナトベンゾイル)メタン、トリス(3−イソシアナトフェニル)メタン、トリス(3−メチル−4−イソシアナトベンゾイル)メタン、トリス(4−メチル−2−イソシアナトベンゾイル)メタン等の分子内に3つのイソシアネート基を有する化合物を挙げることができる。また、イソシアネート基を3つ有するイソシアヌレート化合物を挙げることができる。さらには、テトライソシアナトシラン、[メチレンビス(2,1−フェニレン)]ビスイソシアネート等の分子内に4つのイソシアネート基を有する化合物を挙げることができる。
これらの中でも好適なポリイソシアネート化合物としては、2級炭素に結合したイソシアネート基を有する化合物が挙げられる。具体的には、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、及びこれらイソシアネート化合物や、イソホロンジイソシアネートの3量体(イソシアヌレート化合物)などが挙げられる。
橋架け構造を有するウレタン−ウレア樹脂としては、ウレタン樹脂100質量部に対して、ポリイソシアネート化合物の量が5〜20質量部の範囲となることが好ましい。
また、本発明の機能性シートの物性、得られた機能性シートを用いて曲げ加工や射出成型により光学物品を製造する際の加工安定性の観点、及びそれら機能性シートの接着性の観点、さらにはこれら機能性シート又は光学物品の表面にハードコート層を形成する場合において、ハードコート液を塗布したり、硬化させたりするときの加工性の観点から、好適なウレタン樹脂の物性としては、軟化点が80℃以上150℃以下となることが好ましい。この軟化点は、熱機械測定装置(セイコーインスツルメント社製、TMA120C)を用いて、下記条件で測定した値である。
〔測定条件〕 昇温速度:10℃/分、測定温度範囲:30〜200℃、プローブ:先端径0.5mmの針入プローブ。
接着層に軟化点が80℃以上150℃以下のウレタン樹脂(直鎖状のウレタン樹脂、または橋架け構造を有するウレタン−ウレア樹脂)を使用することにより、機能性シート又は光学物品の表面にハードコート層を形成する場合、熱曲げ加工を実施する場合、射出成型を行い光学物品とする場合において、優れた特性を発揮する。そして、このようなウレタン樹脂を使用する場合、本発明の方法は優れた効果を発揮する。
(フォトクロミック化合物)
上記フォトクロミック接着層の構成成分として用いられるフォトクロミック化合物としては、クロメン化合物、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物などの公知のフォトクロミック化合物を何ら制限なく使用することが出来る。これらは、単独使用でもよく、2種類以上を併用しても良い。
上記のフルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物およびクロメン化合物としては、例えば特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号パンフレット、WO96/14596号パンフレットなどに記載されている化合物を挙げることができる。
これらのフォトクロミック化合物の中でも、発色濃度、初期着色、耐久性、退色速度などのフォトクロミック特性の観点から、インデノ(2,1−f)ナフト(2,1−b)ピラン骨格を有するクロメン化合物を1種類以上用いることがより好ましい。さらにこれらクロメン化合物中でもその分子量が540以上の化合物は、発色濃度および退色速度に特に優れるため好適である。
本発明におけるフォトクロミック化合物の配合量は、フォトクロミック特性の観点から、ウレタン樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部とすることが好適である。
上記配合量が少なすぎる場合には、十分な発色濃度や耐久性が得られない傾向があり、多すぎる場合には、フォトクロミック化合物の種類にもよるが、フォトクロミック化合物が溶解しにくくなり、組成物の均一性が低下する傾向があるばかりでなく、接着力(密着力)が低下する傾向もある。発色濃度や耐久性といったフォトクロミック特性を維持したまま、ポリマーシートなどの光学基材との接着性を十分に保持するためには、フォトクロミック化合物の添加量はウレタン樹脂100質量部に対して0.5〜10重量、特に1〜7質量部とすることがより好ましい。
以下、上記各成分を用いた本発明のフォトクロミック特性を有する機能性シート(以下「フォトクロミックシート」とも言う)の製造方法について説明する。
(フォトクロミックシートの製造方法)
本発明のフォトクロミックシートの製造方法は、保護フィルムが積層された1対の光学シート又は光学フィルムの間に、ウレタン樹脂、及びフォトクロミック化合物を含む接着層を介在させてフォトクロミックシートを形成する。
(単層である接着層(第一接着層))
フォトクロミック接着層を単層の接着層(以下、第一接着層とする場合もある)とする場合には、フォトクロミック接着層形成した後、に光学フィルム又は光学シートと貼り合わせても良いし、ウレタン樹脂とフォトクロミック化合物とを混合し、光学フィルム又はシート上に塗工し、直接シート状に成形してもよい。中でも、橋架け構造を有するウレタン−ウレア樹脂を使用する場合には、橋架け前のウレタン−ウレア樹脂、フォトクロミック化合物、必要により配合されるポリイソシアネート化合物、添加剤、有機溶媒を混合した第一接着層用塗工液を準備し、第一、若しくは第二の光学フィルム又はシート上に該塗工液を塗布した後、乾燥することにより、接着層をシート状に形成することが好ましい。或いは、上記第一接着層用塗工液を他の基材上に塗布した後、乾燥させ、形成されたシートを剥離することにより、接着層をシート状に形成しても良い。
この第一接着層用塗工液において、必要に応じて配合される添加剤は、公知の添加剤、界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等が挙げられる。これら添加剤は、ウレタン樹脂100質量部に対し、0.001〜20質量部の範囲が好ましい。なお、橋架け構造を有するウレタン−ウレア樹脂を使用する場合には、この値は、橋架け前のウレタン−ウレア樹脂100質量部と見なす。これらの添加剤を使用しすぎると、ポリカーボネートシートへのフォトクロミック接着層の接着性が低下するため、その添加量は好ましくは7質量部以下、より好ましくは3質量部以下、最も好ましくは1質量部以下である。
また、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、2−ブタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコール誘導体;ジアセトンアルコール;メチルエチルケトン、ジエチルケトン、n−プロピルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、n−ブチルメチルケトンなどのケトン類;トルエン;ヘキサン;ヘプタン;酢酸エチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチルなどのアセテート類;ジメチルホルムアミド(DMF);ジメチルスルホキシド(DMSO);テトラヒドロフラン(THF);シクロヘキサノン;クロロホルム;ジクロロメタン及びこれらの組み合せを挙げることができる。
以上のような第一接着層用塗工液をポリカーボネートシート上に塗布した後、乾燥させた場合には、得られたシート同士を下記に詳述する方法で接合すればよい。また、ポリカーボネートシート以外の基材に塗布した場合には、基材と第一接着層とを剥離し、得られた第一接着層をポリカーボネートシートの間に介在させて、下記に詳述する方法で接合すればよい。
第一接着層用塗工液を塗布する方法は、公知の方法を採用すればよく、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ディップ−スピンコート法、ドライラミネート法などの公知の方法が何ら制限なく用いられる。中でも、生産効率の観点からロール状のポリカーボネートを使用することが望まれるため、塗工機としては、ナイフコーター、ダイコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター、バーコーターなど、ロール状シートに塗工可能な一般的な塗工機を用いることが好適である。その中でも、塗工液粘度の許容範囲が比較的広いナイフコーター、ダイコーターが好適に用いられる。
(複数層の接着層)
また、フォトクロミック接着層を複数層とする場合には、第二接着層/第一接着層/第二接着層とからなる3層構造とすることが好ましい。この場合、第二接着層と2枚のポリカーボネートシートが接することになる。そして、第一接着層に、フォトクロミック化合物を配合することにより、接着性をより向上することができる。
この第一接着層は、前記の単層の接着層と同じ構成からなることが好ましい。つまり、この第一接着層は、軟化点が80℃以上150℃以下であって、前記橋架け構造を有するウレタン−ウレア樹脂を使用し、その他、ポリイソシアネート化合物、フォトクロミック化合物、必要により配合される添加剤、有機溶媒を混合した第一接着層用塗工液から形成することが好ましい。
一方、第二接着層は、特に制限されるものではないが、前記の軟化点が100℃以上200℃以下であるウレタン−ウレア樹脂を使用することが好ましい。この第二接着層は、フォトクロミック化合物を含むこともできるが、より優れた接着性を発揮するためには、第一接着層のみがフォトクロミック化合物を含むことが好ましい。
このような3層構造の接着層を形成する場合には、共押出成形により第二接着層/第一接着層/第二接着層を形成することもできるが、以下の方法で形成することが好ましい。先ず、第一接着層は、ポリカーボネートシート以外の基材上に、前記第一接着層用塗工液を塗布して、前記の方法に従い成形する。
第二接着層は、ウレタン樹脂、必要に応じて配合される添加剤、有機溶媒を含む第二接着層用塗工液を準備し、ポリカーボネートシート上に塗布し、乾燥させることにより、第二接着層をポリカーボネートシート上に形成する。なお、第二接着層用塗工液に含まれる添加剤、有機溶媒は、第一接着用塗工液で説明したものと同様のものを使用することができる。なお、第二接着層は、第一接着層と同じく、ポリカーボネートシート以外の基材上で作製することもできるが、接着性を向上させるためには、ポリカーボネートシート上に直接作製することが好ましい。
そして、第二接着層を有すポリカーボネートシートと、上記第一接着層を有する基材とを、第二接着層と第一接着層が接合するように、加熱したラミネートロール等を用いて圧着する。次いで、該基材を剥離して現れる第一接着層と、第二接着層を有すポリカーボネートシートとを、第一接着層と第二接着層が接合するように、前述の本発明の方法により圧着すればよい。
(フォトクロミックシート製造後処理)
前述の方法により得られた本発明のフォトクロミックシートは、そのまま二次加工等に使用することもできるが、以下の方法により、その状態を安定化させて使用することもできる。具体的には、接合したばかりのシートを20℃以上70℃以下の温度で4時間以上常圧もしくは減圧下で静置し、脱気することが好ましい。さらに、この静置した積層体を60℃以上130℃以下の温度下、30分以上3時間以下放置しておくことが好ましい(以下、加熱処理とする)。また、ポリイソシアネート化合物を配合した場合(橋架けウレタン−ウレア樹脂を接着層に使用した場合)には、室温〜100℃の温度、及び30〜100%RHの湿度下で加湿処理されることが好ましい。
さらには、加湿処理後に、常圧下、もしくは真空下において、40〜130℃で静置することにより、積層体中に存在する過剰の水分を除去することができる。
次に、偏光特性を有する機能層について説明する。
(偏光特性を有する機能層)
本発明の機能性シートにおける、偏光特性を有する機能層は、偏光特性を有する層であれば特に制限されないが、ポリビニルアルコール樹脂及び二色性染料を含有する層(以下「偏光層」とも言う)であることが好ましい。
本発明の偏光層は、単層であってもよいし、複数層から形成されてもよい。単層である場合には、上記のポリビニルアルコール樹脂及び二色性染料を含有する層とすればよい。複数層である場合には、ポリビニルアルコール樹脂と二色性染料とを含む第一の層の両面に第二の層を積層すればよい。
なお、得られる機能性シートにおける偏光層の厚みは、特に制限されるものではないが、単層である場合には、10〜500μmであることが好ましい。また、第二の層/第一の層/第二の層の構成にした場合には、第一の層が10〜500μmであることが好ましく、第二の層が2〜40μmであることが好ましい。
本発明の偏光層には、偏光子としてヨウ素系化合物(あるいは、二色性染料)を含浸させたポリビニルアルコールフィルム等の機能層を形成する低軟化点の樹脂フィルムを一軸延伸したものが好適に用いられる。このような偏光材料は、一般に低軟化点の樹脂100質量部あたり0.1〜5質量部程度使用される。該偏光層を用いた本発明の偏光特性を有する機能性シート(以下「偏光シート」とも言う)の製造方法は特に制限されないが、ポリビニルアルコール樹脂フィルムを水膨潤、一軸延伸しつつ、ヨウ素化合物(あるいは、二色性染料)にて染色し、乾燥してなる偏光フィルムの両面に接着層を介してポリカーボネートシートなどの光学シート又は光学フィルムを貼り合わせた偏光シートであることが好ましい。偏光シートを作製する際に使用される前記第二の層(接着層)としては、ポリウレタンプレポリマーとポリオールとを含む硬化剤からなる2液型の熱硬化性ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
次いで、本発明の機能性シートに対する保護フィルムの積層方法について、説明する。
(保護フィルムの積層)
本発明に使用する保護フィルムを光学シート又は光学フィルム表面に積層する方法は、最終的に本発明の機能性シートの構成となるような積層方法であれば特に限定されるものではないが、光学シート又は光学フィルム表面の傷付き防止の観点から、機能性シートを作製する以前から、光学シート又は光学フィルムの少なくとも1方の面には保護フィルムが貼られていることが好ましい。
(機能性シートの加工)
(型抜き加工)
本発明の機能性シートは、所望の形状に型抜きを行って使用される場合がある。この型抜き加工を行うタイミングとしては、後述する熱曲げ加工の実施前でも、実施後でも構わない。
本発明の型抜き加工には、トムソン刃、ピナクル刃、彫刻刃、エッチング刃などの刃が使用されるが、加工安定性、経済性の観点からトムソン刃を用いることが好ましい。トムソン刃の形状としては、両刃、片刃、2段刃、3段刃、片2段刃などが挙げられ、刃先の刃角としては25〜60°の範囲が好ましい。
刃の厚みとしては0.3〜2.0mmが好ましく、材質はショア硬度30〜90の全鋼であることが好ましい。また、ショア硬度に関しては、刃先の硬度だけを高くして、切れ味を調整することも可能である。
本発明の機能性シートを、トムソン刃により抜き加工を行う場合には、機能性シートに貼り付けられている保護フィルムの切断性を考慮し、刃角が45°以下の刃を用いることがより好ましく、最も好ましくは30°以下の刃である。使用するトムソン刃の刃角が60°を超える場合、保護フィルムの切断性が低下するため、機能性シートの端部に保護フィルムが伸びて糸状の異物が発生したり、または保護フィルムの浮きが発生し、最終的に得られるプラスチックレンズの不良、及び収率低下の原因となる場合がある。
また、型抜き加工時の圧力は、型抜きをする機能性シートの材料によって適宜決定すれば良いが、本発明の機能性シートについては、1枚当たり500〜1000kgの圧力をかけて型抜きをすることが好ましい。
(熱曲げ加工)
次いで、光学基材と一体化する前に、機能性シートの熱曲げ加工を実施することにより、レンズ状の球面形状(2眼用)、やサングラス・ゴーグル用途などに使用される球面形状(1眼用)等に加工(加工シートを製造)することもできる。なお、熱曲げ加工を施す前に所望の形状に型抜きを行ってもよい。機能性シートを球面形状に熱曲げ加工する方法は、例えば、熱プレス加工、加圧加工、減圧吸引加工などが挙げられる。
熱プレス加工は、先ず、熱プレス機に、所望する球面形状の凸型の金型と凹型の金型を装着し、両金型の間に該機能性シートを固定治具で押さえつけ、凸型及び凹型の金型を加熱する。次いで、機能性シートの両側から、この加熱した金型でプレスすることで、所望の球面形状に曲げ加工することができる。また、熱プレスする場合には、凹型の金型を用いず、凸型の金型のみを用いて、曲げ加工することも可能である。熱プレス加工する場合には、金型のみではなく、機能性シートを含めた熱プレスを行う雰囲気全体を加熱して実施してもよい。
加圧加工は、所望の球面形状の凹型金型を有する装置を用いる。この凹型金型に対して本発明の機能性シートを固定治具で固定化し、機能性シートの下面側に圧縮空気を注入できる金型をかぶせ、これら全体をヒータで加熱する。次いで、圧縮空気を機能性シート下面側から注入し、凹型金型の形状に変形させる。
減圧吸引加工は、加圧加工と同様に所望の球面形状の凹型金型を有する装置を用いる。この凹型金型に本発明の機能性シートを設置するか、もしくは固定治具で固定化し、これら全体をヒータで加熱する。次いで、凹型金型内部から減圧吸引することで、凹型金型の形状に機能性シートを変形させる。
また、加圧加工と減圧吸引加工を併用して、本発明の機能性シートを変形させることも出来る。
本発明の機能性シートは、保護フィルムに含有する異物の大きさと個数を制御することによって、熱加工時の物の形状の応じた凹みの形成を抑制することが可能であるものと推測している。
なお、これらの熱曲げ加工方法においては、機能性シートが平滑であり、反りが少ないことが重要である。つまりは、機能性シートを熱曲げ加工する所定の位置に設置する際に、機能性シートに反りがある場合には、所定の位置に固定しくいばかりではなく、熱曲げ加工後の機能性シートの球面形状に歪が生じるおそれがある。本発明の方法によれば、これらの不良を抑制することができる。
熱曲げ加工する際の温度は、本発明の機能性シートに使用されている光学シート又は光学フィルムの種類によって適宜、決定すれば良いが、120℃を超え200℃以下で実施することが好ましい。
また、本発明の方法により得られる機能性シートは、熱曲げ加工を行う前処理として、予備加熱処理を行うことが好ましい。積層体は、大気中の水又は空気を含んだ状態で熱曲げ加工を行うと、機能性シート内部の水又は空気が膨張し、気泡などの不良が発生することがある。そのため、予備加熱処理に行った後、熱曲げ加工を行うことで、気泡などの発生を抑制することができる。予備加熱処理は、40℃〜120℃の温度下で、5分〜24時間放置すればよい。圧力に関しては、常圧でも構わないが、減圧下で予備加熱処理を行う方がより効果的である。
(熱曲げ加工後の処理)
本発明の機能性シート、または熱曲げ加工した機能性シート(加工シート)は、保護フィルムを剥離した後、射出成型機の金型内に取り付けられ、機能性シート、または加工シートの裏面(凹面)側に、熱可塑性樹脂を射出成型することにより、熱可塑性樹脂からなる光学基材と該機能性シート、または該加工シートとを一体化して、光学物品、例えば、プラスチックレンズとすればよい。さらに得られたプラスチックレンズの着用時の傷の発生を防止することを目的として、さらにハードコート層で被覆して使用することもできる。また、上記プラスチックレンズの表面には、ハードコート層以外にも、さらに必要により、SiO2、TiO2、ZrO2等の金属酸化物の薄膜の蒸着や有機高分子体の薄膜の塗布等による反射防止処理、帯電防止処理等の加工や2次処理を施すこともできる。
本発明を、次の実験例で説明する。
なお、以下の実験において、光学積層体、或いは該光学積層体を加工して得られたレンズについての各種特性の測定もしくは評価は以下の方法によって行った。
<機能性シートの剥離強度>
各実施例或いは比較例で作成された光学積層体から保護フィルムを引き剥がした後、25×100mmの大きさに裁断し、これを試験片として、試験機(オートグラフAGS−500NX、島津製作所製)に装着し、クロスヘッドスピード100mm/minで引張り試験を行い、光学積層体中の透明基材(ポリカーボネートシート)と機能性シート(光学機能層に相当)との初期剥離強度を測定した。
また、上記試験片を、沸騰した蒸留水中に1時間浸漬させた後、同様にして透明基材と機能性シートとの剥離強度(煮沸試験後剥離強度)を測定した。
<保護フィルムの剥離強度>
保護フィルムを引き剥がさずに、上記と同様の試験片を作成し、保護フィルムと透明基材(ポリカーボネートシート)との初期剥離強度を測定した。また、上記試験片を150℃の雰囲気中に30分保持することにより、加熱処理を行い、この後、上記と同様に剥離強度(加熱処理後の剥離強度)を測定した。
<フォトクロミック特性>
光学積層体から保護フィルムを引き剥がした後、(株)浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して23℃、積層体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm、245nm=24μW/cmで120秒間照射して発色させ、下記のフォトクロミック特性を測定した。
1)最大吸収波長(λmax):
(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディレクターMCPD1000)により求めた発色後の最大吸収波長である。該最大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
2)発色濃度〔ε(120)−ε(0)〕:
前記最大吸収波長における、120秒間照射した後の吸光度ε(120)と最大吸収波長における未照射時の吸光度ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れていると言える。
3)退色速度〔t1/2(秒)〕:
120秒間照射後、光の照射をとめたときに、試料の前記最大波長における吸光度が〔ε(120)−ε(0)〕の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
4)耐久性(%)=〔(A96/A0)×100〕:
光照射による発色の耐久性を評価するために次の劣化促進試験を行った。すなわち、得られた積層体をスガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により96時間促進劣化させた。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A0)および試験後の発色濃度(A96)を測定し、〔(A96)/A0〕×100〕の値を残存率(%)とし、発色の耐久性の指標とした。残存率が高いほど発色の耐久性が高い。
<型抜き加工性評価>
得られた光学積層体を型抜き加工に付して、径80mmの円板状シート20枚を作製した。
(糸状異物防止性からの良品取得率)
この円板状シートの端部に2mm以上の長さの糸状の異物が20個以下の円板状シートの枚数を、糸状異物が少ない良品とし、該良品の円板状シートの割合を糸引き糸状異物防止性からの良品取得率として算出した。評価は、目視により評価した。
(浮き防止性からの良品取得率)
前記円板状シート端部に0.5mm幅以上の保護フィルムの浮きが、外周の4分の1以下である円板状シートの枚数を、保護フィルムの浮きが抑制された良品とし、該良品の円板状シートの割合を浮き防止性からの良品取得率として算出した。評価は、目視により評価した。
<レンズ外観評価>
光学積層体を加工して得られたレンズに、不良箇所が存在するかどうかを目視及びデジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX−2000)にて、下記の評価を行った。
なお、目視で容易に確認できる不良は、レンズ端部に生じる形状不良であり、この不良は、主として保護フィルム端部の浮きが原因と推定される。
(レンズ成型収率)
デジタルマイクロスコープにより、得られたレンズに、不良箇所が存在するかどうかを観察し、レンズ20枚に対する、良品レンズの割合をレンズ成型収率として算出した。
(不良1)
レンズ表面をデジタルマイクロスコープにより観察して確認される不良品の発生数を測定した。
直径30μm以上の凹凸が存在しているものを不良レンズとし、20枚あたりの不良品枚数として示した。この不良は、光学的不純物微粒子に主に由来する。
(不良2)
目視によりレンズ端部の形状不良を観察し、形状不良を有するものを不良レンズとし、20枚あたりの不良品枚数として示した。この不良は、減圧吸引時において保護フィルム端部の浮きがあることを主原因として発生する。
(不良3)
レンズ表面の糊残りを目視により観察し、糊残りが確認されたものを不良レンズとし、20枚あたりの不良品枚数として示した。
<保護フィルム>
それぞれ、融点の異なる各種樹脂もしくは樹脂混合物を用いて作成された二層(低融点層/高融点層)或いは三層(低融点層/中間層/高融点層)の保護フィルム1A〜1H及び2A〜2Rを用意した。各保護フィルムの材質、引張強度、及び厚みを表1に示した。
なお、表1において使用されている略号は以下の通りである。
LDPE:低密度ポリエチレン
HDPE:高密度ポリエチレン
PP:ポリプロピレン
LDHDmix:低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの混合物
PPLDmix:ポリプロピレンと低密度ポリエチレンとの混合物
5ADLDPE:水添テルペン樹脂5重量%含有低密度ポリエチレン
1ADLDPE:水添テルペン樹脂1重量%含有低密度ポリエチレン
PVCL:ポリ塩化ビニル
ADLDPE−HDPEmix:
水添テルペン樹脂5重量%含有低密度ポリエチレンと高密度ポリエチ レンとの混合物
PEVAC:ポリエチレン・酢酸ビニル共重合体
なお、低密度ポリエチレン(LDPE)としては、融点が130℃または120℃のものが使用されている。
また、ポリプロピレン(PP)としては、融点が160℃または165℃のものが使用され 上記の保護フィルムについて、DSCにより測定した軟化開始温度及び融解熱量面積比(I)/(II)を表2に示した。
また、上記の保護フィルムについて、光学的不純物粒子の個数を測定し、該不純物粒子のフィルム厚み方向の長さdが、フィルム厚みtに対して2t以上、1〜2t、1〜1.8t、1〜1.5tの範囲にあるものについて、フィルム100cmあたりに含まれる数を測定し表3に示した。
Figure 2017081160
Figure 2017081160
Figure 2017081160
(光学機能層用ウレタン樹脂溶液の調製)
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三つ口フラスコに、
数平均分子量800のポリカーボネートジオール 251.9g
イソホロンジイソシアネート 100g
を仕込み、窒素雰囲気下、110℃で7時間反応させ、プレポリマーを合成した。
反応終了後、反応液を30℃付近まで冷却し、THF1515gに溶解させ、次いで、鎖延長剤であるビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン23.6gを滴下し、25℃で1時間反応させた。
その後さらに、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノピペリジン7.7gを滴下し、25℃で1時間反応させることにより、ウレタン樹脂溶液を得た。
このウレタン樹脂溶液に、
フォトクロミック化合物 11.5g
4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体 混合物 40g
エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル
−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]
(酸化防止剤) 4g
DOW CORNING TORAY L−7001
(界面活性剤) 0.6g
を添加し、室温で攪拌・混合を行い、光学機能層用のウレタン樹脂溶液を得た。
なお、フォトクロミック化合物としては、以下の式で表されるものを使用した。
Figure 2017081160
また、上記の光学機能層用ウレタン樹脂溶液に含まれるウレタン樹脂の軟化点は、105℃であった。
(接着層用ウレタン樹脂溶液)
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三つ口フラスコに、
数平均分子量1000のポリカーボネートジオール 220g
イソホロンジイソシアネート 100g
を仕込み、窒素雰囲気下、110℃で7時間反応させ、プレポリマーを合成した。
反応終了後、反応液を30℃付近まで冷却し、プロピレングリコール−モノメチルエーテル 1550gに溶解させ、次いで、鎖延長剤であるイソホロンジアミン 36gを滴下し、25℃で1時間反応させた。
その後さらに、n−ブチルアミン 2gを滴下し、25℃で1時間反応させることにより、ウレタン樹脂のプロピレングリコール−モノメチルエーテル溶液を得た。
このウレタン樹脂の溶液に、界面活性剤としてDOW CORNING TORAY L−7001 2.0gを添加し、室温で攪拌・混合を行い、接着層用ウレタン樹脂溶液を得た。
この接着層用ウレタン樹脂溶液に含まれるウレタン樹脂の軟化点は150℃であった。
<実施例1>
(光学積層体の作成)
厚み400μmのポリカーボネートシートの片面に保護フィルム1Aを積層して保護フィルム付透明基材を作成した。
なお、ここで使用した保護フィルムAは、融点が120℃の低密度ポリエチレンによる低融点層(厚み15μm)と融点が165℃のポリプロピレンの高融点層(厚み15μm)との二層構造を有しており、そのトータル厚みtが30μmである(表1、表2参照)。この保護フィルムAにおいて、平面方向の大きさが40μm以上、フィルム厚み方向の長さdが40μm以上(1t<d<2t)である光学的不純物粒子を、100cmあたり5個含有するものである(表3参照)。
また、この保護フィルム1Aについて、DSCにより求めた80〜135℃の融解熱量(I)と、145〜175℃の融解熱量(II)との面積比[(I)/(II)]は65/35であった。
まず、コーター(テスター産業製)を用いて、接着層用ウレタン樹脂溶液を、上記の透明基材のポリカーボネートシート表面(保護フィルムが積層されていない面)に、塗工速度0.5m/minで塗工し、乾燥温度110℃で3分間乾燥させることにより、膜厚5μmの接着層を形成した。
また、別途用意された厚み50μmのOPPフィルム(延伸ポリプロピレンフィルム)上に、前記で作成された光学機能層用ウレタン樹脂溶液を、塗工速度0.3m/minで塗工し、乾燥温度100℃で5分間乾燥させることにより、OPPフィルム上に厚み40μmの機能性シート(光学機能層に相当)を形成した。
次いで、上記の光学機能層を、先に形成された透明基材の接着層上に配置し、ラミネートロールを用いて張り合わせて、保護フィルム/ポリカーボネートシート/接着層/機能性シート/OPPフィルムからなる積層体αを得た。
次いで、上記の積層体αからOPPフィルムを剥離した積層体βと、接着層を有する保護フィルム付きポリカーボネートシートとを、機能性シートとポリカーボネートシート上の接着層とが接合するように、ラミネートロールを用いて圧接した。
このようにして得られた積層シートを60℃、真空下(500Pa)で12時間静置(脱気工程)した後、120℃で2時間加熱処理(加熱工程)し、次いで70℃、90%RHで20時間の加湿処理(加湿工程)を行い、最後に80℃、真空下(500Pa)で5時間静置(乾燥工程)することにより、フォトクロミック特性を有する光学積層体を得た。
この光学積層体の層構成は以下の通りである。
保護フィルム/PCシート/接着層/機能性シート/接着層/PCシート/保護フィルム
(PCシートはポリカーボネートシートである)
得られた光学積層体において、機能性シートの剥離強度は、初期剥離強度が200N/25mm、煮沸試験後剥離強度が180N/25mmであった。また、フォトクロミック特性に関しては、最大吸収波長(λmax)が585nm、発色濃度1.0、退色速度45秒、耐久性93%であった。
また、保護フィルムの剥離強度は、初期剥離強度が0.5N/25mmであり、加熱処理後剥離強度が0.5N/25mmであった。
(光学積層体の2次加工〔減圧吸引加工〕)
得られた光学積層体をレンズに成型するために、トムソン刃(両刃、刃角42°)を用いて上記保護フィルム付光学積層体の型抜きを行い、径が80mmの円板状シートを20枚取得した。得られた円板状シートについて、型抜き加工性を評価したところ、糸状異物防止性からの良品取得率及び浮き防止性からの良品取得率のいずれも100%であった。
上記で得られた円板状シートを用い、減圧吸引加工(熱曲げ加工)により、球面形状への曲げ加工を実施した。この減圧吸引加工は、直径90mmの凹型の金型を150℃雰囲気中に設置し、凹型の金型の中心部の穴から、真空ポンプにて減圧吸引を行うことにより実施した。加工時間は、1枚当たり約20分間実施し、金型から取り外すことで球面形状に加工された光学積層体を得た。なお、減圧吸引加工前には、光学積層体を真空下、80℃で1時間の予備加熱を実施した。
得られた球面形状を有する光学積層体の加工シートから両面の保護フィルムを剥がした後、射出成型機の金型に設置し、100℃に加熱した。射出成型機に120℃、5時間の予備加熱を行ったポリカーボネート樹脂のペレット(帝人化成製パンライト)を充填し、300℃、60rpmで加熱溶融し、射出圧力14000N/cmで金型内に射出することで、ポリカーボネート樹脂と一体化したプラスチックレンズ(光学物品)を製造した。
得られた球面形状を有する光学積層体を用い、実施例1と同様な方法でプラスチックレンズを製造し、レンズの外観評価(レンズ成型収率、不良1、不良2、不良3)を行い、その結果を表5に示した。得られたレンズについてのレンズ成型収率(レンズ外観評価)は、85%であった。
上記の型抜き加工性、機能性シートの剥離強度、保護フィルムの剥離強度、フォトクロミック特性、及びレンズ成型収率の結果を表5に示した。
<実施例2〜12、比較例1〜5>
表4に示す保護フィルムを使用し、実施例1と同様の方法で光学積層体、さらにはレンズを作製し、実施例1と同様の評価を行い、その結果を表5に示した。
<比較例6>
保護フィルムAをポリエチレン系粘着剤を用いてポリカーボネートシートに貼り付けた以外は、実施例1と同様の方法で光学積層体及びレンズを作製し、実施例1と同様の評価を行い、その結果を表5に示した。
<実施例13>
保護フィルムAを使用し、光学機能層に相当する機能性シートとしてポリビニルアルコール製の偏光フィルムを用いた以外は、実施例1と同様の方法で光学積層体及びレンズを作製し、実施例1と同様の評価を行い、その結果を表5に示した
Figure 2017081160
Figure 2017081160
上記実施例1〜13から明らかなように、融点が100〜125℃の低融点層、及び融点が150〜175℃の高融点層からなる保護フィルムを用いた場合、最終的に得られるレンズの外観は、レンズ表面の凹凸に関する不良(不良1)だけでなく、熱曲げ加工における形状不良(不良2)や糊残りに起因する不良(不良3)もなく、極めて優れた成型収率となった。
一方、比較例1〜5に示すように、低融点層の融点が100〜125℃の範囲外の場合、低融点層に粘着性付与成分が配合されている場合、高融点層の融点が150〜175℃の範囲外の場合には、最終的に得られるレンズは、レンズ表面の凹凸に関する不良(不良1)には優れているものの、前記熱曲げ加工における形状不良(不良2)や糊残りに起因する不良(不良3)は劣るものになり、その成型収率は低下した。
さらに、比較例6に示されているように、保護フィルムが粘着剤によりポリカーボネートシートに貼り付けられている場合には、糊残りに起因する不良3が著しく悪いものであった。

Claims (9)

  1. 1対の光学シート又はフィルムの間に、機能層を有する機能性シートの少なくとも一方の表面に該表面を保護する保護フィルムが積層された機能性シートであって、前記保護フィルムが少なくとも2層以上からなり、少なくとも1層が100℃以上125℃未満の融点を有する機能性シートに接合するフィルム(第一フィルム層)であり、少なくとも1層が150℃以上175℃以下の融点を有する前記第一フィルム層の外層側に配置されるフィルム(第二フィルム層)である機能性シート。
  2. 請求項1記載の機能性シートにおいて、所望の形状に成型する型抜き工程後の機能性シートの端部に発生する長さ2mm以上の糸状の異物が20個以下である機能性シート。
  3. 前記機能層が、フォトクロミック機能、及び/または偏光機能を有する請求項1、または2記載の機能性シート。
  4. 前記保護フィルムが、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体およびプロピレン−α−オレフィン共重合体から選ばれる少なくとも1種または2種以上の混合品を各層に用いた積層品であり、
    且つ、該保護フィルムの厚みが10〜150μmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の機能性シート。
  5. 前記機能層の軟化点が、80℃以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載のフォトクロミック機能を有する積層体。
  6. 前記機能層が、少なくともフォトクロミック機能を有する層を含んでなり、該フォトクロミック機能を有する層が、ウレタン−ウレア樹脂(A)とフォトクロミック化合物(B)を含んでなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフォトクロミック機能を有する機能性シート。
  7. 前記ポリウレタン−ウレア樹脂(A)が、
    (A1)ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオール化合物と、
    (A2)分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物と、
    (A3)分子内に2つ以上のアミノ基を有するアミノ基含有化合物と、
    (A4)分子内に1または2つのイソシアネート基と反応しうる基を有し、かつ、分子内にピペリジン構造を有する機能性付与化合物と、
    を反応して得られる樹脂であることを特徴とする請求項6記載のフォトクロミック機能を有する機能性シート。
  8. フォトクロミック機能を有する層が、前記ポリウレタン−ウレア樹脂(A)と(C)分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物との反応物を含んでなることを特徴とする請求項6記載のフォトクロミック機能を有する機能性シート。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の機能性シートを用いた機能性シートの成型体。
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