まず第1に、一般的な高架式運搬装置は、車両部品を搬送するために組立工場に一体化することを意図している。この場合、車両部品のタイプは関係ない。実質的な特徴は、高架式運搬装置が完全な組み立ての概念に一体化されて、割り当てられた車両部品を搬送することによって車両を製造することをここで可能にするというものである。この目的で、高架式運搬装置は、支持枠組と、少なくとも1つの運搬装置とを有している。
一般的に言って、支持枠組は、5mよりも長い長さと、2mよりも大きな幅とを有している。高架式運搬装置の支持枠組が指定の建物の床の上方に貼り付けられる高さは、本発明では関係ないが、支持枠組の下方の自由な頭上スペースは、支持枠組の下方に好適な有用な高さを保証するために少なくとも2mでなければならない。支持枠組自体は、長手方向に向けられた支持梁要素および/または横断方向に向けられた支持梁要素または対角線の相互接続された支持梁要素によって実現される。上記支持梁要素は、通常はロッドの形状で設計され、管状の輪郭、T桁または他の形状を有していてもよく、牽引桁、圧力桁または曲げモーメントを受けた桁として設計されてもよい。
関連の運搬装置は、支持枠組上に取り付けられ、対応する車両部品の搬送を可能にし、搬送は、通常は高架式運搬装置の長手方向に沿って行われる。
さらに、支持枠組は、組立工場において高架式運搬装置を支えるベアリング手段を備えている。上記ベアリング手段が固定されたベアリングであるか、移動可能なベアリングであるか、他のタイプのベアリングであるかは最初は関係ない。支持枠組は、少なくとも実質的に重力の方向にベアリング手段上に支持され、組立工場または建物によって提供される対向ベアリング上に支持される。
現地の状況に基づいて現場で支持枠組を組み立てる一般的に見られる手法は、通常は行われない高架式運搬装置の支持枠組の構造計算および事前の詳細な構築を招く。支持枠組のこれらの不十分な計算のために、上記支持枠組は、安全上の理由から、通常はかなりのオーバーサイズで設計されるが、十分な安全性がもたらされることも保証しない。
しかし、現状技術から公知の高架式運搬装置の設計は、組立工場において対応する部品をセットアップするのに必要な時間が多いという点で特に不利である。このようなセットアップ作業中は、組立工場は、必然的に、構築されるべき高架式運搬装置の領域では他の目的で利用することができない。特に組立工場に構造的変更を加える場合には、例えば特定の車両モデルを製造するためのある設計から、変更された車両モデルを製造するための組立工場の新たな設計に切替えられるが、これは、高架式運搬装置がセットアップされている間に望ましくない生産休止時間を招く。
したがって、本発明の目的は、上記の不利点を回避するために組立工場において高架式運搬装置をセットアップする手順を改良することである。
上記の目的は、請求項1の教示に係る高架式運搬装置によって達成される。
本発明の有利な実施例は、従属請求項の主題である。
本発明に係る高架式運搬装置の基本的な考え方は、支持枠組が、運搬用回廊の方向に順に配置された少なくとも2つの支持枠組モジュールから形成されるというものである。支持枠組のモジュール式の構成により、生産コストおよび組み立ての手間を大幅に減少させることができる。このように、いくつかの支持枠組モジュールを組み合わせることによって、支持枠組は、要件のそれぞれのプロファイルに個々に適合させることができる。特に、支持枠組のサイズは、さらなる支持枠組モジュールを追加することによって最終的には無限に大きくされ得る。個々の支持枠組モジュールは、非可変部品を使用することによって費用効果の高い態様で製造および取付けを行うことができる。したがって、その結果、モジュールの組から支持枠組を仕分けることができ、当該モジュールの組の個々の部品、すなわち個々の支持枠組モジュールの大量生産が可能である。
個々の支持枠組モジュールからの支持枠組の組み立てを簡略化するために、隣接する支持枠組モジュール間の遷移部に締結装置が配設されていれば特に有利である。上記締結装置は、隣接する支持枠組モジュールを接続することを可能にし、これにより、支持枠組は必要な安定性を得る。締結装置は、例えば接続ねじによって互いに接続される締結フランジの態様でレイアウトされてもよい。
本発明に係る高架式運搬装置の基本的形態では、車両部品のための入力点が配設される入力支持枠組モジュールと、車両部品のための出力点が配設される出力支持枠組モジュールとが必要である。入力支持枠組モジュールと出力支持枠組モジュールとの組み合わせにより、本発明に係る高架式運搬装置を製造するための支持枠組を製造することができる。
本発明に係る高架式運搬装置の支持枠組の長さを意のままに拡張することができるようにするために、いわゆる中間支持枠組モジュールが設けられる。そして、1つ以上の中間支持枠組モジュールが、入力支持枠組モジュールと出力支持枠組モジュールとの間に配置され、その結果、全般的に見て、支持枠組の長さは個々の支持枠組モジュールの長さを加えたものになる。
コストに関して、いずれの場合にも中間支持枠組モジュールが、構造が実質的に同一であるように組み入れられ、その結果、上記モジュールについて大量生産が可能であれば、特定の利点がもたらされる。
本発明に係る支持枠組モジュールを使用することによって、最終的に任意の長さを有する高架式運搬装置を製造することができる。しかし、支持枠組の長さを長くすることには、振動および熱膨張に関する問題が伴う。したがって、これらの問題を解決するために、隣接する支持枠組モジュールの間に補償要素が配置されていれば特に有利である。例えば、上記補償要素は、個々の支持枠組モジュール間の振動を緩和するため、および/または、長手方向の延長による熱応力を軽減するために、伸縮するようにまたは移動可能であるように構成されてもよい。
好ましい実施例によれば、所望の高さに支持枠組モジュールを支持するためのベアリング手段が柱ガントリの態様で組み入れられることが想定される。この文脈において、上記柱ガントリは、下端が組立工場の床に貼り付けられる少なくとも2本の支持柱があることを特徴としている。さらに、柱ガントリは、2本の支持柱の間に貼り付けられる横断ブリッジを備えている。支持枠組モジュールは、上記横断ブリッジ上に上から設置され得る。支持枠組モジュールを支持するための柱ガントリを使用することにより、事前に作製された部品から段階的に高架式運搬装置を直立させることが可能になる。高架式運搬装置を組み立てる際、柱ガントリは、最初は1本ずつ位置決めされ、工場の床に固定され得る。そして、その後、支持枠組モジュールは、事前に作製された形態で、柱ガントリの横断ブリッジ上に設置され得て、この目的で、例えば十分に大型のフォークリフトトラックなどの好適な持ち上げ車両が利用されてもよい。その結果、高架式運搬装置をセットアップするための組立時間を大幅に短くすることができる。また、柱ガントリの機械的安定性を容易に計算することができ、その結果、通常のオーバーサイズは不要になる。また、横断ブリッジ上に設置される支持枠組モジュールは、支持枠組モジュールが横断ブリッジに締結される前に最適に位置合わせされ、調整されることができる。
好ましい実施例によれば、柱ガントリと支持枠組モジュールとの間に分離面が延在しており、支持枠組モジュールを柱ガントリ上に固定できる締結手段が分離面に達していることが想定される。この請求項の意味の範囲内の締結手段は、例えば締結ねじ、締結ボルトまたは同様に溶接シームであると考えられる。一方の柱ガントリと他方の支持枠組モジュールとの間の連続的な分離面により、支持枠組モジュールを柱ガントリの横断ブリッジ上に設置すると支持枠組モジュールの位置を最適に調整できることが可能になる。
高架式運搬装置の可能な限り高い安定性を保証するために、柱ガントリの支持柱および/または横断ブリッジが、閉じられた管状の断面を有する管状の材料から製造されていれば特に有利である。特に、長方形または正方形の断面を有する管が、柱ガントリを製造するのに非常に適している。
本発明に係る高架式運搬装置の柱ガントリを形成するために横断ブリッジが支持柱に接続される態様は、一般に任意である。可能な限り高い安定性を考慮して、支持柱の上端および/または横断ブリッジの側端がマイタカットされ、2つの支持柱の端部断面の面が横断ブリッジの端部断面の面と面一で接触すれば特に有利である。
一方の横断ブリッジの端部断面および他方の支持柱の端部断面を固定するために、任意のタイプの締結手段が考えられる。端部断面が溶接される場合に、特に高い安定性が達成される。
本発明に係る高架式運搬装置を形成するために必要な柱ガントリは、そのガントリ形状の構造のために特に大きな断面を有しており、そのため、柱ガントリを搬送する際には対応して大きな搬送スペースが必要である。したがって、柱ガントリを搬送するために必要な搬送スペースを減少させるために、支持柱が2つの部分の状態で組み入れられ、支持柱の2つの部分が接続点において互いに接続可能であれば特に有利である。支持柱の分離点は、理想的には、柱ガントリの横断ブリッジとの隣接点に近接して位置しているべきである。したがって、その結果、柱ガントリは、3つの部分に分解されることができ、その各々は、実質的に軸方向の長手方向の伸長を有し、対応して非常に小さな搬送スペース内で搬送されることができる。実際の使用箇所で、横断ブリッジに接続される支持柱の下方部分を支持柱の上方部分に取り付けることによって、柱ガントリを組み立てることができる。柱ガントリを直立させた後に支持枠組モジュールを横断ブリッジに締結するために、横断ブリッジに締結ストラップが配設されていれば特に有利である。さらに、締結ストラップの配置の態様は、柱ガントリに対する支持枠組モジュールの特定の向きを予め規定し得る。
本発明によれば、組立工場に高架式運搬装置を一体化することは、支持枠組モジュールの自立的な設計および支持枠組モジュールの事前組み立てによって高架式運搬装置を直立させた結果として、アイドル時間がほとんどない状態で達成される。支持枠組モジュールは、事前に組み立てられた形態で製造場所から使用場所まで搬送されることができる。
使用場所において直立させる前に支持枠組モジュールも運搬装置も支持枠組モジュール上に事前に組み立てられていれば特に有利である。支持枠組モジュールは、その上に配置される運搬装置とともに、事前に組み立てられた形態で製造場所から使用場所まで搬送されることができる。
組立工場に運搬装置を一体化するために、電力接続部であろうと、データ接続部であろうと、加圧された空気または作動油などの加工ラインであろうと、いくつかの境界面接続部を、事前に組み立てられた高架式運搬装置と組立工場の残部との間に接続する必要があることは明らかである。
実際の支持枠組モジュールはすでに事前に組み立てられていること、およびさらに、使用場所で直立させる前に運搬装置が有利に支持枠組モジュール上に取り付けられることが、本発明に従って少なくとも必要である。したがって、組立工場において高架式運搬装置を実現するためには、対応するスペースをあけて、ベアリング手段を受けるための対応する対向ベアリングを形成することで十分であり、事前に組み立てられた高架式運搬装置は、クレーンによってのみ直立されなければならない。これによって、高架式運搬装置を直立させるための組立時間は、全ての公知の装置と比較して大幅に減少する。たとえこれが現地の状況に柔軟に適合させることに関するわずかな不利点に関連しているとしても、組立工場のアイドリングがほとんどないことに関する利点が勝ることになる。
支持枠組モジュールが空間トラスの態様で設計されれば特に有利である。これは、自立的な支持枠組モジュールが、長手方向に向けられた支持梁要素と、横断方向に向けられた支持梁要素と、対角線の相互接続された支持梁要素と、直立した相互接続された支持梁要素とによって形成されることを意味する。このトラス構造は、低重量にしながら支持枠組モジュールの高い剛性を保証することができ、特に事前に組み立てられた高架式運搬装置の搬送を容易にする。
さらに、支持枠組モジュールが溶接構造によって形成されれば特に有利である。これは、自立的な支持枠組モジュールが、溶接される鋼支柱によって実質的に形成され、必要であれば溶接されるガセット板などの他の鋼要素によって実質的に形成されることを意味する。運搬装置が軽量である場合、または、重量を節約することが一般に非常に重要である場合には、支持枠組モジュールを例えばアルミニウムから製造し、支柱およびガセット板などの個々の要素を同様に溶接することも考えられる。
ねじ留めされた設計と比較して、溶接構造は、とりわけ、支持枠組モジュールに対する許容できない変更が工場操作員によって後に加えられる可能性があるというリスクが無いという利点を有する。現状技術からの設計では、通常は存在するオーバーサイズのためにこれは重要ではないかもしれない。支持されるように運搬装置を適合させるための支持枠組モジュールの特定の構成では、支持枠組モジュールの操作は、広範囲にわたる損傷を引き起こす可能性があり、これは、溶接構造によって打ち消される。
さらに、運搬装置の少なくとも1つの長手方向側に沿ってメンテナンス通路が存在すれば特に有利である。上記メンテナンス通路は、いかなるリスクもなしに徒歩でアクセスできるように設計される。この目的で、メンテナンス通路は、支持枠組モジュールの長手方向側に配置され、そこに接続される。メンテナンス通路および支持枠組モジュールは、高架式運搬装置の事前組み立て中に接続されることができるが、それ自体が事前に組み立てられた付属部品としてメンテナンス通路を支持枠組モジュールに締結することも考えられる。
メンテナンス通路が運搬装置の両側に存在していれば特に有利である。構成全体の剛性、特にメンテナンス通路の安定性を向上させるために、運搬装置に沿って両側に存在するメンテナンス通路は、接続桁を介して互いに接続される。
メンテナンス通路が両側に存在し、運搬装置がそれらの間に配設され、メンテナンス通路が接続桁を介してそれらの端部において接続されている場合、少なくとも1つの垂直搬送開口が設けられればさらに特に有利である。垂直搬送開口は、支持枠組モジュール、メンテナンス通路および接続桁の間に配置される。そして、支持枠組モジュールの上方に位置する運搬装置によって、高架式運搬装置を横切る主に垂直方向に、支持枠組モジュールの上方から支持枠組モジュールの下方の場所まで上記垂直搬送開口を介して、車両部品を搬送することができる。したがって、支持枠組モジュールの上方で搬送される車両部品は、別の運搬装置または高架式運搬装置の下方の組立装置に移されることができる。
この文脈において、高架式運搬装置の一端において高架式運搬装置の下方から車両部品を引き受けることができるように対応する垂直搬送開口が運搬装置の両端に配設されていれば、対応して特に有利である。そして、車両部品は、高架式運搬装置上に位置する運搬装置によって高架式運搬装置に沿って搬送されることができ、その後、支持枠組モジュールの上方から支持枠組モジュールの下方まで高架式運搬装置の他端における他方の垂直搬送開口を介して再び移されることができる。
支持枠組モジュールの端部においてメンテナンス通路の間に垂直搬送開口を配設させたメンテナンス通路が両側に存在している場合、開放位置と閉鎖位置との間で調整可能な閉鎖手段が存在していればさらに特に有利である。閉鎖手段は、徒歩でアクセスでき、開放位置では高架式運搬装置を使用するために必要な垂直搬送開口を解放し、閉鎖位置では2つのメンテナンス通路間の、有利に段差のない通過を可能にするように設計される。したがって、通常は運搬装置が停止しているときにメンテナンスが行われる場合、メンテナンス通路および接続する閉鎖手段によって実質的に周方向に徒歩で運搬装置にアクセスすることができる。
高架式運搬装置が事前に組み立てられ、支持枠組モジュールの剛性が高架式運搬装置の重量およびその重量分布を適合させるように好適に構成されるので、組立工場において支持枠組モジュールを可変的に変更可能に直立させることができることが、特に有利な態様で可能である。このように、現状技術とは異なって、現場で遭遇する状況に適合できないが、その代わりに、ベアリング手段の規定の位置を有する完全に事前に組み立てられた状態で組立工場において高架式運搬装置を直立させる好適な可能性がなければならないという不利点が特に補償される。
ここで、ベアリング手段の数NLは、支えるのに必要な数NEよりも多ければ特に有利である。これは、組立工場において直立を行うことができる数NLのベアリング手段が支持枠組モジュール上に存在することを意味するが、これらの利用可能なベアリング手段の各々を使用することは、組立工場での高架式運搬装置の直立に実際には不要である。その代わりに、必要な数NEの対向ベアリングが存在しているだけで十分である。この文脈において、組立工場において高架式運搬装置を直立させる際に利用可能なベアリング手段のうち、使用されるべきそれらのベアリング手段は、必要な数NEの中で任意に選択可能である。これは、高架式運搬装置が依然として、組立工場内の全ての利用可能なベアリング手段において対向ベアリング上に支えられ得ることを明らかに意味する。
少なくとも6個のベアリング手段を有する設計が特に有利であり、必要な数NEは、0.72を乗算されて端数を切り上げられた利用可能なベアリング手段の数NLよりも少ない/と等しい。これは、利用可能なベアリング手段が6個である場合に、少なくとも5個の対向ベアリング上で直立が行われることを意味する。利用可能なベアリング手段が7個または8個である場合には、利用可能なベアリング手段のうちの少なくとも6個によって直立が行われる。したがって、利用可能なベアリング手段が9個である場合には、7個のベアリング手段が使用される、などである。特に0.6を乗算されて端数を切り上げられた利用可能なベアリング手段の数NLが、必要な数NEとして単に必要であるように支持枠組モジュールの剛性が選択されれば特に有利である。
さらに、高架式運搬装置が支持要素を有し、当該支持要素の各々の上にベアリング手段が配置されていれば有利である。この点において、有利な設計は、ベアリング手段の必要な数NEに対応する数の支持要素を必要とするが、有利な設計では、支持要素は依然として各々のベアリング手段に関連付けられる。支持要素は、自立型の支持柱および/または壁ブラケットおよび/または自由に吊り下げられる牽引要素であってもよい。組立工場または建物内で接続される支持要素の対向ベアリング上に、ベアリング手段における支持枠組モジュールとともに、高架式運搬装置が置かれることが少なくとも想定される。
ここで、支持要素の数が、支えるのに必要な数NEよりも多く、高架式運搬装置の使い勝手を損なうことなく、利用可能な支持要素のうちのいずれか1つを使用場所で除去および/または交換できれば特に有利である。したがって、特に例えば搬送車両が支持柱に衝突して損傷が発生した場合に、十分な静力学を保証しながら、運搬装置による車両部品の搬送に関する高架式運搬装置の機能を損なうことなく支持柱を除去することができる。したがって、損傷の場合に、組立工場を停止させる必要なく単純な交換を行うことができる。
以下の図面には、柱ガントリ上に支えられた支持枠組モジュールを有する2つの高架式運搬装置が例として示されている。