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JP2016512530A - 重水素化されたパクリチニブ - Google Patents

重水素化されたパクリチニブ Download PDF

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Abstract

本発明は、一つの態様において式I:の化合物[式I中に示されている可変部分は、本明細書において定義されている通りである]またはその薬学的に許容される塩を提供する。

Description

関連出願
本出願は、2013年3月14日出願の米国特許仮出願第61/785,727号に基づく優先権の恩典を主張し、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。
発明の背景
現在の医薬の多くは、不十分な吸収、分布、代謝、および/または排泄(ADME)特性に悩まされており、このために、それらの広範囲の使用が妨げられているか、または特定の適応症におけるその使用が制限される。不十分なADME特性は、臨床試験において薬物候補が失敗に終わる主な原因でもある。特定のADME特性を改善するために、製剤化技術およびプロドラッグ戦略を使用できる場合があるが、これらのアプローチは多くの薬物や薬物候補について存在する根本的なADME問題に取り組んでいないことが多い。このような問題の一つは急速な代謝であり、この問題が無ければ疾患の治療に極めて効果的であろう多数の薬物が、これにより体内から速過ぎる速度で除去されてしまう。急速な薬物除去に対する解決策の可能性としては、頻回または高用量の投与により血漿中の薬物レベルを十分に高くすることである。しかしながら、これは投与計画に対する患者の低い服薬遵守状況、高用量に伴って更に深刻になる副作用、および治療費の増加など、治療において幾つかの潜在的な問題をもたらす。急速に代謝される薬物は、望ましくない有毒な代謝産物または反応性代謝物に患者を曝すことにもなり得る。
多くの薬物に影響を及ぼすADMEによる別の制限は、有毒な、または生物学的反応性を持つ代謝産物の形成である。その結果、投与を受けている患者の一部は毒性を経験する可能性があるか、またはこのような薬物の安全な投与は制限され、これにより患者は適量に満たない有効成分を投与されることとなる。場合によって投与間隔または製剤化のアプローチの変化は臨床上の有害効果を減少させることに寄与できるが、多くの場合、その化合物の代謝は本質的にこのような望ましくない代謝産物を形成する。
いくつかの選択された例において、あまりにも急速に除去される薬物は、代謝阻害薬と共に投与される。HIV感染症治療に使用されるプロテアーゼ阻害剤クラスの薬剤はそのような例である。FDAは、これらの薬物を、典型的にそれらの代謝に関与している酵素であるチトクロムP450酵素3A4(CYP3A4)の阻害剤であるリトナビルと共に投与することを推奨している(Kempf, D.J. et al., Antimicrobial agents and chemotherapy, 1997, 41(3): 654-60(非特許文献1)を参照のこと)。しかしながら、リトナビルは有害効果を引き起こし、既に他の薬物の組み合わせを摂取する必要のあるHIV患者にとっては錠剤の負担(pill burden)が増加する。同様に、偽性球麻痺情動の治療においてデキストロメトルファンの急速なCYP2D6代謝を減らす目的で、デキストロメトルファンにCYP2D6阻害剤キニジンが加えられてきた。しかしながら、キニジンは望ましくない副作用を有し、このために、潜在的な併用療法におけるその使用は大幅に制限されている(Wang, L et al., Clinical Pharmacology and Therapeutics, 1994, 56(6 Pt 1): 659-67(非特許文献2)およびFDA label for quinidine at www.accessdata.fda.gov(非特許文献3)を参照のこと)。
一般的に、薬物とシトクロムP450阻害剤とを組み合わせることは、薬物クリアランスを減少させるためには満足のいく戦略ではない。CYP酵素活性の阻害は、その同一の酵素によって代謝される他の薬物の代謝およびクリアランスに影響を与え得る。CYPの阻害は、他の薬物を毒性レベルまで体内に蓄積させ得る。
薬物の代謝特性を改善するための潜在的に魅力的な戦略は、重水素修飾である。このアプローチにおいて、1つまたは複数の水素原子を重水素原子で置換することにより、CYPが媒介する薬物の代謝を遅らせること、または望ましくない代謝産物の形成を減少させることが試みられる。重水素は、水素の安全で安定な非放射性同位体である。水素と比較して、重水素は、炭素とより強い結合を形成する。選択されたケースにおいて、重水素によって与えられた結合強度の増強は、薬物のADME特性によい影響を与えることができ、薬効、安全性、および/または認容性の改善の可能性をもたらす。同時に、重水素の大きさおよび形状は水素のそれらと本質的に同一であるので、重水素による水素の置き換えは、水素のみを含有する元の化学物質と比較して、薬物の生化学的効力および選択性に影響を与えないと予想される。
過去35年にわたって、代謝速度に対する重水素置換の効果は、承認薬のうちのごく僅かな一部について報告されてきた(例えば、Blake, MI et al, J Pharm Sci, 1975, 64:367-91(非特許文献4); Foster, AB, Adv Drug Res, 1985, 14:1-40 ("Foster")(非特許文献5); Kushner, DJ et al, Can J Physiol Pharmacol, 1999, 79-88(非特許文献6); Fisher, MB et al, Curr Opin Drug Discov Devel, 2006, 9:101-09 ("Fisher")(非特許文献7)を参照のこと)。結果は、可変的かつ予測不能であった。いくつかの化合物において、重水素化は、インビボで代謝クリアランスを減少させた。他のものについては、代謝の変化は存在しなかった。さらに他のものは、代謝クリアランスの増加を示した。また、重水素の効果にはばらつきがあるため、専門家らは、有害な代謝を阻害するための実行可能な薬物設計戦略としての重水素修飾の利用を疑問視したか、または却下した(Fosterの第35頁およびFisherの第101頁を参照のこと)。
薬物の代謝特性に対する重水素修飾の効果は、重水素原子が公知の代謝部位で組み入れられる場合でさえ、予想することができない。重水素化薬物を実際に調製および試験することによってのみ、代謝速度がその非重水素化相当物の代謝速度と異なるかどうかおよびどのように異なるかを測定することができる。例えば、Fukuto et al. (J. Med. Chem., 1991, 34, 2871-76)(非特許文献8)を参照のこと。多くの薬物は、代謝が可能である多数の部位を有する。重水素置換が必要な部位、および、代謝に対して効果がある場合にその効果を知るために必要な重水素化の程度は、各薬物において異なるだろう。
Kempf, D.J. et al., Antimicrobial agents and chemotherapy, 1997, 41(3): 654-60 Wang, L et al., Clinical Pharmacology and Therapeutics, 1994, 56(6 Pt 1): 659-67 FDA label for quinidine at www.accessdata.fda.gov Blake, MI et al, J Pharm Sci, 1975, 64:367-91 Foster, AB, Adv Drug Res, 1985, 14:1-40 ("Foster") Kushner, DJ et al, Can J Physiol Pharmacol, 1999, 79-88 Fisher, MB et al, Curr Opin Drug Discov Devel, 2006, 9:101-09 ("Fisher") Fukuto et al. (J. Med. Chem., 1991, 34, 2871-76)
本発明は、パクリチニブの新規の誘導体に関する。
パクリチニブは、増殖性障害、特に、腫瘍、癌、ならびにJAK2、Flt3、およびCDK2などのキナーゼと関連する障害の治療のための抗増殖性化合物である。パクリチニブは、進行した骨髄性悪性腫瘍およびリンパ性悪性腫瘍に加えて、骨髄増殖性疾患、骨髄線維症、真性赤血球増加症後骨髄線維症、本態性血小板血症後骨髄線維症の治療に対して治療的有用性を有し得る。
パクリチニブは潜在的に有益な活性を有するが、上記の疾患および状態を治療するための新規化合物が引き続き必要とされている。
定義
用語「治療する」は、疾患(例えば、本明細書に記載される疾患または障害)の発症または進行を減少させる、抑制する、弱める、少なくする、阻止する、または安定させること、疾患の重篤度を小さくすること、または、疾患と関連する症状を改善することを意味する。
「疾患」は、細胞、組織、または器官の正常な機能を損傷するまたはこれらに干渉する任意の状態または障害を意味する。
合成に使用された化学物質の起源に応じて、合成された化合物において、天然同位体存在度についていくらかのばらつきが生じることが認識されるだろう。従って、パクリチニブの作製は、少量の重水素化アイソトポログ(isotopologue)を本質的に含有する。このばらつきにもかかわらず、天然に豊富で安定な水素同位体および炭素同位体の濃度は、本発明の化合物の安定な同位体置換の程度と比較して、小さく、取るに足らない。例えば、Wada, E et al., Seikagaku 1994, 66: 15、Gannes LZ et al., Comp Biochem Physiol Mol Integr Physiol, 1998, 119:725を参照のこと。
本発明の化合物において、特定の同位体と明確に指定されていない原子はいずれも、その原子の任意の安定な同位体を示すように意図される。特に記載されない限り、ある位置が「H」または「水素」と明確に指定される場合、その位置は、その天然存在度同位体組成で水素を有すると理解される。さらに、特に記載されない限り、ある位置が「D」または「重水素」と明確に指定される場合、その位置は、0.015%である重水素の天然存在度よりも少なくとも3000倍高い存在度で重水素を有すると理解される(即ち、少なくとも45%の重水素組み込み)。
用語「同位体濃縮係数」は、本明細書において使用される場合、特定の同位体の同位体存在度および天然存在度の比率を意味する。
他の態様において、本発明の化合物は、各々の指定される重水素原子について、少なくとも3500(各々の指定される重水素原子で52.5%の重水素組み込み)、少なくとも4000(60%の重水素組み込み)、少なくとも4500(67.5%の重水素組み込み)、少なくとも5000(75%の重水素)、少なくとも5500(82.5%の重水素組み込み)、少なくとも6000(90%の重水素組み込み)、少なくとも6333.3(95%の重水素組み込み)、少なくとも6466.7(97%の重水素組み込み)、少なくとも6600(99%の重水素組み込み)、または少なくとも6633.3(99.5%の重水素組み込み)の同位体濃縮係数を有する。
用語「アイソトポログ」は、化学構造が、本発明の特定の化合物と、同位体組成のみ相違する化学種を指す。
用語「化合物」は、本発明の化合物について言及する場合、分子の構成原子間に同位体のばらつきが存在し得ることを除いては、同一の化学構造を有する分子の集団を指す。従って、指示される重水素原子を含有する特定の化学構造によって表される化合物は、その構造における1つまたは複数の指定の重水素位置において水素原子を有するアイソトポログも、より少ない量だけ含むことが、当業者に明らかであろう。本発明の化合物におけるこのようなアイソトポログの相対量は、化合物を作製するために使用される重水素化された試薬の同位体純度、および化合物を調製するために使用される種々の合成工程における重水素の組み込み効率を含む、多数の因子に依存する。しかしながら、上述したように、このようなアイソトポログの相対量は、全体として、化合物の49.9%未満である。他の態様において、このようなアイソトポログの相対量は、全体として、化合物の47.5%未満、40%未満、32.5%未満、25%未満、17.5%未満、10%未満、5%未満、3%未満、1%未満、または0.5%未満となる。
本発明は、本発明の化合物の塩も提供する。
本発明の化合物の塩は、酸と、化合物の塩基性基(例えばアミノ官能基)との間で、または、塩基と、化合物の酸性基(例えばカルボキシル官能基)との間で形成される。別の態様によれば、化合物は、薬学的に許容される酸付加塩である。
用語「薬学的に許容される」は、本明細書において使用される場合、正しい医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずにヒトおよび他の哺乳動物の組織と接触して使用するのに好適であり、かつ、合理的な利益/リスク比に釣り合う成分を指す。「薬学的に許容される塩」は、レシピエントへ投与されると、本発明の化合物を直接的にまたは間接的に提供することができる任意の非毒性塩を意味する。「薬学的に許容される対イオン」は、レシピエントへ投与されて塩から放出されると毒性のない塩のイオン部分である。
薬学的に許容される塩を形成するために一般的に使用される酸としては、無機酸、例えば、二硫化水素、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸およびリン酸、ならびに有機酸、例えば、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、二酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、p-ブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸、ならびに関連する無機酸および有機酸が挙げられる。従って、このような薬学的に許容される塩としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキシン-1,6-ジオエート、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、マンデル酸塩およびその他の塩が挙げられる。一つの態様において、薬学的に許容される酸付加塩としては、塩酸および臭化水素酸などの鉱酸を用いて形成されるもの、および特に、マレイン酸などの有機酸を用いて形成されるものが挙げられる。
薬学的に許容される塩は、カルボン酸官能基などの酸性官能基、および塩基を有する、本発明の化合物の塩であってもよい。例示的な塩基には、ナトリウム、カリウム、およびリチウムを含むアルカリ金属の水酸化物;カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;アルミニウムおよび亜鉛などの他の金属の水酸化物;アンモニア、非置換またはヒドロキシル置換のモノ-、ジ-、またはトリ-アルキルアミン、ジシクロヘキシルアミンなどの有機アミン;トリブチルアミン;ピリジン;N-メチル、N-エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミンまたはトリ-(2-ヒドロキシエチル)アミンなどのモノ-、ビス-、またはトリス-(2-OH-(C1〜C6)-アルキルアミン);N-メチル-D-グルカミン;モルホリン;チオモルホリン;ピペリジン;ピロリジン;およびアルギニン、リジンなどのアミノ酸などが含まれるが、これらに限定されない。
本発明の化合物(例えば、式Iの化合物)は、例えば、重水素置換または他の結果として、不斉炭素原子を含有してもよい。そのように、本発明の化合物は、個々のエナンチオマー、または2種のエナンチオマーの混合物のいずれかとして存在することができる。従って、本発明の化合物は、ラセミ混合物もしくはスカレミック混合物のいずれかとして、または別の可能な立体異性体を実質的に含まない個々のそれぞれの立体異性体として存在し得る。用語「他の立体異性体を実質的に含まない」は、本明細書において使用される場合、25%未満の他の立体異性体、好ましくは10%未満の他の立体異性体、より好ましくは5%未満の他の立体異性体、および最も好ましくは2%未満の他の立体異性体が存在することを意味する。所定の化合物について個々のエナンチオマーを取得または合成する方法は、当技術分野において公知であり、最終化合物に対して、または出発材料もしくは中間体に対して実行可能であるように適用されてもよい。
特に記載されない限り、開示されている化合物が、立体化学を特定することなく構造によって命名されているかまたは示されており、かつ一つまたは複数のキラル中心を有する場合は、化合物のすべての可能な立体異性体を表すと理解される。
用語「安定な化合物」は、本明細書において使用される場合、その製造を可能にするのに十分な安定性を有し、かつ、本明細書において詳述される目的(例えば、治療製品への製剤化、治療化合物の製造における使用のための中間体、単離可能なまたは保存可能な中間体化合物、治療剤に対して応答性の疾患または状態の治療)について有用である為に十分な期間、当該化合物の完全性が維持される、化合物を指す。
「D」および「d」は、いずれも重水素を指す。「立体異性体」は、エナンチオマーおよびジアステレオマーの両方を指す。「tert」および「t-」は、いずれも第3級を指す。「US」は、アメリカ合衆国を指す。
本明細書を通して、可変部分は、普遍的に(例えば、「各R」として)、または具体的に(例えば、R1、R2、R3、等として)示すことができる。特に記載されない限り、可変部分が一般的に示されている場合、それはその特定の可変部分のすべての具体的な態様を含むことを意味する。
治療化合物
本発明は、式I:
Figure 2016512530
の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供し、
式中、
各Y1は水素または重水素であり;
各Y2は水素または重水素であり;
各Y3は水素または重水素であり;
各Y4は水素または重水素であり;
各Y5は水素または重水素であり;
各Y6は水素または重水素であり;
各Y7は水素または重水素であり;
各Y8は水素または重水素であり;
かつ
Zは水素または重水素であり;
ただし、各Y1、各Y2、各Y3、各Y4、各Y5、各Y6、各Y7、および各Y8が水素である場合、Zは重水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、各Y1は重水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、各Y2は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、各Y2は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y3は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y3は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y4は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y4は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y5は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y5は水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、各Y1は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、各Y2は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、各Y2は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y3は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y3は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y4は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y4は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y5は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y5は水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、各Y8は重水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、各Y7は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、各Y7は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y6は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y6は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y5は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y5は水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、各Y8は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、各Y7は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、各Y7は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y6は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y6は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y5は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y5は水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、各Y1は重水素であり、各Y4は重水素であり、かつ各Y2は各Y3と同一である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、各Y8は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、各Y8は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、各Y7は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、各Y7は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y6は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y6は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y5は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y5は水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、各Y1は水素であり、各Y4は水素であり、かつ各Y2は各Y3と同一である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、各Y8は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、各Y8は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、各Y7は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、各Y7は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y6は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y6は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y5は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y5は水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、各Y1は重水素であり、かつ各Y2は重水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、各Y3は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y3は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y4は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y4は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y5は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y5は水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、各Y1は水素であり、かつ各Y2は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、各Y3は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y3は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y4は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y4は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y5は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y5は水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、各Y2は重水素であり、かつ各Y3は重水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、各Y1は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y1は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y4は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y4は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y5は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y5は水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、各Y2は水素であり、かつ各Y3は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、各Y1は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y1は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y4は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y4は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y5は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y5は水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、各Y3は重水素であり、かつ各Y4は重水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、各Y1は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y1は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y2は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y2は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y5は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y5は水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、各Y3は水素であり、かつ各Y4は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、各Y1は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y1は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y2は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y2は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y5は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y5は水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、各Y4は重水素であり、かつ各Y5は重水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、各Y1は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y1は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y2は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y2は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y3は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y3は水素である。
式Iの化合物の一つの態様において、各Y3は水素であり、かつ各Y4は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、各Y1は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y1は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y2は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y2は水素である。式Iの化合物のこの態様の一つの局面において、Y3は重水素である。式Iの化合物のこの態様の別の局面において、Y3は水素である。
前記態様または局面の一つの態様において、Zは水素である。前記態様または局面の別の態様において、Zは重水素である。
更に別の態様において、化合物は、表1(下記)に示されている化合物のいずれか一つまたはその薬学的に許容される塩から選択され、重水素と指定されていない原子はいずれも、その天然同位体存在度で存在する。
(表1)式Iの例示的な態様
注:表中、Y1、Y2、...Y8なる記載は、各Y1、各Y2、...各Y8を表すことを意図している。
Figure 2016512530
態様の別のセットにおいて、上述の態様のいずれかにおいて重水素と指定されていない原子はいずれも、その天然同位体存在度で存在する。
式Iの化合物の合成は、本明細書において開示される例示的な合成および実施例を参照することにより、通常の技術を有する合成化学者によって容易に達成され得る。式Iの化合物およびその中間体の調製のために使用するものと類似した関連する手順は、例えば、WO2007/058627に開示されている。
このような方法を、本明細書に記載されている化合物を合成するために、対応する重水素化された試薬および/または中間体、ならびに任意で他の同位体を含有する試薬および/または中間体を利用して、または、化学構造に同位体原子を導入するための当技術分野において公知の標準的な合成プロトコルを行使して、行うことができる。
例示的な合成
式Iの化合物の合成は、好適な重水素化された中間体および試薬を利用して、例えば米国特許第8,153,632号に開示されている、式Iの化合物およびその中間体の調製のために使用するものと類似した手順により、通常の技術を有する合成化学者によって容易に達成され得る。
このような方法は、本明細書に記載の化合物を合成するために、対応する重水素化された試薬および/または中間体、更に任意で他の同位体を含有する試薬および/または中間体を利用して、または化学構造へ同位体元素を導入するために当技術分野において公知の標準的な合成プロトコルを用いて、行われ得る。
本発明によって想定される置換基および可変部分の組み合わせは、安定な化合物を形成させるもののみである。
組成物
本発明は、有効量の式I(例えば、本明細書中の式のいずれをも含む)の化合物またはその化合物の薬学的に許容される塩;および薬学的に許容される担体を含む、発熱性物質なしの薬学的組成物も提供する。製剤の他の成分と適合性であり、かつ、薬学的に許容される担体の場合は、医薬において使用される量ではそのレシピエントに有害でないという意味で、担体は「許容される」。
本発明の薬学的組成物において使用され得る薬学的に許容される担体、アジュバント、および媒体としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されない。
必要であれば、薬学的組成物における本発明の化合物の溶解性および生物学的利用能は、当技術分野において周知の方法によって高められ得る。1つの方法としては、製剤中における脂質賦形剤の使用が挙げられる。"Oral Lipid-Based Formulations: Enhancing the Bioavailability of Poorly Water-Soluble Drugs (Drugs and the Pharmaceutical Sciences)," David J. Hauss, ed. Informa Healthcare, 2007;および"Role of Lipid Excipients in Modifying Oral and Parenteral Drug Delivery: Basic Principles and Biological Examples," Kishor M. Wasan, ed. Wiley-Interscience, 2006を参照のこと。
生物学的利用能を高める別の公知の方法は、ポロキサマー、例えば、LUTROL(商標)およびPLURONIC(商標)(BASF Corporation)、またはエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーと共に任意で製剤化される本発明の化合物のアモルファス形態を使用することである。米国特許第7,014,866号;ならびに米国特許公開第20060094744号および第20060079502号を参照のこと。
本発明の薬学的組成物は、経口、経直腸、経鼻、局所(頬および舌下を含む)、経膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内および皮内を含む)投与に好適なものを含む。ある態様において、本明細書における式の化合物は、(例えば、経皮パッチまたはイオン導入技術を使用して)経皮投与される。他の製剤は、好都合なことに、単位投与形態(例えば、錠剤および徐放性カプセル剤)ならびにリポソームで提供され得、薬学の技術分野において周知の任意の方法により調製され得る。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MD (20th ed. 2000)を参照のこと。
このような調製方法は、1つまたは複数の副成分を構成する担体などの成分を、投与される分子と混合する工程を含む。一般的に、組成物は、有効成分を、液体担体、リポソームもしくは微粉化固体担体、または両方と均一かつ十分に混合し、次いで、必要に応じて、製品を成形することによって、調製される。
特定の態様において、化合物は経口投与される。経口投与に好適な本発明の組成物は、分離した単位、例えば、各々が所定量の有効成分を含有する、カプセル剤、サシェ剤または錠剤として;散剤または顆粒剤として;水性液体または非水性液体中の液剤または懸濁剤として;水中油型液体エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョンとして、またはリポソーム中に封入された状態で;またはボーラスなどとして提供され得る。軟ゼラチンカプセル剤が、このような懸濁剤の含有のために有用であり得、これは、化合物吸収速度を有利に増加させ得る。
経口使用のための錠剤の場合、一般的に使用される担体としては、ラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムもまた、一般的に添加される。カプセル剤形態での経口投与について、有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁剤が経口投与される場合、有効成分は、乳化剤および懸濁化剤と混合される。必要に応じて、何らかの甘味剤および/または矯味矯臭剤および/または着色剤が添加され得る。
経口投与に好適な組成物としては、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカントである風味付けされた基剤中に前記成分を含むロゼンジ;ならびに、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤中に有効成分を含む香錠が挙げられる。
非経口投与に好適な組成物としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および意図されるレシピエントの血液と製剤を等張にする溶質を含有し得る、水性および非水性滅菌注射液剤;ならびに、懸濁化剤および増粘剤を含み得る、水性および非水性滅菌懸濁剤が挙げられる。製剤は、単位用量容器または多用量容器中に、例えば、密封アンプルおよびバイアル中にて提供されてもよく、使用の直前に滅菌液体担体、例えば、注射水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。即席の注射液剤および懸濁剤は、滅菌した散剤、顆粒剤、および錠剤から調製されてもよい。
このような注射液剤は、例えば、滅菌した注射可能な水性または油性懸濁剤の形態であってもよい。この懸濁剤は、好適な分散剤または湿潤剤(例えば、Tween 80)および懸濁化剤を使用して、当技術分野において公知の技術に従って製剤化され得る。滅菌した注射可能な調製物は、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌した注射可能な液剤または懸濁剤、例えば、1,3-ブタンジオール中の液剤であってもよい。使用され得る許容される媒体および溶媒には、マンニトール、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌固定油が、溶媒または懸濁化媒体として通常使用される。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性の固定油が使用され得る。脂肪酸、例えば、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体は、注射可能物の調製に有用であり、同様に、天然の薬学的に許容される油、例えばオリーブ油またはヒマシ油、特にそれらのポリオキシエチル化バージョンも有用である。これらの油液剤または懸濁剤は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤も含有し得る。
本発明の薬学的組成物は、経直腸投与用の坐剤の形態で投与され得る。室温では固体であるが直腸温度では液体であり、従って直腸中において融解し活性成分を放出する好適な非刺激性賦形剤と、本発明の化合物を混合することによって、これらの組成物が調製され得る。このような材料としては、カカオバター、蜜ろう、および、ポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の薬学的組成物は、経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与され得る。このような組成物は、薬学的製剤の技術分野において周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールまたは他の好適な防腐剤、生物学的利用能を高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または当技術分野において公知の他の可溶化剤もしくは分散剤を使用して、食塩水中の液剤として調製され得る。例えば、Alexza Molecular Delivery Corporationへ譲渡された、Rabinowitz JDおよびZaffaroni AC、米国特許第6,803,031号を参照のこと。
本発明の薬学的組成物の局所投与は、所望の治療が局所適用によって容易にアクセス可能な領域または器官に関係する場合、特に有用である。皮膚への局所適用について、薬学的組成物は、担体中に懸濁または溶解された活性成分を含有する、好適な軟膏剤で製剤化されるべきである。本発明の化合物の局所投与のための担体としては、鉱油、液体石油、白色石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう、および水が挙げられるが、これらに限定されない。または、薬学的組成物は、担体中に懸濁化または溶解された活性化合物を含有する、好適なローションまたはクリームで製剤化され得る。好適な担体としては、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の薬学的組成物はまた、経直腸坐剤製剤によってまたは好適な浣腸製剤で、下部腸管へ局所的に適用され得る。局所的経皮パッチおよびイオン導入投与もまた、本発明中に含まれる。
本治療の適用は、関心対象の部位で投与されるように、局所的であり得る。関心対象の部位で本組成物を提供するために、注射、カテーテル、トロカール、投射物、プルロニックゲル、ステント、持続的薬物放出ポリマー、または内部アクセスを提供する他のデバイスの使用などの、種々の技術が使用され得る。
従って、更に別の態様によれば、本発明の化合物は、人工器官、人工弁、人工血管、ステント、またはカテーテルなどの埋め込み可能な医療用デバイスをコーティングするための組成物中に組み込まれてもよい。好適なコーティングおよびコーティングされた埋め込み可能なデバイスの一般的な調製は、当技術分野において公知であり、米国特許第6,099,562号;第5,886,026号;および第5,304,121号に例示されている。当該コーティングは、典型的には、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレンビニルアセタート、およびその混合物などの、生体適合性ポリマー材料である。組成物に制御放出特性を与えるために、当該コーティングは任意で、フルオロシリコーン、多糖類、ポリエチレングリコール、リン脂質、またはそれらの組み合わせの好適なトップコートによってさらにカバーされてもよい。侵襲性デバイスのためのコーティングは、それらの用語が本明細書において使用される場合、薬学的に許容される担体、アジュバント、または媒体の定義内に含まれるべきである。
別の態様によれば、本発明は、埋め込み可能な医療用デバイスをコーティングする方法であって、該デバイスを上述のコーティング組成物と接触させる工程を含む方法を提供する。デバイスのコーティングは哺乳動物への埋め込みの前に起こることが、当業者に明白であろう。
別の態様によれば、本発明は、埋め込み可能な薬物放出デバイスを含浸させる方法であって、該薬物放出デバイスを本発明の化合物または組成物と接触させる工程を含む方法を提供する。埋め込み可能な薬物放出デバイスは、生分解性ポリマーカプセル剤またはブレット、非分解性拡散性ポリマーカプセル剤、および生分解性ポリマーウエハーを含むが、これらに限定されない。
別の態様によれば、本発明は、本発明の化合物を含む化合物または組成物でコーティングされた埋め込み可能な医療用デバイスであって、該化合物が治療活性を有する、デバイスを提供する。
別の態様によれば、本発明は、本発明の化合物を含む化合物または組成物を含浸させたかまたは含有する埋め込み可能な薬物放出デバイスであって、該化合物が該デバイスから放出されかつ治療活性を有する、デバイスを提供する。
対象から取り出したために器官または組織が接触可能である場合は、このような器官または組織を本発明の組成物を含有する媒体中に浸してもよく、本発明の組成物を器官上に塗布してもよく、または本発明の組成物を任意の他の好都合な方法において適用してもよい。
別の態様において、本発明の組成物は、第2治療剤をさらに含む。第2治療剤は、パクリチニブと同様の作用機構を有する化合物と共に投与されると有利な特性を有することが公知であるかまたは有利な特性を示す任意の化合物または治療剤より選択され得る。そのような剤は、第8,153,632号に記載されているものを含むがこれらに限定されない、パクリチニブとの組み合わせにおいて有用であると示されるものを含む。
好ましくは、第2治療剤は、骨髄線維症、例えば、原発性骨髄線維症、慢性特発性骨髄線維症、真性赤血球増加症後骨髄線維症、本態性血小板血症骨髄線維症、本態性血小板血症後骨髄線維症などの骨髄増殖性疾患;慢性骨髄性白血病;および進行した骨髄性白血病またはリンパ性白血病から選択される疾患または状態の処置において有用な剤である。
別の態様において、本発明は、本発明の化合物と、一つまたは複数の任意の上記第2治療剤とを含む個別の投与形態であって、化合物および第2治療剤が互いに結び付けられている投与形態を提供する。用語「互いに結び付けられている」は、本明細書において使用される場合、個別の投与形態が一緒に(互いに24時間未満内に、連続的に、または同時に)販売および投与されるように意図されることが容易に明らかであるように、個別の投与形態が、一緒にパッケージングされているかまたはそうでなければ互いに結合されていることを意味する。
本発明の薬学的組成物中において、本発明の化合物は有効量で存在する。本明細書において使用される場合、用語「有効量」は、適切な投与計画で投与された場合に対象の障害を治療するのに十分な量を指す。
動物およびヒトについての投与量(ミリグラム/体表面の平方メートルに基づく)の相互関係は、Freireich et al., Cancer Chemother. Rep, 1966, 50: 219に記載されている。体表面積は、対象の身長および体重から近似的に決定され得る。例えば、Scientific Tables, Geigy Pharmaceuticals, Ardsley, N. Y., 1970, 537を参照のこと。
一つの態様において、本発明の化合物の有効量は、一日当たり50mg〜1000mg、例えば一日当たり100mg〜600mg、例えば一日当たり200mg〜500mg、例えば一日当たり300mg〜400mg、例えば一日当たり350mg〜400mgの範囲であり得る。
有効用量は、当業者によって認識されるように、治療される疾患、疾患の重篤度、投与経路、対象の性別、年齢および全般的な健康状態、賦形剤の使用、他の薬剤の使用などの他の治療的処置との併用の可能性、ならびに治療を行う医師の判断によっても異なる。例えば、有効用量を選択するための指標は、パクリチニブについての処方情報を参照することによって決定することができる。
第2治療剤を含む薬学的組成物に関して、第2治療剤の有効量は、その薬剤だけを使用する単剤療法計画において通常使用される投与量の約20%〜100%である。好ましくは、有効量は、通常の単剤療法用量の約70%〜100%である。これらの第2治療剤の通常の単剤療法投与量は、当技術分野において周知である。例えば、Wells et al, eds., Pharmacotherapy Handbook, 2nd Edition, Appleton and Lange, Stamford, Conn. (2000);PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000, Deluxe Edition, Tarascon Publishing, Loma Linda, Calif. (2000)を参照のこと;これらの参考文献の各々は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
上記で参照された第2治療剤のいくつかは本発明の化合物と相乗的に作用することが予想される。これが生じる場合、それによって、第2治療剤および/または本発明の化合物の有効投与量を、単剤療法において必要とされる量よりも減らすことができる。これは、第2治療剤もしくは本発明の化合物のいずれかの毒性副作用の最小化、効能の相乗的改善、投与もしくは使用の容易さの改善、および/または化合物調製もしくは製剤化の総費用の低減という利点を有する。
治療方法
別の態様において、本発明は、細胞を本明細書における式Iの化合物と接触させる工程を含む、細胞内のJAK2、Flt3、またはCDK2のうちの1つ以上の活性を阻害する方法を提供する。
別の態様によれば、本発明は、その必要がある対象においてパクリチニブによって有利に治療される疾患を治療する方法であって、本発明の化合物または組成物の有効量を対象に投与する工程を含む方法を提供する。1つの態様において、対象は、そのような治療を必要とする患者である。このような疾患は、当技術分野において周知であり、米国特許第8,153,632号に開示されているが、これに限定されない。このような疾患には、骨髄線維症、例えば、原発性骨髄線維症、慢性特発性骨髄線維症、真性赤血球増加症後骨髄線維症、本態性血小板血症骨髄線維症、本態性血小板血症後骨髄線維症などの骨髄増殖性疾患;慢性骨髄性白血病;ならびに進行した骨髄性白血病およびリンパ性白血病などの進行した骨髄性悪性腫瘍およびリンパ性悪性腫瘍が含まれる。
一つの特定の態様において、本発明の方法は、原発性骨髄線維症、真性赤血球増加症後骨髄線維症、および本態性血小板血症後骨髄線維症から選択される疾患または状態を、それを必要とする対象において治療するために使用される。
そのような治療を必要とする対象の特定は、対象または医療従事者の判断にあることができ、かつ主観的(例えば、意見)または客観的(例えば、試験または診断法により測定可能)であることができる。
別の態様において、上記の任意の治療方法は、1つまたは複数の第2治療剤を、それを必要とする対象へ共投与する工程をさらに含む。第2治療剤は、パクリチニブとの共投与について有用であることが公知である任意の第2治療剤より選択され得る。第2治療剤の選択は、治療される特定の疾患または状態にも依存する。本発明の方法において使用され得る第2治療剤の例は、本発明の化合物と第2治療剤とを含む組み合わせ組成物中における使用について上述したものである。
具体的には、本発明の併用療法は、下記の症状の治療のため、式Iの化合物と第2治療剤とを、それを必要とする対象に共投与する工程を含む:骨髄増殖性疾患、骨髄線維症、真性赤血球増加症後骨髄線維症、本態性血小板血症後骨髄線維症、および進行した骨髄性悪性腫瘍およびリンパ性悪性腫瘍。
用語「共投与される」は、本明細書において使用される場合、第2治療剤が、単回投与形態(例えば、本発明の化合物と上述の第2治療剤とを含む本発明の組成物)の一部として、または複数の個別の投与形態として、本発明の化合物と一緒に投与されてもよいことを意味する。あるいは、追加の薬剤は、本発明の化合物の投与前、投与と同時、または投与後に投与されてもよい。このような併用療法治療において、本発明の化合物および第2治療剤の両方は、通常の方法によって投与される。対象への、本発明の化合物と第2治療剤との両方を含む本発明の組成物の投与は、治療過程における別の時点での該対象への、同一の治療剤、任意の他の第2治療剤、または任意の本発明の化合物の別々の投与を排除しない。
これらの第2治療剤の有効量は当業者に周知であり、投与についてのガイダンスは、本明細書において参照される特許および公開された特許出願において、ならびにWells et al, eds., Pharmacotherapy Handbook, 2nd Edition, Appleton and Lange, Stamford, Conn. (2000);PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia 2000, Deluxe Edition, Tarascon Publishing, Loma Linda, Calif. (2000)、および他の医学書において見ることができる。しかしながら、第2治療剤の最適な有効量範囲を決定することは、十分に当業者の権限内にある。
第2治療剤が対象へ投与される、本発明の一態様において、本発明の化合物の有効量は、第2治療剤が投与されない場合のその有効量よりも少ない。別の態様において、第2治療剤の有効量は、本発明の化合物が投与されない場合のその有効量よりも少ない。このようにして、高用量のいずれかの薬剤に関連する望ましくない副作用が最小化され得る。他の潜在的な利点(非限定的に、投与計画の改善および/または薬剤費の低減を含む)は、当業者に明らかであろう。
さらに別の局面において、本発明は、対象における上述の疾患、障害、または症状の治療用の、単一組成物または個別の投与形態としての、医薬の製造における、式Iの化合物単独の使用、または1つまたは複数の上述の第2治療剤との併用を提供する。本発明の別の局面は、対象における、本明細書に記載される疾患、障害、またはその症状の治療において使用するための、式Iの化合物である。
実施例1.代謝安定性の評価
ミクロソームアッセイ:ヒト肝臓ミクロソーム(20 mg/mL)は、Xenotech, LLC (Lenexa, KS)から得られる。還元型β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、塩化マグネシウム(MgCl2)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)は、Sigma-Aldrichから購入される。
代謝安定性の決定:試験化合物の7.5 mMのストック溶液を、DMSOで調製する。7.5 mMのストック溶液を、アセトニトリル(ACN)で12.5〜50μMに希釈する。20 mg/mLのヒト肝臓ミクロソームを、3 mM MgCl2を含有する0.1 Mリン酸カリウム緩衝液(pH 7.4)で0.625 mg/mLに希釈する。希釈したミクロソームを、96ウェル深型ポリプロピレンプレートのウェルに三連で添加する。12.5〜50μMの試験化合物の10μLアリコートをミクロソームに添加し、混合物を10分間予熱する。予熱したNADPH溶液の添加によって、反応を開始する。最終的な反応体積は0.5 mLであり、3 mM MgCl2を含む0.1 Mリン酸カリウム緩衝液、(pH 7.4)中に、0.5 mg/mLのヒト肝臓ミクロソーム、0.25〜1.0μMの試験化合物、および2 mMのNADPHを含有する。反応混合物を37℃でインキュベーションし、50μLアリコートを0、5、10、20、および30分で取り出し、内部標準と共に50μLの氷冷ACNを含有する浅底96ウェルプレートに加えて、反応を停止させる。プレートを4℃で20分間保存した後、プレートのウェルに100μLの水を加え、次に、沈殿したタンパク質を沈降させるための遠心分離を行った。上清を別の96ウェルプレートに移し、Applied Bio-systems API 4000質量分析計を用いたLC-MS/MSによって親化合物の残量を解析する。同一手順を、式Iの化合物の非重水素化相当物および陽性対照の7-エトキシクマリン(1μM)に採用する。試験は三連で行う。
データ解析:試験化合物のインビトロt1/2値を、親化合物の残量%(ln)対インキュベーション時間の関係の直線回帰の傾きから算出する。
インビトロt1/2=0.693/k、k=−[親化合物の残量%(ln)対インキュベーション時間の直線回帰の傾き]
データ解析は、Microsoft Excelソフトウェアを用いて実施する。
さらに説明はしないが、当業者は、前述の説明および例示的な実施例を使用して、本発明の化合物を製造および使用し、特許請求される方法を実施することができると考えられる。前述の議論および実施例は、ある好ましい態様の詳細な説明を示すにすぎないことが理解されるべきである。本発明の精神および範囲を逸脱することなく、種々の改変物および等価物が作製され得ることが、当業者に明らかであろう。

Claims (28)

  1. 式I:
    Figure 2016512530
    の化合物またはその薬学的に許容される塩:
    式中、
    各Y1は水素または重水素であり;
    各Y2は水素または重水素であり;
    各Y3は水素または重水素であり;
    各Y4は水素または重水素であり;
    各Y5は水素または重水素であり;
    各Y6は水素または重水素であり;
    各Y7は水素または重水素であり;
    各Y8は水素または重水素であり;
    かつ
    Zは水素または重水素であり;
    ただし、各Y1、各Y2、各Y3、各Y4、各Y5、各Y6、各Y7、および各Y8が水素である場合、Zは重水素である。
  2. 各Y1が重水素である、請求項1に記載の化合物。
  3. 各Y1が水素である、請求項1に記載の化合物。
  4. 各Y2が重水素である、請求項1、2、または3に記載の化合物。
  5. 各Y2が水素である、請求項1、2、または3に記載の化合物。
  6. Y3が重水素である、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
  7. Y3が水素である、請求項1、2、3、4、または5に記載の化合物。
  8. Y4が重水素である、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
  9. Y4が水素である、請求項1、2、3、4、5、6、または7に記載の化合物。
  10. Y5が重水素である、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
  11. Y5が水素である、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、または9に記載の化合物。
  12. 各Y1が重水素であり、各Y4が重水素であり、かつ各Y2が各Y3と同一である、請求項2に記載の化合物。
  13. 各Y1が水素であり、各Y4が水素であり、かつ各Y2が各Y3と同一である、請求項3に記載の化合物。
  14. 各Y8が重水素である、請求項12または13に記載の化合物。
  15. 各Y8が水素である、請求項12または13に記載の化合物。
  16. 各Y7が重水素である、請求項12、13、14、または15に記載の化合物。
  17. 各Y7が水素である、請求項12、13、14、または15に記載の化合物。
  18. Y6が重水素である、請求項12、13、14、15、16、または17に記載の化合物。
  19. Y6が水素である、請求項12、13、14、15、16、または17に記載の化合物。
  20. Zが水素である、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
  21. Zが重水素である、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
  22. 表1(下記):
    Figure 2016512530
    に示されている化合物のいずれか一つまたはその薬学的に許容される塩から選択され、重水素と指定されていない原子がいずれも、その天然同位体存在度で存在する、請求項1に記載の化合物。
  23. 重水素と指定されていない原子がいずれも、その天然同位体存在度で存在する、前記請求項のいずれか一項に記載の化合物。
  24. 請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
  25. 細胞を請求項1に記載の化合物または請求項24に記載の組成物と接触させる工程を含む、細胞内のJAK2、Flt3、またはCDK2のうちの一つまたは複数の活性を阻害する方法。
  26. それを必要とする対象において、骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、ならびに進行した骨髄性およびリンパ性白血病からなる群より選択される疾患を治療する方法であって、有効量の本発明の化合物または組成物を該対象に投与する工程を含む、前記方法。
  27. 前記疾患が骨髄線維症である、請求項26に記載の方法。
  28. 前記疾患が、原発性骨髄線維症、慢性特発性骨髄線維症、真性赤血球増加症後骨髄線維症、本態性血小板血症骨髄線維症、および本態性血小板血症後骨髄線維症からなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
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