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JP2016202073A - フマル酸の製造方法 - Google Patents

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JP2016202073A JP2015087826A JP2015087826A JP2016202073A JP 2016202073 A JP2016202073 A JP 2016202073A JP 2015087826 A JP2015087826 A JP 2015087826A JP 2015087826 A JP2015087826 A JP 2015087826A JP 2016202073 A JP2016202073 A JP 2016202073A
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史員 高橋
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Abstract

【課題】効率のよいフマル酸の微生物学的生産方法の提供。
【解決手段】ソルビトールを含有する培地でリゾプス属菌を培養することを含む、フマル酸の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、フマル酸の製造方法に関する。
フマル酸は、酸味料や抗菌剤としてよく用いられているほか、リンゴ酸やアスパラギン酸等の中間物質として食品製造に使用されたり、合成樹脂や生分解性ポリマーの原料として用いられるなど、工業的な価値が高い物質である。フマル酸は、工業的には化学合成法やリゾプス属菌(Rhizopus)等の発酵菌を用いて製造されてきた。従前は、より低コストなため化学合成法が主流であったが、近年、原料の高騰や、食品用途の際の安全性、環境負荷などの観点から、微生物学的方法が再び注目されている。
フマル酸は、TCAサイクルの中間物質として知られているが、リゾプス属菌においては、主にグルコースから生じたピルビン酸から始まる還元的TCA経路において生成されると考えられている。一方で、リゾプス属菌中にはピルビン酸からエタノールを生成する経路も存在するため、リゾプス属菌によるフマル酸生産には、副産物としてエタノールが混入するという問題がある。
フマル酸生産量が多く、エタノール産生の少ない変異リゾプス属菌が報告されている(非特許文献1)。しかし、リゾプス属菌の遺伝学的背景は未だ十分に研究されていないことから、遺伝子組換え技術によるフマル酸高生産性リゾプス属菌の開発は容易ではない。
グルコース以外の炭素源を用いた有機酸の微生物学的生産方法が報告されている。特許文献1には、脂肪酸エステルやトリグリセリドを添加した培地でリゾプス属菌を培養する有機酸の製造方法が開示されている。特許文献2には、グルコース以外の種々の糖を添加した培地でAspergillus属菌を培養し、リンゴ酸生産性を調べたことが開示されている。しかし、上記グルコース以外の糖を用いた場合のリンゴ酸生産性は、グルコースと比べて低かった。特許文献3には、バイオマスから生産した粗ソルビトールから、Actinobacillus succinogenes等の種々の菌にコハク酸を生産させたことが開示されている。特許文献4には、組換えActinobacillus succinogenesにソルビトールからコハク酸を生産させたことが開示されている。非特許文献2には、ソルビトール添加培地で組換え大腸菌を培養することにより、グルコール添加培地に比べてコハク酸生産性が向上したが、同時にエタノール生産量も増加したことが開示されている。
米国特許第4564594号公報 英国特許第884029号公報 米国特許公開公報第2014/0093926号 米国特許公開公報第2014/0093925号
Korean J Chem Eng, 2010, 27(1):183-186 J Ind Microbiol Biotechnol, 2005, 32(3):87-93
本発明は、効率のよいフマル酸の微生物学的生産方法に関する。
本発明者らは、微生物のフマル酸生産性を向上させるべく種々検討した結果、炭素源にソルビトールを含む培地でリゾプス属菌を培養することによって、当該菌のフマル酸生産性が向上し、かつ副産物であるエタノールの生成が抑制されることを見出した。
すなわち本発明は、ソルビトールを含有する培地でリゾプス属菌を培養することを含む、フマル酸の製造方法を提供する。
本発明の方法によれば、従来のリゾプス属菌によるフマル酸製造法と比べて、フマル酸の収量を増加させることができ、かつ副産物であるエタノールの生成を抑えることができる。したがって、本発明によれば、より効率よくかつ低コストなフマル酸製造が可能になる。
本発明のフマル酸の製造方法においては、ソルビトールを含有する培地で、リゾプス属菌を培養する。培養終了後、生産されたフマル酸を培地から回収する。
(1.リゾプス属菌)
(1.1.菌種)
本発明のフマル酸の製造方法に用いられるリゾプス属菌の種類としては、特に限定されないが、例えば、Rhizopus delemar、Rhizopus oryzae、Rhizopus arrhizus、Rhizopus chinensis、Rhizopus nigricans、Rhizopus tonkinensis、Rhizopus triticiなどが挙げられる。これらのリゾプス属菌種は、単独で使用すればよいが、2種以上組み合わせて使用することもできる。
(1.2.リゾプス属菌の調製)
本発明の方法において、上記リゾプス属菌は、ペレットの形態で用いることが好ましい。あるいは、本発明の方法において、上記リゾプス属菌は、担体に固定化されたリゾプス属菌であってもよく、または該ペレットと該担体に固定化された菌とが併用されてもよい。本明細書において、リゾプス属菌の「ペレット」とは、液体培養により菌糸が自発的に形成した数百μm〜数mmの大きさの菌糸塊をいい、「担体に固定化されたリゾプス属菌」とは、担体に保持又は包埋されたリゾプス属菌をいう。上記リゾプス属菌のペレット及び担体に固定化されたリゾプス属菌は、商業的に入手したものを使用しても、胞子又は菌糸から調製したものを使用してもよい。
(1.2.1.ペレットの調製)
リゾプス属菌ペレットは、公知の方法で調製することができる。例えば、リゾプス属菌の胞子懸濁液を調製し(工程A)、それを培養液で培養して胞子を発芽させて菌糸体を調製し(工程B)、好適には、さらに工程Bで得られた菌糸体を増殖させて(工程C)、ペレットを形成させる。調製されたペレットは、ろ別、遠心分離等により培養液から分離回収し、フマル酸製造に使用することができる。工程A〜Cの好ましい実施形態を以下に詳述する。
<工程A:胞子懸濁液の調製>
リゾプス属菌の胞子を、例えば、無機寒天培地(組成例:2%グルコース、0.1%硫酸アンモニウム、0.06%リン酸2水素カリウム、0.025%硫酸マグネシウム・7水和物、0.009%硫酸亜鉛・7水和物、1.5%寒天、いずれも濃度は%(w/v))、PDA培地、等の培地に接種し、10〜40℃、好ましくは27〜30℃にて、7〜10日間静置培養を行ない、次いで生理食塩水などに懸濁することで、胞子懸濁液を調製することができる。胞子懸濁液には菌糸体が含まれていても、含まれていなくてもよい。
<工程B:菌糸体の調製>
上記で得られた胞子懸濁液を、培養液に接種して培養し、胞子を発芽させて菌糸体を得る。当該培養は、通常の手順にて行なえばよい。培養液に接種する糸状菌の胞子数は、1×10〜1×10個−胞子/mL−培養液、好ましくは1×10〜5×10個−胞子/mL−培養液、より好ましくは5×10〜1×10個−胞子/mL−培養液、さらに好ましくは1×10〜1×10個−胞子/mL−培養液である。培養液には、市販の培地、例えば、ポテトデキストロース培地(以下、PDB培地という場合もある。例えばベクトン・ディッキンソン アンド カンパニー製)、Luria−Bertani培地(以下、LB培地という場合もある。例えば日本製薬社製)、Nutrient Broth(以下、NB培地という場合もある。例えばベクトン・ディッキンソン アンド カンパニー製)、Sabouraud培地(以下、SB培地という場合もある、例えばOXOID社製)等が利用できる。該培養液には、発芽率と菌体生育の観点から、炭素源としてグルコース、キシロースなどの単糖、シュークロース、ラクトース、マルトースなどのオリゴ糖、又はデンプン等の多糖;グリセリン、クエン酸などの生体成分;窒素源として硫酸アンモニウム、尿素等;その他無機物としてナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、リン酸等の各種塩類、を適宜添加することができる。単糖、オリゴ糖、多糖及びグリセリンの好ましい濃度は0.1〜30%(w/v)、クエン酸の好ましい濃度は0.01〜10%(w/v)、硫酸アンモニウム、尿素及びアミノ酸の好ましい濃度は0.01〜1%(w/v)、無機物の好ましい濃度は0.0001〜0.5%(w/v)である。上記培養液に胞子懸濁液を接種し、好ましくは80〜250rpm、より好ましくは100〜170rpmで攪拌しながら、25〜42.5℃の培養温度制御下で、好ましくは24〜120時間、より好ましくは48〜72時間培養する。培養に供する培養液の量は、培養容器にあわせて適宜調整すればよいが、例えば、200mL容バッフル付フラスコの場合は50〜100mL程度、500mL容バッフル付フラスコの場合は100〜300mL程度であればよい。この培養により、接種した胞子は発芽し、菌糸体へと成長する。
<工程C:菌糸体の増殖>
工程Cは、工程Bで得られた菌糸体をさらに培養して増殖させる工程である。本工程は必須ではないが、フマル酸の生産性向上の観点からは、本工程を行うことが好ましい。工程Cで使用する増殖用の培養液は特に限定されないが、通常使用されるグルコースを含む無機培養液であればよく、例えば、7.5〜30%グルコース、0.05〜2%硫酸アンモニウム、0.03〜0.6%リン酸2水素カリウム、0.01〜0.1%硫酸マグネシウム・7水和物、0.005〜0.05%硫酸亜鉛・7水和物、及び3.75〜20%炭酸カルシウム(いずれも濃度は%(w/v))を含有する培養液等が挙げられる。当該培養液の量は、培養容器にあわせて適宜調整すればよいが、例えば、500mL容三角フラスコの場合は50〜300mL、好ましくは100〜200mLであればよい。この培養液に、工程Bで培養した菌体を、湿重量として1〜6g−菌体/100mL−培養液、好ましくは3〜4g−菌体/100mL−培養液となるよう接種し、100〜300rpm、好ましくは170〜230rpmで攪拌しながら、25〜42.5℃の培養温度制御下で、12〜120時間、好ましくは24〜72時間培養する。
(1.2.2.固定化リゾプス属菌の調製)
担体に固定化されたリゾプス属菌は、公知の方法で調製することができる。例えば、リゾプス属菌の胞子を、担体の存在する液体培地に植菌後、培養し、胞子から発芽した菌糸が取り込まれた担体を回収する(特開2013−240321号公報参照)。リゾプス属菌固定化用の担体の材質としては、ウレタン系重合体、オレフィン系重合体、ジエン系重合体、縮合系重合体、シリコーン系重合体、フッ素系重合体等が挙げられ、その構造は、発泡体、薄片体、シート体、中空体、樹脂成型体等が好ましい。該担体の形状は、平板状、多層板状、波板状、四面体状、球状、紐状、網状、円柱状、格子状、円筒状等のいずれでもよく、そのサイズは、0.1mm〜10mmが好ましく、0.3〜5mmがより好ましく、0.5〜2mmがさらに好ましい。リゾプス属菌固定化担体は、ろ別、遠心分離等により培養液から分離回収し、フマル酸製造に使用することができる。
(2.フマル酸生産用培地)
本発明のフマル酸製造方法に使用される培地としては、炭素源にソルビトールを含む以外は、リゾプス属菌による有機酸生産のために通常用いられるものを使用すればよい。通常、培地は液体培地であり、合成培地、天然培地、及び合成培地に天然成分を添加した半合成培地のいずれであってもよい。当該培地には、炭素源、窒素源、無機塩等が含まれるのが一般的であるが、各成分組成は、上述した炭素源以外は、適宜選択可能である。以下に好ましい培地組成について詳述する。以下に記載する培地中の各成分の濃度は、初発(培地調製時又は培養開始時)の濃度を表す。
上記培地は、ソルビトールを含有する。該培地に含まれるソルビトールの量は、培地に含まれる炭素源の全量中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは10〜100質量%、さらに好ましくは50〜100質量%である。好適には、該培地の炭素源は、糖、糖アルコールなどの糖類であり、該糖類の全量中に、好ましくは10質量%以上、より好ましくは10〜100質量%、さらに好ましくは50〜100質量%のソルビトールが含まれる。上記培地は、上記糖類以外の炭素源、例えば、脂肪酸エステルやトリグリセリドを含んでいてもよいが、その場合も、該培地中のソルビトールの量は、該糖類中に、好ましくは10質量%以上、より好ましくは10〜100質量%、さらに好ましくは50〜100質量%である。培地にグルコースを含む場合、グルコース/(ソルビトール+グルコース)は、質量比で、好ましくは0以上0.5以下、より好ましくは0以上0.3以下、さらに好ましくは0以上0.1以下である。
上記培地は、炭素源として、ソルビトール以外の糖類を含んでいてもよい。該培地に炭素源として含まれるソルビトール以外の糖類の例としては、グルコース、マルトース、でんぷん加水分解物、フルクトース、キシロース、スクロース等が挙げられ、このうち、グルコース及びフルクトースが好ましい。これらの糖類は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
上記培地中の炭素源(ソルビトールを含む)の濃度は、好ましくは1%(w/v)以上、より好ましくは5%(w/v)以上であって、かつ好ましくは40%(w/v)以下、より好ましくは30%(w/v)以下である。あるいは、上記培地中の炭素源(ソルビトールを含む)の濃度は、好ましくは1〜40%(w/v)、より好ましくは5〜30%(w/v)である。
上記培地中の窒素源の例としては、尿素、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム等の含窒素化合物が挙げられる。該培地中の窒素源の濃度は、好ましくは0.001〜0.5%(w/v)、より好ましくは0.05〜0.2%(w/v)である。
上記培地には、硫酸塩、マグネシウム塩、亜鉛塩などを含有することができる。硫酸塩の例としては、硫酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられる。マグネシウム塩の例としては、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム等が挙げられる。亜鉛塩の例としては、具体的には、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛等が挙げられる。該培地中の硫酸塩の濃度は、好ましくは0.01〜0.5%(w/v)、より好ましくは0.02〜0.2%(w/v)である。該培地中のマグネシウム塩の濃度は、好ましくは0.001〜0.5%(w/v)、より好ましくは0.01〜0.1%(w/v)である。該培地中の亜鉛塩の濃度は、好ましくは0.001〜0.05%(w/v)、より好ましくは0.005〜0.05%(w/v)である。
上記培地のpH(25℃)は、好ましくは3〜7、より好ましくは3.5〜6である。培地のpHは、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、炭酸カルシウム、アンモニア等の塩基、又は硫酸、塩酸等の酸を用いて調整することができる。
上記培地の好ましい例としては、7.5〜30%炭素源(うち、ソルビトール10〜100質量%)、0.05〜0.2%硫酸アンモニウム、0.01〜0.6%リン酸2水素カリウム、0.01〜0.1%硫酸マグネシウム・7水和物、0.005〜0.05%硫酸亜鉛・7水和物、及び3.75〜20%炭酸カルシウム(いずれも濃度は%(w/v))を含有する液体培地が挙げられる。
あるいは、本発明の方法で使用される培地におけるソルビトールの含有量は、培地全量中、好ましくは1〜40%(w/v)、より好ましくは5〜30%(w/v)であり得る。該培地は、さらにグルコースを含んでいてもよく、該グルコース:ソルビトールの質量比は、好ましく50:50〜0:100である。
(3.リゾプス属菌の培養)
(3.1.培養手順)
本発明のフマル酸の製造方法においては、上記ソルビトールを含有するフマル酸生産用培地で、上記リゾプス属菌を培養し、該菌にフマル酸を生産させる。該培養の条件は、通常のリゾプス属菌の培養条件に従えばよい。例えば、培地の量は、200mL容三角フラスコの場合は20〜80mL程度、500mL容三角フラスコの場合は50〜200mL程度、30Lジャーファーメンターの場合は10L〜15L程度とすることができるが、培養容器にあわせて適宜調整すればよい。培地に対する上記リゾプス属菌の接種量は、好ましくは湿重量として10g〜90g−菌体/100mL−培地、より好ましくは15g〜50g−菌体/100mL−培地であり得る。好適には、培養は、100〜300rpm、好ましくは150〜230rpmで攪拌しながら、25〜45℃の温度下で、12時間〜240時間、好ましくは24時間〜120時間行われる。ジャーファーメンターを用いる場合は、通気は好ましくは0.05〜2vvm、より好ましくは0.1〜1.5vvmにて行う。
培地にリゾプス属菌を接種する場合、上述した所定のソルビトール濃度の培地を作製してから、これにリゾプス属菌を接種してもよいが、リゾプス属菌を含む培地に対して、上述した所定の濃度になるようにソルビトールや、その他の培養に必要な成分を添加してもよい。
(3.2.フマル酸生産能の向上)
上記手順に従って、上記ソルビトールを含有する培地で培養されたリゾプス属菌は、フマル酸生産能が向上する。したがって、本発明のフマル酸の製造方法によれば、従来のリゾプス属菌を用いたフマル酸製造法と比べて、より高収量でフマル酸を製造することができる。さらに、上記ソルビトールを含有する培地で培養されたリゾプス属菌は、フマル酸製造の副産物であるエタノールの生産能が低減している。したがって、本発明のフマル酸の製造方法によれば、従来法と比べて、副産物の混入が少ない、より効率よいフマル酸の製造が可能になる。
(4.フマル酸の回収)
上記の手順で培養したリゾプス属菌培養物から、フマル酸を回収する。例えば、傾斜法、ろ過、遠心分離などにより培養物から菌体を除去し、得られた培養物を、必要に応じて濃縮した後、晶析法、イオン交換法、溶剤抽出法等の方法、又はこれらの組み合わせにかけ、該培養液中のフマル酸を回収することができる。回収したフマル酸塩は、必要に応じてさらに精製されてもよい。
培養物から分離されたリゾプス属菌は、フマル酸生産に再利用することができる。例えば、培養物から分離した菌に上述したフマル酸生産用培地を新たに加え、再び上記条件で培養することができる。本発明によるリゾプス属菌の培養及びフマル酸の回収は、回分式、半回分式及び連続式のいずれの方法で行ってもよい。
(5.例示的実施形態)
本発明はまた、例示的実施形態として以下の組成物、製造方法、用途又は方法を包含する。但し、本発明はこれらの実施形態に限定されない。
<1>ソルビトールを含有する培地でリゾプス属菌を培養することを含む、フマル酸の製造方法。
<2>ソルビトールを含有する培地でリゾプス属菌を培養することを含む、リゾプス属菌のフマル酸生産能の向上方法。
<3>ソルビトールを含有する培地でリゾプス属菌を培養することを含む、リゾプス属菌のエタノール生産能の低減方法。
<4>上記培地に含まれるソルビトールの量が、該培地に含まれる炭素源の全量中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは10〜100質量%、さらに好ましくは50〜100質量%である、<1>〜<3>のいずれか1項記載の方法。
<5>好ましくは、上記培地に含まれる炭素源が糖類であり、かつ該培地に含まれるソルビトールの量が、該糖類の全量中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは10〜100質量%、さらに好ましくは50〜100質量%である、<4>記載の方法。
<6>好ましくは、上記培地が、グルコース、マルトース、でんぷん加水分解物、フルクトース、キシロース及びスクロースからなる群より選択される少なくとも1種の糖類を炭素源としてさらに含有する、<1>〜<5>のいずれか1項記載の方法。
<7>上記培地中の炭素源の量が、
好ましくは1%(w/v)以上、より好ましくは5%(w/v)以上、さらに好ましくは7.5%(w/v)以上であって、かつ好ましくは40%(w/v)以下、より好ましくは30%(w/v)であるか、あるいは、
好ましくは1〜40%(w/v)、より好ましくは5〜40%(w/v)、さらに好ましくは7.5〜40%(w/v)、さらに好ましくは1〜30%(w/v)、さらに好ましくは5〜30%(w/v)、なお好ましくは7.5〜30%(w/v)である、
<1>〜<6>のいずれか1項記載の方法。
<8>上記培地中のソルビトールの含有量が、培地全量中、好ましくは1〜40%(w/v)、より好ましくは5〜30%(w/v)である、<1>〜<7>のいずれか1項記載の方法。
<9>好ましくは、上記リゾプス属菌が、Rhizopus delemar、Rhizopus oryzae、Rhizopus arrhizus、Rhizopus chinensis、Rhizopus nigricans、Rhizopus tonkinensis、及びRhizopus triticiからなる群より選択されるいずれか1種以上である、<1>〜<8>のいずれか1項記載の方法。
<10>好ましくは、上記リゾプス属菌がペレットの形態であるか、又は担体に固定化されている、<1>〜<9>のいずれか1項記載の方法。
<11>好ましくは、上記培養で得られた培養物からフマル酸を回収することをさらに含む、<1>、及び<4>〜<10>のいずれか1項記載の方法。
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1 リゾプス属菌培養によるフマル酸の製造
(1)リゾプス属菌の調製
リゾプス属菌(Rhizopus delemar JCM5557)のペレットを調製した。国際公開公報第2013/157398号の製造例1〜製造例3を参考に、胞子懸濁液からペレットを調製した。
(2)リゾプス属菌の培養
(1)で得られたリゾプス属菌の湿菌体6.0gを、200mL容三角フラスコに供したフマル酸生産評価用無機培養液40mL(組成:10.0%炭素源、0.1%硫酸アンモニウム、0.06%リン酸2水素カリウム、0.025%硫酸マグネシウム・7水和物、0.009%硫酸亜鉛・7水和物、5.0%炭酸カルシウム、いずれも濃度は%(w/v))に接種し、35℃、170rpmにて撹拌培養した。培養液の炭素源としては、表1に示すグルコース、ソルビトール、又はそれらの混合物を用いた。菌体接種直後(0.5時間)及び120時間後に、菌体を含まない培養液上清を回収し、後述する参考例1に記載の手順にてフマル酸、リンゴ酸、コハク酸、及びエタノールの定量を行った。結果を表1に示す。グルコースのみを炭素源とする培地に比べて、ソルビトールを添加したリゾプス属菌培養物ではフマル酸生産性が向上しており、またエタノールの生産量が低下する傾向にあった。
Figure 2016202073
参考例1 有機酸及びエタノールの定量
培養上清中の有機酸(フマル酸、リンゴ酸、コハク酸)、及びエタノールの定量は、HPLCにより行った。
HPLC分析に供する培養液上清試料は、予め37mM硫酸にて適宜希釈した後、DISMIC−13cp(0.20μmセルロースアセテート膜、ADVANTEC製)又はアクロプレップ96フィルタープレート(0.2μmGHP膜、日本ポール製)を用いて不溶物の除去を行なった。
HPLCの装置は、LaChrom Elite(日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。分析カラムには、ICSep ICE−ION−300 Guard Column Cartride(4.0mmI.D.×2.0cm、TRANSGENOMIC製)を接続した有機酸分析用ポリマーカラムICSep ICE−ION−300(7.8mmI.D.×30cm、TRANSGENOMC製)を用い、溶離液は10mM硫酸、流速0.5mL/分、カラム温度50℃の条件にて溶出を行なった。各有機酸、及びエタノールの検出は、それぞれ示唆屈折率検出器(RI検出器)及びUV検出器(検出波長210nm)を用いた。濃度検量線は、標準試料〔フマル酸(販売元コード063−00655、和光純薬工業製)、リンゴ酸(販売元コード135−00562、和光純薬工業製)、コハク酸(販売元コード194−04335、和光純薬工業製)、及びエタノール(製品番号057−00456、和光純薬工業製)〕を用いて作成した。それぞれの濃度検量線に基づいて、各成分の定量を行なった。

Claims (3)

  1. ソルビトールを含有する培地でリゾプス属菌を培養することを含む、フマル酸の製造方法。
  2. 前記培地に含まれるソルビトールの量が、該培地に含まれる炭素源の全量中10質量%以上である、請求項1記載の方法。
  3. 前記リゾプス属菌がRhizopus delemarである請求項1又は2記載の方法。
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