以下に、添付図面を参照して、本発明にかかる積層鉄心製造装置および積層鉄心製造方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本実施の形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1にかかる積層鉄心製造装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態1にかかる積層鉄心製造装置の一構成例を示す図である。図1に示すように、本実施の形態1にかかる積層鉄心製造装置1は、積層鉄心材料としてのn枚(nは2以上の整数、以下同じ)の鋼板15−1〜15−n(以下、「複数の鋼板15」と適宜略す)を各々払い出す複数の払出部2−1〜2−nと、複数の鋼板15を各搬送経路に沿って各々送出する複数の送りロール3−1〜3−nとを備える。また、積層鉄心製造装置1は、複数の鋼板15の縁部位置を各々修正する複数の縁部位置修正部4−1〜4−nと、複数の鋼板15の縁部位置を各々検出する複数の縁部位置検出部5−1〜5−nとを備える。さらに、積層鉄心製造装置1は、複数の鋼板15を重ね合わせるピンチロール6と、重ね合わせた複数の鋼板15を打抜き加工するプレス機7と、複数の縁部位置修正部4−1〜4−nの動作を制御する制御部8とを備える。
払出部2−1〜2−nは、複数の鋼板15を各々払い出す設備である。具体的には、払出部2−1〜2−nは、各々、ペイオフリール等を用いて構成され、積層鉄心製造装置1の入側端に設置される。払出部2−1〜2−nは、積層鉄心の製造に用いる複数の積層鉄心材料としてn枚(コイル状の場合はn個)の鋼板15−1〜15−nを各々受け入れ、これらの受け入れた鋼板15−1〜15−nを、各々、搬送経路別に順次払い出す。
本実施の形態1において、n枚の鋼板15−1〜15−nの各々は、高い透磁率を有する薄板状の電磁鋼板(無方向性電磁鋼板等)である。図1に示すように、これらの鋼板15−1〜15−nは、各々、コイル状に巻かれた状態で払出部2−1〜2−nに各々受け入れられる。
送りロール3−1〜3−nは、搬送経路の上流側から下流側に向けて複数の鋼板15を各々送出する設備である。具体的には、図1に示すように、送りロール3−1〜3−nは、払出部2−1〜2−nの後段に各々設置される。送りロール3−1〜3−nは、払出部2−1〜2−nから払い出された鋼板15−1〜15−nを、各々、縁部位置修正部4−1〜4−nに向けて搬送経路別に順次送出する。
縁部位置修正部4−1〜4−nは、複数の積層鉄心材料の各積層鉄心材料における幅方向の縁部位置を各々修正する複数の縁部位置修正部として機能する。具体的には、縁部位置修正部4−1〜4−nは、搬送経路の上流側から下流側へ積層鉄心材料を順次送出する送りロール等を用いて構成され、図1に示すように、縁部位置検出部5−1〜5−nの直前に各々設置される。例えば、縁部位置修正部4−1は、鋼板15−1の搬送経路において、送りロール3−1の後段であり且つ縁部位置検出部5−1の直前の位置に設置される。縁部位置修正部4−nは、鋼板15−nの搬送経路において、送りロール3−nの後段であり且つ縁部位置検出部5−nの直前の位置に設置される。すなわち、本実施の形態1において、縁部位置修正部4−1〜4−nと縁部位置検出部5−1〜5−nとの各間には、図1に示すように、送りロール等の積層鉄心材料の搬送に影響する設備は存在しない。
このような縁部位置修正部4−1〜4−nは、鋼板15−1〜15−nを縁部位置検出部5−1〜5−nに各々送出する送りロールとしての機能と、鋼板15−1〜15−nの縁部位置を各々修正する修正機能とを兼ね備える。本実施の形態1において、縁部位置修正部4−1〜4−nの各々は、搬送経路毎に積層鉄心材料をピンチロール6側に送出する回転ロール体を有する。例えば、縁部位置修正部4−1は、鋼板15−1の搬送経路に沿って鋼板15−1をピンチロール6側に送出する回転ロール体を有する。縁部位置修正部4−nは、鋼板15−nの搬送経路に沿って鋼板15−nをピンチロール6側に送出する回転ロール体を有する。縁部位置修正部4−1〜4−nの各々は、自身の回転ロール体による積層鉄心材料の送出方向(図1中の太線矢印参照)を回転中心にして、自身の回転ロール体のロール軸を水平方向に対し傾け、これにより、積層鉄心材料の縁部位置を修正する。このようにして、縁部位置修正部4−1〜4−nは、鋼板15−1〜15−nの縁部位置を必要に応じ各々修正しながら、これらの鋼板15−1〜15−nを、各々、ピンチロール6側に(具体的には縁部位置検出部5−1〜5−nに向けて)順次送出する。
縁部位置検出部5−1〜5−nは、異なる搬送経路に沿って各々搬送される複数の積層鉄心材料の各積層鉄心材料における幅方向の縁部位置を各々検出する複数の縁部位置検出部として機能する。具体的には、図1に示すように、縁部位置検出部5−1〜5−nは、ピンチロール6の入側直前に設置される。すなわち、縁部位置検出部5−1〜5−nとピンチロール6との各間には、図1に示すように、送りロール等の積層鉄心材料の搬送に影響する設備は存在しない。また、このように設置された縁部位置検出部5−1〜5−nの各位置(例えば積層鉄心材料の縁部位置を検出する位置)と、ピンチロール6の位置(例えば複数の積層鉄心材料を重ね合わせる位置)との離間距離は、図1に示すように、距離Lになる。この距離Lは、鋼板15−1〜15−nの各々が自身の縁部位置を幅方向に変化させずに搬送され得る程度に短い距離である。縁部位置検出部5−1〜5−nは、このようなピンチロール6の入側直前の位置において、この入側直前に到達した鋼板15−1〜15−nの縁部位置を各々検出する。その都度、縁部位置検出部5−1〜5−nは、検出した鋼板15−1〜15−nの縁部位置を制御部8に送信する。
本実施の形態1において、縁部位置検出部5−1〜5−nは、光学式、レーザ式、および超音波式の少なくとも一つの方式を用いて、複数の鋼板15の各鋼板15−1〜15−nにおける幅方向の縁部位置を各々検出する。すなわち、縁部位置検出部5−1〜5−nの検出方式は、光学式、レーザ式、および超音波式のいずれであってもよいし、これらのうちの少なくとも二つを組み合わせた方式であってもよい。また、縁部位置検出部5−1〜5−nの検出方式は、縁部位置検出部5−1〜5−n間で同じであってもよいし、異なっていてもよい。
ピンチロール6は、積層鉄心材料としての複数の鋼板15を重ね合わせる重ね合わせ部として機能する。具体的には、図1に示すように、ピンチロール6は、上下一対の回転ロール等を用いて構成され、縁部位置検出部5−1〜5−nとプレス機7との間に設置される。ピンチロール6は、上述した縁部位置修正部4−1〜4−nによって縁部位置が修正された複数の鋼板15を上下から挟み込み、これにより、これら複数の鋼板15をその厚さ方向に重ね合わせる。このようにして、ピンチロール6は、複数の鋼板15の重ね合わせ体18を得る。本実施の形態1において、重ね合わせ体18は、縁部位置が修正された鋼板15−1〜15−nをその厚さ方向に重ね合わせた状態の積層構造体である。ピンチロール6は、上述したように複数の鋼板15を重ね合わせながら、プレス機7に向けて重ね合わせ体18を順次送出する。
プレス機7は、ピンチロール6によって重ね合わせた複数の鋼板15(すなわち重ね合わせ体18)を打抜いて積層鉄心材料の打抜き体を得る打抜き加工部として機能する。具体的には、図1に示すように、プレス機7は、打抜き加工用の金型として上金型7aおよび下金型7bを備え、ピンチロール6の後段(望ましくは直後)に設置される。プレス機7は、金型内すなわち上金型7aと下金型7bとの間に、重ね合わせ体18を受け入れ、受け入れた重ね合わせ体18を上金型7aと下金型7bとによって挟み込んで拘束する。ついで、プレス機7は、上金型7aと下金型7bとによって、この重ね合わせ体18をその厚さ方向に同時に打抜く。
上述した打抜き加工により、プレス機7は、重ね合わせ体18をなす鋼板15−1〜15−nから、目標の鉄心形状に打抜かれた積層鉄心材料の打抜き体を得る。プレス機7は、ピンチロール6から重ね合わせ体18を金型内に受け入れる都度、受け入れた重ね合わせ体18をなす鋼板15−1〜15−nから、目標の鉄心形状の打抜き体を連続して打抜き、この結果、目標の鉄心形状の打抜き体を複数得る。プレス機7は、このようにして得た複数の打抜き体を、素材である鋼板15−1〜15−nの圧延方向が互いに同じ方向に揃うよう積層し、上金型7aおよび下金型7bの作用により一体化して、所望の積層鉄心を製造する。
制御部8は、上述した縁部位置修正部4−1〜4−nの縁部位置修正動作を制御する。具体的には、本実施の形態1において、制御部8は、縁部位置検出部5−1〜5−nによって検出された複数の鋼板15の縁部位置(以下、複数の縁部位置と適宜いう)の各々と所定の基準縁部位置との各ズレ量を把握する。ここで、基準縁部位置は、複数の鋼板15の各鋼板15−1〜15−nに共通する基準の縁部位置である。基準縁部位置は、例えば、プレス機7の上金型7aおよび下金型7bと複数の鋼板15の重ね合わせ体18との間のトラブル(積層鉄心材料の幅方向ズレによるトラブル)が回避されるように、予め設定される。制御部8は、縁部位置検出部5−1〜5−nから取得した複数の縁部位置の各々と上述した基準縁部位置との各ズレ量を低減する(望ましくは零値にする)ように、縁部位置修正部4−1〜4−nによる鋼板15−1〜15−nの縁部位置の修正を制御する。
つぎに、本実施の形態1における積層鉄心材料の縁部位置の修正について具体的に説明する。図2は、本発明の実施の形態1の縁部位置修正部による積層鉄心材料の縁部位置の修正を説明する図である。図3は、本発明の実施の形態1において積層鉄心材料の縁部位置を修正する縁部位置修正部の動作を説明する図である。以下では、縁部位置修正部4−1〜4−nを代表して縁部位置検出部4−1を例示し、図2,3を参照しつつ、縁部位置修正部4−1による積層鉄心材料の縁部位置の修正を説明する。なお、縁部位置修正部4−1〜4−nのうち縁部位置修正部4−1を除く残り(例えば縁部位置修正部4−n)による積層鉄心材料の縁部位置の修正機能は、修正対象が異なること以外、縁部位置修正部4−1と同じである。
図2,3に示すように、縁部位置修正部4−1は、鋼板15−1の搬送経路に沿って鋼板15−1をピンチロール6側に送出する回転ロール体を有する。縁部位置修正部4−1は、この回転ロール体の回転作用によって、鋼板15−1をその長手方向D2に順次送出するとともに、この鋼板15−1における幅方向D1の縁部16a,16bの位置すなわち縁部位置Pa,Pbを修正する。
詳細には、図2,3に示すように、縁部位置修正部4−1は、鋼板15−1の送出方向および厚さ方向の双方に対して垂直な回転ロール体のロール軸4aを有する。縁部位置修正部4−1は、縁部位置Pa,Pbを修正しない通常時、ロール軸4aを水平方向に対して平行な状態にして自身の回転ロール体を回転させる。一方、縁部位置Pa,Pbを修正する際、縁部位置修正部4−1は、鋼板15−1の送出方向(図2中の太線矢印参照)を回転中心にして、ロール軸4aを傾動することにより、図3に示すように、ロール軸4aを水平方向に対し傾ける。これにより、縁部位置修正部4−1は、自身の回転ロール体をロール軸4aと同様に傾けて、鋼板15−1の縁部位置Pa,Pbを基準縁部位置SPa,SPbへ修正する。
ここで、図2に示す基準縁部位置SPa,SPbおよび基準中央位置CPは、例えば、プレス機7の上金型7aおよび下金型7bの位置に応じ予め設定される。具体的には、基準縁部位置SPa,SPbは、鋼板15−1〜15−nにおける幅方向D1の両縁部(例えば図2に示す鋼板15−1の両縁部16a,16b)の基準となる縁部位置であり、鋼板15−1〜15−nに共通する。このような基準縁部位置SPa,SPbは、プレス機7の上金型7aおよび下金型7bの間に搬入される鋼板15−1〜15−nの重ね合わせ体18の最適な縁部位置と一致するように設定される。また、基準中央位置CPは、鋼板15−1〜15−nにおける幅方向D1の中央部の基準となる位置であり、鋼板15−1〜15−nに共通する。このような基準中央位置CPは、基準縁部位置SPa,SPbに対応する最適な縁部位置に両縁部を合わせた状態にある重ね合わせ体18の幅方向D1の中央位置と一致するように設定される。
縁部位置修正部4−1は、図1に示した制御部8によってロール軸4aの傾動方向および傾動角度を制御され、この制御に基づき、ロール軸4aとともに自身の回転ロール体を傾ける。縁部位置修正部4−1は、この傾けた回転ロール体に沿って、鋼板15−1を、縁部位置ズレ量ΔWa分、幅方向D1に摺動変位させる。ここで、縁部位置ズレ量ΔWaは、鋼板15−1〜15−nの縁部位置の各々と鋼板15−1〜15−nに共通の基準縁部位置との各ズレ量(例えば図2に示す鋼板15−1の縁部位置Paと基準縁部位置SPaとのズレ量)である。縁部位置修正部4−1は、このような縁部位置ズレ量ΔWa分の鋼板15−1の幅方向D1に対する摺動変位により、鋼板15−1における一方の縁部位置Paを一方の基準縁部位置SPaへ修正する。この結果、鋼板15−1における他方の縁部位置Pbは、他方の基準縁部位置SPbへ修正され、且つ、鋼板15−1の幅方向D1の中央位置は、基準中央位置CPへ修正される。
なお、本実施の形態1において、幅方向D1は、積層鉄心材料としての複数の鋼板15の各々における板幅の方向である。長手方向D2は、これら複数の鋼板15の各々における長手の方向、すなわち、各鋼板15−1〜15−nの圧延方向である。これらの幅方向D1および長手方向D2は、図2に示すように、互いに垂直である。
つぎに、積層鉄心材料の枚数に応じた積層鉄心製造装置1の構成について説明する。図4は、積層鉄心材料の枚数に応じた積層鉄心製造装置の構成の一具体例を示す図である。図4では、積層鉄心材料の枚数に応じた積層鉄心製造装置1の具体的な構成を簡略に示すために、上述した制御部8の図示を省略している。以下、図4を参照しつつ、積層鉄心材料の枚数が4枚(すなわち整数n=4)である場合を例示して、本実施の形態1にかかる積層鉄心製造装置1の構成を具体的に説明する。
図4に示すように、複数の積層鉄心材料が4枚の鋼板15−1〜15−4である場合、積層鉄心製造装置1は、これら鋼板15−1〜15−4の枚数(=4)に対応して、払出部2−1〜2−4と、送りロール3−1〜3−4と、縁部位置修正部4−1〜4−4と、縁部位置検出部5−1〜5−4とを備える。また、積層鉄心製造装置1は、これら鋼板15−1〜15−4の枚数によらず、上述したように、ピンチロール6と、プレス機7と、制御部8(図1参照)とを備える。
図4に示す積層鉄心製造装置1において、複数の鋼板15の各鋼板15−1〜15−4は、各々、払出部2−1〜2−4からピンチロール6に到達するまで、互いに異なる搬送経路に沿って搬送される。すなわち、鋼板15−1は、払出部2−1から送りロール3−1と縁部位置修正部4−1と縁部位置検出部5−1とをこの順に経てピンチロール6に至る搬送経路に沿って順次搬送される。鋼板15−2は、払出部2−2から送りロール3−2と縁部位置修正部4−2と縁部位置検出部5−2とをこの順に経てピンチロール6に至る搬送経路に沿って順次搬送される。鋼板15−3は、払出部2−3から送りロール3−3と縁部位置修正部4−3と縁部位置検出部5−3とをこの順に経てピンチロール6に至る搬送経路に沿って順次搬送される。鋼板15−4は、払出部2−4から送りロール3−4と縁部位置修正部4−4と縁部位置検出部5−4とをこの順に経てピンチロール6に至る搬送経路に沿って順次搬送される。
具体的には、鋼板15−1は、払出部2−1によって払い出された後、送りロール3−1によって縁部位置修正部4−1へ送出される。続いて、鋼板15−1は、縁部位置修正部4−1により、縁部位置を適宜修正されながら縁部位置検出部5−1へ送出される。ついで、鋼板15−1は、縁部位置検出部5−1によって縁部位置を検出され、その後、ピンチロール6の位置に到達する。
鋼板15−2は、払出部2−2によって払い出された後、送りロール3−2によって縁部位置修正部4−2へ送出される。続いて、鋼板15−2は、縁部位置修正部4−2により、縁部位置を適宜修正されながら縁部位置検出部5−2へ送出される。ついで、鋼板15−2は、縁部位置検出部5−2によって縁部位置を検出され、その後、ピンチロール6の位置に到達する。
鋼板15−3は、払出部2−3によって払い出された後、送りロール3−3によって縁部位置修正部4−3へ送出される。続いて、鋼板15−3は、縁部位置修正部4−3により、縁部位置を適宜修正されながら縁部位置検出部5−3へ送出される。ついで、鋼板15−3は、縁部位置検出部5−3によって縁部位置を検出され、その後、ピンチロール6の位置に到達する。
鋼板15−4は、払出部2−4によって払い出された後、送りロール3−4によって縁部位置修正部4−4へ送出される。続いて、鋼板15−4は、縁部位置修正部4−4により、縁部位置を適宜修正されながら縁部位置検出部5−4へ送出される。ついで、鋼板15−4は、縁部位置検出部5−4によって縁部位置を検出され、その後、ピンチロール6の位置に到達する。
ピンチロール6の位置に到達した鋼板15−1〜15−4は、上述したように、ピンチロール6によって厚さ方向に重ね合わせられ、重ね合わせ体18としてプレス機7へ送出される。これら4枚の鋼板15−1〜15−4の重ね合わせ体18は、上述したように、プレス機7の上金型7aおよび下金型7bにより、目標の鉄心形状に連続で打抜かれる。この結果、目標の鉄心形状をなす積層鉄心材料の打抜き体を複数取得し、これら複数の打抜き体をその厚さ方向に積層し一体化して、所望の積層鉄心が製造される。
図4に示すような4枚の積層鉄心材料に対応する積層鉄心製造装置1において、払出部2−1〜2−4、送りロール3−1〜3−4、縁部位置修正部4−1〜4−4、および縁部位置検出部5−1〜5−4の各構成および機能は、図1に示したn枚の積層鉄心材料に対応する積層鉄心製造装置1における払出部2−1〜2−n、送りロール3−1〜3−n、縁部位置修正部4−1〜4−n、および縁部位置検出部5−1〜5−nと各々同じである。
つぎに、本発明の実施の形態1にかかる積層鉄心製造方法について説明する。図5は、本発明の実施の形態1にかかる積層鉄心製造方法の一例を示すフローチャートである。本発明の実施の形態1にかかる積層鉄心製造方法は、上述した積層鉄心製造装置1を用いて図5に示すステップS101〜S105の各処理(工程)を順次行うことにより、複数の積層鉄心材料の打抜き体を積層し一体化して積層鉄心を製造するものである。
すなわち、本発明の実施の形態1にかかる積層鉄心製造方法において、積層鉄心製造装置1は、図5に示すように、異なる搬送経路に沿って各々搬送される複数の積層鉄心材料の各積層鉄心材料における幅方向の縁部位置を各々検出する(ステップS101)。
ステップS101において、縁部位置検出部5−1〜5−nは、積層鉄心材料としての複数の鋼板15の各鋼板15−1〜15−nにおける幅方向の縁部位置を各々検出する。この際、縁部位置検出部5−1〜5−nは、複数の積層鉄心材料を重ね合わせる重ね合わせ部としてのピンチロール6の入側直前に到達した各鋼板15−1〜15−nの縁部位置を、光学式、レーザ式、および超音波式の少なくとも一つの方式を用いて各々検出する。例えば、縁部位置検出部5−1は、光学式、レーザ式、または超音波式のいずれかの方式を用い、ピンチロール6の入側直前の位置において、図2に示した鋼板15−1における幅方向D1の縁部16aの位置(縁部位置Pa)と縁部16bの位置(縁部位置Pb)とを検出する。縁部位置検出部5−1〜5−nは、このように検出した鋼板15−1〜15−nの縁部位置の検出結果を示す各電気信号を制御部8に各々送信する。
上述したステップS101を実行後、積層鉄心製造装置1は、ステップS101による縁部位置の検出結果をもとに、複数の積層鉄心材料の縁部位置を各々修正する(ステップS102)。ステップS102において、縁部位置修正部4−1〜4−nは、上述したステップS101によって検出された複数の縁部位置(鋼板15−1〜15−nの縁部位置)の各々と基準縁部位置との各ズレ量を低減するように、鋼板15−1〜15−nの縁部位置を各々修正する。
詳細には、ステップS102において、制御部8は、縁部位置検出部5−1〜5−nから鋼板15−1〜15−nの縁部位置の検出結果を取得する。ついで、制御部8は、これら鋼板15−1〜15−nの縁部位置の各々と予め設定された基準縁部位置との各ズレ量、すなわち、鋼板15−1〜15−nの各縁部位置ズレ量ΔWaを算出する。ここで、基準縁部位置は、図2に示した幅方向D1の両側の基準縁部位置SPa,SPbに例示されるように、各鋼板15−1〜15−nに共通する基準の縁部位置である。制御部8は、得られた各縁部位置ズレ量ΔWaを低減するように、望ましくは各縁部位置ズレ量ΔWaを無くす(零値にする)ように、縁部位置修正部4−1〜4−nの各々に対し、縁部位置の修正動作を指示し制御する。
縁部位置修正部4−1〜4−nは、上述した制御部8の制御に基づき、鋼板15−1〜15−nの縁部位置を共通の基準縁部位置へ修正して、これら鋼板15−1〜15−nの各縁部位置ズレ量ΔWaを低減(望ましくは零値に)する。例えば、縁部位置修正部4−1は、制御部8の制御に基づき、図3に示したようにロール軸4aを水平方向から傾け、これにより、鋼板15−1をロール軸4aの下り傾斜方向に摺動変位させる。この結果、縁部位置修正部4−1は、図2に示したように、鋼板15−1の縁部位置Pa,Pbを、縁部位置ズレ量ΔWa分、幅方向D1に修正して、鋼板15−1の縁部位置ズレ量ΔWaを低減し、鋼板15−1の縁部位置Pa,Pbと基準縁部位置SPa,SPbとを各々一致させる。縁部位置修正部4−1〜4−nは、このように鋼板15−1〜15−nの縁部位置を共通の基準縁部位置へ各々修正することにより、鋼板15−1〜15−nの各間で縁部位置を揃える。
また、ステップS102において、制御部8は、縁部位置検出部5−1〜5−nから取得した鋼板15−1〜15−nの幅方向両側の縁部位置をもとに、鋼板15−1〜15−nの幅方向中央位置を各々算出する。制御部8は、得られた各幅方向中央位置と予め設定された基準中央位置CPとが一致するように、縁部位置修正部4−1〜4−nによる縁部位置の修正動作を制御する。縁部位置修正部4−1〜4−nは、このような制御部8の制御に基づき、上述した縁部位置の修正とともに、鋼板15−1〜15−nの各幅方向中央位置(例えば図2に示した鋼板15−1の幅方向D1の中央位置)を共通の基準中央位置CPへ各々修正する。これにより、縁部位置修正部4−1〜4−nは、これらの各幅方向中央位置と共通の基準中央位置CPとを一致させる。その後、縁部位置修正部4−1〜4−nは、これらの鋼板15−1〜15−nを縁部位置検出部5−1〜5−nへ各々送出する。
上述したステップS102を実行後、積層鉄心製造装置1は、ステップS102によって縁部位置が修正された複数の積層鉄心材料を重ね合わせる(ステップS103)。ステップS103において、上述したように縁部位置等を適宜修正された鋼板15−1〜15−nは、各々、縁部位置修正部4−1〜4−nから縁部位置検出部5−1〜5−nを経て、ピンチロール6の入側に順次到達する。ピンチロール6は、これらの鋼板15−1〜15−nを各々積層鉄心材料として順次受け入れ、受け入れた鋼板15−1〜15−nをその厚さ方向に挟み込んで重ね合わせる。これにより、ピンチロール6は、複数(n枚)の積層鉄心材料の重ね合わせ体18を得る。ピンチロール6は、このように形成した重ね合わせ体18をプレス機7に向けて順次送出する。
上述したステップS103を実行後、積層鉄心製造装置1は、ステップS103によって重ね合わせた複数の積層鉄心材料を打抜いて、これら複数の積層鉄心材料の打抜き体を得る(ステップS104)。
ステップS104において、プレス機7は、上述したピンチロール6から、複数の積層鉄心材料としての鋼板15−1〜15−nの重ね合わせ体18を上金型7aと下金型7bとの間に順次受け入れる。ついで、プレス機7は、受け入れた重ね合わせ体18を、上金型7aと下金型7bとによって挟み込んで拘束する。続いて、プレス機7は、上金型7aと下金型7bとによって、この拘束した状態の重ね合わせ体18をその厚さ方向に同時に打抜く。これにより、プレス機7は、この重ね合わせ体18から、目標の鉄心形状をなす複数の積層鉄心材料(具体的には鋼板15−1〜15−n)の打抜き体を得る。プレス機7は、このように重ね合わせ体18を上金型7aと下金型7bとの間に受け入れる都度、受け入れた重ね合わせ体18に対し、上述した打抜き加工を連続して行う。この結果、プレス機7は、目標の鉄心形状の打抜き体を複数得る。
上述したステップS104を実行後、積層鉄心製造装置1は、ステップS104によって得られた複数の打抜き体を積層し一体化して、所望の積層鉄心を製造し(ステップS105)、本処理を終了する。ステップS105において、プレス機7は、上金型7aおよび下金型7bを用い、上述したステップS104によって得た複数の打抜き体を、素材である鋼板15−1〜15−nの圧延方向が互いに同じ方向に揃うよう積層し、積層した複数の打抜き体同士をカシメ等によって一体化する。この結果、プレス機7は、目標形状の積層鉄心を製造する。
なお、このステップS105において、鉄心形状の打抜き体同士の一体化は、プレス機7が自身の金型(すなわち上金型7aと下金型7bとからなる金型、以下同じ)によってカシメ用のダボを打抜き体に形成し、このダボを所定の装置によって押圧して打抜き体同士のカシメを行うことにより、実現してもよい。また、鉄心形状の打抜き体同士の一体化は、プレス機7の金型の外部で打抜き体同士を溶接することにより、あるいは、ボルトや接着剤等の固定手段を用いて打抜き体同士を固定することにより、実現してもよい。
本発明の実施の形態1にかかる積層鉄心製造方法において、上述したステップS101〜S105の各処理は、積層鉄心材料である鋼板15−1〜15−nを用いて積層鉄心を製造する都度、繰り返し実行される。
以上、説明したように、本発明の実施の形態1では、複数の積層鉄心材料を重ね合わせる重ね合わせ部の入側直前に複数の縁部位置検出部を設置し、異なる搬送経路に沿って各々搬送されて、この重ね合わせ部の入側直前に到達した複数の積層鉄心材料の各積層鉄心材料における幅方向の縁部位置を、これら複数の縁部位置検出部によって各々検出し、これら複数の縁部位置検出部によって検出された複数の縁部位置の各々と各積層鉄心材料に共通の基準縁部位置との各縁部位置ズレ量を低減するように、複数の縁部位置修正部によって、これら複数の積層鉄心材料の縁部位置を各々修正し、このように縁部位置が修正された複数の積層鉄心材料を、上述した重ね合わせ部によって厚さ方向に重ね合わせ、重ね合わせた複数の積層鉄心材料を打抜き加工部によって同時に打抜いて、これら複数の積層鉄心材料の打抜き体を取得し、取得した打抜き体を複数積層し一体化して、積層鉄心を製造している。
このため、重ね合わせ部によって厚さ方向に重ね合わせられる直前の複数の積層鉄心材料における各縁部位置ズレ量を可能な限り低減して、これら複数の積層鉄心材料の縁部位置を、各積層鉄心材料に共通の基準縁部位置に揃えることができる。これにより、各積層鉄心材料間で互いに縁部位置を揃えた状態にして、これら複数の積層鉄心材料をその厚さ方向に重ね合わせることができ、たとえ各積層鉄心材料の厚さが自身の幅方向に傾斜していたとしても、各積層鉄心材料の厚さの幅方向に沿った偏差によらず、これら複数の積層鉄心材料の縁部位置が揃った状態を維持することができる。この結果、積層鉄心を製造すべく重ね合わせた複数の積層鉄心材料における幅方向のズレを可能な限り抑制することができ、このように幅方向のズレの抑制によって縁部位置が揃った状態にある複数の積層鉄心材料の重ね合わせ体を、積層鉄心を製造するための打抜き工程に安定して供することができる。
本発明によれば、各積層鉄心材料間で互いに縁部位置が揃った状態を維持して、複数の積層鉄心材料の重ね合わせ体を打抜き加工部(プレス機)の金型内に順次送給することができる。この結果、金型と重ね合わせ体との接触等の積層鉄心材料の幅方向ズレによるトラブルを防止するとともに、目標とする鉄心形状の打抜き体を連続して打抜いて、所望の積層鉄心を安定的に製造することができる。また、複数の積層鉄心材料の重ね合わせ体を同時に打抜く際、この重ね合わせ体をなす各積層鉄心材料間での縁部のズレを抑制することができ、これにより、各積層鉄心材料間での縁部のズレに起因する打抜き加工のトラブルを防止できることから、積層鉄心の製造効率を向上することができる。さらには、より薄い厚さの積層鉄心材料(例えば薄い電磁鋼板等)を用いた積層鉄心を、高い生産効率で製造することができ、この結果、エネルギー損失の低い、優れた積層鉄心を提供することができる。
また、本発明の実施の形態1では、複数の縁部位置修正部を、複数の縁部位置検出部の直前に各々設置している。このため、複数の縁部位置修正部によって縁部のズレを各々修正された複数の積層鉄心材料の各々が縁部位置検出部を経て重ね合わせ部に至るまでの搬送経路を必要最小限に短くすることができる。これにより、複数の縁部位置修正部の各々から重ね合わせ部に至るまでに複数の積層鉄心材料の各々に生じる縁部の搬送起因のズレを可能な限り抑制することができる。この結果、複数の積層鉄心材料の各積層鉄心材料における縁部位置を、共通の基準縁部位置に一致させて容易に揃えることができる。
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2について説明する。上述した実施の形態1では、複数の縁部位置修正部4−1〜4−nが複数の縁部位置検出部5−1〜5−nの直前に各々設置されていたが、実施の形態2では、複数の縁部位置修正部4−1〜4−nと複数の縁部位置検出部5−1〜5−nとの各間に、積層鉄心材料をその搬送経路に沿って送出する送りロールが各々設置されている。
図6は、本発明の実施の形態2にかかる積層鉄心製造装置の一構成例を示す図である。図6に示すように、本実施の形態2にかかる積層鉄心製造装置21は、複数の縁部位置修正部4−1〜4−nと複数の縁部位置検出部5−1〜5−nとの各間に、積層鉄心材料としての鋼板15−1〜15−nを各搬送経路に沿って各々送出する複数の送りロール24−1〜24−nを備える。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
送りロール24−1〜24−nは、搬送経路の上流側から下流側に向けて複数の鋼板15を各々送出する設備である。具体的には、図6に示すように、送りロール24−1〜24−nは、複数の縁部位置修正部4−1〜4−nと複数の縁部位置検出部5−1〜5−nとの各間に各々設置される。この際、送りロール24−1〜24−nは、鋼板15−1〜15−nの各々の搬送経路毎に、1つ以上(本実施の形態2では1つずつ)設置される。すなわち、本実施の形態2において、縁部位置修正部4−1〜4−nは、これらの送りロール24−1〜24−nの前段に各々設置される。これらの送りロール24−1〜24−nは、縁部位置修正部4−1〜4−nから送出された鋼板15−1〜15−nを、各々、縁部位置検出部5−1〜5−nに向けて搬送経路別に順次送出する。
一方、本実施の形態2にかかる積層鉄心製造方法は、図6に示す積層鉄心製造装置21を用いて行われるものである。すなわち、本実施の形態2にかかる積層鉄心製造方法は、送りロール24−1〜24−nが鋼板15−1〜15−nを縁部位置検出部5−1〜5−nに各々送出すること以外、上述した実施の形態1と同じである。
以上、説明したように、本発明の実施の形態2では、複数の積層鉄心材料を複数の縁部位置検出部に各々送出する複数の送りロールを積層鉄心材料の搬送経路毎に1以上設置して、これら複数の送りロールの前段に複数の縁部位置修正部が各々設置されるようにし、その他を実施の形態1と同様に構成している。このため、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏するとともに、複数の縁部位置修正部側から複数の縁部位置検出部側に向けて複数の積層鉄心材料を各々安定的に搬送することができる。
(実施の形態3)
つぎに、本発明の実施の形態3について説明する。上述した実施の形態1では、縁部位置修正部4−1〜4−nの各回転ロール体の傾動によって鋼板15−1〜15−nの縁部位置を各々修正していたが、実施の形態3では、鋼板15−1〜15−nを払い出す各ペイオフリールの幅方向の移動によって鋼板15−1〜15−nの縁部位置を各々修正している。
図7は、本発明の実施の形態3にかかる積層鉄心製造装置の一構成例を示す図である。図7に示すように、本実施の形態3にかかる積層鉄心製造装置31は、実施の形態1にかかる積層鉄心製造装置1の複数の払出部2−1〜2−nに代えて積層鉄心材料の縁部位置の修正機能を有する複数の払出部32−1〜32−nを備え、複数の縁部位置修正部4−1〜4−nに代えて複数の送りロール34−1〜34−nを備え、制御部8に代えて制御部38を備える。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
払出部32−1〜32−nは、各々、ペイオフリール等を用いて構成され、図7に示すように積層鉄心製造装置31の入側端に設置される。本実施の形態3において、払出部32−1〜32−nは、積層鉄心材料としての鋼板15−1〜15−nを各々払い出す払出機能と、鋼板15−1〜15−nの縁部位置を各々修正する修正機能とを兼ね備える。具体的には、払出部32−1〜32−nの各々は、制御部38の制御に基づいて、払い出す積層鉄心材料の幅方向に自身のペイオフリールを移動させる。これにより、払出部32−1〜32−nは、鋼板15−1〜15−nを各々払い出しながら、これらの鋼板15−1〜15−nの縁部位置を必要に応じ各々修正する。なお、払出部32−1〜32−nによる鋼板15−1〜15−nの払出機能は、上述した実施の形態1における払出部2−1〜2−nと同様である。
送りロール34−1〜34−nは、搬送経路の上流側から下流側に向けて複数の鋼板15を各々送出する設備である。具体的には、図7に示すように、送りロール34−1〜34−nは、縁部位置検出部5−1〜5−nの前段に各々設置される。送りロール34−1〜34−nは、さらに前段の送りロール3−1〜3−nから送出された鋼板15−1〜15−nを、各々、縁部位置検出部5−1〜5−nに向けて搬送経路別に順次送出する。
制御部38は、上述した払出部32−1〜32−nの縁部位置修正動作を制御する。本実施の形態3において、制御部38は、上述した実施の形態1における制御部8の制御対象(縁部位置修正部4−1〜4−n)を払出部32−1〜32−nに置き換えたものである。すなわち、制御部38は、縁部位置検出部5−1〜5−nから取得した複数の縁部位置の各々と上述した基準縁部位置との各ズレ量を低減する(望ましくは零値にする)ように、払出部32−1〜32−nによる鋼板15−1〜15−nの縁部位置の修正を制御する。
つぎに、本実施の形態3における積層鉄心材料の縁部位置の修正について具体的に説明する。図8は、本発明の実施の形態3の払出部による積層鉄心材料の縁部位置の修正を説明する図である。以下では、払出部32−1〜32−nを代表して払出部32−1を例示し、図8を参照しつつ、払出部32−1による積層鉄心材料の縁部位置の修正を説明する。なお、払出部32−1〜32−nのうち払出部32−1を除く残り(例えば払出部32−n)による積層鉄心材料の縁部位置の修正機能は、修正対象が異なること以外、払出部32−1と同じである。
図8に示す払出部32−1は、コイル状の鋼板15−1を受け入れ、この受け入れた鋼板15−1をその搬送経路内に払い出すペイオフリールを有する。払出部32−1は、このペイオフリールの回転作用によって、鋼板15−1をその長手方向D2(送出方向)に順次払い出すとともに、この鋼板15−1における幅方向D1の縁部16a,16bの位置すなわち縁部位置Pa,Pbを修正する。
詳細には、図8に示すように、払出部32−1は、鋼板15−1の幅方向D1に沿って自身のペイオフリールを移動させ、これにより、鋼板15−1の縁部位置Pa,Pbを基準縁部位置SPa,SPbへ修正する。この際、払出部32−1のペイオフリールの移動方向および移動量は、図7に示した制御部38によって制御される。払出部32−1は、このようなペイオフリールの幅方向D1に沿った移動により、鋼板15−1の払出位置を、縁部位置ズレ量ΔWa分、幅方向D1に変位させる。
ここで、縁部位置ズレ量ΔWaは、上述した実施の形態1の場合と同様に、鋼板15−1〜15−nの縁部位置の各々と鋼板15−1〜15−nに共通の基準縁部位置との各ズレ量(例えば図8に示す鋼板15−1の縁部位置Paと基準縁部位置SPaとのズレ量)である。払出部32−1は、このような縁部位置ズレ量ΔWa分の鋼板15−1の幅方向D1に対する変位により、鋼板15−1における一方の縁部位置Paを一方の基準縁部位置SPaへ修正する。この結果、鋼板15−1における他方の縁部位置Pbは、他方の基準縁部位置SPbへ修正され、且つ、鋼板15−1の幅方向D1の中央位置は、基準中央位置CPへ修正される。
一方、本実施の形態3にかかる積層鉄心製造方法は、図7に示す積層鉄心製造装置31を用いて行われるものである。すなわち、本実施の形態3にかかる積層鉄心製造方法において、図5に示したステップS102では、制御部38は、縁部位置検出部5−1〜5−nから取得した複数の縁部位置の各々と上述した基準縁部位置との各縁部位置ズレ量ΔWaを低減する(望ましくは零値にする)ように、払出部32−1〜32−nの各々に対し、縁部位置の修正動作を指示し制御する。払出部32−1〜32−nは、このような制御部38の制御に基づき、自身のペイオフリールを、縁部位置ズレ量ΔWa分、幅方向D1に移動させ、これにより、鋼板15−1〜15−nの縁部位置を共通の基準縁部位置へ修正して、これら鋼板15−1〜15−nの各縁部位置ズレ量ΔWaを低減(望ましくは零値に)する。このような鋼板15−1〜15−nの縁部位置の修正動作および制御以外、本実施の形態3にかかる積層鉄心製造方法は、上述した実施の形態1と同じである。
以上、説明したように、本発明の実施の形態3では、複数の積層鉄心材料の縁部位置の修正を複数の縁部位置検出部の直前位置において行う代わりに、入側端に位置する複数の払出部によって複数の積層鉄心材料の縁部位置を各々修正するようにし、その他を実施の形態1と同様に構成している。このため、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏するとともに、複数の積層鉄心材料を払い出してから重ね合わせるまでの各積層鉄心材料の搬送経路を簡易に構成することができる。
(実施の形態4)
つぎに、本発明の実施の形態4について説明する。上述した実施の形態では、縁部位置修正部4−1〜4−nの各回転ロール体の傾動によって鋼板15−1〜15−nの縁部位置を各々修正していたが、実施の形態4では、鋼板15−1〜15nの各縁部を幅方向から押すことによって鋼板15−1〜15−nの縁部位置を各々修正している。
図9は、本発明の実施の形態4にかかる積層鉄心製造装置の一構成例を示す図である。図9に示すように、本実施の形態4にかかる積層鉄心製造装置41は、実施の形態1にかかる積層鉄心製造装置1の複数の縁部位置修正部4−1〜4−nに代えて複数の縁部位置修正部44−1〜44−nを備え、制御部8に代えて制御部48を備える。また、積層鉄心製造装置41は、複数の縁部位置修正部4−1〜4−nの前段に複数の送りロール43−1〜43−nをさらに備える。その他の構成は実施の形態1と同じであり、同一構成部分には同一符号を付している。
送りロール43−1〜43−nは、搬送経路の上流側から下流側に向けて複数の鋼板15を各々送出する設備である。具体的には、図9に示すように、送りロール43−1〜43−nは、縁部位置修正部44−1〜44−nの前段に各々設置される。送りロール43−1〜43−nは、さらに前段の送りロール3−1〜3−nから送出された鋼板15−1〜15−nを、各々、縁部位置修正部44−1〜44−nに向けて搬送経路別に順次送出する。
縁部位置修正部44−1〜44−nは、上述した実施の形態1とは異なる手法により、複数の積層鉄心材料の各積層鉄心材料における幅方向の縁部位置を各々修正する。具体的には、縁部位置修正部44−1〜44−nは、搬送経路に沿って順次搬送される積層鉄心材料の幅方向の縁部を共通の基準縁部位置へ案内するガイド機構を各々備え、図9に示すように、縁部位置検出部5−1〜5−nの直前に各々設置される。例えば、縁部位置修正部44−1は、鋼板15−1の搬送経路において、送りロール43−1の後段であり且つ縁部位置検出部5−1の直前の位置に設置される。縁部位置修正部44−nは、鋼板15−nの搬送経路において、送りロール43−nの後段であり且つ縁部位置検出部5−nの直前の位置に設置される。縁部位置修正部44−1〜44−nは、制御部48の制御に基づき、自身のガイド機構によって鋼板15−1〜15−nの縁部を幅方向に各々押し、これにより、鋼板15−1〜15−nの縁部位置を必要に応じ各々修正する。
制御部48は、上述した縁部位置修正部44−1〜44−nの縁部位置修正動作を制御する。本実施の形態4において、制御部48は、上述した実施の形態1における制御部8の制御対象(縁部位置修正部4−1〜4−n)を縁部位置修正部44−1〜44−nに置き換えたものである。すなわち、制御部48は、縁部位置検出部5−1〜5−nから取得した複数の縁部位置の各々と上述した基準縁部位置との各ズレ量を低減する(望ましくは零値にする)ように、縁部位置修正部44−1〜44−nによる鋼板15−1〜15−nの縁部位置の修正を制御する。
つぎに、本実施の形態4における積層鉄心材料の縁部位置の修正について具体的に説明する。図10は、本発明の実施の形態4の縁部位置修正部による積層鉄心材料の縁部位置の修正を説明する図である。以下では、縁部位置修正部44−1〜44−nを代表して縁部位置修正部44−1を例示し、図10を参照しつつ、縁部位置修正部44−1による積層鉄心材料の縁部位置の修正を説明する。なお、縁部位置修正部44−1〜44−nのうち縁部位置修正部44−1を除く残り(例えば縁部位置修正部44−n)による積層鉄心材料の縁部位置の修正機能およびガイド機構の構成は、修正対象が異なること以外、縁部位置修正部44−1と同じである。
図10に示すように、縁部位置修正部44−1は、鋼板15−1の幅方向D1に対向する一対のガイド部45a,45bと、これらのガイド部45a,45bを幅方向D1に沿って各々移動させる駆動部46a,46bとを備える。縁部位置修正部44−1において、ガイド機構は、順次搬送される鋼板15−1の幅方向D1の縁部16a,16bを共通の基準縁部位置SPa,SPbへ各々案内するものであり、ガイド部45a,45bと駆動部46a,46bとによって構成される。縁部位置修正部44−1は、このようなガイド機構の作用によって、鋼板15−1の搬送を妨げることなく、この鋼板15−1における幅方向D1の縁部16a,16bの位置すなわち縁部位置Pa,Pbを修正する。
詳細には、図10に示すように、縁部位置修正部44−1は、駆動部46a,46bの各動力によってガイド部45a,45bを幅方向D1に各々移動させ、これにより、鋼板15−1の縁部位置Pa,Pbを基準縁部位置SPa,SPbへ各々修正する。この際、ガイド部45a,45bの移動方向および移動量は、図9に示した制御部48による駆動部46a,46bの制御を通じて制御される。縁部位置修正部44−1は、このように幅方向D1に沿って移動するガイド部45a,45bの少なくとも一方によって鋼板15−1を幅方向D1から押し、これにより、鋼板15−1を、縁部位置ズレ量ΔWa分、幅方向D1に変位させる。
ここで、縁部位置ズレ量ΔWaは、上述した実施の形態1の場合と同様に、鋼板15−1〜15−nの縁部位置の各々と鋼板15−1〜15−nに共通の基準縁部位置との各ズレ量(例えば図10に示す鋼板15−1の縁部位置Paと基準縁部位置SPaとのズレ量)である。縁部位置修正部44−1は、このような縁部位置ズレ量ΔWa分の鋼板15−1の幅方向D1に対する変位により、鋼板15−1における一方の縁部位置Paを一方の基準縁部位置SPaへ修正する。この結果、鋼板15−1における他方の縁部位置Pbは、他方の基準縁部位置SPbへ修正され、且つ、鋼板15−1の幅方向D1の中央位置は、基準中央位置CPへ修正される。
一方、本実施の形態4にかかる積層鉄心製造方法は、図9に示す積層鉄心製造装置41を用いて行われるものである。すなわち、本実施の形態4にかかる積層鉄心製造方法において、図5に示したステップS102では、制御部48は、縁部位置検出部5−1〜5−nから取得した複数の縁部位置の各々と上述した基準縁部位置との各縁部位置ズレ量ΔWaを低減する(望ましくは零値にする)ように、縁部位置修正部44−1〜44−nの各々に対し、縁部位置の修正動作を指示し制御する。縁部位置修正部44−1〜44−nは、このような制御部48の制御に基づき、自身のガイド機構を、縁部位置ズレ量ΔWa分、幅方向D1に動作させ、これにより、鋼板15−1〜15−nの縁部位置を共通の基準縁部位置へ修正して、これら鋼板15−1〜15−nの各縁部位置ズレ量ΔWaを低減(望ましくは零値に)する。このような鋼板15−1〜15−nの縁部位置の修正動作および制御以外、本実施の形態4にかかる積層鉄心製造方法は、上述した実施の形態1と同じである。
以上、説明したように、本発明の実施の形態4では、回転ロール体の傾動によって積層鉄心材料の縁部位置を修正する代わりに、積層鉄心材料の縁部を幅方向からガイド機構によって押すことにより、複数の積層鉄心材料の縁部位置を各々修正するようにし、その他を実施の形態1と同様に構成している。このため、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏するとともに、各積層鉄心材料の縁部位置を簡易に修正することができる。
(実施例1)
つぎに、本発明の実施例1について説明する。実施例1は、複数の積層鉄心材料の縁部位置を検出するに適した位置を検討するものである。実施例1では、本発明の実施の形態1にかかる積層鉄心製造装置1(図1参照)を用い、複数の積層鉄心材料を重ね合わせて同時に打抜く打抜き試験が、本発明例1として行われる。
本発明例1の条件として、重ね合わせる積層鉄心材料の数は、2枚とした。すなわち、積層鉄心製造装置1の払出部2−1,2−2には、積層鉄心材料としての鋼板15−1,15−2が各々供される。これらの鋼板15−1,15−2は、双方とも、コイル状に巻かれた厚さ0.20[mm]の無方向性電磁鋼板とした。
本発明例1において、積層鉄心製造装置1は、払出部2−1から払い出した鋼板15−1と払出部2−2から払い出した鋼板15−2とをピンチロール6によって厚さ方向に重ね合わせながら、これら鋼板15−1,15−2の重ね合わせ体18をプレス機7内に順次供給した。この際、積層鉄心製造装置1は、ピンチロール6の直前の縁部位置検出部5−1,5−2によって鋼板15−1,15−2の縁部位置を各々検出し、縁部位置検出部5−1,5−2の直前の縁部位置修正部4−1,4−2によって鋼板15−1,15−2の縁部位置を各々修正した。また、プレス機7は、上金型7aと下金型7bとの間に順次供給される重ね合わせ体18から、鉄心形状の打抜き体を、100[spm(ストローク/分)]のペースで200ストローク分、連続して打抜いた。実施例1において、本発明例1の積層鉄心製造装置1による打抜き試験は、プレス機7の上金型7aと下金型7bとの間に挿入された重ね合わせ体18の縁部位置、すなわち、重ね合わせた2枚の鋼板15−1,15−2の各縁部位置が揃った際に開始した。
一方、実施例1では、上述した本発明例1と比較する比較例1,2として、縁部位置の検出および修正の各条件を変更した比較用の積層鉄心製造装置が準備された。図11は、比較例1の積層鉄心製造装置の一構成例を示す図である。比較例1の積層鉄心製造装置は、図11に示す積層鉄心製造装置101に例示されるように、本発明例1の積層鉄心製造装置1における縁部位置検出部5−1,5−2を、ピンチロール6の直前から払出部2−1,2−2の直後に各々設置替えした構成のものである。その他について、比較例1の積層鉄心製造装置は、本発明例1の積層鉄心製造装置1と同様に構成される。また、比較例2の積層鉄心製造装置は、特に図示しないが、本発明例1の積層鉄心製造装置1から縁部位置修正部4−1,4−2および縁部位置検出部5−1,5−2を取り外した構成のものである。その他について、比較例2の積層鉄心製造装置は、本発明例1の積層鉄心製造装置1と同様に構成される。
このような比較例1,2の各々において、上述した比較用の積層鉄心製造装置は、本発明例1と同様の打抜き条件で、鋼板15−1,15−2の重ね合わせ体18から、鉄心形状の打抜き体を、200ストローク分、連続して打抜いた。比較例1,2においても、比較用の積層鉄心製造装置による打抜き試験は、本発明例1と同様に、プレス機7の上金型7aと下金型7bとの間で重ね合わせ体18(重ね合わせた2枚の鋼板15−1,15−2)の各縁部位置が揃った際に開始した。
実施例1では、本発明例1および比較例1,2の各打抜き試験後に、プレス機7の上金型7aまたは下金型7bに残った重ね合わせ体18、すなわち、打抜き加工後の重ね合わせ体18について、重なり合う鋼板15−1,15−2の各縁部位置を計測した。これにより、上記鋼板15−1,15−2間での縁部位置のズレ量(以下、縁部位置ズレ量ΔWbという)が得られた。このようにして得られた縁部位置ズレ量ΔWbに基づき、積層鉄心材料の縁部位置の検出位置が打抜き加工時の積層鉄心材料の幅方向ズレに及ぼす影響を評価した。
図12は、本発明例1および比較例1,2の各打抜き試験後における積層鉄心材料の縁部位置ズレ量の評価結果を示す図である。図12に示すように、本発明例1では、打抜き試験後の重ね合わせ体18における鋼板15−1と鋼板15−2との縁部位置ズレ量ΔWbは、0.10[mm]という極めて小さい値となった。このことから、本発明例1の積層鉄心製造装置1による積層鉄心材料の打抜き加工では、積層鉄心材料の重ね合わせ体18をなす鋼板15−1,15−2の縁部位置は殆どズレていないことが分かる。
上述の本発明例1に対し、比較例1,2では、図12に示すように、同様の打抜き試験後の縁部位置ズレ量ΔWbは、1.75[mm]または1.81[mm]という、本発明例1に比して極めて大きい値となった。このことから、比較例1,2における比較用の積層鉄心製造装置による積層鉄心材料の打抜き加工では、積層鉄心材料の重ね合わせ体18をなす鋼板15−1,15−2の縁部位置に大きなズレが生じることが分かる。
これら本発明例1と比較例1,2との比較結果から、縁部位置修正部4−1,4−2の縁部位置修正機能に必要な鋼板15−1,15−2の縁部位置を、ピンチロール6の直前に設置された縁部位置検出部5−1,5−2によって各々検出する本発明例1の積層鉄心製造装置1の方が、ピンチロール6の直前の位置で鋼板15−1,15−2の縁部位置を検出していない比較例1,2の積層鉄心製造装置に比して、打抜き加工時の鋼板15−1,15−2の縁部位置ズレ量ΔWbを一層低減できることが分かる。このことから、複数の積層鉄心材料を重ね合わせて打抜く際に、これら複数の積層鉄心材料の各々における縁部の位置ズレ(すなわち幅方向ズレ)を可能な限り低減し、望ましくは幅方向ズレを無くすためには、複数の積層鉄心材料を重ね合わせる直前の位置において、これら複数の積層鉄心材料の縁部位置を各々検出し、得られた検出結果に応じて、これら複数の積層鉄心材料の縁部位置を修正することが必要ということが明らかである。すなわち、複数の積層鉄心材料を重ね合わせる直前の位置は、これら複数の積層鉄心材料の幅方向ズレ(特に打抜き加工時の積層鉄心材料の幅方向ズレ)を低減するという観点から、複数の積層鉄心材料の縁部位置を検出するに好適な位置であることが確認された。
また、実施例1では、本発明例1および比較例1,2の各々について、上述した条件での打抜き試験を6000ストロークまで継続して行い、6000ストローク目の打抜き試験後における鋼板15−1,15−2の各縁部位置を計測して、これら鋼板15−1,15−2間での縁部位置ズレ量ΔWbを得た。図13は、積層鉄心材料の重ね合わせ体に対する打抜き加工のストローク数と打抜き加工後の各積層鉄心材料の縁部位置ズレ量との相関を示す図である。なお、図13には、後述する実施例2における本発明例2の結果も併せて示されている。
図13を参照して分かるように、本発明例1における打抜き試験後の鋼板15−1,15−2の縁部位置ズレ量ΔWbは、打抜き加工のストローク数が200ストロークから6000ストロークに増加しても、全く変わらなかった。これに対し、比較例1,2における打抜き試験後の鋼板15−1,15−2の縁部位置ズレ量ΔWbは、打抜き加工のストローク数の増加に伴い、打抜き加工のストローク数が200ストロークから6000ストロークに増加するに伴い、大きく増加した。このことから、本発明例1に例示されるように、複数の積層鉄心材料を重ね合わせる直前の位置において、これら複数の積層鉄心材料の縁部位置を各々検出し、得られた検出結果に応じて、これら複数の積層鉄心材料の縁部位置を修正すれば、打抜き加工のストローク数の増加によらず、打抜き加工時における積層鉄心材料の重ね合わせ体18(重ね合わせた複数の積層鉄心材料)の幅方向ズレを安定して低減できることが分かった。
(実施例2)
つぎに、本発明の実施例2について説明する。実施例2は、複数の積層鉄心材料の縁部位置を各々修正する縁部位置修正部4−1〜4−nの設置位置について検討するものである。実施例2では、本発明の実施の形態2にかかる積層鉄心製造装置21(図6参照)を用い、複数の積層鉄心材料を重ね合わせて同時に打抜く打抜き試験が、本発明例2として行われる。
本発明例2における積層鉄心材料および打抜き試験の各条件は、上述した本発明例1と同じにした。すなわち、本発明例2において、積層鉄心製造装置21は、払出部2−1,2−2に本発明例1と同様の鋼板15−1,15−2が供され、これらの鋼板15−1,15−2をピンチロール6によって重ね合わせてなる重ね合わせ体18から、鉄心形状の打抜き体を、100[spm]のペースで6000ストロークまで連続して打抜いた。特に、本発明例2の積層鉄心製造装置21では、縁部位置修正部4−1,4−2と縁部位置検出部5−1,5−2との各間に送りロール24−1,24−2が各々設置されている。すなわち、この積層鉄心製造装置21において、縁部位置修正部4−1,4−2から送出された鋼板15−1,15−2は、各々、送りロール24−1,24−2によって縁部位置検出部5−1,5−2へ送出される。
実施例2では、本発明例2について、上述した本発明例1と同様の手法により、200ストローク目および6000ストローク目の各打抜き試験後の重なり合う鋼板15−1,15−2間での縁部位置ズレ量ΔWbを得た。この結果は、上述した図13に示した。
図13を参照して分かるように、本発明例2における打抜き試験後の鋼板15−1,15−2の縁部位置ズレ量ΔWbは、打抜き加工のストローク数が200ストロークから6000ストロークのいずれの場合においても、上述した本発明例1とほぼ同様であった。このことから、複数の積層鉄心材料の縁部位置を各々修正する縁部位置修正部4−1〜4−nと、これら複数の積層鉄心材料の縁部位置を各々検出する縁部位置検出部5−1〜5−nとの各間に、送りロール24−1〜24−n等、搬送中の積層鉄心材料の縁部位置を大きく変えない設備が設置されても、打抜き加工時の重なり合う複数の積層鉄心材料の幅方向ズレを低減できることが分かった。すなわち、縁部位置修正部4−1〜4−nが、各々、縁部位置検出部5−1〜5−nの直前ではなく、送りロール24−1〜24−nの前段に設置されていても、打抜き加工時の重なり合う複数の積層鉄心材料の幅方向ズレは、十分に低減可能である。
(実施例3)
つぎに、本発明の実施例3について説明する。実施例3は、複数の積層鉄心材料の縁部位置を各々修正する方法について検討するものである。実施例3では、本発明の実施の形態3にかかる積層鉄心製造装置31(図7参照)を用い、複数の積層鉄心材料を重ね合わせて同時に打抜く打抜き試験が、本発明例3として行われる。また、本発明の実施の形態4にかかる積層鉄心製造装置41(図9参照)を用い、複数の積層鉄心材料を重ね合わせて同時に打抜く打抜き試験が、本発明例4として行われる。
本発明例3,4における積層鉄心材料および打抜き試験の各条件は、上述した本発明例1と同じにした。すなわち、本発明例3において、積層鉄心製造装置31は、払出部32−1,32−2に本発明例1と同様の鋼板15−1,15−2が供され、これらの鋼板15−1,15−2をピンチロール6によって重ね合わせてなる重ね合わせ体18から、鉄心形状の打抜き体を、100[spm]のペースで200ストロークまで連続して打抜いた。また、本発明例4において、積層鉄心製造装置41は、払出部2−1,2−2に本発明例1と同様の鋼板15−1,15−2が供され、本発明例3と同様に、これらの鋼板15−1,15−2の重ね合わせ体18から、鉄心形状の打抜き体を、100[spm]のペースで200ストロークまで連続して打抜いた。
特に、本発明例3の積層鉄心製造装置31では、払出部32−1,32−2(具体的にはペイオフリール)の幅方向の移動により、鋼板15−1,15−2の縁部位置が各々修正される(図8参照)。本発明例4の積層鉄心製造装置41では、縁部位置修正部44−1,44−2のガイド機構の作用により、鋼板15−1,15−2の縁部位置が各々修正される(図10参照)。一方、上述した本発明例1の積層鉄心製造装置1では、縁部位置修正部4−1,4−2(具体的には回転ロール体)の傾動により、鋼板15−1,15−2の縁部位置が各々修正される(図2,3参照)。
実施例3では、本発明例3,4の各々について、上述した本発明例1と同様の手法により、200ストローク目の打抜き試験後の重なり合う鋼板15−1,15−2間での縁部位置ズレ量ΔWbを得た。このようにして得られた本発明例3,4の各縁部位置ズレ量ΔWbと上述した本発明例1の縁部位置ズレ量ΔWbとに基づき、積層鉄心材料の縁部位置の修正方法別に、打抜き加工時の積層鉄心材料の幅方向ズレを評価した。
図14は、積層鉄心材料の縁部位置の修正方法が互いに異なる本発明例1,3,4の各打抜き試験後における積層鉄心材料の縁部位置ズレ量の評価結果を示す図である。図14に示すように、本発明例3,4では、打抜き試験後の鋼板15−1,15−2の縁部位置ズレ量ΔWbは、各々、0.18[mm]、0.22[mm]という極めて小さい値となった。このような本発明例3,4の各縁部位置ズレ量ΔWbは、本発明例1の縁部位置ズレ量ΔWb(=0.10[mm])とほぼ同程度であるが、詳細に比較すれば、本発明例1に比して若干大きい値であった。
上述した本発明例3,4と本発明例1との比較結果から、以下のことが分かる。すなわち、積層鉄心材料の縁部位置の修正方法が、積層鉄心材料を払い出すペイオフリールの幅方向の移動によるもの(本発明例3)、積層鉄心材料の縁部を幅方向から押すガイド機構の作用によるもの(本発明例4)、積層鉄心材料を送出する回転ロール体(送りロール等)の傾動によるもの(本発明例1)のいずれであっても、打抜き加工時の重なり合う複数の積層鉄心材料の幅方向ズレは、十分に低減可能である。ただし、これら複数の積層鉄心材料の幅方向ズレを低減する効果を高めるという観点から、積層鉄心材料の縁部位置の修正方法は、本発明例1のような回転ロール体の傾動によるものであることが望ましい。
また、本発明例1における積層鉄心材料の縁部位置の修正方法は、上述したように、積層鉄心材料の送出方向を回転中心にして縁部位置修正部4−1〜4−nの回転ロール体を傾動させるものである。このため、縁部位置修正部4−1〜4−nは、縁部位置検出部5−1〜5−nの直前に各々容易に設置可能である。これにより、縁部位置修正後の積層鉄心材料の搬送経路を必要最小限にして、積層鉄心材料の搬送起因の幅方向ズレを抑制することができる。これに加え、本発明例1における積層鉄心材料の縁部位置の修正方法は、積層鉄心材料に歪等の負荷を与えることなく、積層鉄心材料の縁部位置を修正することができる。これらのことからも、積層鉄心材料の縁部位置の修正方法は、本発明例1のような回転ロール体の傾動によるものであることが望ましい。以上のことは、本発明例1と同様の縁部位置修正機能を有する本発明例2についても同様である。
(実施例4)
つぎに、本発明の実施例4について説明する。実施例4は、複数の積層鉄心材料の縁部位置を各々検出する方法について検討するものである。実施例4では、本発明の実施の形態1にかかる積層鉄心製造装置1(図1参照)を用い、積層鉄心材料の縁部位置の検出方法を変更して、縁部位置の検出方法別に積層鉄心材料の打抜き試験を行う。すなわち、積層鉄心製造装置1を用い、光学式によって複数の積層鉄心材料の縁部位置を各々検出し、その後、これら複数の積層鉄心材料を重ね合わせて同時に打抜く打抜き試験が、本発明例5として行われる。また、本発明例5における積層鉄心材料の縁部位置の検出方法を、レーザ式の検出方法に変更した打抜き試験が本発明例6として行われ、超音波式の検出方法に変更した打抜き試験が本発明例7として行われる。
本発明例5〜7における積層鉄心材料および打抜き試験の各条件は、上述した本発明例1と同じにした。すなわち、本発明例5〜7の各々において、上述した本発明例1と同様の鋼板15−1,15−2を重ね合わせてなる重ね合わせ体18から、鉄心形状の打抜き体を、100[spm]のペースで6000ストロークまで連続して打抜いた。
また、本発明例5の積層鉄心製造装置1において、縁部位置検出部5−1,5−2は、光の投受光による光学式の検出方法を用いて鋼板15−1,15−2の縁部位置を各々検出した。本発明例6の積層鉄心製造装置1において、縁部位置検出部5−1,5−2は、レーザ光の投受光によるレーザ式の検出方法を用いて鋼板15−1,15−2の縁部位置を各々検出した。本発明例7の積層鉄心製造装置1において、縁部位置検出部5−1,5−2は、超音波の送受信による超音波式の検出方法を用いて鋼板15−1,15−2の縁部位置を各々検出した。
実施例4では、本発明例5〜7の各々について、上述した本発明例1と同様の手法により、200ストローク目、1000ストローク目、および6000ストローク目の各打抜き試験後の重なり合う鋼板15−1,15−2間での縁部位置ズレ量ΔWbを得た。このようにして得られた本発明例5〜7の各縁部位置ズレ量ΔWbを評価指標として、積層鉄心材料の縁部位置の検出方法別に、打抜き加工時の積層鉄心材料の幅方向ズレを評価した。この評価結果は、表1に示される。
表1に示すように、打抜き試験後の鋼板15−1,15−2の縁部位置ズレ量ΔWbは、積層鉄心材料の縁部位置の検出方法が光学式(本発明例5)、レーザ式(本発明例6)、および超音波式(本発明例7)のいずれであっても、打抜き加工のストローク数(200ストローク、1000ストローク、6000ストローク)によらず、極めて小さい値となった。また、本発明例5〜7の各縁部位置ズレ量ΔWbを比較した結果、光学式、レーザ式、超音波式という検出方式の違いによる縁部位置ズレ量ΔWbの差異は殆どなかった。このことから、積層鉄心材料の縁部位置の検出方式として、光学式、レーザ式、および超音波式のいずれを用いても、打抜き加工時の重なり合う複数の積層鉄心材料の幅方向ズレは十分に低減可能であることが分かった。
また、表1を参照して、本発明例5〜7の各縁部位置ズレ量ΔWbを詳細に比較すれば、レーザ式の検出方式を採用した本発明例6は、光学式の検出方式を採用した本発明例5や超音波式の検出方式を採用した本発明例7に比して、若干小さい値であった。このことから、積層鉄心材料の縁部位置の検出方式は、打抜き加工時の重なり合う複数の積層鉄心材料の幅方向ズレを可能な限り低減するという観点から、レーザ方式であることが望ましい。
(実施例5)
つぎに、本発明の実施例5について説明する。実施例5は、積層鉄心を製造すべく厚さ方向に重ね合わせる積層鉄心材料の枚数(重ね合わせ枚数)について検討するものである。実施例5では、本発明の実施の形態1にかかる積層鉄心製造装置1(図1参照)を用い、重ね合わせて同時に打抜く積層鉄心材料の重ね合わせ枚数を変更して、重ね合わせ枚数別に積層鉄心材料の打抜き試験を行う。
実施例5の条件として、積層鉄心材料の重ね合わせ枚数は、2枚、3枚、4枚、および5枚の4種類とした。積層鉄心材料である鋼板15−1〜15−n(整数nは重ね合わせ枚数と同値)は、上述した本発明例1と同様の無方向性電磁鋼板とした。また、実施例5において、積層鉄心製造装置1は、n枚の鋼板15−1〜15−nの各々について、縁部位置検出部5−1〜5−nによる縁部位置の検出と縁部位置修正部4−1〜4−nによる縁部位置の修正とを行い、その後、これらn枚の鋼板15−1〜15−nをピンチロール6によって重ね合わせてなる重ね合わせ体18から、プレス機7により、鉄心形状の打抜き体を連続して打抜いた。
実施例5では、上述した積層鉄心製造装置1により、2枚の鋼板15−1,15−2の重ね合わせ体18から打抜いた鉄心形状の打抜き体(以下、打抜き体サンプル#1という)と、3枚の鋼板15−1〜15−3の重ね合わせ体18から打抜いた鉄心形状の打抜き体(以下、打抜き体サンプル#2という)と、4枚の鋼板15−1〜15−4の重ね合わせ体18から打抜いた鉄心形状の打抜き体(以下、打抜き体サンプル#3という)と、5枚の鋼板15−1〜15−5の重ね合わせ体18から打抜いた鉄心形状の打抜き体(以下、打抜き体サンプル#4という)とが、複数枚ずつ製造された。
上述したように得られた複数枚ずつの打抜き体サンプル#1〜#4の各々について、10枚の打抜き体を計測サンプルとして抜き取り、これら10枚の計測サンプルにおける3箇所の外径寸法を計測し、計測した外径寸法のばらつき、すなわち、打抜き寸法ばらつきΔY[μm]を算出した。この打抜き寸法ばらつきΔYは、n枚の積層鉄心材料を重ね合わせて同時に打抜いた打抜き体の鉄心形状の良否を評価指標となる数値である。例えば、打抜き寸法ばらつきΔYが小さい程、打抜き体の鉄心形状は良好である。
図15は、積層鉄心材料の重ね合わせ枚数と打抜き寸法ばらつきとの相関を示す図である。図15に示すように、打抜き寸法ばらつきΔYは、積層鉄心材料の重ね合わせ枚数、すなわち、鋼板15−1〜15−nの重ね合わせ枚数(=n)が2枚、3枚、4枚、5枚と順次増加するに伴い、増加している。特に、打抜き寸法ばらつきΔYの増加変化は、積層鉄心材料の重ね合わせ枚数が2〜4枚である場合、比較的小さいが、積層鉄心材料の重ね合わせ枚数が5枚に増加した場合、比較的大きい。以上より、積層鉄心材料の重ね合わせ枚数は、積層鉄心の製造効率の向上という観点から、より多い枚数(例えば5枚以上)であることが望ましいが、打抜き体の鉄心形状を良好に保つという観点から、2枚以上、4枚以下の枚数とすることが望ましいことが分かる。
なお、上述した実施の形態1〜4では、鋼板15−1〜15−nの各々における幅方向両側の縁部位置を検出していたが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明において、縁部位置検出部5−1〜5−nは、鋼板15−1〜15−nの各々における幅方向片側の縁部位置を検出するものであってもよい。この場合、鋼板15−1〜15−nは、検出された片側の縁部位置が鋼板15−1〜15−nに共通の基準縁部位置へ修正されればよい。
また、上述した実施の形態2では、縁部位置修正部4−1〜4−nから縁部位置検出部5−1〜5−nへ鋼板15−1〜15−nを各々送出する送りロール24−1〜24−nを、積層鉄心材料の搬送経路毎に1つずつ設置していたが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明において、縁部位置修正部4−1〜4−nと縁部位置検出部5−1〜5−nとの各間には、積層鉄心材料の搬送経路毎に複数(2つ以上)の送りロールが設置されてもよい。
さらに、上述した実施の形態1〜4では、積層鉄心材料として電磁鋼板を例示したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明にかかる積層鉄心材料としての鋼板は、電磁鋼板に限らず、電磁鋼板以外の鋼板であってもよいし、鋼板以外の鉄合金板であってもよい。
また、上述した実施の形態および実施例により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。本発明において製造される積層鉄心の形状や用途も特に問われない。その他、上述した実施の形態および実施例に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明に含まれる。