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JP2016126875A - 電極材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】電子伝導性向上が損なわれることなく、電解液との濡れ性に優れ、イオン伝導性に優れる電極材料及び、炭素質被膜が電極活物質粒子に均一に被覆した前記電極材料の製造方法を提供する。【解決手段】電極活物質粒子と、前記電極活物質粒子表面を被覆し、金属酸化物を含む炭素質被覆層とを有し、かつ、前記炭素質被覆層における金属酸化物の含有率が、5質量%以上70質量%以下である電極材料。Al、Zr、Si及びTiからなる群より選択されるいずれか1つ以上の金属原子を含む金属塩又は金属アルコキシドと、炭素の前駆体である有機化合物とを、前記金属塩又は金属アルコキシドの全配合量が、前記金属塩又は金属アルコキシドが全て金属酸化物に変化したときに前記炭素質被覆層に含まれる金属酸化物の量で、5質量%以上70質量%以下となる量で混合し、非酸化性雰囲気下で加熱する電極材料の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、電極材料及びその製造方法に関する。
近年、小型化、軽量化、高容量化が期待される電池として、リチウムイオン電池等の非水電解液系の二次電池が提案され、実用に供されている。リチウムイオン電池は、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な性質を有する正極及び負極と、非水系の電解質と、により構成されている。
リチウムイオン電池の負極材料としては、負極活物質として、一般に炭素系材料またはチタン酸リチウム(LiTi12)等の、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な性質を有するLi含有金属酸化物が用いられている。
一方、リチウムイオン電池の正極材料としては、正極活物質として、鉄リン酸リチウム(LiFePO)等の、リチウムイオンを可逆的に脱挿入可能な性質を有するLi含有金属酸化物や、バインダー等を含む電極材料合剤が用いられている。そして、この電極材料合剤を集電体と称される金属箔の表面に塗布することにより、リチウムイオン電池の正極が形成されている。
このようなリチウムイオン電池は、従来の鉛電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池等の二次電池と比べて、軽量かつ小型であるとともに、高エネルギーを有している。そのため、リチウムイオン電池は、携帯用電話機、ノート型パーソナルコンピューター等の携帯用電子機器に用いられる小型電源のみならず、定置式の非常用大型電源としても用いられている。
また、近年、リチウムイオン電池は、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車、電動工具等の高出力電源としても検討されている。これらの高出力電源として用いられる電池には、高速の充放電特性が求められている。
電極活物質の中でオキソ酸塩リチウム系化合物(特にリン酸鉄リチウム)は、安全性に優れ、かつ資源的及びコスト的にも問題がない点で注目されている。しかし、オキソ酸塩リチウム系化合物は、その結晶構造(オリビン型結晶構造)の影響で電子伝導性が低いという問題がある。
そこで、オキソ酸塩リチウム系化合物を電極活物質として用いた電極材料の電子伝導性を高めるために、特許文献1の手段が提案されている。特許文献1では、リン酸鉄リチウムからなる電極活物質の粒子表面を炭素源である有機化合物で覆い、その後、有機化合物を炭化することにより、電極活物質の表面に炭素質被膜を形成し、この炭素質被膜中の炭素を電子伝導性物質として作用させている。
また、特許文献2には、電子伝導性に加えて、リチウムイオン伝導性をも改善するために、電極材料を、電極活物質粒子の表面にイオン伝導性物質を含有する炭素質被膜が形成される構成とすることが開示されている。
更に、特許文献3には、正極活物質の微結晶の成長を制限するために、正極活物質の少なくとも一種の前駆体と、特定の追加の化合物(酸化物Al、TiO、ZrO、Fe等を含む)とを熱処理することが開示されている。
特許文献4では、リチウムイオン二次電池を高容量にするために、リチウムイオン電池用の正極活物質を、リチウムリン酸鉄を少なくとも1つの金属酸化物と一緒に焼結して形成された焼結産物を含む構成としている。
特開2001−15111号公報 特開2014−216241号公報 特表2008−507832号公報 特表2010−529593号公報
特許文献4に示されているように、リチウムリン酸鉄と金属酸化物を焼結し、混晶を形成することで電気導電性を向上しており、更に、炭素質被膜の形成により電気伝導性を向上させている。
しかし、炭素質被膜はリチウムイオンが酸化還元反応する際の障壁になるとともに、リチウムイオンの拡散障壁にもなる。したがって、炭素質被膜の被覆率が高い程、また、炭素質被膜の膜厚が厚い程、リチウムイオンの伝導性が損なわれる。このため、電子伝導性向上とリチウムイオン伝導性向上とがトレードオフの関係となる。特許文献2のように炭素質被膜にイオン伝導性物質を含有させることで、一定のイオン伝導性を維持し得るが、より一層の高イオン伝導性が求められている。
なお、特許文献3のように、正極活物質の合成時に、活物質の前駆体へ金属化合物と炭素とを含有させ、反応させると正極活物質表面に、均一な炭素質被膜が形成されなかった。更に特許文献3では電子伝導性及びイオン伝導性について言及されておらず、特許文献4においてもイオン伝導性を向上する手段が示されていない。
本発明は、電子伝導性向上が損なわれることなく、電解液との濡れ性に優れ、イオン伝導性に優れる電極材料及び、炭素質被膜が電極活物質粒子に均一に被覆した前記電極材料の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、炭素の前駆体である有機化合物と金属酸化物の前駆体である金属塩又は金属アルコキシドを混合し、加熱して金属酸化物を含む炭素質被覆層を生成せしめることで、金属酸化物により電極材料の電解液の濡れ性を向上させ、電解液との接触面積を大きくすることができるとともに、有機化合物を炭化させる加熱により、電極活物質材料の焼結及び粒成長を抑制することができる電極材料を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の電極材料及びその製造方法を提供する。
<1> 電極活物質粒子と、前記電極活物質粒子表面を被覆し、金属酸化物を含む炭素質被覆層とを有し、かつ、前記炭素質被覆層における金属酸化物の含有率が、5質量%以上70質量%以下である電極材料。
<2> 電極活物質粒子と、
Al、Zr、Si及びTiからなる群より選択されるいずれか1つ以上の金属原子を含む金属塩又は金属アルコキシドと、
炭素の前駆体である有機化合物と、
を、前記金属塩又は金属アルコキシドの全配合量が、前記金属塩又は金属アルコキシドが全て金属酸化物に変化したときに前記炭素質被覆層に含まれる金属酸化物の量で、5質量%以上70質量%以下となる量で混合し、非酸化性雰囲気下で加熱する電極材料の製造方法。
以下、「Al、Zr、Si及びTiからなる群より選択されるいずれか1つ以上の金属原子を含む金属塩又は金属アルコキシド」を金属酸化物前駆体と称する場合がある。
本発明によれば、電子伝導性向上が損なわれることなく、電解液との濡れ性に優れ、イオン伝導性に優れる電極材料及び、炭素質被膜が電極活物質粒子に均一に被覆した前記電極材料の製造方法を提供することができる。
実施例3及び比較例1で得られたリチウムイオン電池の放電曲線である。
<電極材料>
本発明の電極材料は、電極活物質粒子と、前記電極活物質粒子表面を被覆し、金属酸化物を含む炭素質被覆層とを有し、かつ、前記炭素質被覆層における金属酸化物の含有率が、5質量%以上70質量%以下である。
電極材料は、上記構成であることで、電子伝導性向上が損なわれることなく、電解液との濡れ性に優れ、イオン伝導性に優れる。
かかる理由は定かではないが、次の理由によると推察される。
炭素質被覆層を有する電極活物質粒子は、製造過程において、炭素被覆層同士が融着し凝集し易く、凝集体が解れたときに、炭素質被膜が被覆していない面が露出することがある。そのため、電極活物質粒子表面に、リチウムイオンが伝導し易い面と、伝導しにくい面とが共存すると共に、電子伝導の不足する面が生成易い。また、炭素質被覆は電解液との濡れ性が十分でなく、特に高密度電極では、電解液との濡れを十分確保できないために、電極材料の反応面積が低下し易い。このため、電極材料の出力特性にムラが生じた。
それに対し、本発明の電極材料は、電極活物質粒子の表面に、上記の量で金属酸化物を含む炭素質被覆層を有する。本発明における被覆層は、被覆層内に連続相となる炭素の領域に、非連続相となる金属酸化物の領域が点在していると考えられ、金属酸化物の存在により、過度の凝集体の生成が抑制されるとともに、炭素質被覆電極活物質粒子間に電解液が入り易くなる。そのため、炭素質被覆電極活物質粒子と電解液と接触し易くなるため、炭素質被覆電極活物質粒子と電解液との反応面積も広がり、電解液に対する濡れ性に優れ、イオン伝導性が向上すると考えられる。
更に、連続相の炭素領域に金属酸化物の少なくとも一部が電極活物質粒子内に拡散されることで、炭素質被覆層が多孔質になり、イオン伝導性がより向上するものと考えられる。
このように、電解液に対する濡れ性に優れ、イオン伝導性に優れる本発明の電極材料を電極に用いることで、リチウムイオンが脱挿入し易く、かつ、電極材料が電解液との濡れ性に優れるためにリチウムイオンが脱挿入する面積が大きくなり易い。その結果、本発明の電極材料を電極に用い、かかる電極を正極として備えたリチウムイオン電池は、出力特性に優れる。
以下、電極材料を構成する各要素及び電極材料の形態について詳細に説明する。
〔電極活物質粒子〕
本発明の電極材料は、電極活物質粒子を有する。
電極活物質粒子を構成する電極活物質としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、チタン酸リチウム、LixAyDzPO(ただし、Aは、Co、Mn、Ni、Fe、Cu、及びCrからなる群より選択される1種以上、Dは、Mg、Ca、S、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y、及び希土類元素からなる群より選択される1種以上、0<x<2、0<y<1.5、0≦z<1.5;好ましくは、AがCo、Mn、Ni、Fe、Cu、及びCrからなる群から選択される1種以上、DがMg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y、及び希土類元素からなる群から選択される1種以上、0<x<1.2、0<y<1、0≦z<1.5、かつ0.9<y+z≦1)等が挙げられる。
電極活物質粒子は、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、チタン酸リチウム、及びLixAyDzPOからなる群より選択される少なくとも1種を主成分とすることが好ましい。
ここで、主成分とは、電極活物質粒子全質量中の含有量が50質量%を超えることをいう。
Aについては、Co、Mn、Ni、Feが、高い放電電位が得られ易いため好ましい。Dについては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Alが、高い放電電位が得られやすいため好ましい。
また、希土類元素とは、ランタン系列であるLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの15元素のことである。
以上の中でも、電極活物質としては、LixFeyDzPO(AがFe)であることが好ましく、LixFeyPO(AがFe、かつzが0)であることがより好ましく、更にLiFePOであることがより好ましい。
LixAyDzPOにて表される化合物は、固相法、液相法、気相法等の従来の方法により製造したものを用いることができる。LixAyDzPOは、例えば、粒子状のもの(LixAyDzPO粒子と称することがある)を用いることができる。
LixAyDzPOは、例えば、Li源と、A源と、P源と、水と、必要に応じてD源と、を混合して得られるスラリー状の混合物を水熱合成し、得られた沈殿物を水洗して、電極活物質の前駆体物質を生成し、さらに前駆体物質を焼成することで得られる。水熱合成には耐圧密閉容器を用いることが好ましい。
ここで、Li源としては、酢酸リチウム(LiCHCOO)、塩化リチウム(LiCl)等のリチウム塩及び水酸化リチウム(LiOH)等が挙げられ、酢酸リチウム、塩化リチウム及び水酸化リチウムからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
A源としては、Co、Mn、Ni、Fe、Cu、及びCrからなる群より選択される少なくとも1種を含む塩化物、カルボン酸塩、硫酸塩等が挙げられる。例えば、AがFeである場合、Fe源としては、塩化鉄(II)(FeCl)、酢酸鉄(II)(Fe(CHCOO))、硫酸鉄(II)(FeSO)等の2価の鉄塩が挙げられ、塩化鉄(II)、酢酸鉄(II)、及び硫酸鉄(II)からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
D源としては、Mg、Ca、S、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y、及び希土類元素からなる群より選択される1種を含む塩化物、カルボン酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
P源としては、リン酸(HPO)、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)、リン酸水素二アンモニウム((NHHPO)等のリン酸化合物が挙げられ、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、及びリン酸水素二アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
LixAyDzPO粒子は、結晶性粒子であっても非晶質粒子であってもよく、結晶質粒子と非晶質粒子が共存した混晶粒子であってもよい。ここで、LixAyDzPO粒子が非晶質粒子でも良いとする理由は、非晶質のLixAyDzPO粒子は、500℃以上1000℃以下の非酸化性雰囲気下にて熱処理すると、結晶化するからである。
電極活物質粒子の大きさは、特に制限されず、1次粒子の平均粒径は10nm〜20,000nmであることが好ましく、より好ましくは20nm〜5,000nmである。
なお、本発明において、平均粒径とは、粒度分布における累積体積百分率が50%のときの粒径D50を意味する。
電極活物質粒子の1次粒子の平均粒径が10nm以上であることで、1次粒子の表面を炭素質被膜で充分に被覆することができ、高速充放電レートにおける放電容量の低下を抑制し、充分な充放電レート性能を実現することができる。また、電極活物質粒子の1次粒子の平均粒径が20,000nm以下であることで、1次粒子の内部抵抗が大きくなりにくく、高速充放電レートにおける放電容量を損ねにくい。
電極活物質粒子の一次粒子の平均粒径は、株式会社堀場製作所製、LB−550を用いて分散体を測定したり、電子顕微鏡により観察し、計数することにより測定することができる。
電極活物質粒子の形状は、特に制限されないが、球状、特に真球状であることが好ましい。電極活物質粒子が球状であることで、本発明の電極材料用いて正電極用ペーストを調製する際の溶媒量を低減させることができるとともに、正電極用ペーストの集電体への塗工も容易となる。なお、正電極用ペーストは、例えば、本発明の電極材料と、バインダー樹脂(結着剤)と、溶媒とを混合して調製することができる。
また、電極活物質粒子の形状が球状であることで、電極活物質粒子の表面積が最小となり、電極材料に添加するバインダー樹脂(結着剤)の配合量を最小限にすることができ、得られる正電極の内部抵抗を小さくすることができるので、好ましい。
さらに、電極活物質粒子の形状が球状であれば、電極活物質が最密充填し易いので、単位体積あたりの正極材料の充填量が多くなり、よって、電極密度を高くすることができる。その結果、リチウムイオン電池の高容量化を図ることができるので、好ましい。
〔炭素質被覆層〕
本発明の電極材料は、電極活物質粒子表面を被覆し、金属酸化物を含む炭素質被覆層を有する。
被覆層は、電極活物質粒子表面の少なくとも一部を被覆し、当該表面の全部を被覆していることが好ましい。
(金属酸化物)
被覆層を構成する金属酸化物は、特に制限されず、例えば、Al、ZrO、SiO、TiO等が挙げられる。金属酸化物は、電極活物質粒子のリチウムイオン伝導性に悪影響を及ぼさない物質であることが好ましく、電極活物質粒子の焼結や粒成長抑制のためには、電極活物質粒子と性質の異なるものであることが望ましい。かかる観点から、金属酸化物は、Al、ZrO、SiO、及びTiOからなる群より選択される少なくとも1種からなることが好ましい。
金属酸化物は、1種のみで構成されていてもよいし、2種以上により構成されていてもよい。
金属酸化物は、電極材料の電解液に対する濡れ性を十分に確保できるように、炭素質被覆層中に均一に配されていることが好ましい。
本発明の炭素質被覆層における金属酸化物は、極微量の添加で濡れ性の改善およびイオン伝導性の向上が認められる。
炭素質被覆層における金属酸化物の含有量は、5質量%以上70質量%以下である。金属酸化物の量を5質量%以上とすることで電解液に対する濡れ性を改善し、リチウムイオン伝導性の向上をすることができる。70質量%以下とすることで電気伝導性を阻害しにくい。
同様の観点から、炭素質被覆層における金属酸化物の含有率は、10質量%以上30質量%以下が好ましい。
炭素質被覆層に含まれる金属酸化物は、粒子形状であっても、不定形のものであっても良く、金属酸化物を含む炭素質被覆層が電極活物質粒子表面に均一に被覆されることが好ましい。
炭素質被覆層が均一に電極活物質粒子を被覆するためには、金属酸化物が粒子である場合は、炭素質被覆層に含まれる金属酸化物の平均粒径は2nm以下、好ましくは1nm以下である。
(炭素)
炭素質被覆層を構成する炭素は、炭素の原料となる有機化合物を炭化することにより得られる。炭素の原料となる有機化合物の詳細は後述する。
本発明においては、電極活物質粒子表面を被覆する炭素質被覆層が金属酸化物を含み、電極材料と電解液の濡れ性を向上させるとともに、電極活物質材料の焼結と粒成長を抑制するものであるため、金属酸化物を含む炭素質被覆層は、電極活物質粒子の表面に均一に配されていることが好ましい。
本発明の電極材料は、電極活物質粒子表面が、金属酸化物を含む炭素質被覆層で被覆されているため、凝集しにくく、電極材料の凝集体が解れたときに、炭素質被膜が被覆していない面が露出することが抑制される。
また、金属酸化物を含有することにより、電極材料を電解液に接触させたときに、電極活物質粒子表面に電解液が、より行き渡り易く、電極材料の電解液に対する濡れ性をより向上することができる。
本発明の電極材料は、既述の構成が得られる任意の方法により製造することができるが、電極材料が、既述の好ましい態様を備える観点から、次に示す本発明の電極材料の製造方法により製造することが好ましい。
<電極材料の製造方法>
本発明の電極材料の製造方法は、電極活物質粒子と、Al、Zr、Si及びTiからなる群より選択されるいずれか1つ以上の金属原子を含む金属塩又は金属アルコキシドと、炭素の前駆体である有機化合物とを、前記金属塩又は金属アルコキシドの全配合量が、前記金属塩又は金属アルコキシドが全て金属酸化物に変化したときに前記炭素質被覆層に含まれる金属酸化物の量で、5質量%以上70質量%以下となる量で混合し、非酸化性雰囲気下で加熱して、本発明の電極材料を製造する方法である。
「Al、Zr、Si及びTiからなる群より選択されるいずれか1つ以上の金属原子を含む金属塩又は金属アルコキシド」は、電極活物質粒子及び有機化合物と非酸化性雰囲気下で加熱されることで、金属酸化物が得られる化合物であり、いわば、金属酸化物前駆体である。
電極材料を製造したとき、被覆層中の炭素と金属酸化物とが、電極活物質粒子の表面に均一に配された構成となるように、電極活物質粒子と、金属酸化物前駆体と有機化合物との混合は、更に水を混合し、スラリーを調製すること(以下、「スラリー調製工程」と称することがある)が好ましい。
更に、少なくとも電極活物質粒子と、金属酸化物前駆体と有機化合物とを含む混合物の非酸化性雰囲気下での加熱は、500℃〜1000℃の非酸化性雰囲気下にて焼成すること(以下「焼成工程」と称する場合がある)が好ましい。
焼成工程は、スラリー調製工程で得られたスラリーを乾燥し、得られた乾燥物を500℃〜1000℃の非酸化性雰囲気下にて焼成する工程であることがより好ましい。
本発明の電極材料の製造方法が、スラリー調製工程を有することにより、電極活物質粒子と、金属酸化物前駆体と、有機化合物とが均一に混合され、電極活物質粒子の表面に、炭素と金属酸化物が均一に配され易い。
また、本発明では、電極活物質粒子表面に、金属酸化物と、炭素の前駆体である有機化合物とを混合して加熱するのではなく、金属酸化物前駆体を用い、電極活物質粒子及び有機化合物と共に混合して加熱し、被覆層の構成要素として金属酸化物を得る。従って、被覆層に含まれる金属酸化物は、連続相となる炭素中に均一に分散し易い。
スラリー調製工程により、電極活物質粒子表面に有機化合物と酸化物前駆体をムラ無く被覆することができる。更に、焼成工程により、電極活物質粒子表面を被覆した有機化合物が炭化すると共に金属酸化物前駆体が金属酸化物へと変化し、炭素と金属酸化物が電極活物質粒子に均一に被覆した被覆層を有する電極活物質粒子を含む電極材料が得られる。
〔電極活物質粒子原料〕
本発明の電極材料の製造方法で用いる電極活物質は、本発明の電極材料が含む電極活物質粒子を構成する電極活物質として説明した物質が挙げられ、好ましい態様も同様である。電極活物質の前駆体も、電極材料の説明において挙げた前駆体が挙げられる。
〔金属酸化物前駆体〕
本発明の電極材料の製造方法で用いる金属酸化物前駆体は、Al、Zr、Si及びTiからなる群より選択されるいずれか1つ以上の金属原子を含む金属塩又は金属アルコキシドであり、当該前駆体の形態はコロイド粒子であってもよい。
金属塩としては、無機酸金属塩、脂肪酸金属塩等が挙げられる。
無機酸金属塩としては、炭酸金属塩、塩酸金属塩、硝酸金属塩、硫酸金属塩等が挙げられ、具体的には、例えば、硫酸ジルコニウム、オキシ炭酸ジルコニウムアンモニウム、硝酸酸化ジルコニウム等が挙げられる。
脂肪酸金属塩としては、Al、Zr、Si及びTiの酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩等が挙げられる。脂肪酸の炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、1〜2であることが更に好ましい。脂肪酸は1価でもよいし、2価以上の多価脂肪酸であってもよいが、1価であることが好ましい。具体的には、例えば、オキシ酢酸ジルコニウム、酢酸アルミニウム(トリス酢酸アルミニウム)、酢酸チタニウム等が挙げられる。
金属アルコキシドとしては、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有する1価又は2価以上のアルコール由来の化合物であることが好ましい。より好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基を有する1価のアルコール由来であることがより好ましい。具体的には、例えば、アルミニウムエトキシド、ジルコニウムエトキシド、シリコンエトキシド、チタニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、チタニウムテトライソプロポキシド等が挙げられる。
以上の中でも、Al、Zr、Si及びTiからなる群より選択されるいずれか1つ以上の金属原子を含む炭酸金属塩、脂肪酸金属塩又は炭素数1〜3のアルキル基を有する1価のアルコール由来の金属アルコキシドが好ましく、Al、Zr、Si及びTiからなる群より選択されるいずれか1つ以上の金属原子を含む酢酸金属塩がより好ましく、酢酸ジルコニウムが更に好ましい。
〔有機化合物〕
本発明の電極材料の製造方法で用いる有機化合物としては、電極活物質粒子の表面を被覆する被覆層の構成成分である炭素を形成できる化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、セルロース、デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニル、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、マルトース、スクロース、ラクトース、グリコーゲン、ペクチン、アルギン酸、グルコマンナン、キチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン、アガロース、ポリエーテル、2価アルコール、3価アルコール等が挙げられる。
電極活物質粒子原料と有機化合物との配合比は、有機化合物の全量を炭素量に換算したとき、電極活物質粒子原料100質量部に対して0.6質量部〜4.0質量部であることが好ましく、より好ましくは1.1質量部〜1.7質量部である。
ここで、有機化合物の炭素量換算の配合比が0.6質量部以上であることで、電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が低くなりにくく、充分な充放電レート性能を実現することができる。有機化合物の炭素量換算の配合比が4.0質量部以下であることで、リチウムイオンが被覆層内の炭素領域中を拡散する際に立体障害が少なく、リチウムイオン移動抵抗が低くなる。その結果、電池を形成した場合に電池の内部抵抗が上昇しにくく、高速充放電レートにおける電圧低下を抑制することができる。
また、金属酸化物前駆体の配合量は、金属酸化物前駆体の種類によって異なるが、金属酸化物前駆体の全配合量が、金属酸化物前駆体が全て金属酸化物に変化したときに前記炭素質被覆層に含まれる金属酸化物の量(以下、「金属酸化物換算含有率」という)で、5質量%以上70質量%以下になるように配合する。金属酸化物換算含有率を10質量%以上とすることで電解液に対する濡れ性を改善し、リチウムイオン伝導性の向上をすることができ、70質量%以下とすることで電気伝導性を阻害しにくい。
同様の観点から、金属酸化物換算含有率は、10質量%以上30質量%以下が好ましい。
本発明の電極材料の製造方法では、電極活物質粒子原料と金属酸化物前駆体と有機化合物とを、水に溶解又は分散させて、均一なスラリーを調製することが好ましい。各成分の水への溶解又は分散の際には、分散剤を加えることもできる。電極活物質粒子原料と金属酸化物前駆体と有機化合物とを水に溶解又は分散させる方法としては、電極活物質粒子原料が分散し、金属酸化物前駆体と有機化合物が溶解または分散する方法であればよく、特に限定されないが、例えば、遊星ボールミル、振動ボールミル、ビーズミル、ペイントシェーカー、アトライタ等の分散装置を用いることが好ましい。
電極活物質粒子原料と金属酸化物前駆体と有機化合物とを水に溶解又は分散する際には、電極活物質粒子原料を1次粒子として分散し、その後、金属酸化物前駆体と有機化合物を添加して溶解するように攪拌することが好ましい。このようにすれば、電極活物質粒子の1次粒子の表面に金属酸化物前駆体と有機化合物とが均一に配され、電極活物質粒子表面が金属酸化物前駆体由来の金属酸化物と、有機化合物由来の炭素からなる被覆層によって被覆される。被覆層中の金属酸化物と炭素は、電極活物質粒子の1次粒子の表面に均一に金属酸化物前駆体と有機化合物とが配された状態で、加熱され、金属酸化物と炭素に変化するため、電極活物質粒子表面に均一に金属酸化物と炭素とが配された炭素質被覆層が形成される。
電極活物質粒子と、金属酸化物前駆体と、有機化合物と、水とを含むスラリーを調製する際には、電極活物質粒子原料の比(D90/D10)を5〜30とするように、スラリーの分散条件、例えば、スラリー中の電極活物質粒子原料、金属酸化物前駆体及び有機化合物の濃度、撹拌時間等を適宜調整する。これにより、得られた凝集体の体積密度を、この凝集体を中実とした場合の体積密度の50体積%〜80体積%とすることができる。
次いで、このスラリーを非酸化性雰囲気下で加熱する。
好ましくは、スラリーを高温雰囲気中、例えば70℃〜250℃の大気中に噴霧し、乾燥させ、次いで、この乾燥物を、非酸化性雰囲気下、500℃〜1,000℃、より好ましくは600℃〜900℃の範囲内の温度にて、0.1時間〜40時間焼成する。
非酸化性雰囲気としては、窒素(N)、アルゴン(Ar)等の不活性雰囲気が好ましく、より酸化を抑えたい場合には水素(H)等の還元性ガスを数体積%程度含む還元性雰囲気が好ましい。また、焼成時に非酸化性雰囲気中に蒸発した有機分を除去する目的で、酸素(O)等の支燃性または可燃性ガスを不活性雰囲気中に導入することとしてもよい。
ここで、焼成温度を500℃以上とすると、乾燥物に含まれる有機化合物の分解及び反応が充分に進行し易く、有機化合物の炭化を充分に行い易い。その結果、得られた凝集体中に高抵抗の有機化合物の分解物が生成することを防止し易い。焼成温度を1000℃以下とすることで、電極活物質中のLiが蒸発しにくく、また、電極活物質の粒成長が抑制される。その結果、高速充放電レートにおける放電容量が低くなることを防止することができ、充分な充放電レート性能を実現することができる。
この焼成過程では、乾燥物を焼成する際の条件、例えば、昇温速度、最高保持温度、保持時間等を適宜調整することにより、得られる凝集体の粒度分布を制御することが可能である。
以上により、乾燥物中の有機化合物と金属酸化物前駆体が熱分解して生成した炭素と金属酸化物からなる被覆層により電極活物質の1次粒子の表面が被覆される。
<電極>
本発明の電極は、本発明の電極材料を含有する。
本発明の電極を作製するには、上記の電極材料と、バインダー樹脂からなる結着剤と、溶媒とを混合して、電極形成用塗料又は電極形成用ペーストを調製する。この際、必要に応じてカーボンブラック等の導電助剤を添加してもよい。
結着剤、すなわちバインダー樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂、フッ素ゴム等が好適に用いられる。
電極材料とバインダー樹脂との配合比は、特に限定されないが、例えば、電極材料100質量部に対してバインダー樹脂を1質量部〜30質量部、好ましくは3質量部〜20質量部とする。
電極形成用塗料又は電極形成用ペーストに用いる溶媒としては、バインダー樹脂の性質に合わせて適宜選択すればよい。
例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール:IPA)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングルコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングルコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングルコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類等を挙げることができる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
次いで、電極形成用塗料又は電極形成用ペーストを、金属箔の一方の面に塗布し、その後、乾燥し、上記の電極材料とバインダー樹脂との混合物からなる塗膜が一方の面に形成された金属箔を得る。
次いで、塗膜を加圧圧着し、乾燥して、金属箔の一方の面に電極材料層を有する集電体(電極)を作製する。
このようにして、出力特性に優れた電極を作製することができる。
<リチウムイオン電池>
本発明のリチウムイオン電池は、本発明の電極からなる正極を備える。
このリチウムイオン電池は、本発明の電極材料を用いて電極を作製することにより、電極の内部抵抗を小さくすることができる。したがって、電池の内部抵抗を低く抑えることができ、その結果、電圧が著しく低下する虞もなく、高速の充放電を行うことができるリチウムイオン電池を提供することができる。
本発明のリチウムイオン電池では、負極、電解液、セパレーター等は特に限定されない。例えば、負極としては、金属Li、炭素材料、Li合金、LiTi12等の負極材料を用いることができる。また、電解液とセパレーターの代わりに、固体電解質を用いてもよい。
本発明のリチウムイオン電池によれば、本発明の電極からなる正極を備えたので、出力特性に優れる。
以下、実施例1〜5及び比較例1〜2により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
<実施例1>
〔電極材料の作製〕
水2L(リットル)に、4molの酢酸リチウム(LiCHCOO)、2molの硫酸鉄(II)(FeSO)、2molのリン酸(HPO)を、全体量が4Lになるように混合し、均一なスラリー状の混合物を調製した。
次いで、この混合物を容量8Lの耐圧密閉容器に収容し、200℃にて1時間、水熱合成を行った。
次いで、得られた沈殿物を水洗し、ケーキ状の電極活物質の前駆体を得た。
次いで、この電極活物質の前駆体150g(固形分換算)と金属酸化物前駆体としてオキシ酢酸ジルコニウム0.83gと、有機化合物としてポリビニルアルコール(PVA)5.4gを水100gに溶解したポリビニルアルコール水溶液と、を混合してスラリーとし、このスラリーを、二流体式湿式ジェット粉砕機を用いて、スラリー中の電極活物質の前駆体粒子の粒度分布におけるD50が100nmとなるように、分散処理を行った。
次いで、この分散処理を行ったスラリーを180℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、平均粒子径が6μmの乾燥物を得た。
次いで、得られた乾燥物を700℃の窒素雰囲気下にて1時間焼成し、平均粒子径が6μmである実施例1の電極材料1を得た。
<実施例2>
実施例1において、オキシ酢酸ジルコニウム0.83gを、オキシ酢酸ジルコニウム2.45gに変更した他は、実施例1と同様にして実施例2の電極材料2を作製した。
<実施例3>
実施例1において、オキシ酢酸ジルコニウム0.83gをオキシ炭酸ジルコニウムアンモニウム0.34gに変更した他は、実施例1と同様にして実施例3の電極材料3を作製した。
〔電極の作製〕
得られた電極材料3と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)とを、質量比(電極材料3:PVdF:AB)が90:5:5となるように混合し、さらに溶媒としてN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を加えて流動性を付与し、スラリーを作製した。
次いで、このスラリーを厚み15μmのアルミニウム(Al)箔上に塗布し、乾燥した。その後、600kgf/cmの圧力にて加圧し、実施例3のリチウムイオン電池の正極1を作製した。
〔リチウムイオン電池の作製〕
このリチウムイオン電池の正極1に対し、負極としてリチウム金属を配置し、これら正極1と負極の間に多孔質ポリプロピレンからなるセパレーターを配置し、電池用部材1とした。
一方、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとを1:1(体積比)にて混合し、さらにLiPFを加えて1Mとして、リチウムイオン伝導性を有する電解質溶液1を作製した。
次いで、電池用部材1を2016型コインセル内に配し、電解質溶液1を加えた後に封止して、実施例3のリチウムイオン電池1を作製した。
<実施例4>
実施例1において、オキシ酢酸ジルコニウム0.83gを、酢酸アルミニウム0.6gに変更した他は、実施例1と同様にして実施例4の電極材料4を作製した。
<実施例5>
実施例1において、オキシ酢酸ジルコニウム0.83gを、安定化剤としてアセチルアセトンを当量(物質量比1:1)加えたチタニウムテトライソプロポキシド0.53gに変更した他は、実施例1と同様にして実施例5の電極材料5を作製した。
<比較例1>
実施例1において、オキシ酢酸ジルコニウム0.83gを用いなかった他は、実施例1と同様にして比較例1の電極材料101を作製した。
実施例3の電極1及びリチウムイオン電池の作製において、電極材料3に代えて電極材料101を用いた他は同様にして、比較例1の電極101及びリチウムイオン電池101を作製した。
<比較例2>
実施例1において、オキシ酢酸ジルコニウム0.83gを、オキシ酢酸ジルコニウム2.81gに変更した他は、実施例1と同様にして比較例2の電極材料102を作製した。
<評価方法>
以上のようにして作製した電極材料、電極及びリチウムイオン電池は、下記評価方法により評価した。なお、電極の性能は、リチウムイオン電池の評価をもって判断することができる。
〔電極材料の評価〕
この電極材料が含む各成分及び電極材料について、物性及び性能を評価し、(1)〜(6)の各評価の結果を表1に示した。評価方法は下記の通りである。
(1)電極活物質粒子の平均粒径
電極活物質粒子の平均粒径(D50)は、株式会社堀場製作所製、LB−550を用いて測定した。
(2)炭素質被覆層の層厚d
炭素質被覆層の層厚は、透過型電子顕微鏡を用いて測定した。
(3)電極材料の炭素量
炭素分析計〔株式会社堀場製作所社製、炭素硫黄分析装置EMIA−810W〕を用いて、電極活物質粒子100質量部に対する炭素量〔質量部〕を測定した。
(4)炭素質被覆層中の金属酸化物量
電極材料製造時に配合した金属化合物前駆体が、全て金属酸化物に変化した場合の金属酸化物量を、金属酸化物前駆体の配合量から換算し、炭素質被覆層中の金属酸化物量として算出した。
(5)電極材料における電解液の濡れ性評価
炭酸ジエチルを溶媒として用いてパルスNMRの緩和時間を測定することにより、電極材料における電解液の濡れ性を評価した。同じ総表面積を持つ粒子分散液において、溶媒との濡れが高いほど、励起された溶媒分子中の水素原子のエネルギーが、より早く粒子へ散逸するため、緩和時間が短くなる。即ち、粒子の比表面積と固形分濃度から、分散液中の総表面積が求まり、単位面積当たりの緩和時間への寄与、即ち親和性を求めることができる。表1には、実施例1〜4及び比較例1で測定された各緩和時間から下記式で親和性の値を求めた。
親和性=[{(t−1)−(t −1)}/t −1]/SSA
t:サンプルの緩和時間
:ブランクの緩和時間
SSA:サンプルの比表面積
即ち、縦軸に緩和時間の逆数の差をブランクの緩和時間の逆数で割ったもの、横軸に比表面積をプロットしたときの傾きが電解液に対する親和性の値として求められる。得られた数値の最大値(実施例2)を相対値100として示した。すなわち、最大の親和性を示したサンプルが相対値100として示され、相対値が小さいほど電解液に対する濡れ性が小さいことを表す。
(6)エネルギー密度
作成した電池を用いて充放電試験を実施した。3Cの電流で定電流放電を行い、単位重量当たりのエネルギー密度を求めた。
(7)イオン伝導性の評価
電極材料のイオン伝導性の評価は、実施例3及び比較例1で製造したリチウムイオン電池の放電曲線を用いて行った。
実施例3及び比較例1で製造したリチウムイオン電池について、3C放電を行い、得られた放電曲線を図1に示す。図中、上側の曲線Aが、実施例3で製造したリチウムイオン電池の放電曲線であり、下側の曲線Bが、比較例1で製造したリチウムイオン電池の放電曲線である。
図1の放電曲線からわかるように、実施例3の電極材料を用いて作製されたリチウムイオン電池は、比較例1の電極材料を用いて作製されたリチウムイオン電池に比べ、放電電圧が低下しにくく、放電容量も大きいことがわかる。これは実施例3の電極材料がイオン伝導性に優れるためと考えられる。
電子伝導性を悪化させずに、電極材料の電解液への濡れ性に優れ(相対値が96以上)、電極材料のイオン伝導性が高い場合に、高いエネルギー密度(469mwh/g以上)を有する電池が得られる。このように電極材料のエネルギー密度が高いのは、炭素質被膜が電極活物質粒子に均一に被覆するとともに、炭素質被膜中に酸化物が均一に分布しているためと推察される。
本発明は、電池用の正極材料、更にはリチウムイオン電池用の正極材料として用いる電極材料、及びこの電極材料を含有した電極、並びにこの電極からなる正極を備えたリチウムイオン電池に利用可能である。

Claims (7)

  1. 電極活物質粒子と、前記電極活物質粒子表面を被覆し、金属酸化物を含む炭素質被覆層とを有し、かつ、前記炭素質被覆層における金属酸化物の含有率が、5質量%以上70質量%以下である電極材料。
  2. 前記金属酸化物の少なくとも一部が前記電極活物質粒子の表面に拡散している請求項1に記載の電極材料。
  3. 前記金属酸化物がAl、ZrO、SiO、及びTiOからなる群より選択される少なくとも1種からなる請求項1又は請求項2に記載の電極材料。
  4. 前記電極活物質粒子が、LixAyDzPO(ただし、AはCo、Mn、Ni、Fe、Cu、及びCrからなる群から選択される1種以上、DはMg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y、及び希土類元素からなる群から選択される1種以上、0<x<1.2、0<y<1、0≦z<1.5、かつ0.9<y+z≦1)で表される請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電極材料。
  5. 前記電極活物質粒子100質量部に対する炭素量は、0.6質量部以上4.0質量部以下である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電極材料。
  6. 電極活物質粒子と、
    Al、Zr、Si及びTiからなる群より選択されるいずれか1つ以上の金属原子を含む金属塩又は金属アルコキシドと、
    炭素の前駆体である有機化合物と、
    を、前記金属塩又は金属アルコキシドの全配合量が、前記金属塩又は金属アルコキシドが全て金属酸化物に変化したときに前記炭素質被覆層に含まれる金属酸化物の量で、5質量%以上70質量%以下となる量で混合し、非酸化性雰囲気下で加熱する電極材料の製造方法。
  7. 前記有機物の全配合量が、炭素量に換算したときに前記電極活物質粒子100質量部に対して0.6質量部以上4.0質量部以下となる量である請求項6に記載の電極材料の製造方法。
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