JP2016119190A - 電極活物質及びその製造方法、リチウムイオン二次電池用電極並びにリチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】電池性能の高い電極活物質及びその製造方法、リチウムイオン二次電池用電極並びにリチウムイオン二次電池を提供する。【解決手段】本発明の電極活物質の製造方法は、リチウム複合酸化物を比誘電率5以上の溶媒で洗浄する洗浄工程と、洗浄工程を経た前記リチウム複合酸化物を、250℃を超え且つ600℃未満の温度で加熱する加熱工程と、を有する。【選択図】 図3
Description
本発明は、電極活物質及びその製造方法、リチウムイオン二次電池用電極並びにリチウムイオン二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池の正極は、正極活物質と結着剤とを有する正極合材に溶媒を添加してペースト状とし、ペースト状の正極合材を集電体に塗布し乾燥することにより形成される。正極活物質としてリチウム複合酸化物が用いられ、結着剤としてPVDF(ポリフッ化ビニリデン)が用いられることが多い。
リチウム複合酸化物は、例えば、複合酸化物と水酸化リチウムとを650〜850℃で焼成することにより製造される(特許文献1)。正極活物質の表面に、製造過程で用いた原料由来の水酸化リチウムなどのアルカリ成分が存在すると、ペースト状の正極合材がゲル化しやすく、正極作製に支障を示す場合がある。また、電極を作製できたとしても、電池特性がばらつく場合がある。
そこで、アルカリ成分が付着した正極活物質を有するペースト状の正極合材に酸成分を添加して、正極合材を中和させる方法が考えられる。しかし、不要な酸成分が正極合材に混入するため、電池性能が低下するおそれがある。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、電池性能を高くすることができる電極活物質及びその製造方法、リチウムイオン二次電池用電極並びにリチウムイオン二次電池を提供することを課題とする。
本発明の電極活物質の製造方法は、リチウム複合酸化物を有する電極活物質の製造方法であって、前記リチウム複合酸化物を比誘電率5以上の溶媒で洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程を経た前記リチウム複合酸化物を、250℃を超え且つ600℃未満の温度で加熱する加熱工程と、を有することを特徴とする。
本発明の電極活物質は、上記の電極活物質の製造方法により製造されたものである。
本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、上記の電極活物質を有する。
本発明のリチウムイオン二次電池は、上記のリチウムイオン二次電池用電極を具備する。
本発明は上記構成を具備するため、電池性能を高くすることができる電極活物質及びその製造方法、リチウムイオン二次電池用電極並びにリチウムイオン二次電池を提供することができる。
本発明の実施形態に係る電極活物質及びその製造方法、リチウムイオン二次電池用電極並びにリチウムイオン二次電池について説明する。
本発明の電極活物質の製造方法においては、リチウム複合酸化物を比誘電率5以上の溶媒(以下、「洗浄溶媒」ともいう。)で洗浄し、その後、250℃を超え且つ600℃未満の温度でリチウム複合酸化物を加熱している。このため、リチウム複合酸化物を電極活物質として用いたリチウムイオン二次電池の電池性能が向上する。その理由は、洗浄工程でリチウム複合酸化物を溶媒で洗浄することでリチウム複合酸化物表面のアルカリ成分が除去され、その後に加熱することで、リチウム複合酸化物の表面改質が行われたためであると推定される。
また、電極活物質を用いて電極合材を作製するときに、結着剤としてPVDF(ポリフッ化ビニリデン)などのフッ素含有高分子材料が用いられる場合がある。このとき、電極活物質表面に電極活物質の製造過程で用いた原料に由来するアルカリ成分が付着していると、アルカリ成分がフッ素含有高分子材料からフッ素を引き抜いてフッ素含有高分子材料に炭素間二重結合を形成させる。フッ素含有高分子材料の炭素間二重結合が開裂して、分子鎖同士が互いに架橋する。電極活物質とフッ素含有高分子材料とを用いて溶媒存在下で電極合材を形成したときに、電極合材がゲル化する。
そこで、本発明のように、電極活物質を洗浄溶媒で洗浄することにより、電極活物質表面に付着しているアルカリ成分が除去される。電極活物質をフッ素含有高分子材料とともに溶媒でスラリー状の電極合材としたときに、電極合材をスラリー状に維持することができる。このため、電極合材の集電体表面への塗布性能が向上する。
本発明の電極活物質の製造方法においては、リチウム複合酸化物に対して洗浄工程と加熱工程とを行う。
リチウム複合酸化物としては、層状化合物のLiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)、Li2MnO3を挙げることができる。また、リチウム複合酸化物として、LiMn2O4等のスピネル型化合物、及びスピネル型化合物と層状化合物の混合物で構成される固溶体、LiMPO4、LiMVO4又はLi2MSiO4(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)などで表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。いずれのリチウム複合酸化物も上記の組成式を基本組成とすればよく、基本組成に含まれる金属元素を他の金属元素で置換したものも使用可能である。
上記層状化合物のLiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦2、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Al、Zr、Ti、P、Ga、Ge、V、Mo、Nb、W、Laから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦3)において、b、c及びdの値は、上記条件を満足するものであれば特に制限はないが、0<b<1、0<c<1、0<d<1であるものが良く、また、b、c、dの少なくともいずれか一つが0<b<80/100、0<c<70/100、10/100<d<1の範囲であることが好ましく、10/100<b<68/100、12/100<c<60/100、20/100<d<68/100の範囲であることがより好ましく、25/100<b<60/100、15/100<c<50/100、25/100<d<60/100の範囲であることがさらに好ましい。
aは、0.5≦a≦1.7の範囲内が好ましく、0.7≦a≦1.5の範囲内がより好ましく、0.9≦a≦1.3の範囲内がさらに好ましく、1≦a≦1.2の範囲内が特に好ましい。e、fについては一般式で規定する範囲内の数値であればよく、e=0、f=2を例示することができる。
以下、リチウム複合酸化物が層状化合物又はスピネル型化合物である場合と、ポリアニオン系化合物である場合とに分けて、その作製工程を説明する。
(1)層状化合物又はスピネル型化合物の作製工程
層状化合物又はスピネル型化合物であるリチウム複合酸化物を作製するには、例えば、溶融塩法を行う。溶融塩法でリチウム複合酸化物を作製するには、原料混合物調製工程及び溶融反応工程を行い、必要に応じて、前駆体合成工程を行う。
層状化合物又はスピネル型化合物であるリチウム複合酸化物を作製するには、例えば、溶融塩法を行う。溶融塩法でリチウム複合酸化物を作製するには、原料混合物調製工程及び溶融反応工程を行い、必要に応じて、前駆体合成工程を行う。
原料混合物調製工程は、少なくとも、金属化合物原料と溶融塩原料とを混合して原料混合物を調製する工程である。
金属化合物原料は、目的生成物であるリチウム複合酸化物に含まれる金属元素を含むのであれば、金属単体及び/または金属化合物を単独であるいは二種以上を混合または反応させて得られる材料を金属化合物原料として使用可能である。金属化合物原料としては、具体的には、二酸化マンガン(MnO2)、三酸化二マンガン(Mn2O3)、一酸化マンガン(MnO)、四三酸化マンガン(Mn3O4)水酸化マンガン(Mn(OH)2)、オキシ水酸化マンガン(MnOOH)、酸化コバルト(CoO、Co3O4)、硝酸コバルト(Co(NO3)2・6H2O)、水酸化コバルト(Co(OH)2)、酸化ニッケル(NiO)、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2・6H2O)、硫酸ニッケル(NiSO4・6H2O)、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、硝酸アルミニウム(Al(NO3)3・9H2O)、酸化銅(CuO)、硝酸銅(Cu(NO3)2・3H2O)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、これらの化合物の金属元素の一部がCr、Mn、Fe、Co、Ni、Al、Mgなどで置換された金属化合物などが挙げられる。リチウム複合酸化物の組成に応じて、これらのうちの一種あるいは二種以上を金属化合物原料として用いればよい。
金属化合物原料に含まれる金属元素の配合割合は、本発明の製造方法における目的生成物であるリチウム複合酸化物に含まれる金属元素の比率と同等とする必要がある。
金属化合物原料は、粉末状であるのが好ましい。粉末の平均粒径は特に限定されないが、金属化合物原料の溶解を抑制した条件下で反応が進む。そのため、金属化合物原料の平均粒径は、得られるリチウム複合酸化物の平均粒径と略等しくなる。金属化合物原料の平均粒径を敢えて規定するのであれば、望ましくは5〜10μmである。
溶融塩原料は、Liの供給源となるが、製造されるリチウム複合酸化物に含まれるLiの理論組成を超えるLiを含む。リチウムを含む溶融塩原料として使用可能なリチウム塩として、水酸化リチウム(無水物または一水和物)、硝酸リチウム、炭酸リチウム、硫酸リチウム、塩化リチウム等が挙げられる。この中、水酸化リチウムがよい。
また、二種以上の金属元素を含む原料を用いてあらかじめ前駆体を合成しておいてもよい。すなわち、原料混合物調製工程の前に、リチウム複合酸化物を構成する金属元素のうちの1種以上を必須とした少なくとも二種の金属を含む水溶液をアルカリ性にして沈殿物を得る前駆体合成工程を行ってもよい。
水溶液は、水溶性の無機塩、具体的には金属元素の硝酸塩、硫酸塩、塩化物塩などを水に溶解することによって作成できる。この水溶液をアルカリ金属水酸化物、アンモニア水などでアルカリ性にすると、前駆体は沈殿物として生成される。
このようにして沈殿物を金属化合物原料の少なくとも一部として用いることで、副生成物の生成が抑制され、リチウム複合酸化物を高純度で得ることができる。
溶融塩原料に含まれるLiに対する、目的のリチウム複合酸化物に含まれるLiの理論組成(酸化物のLi/溶融塩原料のLi)は、モル比で1未満であればよいが、0.02〜0.7が好ましく、0.03〜0.5さらには0.04〜0.25であることがさらに好ましい。0.02未満であると、使用する溶融塩原料の量に対して生成するリチウム複合酸化物の量が少なくなるため、製造効率の面で望ましくない。また、0.7より大きいと金属化合物原料を分散させる溶融塩の量が不足し、溶融塩中でリチウム複合酸化物が凝集したり粒成長したりすることがあるため望ましくない。
溶融反応工程は、原料混合物を溶融して反応させる工程である。反応温度は溶融反応工程における原料混合物の温度であり、溶融塩原料の融点以上であればよい。反応温度が、500℃未満では溶融塩の反応活性が不十分であり、所望のリチウム複合酸化物を選択率よく製造することが困難である。
反応温度が550℃以上であれば、結晶性の高いリチウム複合酸化物が得られる。反応温度の上限は、水酸化リチウムの分解温度未満であり、900℃以下さらには850℃以下が望ましい。この反応温度で30分以上さらに望ましくは1〜6時間保持すれば、原料混合物は十分に反応する。上記反応温度において、反応温度が高いほうが金属化合物原料の溶解度があがる。
(2)ポリアニオン系化合物の作製工程
ポリアニオン系化合物からなるリチウム複合酸化物を作製するには、例えば、溶融塩法を行う。溶融塩法では、アルカリ金属塩からなる溶融塩原料を含む溶融塩中においてポリアニオン系化合物を合成する。溶融塩法に用いるアルカリ金属塩は、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、ルビシウム塩及びセシウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。なかでも望ましいのは、リチウム塩である。リチウム塩を含む溶融塩を使用する場合には、不純物相の形成が少なく、リチウム原子を過剰に含むリチウム複合化合物が形成されやすい。
ポリアニオン系化合物からなるリチウム複合酸化物を作製するには、例えば、溶融塩法を行う。溶融塩法では、アルカリ金属塩からなる溶融塩原料を含む溶融塩中においてポリアニオン系化合物を合成する。溶融塩法に用いるアルカリ金属塩は、リチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、ルビシウム塩及びセシウム塩からなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。なかでも望ましいのは、リチウム塩である。リチウム塩を含む溶融塩を使用する場合には、不純物相の形成が少なく、リチウム原子を過剰に含むリチウム複合化合物が形成されやすい。
また、溶融塩法に用いるアルカリ金属塩は、アルカリ金属塩化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属硝酸塩及びアルカリ金属水酸化物のうちの少なくとも1種を含むことが望ましい。具体的には、塩化リチウム(LiCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化ルビシウム(RbCl)、塩化セシウム(CsCl)、炭酸リチウム(Li2CO3)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、炭酸ルビシウム(Rb2CO3)、炭酸セシウム(Cs2CO3)、硝酸リチウム(LiNO3)、硝酸カリウム(KNO3)、硝酸ナトリウム(NaNO3)、硝酸ルビシウム(RbNO3)、硝酸セシウム(CsNO3)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化ルビシウム(RbOH)及び水酸化セシウム(CsOH)が挙げられ、これらのうちの一種を単独または二種以上を混合して使用するとよい。
具体的な反応方法については特に限定的ではないが、例えば、上記したアルカリ金属塩、及びポリアニオン系材料の構成元素を含む物質を混合し、ボールミル等を用いて均一に混合した後、加熱してアルカリ金属塩を溶融させて反応させればよい。反応温度は、溶融塩原料の融点以上であればよい。
(1)、(2)のリチウム複合酸化物の製造方法において、溶融塩法を採用する場合には、Li2CO3などの金属化合物原料が水分と反応して水酸化リチウムなどのアルカリ成分が生じたり、溶融塩原料として水酸化リチウムなどのアルカリ成分が用いられたりする。
また、(1)、(2)のリチウム複合酸化物の製造方法において、固相法を採用する場合にも、Li2CO3などの金属化合物原料が水分と反応して水酸化リチウムなどのアルカリ成分が生じたり、アルカリ源として水酸化リチウムなどのアルカリ成分が用いられたりする。
アルカリ成分が、作製したリチウム複合酸化物表面に残ると、結着剤として用いられるフッ素含有高分子材料からフッ素を引き抜いて、炭素間二重結合を形成する。フッ素含有高分子材料分子の炭素間二重結合部分は、他のフッ素含有高分子材料分子の炭素間二重結合部分とともに、開裂して互いに架橋する。このため、リチウム複合酸化物表面にアルカリ成分が残ると、後工程において、フッ素含有高分子材料と溶剤と混合して電極合材を作製した時に電極合材がゲル化して、電極を形成しにくくなるという問題がある。
そこで、本発明では、リチウム複合酸化物を洗浄する洗浄工程及び、洗浄したリチウム複合酸化物を所定温度で加熱する加熱工程を行う。これにより、リチウム複合酸化物表面からアルカリ成分が取り除かれる。ゆえに、洗浄工程を経たリチウム複合酸化物をフッ素含有高分子材料と溶剤と混合して電極合材を作成した時に、電極合材はゲル化せず、ペースト状を維持することができ、塗布しやすくなる。更に、加熱工程を行うことによりリチウム複合酸化物の表面が改質され、電池性能が向上する。
(洗浄工程)
次に、洗浄工程について説明する。洗浄工程は、リチウム複合酸化物を比誘電率5以上の溶媒で洗浄することにより、リチウム複合酸化物に付着している不要な成分を除去する工程である。同工程は、特に、リチウム複合酸化物作製工程で使用したアルカリ成分など、洗浄溶媒に溶解し得る物質をリチウム複合酸化物から除去することを目的としている。例えば、リチウム複合酸化物製造工程で水酸化リチウムなどのアルカリ成分を用いた場合、リチウム複合酸化物の表面にはアルカリ成分が存在していると推定される。そこで、洗浄溶媒でリチウム複合酸化物を洗浄することにより、アルカリ成分を洗浄溶媒に溶解させて除去できる。洗浄工程は、洗浄溶媒中にリチウム複合酸化物を浸漬させる方法でもよいし、リチウム複合酸化物に対して洗浄溶媒を浴びせる方法でもよい。
次に、洗浄工程について説明する。洗浄工程は、リチウム複合酸化物を比誘電率5以上の溶媒で洗浄することにより、リチウム複合酸化物に付着している不要な成分を除去する工程である。同工程は、特に、リチウム複合酸化物作製工程で使用したアルカリ成分など、洗浄溶媒に溶解し得る物質をリチウム複合酸化物から除去することを目的としている。例えば、リチウム複合酸化物製造工程で水酸化リチウムなどのアルカリ成分を用いた場合、リチウム複合酸化物の表面にはアルカリ成分が存在していると推定される。そこで、洗浄溶媒でリチウム複合酸化物を洗浄することにより、アルカリ成分を洗浄溶媒に溶解させて除去できる。洗浄工程は、洗浄溶媒中にリチウム複合酸化物を浸漬させる方法でもよいし、リチウム複合酸化物に対して洗浄溶媒を浴びせる方法でもよい。
洗浄溶媒としては、アルカリ成分の溶解しやすさの点から、比誘電率がより高いものが好ましく、比誘電率が10以上や15以上の溶媒をより好ましいものとして提示できる。洗浄溶媒の比誘電率の範囲としては、5〜90の範囲内が好ましく、10〜90の範囲内がより好ましく、15〜90の範囲内がさらに好ましい。また、洗浄溶媒としては、単独の溶媒を用いても良いし、複数の溶媒の混合溶媒を用いても良い。
洗浄溶媒の具体例としては、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ベンジルアルコール、フェノール、ピリジン、テトラヒドロフラン、アセトン、酢酸エチル、ジクロロメタンを挙げることができる。これらの具体的な溶媒の化学構造のうち一部又は全部の水素がフッ素に置換したものを洗浄溶媒として採用しても良い。洗浄溶媒としての水は、蒸留水、逆浸透膜透過水、脱イオン水のいずれかが好ましい。
参考までに、各種の洗浄溶媒の比誘電率を表1に示す。
また、リチウム複合酸化物をリチウムイオン二次電池の電極活物質として採用することを考慮すると、洗浄溶媒としては、除去が容易なもの、リチウムイオン二次電池の電極活物質層を作製する際に用いるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などの溶剤に可溶であるもの若しくは当該溶剤と同一のもの、又は、リチウムイオン二次電池の電解液の非水溶媒として使用し得るものが好ましい。
上記の事情を考慮すると、洗浄溶媒としては、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートが好ましい。
洗浄工程の洗浄時間は、1分〜3時間が好ましく、5分〜2時間がより好ましく、10分〜90分がさらに好ましい。洗浄後には、濾過及び乾燥にてリチウム複合酸化物から洗浄溶媒を除去することが好ましい。
洗浄工程は複数回繰り返してもよい。その際には、洗浄溶媒を変更しても良い。例えば、初回の洗浄工程の洗浄溶媒として比誘電率の著しく高い水を選択し、次回の洗浄溶媒として水に可溶のNMPを採用してもよい。このような洗浄溶媒の選択により、塩などの酸に由来する成分を効果的に除去できるとともに、残存するのが好ましくないプロトン性溶媒を効率的に除去できる。
洗浄工程は、加温条件下で行われるのが好ましい。加温条件下としては、40℃以上であって洗浄溶媒の沸点未満の範囲内が好ましく、50℃〜(洗浄溶媒の沸点−10℃)の範囲内がより好ましい。洗浄溶媒が水の場合の具体的な好ましい加温温度範囲として、60〜90℃を例示できる。
洗浄工程は、撹拌条件下で行われるのが好ましい。撹拌装置としては、マグネチックスターラーや、撹拌翼を備えた混合機を例示できる。撹拌速度は、1〜50000rpmが好ましく、10〜10000rpmがより好ましく、100〜1000rpmがさらに好ましい。
洗浄工程は、超音波処理下で行われるのが好ましい。超音波処理は超音波洗浄機や超音波ホモジナイザーなどの超音波発生装置を用いて行う。超音波の条件としては、周波数10〜500kHzの範囲内が好ましく、周波数15〜400kHzの範囲内がより好ましく、周波数20〜300kHzの範囲内がさらに好ましい。
洗浄工程は、上記加温条件、撹拌条件、超音波処理を適宜組み合わせて行うのが好ましい。洗浄工程を加温条件下、撹拌条件下又は超音波処理下で行うことで、リチウム複合酸化物の洗浄が効率的に為される。
洗浄工程を経て製造されたリチウム複合酸化物は、リチウム複合酸化物作製工程で用いた原料由来のアルカリ成分が著しく減少する。当該アルカリ成分は、結着剤として用いられるフッ素含有高分子材料と混合すると、電極合材のスラリーをゲル化させるため、アルカリ成分がほとんど残存していない洗浄済みリチウム複合酸化物は電極活物質として好適である。
洗浄工程後で後述の加熱工程の前に、リチウム複合酸化物から洗浄溶媒を除去する除去工程を行うとよい。除去工程では、リチウム複合酸化物に対して60〜150℃の熱風乾燥、常温乾燥などを行うとよい。
前記洗浄工程と後述の加熱工程との間、又は除去工程と加熱工程との間に、リチウム複合酸化物を解砕する解砕工程を有するとよい。ここで、解砕とは、リチウム複合酸化物を砕くことをいう。洗浄によりリチウム複合酸化物は、塊を形成していることが多い。このため、塊を砕いて粉末状とすることにより、加熱工程での粒子表面の改質効果が高くなり、これを電極活物質として用いた電池の性能が向上する。
(加熱工程)
次に、加熱工程について説明する。加熱工程では、洗浄工程を経たリチウム複合酸化物を、250℃を超え且つ600℃未満の加熱温度で加熱する。加熱温度は、300℃以上550℃以下がよく、更に350℃以上500℃以下が好ましい。加熱温度が250℃未満又は600℃以上の場合には、リチウム複合酸化物からなる電極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の電池性能が低下するおそれがある。
次に、加熱工程について説明する。加熱工程では、洗浄工程を経たリチウム複合酸化物を、250℃を超え且つ600℃未満の加熱温度で加熱する。加熱温度は、300℃以上550℃以下がよく、更に350℃以上500℃以下が好ましい。加熱温度が250℃未満又は600℃以上の場合には、リチウム複合酸化物からなる電極活物質を用いたリチウムイオン二次電池の電池性能が低下するおそれがある。
加熱時間は、30分以上24時間以下がよく、1時間以上12時間以下が好ましい。加熱時間が短すぎると、リチウム複合酸化物の表面改質が十分ではなく、これを電極活物質として用いた二次電池の電池性能が向上しないおそれがある。
加熱工程でのリチウム複合酸化物の加熱は、酸素雰囲気、大気雰囲気で行ってもよい。中でも、酸素雰囲気で行うとよい。
(電極)
本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、上記の電極活物質の製造方法で得られる電極活物質を有する。本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、例えば、集電体と、集電体の表面に結着させた電極活物質層を有する。
本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、上記の電極活物質の製造方法で得られる電極活物質を有する。本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、例えば、集電体と、集電体の表面に結着させた電極活物質層を有する。
集電体は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子高伝導体をいう。集電体としては、銀、銅、金、アルミニウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を例示することができる。集電体は公知の保護層で被覆されていても良い。集電体の表面を公知の方法で処理したものを集電体として用いても良い。
集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
電極活物質層は上記の電極活物質、並びに必要に応じて結着剤及び/又は導電助剤を含む。
結着剤は、電極活物質や導電助剤を集電体の表面に繋ぎ止め、電極中の導電ネットワークを維持する役割を果たすものである。結着剤としては、フッ素含有高分子材料、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロースを例示することができる。これらの結着剤を単独で又は複数で採用すれば良い。
結着剤としてフッ素含有高分子材料を用いる場合には、リチウム複合酸化物表面にアルカリ成分が殆ど付着していないので、フッ素含有高分子材料について、アルカリ成分によるフッ素引き抜きに起因する架橋反応が生じにくい。このため、電極合材に溶剤を添加したときでも、電極合材は、ゲル化することなく、ペースト状を維持することができる。ゆえに、電極合材を集電体表面に塗布しやすくなる。
結着剤として用いられるフッ素含有高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂が挙げられる。
電極活物質層中の結着剤の配合割合は、質量比で、電極活物質:結着剤=1:0.001〜1:0.3であるのが好ましく、1:0.005〜1:0.2であるのがより好ましく、1:0.01〜1:0.15であるのがさらに好ましい。結着剤が少なすぎると電極の成形性が低下し、また、結着剤が多すぎると電極のエネルギー密度が低くなるためである。
導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。そのため、導電助剤は、電極の導電性が不足する場合に任意に加えればよく、電極の導電性が十分に優れている場合には加えなくても良い。導電助剤としては化学的に不活性な電子高伝導体であれば良く、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)、及び各種金属粒子などが例示される。これらの導電助剤を単独または二種以上組み合わせて活物質層に添加することができる。
電極活物質層中の導電助剤の配合割合は、質量比で、電極活物質:導電助剤=1:0.005〜1:0.5であるのが好ましく、1:0.01〜1:0.2であるのがより好ましく、1:0.03〜1:0.1であるのがさらに好ましい。導電助剤が少なすぎると効率のよい導電パスを形成できず、また、導電助剤が多すぎると電極活物質層の成形性が悪くなるとともに電極のエネルギー密度が低くなるためである。
(リチウムイオン二次電池)
本発明のリチウムイオン二次電池は、上記の電極からなる正極及び負極の一方と、正極及び負極の他方と、電解液及びセパレータを具備する。
本発明のリチウムイオン二次電池は、上記の電極からなる正極及び負極の一方と、正極及び負極の他方と、電解液及びセパレータを具備する。
上記の電極は、正極、負極のいずれに用いてもよい。多くの場合、上記の電極は、正極として用いられる。
負極は、集電体と、集電体の表面に結着させた負極活物質層を有する。集電体については、正極で説明したものを適宜適切に採用すれば良い。負極活物質層は負極活物質、並びに必要に応じて導電助剤及び/又は結着剤を含む。
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る材料が使用可能である。したがって、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能である単体、合金または化合物であれば特に限定はない。たとえば、負極活物質としてLiや、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫などの14族元素、アルミニウム、インジウムなどの13族元素、亜鉛、カドミウムなどの12族元素、アンチモン、ビスマスなどの15族元素、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、銀、金などの11族元素をそれぞれ単体で採用すればよい。ケイ素などを負極活物質に採用すると、ケイ素1原子が複数のリチウムと反応するため、高容量の活物質となるが、リチウムの吸蔵及び放出に伴う体積の膨張及び収縮が顕著となるとの問題が生じる恐れがあるため、当該恐れの軽減のために、ケイ素などの単体に遷移金属などの他の元素を組み合わせた合金又は化合物を負極活物質として採用するのも好適である。合金又は化合物の具体例としては、Ag−Sn合金、Cu−Sn合金、Co−Sn合金等の錫系材料、各種黒鉛などの炭素系材料、ケイ素単体と二酸化ケイ素に不均化するSiOx(0.3≦x≦1.6)などのケイ素系材料、ケイ素単体若しくはケイ素系材料と炭素系材料を組み合わせた複合体が挙げられる。また、負極活物質して、Nb2O5、TiO2、Li4Ti5O12、WO2、MoO2、Fe2O3等の酸化物、又は、Li3−xMxN(M=Co、Ni、Cu)で表される窒化物を採用しても良い。負極活物質として、これらのものの一種以上を使用することができる。
また、負極活物質としては、炭素被覆シリコン材料を用いてもよい。炭素被覆シリコン材料を製造するために、例えば、CaSi2を酸と反応させて層状シリコン化合物とする層状シリコン化合物製造工程、前記層状シリコン化合物を300℃以上で加熱しシリコン材料とするシリコン材料製造工程、及びシリコン材料を炭素で被覆する被覆工程を行う。
負極は、集電体と、集電体の表面に結着させた負極活物質層を有する。
負極に用いる導電助剤及び結着剤については、正極で説明したものを同様の配合割合で適宜適切に採用すれば良い。
集電体の表面に活物質層を形成させるには、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、集電体の表面に活物質を塗布すればよい。具体的には、活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤及び/又は導電助剤を混合し、スラリーを調製する。上記溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。該スラリーを集電体の表面に塗布後、乾燥する。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮しても良い。
電解液は、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質とを含んでいる。
非水溶媒としては、環状エステル類、鎖状エステル類、エーテル類等が使用できる。環状エステル類としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ガンマブチロラクトン、ビニレンカーボネート、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトンを例示できる。鎖状エステル類としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステル等を例示できる。エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンを例示できる。非水溶媒としては、上記具体的な溶媒の化学構造のうち一部又は全部の水素がフッ素に置換した化合物を採用しても良い。
電解質としては、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2等のリチウム塩を例示できる。
電解液としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネートなどの非水溶媒に、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3などのリチウム塩を0.5mol/Lから1.7mol/L程度の濃度で溶解させた溶液を例示できる。
セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリアラミド(Aromatic polyamide)、ポリエステル、ポリアクリロニトリル等の合成樹脂、セルロース、アミロース等の多糖類、フィブロイン、ケラチン、リグニン、スベリン等の天然高分子、セラミックスなどの電気絶縁性材料を1種若しくは複数用いた多孔体、不織布、織布などを挙げることができる。また、セパレータは多層構造としてもよい。
次に、リチウムイオン二次電池の製造方法について説明する。
正極及び負極に必要に応じてセパレータを挟装させ電極体とする。電極体は、正極、セパレータ及び負極を重ねた積層型、又は、正極、セパレータ及び負極を捲いた捲回型のいずれの型にしても良い。正極の集電体及び負極の集電体から外部に通ずる正極端子及び負極端子までの間を、集電用リード等を用いて接続した後に、電極体に電解液を加えてリチウムイオン二次電池とするとよい。また、本発明のリチウムイオン二次電池は、電極に含まれる活物質の種類に適した電圧範囲で充放電を実行されればよい。
本発明のリチウムイオン二次電池の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部にリチウムイオン二次電池による電気エネルギーを使用している車両であればよく、たとえば、電気車両、ハイブリッド車両などであるとよい。車両にリチウムイオン二次電池を搭載する場合には、リチウムイオン二次電池を複数直列に接続して組電池とするとよい。リチウムイオン二次電池を搭載する機器としては、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。さらに、本発明のリチウムイオン二次電池は、風力発電、太陽光発電、水力発電その他電力系統の蓄電装置及び電力平滑化装置、船舶等の動力及び/又は補機類の電力供給源、航空機、宇宙船等の動力及び/又は補機類の電力供給源、電気を動力源に用いない車両の補助用電源、移動式の家庭用ロボットの電源、システムバックアップ用電源、無停電電源装置の電源、電動車両用充電ステーションなどにおいて充電に必要な電力を一時蓄える蓄電装置に用いてもよい。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に、実施例及び比較例などを示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。以下において、特に断らない限り、「部」とは質量部を意味し、「%」とは質量%を意味する。
(比較例1)
以下のとおり、比較例1の正極活物質及びリチウムイオン二次電池を製造した。
以下のとおり、比較例1の正極活物質及びリチウムイオン二次電池を製造した。
・リチウム複合酸化物の作製工程
正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)と、炭素被覆リン酸鉄リチウム(LiFePO4)とからなる。リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物及び炭素被覆リン酸鉄リチウムは、いずれもリチウム複合酸化物である。
正極活物質は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)と、炭素被覆リン酸鉄リチウム(LiFePO4)とからなる。リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物及び炭素被覆リン酸鉄リチウムは、いずれもリチウム複合酸化物である。
図1に示すS1において、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2を作製するために、以下に示す溶融塩法を行った。具体的には、ニッケルコバルトマンガン複合水酸化物と、溶融塩となるLiOHとをモル比率で1:1の割合でボールミルで混合し、900℃で加熱した。これにより、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)を得た。
上記で作製したリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物と、炭素被覆リン酸鉄リチウム(LiFePO4)とを、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物:炭素被覆リン酸鉄リチウム(LiFePO4)=67:27(質量比)の割合で混合して、比較例1の正極活物質を得た。
負極活物質を以下のようにして作製した。
・層状シリコン化合物製造工程
濃度46質量%のHF水溶液7mLと濃度36質量%のHCl水溶液56mLとの混合溶液を氷浴中で0℃とした。該混合溶液にアルゴンガス気流にて3.3gのCaSi2を加えて撹拌した。反応液からの発泡が完了したのを確認した後に反応液を室温まで昇温し、室温でさらに2時間撹拌した後、蒸留水20mLを加えてさらに10分間撹拌した。このとき黄色粉末が浮遊した。
濃度46質量%のHF水溶液7mLと濃度36質量%のHCl水溶液56mLとの混合溶液を氷浴中で0℃とした。該混合溶液にアルゴンガス気流にて3.3gのCaSi2を加えて撹拌した。反応液からの発泡が完了したのを確認した後に反応液を室温まで昇温し、室温でさらに2時間撹拌した後、蒸留水20mLを加えてさらに10分間撹拌した。このとき黄色粉末が浮遊した。
得られた反応液を濾過し、残渣を10mLの蒸留水で洗浄した後、10mLのエタノールで洗浄し、真空乾燥して2.5gの層状シリコン化合物を得た。該層状シリコン化合物をラマン分光光度計で分析したところ、341±10cm−1、360±10cm−1、498±10cm−1、638±10cm−1、734±10cm−1にピークが存在するラマンスペクトルが得られた。
・シリコン材料製造工程
上記層状シリコン化合物を1g秤量し、O2の量が1体積%以下のアルゴンガス雰囲気下にて、500℃で1時間保持する熱処理を行い、シリコン材料を得た。このシリコン材料に対してCuKα線を用いたX線回折測定(XRD測定)を行った。得られたXRDチャートから、Si微粒子由来と考えられるハローが観測された。また、Siに関して、XRDチャートのSi(111)面の回折ピークの半値幅を用いてシェラーの式から算出したSi結晶子サイズは約7nmであった。
上記層状シリコン化合物を1g秤量し、O2の量が1体積%以下のアルゴンガス雰囲気下にて、500℃で1時間保持する熱処理を行い、シリコン材料を得た。このシリコン材料に対してCuKα線を用いたX線回折測定(XRD測定)を行った。得られたXRDチャートから、Si微粒子由来と考えられるハローが観測された。また、Siに関して、XRDチャートのSi(111)面の回折ピークの半値幅を用いてシェラーの式から算出したSi結晶子サイズは約7nmであった。
なお、上記熱処理においては、層状シリコン化合物のSi−H結合が切断されて水素が離脱し、Si−Si結合の切断と再結合が生じる。Si−Si結合の再結合は同じ層内で生じると共に隣接する層どうしでも生じ得、該再結合によってナノレベルの径を有するナノシリコン一次粒子が生成する。このナノシリコン一次粒子どうしが凝集し、ナノシリコン凝集粒子(二次粒子)としてのシリコン材料が生成する。得られたシリコン材料を走査型電子顕微鏡で観察すると、シリコン材料は複数枚の板状シリコン体が厚さ方向に積層されてなる構造を有しているのがわかる。板状シリコン体は厚さが約10nm〜約100nmで観察され、長軸方向の長さは0.1μm〜50μmで観察された。
・被覆工程
上記シリコン材料をロータリーキルン型の反応器に入れ、プロパンガス通気下にて850℃、滞留時間30分間の条件で熱CVDを行い、炭素被覆シリコン材料を得た。反応器の炉心管は水平方向に配設されており、炉心管の回転速度は1rpmとした。炉心管の内周壁には邪魔板が配設されており、反応器は炉心管の回転に伴って邪魔板上に堆積した内容物が所定の高さで邪魔板から落下するように構成され、その構成によって内容物が撹拌される。
上記シリコン材料をロータリーキルン型の反応器に入れ、プロパンガス通気下にて850℃、滞留時間30分間の条件で熱CVDを行い、炭素被覆シリコン材料を得た。反応器の炉心管は水平方向に配設されており、炉心管の回転速度は1rpmとした。炉心管の内周壁には邪魔板が配設されており、反応器は炉心管の回転に伴って邪魔板上に堆積した内容物が所定の高さで邪魔板から落下するように構成され、その構成によって内容物が撹拌される。
この炭素被覆シリコン材料の断面を走査型電子顕微鏡で観察すると、シリコン材料の表面に、炭素層が形成されていることがわかる。
・リチウムイオン二次電池
図1のS2に示すように、正極活物質(リチウム複合酸化物67質量部及び炭素被覆リン酸鉄リチウム27質量部)94質量部、アセチレンブラック3質量部、及び結着剤としてのフッ素含有高分子材料3質量部を混合し、更に、溶剤としてのn−メチルーピロリドン(NMP)を加えてスラリー状の正極合材を調製した。正極合材はNMP添加後半日経過した後にゲル化した。
図1のS2に示すように、正極活物質(リチウム複合酸化物67質量部及び炭素被覆リン酸鉄リチウム27質量部)94質量部、アセチレンブラック3質量部、及び結着剤としてのフッ素含有高分子材料3質量部を混合し、更に、溶剤としてのn−メチルーピロリドン(NMP)を加えてスラリー状の正極合材を調製した。正極合材はNMP添加後半日経過した後にゲル化した。
S3において、ゲル化前のスラリー状の正極合材を、集電体としてのアルミニウム箔の表面にドクターブレードを用いて塗布して、正極活物質層を形成した。正極活物質層を、80℃で20分間乾燥することで、NMPを揮発により除去した。表面に正極活物質層を形成したアルミニウム箔を、ロ−ルプレス機を用いて圧縮し、アルミニウム箔と正極活物質層とを強固に密着接合させた。接合物を120℃で6時間、真空乾燥機で加熱し、所定の形状に切り取り、正極を得た。
負極活物質として炭素被覆シリコン材料70質量部、負極活物質として天然黒鉛15質量部、導電助剤としてアセチレンブラック5質量部、バインダー溶液33質量部を混合してスラリー状の負極合材を調製した。バインダー溶液には、ポリアミドイミド樹脂がN−メチル−2−ピロリドンに30質量%溶解した溶液を用いている。スラリー状の上記負極合材を、集電体としての厚さ約20μmの電解銅箔の表面にドクターブレードを用いて塗布し、乾燥して、銅箔上に負極活物質層を形成した。その後、ロールプレス機により、集電体と負極活物質層を強固に密着接合させた。これを100℃で2時間真空乾燥し、負極活物質層の厚さが16μmの負極を形成した。
S4において、上記の手順で作製した正極及び負極を、セパレータ(ヘキストセラニーズ社製ガラスフィルター及びCelgard社製「Celgard2400」)を両極の間に介装して電極体とした。この電極体を電池ケース(CR2032型コイン電池用部材、宝泉株式会社製)に収容した。電池ケースには、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとを1:1(体積比)で混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解した非水電解液を注入し、電池ケースを密閉して、比較例1のリチウムイオン二次電池を得た。
(参考例1)
図2に示すように、比較例1で作製したリチウム複合酸化物(リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物)について、S1の後に、以下の工程を行った。
図2に示すように、比較例1で作製したリチウム複合酸化物(リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物)について、S1の後に、以下の工程を行った。
・洗浄工程
S11において、洗浄溶媒としての純水150mlに上記リチウム複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)100gを加えて、メカニカルスターラー(RW20デジタル、アズワン株式会社)で500〜600rpm、5分間、室温で攪拌し、懸濁液とした。その後、懸濁液に対し、発振周波数40kHzでの超音波処理(超音波洗浄機USK−3R、アズワン株式会社)を60分間行った。なお、純水は、純水製造装置オートスチルWS200(ヤマト科学株式会社)で製造したものを用いた。
S11において、洗浄溶媒としての純水150mlに上記リチウム複合酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)100gを加えて、メカニカルスターラー(RW20デジタル、アズワン株式会社)で500〜600rpm、5分間、室温で攪拌し、懸濁液とした。その後、懸濁液に対し、発振周波数40kHzでの超音波処理(超音波洗浄機USK−3R、アズワン株式会社)を60分間行った。なお、純水は、純水製造装置オートスチルWS200(ヤマト科学株式会社)で製造したものを用いた。
・除去工程
S12において、得られた懸濁液を濾過し、粉体を120℃で5時間乾燥して乾燥物を得た。
S12において、得られた懸濁液を濾過し、粉体を120℃で5時間乾燥して乾燥物を得た。
・解砕工程
S13において、乾燥物を乳鉢で解砕し、篩い(メッシュ#20)に通した。これにより、洗浄工程、除去工程及び解砕工程を経たリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物を得た。
S13において、乾燥物を乳鉢で解砕し、篩い(メッシュ#20)に通した。これにより、洗浄工程、除去工程及び解砕工程を経たリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物を得た。
このリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物と炭素被覆リン酸鉄リチウム(LiFePO4)とを、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物:炭素被覆リン酸鉄リチウム(LiFePO4)=67:27(質量比)の割合で混合して、参考例1の正極活物質を得た。
参考例1の正極活物質を用いて比較例1と同様に正極合材を調製した。正極合材はNMP添加後半日経過した後でもゲル化しなかった。このスラリー状の正極合材を用いて比較例1と同様に正極を作製した。更に、この正極を用いて比較例1と同様の製造方法により参考例1のリチウムイオン二次電池を製造した。
(参考例2)
図3に示すように、参考例1で作製されたリチウム複合酸化物(リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物)について、S13の後に、以下の加熱工程を行った。
図3に示すように、参考例1で作製されたリチウム複合酸化物(リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物)について、S13の後に、以下の加熱工程を行った。
・加熱工程
S14において、参考例1で作製されたリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)について、大気中で250℃、5時間の加熱を行った。加熱後には、リチウム複合酸化物は自然放冷させた。これにより、加熱工程を経たリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)を得た。
S14において、参考例1で作製されたリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)について、大気中で250℃、5時間の加熱を行った。加熱後には、リチウム複合酸化物は自然放冷させた。これにより、加熱工程を経たリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2)を得た。
このリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物と炭素被覆リン酸鉄リチウム(LiFePO4)とを、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物:炭素被覆リン酸鉄リチウム(LiFePO4)=67:27(質量比)の割合で混合して、参考例2の正極活物質を得た。
参考例2の正極活物質を用いて比較例1と同様に正極合材を調製した。正極合材はNMP添加後半日経過した後でもゲル化しなかった。このスラリー状の正極合材を用いて比較例1と同様に正極を作製した。更に、この正極を用いて比較例1と同様の製造方法により参考例2のリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例1)
実施例1の正極活物質は、加熱工程での加熱温度が400℃である点を除いて、参考例2の正極活物質の製造方法と同様に製造された。
実施例1の正極活物質は、加熱工程での加熱温度が400℃である点を除いて、参考例2の正極活物質の製造方法と同様に製造された。
実施例1の正極活物質を用いて比較例1と同様に正極合材を調製した。正極合材はNMP添加後、半日経過した後でもゲル化しなかった。このスラリー状の正極合材を用いて比較例1と同様に正極を作製した。更に、この正極を用いて比較例1と同様の製造方法により実施例1のリチウムイオン二次電池を製造した。
(実施例2)
実施例2の正極活物質は、加熱工程での加熱温度が500℃である点を除いて、参考例2の正極活物質の製造方法と同様に製造された。
実施例2の正極活物質は、加熱工程での加熱温度が500℃である点を除いて、参考例2の正極活物質の製造方法と同様に製造された。
実施例2の正極活物質を用いて比較例1と同様に正極合材を調製した。正極合材はNMP添加後、半日経過した後でもゲル化しなかった。このスラリー状の正極合材を用いて比較例1と同様に正極を作製した。更に、この正極を用いて比較例1と同様の製造方法により実施例2のリチウムイオン二次電池を製造した。
(参考例3)
参考例3の正極活物質は、加熱工程での加熱温度が600℃である点を除いて、参考例2の正極活物質の製造方法と同様に製造された。
参考例3の正極活物質は、加熱工程での加熱温度が600℃である点を除いて、参考例2の正極活物質の製造方法と同様に製造された。
参考例3の正極活物質を用いて比較例1と同様に正極合材を調製した。正極合材はNMP添加後、半日経過した後でもゲル化しなかった。このスラリー状の正極合材を用いて比較例1と同様に正極を作製した。更に、この正極を用いて比較例1と同様の製造方法により参考例3のリチウムイオン二次電池を製造した。
(参考例4)
参考例4の正極活物質は、加熱工程での加熱温度が700℃である点を除いて、参考例2の正極活物質の製造方法と同様に製造された。
参考例4の正極活物質は、加熱工程での加熱温度が700℃である点を除いて、参考例2の正極活物質の製造方法と同様に製造された。
参考例4の正極活物質を用いて比較例1と同様に正極合材を調製した。正極合材はNMP添加後、半日経過した後でもゲル化しなかった。このスラリー状の正極合材を用いて比較例1と同様に正極を作製した。更に、この正極を用いて比較例1と同様の製造方法により参考例4のリチウムイオン二次電池を製造した。
<電池特性>
比較例1,参考例1〜4及び実施例1,2のリチウムイオン二次電池の放電抵抗を測定した。各リチウムイオン二次電池について、温度0℃、SOC15%まで充電し、その後、3Cで10秒のCC放電をした際の電圧変化量(放電前電圧と放電10秒後電圧との差)及び電流値からオームの法則により放電抵抗(直流抵抗)を測定した。比較例1のリチウムイオン二次電池の放電抵抗を1としたときの、他のリチウムイオン二次電池の放電抵抗の比率を算出して、表2に示した。
比較例1,参考例1〜4及び実施例1,2のリチウムイオン二次電池の放電抵抗を測定した。各リチウムイオン二次電池について、温度0℃、SOC15%まで充電し、その後、3Cで10秒のCC放電をした際の電圧変化量(放電前電圧と放電10秒後電圧との差)及び電流値からオームの法則により放電抵抗(直流抵抗)を測定した。比較例1のリチウムイオン二次電池の放電抵抗を1としたときの、他のリチウムイオン二次電池の放電抵抗の比率を算出して、表2に示した。
表2に示すように、参考例1、2のリチウムイオン二次電池は、比較例1のリチウムイオン二次電池と同じ放電抵抗を示した。実施例1,2のリチウムイオン二次電池は、比較例1のリチウムイオン二次電池よりも放電抵抗が低かった。このことから、洗浄工程の後に250℃を超え且つ600℃未満の温度で、洗浄後のリチウム複合酸化物を加熱することで、電池性能が向上することがわかった。
また、洗浄工程を行わなかった比較例1の正極合材は、ゲル化した。これは、以下の理由によるものと考えられる。リチウム複合酸化物は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物からなり、これはアルカリ性の溶融塩原料を用いて作製されている。また、リチウム複合酸化物の製造過程では、LiCO3が水と反応して水酸化リチウムなどのアルカリ成分が生じる。このため、作製されたリチウム複合酸化物には、アルカリ成分が残る。このアルカリ成分は、正極合材を作製する際に添加されるPVDFを架橋させて、正極合材をゲル化させる。参考例1〜4及び実施例1,2のリチウム複合酸化物のように、水による洗浄を行うことにより、リチウム複合酸化物からアルカリ成分が除去された。このため、正極合材を作製する際に添加されたPVDFは架橋反応を起こさず、正極合材はペースト状を維持した。
Claims (10)
- リチウム複合酸化物を比誘電率5以上の溶媒で洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程を経た前記リチウム複合酸化物を、250℃を超え且つ600℃未満の温度で加熱する加熱工程と、を有することを特徴とする電極活物質の製造方法。 - 前記溶媒が比誘電率15以上である請求項1に記載の電極活物質の製造方法。
- 前記溶媒が水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートから選択される1種以上である請求項1又は2に記載の電極活物質の製造方法。
- 前記洗浄工程と前記加熱工程との間に、前記リチウム複合酸化物から溶媒を除去する除去工程を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極活物質の製造方法。
- 前記洗浄工程と前記加熱工程との間、又は前記除去工程と前記加熱工程との間に、前記リチウム複合酸化物を解砕する解砕工程を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極活物質の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極活物質の製造方法により製造された電極活物質。
- 請求項6に記載の電極活物質を有するリチウムイオン二次電池用電極。
- 更に、フッ素含有高分子材料を含む結着剤を有する請求項7に記載のリチウムイオン二次電池用電極。
- 前記フッ素含有高分子材料は、ポリフッ化ビニリデン、及び/又はポリテトラフルオロエチレンからなる請求項8に記載のリチウムイオン二次電池用電極。
- 請求項7〜9のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用電極を具備するリチウムイオン二次電池。
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