JP2016199088A - 4輪駆動車両の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】2輪駆動中に解放される2つの断接機構を備え、2輪駆動中にこれら2つの断接機構間の回転要素の連れまわりを抑制できる4輪駆動車両の制御装置を提供することにある。【解決手段】前輪駆動用クラッチ50およびフロント側クラッチ36の遮断状態では、クラッチハブ76が後輪出力軸44と一体的に回転し、インナハブ79、クラッチドラム78、摩擦板80、およびプレート81は非回転状態となる。従って、摩擦板80とプレート81とは相対回転することはなく、クラッチハブ76とそのクラッチハブ76と隣り合う一枚のプレート81との間でのみ摩擦による引き摺りトルクが発生する。これより、複数枚の互いに積層される摩擦板80とプレート81との間で引き摺りトルクが発生する場合に比べて、引き摺りトルクが大幅に低減されるため、燃費が向上する。【選択図】図3
Description
本発明は、2輪駆動走行と4輪駆動走行とを切り替える断接機構を備えた4輪駆動車両の制御に関するものである。
車両に備えられる主駆動輪に動力伝達可能に連結されている入力回転部材と副駆動輪に動力伝達可能に連結されている出力回転部材との間の動力伝達経路上に設けられている第1断接機構と、出力回転部材と副駆動輪との間の動力伝達経路上に第2断接機構とを、備えた4輪駆動車両が知られている。例えば、特許文献1の4輪駆動車両にあっては、トランスファ5内に、デフケース39とプロペラシャフトとの間を断接する噛み合いクラッチで構成される2−4切替機構7が設けられ、リアデフ25内には、アウタケース65とインナケース67との間を断接する多板クラッチで構成されるクラッチ機構71が設けられている。特許文献1の4輪駆動車両にあっては、2輪駆動走行中に、2−4切替機構7およびクラッチ機構71の接続を解除することで、2−4切替機構7からクラッチ機構71の間の動力伝達経路を構成する回転部材(プロペラシャフト21等)の引き摺り(連れまわり)を抑制して燃費を向上させている。
しかしながら、上述した特許文献1の4輪駆動車両において、クラッチ機構71にあっては摩擦式の多板クラッチで構成されているため、クラッチ機構71が解放されても、クラッチ機構を構成する交互に積層される複数枚の摩擦板と複数枚のプレートとの間で、クラッチ機構71内のオイルの粘度に起因して引き摺りトルクが発生する。結果として、クラッチ機構71が解放されてもプロペラシャフト21等が連れ回され、燃費向上の効果が低減してしまうという問題があった。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、主駆動輪に動力伝達可能に連結されている入力回転部材と、副駆動輪に動力伝達部材を介して動力伝達可能に連結されている出力回転部材との間の動力伝達経路上に設けられている第1断接機構と、前記動力伝達部材と副駆動輪との間の動力伝達経路上に第2断接機構とを、備えた4輪駆動車両において、2輪駆動走行中に発生する連れまわりを抑制できる4輪駆動車両の制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するための、第1発明の要旨とするところは、(a)主駆動輪に動力伝達可能に連結され軸線まわりに回転する入力回転部材と、副駆動輪に動力伝達部材を介して動力伝達可能に連結され、前記入力回転部材と同じ軸線まわりに回転する出力回転部材と、前記入力回転部材と前記出力回転部材との間の動力伝達経路上に設けられている第1断接機構と、前記動力伝達部材と前記副駆動輪との間の動力伝達経路上に設けられている第2断接機構とを、含んで構成される4輪駆動車両において、(b)前記第1断接機構および前記第2断接機構の断接状態を切り替えることにより、車両の駆動状態を制御する4輪駆動車両の制御装置であって、(c)前記第1断接機構は、前記入力回転部材に回転伝達可能に連結されているハブと、(d)前記出力回転部材に回転伝達可能に連結されているドラムと、(e)前記ドラムの内周側に前記ハブと相対回転可能に配置されるインナハブと、(f)前記インナハブの外周面に相対回転不能、且つ、軸線方向の移動可能に係合する複数枚の摩擦板と、(g)前記ドラムの内周面に相対回転不能、且つ、軸線方向の移動可能に係合するとともに前記摩擦板と交互に重ねられて配置される複数枚のプレートと、(h)前記複数枚の摩擦板およびプレートを前記軸線方向に押圧するピストンと、(i)前記インナハブに対して常時相対回転不能に係合するとともに、前記ハブと係合する軸線方向の位置に移動可能に設けられ、且つ、前記ピストンに連動して前記ハブと係合する位置に付勢されるスリーブとを、備え、(j)前記ピストンの押圧力の大きさを制御して前記第1断接機構の伝達トルクの大きさを調整可能に構成され、(k)前記制御装置は、(l)前記第1断接機構および前記第2断接機構が遮断されている2輪駆動走行状態で前記第1断接機構を接続するに際して、(m)前記ピストンを作動させて前記摩擦板および前記プレートを押圧し、前記ドラムおよび前記ハブの回転速度が同期したと判断すると、前記第1断接機構の伝達トルクを低下させ、前記ドラムの回転速度が低下すると、前記スリーブと前記ハブとが非係合であると判断し、(n)前記第1断接機構の伝達トルクを低下させても、前記ドラムの回転速度が低下しない場合には、前記スリーブと前記ハブとが係合したものと判断することを特徴とする。
第1発明の4輪駆動車両の制御装置によれば、上記のように構成される4輪駆動車両にあっては、第1断接機構および第2断接機構の遮断状態では、ハブが入力回転部材と一体的に回転し、インナハブ、ドラム、摩擦板、およびプレートは非回転状態となる。従って、摩擦板とプレートとが相対回転することはなく、ハブとそのハブと隣り合う一枚のプレートとの間でのみ摩擦による引き摺りトルクが発生する。これより、互いに積層される複数枚の摩擦板とプレートとの間で引き摺りトルクが発生する場合に比べて、引き摺りトルクが大幅に低減されるため、燃費が向上する。
また、ピストンが軸線方向に移動し、摩擦板およびプレートを押圧することで、ハブとそのハブと隣り合う一枚のプレートとの間で摩擦力が発生するため、ハブとプレートが係合するドラムとの相対回転速度が徐々に小さくなる。ドラム、インナハブ、スリーブは一体回転しているので、ドラムおよびハブの回転速度が同期すると、スリーブとハブとが係合可能となる。このとき、ピストンに連動して、スリーブがハブと係合する位置に移動させられ、スリーブとハブとが係合されることで、ハブとインナハブとがスリーブを介して接続される。
ここで、ドラムおよびインナハブの回転速度が同期し、ピストンに連動してスリーブがハブと係合する位置に向かって軸線方向に移動した際に、スリーブの係合歯の先端とハブの係合歯の先端とが接触し、正常に係合されない(非係合)可能性がある。この状態で第1断接機構の伝達トルクを調整することによる前後輪のトルク配分制御が実行されると、所望するトルク配分が得られなかったり、スリーブおよびハブの係合歯同士の摺接により耐久性低下を招く可能性がある。
これに対して、電子制御装置は、ドラムおよびハブの回転速度が同期したと判断すると、第1断接機構の伝達トルクを低下させる。このとき、スリーブとハブとが係合している場合には、伝達トルクが低下してもドラムの回転速度が低下することはなく、ドラムとハブとの相対回転速度も増加しない。一方、スリーブとハブとが正常に係合していない場合には、第1断接機構の伝達トルクが低下すると、ドラムの回転速度が低下し、ドラムとハブとの相対回転速度も増加する。そこで、電子制御装置は、第1断接機構の伝達トルクを低下させ、このときにドラムの回転速度が低下した場合、またはドラムとハブとの相対回転速度が増加した場合には、スリーブとハブとが非係合であると判断し、ドラムの回転速度が低下しない場合、または前記相対回転速度が増加しない場合には、スリーブとハブとが係合したものと判断することができる。
また、第2発明の要旨とするところは、第1発明の4輪駆動車両の制御装置において、前記第1断接機構の伝達トルクを低下させた際に、前記スリーブと前記ハブとが非係合と判断されると、前記第1断接機構の前記伝達トルクを再度増加させることを特徴とする。このように、第1断接機構の伝達トルクを低下させた後に、スリーブとハブとが非係合と判断されると、第1断接機構の伝達トルクを再度増加するため、ハブおよびドラムの回転速度が再度同期させられ、このときにスリーブとハブとを係合させることができる。ここで、ハブおよびドラムの回転速度が同期すると、再度伝達トルクが低下させられ、スリーブとハブとが係合したか否か再度判定される。このときもスリーブとハブとが非係合であると判断されると、第1断接機構の伝達トルクの増加が実行され、伝達トルクの増加による回転同期および係合判定が実行される。このように、スリーブとハブとが係合したと判断されるまで、ハブとドラムとの回転同期、ならびに回転同期後の係合判定が繰り返し実行されるため、スリーブとハブとの係合を確実に判断することができる。
また、第3発明の要旨とするところは、第1発明または第2発明の4輪駆動車両の制御装置において、2輪駆動走行から4輪駆動走行に切り替える際には、前記スリーブと前記ハブとの係合が判断された後に、前記第2断接機構が接続されることを特徴とする。このように、スリーブとハブとが係合された状態では、出力回転部材と第2断接機構との間の動力伝達経路を構成する回転要素が連れ回った状態となるため、第2断接機構によって接続される2つの回転要素の回転速度が同期し、第2断接機構の接続が可能となる。
また、第4発明の要旨とするところは、第3発明の車両の断接機構の制御装置において、前記4輪駆動車両の駆動状態を示す表示装置を備え、前記第1断接機構および前記第2断接機構の接続が判断された後に4輪駆動走行状態であることを表示することを特徴とする。このようにすれば、4輪駆動走行に確実に切り替わると4輪駆動走行状態であることが表示装置に表示されるため、実際の駆動状態と表示による駆動状態とが異なることを防止することができる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が適用された4輪駆動(4WD)車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、駆動力源としてのエンジン12、左右の前輪14L,14R(特に区別しない場合には前輪14という)、左右の後輪16L,16R(特に区別しない場合には後輪16という)、エンジン12の動力を前輪14と後輪16とへそれぞれ伝達する動力伝達装置18などを備えている。主駆動輪として機能する後輪16は、2輪駆動(2WD)走行中及び4輪駆動(4WD)走行中のときに共に駆動輪となる主駆動輪である。副駆動輪として機能する前輪14は、2WD走行中のときに従動輪となり且つ4WD走行中のときに駆動輪となる副駆動輪である。従って、車両10は、前置エンジン後輪駆動(FR)をベースとする4輪駆動車両である。
動力伝達装置18は、エンジン12に連結された変速機20、変速機20に連結された前後輪動力分配装置であるトランスファ22、トランスファ22にそれぞれ連結されたフロントプロペラシャフト24及びリヤプロペラシャフト26、フロントプロペラシャフト24に連結された前輪用差動歯車装置28、リヤプロペラシャフト26に連結された後輪用差動歯車装置30、前輪用差動歯車装置28に連結された左右の前輪車軸32L,32R(特に区別しない場合には前輪車軸32という)、後輪用差動歯車装置30に連結された左右の後輪車軸34L,34R(特に区別しない場合には後輪車軸34という)などを備えている。このように構成された動力伝達装置18において、変速機20を介してトランスファ22へ伝達されたエンジン12の動力は、トランスファ22から、リヤプロペラシャフト26、後輪用差動歯車装置30、後輪車軸34等の後輪側の動力伝達経路を順次介して後輪16へ伝達される。また、後輪16側へ伝達されるエンジン12の動力の一部は、トランスファ22にて前輪14側へ分配されて、フロントプロペラシャフト24、前輪用差動歯車装置28、前輪車軸32等の前輪側の動力伝達経路を順次介して前輪14へ伝達される。
前輪用差動歯車装置28は、フロント側クラッチ36を前輪車軸32R側に(すなわち前輪用差動歯車装置28と前輪14Rとの間に)備えている。フロント側クラッチ36は、前輪用差動歯車装置28と前輪14Rとの間の動力伝達経路を車両の走行状態に応じて接続または遮断する、電気的(電磁的)に制御されるドグクラッチ(すなわち噛合式クラッチ)である。なお、フロント側クラッチ36において、更に、同期機構(シンクロ機構)が備えられていても構わない。このフロント側クラッチ36が、本発明の第2断接機構に対応する。
図2は、トランスファ22の概略構成を説明する骨子図である。図2において、トランスファ22は、非回転部材としてのトランスファケース40を備えている。トランスファ22は、トランスファケース40内において、入力軸42と、主駆動輪としての後輪16へ動力を出力する後輪側出力軸44と、副駆動輪としての前輪14へ動力を出力する駆動側スプロケット46と、入力軸42の回転を変速して後輪側出力軸44へ伝達する副変速機としてのハイロー切替機構48と、後輪側出力軸44から駆動側スプロケット46へ伝達する伝達トルクを調整する多板のクラッチとしての前輪駆動用クラッチ50とを共通の(入力軸42および後輪出力軸44の)軸線C1まわりに備えている。また、トランスファ22は、トランスファケース40内において、前輪側出力軸52と、前輪側出力軸52に一体的に設けられた被駆動側スプロケット54とを共通の(フロントプロペラシャフト24および前輪側出力軸52の)軸線C2まわりに備え、さらに、駆動側スプロケット46と被駆動側スプロケット54との間を連結する前輪駆動用チェーン56と、後輪側出力軸44と駆動側スプロケット46とを一体的に連結するドグクラッチとしてデフロック機構58とを備えている。本実施例において、前輪駆動用クラッチ50が本発明の第1断接機構に対応し、後輪側出力軸44が本発明の入力回転部材に対応し、駆動側スプロケット46が本発明の出力回転部材に対応している。
入力軸42は、変速機20の出力回転部材(不図示)にスプライン嵌合継手などを介して連結されており、エンジン12から変速機20を介して伝達された駆動力を受けて回転駆動させられる。後輪側出力軸44は、リヤプロペラシャフト26、後輪用差動歯車装置30、左右の後輪車軸34等を介して主駆動輪として機能する左右後輪16に動力伝達可能に連結されている。駆動側スプロケット46は、前輪駆動用チェーン56、被駆動用スプロケット54、フロントプロペラシャフト24、前輪用差動歯車装置28、左右の前輪車軸32、フロント側クラッチ36等を介して副駆動輪である左右の前輪14に動力伝達可能に連結されている。前輪側出力軸52は、フロントプロペラシャフト24に連結されている。なお、フロントプロペラシャフト24が、本発明の動力伝達部材に対応している。
このように構成されたトランスファ22は、例えば駆動側スプロケット46へ伝達するトルクを遮断して、変速機20から伝達された動力を後輪16のみへ伝達して2輪駆動走行状態としたり、或いは駆動側スプロケット46へ動力を伝達して、前輪14及び後輪16のそれぞれにトルクを分配して4輪駆動走行状態とする。また、トランスファ22は、例えば高速側ギヤ段(高速側変速段)H及び低速側ギヤ段(低速側変速段)Lの何れかを成立させて、変速機20からの回転をそのまま或いは減速して後段へ伝達する。
ハイロー切替機構48は、シングルピニオン型の遊星歯車装置60と、ハイロースリーブ62とを備えている。遊星歯車装置60は、入力軸42に軸線C1まわりの相対回転不能に連結されたサンギヤSと、そのサンギヤSに対して略同心に配置され、トランスファケース40に軸線C1まわりの回転不能に連結されたリングギヤRと、これらサンギヤS及びリングギヤRに噛み合う複数のピニオンギヤPを自転可能且つサンギヤSまわりの公転可能に支持するキャリヤCAとを有している。よって、サンギヤSの回転速度は入力軸42に対して等速であり、キャリヤCAの回転速度は入力軸42に対して減速される。このサンギヤSの内周面にはハイ側ギヤ歯64が固設されており、また、キャリヤCAにはハイ側ギヤ歯64と同径のロー側ギヤ歯66が固設されている。ハイ側ギヤ歯64は、入力軸42と等速の回転を出力する、高速側ギヤ段Hの成立に関与するスプライン歯である。ロー側ギヤ歯66は、ハイ側ギヤ歯64よりも低速側の回転を出力する、低速側ギヤ段Lの成立に関与するスプライン歯である。ハイロースリーブ62は、後輪側出力軸44に軸線C1と平行な方向の相対移動可能にスプライン嵌合されており、フォーク連結部62aと、フォーク連結部62aと隣接して一体的に設けられた、後輪側出力軸44の軸線C1と平行な方向への移動によってハイ側ギヤ歯64とロー側ギヤ歯66とにそれぞれ噛み合う外周歯62bとを有している。ハイ側ギヤ歯64と外周歯62bとが噛み合うことで、入力軸42の回転と等速の回転が後輪側出力軸44へ伝達され、ロー側ギヤ歯66と外周歯62bとが噛み合うことで、入力軸42の回転に対して減速された回転が後輪側出力軸44へ伝達される。ハイ側ギヤ歯64とハイロースリーブ62とは、高速側ギヤ段Hを形成する高速側ギヤ段用クラッチとして機能し、ロー側ギヤ歯66とハイロースリーブ62とは、低速側ギヤ段Lを形成する低速側ギヤ段用クラッチとして機能する。ハイロー切替機構48は、ハイロースリーブ62がハイ側ギヤ歯64とロー側ギヤ歯66との何れとも噛み合わないことにより動力伝達遮断状態(ニュートラル状態)になり、高速側ギヤ段Hと低速側ギヤ段Lとの間でギヤ段が切り替えられる際には、この動力伝達可能状態を経てから切り替えられる。
デフロック機構58は、駆動側スプロケット46の内周面に固設されたロック歯68と、後輪側出力軸44に軸線C1と平行な方向の相対移動可能にスプライン嵌合されて、軸線C1と平行な方向への移動によってロック歯68に噛み合う外周歯70aが外周面に固設されたロックスリーブ70とを有している。トランスファ22は、ロックスリーブ70の外周歯70aとロック歯68とが噛み合ったデフロック機構58の係合状態では、後輪側出力軸44と駆動側スプロケット46とが一体的に回転させられて、センターデフロック状態が形成される。
ハイロースリーブ62は、遊星歯車装置60に対して駆動側スプロケット46側の空間に設けられている。ロックスリーブ70は、ハイロー切替機構48と駆動側スプロケット46との間の空間に、ハイロースリーブ62と隣接して別体で設けられている。トランスファ22は、ハイロースリーブ62とロックスリーブ70との間に、それぞれに当接してハイロースリーブ62とロックスリーブ70とを相互に離間させる側へ付勢する第1スプリング72を備えている。トランスファ22は、駆動側スプロケット46とロックスリーブ70との間に、後輪側出力軸44の凸部44aとロックスリーブ70とに当接してロックスリーブ70をロック歯68から離す側へ付勢する第2スプリング74を備えている。凸部44aは、駆動側スプロケット46の径方向内側の空間においてロック歯68側に突出して設けられた後輪側出力軸44の鍔部である。ハイ側ギヤ歯64は、軸線C1に平行な方向に見てロー側ギヤ歯66よりもロックスリーブ70から離れた位置に設けられている。ハイロースリーブ62の外周歯62bは、ハイロースリーブ62がロックスリーブ70から離間する側(図2,3において左側)にてハイ側ギヤ歯64に噛み合い、ハイロースリーブ62がロックスリーブ70に接近する側(図2,3において右側)にてロー側ギヤ歯66に噛み合う。ロックスリーブ70の外周歯70aは、ロックスリーブ70が駆動側スプロケット46に接近する側(図2,3において右側)にてロック歯68に噛み合う。従って、ロックスリーブ70の外周歯70aは、ハイロースリーブ62がロー側ギヤ歯66と噛み合う位置にてロック歯68に噛み合う。
前輪駆動用クラッチ50は、後輪出力軸44と駆動側スプロケット46との間の動力伝達経路上であって、後輪側出力軸44の外周側、且つ、駆動側スプロケット46に対してハイロー切替機構48とは反対側に配置されている。に設けられている。前輪駆動用クラッチ50は、図3および図4に示すように、後輪側出力軸44に相対回転不能にスプライン嵌合することで回転伝達可能に連結されているクラッチハブ76と、駆動側スプロケット46に回転伝達可能に連結されているクラッチドラム78と、クラッチドラム78の内周側にクラッチハブ76に対して相対回転可能に配置されている円筒状のインナハブ79と、内周部がインナハブ79の外周面に相対回転不能、且つ、軸線方向の移動可能に係合する複数枚の円板状の摩擦板80と、外周部がクラッチドラム78の内周面に相対回転不能、且つ、軸線方向の移動可能に係合するとともに、摩擦板80と交互に重ねて配置される複数枚の円板状のプレート81と、複数枚の摩擦板80および複数枚のプレート81を軸線方向に押圧するピストン82と、インナハブ79に対して常時相対回転不能に係合するとともに、クラッチハブ76と係合する軸線方向の位置に移動可能に設けられ、且つ、ピストン82に連動してクラッチハブ76と係合する位置に付勢されるスリーブ83とを、備えて構成される、前記ピストン82の押圧力の大きさを制御して伝達トルクを調整可能な湿式多板の摩擦クラッチ機構である。なお、クラッチハブ76が本発明のハブに対応し、クラッチドラム78が本発明のドラムに対応している。
前輪駆動用クラッチ50は、ピストン82が駆動側スプロケット46から軸線C1方向(以下、軸線方向と記載する)で遠ざかる(離れる)側である非押圧側(図2,3において右側)に移動させられて、摩擦板80およびプレート81を押圧しない状態では、解放状態となる。一方で、前輪駆動用クラッチ50は、ピストン82が軸線C1方向で駆動側スプロケット46に近づく側である押圧側(図2,3において左側)に移動させられて、摩擦板80およびプレート81を押圧する状態では、ピストン82の押圧力に応じて前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクが調整され、スリップ状態または係合状態となる。
クラッチハブ76は、径方向に伸びる円板形状を有し、その内周部が後輪出力軸44にスプライン嵌合されることで、後輪出力軸44に対して相対回転不能とされている。すなわち、クラッチハブ76は、後輪出力軸44と一体的に回転させられる。クラッチハブ76を覆うようにして軸線方向の一方が開口する有底円筒状のクラッチドラム78が配置されている。クラッチドラム78の有底部が、軸線方向において駆動側スプロケット46側に配置され、駆動側スプロケット46に接続されている。クラッチドラム78の円筒形状に形成される部位の内周面には、複数枚のプレート81がクラッチドラム78に対して相対回転不能、且つ、軸線方向への相対移動可能にスプライン嵌合されている。
クラッチドラム78の内周側に、クラッチハブ76に対して相対回転可能なインナハブ79が配置されている。インナハブ79は、円筒状に形成されており、その外周面には、複数枚の摩擦板80が、インナハブ79に対して相対回転不能、且つ、軸線方向への相対移動可能にスプライン嵌合されている。摩擦板80とプレート81とは、軸線方向で交互に積層されており、これら複数枚の摩擦板80および複数枚のプレート81から前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素89が構成される。この摩擦係合要素89の軸線方向において駆動側スプロケット46の背面側にピストン82が配置されている。
ピストン82は、軸線方向への移動可能に構成されており、ピストン82が軸線方向において駆動側スプロケット46側に移動させられると、摩擦係合要素89(摩擦板80およびプレート81)を押圧することとなる。なお、ピストン82を軸方向に移動させる機構(ピストン駆動装置PD1)については後述するものとする。
インナハブ79の内周側には、円筒状のスリーブ83が配置されている。スリーブ83の外周面には、係合歯83aが形成されている。また、インナハブ79の内周部には、スリーブ83の係合歯83aと常時係合する係合歯79aが形成されている。さらに、クラッチハブ76には、軸線方向において係合歯79aと隣接するとともに、径方向において係合歯79aと同じ位置に係合歯76aが形成されている。係合歯76aは、スリーブ83の係合歯83aと係合可能に構成されており、スリーブ83が軸線方向において駆動側スプロケット46側に移動すると、スリーブ83の係合歯83aが、クラッチハブ76の係合歯76aと係合する。このとき、クラッチハブ76がスリーブ83を介してインナハブ79と接続され、クラッチハブ76、インナハブ79、およびスリーブ83が一体的に回転させられる。
インナハブ79の内周側であって、軸線方向においてピストン82とスリーブ83との間には、第4スプリング85が与荷重状態で介挿されている。また、インナハブ79の円筒部の内周側であって、軸線方向においてスリーブ83とインナハブ79との間には、第4スプリング85よりも付勢力が小さい第5スプリング87が与荷重状態で介挿されている。これにより、前輪駆動用クラッチ50が解放状態(非係合状態)とされ、ピストン82が軸線方向において摩擦係合要素89から遠ざかる位置(非係合位置)に位置させられているときは、第5スプリング87の付勢力によりスリーブ83が軸線方向において駆動側スプロケット46から遠ざかる位置、すなわちスリーブ83の(ハブ76との)非係合位置に位置させられる。また、第4スプリング85の付勢力により、ピストン82が軸線方向において駆動側スプロケット46から遠ざかる非作動位置に付勢させられている。
図2および図3は上記解放状態(非係合状態)を示している。この状態では、クラッチハブ76の係合歯76aとスリーブ83の係合歯83aとが係合していないために、クラッチハブ76とインナハブ79とが相対回転しており、クラッチドラム78とインナハブ79とが相対回転せず、それらクラッチドラム78とインナハブ79とに交互に相対回転不能に係合する複数枚の摩擦板80とプレート81間の引き摺りはなく、クラッチハブ76と、そのクラッチハブ76と隣り合う一枚のプレート81との間で僅かな引き摺りが生じるだけであるので、前輪駆動用クラッチ50の引き摺りトルクが大幅に小さくなる。これにより、フロント側クラッチ36および前輪駆動用クラッチ50が遮断される2輪駆動走行状態での走行では、駆動側スプロケット46から前輪駆動用チェーン56、被駆動側スプロケット54、前輪側出力軸52、フロントプロペラシャフト24、前輪用差動歯車装置28が非回転状態とされるので、フロントプロペラシャフト24のデイスコネクト状態が成立させられて、2輪駆動走行状態で走行中の車両の燃費が大幅に改善される。
トランスファ22は、前輪駆動用クラッチ50の解放状態且つロックスリーブ70の外周歯70aとロック歯68とが噛み合っていないデフロック機構58の解放状態では、後輪側出力軸44と駆動側スプロケット46との間の動力伝達経路が遮断されて、変速機20から伝達された動力を後輪16のみへ伝達する。トランスファ22は、前輪駆動用クラッチ50のスリップ状態または係合状態では、変速機20から伝達された動力を前輪14及び後輪16のそれぞれに分配する。トランスファ22は、前輪駆動用クラッチ50のスリップ状態では、後輪側出力軸44と駆動側スプロケット46との間の回転差動が許容されて、差動状態(非センターデフロック状態)が形成される。トランスファ22は、前輪駆動用クラッチ50の係合状態では、後輪側出力軸44と駆動側スプロケット46とが一体的に回転させられて、センターデフロック状態が形成される。前輪駆動用クラッチ50は、伝達トルクが制御されることで、前輪14と後輪16とのトルク配分を例えば0:100〜50:50の間で連続的に変更することができる。
トランスファ22は、ハイロー切替機構48、前輪駆動用クラッチ50、及びデフロック機構58を作動させる装置として、モータ84と、モータ84の回転運動を減速機であるウォームギヤ90を介して直線運動に変換するねじ機構86と、ねじ機構86の直線運動力をハイロー切替機構48、前輪駆動用クラッチ50、及びデフロック機構58へそれぞれ伝達する伝達機構88とを、更に備えている。ピストン駆動装置PD1は、上記モータ84、ウオームギヤ90、ねじ機構86から構成されている。
2輪駆動走行状態から4輪駆動走行状態とするために前輪駆動用クラッチ50を係合状態とする場合は、モータ84、ウオームギヤ90、ねじ機構86により、ピストン82が第4スプリング85の付勢力および第5スプリング87の付勢力に抗して軸線方向において駆動側スプロケット46側へ前進移動させられる。このとき、ピストン82は摩擦係合要素89を押圧し、このピストン82の移動に連動して、スリーブ83が第4スプリング85によって軸線方向において駆動側スプロケット46側に付勢される。すなわち、ピストン82に連動してスリーブ83が軸線方向において駆動側スプロケット46側に移動させられる。そして、摩擦係合要素89がピストン82によって押圧されるに伴って、クラッチハブ76およびスリーブ83の回転速度が同期(回転同期)すると、スリーブ83の係合歯83aがクラッチハブ76の係合歯76aと係合させられる。さらに、ピストン82が前進移動させられ摩擦係合要素89を押圧することで、摩擦板80とプレート81との間の摩擦力によって前輪駆動用クラッチ50が係合状態とされる。
ピストン82の前進過程において、クラッチハブ76およびスリーブ83の回転速度が同期していない状態では、クラッチハブ76の係合歯76aとスリーブ83の係合歯83aとが係合しない。このとき、第4スプリング85が圧縮変形させられ、ピストン82の前進に拘わらずスリーブ83の移動が阻止される。その後にクラッチハブ76およびインナハブ79の回転速度が同期すると、第4スプリング85の弾性復帰力(付勢力)により、スリーブ83の係合歯83aがクラッチハブ76の係合歯76aと係合する位置までスリーブ83が軸線方向に移動させられる。従って、クラッチハブ76、インナハブ79、およびスリーブ83が互いに係合する。この状態では、クラッチハブ76、インナハブ79、およびスリーブ83が一体的に回転させられ、ピストン82の押圧力に応じた伝達トルクで動力が伝達される。図4は、この状態を示している。
ねじ機構86は、後輪側出力軸44と同じ軸線C1まわりに配置されており、トランスファ22に備えられたウォームギヤ90を介してモータ84に間接的に連結された円筒状ねじ部材92と、その円筒状ねじ部材92の回転に伴って軸線C1と平行な方向に移動可能にねじ軸部材92に連結された直線運動部材としてのナット部材94とを備えている。ねじ機構86は、円筒状ねじ部材92とナット部材94が多数の小径ボール96を介して作動するボールねじである。ウォームギヤ90は、モータ84のモータシャフトと一体的に形成されたウォーム98と、軸線C1まわりに配置されて円筒状ねじ部材92と一体的に形成されたウォームホイール100とを備えた歯車対である。例えばブラシレスモータであるモータ84の回転は、ウォームギヤ90を介して円筒状ねじ部材92へ減速されて伝達される。ねじ機構86は、円筒状ねじ部材92に伝達されたモータ84の回転を、ナット部材94の直線運動に変換する。
伝達機構88は、円筒状ねじ部材92の軸線C1と平行な別の軸線C3まわりに設けられて、ナット部材94に作動的に連結されたフォークシャフト102と、フォークシャフト102に固設されて、ハイロースリーブ62に連結されたフォーク104とを備えている。伝達機構88は、ねじ機構86におけるナット部材94の直線運動力を、フォークシャフト102、及びフォーク104を介してハイロー切替機構48のハイロースリーブ62へ伝達する。ハイロースリーブ62とロックスリーブ70とは第1スプリング72を介して相互に力が付与され、また、ロックスリーブ70は第2スプリング74を介して後輪側出力軸44の凸部44aから力を付与されている。従って、伝達機構88は、ねじ機構86におけるナット部材94の直線運動力を、ハイロースリーブ62を介してデフロック機構58のロックスリーブ70へ伝達する。そのため、第1スプリング72及び第2スプリング74は、伝達機構88の一部を構成する部材として機能する。
ねじ機構86は、前輪駆動用クラッチ50に対して駆動側スプロケット46とは反対側に配置されている。前輪駆動用クラッチ50のピストン82は、ねじ機構86のナット部材94とは軸線C1と平行な方向の相対移動不能且つ軸線C1まわりの相対回転可能に連結されている。従って、ねじ機構86におけるナット部材94の直線運動力は、ピストン82を介して前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素89(摩擦板80、プレート81)に伝達される。そのため、ピストン82は、ナット部材94に連結された、前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素89を押し付ける押付部材であり、伝達機構88の一部を構成する部材としても機能する。このように、伝達機構88は、ねじ機構86におけるナット部材94の直線運動力を、前輪駆動用クラッチ50の摩擦係合要素89(摩擦板80、プレート81)へ伝達する。
伝達機構88は、ナット部材94とフォークシャフト102とを連結する連結機構106を備えている。連結機構106は、軸線C3と平行な方向にフォークシャフト102と摺動可能に軸線C3まわりに配置された、一端部に設けられた鍔どうしが相対する2つの鍔付円筒部材108a,108b、2つの鍔付円筒部材108a,108bの間に介在させられた円筒状のスペーサ110、及びスペーサ110の外周側に配置された第3スプリング112と、2つの鍔付円筒部材108a,108bを軸線C3と平行な方向に摺動可能に把持する把持部材114と、把持部材114とナット部材94とを連結する連結部材116とを備えている。把持部材114は、鍔付円筒部材108a,108bの鍔に当接することで鍔付円筒部材108a,108bをフォークシャフト102上で摺動させる。鍔付円筒部材108a,108bの鍔が共に把持部材114と当接した状態における鍔間の長さは、スペーサ110の長さよりも長くされている。従って、鍔が共に把持部材114と当接した状態は、第3スプリング112の付勢力によって形成される。
フォークシャフト102は、鍔付円筒部材108a,108bの各々を軸線C3と平行な方向の摺動不能とするストッパ118a,118bを、外周面に備えている。ストッパ118a,118bにより鍔付円筒部材108a,108bが摺動不能とされることで、伝達機構88は、ナット部材94の直線運動力を、フォークシャフト102、及びフォーク104を介してハイロー切替機構48へ伝達することができる。
ロックスリーブ70の外周歯70aは、フォークシャフト102がハイロースリーブ62の外周歯62bをロー側ギヤ歯66に噛み合わせる位置(ローギヤ位置と称す)にてロック歯68に噛み合う。前輪駆動用クラッチ50の摩擦板80は、フォークシャフト102がハイロースリーブ62の外周歯62bをハイ側ギヤ歯64に噛み合わせる位置(ハイギヤ位置と称す)にてピストン82によって押し付けられ、フォークシャフト102のローギヤ位置にてピストン82によって押し付けられない。
フォークシャフト102のハイギヤ位置では、鍔付円筒部材108a,108bの鍔間の長さを、鍔が共に把持部材114と当接した状態での長さと、スペーサ110の長さとの間で変化させることができる。従って、連結機構106は、フォークシャフト102のハイギヤ位置のままで、前輪駆動用クラッチ50の摩擦板80がピストン82によって押し付けられる位置と押し付けられない位置との間で、ナット部材94の軸線C1と平行な方向の移動を許容する。
トランスファ22は、フォークシャフト102のハイギヤ位置を保持し、また、フォークシャフト102のローギヤ位置を保持するギヤ位置保持機構120を備えている。ギヤ位置保持機構120は、フォークシャフト102が摺動するトランスファケース40の内周面に形成された収容孔122と、収容孔122に収容されたロックボール124と、収容孔122に収容されてロックボール124をフォークシャフト102側へ付勢するロック用スプリング126と、フォークシャフト102の外周面に形成された、フォークシャフト102のハイギヤ位置においてロックボール124の一部を受け入れる凹部128h及びフォークシャフト102のローギヤ位置においてロックボール124の一部を受け入れる凹部128lとを備えている。ギヤ位置保持機構120によりフォークシャフト102の各ギヤ位置が保持されることで、その各ギヤ位置においてモータ84からの出力を停止してもフォークシャフト102の各ギヤ位置が保持される。
トランスファ22は、フォークシャフト102のローギヤ位置を検出するローギヤ位置検出スイッチ130を備えている。ローギヤ位置検出スイッチ130は、例えばボール型の接触スイッチである。ローギヤ位置検出スイッチ130は、ローギヤ位置に移動したフォークシャフト102と接触する位置において、トランスファケース40に形成された貫通孔132に固設される。ローギヤ位置検出スイッチ130によってローギヤ位置が検出されると、例えば低速側ギヤ段Lにてセンターデフロック状態であることを運転者に知らせる為のインジケータが点灯される。
図1に戻り、車両10には、例えば2WD状態と4WD状態とを切り替える車両10の制御装置を含む電子制御装置(ECU)200が備えられている。電子制御装置200は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置200は、エンジン12の出力制御、車両10の駆動状態の切替制御等を実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用や駆動状態制御用等に分けて構成される。
電子制御装置200(制御装置)には、図1に示すように、車両10に備えられた各種センサ(例えばエンジン回転速度センサ202、モータ回転角度センサ204、各車輪速センサ206、アクセル開度センサ208、運転者の操作によって高速側ギヤ段Hを選択する為のHレンジ選択スイッチ210、運転者の操作によって4WD状態を選択する為の4WD選択スイッチ212、運転者の操作によってセンターデフロック状態を選択する為のデフロック選択スイッチ214、後輪出力軸44の出力軸回転速度センサ216、フロントプロペラシャフト24の回転速度センサ218など)による検出信号に基づく各種実際値(例えばエンジン回転速度Ne、モータ回転角度θm、前輪14L,14R、及び後輪16L,16Rの各車輪速Nwfl,Nwfr,Nwrl,Nwrr、アクセル開度θacc、Hレンジ選択スイッチ210が操作されたことを示す信号であるHレンジ要求Hon、4WD選択スイッチ212が操作されたことを示す信号である4WD要求4WDon、デフロック選択スイッチ214が操作されたことを示す信号であるLOCKon、後輪出力軸44の回転速度Nr、フロントプロペラシャフト24の回転速度Nfなど)が、それぞれ供給される。
電子制御装置200からは、図1に示すように、例えばエンジン12の出力制御の為のエンジン出力制御指令信号Se、フロント側クラッチ36の状態を切り替える為の作動指令信号Sd、モータ84の回転量を制御する為のモータ駆動指令信号Sm、車両10の駆動状態が2輪駆動走行「2WD」か4輪駆動走行「4WD」を示す信号Sw(図5参照)などが、エンジン12の出力制御装置、フロント側クラッチ36のアクチュエータ、モータ84、表示装置として機能するインジケータ256(図5参照)などへそれぞれ出力される。
以上のように構成された車両10では、モータ84の回転量が制御されることでナット部材94およびピストン82の移動量(ストローク)が制御される。フォークシャフト102のハイギヤ位置において、ピストン82が摩擦板80に当接した位置からモータ84を所定の回転量だけ駆動して非押圧側に所定のストローク分だけナット部材94を移動させることで前輪駆動用クラッチ50を解放状態とした位置が、車両10を高速側ギヤ段Hにて後輪16のみを駆動する2WD走行状態とする為の位置とされる。このH2位置においてフロント側クラッチ36が解放状態とされると、2WD走行中において、駆動側スプロケット46から前輪用差動歯車装置28までの動力伝達経路を構成する各回転要素(駆動側スプロケット46、前輪駆動用チェーン56、被駆動側スプロケット54、前輪側出力軸52、フロントプロペラシャフト24、前輪用差動歯車装置28)には、エンジン12側からも前輪14側からも回転が伝達されない。従って、2WD走行中において、これらの各回転要素が回転停止し、前記各回転要素の連れまわりが防止され、走行抵抗が低減される。
また、フォークシャフト102のハイギヤ位置において、ピストン82が摩擦板80に当接した位置からモータ84の回転量を制御して押圧側にナット部材94を移動させることで前輪駆動用クラッチ50をスリップ状態とした位置が、車両10を高速側ギヤ段Hにて前輪14及び後輪16共に動力が伝達される4WD走行状態とする為の位置とされる。このH4位置では、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルク(トルク容量)が制御されることで、前輪14と後輪16とのトルク配分が必要に応じて調整される。
また、図2に示すように、前記H4位置からモータ84の回転量を制御して押圧側にナット部材94を更に移動させることで前輪駆動用クラッチ50を係合状態とした位置が、車両10を高速側ギヤ段Hにてセンターデフロック状態での4WD走行状態とする為の位置とされる。
また、フォークシャフト102のローギヤ位置では、前輪駆動用クラッチ50が解放状態とされ且つデフロック機構58が係合状態とされるので、車両10を低速側ギヤ段Lにてセンターデフロック状態での4WD走行状態とする為の位置とされる。
上記のように構成される車両10において、2輪駆動走行から4輪駆動走行に切り替える際には、最初に前輪駆動用クラッチ50が接続され、次いでフロント側クラッチ36が接続される。最初に前輪駆動用クラッチ50が接続されることで、回転停止状態にあった前輪駆動用クラッチ50とフロント側クラッチ36との間の動力伝達経路を構成する回転部材(駆動側スプロケット46、前輪駆動用チェーン56、被駆動側スプロケット54、前輪側出力軸52、フロントプロペラシャフト24等)に回転が伝達され、フロント側クラッチ36によって接続される回転要素間で回転同期し、フロント側クラッチ36の接続が可能となる。ここで、前輪駆動用クラッチ50では、摩擦係合要素89がピストン82によって押圧されることで、クラッチハブ76とスリーブ83とが係合していない状態では、クラッチハブ76とそのクラッチハブ76と隣り合う一枚のプレート81との間の摩擦力に起因する伝達トルクが発生する。このとき、プレート81に嵌合するクラッチドラム78、インナハブ79、およびスリーブ83は一体回転しているため、クラッチハブ76と、クラッチドラム78、インナハブ79、およびスリーブ83との相対回転速度が徐々に小さくなり、クラッチハブ76およびスリーブ83の回転速度が同期すると、第4スプリング85の弾性復帰力(付勢力)によってスリーブ83が軸線方向の駆動側スプロケット46側に移動させられ、クラッチハブ76の係合歯76aとスリーブ83の係合歯83aとが係合させられる。これより、クラッチハブ76とスリーブ83とが係合させられる。
しかしながら、クラッチハブ76およびスリーブ83の回転速度が同期した場合であっても、係合歯76aの先端と係合歯83aの先端とが互いに接触し、正常に係合しない場合がある。このような状態で前輪駆動用クラッチ50が接続されたものと判断され、4輪駆動走行中のトルク配分制御が実行されると、所望するトルク配分が実行されなかったり、係合歯76a、83a同士の摺動による摩耗を招く可能性もある。
そこで、電子制御装置200は、前輪駆動用クラッチ50を接続する際には、以下に説明する制御を実行することで、スリーブ83とクラッチハブ76とが係合したか否かを判断する制御機能を備えている。図5は、電子制御装置200の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
電子制御装置200は、2輪駆動走行と4輪駆動走行との間で切替を行う切替制御部250を機能的に有している。切替制御部250は、モータ回転角度Amに基づいてモータ84の回転量を制御することでナット部材94およびピストン82の移動量を制御する。ナット部材94の移動量は、フォークシャフト102の軸線C3方向の移動量であり、ピストン82の軸線C1方向の移動量である。従って、切替制御部250は、モータ回転角度Amに基づいて、ハイロー切替機構48の切替作動と、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルク(トルク容量)の調整とを行う。切替制御部250は、モータ回転角度Amと前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクとの関係を予め記憶しており、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクが所望の値となるようにモータ回転角度Amを調整する。
切替制御部250は、2輪駆動走行から4輪駆動走行に切り替える際には、前輪駆動用クラッチ50を接続し、次いで、フロント側クラッチ36を接続する制御を実行する。前輪駆動用クラッチ50を接続するに際して、切替制御部250は、ピストン82の移動量を制御してクラッチハブ76の回転速度Nhubとクラッチドラム78の回転速度Ndrumとを同期させる同期制御を実行する。切替制御部250は、例えばクラッチハブ76の回転速度Nhubとクラッチドラム78の回転速度Ndrumとの相対回転速度ΔN(=Nhub−Ndrum)に基づくフィードバック制御を実行する。
同期判定部252は、クラッチハブ76およびクラッチドラム78の回転速度が同期したか否かを判定する。言い換えれば、同期判定部252は、クラッチハブ76およびスリーブ83の回転速度が同期したか否かを判定する。同期判定部252は、クラッチハブ76の回転速度Nhubとクラッチドラム78の回転速度Ndrumとを検出し、これらの相対回転速度ΔN(=Nhub−Ndrum)が予め設定されている所定値α以下か否かを判定する。そして、相対回転速度ΔNが所定値α以下であった場合に、同期判定部252は、同期が完了したものと判定する。所定値αは、クラッチハブ76およびクラッチドラム78の回転速度が同期したものと判断されるような微小な値に設定されている。クラッチハブ76の回転速度Nhubは、クラッチハブ76が後輪出力軸44に相対回転不能に接続されていることから、出力軸回転速度センサ216によって検出される後輪出力軸44の回転速度Nrと一致する。また、クラッチドラム78の回転速度Ndrumは、回転速度センサ218によって検出されるフロントプロペラシャフト24の回転速度Nfに、所定の定数を乗算することで求められる。なお、所定の定数とは、フロントプロペラシャフト24の回転速度Nfをクラッチドラム78の回転速度Ndrumに換算する定数であり、本実施例では、駆動側スプロケット46と被駆動側スプロケット54との間で機械的に設定される変速比が該当する。同期判定部252によってクラッチハブ76およびクラッチドラム78の同期完了が判断されると、クラッチハブ76とスリーブ83についても同期した状態となり、通常であれば、第4スプリング85の付勢力によってクラッチハブ76とスリーブ83とが係合させられる。
同期判定部252によって、クラッチハブ76およびクラッチドラム78の回転速度が同期したものと判定されると、係合判定部254が実行される。係合判定部254は、クラッチハブ76およびクラッチドラム78(スリーブ83)の回転速度が同期した際に、クラッチハブ76とスリーブ83とが第4スプリング85の付勢力によって係合したか否かを判定する。係合判定部254は、ピストン82を摩擦板80から離れる側(2WD側)である非押圧側に移動させ、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルク(トルク容量)を予め設定されている所定値βにまで低下させる。この所定値βは、クラッチハブ76とスリーブ83とが係合した状態で前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクが低下しても、クラッチドラム78に動力伝達可能に連結されているフロントプロペラシャフト24等の回転抵抗によってクラッチドラム78の回転速度Ndrumが低下しないように、零よりも大きい値に設定されている。
ここで、クラッチハブ76とスリーブ83とが係合している場合には、トルク容量の低下に拘わらずクラッチハブ76およびクラッチドラム78の回転同期が維持される。すなわち、クラッチハブ76の回転速度Nhubとクラッチドラム78の回転速度Ndrumとの相対回転速度ΔNが、所定値αよりも増加することなく所定値α以下で維持される。一方、クラッチハブ76とスリーブ83とが係合されない場合(非係合)には、ピストン82が摩擦係合要素89から離れる側に移動すると、クラッチハブ76とインナハブ79とが相対回転する。このとき、摩擦係合要素89において、伝達トルクを発生させる摩擦面は、クラッチハブ76と一枚のプレート81との間の摩擦面のみになり、フロントプロペラシャフト24をはじめとする前輪駆動用クラッチ50とフロント側クラッチ36との間の動力伝達経路を構成する各回転要素の回転速度を、同期時点の状態に維持する伝達トルクが得られなくなるため、クラッチドラム78の回転速度Ndrumがクラッチハブ76の回転速度Nhubに対して低下し、相対回転速度ΔN(=Nhub−Ndrum)が所定値αよりも増加する。
係合判定部254は、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクを所定値βに低下させた時点から所定時間δ経過したか否かを判定する。係合判定部254は、所定時間δ経過したことを判定すると、クラッチハブ76とクラッチドラム78との相対回転速度ΔN(=Nhub−Ndrum)を算出する。そして、係合判定部254は、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクを低下させて所定時間δ経過後に、クラッチドラム78の回転速度Ndrumが低下する、すなわち相対回転速度ΔN(=Nhub−Ndrum)が、伝達トルクの低下を開始した時点での相対回転速度ΔNよりも増加すると、クラッチハブ76とスリーブ83とが非係合であると判定する。また、係合判定部254は、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクを低下させてから所定時間δ経過してもクラッチドラム78の回転速度Ndrumが低下せず、相対回転速度ΔNが、伝達トルクの低下を開始した時点での相対回転速度ΔNで維持されると、クラッチハブ76とスリーブ83とが係合したものと判定する。
係合判定部254によってクラッチハブ本体76とスリーブ83とが非係合と判定されると、切替制御部250は、再度前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクを増加させて同期制御を実行する。同期判定部252によって回転同期したものと判定されると、係合判定部254が再度実行されクラッチハブ76とスリーブ83との係合判定が実行される。このように、クラッチハブ76とスリーブ83とが係合したものと判定されるまで、同期判定部252および係合判定部254が繰り返し実行される。
そして、係合判定部254によってクラッチハブ76とスリーブ83とが係合したものと判定されると、切替制御部250は、フロント側クラッチ36を接続して、車両10を4輪駆動走行状態に切り替える。また、切替制御部250は、前輪駆動用クラッチ50およびフロント側クラッチ36が接続されると、車内ディスプレイ上に設けられている車両10の駆動状態を示すインジケータ256の表示を、例えば「2WD」から「4WD」に切り替える。
図6は、電子制御装置200の制御作動の要部を説明するフローチャートである。このフローチャートは、前輪駆動用クラッチ50およびフロント側クラッチ36が遮断された2輪駆動走行中において、4輪駆動走行に切り替える指令が出力されると実行されるものである。
2輪駆動走行中において、4輪駆動走行に切り替える指令が出力されると、切替制御部250の機能に対応するステップS1(以下、ステップを省略する)が実行される。S1では、ピストン82で摩擦係合要素89を押圧することにより、クラッチハブ76とそのクラッチハブ76と隣り合う一枚のプレート81との間の摩擦力によって、クラッチドラム78の回転速度Ndrumを引き上げてクラッチハブ76およびクラッチドラム78の回転速度を同期させる同期制御を実行する。同期判定部252の機能に対応するS2では、クラッチハブ76およびクラッチドラム78の回転速度の同期が完了したか否かが判定される。S2が否定される場合、S1に戻って同期制御が引き続き実行される。そして、クラッチハブ76およびクラッチドラム78の回転速度の同期が完了すると、S2が肯定されてS3に進む。
係合判定部254の機能に対応するS3では、ピストン82を制御してピストン82を摩擦係合要素89から遠ざかる側(2輪駆動走行側)に移動させて前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクを所定値βまで低下させる。次いで、係合判定部254の機能に対応するS4において、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクを低下させてから所定時間δ経過したか否かが判定される。所定時間δ経過していない場合には、再度S4に戻り所定時間δ経過するまでS4が繰り返し実行される。所定時間δ経過したと判定されると、係合判定部254の機能に対応するS5において、クラッチドラム78の回転速度Ndrumがクラッチハブ76の回転速度Nhubよりも低下したか否か、あるいは、相対回転速度ΔN(=Nhub−Ndrum)が増加して所定値αよりも大きくなったか否か判定される。S5が肯定される場合、すなわちクラッチドラム78の回転速度Ndrumが低下した場合、クラッチドラム76とスリーブ83とが非係合であると判断され、S1に戻る。従って、ステップS1〜S5の制御が再度実行されることとなる。このS1〜S5のステップは、S5が肯定される間は繰り返し実行される。
そして、S5が否定される、すなわちクラッチハブ76とスリーブ83とが第4スプリング85の付勢力によって係合したと判定されると、切替制御部250の機能に対応するS6において、フロント側クラッチ36が接続され、4輪駆動走行に切り替えられる。
図7は、電子制御装置200の制御作動による作動結果を示すタイムチャートである。t1時点において2輪駆動走行から4輪駆動走行に切り替える指令が出力されると、ピストン82を制御することによる同期制御が開始され、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクが増加し、回転停止状態にあったクラッチドラム78の回転速度Ndrumが、一点鎖線で示すクラッチハブ76の回転速度Nhubに向かって引き上げられる。t2時点においてクラッチハブ76およびクラッチドラム78の回転速度の同期完了が判定されると、クラッチハブ76とスリーブ83との係合を判定するため、ピストン82が摩擦板80から離れる側に移動させられ、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクが所定値βに低下する。このとき、クラッチハブ76とスリーブ83とが係合している場合には、実線で示すように、伝達トルクを低下させたt2時点から所定時間δ経過したt3時点においてもクラッチドラム78の回転速度Ndrumはt2時点と比べて低下しない。このような場合には、t3時点においてクラッチハブ76とスリーブ83とが第4スプリング85の付勢力によって係合していると判断され、t3時点においてフロント側クラッチ36が接続されて4輪駆動走行に切り替えられる。
一方、クラッチハブ76とスリーブ83とが非係合の場合には、破線で示すように、クラッチドラム78の回転速度Ndrumが低下し、前記相対回転速度ΔN(=Nhub−Ndrum)がt2時点に比べて増加する。このような場合には、t3時点においてクラッチハブ76とスリーブ83とが非係合であると判定される。そして、t3時点において、同期制御が再度実行される(再同期)。t4時点において回転同期すると、t5時点において再度前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクが再度低下し、t5時点から所定時間δ経過したt6時点において、クラッチハブ76とスリーブ83とが係合したか否かが再度判定される。そして、t6時点において、クラッチドラム78の回転速度Ndrumが低下せず、前記相対回転速度ΔNが増加しない場合には、クラッチハブ76とスリーブ83とが係合したものと判断され、t6時点においてフロント側クラッチ36が接続されて4輪駆動走行に切り替えられる。
上述のように、本実施例によれば、前輪駆動用クラッチ50およびフロント側クラッチ36の遮断状態では、クラッチハブ76が後輪出力軸44と一体的に回転し、インナハブ79、クラッチドラム78、摩擦板80、およびプレート81は非回転状態となる。従って、摩擦板80とプレート81とは相対回転することはなく、クラッチハブ76とそのクラッチハブ76と隣り合う一枚のプレート81との間でのみ摩擦による引き摺りトルクが発生する。これより、複数枚の互いに積層される摩擦板80とプレート81との間で引き摺りトルクが発生する場合に比べて、引き摺りトルクが大幅に低減されるため、燃費が向上する。
また、本実施例によれば、クラッチドラム78およびクラッチハブ76の回転速度が回転同期したと判断すると、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクを低下させる。このとき、スリーブ83とクラッチハブ76とが係合している場合には、伝達トルクが低下してもクラッチドラム78とクラッチハブ76との相対回転速度ΔNは増加しない。一方、スリーブ83とクラッチハブ76とが正常に係合していない場合には、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクが低下すると、クラッチドラム78とクラッチハブ76との相対回転速度ΔNが増加する。これより、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクを低下させ、このときにクラッチドラム78とクラッチハブ76との相対回転速度が増加した場合には、スリーブ83とクラッチハブ76とが非係合であると判断し、前記相対回転速度が増加しない場合には、スリーブ83とクラッチハブ76とが係合したものと判断することができる。結果として、スリーブ83とクラッチハブ76とが係合したか否かを確実に判定することができるため、例えば非係合の状態で4輪駆動走行のトルク配分制御が実行されて所望の配分トルクが得られないこともなくなり、スリーブ83およびクラッチハブ76の係合歯同士の摺動による耐久性低下を防止することもできる。
また、本実施例によれば、前輪用クラッチ50の伝達トルクを低下させた後に、スリーブ83とクラッチハブ76とが非係合と判断されると、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクを再度増加するため、クラッチハブ76およびクラッチドラム78の回転速度が再度同期させられ、このときにスリーブ83とクラッチハブ76とを係合させることができる。ここで、クラッチハブ76およびクラッチドラム78の回転速度が同期すると、再度伝達トルクが低下させられ、スリーブ83とクラッチハブ76とが係合したか否か再度判定されるが、このときもスリーブ83とクラッチハブ76とが非係合であると判断されると、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクの増加が実行される。このように、スリーブ83とクラッチハブ76とが係合したと判断されるまで、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクを低下させ、スリーブ83およびクラッチハブ76が係合したか否かを判定する制御が繰り返し実行されることで、スリーブ83とクラッチハブ76との係合を確実に判断することができる。
また、本実施例によれば、2輪駆動走行から4輪駆動走行に切り替える際には、スリーブ83とクラッチハブ76との係合が判断された後に、フロント側クラッチ36が接続されるため、スリーブ83とクラッチハブ76とが係合された状態では、駆動側スプロケット46とフロント側クラッチ36との間の動力伝達経路を構成する回転要素が連れ回った状態となるため、フロント側クラッチ36によって接続される2つの回転要素の回転速度が同期し、フロント側クラッチ36の接続が可能となる。
また、本実施例によれば、前輪駆動用クラッチ50およびフロント側クラッチ36の接続が判断された後に4輪駆動走行状態であることを表示するため、4輪駆動走行に確実に切り替わると4輪駆動走行状態であることがインジケータ256に表示され、実際の駆動状態と表示による駆動状態とが異なることを防止することができる。
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
前述の実施例では、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクを低下させてから所定時間δ経過後のクラッチハブ76とクラッチドラム78との相対回転速度ΔN(=Nhub−Ndrum)を算出し、その相対回転速度ΔNが伝達トルク低下開始時点に比べて増加したか否かを判断するものであったが、本実施例では、クラッチドラム78の回転速度Ndrumが低下したか否かに基づいてクラッチハブ76とスリーブ83との係合を判定する。
本実施例の係合判定部300(図5参照)は、クラッチハブ76とクラッチドラム78の回転同期が判定されると、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクを低下させ、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクを低下させてから所定時間δ経過したか否かを判定する。そして、係合判定部300は、所定時間δ経過したことを判定すると、その時点でのクラッチドラム78の回転速度Ndrum1を検出し、その回転速度Ndrum1が、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクの低下開始時点でのクラッチドラム78の回転速度Ndrum2に比べて低下したか否かに基づいて、クラッチハブ76とスリーブ83との係合の可否を判定する。詳細には、係合判定部300は、伝達トルクの低下開始時点でのクラッチドラム78の回転速度Ndrum2と、所定時間δ経過後のクラッチドラム78の回転速度Ndrum1との回転速度差ΔNdrum(Ndrum2-Ndrum1)を算出し、算出された回転速度差ΔNdrumが予め設定されている所定値εよりも大きい場合には、クラッチハブ76とスリーブ83とが非係合であると判定する。一方、算出された回転速度差ΔNdrumが所定値ε以下の微小な値である場合には、係合判定部300は、クラッチ76とスリーブ83とが係合したものと判定する。なお、所定値εは、予め実験等に基づいて設定され、クラッチハブ76とスリーブ83とが係合したか否かを判断できる程度の小さな値に設定されている。
図8は、本実施例に対応する電子制御装置302(図5参照)の制御作動を説明するフローチャートである。図8のフローチャートを、前述の実施例に対応する図6のフローチャートと比較すると、図8では、前述した実施例の相対回転速度ΔNの増加に基づいて係合判定を行うS5(図6)に代わって、クラッチドラム78の回転速度Ndrumの低下に基づいて係合判定を行うS10に変更されている。また、他のステップの制御作動については、前述した図6のフローチャートと同様である。以下、S10の制御作動について説明し、他のステップの詳細な説明については省略する。
図8の係合判定部300の機能に対応するS10は、S4において、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクの低下が開始されてから所定時間δ経過したと判定されると実行される。S10では、所定時間δ経過後のクラッチドラム78の回転速度Ndrum1が検出され、その回転速度Ndrum1が、前輪駆動用クラッチ50の伝達トルクの低下開始時点でのクラッチドラム78の回転速度Ndrum2と比べて低下したか否かが判定される。例えば、伝達トルクの低下開始時点での回転速度Ndrum2と所定時間δ経過後の回転速度Ndrum1との回転速度差ΔN(Ndrum2-Ndrum1)が所定値εよりも大きいか否か判定される。回転速度差ΔNdrumが所定値εよりも大きい場合、すなわち、クラッチドラム78の回転速度Ndrumが低下した場合には、クラッチハブ76とスリーブ83とが非係合と判定され、S1に戻り、同期制御が再度実行される。一方、回転速度差ΔNdrumが所定値ε以下の微小な値であった場合には、クラッチハブ76とスリーブ83とが係合したものと判定され、S6に進む。上記のようにクラッチドラム78の回転速度Ndrumの低下を判定することでも、クラッチハブ76とスリーブ83との係合を判定することができる。
また、クラッチドラム78の回転速度Ndrumの低下に基づいてクラッチハブ76とスリーブ83との係合を判定する場合であっても、タイムチャートは前述の実施例の図7のタイムチャートと同様となる。すなわち、図7のt2時点において伝達トルクの低下が開始されると、所定時間δ経過したt3時点におけるクラッチドラム78の回転速度Ndrum1が、伝達トルクの低下開始時点であるt2時点のクラッチドラム78の回転速度Ndrum2に比べて低下したか否かが判定される。そして、t3時点においてクラッチドラム78の回転速度Ndrumが低下したもの判定されると、t3時点において伝達トルクが再度増加させられ同期制御が再度実行される。
上述のように、クラッチドラム78の回転速度Ndrumが低下したか否かに基づいてクラッチハブ76とスリーブ83との係合を判定することもでき、前述の実施例と同様の効果を得ることができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、車両10は、後輪16が主駆動輪となり、前輪14が副駆動輪となるFR形式の4輪駆動車両であったが、本発明は、前輪14が主駆動輪となり、後輪16が副駆動輪となるFF形式の4輪駆動車両であっても適用することができる。
また、前輪駆動用クラッチ50のクラッチハブ76の回転速度Nhubは、出力軸回転速度センサ216によって検出される後輪出力軸44の回転速度Nfから検出され、クラッチドラム78の回転速度Ndrumは、回転速度センサ218によって検出されるフロントプロペラシャフト24の回転速度Nfから検出されているが、必ずしもこれに限定されない。例えば、クラッチドラム78の回転速度Ndrumは、駆動側スプロケット46、被駆動側スプロケット54、前輪用差動歯車装置28の回転速度からも求めることができる。すなわち、クラッチハブ76およびクラッチドラム78に動力伝達可能に接続されている回転部材であれば、その回転部材の回転速度を検出することで、クラッチハブ76の回転速度Nhubおよびクラッチドラム78の回転速度Ndrumを求めることができる。
また、前述の実施例では、ピストン82は、モータ84、ねじ機構86等で作動するものであったが、必ずしもこれに限定されない。例えば、油圧式やボールカムを用いるなど、ピストン82の移動量を制御できるものであれば、適宜適用することができる。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:4輪駆動車両
14:前輪(副駆動輪)
16:後輪(主駆動輪)
24:フロントプロペラシャフト(動力伝達部材)
36:フロント側クラッチ(第2断接機構)
44:後輪出力軸(入力回転部材)
46:駆動側スプロケット(出力回転部材)
50:前輪駆動用クラッチ(第1断接機構)
76:クラッチハブ(ハブ)
78:クラッチドラム(ドラム)
79:インナハブ
80:摩擦板
81:プレート
82:ピストン
83:スリーブ
200、302:電子制御装置(制御装置)
256:インジケータ(表示装置)
14:前輪(副駆動輪)
16:後輪(主駆動輪)
24:フロントプロペラシャフト(動力伝達部材)
36:フロント側クラッチ(第2断接機構)
44:後輪出力軸(入力回転部材)
46:駆動側スプロケット(出力回転部材)
50:前輪駆動用クラッチ(第1断接機構)
76:クラッチハブ(ハブ)
78:クラッチドラム(ドラム)
79:インナハブ
80:摩擦板
81:プレート
82:ピストン
83:スリーブ
200、302:電子制御装置(制御装置)
256:インジケータ(表示装置)
Claims (4)
- 主駆動輪に動力伝達可能に連結され軸線まわりに回転する入力回転部材と、副駆動輪に動力伝達部材を介して動力伝達可能に連結され、前記入力回転部材と同じ軸線まわりに回転する出力回転部材と、前記入力回転部材と前記出力回転部材との間の動力伝達経路上に設けられている第1断接機構と、前記動力伝達部材と前記副駆動輪との間の動力伝達経路上に設けられている第2断接機構とを、
含んで構成される4輪駆動車両において、
前記第1断接機構および前記第2断接機構の断接状態を切り替えることにより、車両の駆動状態を制御する4輪駆動車両の制御装置であって、
前記第1断接機構は、前記入力回転部材に回転伝達可能に連結されているハブと、
前記出力回転部材に回転伝達可能に連結されているドラムと、
前記ドラムの内周側に前記ハブと相対回転可能に配置されるインナハブと、
前記インナハブの外周面に相対回転不能、且つ、軸線方向の移動可能に係合する複数枚の摩擦板と、
前記ドラムの内周面に相対回転不能、且つ、軸線方向の移動可能に係合するとともに前記摩擦板と交互に重ねられて配置される複数枚のプレートと、
前記複数枚の摩擦板およびプレートを前記軸線方向に押圧するピストンと、
前記インナハブに対して常時相対回転不能に係合するとともに、前記ハブと係合する軸線方向の位置に移動可能に設けられ、且つ、前記ピストンに連動して前記ハブと係合する位置に付勢されるスリーブとを、備え、
前記ピストンの押圧力の大きさを制御して前記第1断接機構の伝達トルクの大きさを調整可能に構成され、
前記制御装置は、
前記第1断接機構および前記第2断接機構が遮断されている2輪駆動走行状態で前記第1断接機構を接続するに際して、
前記ピストンを作動させて前記摩擦板および前記プレートを押圧し、前記ドラムおよび前記ハブの回転速度が同期したと判断すると、前記第1断接機構の伝達トルクを低下させ、前記ドラムの回転速度が低下すると、前記スリーブと前記ハブとが非係合であると判断し、
前記第1断接機構の伝達トルクを低下させても、前記ドラムの回転速度が低下しない場合には、前記スリーブと前記ハブとが係合したものと判断する
ことを特徴とする4輪駆動車両の制御装置。 - 前記第1断接機構の伝達トルクを低下させた際に、前記スリーブと前記ハブとが非係合と判断されると、前記第1断接機構の前記伝達トルクを再度増加させることを特徴とする請求項1の4輪駆動車両の制御装置。
- 2輪駆動走行から4輪駆動走行に切り替える際には、前記スリーブと前記ハブとの係合が判断された後に、前記第2断接機構が接続されることを特徴とする請求項1または2の4輪駆動車両の制御装置。
- 前記4輪駆動車両の駆動状態を示す表示装置を備え、
前記第1断接機構および前記第2断接機構の接続が判断された後に4輪駆動走行状態であることを表示することを特徴とする請求項3の4輪駆動車両の制御装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015078812A JP2016199088A (ja) | 2015-04-07 | 2015-04-07 | 4輪駆動車両の制御装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2015078812A JP2016199088A (ja) | 2015-04-07 | 2015-04-07 | 4輪駆動車両の制御装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2016199088A true JP2016199088A (ja) | 2016-12-01 |
Family
ID=57423671
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2015078812A Pending JP2016199088A (ja) | 2015-04-07 | 2015-04-07 | 4輪駆動車両の制御装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2016199088A (ja) |
-
2015
- 2015-04-07 JP JP2015078812A patent/JP2016199088A/ja active Pending
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