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JP2016193509A - ガスバリア性包装材料およびその製造方法 - Google Patents

ガスバリア性包装材料およびその製造方法 Download PDF

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JP2016193509A JP2015073708A JP2015073708A JP2016193509A JP 2016193509 A JP2016193509 A JP 2016193509A JP 2015073708 A JP2015073708 A JP 2015073708A JP 2015073708 A JP2015073708 A JP 2015073708A JP 2016193509 A JP2016193509 A JP 2016193509A
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晴香 ▲徳▼田
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Abstract

【課題】無機蒸着層が設けられていない場合でも、高い酸素バリア性および水蒸気バリア性を示すガスバリア性包装材料を提供する。
【解決手段】ガスバリア性包装材料10は、バリア層3を備え、バリア層3の赤外線吸収スペクトルを測定したときの、1490〜1659cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(β)と、1300〜1490cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(α)との比(α/β)が0.6以上であり、かつ1660〜1750cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(γ)と、前記最大ピーク高さ(β)との比(β/γ)が1.0以上であり、100cmあたりのアンモニア含有量が2000μg以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガスバリア性包装材料およびその製造方法に関する。
食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料に対しては、内容物の変質を防止することが求められている。例えば、食品用包装材料に対しては、タンパク質や油脂等の酸化や変質を抑制し、さらに、風味や鮮度を保持できることが求められている。また、無菌状態での取扱いが必要とされる医薬品用包装材料に対しては、内容物の有効成分の変質を抑制し、その効能を保持できることが求められている。このような内容物の変質は、主として、包装材料を透過する酸素や水蒸気、あるいは、内容物と反応するような他のガスにより引き起こされる。そのため、食品や医薬品等の包装に用いられる包装材料に対しては、酸素や水蒸気等のガスを透過させない性質(ガスバリア性)を備えていることが求められている。
このような要求に対し、従来、比較的ガスバリア性が高いとされる重合体(ガスバリア性重合体)で構成されるガスバリア性フィルムや、これをフィルム基材として用いた積層体(積層フィルム)が用いられている。
従来、ガスバリア性重合体としては、ポリ(メタ)アクリル酸やポリビニルアルコールに代表される、分子内に親水性の高い高水素結合性基を含有する重合体が用いられてきた。これらの重合体からなる包装材料は、乾燥条件下において、非常に優れた酸素バリア性を示す。しかし、これらの重合体からなる包装材料は、高湿度条件下において、その親水性に起因して酸素バリア性が大きく低下する問題や、湿度や熱水に対する耐性が劣る問題があった。
これらの問題を解決するために、基材上に、ポリカルボン酸系重合体層と多価金属化合物含有層とを隣接させて積層し、これら2つの層間で反応させることにより、ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩を生成して、ガスバリア性包装材料とすることが知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。このようにして得られたガスバリア性包装材料は、高湿度下でも高い酸素バリア性を有することが知られている。
しかし、このようにして形成されるポリカルボン酸系重合体の多価金属塩を含む層は、酸素バリア性には優れるものの、水蒸気バリア性が低い。また、ポリカルボン酸系重合体と多価金属化合物とは水溶液中で容易に反応して不均一な沈殿を形成し、塗工が困難になるため、上記ガスバリア性包装材料の製造に際しては、ポリカルボン酸系重合体と多価金属化合物とを異なる塗液に配合している。そのため複数種の塗液が必要で、塗工を複数回行う必要があり、手間がかかる。また、ガスバリア性を発現させるためには、異なる層に存在するポリカルボン酸系重合体と多価金属化合物を反応させてポリカルボン酸系重合体の多価金属塩を形成させる必要があるため、塗工の後、レトルト処理を施したり、多湿な環境に長時間晒したりする必要がある。
前述の特許文献1では、ポリカルボン酸系重合体と多価金属化合物と揮発性塩基と溶剤とを含む混合物の溶液を用いる方法も提案されている。この溶液中では、多価金属化合物と揮発性塩基とが錯体を形成し、ポリカルボン酸系重合体と多価金属化合物との反応が抑制され、均一な溶液が得られる。かかる溶液を塗工、乾燥すると、塗膜から揮発性塩基または酸が除去されることでポリカルボン酸系重合体と多価金属化合物との反応が進む。そのため、一液で、ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩を含む層を形成できる。
しかし、このようにして形成した場合でも、前記のように、ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩を含む層の水蒸気バリア性は低い。
そのため、水蒸気バリア性が要求される用途に用いられる場合には、ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩を含む層に加えて、無機蒸着層を設ける等により水蒸気バリア性を付与する必要があり、手間やコストがかかっていた。
特許第4373797号公報 特許第5012895号公報 特開2005−125693号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、無機蒸着層が設けられていない場合でも、高い酸素バリア性および水蒸気バリア性を示すガスバリア性包装材料およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
[1]バリア層(B)を備え、
前記バリア層(B)の赤外線吸収スペクトルを測定したときの、1490〜1659cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(β)と、1300〜1490cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(α)との比(α/β)が0.6以上であり、かつ1660〜1750cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(γ)と、前記最大ピーク高さ(β)との比(β/γ)が1.0以上であり、
100cmあたりのガスクロマトグラフィーにより測定されるアンモニア含有量が2000μg以下であることを特徴とする、ガスバリア性包装材料。
[2]前記バリア層(B)が、ポリカルボン酸系重合体を含む、[1]に記載のガスバリア性包装材料。
[3]前記バリア層(B)が、多価金属を含む、[1]または[2]に記載のガスバリア性包装材料。
[4]温度30℃、相対湿度70%の条件で測定される酸素透過度が5cm(STP)/(m・day・MPa)以下であり、温度40℃、相対湿度90%の条件で測定される水蒸気透過度が1g/(m・day)以下である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のガスバリア性包装材料。
[5]バリア層(B)を備えるガスバリア性包装材料の製造方法であって、
ポリカルボン酸系重合体(b1)と、両性多価金属化合物(b2)と、アンモニア(b3)と、炭酸成分含有化合物(b4)と、溶媒とを含むガスバリア用塗液からなる塗膜を乾燥してバリア層(B)を形成する工程を含み、
前記ガスバリア用塗液中の、前記両性多価金属化合物(b2)の含有量が、前記ポリカルボン酸系重合体(b1)中の全てのカルボキシル基に対して1.0化学当量以上であり、
前記アンモニア(b3)の含有量が、前記両性多価金属化合物(b2)の多価金属換算のモル数に対して4.0化学当量以上であり、
前記炭酸成分含有化合物(b4)の炭酸成分換算の含有量が、前記両性多価金属化合物(b2)の多価金属換算のモル数に対して1.0化学当量以上であり、
前記塗膜の乾燥が、得られるガスバリア性包装材料の100cmあたりのガスクロマトグラフィーにより測定されるアンモニア含有量が2000μg以下となるように行われることを特徴とする、ガスバリア性包装材料の製造方法。
[6]前記塗膜の乾燥が、160〜250℃で30秒〜10分間の熱処理により行われる、[5]に記載のガスバリア性包装材料の製造方法。
本発明のガスバリア性包装材料は、無機蒸着層が設けられていない場合でも、高い酸素バリア性および水蒸気バリア性を示す。
本発明のガスバリア性包装材料の製造方法によれば、無機蒸着層が設けられていない場合でも、高い酸素バリア性および水蒸気バリア性を示すガスバリア性包装材料を製造できる。
本発明の第1実施形態のガスバリア性包装材料を模式的に示す断面図である。 本発明の第2実施形態のガスバリア性包装材料を模式的に示す断面図である。 本発明の第3実施形態のガスバリア性包装材料を模式的に示す断面図である。
以下、本発明のガスバリア性包装材料について、添付の図面を用い、実施形態を示して説明する。
なお、以下の実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態のガスバリア性包装材料を模式的に示す断面図である。
本実施形態のガスバリア性包装材料10は、基材1と、基材1の一方の面上に積層したバリア層3(バリア層(B))とを備える。
(基材)
基材1を構成する材質としては、例えばプラスチックス類、紙類、ゴム類等が挙げられる。これらの中でも、基材1と、基材1上に形成される層と密着性の観点から、プラスチック類が好ましい。
プラスチック類としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系重合体、前記のポリオレフィン系重合体の共重合体、前記のポリオレフィン系重合体の酸変性物;ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリビニルアルコール等の酢酸ビニル系共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリε−カプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバリレート等のポリエステル系重合体、前記のポリエステル系重合体の共重合体;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン6−ナイロン66共重合体、ナイロン6−ナイロン12共重合体、メタキシレンアジパミド・ナイロン6共重合体等のポリアミド系重合体、前記のポリアミド系重合体の共重合体;ポリエチレングリコール、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド等のポリエーテル系重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の塩素系重合体またはフッ素系重合体、前記の塩素系重合体またはフッ素系重合体の共重合体;ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル等のアクリル系重合体、前記のアクリル系重合体の共重合体;ポリイミド系重合体、前記のポリイミド系重合体の共重合体;アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、塗料用に用いるエポキシ樹脂等の樹脂;セルロース、澱粉、プルラン、キチン、キトサン、グルコマンナン、アガロース、ゼラチン等の天然高分子化合物やそれらの混合物が挙げられる。
基材1として、前記プラスチック類の表面上に、酸化珪素、酸化アルミニウム、アルミニウム、窒化珪素などの無機化合物、金属化合物からなる薄膜が蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーディング法により形成されたものを用いてもよい。
基材1の形態としては、特に限定されるものではなく、例えば、フィルム、シート、ボトル、カップ、トレー、タンク、チューブ等の形態が挙げられる。本実施形態においては、バリア層3等を積層させる観点から、フィルムやシートが好ましい。
基材1の厚さは、その用途等によっても異なるが、5μm〜5cmであることが好ましい。
フィルムやシートの用途では、基材1の厚さは、5μm〜800μmであることが好ましく、5μm〜500μmであることがより好ましい。
基材1の厚さが前記範囲内であれば、各用途における作業性および生産性に優れる。
基材1の表面に、基材1上に形成される層と密着性の観点から、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等の表面活性化処理が施されていてもよい。
(バリア層)
バリア層3は、バリア層3の赤外線吸収スペクトル(以下、「IRスペクトル」ともいう。)を測定したときの、1490〜1659cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(β)と、1300〜1490cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(α)との比(α/β)が0.6以上であり、かつ1660〜1750cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(γ)と、前記最大ピーク高さ(β)との比(β/γ)が1.0以上である層である。
バリア層3のIRスペクトルを測定したときの吸光度は、バリア層3中に存在する赤外活性を有する化学種の量と比例関係にある。
最大ピーク高さ(α)は、錯体を形成しているアンモニアに帰属する1400cm−1のN−H変角振動のIRスペクトルの吸光度の最大ピーク高さである。具体例を挙げると、多価金属アンミン錯体を形成しているアンモニアに帰属するN−H変角振動は、通常、1300〜1490cm−1の赤外光波数領域に、1400cm−1付近に吸収極大を有する吸収ピークを与える。
最大ピーク高さ(β)は、塩を形成しているカルボキシル基(−COO)(以下、「カルボキシル基の塩」ともいう。)に帰属する1560cm−1のC=O伸縮振動のIRスペクトルの吸光度の最大ピーク高さである。具体例を挙げると、多価金属によりイオン架橋されたポリカルボン酸系重合体、つまりポリカルボン酸系重合体の多価金属塩において、多価金属と塩を形成しているカルボキシル基に帰属するC=O伸縮振動は、通常、1490cm−1〜1659cm−1の赤外光波数領域に、1560cm−1付近に吸収極大を有する吸収ピークを与える。
最大ピーク高さ(γ)は、最大ピーク高さ(β)とは分離独立したIRスペクトルの吸光度の最大ピーク高さであり、遊離カルボキシル基(−COOH)に帰属する1700cm−1のC=O伸縮振動のIRスペクトルの吸光度の最大ピーク高さである。具体例を挙げると、ポリカルボン酸系重合体の遊離カルボキシル基に帰属するC=O伸縮振動は、通常、1660cm−1〜1750cm−1の赤外光波数領域に、1700cm−1付近に吸収極大を有する吸収ピークを与える。
したがって、最大ピーク高さ(β)と最大ピーク高さ(α)との比(α/β)は、バリア層3内におけるカルボキシル基の塩と、錯体を形成しているアンモニアとの比を表す尺度として代用することができる。
また、最大ピーク高さ(γ)と最大ピーク高さ(β)との比(β/γ)は、バリア層3内における遊離カルボキシル基とカルボキシル基の塩との比を表す尺度として代用することができる。
比(α/β)は、0.6以上であり、0.7以上が好ましい。
比(β/γ)は、1.0以上であり、5.0以上が好ましく、10.0以上がより好ましい。
比(α/β)、比(β/γ)がそれぞれ前記下限値以上であれば、バリア層3が、高湿度下でも高い酸素バリア性および水蒸気バリア性を示す。
比(α/β)、比(β/γ)の上限はそれぞれ特に限定されない。
比(α/β)が0.6以上で、比(β/γ)が1.0以上であることから、バリア層3は、錯体を形成しているアンモニアと、カルボキシル基の塩とを含む。つまり、アンミン錯体と、カルボン酸の塩とを含む。
アンミン錯体として多価金属アンミン錯体を含み、カルボン酸の塩としてポリカルボン酸の多価金属塩を含む場合を例に挙げて、比(α/β)が0.6以上で、比(β/γ)が1.0以上であることによりバリア層3が上記効果を示す理由を説明する。
多価金属アンミン錯体は、バリア層3中に均一に分布して迷路効果を生み、酸素および水蒸気の透過を抑制する。ポリカルボン酸系重合体は、カルボキシル基を有するため自由体積が小さく、酸素の透過を抑制すると共に多価金属アンミン錯体を強固に固定する。
ポリカルボン酸系重合体が遊離カルボキシル基を含む場合、遊離カルボキシル基は、多価金属アンミン錯体と反応し、多価金属と塩を形成したカルボキシル基(カルボキシル基の多価金属塩)が生成し、その一方で、多価金属アンミン錯体が減少する。つまり比(α/β)が小さくなり、迷路効果が小さくなる。また、比(β/γ)が1.0未満である場合、つまりポリカルボン酸系重合体が遊離カルボキシル基を一定以上の割合で含む場合、高湿度下でポリカルボン酸系重合体の分子鎖が拡がりやすく、それ自体が有する酸素バリア性が低下し、多価金属アンミン錯体を固定する効果も低下する。
比(α/β)、比(β/γ)がそれぞれ前記下限値以上であれば、ポリカルボン酸系重合体のカルボキシル基はほぼ全て多価金属塩の状態、つまり多価金属によりイオン架橋された状態となっており、この状態では、多価金属アンミン錯体と反応しないか反応してもわずかである。また、かかるポリカルボン酸系重合体は、高湿度下でも分子鎖が拡がりにくく、多価金属アンミン錯体を強固に固定するため、高湿度下でも酸素および水蒸気の透過が充分に抑制される。また、ポリカルボン酸系重合体による酸素バリア性も低下しにくい。そのため、バリア層3が、低湿度域から高湿度域の広い範囲にわたって、高い酸素バリア性および水蒸気バリア性を示すと考えられる。
なお、アンミン錯体は、上記のような迷路効果を奏するものであれば、多価金属アンミン錯体に限定されない。また、カルボン酸の塩は、上記のようなアンミン錯体の固定効果を奏するものであれば、ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩には限定されない。
最大ピーク高さ(β)と最大ピーク高さ(α)との比(α/β)、最大ピーク高さ(γ)と最大ピーク高さ(β)との比(β/γ)はそれぞれ、試料のIRスペクトルを測定し、1300〜1490cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(α)と、1660cm−1〜1750cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(γ)と、1490cm−1〜1659cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(β)とを計測して求めることができる。
IRスペクトルの測定は、透過法、ATR法(減衰全反射法)、KBrペレット法、拡散反射法、光音響法(PAS法)等の公知の方法を用いて行うことができる。例えば、フーリエ変換赤外分光(FT−IT)分析機として、Perkin Elmer社製のAuto Imageを用いて、ATR法によるIRスペクトルの測定を行うことができる。FT−IRを用いたIRスペクトル測定法については、例えば、田隅三生著、「FT−IRの基礎と実際」を参照できる。
IRスペクトルの測定は、簡便性の観点から透過法またはATR法が好ましい。
代表的なIRスペクトルの測定方法としては、バリア層3の表面をATR法で測定する方法が挙げられる。このときのIRスペクトルの測定条件としては、侵入深さの観点より、Ge(ゲルマニウム)を用い、入射角45度、分解能4cm−1、積算回数10回での測定条件が挙げられる。
透過法でIRスペクトルを測定する場合、ガスバリア性包装材料10からバリア層3を除いた状態でのIRスペクトルと、ガスバリア性包装材料10のIRスペクトルとを比較する。この場合、ガスバリア性包装材料10からバリア層3を除いた状態でのIRスペクトルをバックグラウンドとして用いることが好ましい。バリア層3は、塩酸や水酸化ナトリウム水溶液のような、強酸または強塩基でガスバリア性包装材料10から取り除くことができる。
IRスペクトルにおいて、吸光度の最高ピーク高さは、900cm−1の吸光度と1900cm−1の吸光度とを直線で結んだ線をベースラインとした値とする。
最大ピーク高さ(γ)と最大ピーク高さ(β)との比(β/γ)から、バリア層3のイオン化度が求められる。
バリア層3のイオン化度は、1.0以上であることが好ましく、5.0以上がより好ましい。イオン化度が前記下限値以上であれば、より高い酸素バリア性および水蒸気バリア性が得られる。
イオン化度は、下記の式(1)で定義される。
(イオン化度)=Y/X (1)
(式中、Xは、バリア層3の1g中の全てのカルボキシル基に帰属するカルボニル炭素のモル数である。Yは、バリア層3の1g中のカルボキシル基の塩に帰属するカルボニル炭素のモル数である。)
イオン化度は、バリア層3中の全てのカルボキシル基に対する、カルボキシル基の塩の数の割合であり、比(β/γ)と比較して、より厳密な化学種の比として求めることができる。
全てのカルボキシル基には、カルボキシル基の塩としては前述の多価金属塩、一価金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩等)が挙げられる。
IRスペクトルの測定結果からイオン化度を求めるには、予め作成した検量線を用いる。検量線は、特許第4373797号公報に記載の方法により作成できる。
なお、IRスペクトルは、主に、カルボキシル基の化学構造に由来し、塩の金属種による影響は少ない。例えば後述する製造方法で用いるガスバリア性塗液に、ガスバリア性を損なわない範囲で、一価の金属からなる金属化合物を添加した場合には、カルボキシル基の多価金属塩に帰属するC=O伸縮振動、カルボキシル基の一価金属塩に帰属するC=O伸縮振動はともに、1490cm−1〜1659cm−1の赤外光波数領域に、1560cm−1付近に吸収極大を有する吸収ピークを与える。
バリア層3において、カルボキシル基は、ポリカルボン酸系重合体に由来するものであることが好ましい。すなわち、バリア層3は、ポリカルボン酸系重合体を含むことが好ましい。カルボキシル基がポリカルボン酸系重合体に由来するものであれば、他のカルボン酸を用いる場合に比べて、より高い酸素バリア性、水蒸気バリア性が得られる。
バリア層3は、多価金属を含むことが好ましい。多価金属は、カルボキシル基の多価金属塩を形成する。また、多価金属アンミン錯体を形成する。多価金属を含むことにより、多価金属を含まない場合に比べて、高湿度下での酸素バリア性、水蒸気バリア性がより高くなる。
バリア層3中に存在する金属種は、ICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析やEDX(エネルギー分散型X線)分光法などにより確認できる。
バリア層3としては、例えば、以下のガスバリア用塗液からなる塗膜を乾燥して形成された層が挙げられる。
ガスバリア用塗液:ポリカルボン酸系重合体(b1)と、両性多価金属化合物(b2)と、アンモニア(b3)と、炭酸成分含有化合物(b4)と、溶媒とを含み、
前記両性多価金属化合物(b2)の含有量が、前記ポリカルボン酸系重合体(b1)中の全てのカルボキシル基に対して1.0化学当量以上であり、
前記アンモニア(b3)の含有量が、前記両性多価金属化合物(b2)の多価金属換算のモル数に対して4.0化学当量以上であり、
前記炭酸成分含有化合物(b4)の炭酸成分換算の含有量が、前記両性多価金属化合物(b2)の多価金属換算のモル数に対して1.0化学当量以上であるもの。
このガスバリア用塗液およびこのガスバリア用塗液を用いたバリア層3の形成方法については後で詳しく説明する。
バリア層3の厚さは、特に限定されないが、0.001μm〜1mmであることが好ましく、0.01μm〜100μmであることがより好ましく、0.1μm〜10μmであることがさらに好ましい。
バリア層3の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、バリア層3が均一な膜となりやすい。バリア層3が均一な膜であれば、バリア層3に隣接する層に対する密着性が優れる。
バリア層3の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、バリア層3の形成時に多価金属によるイオン架橋が速やかに形成され、短時間で充分な酸素バリア性および水蒸気バリア性が発現しやすい。
(アンモニア含有量)
ガスバリア性包装材料10は、100cmあたりのガスクロマトグラフィー(以下、「GC」ともいう。)により測定されるアンモニア含有量が2000μg以下であり、1000μg以下が好ましく、800μg以下がより好ましい。
GCにより測定されるアンモニア含有量は、錯体を形成していないアンモニア(NH)の含有量である。
前記アンモニア含有量が前記上限値以下であれば、バリア層3の100cmあたりの前記アンモニア含有量も2000μg以下であり、バリア層3が、高い酸素バリア性および水蒸気バリア性を示す。アンモニアの存在下では、ポリカルボン酸系重合体の多価金属によるイオン架橋の進行が阻害される。アンモニア含有量が前記上限値以下であれば、ポリカルボン酸系重合体の多価金属によるイオン架橋が充分に進行しており、上記効果が得られると考えられる。
なお、本実施形態においては、ガスバリア性包装材料10の100cmあたりのアンモニア含有量は、バリア層3の100cmあたりのアンモニア含有量に等しい。ガスバリア性包装材料が複数のバリア層3を含む場合は、複数のバリア層3それぞれの100cmあたりのアンモニア含有量の合計が、ガスバリア性包装材料10の100cmあたりのアンモニア含有量である。
(酸素透過度)
ガスバリア性包装材料10は、温度30℃、相対湿度70%の条件で測定される酸素透過度が、5cm(STP)/(m・day・MPa)以下であることが好ましく、1cm(STP)/(m・day・MPa)以下がより好ましい。
(水蒸気透過度)
ガスバリア性包装材料10は、温度40℃、相対湿度90%の条件で測定される水蒸気透過度が1g/(m・day)以下であることが好ましく、0.5g/(m・day)以下がより好ましい。
(ガスバリア性包装材料の製造方法)
ガスバリア性包装材料10は、例えば、以下の製造方法(I)により製造できる。
製造方法(I):
基材1の一方の面上に、ポリカルボン酸系重合体(b1)と、両性多価金属化合物(b2)と、アンモニア(b3)と、炭酸成分含有化合物(b4)と、溶媒とを含むガスバリア用塗液を塗工し、前記ガスバリア用塗液からなる塗膜を形成し、前記塗膜を乾燥してバリア層3を形成する工程(以下、「工程(α1)」ともいう。)を含み、
前記ガスバリア用塗液中の、前記両性多価金属化合物(b2)の含有量が、前記ポリカルボン酸系重合体(b1)中の全てのカルボキシル基に対して1.0化学当量以上であり、
前記アンモニア(b3)の含有量が、前記両性多価金属化合物(b2)の多価金属換算のモル数に対して4.0化学当量以上であり、
前記炭酸成分含有化合物(b4)の炭酸成分換算の含有量が、前記両性多価金属化合物(b2)の多価金属換算のモル数に対して1.0化学当量以上であり、
前記塗膜の乾燥が、得られるガスバリア性包装材料の100cmあたりのGCにより測定されるアンモニア含有量が2000μg以下となるように行われることを特徴とする、ガスバリア性包装材料の製造方法。
前記ガスバリア用塗液においては、アンモニアの一部が両性多価金属化合物と錯体(多価金属アンミン錯体)を形成している。多価金属アンミン錯体は、ポリカルボン酸系重合体の多価金属アンミン錯体塩を形成していてもよい。
両性多価金属化合物が多価金属アンミン錯体を形成していることで、両性多価金属化合物とポリカルボン酸系重合体との反応が抑制され、塗工可能な状態を保っている。
前記ガスバリア用塗液からなる塗膜を乾燥し、塗膜中のアンモニアを除去すると、ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩が形成される。これにより、バリア層3として、ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩と、多価金属アンミン錯体とを含む層が形成される。バリア層3は、ポリカルボン酸系重合体の多価金属錯体塩を含んでもよい。また、未反応の両性多価金属化合物(b2)が粒子状、分子状等としてバリア層3中に存在してもよい。
[ガスバリア用塗液]
ガスバリア用塗液は、ポリカルボン酸系重合体(b1)と、両性多価金属化合物(b2)と、アンモニア(b3)と、炭酸成分含有化合物(b4)と、溶媒とを含む。
ガスバリア用塗液は、ケイ素化合物(b5)をさらに含んでもよい。
ガスバリア用塗液は、ポリカルボン酸系重合体(b1)、両性多価金属化合物(b2)、アンモニア(b3)、炭酸成分含有化合物(b4)およびケイ素化合物(b5)以外の他の成分をさらに含んでもよい。
<ポリカルボン酸系重合体(b1)>
「ポリカルボン酸系重合体」とは、分子内に2個以上のカルボキシル基を有する重合体である。
ポリカルボン酸系重合体(b1)としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸の(共)重合体;エチレン性不飽和カルボン酸と他のエチレン性不飽和単量体との共重合体;アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン等の分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖類等が挙げられる。これらのポリカルボン酸系重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。
エチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類、アルキルイタコネート類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
ポリカルボン酸系重合体(b1)としては、ガスバリア性包装材料のガスバリア性の観点から、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸およびクロトン酸からなる群から選択される少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む重合体が好ましい。
該重合体は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。共重合体である場合、すなわち上記の構成単位以外の他の構成単位が含まれる場合には、他の構成単位としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和単量体等が挙げられる。
ポリカルボン酸系重合体(b1)としては、上記の中でも、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸およびイタコン酸からなる群から選択される少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む重合体が好ましい。
該重合体において、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびマレイン酸からなる群から選択される少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位の割合は、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい(ただし、全構成単位を100モル%とする)。
ポリカルボン酸系重合体(b1)の数平均分子量は、2,000〜10,000,000であることが好ましい。ポリカルボン酸系重合体(b1)の数平均分子量が2,000以上であれば、得られるガスバリア性包装材料の耐水性がより優れ、水分によってガスバリア性や透明性が悪化する場合や、白化が生じる場合がない。ポリカルボン酸系重合体(b1)の数平均分子量が10,000,000以下であれば、本発明のガスバリア用塗液の粘度が高くなりすぎず、塗工性が損なわれ難い。
ポリカルボン酸系重合体(b1)の数平均分子量は、得られるガスバリア性包装材料の耐水性の観点から、5,000〜1,000,000であることがより好ましい。
なお、ポリカルボン酸系重合体(b1)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた、ポリスチレン換算の数平均分子量である。
ポリカルボン酸系重合体(b1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<両性多価金属化合物(b2)>
「両性多価金属化合物」とは、酸とも塩基とも反応する多価金属化合物を意味する。
「多価金属」とは、価数が2以上の金属である。
両性多価金属化合物(b2)の具体例としては、酸化亜鉛、酸化銅等が挙げられる。
両性多価金属化合物(b2)は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
<炭酸成分含有化合物(b4)>
炭酸成分含有化合物(b4)における炭酸成分は、COおよびHCOの総称である。
炭酸成分含有化合物(b4)としては、例えば、正塩、酸性塩(炭酸水素塩)、塩基性塩(炭酸水酸化物塩)等の炭酸塩、炭酸等が挙げられる。
炭酸塩としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸水素塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸アンモニウム塩等が挙げられる。炭酸塩の具体例としては、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム、炭酸ランタン、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン、炭酸ニッケル、炭酸ストロンチウム、アミノグアニジン炭酸塩、グアニジン炭酸塩等が挙げられる。また、これらの炭酸塩の無水塩、水和塩またはこれらの混合物等を用いることもできる。
炭酸成分含有化合物(b4)としては、上記の中でも、ガスバリア性を損なわず、取扱いが容易であり、ガスバリア用塗液の液安定性がより優れる点から、炭酸アンモニウムまたは炭酸水素アンモニウムが好ましい。
炭酸成分含有化合物(b4)は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
<溶媒>
溶媒としては、特に制限されず、例えば、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合溶媒等が挙げられる。
水としては、精製された水が好ましく、例えば、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。
有機溶媒としては、炭素原子数1〜5の低級アルコールおよび炭素原子数3〜5の低級ケトンからなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒等を用いることが好ましい。
有機溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
水と有機溶媒との混合溶媒としては、上記の水や有機溶媒を用いた混合溶媒が好ましく、水と炭素原子数1〜5の低級アルコールとの混合溶媒がより好ましい。
混合溶媒としては、典型的には、水の割合が20質量%〜95質量%で、有機溶媒の割合が80質量%〜5質量%であるものが用いられる(ただし、水と有機溶媒との合計を100質量%とする)。
溶媒としては、ポリカルボン酸系重合体(b1)の溶解性の観点から、水、または水と有機溶媒との混合溶媒が好ましい。
<ケイ素化合物(b5)>
ケイ素化合物(b5)としては、カルボキシル基と反応する官能基を有するものが好ましい。カルボキシル基と反応する官能基としては、たとえばグリシジルオキシ基、アミノ基等が挙げられる。
ケイ素化合物(b5)としては、下記式(5)で表されるシランカップリング剤、その加水分解物およびこれらの縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のケイ素化合物(以下、「ケイ素化合物(b51)」ともいう。)が好ましい。
なお、本明細書において、式(5)で表されるシランカップリング剤の加水分解物が縮合したものを、加水分解縮合物とも記す。
Si(OR)Z ・・・(5)
上記式(5)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基であり、Zはグリシジルオキシ基またはアミノ基を含有する有機基であり、Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
上記式(5)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられ、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。シランカップリング剤としては、一種で用いても、二種以上で用いてもよい。
ケイ素化合物(b51)は、上記式(5)で表されるシランカップリング剤自体であってもよく、該シランカップリング剤が加水分解した加水分解物でもよく、これらの縮合物であってもよい。
ケイ素化合物(b51)としては、例えばゾルゲル法を用いて、上記式(5)で表されるシランカップリング剤の加水分解および縮合反応を行ったものを用いることができる。
上記式(5)で表されるシランカップリング剤に水を加えると、該シランカップリング剤が有するアルコキシ基(OR)の少なくとも一部が水酸基に置換されて加水分解物となり、さらに該加水分解物が縮合することによって、ケイ素原子(Si)が酸素を介して結合した化合物が形成される。この縮合が繰り返されることにより、加水分解縮合物が得られる。
なお、通常、上記式(5)で表されるシランカップリング剤は、加水分解が容易におこり、また、酸、アルカリ存在下では容易に縮合反応がおこるため、該シランカップリング剤のみ、その加水分解物のみ、またはこれらの縮合物のみで存在することは稀である。すなわち、ケイ素化合物(b51)は、通常、上記式(5)で表されるシランカップリング剤、その加水分解物、およびこれらの縮合物が混在している。また、加水分解物には、部分加水分解物、完全加水分解物が含まれる。
<他の成分>
他の成分としては、例えば、ポリカルボン酸系重合体(b1)以外の他の重合体、一価の金属化合物、無機層状化合物(モンモリロナイト等)、その他の各種の添加剤等が挙げられる。
添加剤としては、可塑剤、樹脂、分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、アンチブロッキング剤、膜形成剤、粘着剤、酸素吸収剤等が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、公知の可塑剤から適宜選択して用いることができる。可塑剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンオキサイド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、エリトリトール、グリセリン、乳酸、脂肪酸、澱粉、フタル酸エステル等が挙げられる。これらの可塑剤は、必要に応じて、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
これらの可塑剤の中でも、延伸性とガスバリア性の観点から、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、グリセリン、澱粉が好ましい。
<各成分の含有量>
ガスバリア用塗液中の両性多価金属化合物(b2)の含有量は、ポリカルボン酸系重合体(b1)中の全てのカルボキシル基に対して1.0化学当量以上であり、1.0化学当量以上10.0化学当量以下が好ましく、1.0化学当量以上5.0化学当量以下がより好ましい。
両性多価金属化合物(b2)の含有量が前記下限値以上であれば、比(β/γ)が前記の下限値以上となり、バリア層3のガスバリア性や耐湿性が充分に向上する。
両性多価金属化合物(b2)の含有量が前記上限値以下であれば、バリア層3の透明性等が優れる。
ガスバリア用塗液中のアンモニア(b3)の含有量は、両性多価金属化合物(b2)の多価金属換算のモル数に対して4.0化学当量以上であり、4.0化学当量以上20.0化学当量以下が好ましく、4.0化学当量以上10.0化学当量以下がより好ましい。
アンモニア(b3)の含有量が前記下限値以上であれば、両性多価金属化合物(b2)がアンモニア(b3)と錯体を形成し、ポリカルボン酸系重合体(b1)と両性多価金属化合物(b2)とが反応するのが抑制されき、ガスバリア用塗液が透明、均一な溶液の状態を維持できる。
一方、アンモニア(b3)基の含有量が少ないほど、ガスバリア用塗液を塗工、乾燥してバリア層を形成する際に、より熱量の少ない条件でアンモニア含有量を2000μg以下として優れたガスバリア性を発現させることができる。また、アンモニア(b3)の揮発量が少なく、アンモニア(b3)による刺激臭等の作業環境への影響が少なくなる。
ガスバリア用塗液中の炭酸成分含有化合物(b4)の炭酸成分換算の含有量は、両性多価金属化合物(b2)の多価金属換算のモル数に対して1.0化学当量以上であり、1.0化学当量以上10.0化学当量以下が好ましく、1.0化学当量以上5.0化学当量以下がより好ましい。
両性多価金属化合物(b2)とアンモニア水とを混合すると、多価金属水酸化物が生成する。この多価金属水酸化物は水に溶解しないが、さらにアンモニアが加わると、多価金属アンミン錯体([Zn(NH2+、Cu(NH2+)を形成し、水に可溶となる。その際、陽イオンである多価金属アンミン錯体のカウンターイオンとして炭酸成分含有化合物(b4)に由来する炭酸成分が前記の量で存在していると、未溶解物の析出等が発生しにくく、均一な溶液が得られやすい。
前記の割合が前記範囲の上限値以下であれば、バリア層3を形成しやすい。
溶媒の含有量は、コーティング適性の観点から、ガスバリア用塗液の全量に対するポリカルボン酸系重合体(b1)と両性多価金属化合物(b2)との合計量の割合が、0.1〜50質量%となる量が好ましい。
ガスバリア用塗液がケイ素化合物(b5)を含む場合、ガスバリア用塗液中のケイ素化合物(b5)の含有量は、ポリカルボン酸系重合体(b1)の質量とケイ素化合物(b5)の質量との比(ポリカルボン酸系重合体:ケイ素化合物)が、99.5:0.5〜40.0:60.0の範囲内となる量であることが好ましい。
上記式(5)で表されるシランカップリング剤として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを用いる場合には、ポリカルボン酸系重合体(b1)の質量とケイ素化合物(b5)の質量との比は、99.5:0.5〜40.0:60.0であることが好ましく、99:1〜50.0:50.0であることが特に好ましい。
上記式(5)で表されるシランカップリング剤として、γ−アミノプロピルトリメトキシシランやγ−アミノプロピルトリエトキシシランを用いる場合には、ポリカルボン酸系重合体(b1)の質量とケイ素化合物(b5)の質量との比は、99:1〜40.0:60.0であることが好ましく、99.0:1〜50.0:50.0であることが特に好ましい。
ただし、上記式(5)で表されるシランカップリング剤以外のケイ素化合物(b51)の質量は、上記式(5)で表されるシランカップリング剤換算の質量である。つまり、ケイ素化合物(b51)は、上記式(5)で表されるシランカップリング剤、その加水分解物、およびこれらの縮合物が混在するが、ケイ素化合物(b51)の質量は、上記式(5)で表されるシランカップリング剤に換算した値、すなわち、上記式(5)で表されるシランカップリング剤の仕込み量である。
ガスバリア用塗液が他の成分を含有する場合、ガスバリア用塗液中の他の成分の含有量は、ポリカルボン酸系重合体(b1)と他の成分との質量比(ポリカルボン酸系重合体(b1):他の成分)で、70:30〜99.9:0.1であることが好ましく、80:20〜98:2であることがより好ましい。
ガスバリア用塗液中のポリカルボン酸系重合体(b1)中の全てのカルボキシル基に対ての両性多価金属化合物(b2)やアンモニア(b3)の化学当量は、ガスバリア用塗液の調製に用いた原料から算出できる。また、ICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析やガスクロマトグラフィー等の分析方法によりガスバリア用塗液を分析して求めてもよい。
化学当量について、ポリカルボン酸系重合体(b1)がポリアクリル酸、両性多価金属化合物(b2)が酸化亜鉛である場合を例に挙げて詳しく説明する。
ポリアクリル酸の質量を100gとした場合、ポリアクリル酸の単量体単位の分子量は72で、単量体1分子当たり1個のカルボキシル基を有するため、ポリアクリル酸100g中のカルボキシル基の量は1.39モルである。このとき、ポリアクリル酸100gに対する1当量とは、1.39モルを中和する塩基の量である。したがって、ポリアクリル酸100gに対して、酸化亜鉛を2.0当量添加する場合、1.39×2.0=2.78モルのカルボキシル基を中和するために必要な量の酸化亜鉛を添加すればよい。
亜鉛の価数は2価、酸化亜鉛の分子量は81.41であるため、ポリアクリル酸100gに対する2.0当量の酸化亜鉛の質量は、113g(1.39モル)である。
ガスバリア用塗液は、ポリカルボン酸系重合体(b1)と、両性多価金属化合物(b2)と、アンモニア(b3)と、炭酸成分含有化合物(b4)と、溶媒と、必要に応じてケイ素化合物(b5)や他の成分を混合することにより調製できる。
[工程(α1)]
工程(α1)では、基材1の一方の面上に、前記ガスバリア用塗液を塗工して塗膜を形成し、前記塗膜を乾燥してバリア層3を形成する。
ガスバリア用塗液の塗工方法としては、特に限定されないが、例えば、キャスト法、ディッピング法、ロールコーティング法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キットコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法等が挙げられる。
塗膜の乾燥は、得られるガスバリア性包装材料の100cmあたりのアンモニア含有量が2000μg以下となるように行われる。好ましいアンモニア含有量は前記と同様である。このように乾燥を行うことで、塗膜中の溶媒およびアンモニア(b3)が除去され、ポリカルボン酸系重合体(b1)の多価金属塩が生成してバリア層3が形成される。
乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法等の方法が挙げられる。これらの乾燥方法は、単独または組み合わせて行ってもよい。
乾燥は、アンモニア(b3)を除去し、アンモニア含有量を前記の上限値以下としやすい点では、160〜250℃で30秒〜10分間の熱処理により行われることが好ましい。
乾燥は、通常、常圧または減圧下で行われ、設備の簡便性の観点から、常圧下で行うことが好ましい。
乾燥は、1段階で行ってもよく、乾燥条件を変更して2段階以上で行ってもよい。2段階以上で行う場合として、たとえば最初に溶媒を除去するための乾燥を行い、その後、アンモニアを除去するための乾燥を行う場合が挙げられる。この場合、アンモニアを除去するための乾燥は、前記の熱処理条件により行うことが好ましい。溶媒を除去するための乾燥は、アンモニアを除去するための乾燥よりも低温で行ってもよい。
<第2実施形態>
図2は、本発明の第2実施形態のガスバリア性包装材料を模式的に示す断面図である。なお、以下に示す実施形態において、第1実施形態に対応する構成要素には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
本実施形態のガスバリア性包装材料20は、基材1と、基材1の一方の面上に積層したアンカーコート層5と、アンカーコート層5上に積層したバリア層3とを備える。
ガスバリア性包装材料20は、基材1とバリア層3との間にアンカーコート層5をさらに備える以外は、第1実施形態のガスバリア性包装材料10と同様である。
(アンカーコート層)
アンカーコート層5は、基材1とバリア層3との間の密着性を高めるために設けられる。
アンカーコート層5を構成する材料としては、各種の樹脂を用いることができる。樹脂としては、例えば、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、水性ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール系重合体およびその誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、酸化でんぷん、エーテル化でんぷん、デキストリン等のでんぷん類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸またはそのエステル、塩類およびそれらの共重合体、水性ポリエステル樹脂、ポリヒドロキシエチルメタクリレートおよびその共重合体等のビニル系重合体、これらの各種重合体のカルボキシル基等官能基変性重合体等が挙げられる。これらの樹脂は、いずれか一種を単独で用いてもよく、二種類以上の樹脂類を併用してもよい。
アンカーコート層5を構成する材料としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、水性ポリウレタン樹脂とポリビニルアルコール系重合体との混合物、または水性ポリエステル樹脂が好ましい。
前記樹脂に、硬化剤が配合されていることが好ましい。硬化剤としては、配合される樹脂と反応性を有するものであれば種類は問わないが、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水分散性(水溶性)カルボジイミド、水溶性エポキシ化合物、水分散性(水溶性)オキサゾリドン化合物、水溶性アジリジン系化合物、水分散性ポリイソシアネート系硬化剤等が好ましく用いられる。
アンカーコート層5の厚さは、均一な塗膜を形成することができれば、特に限定されないが、0.01μm〜10μmであることが好ましく、0.05μm〜5μmであることがより好ましい。
アンカーコート層5の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、均一な膜が得られやすく、基材1に対する密着性の観点で優れている。アンカーコート層5の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、アンカーコート層5の柔軟性(可撓性)が良好で、外的要因により塗膜に亀裂が生じるおそれがない。
(ガスバリア性包装材料の製造方法)
ガスバリア性包装材料20は、例えば、以下の製造方法(II)により製造できる。
製造方法(II):
基材1の一方の面上に、樹脂を含む塗液を塗工し、乾燥させてアンカーコート層5を形成する工程(以下、「工程(β1)」ともいう。)と、
基材1のアンカーコート層5が形成された側の面上に、ポリカルボン酸系重合体(b1)と、両性多価金属化合物(b2)と、アンモニア(b3)と、炭酸成分含有化合物(b4)と、溶媒とを含むガスバリア用塗液を塗工し、前記ガスバリア用塗液からなる塗膜を形成し、前記塗膜を乾燥してバリア層3を形成する工程(以下、「工程(β2)」ともいう。)と、を含み、
前記ガスバリア用塗液中の、前記両性多価金属化合物(b2)の含有量が、前記ポリカルボン酸系重合体(b1)中の全てのカルボキシル基に対して1.0化学当量以上であり、
前記アンモニア(b3)の含有量が、前記ポリカルボン酸系重合体(b1)中の全てのカルボキシル基に対して4.0化学当量以上であり、
前記炭酸成分含有化合物(b4)の炭酸成分換算の含有量が、前記両性多価金属化合物(b2)の多価金属換算のモル数に対して1.0化学当量以上であり、
前記塗膜の乾燥が、得られるガスバリア性包装材料の100cmあたりのGCにより測定されるアンモニア含有量が2000μg以下となるように行われることを特徴とする、ガスバリア性包装材料の製造方法。
なお、一方の面上にアンカーコート層5が形成された市販品があれば用いても問題なく、工程(β1)を省略してもよい。
[工程(β1)]
アンカーコート層5の形成に用いられる塗液(以下、「塗液A」ともいう。)は、樹脂と、溶媒とを含む。必要に応じて硬化剤等を含んでもよい。
塗液Aに用いられる樹脂は、アンカーコート層5を構成する材料として挙げた樹脂と同様である。
塗液Aに用いられる溶媒としては、特に制限されず、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の有機溶媒が挙げられる。
塗液Aの固形分濃度は、塗工適性の観点から、塗液Aの全量(100質量%)に対して、0.5〜50質量%であることが好ましい。
塗液Aの塗工方法としては、特に限定されず、例えば、前述の工程(α1)で挙げた各種の塗工方法を用いることができる。
乾燥方法としては、特に限定されず、例えば、前述の工程(α1)で挙げた各種の乾燥方法を用いることができる。
乾燥温度は、特に限定されないが、溶媒として、水や、水と有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、通常、40℃〜160℃が好ましい。
乾燥の際の圧力は、通常、常圧または減圧下で行うことが好ましく、設備の簡便性の観点から、常圧で行うことが好ましい。
[工程(β2)]
ガスバリア用塗液としては、第1実施形態で挙げたものと同様のものが挙げられる。
工程(β2)は、第1実施形態における工程(α1)と同様にして行うことができる。
工程(β2)は、工程(β1)から連続的に行ってもよく、巻取り工程や養生工程を経て、不連続的に行ってもよい。
<第3実施形態>
図3は、本発明の第3実施形態のガスバリア性包装材料を模式的に示す断面図である。
本実施形態のガスバリア性包装材料30は、基材1と、基材1の一方の面上に積層した下部バリア層7と、下部バリア層7上に積層した上部バリア層9(バリア層(B))とを備える。
上部バリア層9は、第1実施形態のバリア層3と同じである。つまり、ガスバリア性包装材料20は、基材1とバリア層3との間に下部バリア層7をさらに備える以外は、第1実施形態のガスバリア性包装材料10と同様である。
(下部バリア層)
下部バリア層7は、上部バリア層9と同一でもよく、上部バリア層9とは異なる他のバリア層でもよい。
他のバリア層としては、蒸着法により形成されたもの、上部バリア層9のようにコーティング法により形成されたもの等が挙げられる。
蒸着法により形成されたバリア層の例として、無機蒸着層が挙げられる。無機蒸着層は、蒸着法により形成された、無機材料の層である。無機蒸着層は、ガスバリア性包装材料30の酸素バリア性、水蒸気バリア性等のガスバリア性、特に水蒸気バリア性を高める上で好ましい。
無機蒸着層を構成する無機材料としては、酸素バリア性、水蒸気バリア性等のガスバリア性を付与するための無機蒸着層を構成することができる無機材料が適宜選択される。例えば、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化錫等が挙げられる。無機材料は、必要に応じて、1種または2種以上が組み合わせられて用いられる。
無機材料としては、ガスバリア性が高い点から、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムおよび酸化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
酸化アルミニウムは、アルミニウム(Al)と酸素(O)の存在比がモル比で、Al:O=1:1.5〜1:2.0であることが好ましい。例えば、酸化アルミニウム蒸着層は、アルミニウムを蒸着材料にして、酸素、炭酸ガスと不活性ガス等との混合ガスの存在下、薄膜形成を行う反応性蒸着、反応性スパッタリング、反応性イオンプレーティング等により形成することができる。この時、アルミニウムを酸素と反応させれば、化学量論的にはAlであることから、アルミニウム(Al)と酸素(O)の存在比がモル比で、Al:O=1:1.5であるはずである。しかしながら、蒸着方法によって、一部アルミニウムのまま存在するものや、または、過酸化アルミニウムで存在するものもあり、X線光電子分光分析装置(XPS)等を用いて、酸化アルミニウム蒸着層の元素の存在比を測定すると、一概に、アルミニウム(Al)と酸素(O)の存在比がモル比で、Al:O=1:1.5とは言えないことが分かる。一般に、アルミニウム(Al)と酸素(O)の存在比がモル比で、Al:O=1:1.5よりも酸素量が少なく、アルミニウム量が多い場合、酸化アルミニウム蒸着層は緻密になるため、良好なガスバリア性が得られるものの、酸化アルミニウム蒸着層は黒く着色し、光線透過量が低くなる傾向がある。一方、アルミニウム(Al)と酸素(O)の存在比がモル比で、Al:O=1:1.5よりも酸素量が多く、アルミニウム量が少ない場合、酸化アルミニウム蒸着層は疎になるため、ガスバリア性が悪いものの、光線透過量が高く透明となる。
酸化ケイ素は、特に無機蒸着層に耐水性が必要とされる場合に好適に用いられる。
無機蒸着層の厚さは、ガスバリア性包装材料30の用途や第二バリア層9の厚さによっても異なるが、5〜300nmであることが好ましく、10〜50nmであることがより好ましい。無機蒸着層の厚さが前記範囲の下限値以上であれば、無機蒸着層の連続性が良好で、ガスバリア性に優れる。無機蒸着層の厚さが前記範囲の上限値以下であれば、無機蒸着層の柔軟性(可撓性)が優れ、折り曲げ、引っ張り等の外的要因による亀裂が生じにくい。
無機蒸着層の厚さは、例えば、蛍光X線分析装置を用いて、事前に同様のサンプルを透過型電子顕微鏡(TEM)にて測定し得た検量線の結果から算出することができる。
コーティング法により形成された他のバリア層の例として、バリア性樹脂と溶媒とを含む塗液のコーティングにより形成された層が挙げられる。該塗液は、必要に応じて、硬化剤等を含んでもよい。
バリア性樹脂としては、各種のバリア性樹脂を用いることができ、例えば、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられる。
溶媒としては、特に制限されず、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の有機溶媒が挙げられる。
塗液の固形分濃度は、塗工適性の観点から、該塗液の全量(100質量%)に対して、0.5〜50質量%であることが好ましい。
(ガスバリア性包装材料の製造方法)
ガスバリア性包装材料30は、例えば、以下の製造方法(III)により製造できる。
製造方法(III):
基材1の一方の面上に下部バリア層7を形成する工程(以下、「工程(γ1)」ともいう。)と、
基材1の下部バリア層7が形成された側の面上に、ポリカルボン酸系重合体(b1)と、両性多価金属化合物(b2)と、アンモニア(b3)と、炭酸成分含有化合物(b4)と、溶媒とを含むガスバリア用塗液を塗工し、前記ガスバリア用塗液からなる塗膜を形成し、前記塗膜を乾燥して上部バリア層9を形成する工程(以下、「工程(γ2)」ともいう。)と、を含み、
前記ガスバリア用塗液中の、前記両性多価金属化合物(b2)の含有量が、前記ポリカルボン酸系重合体(b1)中の全てのカルボキシル基に対して1.0化学当量以上であり、
前記アンモニア(b3)の含有量が、前記ポリカルボン酸系重合体(b1)中の全てのカルボキシル基に対して4.0化学当量以上であり、
前記炭酸成分含有化合物(b4)の炭酸成分換算の含有量が、前記両性多価金属化合物(b2)の多価金属換算のモル数に対して1.0化学当量以上であり、
前記塗膜の乾燥が、得られるガスバリア性包装材料の100cmあたりのGCにより測定されるアンモニア含有量が2000μg以下となるように行われることを特徴とする、ガスバリア性包装材料の製造方法。
[工程(γ1)]
下部バリア層7が、上部バリア層9と同一である場合、工程(γ1)は、第1実施形態における工程(α1)と同様にして行うことができる。
下部バリア層7が、上部バリア層9と異なる他のバリア層である場合、該他のバリア層の形成は、公知の方法により実施できる。
なお、下部バリア層7が他のバリア層であり、一方の面上に下部バリア層7が形成された市販品があれば用いても問題なく、工程(γ1)を省略してもよい。
他のバリア層が蒸着法により形成されたもの(無機蒸着層等)である場合、その形成には、公知の種々の蒸着方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相成長法等が挙げられる。
真空蒸着法による真空蒸着装置の加熱手段としては、電子線加熱方式、抵抗加熱方式、誘導加熱方式等が好ましく用いられる。また、基材1に対する下部バリア層7の密着性および下部バリア層7の緻密性を向上させるためには、前記の加熱手段に加えて、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いることもできる。
蒸着の際、無機蒸着層の透明性を上げるために、酸素ガス等を吹き込んだりする反応蒸着を行ってもよい。
他のバリア層がコーティング法により形成されたものである場合、バリア層を形成する塗液(例えば前述のバリア性樹脂と溶媒とを含む塗液)を基材1上に塗工し、乾燥することにより形成できる。
塗液の塗工方法としては、特に限定されず、例えば、前述の工程(α1)で挙げた各種の塗工方法を用いることができる。
乾燥方法としては、特に限定されず、例えば、前述の工程(α1)で挙げた各種の乾燥方法を用いることができる。
乾燥温度は、特に限定されないが、溶媒として、水や、水と有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、通常、40℃〜160℃が好ましい。
乾燥の際の圧力は、通常、常圧または減圧下で行うことが好ましく、設備の簡便性の観点から、常圧で行うことが好ましい。
[工程(γ2)]
ガスバリア用塗液としては、第1実施形態で挙げたものと同様のものが挙げられる。
工程(γ2)は、第1実施形態における工程(α1)と同様にして行うことができる。
以上、第1実施形態〜第3実施形態を示して本発明のガスバリア性包装材料を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
例えば、第1実施形態〜第2実施形態では、基材1の一方の面上にバリア層3が積層した例を示したが、基材1の両面上にバリア層3が積層してもよい。この場合、一方の面上に積層したバリア層3と他方の面上に積層したバリア層3とは同一でもよく異なってもよい。例えば各バリア層に用いられるガスバリア用塗液の組成、各バリア層の厚さ等が異なっていてもよい。同様に、第2実施形態におけるアンカーコート層5や、第3実施形態における第一バリア層7や第二バリア層9が、基材1の両面上に積層してもよい。
第3実施形態における基材1と第一バリア層7との間、および第一バリア層7と第二バリア層9との間のいずれか一方または両方に、アンカーコート層5が設けられてもよい。
本発明のガスバリア性包装材料は、バリア層3のみから構成されてもよい。
<応用(ラミネーション)>
上記実施形態のガスバリア性包装材料に、強度付与、シール性やシール時の易開封性付与、意匠性付与、光遮断性付与等の目的で、他の基材が積層されてもよい。また、ガスバリア性包装材料に他の基材を積層した後、レトルト処理、ボイル処理および調湿処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理を施してもよい。
他の基材としては、目的に応じて適宜選択されるが、通常、プラスチックフィルム類や紙類が好適に用いられる。また、このようなプラスチックフィルム類や紙類は、1種を単独で用いても、2種以上を積層して用いても、プラスチックフィルム類や紙類を積層して用いてもよい。
他の基材の形態としては、特に限定されず、例えば、フィルム、シート、ボトル、カップ、トレー、タンク、チューブ等の形態が挙げられる。これらの基材の中でも、ガスバリア性包装材料を積層させる観点から、フィルムやシートが好ましく、また、カップ成型前のシートや、扁平にしたチューブも好ましい。
ガスバリア性包装材料と他の基材との積層方法としては、接着剤を用いてラミネート法により積層する方法が挙げられる。具体的なラミネート法としては、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、押出しラミネート法等が挙げられる。
本実施形態のガスバリア性包装材料と他の基材との積層態様としては、特に限定されないが、製品としての取扱性の観点から、例えば、
(a)ガスバリア性包装材料/ポリオレフィン、
(b)ガスバリア性包装材料/ポリオレフィン(チューブ状)/ガスバリア性包装材料、
(c)ガスバリア性包装材料/ナイロン/ポリオレフィン、
(d)ガスバリア性包装材料/ポリオレフィン/紙/ポリオレフィン、
(e)ポリオレフィン/ガスバリア性包装材料/ポリオレフィン、
(f)ポリオレフィン/ガスバリア性包装材料/ナイロン/ポリオレフィン、
(g)ポリエチレンテレフタレート/ガスバリア性包装材料/ナイロン/ポリオレフィン等が挙げられる。
また、これらの積層態様を繰り返し積層させることもできる。
これらの積層態様において、意匠性付与、光遮断性付与、防湿性付与等の観点より、印刷層や金属やケイ素化合物の蒸着層が積層されていてもよい。
ガスバリア性包装材料が積層体である場合、ガスバリア性包装材料の積層面は、ガスバリア性の観点より、最外層に配置されていないことが好ましい。ガスバリア性包装材料の積層面が最外層に配置されると、バリア層等が削られ、ガスバリア性が低下する要因となる。
<作用効果>
本発明のガスバリア性包装材料にあっては、バリア層(B)を備えることで、無機蒸着層が設けられていない場合でも、高い酸素バリア性および水蒸気バリア性を示す。また、酸素バリア性および水蒸気バリア性が湿度の影響を受けにくく、高湿度下でも酸素バリア性および水蒸気バリア性が低下しにくい。
したがって、本発明のガスバリア性包装材料は、酸素、湿度等の影響により劣化しやすい、食品、飲料、薬品、医薬品、電子部品等の精密金属部品のガスバリア性包装材料として好適に用いられる。
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
各例で用いた測定方法、材料、装置を以下に示す。
〔測定方法〕
<酸素透過度(OTR)の測定>
包装材料の酸素透過度(OTR)は、Modern Control社製酸素透過試験器OXTRAN(登録商標)2/20を用いて、温度30℃、相対湿度70%の条件下で測定した。測定方法は、ASTM F1927−98(2004)に準拠し、測定値は、単位cm(STP)/(m・day・MPa)で表記した。ここで(STP)は酸素の体積を規定するための標準条件(0℃、1気圧)を意味する。
<水蒸気透過度(WVTR)の測定>
包装材料の水蒸気透過度(WVTR)は、Modern Control社製のPERMATRAN−W 3/31を用いて、温度40℃、相対湿度90%における透湿度を測定した(ASTM F1249−01)。測定値は、単位g/(m・day)で表記した。
<残留アンモニア量の測定>
包装材料の残留アンモニア量は、島津製作所製のGC−14B(ガスクロマトグラフ)を用いて、注入口温度180℃、カラム温度80℃、流量30mL/分、検出器温度200℃、電流120mA、カラムporapakQ(内径3.2mm×3.1m)、キャリアガスHeにて測定した。
サンプルは10cm×10cmのサンプル片を使用した。サンプル片をバイアル瓶(30mL)に封入し、オーブンにて180℃30分間加熱後、シリンジにて0.5mL抽出し、速やかに注入した。測定値は単位μg/100cmで表記した。
<IRスペクトルの測定>
包装材料のIRスペクトルの測定は、Perkin Elmer製のAuto Image(IR分光分析機)を用いて、ATR法で行った。結晶板にはゲルマニウムを用い、入射角45度、分解能4cm−1、積算回数10回、にて測定した。吸光度の最大ピーク高さは、900cm−1の吸光度と1900cm−1の吸光度とを直線で結んだ線をベースラインとし、1300〜1490cm−1、1490〜1659cm−1、1660〜1750cm−1の各波数範囲における吸光度(Abs)の最大値を読み取った。求めた最大ピーク高さ(α)、(β)、(γ)から、比(α/β)および比(β/γ)を算出した。
〔材料、装置〕
ポリカルボン酸としては、和光純薬製のポリアクリル酸(数平均分子量250,000、和光一級)を用いた。
酸化亜鉛としては、和光純薬工業製の酸化亜鉛(和光一級)を用いた。
酸化銅としては、和光純薬工業製の酸化銅(II)を用いた。
アンモニア水としては、和光純薬工業社製のアンモニア水(25%、和光一級)を用いた。
炭酸水素アンモニウムとしては、和光純薬工業社製の炭酸水素アンモニウム(試薬特級)を用いた。
炭酸アンモニウムとしては、和光純薬工業社製の炭酸アンモニウム(試薬特級)を用いた。
Si剤としては、和光純薬工業社製の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いた。
2−プロパノールとしては、和光純薬工業製の2−プロパノール(和光一級)を用いた。
PETフィルムとしては、東レフィルム加工社製の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム ルミラー(登録商標)P60(厚さ12μm)を用いた。
蒸着PETフィルムとしては、東レフィルム加工社製の酸化アルミ蒸着二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム バリアロックス(登録商標)1011HG(厚さ12μm)を用いた。
ナイロンフィルムとしては、ユニチカ社製の延伸ナイロンフィルム エンブレム(登録商標)ONMB(厚さ15μm)を用いた。
ポリプロピレンフィルムとしては、東レフィルム加工社製のポリプロピレンフィルム トレファン(登録商標)ZK207(厚さ60μm)を用いた。
接着剤としては、三井化学ポリウレタン社製の2液硬化型接着剤 タケラック(登録商標)A620(主剤)/タケネート(登録商標)A65(硬化剤)を用いた。
ラミネーターは、HIRANO TECSEED社製のマルチコーターTM−MCを用いた。
バーコーターは、松尾産業製のバーコーター(#6)を用いた。
〔調製例1〜9〕
表1に示す各材料を混合し、攪拌することで、塗液1〜9を調製した。
Figure 2016193509
〔実施例1〕
基材としてPETフィルムを用い、基材の一方の面に、バーコーターにより、塗液1を塗布し、60℃のオーブンで1分間の乾燥を行い、次いで、180℃のオーブンで3分間の熱処理を行って膜厚0.3μmのバリア層を形成し、基材/バリア層の層構成のガスバリア性包装材料を得た。
〔実施例2〜8、比較例1〜2〕
塗液1に代えて表2に記載の塗液を用い、乾燥および熱処理を表2に記載の乾燥条件および熱処理条件で行った以外は実施例1と同様にしてガスバリア性包装材料を得た。
〔実施例9〕
塗液1に代えて塗液3を用い、基材として蒸着PETフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性包装材料を得た。
〔実施例10〕
実施例1で得たガスバリア性包装材料を、ラミネーターにより、ナイロンフィルム(以下「Ny」という。)およびポリプロピレンフィルム(以下「CPP」という。)と貼り合せ、40℃のオーブンで3日間の養生を行って、基材/バリア層/接着剤/Ny/接着剤/CPPの層構成のガスバリア性包装材料を得た。
〔実施例11〕
実施例9で得たガスバリア性包装材料を、ラミネーターにより、NyおよびCPPと貼り合せ、40℃のオーブンで3日間の養生を行って、基材/バリア層/接着剤/Ny/接着剤/CPPの層構成のガスバリア性包装材料を得た。
〔実施例12〕
実施例9で得たガスバリア性包装材料2枚を、ラミネーターにより貼り合せ、40℃のオーブンで3日間の養生を行って、基材/バリア層/接着剤/バリア層/基材の層構成のガスバリア性包装材料を得た。
〔実施例13〕
実施例9で得たガスバリア性包装材料2枚を、ラミネーターにより、NyおよびCPPと貼り合せ、40℃のオーブンで3日間の養生を行って、基材/バリア層/接着剤/基材/バリア層/接着剤/Ny/接着剤/CPPの層構成のガスバリア性包装材料を得た。
各例で得られたガスバリア性包装材料について、比(α/β)、比(β/γ)、100cmあたりのアンモニア含有量(残留NH)、酸素透過度(OTR)、水蒸気透過度(WVTR)を測定した。結果を表2〜3に示す。
Figure 2016193509
Figure 2016193509
上記結果に示すとおり、バリア層の比(α/β)が0.6以上で、比(β/γ)が1.0以上で、残留NHが2000μg以下の実施例1〜13のガスバリア性包装材料は、酸素透過度(OTR)、水蒸気透過度(WVTR)がともに小さく、酸素バリア性および水蒸気バリア性が高かった。
これに対し、バリア層の比(α/β)が0.6以上で、比(β/γ)が1.0以上であっても残留NHが3000μgの比較例1のガスバリア性包装材料は、酸素バリア性および水蒸気バリア性、特に酸素バリア性が低かった。
両性多価金属化合物の含有量がポリカルボン酸系重合体中の全てのカルボキシル基に対して0.7化学当量である塗液9を用いて得た、バリア層の比(α/β)が0.5の比較例2のガスバリア性包装材料は、酸素バリア性および水蒸気バリア性が低かった。
1 基材
3 バリア層
5 アンカーコート層
7 第一バリア層
9 第二バリア層
10 ガスバリア性包装材料
20 ガスバリア性包装材料
30 ガスバリア性包装材料

Claims (6)

  1. バリア層(B)を備え、
    前記バリア層(B)の赤外線吸収スペクトルを測定したときの、1490〜1659cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(β)と、1300〜1490cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(α)との比(α/β)が0.6以上であり、かつ1660〜1750cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(γ)と、前記最大ピーク高さ(β)との比(β/γ)が1.0以上であり、
    100cmあたりのガスクロマトグラフィーにより測定されるアンモニア含有量が2000μg以下であることを特徴とする、ガスバリア性包装材料。
  2. 前記バリア層(B)が、ポリカルボン酸系重合体を含む、請求項1に記載のガスバリア性包装材料。
  3. 前記バリア層(B)が、多価金属を含む、請求項1または2に記載のガスバリア性包装材料。
  4. 温度30℃、相対湿度70%の条件で測定される酸素透過度が5cm(STP)/(m・day・MPa)以下であり、温度40℃、相対湿度90%の条件で測定される水蒸気透過度が1g/(m・day)以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスバリア性包装材料。
  5. バリア層(B)を備えるガスバリア性包装材料の製造方法であって、
    ポリカルボン酸系重合体(b1)と、両性多価金属化合物(b2)と、アンモニア(b3)と、炭酸成分含有化合物(b4)と、溶媒とを含むガスバリア用塗液からなる塗膜を乾燥してバリア層(B)を形成する工程を含み、
    前記ガスバリア用塗液中の、前記両性多価金属化合物(b2)の含有量が、前記ポリカルボン酸系重合体(b1)中の全てのカルボキシル基に対して1.0化学当量以上であり、
    前記アンモニア(b3)の含有量が、前記両性多価金属化合物(b2)の多価金属換算のモル数に対して4.0化学当量以上であり、
    前記炭酸成分含有化合物(b4)の炭酸成分換算の含有量が、前記両性多価金属化合物(b2)の多価金属換算のモル数に対して1.0化学当量以上であり、
    前記塗膜の乾燥が、得られるガスバリア性包装材料の100cmあたりのガスクロマトグラフィーにより測定されるアンモニア含有量が2000μg以下となるように行われることを特徴とする、ガスバリア性包装材料の製造方法。
  6. 前記塗膜の乾燥が、160〜250℃で30秒〜10分間の熱処理により行われる、請求項5に記載のガスバリア性包装材料の製造方法。
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