以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳しく説明する。
まず、本発明の一つの実施形態である光音響計測装置について説明する。図1は本実施形態の光音響計測装置10の全体構成を示す概略図である。なお図1において、後述するプローブ11および注液針15の形状は概略的に示してある。
本実施形態の光音響計測装置10は、一例として、光音響信号に基づいて光音響画像を生成する機能を有するものであり、図1に概略的に示すように、プローブ(超音波探触子)11、超音波ユニット12、レーザユニット13、表示部14および注液針15等を備えている。以下、それらの構成要素について順次説明する。
プローブ11は、例えば生体である被検体Mに向けて測定光および超音波を照射する機能と、被検体M内を伝搬する音響波Uを検出する機能とを有する。すなわちプローブ11は、被検体Mに対する超音波の照射(送信)、および被検体Mで反射して戻って来た反射超音波(反射音響波)の検出(受信)を行うことができる。さらにプローブ11は、被検体M内で発生した光音響波も検出可能である。本明細書において「音響波」とは、超音波および光音響波を含む用語である。ここで、「超音波」とはプローブにより送信された弾性波およびその反射波を意味し、「光音響波」とは吸収体19が測定光を吸収することにより発する弾性波を意味する。なお被検体M内の吸収体19としては、例えば血管、金属部材等が挙げられる。
プローブ11は、音響波検出素子である振動子アレイ20と、この振動子アレイ20を間に置いて、該振動子アレイ20の両側に各々1つずつ配設された合計2つの光出射部40と、振動子アレイ20および2つの光出射部40を内部に収容した筐体41とを備えている。
本実施形態において振動子アレイ20は、超音波送信素子としても機能する。振動子アレイ20は配線20aを介して、送信制御回路33内の超音波送信用回路および、受信回路21内の音響波受信用回路と接続される。またプローブ11には、後述するレーザユニット13から発せられた測定光であるレーザ光Lを、光出射部40まで導光させる接続部としての光ファイバ60が接続されている。
上記振動子アレイ20は、例えば一次元または二次元に配列された複数の超音波振動子から構成されている。この超音波振動子は、例えば圧電セラミクス、またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)のような高分子フィルムから構成された圧電素子である。超音波振動子は、受信した音響波Uを電気信号に変換する機能を有している。振動子アレイ20が出力する上記電気信号は、後述する受信回路21に入力される。プローブ11は一般に、セクタ走査対応のもの、リニア走査対応のもの、コンベックス走査対応のもの等が用意され、それらの中から適宜のものが撮像部位に応じて選択使用される。なお、振動子アレイ20は音響レンズを含んでもよい。
上記超音波振動子は、超音波を送信する機能も有する。すなわち、この超音波振動子に交番電圧が印加されると、超音波振動子は交番電圧の周波数に対応した周波数の超音波を発生させる。なお、超音波の送信と受信は互いに分離させてもよい。つまり、例えばプローブ11とは異なる位置から超音波の送信を行い、その送信された超音波に対する反射超音波をプローブ11で受信するようにしてもよい。
光出射部40は、光ファイバ60によって導光されたレーザ光Lを被検体Mに照射する部分である。本実施形態では2つの光出射部40が、振動子アレイ20を間に置いて、振動子アレイ20の例えばエレベーション方向(複数の超音波振動子が一次元に配列された場合、その配列方向に直角で検出面に平行な方向)の両側に配置されている。
レーザユニット13は、例えばQスイッチアレキサンドライトレーザ等のフラッシュランプ励起Qスイッチ固体レーザを有し、被検体Mに照射する測定光としてのレーザ光Lを発する。レーザユニット13は、例えば超音波ユニット12の制御部34からのトリガ信号を受けてレーザ光Lを出力するように構成されている。レーザユニット13は、1〜100nsec(ナノ秒)のパルス幅を有するパルスレーザ光Lを出力するものであることが好ましい。
レーザ光Lの波長は、計測の対象となる被検体M内の吸収体19の光吸収特性に応じて適宜選択される。例えば計測対象が生体内のヘモグロビンである場合、つまり血管を撮像する場合、一般的にその波長は、近赤外波長域に属する波長であることが好ましい。近赤外波長域とはおよそ700〜850nmの波長域を意味する。しかし、レーザ光Lの波長は当然これに限られるものではない。またレーザ光Lは、単波長のものでもよいし、例えば750nmおよび800nm等の複数波長を含むものでもよい。レーザ光Lが複数の波長を含む場合、これらの波長の光は、同時に被検体Mに照射されてもよいし、交互に切り替えられながら照射されてもよい。
なおレーザユニット13は、上に述べたアレキサンドライトレーザの他、同様に近赤外波長域のレーザ光を出力可能なYAG−SHG(Second harmonic generation:第二次高調波発生)−OPO(Optical Parametric Oscillation:光パラメトリック発振)レーザや、Ti−Sapphire(チタン−サファイア)レーザ等を用いて構成することもできる。
光ファイバ60は、レーザユニット13から出射されたレーザ光Lを、2つの光出射部40まで導く。光ファイバ60は特に限定されず、石英ファイバ等の公知のものを使用することができる。例えば1本の太い光ファイバが用いられてもよいし、あるいは複数の光ファイバが束ねられてなるバンドルファイバが用いられてもよい。一例としてバンドルファイバが用いられる場合、1つにまとめられたファイバ部分の光入射端面から上記レーザ光Lが入射するようにバンドルファイバが配置され、そしてバンドルファイバの2つに分岐されたファイバ部分の光出射端面にそれぞれ光出射部40が結合される。
超音波ユニット12は、受信回路21、受信メモリ22、データ分離手段23、光音響画像生成部24、超音波画像生成部29、表示制御部30、送信制御回路33および制御部34を有する。
制御部34は、光音響計測装置10の各部を制御するものであり、本実施形態では図示外のトリガ制御回路を備える。このトリガ制御回路は、例えば光音響画像を取得する場合には、レーザユニット13に光トリガ信号を送る。これによりレーザユニット13のQスイッチ固体レーザにおいて励起源のフラッシュランプが点灯し、レーザロッドの励起が開始される。このレーザロッドの励起状態が維持されている間、レーザユニット13はレーザ光Lを出力可能な状態となる。
制御部34は、その後トリガ制御回路からレーザユニット13へQスイッチトリガ信号を送信する。つまり制御部34は、このQスイッチトリガ信号によって、レーザユニット13からのレーザ光Lの出力タイミングを制御する。また制御部34は、Qスイッチトリガ信号の送信と同期して、サンプリングトリガ信号を受信回路21に送信する。このサンプリングトリガ信号は、受信回路21のAD変換器(Analog to Digital convertor)における光音響信号のサンプリングの開始タイミングを規定する。このように、サンプリングトリガ信号を使用することにより、レーザ光Lの出力と同期して光音響信号をサンプリングすることが可能となる。
制御部34は、超音波画像を取得する場合は、送信制御回路33に超音波送信を指示する超音波送信トリガ信号を送信する。送信制御回路33は、超音波送信トリガ信号を受けると、プローブ11から超音波を送信させる。制御部34は、超音波送信のタイミングに合わせて受信回路21にサンプリングトリガ信号を送信し、反射超音波信号のサンプリングを開始させる。
受信回路21は、プローブ11が出力する検出信号を受信し、受信した検出信号を受信メモリ22に格納する。受信回路21は典型的には、低ノイズアンプ、可変ゲインアンプ、ローパスフィルタ、およびAD変換器を含んで構成される。プローブ11の検出信号は、低ノイズアンプで増幅された後に、可変ゲインアンプで深度に応じたゲイン調整がなされ、ローパスフィルタで高周波成分がカットされた後にAD変換器でデジタル信号に変換され、受信メモリ22に格納される。受信回路21は、例えば1つのIC(Integrated Circuit)で構成される。
本実施形態においてプローブ11は、光音響波の検出信号と反射超音波の検出信号とを出力する。そこで受信メモリ22には、デジタル化された光音響波および反射超音波の検出信号(サンプリングデータ)が格納される。データ分離手段23は、受信メモリ22から光音響波検出信号のサンプリングデータ(光音響データ)を読み出して、光音響画像生成部24に送信する。またデータ分離手段23は、受信メモリ22から反射超音波検出信号のサンプリングデータ(反射超音波データ)を読み出して、超音波画像生成部29に送信する。
光音響画像生成部24は、受信メモリ22に格納された上記光音響データを、プローブ11の振動子アレイ20の位置に応じた遅延時間で互いに加算して1ライン分のデータを再構成し、各ラインの光音響データに基づいて断層画像(光音響画像)のデータを生成する。なお、この光音響画像生成部24は、遅延加算法に代えて、CBP法(Circular Back Projection)により再構成を行うものでもよい。あるいは光音響画像生成部24は、ハフ変換法またはフーリエ変換法を用いて再構成を行うものでもよい。光音響画像生成部24は、上記のようにして生成された光音響画像のデータを表示制御部30に出力する。
超音波画像生成部29は、受信メモリ22に格納された反射超音波データに対して、基本的に上記光音響データに対するのと同様の処理を施して、断層画像(超音波画像)のデータを生成する。超音波画像生成部29は、そのようにして生成された超音波画像のデータを表示制御部30に出力する。
表示制御部30は、上記光音響画像のデータに基づいて光音響画像を、また上記超音波画像のデータに基づいて超音波画像を、それぞれ表示部14に表示させる。これら2つの画像は別々に、あるいは合成されて合成画像として表示部14に表示される。後者の場合、表示制御部30は、例えば光音響画像と超音波画像とを重畳させて画像合成を行う。このように、光音響画像に加えて超音波画像を生成、表示させれば、光音響画像では画像化することができない部分を超音波画像において観察可能となる。それにより、超音波画像で描出される骨や神経などの組織をランドマークとして、光音響画像が示す例えば血管や穿刺針等がどの位置に存在しているのかが、光音響画像を単独で観察する場合に比べて、より分かりやすくなる。
また、本実施形態の光音響計測装置10においては、穿刺針の一種である注液針15が設けられている。注液針15は、被検体M内に穿刺されて、被検体Mの内部に薬液や、あるいは治療用の液体等を注入するためのものである。この注液針15は、導光部材である光ファイバ16を介してレーザユニット13に接続されている。また注液針15は、シリンジや送液チューブと接続して使用したり、カテーテルや内視鏡用穿刺針の一部をなすものとして構成されるのも一般的である。シリンジや送液チューブとの接続部やカテーテルの詳細構造は、特に本発明の特徴部分である針先端部における構造と別に様々なバリエーションを採用し得る。
次に、本発明の注液針の実施形態について説明する。
<注液針の第1の実施形態>
まず図2および図3を参照して、本発明の第1の実施形態による注液針15について説明する。図2は、注液針15を、中空管状の針管50の中心軸を含む面で切断した場合の側面形状を示すものである。また図3は、図2中のA−A線に沿った断面を矢印方向から見て示す断面図である。なお、これらの図2および図3においても、上に述べたシリンジ、送液チューブ、カテーテル、および内視鏡用穿刺針の構造や、それに採用される接続部や注液機構は省略して針の先端部のみを示している。
針管50は、例えばステンレス等の金属や、あるいは合成樹脂から形成された中空管状の針であり、全長に亘って管軸方向に延びる中空部50aを有している。また針管50は、管軸に対して斜めにカットされた先端50bと、この先端50bの反対側の端部である後端50cとを有している。針管50は、注液時には上記先端50bから被検体Mに穿刺される。
針管50の中空部50a内には、先端16aが針管先端50bの近傍に位置する状態にして、導光部材としての光ファイバ16が配設されている。この光ファイバ16は、後端から入射した光を先端16bまで導く。なお、光ファイバ16の一部は、注液針15を構成している。ここで、上記の「先端16aが針管先端50bの近傍に位置する」とは、注液針15が被検体Mの内部に穿刺された状態下で、光ファイバ先端16aから出射した光を吸収した下記光吸収体55から発せられた光音響波が、針管先端50bから外に伝搬して図1のプローブ11によって検出され得るようになる位置に、この先端16aが存在していることを言うものとする。
針管50の中空部50a内には、光ファイバ16の先端16bから出射した光が入射する位置において、光吸収体55が配設されている。この光吸収体55は、光を吸収する材料、例えば黒色顔料が混合されたエポキシ樹脂、フッ素樹脂、またはポリウレタン樹脂等の合成樹脂からなり、溶融状態で光ファイバ16の先端16bを覆うように針管50の内壁50d上に供給された後、固化したものである。そこで本例では、光ファイバ16の先端近傍部分はこの光吸収体55によって針管50の内壁50dに固定されている。光ファイバ16のその他の部分は、別の接着剤等によって適宜、上記内壁50dに固定されていてもよい。
なお針管50の径は、通常、ゲージサイズによって規定され、その内径は一般に0.13〜2.64mm程度である。それに対して光ファイバ16は、一般に、外径(被覆径)が0.13mm程度(多くは0.1〜0.2mm程度)のものが適用可能である。
また針管50の先端近傍においてその中空部50a内には、液体を通過させる一方、所定の大きさよりも大きい固形物を捕捉するフィルター構造体61が配設されている。なお、この「所定の大きさ」とは、ある一定の大きさを意味するものではなく、使用される光ファイバ16の外径等に応じて適宜設定され得る値である。また、上記固形物の「大きさ」は、固形物をあらゆる方向から見たときに最小となる差し渡し寸法(輪郭上の二つの点を結ぶ寸法)で考えるものとする。特に、所定の大きさが、光ファイバ16の外径より小さい大きさである事が好ましい。本実施形態を含め各々の実施形態でも説明しているとおり、光ファイバが破損した場合に、破片が針管から流出することを防止できるからである。
フィルター構造体61は、注液針15の針先から見て、光ファイバ16の先端16bよりも針管50の後端50c側に位置しており、針管50の内壁50dに固定されている。また、フィルター構造体61は、注液針15の針先から見て、光吸収体55の後端側に配置されている。本例のフィルター構造体61は、線材を格子状に編んでなる薄い網(メッシュ)状の構造体であって、図3に明示されるように、中空部50aの光ファイバ16が存在する領域以外の全領域を占める状態に配設されている。
なおフィルター構造体61は、その周囲を針管50の内壁50dに接着することにより、針管50に固定されている。ただし、フィルター構造体61は接着に限らず、針管50の内壁50dにろう接や、溶接によって固定されてもよい。溶接の好ましい例としては、例えばレーザ等によるスポット溶接が挙げられる。スポット溶接は、針管50の内壁50dに沿って、つまりフィルター構造体61の外周に沿って複数個所でなされてもよい。あるいは、フィルター構造体61の図2中における上端の近辺部分がスポット溶接される一方、図2中における下端の近辺部分が、接着剤として兼用した光吸収体55によって針管50に固定されてもよい。
以上説明した注液針15は、例えば図11に示す針基80や、あるいは図12に示す針基180を用いて、注液のための別の器具と接続可能である。図11に示す針基80は、図2に示した針管50の後端50cの近傍部分を収容、保持する前端部80aと、この前端部80aに対して後端部となる位置に配された注液ポート80bと、前端部80aおよび注液ポート80bの間を延びる概略直管状の部分から斜めに分岐した直管状のファイバ導入部80cとを有している。上記前端部80a、注液ポート80bおよびファイバ導入部80cは、内部空間80dによって連通している。注液ポート80bは、図示外のシリンジや送液チューブと接続されて、薬液等を受け入れる。一方ファイバ導入部80cには、光ファイバ16を保護する被覆チューブ81が接続されている。針管50の後端50cから後方に延びた光ファイバ16は、ファイバ導入部80cを経て被覆チューブ81内を延びるように配設されている。また、ファイバ導入部80cの内部から被覆チューブ81の内部に亘って封止材82が充填され、それにより、ファイバ導入部80cの内部と外部とが液密状態に保たれている。
注液針15は、例えば術者が上記針基80を指先で直接把持しながら、あるいは針基80に組み付けられる図示外の把持部を介して把持しながら穿刺操作することにより、生体である被検体Mの内部に穿刺される。
一方、図12に示す針基180は、以上説明した針基80とは、注液ポートおよびファイバ導入部の配置関係が逆にされた形のものである。つまりこの針基180においては、針管50の後端50cの近傍部分を収容、保持する前端部180aに対して後端部となる位置にファイバ導入部180cが配置され、前端部180aおよびファイバ導入部180cの間を延びる概略直管状の部分から斜めに分岐させて、注液ポート180bが設けられている。なお、前端部180a、注液ポート180bおよびファイバ導入部180cは、内部空間180dによって連通している。この針基180が適用される場合も、被検体Mへの注液針15の穿刺は、上に述べた針基80が適用される場合と同様にしてなされる。
なお、上では、本実施形態の注液針15を用いる場合の穿刺操作について説明したが、後述する第2〜第6の実施形態の注液針を用いる場合も、同じ操作によって穿刺可能である。
上述のようにして注液針15が被検体Mの内部に穿刺された後、針基80の注液ポート80bに薬液等が供給され、その薬液等が注液針15から被検体M内に注入される。その際、光ファイバ16には、図1に示したレーザユニット13から発せられた光が後端側(図2の右端側)から入射される。なお本例において、この光はプローブ11から発せられる光と同じレーザ光Lである。この光は光ファイバ16内を伝搬して、光ファイバ16の先端16aから出射し、光吸収体55に吸収される。光を吸収した光吸収体55の部分、つまり光ファイバ16の先端16aに近い部分からは、光音響波が発せられる。
上述のようにして被検体M内に薬液等を注入する際には、図1に示したプローブ11からもレーザ光Lが発せられ、それにより、先に述べた通りにして被検体Mの光音響画像が表示部14に表示される。このとき、光ファイバ16の先端16aに近い光吸収体55から上記の通り光音響波が発せられ、この光音響波がプローブ11によって検出されるので、この光吸収体55の部分の光音響画像も併せて表示部14に表示される。こうして光ファイバ16の先端16aに近い光吸収体55の部分の光音響画像が表示されれば、術者はこの表示を参照して、光ファイバ16の先端16aつまりは針管50の先端50bがどこに位置しているかを確認することができる。そこで、薬液等の注入を行う際に注液針15の先端を、被検体M内の適切な部分に穿刺可能となる。
なおフィルター構造体61は、光ファイバ16の先端16aよりも光ファイバ後端側に配されているので、この先端16aから出射した光や、あるいは光吸収体55から発せられた光音響波がフィルター構造体61によって遮られることはなく、そこで、光吸収体55の部分の光音響画像表示が良好になされる。
ここで、針管50内に配設された光ファイバ16は、光吸収体55で固定された先端近傍部分よりも針管後端側の部分において穿刺時に曲げられて破損する可能性があり、破損した場合は、ガラスや合成樹脂の破片が生じることもある。フィルター構造体61は、該フィルター構造体61よりも針管後端50c側で生じたそのような破片が、薬液等の液体と共に針管50の外に流出して、被検体Mの内部に送られてしまうことを防止する。すなわち、前述した通りフィルター構造体61は、液体を通過させる一方、所定の大きさよりも大きい固形物である上記破片を捕捉する。そこで、この破片が針管50内を先端側に、つまり被検体Mに向かって進行することが阻止される。
上記の効果を得るために、線材を格子状に編んでなる網状のフィルター構造体61は、孔サイズが、光ファイバ16の外径よりも小さいものとされる。なお上記の孔サイズは、例えば上記格子が正方形である場合は、その一辺の長さである。一つの具体例として、光ファイバ16の外径が0.13mmの場合、フィルター構造体61は直径が0.05mmの例えばステンレス線材を用いて構成され、上記孔サイズは0.104mmとされる。以上は勿論一つの例であり、フィルター構造体61の孔サイズは、用いられる光ファイバ16の外径や、想定される破片の大きさ(前述した通りの、最小となる差し渡し寸法)等に応じて適宜設定すればよい。
なお、前述した特許文献1には、針管内に金属編組体を設け、光ファイバを金属編組体内まで配置する点は開示されているが、特許文献1の金属編組体は針先に位置されてないため、そもそも穿刺針先端を確認することはできない。また、特許文献1に記載の金属偏組体は注入液の加熱用であり、光ファイバの破片の流出を防止することを意図しておらず、光ファイバの破片が流出するのを防止することができる構造にない。
<注液針の第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態による注液針について、図4を参照して説明する。なおこの図4において、先に説明した図2中のものと同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は、特に必要の無い限り省略する(以下、同様)。
図4は、本発明の第2の実施形態による注液針215を構成する針管50を、図2と同様にして示す断面図である。図4に示す注液針215は、図2に示した注液針15と比べると、フィルター構造体61に代えて、3次元構造体であるフィルター構造体62が適用されている点で異なるものである。このフィルター構造体62は、図2に示したフィルター構造体61のように線材を格子状に編んでなる網状の構造体を複数枚積層して3次元化されたものである。
上記フィルター構造体62の針管50内における配置位置、針管50に対する固定の仕方、および孔サイズは、第1の実施形態の注液針15におけるものと基本的に同じである。このようなフィルター構造体62が設けられていることにより、本実施形態においても、第1の実施形態の実施形態におけるのと同様の効果を得ることができる。
<注液針の第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態による注液針について、図5および図6を参照して説明する。図5は、本発明の第3の実施形態による注液針315を構成する針管50を、図2と同様にして示す断面図である。また図6は、図5中のB−B線に沿った断面を矢印方向から見て示す断面図である。
図5に示す注液針315は、図2に示した注液針15と比べると、フィルター構造体61に代えて、3次元構造体であるフィルター構造体63が適用されている点で異なるものである。このフィルター構造体63は、断面が円形の線材、例えばステンレス線材をらせん状に巻いて得られたらせん構造体である。このフィルター構造体63は、針管50の中空部50a内に挿し込まれた後、針管先端50bの近傍部分の外周面を針管50の内壁50dに接着あるいは溶接することにより、針管50に固定されている。上記溶接は、連続溶接でもよいし、スポット溶接でもよい。またこの場合も、光吸収体55を接着剤として兼用して、この光吸収体55によってフィルター構造体63を針管50に固定してもよい。さらには、上記溶接の代わりに、ろう接によってフィルター構造体63を針管50に固定してもよい。
フィルター構造体63は、らせん軸に平行な方向から見ると、図6に示すように円環状の形となる。なお、図5および図6において、フィルター構造体63の形状および大きさは概略的に示してある。フィルター構造体63は、上記円環の内径が光ファイバ16の外径より小さく、また、らせんの隣り合う線材の間の隙間も光ファイバ16の外径より小さい形状とされている。このような形状のフィルター構造体63が配設されていることにより、光ファイバ16の破損によって生じた破片の大きさ(前述した通りの、最小となる差し渡し寸法)が光ファイバ16の外径より小さくない限り、その破片はフィルター構造体63において捕捉される。その一方、薬液等の液体は、このフィルター構造体63を通過可能である。
<注液針の第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態による注液針について、図7および図8を参照して説明する。図7は、本発明の第4の実施形態による注液針415を構成する針管50を、図2と同様にして示す断面図である。また図8は、図7中のC−C線に沿った断面を矢印方向から見て示す断面図である。
図7に示す注液針415は、図2に示した注液針15と比べると基本的に、フィルター構造体61に代えて、多孔質部材からなるスポンジ状のフィルター構造体64が適用されている点で異なるものである。このフィルター構造体64は、例えばセラミックや合成樹脂からなり、一つの端面から別の端面まで連通する小孔を複数有するものである。そのような小孔は、勿論、フィルター構造体64の図7中における右端面から左端面の間でも連通している。上記小孔のサイズは一般に均一ではないが、本例のフィルター構造体64は、この小孔のサイズ(一方向から見たときの小孔輪郭上の2点間の差し渡し寸法)が最大でも光ファイバ16の外径より小であるものが適用されている。
フィルター構造体64は、概略円柱の一端側が斜めにカットされた形状のもので、光ファイバ16の先端近傍の位置と、それよりも針管50の後端側の位置との間において、針管50の内壁50dに固定されている。このフィルター構造体64は、図8に明示されるように、例えば中空部50aの光ファイバ16が存在する領域以外の全領域を占める状態に配設されている。ただし、それに限らずフィルター構造体64は、光ファイバ16の断面積よりも面積が小さい空隙が存在する状態に配設されてもよい。
フィルター構造体64は、その周囲を針管50の内壁50dに接着することにより、針管50に固定されている。またフィルター構造体64は、光吸収体55に対して、主に針管50の後端側から接している。なおフィルター構造体64は、当初は溶融状態にある光吸収体55を接着剤として兼用して、この光吸収体55によって針管50に接着固定されてもよい。
上述の通りのフィルター構造体64が配設されていることにより、光ファイバ16の破損によって生じた破片の大きさ(前述した通りの、最小となる差し渡し寸法)が光ファイバ16の外径より小さくない限り、その破片はフィルター構造体64において捕捉される。その一方、薬液等の液体は、このフィルター構造体64を通過可能である。
また本実施形態の注液針415においては、上述した通り、フィルター構造体64が光吸収体55に対して主に針管後端側から接しているので、もしフィルター構造体64が針管50内で針管先端側に移動しようとすると、この移動は光吸収体55によって阻止される。そこで、フィルター構造体64が針管50から外に抜け出てしまうことが防止される。以上の説明から明らかなように本実施形態では、光吸収体55が、フィルター構造体64の移動を阻止する部材としても作用する。なお、光吸収体55がフィルター構造体64の移動を阻止する特徴は、他の実施形態に適用することも可能である。
<注液針の第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態による注液針について、図9を参照して説明する。図9は、本発明の第5の実施形態による注液針515を構成する針管50を、図3と同様にして示す断面図である。
図9に示す注液針515は、図2に示した注液針15と比べると、フィルター構造体61に代えて、多孔質部材からなるスポンジ状のフィルター構造体64が適用されている点で異なるものである。このフィルター構造体64は、形状以外は、図7に示したフィルター構造体64と同様のものである。また、このフィルター構造体64の針管50への固定の仕方も、図7に示した注液針415におけるのと同じである。さらにこのフィルター構造体64の、中空部50a内における配設領域も、図8に示したものと同じである。
ただし本実施形態においてフィルター構造体64は、図7中のフィルター構造体64と比べて、より針管50の後端側に寄った位置に配置されている。そして針管50の内壁50dには、針管中心側に向かって突出した凸部70が設けられている。フィルター構造体64は、この凸部70に対して針管後端側から接するように配置されている。上記凸部70は、例えば接着剤やろう材を固化させて形成することができる。また、針管50の一部を溶融させてこのような凸部70を形成することも可能である。
上述の通りのフィルター構造体64が配設されていることにより、本実施形態の注液針515においても、図7の注液針415が奏する効果と同様の効果が得られる。また本本実施形態の注液針515においては、フィルター構造体64が凸部70に対して針管後端側から接しているので、もしフィルター構造体64が針管50内で針管先端側に移動しようとすると、この移動は凸部70によって阻止される。そこで、フィルター構造体64が針管50から外に抜け出てしまうことが防止される。以上の説明から明らかなように本実施形態では、凸部70が、フィルター構造体64の移動を阻止する部材として作用する。なお、凸部70がフィルター構造体64の移動を阻止する特徴は、他の実施形態に適用することも可能である。
<注液針の第6の実施形態>
次に、本発明の第6の実施形態による注液針について、図10を参照して説明する。図10は、本発明の第6の実施形態による注液針615を構成する針管50を、図3と同様にして示す断面図である。
図10に示す注液針615は、図9に示した注液針515と比べると、凸部70の代わりに、針管50の管壁に凹部50eが形成されている点で異なるものである。この凹部50eは、針管50の内壁50d側から見れば、針管中心側に向かって突出した凸部となっている。図9に示したものと同様のフィルター構造体64は、この凹部50eに対して針管後端側から接するように配置されている。
上述の通りのフィルター構造体64が配設されていることにより、本実施形態の注液針615においても、図7の注液針415が奏する効果と同様の効果が得られる。また本本実施形態の注液針615においては、フィルター構造体64が凹部50eに対して針管後端側から接しているので、フィルター構造体64の移動がこの凹部50eによって阻止される。以上の説明から明らかなように本実施形態では、凹部50eが、フィルター構造体64の移動を阻止する部材として作用する。なお、凹部50eがフィルター構造体64の移動を阻止する特徴は、他の実施形態に適用することも可能である。
ここで、光音響計測装置の別の実施形態について説明する。図13に示す光音響計測装置110は、図1に示した光音響計測装置10と比べると、被検体Mの光音響画像を取得するためにプローブ11にレーザ光Lを送る比較的高出力のレーザユニット13の他に、もう1つのレーザユニット113が設けられている点で基本的に異なるものである。このレーザユニット113は、例えばLD(laser diode)やLED(light emitting diode)等の比較的低出力のレーザ光源からなるものである。本例においてレーザユニット113の駆動は、レーザユニット13の駆動を制御する制御部34によって制御されるが、それに限らず、制御部34以外の別の制御部によって制御されてもよい。
上記レーザユニット113から発せられたレーザ光は、光ファイバ16を導光させて注液針15に送られる。なお、この場合も、光ファイバ16の一部は注液針15を構成している。また本実施形態では注液針として、先に説明した第1実施形態の注液針15を用いているが、第1〜6実施形態のいずれの注液針が適用されてもよい。
このように、被検体M内の血管等を示す光音響画像の取得用と、穿刺針先端部を示す光音響画像の取得用に互いに別の光源、つまりレーザユニット13とレーザユニット113とを用いる場合は、それらの光源を互いに独立して駆動させることができる。したがってこの場合は、前者の光音響画像と後者の光音響画像とを、別個に取得、表示可能となる。1つの光音響画像内において血管等と穿刺針先端部とが併せて表示される場合は、血管等の表示に穿刺針先端部の表示が重なって穿刺針先端部が確認し難くなることもあるが、本実施形態においては、そのような問題が起きることを防止できる。
なお、以上の効果を得るためには、レーザユニット等の光源を1つだけ設け、その光源から発せられた光を2つの光路を辿るように分岐した上で各光路にシャッタを設け、それらのシャッタの開閉により、プローブ11と注液針15のいずれかに選択的に光が送られるようにしてもよい。そのようにする場合は、被検体M内の血管等の吸収体19を示す光音響画像、または注液針15の針管50の先端部を示す光音響画像の取得が完了するまで2つのシャッタの開閉状態を不変としておいてもよいし、あるいは2つのシャッタの開閉状態を短時間内に切り替えて、前者の光音響画像に関する光音響波検出信号と、後者の光音響画像に関する光音響波検出信号とを交互に切り替えて取得するようにしてもよい。
なお、プローブ11を介して光を被検体Mの体表から深部まで到達させるには、光ファイバを介して光を注液針の先端近傍まで送るよりも、より高出力の光が必要になる。つまり前者の場合は、深部に届くまでに被検体M内で光が減衰してしまうからである。そうであると、光音響波検出信号が微弱なものとなってしまう。それに対して後者の場合は、光ファイバにおける損失は有るものの、被検体Mによる光の大きな減衰が無いので、上述した通り、LDやLED等の比較的低出力のレーザ光源が適用可能となっている。
次に、光音響計測装置のさらに異なる実施形態について説明する。図14に示す光音響計測装置210は、図13に示す光音響計測装置110と比べると、被検体Mの光音響画像を取得するための構成すなわち、レーザユニット13、光ファイバ60および光出射部40が省かれている点が異なるものである。つまり本実施形態におけるプローブ11は、光照射機能を持たないものとなっている。
この光音響計測装置210において、被検体Mに関しては、光音響画像は取得されないで超音波画像だけが取得される。注液針15の針管50(図2参照)の先端近傍を示す光音響画像は、表示部14において被検体Mの超音波画像に重畳して表示される。そこで本実施形態では、超音波画像上から不適切な部分への穿刺や、目的部位への注液針先端の配置状況などが判断される。
以上の構成を有する光音響計測装置210は、既存の超音波画像取得装置に対して、レーザユニット113および光ファイバ16、並びに光音響画像取得用のプログラムソフトウェアを追加するだけで構成できるので、注液針の先端確認という要求に低コストで対応可能となる。