以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明が具体化された一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入される方向が挿入方向51と定義される。また、挿入方向51と反対方向であって、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から脱抜される方向が脱抜方向52と定義される。本実施形態において、挿入方向51及び脱抜方向52は水平方向であるが、挿入方向51及び脱抜方向52は水平方向でなくてもよい。また、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に挿入された状態、つまりインクカートリッジ30が使用姿勢にある状態において、重力方向が下方向53と定義され、重力方向と反対方向が上方向54と定義される。また、インクカートリッジ30を脱抜方向52に見た場合において、挿入方向51及び下方向53と直交する方向が、右方向55及び左方向56と定義される。なお、以下の説明において、特に言及がない限り、インクカートリッジ30は、使用姿勢にあるものとする。
[プリンタ10の概要]
図1に示されるように、プリンタ10は、インクジェット記録方式に基づいて、記録用紙に対してインク滴を選択的に吐出することにより画像を記録するものである。プリンタ10(液体消費装置の一例)は、記録ヘッド21(液体消費部の一例)と、インク供給装置100と、記録ヘッド21及びインク供給装置100を接続するインクチューブ20とを備えている。インク供給装置100には、カートリッジ装着部110(装着部の一例)が設けられている。カートリッジ装着部110には、インクカートリッジ30(液体カートリッジの一例)が装着され得る。カートリッジ装着部110には、その一面に開口112が設けられている。インクカートリッジ30は、開口112を通じてカートリッジ装着部110に挿入方向51に挿入され、或いはカートリッジ装着部110から脱抜方向52に抜き出される。
インクカートリッジ30には、プリンタ10で使用可能なインク(液体の一例)が貯留されている。カートリッジ装着部110へのインクカートリッジ30の装着が完了した状態において、インクカートリッジ30と記録ヘッド21とは、インクチューブ20で接続されている。記録ヘッド21にはサブタンク28が設けられている。サブタンク28は、インクチューブ20を通じて供給されるインクを一時的に貯留する。記録ヘッド21は、インクジェット記録方式によって、サブタンク28から供給されたインクをノズル29から選択的に吐出する。具体的には、記録ヘッド21に設けられたヘッド制御基板21Aから各ノズル29に対応して設けられたピエゾ素子29Aに選択的に駆動電圧が印加される。これにより、ノズル29から選択的にインクが吐出される。
給紙トレイ15から給紙ローラ23によって搬送路24へ給送された記録用紙は、搬送ローラ対25によってプラテン26上へ搬送される。記録ヘッド21は、プラテン26上を通過する記録用紙に対してインクを選択的に吐出する。これにより、記録用紙に画像が記録される。プラテン26を通過した記録用紙は、排出ローラ対27によって、搬送路24の最下流側に設けられた排紙トレイ16に排出される。
[インク供給装置100]
図1に示されるように、インク供給装置100は、プリンタ10に設けられている。インク供給装置100は、プリンタ10が備える記録ヘッド21にインクを供給するものである。インク供給装置100は、インクカートリッジ30を装着可能なカートリッジ装着部110を備えている。カートリッジ装着部110は、ケース101と、インクニードル102と、センサ103(検知部の一例)と、装着センサ107とを備えている。
なお、図1においては、カートリッジ装着部110へのインクカートリッジ30の装着が完了した状態が示されている。つまり、インクカートリッジ30が使用姿勢である状態が示されている。カートリッジ装着部110には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色に対応する4つのインクカートリッジ30が収容可能である。また、インクニードル102、センサ103、及び装着センサ107は、4つのインクカートリッジ30それぞれに対応して、4つずつ設けられている。
[インクニードル102]
図1に示されるように、ケース101には、開口112が形成されている。ケース101は、開口112とは反対に位置する奥面151を備えている。インクニードル102は、ケース101の奥面151から脱抜方向52に突出している。インクニードル102は、ケース101の奥面151において、インクカートリッジ30のインク供給部60(液体供給部の一例)に対面し得る位置に配置されている。インクニードル102は、内部に液体流路が形成された管状の樹脂針であって、その突出端近傍に開口が設けられており、基端にインクチューブ20が接続されている。インク室36(液体貯留室の一例)内のインクは、インク供給部60に進入したインクニードル102を通じてインクチューブ20に流出される。つまり、インク室36内のインクは、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30からインク供給部60を通じて記録ヘッド21に供給される。
プリンタ10は、カートリッジ装着部110の開口112を被覆或いは露出させる不図示のカバーを備えている。当該カバーは、ケース101によって開閉可能に支持されている、若しくはプリンタ10の筐体(不図示)によって開閉可能に支持されている。カバーが開いている場合の開口112は、プリンタ10の外部に対して露出されている。この状態において、ユーザは、開口112を通じてカートリッジ装着部110にインクカートリッジ30を挿入することが可能、或いはカートリッジ装着部110からインクカートリッジ30を抜き出すことが可能となる。一方、カバーが閉じている場合の開口112は、プリンタ10の外部に対して覆われている。この状態においては、インクカートリッジ30をカートリッジ装着部110に対して挿抜することができない。
なお、本明細書中において、「カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30」とは、少なくとも一部がカートリッジ装着部110内(より具体的には、ケース101内)に位置しているインクカートリッジ30を意味する。したがって、カートリッジ装着部110に挿入される過程のインクカートリッジ30も、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30である。
一方、本明細書中において、「カートリッジ装着部110へのインクカートリッジ30の装着が完了」した状態とは、少なくともインクカートリッジ30から記録ヘッド21にインクを供給可能な状態である。例えば、当該状態は、カートリッジ装着部110に対してインクカートリッジ30が移動しないようにロックされている状態や、開口112に対して開閉するカバーが閉じられている状態のカートリッジ装着部110内にインクカートリッジ30が位置している状態等、プリンタ10による画像記録が可能となるインクカートリッジ30の状態を意味する。カートリッジ装着部110に挿入完了されたインクカートリッジ30は、使用姿勢である。
[センサ103]
図1に示されるように、ケース101は、奥面151の上端から開口112へ向けて拡がった天面152を備えている。センサ103は、ケース101の天面152から下方へ突出している。センサ103は、発光部及び受光部を備える。発光部は、受光部の右方向55または左方向56に、受光部と間隔を空けて設けられている。カートリッジ装着部110への装着が完了したインクカートリッジ30の凸部37は、発光部及び受光部の間に配置される。換言すれば、発光部及び受光部は、カートリッジ装着部110への装着が完了したインクカートリッジ30の凸部37を挟んで対向配置されている。本実施形態において、発光部から出力される光の光路は、右方向55及び左方向56に一致する。
センサ103は、発光部から出力された光が受光部で受光されたか否かに応じて異なる検知信号を出力する。例えば、センサ103は、発光部から出力された光が受光部で受光できない(すなわち、受光強度が所定の強度未満である)ことを条件として、ローレベル信号(「信号レベルが閾値レベル未満の信号」を指す。)を出力する。一方、センサ103は、発光部から出力された光が受光部で受光できた(すなわち、受光強度が所定の強度以上である)ことを条件として、ハイレベル信号(「信号レベルが閾値レベル以上の信号」を指す。)を出力する。なお、本実施形態における発光部は、例えば、インクカートリッジ30の凸部37の壁(すなわち、後述するフレーム31)を透過し、且つインクカートリッジ30に貯留されたインクを透過しない光(例えば、可視光や赤外光)を出力する。
[装着センサ107]
図1に示されるように、装着センサ107は、インクニードル102より上方向54において、ケース101の奥面151に設けられている。装着センサ107は、カートリッジ装着部110内におけるインクカートリッジ30の挿入経路上の装着検知位置に配置されている。そして、装着センサ107は、装着検知位置におけるインクカートリッジ30の有無に応じた検知信号を制御部130(図4参照)に出力する。本実施形態においては、カートリッジ装着部110へのインクカートリッジ30の装着が完了したときのインクカートリッジ30が装着検知位置に位置するように、装着センサ107が配置されている。
具体的には、装着センサ107は、カートリッジ装着部110に装着されたインクカートリッジ30のカートリッジカバー33の前面58に押圧されていないことを条件として、ローレベル信号を出力する。一方、装着センサ107は、カートリッジカバー33の前面58に押圧されたことを条件として、ハイレベル信号を出力する。なお、本実施形態における装着センサ107は、カートリッジカバー33の前面58に押圧されるか否かによって異なる検知信号を出力する機械式のセンサであるが、装着センサ107の具体例はこれに限定されず、光学式センサ等であってもよい。
[インクカートリッジ30]
図2及び図3に示されるように、インクカートリッジ30は、インク容器32と、インク容器32を覆うカートリッジカバー33とを有する。カートリッジカバー33は、互いに嵌合可能な2つの部材で構成されており、インク容器32を挟み込むようにしてインク容器32を覆う。図2に示されるように、カートリッジカバー33には2つの開口34、35が形成されている。開口34は、カートリッジカバー33の上面57に形成されている。開口34から、凸部37が突出している。開口35は、カートリッジカバー33の前面58に形成されている。開口35から、インク供給部60が突出している。
なお本実施形態において、カートリッジカバー33は開口34、35からそれぞれ凸部37、インク供給部60が突出しているが、インク容器32のその他の部分を部分的に露出するものであってもよい。
図3に示されるように、インク容器32は、インク室36、インク流通室38(液体貯留室の一例)、インク供給部60、及びフレーム31を有する。インク容器32は、透明な樹脂で形成されるものであって、インク室36に貯留されたインクをインク供給部60を通じて外部に供給する。インクカートリッジ30は、図2に示された起立状態、つまり、同図の下方向53の面を底面とし、同図の上方向54の面を上面として、カートリッジ装着部110に対して挿入方向51及び脱抜方向52に沿って挿抜される。
図3及び図12に示されるように、フレーム31は、外形が概ね直方体であり、右方向55及び左方向56に細く、下方向53及び上方向54と挿入方向51及び脱抜方向52の寸法が右方向55及び左方向56の寸法よりも大きい扁平形状である。フレーム31は、挿入方向51または脱抜方向52から平面視したときに少なくとも部分的に重なり合う前壁40(第1壁の一例)及び後壁41(第2壁の一例)と、下方向53または上方向54から平面視したときに少なくとも部分的に重なり合う上壁39及び下壁42と、下壁42における右方向55及び左方向56の中央部から上壁39に向けて立設された第1内壁43と、第1内壁43から右方向55に向けて突出された第2内壁44と、下端が下壁42と接続され且つ上端がインク供給部60と接続された第3内壁173と、一端が前壁40と接続され且つ他端がインク供給部60と接続された第4内壁174とで構成されている。インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ装着されるときに前方向を向く(換言すれば、挿入方向51を向く)のが前壁40であり、後ろ方向を向く(換言すれば、脱抜方向52を向く)のが後壁41である。
上壁39は、前壁40及び後壁41の上端同士を接続する。下壁42は、前壁40及び後壁41の下端同士を接続する。上壁39には上方向54へ突出する凸部37が形成されている。上記の各壁のうち少なくとも凸部37が形成された上壁39は、センサ103の発光部から出力される光を透過させる。
フレーム31の右方向55及び左方向56の面は、開放されている。開放されたフレーム31の面は、フィルム(不図示)によって封止される。フレーム31の右方向55の面を封止するフィルムの外形は、右方向55から平面視した場合のフレーム31の外形と概ね一致する。フレーム31の左方向56の面を封止するフィルムの外形は、左方向56から平面視した場合のフレーム31の外形と概ね一致する。各フィルムは、インク室36の右壁及び左壁を構成する。各フィルムは、上壁39、前壁40、後壁41、及び下壁42の右端面及び左端面に熱溶着される。これにより、上壁39、前壁40、後壁41、下壁42、及び各フィルムで区画されたインク室36にインクが貯留可能となる。
そして、インク容器32は、フレーム31内に、第1内壁43から右方向55に延びた突部48を備えている。そして、インク室36内には被検知部材59が設けられており、突部48は被検知部材59を支持している。
[インク室36]
図3に示されるように、インク室36は、前壁40と後壁41との間に形成されている。インク室36には、インクが貯留される。カートリッジ装着部110に装着される前のインクカートリッジ30のインク室36は、負圧に維持されている。インク室36は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されることによって、第1大気連通路66及び第2大気連通路67を通じて大気に連通される。また、インク室36内のインクは、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されることによって、インク供給部60を通じてインクカートリッジ30の外部に流出する。なお、凸部37は内部空間を有しており、当該内部空間はインク室36の一部を構成している。
[インク流通室38]
図12に示されるように、インク流通室38は、インク供給部60から脱抜方向52にずれた位置からインク供給部60の下方に亘って形成されている。インク流通室38は、インクが貯留される空間である。インク流通室38及びインク室36によって、インクが貯留される空間が形成されている。
インク流通室38は、第3内壁173と第4内壁174との間に形成された空間である。インク流通室38は、第3内壁173、第4内壁174、下壁42、第1内壁43、及びフレーム31に熱溶着されたフィルムによって区画された空間である。なお、第1内壁43は、インク流通室38の左端を区画し、フィルムは、インク流通室38の右端を区画している。
第3内壁173は、下方向53及び上方向54並びに右方向55及び左方向56に拡がった壁である。第3内壁173の上端は、インク供給部60の脱抜方向52の端を構成する壁と接続されている。第3内壁173の下端は、下壁42と接続されている。第3内壁173には、貫通孔175が形成されている。貫通孔175は、インク室36とインク流通室38とを連通している。
第4内壁174は、第3内壁173よりも前壁40に近い位置に設けられている。第4内壁174は、第3内壁173に対して挿入方向51に間隔を空けて配置されている。第4内壁174の一端は、インク供給部60の脱抜方向52の端よりも前壁40に近い位置で、インク供給部60と接続されている。第4内壁174は、インク供給部60の接続部分から下方へ延び、下端部で湾曲して前壁40へ向けて延びている。第4内壁174の他端は、前壁40と接続されている。
インク流通室38の上端には、貫通孔176(第1連通孔の一例)が形成されている。貫通孔176は、上方を向いた孔であって、第3内壁173、第4内壁174、第1内壁43、及びフィルムによって区画されている。貫通孔176は、インク流通室38と後述するバルブ室47(内部空間の一例)とを連通している。
[インク供給部60]
図5及び図12に示されるように、インク供給部60は、前壁40の下端近傍に形成されている。インク供給部60は、内部にバルブ室47が形成された円筒形状の筒壁46と、筒壁46に取り付けられた第1シール部材177(シール部材の一例)、第2シール部材76及びキャップ79とを備えている。
筒壁46は、インク室36の内部から外部に亘って延設されている。筒壁46の挿入方向51の端部には、貫通孔46Bが形成されている。筒壁46の下部には、上述した貫通孔176が形成されている。これにより、インク室36は、インク流通室38及びバルブ室47を介してインクカートリッジ30の外部と連通されている。つまり、インク供給部60は、インク室36に貯留されたインクをインクカートリッジ30の外部に供給する。筒壁46の挿入方向51の端部、つまり筒壁46の先端には、第2シール部材76及びキャップ79が取り付けられている。
筒壁46における貫通孔46Bよりも前壁40に近い位置には、貫通孔46Cが形成されている。第4内壁174によって2つに分離されたバルブ室47は、貫通孔46Cによって連通されている。
筒壁46の脱抜方向52の端部には、貫通孔46A(第2連通孔の一例)が形成されている。貫通孔46Aの下端は、貫通孔176より上方に形成されている。貫通孔176は、インク室36とバルブ室47とを連通している。貫通孔46Aには、第1シール部材177が取り付けられている。貫通孔46Aは、第1シール部材177によってシールされている。第1シール部材177については、後に詳細に説明される。
図3及び図5(A)に示されるように、バルブ室47には、第1大気連通路66及び第2大気連通路67が接続されている。第1大気連通路66は、バルブ室47とインクカートリッジ30の外部との間で気体を流通させる流路である。すなわち、第1大気連通路66は、バルブ室47を大気に連通させる。第1大気連通路66は、筒壁46の内面と外面とを繋ぐ孔66Aと、一端が孔66Aと連通された溝66Bと、溝66Bの他端とインクカートリッジ30の外部とを繋ぐ孔66Cとで構成されている。
第2大気連通路67は、バルブ室47とインク室36との間で気体を流通させる流路である。第2大気連通路67は、筒壁46の内面と外面とを繋ぐ孔67Aと、一端が孔67Aと連通された溝67Bと、溝67Bの他端とインク室36とを繋ぐ孔67Cとで構成されている。孔67Aは、孔66Aより脱抜方向52にずれた位置に配置されている。孔67Cは、未使用状態のインクカートリッジ30のインク室36に貯留されたインクの液面より上方に位置している。換言すると、孔67Cは、インクがインク室36に最大量貯留された状態におけるインクの液面より上方に位置している。なお、第1大気連通路66及び第2大気連通路67は、インクカートリッジ30の右壁を構成するフィルムによって液密に封止されている。
図5に示されるように、第2シール部材76は、外径寸法が筒壁46の外径寸法と概ね一致する円板形状の部材である。第2シール部材76は、筒壁46の先端に液密に密着される。第2シール部材76の中央部には、第2シール部材76を挿入方向51に貫通する貫通孔68が形成されている。貫通孔68は、バルブ室47の内外を連通させる。貫通孔68の直径は、インクニードル102の外径寸法より僅かに小さい。第2シール部材76は、例えば、ゴム等の弾性材料によって形成されている。
キャップ79は、筒壁46の先端に取り付けられており、筒壁46との間に第2シール部材76を挟む。キャップ79の中央部には、キャップ79を厚み方向に貫通する貫通孔69が形成されている。貫通孔69の直径は、貫通孔68より大きい。キャップ79には、脱抜方向52に突出した係合部(不図示)が形成されている。係合部は、前壁40に設けられた被係合部81に係合される。キャップ79は、第2シール部材76を筒壁46の先端に保持する。
[第1シール部材177]
図5に示されるように、第1シール部材177は、貫通孔46Aに取り付けられている。第1シール部材177は、ゴムやエラストマーのように弾性変形可能な素材から成形されている。
図13に示されるように、第1シール部材177は、概ね円筒形状である。第1シール部材177には、円筒の軸線方向179に沿った貫通孔178が形成されている。貫通孔178には、後述する弁体77の凸部84が挿通される。貫通孔178を区画する内面181には、周方向182に沿った凸部183が形成されている。換言すると、貫通孔178には、貫通孔178の内面181周りに沿った凸部183が形成されている。凸部183は、第1シール部材177が貫通孔46Aに取り付けられた状態において脱抜方向52の端部に形成されている。
凸部183が形成されている部分における貫通孔178の内径は、凸部84の外径よりも僅かに小さい。これにより、貫通孔178に挿通された凸部84は、凸部183に圧接される。その結果、貫通孔178は、凸部183が形成された部分において液密に封止される。一方、凸部183が形成されていない部分における貫通孔178の内径は、凸部84の外径よりも大きい。
第1シール部材177の周面180には、溝184が形成されている。溝184は、周方向182に延びている。溝184には、筒壁46の脱抜方向52の端部に設けれられた凸部185(図5参照)が挿入される。凸部185は、筒壁46の内面周りに沿って延設されている。凸部185の突出先端によって、貫通孔46Aが区画されている。溝184に凸部185が挿入されることにより、第1シール部材177は、貫通孔46Aに取り付けられる。貫通孔46Aの内径は、溝184が形成された部分における第1シール部材177の外径よりも僅かに小さい。これにより、第1シール部材177が貫通孔46Aに取り付けられた状態において、第1シール部材177と貫通孔46Aとの隙間は、液密に封止される。
上述したように、貫通孔178が液密に封止され且つ第1シール部材177と貫通孔46Aとの隙間が液密に封止されることによって、インク容器32と弁体77との間の隙間は液密に封止される。換言すると、第1シール部材177は、インク容器32と弁体77との間の隙間をシールする。
図5に示されるように、第1シール部材177が貫通孔46Aに取り付けられた状態において、溝184は、凸部183よりも挿入方向51に位置する。これにより、挿入方向51及び脱抜方向52において、第1シール部材177の一部である凸部183と弁体77とが当接する位置と、第1シール部材177とインク容器32の一部である凸部185とが当接する位置とは異なる。
第1シール部材177が貫通孔46Aに取り付けられた状態において、第1シール部材177の円筒の表面177A(図13参照)はインク室36に向いており、第1シール部材177の円筒の裏面177B(図13参照)はバルブ室47に向いている。バルブ室47を構成する筒壁46の内面には、貫通孔176(図12参照)が形成されている。つまり、貫通孔176及びインク室36は、挿入方向51及び脱抜方向52において第1シール部材177に対して互いに反対に設けられている。
裏面177B(挿入方向51及び脱抜方向52においてインク室36とは反対を向いた面)には、図13に示されるように、溝186が形成されている。溝186は、円筒の径方向に沿って形成されている。溝186の一端は、貫通孔178に繋がっている。溝186の他端は、裏面177Bの外縁に繋がっている。なお、本実施形態において、溝186は、4つ形成されているが、溝186の数は、4つに限らない。
[弁体77、封止部材78、コイルバネ87]
図5及び図8(B)に示されるように、インク供給部60の筒壁46の内部には、弁体77(バルブの一例)、封止部材78、及びコイルバネ87が収容されている。弁体77、封止部材78、及びコイルバネ87は、インク供給部60の状態を、インク供給部60を介してインク室36からインクカートリッジ30の外部にインクが流出される状態と、インク供給部60を介してインク室36からインクカートリッジ30の外部にインクが流出されない状態との間で選択的に切り換えるためのものである。また、弁体77、封止部材78、及びコイルバネ87は、インク供給部60の状態を、インク供給部60を介してインク室36とインクカートリッジ30の外部とが気体が行き来可能に連通される状態と、インク供給部60を介してインク室36とインクカートリッジ30の外部とが気体が行き来可能に連通されない状態との間で選択的に切り換えるためのものである。
弁体77は、弁体77と後述する規制部材88とで構成される移動部材の一部である。弁体77は、円板形状の弁83と、弁83から脱抜方向52に延びた凸部84と、凸部84から凸部84の径方向に突出した第1突出部85及び第2突出部86とを備えている。弁体77は、弁83を筒壁46の挿入方向51の端部に向けた状態で、挿入方向51及び脱抜方向52に移動可能にバルブ室47内に配置されている。凸部84は、貫通孔46Cに挿入されている。凸部84の外径は、貫通孔46Cの内径よりも小さい。また、凸部84は、貫通孔46Aに取り付けられた第1シール部材177に形成された貫通孔178に挿入されている。凸部84の外径は、貫通孔46Aの内径より小さい。一方、上述したように、凸部84の外径は、貫通孔178の内径よりも僅かに大きい。凸部84の脱抜方向52の先端部は、バルブ室47からインク室36に突出している。つまり、弁体77は、インク供給部60内及びインク室36内に配置されている。
弁体77の外径寸法は、筒壁46の内径寸法よりも小さい。これにより、弁体77は、挿入方向51及び脱抜方向52に移動可能である。具体的には、弁体77は、図5(B)に示される前方位置(第4位置の一例)と、前方位置より後壁41に近い位置であって図6(B)に示される後方位置(第3位置の一例)との間を移動可能である。なお、本実施形態において、弁体77は、水平方向(挿入方向51及び脱抜方向52)に移動するが、弁体77の移動方向は、水平方向に限らない。
また、弁83の外形寸法は、第2シール部材76の貫通孔68よりも僅かに大きい。これにより、図5(B)に示されるように、弁体77が前方位置のときに、弁83は、第2シール部材76の貫通孔68に押し込まれた状態となって、貫通孔68を液密に封止可能である。これにより、貫通孔46Bが閉塞される。一方、図6(B)に示されるように、弁体77が後方位置のときに、弁83は、第2シール部材76から離間する。これにより、貫通孔46Bが開放される。
また、弁体77は、凸部84が第1シール部材177を押す力よりも大きい力が挿入方向51または脱抜方向52に付与されることによって、第1シール部材177に対して挿入方向51及び脱抜方向52に沿って移動可能である。弁体77は、後方位置、前方位置、及び後方位置と前方位置との間を移動可能である。つまり、弁体77は、貫通孔178を通じて後方位置と前方位置との間を移動する。
第1シール部材177は、弁体77が後方位置、前方位置、及び後方位置と前方位置との間を移動する際、インク容器32と弁体77との間の隙間を液密に封止した状態を維持している。つまり、第1シール部材177は、貫通孔178において後方位置、前方位置、及び後方位置と前方位置との間の領域にいるときの弁体77に対し、インク容器32と弁体77との間の隙間をシールする。
また、凸部84の外径寸法は、弁83の外径寸法よりも小さい。
第1突出部85及び第2突出部86は、凸部84の周方向に間隔を空けて、それぞれ4箇所に形成されている。第1突出部85は、第2突出部86より挿入方向51且つ弁83より脱抜方向52にずれた位置に配置されている。
封止部材78は、例えば、ゴム等の弾性材料によって形成されている。図5及び図8(B)に示されるように、封止部材78は、円筒形状の円筒部95と、円筒部95の外面から径方向外側に突出するフランジ形状の第1封止部96及び第2封止部97で構成される。
円筒部95は、第1突出部85及び第2突出部86の間において、凸部84が貫通された状態で配置されている。円筒部95の内径は、凸部84の外径よりも大きい。そのため、円筒部95に凸部84が貫通された状態で、円筒部95と凸部84との間には空間が形成される。また、隣り合う2つの第1突出部85の隙間及び隣り合う2つの第2突出部86の隙間を介して、円筒部95の内部が露出される。これにより、バルブ室47内における貫通孔46Aに連続する空間と、バルブ室47内における貫通孔46Bに連続する空間とは、円筒部95の内部空間によって連通されている。
円筒部95の一端は、第1突出部85と当接しており、円筒部95の他端は、第2突出部86と当接している。これにより、封止部材78は、弁体77と共にバルブ室47内を挿入方向51及び脱抜方向52に移動する。
第1封止部96は、第2封止部97より挿入方向51にずれた位置に配置されている。
各封止部96、97は、筒壁46の内面に気密的に密着する。封止部材78がバルブ室47に挿入されていない状態において、各封止部96、97の外径寸法は、筒壁46の内径寸法より僅かに大きい。これにより、筒壁46の内面に密着した各封止部96、97は、外径寸法を減じる向きに弾性変形する。各封止部96、97は、弁体77が移動することによって、筒壁46の内面に対して摺動する。
コイルバネ87は、貫通孔46Aと第2突出部86との間に配置される。コイルバネ87は、弁体77を挿入方向51へ向けて付勢する。つまり、コイルバネ87は弁体77を後方位置から前方位置へ向けて付勢する。これにより、バルブ室47において、弁体77は、第2シール部材76に当接した状態(図5(B)参照)に保持される。なお、コイルバネ87に代えて、板バネ等の他の付勢部材が用いられてもよい。また、コイルバネ87等の付勢部材は必ずしも設けられていなくてもよい。
[被検知部材59]
図3及び図5に示されるように、被検知部材59が、インク室36内に配置されている。被検知部材59は、フレーム31によって回動可能に支持されている。被検知部材59は、被検知部材59の回動中心となる回動中心部61を備えている。回動中心部61は、円筒形状であるが、円筒形状以外の形状でもよい。被検知部材59は、フレーム31の突部48が回動中心部61に挿入されている。これにより、被検知部材59は、フレーム31に回動可能に支持されている。
図3、図5、及び図8(A)に示されるように、インクカートリッジは、被検知部材59とフロート63とを有している。なお、本実施形態では、フロート63は被検知部材59の一部として構成されている。被検知部材59は、回動中心部61、第1アーム71、第2アーム72、第3アーム73、被検知部62、フロート63、及び被規制部64で構成されている。
回動中心部61は、第2内壁44よりも挿入方向51にずれた位置に設けられている。第1アーム71は、回動中心部61から回動中心部61の径方向に延出されている。第2アーム72は、回動中心部61から上記径方向且つ第1アーム71と異なる方向に延出されている。第2アーム72は、回動中心部61から、第2内壁44の右端から左方向56に凹んだ凹部45を経て、第2内壁44よりも脱抜方向52へ延びている。第3アーム73は、回動中心部61から上記径方向且つ第1アーム71及び第2アーム72と異なる方向に延出されている。第3アーム73は、第2アーム72より短い。
被検知部62は、第1アーム71の延出端に設けられており、第1アーム71に支持されている。被検知部62は、板形状である。被検知部62は、発光部から出力された光を遮光する材料によって形成されている。被検知部62は、被検知部材59の回動中心から距離L1だけ離れた位置で第1アーム71に支持されている(図5(B)参照)。なお、被検知部62は、第1アーム71の延出端以外の位置、例えば第1アーム71の延出端及び基端の中間位置に設けられていてもよい。
より詳細には、発光部から出力された光が被検知部62の右面及び左面の一方に到達したときに、被検知部62の右面及び左面の他方の面から出て受光部に到達する光の強度が所定の強度未満、例えば、ゼロとなる。被検知部62は、光が右方向55もしくは左方向56に進むのを完全に遮断してもよいし、光を部分的に吸収してもよいし、光の進行方向を曲げてもよいし、光を全反射させてもよい。例えば、被検知部62は、顔料を含有する樹脂であってもよいし、透明もしくは半透明であるがプリズム状の形状を有していて光の進行方向を曲げるものでもあってよいし、アルミニウム膜のような反射膜を表面に有していてもよい。
フロート63は、第2アーム72の延出端に設けられており、第2アーム72に支持されている。フロート63は、インク室36に貯留されたインクより比重が小さい材料によって形成されている。フロート63は、被検知部材59の回動中心から距離L1より短い距離L2だけ離れた位置で第2アーム72に支持されている(図5(A)参照)。なお、フロート63は、第2アーム72の延出端以外の位置、例えば第2アーム72の延出端及び基端の中間位置に設けられていてもよい。
被規制部64は、第3アーム73の延出端に設けられている。被規制部64は、第3アーム73の一部であり、第3アーム73の延出端部分である。被規制部64は、延出端部分に平面を有しており、被規制部64は、後述する規制部材88に接離される。なお、被規制部64は、第3アーム73とは別部材であってもよく、この場合、被規制部64は、第3アーム73に支持される。
被検知部材59は、第1アーム71が概ね上方向54を向き、第2アーム72が概ね脱抜方向52を向き、且つ第3アーム73が概ね挿入方向51を向いた状態で、インク室36内に配置される。
被検知部材59は、図7に示される検知位置(第1位置の一例)及び図5に示される位置であって検知位置と異なる位置である待機位置(第2位置の一例)の間を回動可能である。カートリッジ装着部110へのインクカートリッジ30の装着が完了した状態において、被検知部材59が検知位置のとき、被検知部62は、センサ103(図1参照)の発光部及び受光部の間に位置する。そのため、発光部から出力された光は、被検知部62に遮られるため、受光部に到達しない。これにより、被検知部62は、被検知部材59が検知位置のときに、インクカートリッジ30の外部からセンサ103によって検知される。一方、カートリッジ装着部110へのインクカートリッジ30の装着が完了した状態において、被検知部材59が検知位置以外の位置のとき、被検知部62は、センサ103の発光部及び受光部の間に位置しない。そのため、発光部から出力された光は、受光部に到達する。これにより、被検知部62は、被検知部材59が待機位置のときに、インクカートリッジ30の外部からセンサ103によって検知不可能である。
[規制部材88]
図5に示されるように、規制部材88が、インク室36内に配置されている。規制部材88は、弁体77と後述する規制部材88とで構成される移動部材の一部である。規制部材88は、フレーム31によって挿入方向51及び脱抜方向52に移動可能に支持されている。図3及び図5に示されるように、インク容器32のフレーム31は、第1内壁43における突部48より脱抜方向52にずれた位置に、一対のガイド部材49を備えている。一対のガイド部材49は、インク室36内の弁体77の上方かつ突部48の下方の領域に設けられるものであって、上方向54及び下方向53に間隔を空けて設けられている。一対のガイド部材49は、挿入方向51及び脱抜方向52に延設されている。規制部材88は、一対のガイド部材49の間に配置されている。これにより、規制部材88は、フレーム31によって挿入方向51及び脱抜方向52に移動可能に支持されている。
一対のガイド部材49の間に配置される規制部材88は、弁体77の上方に位置し、突部48の下方に位置する。ここで、突部48は、被検知部材59を支持している。よって、規制部材88は、弁体77よりも被検知部材59に近い位置に設けられている。
図5及び図8に示されるように、規制部材88は、第1の部分89と第2の部分90とを有する。第2の部分90の挿入方向51及び脱抜方向52の中央部には、右方向55に突出した凸部91が形成されている。第2の部分90の凸部91は、ガイド部材49よりも右方向55に突出した位置にある。一方、第2の部分90の凸部91以外の部分は、一対のガイド部材49の間に配置されており、ガイド部材49に対して右方向55に突出していない。
第1の部分89は、第2の部分90の凸部91から下方向53に延びている。第1の部分89の先端部には、挿入方向51及び脱抜方向52に向く貫通孔92が形成されている。貫通孔92には、弁体77の脱抜方向52の先端部77Aが挿入される。貫通孔92の直径は、先端部77Aよりも僅かに小さい。そのため、先端部77Aと貫通孔92とは嵌合される。これにより、規制部材88の第1の部分89は、弁体77と係合される。このように構成されていることにより、規制部材88は、弁体77と一体に挿入方向51及び脱抜方向52に移動する。
規制部材88は、図5に示される規制位置及び図6に示される位置であって規制位置より後壁41に近い位置である許容位置の間を移動可能である。弁体77が前方位置のとき、規制部材88は規制位置である。弁体77が後方位置のとき規制部材88は許容位置である。弁体77が前方位置から後方位置へ移動すると、規制部材88は規制位置から許容位置へ移動する。弁体77が後方位置から前方位置へ移動すると、規制部材88は許容位置から規制位置へ移動する。
規制部材88が規制位置のとき、規制部材88の第2の部分90の凸部91のうち、上方を向く面が、被規制部64の下方から上方へ向けて被規制部64と当接する。これにより、被規制部64が上方への付勢力を受けることで、被検知部材59の矢印74の方向(図5(B)参照)への回動が規制される。つまり、被検知部材59の待機位置から矢印74の方向への回動が規制される。ここで、規制とは、被検知部材59の待機位置からの回動が規制される一方で、被検知部材59のがたつき程度の移動は許容されることを意味する。また、規制部材88は、被検知部材59が待機位置から矢印74とは逆方向(図5(B)では時計方向)へ回動するのを必ずしも規制しない。
一方、規制部材88が許容位置のとき、規制部材88の第2の部分90の凸部91は、被検知部材59の被規制部64から離間して、被規制部64よりも脱抜方向52にずれた位置に配置される。これにより、被検知部材59の矢印74の方向への回動が許容される。つまり、被検知部材59の待機位置から検知位置への回動が許容される。
[制御部130]
プリンタ10は、制御部130を備える。図4に示されるように、制御部130は、CPU131、ROM132、RAM133、EEPROM134、及びASIC135を備えており、これらは内部バス137によって接続されている。ROM132には、CPU131が各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。なお、CPU131、ROM132、RAM133、EEPROM134、及びASIC135は、その一部又は全部が1つのICチップで構成されていてもよいし、複数のICチップに分かれて構成されていてもよい。
制御部130は、不図示のモータを駆動させることによって、給紙ローラ23、搬送ローラ対25、及び排出ローラ対27を回転させる。制御部130は、記録ヘッド21を制御することによって、ノズル29にインクを吐出させる。具体的には、制御部130は、ピエゾ素子29Aに印加する駆動電圧の大きさを示す制御信号をヘッド制御基板21Aに出力する。ヘッド制御基板21Aは、制御部130から取得した制御信号に示される大きさの駆動電圧を、各ノズル29に設けられたピエゾ素子29Aに印加することによって、当該ノズル29にインクを吐出させる。制御部130は、プリンタ10やインクカートリッジ30に関する情報や各種メッセージを表示部109に表示させる。
制御部130は、センサ103から出力された検知信号と、装着センサ107から出力された検知信号と、温度センサ106から出力された信号と、カバーセンサ108から出力された信号とを取得する。温度センサ106は、温度に応じた信号を出力するものである。温度センサ106による温度の測定位置は特に限定されず、例えば、カートリッジ装着部110の内部であってもよいし、プリンタ10の表面であってもよい。カバーセンサ108は、カートリッジ装着部110の開口112に対して開閉するカバーが開いているときと、閉まっているときとで異なる信号を出力するものである。
[インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110へ装着される動作]
以下、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される過程における弁体77、規制部材88、及び被検知部材59の動きが説明される。なお、以下の説明において、インク室36へのインクの貯留量は、後述するニアエンプティ状態よりも多い量であるとする。
図5に示されるように、カートリッジ装着部110に装着される前のインクカートリッジ30において、弁体77は、コイルバネ87の付勢力によって前方位置にある。
前方位置の弁体77は、コイルバネ87の付勢力によって第2シール部材76に当接した状態にある。当該状態において、弁83は、第2シール部材76の貫通孔68の周縁部に液密に密着する。これにより、貫通孔68が閉塞される。その結果、インク室36からインクカートリッジ30の外部へのインクの流通は遮断されている。
弁体77が前方位置のとき、孔66Aは第1封止部96と第2封止部97との間に位置している。これにより、第1大気連通路66と第2大気連通路67との間の連通は、第2封止部97によって遮断されている。その結果、インク室36内の圧力は負圧に維持されている。
弁体77が前方位置のとき、規制部材88は規制位置である。規制部材88が規制位置のとき、被検知部材59は待機位置である。フロート63に働く浮力により、被検知部材59には矢印74の方向に回動しようとする力が働いており、よって、被規制部64には下方向53に移動しようとする力が働いている。このとき、規制部材88の凸部91は被規制部64の下方から被検知部材59の被規制部64に接触している。これにより、規制位置の規制部材88は、被検知部材59の検知位置への回動方向である矢印74とは逆方向の外力を被規制部64に付与している。言い換えると、規制部材88が許容位置に配置されるとき 、被規制部64は規制部材88の移動する領域内に配置される。しかし規制部材88は規制位置において被規制部64の回動軌跡上に配置されているので、被規制部64は規制部材88の移動領域内に移動することができない。その結果、被検知部材59の待機位置からの回動が規制されている。
なお、本実施形態では規制部材88は被規制部64の下方から当接することで被検知部材59が許容位置に移動することを規制しているが、本実施形態とは異なり、規制部材88の凸部91が脱抜方向52から被規制部64に接触することで被検知部材59の待機位置からの回動を規制するようにしてもよい。
被検知部材59が待機位置のとき、フロート63は、下壁42近傍に位置している。つまり、フロート63は、インク室36に貯留されたインク中に沈んだ状態である。
被検知部材59が待機位置のとき、被検知部62は、センサ103の発光部及び受光部の間に位置しない。そのため、発光部から出力された光は、受光部に到達する。よって、被検知部材59が待機位置のとき、センサ103はハイレベル信号を制御部130に出力する。
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される前であるため、装着センサ107は、インクカートリッジ30のカートリッジカバー33の前面58に押圧されていない。よって、装着センサ107はローレベル信号を制御部130に出力している。
上記状態において、カートリッジ装着部110の開口112に対して開閉するカバーが開かれて、インクカートリッジ30のカートリッジ装着部110への挿入が開始される。つまり、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着される。すなわち、インクカートリッジ30が使用姿勢となる。
インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110の奥面151近傍まで挿入方向51に移動すると、インクカートリッジ30のカートリッジカバー33の前面58は、装着センサ107を押圧する。すると、装着センサ107は、ハイレベル信号を制御部130に出力する。これにより、後述する被検知部材59の移動時間の計測のカウントが開始される。
また、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110の奥面151近傍まで挿入方向51に移動すると、弁体77の弁83がインクニードル102に当接する。この状態で更にインクカートリッジ30が挿入方向51に移動すると、弁体77はインクニードル102から反力を受けて押される。これにより、弁体77は、コイルバネ87の付勢力に抗って、前方位置から後方位置へ向けて脱抜方向52に移動する。
図6に示されるように、後方位置の弁体77は、第2シール部材76から離間した状態である。これにより、貫通孔68が開放される。その結果、インク室36からインクカートリッジ30の外部へのインクの流通は許容される。
弁体77が後方位置のとき、孔66A及び孔67Aは、ともに第1封止部96と第2封止部97との間に位置している。これにより、第1大気連通路66と第2大気連通路67との間は連通される。その結果、インク室36は大気に連通され、インク室36内の圧力は負圧から大気圧に変わる。
弁体77が前方位置から後方位置へ脱抜方向52に移動すると、規制部材88が弁体77と一体に脱抜方向52に移動する。つまり、規制部材88は、規制位置から許容位置へ移動する。これにより、規制部材88の凸部91は、被検知部材59の被規制部64から離間する。その結果、被検知部材59は、待機位置から回動自在な状態となる。
被検知部材59が回動自在な状態となると、インク中に沈んだ状態に規制されていたフロート63が浮力によって浮く方向である矢印75の方向に回動する。つまり、被検知部材59は、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着された姿勢である使用姿勢で且つ規制部材88が許容位置に移動されたことに応じて上方に移動するフロート63によって、待機位置から検知位置へ回動する。
なお、被検知部材59が検知位置に位置しているとき、被規制部64は規制部材88の移動領域に進入している。
フロート63は、第2アーム72が第2内壁44の凹部45を区画する面45A(図3及び図6(A)参照)と当接するまで、矢印75の方向に回動する。第2アーム72が面45Aと当接したとき、被検知部材59は、図7に示される位置である検知位置に位置する。
被検知部材59が検知位置のとき、被検知部62は、センサ103の発光部及び受光部の間に位置する。そのため、発光部から出力された光は、受光部に到達しない。よって、被検知部材59が検知位置のとき、センサ103はローレベル信号を制御部130に出力する。換言すると、センサ103は、被検知部材59が検知位置に存在することを示すローレベル信号(検知信号の一例)を出力する。これにより、後述する被検知部材59の移動時間の計測のカウントが終了される。上記の過程を経てカートリッジ装着部110へのインクカートリッジ30の装着が完了する。
次に、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110から脱抜される過程における弁体77、規制部材88、及び被検知部材59の動きが説明される。なお、以下の説明において、インク室36へのインクの貯留量は、後述するニアエンプティ状態よりも多い量であるとする。
図7に示されるように、カートリッジ装着部110への装着が完了した状態のインクカートリッジ30において、弁体77は、インクニードル102の押圧力によって後方位置にある。弁体77が後方位置のとき、規制部材88は許容位置にある。規制部材88が許容位置のとき、被検知部材59の回動は許容される。被検知部材59は、フロート63の浮力によって検知位置にある。
インクカートリッジ30のカートリッジ装着部110からの脱抜が開始されて、インクカートリッジ30が脱抜方向52に移動すると、弁体77はインクニードル102から離間する。これにより、弁体77は、コイルバネ87の付勢力によって後方位置から前方位置に移動する。弁体77が後方位置から前方位置へ移動すると、規制部材88は弁体77と一体に許容位置から規制位置に移動する。規制部材88が許容位置から規制位置に移動する過程において、規制部材88の凸部91は、検知位置において規制部材88の移動領域内に進入している被検知部材59の被規制部64に当接する。具体的には、被規制部64のうち規制位置にて規制部材88の凸部91と当接していた面とは交差する面が規制部材88のうち挿入方向51を向く面と当接する。これにより、被規制部64は、凸部91によって検知位置から待機位置へ向けた方向に押される。その結果、被検知部材59は、矢印74(図5(B)参照)と逆方向に回動する。つまり、被検知部材59は、検知位置から待機位置に回動する。すなわち、規制部材88は、許容位置から規制位置へ移動される過程において、被検知部材59を待機位置へ回動させる。
次に、インクカートリッジ30のカートリッジ装着部110への装着が完了した状態において、インクが記録ヘッド21において消費されることによって、インク室36におけるインクの貯留量が減ったときの、弁体77、規制部材88、及び被検知部材59の動きが説明される。
インク室36に貯留されたインクが、記録ヘッド21のノズル29から吐出されることによって消費されることで減少し、当該インクの液面がフロート63よりも下方に下がると、フロート63は、液面に追随して下方へ移動する。これにより、被検知部材59は、矢印74(図5(B)参照)と逆方向に回動する。つまり、被検知部材59は、検知位置から待機位置へ向けて回動する。これにより、被検知部62は、センサ103の発光部及び受光部の間に位置しなくなる。そのため、発光部から出力された光は、受光部に到達するようになる。よって、センサ103はハイレベル信号を制御部130に出力する。制御部130は、センサ103からハイレベル信号が出力されたことによって、インク室36に貯留されたインクの残量が所定量になったことを認識する。
[制御部130によるインクの粘度の異常判定]
以下、制御部130によって実行されるインク室36内に貯留されたインクの粘度の異常の有無の判定処理が、図9、図10、及び図11のフローチャートを参照しつつ説明される。
制御部130は、装着センサ107から出力される検知信号がローレベル信号からハイレベル信号に切り替わったことを条件として(S11:Yes)、被検知部材59の移動時間の計測のカウントを開始する(S12)。なお、制御部130は、所定周期で検知信号を参照しており、あるタイミングの検知信号と当該あるタイミングに対する直前のタイミングの検知信号とが異なるレベルの信号である場合に、検知信号が切り替わったと判断する。一方、装着センサ107から出力される検知信号がローレベル信号からハイレベル信号に切り替わらない場合(S11:No)、制御部130は、後述するステップS20の処理を実行する。なお、装着センサ107から出力される検知信号がローレベル信号からハイレベル信号に切り替わらない場合(S11:No)とは、例えば、新しいインクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着されていない場合である。
次に、制御部130は、移動時間の計測を開始してからの経過時間が予め定められた最大時間を上回ったか否かを判断する(S13)。既に最大時間が経過している場合(S13:Yes)、制御部130は、後述するステップS15の処理を実行する。センサ103から出力される検知信号がハイレベル信号からローレベル信号に切り替わる(S13:Yes)前に最大時間が経過する場合とは、インク室36に貯留されたインクの粘度が極めて高い場合である。
一方、未だ最大時間が経過していない場合(S13:No)、制御部130は、センサ103から出力される検知信号がハイレベル信号からローレベル信号に切り替わったか否かを判断する(S14)。センサ103から出力される検知信号が切り替わってないと判断した場合(S14:No)、制御部130は、ステップS13の処理を再び実行する。一方、センサ103から出力される検知信号が切り替わったと判断した場合(S14:Yes)、制御部130は、移動時間の計測のカウントを終了して、被検知部材59の移動時間を決定する(S15)。一方、最大時間が経過していると判断された場合(S13:Yes)、制御部130は、最大時間を被検知部材59の移動時間とする。
移動時間は、装着センサ107から出力される検知信号がローレベル信号からハイレベルに切り替わってから(S11:Yes)、センサ103から出力される検知信号がハイレベル信号からローレベル信号に切り替わるまでに要した時間である。
なお、厳密に言うと、装着センサ107から出力される検知信号がローレベル信号からハイレベルに切り替わるタイミングは、被検知部材59が規制部材88による規制の解除によって待機位置から検知位置へ向けて回動可能となるタイミングと同時ではないこともある。しかしながら、前者のタイミングと後者のタイミングとは時間的に近いので、後者のタイミングを前者のタイミングで擬制できる。そこで、制御部130は、装着センサ107からハイレベル信号を取得してから、センサ103からローレベル信号を取得するまでの時間を、移動時間、すなわち、被検知部材59が待機位置から検知位置へ移動するのに要した時間として計測する。
次に、制御部130は、異常フラグをリセット(すなわち、”OFF”を設定)する(S16)。異常フラグは、後述する移動時間の判断(S18)の結果、移動時間が閾値範囲内でなかった場合(S18:No)に”ON”が設定される。異常フラグは、インクカートリッジ30毎に設定される値である。制御部130は、異常フラグをEEPROM134に記憶する。
次に、制御部130は、温度センサ106から出力される信号に基づいて、閾値範囲を決定する(S17)。閾値範囲は、インク室36に貯留されているインクの粘度を推定するために、ステップS15で計測された移動時間と比較されるものである。制御部130は、温度センサ106から出力される信号によって特定される温度が高いほど、閾値範囲の上限値及び下限値の少なくとも一方を小さくする。換言すれば、制御部130は、温度センサ106から出力される信号によって特定される温度が低いほど、閾値範囲の上限値及び下限値の少なくとも一方を大きくする。
次に、制御部130は、ステップS15で測定された移動時間が、ステップS17で決定された閾値範囲に含まれるか否かを判断する(S18)。移動時間が閾値範囲の下限値を下回った場合、インクの粘度が正常なインクの粘度よりも低すぎると推定される。一方、移動時間が閾値範囲の上限値を上回った場合、インクの粘度が正常なインクの粘度よりも高すぎると推定される。そして、制御部130は、移動時間が閾値範囲を外れたことを条件として(S18:No)、異常フラグに”ON”を設定する(S19)。一方、制御部130は、移動時間が閾値範囲に含まれることを条件として(S18:Yes)、ステップS19の処理をスキップする。
次に、制御部130は、カートリッジ装着部110の開口112に対して開閉するカバーが閉まっていることを示す信号がカバーセンサ108から出力されているか否かを判断する(S20)。カバーが開いていると判断した場合(S20:No)、制御部130は、ステップS11以降の処理を再び実行する。一方、カバーが閉まっていると判断した場合(S20:Yes)、制御部130は、ステップS20でカバーが閉まっていると判断してから所定の時間が経過したか否かを判断する(S21)。
既に所定の時間が経過したと判断した場合(S21:Yes)、制御部130は、図9の処理を終了する。一方、未だ所定の時間が経過していないと判断した場合(S21:No)、制御部130は、ステップS11以降の処理を再び実行する。なお、ステップS11以降の処理を繰り返す過程でカバーが開いていると判断した場合(S20:No)、制御部130は、カバーが閉まっていると判断(S20:Yes)した時点で開始した時間の計測を終了する。
制御部130は、図9に示される処理を終了した後、カートリッジ装着部110の開口112に対して開閉するカバーが閉まっていることを示す信号がカバーセンサ108から出力されていることを条件として、図10に示される処理を所定の時間間隔で繰り返し実行する。
まず、制御部130は、装着センサ107から出力される検知信号がハイレベル信号であるか否かを判断する(S31)。装着センサ107から出力される検知信号がローレベル信号である場合(S31:No)、制御部130は、インクカートリッジ30が未装着であることを報知(S38)し、図10の処理を終了する。報知の具体的な方法は特に限定されないが、例えば、プリンタ10に搭載された表示部109にメッセージを表示してもよいし、スピーカ(不図示)からガイド音声を出力してもよい。
一方、装着センサ107から出力される検知信号がハイレベル信号である場合(S31:Yes)、制御部130は、異常フラグに”ON”が設定されているか否かを判断する(S32)。異常フラグに”ON”が設定されている場合(S32:Yes)、制御部130は、インクカートリッジ30に関する情報を報知(S37)し、図10の処理を終了する。報知の具体的な内容は特に限定されないが、例えば、インク室36内のインクが劣化していること、或いはインクカートリッジ30の交換を推奨すること等を報知すればよい。報知の具体的な方法は、ステップS38の方法と同じであってよい。
一方、異常フラグに”OFF”が設定されている場合(S32:No)、制御部130は、図11に示される処理である残量判定処理を実行する(S33)。残量判定処理については後述する。残量判定処理の後、制御部130は、エンプティフラグに”ON”が設定されているか否かを判断する(S34)。エンプティフラグは、インク室36に貯留されているインクの量が画像記録を実行するのに不十分である程に少なくなっていると判断された場合に”ON”に設定されるフラグである。
エンプティフラグに”ON”が設定されている場合(S34:Yes)、制御部130は、図10の処理を終了する。一方、エンプティフラグに”ON”が設定されていない場合(S34:No)、制御部130は、画像記録指示を取得したか否かを判断する(S35)。画像記録指示を取得していない場合(S35:No)、制御部130は、図10の処理を終了する。一方、画像記録指示を取得した場合(S35:Yes)、制御部130は、記録ヘッド21、給紙ローラ23、搬送ローラ対25、排出ローラ対27等を直接的及び間接的に制御することによって記録用紙に画像を記録(S36)し、図10の処理を終了する。なお、ステップS36の処理は、記録用紙1枚に対する画像記録処理が終了する時点までを一つの処理として終了してもよいし、取得した全ての画像データに対応する画像記録処理が終了した時点までを一つの処理として終了してもよい。
上記のように、制御部130は、異常フラグに”ON”が設定されている場合(S32:Yes)、ステップS36の画像記録処理を実施しない。つまり、制御部130は、ステップS36をスキップする。すなわち、制御部130は、記録ヘッド21にインクを吐出させない。
以下、図11に示される処理である残量判定処理が説明される。最初に、制御部130は、ニアエンプティフラグに”ON”が設定されているか否かを判断する(S41)。ニアエンプティフラグは、インク室36に貯留されているインクの量が画像記録を実行できる量ではあるものの残り少なくなっていると判断された場合に”ON”に設定されるフラグである。つまり、ニアエンプティフラグに”ON”が設定されている場合におけるインク室36に貯留されているインクの量は、エンプティフラグに”ON”が設定されている場合におけるインク室36に貯留されているインクの量よりも多い。
ニアエンプティフラグに”ON”が設定されていない場合(S41:No)、制御部130は、センサ103から出力される検知信号がローレベル信号からハイレベル信号に切り替わったか否かを判断する(S42)。センサ103から出力される検知信号が切り替わってないと判断した場合(S42:No)、残量判定処理が終了されて、制御部130は、図10のステップS34の処理を実行する。一方、センサ103から出力される検知信号が切り替わったと判断した場合(S42:Yes)、制御部130は、ニアエンプティフラグに”ON”を設定する(S43)。次に、制御部130は、インクカートリッジ30がニアエンプティ状態であることを報知(S44)し、図11の処理を終了する。その後、制御部130は、図10のステップS34の処理を実行する。前述したニアエンプティ状態とは、インク室36に貯留されているインクの量が画像記録を実行できる量ではあるものの残り少なくなっている状態である。
ステップS41において、ニアエンプティフラグに”ON”が設定されている場合(S41:Yes)、制御部130は、ニアエンプティフラグに”ON”が設定されてからのソフトカウント値が所定値以上であるか否かを判断する(S45)。ソフトカウント値とは、制御部130が記録ヘッド21にインクの吐出命令を出したときのデータに基づいて算出される値である。詳細には、ソフトカウント値とは、制御部130が記録ヘッド21から吐出するよう命令したインク滴の数と、制御部130によって指定された各インク滴のインク量との乗算値が累積的にカウントされる値である。所定値は、ソフトカウント値と比較される値である。
ニアエンプティフラグに”ON”が設定されてからのソフトカウント値が所定値未満である場合(S45:No)、つまりニアエンプティフラグに”ON”が設定されてからの記録ヘッド21によるインク消費量が所定量未満である場合(S45:No)、制御部130は、制御部130は、前述したステップS44の処理を実行する。
一方、ニアエンプティフラグに”ON”が設定されてからのソフトカウント値が所定値以上である場合(S45:Yes)、つまりニアエンプティフラグに”ON”が設定されてからの記録ヘッド21によるインク消費量が所定量以上である場合(S45:Yes)、制御部130は、エンプティフラグに”ON”を設定する。次に、制御部130は、インクカートリッジ30がエンプティ状態であることを報知(S47)し、図11の処理を終了する。その後、制御部130は、図10のステップS34の処理を実行する。前述したエンプティ状態とは、インク室36に貯留されているインクの量が画像記録を実行するのに不十分である程に少なくなっている状態である。
なお、ステップS44、S47における報知の具体的な方法は特に限定されないが、例えば、プリンタ10に搭載された表示部109にメッセージを表示してもよいし、スピーカ(不図示)からガイド音声を出力してもよい。
[実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、仮にインクの液面が貫通孔46Aより下方となったとしても、インク室36内の空気が貫通孔46Aを介してインク供給部60のバルブ室47へ進入することは、第1シール部材177によって妨げられる。これにより、インクを貫通孔176からバルブ室47を介してインクカートリッジ30の外部へ供給することができる。
また、本実施形態によれば、弁体77と第1シール部材177との当接位置が凸部183が形成された位置に限定されるため、弁体77の移動時に弁体77に掛かる荷重を小さくすることができる。
また、本実施形態によれば、挿入方向51及び脱抜方向52において、第1シール部材177の凸部183と弁体77とが当接する位置と、凸部185と第1シール部材177とが当接する位置とが異なるため、弁体77の移動時に弁体77に掛かる荷重を小さくすることができる。
また、本実施形態によれば、仮に、第1シール部材177が貫通孔176を塞いでしまうような位置に配置されていたとしても、インクは、貫通孔176から第1シール部材177に設けられた溝186を介してバルブ室47へ流通することができる。
また、本実施形態によれば、規制部材88が弁体77に取り付けられているため、規制部材88及び弁体77をコンパクトに構成できる。
[変形例1]
上記の実施形態では、第1シール部材177はインク容器32に取り付けられており、弁体77が第1シール部材177に対して摺動していた。つまり、第1シール部材177は移動するものではなかった。しかし、第1シール部材177は移動可能であってもよい。例えば、図14に示されるように、第1シール部材177が弁体77に取り付けられていてもよい。そして、弁体77の移動に伴って、第1シール部材177がインク容器32に対して摺動してもよい。
以下、図14を参照しつつ、上記の実施形態と異なる部分である弁体77及び第1シール部材177の構成が説明される。なお、弁体77及び第1シール部材177以外の部分については、上記の実施形態と同構成であるため、説明は省略される。
弁体77には、凸部84から弁体77の径方向に突出された凸部187が形成されている。凸部187は、弁体77の周方向に延出されている。凸部187は、挿入方向51及び脱抜方向52において、第2突出部86よりも脱抜方向52にずれた位置に形成されている。
第1シール部材177は、貫通孔46Aに配置されている。第1シール部材177は、概ね円筒形状であり、貫通孔178が形成されている。第1シール部材177の内面には、第1シール部材177の径方向に凹み且つ第1シール部材177の周方向に延出された溝188が形成されている。
弁体77が貫通孔178に挿通された状態において、凸部187が溝188に嵌め込まれている。これにより、第1シール部材177は、弁体77に取り付けられ、弁体77と一体に移動可能となる。
凸部187が形成されている部分における弁体77の外径は、溝188が形成されている部分における第1シール部材177の貫通孔178の内径よりも僅かに大きい。これにより、弁体77は、凸部187の部分において、第1シール部材177に圧接される。その結果、弁体77と第1シール部材177との間は、液密に封止される。
第1シール部材177の外面には、第1シール部材177の径方向に突出し且つ第1シール部材177の周方向に延出された凸部189が形成されている。
凸部189が形成されている部分における第1シール部材177の外径は、第1シール部材177が配置されているバルブ室47の内径よりも僅かに大きい。これにより、第1シール部材177は、凸部189の部分において、筒壁46に圧接される。その結果、第1シール部材177と筒壁46(インク容器32)との間は、液密に封止される。
弁体77は、第1シール部材177の凸部189が筒壁46の内面を押す力よりも大きい力が挿入方向51または脱抜方向52に付与されることによって、後方位置と前方位置との間を、第1シール部材177と一体に移動可能である。つまり、第1シール部材177は、貫通孔46Aに対し、移動可能に嵌入されている。また、第1シール部材177は、弁体77が後方位置、前方位置、及び後方位置と前方位置との間のいずれの領域に位置するときであっても、貫通孔46Aを液密に封止している。
変形例1によれば、弁体77は、第1シール部材177に対して相対移動しない。そのため、仮に、弁体77の表面にパーティングラインが形成されていたとしても、第1シール部材177は、弁体77との間をシール可能である。
[変形例2]
上記の実施形態及び変形例1では、弁体77が第1シール部材177の貫通孔178を貫通していた。しかし、弁体77は、第1シール部材177を貫通していなくてもよい。以下、弁体77が第1シール部材177を貫通していない構成の一例が、図15を参照しつつ、説明される。なお、弁体77、規制部材88、及び第1シール部材177以外の部分については、上記の実施形態と同構成であるため、説明は省略される。
上記の実施形態では、弁体77及び規制部材88は、直接接続されていたが、変形例2では、直接接続されていない。
弁体77の脱抜方向52の端部には、係合部161が形成されている。係合部161は、弁体77の凸部84と接続されている。係合部161の外径は、凸部84の外径よりも大きい。
規制部材88は、第1の部分89及び第2の部分90に加えて、第3の部分162を備えている。第3の部分162は、第1の部分89の先端部から挿入方向51に突出した突出部163と、突出部163の突出先端に接続された係合部164とを備えている。係合部164の外径は、突出部163の外径よりも大きい。
第1シール部材177は、貫通孔46Aに形成されている。第1シール部材177は、概ね円筒形状であり、2つの凹部165、166を有している。凹部165、166の間には、凹部165、166の間をインクが行き来できないように形成された封止部160がある。
凹部165(第1凹部の一例)は、第1シール部材177の挿入方向51を向いた面から、脱抜方向52に凹んでいる。換言すると、凹部165は、弁体77を向く面に形成されている。凹部165の側面に凸部167が形成されている。凸部167は、第1シール部材177の径方向に突出し、且つ第1シール部材177の周方向に延設されている。凸部167は、凹部165の奥部以外に形成されている。凸部167が形成されている部分における凹部165の内径は、弁体77の凸部84の外径と略同一である。凸部167が形成されていない部分における凹部165の内径は、係合部164の外径と略同一である。
凹部165には、弁体77の凸部84及び係合部161が嵌め込まれる。このとき、係合部161が、凸部167と係合する。これにより、弁体77が凹部165から抜けることが防止される。また、弁体77が凹部165に嵌め込まれた状態において、係合部161が凹部165を画定する奥面と当接している。これにより、弁体77が第1シール部材177に対して挿入方向51及び脱抜方向52にがたつくことが防止される。
凹部166(第2凹部の一例)は、第1シール部材177の脱抜方向52を向いた面から、挿入方向51に凹んでいる。換言すると、凹部166は、規制部材88を向く面に形成されている。凹部166の側面に凸部168が形成されている。凸部168は、第1シール部材177の径方向に突出し、且つ第1シール部材177の周方向に延設されている。凸部168は、凹部166の奥部以外に形成されている。凸部168が形成されている部分における凹部166の内径は、規制部材88の第3の部分162の突出部163と略同一である。凸部168が形成されていない部分における凹部166の内径は、規制部材88の第3の部分162の係合部164と略同一である。
凹部166には、規制部材88の第3の部分162が嵌め込まれる。このとき、係合部164が、凸部168と係合する。これにより、規制部材88の第3の部分162が凹部166から抜けることが防止される。また、規制部材88の第3の部分162が凹部166に嵌め込まれた状態において、係合部164が凹部166を画定する奥面と当接している。これにより、規制部材88が第1シール部材177に対して挿入方向51及び脱抜方向52にがたつくことが防止される。なお、凸部168と突出部163とは、本実施形態のように密着していなくてもよい。すなわち、凸部168と突出部163との間に隙間が形成されることで、その部分を通って第1シール部材177内にインクが浸入することがあるが、第1シール部材177内部の封止部160により弁体83側へのインクの浸入を防止できる。
以上のように、弁体77及び規制部材88と第1シール部材177とが接続されていることにより、弁体77、規制部材88、及び第1シール部材177は、挿入方向51及び脱抜方向52に一体に移動可能である。
第1シール部材177の外面には、筒壁46の脱抜方向52の端部に設けられた凸部169が当接される。凸部169は、筒壁46の内面周りに沿って延設されている。貫通孔46Aは、凸部169によって区画される。貫通孔46Aの内径は、第1シール部材177の外径よりも僅かに小さい。これにより、第1シール部材177が貫通孔46Aに取り付けられた状態において、第1シール部材177と貫通孔46Aとの隙間は、液密に封止される。
弁体77は、第1シール部材177が凸部169によって押される力よりも大きい力が挿入方向51または脱抜方向52に付与されることによって、後方位置と前方位置との間を、第1シール部材177及び規制部材88と一体に移動可能である。つまり、第1シール部材177は、貫通孔46Aに対し、移動可能に嵌入されている。また、第1シール部材177は、弁体77が後方位置、前方位置、及び後方位置と前方位置との間のいずれの領域に位置するときであっても、筒壁46との間を液密に封止している。
なお、図15に示された構成では、筒壁46に設けられた凸部169が第1シール部材177の外面に圧接することによって、第1シール部材177と貫通孔46Aとの隙間が液密に封止された。しかし、図16に示されるように、第1シール部材177の外面に設けられた凸部170が筒壁46の内面に圧接することによって、第1シール部材177と貫通孔46Aとの隙間が液密に封止されてもよい。
変形例2によれば、規制部材88と弁体77とは直接接続されていないため、インクが規制部材88から弁体77を伝わってインクカートリッジ30の外部に漏れることを防止できる。
[変形例3]
上記の実施形態では、規制部材88は、挿入方向51及び脱抜方向52に移動した。しかし、規制部材88の移動方向は、挿入方向51及び脱抜方向52に限らない。
例えば、図17及び図18に示されるように、規制部材88は、下方向53及び上方向54に移動してもよい。以下、図17及び図18に示される構成について、詳細に説明する。なお、以下では、上記の実施形態とは異なる部分について詳細に説明され、上記の実施形態と同じ部分については、その説明が簡略化または省略される。
インク容器32の下端部且つ前端部に、インク流通室114が形成されている。変形例3において、インク流通室114は、バルブ室47とともに内部空間の一例である。インク流通室114は、前壁40、下壁42、第1内壁43、ガイド部材122A、ガイド部材122B、及びフレーム31に熱溶着されたフィルムによって区画された空間である。ガイド部材122Aは、下壁42からインク室36内へ上方に突出している。ガイド部材122Bは、前壁40からインク室36内へ脱抜方向52に突出している。なお、図17及び図18において、第1内壁43の図示は、省略されている。
ガイド部材122Aの下端部には、貫通孔115(第1連通孔の一例)が形成されている。貫通孔115は、インク室36とインク流通室114とを連通している。
ガイド部材122Bには、貫通孔116(第2連通孔の一例)が形成されている。貫通孔116は、貫通孔115よりも上方に形成されている。貫通孔116は、インク室36とインク流通室114とを連通している。貫通孔116には、第1シール部材177が取り付けられている。第1シール部材177は、上記の実施形態において第1シール部材177が貫通孔46Aに取り付けられたのと同様にして、貫通孔116に取り付けられている。これにより、第1シール部材177が貫通孔116に取り付けられた状態において、第1シール部材177と貫通孔116との隙間は、液密に封止されている。
インク流通室114を区画する前壁40には、インク供給部60の筒壁46が固定されている。筒壁46の脱抜方向52の端部には、貫通孔113が形成されている。貫通孔113は、の筒壁46の内部空間であるバルブ室47とインク流通室114とを連通している。
図17及び図18に示されるように、弁体77と規制部材88とは別体である。
弁体77は、貫通孔113を貫通している。これにより、弁体77の脱抜方向52の端部117は、バルブ室47からインク流通室114へ突出している。弁体77の外径は、貫通孔113の内径よりも小さい。これにより、インク流通室114とバルブ室47との間で、インクの流通が可能である。
ところで、最初の実施形態では、貫通孔176はインク貯留室36に連通するインク流通室に設けられることで、バルブ室47(内部空間)に連通するように構成されていたが、変形例3のように、貫通孔115がインク貯留室36とインク流通室(内部空間)とを隔てる壁であって、第1シール部材177を支持している壁(ガイド部材122A)を貫通するように設けられていてもよい。
弁体77の脱抜方向52の端部117には、傾斜面121が形成されている。傾斜面121は、脱抜方向52へ向かって上り傾斜となっている。
弁体77は、上記の実施形態と同様に、前方位置及び後方位置の間を、挿入方向51及び脱抜方向52に移動可能である。
規制部材88は、弁体77よりも上方に配置されている。規制部材88は、コイルバネ120を介して下壁42によって支持されている。コイルバネ120は、規制部材88と下壁42との間に配置されている。コイルバネ120の一端(上端)は、規制部材88の下端に接続されている。コイルバネ120の他端(下端)は、下壁42に接続されている。
規制部材88は、コイルバネ120と接続された本体部141と、本体部141から上方向54に突出した突出部142とを備えている。
本体部141は、本体部141から挿入方向51にずれた位置に配置されたガイド部材122A、本体部141から脱抜方向52にずれた位置に配置された122B、本体部141の左方に配置された第1内壁43、及び本体部141の右方に配置されたフィルムによって囲まれている。これにより、規制部材88は、ガイド部材122A、122B、第1内壁43、及びフィルムに沿って上下動可能となる一方で、挿入方向51及び脱抜方向52と右方向55及び左方向56において、がたつき程度の移動のみが可能となる。
本体部141の前壁40を向いた面には、凹部119が形成されている。凹部119は、少なくとも傾斜面123によって区画されている。傾斜面123は、脱抜方向52へ向かって上り傾斜となっている。傾斜面123は、弁体77に形成された傾斜面121と当接している。
傾斜面123と傾斜面121とが互いに当接していることにより、弁体77の挿入方向51及び脱抜方向52の動きが、下方向53及び上方向54の動きに変換されて規制部材88に伝達される。傾斜面123を有する規制部材88の本体部141と、傾斜面121を有する弁体77の端部117とは、伝達部材の一例である。
突出部142は、第1シール部材177に形成された貫通孔178を貫通している。突出部142は、上記の実施形態において弁体77が貫通孔178を貫通していたのと同様して、貫通孔178を貫通している。突出部142の外径は、貫通孔178の内径よりも僅かに大きい。これにより、貫通孔178は、液密に封止されている。
以上より、貫通孔178が封止されるとともに、上述したように第1シール部材177と貫通孔116との隙間が封止される。これにより、第1シール部材177は、インク容器32の一部であるガイド部材122Bと規制部材88との間の隙間をシールしている。
突出部142の脱抜方向52を向いた面には、被検知部材59の被規制部64が当接可能である。
規制部材88は、図17に示される規制位置及び図18に示される位置であって規制位置よりも下方である許容位置の間を移動可能である。弁体77が前方位置のとき、規制部材88は規制位置である。弁体77が後方位置のとき規制部材88は許容位置である。弁体77が前方位置から後方位置へ移動すると、規制部材88は規制位置から許容位置へ移動する。弁体77が後方位置から前方位置へ移動すると、規制部材88は許容位置から規制位置へ移動する。
規制部材88が規制位置のとき、突出部142の脱抜方向52を向いた面が被規制部64と当接する。これにより、被検知部材59の待機位置から矢印124の方向(図17参照)への回動が規制される。また、規制部材88は、被検知部材59が待機位置から矢印124とは逆方向(図17では時計方向)へ回動するのを必ずしも規制しない。
一方、規制部材88が許容位置のとき、突出部142は被規制部64から離間して、被規制部64よりも下方に配置される。これにより、被検知部材59の矢印124の方向への回動が許容される。つまり、被検知部材59の待機位置から検知位置への回動が許容される。
図17に示される状態において、弁体77は、前方位置である。弁体77が前方位置の状態において、弁体77の傾斜面121は、規制部材88の傾斜面123と当接して、規制部材88を規制位置に保持している。規制部材88が規制位置の状態において、突出部142は、被検知部材59の被規制部64と当接して、被検知部材59の待機位置から検知位置への回動を規制している。
図17に示される状態において、弁体77が前方位置から後方位置へ向けて脱抜方向52に移動すると、傾斜面121が傾斜面123を押圧する。これにより、規制部材88は、コイルバネ120の付勢力に抗って、規制位置から許容位置へ向かって下方向53に移動する。規制部材88が下方向53に移動することにより、突出部142が被規制部64から離間する。これにより、被検知部材59は、待機位置から検知位置へ向かう方向(矢印124の方向)へ回動可能となる。被検知部材59は、フロート63の浮力によって矢印124の方向へ回動する。これにより、被検知部材59は、待機位置から検知位置へ回動する(図18参照)。
図18に示される状態において、弁体77が後方位置から前方位置へ向けて挿入方向51に移動すると、規制部材88は、コイルバネ120の付勢力によって、上方向54に移動する。これにより、被検知部材59は、被規制部64が突出部142に押されることによって、矢印124と逆方向へ回動する。その結果、被検知部材は、検知位置から待機位置へ回動する(図17参照)。
変形例3によれば、規制部材88の本体部141と弁体77の端部117とによって弁体77の水平方向の動きが規制部材88の上下方向の動きに変換されるため、弁体77の水平方向の移動スペースを小さくすることができる。
[その他の変形例]
上記の実施形態では、被検知部材59は回動することによって検知位置及び待機位置の間を移動したが、被検知部材59は回動以外によって検知位置及び待機位置の間を移動してもよい。例えば、被検知部材59は、下方向53及び上方向54に移動することによって検知位置及び待機位置の間を移動してもよい。
上記の実施形態では、被検知部材59は、フロート63が浮くことによって待機位置から検知位置へ移動した。しかし、被検知部材59は、錘125が沈むことによって待機位置から検知位置へ移動してもよい。この場合、被検知部材59は、フロート63を備えておらず、代わりに錘125を備えていてもよい。錘125は、例えば、図19に示されるように、回動中心部61から挿入方向51に向けて斜め上方に延出された第4アーム118の延出端に設けられている。
上記の実施形態では、被検知部62は、被検知部材59の位置に関わらずインク室36内に位置していた。しかし、被検知部62は、被検知部材59が検知位置のときにセンサ103の発光部から受光部への光を遮光することを条件として、他の構成であってもよい。例えば、被検知部62は、被検知部材59が待機位置のときにインク室36外に配置されており、被検知部材59が待機位置から検知位置へ移動する過程においてインク室36内に進入してきてもよい。また、被検知部62は、被検知部材59の位置にかかわらず、インク室36外に配置されていてもよい。
また、上記の実施形態では、インクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着完了された(換言すれば、装着センサ107からハイレベル信号が出力された)タイミングで、移動時間の計測を開始する例を説明した。このように、既存の装着センサ107を利用することにより、インク供給装置100の構成を大きく変更することなく、インクの粘度を推定するための処理を実現することができる。しかしながら、本発明はこれに限定されず、制御部130において認識可能な任意のタイミングであってもよい。
例えば、カートリッジ装着部110及びインクカートリッジ30が、以下のような構成であってもよい。図20に示されるように、カートリッジ装着部110のケース101の天面152に、第2のセンサ148が設けられている。第2のセンサ148は、奥面151の近傍に設けられている。一方、インクカートリッジ30のカートリッジカバー33には、光を遮光する材料で形成された凸部149が形成されている。凸部149は、被検知部62と同様の態様で発光部から出力された光を遮光する。凸部149は、凸部37よりも挿入方向51にずれた位置に形成されている。そして、制御部130は、第2のセンサ148が凸部149によって遮光されたタイミング(インクカートリッジ30が図20(A)の位置から図20(B)の位置となったタイミング)で移動時間の計測のカウントを開始し、センサ103が被検知部62によって遮光されたタイミングで移動時間の計測のカウントを終了する。
また、例えば、カートリッジ装着部110及びインクカートリッジ30が、以下のような構成であってもよい。図21に示されるように、インクカートリッジ30のカートリッジカバー33には、光を遮光する材料で形成された凸部149が形成されている。凸部149は、被検知部62と同様の態様で発光部から出力された光を遮光する。凸部149は、凸部37よりも挿入方向51にずれた位置に形成されている。そして、制御部130は、センサ103が凸部149により遮光され、その後遮光を解除されたタイミング(インクカートリッジ30が図21(A)の位置から図21(B)の位置となったタイミング)で移動時間の計測のカウントを開始し、センサ103が被検知部62によって遮光されたタイミングで移動時間の計測のカウントを終了する。なお、移動時間の計測のカウントが終了したとき、インクカートリッジ30は図21(C)の位置である。
また、上記の実施形態では、移動時間が閾値範囲を外れたことを条件として(S18:No)、記録ヘッド21の動作が規制される、すなわち、ステップS36がスキップされる。これにより、粘度が大きく変化したインクを吐出することによる記録ヘッド21のトラブルを防止することができる。但し、ステップS36をスキップする処理は必須ではない。すなわち、制御部130はインク粘度の異常を報知する処理(S37)のみを実行し、記録ヘッド21を動作させるか否かはユーザの判断に委ねてもよい。なお、その際の制御部130の制御フローは、図9、図10、及び図11に示したものとは異なるが、その詳細な説明は割愛する。
または、制御部130は、異常フラグに”ON”が設定されていると判断した場合(S32:Yes)に、ステップS35、S36の処理をスキップせずに、ステップS36における画像記録処理において、各ノズル29のピエゾ素子に印加する駆動電圧の大きさが調整されるようにヘッド制御基板21Aを制御してもよい。
具体的には、制御部130は、移動時間が閾値範囲に含まれる場合と、移動時間が閾値範囲からはずれた場合とで、ノズル29から吐出されるインク量が略同一となるように、ピエゾ素子29Aに印加すべき駆動電圧の大きさを調整するように、ヘッド制御基板21Aに出力する制御信号を変更すればよい。すなわち、移動時間が閾値範囲の下限値を下回る(すなわち、インクの粘度が低すぎる)場合、制御部130は、移動時間が閾値範囲内の場合より、ピエゾ素子29Aに印加する駆動電圧を小さくすればよい。一方、移動時間が閾値範囲の上限値を上回る(すなわち、インクの粘度が高すぎる)場合、制御部130は、移動時間が閾値範囲内の場合より、ピエゾ素子29Aに印加する駆動電圧を大きくすればよい。
上記構成によれば、異なる粘度のインクが貯留された複数種類のインクカートリッジ30がカートリッジ装着部110に装着可能である場合において、インクの種類に応じた適切な駆動電圧でピエゾ素子29Aを駆動させることができる。なお、上記の実施形態においては、アクチュエータの例としてピエゾ素子29Aが用いられているが、アクチュエータの具体例はこれに限定されず、例えば、熱によりインク中に気泡を発生させてノズル29からインクを吐出させるサーマル式のアクチュエータであってもよい。
また、インクの粘度は、周辺の温度の影響を受けて変化する。具体的には、温度が高いほど粘度が低くなり、温度が低いほど粘度が高くなる傾向がある。制御部130は、温度に応じてピエゾ素子29Aに印加される駆動電圧が調整されるように、ヘッド制御基板21Aを制御する。より詳細には、温度が高い場合には、制御部130は低い駆動電圧がピエゾ素子29Aに印加されるようにヘッド制御基板21Aに制御信号を出力する。温度が低い場合には、制御部130は高い駆動電圧がピエゾ素子29Aに印加されるようにヘッド制御基板21Aに制御信号を出力する。また、ピエゾ素子29Aに印加される駆動電圧に対応したインク粘度の最適な閾値が存在する。したがって、温度に応じたインク粘度の閾値範囲を設定することが好ましい。そこで、上記の実施形態では、温度に応じた適切な閾値範囲が決定されている。閾値範囲の決定方法は特に限定されないが、ROM132等に予め記憶された複数の閾値範囲のうちから温度に対応する閾値範囲を選択してもよいし、温度を入力パラメータとする関数を用いて閾値範囲の上限値或いは下限値を算出してもよい。また、ピエゾ素子29Aに印加される駆動電圧が温度に応じて調整されない場合には、温度センサ106から出力される信号に基づいて閾値範囲を決定するスッテプS17は省略されてもよく、その場合、固定の閾値範囲を用いてもよい。
また、上記の実施形態における制御部130は、以下のようにして、被検知部材59の移動時間を計測していた。つまり、制御部130は、装着センサ107がハイレベル信号を出力したことに応じてカウントを開始し、センサ103がローレベル信号を出力したことに応じてカウントを終了し、カウントの開始から終了までの時間を被検知部材59の移動時間としていた。しかし、制御部130による被検知部材59の移動時間の計測は、カウントによるものに限らない。例えば、制御部130は、装着センサ107がハイレベル信号を出力した時刻と、センサ103がローレベル信号を出力した時刻との差分を、被検知部材59の移動時間としてもよい。
また、上記の実施形態における制御部130は、異常フラグをEEPROM134に記憶していたが、インクカートリッジ30に搭載されたICチップの中のメモリに記憶してもよい。また、上記の実施形態における制御部130は、CPU131とASIC135とを備えていたが、制御部130の構成はこれに限定されない。例えば、制御部130はASIC135を有しておらず、図9、図10、及び図11に示される処理は、全てCPU131がROM132からプログラムを読み出すことによって実行されてもよい。逆に、制御部130がCPU131を有しておらず、ASIC135やFPGA等のハードウエアのみで構成されていてもよい。また、制御部130は複数のCPU131や複数のASIC135等を備えていてもよい。
さらに、上記の実施形態では、インクを液体の一例として説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、インクに代えて、印刷時にインクに先立って記録用紙に吐出される前処理液を液体としてもよい。