以下に添付図面を参照して、この発明にかかる時計の好適な実施の形態を詳細に説明する。
<実施の形態1>
まず、この発明にかかる実施の形態1の時計の構成について説明する。この発明にかかる実施の形態の時計100は、GPS衛星からの電波を受信するGPS受信動作、他の電子機器との通信をおこなう通信動作および標準時刻情報信号を含む標準電波の受信動作の少なくともいずれか一つをおこなうことができる。
(時計の構成)
図1および図2は、この発明にかかる実施の形態1の時計の構成を示す説明図である。図1においては、この発明にかかる実施の形態1の時計を正面から見た状態を示している。図2においては、この発明にかかる実施の形態1の時計を、図1における紙面表裏方向に沿って切断した断面を模式的に示している。
図1および図2において、時計100は、外装をなすケース(外装ケース)101を備えている。ケース101は、たとえば、金属材料を用いて形成され、両端が開口した略円筒形状をなす。この実施の形態において、ケース101の両端に設けられた開口のうちの一方の開口(図2における紙面上側の開口)101aによって、この発明にかかる実施の形態の表示窓を実現することができる。
ケース101は、両端が開口した略円筒形状に限るものではない。ケース101は、少なくとも軸心方向における一端側(表側)に、表示窓を実現する開口101aを備えていればよく、軸心方向における他端側(裏側)が塞がれた有底円筒形状(いわゆるワンピース構造)であってもよい。
ケース101には、操作部102が設けられている。操作部102は、たとえば、竜頭によって実現することができる。ケース101に対する竜頭の位置は、ケース101から引っ張られることにより、複数段(たとえば、3段)に調整することができる。また、操作部102は、たとえば、ボタンなどによって実現してもよい。
ケース101の内側には、文字板103が設けられている。文字板103の外周部には、見返しリング104を有している。文字板103や見返しリング104は、たとえば、同系色の金属材料を用いて形成することができる。あるいは、文字板103や見返しリング104は、たとえば、プラスチックなどと称される高分子材料を用いて形成してもよい。文字板103や見返しリング104は、それぞれが異なる材料を用いて形成されていてもよく、また、それぞれが異なる系統の色の材料を用いて形成されていてもよい。
文字板103には、時刻を示す指針106の位置、すなわち、当該指針106が指示する時刻を示すインデックス(指標)107が設けられている。指針106は、具体的には、たとえば、時針106a、分針106b、秒針106cなどによって実現することができる。指針106は、たとえば、金属材料やプラスチックなどと称される高分子材料を用いて形成することができる。
インデックス107は、文字板103において、指針106の軸心を中心とする円周上に配置されている。インデックス107は、たとえば、文字、数字、記号などによって実現することができる。インデックス107は、文字、数字、記号に限るものではなく、たとえば、文字板103に設けられた突起によって実現してもよい。インデックス107は、たとえば、金属材料を用いて形成することができる。あるいは、インデックス107は、文字板103にプリントされたものであってもよいし、金属などの別部材を設けることによって実現されるものであってもよい。
インデックス107は、たとえば、指針106の回転中心を中心とする同一円周上に配置することができる。この場合、たとえば、各インデックス107は、指針106の回転範囲、すなわち、指針106が回転することによる当該指針106の先端の軌跡がなす円よりも、少なくとも一部が外周側に位置するように配置することができる。
インデックス107は、すべてのインデックス107が、指針106の回転中心を中心とする同一円周上に配置されるものに限らない。この発明にかかる実施の形態の時計100において、インデックス107は、たとえば、少なくとも一部のインデックス107が指針106の回転範囲内に配置され、別の一部のインデックス107が指針106の回転範囲よりも外周側に配置されるものであってもよい。
時計100において、指針106は、インデックス107が設けられた文字板103とともに時刻表示部を構成する。時刻表示部は、駆動機構によって指針106を回動(運針)させることによって時刻を表示する。時計100においては、指針106として、時針106a、分針106b、秒針106cに加えて、日板を備えていてもよい。
略円筒形状をなすケース101の一端側(表側)には、風防109が設けられている。風防109は、ベゼル110によって周縁を支持されている。風防109は、光透過性を有する材料を用いて形成されており、略円板形状をなす。具体的には、風防109は、たとえば、サファイヤガラス(サファイヤクリスタル)、無機ガラス(ミネラルガラス)、アクリルガラス(アクリルなどのプラスチック)などの材料を用いて形成することができる。ベゼル110は、風防109の直径と略同一の内径の環形状をなし、たとえば、金属材料を用いて形成することができる。
ケース101の他端側(裏側)には、裏蓋部材201が設けられている。裏蓋部材201は、たとえば、金属材料を用いて形成することができる。あるいは、裏蓋部材201は、プラスチックなどと称される高分子材料を用いて形成されていてもよい。裏蓋部材201は、スクリューバック方式、はめ込み方式、ネジ蓋方式など、公知の各種の技術を用いることによってケース101に取り付けることができる。ケース101に対する裏蓋部材201の取り付け方法については、公知の各種の技術を用いて容易に実現可能であるため、説明を省略する。
ケース101と裏蓋部材201と文字板103とによって囲まれる空間には、指針106を回転駆動する輪列やモータなどによって構成される駆動機構(いずれも図示を省略する)が設けられている。指針106は、輪列を介してモータに連結されており、当該モータの駆動力を受けて回転する。
時計100は、文字板103の表面側すなわち文字板103よりも開口101a側において駆動機構によって指針106を回転駆動し、インデックス107に対する指針106の位置によって、現在の時刻などをアナログ表示する。時計100においては、インデックス107が設けられた文字板103、指針106、駆動機構(輪列やモータ)などによって、この発明にかかる実施の形態1のムーブメントを実現することができる。
時計100は、図示を省略する制御部を備えている。制御部は、モータを駆動したり、外部から受信した電波を電気エネルギーに変換したり、受信した電波に基づいて指針106の位置を調整したりする。制御部は、具体的には、たとえば、CPUやメモリを備えたマイクロコンピュータによって実現することができる。
風防109の裏面109a、すなわち、風防109におけるムーブメント側の面109aには、アンテナ配線111と、表記部112とが設けられている。以下に、図3、図4Aおよび図4Bを用いて、アンテナ配線111および表記部112を含む、風防109の構成について説明する。
(風防109の構成)
風防109の構成について説明する。図3、図4Aおよび図4Bは、この発明にかかる実施の形態1の風防109の構成を示す説明図である。図3においては、この発明にかかる実施の形態1の風防109を、時計100の正面から見た状態を示している。図4Aは図3におけるA−A断面を模式的に示しており、図4Bは図3におけるB−B断面を模式的に示している。
図3、図4Aおよび図4Bにおいて、風防109の裏面、すなわち風防109におけるムーブメント側の面(裏面)109aは、ケース101の内側に位置しており、文字板103に対向している。風防109の裏面109aには、都市表示301が設けられている。都市表示301は、この発明にかかる実施の形態1の表記部112を実現する。
都市表示301は、複数の都市名または地域名を、時差に基づいた順序で風防109の周縁部に沿って配列することにより構成されている。時差は、たとえば、UTC(Coordinated Universal Time:協定世界時)に基づいて特定することができる。UTCは、世界共通の標準時であり、セシウム原子時計によって刻まれる国際原子時をもとにして常に正確な時刻をあらわす。UTCは、国際原子時と、地球の自転に基づく時刻(世界時)とのずれを補正するために、うるう秒で調整された時刻をあらわす。
実施の形態1の都市表示301は、都市表示301を構成する各都市名または各地域名によって特定される都市または地域における時刻とUTCと時差に基づいて、当該時差が小さい都市または地域ほど12時の位置(図3における紙面上側)に近い位置に位置するように配列されている。都市表示301は、1周で24時間の時差をあらわす。具体的には、図3に示した都市表示301は、たとえば、12時の位置に表示された都市(LON:ロンドン)と、6時の位置に表示された都市(AKL:オークランド)とは12時間の時差があることを示している。
都市表示301は、導電性を有する材料を用いて形成された導電性部材301aによって実現される。導電性部材301aは、複数設けられている。具体的には、都市表示301をなす導電性部材301aは、たとえば、導電性を有する材料を印刷によって風防109の裏面109aに設けることによって形成することができる。より具体的には、都市表示301をなす導電性部材301aは、たとえば、パット印刷やシルクスクリーン印刷(加飾印刷)などの技術を用いた印刷によって、風防109の裏面109aに設けることができる。
また、具体的には、都市表示301をなす導電性部材301aは、たとえば、金属製など導電性を有する材料を用いて形成されたエンブレムや、金属製など導電性を有する材料を用いて形成されたシート状部材をカッティングした部材などを風防109の裏面109aに貼り付けるなどして設けることによって実現してもよい。
都市表示301をなす導電性部材301aは、文字板103や見返しリング104の色の反対色の材料を用いて形成する。これにより、都市表示301の良好な視認性を確保することができる。文字板103の色と見返しリング104の色とが異なる場合、都市表示301をなす導電性部材301aは、文字板103および見返しリング104のうち、指針106の軸心方向において都市表示301と重なる部分の色の反対色の材料を用いて形成することが好ましい。これにより、都市表示301の良好な視認性を確保することができる。
また、風防109の裏面109aには、アンテナ配線111が設けられている。アンテナ配線111は、同心円状に複数(この実施の形態1の時計100においては2本)設けられている。この実施の形態1においては、もっとも外周側のアンテナ配線111(第1のアンテナ配線302)と、当該アンテナ配線111よりも内周側のアンテナ配線111(第2のアンテナ配線303)と、の2本のアンテナ配線111を備えている。アンテナ配線111は、風防109の周縁部に設けられている。アンテナ配線111は、それぞれ、風防109の周縁に沿って周回する形状をなす。
アンテナ配線111は、都市表示301をなす導電性部材301aに接触している。実施の形態1の時計100においては、アンテナ配線111は、都市表示301がなす文字(導電性部材301a)の上端および下端に、それぞれ接触している。具体的に、アンテナ配線111のうち、第1のアンテナ配線302は都市表示301がなす文字(導電性部材301a)の上端に接触しており、第2のアンテナ配線303は都市表示301がなす文字(導電性部材301a)の下端に接触している。
第1のアンテナ配線302および第2のアンテナ配線303は、たとえば、図4Aに示すように、風防109の厚さ方向において、都市表示301をなす導電性部材301aと重なりあうことによって接触させることができる。この場合、都市表示301をなす導電性部材301aが設けられていない部分では、図4Bに示すように、風防109の裏面109aには、第1のアンテナ配線302および第2のアンテナ配線303のみが存在する。
アンテナ配線111は、それぞれ、導電性を有する材料を用いて形成されている。これにより、アンテナ配線111とは、都市表示301をなす導電性部材301aと電気的に接続されている。ここに、アンテナ配線111(第1のアンテナ配線302および第2のアンテナ配線303)と、都市表示301(都市表示301をなす導電性部材301a)と、によって、外部からの電波を受信するアンテナが構成される。
具体的には、アンテナ配線111は、たとえば、メタルメッシュにより形成することができる。あるいは、アンテナ配線111はワイドギャップ半導体を用いて形成してもよく、たとえば、酸化インジウム(III)(In2O3)と酸化スズ(IV)(SnO2)の無機化合物である、ITO(tin−doped indium oxide:酸化インジウムスズ)などの透明導電膜を用いることができる。
また、アンテナ配線111は、たとえば、導電性を有する材料を印刷によって風防109の裏面109aに設けることによって形成することができる。あるいは、具体的には、アンテナ配線111は、たとえば、ワイヤを風防109の周縁に沿って周回する形状に引き回すことによって形成されるものであってもよい。あるいは、具体的には、アンテナ配線111は、たとえば、レーザー蒸着法によって形成されるものであってもよい。
アンテナ配線111のうち、都市表示301と重なる位置におけるアンテナ配線111の太さは、都市表示301が示す文字の太さ以下とされている。これにより、アンテナ配線111を都市表示301によって隠すことができ、使用者が文字板103を見る際に、都市表示301の下側からはみ出したアンテナ配線111が目視されることによって美観(審美性)が低下することを防止できる。
アンテナ配線111のうち、都市表示301と重ならない位置におけるアンテナ配線111の太さは、都市表示301が示す文字の太さよりも十分に細い太さとされている。具体的には、都市表示301と重ならない位置におけるアンテナ配線111の太さは、たとえば、30μm以下であることが好ましい。これにより、アンテナ配線111を見えづらくして、アンテナ配線111が目視されることによって美観(審美性)が低下することを防止できる。
アンテナ配線111を形成する材料は、文字板103や見返しリング104の色と同系色の材料を用いて形成する。これにより、アンテナ配線111を目立ちにくくすることができる。文字板103の色と見返しリング104の色とが異なる場合、アンテナ配線111をなす導電性部材301aは、文字板103および見返しリング104のうち、指針106の軸心方向において都市表示301と重なる部分の色と同系色の材料を用いて形成することが好ましい。これにより、アンテナ配線111を目立ちにくくすることができる。
この実施の形態1の時計100において、アンテナ配線111および都市表示301は、いずれも、導電性部材301aを風防109の裏面109aに印刷することによって設けられている。この場合、時計100の製造に際しては、風防109の裏面109aに対して都市表示301を先に印刷し、つぎにアンテナ配線111を印刷する。風防109の裏面109aに対して「都市表示301」→「アンテナ配線111」の順序で印刷することにより、時計100においては、アンテナ配線111よりも都市表示301が表側に位置することになる。これにより、都市表示301とアンテナ配線111とを重複する位置に設ける場合にも、都市表示301の視認性を確保することができる。
このような時計100においては、電波の受信に際してアンテナに電流が流れると、都市表示301を介して第1のアンテナ配線302と第2のアンテナ配線303とが短絡される。これにより、第1のアンテナ配線302の電位と第2のアンテナ配線303の電位を等しくすることができる。つまり、第1のアンテナ配線302と第2のアンテナ配線303とを視認しにくい細さで形成し、この2つのアンテナ配線111どうしを、都市表示301を兼ねた導電性部材301aによって短絡することによって、アンテナ配線111どうしの間が導電性部材301aを残して中貫きとされた中貫きパターンの単一のアンテナを構成することができる。これにより、アンテナ配線111を視認しにくくできるとともに、視認しにくいアンテナ配線のみでアンテナ構成を構成した場合と比較して、配線抵抗を低くすることができる。つまり、アンテナの伝搬電流の損失を抑えて充分なアンテナ特性を確保することができる。
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態1の時計100は、表示窓を実現する開口101aを備えたケース101と、ケース101内に収容されて時刻を計時し、計時した時刻を表示窓側に表示するムーブメントと、光透過性を有する材料を用いて形成され、ケース101に設けられて表示窓を閉塞する風防109と、ケース101内の任意の位置に設けられた同心円状の複数のアンテナ配線111と、複数のアンテナ配線111のうちの少なくとも2本のアンテナ配線111に接触し、導電性を有する材料を文字または記号または図形の少なくともいずれかに成形した導電性部材301aによって任意の情報を表記する表記部112(たとえば、都市表示301、時差表示501(図5参照)、時刻を示す数字701(図7参照)など)と、を備えたことを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態1の時計100によれば、複数のアンテナ配線111どうしを表記部112を構成する導電性部材301aによって短絡し、同一の導電性部材301aに接触する複数のアンテナ配線111の電位を等しくすることができる。これにより、複数のアンテナ配線111と、これらのアンテナ配線111に接触する導電性部材301aとによって、アンテナ配線111どうしの間が導電性部材301aを残して中貫きとされた中貫きパターンのアンテナを構成することができる。
アンテナが受信する電波の周波数は当該アンテナの長さによって定まり、アンテナ配線111どうしの間にも導電性を有する材料を設けたベタパターンのアンテナにおいては、電波の受信に際して周縁部分に強い電流が流れる。このため、中貫きパターンのアンテナにおいても、ベタパターンのアンテナと比較して受信性能を低下させることなく、当該ベタパターンのアンテナと同じ周波数の電波を受信することができる。
このような中貫きパターンのアンテナにおける各アンテナ配線111を肉眼によって視認しにくい程度に細くすることにより、目視により認識可能なアンテナ配線111が存在することによって装飾性を低下させることなく、所望の周波数の電波を良好に受信することができる。これによって、この発明にかかる実施の形態の時計100によれば、装飾性の確保および受信性能(受信感度)の確保の両立を図ることができ、美観に優れ受信性能の良好な時計100を提供することができる。
また、この発明にかかる実施の形態1の時計100は、複数のアンテナ配線111が、それぞれ、風防109におけるムーブメント側すなわち風防109の裏面109aであって当該風防109の周縁部に設けられ、当該風防109の周縁に沿って周回する形状をなしており、表記部112が、風防109の裏面109aであって当該風防109の周縁部に設けられたことを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態1の時計100によれば、風防109の裏面109aであって当該風防109の周縁部にアンテナ配線111および表記部112を設けることにより、文字板103の表面側に表示される時刻の視認性を低下させることなく良好な受信性能を確保することができる。これにより、美観に優れ受信性能の良好な時計100を提供することができる。
また、この発明にかかる実施の形態1の時計100によれば、風防109の裏面109aにアンテナ配線111および表記部112を設けることにより、風防109によってアンテナ配線111および表記部112を保護することができ、アンテナ配線111および表記部112が外部からの衝撃などによって損傷することを防止できる。これにより、時計100の耐久性を確保することができる。
また、この発明にかかる実施の形態1の時計100は、アンテナ配線111および表記部112が、導電性を有する材料を、「アンテナ配線111」→「表記部112」の順で風防109に印刷することによって設けられていることを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態1の時計100によれば、風防109の裏面109aへの印刷によってアンテナ配線111および表記部112を設けることにより、高精度なアンテナ配線111および表記部112を容易に形成することができる。これにより、時計100の製造における製造者の負担軽減を図ることができる。
また、この発明にかかる実施の形態1の時計100は、表記部112が、複数の都市名または地域名を時差に基づいた順序で配列した都市表示301であることを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態1の時計100によれば、時計100の機能の実現に用いる都市表示301を導電性を有する材料を用いて形成し、表記部112とすることによって、第1のアンテナ配線302と第2のアンテナ配線303とを短絡するための部材を別途設けることなく、第1のアンテナ配線302と第2のアンテナ配線303とを短絡することができる。これにより、文字板103などの視認性が低下することを防止でき、美観に優れ受信性能の良好な時計100を提供することができる。
<実施の形態2>
つぎに、この発明にかかる実施の形態2の時計について説明する。実施の形態2においては、上述した実施の形態1と同一部分は同一符号で示し、説明を省略する。
図5は、この発明にかかる実施の形態2の時計が備える風防の構成を示す説明図である。図5においては、この発明にかかる実施の形態2の時計100が備える風防109を、時計100の正面から見た状態を示している。図5において、この発明にかかる実施の形態2の時計100が備える風防109は、裏面109aに、時差表示501が設けられている。時差表示501は、この発明にかかる実施の形態2の表記部112を実現する。
時差表示501は、上記の都市表示301と同様に、導電性を有する材料を用いて形成された導電性部材301aによって実現される。時差表示501をなす導電性部材301aは、たとえば、上記のような各種の技術を用いた印刷によって、風防109の裏面109aに設けられている。あるいは、時差表示501をなす導電性部材301aは、たとえば、金属製など導電性を有する材料を用いて形成されたエンブレムや、金属製など導電性を有する材料を用いて形成されたシート状部材をカッティングした部材などを風防109の裏面109aに貼り付けるなどして設けることによって実現してもよい。
時差表示501は、基準時であるUTCに対する時差の大きさを示す文字や数字を形成する導電性部材301aを、当該時差の大きさに基づいた順序で風防109の周縁部に沿って配列することにより構成されている。実施の形態2の時差表示501は、UTCに対する時差が小さいことを示す文字や数字を形成する導電性部材301aほど、12時の位置に近い位置に位置するように配列されている。時差表示501は、1周で24時間の時差をあらわす。具体的には、図5に示した時差表示501は、たとえば、12時の位置に表示されたUTCに対して、6時の位置に表示された時差が12時間であることを示している。
時差表示501をなす導電性部材301aは、文字板103や見返しリング104の色の反対色の材料を用いて形成する。これにより、時差表示501の良好な視認性を確保することができる。文字板103の色と見返しリング104の色とが異なる場合、時差表示501をなす導電性部材301aは、文字板103および見返しリング104のうち、指針106の軸心方向において時差表示501と重なる部分の色の反対色の材料を用いて形成することが好ましい。これにより、時差表示501の良好な視認性を確保することができる。
また、風防109の裏面109aには、アンテナ配線111が設けられている。この実施の形態2においては、もっとも外周側のアンテナ配線111である第1のアンテナ配線302と、当該第1のアンテナ配線302よりも内周側のアンテナ配線111である第2のアンテナ配線303と、が設けられている。アンテナ配線111のうち、時差表示501と重なる位置におけるアンテナ配線111の太さは、時差表示501が示す文字の太さ以下とされている。これにより、時差表示501と重なる位置におけるアンテナ配線111を時差表示501によって隠すことができ、使用者が文字板103を見る際に、時差表示501の下側からはみ出したアンテナ配線111が目視されることによって美観(審美性)が低下することを防止できる。
アンテナ配線111のうち、時差表示501と重ならない位置におけるアンテナ配線111の太さは、時差表示501が示す文字の太さよりも十分に細い太さとされている。具体的には、時差表示501と重ならない位置におけるアンテナ配線111の太さは、たとえば、30μm以下であることが好ましい。これにより、アンテナ配線111を見えづらくして、アンテナ配線111が目視されることによって美観(審美性)が低下することを防止できる。
アンテナ配線111と時差表示501とが接触する位置は、時差表示501がなす文字の上端および下端に限るものではない。アンテナ配線111の位置(第1のアンテナ配線302と第2のアンテナ配線303との間隔)は、時差表示501などの表記部112がなすパターンに応じて、たとえば、図6に示すように調整してもよい。
図6は、アンテナ配線111と時差表示501との位置関係を示す説明図である。図6において、アンテナ配線111は、時差表示501をなす導電性部材301aが示す文字と、当該文字の上下方向における中央付近で接触している。具体的に、図6に示した第2のアンテナ配線303は、図5に示した時差表示501における第2のアンテナ配線303よりも第1のアンテナ配線302に近い位置、すなわち、図5に示した時差表示501における第2のアンテナ配線303よりも外周縁側に設けられている。これにより、図6に示した第2のアンテナ配線303は、文字の上下方向における中央付近で接触している。
時差表示501において、時差表示501をなす導電性部材301aが示す文字の上下方向における中央付近には、「+」および「−」の記号が配置されている。このため、アンテナ配線111と時差表示501との接触位置を、時差表示501をなす導電性部材301aが示す文字の上下方向における中央付近とするように、第2のアンテナ配線303の位置を調整することにより、アンテナ配線111と時差表示501との接触位置を時差表示501がなす文字の上端および下端とする場合よりも、当該第2のアンテナ配線303と時差表示501をなす導電性部材301aとが重なる長さを多くすることができる。これによって、第1のアンテナ配線302と第2のアンテナ配線303とを確実に短絡させて、第1のアンテナ配線302と第2のアンテナ配線303との電位を確実に揃えるとともに、視認しにくい細さのアンテナ配線だけの構成と比較して、アンテナの配線抵抗を低くする、つまりは伝搬電流の損失を抑えて充分なアンテナ特性を得ることができる。
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態2の時計100は、基準時であるUTCに対する時差を示す時差表示501によって、この発明にかかる表記部112を実現することを特徴としている。
この発明にかかる実施の形態2の時計100によれば、時計100の機能の実現に用いる時差表示501を導電性を有する材料を用いて形成し、表記部112とすることによって、第1のアンテナ配線302と第2のアンテナ配線303とを短絡するための部材を別途設けることなく、第1のアンテナ配線302と第2のアンテナ配線303とを短絡することができる。これにより、文字板103などの視認性が低下することを防止でき、美観に優れ受信性能の良好な時計100を提供することができる。
<実施の形態3>
つぎに、この発明にかかる実施の形態3の時計100について説明する。実施の形態3においては、上述した実施の形態1および実施の形態2と同一部分は同一符号で示し、説明を省略する。
図7は、この発明にかかる実施の形態3の時計100が備える風防109の構成を示す説明図である。図7においては、この発明にかかる実施の形態3の風防109を、時計100の正面から見た状態を示している。
図7において、この発明にかかる実施の形態3の時計100は、上述した実施の形態1および実施の形態2の時計100の文字板103に設けられたインデックス107のうち、時刻を示す数字701が風防109に設けられている。時刻を示す数字701は、風防109の裏面109aに設けられている。時刻を示す数字701は、この発明にかかる実施の形態3の表記部112を実現する。
時刻を示す数字701は、上記の都市表示301や時差表示501と同様に、導電性を有する材料を用いて形成された導電性部材301aによって実現される。時刻を示す数字701を実現する導電性部材301aは、たとえば、上記のような各種の技術を用いた印刷によって、風防109の裏面109aに設けられている。あるいは、時刻を示す数字701を実現する導電性部材301aは、たとえば、金属製など導電性を有する材料を用いて形成されたエンブレムや、金属製など導電性を有する材料を用いて形成されたシート状部材をカッティングした部材などを風防109の裏面109aに貼り付けるなどして設けることによって実現してもよい。
時刻を示す数字701を実現する導電性部材301aは、文字板103や見返しリング104の色にかかわらず、時計100のデザインに応じて任意の色の材料を用いて形成することができる。時刻を示す数字701を実現する導電性部材301aは、良好な視認性を確保するため、文字板103や見返しリング104の色の反対色の材料を用いて形成することが好ましい。
また、文字板103の色と見返しリング104の色とが異なる場合、時刻を示す数字701を実現する導電性部材301aは、文字板103および見返しリング104のいずれの色に対しても反対色となる色の材料を用いて形成することが好ましい。これにより、時刻を示す数字701の良好な視認性を確保することができる。
また、風防109の裏面109aには、アンテナ配線111が設けられている。この実施の形態3においては、もっとも外周側のアンテナ配線111である第1のアンテナ配線302と、当該第1のアンテナ配線302よりも内周側のアンテナ配線111である第2のアンテナ配線303と、が設けられている。
時刻を示す数字701は、上述した都市表示301や時差表示501をなす文字どうしの間隔と比較して、数字どうしの間隔が大きく、数字どうしが離れて設けられている。このため、上述した実施の形態1や実施の形態2と比較して、第1のアンテナ配線302と第2のアンテナ配線303とが短絡される箇所が少ない。第1のアンテナ配線302と第2のアンテナ配線303とが短絡される箇所が少ないと、配線抵抗の差による電位差が顕著となりアンテナ特性に影響を与えてしまう。
実施の形態3の時計100は、第1のアンテナ配線302と第2のアンテナ配線303との間に設けられたメッシュ配線702を備えている。メッシュ配線702は、たとえば金属などの導電性を有する材料によって形成されている。メッシュ配線702は、第1のアンテナ配線302と第2のアンテナ配線303との間において、複数、メッシュ状(網目状)に設けられている。メッシュ配線702は、第1のアンテナ配線302と第2のアンテナ配線303とを短絡する。
メッシュ配線702は、文字板103や見返しリング104と同系色の材料を用いて形成する。また、メッシュを構成するメッシュ配線702のそれぞれの太さは、たとえば、30μm以下であることが好ましい。これにより、メッシュ配線702を見えづらくして、メッシュ配線702が目視されることによって美観(審美性)が低下することを防止できる。
メッシュ配線702は、導電性部材301aを風防109の裏面109aに印刷することによって設けられている。この場合、時計100の製造に際しては、風防109の裏面109aに対して時刻を示す数字701を先に印刷し、つぎにアンテナ配線111およびメッシュ配線702を印刷する。
アンテナ配線111とメッシュ配線702とは、それぞれ別工程において印刷してもよく、アンテナ配線111およびメッシュ配線702のパターンが設けられた版を用いて、アンテナ配線111とメッシュ配線702とを同時に風防109の裏面109aに印刷してもよい。これにより、都市表示301とアンテナ配線111とを重複する位置に設ける場合にも、都市表示301の視認性を確保することができる。
時刻を示す数字701のように、文字どうしの間隔が大きい(広い)場合、表記部112をなす導電性部材301aに加えてメッシュ配線702によって第1のアンテナ配線302と第2のアンテナ配線303とを短絡することにより、アンテナにおける抵抗値の増加を抑え、良好な受信性能を確保するとともに、アンテナ配線111を視認しにくくすることができる。
実施の形態3においては、メッシュ配線702によって第1のアンテナ配線302と第2のアンテナ配線303とを短絡する時計100について説明したが、第1のアンテナ配線302と第2のアンテナ配線303とを短絡する部材は、メッシュ配線702に限るものではない。メッシュ配線702に代えて、メッシュパターンで設けた透明電極によって第1のアンテナ配線302と第2のアンテナ配線303とを短絡するようにしてもよい。
透明電極は、たとえば、ワイドギャップ半導体などを材料として用いることができる。ワイドギャップ半導体は、エネルギーギャップが紫外域に対応するため可視光を吸収せず、これによって透明となる。透明電極を用いて第1のアンテナ配線302と第2のアンテナ配線303とを短絡することによって、アンテナにおける抵抗値の増加を抑え、良好な受信性能を確保することができる。
この場合も、アンテナ配線111、すなわち、周回部およびメッシュ部を、導電性を有し、文字板103や見返しリング104と同系色の材料を用いて形成する。これにより、周回部やメッシュ部の視認性を低くし、かつ、良好な受信性能を確保することができる。このように、アンテナ配線111を周回部とメッシュ部とによって構成することにより、装飾性の低下を抑えて、周回部どうしの電位差を確実になくすことができる。これにより、美観に優れ受信性能の良好な時計100を提供することができる。
なお、上述した実施の形態1〜3においては、アンテナ配線111は第1のアンテナ配線302と第2のアンテナ配線303とで構成される説明としたが、これに限定することはなく3本以上のアンテナ配線で構成されてもよく、アンテナ配線111の本数を増やすことによって、より配線抵抗を低くすることができる。ただし、アンテナ配線111を視認しにくくするためにも本数は少ないことが好ましく、上述の構成のように外周と内周の2本であることがより好ましい。
また、第1のアンテナ配線302および第2のアンテナ配線303の形状を同心円状であるとして説明をしたが、必ずしもこれに限定されず、表記部112の大きさ、形状またはデザインによっては、部分的に変形させた略同心円状としてもよく、アンテナとしての特性が得られる範囲において適宜選択することができる。
また、アンテナ配線111(第1のアンテナ配線302や第2のアンテナ配線303など)、および、表記部112(都市表示301、時差表示501、時刻をあらわす数字701など)を、風防109の裏面109aに設ける例について説明したが、これらを設ける位置は風防109の裏面109aに限るものではない。ケース内の任意の位置であればどこでもよく、たとえば、文字板103(見返しリング104を含む)の表面(風防109に対向する側の面)に設けてもよい。この場合、文字板103の表面にアンテナ配線111を形成し、次に表記部112である導電性部材301aを形成するのが好ましい。これによっても、文字板103に設けられたインデックス107などの視認性を低下させることなく、美観に優れ受信性能の良好な時計を提供することができる。
上述した実施の形態1〜3においては、この発明にかかる実施の形態として、時刻を示す指針106を備え、当該指針106を用いて時刻や各種の情報を表示する時計100に適用した例について説明したが、この発明にかかる実施の形態を実現する時計においては指針によって時刻や各種の情報表示するものに限らない。この発明にかかる時計は、時刻や各種の情報を、指針に代えて、液晶表示によって表示する時計によって実現してもよく、指針および液晶表示の両方を備えた時計によって実現してもよい。