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JP2016161522A - 放射線の検出方法及びコンプトンカメラ - Google Patents

放射線の検出方法及びコンプトンカメラ Download PDF

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JP2016161522A JP2015043067A JP2015043067A JP2016161522A JP 2016161522 A JP2016161522 A JP 2016161522A JP 2015043067 A JP2015043067 A JP 2015043067A JP 2015043067 A JP2015043067 A JP 2015043067A JP 2016161522 A JP2016161522 A JP 2016161522A
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秀利 窪
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Abstract

【課題】検出器内コンプトン散乱による多重検出や偶発同時多重検出等により複数位置でほぼ同時にエネルギーが検出された場合でも、放射線の最初の到達位置について、より正しい情報を得られる技術を提供する。【解決手段】コンプトン散乱された放射線301の到達位置とエネルギーを放射線検出器102で検出する放射線の検出方法である。コンプトン散乱により反跳電子304を発生した散乱点と、反跳電子の反跳方向と、反跳電子のエネルギーを電子検出手段203で検出する。反跳方向と散乱方向の成す角を開き角αとして、放射線検出器内の複数箇所でほぼ同時に散乱された放射線のものと思われるエネルギーを検出した場合、反跳電子のエネルギー及び放射線のエネルギーから求めた第1の開き角αkinと、放射線の検出位置と散乱点と反跳方向より求めた第2の開き角αgeoを用いて、放射線の最初の到達位置を判定する。【選択図】図3

Description

本発明は、コンプトン散乱したガンマ線などの放射線の検出方法、及びそれを利用して放射線源から放出されるガンマ線などの放射線の入射方向を測定するコンプトンカメラなどに関する。
コンプトンカメラは、入射したガンマ線の光子をコンプトン散乱させるための散乱体と、コンプトン散乱により生じた散乱ガンマ線を検出するガンマ線検出器と、コンプトン散乱により生じた反跳電子を検出する電子検出器と、を備える。ガンマ線検出器は、散乱ガンマ線のエネルギーと到達位置とを検出し、また電子検出器は、コンプトン散乱点と反跳電子のエネルギーとを検出する。さらに、個々のコンプトン散乱事象で得たこれらの検出情報から、入射ガンマ線の光子毎にその入射方向を算出し、多数の光子の入射方向の情報から放射線源の放射能の分布を画像として再構成する。
また、前記の各検出情報に加え、電子検出器により散乱体中での反跳電子の飛跡も検出し、その情報も合わせて利用して入射ガンマ線の入射方向を算出するアドバンストコンプトンカメラが提案されている(非特許文献1参照)。
アドバンストコンプトンカメラにおいては、個々のコンプトン散乱事象について検出したコンプトン散乱点と散乱ガンマ線の到達位置からガンマ線の散乱方向ベクトルg(単位ベクトル)を算出する。また、計測した反跳電子の飛跡情報から電子の反跳方向ベクトルe(単位ベクトル)を算出する。さらに、検出した反跳電子のエネルギーKeと散乱ガンマ線のエネルギーEγをもとに、以下の式(1)により入射ガンマ線の入射方向ベクトルs(単位ベクトル)を算出する。
s=(cosφ−sinφ/tanα)g+(sinφ/sinα)e (1)
ここで、φは入射方向ベクトルsと散乱方向ベクトルgの成す角、αは反跳方向ベクトルeと散乱方向ベクトルgの成す角であり、以下の式(2)及び(3)によって算出することができる。なお、mは電子の静止質量、cは光速である。
φ=cos−1[(1−{mc/(Eγ+Ke)}(Ke/Eγ)] (2)
α=cos−1[(1−mc/Eγ){Ke/(Ke+2mc)}1/2] (3)
このようなアドバンストコンプトンカメラは、一般的に、電子の飛跡情報を利用しない従来のコンプトンカメラに比べて測定精度が高いという特徴を有する。
コンプトンカメラで使用するガンマ線検出器は、ガンマ線の吸収位置とエネルギーの両方が検出可能なピクセル型の検出器であり、一般的には光電吸収部材(シンチレータ)が用いられる。散乱体中でコンプトン散乱された散乱ガンマ線は検出器内(光電吸収部材)で光電吸収された場合、吸収位置にあたるピクセルで全てのエネルギーが検出されてその位置も特定できる。
米国特許第6512232号 特開2010−02235号公報
上記の如きコンプトンカメラが測定対象とするガンマ線は、100keV〜10MeVのエネルギーを有するガンマ線である。この程度のエネルギー帯域においては、一般的に、エネルギーが高いほど、光電吸収される割合に対してコンプトン散乱される割合が相対的に増加する。ガンマ線は散乱体中でコンプトン散乱により一部のエネルギーは失うが、なお十分に大きなエネルギーを持つため、ガンマ線検出器(光電吸収部材)内で再びコンプトン散乱を生じる確率が比較的高い。このような検出器内コンプトン散乱が発生すると、散乱位置にあたるピクセルにおいてはガンマ線の一部のエネルギーが検出される。そして再び散乱されたガンマ線が他の位置で光電吸収されると、吸収位置にあたるピクセルにおいて残りのエネルギーが検出されるいわゆる多重検出となる。多重検出は検出器の時間分解能よりも短い時間間隔でほぼ同時に発生するため、時間差により、発生の順番を区別することは容易ではない。
さらには、あるコンプトン散乱事象に起因して発生した散乱ガンマ線と他の無関係なガンマ線が、ガンマ線検出器の異なるピクセルで偶発的にほぼ同時に検出されるいわゆる偶発同時多重検出が発生する場合もある。無関係なガンマ線は、測定対象物から放出されるもの以外に宇宙線などもある。
コンプトンカメラにおいて、前述の式(1)、(2)、(3)を用いて或るコンプトン散乱事象における入射ガンマ線の入射方向ベクトルsを算出するためには、次のことが必要である。即ち、散乱ガンマ線に関する検出情報、即ちエネルギーEγと散乱方向ベクトルgを、同一のコンプトン散乱事象において検出した反跳電子のエネルギーKeと反跳方向ベクトルeと組み合わせることが必須である。
しかし、前述した検出器内コンプトン散乱による多重検出や偶発同時多重検出のように、同時にガンマ線検出器の複数の位置でエネルギーが検出された場合、複数の検出値のいずれが散乱ガンマ線の最初の到達位置に対応するかを特定することができない。そのため、入射ガンマ線の入射方向ベクトルsを算出することができない。特に、入射ガンマ線のエネルギーが500keV以上では、検出器内コンプトン散乱による多重検出が増加し、有効な検出情報が減少する。故に、放射能の分布画像の再構成に必要な十分なデータ数を得るために、より長時間の測定が必要となる(つまり、検出感度が低下する)。
これに対して、特許文献1には、次の原理を用いて、最初に検出器に到達した位置を推定する方法が開示されている。即ち、ガンマ線検出器で多重検出があった場合、仮に検出器内コンプトン散乱を生じたのであれば、散乱によりガンマ線が失う(検出器が検出する)エネルギーは散乱ガンマ線の残りのエネルギーよりも確率的に小さくなるという原理を用いる。しかし、この方法は検出器内コンプトン散乱を前提としており、偶発同時多重検出には適用できない。また、検出器内コンプトン散乱後の散乱ガンマ線が最終的に検出器内で光電吸収されなかった場合、その判定ができない。その結果、検出したエネルギーは不正確となり、そのエネルギー情報を用いて算出したガンマ線の入射方向に関する不正確な情報は、放射能の分布を再構成するデータにおいてノイズとなる。
また特許文献2には、PET(Positron Emission Tomography)において、検出器内コンプトン散乱による多重検出が発生した場合のガンマ線の最初の到達位置を判定する方法が開示されている。しかし、この方法は、判定の対象とするガンマ線のエネルギーが511keVであることを前提としている。従って、コンプトンカメラにおける判定のように、散乱体で一度コンプトン散乱され、そのエネルギーが不定である散乱ガンマ線の判定には適用することができない。
本発明によるガンマ線などの放射線の検出方法は、散乱体によりコンプトン散乱された放射線の到達位置とエネルギーを放射線検出器によって検出するガンマ線などの放射線の検出方法である。そして、コンプトン散乱により反跳電子を発生した散乱点と、反跳電子の反跳方向と、反跳電子のエネルギーを電子検出手段により検出し、反跳電子の反跳方向と放射線の散乱方向の成す角を開き角αとしたときに、放射線検出器内の複数箇所でほぼ同時に前記散乱された放射線のものと推定されるエネルギーを検出した場合には、検出した反跳電子のエネルギー及び放射線のエネルギーから求めた第1の開き角αkinと、放射線の検出位置と散乱点と反跳方向より求めた第2の開き角αgeoの両方を用いて、放射線の放射線検出器への最初の到達位置を判定する。
また、本発明のコンプトンカメラは、散乱体、電子検出器、及び放射線検出器を備え、散乱体によりコンプトン散乱された放射線の到達位置とエネルギーを放射線検出器によって検出し、コンプトン散乱により反跳電子を発生した散乱点と反跳電子の反跳方向と反跳電子のエネルギーを電子検出器により検出し、検出した放射線の到達位置とエネルギーの情報、検出した散乱点、及び反跳電子の反跳方向とエネルギーの情報から放射線の入射方向を求める。そして、反跳電子の反跳方向と放射線の散乱方向の成す角を開き角αとしたときに、放射線検出器内の複数箇所でほぼ同時に前記散乱された放射線のものと推定されるエネルギーを検出した場合には、検出した反跳電子のエネルギー及び放射線のエネルギーから求めた第1の開き角αkinと、放射線の検出位置と検出した散乱点と検出した反跳方向とから求めた第2の開き角αgeoの両方を用いて、放射線の放射線検出器への最初の到達位置を判定する。
本発明によれば、放射線検出器で、検出器内コンプトン散乱による多重検出や偶発同時多重検出などにより複数位置でほぼ同時にエネルギーが検出された場合でも、放射線の最初の到達位置について、より正しい情報を得ることができる。
コンプトンカメラの構成例を示す図。 μTPCの構造例を示す図。 μTPCの動作を説明する図。 μPICの構成例を示す図。 本発明によるガンマ線の検出方法における判定処理例のフローチャート。 反跳電子のエネルギーと散乱ガンマ線のエネルギーの測定値に対する真値の確率密度分布を示す図。 αの真値の確率密度分布及び判定方法例を説明する図。
本発明では、コンプトン散乱点と、反跳電子の反跳方向と、反跳電子のエネルギーを検出し、放射線検出器内の複数箇所でほぼ同時に散乱された放射線のものと推定されるエネルギーを検出した場合、次のようにする。反跳方向と散乱方向の成す角を開き角αとして、反跳電子のエネルギー及び放射線のエネルギーから求めた第1の開き角αkinと、散乱放射線の検出位置と散乱点と反跳方向より求めた第2の開き角αgeoを用いて、放射線の最初の到達位置を判定する。この判定に基づいて、αを求め、これとともに、前述の式(2)のφ、散乱方向ベクトルg、反跳方向ベクトルeを用いて、入射放射線の入射方向ベクトルsを求める。
以下、図面を参照して実施形態を説明する。以下の説明では、放射線はガンマ線であるとして説明するが、コンプトン散乱を起こすのに十分なエネルギーを有するX線など、その他の放射線であっても計測原理は同じである。また、本発明は以下の実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
図1にコンプトンカメラの構成例を示す。このコンプトンカメラは図示するように電子検出器であるμTPC(Micro Time Projection Chamber)101、及び放射線検出器であるガンマ線検出器102を備える。また、103は測定対象である放射線源、104は放射線源から放射されμTPC101に入射した入射ガンマ線である。μTPC101の構成を、図2(a)に斜視図により、また図2(b)に断面図により示す。μTPC101内は散乱体202としてのアルゴンガス等で満たされ、その上面には導電材料からなるドリフトプレーン201が備えられている。μTPC101は、コンプトン散乱により発生した反跳電子により発生した電離電子を、電子雪崩現象を用いて増幅し、反跳電子の飛跡を検出する電子飛跡検出部である後述するμPICを備える。また、ガス部などの散乱体を介して電子飛跡検出部の電極(第一電極)と対向する電極(第二電極)であるドリフトプレーン201を、電子飛跡検出部の電極に対して負電位として電界を印加する電界印加部を備える。側面には、ドリフトプレーン201に平行に導体線205が等間隔で多段に巻かれている。各導体線205間、及びドリフトプレーン201と最上段の導体線205との間には、抵抗204が接続されている。ドリフトプレーン201と最下段の導体線205の間には電源206によりDC電圧が印加され、このDC電圧が抵抗204により分圧されて各導体線205に印加される。これにより、μTPC101の内部には矢印Eで示す方向の均一な電場が発生する。μTPC101の底部には、電子検出器203としてのμPIC(Micro Pixel Gas Chamber)が配置されている。
次に、μTPC101の動作について図3により説明する。放射線源103から放出されμTPC101に入射した入射ガンマ線104の光子は、散乱体202が含むガス分子302の持つ電子と、相互作用であるコンプトン散乱を起こし、その結果、散乱ガンマ線301と、電離した反跳電子304とを発生する。この反跳電子304は、次々に他のガス分子から電子を電離しながら散乱体202の中を進んでいく。このようにして反跳電子304の飛跡に沿って発生した多数の電離電子は、電子雲303(線状の電子の集団)を形成する。電子雲303は、矢印Eで示すμTPC101内の均一な電場によって、その形状を保ったまま電子検出器203まで等速度でドリフトする。
図4(a)に、電子検出器203であるμPICの上面図を、図4(b)に、一部分を拡大した斜視図を示す。μPICは、誘電体材料からなる基板406、基板406の裏面に等間隔で形成した多数のアノードストリップ401、及び基板406の表面に等間隔でアノードストリップと直交する方向に形成した多数のカソードストリップ402を有する。カソードストリップ402には等間隔で円形の開口が形成され、この開口の周縁部がカソード電極404とされる。また裏面のアノードストリップ401には、等間隔で細い円柱状のアノード電極403が絶縁基板を貫通するように立設され、カソードストリップ402に形成された開口の中心部に露出する。アノードストリップとカソードストリップの間には電源405により高いDC電圧が印加され、その結果、アノード電極403とカソード電極404の間には強電界が発生する。
ドリフトして電子検出器203(μPIC)に到達した電子雲303を構成する電離電子は、アノード電極403とカソード電極404の間の強電界によって急激に加速され、ガス分子より雪崩式に多数の電離電子と陽イオンを発生させる(ガス増幅作用)。発生した電離電子はアノード電極403に集中して吸収され、陽イオンはカソード電極404に集中して、電荷が中和される。
ここで、アノードストリップ401とカソードストリップ402は互いに直交するように形成されている。よって、電離電子による負電荷が検出されたアノードストリップと陽イオンによる正電荷が検出されたカソードストリップとの位置から、電子雲303、即ちコンプトン散乱点を一端とする反跳電子の飛跡の電子検出器203に平行な面内の2次元位置が検出できる。
さらに電子雲303のドリフト速度と、ガンマ線検出器102による散乱ガンマ線の検出から電子検出器203による電子雲303の検出までの時間差とから、電子雲303のドリフト距離、即ち電子検出器203から垂直な方向の距離が検出できる。このようにして、コンプトン散乱点及び反跳電子の飛跡の3次元の位置情報が得られる。
ドリフト速度は、電子とガス分子の衝突の平均時間間隔と電場の大きさの積に比例する一定値である。μTPC101内で生じた多数のコンプトン散乱で発生した多数の電離電子のドリフト時間を計測しこれを度数分布で表したとき、次のようになる。即ち、分布の上端(最大ドリフト時間)は、最大ドリフト距離であるドリフトプレーン201から電子検出器203までのドリフト時間に対応している。そこで、ドリフトプレーン201から電子検出器203までの距離をL、最大ドリフト時間をTmaxとしたとき、ドリフト速度はL/Tmaxより求めることができる。
ここで反跳電子のエネルギーKeは、反跳電子が停止するまでに発生した電離電子に付与した全てのエネルギーの合計であり、電子検出器203が電子雲303から検出した総電荷量から算出することができる。この時の比例係数は、事前に、エネルギーと検出電荷量の関係からキャリブレーションによって求めておくことができる。
一方、図3に示すように、コンプトン散乱により入射ガンマ線104とは異なる方向に散乱された散乱ガンマ線301は電子検出器203を透過し、ガンマ線検出器102によって検出される。ガンマ線検出器102は散乱ガンマ線301の吸収位置とエネルギーの両方が検出可能なピクセル型の検出器である。一般的には、このような検出器として、格子状に並べられた光電吸収部材(シンチレータ)とピクセル型の光電変換器(光電子増倍管やアバランシェフォトダイオード)を組み合わせて使用する。シンチレータは、ガンマ線のエネルギーを可視または紫外光に変換し、光電変換器はこれを電気的なエネルギーに変換する。このような検出器以外にも、ガンマ線のエネルギーを直接電気的なエネルギーに変換する半導体素子を用いることもできる。コンプトンカメラが検出の対象とするガンマ線のエネルギーは比較的高いため、ガンマ線の吸収能力の高い吸収部材を使用することが望ましい。散乱ガンマ線301は、ガンマ線検出器102(光電吸収部材)内で光電吸収された場合、吸収位置のピクセルで全てのエネルギーが検出され、その位置も特定できる。
このようにして、入射ガンマ線104の個々の光子のコンプトン散乱事象について計測したコンプトン散乱点と散乱ガンマ線301の到達位置から散乱方向ベクトルg(単位ベクトル)を算出する。また、計測した電子の飛跡情報から反跳電子304の反跳方向ベクトルe(単位ベクトル)を算出する。さらに、計測した反跳電子304のエネルギーKeと散乱ガンマ線301のエネルギーEγをもとに、前述の式(1)、(2)、(3)により入射ガンマ線104の入射方向ベクトルs(単位ベクトル)を算出する。ここで、正しい入射方向ベクトルsを算出するためには、次のことが必須である。つまり、散乱ガンマ線301に関する正しい検出情報、即ちエネルギーEγと散乱方向ベクトルgを、それと同一のコンプトン散乱事象において検出した反跳電子304のエネルギーKe及び反跳方向ベクトルeと組み合わせることが必須である。
しかし実際には、前述した検出器内コンプトン散乱による多重検出や偶発同時多重検出のように、ほぼ同時に(言い換えれば、検出器の時間分解能以下の時間間隔で)ガンマ線検出器の複数の位置でエネルギーが検出される場合がある。例えば、次のような場合である。
(1)検出対象である入射ガンマ線104が散乱体によりコンプトン散乱され、更に散乱ガンマ線301がガンマ線検出器102内で再度、1回または2回以上異なる位置でコンプトン散乱され、最終的に検出器内の他の位置で光電吸収される。これは、検出器内コンプトン散乱による多重検出である。図3には、この現象を説明するため、ガンマ線検出器102内でコンプトン散乱されたガンマ線を破線で描いた。
(2)検出対象である散乱ガンマ線301の検出とほぼ同時に、偶発的に他の無関係なガンマ線(散乱体でコンプトン散乱されずに透過したガンマ線や宇宙線など)がガンマ線検出器102内の他の位置で検出される。これは偶発同時多重検出である。
(3)複数の検出対象である入射ガンマ線104(光子)が散乱体によりほぼ同時にコンプトン散乱され、複数の散乱ガンマ線301がそれぞれガンマ線検出器102内の異なる位置で検出される。これは、複数の別個の検出対象である入射ガンマ線の偶発同時多重検出である。
さらに(1)、(2)、(3)のうちの2以上が複合して発生する場合も考えられる。本発明においては、このような多重検出の際に、検出された複数の検出位置及びエネルギーの情報のいずれを反跳電子の検出情報と組み合わせるべきであるかを判定する。そのために、2つの計算式を用いて反跳方向ベクトルeと散乱方向ベクトルgの成す角αを計算し、その結果を比較する。
計算式のひとつは前述の式(3)である。この式によれば、検出した反跳電子のエネルギーKeと散乱ガンマ線のエネルギーEγから運動学的にαが算出できる。式(3)により運動学的に求めた角αを本明細書では第1の開き角αkinとする。
もうひとつの計算式は次の式(4)である。
α=cos−1(g・e) (4)
この式によれば、検出した反跳方向ベクトルeと散乱方向ベクトルgから幾何学的にαが算出できる。式(4)により幾何学的に求めた角αを本明細書では第2の開き角αgeoとする。
散乱方向ベクトルg、反跳方向ベクトルe、反跳電子のエネルギーKe、及び散乱ガンマ線のエネルギーEγが全て同一のコンプトン散乱事象の結果のものであるとする。この場合、式(3)で得られる第1の開き角αkinと式(4)で得られる第2の開き角αgeoは一致する。
一例として、ガンマ線検出器の異なる2箇所(ピクセルPgとPg)で夫々エネルギーEγとEγを有する光子がほぼ同時に検出され、一方これと同時に検出された反跳電子は1つのみでそのエネルギーはKeであった場合の判定方法を説明する。この場合、2つのガンマ線の検出のいずれか一方は無関係なガンマ線の検出(偶発同時多重検出)の可能性がある。そこでまず、式(3)においてEγ=Eγとして第1の開き角αkin1を計算し、Eγ=Eγとして第1の開き角αkin2を計算する。次に、コンプトン散乱点よりピクセルPgに向かう散乱方向ベクトルgとコンプトン散乱点よりピクセルPgに向かう散乱方向ベクトルgの2つを仮定し、それぞれについて式(4)により第2の開き角αgeo1と第2の開き角αgeo2を計算する。そして、第1の開き角αkin1は第2の開き角αgeo1と、第1の開き角αkin2は第2の開き角αgeo2とそれぞれ比較する。検出した反跳電子と同一のコンプトン散乱事象から発生した散乱ガンマ線であれば、第1の開き角αkinと第2の開き角αgeoは一致するはずである。そこで、一致した方のαの基となるピクセルを散乱γ線の到達位置であるとする。
しかし双方とも一致しないときには、偶発同時多重検出ではなく、いずれか一方のピクセルで先にコンプトン散乱し、次に他方のピクセルで光電吸収した多重検出の可能性がある。その場合には、2箇所で検出したエネルギーEγとEγの合計が散乱ガンマ線のエネルギーEγとなる。そこで、式(3)により、Eγ=Eγ+Eγとして第1の開き角αkinを計算する。これを、式(4)により計算した第2の開き角αgeo1及び第2の開き角αgeo2と比較し、一致した方のαの基となるピクセルを散乱ガンマ線の到達位置であるとする。
この手順は、ガンマ線検出器の異なる3箇所以上で同時検出した場合にも拡張して適用することができる。このような場合も含めた判定方法について説明する。図5に判定処理のフローチャートを示す。
ほぼ同時にガンマ線のエネルギーをN箇所(ピクセルPg、Pg‥Pg、N≧2)で検出した場合を考える。この場合、検出した反跳電子と同一のコンプトン散乱事象から発生した散乱ガンマ線の検出は、そのうちのn箇所(1≦n≦N)であり、残りは無関係なガンマ線の検出(偶発同時多重検出)であるとする。最初にn=1とする。即ち、散乱ガンマ線は最初の到達位置で光電吸収されたものと仮定する。次にピクセルPg、Pg‥Pgの中のn個(1個)から成る1つの組み合わせを選択する。最初はn=1なので例えば1つのピクセルPgを選択する。さらに、以下のステップ1〜3を実行する。なお図5においてステップ1は501、ステップ2は502、ステップ3は503で示す。
[ステップ1(1回目)]
選択した組み合わせに含まれるn個(1個)のピクセルで検出されたエネルギーの総和を計算しこれをEγとする。最初はピクセルPgで検出されたエネルギーEγをEγとする。このエネルギーEγを用いて式(3)より第1の開き角αkin1を計算する。
[ステップ2(1回目)]
選択した組み合わせに含まれるn個(1個)のピクセルから1つを選択する。最初はピクセルPgを選択する。次に、コンプトン散乱点より、選択したピクセルPgに向かう散乱方向ベクトルgを求める。この散乱方向ベクトルgを用い式(4)により第2の開き角αgeo1を計算する。
[ステップ3(1回目)]
ステップ1で求めた第1の開き角αkin1とステップ2で求めた第2の開き角αgeo1とを比較する。両者が一致した場合は、このαの基となるピクセルPgを散乱γ線の最初の到達位置であると判定し、一致しない場合は散乱γ線の最初の到達位置ではないと判定する。ステップ3で散乱γ線の最初の到達位置と判定されなかった場合、選択したn個のピクセルの組み合わせに含まれる全てのピクセルについて判定が終了しているか確認する。そして、終了していなければ、選択した組み合わせに含まれる他のピクセルを選択し直し、再びステップ2とステップ3を繰り返す。ただし、最初はn=1なのでステップ1〜3は1回で判定が終了する。
またn個すべてのピクセルについて判定が終了している場合、まずn個のピクセルから成る全ての組み合わせについて判定が終了しているか確認し、終了していなければ、n個のピクセルの組み合わせを変更し、再びステップ1〜3を繰り返す。またn個のピクセルから成る全ての組み合わせについて判定が終了している場合、nを1増加して新たに1つのピクセルの組み合わせを選択し、再びステップ1〜3を繰り返す。最初はn=1なのでステップ1〜3は1回で判定が終了する。
n=1として選択したピクセルPgが散乱γ線の最初の到達位置であり、光電吸収されたのではないと判定された場合にはn=2とする。即ち、散乱ガンマ線は最初の到達位置でコンプトン散乱され、次に他のピクセルで光電吸収されたものと仮定する。そこでピクセルPg、Pg‥Pgの中の2つから成る組み合わせ、例えばピクセルPgとPgの組み合わせを選択する。さらに以下のステップ1〜3を実行する。
[ステップ1(2回目)]
選択した組み合わせに含まれるn個(2個)のピクセルで検出されたエネルギーの総和を計算しこれをEγとする。ここではピクセルPgとPgで検出したエネルギーの合計Eγ+EγをEγとする。このエネルギーEγを用い式(3)より第1の開き角αkin1+2を計算する。
[ステップ2(2回目)]
選択した組み合わせに含まれるn個(2個)のピクセルから1つを選択する。まずピクセルPgを選択する。次にコンプトン散乱点より選択したピクセルPgに向かう散乱方向ベクトルgを求める。この散乱方向ベクトルgを用い式(4)により第2の開き角αgeo1を計算する。
[ステップ3(2回目)]
ステップ1で求めた第1の開き角αkin1+2とステップ2(2回目)で求めた第2の開き角αgeo1とを比較する。両者が一致した場合はこのαの基となるピクセルPgを散乱γ線の最初の到達位置であると判定し、一致ない場合は散乱γ線の最初の到達位置ではないと判定する。ステップ3で散乱γ線の最初の到達位置と判定されなかった場合、ステップ2を繰り返す。
[ステップ2(3回目)]
選択した組み合わせに含まれるn個(2個)のピクセルから他の1つ、即ちピクセルPgを選択し直す。次に、コンプトン散乱点より選択したピクセルPgに向かう散乱方向ベクトルgを求める。この散乱方向ベクトルgを用い、式(4)により第2の開き角αgeo2を計算する。
[ステップ3(3回目)]
ステップ1で求めた第1の開き角αkin1+2とステップ2(3回目)で求めた第2の開き角αgeo2とを比較する。両者が一致した場合はこのαの基となるピクセルPgを散乱γ線の最初の到達位置であると判定し、一致しない場合は散乱γ線の最初の到達位置ではないと判定する。
ここで選択したn個(2個)のピクセルの組み合わせに含まれる全てのピクセルについて判定が終了しているか確認し、終了していなければ選択した組み合わせに含まれる他のピクセルを選択し直し、再びステップ2とステップ3を繰り返す。またn個(2個)すべてのピクセルについて判定が終了している場合、まずn個(2個)のピクセルから成る全ての組み合わせについて判定が終了しているか確認する。そして、終了していなければn個(2個)のピクセルの組み合わせを変更し、再びステップ1〜3を繰り返す。
またn個(2個)のピクセルから成る全ての組み合わせについて判定が終了している場合、nを1増加して新たに1つのピクセルの組み合わせを選択し、再びステップ1〜3を繰り返す。n=2として選択した全ての2つのピクセルの組み合わせにおいて第1の開き角αkinと第2の開き角αgeoが一致しない場合には、n=3とする。即ち、散乱ガンマ線は最初の到達位置でコンプトン散乱され、さらにもう一度他のピクセルでコンプトン散乱された後、最後に他のピクセルで光電吸収されたものと仮定する。そこで、ピクセルPg、Pg‥Pgの中から3つの組み合わせを選択し、n=2の場合と同様にして判定を繰り返し行う。このようにして、nをNまで1ずつ増加させながら第1の開き角αkinと第2の開き角αgeoが一致するまで判定を繰り返す。
n=1〜Nの全ての組み合わせで第1の開き角αkinと第2の開き角αgeoが一致しない場合、散乱ガンマ線のエネルギーEγが不明であるため、前述の式(1)〜(3)によりガンマ線の入射方向ベクトルsを求めることはできない。そのため、検出結果は無効データとして破棄する。こうすれば、散乱ガンマ線がガンマ線検出器内で最終的に光電吸収されなかった場合などで、散乱ガンマ線に関する不正確な情報を排除することができる。従って、放射能の分布を再構成するデータにおいてノイズを低減することができる。
以上のようにして、一致したαを求め、これに加えて、前述の式(2)で算出されるφ、散乱方向ベクトルg、コンプトン散乱点からの反跳方向ベクトルeを用いて、前述の式(1)から入射ガンマ線の入射方向ベクトルsを求める。散乱方向ベクトルgは、上述した如く求まったコンプトン散乱点と散乱γ線の最初の到達位置とから求められる。
次に、測定誤差を考慮した第1の開き角αkinと第2の開き角αgeo の一致判定について説明する。反跳電子のエネルギー、反跳電子の検出位置、散乱ガンマ線のエネルギー及び散乱ガンマ線の検出位置の測定誤差は事前に装置固有の特性として実測することが可能である。ここで、実測による反跳電子のエネルギーの測定誤差の標準偏差がσEeの正規分布、飛跡の方向の測定誤差の標準偏差がσAeの正規分布であることが予め確認されているものとする。また、ガンマ線のエネルギーの測定誤差の標準偏差がσEgの正規分布、ガンマ線の検出位置の測定誤差の標準偏差がσAgの正規分布であることも予め確認されているものとする。この場合、ある測定値に対して真値の確率密度分布は、測定値を平均値とし、上記の標準偏差を持つ正規分布に従うと考えられる。
例えば、反跳電子のエネルギーKeの或る測定値に対して真値の確率密度分布は図6(a)に示すようなものとなり、散乱ガンマ線のエネルギーEγの或る測定値に対する真値の確率密度分布は図6(b)に示すようなものとなる。また、これらの測定値を用い前記の式(3)から運動学的に求めた第1の開き角αkinに対する真値の確率密度分布は図7(a)に示すようなものとなる。このときの標準偏差σkinは、計測器の性質などに応じて決められる。一方、幾何学的に求めた第2の開き角αgeoに対する真値の確率密度分布は式(4)から求めた算出値を平均値としσgeo=(σAe 2+σAg 21/2を標準偏差とする正規分布であり、図7(b)に示すようなものとなる。
ここで第1の開き角αkinと第2の開き角αgeo の一致判定には、次のA〜Cのような方法がある。一致判定の結果、一致すると判定されれば、第1の開き角αkinと第2の開き角αgeo の何れか一方、或いは両者の平均などを、反跳方向ベクトルeと散乱方向ベクトルgの成す角αとする。
A:図7(a)に示すような平均値をαkin、標準偏差をσkinとする真値の確率密度分布に対して、比較するαgeoが所定の範囲、例えばαkin±σkinの範囲内に入れば一致、入らなければ不一致とする。判断に用いる判断区間幅は、前述した様に、計測器の性質と経験に応じて決めるのが望ましい。
B:図7(b)に示すような平均値をαgeo、標準偏差をσgeoとする真値の確率密度分布に対して、比較するαkinが所定の範囲、例えばαgeo±σgeoの範囲内に入れば一致、入らなければ不一致とする。
C:図7(c)に示すようなαkinを平均値とする真値の確率密度分布と、αgeoを平均値とする真値の確率密度分布の重なる部分(図中ハッチングにより示す領域)が或る閾値以上になった場合は一致、閾値より小さい場合は不一致とする。
Cの方法はt検定の考え方に似ており、第1の開き角αkin 及び第2の開き角αgeoが正規分布となる場合、または正規分布にほぼ等しい場合には、t検定を用いて一致性を判定してもよい。また、これらの方法以外にも2つの確率密度分布の平均値の一致性を検定する他の確率的手法(例えば、パラメトリック検定法)を用いて一致性を判定してもよい。
ここで、コンプトンカメラを核医学検査に用いる場合などは、放射線源が放出するガンマ線のエネルギーEは既知である。検出した反跳電子のエネルギーがKeであり、ほぼ同時にガンマ線検出器の複数の位置で検出された散乱ガンマ線エネルギーの合計がEγであるときに、Ke+Eγ>Eであったとする。そうすると、これらが同一のコンプトン散乱事象から発生した散乱ガンマ線を複数位置で検出したものと仮定するとエネルギー保存則に反する。従って、図5に示した判定処理を実施する前に、このような検出値は判定不可能な事象として判定の対象から除外することができる。これにより、無駄な処理を減らすことができるので処理に要する負荷を軽くすることができる。
また、前述の式(3)より、ある入射ガンマ線のエネルギーEに対して反跳電子のエネルギーKeを変化させたときに、角αの取り得る値には下限があることがわかる。例えばE=511keVの場合、角αの下限値は90°となる。ほぼ同時にエネルギーを検出したガンマ線検出器の複数の位置のそれぞれについて、図5に示した判定処理において算出した第2の開き角αgeoがこの下限値よりも小さい場合、次のようにできる。即ち、第1の開き角αkinとの比較を行う前に、少なくとも、検出した反跳電子と同一のコンプトン散乱事象から発生した散乱ガンマ線の最初の到達位置では無いものと判断して第1の開き角αkinとの比較を省略することができる。
また、上記の判定処理は、散乱体中で異なるガンマ線(光子)のコンプトン散乱が連続して発生した場合であっても、電子検出器によって反跳電子を時間的に分離して別個のコンプトン散乱事象として検出できれば、次のようにできる。まず、それぞれのコンプトン散乱事象に対して適用可能であるのは勿論である。さらに、ほぼ同時に異なるガンマ線(光子)のコンプトン散乱が発生した場合であっても、電子検出器によって位置的に分離して別個のコンプトン散乱事象として検出できれば、それぞれのコンプトン散乱事象に対して適用可能である。
以上に説明した如く、コンプトンカメラのガンマ線検出器で、検出器内コンプトン散乱による多重検出や偶発同時多重検出等により複数の位置で略同時にエネルギーが検出された場合でも、ガンマ線の最初の到達位置とエネルギーについて正しい情報を得られる。その結果、放射能の分布を画像として再構成するために使用する正しいガンマ線の入射方向情報を増加させることができ、感度を向上させることができる。また、散乱ガンマ線に関する不正確な情報を排除することができるので、放射能の分布を再構成するデータにおいてノイズを低減することができる。
本発明による放射線検出の技術は、環境放射線計測や核医学診断等を行うガンマカメラなどに用いることができる。
101・・μTPC(電子検出器)、102・・ガンマ線検出器(放射線検出器)、103・・放射線源、104・・入射ガンマ線、202・・散乱体、203・・電子検出器、301・・散乱ガンマ線、304・・反跳電子

Claims (17)

  1. 散乱体によりコンプトン散乱された放射線の到達位置とエネルギーを放射線検出器によって検出する放射線の検出方法であって、
    前記コンプトン散乱により反跳電子を発生した散乱点と、前記反跳電子の反跳方向と、前記反跳電子のエネルギーを電子検出器により検出し、前記反跳電子の反跳方向と前記散乱された放射線の散乱方向の成す角を開き角αとしたときに、
    前記放射線検出器内の複数箇所でほぼ同時に前記散乱された放射線のものと推定されるエネルギーを検出した場合には、検出した前記反跳電子のエネルギー及び放射線のエネルギーから求めた第1の開き角αkinと、前記散乱された放射線の検出位置と前記散乱点と前記反跳方向とから求めた第2の開き角αgeoの両方を用いて、前記放射線の前記放射線検出器への最初の到達位置を判定することを特徴とする放射線の検出方法。
  2. 検出した前記反跳電子のエネルギーをKe、検出した前記散乱された放射線のエネルギーをEγ、電子の静止質量をm、光速をcとしたとき、
    α=cos−1[(1−mc/Eγ){Ke/(Ke+2mc)}1/2
    により算出される開き角αを前記第1の開き角αkinとすることを特徴とする請求項1に記載の放射線の検出方法。
  3. 前記複数箇所から選択した2以上の箇所で検出した各エネルギーの総和をEγとして前記第1の開き角αkinを求めることを特徴とする請求項2に記載の放射線の検出方法。
  4. 前記2以上の箇所は、前記放射線が前記放射線検出器内でコンプトン散乱された全ての位置及び光電吸収された位置に対応することを特徴とする請求項3に記載の放射線の検出方法。
  5. 前記複数箇所から選択した1または2以上の箇所についての前記散乱された放射線の検出位置と検出したエネルギーから前記第1の開き角αkinと前記第2の開き角αgeoとを求め、両者が一致または差が測定誤差の範囲内である場合に、前記選択した箇所の1つを前記放射線の前記放射線検出器への最初の到達位置と判定することを特徴とする請求項1または2に記載の放射線の検出方法。
  6. 検出した前記反跳電子のエネルギー及び前記放射線のエネルギーから前記第1の開き角αkinを求める第1のステップ、前記散乱された放射線の検出位置と、検出した前記散乱点と、検出した前記反跳方向より第2の開き角αgeoを求める第2のステップ、前記第1の開き角αkinと第2の開き角αgeoを比較し、前記選択した箇所の1つが前記放射線の前記放射線検出器への最初の到達位置であるか否かを判定する第3のステップを有することを特徴とする請求項5に記載の放射線の検出方法。
  7. 前記第3のステップにおいて前記選択した箇所が前記放射線の前記放射線検出器への最初の到達位置ではないと判定した場合、前記複数箇所から選択する1または2以上の箇所の組み合わせを変更し、再度、前記第1のステップ、前記第2のステップ及び前記第3のステップを実行することを特徴とする請求項6に記載の放射線の検出方法。
  8. 求めた前記第1の開き角αkinを平均値とし、標準偏差をσkinとする真値の確率密度分布に対して、求めた前記第2の開き角αgeoが、αkin±σkinの範囲内に入れば一致、入らなければ不一致として、前記放射線の前記放射線検出器への最初の到達位置を判定することを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の放射線の検出方法。
  9. 検出した反跳電子の反跳方向の測定誤差の標準偏差がσAeの正規分布であり、検出した放射線の検出位置の測定誤差の標準偏差がσAgの正規分布である場合、
    求めた前記第2の開き角αgeoを平均値とし、標準偏差をσgeo=(σAe 2+σAg 21/2とする真値の確率密度分布に対して、求めた前記第1の開き角αkinが、αgeo±σgeoの範囲内に入れば一致、入らなければ不一致として、前記放射線の前記放射線検出器への最初の到達位置を判定することを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の放射線の検出方法。
  10. 検出した反跳電子のエネルギーの測定誤差の標準偏差がσEeの正規分布、検出した反跳電子の反跳方向の測定誤差の標準偏差がσAeの正規分布、検出した放射線のエネルギーの測定誤差の標準偏差がσEgの正規分布、検出した放射線の検出位置の測定誤差の標準偏差がσAgの正規分布である場合、
    求めた前記第1の開き角αkinを平均値とする真値の確率密度分布と、求めた前記第2の開き角αgeoを平均値とする真値の確率密度分布との重なる部分が所定の閾値以上になった場合は一致、閾値より小さい場合は不一致として、前記放射線の前記放射線検出器への最初の到達位置を判定することを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の放射線の検出方法。
  11. 前記放射線のエネルギーEが既知であり、検出した前記反跳電子のエネルギーがKeであり、前記放射線検出器の複数の位置で検出された散乱放射線のエネルギーの合計がEγであるときに、Ke+Eγ>Eである場合、該場合は判定不可能な事象として判定の対象から除外することを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載の放射線の検出方法。
  12. 前記放射線のエネルギーEに対して反跳電子のエネルギーKeを変化させたときに取り得る値の下限より小さい前記第2の開き角αgeoは、求めた前記第1の開き角αkinとの比較を省略して、判定の対象から除外することを特徴とする請求項1から11の何れか1項に記載の放射線の検出方法。
  13. 前記放射線はガンマ線であることを特徴とする請求項1から12の何れか1項に記載の放射線の検出方法。
  14. 散乱体、電子検出器、及び放射線検出器を備え、前記散乱体によりコンプトン散乱された放射線の到達位置とエネルギーを前記放射線検出器によって検出し、前記コンプトン散乱により反跳電子を発生した散乱点と前記反跳電子の反跳方向と前記反跳電子のエネルギーを前記電子検出器により検出し、検出した前記散乱された放射線の検出位置とエネルギーの情報、検出した前記散乱点、及び前記反跳電子の反跳方向とエネルギーの情報から前記放射線の入射方向を求めるコンプトンカメラであって、
    前記反跳電子の反跳方向と前記放射線の散乱方向の成す角を開き角αとしたときに、前記放射線検出器内の複数箇所でほぼ同時に前記散乱された放射線のものと推定されるエネルギーを検出した場合には、検出した前記反跳電子のエネルギー及び前記放射線のエネルギーから求めた第1の開き角αkinと、前記散乱された放射線の検出位置と検出した前記散乱点と検出した前記反跳方向とから求めた第2の開き角αgeoの両方を用いて、前記放射線の前記放射線検出器への最初の到達位置を判定することを特徴とするコンプトンカメラ。
  15. 前記電子検出器は、前記コンプトン散乱により発生した反跳電子により発生した電離電子を、電子雪崩現象を用いて増幅し、前記反跳電子の飛跡を検出する電子飛跡検出部と、前記散乱体を介して前記電子飛跡検出部の電極と対向する電極を、前記電子飛跡検出部の電極に対して負電位として電界を印加する電界印加部と、を有することを特徴とする請求項14に記載のコンプトンカメラ。
  16. 前記散乱体はガスからなり、
    前記電子飛跡検出部の一部を第一電極とし、前記ガス部を介して前記電子飛跡検出部と対向する位置に前記電界印加部の第二電極が配置され、
    前記第一電極に対して前記第二電極を負電位として、前記電離電子を前記第一電極の方向にドリフトさせるための電界を印加するように前記電界印加部が構成されていることを特徴とする請求項14または15に記載のコンプトンカメラ。
  17. 前記放射線はガンマ線であることを特徴とする請求項14から16の何れか1項に記載のコンプトンカメラ。
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