[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/

JP2016160549A - 炭素繊維用サイジング剤、炭素繊維束、シート状基材及び炭素繊維強化複合材 - Google Patents

炭素繊維用サイジング剤、炭素繊維束、シート状基材及び炭素繊維強化複合材 Download PDF

Info

Publication number
JP2016160549A
JP2016160549A JP2015039895A JP2015039895A JP2016160549A JP 2016160549 A JP2016160549 A JP 2016160549A JP 2015039895 A JP2015039895 A JP 2015039895A JP 2015039895 A JP2015039895 A JP 2015039895A JP 2016160549 A JP2016160549 A JP 2016160549A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
carbon fiber
compound
sizing agent
mass
sizing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2015039895A
Other languages
English (en)
Inventor
巧己 若林
Katsumi Wakabayashi
巧己 若林
啓之 西
Hiroyuki Nishi
啓之 西
誠 市橋
Makoto Ichihashi
誠 市橋
高木 康雄
Yasuo Takagi
康雄 高木
靖則 村野
Yasunori Murano
靖則 村野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Rayon Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Rayon Co Ltd filed Critical Mitsubishi Rayon Co Ltd
Priority to JP2015039895A priority Critical patent/JP2016160549A/ja
Publication of JP2016160549A publication Critical patent/JP2016160549A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Reinforced Plastic Materials (AREA)
  • Treatments For Attaching Organic Compounds To Fibrous Goods (AREA)

Abstract

【課題】高平滑性を有し、炭素繊維束の高次加工工程において優れた工程通過性を有し、さらに機械物性向上効果に優れる炭素繊維束を得ることができる炭素繊維用サイジング剤を提供する。
【解決手段】炭素繊維用サイジング剤が下記(1)〜(4)を満足する。
(1)分子中に複数個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と不飽和一塩基酸とのエステル化合物であって分子中に少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物(A)、硬化物の引張伸び率が40%以上の2官能タイプのウレタンアクリレートオリゴマー化合物(B)、ステアリン酸エステル化合物(C)及び界面活性剤(D)を含む。
(2)ウレタンアクリレートオリゴマー(B)/化合物(A)の比が1/3〜2/1。
(3)全サイジング成分中の化合物(A)とウレタンアクリレートオリゴマー(B)の合計割合が20質量%以上。
(4)全サイジング成分中のステアリン酸エステル化合物(C)の割合が5〜30質量%。
【選択図】なし

Description

本発明は、炭素繊維用サイジング剤、サイジング剤の付着した炭素繊維束、シート状基材及び炭素繊維強化複合材に関する。
一般的に炭素繊維は、直径が5〜8μm程度のフィラメントであり、この単繊維が数千〜数万本単位でまとまった形態(以下、「炭素繊維束」と表記する)で用いられる。炭素繊維は、それ自体は伸度が小さくかつ脆い性質を有するため、機械的摩擦等によって毛羽が発生しやすく、複合材料の製造工程において毛羽、糸切れが発生しやすい。そのため、収束性の付与と毛羽生抑制等を目的として、炭素繊維にはサイジング剤を付与することが一般的である。
また、炭素繊維は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂などの樹脂(以下、マトリックス樹脂と表記する)と複合化し、いわゆる炭素繊維強化組成物とした後、成形してなる炭素繊維強化複合材料として幅広い分野にわたって使用されるが、このマトリックス樹脂を含浸させる工程において、炭素繊維束へのマトリックス樹脂の含浸が、容易に、そして完全に行なわれるようにすることが必要である。
しかしながら、炭素繊維は、そのままの状態ではマトリックス樹脂に対する濡れ性に乏しく、マトリックス樹脂が含浸しにくい。そのため、得られる繊維強化複合材料の品質が充分に満足できるものとならない。これを改善する目的としても、炭素繊維へのサイジング処理が有効である。
すなわち、炭素繊維の取り扱い性を向上させるとともに、マトリックス樹脂に対する濡れ性を向上させ、品質の高い炭素繊維強化複合材料を工業的に安定に製造することを目的として、炭素繊維にサイジング剤による処理を施すのである。
炭素繊維強化組成物の製造方法としては、強化材としての繊維にマトリックス樹脂を含浸させる方法が一般的である。繊維にマトリックス樹脂を含浸させる方法として、複数本の炭素繊維束を一方向に引き揃えてシート状とした基材(以下、「シート状基材」と表記する)に樹脂を塗布し、含浸させる方法や、炭素繊維束を織機により加工して織物などのシート状基材としてから、この織物シート状基材に樹脂を塗布、含浸させる方法、あるいは複数の繊維束を一方向に引き揃えて、一方向繊維シート状基材とした後に、この一方向繊維シート状基材の複数枚を積層し、ステッチして得られる、いわゆる多軸積層編物シート状基材に樹脂を塗布、含浸させる方法など様々な方法がある。
一方で、単繊維数が24,000本よりも多い、いわゆるラージトウと呼ばれる炭素繊維束(以下、「ラージトウ」と表記する)が上市されている。ラージトウは生産性が高いため、炭素繊維強化複合材料の低コスト化を目的として、その採用は拡大している。しかし、フィラメント数が24,000よりも少ない、スモールトウと呼ばれる炭素繊維束(以下、「スモールトウ」と表記する)と比べると、高次加工で繊維束を拡幅して使用するときの、繊維束の均一な拡がり性(開繊性)に劣る面がある。そのため、繊維量の少ない、薄物プリプレグや、薄物織物に使用する場合に、繊維束間に隙間(以下、「目空き」と表記することもある)が生じ、最終的に得られる炭素繊維強化複合材料の性能や品位の低下を招くことがあった。
そのため、ラージトウを、金属製のバーなどを用いて機械的な摩擦や擦過により開繊処理する工程において、擦過回数を増やしたり、繊維束に高張力を付与することが必要となるが、過剰な擦過により、繊維束に毛羽が発生したり、単繊維の糸切れが発生する原因となり易い。
炭素繊維に付与するサイジング剤の性質も開繊性に大きく影響する。サイジング剤が高い粘着性を有する場合、開繊工程に設置される金属製ガイドバーの表面や、多軸積層編物シート状基材を製造する際のステッチ処理に用いるステッチ針の表面に、炭素繊維に付与したサイジング剤が転写・堆積して、この堆積物により、繊維束に毛羽がさらに発生することがある。
このため、高開繊性を要求される炭素繊維束、特にラージトウ炭素繊維束に付与するサイジング剤には、平滑性(=耐擦過性、耐毛羽立ち性)と収束性を両立させることが課題であった。
上記の課題を解決するために、例えば特許文献1には、優れた耐擦過性を有するものとして、常温において液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、常温において固形のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、不飽和二塩基酸とビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物との縮合物である不飽和ポリエステル樹脂と、ステアリン酸エステルを必須成分とするサイジング剤が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載のサイジング剤を、ラージトウに適用しても、耐擦過性を向上させることは出来ても、そのトウボリュームの大きさから、収束性との両立は難しい場合があった。また、マトリックス樹脂がラジカル重合系の場合、得られる炭素繊維複合材料の機械特性は必ずしも十分なものとは言えない場合があった。
また、特許文献2には、エポキシ基を1つ以上含有するエステル樹脂、ウレタンアクリレート、アニオン系乳化剤、および少量のノニオン系乳化剤からなるサイジング剤が提案されている。
特許文献2に記載のサイジング剤は、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂などのラジカル重合系樹脂に対する接着性に優れ、エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とする複合材料と同等の性能を提供可能なものである。また、エポキシ樹脂との適合性も良いこともあり、広範囲の熱硬化性樹脂との組み合わせた複合材料で優れた機械的強度を発現可能とするものであるが、やはりラージトウに適用した場合には、上述したような耐擦過性と収束性との両立が難しい場合があった。

特開平07−197381号公報 特開2008−95241号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高平滑性を有し、炭素繊維束の高次加工工程における優れた工程通過性を示し、特にラージトウに付与した場合にも、この効果が十分に発揮され、かつマトリックス樹脂、特にラジカル重合系樹脂を用いて複合化した際の機械物性向上効果に優れる炭素繊維束を得ることができる炭素繊維用サイジング剤を提供することを目的とする。また、複合材の機械物性向上効果に優れた炭素繊維束、ならびに炭素繊維束を有するシート状基材、さらには機械物性に優れた炭素繊維強化複合材を提供することを目的とする。
本発明は、下記(1)〜(4)を満足する炭素繊維用サイジング剤に関する。
(1)前記炭素繊維用サイジング剤が下記(A)〜(D)を含有する。
・分子中に複数個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と不飽和一塩基酸とのエステル化合物であって、分子中に少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物(A)
・硬化物の引張伸び率が40%以上の2官能タイプの、ウレタンアクリレートオリゴマー化合物(B)
・ステアリン酸エステル化合物(C)
・界面活性剤(D)
(2)前記化合物(A)と前記ウレタンアクリレートオリゴマー(B)との含有量の質量比が、ウレタンアクリレートオリゴマー(B)/化合物(A)の比として、1/3以上2/1以下。
(3)全サイジング成分中に占める前記化合物(A)および前記ウレタンアクリレートオリゴマー(B)の合計量の割合が20質量%以上。
(4)全サイジング成分中に占める前記ステアリン酸エステル化合物(C)の割合が、5質量%以上30質量%以下。
さらに、本発明のサイジング剤は、下記(5)及び(6)を満足するものであっても良い。
(5)ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物とジカルボン酸化合物とのエステルであって、その酸価が50以上であるエステル化合物(E)を含む。
(6)前記エステル化合物(E)の含有量が、前記化合物(A)および前記ウレタンアクリレートオリゴマー(B)の合計量の2.0質量倍以下。
また、本発明は、前記炭素繊維用サイジング剤が付着量0.6質量%以上2.0質量%以下で付着した炭素繊維束に関する。
また、本発明は前記炭素繊維束を含むシート状基材、前記炭素繊維束からなる炭素繊維強化複合材、前記シート状基材からなる炭素繊維強化複合材に関する。
本発明によれば、高平滑性を有し、炭素繊維束の高次加工工程における優れた工程通過性を示し、特にラージトウに付与した場合にも、この効果が十分に発揮され、かつマトリックス樹脂、特にラジカル重合系樹脂を用いて複合化した際の機械物性向上効果に優れる炭素繊維束を得ることができる炭素繊維用サイジング剤およびサイジング剤の水分散液を提供することを目的とする。また、複合材の機械物性向上効果に優れた炭素繊維束、ならびに炭素繊維束を有するシート状物、さらには機械物性に優れた炭素繊維強化複合材が提供される。
<炭素繊維用サイジング剤>
本発明の炭素繊維用サイジング剤は、以下に詳述する(A)〜(D)を含む。このサイジング剤は、各成分を適宜混合することにより得ることができる。
<化合物(A)>
本発明の炭素繊維用サイジング剤に含まれる化合物(A)は、分子中に少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物である。化合物(A)は、分子中に複数個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、不飽和一塩基酸とが反応してなるエステル化合物のことをいう。なお、本願発明において、エポキシ基とは、環骨格が2個の炭素原子と1個の炭素原子とから構成される3員環をその構造中に有する基を意味する。具体的には、下記一般式(e1)で表される官能基、下記一般式(e2)で表される官能基(グリシジル基)、その他の環式脂肪族エポキシ基などが挙げられる。その他の環式脂肪族エポキシ基としては、前記3員環と、単環または多環式の脂肪族環とで形成される環状構造をその構造中に有する基が挙げられ、たとえば下記一般式(e3)〜(e5)で表される官能基が例示できる。
<分子中に複数個のエポキシ基を有するエポキシ化合物>
前記化合物(A)において、前記の分子中に複数個のエポキシ基を有するエポキシ化合物としては、特に限定されず、たとえばビスフェノール類のエポキシ化合物、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加エポキシ化合物、水素化ビスフェノール類のエポキシ化合物、水素化ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加エポキシ化合物等が挙げられる。これらビスフェノール類としては、特に限定されるものではなく、ビスフェノールF型、ビスフェノールA型、ビスフェノールS型などの化合物が挙げられる。ビスフェノール類のエポキシ化合物以外のフェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ジフェニル型、ジシクロペンタジエン型、ナフタレン骨格型などのエポキシ樹脂を用いることもできる。また、直鎖脂肪族系骨格を有するものであっても良い。
<不飽和一塩基酸>
前記化合物(A)において、前記の不飽和一塩基酸としては、特に限定はなく、一つの不飽和基と一つのカルボキシル基を有する化合物であれば良い。不飽和基としては、特に限定はないが、嵩高くないこと、形成されるエステルの主鎖の剛直性を低下させないことから、ビニル基あるいはプロペニル基が好ましく、より好ましくは、ビニル基である。特に好ましいのは、アクリル酸またはメタクリル酸である。すなわち、化合物(A)は、前記エポキシ化合物とアクリル酸またはメタクリル酸とのエステルであることが好ましい。
前記化合物(A)は、エポキシ基を複数個有する化合物と不飽和一塩基酸とを反応させて得られるエステル化合物であり、この反応においては、エポキシ基を複数個有する化合物のエポキシ基のうち、少なくとも1つのエポキシ基が未反応のまま残留し、少なくとも1つのエポキシ基が不飽和一塩基酸によって開環し、不飽和基を有する、いわゆるハーフエステルが形成される。かかる化合物(A)は、分子中に、エポキシ基を複数個有する化合物に由来するエポキシ基と、不飽和一塩基酸に由来する不飽和基(たとえばアクリル酸に由来するCH=CH−COO−)とを有しており、これによって、炭素繊維表面と樹脂分子の間でのカップリング機能を発揮し、炭素繊維と樹脂との間の界面接着性を大きく向上させる。特に、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、アクリル樹脂などのラジカル重合系樹脂と炭素繊維とを強力に結合させることができ、優れた界面接着性を発現させることができる。
特に、界面接着性を発現させることに優れることから、分子の両末端にエポキシ基を有する化合物と、不飽和一塩基酸とのエステル化合物であって、分子主鎖の片方の端部に不飽和基を有し、他方の端部にエポキシ基をそれぞれ有する化合物が好ましい。このような化合物(A)を用いることにより、ラジカル重合系樹脂と炭素繊維とを強力に結合させることができ、優れた界面接着性を発現させることができる。
分子の両末端にエポキシ基を有する化合物としては、特に、ビスフェノール類のジエポキシ化合物およびビスフェノール類のアルキレンオキシド付加ジエポキシ化合物のいずれか一方又は両方を用いることが好ましい。すなわち、化合物(A)は、ビスフェノール類のジエポキシ化合物及びビスフェノール類のアルキレンオキシド付加ジエポキシ化合物のいずれか一方又は両方と、不飽和一塩基酸とのエステルであって、分子主鎖の片方の端部に不飽和基を有し、他方の端部にエポキシ基をそれぞれ有する化合物であることが好ましい。本発明において、化合物(A)としては、1種のエステル化合物を単独で用いてもよく、2種以上のエステル化合物を併用してもよい。
<化合物(B)>
本発明の炭素繊維用サイジング剤は、2官能タイプのウレタンアクリレートオリゴマー(B)(以下、「化合物(B)」という)を含む。
前記化合物(B)は、マトリックス樹脂と炭素繊維との界面に、柔軟性に優れた界面相を形成することにより、マトリックス樹脂と炭素繊維との間の界面接着性が向上する効果を奏する。また、繊維強化複合材料用のマトリックス樹脂として、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等のラジカル重合系樹脂には靭性の低いものが多く、界面相の柔軟化に起因する高靭性化により、飛躍的に界面接着性が向上する。
また、サイジング剤が付着した炭素繊維とマトリックス樹脂とを複合化する際に、炭素繊維表面のサイジング剤成分が、マトリックス樹脂へと拡散し、特に界面付近のマトリックス樹脂中に、サイジング剤成分を高濃度に含む領域が形成される。この領域は、複合材料の機械特性に影響を及ぼす。そして、化合物(B)が、ウレタンアクリレートオリゴマーであることから、繊維強化複合材料を形成する際、マトリックス樹脂の硬化反応に組み込まれることとなり、界面相とマトリックス樹脂相との一体化が図られる。そのため、この化合物(B)を含むことにより、ラジカル重合系樹脂をマトリックス樹脂とする場合であっても、繊維強化複合材料の機械的特性を、エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とする場合と同等なレベルにすることができる。
前記化合物(B)は、以下の測定方法で求めた硬化物の引張伸び率が40%以上とすることが好ましい。上記界面相の高靭性化の効果に優れることから、この引張伸び率が45%以上であることがより好ましく、50%以上がより好ましい。引張伸び率(%)の上限としては、界面近傍樹脂の弾性率の大幅な低減を考慮すると、900%以下が好ましく、700%以下がより好ましい。
また、前記化合物(B)は2官能である必要がある。3官能以上のタイプであると、架橋密度が高くなりすぎ、充分な高靭性化が発現しない。一方、1官能タイプでは、マトリックス樹脂との架橋反応が片側のみとなり、充分な高靭性化の効果が得ることができない。
さらに、界面相の靭性向上効果が大きいことから、前記化合物(B)は、60℃での粘度が5,000mPa・s以上であり、その硬化物の引張強度が6MPa以上のものが好ましい。粘度が大きいことは、そのオリゴマーの分子量が大きいこと、またはオリゴマー分子間の凝集力が大きいことを示す。分子量が大きい場合、あるいは分子間の凝集力が大きい場合、化合物(B)が、マトリックス樹脂へと拡散することなく、炭素繊維表面とマトリックス樹脂との界面相に偏在し、結果、界面相の効果的な柔軟化が成しえるので好ましい。なお、硬化物の引張強度および引張伸び率は以下の測定方法で求めることができる。
<硬化物の引張強度および引張伸び率の測定方法>
1)ウレタンアクリレートオリゴマー(B)97gと、硬化剤(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)3gの混合物をガラス板上に塗布し、厚み100μmの皮膜を得る。その皮膜を、オゾンタイプランプ(80W/cm)を使って、皮膜から10cm離れた位置から紫外線を5秒間照射して硬化する。
2)硬化した皮膜を用いて、JIS K7127に準拠(試験片タイプ5)し、引張り速度300mm/minで引張強度および引張伸び率を測定する。
前記化合物(B)の60℃での粘度は、10,000mPa・s以上がより好ましく、20,000mPa・s以上がさらに好ましい。粘度の上限としては、60℃で固状でないほうが、サイジング剤の調製やサイジング剤の経時安定性の面から優れている。なお、化合物(B)の粘度はB型粘度計で測定できる。
本発明の炭素繊維用サイジング剤に含まれる化合物(B)の硬化物のガラス転移温度(Tg)は、−5℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましい。硬化物のTgが−5℃以上であれば、界面相により適正な柔軟化が図れるのみならず、破断に至る応力の値も大きくなり、そのため、より強固な界面相が形成でき、上記効果が向上する。つまり、界面相は、強化繊維を支える機能があり、柔軟化を適度に抑えることによって複合材料の機械的特性を良好に保つことが容易となる。硬化物のTgの上限としては、柔軟成分としての機能を考慮すると、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。
ウレタンアクリレートオリゴマーの硬化物のTgは、引張伸び率の測定と同じ方法で得られた硬化皮膜を試験片として、粘弾性測定装置(UBM社製、製品名:Rheogel E4000)を用いて、2℃/分の割合で昇温させ、試験片の動的粘弾性および損失正接を測定し、損失正接のピーク温度(tanδMAX)から求めることができる。
本発明において、「ウレタンアクリレートオリゴマー」とは、分子内にウレタン結合とアクリロイル基(CH2=CH−CO−)とを有する化合物である。ウレタンアクリレートオリゴマーの構造は、その構造中に芳香族基を有する芳香族系のものと、芳香族基を有さない脂肪族系のものとに大別できる。本発明に用いるウレタンアクリレートオリゴマーの構造は特に限定されず、芳香族系であってもよく、脂肪族系であってもよい。硬化物の引張伸び率と引張強度のバランスが良好であることから、脂肪族系であることが好ましい。
本発明の炭素繊維用サイジング剤に含まれる化合物(B)としては、市販のウレタンアクリレートオリゴマーを利用してもよく、かかるウレタンアクリレートオリゴマーとしては、たとえばサートマー社製のCN−965、CN−981、CN−9178、CN−9788、CN−9893、CN−971、CN−973、CN−9782、共栄社化学製のUF−8001、新中村化学工業社製のUA−122P等が挙げられる(いずれも製品名)。
本発明において、化合物(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
<化合物(A)および化合物(B)の含有量>
本発明のサイジング剤においては、化合物(A)と化合物(B)との含有量の比(質量比)が、化合物(B)/化合物(A)=1/3〜2/1の範囲内であることが必要である。化合物(B)の含有量が、化合物(A)の含有量の1/3未満であると、界面相の柔軟化・高靭性化が不充分となり、一方、2/1を越えると、化合物(A)の機能である良接着性発現効果が阻害され、炭素繊維の、マトリックス樹脂との接着性向上効果が充分に得られない。化合物(A)と化合物(B)との含有量の比は、化合物(B)/化合物(A)=1/2〜3/2であることが好ましく、2/3〜1/1がより好ましい。
また、本発明のサイジング剤においては、全サイジング成分中に占める化合物(A)および化合物(B)の合計量の割合が20質量%以上であることが必要である。20質量%未満では、この2つの成分の機能が充分に発揮されず、本発明の効果が得られない。
ここで、「全サイジング成分」とは、当該サイジング剤に含まれる成分のうち、サイジング処理後に炭素繊維に付与される全成分の合計量であり、たとえば水や有機溶剤等の、サイジング後に除去される成分は含まれない有効成分を表す。すなわち、「全サイジング成分」は、上述した化合物(A)および化合物(B)、後述するステアリン酸エステル化合物(C)、および界面活性剤(D)と、任意成分として後述するエステル化合物(E)、およびその他の成分との合計量として求めることができる。化合物(A)および化合物(B)の合計量の割合は、全サイジング成分中、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
<化合物(C)>
本発明の炭素繊維用サイジング剤は、ステアリン酸エステル化合物(C)(以下、「化合物(C)」という)を必須成分とする。化合物(C)はステアリン酸エステル化合物であり、炭素繊維束の平滑性を向上させることができる。
ステアリン酸エステル化合物としては、ステアリン酸と各種アルコールとのエステルが使用できるが、メチルステアレート、エチルステアレート、プロピルステアレート、ブチルステアレート、オクチルステアレート、ステアリルステアレート、オレイルステアレート、トリデシルステアレート、ヘキサデシルステアレート、エチルヘキシルステアレート等が好ましく使用される。
本発明の炭素繊維用サイジング剤では、全サイジング成分中に占める化合物(C)の割合は5質量%以上30質量%以下であることが好ましい。5質量%以上であれば、炭素繊維束に良好な平滑性を付与することができる。30質量%以下であれば、ラージトウに適用した場合でも収束性が過度に低下することなく、良好な取り扱い性が得られやすく、マトリックス樹脂との接着性を阻害することもないので、良好な機械強度を得ることができる。全サイジング成分中に占める化合物(C)の割合は、7質量%以上25質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは10質量%以上20質量%以下である。
<化合物(D)>
本発明のサイジング剤は、さらに、界面活性剤(D)(以下、「化合物(D)」という)を含有することが好ましい。前記化合物(D)は、上述した化合物(A)、化合物(B)および化合物(C)、後述する任意成分である化合物(E)、およびその他の成分を水に分散させるために用いるものである。化合物(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の炭素繊維用サイジング剤に含まれる化合物(D)としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば脂肪族ノニオン、フェノール系ノニオンなどの界面活性剤を利用することができる。脂肪族ノニオン系界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、グリセロールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステルなどが挙げられる。フェノール系ノニオン界面活性剤としては、アルキルフェノール系ノニオン、多環フェノール系ノニオンなどが挙げられる。
また、エチレンオキサイド付加物としては、ポリエチレンオキサイド鎖中の一部にプロピレンオキサイドユニットをランダムあるいはブロック状に具備させたタイプのものが好適である。脂肪酸エチレンオキサイド付加物や多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物としては、モノエステルタイプ、ジエステルタイプ、トリエステルタイプ、テトラエステルタイプなどのノニオン系界面活性剤を使用できる。
本発明の炭素繊維用サイジング剤に含まれる化合物(D)として、アンモニウムイオンを対イオンとして有するアニオン系界面活性剤(以下、適宜「(D−1)成分」と略する)、及び後述するノニオン系界面活性剤(以下、適宜「(D−2)成分」と略する)を含有することが好ましい。
前記アンモニウムイオンを対イオンとして有するアニオン系界面活性剤である(D−1)成分は、疎水基と、対イオンとしてアンモニウムイオンを有することにより、本発明の炭素繊維用サイジング剤を水分散液とした際の安定性と、炭素繊維表面の樹脂に対する濡れ性を向上させる。また、(D−2)成分は、(D−1)成分のアンモニウムイオンと、化合物(A)のエポキシ基との反応活性を抑制する効果を有する。そのため、(D−1)成分と(D−2)成分とを適量含有することにより(含有量については後に詳述する)、各種マトリックス樹脂の含浸性がさらに向上し、また、サイジング剤で処理された炭素繊維の硬さの経時変化を非常に小さくすることができる。
(D−1)成分としては、特に限定はなく、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩などを挙げることができる。この中でも、硫酸エステル塩、スルホン酸塩は、化合物(A)や化合物(B)を乳化させる能力に特に優れるのでさらに好ましい。
前記硫酸エステル塩としては、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルポリエチレングリコールエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンポリエチレングリコールエーテル硫酸エステル塩、多環フェニルエーテルポリエチレングリコールエーテル硫酸エステル塩、硫酸化脂肪酸エステル塩などが挙げられる。又、高級アルキルポリエチレングリコールエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンポリエチレングリコールエーテル硫酸エステル塩、多環フェニルエーテルポリエチレングリコールエーテル硫酸エステル塩におけるポリエチレンオキサイド鎖中の一部に、プロピレンオキサイドユニットをランダム又はブロック状に含有したものも用いることもできる。
前記スルホン酸塩としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、多環フェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩などが挙げられる。
特に、下記一般式(1)または(2)で表される疎水基を有するアニオン系界面活性剤が、(D−1)成分としてさらに好ましく用いられる。
炭素繊維強化複合材料においては、炭素繊維とマトリックス樹脂との複合化により、優れた機械物性を発現することが望まれるので、マトリックス樹脂には、剛直性の点から、芳香族骨格を有するものが主に用いられ、炭素繊維用サイジング剤には、芳香族骨格を有する化合物を主成分として用いられることが多い。前記一般式(1)または(2)で表される疎水基は、芳香族系物質との親和性が高いため、(D−1)成分として、一般式(1)または(2)で表される疎水基を有するアニオン系界面活性剤を炭素繊維用サイジング剤に含有することにより、乳化状態が安定し、貯蔵性、炭素繊維製造時の製造・工程で良い結果をもたらす。また、サイジング剤とマトリックス樹脂との相溶性が向上し、本発明の効果、特に機械物性向上効果がさらに向上する。
また、前記一般式(1)または(2)で表される疎水基を有するアニオン系界面活性剤は、外因性内分泌撹乱物質誘導体の拡散を防止する観点から、ノニルフェノール系や、オクチルフェノール系といった比較的長いアルキル基を有するフェノール基を有するアニオン系界面活性剤の使用を避けることが望まれてきていることからも好ましい。
前記一般式(1)、(2)中、Rは、水素原子または炭素数1〜3の1価の鎖状炭化水素基であり、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がさらに好ましく、外因性内分泌撹乱物質誘導体の観点から、水素原子がより好ましい。RおよびRは、水素原子または炭素数1〜3の1価の鎖状炭化水素基であり、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。RおよびRの鎖状炭化水素基としては、R1の鎖状炭化水素基と同じものが挙げられる。Rは2価の脂肪族系炭化水素基であり、たとえば炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキレン基等が挙げられる。mは正の整数を表し、1〜3の整数が好ましく、1または2がより好ましい。mが3以下であれば、疎水基自体が嵩高い構造となることを容易に防ぐことができ、化合物(A)や化合物(B)、マトリックス樹脂との親和性、相溶性を良好にすることが容易である。その結果、乳化の安定性、樹脂含浸性、さらには繊維強化複合材料の機械物性等を良好にすることが容易である。下付き文字mが付された括弧内の基は、疎水基部の分子の嵩高さの点から、ベンジル基(RおよびRの両方が水素原子である基)あるいはスチレン基(RおよびRの一方が水素原子、他方がメチル基である基)であることが好ましい。また、mが2以上である場合、つまり下付き文字mが付された括弧内の基が複数存在する場合、それらの基は同じであってもよく、異なっていてもよい。
また、界面活性剤(D)としては市販品を用いることができる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば日本乳化剤株式会社製の「ニューコール707」、「ニューコール723」、「ニューコール707−F」などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤((D−1)成分)としては、例えば日本乳化剤株式会社製の「ニューコール707−SF」、「ニューコール723−SF」、第一工業製薬株式会社製の「ハイテノールNF−13」、「ハイテノールNF−17」などが挙げられる(いずれも製品名)。
ノニオン系界面活性剤((D−2)成分)としては、特に限定はされる化合物はないが、反応活性低下作用が非常に優れることから、脂肪族系ノニオン系界面活性剤が好ましい。脂肪族ノニオン系界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、グリセロールの脂肪酸エステル、ソルビトールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらエチレンオキサイド付加物においては、ポリエチレンオキサイド鎖中の一部にプロピレンオキサイドユニットをランダムあるいはブロック状に含有したタイプも好適に用いられる。
高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物としては、これらのポリエチレンオキサイド鎖中の一部にプロピレンオキサイドユニットをランダム又はブロック状に含有したものがより好ましい。なぜならば、これらはアンモニウムイオンのエポキシ基に対する反応活性を低下させる能力が優れているためである。脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物としては、モノエステルタイプのもの、ジエステルタイプさらにはトリエステル、テトラエステルタイプのものなども利用できる。
また、(D−2)成分も市販品を用いることができ、例えば、青木油脂株式会社製の「ファインサーフFON180E06(製品名)」が挙げられる。
化合物(D)の含有量は、サイジング剤が水中に分散した水分散液の安定性やサイジング剤のサイジング効果を勘案して適宜決定することができるが、目安としてサイズ剤100質量%中、5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましい。界面活性剤の含有量が5質量%以上であれば、サイジング剤が水中に分散した水分散液の安定性を良好にすることが容易であり、30質量%以下であれば、サイジング剤の効果を発現させることが容易である。
<(D−1)成分および(D−2)成分の含有量>
本発明のサイジング剤は、(D−1)成分と(D−2)成分とを含有する場合、(D−1)成分と(D−2)成分との含有量の比(質量比)が、(D−2)成分/(D−1)成分=1/10〜1/5の範囲内であることが好ましい。
前記質量比がこの範囲であれば、化合物(D)に由来するアンモニウムイオンの、化合物(A)のエポキシ基に対する反応活性を抑制することが容易になり、その結果、サイジング剤を付着させた炭素繊維の硬さのが急激に変化することを抑制できる。さらに、水等を媒体としてサイジング剤を乳化させた際の乳化安定性や、サイジング処理された炭素繊維表面の、樹脂に対する濡れ性が向上するので好ましい。
また、本発明のサイジング剤においては、(D−1)成分と(D−2)成分とを含有する場合には、全サイジング成分中に占める(D−1)成分および(D−2)成分の合計量の割合が10〜25質量%であることが好ましい。上記範囲内であると、サイジング剤液の乳化安定性が非常によく、サイジング剤の効果を発揮することが容易である。(D−1)成分および(D−2)成分の合計量の更に好ましい下限値は13質量%であり、更に好ましい上限値は20質量%である。
<化合物(E)>
本発明の炭素繊維用サイジング剤は、上述した化合物(A)〜(D)に加えて、さらに、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物と、ジカルボン酸化合物とのエステル化合物であって、酸価が50以上であるエステル化合物(E)(以下、適宜「化合物(E)」と略する)を含有しても良い。
前記化合物(E)は、分子量が1000程度で、分子の一方の末端にカルボキシル基を有する化合物を主要構成成分としていることが好ましい。このような化合物(E)は、マトリックス樹脂、特にエポキシ樹脂やビニルエステル樹脂と優れた相溶性を示すため、サイジング処理された炭素繊維の樹脂に対する濡れ性が向上し、樹脂含浸性がさらに向上する。
前記「ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物」としては、ビスフェノール類1モルに対して、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドを2〜4モル付加した化合物が好ましい。ビスフェノール類1モルに対するエチレンオキシド又はプロピレンオキシドの付加量が4モル以下であると、ビスフェノール類が本来有する分子鎖の剛直性を損なうことなく、マトリックス樹脂との親和性を良好にすることが容易である。より好ましくは、ビスフェノール類にエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを2モル付加したものである。ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物は、1種単独でもよく、また複数の化合物を混合したものであってもよい。
前記「ジカルボン酸化合物」は、炭素数が4〜6の脂肪族化合物が好ましい。ジカルボン酸化合物として芳香族化合物を用いると、得られるエステル化合物の融点が相対的に高く、マトリックス樹脂との溶解性が相対的に劣る傾向がある。ジカルボン酸化合物として脂肪族化合物を用いると、炭素繊維に対するマトリックス樹脂の濡れ性が良好になるので好ましい。また、炭素数が6以下の脂肪族化合物をジカルボン酸化合物として用いると、得られるエステル化合物の剛直性を損なうことなく、マトリックス樹脂との親和性を良好にすることが容易である。
ジカルボン酸化合物としては、たとえばフマル酸、マレイン酸、メチルフマル酸、メチルマレイン酸、エチルフマル酸、エチルマレイン酸、グルタコン酸、イタコン酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸などが挙げられる。
本発明の炭素繊維用サイジング剤に加えることができる化合物(E)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明のサイジング剤においては、化合物(E)の質量の、化合物(A)と化合物(B)との合計質量に対する比(化合物(E)/[化合物(A)+化合物(B)])が2.0以下であることが好ましい。2.0倍以下であると、化合物(A)のエポキシ基−化合物(E)の酸性基(カルボキシ基等)の相互作用によって化合物(A)―炭素繊維表面間の相互作用が低減することを、容易に防止できる。その結果、化合物(A)によるサイジング剤のカップリング機能が容易に発揮され、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性が良好なものとなる。この比は、1.75以下がより好ましく、1.55以下がさらに好ましい。この比の下限値は、特に制限はないが、サイジング処理された炭素繊維の樹脂に対する濡れ性、樹脂含浸性を向上させる化合物(E)による効果を発揮させるためには、0.2以上がより好ましく、0.4以上がさらに好ましい。
<炭素繊維用サイジング剤の水分散液>
本発明の炭素繊維用サイジング剤の水分散液は、各成分を常法により混合、撹拌(乳化、水分散化)することにより得ることができる。前記水分散液中のサイジング剤濃度(不揮発成分の濃度)、すなわちサイジング用水分散液中の揮発成分(サイジング後に乾燥除去される水など)以外の成分の濃度は、水が連続相として存在する濃度範囲であれば特に限定されるものではなく、通常は10〜50質量%が用いられる。サイジング用水分散液の調製段階で、サイジング剤濃度を10質量%未満としても問題はないが、サイジング用水分散液中の水の占める割合が大きくなり、サイジング用水分散液の調製から使用(炭素繊維のサイジング処理)までの間の運搬・保管などの面で不経済となる場合がある。そのため、炭素繊維のサイジング処理するに際しては、サイジング剤の炭素繊維への付着量が所望の値となるように、サイジング用水分散液を0.1〜10質量%程度に希釈して、炭素繊維に付着させる方法が一般的である。
<炭素繊維用サイジング剤が付着した炭素繊維束>
本発明の炭素繊維用サイジング剤が付着した炭素繊維束(サイジング処理炭素繊維)に好適に用いることができる炭素繊維束は、ピッチ、レーヨンあるいはポリアクリロニトリルなどのいずれの原料物質から得られたものであってよく、高強度タイプ(低弾性率炭素繊維)、中高弾性炭素繊維又は超高弾性炭素繊維のいずれでもよい。炭素繊維用サイジング剤を付着させる方法は、例えば、サイジング剤の分散液をローラー浸漬法、ローラー接触法により炭素繊維に付着させ、乾燥することによって行うことができるが、生産性、均一付着性の観点においては、ローラー浸漬法が好ましい。
本発明の炭素繊維用サイジング剤が付着した炭素繊維束におけるサイジング剤の付着量は、炭素繊維とサイジング剤の合計質量に対して0.6質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上1.6質量%以下であることがより好ましい。サイズ剤の付着量が0.6質量%以上であれば、炭素繊維表面全体をサイズ剤で覆いつくすことが容易になる。また、平滑性と収束性を同時に炭素繊維束に付与することができる。さらには、炭素繊維強化複合材料を製造する際にサイジング処理炭素繊維とマトリックス樹脂を混合させたときに、上述した界面樹脂層による柔軟性や靭性等の機能発現性を存分に発揮させることができる。一方、サイズ剤の付着量が2.0質量%以下であれば、炭素繊維表面にサイズ剤が多く堆積してサイジング処理炭素繊維が硬くなる結果としてサイジング処理炭素繊維の取り扱い性やマトリックス樹脂の含浸性が低下することを、容易に抑制できる。
また、サイズ剤の付着量が上記範囲内であれば、炭素繊維強化複合材料において、マトリックス樹脂から界面樹脂層を介してサイジング処理炭素繊維に伝わる応力の伝達に不具合が生じて機械的特性が低下することを抑制できる。また、サイズ剤の付着量が上記範囲内であれば、炭素繊維の集束性や耐擦過性が優れたものになるとともに、マトリックス樹脂に対する濡れ性やマトリックス樹脂との間の界面接着力を十分に向上し、得られる炭素繊維強化複合材料に良好な力学的特性が備えられるようになる。
なお、サイジング処理される炭素繊維のフィラメント数、繊維径、表面皺などにより炭素繊維束の集束性は変化する。本発明においては、サイジング剤における各成分の割合を調節したり、或いはサイジング剤の付着量を調節することによって、好適な収束性とすることができる。サイジング剤の付着量は、サイジング処理におけるサイジング剤水分散液のサイジング剤濃度の調整や、絞り量調整によって調節することができる。
本発明の炭素繊維用サイジング剤が付着した炭素繊維束は、上記サイジング剤が付与されていることによって、機械的摩擦などによる毛羽やガイド類へのサイジング剤の堆積が発生しにくく、また樹脂の含浸性や接着性にも優れるものとなる。
また、特に、上記サイジング剤が化合物(E)を含有する場合、マトリックス樹脂と優れた相溶性を示す。そのため、サイジング処理された炭素繊維の樹脂に対する濡れ性が向上し、樹脂含浸性がさらに向上する。
(シート状基材)
本発明の炭素繊維用サイジング剤が付着した炭素繊維束は、製織等々の工程通過性に優れ種々のシート状基材に好適に用いることができる。たとえば、一方向配列シートのシート状基材、織布の形態とするシート状基材、あるいは複数の繊維束を並列に配置したシート状基材を複数枚含み、それぞれのシート状基材に含まれるトウ状の炭素繊維束の方向が、基準とする方向に対して、異なる角度をもって積層され、ステッチ糸で一体化された、いわゆる多軸積層編物シート基材のようなシート状基材に好適に加工することができる。特に織布シート状基材や多軸積層編物シート状基材への加工においては、通常、炭素繊維は擦過によって毛羽が発生し易いが、本発明の炭素繊維用サイジング剤が付着した炭素繊維束は、上記サイジング剤により著しく毛羽立ちを抑えることが可能となっている。
(炭素繊維強化樹脂組成物、シート状基材を含む複合材)
本発明の炭素繊維用サイジング剤が付着した炭素繊維束および本発明のシート状物は、マトリックス樹脂と複合化され、一方向プリプレグ、織物プリプレグ、編物プリプレグ、トウプレグ、短繊維強化樹脂含浸シート、短繊維マット強化樹脂含浸シートなどの形態で、炭素繊維強化樹脂組成物を構成することができる。マトリックス樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ラジカル重合系樹脂であるアクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、さらにはフェノール樹脂などが挙げられる。
炭素繊維強化樹脂組成物は、本発明の炭素繊維用サイジング剤が付着した炭素繊維束もしくは本発明のシート状基材に、上記マトリックス樹脂を含浸させることにより製造できる。このような炭素繊維強化樹脂組成物の製造方法としては、通常行われている方法を採用することができる。例えば、ホットメルト法、RTM法、溶剤法、シラップ法、又はシートモールドコンパウンド(SMC)などに用いられる増粘樹脂法などの方法を挙げることができる。
本発明の炭素繊維用サイジング剤が付着した炭素繊維束もしくは本発明のシート状基材を用いた炭素繊維強化樹脂組成物は、前記サイジング処理炭素繊維が強化材として用いられているため、マトリックス樹脂として、エポキシ樹脂は勿論、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂などのラジカル重合系樹脂、さらにはフェノール樹脂などとの含浸性に優れ、炭素繊維とマトリックス樹脂の界面接着力が強く、良好な力学的特性を示すものとすることができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
[実施例1]
(サイジング剤の調製)
ミキサー(特殊機化工業(株)製、製品名:ハイビスディスパーミックス、ホモミキサー仕様:型式3D−5型)を用い、以下の手順で、転相乳化することでサイジング剤を調製した。
表1の実施例1の欄に示す種類と配合量の、(D)成分以外の成分を、120℃にてプラネタリーミキサーとホモミキサーで混練、混合した。その後、混練しながら90℃とし、引き続き、(D)成分の水溶液を少量ずつ添加した。この工程で、内容物の粘度は徐々に上昇した。(D)成分の水溶液を全て投入した後、10分間、混練しながら60℃とした。次に、脱イオン水を少量ずつ滴下して転相点を通過した後、滴下する水量を増加した。最終的にサイジング剤濃度40質量%程度のサイジング剤水分散液を得た。
(サイジング処理炭素繊維の作製と工程通過性評価)
以下の手順で炭素繊維用サイジング剤が付着した炭素繊維を製造した。内部に浸漬ローラーを有する浸漬槽内に、濃度を5.0%に調節した上記サイジング剤の水分散液を満たし、該水分散液中に、サイジング剤を付与していない炭素繊維束(三菱レイヨン株式会社製、製品名:パイロフィルTRW40 50L、フィラメント数50,000本、ストランド強度4,100MPa、ストランド弾性率240GPa、繊維密度1.81g/cm3、繊維目付け3,750mg/m)を浸漬した。その後、表面温度150℃の加熱ロールに60秒間、接触させて乾燥することによってサイジング剤が付着した炭素繊維束を得た。なお、炭素繊維束はボビンに巻き取った。この際、加熱乾燥処理からボビンに巻き取るまでの工程において、サイジング処理工程通過性の評価を行った。加熱乾燥処理からボビンに巻き取るまでの工程において、毛羽の発生が無く、かつ工程間のロールへの繊維の巻き付きが無く、かつ工程間の固定ピンガイドにサイズ剤由来の堆積物の付着が無い場合を○、毛羽の発生が有る、あるいは工程間のロールへの繊維の巻き付きがある、あるいは工程間の固定ピンガイドにサイズ剤由来の堆積物の付着がある場合を×としてサイジング処理工程通過性を評価した。その結果を表1に示す。
(炭素繊維用サイジング剤が付着した炭素繊維束のサイジング剤付着量の測定)
炭素繊維用サイジング剤が付着した炭素繊維束を秤量(W1)し、50リットル/分の窒素気流中、温度450℃に設定したマッフル炉(ヤマト科学株式会社製FP410)に15分間静置し、炭素繊維束に付着したサイジング剤を完全に熱分解させる。そして、20リットル/分の乾燥窒素気流中の容器に移し、15分間冷却した後の炭素繊維束を秤量(W2)して、次式より付着量を求めた。その結果を表1に示す。
サイジング剤の付着量(質量%)
=[W1(g)−W2(g)]/[W1(g)]×100
(多軸積層編物シート状基材の作製と工程通過性評価)
上記のようにして得た一方向シート状基材2枚を積層し、ついでポリエステル繊維を用いてステッチ処理による一体化を行った。この際、ステッチ糸が連続する方向を基準として、+45°/−45°で2枚の一方向シート状基材を積層した。このステッチ処理工程において、工程通過性の評価を行った。ステッチ針表面におけるサイジング剤の堆積や毛羽の付着がなく、かつ得られた多軸積層編物シート状物において炭素繊維束間の隙間がなく、かつ多軸積層編物シート状物表面に毛羽のないものを◎とし、ステッチ針表面におけるサイジング剤の堆積や毛羽の付着がある、あるいは得られた多軸積層編物シート状物において炭素繊維束間の隙間がある、あるいは多軸積層編物シート状物表面に毛羽のないものを×とした。その結果を表1に示す。
(一方向炭素繊維強化複合材料(エポキシ樹脂)の作製と90度方向曲げ試験)
Bステージ化したエポキシ樹脂組成物(三菱レイヨン(株)製:#350;130℃硬化タイプ)からなるマトリックス樹脂をロールコーターで片側表面が離型処理されている離型紙に単位面積あたり54g/m2で均一に塗布した。その樹脂担持シートの樹脂側に、上記の方法で得られたサイズ剤を付与した炭素繊維を繊維目付が200g/m2になるように一方向に引き揃えて貼り付けた。さらにその炭素繊維側から上記と同様の単位面積あたり54g/m2で均一に樹脂を塗布した樹脂担持シートの樹脂側の面を炭素繊維織布側にして重ね合わせ、これらを100℃、線圧:2kg/cmで加圧加熱して含浸させた。その後、片面の離型紙を剥離し、その面に保護フィルムを貼り付けることにより、炭素繊維目付が200g/m2であり、樹脂含有率(以下、「RC」とする。)が35質量%の一方向炭素繊維プリプレグを作製した。
上記一方向炭素繊維プリプレグを、炭素繊維束の向きを一方向に揃えて積層し、オートクレーブを用いて加熱・加圧硬化(室温から180℃まで2時間、180℃ 2時間保持 圧力0.6MPa)させ、2mm厚の複合材を作成した。このようにして得られた複合材の90度方向曲げ強度をASTM D 790に従って測定を実施した。その結果を表1に示す。
(一方向炭素繊維強化複合材料(ビニルエステル樹脂)の作製と90度方向曲げ試験)
サイジング剤を付着させた炭素繊維束34本(投入本数:34本)を使用し、サイジング剤が付着した炭素繊維束をクリールから巻き出し、ガイドロールを介してシート状に配列した後にレジンバスに導き、後述する熱硬化性樹脂VEに浸漬し、同樹脂を付着させてから、ガイドバーにより擦過させて含浸させると共に、過剰の樹脂をある程度除去した。この後、2mm×50mmの矩形断面をなす引抜通路をもつ引抜成形用金型へと導入し、最終的に過剰な樹脂を除去した。引抜成形用金型6の金型温度は155℃、成形速度は0.25m/分とした。
ここで、引抜成型に用いた熱硬化性樹脂VE1は下記のものである。
「VE1」:主剤(DIC社製、製品名:DICLITE UE−3505)と、硬化剤(化薬アクゾ社製、製品名:トリゴノックズ117)と、硬化促進剤(日本油脂社製、製品名:パーロイルPCT)と、内部離型剤(AXEL社製、製品名:モールドウィズPS−125)とを、主剤/硬化剤/効果促進剤/内部離型剤=100/2/0.75/1の質量比で混合したもの。
上記で得られた引抜成型物の90度方向曲げ強度をASTM D 790に従って測定を実施した。その結果を表1に示す。
[実施例2〜9]
サイジング剤を表1に示した組成としたこと以外は実施例1と同様な方法で作成、評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例10]
浸漬槽内の濃度をサイジング剤の水分散液の濃度を3.0%としたこと以外は、実施例1と同様な方法で作成、評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例11]
浸漬槽内の濃度をサイジング剤の水分散液の濃度を10.0%としたこと以外は、実施例1と同様な方法で作成、評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例1〜4]
サイジング剤を表2に示した組成としたこと以外は実施例1と同様な方法で作成、評価を行った。結果を表2に示す。
[比較例5]
浸漬槽内の濃度をサイジング剤の水分散液の濃度を1.0%としたこと以外は、実施例1と同様な方法で作成、評価を行った。結果を表2に示す。
[比較例6]
浸漬槽内の濃度をサイジング剤の水分散液の濃度を15.0%としたこと以外は、実施例1と同様な方法で作成、評価を行った。結果を表2に示す。
表1〜3に示す成分はそれぞれ表4に詳細を示すものである。ウレタンアクリレートオリゴマーの硬化物の引張伸び率及びガラス転移温度(Tg)についてはカタログ値を採用した。
表3中のA1〜A2およびE1〜E3は、より詳細には、それぞれ、下記の手順で得られた合成品である。
(A)成分、片末端アクリル酸変性ジグリシジルエーテルビスフェノールA
ここで、A1〜A2において、(A)成分として有効なハーフエステル成分は1/2であり、残り1/2は未反応物とジエステル物である。表1〜3に示すA1〜A2の配合量は、ハーフエステル成分、未反応物およびジエステル物の総量を表している。したがってハーフエステルとしての有効成分量は、表1〜3の配合量の1/2である。すなわち、サイジング剤中の(A)成分の含有量を計算する際には、表に示されるA1およびA2の配合量の半分の値を用いる。ただし、全サイジング成分の量には、上記ハーフエステル成分の配合量だけでなく上記未反応物およびジエステル物の配合量も含まれる。すなわち、全サイジング成分の量を計算するためには、表に示されるA1およびA2の配合量の値を用いる。
A1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、製品名:JER828)378質量部に対し、アクリル酸86質量部、ハイドロキノン1質量部、リチウムクロリド1質量部を加え、100℃で加熱反応させて得た、JER828/JER828片末端アクリル変性エポキシ樹脂(ハーフエステル)/JER828両末端アクリル変性エポキシ樹脂(ジエステル)の混合質量比1/2/1の混合物。
A2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、製品名:JER834)1000質量部に対し、アクリル酸86質量部、ハイドロキノン1質量部、リチウムクロリド1質量部を加え、100℃で加熱反応させて得た、JER834/JER834片末端アクリル変性エポキシ樹脂(ハーフエステル)/JER834両末端アクリル変性エポキシ樹脂(ジエステル)の混合質量比1/2/1の混合物。
(E)成分、ポリエステルの製法
E1:ビスフェノールA1モル部に対してPO(プロピレンオキサイド)3モル部が付加したビスフェノールAのPO付加物(三洋化成工業株式会社製、製品名:ニューポールBP−3P)800質量部、フマル酸278質量部(アルコール/酸=1/1.2モル比)及びテトライソポプロポキシチタネート1質量部を、ガラス反応容器中、窒素流通下180℃で−0.1MPa(ゲージ圧)まで減圧し水を留去しながら10時間反応させて得た。
E2:ビスフェノールA1モル部に対してPO3モル部が付加したビスフェノールAのPO付加物(三洋化成工業株式会社製、製品名:ニューポールBP−3P)400質量部、フマル酸139質量部(アルコール/酸=1/1.2モル比)及びテトライソポプロポキシチタネート1質量部を、ガラス反応容器中、窒素流通下180℃で水を留去しながら10時間反応させた。更にビスフェノールA1モル部に対してEO(エチレンオキサイド)10モル部が付加したビスフェノールAのEO付加物(三洋化成工業株式会社製、製品名:ニューポールBPE−100)668質量部を加えて180℃で−0.1MPa(ゲージ圧)まで減圧し水を留去しながら10時間反応させて得た。
E3:ビスフェノールA1モル部に対してPO3モル部が付加したビスフェノールAのPO付加物(三洋化成工業株式会社製、製品名:ニューポールBP−3P)800質量部、フマル酸232質量部(アルコール/酸=1/1モル比)及びテトライソポプロポキシチタネート1質量部を、ガラス反応容器中、窒素流通下180℃で水を留去しながら10時間反応させた。更にビスフェノールA1モル部に対してEO10モル部が付加したビスフェノールAのEO付加物(三洋化成工業株式会社製、製品名:ニューポールBPE−100)668質量部を加えて180℃で−0.1MPa(ゲージ圧)まで減圧し水を留去しながら10時間反応させて得た。
上記結果に示すように、実施例1〜11のように本発明のサイジング剤を付与した場合の炭素繊維束は、サイジング処理後の加熱乾燥処理からボビンに巻き取るまでの工程において、毛羽の発生が無く、かつ工程間のロールへの繊維の巻き付きが無く、かつ工程間の固定ピンガイドにサイズ剤由来の堆積物の付着がなく、工程通過性は非常に安定したものであった。また本発明のサイジング剤が付与された炭素繊維束を用いて一方向シート状基材を作成した際も、ボビンからの解舒の際に巻き崩れや糸切れがなく、かつ金属棒表面におけるサイジング剤の堆積や毛羽立ちがなく、工程通過性は非常に安定しており、かつ得られた一方向シート状基材において炭素繊維束間の隙間がなく、かつシート状基材表面に毛羽のなく、外観品位に優れるものであった。多軸積層編物シート状基材を作成した際も、ステッチ針表面におけるサイジング剤の堆積や毛羽の付着がなく、工程通過性は非常に安定しており、かつ得られた多軸積層編物シート状基材は炭素繊維束間の隙間がなく、かつ多軸積層編物シート状物表面に毛羽のなく、外観品位に優れるものであった。さらに、本発明のサイジング剤が付与された炭素繊維束を用いて得た引抜成型複合材は、いずれもラジカル重合系樹脂との優れた接着性を有していた。


Claims (7)

  1. 下記(1)〜(4)を満足する、炭素繊維用サイジング剤。
    (1)前記炭素繊維用サイジング剤が下記(A)〜(D)を含有する。
    ・分子中に複数個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と不飽和一塩基酸とのエステル化合物であって、分子中に少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物(A)
    ・硬化物の引張伸び率が40%以上の2官能タイプの、ウレタンアクリレートオリゴマー化合物(B)
    ・ステアリン酸エステル化合物(C)
    ・界面活性剤(D)
    (2)前記化合物(A)と前記ウレタンアクリレートオリゴマー(B)との含有量の質量比が、ウレタンアクリレートオリゴマー(B)/化合物(A)の比として、1/3以上2/1以下。
    (3)全サイジング成分中に占める前記化合物(A)および前記ウレタンアクリレートオリゴマー(B)の合計量の割合が20質量%以上。
    (4)全サイジング成分中に占める前記ステアリン酸エステル化合物(C)の割合が、5質量%以上30質量%以下。
  2. 下記(5)及び(6)を満足する請求項1に記載の炭素繊維用サイジング剤。
    (5)ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物とジカルボン酸化合物とのエステルであって、その酸価が50以上であるエステル化合物(E)を含む。
    (6)前記エステル化合物(E)の含有量が、前記化合物(A)および前記ウレタンアクリレートオリゴマー(B)の合計量の2.0質量倍以下。
  3. 下記(7)及び(8)を満足する、請求項1または2に記載の炭素繊維用サイジング剤。
    (7)界面活性剤(D)として、アンモニウムイオンを対イオンとして有するアニオン系界面活性剤(D−1)と、ノニオン系界面活性剤(D−2)とを含有し、前記アニオン系界面活性剤(D−1)と前記ノニオン系界面活性剤(D−2)との含有量の質量比が、ノニオン系界面活性剤(D−2)/アニオン系界面活性剤(D−1)の比として、1/10以上1/5以下の範囲内である。
    (8)全サイジング成分中に占める前記アニオン系界面活性剤(D−1)および前記ノニオン系界面活性剤(D−2)の合計量の割合が10質量%以上25質量%以下である。
  4. 前記炭素繊維用サイジング剤が付着した炭素繊維からなる炭素繊維束であって、該サイジング剤の付着量が0.6質量%以上2.0質量%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭素繊維束。
  5. 請求項4に記載の炭素繊維束を含むシート状基材。
  6. 請求項4に記載の炭素繊維束からなる炭素繊維強化複合材。
  7. 請求項5に記載のシート状基材からなる炭素繊維強化複合材。
JP2015039895A 2015-03-02 2015-03-02 炭素繊維用サイジング剤、炭素繊維束、シート状基材及び炭素繊維強化複合材 Pending JP2016160549A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015039895A JP2016160549A (ja) 2015-03-02 2015-03-02 炭素繊維用サイジング剤、炭素繊維束、シート状基材及び炭素繊維強化複合材

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015039895A JP2016160549A (ja) 2015-03-02 2015-03-02 炭素繊維用サイジング剤、炭素繊維束、シート状基材及び炭素繊維強化複合材

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2016160549A true JP2016160549A (ja) 2016-09-05

Family

ID=56844609

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015039895A Pending JP2016160549A (ja) 2015-03-02 2015-03-02 炭素繊維用サイジング剤、炭素繊維束、シート状基材及び炭素繊維強化複合材

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2016160549A (ja)

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017078142A1 (ja) * 2015-11-05 2017-05-11 三菱レイヨン株式会社 連続炭素繊維束、シートモールディングコンパウンドおよびそれを用いて成形する繊維強化複合材料
WO2020004523A1 (ja) * 2018-06-29 2020-01-02 三菱ケミカル株式会社 サイジング剤、強化繊維束、繊維強化樹脂成形材料及び繊維強化複合材料
CN112469860A (zh) * 2018-08-02 2021-03-09 三洋化成工业株式会社 纤维用上浆剂组合物、纤维束、纤维产品和复合材料
CN115552068A (zh) * 2020-08-07 2022-12-30 电化株式会社 人工毛发用纤维
JP7212194B1 (ja) 2022-09-05 2023-01-24 三洋化成工業株式会社 繊維用集束剤組成物及び繊維用集束剤溶液
JP7248851B1 (ja) 2022-09-05 2023-03-29 三洋化成工業株式会社 繊維用集束剤組成物及び繊維用集束剤溶液
JP7248852B1 (ja) 2022-09-05 2023-03-29 三洋化成工業株式会社 繊維用集束剤組成物及び繊維用集束剤溶液
CN114263043B (zh) * 2021-08-27 2024-03-22 台湾塑胶工业股份有限公司 用于碳纤维的上浆剂
JP7676055B1 (ja) * 2024-01-04 2025-05-14 竹本油脂株式会社 繊維用集束剤および繊維

Cited By (25)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR102456745B1 (ko) 2015-11-05 2022-10-19 미쯔비시 케미컬 주식회사 연속 탄소 섬유속, 시트 몰딩 콤파운드 및 그것을 이용하여 성형하는 섬유 강화 복합 재료
JPWO2017078142A1 (ja) * 2015-11-05 2017-11-02 三菱ケミカル株式会社 連続炭素繊維束、シートモールディングコンパウンドおよびそれを用いて成形する繊維強化複合材料
KR20180057707A (ko) * 2015-11-05 2018-05-30 미쯔비시 케미컬 주식회사 연속 탄소 섬유속, 시트 몰딩 콤파운드 및 그것을 이용하여 성형하는 섬유 강화 복합 재료
EP3372728A4 (en) * 2015-11-05 2018-09-12 Mitsubishi Chemical Corporation Continuous carbon fiber bundle, sheet molding compound, and fiber-reinforced composite material to be molded using same
WO2017078142A1 (ja) * 2015-11-05 2017-05-11 三菱レイヨン株式会社 連続炭素繊維束、シートモールディングコンパウンドおよびそれを用いて成形する繊維強化複合材料
KR20200058608A (ko) * 2015-11-05 2020-05-27 미쯔비시 케미컬 주식회사 연속 탄소 섬유속, 시트 몰딩 콤파운드 및 그것을 이용하여 성형하는 섬유 강화 복합 재료
KR102115735B1 (ko) * 2015-11-05 2020-06-05 미쯔비시 케미컬 주식회사 연속 탄소 섬유속, 시트 몰딩 콤파운드 및 그것을 이용하여 성형하는 섬유 강화 복합 재료
WO2020004523A1 (ja) * 2018-06-29 2020-01-02 三菱ケミカル株式会社 サイジング剤、強化繊維束、繊維強化樹脂成形材料及び繊維強化複合材料
CN112292488A (zh) * 2018-06-29 2021-01-29 三菱化学株式会社 上浆剂、增强纤维束、纤维增强树脂成型材料及纤维增强复合材料
JPWO2020004523A1 (ja) * 2018-06-29 2020-07-02 三菱ケミカル株式会社 サイジング剤、強化繊維束、繊維強化樹脂成形材料及び繊維強化複合材料
US12270148B2 (en) 2018-06-29 2025-04-08 Mitsubishi Chemical Corporation Sizing agent, reinforcement fiber tow, fiber-reinforced resin-molding material, and fiber-reinforced composite material
CN112292488B (zh) * 2018-06-29 2023-12-29 三菱化学株式会社 上浆剂、增强纤维束、纤维增强树脂成型材料及纤维增强复合材料
CN112469860A (zh) * 2018-08-02 2021-03-09 三洋化成工业株式会社 纤维用上浆剂组合物、纤维束、纤维产品和复合材料
US12241200B2 (en) 2018-08-02 2025-03-04 Sanyo Chemical Industries, Ltd. Sizing agent composition for fibers, fiber bundle, fiber product and composite material
CN112469860B (zh) * 2018-08-02 2024-04-19 三洋化成工业株式会社 纤维用上浆剂组合物、纤维束、纤维产品和复合材料
CN115552068A (zh) * 2020-08-07 2022-12-30 电化株式会社 人工毛发用纤维
CN115552068B (zh) * 2020-08-07 2024-05-10 电化株式会社 人工毛发用纤维
CN114263043B (zh) * 2021-08-27 2024-03-22 台湾塑胶工业股份有限公司 用于碳纤维的上浆剂
JP7212194B1 (ja) 2022-09-05 2023-01-24 三洋化成工業株式会社 繊維用集束剤組成物及び繊維用集束剤溶液
JP2024035896A (ja) * 2022-09-05 2024-03-15 三洋化成工業株式会社 繊維用集束剤組成物及び繊維用集束剤溶液
JP2024035898A (ja) * 2022-09-05 2024-03-15 三洋化成工業株式会社 繊維用集束剤組成物及び繊維用集束剤溶液
JP2024035893A (ja) * 2022-09-05 2024-03-15 三洋化成工業株式会社 繊維用集束剤組成物及び繊維用集束剤溶液
JP7248852B1 (ja) 2022-09-05 2023-03-29 三洋化成工業株式会社 繊維用集束剤組成物及び繊維用集束剤溶液
JP7248851B1 (ja) 2022-09-05 2023-03-29 三洋化成工業株式会社 繊維用集束剤組成物及び繊維用集束剤溶液
JP7676055B1 (ja) * 2024-01-04 2025-05-14 竹本油脂株式会社 繊維用集束剤および繊維

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5497908B2 (ja) 炭素繊維用サイジング剤、その水分散液、サイジング剤の付着した炭素繊維束、シート状物、および炭素繊維強化複合材
JP3860169B2 (ja) 炭素繊維用サイジング剤、その水分散液、サイジング処理された炭素繊維、該炭素繊維を使用したシート状物、及び炭素繊維強化複合材料
JP2016160549A (ja) 炭素繊維用サイジング剤、炭素繊維束、シート状基材及び炭素繊維強化複合材
JP6565937B2 (ja) 連続炭素繊維束、シートモールディングコンパウンドおよびそれを用いて成形する繊維強化複合材料
CN1249292C (zh) 碳纤维用上浆剂、其水分散液、上浆处理过的碳纤维、使用该碳纤维的片状物和碳纤维强化复合材料
JP2957406B2 (ja) 炭素繊維ストランド用サイジング剤、サイズ処理された炭素繊維ストランド、及びその炭素繊維ストランドを強化繊維としたプリプレグ
JP4866701B2 (ja) 炭素繊維用サイジング剤、サイジング処理炭素繊維、シート状物
JP2012246583A (ja) 一方向強化織物とその製造方法、これを用いたプリプレグおよび炭素繊維複合材料
JP6503683B2 (ja) トウプリプレグ
JP2014181418A (ja) サイジング剤塗布炭素繊維、サイジング剤塗布炭素繊維の製造方法、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料
JP2012007280A (ja) 炭素繊維束及びその製造方法、ならびにそれからの成形品
JP4558149B2 (ja) 炭素繊維用サイズ剤、炭素繊維のサイジング方法、サイジング処理された炭素繊維並びにそれを含むシート状物及び繊維強化複合材料
JP4058297B2 (ja) 炭素繊維用サイズ剤
JPH10131052A (ja) サイズ処理された炭素繊維ストランド、及びその炭素繊維ストランドを強化繊維としたプリプレグ
JP2020147876A (ja) 炭素繊維用サイジング剤、その水分散液、サイジング剤付着炭素繊維、及び炭素繊維強化複合材料の製造方法。