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JP2016155946A - 熱硬化性樹脂組成物、熱伝導性樹脂シート、回路基板及びパワーモジュール - Google Patents

熱硬化性樹脂組成物、熱伝導性樹脂シート、回路基板及びパワーモジュール Download PDF

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JP2016155946A JP2015035115A JP2015035115A JP2016155946A JP 2016155946 A JP2016155946 A JP 2016155946A JP 2015035115 A JP2015035115 A JP 2015035115A JP 2015035115 A JP2015035115 A JP 2015035115A JP 2016155946 A JP2016155946 A JP 2016155946A
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研史 三村
由利絵 古田
Yurie Furuta
由利絵 古田
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Abstract

【課題】熱伝導性、耐熱性及び接着強度に優れた熱伝導性樹脂シート並びに樹脂絶縁基板を与える熱硬化性樹脂組成物を提供すること。【解決手段】エポキシ樹脂と、フェノール硬化剤と、エポキシ樹脂の自己重合反応促進剤と、重量平均分子量が10,000以上であるフェノキシ樹脂と、高熱伝導無機充填材とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、該フェノール硬化剤の官能基が、全エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して0.2〜0.8当量の範囲であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。【選択図】なし

Description

本発明は、熱硬化性樹脂組成物、熱伝導性樹脂シート、回路基板及びパワーモジュールに関し、特に電気・電子機器等の発熱部材から放熱部材へ熱を伝達させる熱伝導性樹脂シートを製造するために用いられる熱硬化性樹脂組成物、その熱硬化性樹脂組成物を用いた熱伝導性樹脂シート、更にはその熱硬化性樹脂組成物からなる絶縁層を備えた回路基板、及びその熱伝導性樹脂シートを備えたパワーモジュールに関する。
従来、電気・電子機器の発熱部材から放熱部材へ熱を伝達させる部材には、熱伝導性及び電気絶縁性に優れていることが要求される。この要求を満たすものとして、熱伝導性及び電気絶縁性に優れた無機充填材を熱硬化性樹脂等の樹脂マトリクス中に含有する樹脂組成物を用いて製造された熱伝導性樹脂シートが広く用いられている。ここで、熱伝導性及び電気絶縁性に優れた無機充填材としては、アルミナ、窒化ホウ素(BN)、シリカ、窒化アルミニウム(AlN)等が挙げられるが、その中でも窒化ホウ素は、熱伝導性及び電気絶縁性に加えて化学的安定性にも優れており、また無毒性且つ比較的安価でもあるため、熱伝導性樹脂シートに広く用いられている。
窒化ホウ素の分子構造は、黒鉛と同様の層状構造であり、一般に市販されている窒化ホウ素の結晶構造は鱗片状である。この鱗片状窒化ホウ素粒子は熱的異方性を有しており、結晶の面方向(a軸方向)の熱伝導率は、厚さ方向(c軸方向)の熱伝導率の数倍から数十倍と言われている。そのため、鱗片状窒化ホウ素粒子を分散させた熱硬化性樹脂組成物を用い、ドクターブレード法などの公知の方法によって熱伝導性樹脂シートを製造した場合、鱗片状窒化ホウ素粒子のa軸方向はシートの面方向に配向し易いため、シートの厚さ方向の熱伝導性が十分に得られないという問題がある。そこで、鱗片状窒化ホウ素粒子を凝集させた二次凝集体や、これをさらに焼結させた二次焼結体のような等方的な熱伝導性を有する二次粒子を作製し、この二次粒子を樹脂マトリクス中に分散させた熱硬化樹脂組成物を用いて熱伝導性樹脂シートを製造することにより、シートの厚さ方向の熱伝導性を向上させる方法が提案されている。
しかしながら、熱伝導性を高めることを目的として窒化ホウ素粒子の二次凝集粒子のような無機充填材の配合量を増加する場合、樹脂マトリクスと二次凝集粒子との間の界面の接着性を良好にする工夫が必要となる。すなわち、二次凝集粒子のような無機充填材の配合量の増加に伴って樹脂マトリクスと二次凝集粒子との間の界面が増大することにより樹脂マトリクスが二次凝集粒子の微小空洞(ポア)に浸透し難くなる。樹脂マトリクスと二次凝集粒子との界面の密着性が十分とならなかったり、二次凝集粒子の微小空洞(ポア)に樹脂マトリクスが十分に浸透できない場合、熱伝導性樹脂シートの接着強度の低下に繋がる。一方、窒化ホウ素粒子の二次凝集粒子のような無機充填材の配合量を増加する場合、銅箔などの導体基材の表面の凹凸に無機充填材が入り込むために樹脂マトリクスが浸透し難くなる。樹脂マトリクスが銅箔などの導体基材の表面の凹凸に浸透できない場合、絶縁シートと銅箔などの導体基材との接着強度が低下する。このため、熱伝導性及び接着強度に優れたシートを得るためには、樹脂マトリクスと二次凝集粒子との間の界面の十分な接着性や樹脂マトリクスと銅箔などの導体基材の表面との十分な接着性を確保することが必要となる。
そこで、絶縁シートと銅箔のような導体基材との接着強度を高めるために、ビスフェノールS骨格を有し、且つ重量平均分子量が1万以上であるフェノキシ樹脂と、重量平均分子量が1万未満であるエポキシ樹脂及び重量平均分子量が1万未満であるオキセタン樹脂の内の少なくとも一方の樹脂と、硬化剤と、熱伝導率が10W/(m・K)以上である充填材とを含む絶縁シートが提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、窒化ホウ素粒子を凝集させて焼結した二次凝集粒子を特許文献1における充填材として用いた場合、特許文献1に記載のビスフェノールS骨格を有するフェノキシ樹脂は、Tgが100℃より高いために熱硬化性樹脂組成物の粘度が高くなり、二次凝集粒子中の微小空洞(ポア)に樹脂マトリクス成分が浸透し難くなる。その結果、この熱硬化性樹脂組成物を用いて作製した熱伝導性樹脂シートでは、樹脂マトリクスと二次凝集粒子との間の十分な密着性が得られず、また、樹脂マトリクスが銅箔基材などの導体基材表面の凹凸に浸透しにくくなり、熱伝導性樹脂シートの十分な接着強度を得ることができないという問題がある。
特開2010−212210号公報
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、熱伝導性、耐熱性及び銅箔などの導体基材との接着強度に優れた熱伝導性樹脂シートを与える熱硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、熱伝導性、耐熱性及び銅箔などの導体基材との接着強度に優れた熱伝導性樹脂シート及び回路基板を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、耐熱性及び熱放散性に優れたパワーモジュールを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記のような問題を解決すべく鋭意研究した結果、高熱伝導性無機充填材を樹脂マトリクス成分中に分散させた熱硬化性樹脂組成物において、エポキシ樹脂と特定のフェノキシ樹脂とフェノール硬化剤とエポキシ樹脂の自己重合反応促進剤とを併用し、樹脂マトリクスの構造とその硬化反応とを制御すれば、熱伝導性及び耐熱性を低下させることなく、接着強度を向上させた熱伝導性樹脂シート及び回路基板を与える熱硬化性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂と、フェノール硬化剤と、エポキシ樹脂の自己重合反応促進剤と、重量平均分子量が10,000以上であるフェノキシ樹脂と、高熱伝導性無機充填材とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、該フェノール硬化剤の官能基が、全エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して0.2当量以上0.8当量以下の範囲であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。
また、本発明は、上記の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする熱伝導性樹脂シートである。
また、本発明は、金属板と、該金属板の一方の面の上に上記の熱硬化性樹脂組成物から形成された絶縁層と、該絶縁層の露出面に形成された導体回路とを備えることを特徴とする回路基板である。
また、本発明は、一方の放熱部材に搭載された電力半導体素子と、該電力半導体素子で発生する熱を外部に放熱する他方の放熱部材と、該電力半導体素子で発生する熱を該一方の放熱部材から該他方の放熱部材に伝達する、上記の熱伝導性樹脂シートとを備えることを特徴とするパワーモジュールである。
本発明によれば、熱伝導性、耐熱性及び銅箔などの導体基材との接着強度に優れた熱伝導性樹脂シートを与える熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、熱伝導性、耐熱性及び接着強度に優れた熱伝導性樹脂シート及び回路基板を提供することができる。
さらに、本発明によれば、熱放散性及び耐熱性に優れたパワーモジュールを提供することができる。
窒化ホウ素の分子構造を表す図である。 窒化ホウ素の結晶構造を表す図である。 本発明の実施の形態2に係る熱伝導性樹脂シートの模式断面図である。 本発明の実施の形態2に係る熱伝導性樹脂シートにおける樹脂マトリクスと二次凝集粒子との界面の拡大断面図である。 本発明の実施の形態3に係る回路基板の模式断面図である。 本発明の実施の形態4に係るパワーモジュールの模式断面図である。 フェノール硬化剤の配合量(当量)と熱硬化性樹脂組成物のガラス転移温度との関係を示すグラフである。 フェノール硬化剤の配合量(当量)と熱硬化性樹脂組成物の接着強度の相対値との関係を示すグラフである。
実施の形態1.
本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、フェノール硬化剤と、エポキシ樹脂の自己重合反応促進剤と、重量平均分子量が10,000以上であるフェノキシ樹脂と、高熱伝導性無機充填材とを必須成分として含有するものである。
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4’−シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4’−(1,4−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4−(1,3−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)などビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂が挙げられる。また、ビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂として、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;グリシジルアミン型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;メチルエピクロ型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂;ピレン型エポキシ樹脂;キサンテン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのエポキシ樹脂の中でも、耐熱性及び接着性という観点から、100以上1,000以下のエポキシ当量(g/eq)を有するものが好ましい。エポキシ当量が100より小さいと硬化物の架橋密度が高くなり過ぎて靭性が劣る傾向があるため、結果として接着強度の向上効果が小さくなる。一方、エポキシ当量が1,000より大きいと硬化物のTgが低くなる傾向があるため、耐熱性に劣る。
<フェノキシ樹脂>
フェノキシ樹脂としては、重量平均分子量が10,000以上のものであれば特に限定されることはなく、具体的には下記一般式(1)で表わされるビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F型骨格又はビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂、可とう性骨格、剛直骨格を有するフェノキシ樹脂などが挙げられる。これらのフェノキシ樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱硬化性樹脂組成物の低粘度の確保及び熱硬化性樹脂組成物硬化体への柔軟性の付与の観点から、フェノキシ樹脂のガラス転移温度(Tg)は100℃以下であることが好ましい。なお、現在入手可能なフェノキシ樹脂の中で、最も低いガラス転移温度(Tg)は15℃程度である。
Figure 2016155946
一般式(1)において、Xは、直接結合、
Figure 2016155946
を表し、Rは、−CH、−CH(CH)、−CH(CH又は−C(CHを表し、nは0〜20である。
このようなフェノキシ樹脂は、市販されており、例えば、三菱化学株式会社から販売されているYL7178BH40、4256H40、1256B40、YX8100BH30、新日鉄住金化学株式会社から販売されているYP−50、YP−50S、YP−70、ZX−1356−2、FX−316、ERF−001M30などを用いることができる。
フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、接着強度をより改善する観点から、30,000以上80,000以下であることが好ましい。
フェノキシ樹脂の配合量は、高熱伝導性無機充填材を除いた熱硬化性樹脂組成物100質量部(有機溶剤を配合する場合、高熱伝導性無機充填材及び有機溶剤を除いた熱硬化性樹脂組成物100質量部)に対して、10質量部以上60質量部以下であることが好ましく、20質量部以上50質量部以下であることがより好ましい。フェノキシ樹脂の配合量が10質量部より少ないと接着強度などの特性向上効果が小さく、60質量部より多いと熱硬化性樹脂組成物硬化体のガラス転移温度(Tg)など特性が低下する。
<フェノール硬化剤>
フェノール硬化剤としては、特に限定されることはなく、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、ポリパラビニルフェノール、ビスフェノールA型ノボラック、キシリレン変性ノボラック、デカリン変性ノボラック、ポリ(ジ−o−ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ−m−ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ−p−ヒドロキシフェニル)メタン、トリアジン変性フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、ビフェニル型フェノール、メラミン骨格を有するフェノール樹脂、トリアジン骨格を有するフェノール樹脂、又はアリル基を有するフェノール樹脂などのフェノール樹脂が挙げられる。これらのフェノール硬化剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノール硬化剤の配合量は、全エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、フェノール硬化剤の官能基が0.2当量以上0.8当量以下となる量であり、好ましくは0.25当量以上0.75当量以下となる量である。フェノール硬化剤の配合量が上記範囲外であると、所望の耐熱性を有する熱伝導性樹脂シートが得られない。
<エポキシ樹脂の自己重合反応促進剤>
エポキシ樹脂の自己重合反応促進剤としては、エポキシ樹脂の自己重合反応を促進させる作用を有するものであればよく、例えば、イミダゾール硬化促進剤、アミン硬化促進剤、リン硬化促進剤などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂の自己重合反応促進剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのエポキシ樹脂の自己重合反応促進剤の中でも、耐熱性が高いという観点から、イミダゾール硬化促進剤及びリン硬化促進剤からなる群から選択される1種以上を用いることが好ましい。
イミダゾール硬化促進剤の具体例としては、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−ビニル−2−メチルイミダゾール、1−プロピル−2−メチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノメチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールなどの他、マスク化イミダゾール類が挙げられる。
アミン硬化促進剤の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、テトラメチルブタンジアミン、テトラメチルペンタンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチルトルイジン、N,N−ジメチルアニシジン、ピリジン、ピコリン、キノリン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、1,8−ジアザビシクロ−[5,4,0]−7−ウンデセン(DBU)などが挙げられる。
リン硬化促進剤の具体例としては、アルキルホスフィン、ジアルキルホスフィン、トリアルキルホスフィン、フェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第一、第二、第三オルガノホスフィン化合物、(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,4−(ジフェニルホスフィノ)ブタン等のホスフィノアルカン化合物、トリフェニルジホスフィン等のジホスフィン化合物及びトリフェニルホスフィン−トリフェニルボラン等のトリオルガノホスフィンとトリオルガノボランとの塩、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート等のテトラオルガノホスホニウムとテトラオルガノボレート、第一〜第三ベンジルホスフィン、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルジホスフィン、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムヒドロキサイド40%水溶液、テトラブチルホスホニウムアセテート40%溶液、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、メトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラ−p−トリボレート、トリ−tert−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィントリフェニルボレート、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、ジフェニルホスフィノスチレン、ジフェニルホスフィノクロライド、トリ−n−オクチルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、ジフェニルホスフィニルハイドロキノンなどが挙げられる。
エポキシ樹脂の自己重合反応促進剤の配合量は、全エポキシ樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
<高熱伝導性無機充填材>
高熱伝導性無機充填材は、二次凝集粒子を含む熱伝導性無機充填材を必須成分として含む。熱硬化性樹脂組成物に二次凝集粒子を配合しない場合、所望の熱伝導性を有する熱伝導性樹脂シートが得られない。熱伝導性樹脂シートをSiCパワー半導体に適用し得る熱伝導率を確保するという観点から、熱伝導性無機充填材の熱伝導率は10W/m・K以上であることが好ましい。二次凝集粒子としては、窒化ホウ素などの一次粒子を凝集させた公知のものが10W/m・K以上の熱伝導率を有するために好ましく用いることができる。このような窒化ホウ素の二次凝集粒子としては、窒化ホウ素の一次粒子を凝集させたもの、窒化ホウ素の一次粒子を凝集させて焼結したものなどが挙げられる。窒化ホウ素の分子構造は、図1に示すように、黒鉛と同様の層状構造である。この窒化ホウ素は、熱的異方性を有しており、図2に示すように、結晶の面方向(a軸方向)の熱伝導率は、厚さ方向(c軸方向)の熱伝導率の数倍から数十倍である。そのため、窒化ホウ素の一次粒子を凝集させたものでは、一次粒子があらゆる方向を向いて凝集、すなわち等方的に凝集し、二次凝集粒子は等方的な熱伝導性を有することとなる。
二次凝集粒子は、粒径の異なるもの及び凝集強度の異なるものを組合せることが好ましい。具体的には、凝集強度が高く且つ粒径の大きい二次凝集粒子中に、凝集強度が低く且つ粒径の小さい二次凝集粒子を配合すると、熱硬化性樹脂組成物における熱伝導性無機充填材の充填性が向上し、放熱性及び絶縁性が高くなる。
二次凝集粒子を構成する一次粒子の平均長径は、好ましくは15μm以下、より好ましくは0.1μm以上8μm以下である。一次粒子の平均長径が15μmよりも大きいと、一次粒子の焼結密度が低くなりすぎてしまい、二次凝集粒子自体の熱伝導性が低下すると共に、熱伝導性樹脂シートの製造工程(プレス工程)において二次凝集粒子が崩れ易くなり、所望の熱伝導性を有する熱伝導性樹脂シートが得られない場合がある。なお、本実施の形態において、平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定による値である。
二次凝集粒子の平均粒径は、20μm以上180μm以下であることが好ましく、40μm以上130μm以下であることがより好ましい。二次凝集粒子の平均粒径が20μm未満であると、所望の熱伝導性を有する熱伝導性樹脂シートが得られない場合がある。一方、二次凝集粒子の平均粒径が180μmを超えると、熱硬化性樹脂組成物中に二次凝集粒子を混練分散させることが難しくなり、作業性や成形性に支障を生じることがある上に、所望の厚さを有する熱伝導性樹脂シートが得られず、電気絶縁性が低下する場合もある。
なお、二次凝集粒子の形状は、球状に限定されず、鱗片状等の他の形状であってもよい。ただし、球状以外の他の形状の場合、平均粒径は当該形状における長辺の長さを意味する。また、球状の二次凝集粒子であれば、熱硬化性樹脂組成物を製造する際に、熱硬化性樹脂組成物の流動性を確保しつつ、二次凝集粒子の配合量を多くすることができるので好ましい。
好ましい二次凝集粒子は、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子を用いて、公知の方法に従って製造することができる。具体的には、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子を焼成して解砕したり、鱗片状窒化ホウ素の一次粒子をスプレードライ等の公知の方法によって凝集させた後、焼成して焼結(粒成長)させる。ここで、焼成温度は特に限定されないが、一般的に2,000℃である。
本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物は、上記の二次凝集粒子からなる熱伝導性無機充填材を含むことが望ましいが、本発明の効果を損なわない範囲で、上記の二次凝集粒子と共に、当該技術分野において一般的な熱伝導性無機充填材を含有してもよい。このような熱伝導性無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、窒化ホウ素(BN)の一次粒子、溶融シリカ(SiO)、結晶シリカ(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si)などが挙げられる。これらの熱伝導性無機充填材は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、熱伝導性をより向上させる観点から、窒化ホウ素の一次粒子、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si)が好ましい。これらの熱伝導性無機充填材の平均粒径は、0.5μm以上100μm以下であることが好ましい。熱伝導性無機充填材の平均粒径が0.5μm未満であると、粘度が上昇して成形性に劣る場合がある。一方、熱伝導性無機充填材の平均粒径が100μmを超えると、二次凝集粒子との充填性が低下して熱伝導性樹脂シート内にボイドが発生し易くなり、熱伝導性樹脂シートの熱伝導性や電気絶縁性が低下する場合がある。
二次凝集粒子を含む熱伝導性無機充填材の配合量は、熱硬化性樹脂組成物(有機溶剤を配合する場合、有機溶剤を除いた熱硬化性樹脂組成物)全量に対して、20体積%以上であることが好ましく、30体積%以上90体積%以下であることがより好ましい。なお、熱硬化性樹脂組成物が下記で説明する有機溶剤を含有する場合、有機溶剤を除いた熱硬化性樹脂組成物における熱伝導性無機充填材の配合量を意味する。二次凝集粒子を含む熱伝導性無機充填材の配合量が20体積%未満であると、所望の熱伝導性を有する熱伝導性樹脂シートが得られない場合がある。一方、二次凝集粒子を含む熱伝導性無機充填材の配合量が90体積%を超えると、熱伝導性樹脂シート内にボイドが発生し易くなり、熱伝導性樹脂シートの熱伝導性及び電気絶縁性が低下する場合がある。
本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と熱伝導性無機充填材との界面の接着強度を向上させる観点から、カップリング剤を含有することができる。カップリング剤としては、特に限定されることはなく、上記のエポキシ樹脂及び熱伝導性無機充填材の種類に応じて公知のものを適宜選択すればよい。カップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらのカップリング剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カップリング剤の配合量は、使用するエポキシ樹脂及びカップリング剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、全エポキシ樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物は、当該組成物の粘度を調整するために、有機溶剤を含有することができる。有機溶剤としては、特に限定されることはなく、使用するエポキシ樹脂及び熱伝導性無機充填材の種類等に応じて公知のものを適宜選択すればよい。有機溶剤としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、n−ヘキサンなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機溶剤の配合量は、熱硬化性樹脂組成物の混練が可能な量であれば特に限定されることはなく、一般的に、有機溶剤を除いた熱硬化性樹脂組成物(固形分)100質量部に対して、20質量部以上300質量部以下である。
上記のような構成成分を含有する本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物の製造方法は、特に限定されることはなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物は、以下のようにして製造することができる。
まず、所定量のエポキシ樹脂と、所定量のフェノキシ樹脂、所定量のフェノール硬化剤と、所定量のエポキシ樹脂の自己重合反応促進剤とを混合する。
次に、この混合物に有機溶剤を加え、二次凝集粒子を含む熱伝導性無機充填材を加えて予備混合する。なお、混合物の粘度が低い場合には、有機溶剤を加えなくてもよい。
次に、この予備混合物を高速攪拌装置、3本ロール、ニーダ等を用いて混練することによって熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。なお、熱硬化性樹脂組成物にカップリング剤を配合する場合、カップリング剤は混練工程前までに加えればよい。
上記のようにして得られる本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物の樹脂マトリクスの硬化反応は、エポキシ樹脂とフェノール硬化剤との硬化剤反応と、エポキシ樹脂単独の自己重合反応とにより進行する。ここで、熱伝導性無機充填材として窒化ホウ素などの一次粒子を凝集させた二次凝集粒子の微小空洞(ポア)に樹脂マトリクスが浸透し、樹脂マトリクスと熱伝導性無機充填材との相互作用が強まることにより接着強度が向上する。フェノキシ樹脂は、柔軟な構造を有しており、比較的耐熱性の高い剛直な骨格を有するエポキシ樹脂よりも靱性に富む。そのため、フェノキシ樹脂は、樹脂マトリクスの架橋網目に物理的に絡まったセミ相互侵入高分子網目(semi−IPN)構造を形成しているものと推察される。フェノキシ樹脂の長鎖が樹脂マトリクスの網目を補強する役割を果たしている。また、本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物は、銅箔などの導体基材の表面の凹凸にも浸透し接着強度が向上する。
なお、柔軟性を有するフェノキシ樹脂などを樹脂マトリクスとして用いる場合、一般的には、樹脂硬化体の耐熱性が低下するという問題が起こるが、本実施の形態の熱硬化性樹脂組成物では、エポキシ樹脂とフェノール硬化剤との硬化剤反応だけではなく、エポキシ樹脂単独の自己重合反応を併用することで、フェノキシ樹脂の配合量が熱伝導性無機充填材を除いた熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して60質量部であっても所望の耐熱性(200℃レベル)を得ることができる。
実施の形態2.
本実施の形態の熱伝導性樹脂シートは、上記の熱硬化性樹脂組成物をシート化して硬化させたものである。
以下、本実施の形態の熱伝導性樹脂シートについて図面を用いて説明する。
図3は、本実施の形態に係る熱伝導性樹脂シートの模式断面図である。図4は、本実施の形態に係る熱伝導性樹脂シートにおける樹脂マトリクスと二次凝集粒子との界面の模式拡大断面図である。図3において、熱伝導性樹脂シート1は、樹脂マトリクス2と、樹脂マトリクス2中に分散された二次凝集粒子3とを含む。また、二次凝集粒子3は、窒化ホウ素の一次粒子4から構成されている。
本実施の形態の熱伝導性樹脂シート1では、図4に示すように、樹脂マトリクス2が二次凝集粒子3中の微小空洞(ポア)に浸透し、樹脂マトリクス2と二次凝集粒子3との界面の接着性が向上する。これにより、樹脂マトリクス2と二次凝集粒子3との界面における割れや剥離が抑制され、熱伝導性樹脂シート1の熱伝導性及び接着強度が向上する。
本実施の形態の熱伝導性樹脂シート1は、上記の熱硬化性樹脂組成物を基材に塗布して乾燥させる工程と、塗布乾燥物を硬化させる工程とを含む方法によって製造することができる。基材としては、特に限定されることはなく、例えば、銅箔、離型処理された樹脂シートあるいはフィルムなどの公知の基材を用いることができる。
熱硬化性樹脂組成物の塗布方法としては、特に限定されることはなく、ドクターブレード法等のような公知の方法を用いることができる。
塗布した熱硬化性樹脂組成物の乾燥は、周囲温度で行ってよいが、有機溶剤の揮発を促進させる観点から、必要に応じて80℃以上180℃以下に加熱してもよい。
塗布乾燥物の硬化温度は、使用するエポキシ樹脂の種類に応じて適宜設定すればよいが、一般的に80℃以上300℃以下である。また、硬化時間は、特に限定されないが、一般的に2分以上24時間以下である。
また、塗布乾燥物を硬化させる場合、必要に応じて加圧してもよい。この場合のプレス圧は、好ましくは0.5MPa以上50MPa以下、より好ましくは1.9MPa以上30MPa以下である。プレス圧が0.5MPa未満であると、熱伝導性樹脂シート1内のボイドを十分に除去することができないことがある。一方、プレス圧が50MPaを超えると、二次凝集粒子3が変形又は崩壊してしまい、熱伝導性樹脂シート1の熱伝導性及び電気絶縁性が低下することがある。また、プレス時間は、特に限定されないが、一般的に5分以上180分以下である。
本実施の形態の熱伝導性樹脂シート1を電気・電子機器に組み込む場合、熱硬化性樹脂組成物を発熱部材や放熱部材上に直接塗布して熱伝導性樹脂シート1を作製することも可能である。また、樹脂マトリクスとなるエポキシ樹脂がBステージ状態にある熱伝導性樹脂シート1を予め作製しておき、これを発熱部材と放熱部材との間に配置した後、所定のプレス圧で加圧しながら80℃以上300℃以下に加熱することで熱伝導性樹脂シート1を作製することも可能である。これらの方法によれば、熱伝導性樹脂シート1に対する発熱部材や放熱部材の接着性がより高くなる。
上記のようにして得られる本実施の形態の熱伝導性樹脂シート1は、電気・電子機器の発熱部材と放熱部材との間に配置することにより、発熱部材と放熱部材とを接着すると共に電気絶縁することができる。特に、本実施の形態の熱伝導性樹脂シート1は、樹脂マトリクス2を母材とし、且つ樹脂マトリクス2と二次凝集粒子3との界面の接着性に優れているため、樹脂マトリクス2と二次凝集粒子3との界面における割れや剥離が抑制され、接着強度、熱伝導性及び耐熱性が向上する。
実施の形態3.
本実施の形態の回路基板は、金属板と、その金属板の一方の面の上に上記の熱硬化性樹脂組成物から形成された絶縁層と、その絶縁層の露出面に形成された導体回路とを備える。
以下、本実施の形態の回路基板について図面を用いて説明する。
図5は、本実施の形態に係る回路基板の模式断面図である。図5において、回路基板は、金属板5と、熱硬化性樹脂組成物から形成された絶縁層6と、絶縁層6上に形成された導体回路7と、導体回路7上にはんだ8を介して搭載された複数の電力半導体素子12とを備えている。さらに、電力半導体素子12間、及び導体回路7と電力半導体素子12との間は、金属線15によってワイアボンディングされている。
金属板5を構成する金属としては、アルミニウム、鉄、銅、ステンレス、マグネシウム、シリコン及びこれらの合金がある。放熱性、軽量性及び加工性の面でバランスが取れているという観点から、アルミニウム及び銅が好ましい。
金属板5の厚さは、0.1mm以上5.0mm以下であることが好ましい。金属板5の厚さが0.1mmより薄いとハンドリング時に発生するしわや折れが生じやすく、一方、5.0mmより厚いと重量増によりハンドリングが難しくなる。
金属板5と絶縁層6との密着性を向上させるため、絶縁層6が接する金属板5の表面に、アルマイト処理、アルカリ洗浄、羽布研磨、サンドブラスト、エッチング、メッキ処理、カップリング剤によるプライマー処理等の表面処理を施すことが好ましい。
絶縁層6が接する金属板5の表面の表面粗さが小さ過ぎると、絶縁層6との十分な接着強度が得られず、一方、表面粗さが大き過ぎると、熱硬化性樹脂組成物が凹凸に浸透し難くなり界面でボイドが発生し易くなり接着強度や耐電圧が低下する。そのため、絶縁層6が接する金属板5の表面の表面粗さは、十点平均粗さ(Rz)で0.1μm以上15μm以下であることが好ましい。
導体回路7を構成する金属としては、アルミニウム、鉄、銅、ステンレス、ニッケル、金及びこれらの合金やクラッド箔がある。
導体回路7の厚さは、0.01mm以上1.5mm以下であることが好ましい。導体回路7の厚さが0.01mmより薄いとハンドリング時に発生するしわや折れが生じやすく、一方、1.5mmより厚いとエッチングなどにより回路を形成し難くなる。
絶縁層6との密着性を向上させるため、絶縁層6と接する導体回路7の表面に、脱脂処理、サンドブラスト、エッチング、メッキ処理、カップリング剤によるプライマー処理等の表面処理を施すことが好ましい。
絶縁層6と接する導体回路7の表面の表面粗さが小さ過ぎると、絶縁層6との十分な接着強度が得られず、一方、表面粗さが大き過ぎると、熱硬化性樹脂組成物が凹凸に浸透し難くなり界面でボイドが発生し易くなり接着強度や耐電圧が低下する。そのため、絶縁層6と接する導体回路7の表面の表面粗さは、十点平均粗さ(Rz)で0.1μm以上15μm以下であることが好ましい。
本実施の形態の回路基板は、上記の熱硬化性樹脂組成物を、金属板5及び導体回路7の一方又は両方に直接塗布して乾燥するか、又は上記の熱硬化性樹脂組成物を基材に塗布して乾燥させたものを、金属板5及び導体回路7の一方又は両方に転写した後、熱硬化性樹脂組成物を硬化することによって製造することができる。基材としては、特に限定されることはなく、例えば、銅箔、離型処理された樹脂シートあるいはフィルムなどの公知の基材を用いることができる。
熱硬化性樹脂組成物の塗布方法としては、特に限定されることはなく、ドクターブレード法等のような公知の方法を用いることができる。
塗布した熱硬化性樹脂組成物の乾燥は、周囲温度で行ってよいが、有機溶剤の揮発を促進させる観点から、必要に応じて80℃以上180℃以下に加熱してもよい。
硬化温度は、使用するエポキシ樹脂の種類に応じて適宜設定すればよいが、一般的に80℃以上300℃以下である。また、硬化時間は、特に限定されないが、一般的に2分以上24時間以下である。
また、回路基板を硬化・成形する場合、必要に応じて加圧してもよい。この場合のプレス圧は、好ましくは0.5MPa以上50MPa以下、より好ましくは1.9MPa以上30MPa以下である。プレス圧が0.5MPa未満であると、熱硬化性樹脂組成物内のボイドを十分に除去することができないことがある。一方、プレス圧が50MPaを超えると、熱硬化性樹脂組成物中に含まれる二次凝集粒子が変形又は崩壊してしまい、絶縁層6の熱伝導性及び電気絶縁性が低下することがある。また、プレス時間は、特に限定されないが、一般的に、5分以上180分以下である。
上述の回路基板と、回路基板に搭載された電子部品とを有する電子機器は、放熱性、高熱伝導性及び高熱放射性を有し、これにより熱に起因する部品の誤作動、性能の低下や劣化、さらには信頼性低下が生じ難いものである。
実施の形態4.
本実施の形態のパワーモジュールは、一方の放熱部材に搭載された電力半導体素子と、電力半導体素子で発生する熱を外部に放熱する他方の放熱部材と、電力半導体素子で発生する熱を一方の放熱部材から他方の放熱部材に伝達する上記の熱伝導性樹脂シートとを備える。
以下、本実施の形態のパワーモジュールについて図面を用いて説明する。
図6は、本実施の形態のパワーモジュールの模式断面図である。図6において、パワーモジュール10は、一方の放熱部材であるリードフレーム11に搭載された電力半導体素子12と、他方の放熱部材であるヒートシンク13と、リードフレーム11とヒートシンク13との間に配置された熱伝導性樹脂シート1とを備えている。さらに、電力半導体素子12と制御用半導体素子14との間、及び電力半導体素子12とリードフレーム11との間は、金属線15によってワイアボンディングされている。また、リードフレーム11の端部以外及びヒートシンク13の外部放熱のための部分以外は封止樹脂16で封止されている。パワーモジュール10において、熱伝導性樹脂シート1以外の部材は、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。
このような構成を有するパワーモジュール10は、接着強度、熱伝導性及び耐熱性に優れた熱伝導性樹脂シート1を有しているので、接着強度、熱放散性や耐熱性に優れている。
以下、実施例及び比較例により本発明の詳細を説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
〔実施例1〕
ナフタレン骨格型エポキシ樹脂(DIC株式会社製EPICLON(登録商標) HP−4710、167g/eq):100質量部、フェノール硬化剤としてのフェノールノボラック樹脂(DIC株式会社製PHENOLITE(登録商標) TD−2131、104g/eq):15.6質量部(0.25当量)、可とう性骨格を有するフェノキシ樹脂(三菱化学製YL7178BH40、Tg:15℃、重量平均分子量:56,000):292質量部、イミダゾール硬化促進剤(四国化成製2P4MHZ−PW):1質量部、及び有機溶剤としてのメチルエチルケトン:730質量部を撹拌混合した。次に、この混合物に、窒化ホウ素の二次凝集粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同株式会社製PTX60と水島合金鉄製HP−40)を、有機溶剤を除いた混合物の合計体積に対して60体積%となるように添加して予備混合した。この予備混合物を高速撹拌装置にてさらに混練し、窒化ホウ素の二次凝集粒子が均一に分散された熱硬化性樹脂組成物を得た。なお、この熱硬化性樹脂組成物において、フェノキシ樹脂の配合量は、窒化ホウ素の二次凝集粒子及び有機溶剤を除いた熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して50質量部であった。
〔実施例2〕
フェノールノボラック樹脂(DIC株式会社製PHENOLITE(登録商標) TD−2131)の配合量を31.1質量部(0.5当量)に変え、フェノキシ樹脂(三菱化学製YL7178BH40)の配合量を330質量部に変え、メチルエチルケトンの配合量を830質量部に変えたこと以外は実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。なお、この熱硬化性樹脂組成物において、フェノキシ樹脂の配合量は、窒化ホウ素の二次凝集粒子及び有機溶剤を除いた熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して50質量部であった。
〔実施例3〕
フェノールノボラック樹脂(DIC株式会社製PHENOLITE(登録商標) TD−2131)の配合量を46.7質量部(0.75当量)に変え、フェノキシ樹脂(三菱化学製YL7178BH40)の配合量を369質量部に変え、メチルエチルケトンの配合量を930質量部に変えたこと以外は実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。なお、この熱硬化性樹脂組成物において、フェノキシ樹脂の配合量は、窒化ホウ素の二次凝集粒子及び有機溶剤を除いた熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して50質量部であった。
〔実施例4〕
フェノールノボラック樹脂(DIC株式会社製PHENOLITE(登録商標) TD−2131)の配合量を31.1質量部(0.5当量)に変え、フェノキシ樹脂(三菱化学製YL7178BH40)の配合量を83質量部に変え、メチルエチルケトンの配合量を520質量部に変えたこと以外は実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。なお、この熱硬化性樹脂組成物において、フェノキシ樹脂の配合量は、窒化ホウ素の二次凝集粒子及び有機溶剤を除いた熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して20質量部であった。
〔実施例5〕
フェノールノボラック樹脂(DIC株式会社製PHENOLITE(登録商標) TD−2131)の配合量を31.1質量部(0.5当量)に変え、フェノキシ樹脂(三菱化学製YL7178BH40)の配合量を495質量部に変え、メチルエチルケトンの配合量を1040質量部に変えたこと以外は実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。なお、この熱硬化性樹脂組成物において、フェノキシ樹脂の配合量は、窒化ホウ素の二次凝集粒子及び有機溶剤を除いた熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して60質量部であった。
〔実施例6〕
フェノキシ樹脂(三菱化学製YL7178BH40)の代わりにビスフェノールF型フェノキシ樹脂(三菱化学製4256H40、Tg:65℃、重量平均分子量:62,000):330質量部を用い、メチルエチルケトンの配合量を830質量部に変えたこと以外は実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。なお、この熱硬化性樹脂組成物において、フェノキシ樹脂の配合量は、窒化ホウ素の二次凝集粒子及び有機溶剤を除いた熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して50質量部であった。
〔実施例7〕
フェノキシ樹脂(三菱化学製YL7178BH40)の代わりにビスフェノールA型フェノキシ樹脂(三菱化学製1256B40、Tg:98℃、重量平均分子量:48,000):330質量部を用い、メチルエチルケトンの配合量を830質量部に変えたこと以外は実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。なお、この熱硬化性樹脂組成物において、フェノキシ樹脂の配合量は、窒化ホウ素の二次凝集粒子及び有機溶剤を除いた熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して50質量部であった。
〔実施例8〕
フェノキシ樹脂(三菱化学製YL7178BH40)の代わりにビスフェノールA型フェノキシ樹脂(三菱化学製YX8100BH30、Tg:150℃、重量平均分子量:38,000):437質量部を用い、メチルエチルケトンの配合量を730質量部に変えたこと以外は実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を得た。なお、この熱硬化性樹脂組成物において、フェノキシ樹脂の配合量は、窒化ホウ素の二次凝集粒子及び有機溶剤を除いた熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して50質量部であった。
〔比較例1〕
ナフタレン骨格型エポキシ樹脂(DIC株式会社製EPICLON(登録商標) HP−4710):100質量部、フェノール硬化剤としてのフェノールノボラック樹脂(DIC株式会社製PHENOLITE(登録商標) TD−2131):62.3質量部(1.0当量)、可とう性骨格を有するフェノキシ樹脂(三菱化学製YL7178BH40):408質量部、イミダゾール硬化促進剤(四国化成製2P4MHZ−PW):1質量部、及び有機溶剤としてのメチルエチルケトン:1030質量部を撹拌混合した。次に、この混合物に、窒化ホウ素の二次凝集粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同株式会社製PTX60と水島合金鉄製HP−40)を、有機溶剤を除いた混合物の合計体積に対して60体積%となるように添加して予備混合した。この予備混合物を高速撹拌装置にてさらに混練し、窒化ホウ素の二次凝集粒子が均一に分散された熱硬化性樹脂組成物を得た。なお、この熱硬化性樹脂組成物において、フェノキシ樹脂の配合量は、窒化ホウ素の二次凝集粒子及び有機溶剤を除いた熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して50質量部であった。
〔比較例2〕
ナフタレン骨格型エポキシ樹脂(DIC株式会社製EPICLON(登録商標) HP−4710):100質量部、可とう性骨格を有するフェノキシ樹脂(三菱化学製YL7178BH40):255質量部、イミダゾール硬化促進剤(四国化成製2P4MHZ−PW):2質量部、及び有機溶剤としてのメチルエチルケトン:640質量部を撹拌混合した。次に、この混合物に、窒化ホウ素の二次凝集粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同株式会社製PTX60と水島合金鉄製HP−40)を、有機溶剤を除いた混合物の合計体積に対して60体積%となるように添加して予備混合した。この予備混合物を高速撹拌装置にてさらに混練し、窒化ホウ素の二次凝集粒子が均一に分散された熱硬化性樹脂組成物を得た。なお、この熱硬化性樹脂組成物において、フェノキシ樹脂の配合量は、窒化ホウ素の二次凝集粒子及び有機溶剤を除いた熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して50質量部であった。
〔比較例3〕
ナフタレン骨格型エポキシ樹脂(DIC株式会社製EPICLON(登録商標) HP−4710):100質量部、フェノール硬化剤としてのフェノールノボラック樹脂(DIC株式会社製PHENOLITE(登録商標) TD−2131):31.1質量部(0.5当量)、可とう性骨格を有するフェノキシ樹脂(三菱化学製YL7178BH40):330質量部、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(DMP−30):1質量部、及び有機溶剤としてのメチルエチルケトン:830質量部を撹拌混合した。次に、この混合物に、窒化ホウ素の二次凝集粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同株式会社製PTX60と水島合金鉄製HP−40)を、有機溶剤を除いた混合物の合計体積に対して60体積%となるように添加して予備混合した。この予備混合物を高速撹拌装置にてさらに混練し、窒化ホウ素の二次凝集粒子が均一に分散された熱硬化性樹脂組成物を得た。なお、この熱硬化性樹脂組成物において、フェノキシ樹脂の配合量は、窒化ホウ素の二次凝集粒子及び有機溶剤を除いた熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して50質量部であった。
<熱伝導性樹脂シートの作製、並びに熱伝導性、接着強度及び耐熱性の評価>
実施例1〜8及び比較例1〜3で得られた熱硬化性樹脂組成物をそれぞれ、厚さ105μmの放熱部材上にドクターブレード法にて塗布した後、110℃で15分間、加熱乾燥させることによって、厚さが100μmの塗布乾燥物を得た。
次に、放熱部材上に形成した塗布乾燥物を、塗布乾燥物側が内側になるように2枚重ねた後、10MPaのプレス圧で加圧しながら250℃で60分間加熱することで2つの放熱部材に挟まれた熱伝導性樹脂シート(厚さ200μm)を得た。
上記の2つの放熱部材に挟まれた熱伝導性樹脂シートについて、シート厚さ方向の熱伝導率をレーザーフラッシュ法にて測定した。この熱伝導率の測定結果は、比較例1の熱伝導性樹脂シートで得られた熱伝導率を基準とし、各実施例又は各比較例の熱伝導性樹脂シートで得られた熱伝導率の相対値([各実施例又は各比較例の熱伝導性樹脂シートで得られた熱伝導率]/[比較例1の熱伝導性樹脂シートで得られた熱伝導率]の値)として表1に示した。
また、上記の2つの放熱部材に挟まれた熱伝導性樹脂シートについて、10mm幅に切断しオートグラフにて接着強度を測定した。この接着強度の結果は、比較例1の熱伝導性樹脂シートで得られた接着強度を基準とし、各実施例又は各比較例の熱伝導性樹脂シートで得られた接着強度の相対値([各実施例又は各比較例の熱伝導性樹脂シートで得られた接着強度]/[比較例1の熱伝導性樹脂シートで得られた接着強度]の値)として表1に示した。
また、放熱部材の代わりに離型処理したフィルムを用い、塗布乾燥物を完全に硬化した後に、フィルムを除去したこと以外は上記と同様にして、熱伝導性樹脂シート(厚さ200μm)を得た。この熱伝導性樹脂シートについて、動的粘弾性測定装置を用いてガラス転移温度を測定した。ガラス転移温度が高いほど耐熱性に優れるといえる。その結果を表1に示す。
なお、表1では、各実施例及び比較例で使用した構成成分の種類及び配合量についてもまとめた。各構成成分の配合量は質量部である。
Figure 2016155946
表1の結果に示されているように、重量平均分子量が10,000以上のフェノキシ樹脂を配合し且つフェノール硬化剤の官能基がエポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.2当量以上0.8当量以下の範囲である実施例1〜8の熱硬化性樹脂組成物は、接着強度に優れ、且つ耐熱性にも優れる熱伝導性樹脂シートを与えることがわかった。これら実施例1〜8の熱伝導樹脂シートの熱伝導率はフェノキシ樹脂の配合量やフェノール硬化剤の当量に依らず高い値を保持している。
これに対して、フェノール硬化剤の官能基がエポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して1.0当量である比較例1の場合、接着強度、耐熱性とも低い値を示している。また、フェノール硬化剤を配合していない、すなわちエポキシ樹脂の自己重合だけの比較例2では、接着強度は向上するものの耐熱性(Tg)が大きく低下して、接着強度と耐熱性を両立することができない。フェノール硬化剤の官能基がエポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.2当量以上0.8当量以下の範囲であるがエポキシ樹脂の自己重合促進剤を配合しないような比較例3では、エポキシ樹脂とフェノール硬化剤との反応のみ進行し、未反応のエポキシ樹脂が残るために耐熱性が極端に低下する。
これらの結果を詳細に検討するため、実施例1〜8及び比較例1〜3におけるフェノール硬化剤の配合量(当量)と熱硬化性樹脂組成物のガラス転移温度(耐熱性)との関係を図7に示し、フェノール硬化剤の配合量(当量)と接着強度の相対値との関係を図8に示す。なお、図7及び8中、○は実施例を示し、×は比較例を示す。
図7からわかるように、エポキシ樹脂と、フェノール硬化剤と、エポキシ樹脂の自己重合反応促進剤と、重量平均分子量が10,000以上であるフェノキシ樹脂と、高熱伝導性無機充填材とを含み且つフェノール硬化剤の官能基がエポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して0.2当量以上0.8当量以下の範囲にあると、熱伝導性樹脂シートの耐熱性が目標レベルである約250℃以上に達する。逆に、フェノール硬化剤の官能基がエポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して0.2当量未満の範囲である場合及び0.8当量超の範囲である場合は、エポキシ樹脂の自己重合反応と、エポキシ樹脂とフェノール硬化剤との硬化剤反応という2つの硬化反応のバランスが崩れて耐熱性が低下し、また、フェノール硬化剤の官能基がエポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.2当量以上0.8当量以下の範囲であるがエポキシ樹脂の自己重合反応促進剤を配合しない場合は、エポキシ樹脂とフェノール硬化剤との反応のみ進行し、未反応のエポキシ樹脂が残るために耐熱性が極端に低下する。更に、図8からわかるように、熱硬化性樹脂組成物の接着強度は、フェノール硬化剤の官能基がエポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して0.8当量以下であると高い値が得られている。
以上より、エポキシ樹脂と、フェノール硬化剤と、エポキシ樹脂の自己重合反応促進剤と、重量平均分子量が10,000以上であるフェノキシ樹脂と、高熱伝導性無機充填材とを配合し且つフェノール硬化剤の官能基が全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.2当量以上0.8当量以下にすると、接着強度と耐熱性とが両立した熱伝導性樹脂シートを得ることができる。
次に、実施例1〜8の熱硬化性樹脂組成物を0.3mmと1mmの銅板に挟んでプレス成形して樹脂絶縁基板を作製した。作製した樹脂絶縁基板を280℃にセットした半田浴に5分間暴露して破壊電圧を評価したところ、これら実施例の熱硬化性樹脂組成物を用いた樹脂絶縁基板は良好な値を保持することがわかった。
以上の結果からわかるように、本発明によれば、接着強度、熱伝導性及び耐熱性に優れた熱伝導性樹脂シート並びに樹脂絶縁基板を与える熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。また、本発明によれば、接着強度、熱伝導性及び耐熱性に優れた熱伝導性樹脂シート並びに樹脂絶縁基板を提供することができる。さらに、本発明によれば、熱放散性、接着強度、耐熱性に優れたパワーモジュールを提供することができる。
1 熱伝導性樹脂シート、2 樹脂マトリクス、3 二次凝集粒子、4 窒化ホウ素の一次粒子、5 金属板、6 絶縁層、7 導体回路、8 はんだ、10 パワーモジュール、11 リードフレーム、12 電力半導体素子、13 ヒートシンク、14 制御用半導体素子、15 金属線、16 封止樹脂。

Claims (9)

  1. エポキシ樹脂と、フェノール硬化剤と、エポキシ樹脂の自己重合反応促進剤と、重量平均分子量が10,000以上であるフェノキシ樹脂と、高熱伝導性無機充填材とを含有する熱硬化性樹脂組成物であって、
    該フェノール硬化剤の官能基が、全エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して0.2当量以上0.8当量以下の範囲であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物。
  2. 前記フェノキシ樹脂のガラス転移温度(Tg)が100℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. 前記フェノキシ樹脂が、前記高熱伝導性無機充填材を除いた熱硬化性樹脂組成物100質量部に対して10質量部以上60質量部以下で含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 前記エポキシ樹脂の自己重合反応促進剤が、イミダゾール硬化促進剤及びリン硬化促進剤からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 前記高熱伝導性無機充填材が、窒化ホウ素の一次粒子を凝集させた二次凝集粒子であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. 前記高熱伝導性無機充填材が、窒化ホウ素の一次粒子を凝集させて焼結した二次凝集粒子であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6の何れか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする熱伝導性樹脂シート。
  8. 金属板と、該金属板の一方の面の上に請求項1〜6の何れか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物から形成された絶縁層と、該絶縁層の露出面に形成された導体回路とを備えることを特徴とする回路基板。
  9. 一方の放熱部材に搭載された電力半導体素子と、該電力半導体素子で発生する熱を外部に放熱する他方の放熱部材と、該電力半導体素子で発生する熱を該一方の放熱部材から該他方の放熱部材に伝達する、請求項7に記載の熱伝導性樹脂シートとを備えることを特徴とするパワーモジュール。
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