JP2016017410A - 燃料噴射ノズル - Google Patents
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Abstract
Description
従来より、例えばディーゼルエンジン、燃料噴射型のガソリンエンジン等のエンジンの燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射手段としては、噴孔を有する有底筒状のノズルボデーと、このノズルボデーに往復摺動可能に収容され、噴孔に至る燃料流路を開閉するニードルとを基本構成とする燃料噴射ノズルが専ら賞用されている(例えば、特許文献1参照)。
燃料噴射ノズルは、主として、ノズルボデー100とニードル200との2部材から構成されている。
ノズルボデー100は、ニードル200をその軸線方向へ往復摺動可能に収容保持する摺動孔110を有し、その下端部に円錐状のシート面120およびサック室130が形成されている。そして、このサック室130には、エンジンの燃焼室に開口する噴孔140が設けられている。
ニードル200は、先端部分に円錐角が異なる第1の円錐面210と第2の円錐面220とが設けられ、この両円錐面210、220の交線(稜線)にシート部230が形成されている。このシート部230が、ノズルボデー100のシート面120に対して離座・着座することで、噴孔140に通じる燃料流路(第2燃料通路150)を開閉する。
ところで、近年、エンジンの高性能化、環境改善や省エネ推進等に呼応して、この種の燃料噴射ノズルに対しても、様々な厳しい要求が課せられており、噴射量精度の向上および燃料の噴射圧力の高圧化等に向けての種々な改善策が提案され、試行もしくは実用に供されている。
かかる改善の要点は、中枢機能部品(ノズルボデー100およびニードル200)自体の構造を複雑かつ高価なものにすることなく、諸要求を如何に満足していくかが課題であり、目下のところ、ニードル200の先端に第3の円錐面を追加する手段が有望視されている。
つまり、図8において、第2の円錐面220の下端側に円錐角がさらに大きい第3の円錐面240を積極的に設けることで、第2の円錐面220の下流側における流路面積(第2燃料通路150の流路面積)を拡大して、噴孔140から高圧燃料を素早く噴霧させることにより、噴射量精度の向上および燃料の噴射圧力の高圧化を図ろうとするものである。
(1)第3の円錐面240を積極的に設けることで、第2燃料通路150において、第2の円錐面220の下流側における流路面積を拡大できるため、ニードル200のシート部230が、ノズルボデー100のシート面120から離座する開弁時に、第2の円錐面220に沿って流れる燃料を素早くサック室130から噴孔140へ送り込むことができ、所期の効果が得られるものと考えられていた。
(2)ところが、第3の円錐面240を追加したことによる燃料の流れをつぶさに観察してみると、図3(b)に示すように、開弁により第2燃料通路150に供給された燃料が、第2の円錐面220から第3の円錐面240に沿って流れる過程において、とりわけ、第3の円錐面240の表面から燃料の流れが剥離していく所謂流れ剥離現象Xが認められ、その結果、サック室130内にキャビテーションYが発生し、流量係数が低下してしまうことが分かった。
そして、ノズルボデーは、ニードルを嵌挿する摺動孔、および、円錐形状のシート面を有し、また、ニードルは、先端に向かって順次円錐角が大きくなる3段の円錐面(第1、第2、第3の円錐面)を有している。
また、ノズルボデーのシート面に凹部を形成するだけであり、簡潔、かつ、安価な構成の燃料噴射ノズルを提供することができる。
なお、各実施例において、同一または均等部分には、同一符号を付し、重複説明を省略することとする。
燃料噴射ノズル1は、燃料噴射ポンプ(図示せず)により加圧された燃料を、エンジンの燃焼室内に噴射供給する手段であり、中枢機能部品として、ノズルボデー2と、このノズルボデー2に収容されるニードル3との2部材を備えている。
これらの部品は、いずれも例えば炭素鋼等の耐熱金属材料により作製されており、個々の全体形状としては、ノズルボデー2が略円筒形状に形成されているのに対し、ニードル3が略円柱形状に形成されている。
以下、燃料の流れ方向の上流または下流を、単に上流または下流と呼ぶ。
かくして、加圧された燃料が、第1燃料通路14、第2燃料通路15を経由して、噴孔7からエンジンの燃焼室に供給されるわけであるが、この燃料噴射過程において、ニードル先端部4のところで、前述の図3(b)に基づいて説明したごときキャビテーション問題が発生する。
以下、実施例1〜実施例4として示す4つの具体的実施形態について順次説明する。
この実施例1は、第2燃料通路15の流路構造をノズルボデー2側の構造の工夫によって改善する一実施形態を示すもので、図1に加え、図2および図3をも参照しながら説明する。
ニードル3は、ニードル先端部4が図2に示すごとき3段構造の円錐面を備えている。つまり、ニードル先端部4には、上流側から下流側に向かう軸方向に沿って、第1の円錐面41、第2の円錐面42、および、第3の円錐面43の3つの円錐面が順次形成されている。これらの円錐面41〜43は、その円錐角が下流側(先端)に向かって順次大きくなっていく関係にあり、第1の円錐面41が一番小さい円錐角を有し、第3の円錐面43が一番大きい円錐角を有している。そして、上流側に位置する第1の円錐面41と第2の円錐面42との境界部分(稜線)にシート部44が形成されており、このシート部44がノズルボデー2のシート面8に着座(閉弁)することで、噴孔7に通じる第2燃料通路15を遮断する。
第1の環状溝21は、第2の円錐面42と対向し当該円錐面を囲繞しており、第2の環状溝22は、第2と第3の両円錐面42、43の境界部分を挟んで当該両円錐面と対向し当該両面を囲繞しており、第3の環状溝23は、第3の円錐面43と対向し当該円錐面を囲繞している。
なお、各環状溝21、22、23は、いずれも図7(a)に示すごとき断面形状、つまり、直角三角形の角部をR面に形成した三角形状をなしている。
次に、上記構成の燃料噴射ノズル1の作用を説明する。
燃料噴射ポンプから所定の時期に所定量の燃料が吐出されると、この燃料は燃料孔13を経由して油溜り室12および第1燃料通路14に供給される。そして、油溜り室12内および第1燃料通路14内の燃料圧力が、ニードル付勢手段による付勢力よりも大きくなると、ニードル先端部4はそのシート部44がシート面8から離座(開弁)する。
これにより、第2燃料通路15が開放されるため、油溜り室12、第1燃料通路14、第2燃料通路15、サック室9および噴孔7よりなる燃料経路が連通状態となり、油溜り室12→第1燃料通路14→第2燃料通路15→サック室9→噴孔7の順に流れる燃料の流れが形成され、噴孔7からエンジンの燃焼室内へ燃料が噴射される。
上述のごとく実施例1の燃料噴射ノズル1には、ノズルボデー2のシート面8において、ニードル先端部4と対向する特定の箇所、つまり、第2の円錐面42と対向する箇所と第3の円錐面43に対向する箇所との2箇所にわたって、当該両円錐面42、43を環状に囲繞する凹部20(環状溝21〜23)が形成されている。
これにより、燃料は、第2燃料通路15を流れるときに、各溝21〜23で発生する乱流Zによって主流Qがニードル3側にシフトされ、第2の円錐面42から確実に第3の円錐面43に沿って流下するため、図3(b)に示すごとき流れ剥離現象XおよびキャビテーションYが生じるのを防いで、燃料を噴孔7から良好に噴霧させることができる。
また、ノズルボデー2のシート面8に凹部20(環状溝21〜23)を形成するだけで、第2燃料通路15として特異な断面形状の流路構造を構築しているため、ノズルボデー2自体を製作し易い安価な構造とすることができる。
次に、本発明を適用した燃料噴射ノズル1の第2実施形態について図4を参照しながら説明する。
本実施例は、上記実施例1と同様に、ノズルボデー2のシート面8には凹部20として3つの円環状の溝21、22、23を形成しているものの、これら環状溝の配列構造を変更したものである。
ノズルボデー2のシート面8には、凹部20として、直径が順次小さくなる3つの円環状の溝21、22、23が、上流側から下流側にかけての軸方向に沿って階段状に並設されている。そして、上、下流側(軸方向)に隣り合う環状溝、つまり溝21と溝22、および溝22と溝23とは、その上下面で完全に重畳しており、したがって、凹部20は、3つの溝が軸方向に一体的に連なって1つの階段状シート面83を形成している。
なお、本実施例の凹部20には、実施例1のようなシート面8の一部分81,82(図2参照)は全く存在しない。
したがって、本実施例の燃料噴射ノズル1においても、実施例1と同様な燃料噴射性能の向上を図ることができる。
次に、本発明を適用した燃料噴射ノズル1の第3実施形態について図5を参照しながら説明する。
本実施例は、上述した2つの実施例1、2に比して、ノズルボデー2のシート面8に設ける凹部20自体の構造を変えたものである。
ノズルボデー2のシート面8には、凹部20として、直径が順次小さくなる3つの円環状ディンプル列24、25、26が、上流側から下流側にかけての軸方向に沿って並設されている。したがって、最上流側の第1のディンプル列24が最大径、最下流側の第3のディンプル列26が最小径をなしている。
そして、各ディンプル列24〜26は、仮想線で示すようなニードル先端部4との位置関係、つまり、図2に示す実施例1の環状溝21〜23と同様なニードル先端部4との位置関係で配列されている。即ち、第1のディンプル列24は、第2の円錐面42と対向し当該面を囲繞しており、第2のディンプル列25は、第2と第3の両円錐面42、43の境界部分を挟んで当該両円錐面と対向し当該両面を囲繞しており、第3のディンプル列26は、第3の円錐面43と対向し当該面を囲繞している。
なお、各ディンプル列24〜26は、適宜の断面形状、例えば、図7(c)に示す球面状の断面形状を有するディンプル(凹み)27を多数個円環状に配列することで構成されている。
したがって、燃料が第2燃料通路15を流れるときに、各ディンプル列24〜26で発生する乱流によって主流がニードル3側にシフトされ、第2の円錐面42から確実に第3の円錐面43に沿って流下するため、燃料を噴孔7から良好に噴霧させることができる。
また、ディンプル列24〜26は、ノズルボデー2のシート面8にプレスによる打刻等によって形成することができるため、第2燃料通路15として特異な断面形状の流路構造を安価に製造することができる。
かくして、本実施例の燃料噴射ノズル1においても、実施例1と同様な効果を得ることができる。
次に、本発明を適用した燃料噴射ノズル1の第4実施形態について図6を参照しながら説明する。
上述の本実施例1〜3は、いずれも、ノズルボデー2側のみに凹部20を設けたが、本実施例は、ニードル3側にも凹部を設けることで、第2燃料通路15の流路構造を変えたものである。
ノズルボデー2のシート面8には、凹部20として、実施例1と同様、3つの環状溝21、22、23が設けられているが、これに加えて、ニードル3のニードル先端部4にも、上記凹部20と対向するように凹部30を形成している。
この凹部30は、2つの円環状の溝31、32で構成されており、第1の環状溝31と第2の環状溝32とは、第2の円錐面42と第3の円錐面43との境界部分を挟んでそれぞれの円錐面42,43に設けられている。
これにより、対向する3つの環状溝21、22、23(ノズルボデー2側)と2つの環状溝31、32(ニードル2側)とは、第2燃料通路15に沿って交互(千鳥状)に配置される。
なお、凹部30をなす環状溝31、32の断面形状には、一例として、図7(b)のごとき球面形状を採用している。
特に、本実施例では、両凹部20、30に発生する乱流エネルギーの相乗作用により、上記実施例1〜3に比して性能向上効果を助長できる。
以上、4つの実施例について詳述したが、凹部20、30の形状・配置構造は本発明の精神を逸脱しない範囲で種々変更することができるものであり、その一部について説明する。
(2)軸方向に複数並置する凹部20、30は、例示のごとき並置数に限定されるものではないが、第3の円錐面43に対する流れ剥離現象Xを効果的に抑制するためには、実験・研究によれば、第2の円錐面42と第3の円錐面43との少なくとも2箇所にわたって並置することが肝要である。
Claims (5)
- 先端部分に噴孔(7)を有するノズルボデー(2)と、このノズルボデー(2)内に往復摺動可能に収容され、前記噴孔(7)への燃料量を調整するニードル(3)とを備える燃料噴射ノズル(1)において、
前記ノズルボデー(2)は、前記ニードル(3)を往復摺動可能に嵌挿する摺動孔(10、11)、および、この摺動孔(10、11)と前記噴孔(7)との間に形成された円錐形状のシート面(8)を有しており、
前記ニードル(3)は、先端に向かって順次円錐角が大きくなる第1、第2、第3の円錐面(41、42、43)、および、前記第1の円錐面(41)と前記第2の円錐面(42)との境界部分に形成され、前記シート面(8)に着座することで、前記噴孔(7)に通じる燃料経路(15)を遮断するシート部(44)を有しており、
前記シート面(8)には、前記第2の円錐面(42)と対向する箇所と前記第3の円錐面(43)に対向する箇所との2箇所にわたって、当該両円錐面(42、43)を環状に囲繞する凹部(20)が形成されていることを特徴とする燃料噴射ノズル(1)。 - 請求項1に記載した燃料噴射ノズル(1)において、
前記凹部(20)は、前記両円錐面(42、43)を取り囲むように円環状に形成された複数の溝(21、22、23)で構成されていることを特徴とする燃料噴射ノズル(1)。 - 請求項1に記載した燃料噴射ノズル(1)において、
前記凹部(20)は、多数のディンプル(27)を環状に配置して形成された複数のディンプル列(24、25、26)で構成されていることを特徴とする燃料噴射ノズル(1)。 - 請求項2に記載した燃料噴射ノズル(1)において、
前記複数の溝(21、22、23)は、隣り合う溝が軸方向に重畳していることを特徴とする燃料噴射ノズル(1)。 - 請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載した燃料噴射ノズル(1)において、
前記第2の円錐面(42)および前記第3の円錐面(43)には、前記凹部(20)に対向するように、凹部(30)が形成されていることを特徴とする燃料噴射ノズル(1)。
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