[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/

JP2016013544A - 多孔膜 - Google Patents

多孔膜 Download PDF

Info

Publication number
JP2016013544A
JP2016013544A JP2015119525A JP2015119525A JP2016013544A JP 2016013544 A JP2016013544 A JP 2016013544A JP 2015119525 A JP2015119525 A JP 2015119525A JP 2015119525 A JP2015119525 A JP 2015119525A JP 2016013544 A JP2016013544 A JP 2016013544A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
resin
graft
porous membrane
group
resin porous
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2015119525A
Other languages
English (en)
Inventor
吉景 大向
Yoshikage Omukai
吉景 大向
数行 佐藤
Kazuyuki Sato
数行 佐藤
大島 明博
Akihiro Oshima
明博 大島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Daikin Industries Ltd
Osaka University NUC
Original Assignee
Daikin Industries Ltd
Osaka University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Daikin Industries Ltd, Osaka University NUC filed Critical Daikin Industries Ltd
Priority to JP2015119525A priority Critical patent/JP2016013544A/ja
Publication of JP2016013544A publication Critical patent/JP2016013544A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Separation Using Semi-Permeable Membranes (AREA)
  • Manufacture Of Porous Articles, And Recovery And Treatment Of Waste Products (AREA)
  • Graft Or Block Polymers (AREA)

Abstract

【課題】ファウリング物質による目詰まりが生じにくく、かつ、濾過効率が高い多孔膜の提供。
【解決手段】樹脂多孔質基材の表面に電離放射線を照射してラジカルを生成させ、生成したラジカルとラジカルと反応性の基を含む化合物とをグラフト重合させ、表面部分に存在する分子鎖がグラフト鎖を有し、グラフト率が0.1〜5%であり、水の接触角が、80°以下であり、樹脂多孔質基材が、含フッ素樹脂多孔質基材である、流体処理用樹脂多孔膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、流体処理用樹脂多孔膜に関する。
近年、流体、例えば溶液中から微小な粒子を取り除き、溶液を処理する多孔膜の需要が高まっている。主な用途として、水処理、例えば海水の淡水化、上下水の処理、および医療用途、例えば、血漿分画製剤や、バイオ医薬品等の製剤を人体に投与する際に、製剤中に含まれている可能性のあるウイルスおよび病原性タンパク質等の病原体を除去する用途等がある。
上記のように多孔膜により被処理液の分離を行う場合、ファウリング物質による膜の目詰まりが問題となる。このようなファウリング物質の膜への付着を抑制するために、多孔膜に対し、ファウリング物質と非親和性のグラフト鎖を導入することが行われている。例えば、特許文献1では、特に水溶液の処理において、ヒドロキシル基、アニオン交換基またはカチオン交換基を有するビニルモノマー等を基材にグラフトして、基材を親水化することにより、タンパク質等の疎水性ファウリング物質の膜への付着を抑制している。
特開2009−183804号公報
溶液処理用の多孔膜においては、(1)高い膜強度、(2)耐ファウリング性、(3)高い濾過効率が求められる。
しかしながら、従来のようにファウリング物質と非親和性のグラフト鎖を導入する場合、(2)耐ファウリング性は得られるが、多孔膜の細孔部分にもグラフト鎖が導入されて孔径が小さくなり、濾過抵抗が増大して、(3)高い濾過効率を得ることは困難である。
このように、上記(1)〜(3)をすべて満たす多孔膜を得ることは難しく、特に、(2)と(3)はトレードオフの関係にあるので、両立が困難であった。
従って、本発明は、ファウリング物質による目詰まりが生じにくく、かつ、濾過効率が高い多孔膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、低エネルギーの電離放射線を用いることによって多孔膜基材の表面部分にグラフト鎖を偏析させることにより、(1)の基材の強度を劣化させることなく、(2)耐ファウリング性および(3)高い濾過効率を両立できることを見出した。
即ち、本発明の要旨によれば、多孔質基材の表面部分に存在する分子鎖が、グラフト鎖を有することを特徴とする、流体処理用樹脂多孔膜が提供される。
本発明によれば、樹脂多孔質基材の表面に、グラフト鎖を導入することにより、ファウリング物質による目詰まりが生じにくく、かつ、濾過効率に優れた多孔膜を提供することが可能になる。
本発明の多孔膜は、流体処理に用いられる。「流体処理」とは、不純物を含む流体から、この不純物を除去する処理を意味する。ここに、流体とは、気体または液体のいずれであってもよく、気体としては有機気体、空気などを包含し、液体としては、溶液、懸濁液、乳濁液、分散液などを包含する。不純物は、固体として存在するものであっても、溶質として溶け込んだものであってもよい。
本発明の多孔膜は、樹脂多孔質基材の表面部分に存在する分子鎖が、グラフト鎖を有することを特徴とする。
本発明の多孔膜は、例えば、樹脂多孔質基材の表面に電離放射線を照射してラジカルを生成させ、生成したラジカルと、ラジカルと反応性の基を含む化合物とをグラフト重合させることにより製造することができる。具体的には、以下のように製造される。
まず、樹脂多孔質基材(以下、単に「樹脂基材」ともいう)を準備する。
樹脂基材を形成する材料は、電離放射線の照射によりラジカルを生成し得る樹脂、例えば電離放射線の照射により、放射線化学反応を起こし、水素原子またはフッ素原子などが脱離する化合物、または電離放射線の照射により主鎖/側鎖が切断される化合物から形成された樹脂であれば特に限定されず、例えば、フッ素樹脂および非フッ素樹脂を用いることができる。光、熱、薬品等に対する耐性がより高いことから、フッ素樹脂を用いることが好ましい。また、樹脂基材の分子量は、用途に応じた材料特性を維持し得る分子量であればよく、表面へのグラフト鎖の導入のための電離放射線照射により、低分子化するものであってもよい。
上記フッ素樹脂としては、例えば、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、パーフルオロアルコキシ共重合体(PFA)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(VdF−HFP)、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体(VdF−TFE)、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(VdF−TFE−HFP)、その他フッ素系樹脂、フッ素ゴム等が挙げられるほか、これらのブレンド樹脂、ポリマーアロイ、レイヤーバイレイヤーのハイブリッド材であってもよい。
上記非フッ素樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポロプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィン樹脂、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等のポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、アクリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ブタジエン−スチレン共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタラート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、スチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、あるいはこれらを含む共重合体、ブレンド、ポリマーアロイ、レイヤーバイレイヤーのハイブリッド材等が挙げられる。
樹脂基材の材料の種類は、処理する溶液に応じて適宜選択することができる。
好ましい態様において、樹脂基材を形成する材料は、フッ化ビニリデン系樹脂である。
フッ化ビニリデン系樹脂は、ポリフッ化ビニリデン、または、フッ化ビニリデン単位を有する共重合体からなる樹脂である。
ポリフッ化ビニリデンの重量平均分子量は、樹脂基材の機械的強度および加工性の観点から、30000〜2000000であることが好ましく、50000〜1000000であることがより好ましい。
フッ化ビニリデン単位を有する共重合体としては、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が挙げられる。機械的強度および耐アルカリ性の観点から、フッ化ビニリデン単位を有する共重合体は、特にフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体であることが好ましい。
成膜性および耐アルカリ性の観点から、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体は、フッ化ビニリデン単位およびテトラフルオロエチレン単位のモル比(フッ化ビニリデン単位/テトラフルオロエチレン単位)が50〜99/50〜1であることが好ましい。このようなポリマーとしては、例えば、ダイキン工業(株)製のネオフロンVTシリーズが挙げられる。フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体は、フッ化ビニリデン単位/テトラフルオロエチレン単位がモル比で50〜95/50〜5であることがより好ましく、50〜90/50〜10であることが更に好ましい。また、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体は、フッ化ビニリデン単位およびテトラフルオロエチレン単位のみからなるフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体の他に、フッ化ビニリデン単位およびテトラフルオロエチレン単位に加えて、特性を損なわない範囲でヘキサフルオロプロピレン単位、クロロトリフルオロエチレン単位、パーフルオロビニルエーテル単位等を有する三元以上の共重合体でもよい。
フッ化ビニリデン単位を有する共重合体の重量平均分子量は、樹脂多孔膜の用途によって異なるが、機械的強度および成膜性の観点からは、10000以上であることが好ましい。より好ましくは、30000〜2000000であり、更に好ましくは、50000〜1000000であり、特に好ましくは、100000〜800000である。上記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
本発明で用いられる樹脂基材は、ポリマーとしてフッ化ビニリデン系樹脂およびフッ化ビニリデン単位を有する共重合体のみを含むものであってもよいし、ポリマーとしてフッ化ビニリデン系樹脂およびフッ化ビニリデン単位を有する共重合体とこれら以外の樹脂とを含むものであってもよい。
フッ化ビニリデン系樹脂およびフッ化ビニリデン単位を有する共重合体以外の樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、およびこれらの混合物や共重合体が挙げられる。これらと混和可能な他の樹脂を混和してもよい。
フッ化ビニリデン系樹脂およびフッ化ビニリデン単位を有する共重合体以外の樹脂としては、なかでも、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、および、アクリル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
次いで、樹脂基材に電離放射線を照射する。樹脂基材に電離放射線を照射することにより、樹脂基材において、例えば、樹脂基材を形成する化合物から水素原子またはフッ素原子が脱離することにより、あるいは樹脂基材を形成する化合物の主鎖および/または側鎖が放射線化学反応によって切断されることによりラジカルが生成する。このラジカルが、ラジカルと反応性の基を有するグラフトモノマーとグラフト重合する。
電離放射線は、樹脂基材に照射した場合にラジカルを発生させることができるものであれば特に限定されず、例えば、電子線、X線、γ線、中性子線、イオン等を用いることができる。電離放射線の浸透深さ(飛程)の制御が容易で、樹脂中にラジカルを発生させやすいことから、電子線が好ましい。
照射される電離放射線の吸収線量は、導入するグラフト鎖の量、グラフト深さ、樹脂基材の材料等に応じて適宜選択されるが、例えば、0.1〜1000kGy、好ましくは1〜300kGy、より好ましくは1〜100kGy、さらに好ましくは1〜50kGy、さらにより好ましくは1〜20kGy、例えば1〜15kGy、1〜10kGyであり得る。1000kGy以下の吸収線量とすることにより、樹脂基材の劣化を最小限に抑えることでき、多孔膜の強度の低下を抑制することができる。また、0.1kGy以上の吸収線量とすることにより、グラフト重合に十分な量のラジカルを生成することができる。樹脂基材への照射量は、ファラデーカップ、シンチレーション検出器や半導体検出器にて計測可能であるが、より好ましくは、例えば三酢酸セルロースフィルム(CTA:Cellulose triacetate)線量計や、ラジオクロミックフィルム線量計等を用いた吸収線量計により測定することができる。
電子線を用いる場合、電子加速器を用い、基材に照射される電子線の電子のエネルギーは、基材表面におけるエネルギーで、好ましくは5keV〜100keV、より好ましくは10keV〜80keV、さらに好ましくは30keV〜70keV、さらにより好ましくは40keV〜70keVである。基材表面での電子のエネルギーを100keV以下とすることにより、実質的に樹脂基材の表面付近のみで電子線が吸収され、樹脂基材の内部にまで浸透する電子線が少なくなるので、電子線による樹脂基材の劣化を抑制することができる。さらに、グラフト重合に関与しない樹脂内部での電子線の吸収が少なく、また、樹脂基材を透過する電子線が少ないので、エネルギー吸収効率も高めることができる。一方、基材表面での電子のエネルギーを5keV以上とすることにより、樹脂基材表面において、グラフト重合に十分な程度のラジカルを生成することができる。即ち、当該グラフト重合は、樹脂基材の表面部分のみでグラフト反応が生じるので、表面グラフト反応とも言える。
電子加速器からの電子線を用いる場合、電子銃から基材まで間が真空環境であれば、電子のエネルギーは、加速電圧と対応しその加速電圧は、好ましくは5〜100kV、より好ましくは10〜80kV、さらに好ましくは30〜70kV、さらにより好ましくは40〜70kVであればよい。
一方、電子銃から基材まで間に、大気中への取り出しのための照射窓があるような電子加速器の場合、真空中の照射であっても電子のエネルギーは、照射窓通過の際に減衰するので、加速電圧は、電子のエネルギーの減衰に応じてより高くする必要がある。もちろん、窒素気流中を通過する場合も同様に、試料までの気流中の密度と距離に応じて減衰するエネルギーを考慮して高くする必要がある。
電子線を用いる場合、基材に照射される電子の照射線量は、0.01μC/cm〜10mC/cm、好ましくは、0.1μC/cm〜500μC/cm、より好ましくは1μC/cm〜100μC/cm、例えば2μC/cmである。このような範囲の照射線量とすることにより、効率よくラジカルを発生させることができる。
樹脂基材への電離放射線の照射は、生成したラジカルの対消滅を抑制する観点から、好ましくは、実質的に酸素が存在しない雰囲気下、例えば、酸素濃度が1000ppm以下、より好ましくは、500ppm、さらにより好ましくは、100ppm以下の雰囲気下で行われる。例えば、電離放射線の照射は、真空中または不活性ガス雰囲気下、例えば窒素またはアルゴン雰囲気下で行われる。尚、真空とは、完全に真空である必要はなく、実質的に真空であればよく、例えば10Pa程度の低真空、10−2Pa程度の高真空のいずれでああってもよい。また、別の態様において、電離放射線の照射は、過酸化ラジカルを得るために、大気下で行ってもよく、また、ラジカル生成後に酸素を供給することもできる。また、本発明の樹脂基材に生成したラジカルの失活を防止するために、照射後の樹脂基材は、当該樹脂を構成するポリマーのガラス転移温度以下の低温で保管されることが好ましく、真空あるいは不活性雰囲気下での保管がより好ましい。
電離放射線の浸透深さは、樹脂基材の厚みの0.1〜50%、好ましくは1〜30%、より好ましくは1〜20%、さらに好ましくは1〜5%である。好ましくは、浸透深さは、0.1μm以上である。例えば、電離放射線の浸透深さは、樹脂基材の表面から0.1〜40μm、好ましくは0.1〜20μm、より好ましくは0.1〜10μm、例えば0.5〜5μmの深さであってもよい。
電離放射線の浸透深さとは、樹脂基材が電離放射線のエネルギーを吸収する深さを意味する。電離放射線の浸透深さは、グラフト重合が起きる領域と実質的に同じであるが、グラフト反応により、試料表面はわずかに膨潤するため、グラフト反応後の成形体におけるグラフト鎖が存在する深さは、電離放射線の浸透深さよりも深くなり得る。グラフト鎖が存在する深さは、グラフト重合後の成形体の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)によるEDX(Energy dispersive X-ray)分析、EPMA(Electron Probe Microanalyser)分析などにより測定することができる。また、グラフト鎖が存在する深さは、顕微FT−IRや、ラマン顕微鏡などによっても測定することができる。
また、グラフト反応後の成形体におけるグラフト鎖が存在する深さは、陽電子寿命測定によっても測定することができる。陽電子が発生してから電子と対消滅するまでの時間を計測して得られる陽電子寿命は、高分子の非晶質自由体積および結晶中の原子空孔のサイズと相関を持つため、グラフト鎖がグラフトするにつれて基材における非晶質の自由体積が小さくなり、陽電子寿命も短くなる。このことから、陽電子寿命測定により、グラフト鎖が存在する深さを測定することができる。陽電子寿命測定は、一般に、β+崩壊時に放出されるガンマ線と消滅ガンマ線を異なるシンチレーション検出器で検出し、それらの入射時間差から、ある時間で消滅した陽電子の頻度を計数する。このようにして得られた減衰曲線を解析することで陽電子寿命を決定することができる。例えば、The 2nd Japan-China Joint Workshop on Positron Science (JWPS2013) で発表された T. Okaによる「Free volume study of the functionalized fluorinated polymer」において、フッ素樹脂にスチレンがグラフトされた例が紹介されている。本発明においても、この方法によりグラフト鎖の存在を計測することができる。
次に、電離放射線を照射により生成した樹脂基材中のラジカルと、モノマーとしての化合物(以下、「グラフトモノマー」ともいう)とを、グラフト重合させる。
上記グラフトモノマーは、ラジカルと反応性の基を有する。かかるラジカルと反応性の基としては、特に限定されないが、例えばエチレン性二重結合を有する基および含酸素環状基(例えば、グリシジル基、オキセタニル基)、ならびにそれらの誘導体が挙げられる。
好ましいラジカルと反応性の基は、下記式:
Figure 2016013544
[式中、Rは、結合、−O−、−CO−または−OC(O)−であり、
は、水素原子、フッ素原子、あるいはフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基(好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基、より好ましくはメチル基)、ラクタム基(好ましくは、β-ラクタム、γ-ラクタムまたはδ-ラクタム基、より好ましくはγ-ラクタム基)またはフェニル基を表し、好ましくは、メチル基または水素原子である。]
で表される基である。
より好ましいラジカルと反応性の基は、下記式:
Figure 2016013544
[式中、Rは、上記と同意義である。]
で表される基である。
さらに好ましいラジカルと反応性の基は、アクリロイル基またはメタクリロイル基である。
上記表面グラフト重合は、電離放射線を照射することにより生成した樹脂基材中のラジカルと、グラフトモノマーを接触させることにより行われる。樹脂基材中のラジカルと、グラフトモノマーとの接触は、例えば、樹脂基材をグラフトモノマーの溶液に浸漬する、グラフトモノマーを樹脂基材上に滴下または塗布する、あるいは気体のモノマーの存在下に樹脂基材を置くことにより行われる。樹脂基材の表面とグラフトモノマーの濡れ性が低い場合であっても、均一かつ確実に接触させることができることから、樹脂基材を、グラフトモノマーの溶液に浸漬する方法が好ましい。
上記グラフト重合の反応温度は、特に限定されないが、例えば室温(例えば20℃)〜100℃、好ましくは30〜80℃、より好ましくは30〜60℃である。
上記表面グラフト重合の反応時間は、特に限定されないが、例えば30分〜32時間、好ましくは1〜12時間、より好ましくは2〜6時間である。
尚、グラフト重合は、上記したように、電離放射線を照射した後に、樹脂基材とグラフトモノマーを接触させることにより行うことができるが、これに限定されず、電離放射線照射と同時に樹脂基材とグラフトモノマーを接触させてもよい。例えば、樹脂基板をグラフトモノマーの溶液に浸漬させた状態で、または気体のグラフトモノマーが存在する雰囲気下で、電離放射線を照射してもよい。また、予め樹脂基材とグラフトモノマーを接触させ、その状態で電離放射線を照射してもよい。例えば、樹脂基板上にグラフトモノマーを滴下または塗布等により存在させて、あるいは樹脂基板をグラフトモノマーに浸漬し、樹脂基板にグラフトモノマーを含浸させて、電離放射線を照射してもよい。樹脂基板をグラフトモノマーに浸漬し、樹脂基板にグラフトモノマーを含浸させて、電離放射線を照射することが好ましい。
上記のようにして製造された樹脂多孔膜は、樹脂多孔質基材の表面部分に存在する分子鎖が、グラフト鎖を有する。
「グラフト鎖」とは、樹脂基材を構成するポリマーの主鎖に枝状に結合した側鎖を意味し、製造方法により限定されるものではない。即ち、グラフト鎖は、例えば上記のグラフト重合により形成されるグラフト鎖に加え、その他の方法により樹脂基材を構成するポリマーの主鎖に導入された鎖も包含する。
好ましい態様において、「グラフト鎖」は、樹脂基材のポリマー主鎖に対して枝分れした分枝鎖であって、電離放射線の照射によりグラフトモノマーをポリマー主鎖に共有結合したものであり得る。
グラフト鎖は、カチオン性、アニオン性またはノニオン性のいずれであってもよいが、ノニオン性であることが好ましい。ノニオン性であることにより、電荷を有するファウリング物質の付着を抑制することができる。
上記カチオン性のグラフト鎖としては、特に限定するものではないが、カチオン交換基を有するものが挙げられる。カチオン交換基は、カチオン交換可能な基であれば特に限定されず、酸基またはアルコール性水酸基等が挙げられる。酸基は塩を形成していてもよい。カチオン交換基としては、特に限定されないが、酸基であるスルホン酸基、リン酸基、カルボキシル基、およびアルコール性水酸基からなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
上記カチオン交換基を有するグラフト鎖は、例えば、カチオン交換基を有する化合物を樹脂基材にグラフト重合することにより導入することができる。カチオン交換基を有する化合物としては、例えば、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタリルスルホン酸、2−スルホプロピル(メタ)アクリレート、スチレンスルホン酸等のラジカル重合性基とスルホン酸基を有する化合物;2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート等のラジカル重合性基とリン酸基を有する化合物;(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性基とカルボキシル基を有する化合物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、p−ヒドロキシスチレン等のラジカル重合性基とアルコール性水酸基を有する化合物が挙げられる。
上記アニオン性のグラフト鎖としては、特に限定するものではないが、アニオン交換基を有するものが挙げられる。アニオン交換基は、アニオン交換可能な基であれば特に限定されず、ジエチルアミノ基(DEA、EtN−)、四級アンモニウム基(Q、R−)、四級アミノエチル基(QAE、R−(CH−)、ジエチルアミノエチル基(DEAE、EtN−(CH−)、ジエチルアミノプロピル(DEAP、EtN−(CH−)基などが挙げられる。式中、Rは、特に限定されるものではないが、同一または異なっていてもよく、好適には、アルキル基、フェニル基、アラルキル基などの炭化水素基を表す。
上記アニオン交換基を有するグラフト鎖は、例えば、アニオン交換基を有する化合物を樹脂基材にグラフト重合することにより導入することができる。アニオン交換基を有する化合物としては、例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレートなどのアクリル酸アミノアルキルエステル類、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレートなどのメタクリル酸アミノアルキルエステル類のようなエステル系モノマーが挙げられる。
上記ノニオン性のグラフト鎖としては、特に限定するものではないが、例えば水分子と水素結合し得る部分を有するものが挙げられる。
上記ノニオン性のグラフト鎖は、例えば、ノニオン性基を有する化合物を樹脂基材にグラフト重合することにより導入することができる。ノニオン性基は、好ましくは、酸性基を含まない基である。ノニオン性基は、具体的には、式:
CH(C2nO)
[式中、nは、mを付して括弧でくくられた単位毎に独立して1〜5の整数であり、mは1〜100の整数である。]
で表される基であり、好ましくはポリエチレングリコール基またはポリプロピレングリコール基である。ノニオン性基を有する化合物としては、例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリルアミド、アクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸(3−オキサブタン−1−イル)、(2−エトキシエチル)ビニルエーテル、(2−メトキシエチル)ビニルエーテル等、ポリエーテル、具体的には、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート、ポリプロピレングリコールメチルエーテルメタクリレート等、ならびにこれらの誘導体が挙げられる。
一の態様において、上記した有機モノマーに加え、ゾルゲル化反応により無機的ネットワーク構造を形成することができる化合物、例えば金属アルコキシド類を添加してもよい。このような化合物を添加することにより、基材の耐薬品性をより向上させることができる。特に硫酸過水のような薬品に対する耐薬品性と、親水性(=薬液透過性)を両立する観点から、加水分解性金属アルコキシドおよび/または複合酸化物等を加えることが好ましい。
上記加水分解性金属アルコキシドとしては、下記式:
(R11M(OR12
[式中、
11は、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、ビニル基含有有機基、またはエポキシ基含有有機基を表し、
12は、それぞれアルキル基、アルコキシアルキル基、またはアリール基を表し、
Mはケイ素(Si)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)を表し、
mは2〜5(好ましくは、3または4)であり、nは0〜2(好ましくは、0または1)であり、m+nは3〜5(好ましくは、4)である。]
で表される化合物が挙げられる。
上記複合酸化物としては、シリカ・アルミナ、シリカ・アルミナ系合成ゼオライト、シリカ・アルミナ系天然ゼオライト、燐酸アルミニウム、燐酸アルミニウム系合成ゼオライト、およびSi−Al−P系合成ゼオライト(SAPO)等を挙げることができる。
好ましくはグラフト鎖が存在する深さは、樹脂基材の厚みの0.1〜50%、好ましくは1〜30%、より好ましくは1〜20%、さらに好ましくは1〜5%であってもよい。即ち、グラフト鎖は樹脂基材の厚み全体にわたって存在しておらず、表面から所定の深さまでの領域に存在する。従って、このようなグラフト鎖は、表面グラフト鎖と言える。好ましくは、グラフト鎖が存在する深さは、0.1μm以上である。例えば、グラフト鎖は、樹脂基材の表面から、少なくとも深さ0.1μmまで、最大で深さ40μmまで、好ましくは少なくとも深さ0.1まで、最大で深さ20μmまで、より好ましくは少なくとも深さ0.1まで、最大で深さ10μmまで、例えば少なくとも深さ0.5まで、最大で5μmまで存在してもよい。
樹脂基材中の表面グラフト鎖が存在する深さは、例えば、走査型電子顕微鏡により、樹脂基材の断面を観察することにより測定することができる。より詳細には、EPMAやEDXによる元素分析を行うことで測定できる。
また、上記のようにして製造された樹脂基材は、グラフト率が、0.1〜5.0%、好ましくは1〜3%、より好ましくは1.0〜2.0%となり得る。上限は、好ましくは4.0%、より好ましくは3.0%、さらに好ましくは2.5%、さらにより好ましくは2.0%であり、下限は、好ましくは0.3%、より好ましくは0.5%、例えば0.8%または1.0%である。グラフト率を0.1%以上とすることにより、高い耐ファウリング性を達成することができる。また、グラフト率を5.0%以下とすることにより、高い透水量を達成することができる。
「グラフト率」とは、樹脂基材に対して導入されたグラフト鎖の割合を意味する。具体的には、グラフト率(Dg)は、グラフト重合反応前後の樹脂基材の重量変化を測定し、下記式により算出することができる。
グラフト率:Dg[%]=(W−W)/W×100
[式中、Wは、グラフト重合前の樹脂基材の重量であり、Wは、グラフト重合後の樹脂基材の重量である。]
また、上記グラフト率は、熱重量測定(TG:thermogravimetric analysis)により算出することもできる。具体的には、グラフト鎖を有する樹脂基材を、樹脂基材の温度を一定のプログラムに従って変化させて(加熱または冷却させて)、樹脂基材の重量の変化を測定し、この重量変化から算出することができる。熱重量測定は、例えば、Rigaku社製や島津製作所のTGA測定器を用いて行うことができる。
本発明の樹脂多孔膜は、グラフト鎖が樹脂基材の表面(または表面付近)に偏在しており、樹脂基材の深部には実質的に存在しない。即ち、多孔膜の細孔に導入されるグラフト鎖が少なくなるので、グラフトによる濾過抵抗の増大を抑制することができる。また、樹脂基材の表面には、十分な量のグラフト鎖が導入されているので、ファウリング物質の付着防止効果を、十分に発揮することができる。
一の態様において、本発明の樹脂多孔膜中のグラフト鎖は、上記グラフトモノマーの残基である。即ち、グラフト鎖は、グラフトモノマーが有する官能基を有する。
従って、本発明は、樹脂基材の少なくとも表面部分に存在する分子鎖がグラフト鎖を有し、このグラフト鎖が、グラフトモノマーの残基であることを特徴とする樹脂多孔膜をも提供する。
ここに、「グラフトモノマーの残基」とは、ラジカルと反応性の基を含むグラフトモノマーと樹脂基材とが結合した後の、グラフトモノマーに由来する部分を意味する。例えば、グラフトモノマーが、R−OC(O)−CH=CH(Rは任意の基を表す)で表される化合物である場合、グラフトモノマーの残基は、
Figure 2016013544
であり得る。
本発明の樹脂多孔膜の厚みは、特に限定されず、処理する溶液に応じて適宜選択することができ、例えば、10μm〜3mmであり、好ましくは10μm〜1mmであり、より好ましくは20〜500μmである。
樹脂多孔膜の形状は、特に限定されず、例えば、フィルム状、中空糸膜等であり得る。
一の態様において、本発明の樹脂多孔膜は、水性溶液の処理に用いられる。
この態様において、樹脂基材は、好ましくは含フッ素樹脂から形成され、より好ましくはポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体から選ばれる少なくとも1つの含フッ素樹脂から形成され、さらに好ましくはポリフッ化ビニリデンから形成される。
この態様において、樹脂多孔膜は、親水化されていることが好ましい。親水化することにより、タンパク質などの疎水性物質によるファウリングを抑制することができる。
好ましい態様において、グラフト鎖はノニオン性親水基を有する。
水性溶液の処理に多孔膜を用いる場合、多孔膜を親水化することが好ましく、例えば特許文献1は、親水化をイオン性のグラフト鎖を導入することにより行っている。しかしながら、このようなグラフト鎖は、電荷を有しないファウリング物質には有効であるが、逆の電荷を有するファウリング物質を引き寄せることになり、ファウリング物質の付着抑制効果を十分に発揮できない場合がある。ノニオン性親水基を有するグラフト鎖を、樹脂基材に導入することにより、このような電荷を有するファウリング物質の付着を抑制することができる。
上記ノニオン性親水基は、特に限定されないが、例えば水分子と水素結合し得る部分を有する基等であり得る。
好ましい態様において、上記ノニオン性親水基を有するグラフト鎖は、ノニオン性親水基およびラジカルと反応性の基を含む化合物(グラフトモノマー)の残基である。
上記グラフトモノマーの例としては、特に限定されないが、例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、アクリルアミド、アクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸(3−オキサブタン−1−イル)、(2−エトキシエチル)ビニルエーテル、(2−メトキシエチル)ビニルエーテル等、ポリエーテル、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等、ならびにこれらの誘導体が挙げられる。
樹脂多孔膜が水性溶液の処理用である場合、上記樹脂基材の厚みは、10μm〜1mmが好ましく、20〜500μmがより好ましい。
また、グラフト鎖は、樹脂基材表面から、0.1〜20μmの深さまで存在することが好ましく、0.1〜10μmの深さまで存在することがより好ましい。好ましくはグラフト鎖が存在する深さは、樹脂基材の厚みの0.1〜50%、好ましくは1〜30%、より好ましくは1〜20%、さらに好ましくは1〜5%であってもよい。好ましくは、グラフト鎖が存在する深さは、0.1μm以上である。例えば、グラフト鎖は、樹脂基材の表面から、0.1〜40μm、好ましくは0.1〜20μm、より好ましくは0.1〜10μm、例えば0.5〜5μmの深さまで存在してもよい。
樹脂基材中のグラフト鎖が存在する深さは、例えば、走査型電子顕微鏡により、樹脂基材の断面を観察することにより測定することができる。より詳細には、EPMAやEDXによる元素分析を行うことで測定できる。
樹脂多孔膜が水性溶液の処理用である場合、グラフト反応の際の電離放射線は、電子線が好ましい。また、照射時の試料表面での加速エネルギーは、5〜100keVが好ましく、30〜70keVがより好ましい。吸収線量は、1〜100kGyが好ましく、1〜50kGyがより好ましく、1〜25kGyがさらに好ましく、1〜15kGyがさらにより好ましく、例えば1〜10kGyが好ましい。
樹脂多孔膜が水性溶液の処理用である場合、その表面の水の接触角が80°以下であることが好ましく、75°以下がより好ましく、70°以下がさらに好ましい。このような水の接触角を有することにより、より高い耐ファウリング性を達成することができる。
本発明において、接触角は、接触液体として水を用いた静的法により測定することができる。例えば、樹脂多孔膜が中空糸多孔膜である場合には、水に濡れた状態の中空糸多孔膜をガラス板上に固定し、中空糸多孔膜表面の水を拭き取った後、2μLの水滴を滴下する。固体(中空糸多孔膜)、液体(水)および気体(一般的には空気)の接する部位から、液体の曲面に接線を引いたとき、この接線と固体表面のなす角度を求め、それを接触角の値とする。
本発明の水性溶液の処理用樹脂多孔膜は、透水量が、好ましくは10〜10,000L/m・h・atmであり、より好ましくは100〜10,000L/m・h・atmである。
本発明の水性溶液の処理用樹脂多孔膜における平均孔径は、好ましくは5〜500nmであり、より好ましくは5〜300nmであり、さらに好ましくは10〜200nmである。即ち、本発明の樹脂多孔膜は、限外濾過膜または精密濾過膜として用いることができる。
上記平均孔径は、バブルポイント法により測定することができる。例えば、樹脂多孔膜が中空糸多孔膜である場合には、中空糸多孔膜の一端を閉塞してからエタノールに浸漬し、もう片方の末端を窒素ガスで加圧した際、多孔質中空糸膜から窒素ガスの泡が出始めた圧力(p)を用いて下記のように計算できる。最大細孔径をd、エタノールと空気の界面の表面張力をγとして、
d=Cγ/p
ここで、浸漬液がエタノールである場合にはCγ=0.632(kg/cm)であり、上式にp(kg/cm2)を代入することにより、最大細孔径d(μm)を求めることができる。
本発明の水処理用樹脂多孔膜における気孔率は、20〜90%であり、好ましくは25〜85%、より好ましくは30〜70%である。濾過速度を速くする点から、気孔率が20%以上であることが好ましい。また、微粒子除去の確実性を維持し、かつ多孔膜の強度を維持する点から、90%以下であることが好ましい。ここで、気孔率とは、以下の式で定義される。
気孔率(%)=(1−樹脂の重量/(樹脂の密度×体積))×100
上記のような本発明の水性溶液処理用の多孔膜は、基材およびグラフト鎖を適宜選択することにより、親水性に加えて、耐薬品性、耐熱性、耐油性等を付与することができるので、種々の水性溶液の処理に用いることができる。水性溶液の処理としては、特に限定するものではないが、海水の淡水化、上下水の処理等の水処理、放射性物質含有水の水処理;血漿分画製剤、バイオ医薬品等の製剤中に含まれている可能性のあるウイルスおよび病原性タンパク質等を除去する処理;薬液の処理、例えばシリコンウェーハの洗浄に用いる硫酸過水中の不純物を除去する処理等が挙げられる。好ましくは、本発明の水性溶液処理用多孔膜は、水処理用多孔膜である。
別の態様において、本発明の樹脂多孔膜は、有機溶媒溶液の処理に用いることができる。
この態様において、樹脂基材は、有機溶媒溶液の種類にもよるが、耐薬品耐性の高い含フッ素樹脂から形成されるのが好ましい。
好ましいフッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体およびパーフルオロアルコキシ共重合体であり、ポリテトラフルオロエチレンがより好ましい。
グラフト鎖の種類は、有機溶媒溶液の有機溶媒の種類、ファウリング物質の種類に応じて、適宜選択される。
別の態様において、本発明の樹脂多孔膜は、気体の処理に用いることができる。
気体の処理としては、特に限定されないが、例えば有機溶媒の高純度化、エアフィルターが挙げられる。
樹脂基材の種類、グラフト鎖の種類は、気体の種類、ファウリング物質の種類に応じて、適宜選択される。
製造例1
ポリフッ化ビニリデン 16.0重量%と溶剤 N、N−ジメチルアセトアミド)79.0重量%、製膜補助剤(塩化リチウム)5重量%を混合し、ローターを用いて50℃で一昼夜混合し、混合原料を得た。得られた混合原料を、中空糸膜作製装置に投入し、25℃で二重管口金から水槽へ吐出し、毎分10mの速度で巻き取り、多孔膜を得た。この多孔膜を水に25℃で1時間浸漬する操作を4回繰り返して溶剤を抽出して除去し、中空糸膜形状の多孔膜を得た。
実施例1
上記製造例1で作製したポリフッ化ビニリデンの多孔膜を、50容量%ポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)(平均分子量=300)水溶液に浸漬し、PEGMAを多孔膜に含浸させた。この多孔膜を超低エネルギー電子線 EB−ENGINE(浜松ホトニクス株式会社製)の電子線照射室に入れて窒素ガスで置換した後、多孔膜表面に電子線を8kGy照射した(照射条件:照射電圧60kV、照射強度10μA、掃引速度10cm/s、試料−照射窓間距離15mm)。片側に電子線を照射後、中空糸膜を裏返して他方に同じ照射線量で電子線を照射した。電子線照射後、多孔膜を50容量%アセトン/イソプロパノール溶液中で洗浄し、次に水で洗浄することによりPEGMAをグラフトしたポリフッ化ビニリデン多孔膜を得た。
実施例2
照射線量を4kGy(照射電圧60kV、照射強度5μA、掃引速度10cm/s)とした以外は実施例1と同様にして、実施例2の多孔膜を得た。
実施例3
照射線量を2kGy(照射電圧60kV、照射強度5μA、掃引速度20cm/s)とした以外は実施例1と同様にして、実施例3の多孔膜を得た。
試験例1
(接触角)
製造例1および実施例1〜3で得られた多孔膜について、水の初期接触角を測定した。具体的には、初期静的接触角は、接触角測定装置を用いて、水2μLにて実施した。
(透水量測定)
製造例1および実施例1〜3で得られた多孔膜について、25℃、膜間差圧50kPaの条件で、内圧式試験により多孔膜の純水の透水量(透水量の単位:L/(m・hr・atm))を測定した。
(熱重量測定)
実施例1〜3で得られた多孔膜のグラフト率を、示差熱天秤(TG−DTA)を用いて、熱重量測定により測定した。
(耐ファウリング試験)
製造例1および実施例1〜3で得られた多孔膜について、外圧式透水量測定装置を用いて中空糸膜1本のファウリング試験を行った。供給液にはBSA(ウシ血清アルブミン:和光純薬工業社製)水溶液(1000ppm、pH7.0)を用いた。外圧式の透水量測定装置に中空糸膜を1本セットし、透過圧力を0.5atmに調整し、同時に膜の厚密化を行うため純水を温度25℃、流量15mL/minの条件で30分以上流した。その後、供給液をBSA水溶液に切り替え温度25℃、流量15mL/minの条件で流し、30分および2時間経過後の透水量を初期値と比較した。評価は下記の基準により行った。
◎:2時間経過後の透水量が初期と比較して50%以上を保持
○:30分経過後の透水量が初期と比較して50%以上を保持
×:30分経過後の透水量が初期と比較して50%以下
結果を下記表にまとめて示す。
Figure 2016013544
以上の結果から、多孔膜表面に電子線を照射することにより、多孔膜表面がグラフト化されていることが確認された。また、接触角が小さくなり多孔膜表面が親水化していることが確認された。さらに、十分な透水量も確保でき、耐ファウリング性にも優れていることが確認された。このことから、多孔膜表面は十分にグラフトされており、良好な耐ファウリング性が得られ、一方、多孔膜の内部、特に孔ではグラフト化があまり進行しておらず、十分な透水量が確保できたものと考えられる。
本発明の多孔膜は、種々の流体の処理に用いることができる。

Claims (7)

  1. 樹脂多孔質基材の表面部分に存在する分子鎖が、グラフト鎖を有し、グラフト率が0.1〜5%であることを特徴とする、流体処理用樹脂多孔膜。
  2. 液体処理用である、請求項1に記載の樹脂多孔膜。
  3. 水の接触角が、80°以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂多孔膜。
  4. 樹脂多孔質基材が、含フッ素樹脂多孔質基材である、請求項1または2に記載の樹脂多孔膜。
  5. 水性溶液処理用である、請求項2または3に記載の樹脂多孔膜。
  6. 有機溶媒溶液処理用である、請求項2または3に記載の樹脂多孔膜。
  7. 樹脂多孔質基材の表面に電離放射線を照射してラジカルを生成させ、生成したラジカルと、ラジカルと反応性の基を含む化合物とをグラフト重合させることにより得られる、請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂多孔膜。
JP2015119525A 2014-06-13 2015-06-12 多孔膜 Pending JP2016013544A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015119525A JP2016013544A (ja) 2014-06-13 2015-06-12 多孔膜

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014122775 2014-06-13
JP2014122775 2014-06-13
JP2015119525A JP2016013544A (ja) 2014-06-13 2015-06-12 多孔膜

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2016013544A true JP2016013544A (ja) 2016-01-28

Family

ID=55230197

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015119525A Pending JP2016013544A (ja) 2014-06-13 2015-06-12 多孔膜

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2016013544A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018139567A1 (ja) * 2017-01-27 2018-08-02 国立大学法人大阪大学 成形用材料およびそれを用いた樹脂成形体の製造方法
WO2020138230A1 (ja) * 2018-12-27 2020-07-02 丸善石油化学株式会社 ポリフッ化ビニリデン樹脂製多孔膜及びその製造方法
WO2021040001A1 (ja) * 2019-08-29 2021-03-04 東レ株式会社 ポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜の親水化方法
CN114917775A (zh) * 2022-06-07 2022-08-19 苏州聚泰新材料有限公司 一种改性微孔膜材料

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS62110978A (ja) * 1985-11-05 1987-05-22 三菱レイヨン株式会社 中空糸膜の機能化処理方法
JPH0198640A (ja) * 1987-10-12 1989-04-17 Sumitomo Electric Ind Ltd 親水性四弗化エチレン樹脂多孔質膜の製造方法
JPH07124454A (ja) * 1993-11-02 1995-05-16 Tonen Chem Corp 分離膜および分離方法
WO2004035180A1 (ja) * 2002-10-18 2004-04-29 Asahi Kasei Pharma Corporation 親水性微多孔膜
JP2009183804A (ja) * 2008-02-01 2009-08-20 Asahi Kasei Corp 親水化された微多孔膜の製造方法

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS62110978A (ja) * 1985-11-05 1987-05-22 三菱レイヨン株式会社 中空糸膜の機能化処理方法
JPH0198640A (ja) * 1987-10-12 1989-04-17 Sumitomo Electric Ind Ltd 親水性四弗化エチレン樹脂多孔質膜の製造方法
JPH07124454A (ja) * 1993-11-02 1995-05-16 Tonen Chem Corp 分離膜および分離方法
WO2004035180A1 (ja) * 2002-10-18 2004-04-29 Asahi Kasei Pharma Corporation 親水性微多孔膜
JP2009183804A (ja) * 2008-02-01 2009-08-20 Asahi Kasei Corp 親水化された微多孔膜の製造方法

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2018139567A1 (ja) * 2017-01-27 2018-08-02 国立大学法人大阪大学 成形用材料およびそれを用いた樹脂成形体の製造方法
CN110248973A (zh) * 2017-01-27 2019-09-17 国立大学法人大阪大学 成型用材料和使用该成型用材料的树脂成型体的制造方法
JPWO2018139567A1 (ja) * 2017-01-27 2019-11-07 国立大学法人大阪大学 成形用材料およびそれを用いた樹脂成形体の製造方法
WO2020138230A1 (ja) * 2018-12-27 2020-07-02 丸善石油化学株式会社 ポリフッ化ビニリデン樹脂製多孔膜及びその製造方法
WO2021040001A1 (ja) * 2019-08-29 2021-03-04 東レ株式会社 ポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜の親水化方法
JPWO2021040001A1 (ja) * 2019-08-29 2021-09-13 東レ株式会社 ポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜の親水化方法
JP7004079B2 (ja) 2019-08-29 2022-01-21 東レ株式会社 ポリフッ化ビニリデン系多孔質分離膜の親水化方法
CN114269458A (zh) * 2019-08-29 2022-04-01 东丽株式会社 聚偏二氟乙烯系多孔质分离膜的亲水化方法
CN114269458B (zh) * 2019-08-29 2024-02-27 东丽株式会社 聚偏二氟乙烯系多孔质分离膜的亲水化方法
CN114917775A (zh) * 2022-06-07 2022-08-19 苏州聚泰新材料有限公司 一种改性微孔膜材料

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1545739B1 (en) Porous composite membrane and method for making the same
EP2398576B1 (en) Hydrophilic porous substrates
US7459085B2 (en) Microporous hydrophilic membrane
US8356717B2 (en) Hydrophilic porous substrates
US5531900A (en) Modification of polyvinylidene fluoride membrane and method of filtering
JP2019162625A (ja) グラフト化超高分子量ポリエチレン微多孔膜
US20100209693A1 (en) Hydrophilic porous substrates
JP2005528213A (ja) 耐腐食性かつ低い蛋白質結合性表面を有する多孔質膜基体
JPH069810A (ja) 疎水性高分子複合膜
JP2016013544A (ja) 多孔膜
JP2006239636A (ja) ファウリング防止材及び該ファウリング防止材で表面処理された分離膜
JP2011156519A (ja) 高分子水処理膜、水処理方法及び高分子水処理膜のメンテナンス方法
Kotra-Konicka et al. Modification of polypropylene membranes by ion implantation
JP2003268152A (ja) 親水性微多孔膜
JP2009183804A (ja) 親水化された微多孔膜の製造方法
JP7518898B2 (ja) 表面改質膜
KR102640667B1 (ko) 친수성으로 표면개질된 폴리프로필렌 부직포 및 그 제조방법
TWI423843B (zh) 低生物結垢過濾膜及其形成方法
KR20150140914A (ko) 방사선 그라프트 방법으로 제조된 친수화 다공성 지지체 제조방법 및 이에 따라 제조된 친수화 다공성 지지체
JP2004035582A (ja) 表面改質高分子微多孔膜の製造方法
JP2013184071A (ja) 分離膜およびその製造方法
KR20160021203A (ko) 친수성 플루오로플라스틱 기재
JP2010024412A (ja) イオン交換膜、タンパク質精製モジュール、及びタンパク質の分離方法
Kotra-Konicka et al. Modification of polypropylene membrane by ion implantation and plasma treatment

Legal Events

Date Code Title Description
RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20160215

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180522

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20180522

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20181206

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20181211

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20190702