以下、本発明の樹脂フィルム加工装置および樹脂フィルムの加工方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の樹脂フィルムの加工方法は、本発明の樹脂フィルム加工装置を用いて行なわれる。
<第1実施形態>
図1は、本発明の樹脂フィルム加工装置の第1実施形態を示す正面図である。図2は、図1に示す状態から抱き角調整機構を作動させた状態を示す正面図である。図3は、図1に示す樹脂フィルム加工装置で樹脂フィルムに孔が形成される状態を示す断面図である。図4は、図1に示す樹脂フィルム加工装置が備える溝付きローラの斜視図である。図5は、図1に示す樹脂フィルム加工装置が備える抱き角調整機構の正面図である。図6は、図1に示す樹脂フィルム加工装置の主要部のブロック図である。図7は、図1に示す樹脂フィルム加工装置が備える制御手段の制御動作を示すフローチャートである。図8は、図1に示す樹脂フィルム加工装置での樹脂フィルムの搬送速度とレーザ光の照射時間との関係を示すグラフである。図9は、搬送速度と抱き角との関係を示すグラフである。図34は、図1に示す樹脂フィルム加工装置で加工された樹脂フィルムから包装袋を製造する過程を順に示す図である。図35は、図1に示す樹脂フィルム加工装置で加工され得る樹脂フィルムの他の構成例を示す斜視図である。図36は、図35中のA−A線断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1〜図5中(図12〜図15、図17、図18、図26〜図28、図31についても同様)の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言い、左側を「左」、右側を「右」と言う。
図1、図2に示す樹脂フィルム加工装置(以下単に「加工装置」と言う)1は、樹脂フィルム20に多数の孔201を形成する加工を施す装置である。この加工装置1は、樹脂フィルム20を搬送する搬送手段2と、樹脂フィルム20に孔201を形成する孔形成手段3と、これらの作動を制御する制御手段10とを備えている。加工装置1の各部の構成について説明する前に、樹脂フィルム20について説明する。
樹脂フィルム20は、長尺状、すなわち、帯状をなし、加工が施される以前はロール状に巻回されており、加工が施されている最中は引き伸ばされ、加工が施された後は再度ロール状に巻回される。
図34に示すように、本実施形態では、樹脂フィルム20に多数の孔201が形成されており、その配置態様は、樹脂フィルム20の長手方向に沿って等間隔に配置され、幅方向には等間隔に4つ配置されている。なお、長手方向に沿った間隔と、幅方向に沿った間隔とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
樹脂フィルム20は、熱可塑性樹脂で構成されており、その熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリ乳酸エチルなどのポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。その他、紙、不職布等が混合されていてもよい。
なお、樹脂フィルム20は、単層のものであってもよいし、複数の層が積層された積層体であってもよい。
図34に示すように、樹脂フィルム20は、加工が施されると、孔201が形成された孔付き樹脂フィルム20Aとなる。この孔付き樹脂フィルム20Aは、所定長さに裁断されて、例えば青果物等の食品を包装する包装袋20Cとなる。孔付き樹脂フィルム20Aが包装袋20Cとなるまでの製造工程について説明する。
図34(a)に示すように、孔付き樹脂フィルム20Aを引き伸ばして、例えばはさみやカッターなどを用いて所定長さに裁断する。この裁断されたものが包装袋20Cの母材20Bとなる(図34(b)参照)。
次に、図34(c)に示すように、母材20Bの幅方向の中央部を折り曲げ部202として、折り曲げる。
そして、母材20Bが袋状をなるように縁部を例えば融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)して、図34(d)に示す包装袋20Cを得る。この包装袋20Cでは、表側に6つの孔201が3行2列の行列状に配置され、裏側にも6つの孔201が3行2列の行列状に配置されたものとなっている。包装袋20Cに包装された青果物は、自身の呼吸速度が孔201より調整されて、鮮度保持が行なわれる。
このような孔加工を施すのに、加工装置1が用いられる。
次に、加工装置1の各部の構成について説明する。前述したように、加工装置1は、搬送手段2と、孔形成手段3と、制御手段10とを備えている。
図1(図2についても同様)に示すように、搬送手段2は、樹脂フィルム20をその長手方向に沿って搬送するものである。搬送手段2は、溝付きローラ21と、溝付きローラ21に対して樹脂フィルム20の搬送方向(以下単に「搬送方向」と言う)上流側に配置されたテンショナ22、23、24、25と、溝付きローラ21に対して搬送方向下流側に配置されたテンショナ26、27、28、29とを有している。なお、各ローラは、それぞれ、例えばステンレス鋼等のような金属材料で構成されているのが好ましい。また、これらのローラは、中心軸(回動軸)214同士が同じ方向を向いており、互いに離間して配置されている。また、テンショナ25、26を除くローラは、例えば加工装置1全体を支持するフレーム(図示せず)に回動可能に支持されている。
図4に示すように、溝付きローラ21は、外形形状が円柱状をなし、その外周部211の一部に樹脂フィルム20の長手方向の途中が接触して、掛け回されつつ回転するローラである。
この溝付きローラ21の外周部211には、その周方向に沿った、すなわち、溝付きローラ21の中心軸214方向(長手方向)と直交する方向に沿ったリング状をなす第1の溝212が形成されている。第1の溝212の本数は、図4に示す構成では4本である。この本数は、樹脂フィルム20の幅方向に沿った孔201の個数と同じとなっている。後述するように、各第1の溝212上で樹脂フィルム20に対してレーザ光Lを照射することにより、その照射された部分に孔201を形成することができる(図3参照)。なお、4本の第1の溝212の間隔は、樹脂フィルム20に形成する孔201の間隔に応じたものとするのが好ましく、例えば図4に示す構成では溝付きローラ21の中心軸214方向に沿って等間隔となっている。
テンショナ22〜29も溝付きローラ21と同様に、外形形状が円柱状をなし、樹脂フィルム20の長手方向の途中が接触して、掛け回されつつ回転するローラである。これにより、樹脂フィルム20に対してその搬送方向に張力を掛けつつ、当該樹脂フィルム20を搬送することができる。図1に示す構成では、テンショナ22とテンショナ29とが溝付きローラ21に関して対称的に配置され、テンショナ23とテンショナ28とが溝付きローラ21に関して対称的に配置され、テンショナ24とテンショナ27とが溝付きローラ21に関して対称的に配置され、テンショナ25とテンショナ26とが溝付きローラ21に関して対称的に配置されている。
また、搬送方向最上流側では、未だ孔201が形成されていない樹脂フィルム20がロール状に巻回されている。そして、この樹脂フィルム20を搬送方向に送出すことができる。
一方、搬送方向最下流側では、孔201が形成された樹脂フィルム20を巻き取ることができ、その巻き取りローラにモータ11が接続される。そして、このモータ11の作動により、樹脂フィルム20を搬送することができる。
また、モータ11に印加する電圧の大きさを変更することにより、樹脂フィルム20の搬送速度vも変更することができる。これにより、樹脂フィルム20に対してレーザ光Lが当たる時間を調整することができ、よって、孔201の形状や大きさを変更することができる。
孔形成手段3は、レーザ光Lを照射するレーザ光照射部31を有している。このレーザ光照射部31は、溝付きローラ21の上側に当該溝付きローラ21に対向して配置され、加工装置1全体を支持する前記フレームに支持、固定されている。
また、レーザ光照射部31は、レーザ光Lを照射する照射口311が各第1の溝212にそれぞれ臨んでいる。そして、図3に示すように、樹脂フィルム20の溝付きローラ21に接触して、掛け回された接触部203にレーザ光Lが照射されることにより、当該接触部203が溶融して孔201が形成される。また、接触部203が溶融したことで微小片が生じるが、この微小片は、一部または全部が揮散しつつ第1の溝212から排出される。
また、レーザ光照射部31が照射するレーザ光Lは、樹脂フィルム20の構成材料に応じて適宜選択され、例えば、CO2レーザ光等の遠赤外線レーザ光、Nd−YAGレーザ光等の近赤外線レーザ光、エキシマレーザ光が挙げられるが、樹脂フィルム20の構成材料が熱可塑性樹脂の場合、CO2レーザ光であるのが好ましい。CO2レーザ光としては、波長が9.2〜10.8μm程度であるのが好ましく、9.4〜10.6μmがより好ましい。なお、用いる波長は、樹脂フィルム20の透過率を考慮して適宜選択して決定することができる。また、CO2レーザ光は、遠赤外線であり、例えばCO2混合ガスを封入した管に高周波、高電圧をあてて励起させることによって得られ、熱可塑性樹脂で構成された樹脂フィルム20に孔201を容易かつ確実に形成することができる。
図6に示すように、制御手段10は、搬送手段2や孔形成手段3等と電気的に接続されており、これらの作動を制御する機能を有している。制御手段10は、CPU(Central Processing Unit)101と、メモリ102とを有している。
CPU101は、樹脂フィルム20に孔加工を施すための処理等の各種処理用のプログラムを実行することができる。
メモリ102は、例えばフラッシュメモリであり、各種プログラム等を記憶することができる。
加工装置1では、樹脂フィルム20は、その搬送が停止した状態から再度搬送が停止するまでの間、速度増加(加速)、速度一定(定速)、速度減少(減速)の速度変化を伴う。そして、速度変化にかかわらず樹脂フィルム20に対して照射するレーザ光L1回当たりの照射時間jが常に一定ならば、樹脂フィルム20の搬送速度vの大小によって、孔201の大きさにばらつきが生じてしまう。加工装置1では、このような現象を解消するのに有効な構成となっている。以下、これについて説明する。
制御手段10は、孔形成手段3でのレーザ光Lの照射条件を変更する照射条件変更手段13としての機能を発揮するよう構成されている。この制御プログラムを図7のフローチャートに基づいて説明する。
制御手段10のメモリ102に予め記憶されている検量線を呼び出す(ステップS101)。図8に示すように、この検量線は、搬送速度vと照射時間jとの関係を示すグラフである。なお、検量線としては、グラフに限定されず、例えば、表(テーブル)であってもよい。
次いで、樹脂フィルム20を巻き取るためのモータ11に内蔵されたエンコーダからの情報に基づいて、搬送速度vを検出する(ステップS102)。そして、このときの搬送速度vが図8中のグラフ上の例えば点Aでの搬送速度vAである場合には、照射時間jは、照射時間jAと決定され、点Bでの搬送速度vBである場合には、照射時間jは、照射時間jBと決定され、点Cでの搬送速度vCである場合には、照射時間jは、照射時間jCと決定される(ステップS103)。
次いで、孔形成手段3のレーザ光照射部31を作動させて、レーザ光Lの照射を開始する(ステップS104)。また、この開始とともに、制御手段10に内蔵されているタイマ(図示せず)を作動させる(ステップS105)。
ステップS105を実行した後、ステップS103で決定された照射時間jが経過してタイムアップの場合には(ステップS106)、レーザ光照射部31の作動を停止することにより、レーザ光Lの照射を停止する(ステップS107)。
このように、加工装置1では、樹脂フィルム20に対して1つの孔201を形成する際に、樹脂フィルム20の搬送速度vに応じて、孔形成手段3でのレーザ光Lの照射条件を変更することができる。そして、そのレーザ光Lの照射条件の変更は、樹脂フィルム20に対して照射するレーザ光L、1回当たりの照射時間jを変更することによって行なわれる。
以上のような「搬送速度vが小であれば、照射時間jを長くし、搬送速度vが大であれば、照射時間jを短くする」制御により、図8に示すように、搬送速度vの大小によらず孔201の形状、大きさが確実に一定となり、よって、樹脂フィルムへの孔201の形成を安定して行なうことができる。
なお、孔201の形状、大きさが一定となるための搬送速度vと照射時間jとの関係は、例えば実験やシミュレーション等により予め求められている。
また、搬送速度vの変化は、本実施形態では樹脂フィルム20搬送中の速度増加、速度一定、速度減少の変化であったが、これに限定されない。例えば、樹脂フィルム20の構成材料や品質に応じて、搬送速度vを変えることがある、すなわち、低速搬送が好ましい場合や、高速搬送が可能な場合がある。このような場合にも前記制御により、孔201の形状、大きさが一定となるよう、孔201の形成を安定して行なうことができる。
また、加工装置1では、搬送速度vが大きくなればなるほど、樹脂フィルム20の搬送中に当該樹脂フィルム20と各ローラとの間に空気が巻き込まれて(入り込んで)、当該樹脂フィルムが波打つ、すなわち、バタつくおそれがあった。特に、孔201を形成する際に、樹脂フィルム20と溝付きローラ21との間でこのような波打った状態(以下「波打ち状態」と言う)が生じると、形成された孔201の大きさがばらつく等の現象が起きる。そこで、加工装置1では、このような現象を解消するのに有効な構成となっている。以下、これについて説明する。
図1、図2に示すように、搬送手段2では、樹脂フィルム20の溝付きローラ21に対する接触部203の抱き角(抱き角度)θを調整することができ、その調整用のための機構として抱き角調整機構4が設置されている。ここで、「抱き角」とは、接触部203で、搬送方向最上流側に位置する上流端203aと、搬送方向最下流側に位置する下流端203bと、溝付きローラ21を中心軸214方向から見たときの中心213とのなす角のことである。すなわち、「抱き角」とは、接触部203を円の弧としたときの当該弧の中心角のことである。
図5に示すように、抱き角調整機構4は、抱き角調整用ローラとしてのテンショナ25、26と、テンショナ25、26を上下方向に移動可能に支持する移動支持機構41とを有している。
前述したように、テンショナ25とテンショナ26とは、溝付きローラ21に関して対称的に配置されている。すなわち、テンショナ25は、溝付きローラ21に対して搬送方向上流側に隣り合って配置され、テンショナ26は、溝付きローラ21に対して搬送方向下流側に隣り合って配置されている。
移動支持機構41は、テンショナ25、26を鉛直方向、すなわち、搬送方向と交差する方向に移動可能に支持する機構である。図5に示すように、移動支持機構41は、モータ42と、カップリング43と、ボールねじ44と、リニアガイド45と、連結部材46とで構成されている。
モータ42は、例えばサーボモータやステッピングモータであり、前記フレームに固定されている。
ボールねじ44は、ねじ軸441と、ナット442と、これらの間を摺動する多数個の球体(図示せず)とで構成されている。ねじ軸441は、その下端部がカップリング43を介してモータ42と連結されている。また、ねじ軸441の上端部は、前記フレームに支持されている。
リニアガイド45は、レール部材451と、スライド部材452と、これらの間を摺動する多数個の球体(図示せず)とで構成されている。レール部材451は、前記フレームに鉛直方向に沿って、すなわち、ボールねじ44と平行に支持、固定されている。
連結部材46は、テンショナ25とテンショナ26とを連結する長尺状をなす硬質部材である。連結部材46の左端部461では、テンショナ25が回動可能に支持されており、右端部462では、テンショナ26が回動可能に支持されている。また、連結部材46は、その長手方向の中央部付近が、ボールねじ44のナット442とリニアガイド45のスライド部材452とに、例えばボルトを介して固定されている。
以上のような構成の移動支持機構41では、モータ42が回転動作することにより、ボールねじ44のねじ軸441が回転する。そして、ねじ軸441とナット442との間で、回転運動が直線運動に変換されて、連結部材46がテンショナ25、26ごと鉛直上方に向かって移動することができる。また、モータ42が前記と反対に回転動作することにより、連結部材46がテンショナ25、26ごと鉛直下方に向かって移動することができる。このように、移動支持機構41は、テンショナ25、26を一括して同じ方向に移動させることができる。
そして、抱き角調整機構4が作動した際、すなわち、移動支持機構41によりテンショナ25、26が図1に示す状態から図2に示す状態に変位した際、樹脂フィルム20(接触部203)と溝付きローラ21との接触面積が増大し、その結果、抱き角θも増大する。この抱き角θの増大により、樹脂フィルム20の接触部203と溝付きローラ21との密着の程度も増大する。そして、これらの間に空気が巻き込まれるのが確実に防止される。これにより、波打ち状態が解消される。その結果、樹脂フィルム20に孔201を安定して確実に形成することができる。
また、搬送速度vと抱き角θとの関係は、検量線としての例えば図9に示すグラフが制御手段10のメモリ102に予め記憶されている。なお、検量線としては、グラフに限定されず、例えば、表(テーブル)であってもよい。制御手段10は、例えば樹脂フィルム20を巻き取るためのモータ11に内蔵されたエンコーダからの情報に基づいて、搬送速度vを検出する。そして、その検出結果が搬送速度v1であった場合には、抱き角θ1となるように抱き角調整機構4が制御される(図9参照)。また、搬送速度v1よりも大きい搬送速度v2であった場合には、抱き角θ1よりも大きい抱き角θ2となるように抱き角調整機構4が制御される(図9参照)。このように抱き角調整機構4は、搬送速度vの大小により抱き角θの大きさを調整するよう、制御手段10によって制御されている。これにより、波打ち状態を確実に防止することができ、よって、樹脂フィルム20に対する孔加工を安定して行なうことができる。
抱き角調整機構4による抱き角θの調整範囲は、0度以上、180度以下であるのが好ましく、30度以上、150度以下であるのがより好ましい。これにより、搬送速度vの他、樹脂フィルム20の厚さ、樹脂フィルム20の伸び率等の種々の条件下で、波打ち状態を確実に防止することができる。
前述したように、移動支持機構41は、テンショナ25、26を一括して同じ方向に移動させることができる。これにより、テンショナ25、26のうちの一方を移動させた場合に比べて、迅速に抱き角θを調整することができる。
また、抱き角調整機構4では、テンショナ25、26が移動した分、樹脂フィルム20に対して搬送方向のテンションを調整することもできる。これにより、抱き角θの調整とともに、搬送速度vに応じて、樹脂フィルム20の接触部203と溝付きローラ21との密着の程度も調整される。これにより、波打ち状態がより確実に防止され、よって、樹脂フィルム20に対して孔加工をより好適に施すことができる。
図1、図2に示すように、テンショナ25、26の外径は、それぞれ、溝付きローラ21の外径よりも小さいのが好ましい。これにより、樹脂フィルム20と溝付きローラ21との間の滑りが少なく、バタツキを低減することができる。
また、加工装置1で好適に加工される樹脂フィルム20として、図35に示す構成のものがある。この樹脂フィルム20は、幅方向の中央部から半分(図35中の左側)の部分に印刷204が施されている。そして、このような樹脂フィルム20では、図36に示すように、図中の左側の印刷204が施された部分と、それと反対側、すなわち、図中の右側の無地の部分とで、厚さが異なっている。このように、樹脂フィルム20の幅方向に厚さが厚い部分と薄い部分とがある。例えば樹脂フィルム20がバナナ等の青果物を包装する包装袋20Cとなる場合、図36中の左側での厚さtleftは、33μmとなり、図36中の右側での厚さtrightは、30μmとなる。
このように幅方向に厚さが厚い部分と薄い部分とがある樹脂フィルム20では、搬送速度vの大小にかかわらず、搬送中に波打ち状態となり易い。そこで、加工装置1は、前記厚い部分と前記薄い部分との厚さの差の程度によって、抱き角θの大きさを調整することができる。これにより、前述したように樹脂フィルム20と溝付きローラ21との密着性が向上し、よって、波打ち状態が防止されて、安定して樹脂フィルム20に孔加工を施すことができる。
<第2実施形態>
図10は、本発明の樹脂フィルム加工装置(第2実施形態)での樹脂フィルムの厚さと抱き角との関係を示すグラフである。
以下、この図を参照して本発明の樹脂フィルム加工装置の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、抱き角の大きさを調整するときの条件が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
搬送速度vが一定である場合、樹脂フィルム20が比較的厚いものと比較的薄いものとでは、薄い方が波打ち状態が生じ易い。そこで、本実施形態では、抱き角調整機構4は、樹脂フィルム20の厚さtの大小により抱き角θの大きさを調整するよう構成されている。
厚さtと抱き角θとの関係は、検量線としての例えば図10に示すグラフが制御手段10のメモリ102に予め記憶されている。加工装置1の操作者(オペレータ)によって厚さtがメモリ102に入力されている。そして、その入力値が厚さt1であった場合には、抱き角θ3となるように抱き角調整機構4が制御される(図10参照)。また、厚さt1よりも厚い厚さt2であった場合には、抱き角θ3よりも小さい抱き角θ4となるように抱き角調整機構4が制御される(図10参照)。
以上のような制御により、波打ち状態を確実に防止することができ、よって、樹脂フィルム20に対する孔加工を安定して行なうことができる。
<第3実施形態>
図11は、本発明の樹脂フィルム加工装置(第3実施形態)での樹脂フィルムの伸び率と抱き角との関係を示すグラフである。
以下、この図を参照して本発明の樹脂フィルム加工装置の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、抱き角の大きさを調整するときの条件が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
搬送速度vが一定である場合、樹脂フィルム20が比較的伸び易いものと比較的伸び難いものとでは、伸び易い方が波打ち状態が生じ易い。そこで、本実施形態では、抱き角調整機構4は、樹脂フィルム20の伸び易さ、すなわち、伸び率αの大小より抱き角θの大きさを調整するよう構成されている。
伸び率αと抱き角θとの関係は、検量線としての例えば図11に示すグラフが制御手段10のメモリ102に予め記憶されている。加工装置1の操作者によって伸び率αがメモリ102に入力されている。そして、その入力値が伸び率α1であった場合には、抱き角θ5となるように抱き角調整機構4が制御される(図11参照)。また、伸び率α1よりも大きい伸び率α2であった場合には、抱き角θ5よりも大きい抱き角θ6となるように抱き角調整機構4が制御される(図11参照)。
以上のような制御により、波打ち状態を確実に防止することができ、よって、樹脂フィルム20に対する孔加工を安定して行なうことができる。
例えば、熱可塑性樹脂の1種であるポリエチレンは、比較的伸び易い樹脂材料であり、この材料で樹脂フィルム20を構成した場合、当該樹脂フィルム20に過剰なテンションをかけるのが困難となることがある。このようにテンションをできる限り抑えたい場合に、抱き角θを調整して波打ち状態を防止するのは、好ましい構成と言うことができる。
<第4実施形態>
図12は、本発明の樹脂フィルム加工装置の第4実施形態を示す正面図である。図13および図14は、それぞれ、図12に示す樹脂フィルム加工装置で樹脂フィルムに孔が形成される状態を示す断面図である。
以下、これらの図を参照して本発明の樹脂フィルム加工装置の第4実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、孔形成手段の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図12に示すように、本実施形態では、孔形成手段3は、レーザ光照射部31を上下方向に移動可能に支持する移動支持機構(レーザ光照射部支持機構)32を有している。移動支持機構32は、レーザ光照射部31に連結された連結部材321と、連結部材321を案内するガイドレール322と、連結部材321をガイドレール322に沿って移動駆動させる駆動源323とで構成されている。
ガイドレール322は、加工装置1全体を支持する前記フレームに鉛直方向に沿って配置、固定されている。
駆動源323としては、例えば、2つのプーリと、これらプーリ間に掛け回された無端ベルトと、2つのプーリのうちの一方のプーリに連結されたモータとを有する構成とすることができる。
このような構成の移動支持機構32の作動により、レーザ光照射部31は、溝付きローラ21の第1の溝212に対して接近(図13参照)、離間(図14参照)することができる。例えば、図13に示す状態では、レーザ光照射部31が溝付きローラ21に最も接近しており、これにより、レーザ光Lの樹脂フィルム20に対する照射面積が最大になり、よって、最大の孔201を形成することができる。また、図14に示す状態では、レーザ光照射部31が溝付きローラ21に最も離間しており、これにより、レーザ光Lの樹脂フィルム20に対する照射面積が最小になり、よって、最小の孔201を形成することができる。
このように加工装置1では、レーザ光照射部31の溝付きローラ21に対する離間距離に応じて、孔201の大きさを変更することができる。
<第5実施形態>
図15は、本発明の樹脂フィルム加工装置(第5実施形態)で樹脂フィルムに孔が形成される状態を示す断面図である。図16は、図15に示す樹脂フィルム加工装置が備える制御手段の制御動作を示すフローチャートである。
以下、これらの図を参照して本発明の樹脂フィルム加工装置および樹脂フィルムの加工方法の第5実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、照射条件変更手段の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図15に示すように、本実施形態では、レーザ光Lの照射条件の変更は、樹脂フィルム20に対するレーザ光Lの照射領域を変更することによって行なわれる。そのための照射条件変更手段13としては、シリンドリカルレンズ131と、移動支持機構(レンズ支持機構)132とを有する構成となっている。移動支持機構132は、例えばエアシリンダで構成されており、シリンドリカルレンズ131を移動可能に支持する。これにより、図15(a)に示す第1の状態と、図15(b)に示す第2の状態とを取り得る。第1の状態では、レーザ光Lが樹脂フィルム20に到達するまでの光路の途中にシリンドリカルレンズ131が配されている。このとき、シリンドリカルレンズ131は、凸面133がレーザ光照射部31側に臨んでおり、平面134が樹脂フィルム20側に臨んでいる。また、第2の状態では、光路からシリンドリカルレンズ131が退避している。
本実施形態での制御プログラムを図16のフローチャートに基づいて説明する。
樹脂フィルム20を巻き取るためのモータ11に内蔵されたエンコーダからの情報に基づいて、搬送速度vを検出し(ステップS201)、その搬送速度vが閾値vth以下であるか否かを判断する(ステップS202)。ステップS202において搬送速度vが閾値vth以下であると判断されたら、照射条件変更手段13を作動させて第1の状態(図15(a)参照)とする(ステップS203)。
次いで、孔形成手段3のレーザ光照射部31を作動させて、レーザ光Lの照射を開始する(ステップS204)。また、この開始とともに、制御手段10に内蔵されているタイマ(図示せず)を作動させる(ステップS205)。
ステップS205を実行した後、タイムアップとなった場合には(ステップS206)、レーザ光照射部31の作動を停止することにより、レーザ光Lの照射を停止する(ステップS207)。
次に、搬送速度vが閾値vthを超えたか否かを判断する(ステップS208)。ステップS208において搬送速度vが閾値vthを超えたと判断したら、照射条件変更手段13を作動させて第2の状態(図15(b)参照)とする(ステップS209)。なお、ステップS208において搬送速度vが閾値vthを超えていないと判断した場合には、ステップS204に戻り、以後、それよりも下位のステップを順次実行する。
ステップS209を実行した後、孔形成手段3のレーザ光照射部31を作動させて、レーザ光Lの照射を開始する(ステップS210)。また、この開始とともに、制御手段10に内蔵されているタイマ(図示せず)を作動させる(ステップS211)。
ステップS211を実行した後、タイムアップとなった場合には(ステップS212)、レーザ光照射部31の作動を停止することにより、レーザ光Lの照射を停止する(ステップS213)。
次に、搬送速度vが閾値vth以下であるか否かを判断する(ステップS214)。ステップS214において搬送速度vが閾値vth以下であると判断されたら、ステップS203に戻り、以後、それよりも下位のステップを順次実行する。また、ステップS214において搬送速度vが閾値vth以下ではないと判断されたら、ステップS210に戻り、以後、それよりも下位のステップを順次実行する。
また、ステップS202において搬送速度vが閾値vth以下ではないと判断されたら、ステップS209を実行し、以後、それよりも下位のステップを順次実行する。
以上のような「搬送速度vが小であれば、照射領域を大とし、搬送速度vが大であれば、照射領域を小とする」制御により、搬送速度vの大小によらず孔201の形状、大きさが確実に一定となり、よって、樹脂フィルムへの孔201の形成を安定して行なうことができる。
<第6実施形態>
図17は、本発明の樹脂フィルム加工装置(第6実施形態)で樹脂フィルムに孔が形成される状態を示す断面図である。図18は、図17に示す樹脂フィルム加工装置が備える溝付きローラの斜視図である。図19は、図17に示す樹脂フィルム加工装置の主要部のブロック図である。
以下、これらの図を参照して本発明の樹脂フィルム加工装置および樹脂フィルムの加工方法の第6実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、溝付きローラの構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
図18、図19に示すように、本実施形態では、加工装置1は、搬送手段2が有する溝付きローラ21の第1の溝212内を吸引する溝内吸引手段7をさらに備えている。
図17に示すように、溝付きローラ21は、中空部210を有する円筒体で構成されている。
また、各第1の溝212の底部2121には、それぞれ、中空部210と連通する3つの連通孔2122が開口して形成されている。これにより、各第1の溝212は、それぞれ、このような連通孔2122を介して中空部210と連通する。なお、3つの連通孔2122は、第1の溝212の形成方向、すなわち、溝付きローラ21の周方向に沿って等間隔に配置されている。
また、連通孔2122の形成数は、図17に示す構成では3つであるが、これに限定されず、例えば、1つ、2つまたは4つ以上であってもよい。また、各第1の溝212では、それぞれ、連通孔2122の形成数は同じであるが、これに限定されず、異なっていてもよい。
また、各第1の溝212は、それぞれ、中空部210を介して、当該第1の溝212の内側を吸引する溝内吸引手段7に一括して接続されている。
図18に示すように、溝内吸引手段7は、配管71と、吸引用ポンプ72と、フィルタ73と、バルブ74とを有している。
配管71は、図18中の左端部が溝付きローラ21の右端部に気密的に接続されて、中空部210と連通している。配管71は、ステンレス鋼等のような硬質材料で構成されているのが好ましい。
配管71の図18中の右端部には、吸引用ポンプ72が気密的に接続されている。この吸引用ポンプ72が作動することにより、各第1の溝212内が一括して吸引される。吸引用ポンプ72としては、特に限定されず、例えば、渦巻きポンプ等を用いることができる。
配管71の長手方向の途中には、フィルタ73が配置されている。フィルタ73は、微小片の他、塵や埃を捕捉するエアフィルタである。これにより、吸引用ポンプ72が目詰まりを起こすのを防止することができる。
配管71の長手方向の途中のフィルタ73よりも上流側には、バルブ74が配置されている。このバルブ74の作動により、各第1の溝212での吸引状態と吸引停止状態とを切り換えることができる。
また、加工装置1は、本実施形態では、溝内吸引手段7を内蔵した構成となっている、すなわち、溝内吸引手段7を構成要件としたものとなっているが、これに限定されない。溝内吸引手段7を構成要件としない場合には、例えば、加工装置1が設置された工場内に配備された吸引装置を溝内吸引手段7として代用することもできる。
そして、図17に示すように、樹脂フィルム20の搬送中に溝内吸引手段7が作動することにより、各第1の溝212内を一括して吸引することができる。この吸引により、樹脂フィルム20は、接触部203が吸い寄せされて溝付きローラ21の外周部211に密着する。これにより、樹脂フィルム20の搬送中に樹脂フィルム20と溝付きローラ21との間に空気が巻き込まれるのが確実に防止され、よって、波打ち状態が解消される。この状態で樹脂フィルム20に対する孔201の形成を行なえば、当該孔201を安定して確実に形成することができる。
また、本実施形態では、抱き角調整機構4による抱き角θの調整と、第1の溝212内での吸引との相乗効果により、樹脂フィルム20の搬送中、樹脂フィルム20と溝付きローラ21との密着性が向上して、これらの間に空気が巻き込まれるのがより確実に防止される。
<第7実施形態>
図20は、本発明の樹脂フィルム加工装置(第7実施形態)が備える溝付きローラの平面図である。図21は、図20中の一点鎖線で囲まれた領域[A]の拡大図である。
以下、これらの図を参照して本発明の樹脂フィルム加工装置の第7実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、溝の形成状態が異なること以外は前記第6実施形態と同様である。
図20に示すように、本実施形態では、溝付きローラ21は、第1の溝212の他に、第2の溝215と、第3の溝216とを有している。
なお、4本の第1の溝212のうち、溝付きローラ21の外周部211の長手方向の中央部211aから左側(一端側)にある2本の第1の溝212と、中央部211aから右側(他端側)にある2本の第1の溝212とは、中央部211aに関して対称的に配置されている。以下では、4本の第1の溝212を左側から順に「第1の溝212a」、「第1の溝212b」、「第1の溝212c」、「第1の溝212d」という。
溝付きローラ21の外周部211の中央部211aから左側の部分には、中心軸214方向に対して傾斜し、中央部211aと反対側の端部が回転方向前方に位置し、中央部211a側の端部が溝付きローラ21の回転方向後方に位置する多数本の第2の溝215が形成されている。また、中央部211aから右側の部分には、中心軸214方向に対して傾斜し、中央部211aと反対側の端部が回転方向前方に位置し、中央部211a側の端部が溝付きローラ21の回転方向後方に位置する多数本の第3の溝216が形成されている。各第2の溝215と各第3の溝216とは、中央部211aに関して互いに対称的に傾斜して形成されている。すなわち、各第2の溝215と各第3の溝216とは、互いの間隔pが、溝付きローラ21の回転方向に向かって大きくなるように傾斜して形成されている。
なお、第2の溝215の長さ、第3の溝216の長さは、それぞれ、溝付きローラ21の外周部211を半周した長さよりも短い。
図20に示すように、本実施形態では、これらの第2の溝215は、複数本の第2の溝215同士が集まった第2の溝群217として4箇所にまとめられている。そして、各第2の溝群217では、それに属する第2の溝215が外周部211の周方向に沿って等間隔に配置されている。
また、4つの第2の溝群217は、中心軸214方向に沿って等間隔に配置されており、第1の溝212aの左側に1つの第2の溝群217が配置され、第1の溝212aと第1の溝212bとの間に2つの第2の溝群217が配置され、第1の溝212bと中央部211aとの間に、1つの第2の溝群217が配置されている。
第2の溝215と同様に、第3の溝216も、複数本の第3の溝216同士が集まった第3の溝群218として4箇所にまとめられている。そして、各第3の溝群218では、それに属する第3の溝216が外周部211の周方向に沿って等間隔に配置されている。
また、4つの第3の溝群218は、中心軸214方向に沿って等間隔に配置されており、中央部211aと第1の溝212cとの間に、1つの第3の溝群218が配置され、第1の溝212cと第1の溝212dとの間に2つの第3の溝群218が配置され、第1の溝212dの右側に1つの第3の溝群218が配置されている。
以上のように、本実施形態では、3種類の溝が溝付きローラ21の中心軸214方向に沿って間隔をおいて配置されている。
図21に示すように、各第2の溝215の底部2151には、それぞれ、中空部210と連通する連通孔2152が開口して形成されている。これにより、各第2の溝215は、それぞれ、連通孔2152を介して中空部210と連通する。
なお、各第2の溝215での連通孔2152の形成数は、特に限定されず、1つまたは2つ以上であってもよい。連通孔2152の形成数が複数ある場合、これらの連通孔2152は、第2の溝215の形成方向に沿って等間隔に配置されているのが好ましい。また、各第2の溝215では、それぞれ、連通孔2152の形成数は同じであるが、これに限定されず、異なっていてもよい。
各第3の溝216の底部2161には、それぞれ、中空部210と連通する連通孔2162が開口して形成されている。これにより、各第3の溝216は、それぞれ、連通孔2162を介して中空部210と連通する。
なお、各第3の溝216での連通孔2162の形成数は、特に限定されず、1つまたは2つ以上であってもよい。連通孔2162の形成数が複数ある場合、これらの連通孔2162は、第3の溝216の形成方向に沿って等間隔に配置されているのが好ましい。また、各第3の溝216では、それぞれ、連通孔2162の形成数は同じであるが、これに限定されず、異なっていてもよい。
このように中空部210を介して溝内吸引手段7と連通する溝は、前記第6実施形態では第1の溝212であったが、本実施形態では第2の溝215および第3の溝216である。
そして、樹脂フィルム20の搬送中に溝内吸引手段7が作動することにより、各第2の溝215および各第3の溝216内を一括して吸引することができる。この吸引により、樹脂フィルム20が溝付きローラ21の外周部211に密着し、よって、これらの間に空気が巻き込まれるのが確実に防止される。これにより、波打ち状態が解消されて、孔201の形成を安定して行なうことができる。
また、第2の溝215には、搬送中の樹脂フィルム20が係合することとなる。これにより、第2の溝215は、樹脂フィルム20に対して、溝付きローラ21の中央部211aから左側への張力TSleftを付与する機能を確実に発揮することができる(図20参照)。一方、第3の溝216にも搬送中の樹脂フィルム20が係合することとなる。これにより、第3の溝216は、樹脂フィルム20に対して、溝付きローラ21の中央部211aから右側への張力TSrightを付与する機能を確実に発揮することができる(図20参照)。そして、前述したように、第2の溝215と第3の溝216とは、中央部211aに関して対称的に配置されている。これにより、張力TSleftと張力TSrightとが均等に作用し、よって、樹脂フィルム20の搬送方向と直交する方向、すなわち、中心軸214方向左側または右側へのズレを確実に防止することができる。この位置ズレ防止により、樹脂フィルム20に対して安定して孔201を形成することができ、また、その形成位置を正確に設定することができる。
また、張力TSleft、TSrightが作用しているため、溝付きローラ21上で樹脂フィルム20にしわが生じるのが防止されている。これにより、孔201を一定の大きさで安定して形成することができる。また、孔201の形成位置をより正確に設定することができる。
また、抱き角調整機構4で抱き角θを調整することにより、張力TSleft、TSrightも調整することができる。すなわち、抱き角θが大きくなればなるほど、樹脂フィルム20と溝付きローラ21との接触面積が増大して、樹脂フィルム20の第2の溝215への係合の程度も増大する。この場合、張力TSleft、TSrightが増大する。これに対し、抱き角θが小さくなればなるほど、樹脂フィルム20と溝付きローラ21との接触面積が減少して、樹脂フィルム20の第2の溝215への係合の程度も減少する。この場合、張力TSleft、TSrightが減少する。
図20に示すように、各第2の溝215は、それぞれ、中心軸214方向に対する傾斜角度β2が同じである。また、各第3の溝216も、それぞれ、中心軸214方向に対する傾斜角度β3が同じである。さらに、傾斜角度β2と傾斜角度β3も同じである。
なお、傾斜角度β2およびβ3は、それぞれ、15度以上、75度以下であるのが好ましく、30度以上、60度以下であるのがより好ましい。
このような傾斜角度により、例えば、溝付きローラ21の製造過程で第2の溝215、第3の溝216を形成する際、その形成を容易かつ迅速に行なうことができる。また、樹脂フィルム20が安定して搬送され、よって、樹脂フィルム20への孔201の形成の安定性をさらに高めることができるという利点もある。
また、本実施形態では、各第2の溝215と各第3の溝216とは、それぞれ、各第1の溝212と連通していない。これにより、例えば、孔201の形成によって生じた前記微小片が、第1の溝212から第2の溝215や第3の溝216を介して樹脂フィルム20に付着するのが防止される。
図21に示すように、第2の溝215の深さd2、第3の溝216の深さd3は、第1の溝212の深さd1よりも浅いのが好ましい。また、第2の溝215の幅w2、第3の溝216の幅w3は、第1の溝212の幅w1よりも大きいのが好ましい。
これは、樹脂フィルム20に対する第2の溝215や第3の溝216による係合には、幅w2、幅w3の大小が影響し、深さd2や深さd3の大小はあまり影響がないからである。なお、第1の溝212には、前記微小片の排出をするのに十分な程度の深さd1と幅w1が必要である。
深さd2、d3は、例えば、深さd1の0.5%以上、30%以下であるのが好ましく、1%以上、5%以下であるのがより好ましい。幅w2、w3は、例えば、幅w1の10%以上、80%以下であるのが好ましく、20%以上、80%以下であるのがより好ましい。
なお、加工装置1は、溝内吸引手段7を省略した構成とすることもできる。
<第8実施形態>
図22は、本発明の樹脂フィルム加工装置(第8実施形態)が備える溝付きローラの平面図である。
以下、この図を参照して本発明の樹脂フィルム加工装置の第8実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、溝の形成状態が異なること以外は前記第7実施形態と同様である。
図22に示すように、本実施形態では、各第2の溝群217では、それに属する第2の溝215の傾斜角度β2は、互いに同じであるが、中心軸214方向に隣り合う第2の溝群217同士では、一方の第2の溝群217に属する第2の溝215の傾斜角度β2と、他方の第2の溝群217に属する第2の溝215の傾斜角度β2とは、異なっている、すなわち、中央部211a側に位置する第2の溝215の傾斜角度β2は、左側に位置する第2の溝215の傾斜角度β2よりも大きい。
各第3の溝群218では、それに属する第3の溝216の傾斜角度β3は、互いに同じであるが、中心軸214方向に隣り合う第3の溝群218同士では、一方の第3の溝群218に属する第3の溝216の傾斜角度β3と、他方の第3の溝群218に属する第3の溝216の傾斜角度β3とは、異なっている、すなわち、中央部211a側に位置する第3の溝216の傾斜角度β3は、右側に位置する第3の溝216の傾斜角度β3よりも大きい。
このように本実施形態では、第2の溝215の傾斜角度β2と第3の溝216の傾斜角度β3とがそれぞれ中央部211aに近づくにつれて増加しており、その増加率は、双方同じである。
そして、例えば樹脂フィルム20がその中央部付近で滑り易いものである場合、中央部211a側に位置する第2の溝215や第3の溝216によって、樹脂フィルム20の中央部付近に対する係合が確実に行なわれる。これにより、樹脂フィルム20に対して張力TSleft、TSrightを確実に付与することができる。
<第9実施形態>
図23は、本発明の樹脂フィルム加工装置(第9実施形態)が備える溝付きローラの平面図である。
以下、この図を参照して本発明の樹脂フィルム加工装置の第9実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、溝の形成状態が異なること以外は前記第7実施形態と同様である。
図23に示すように、本実施形態では、中央部211a側に位置する第2の溝215の傾斜角度β2は、左側に位置する第2の溝215の傾斜角度β2よりも小さい。また、中央部211a側に位置する第3の溝216の傾斜角度β3は、右側に位置する第3の溝216の傾斜角度β3よりも小さい。
このように本実施形態では、第2の溝215の傾斜角度β2と第3の溝216の傾斜角度β3とがそれぞれ中央部211aから遠ざかるに従って減少しており、その減少率は、双方同じである。
そして、例えば樹脂フィルム20がその左側の縁部や右側の縁部付近で滑り易いものである場合、左側に位置する第2の溝215や右側に位置する第3の溝216によって、樹脂フィルム20の各縁部付近に対する係合が確実に行なわれる。これにより、樹脂フィルム20に対して張力TSleft、TSrightを確実に付与することができる。
<第10実施形態>
図24は、本発明の樹脂フィルム加工装置(第10実施形態)が備える溝付きローラの平面図である。
以下、この図を参照して本発明の樹脂フィルム加工装置の第10実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、溝の形成状態が異なること以外は前記第7実施形態と同様である。
図24に示すように、本実施形態では、第2の溝215は、溝付きローラ21の中央部211aから左側に向かって連続的に形成され、螺旋状をなしている。これにより、第2の溝215は、第1の溝212a、212bと連通する。
第3の溝216は、溝付きローラ21の中央部211aから右側に向かって連続的に形成され、螺旋状をなしている。これにより、第3の溝216は、第1の溝212c、212dと連通する。
そして、例えば、孔201の形成によって生じた前記微小片が、第1の溝212から第2の溝215や第3の溝216に入り込んだとしても、溝付きローラ21が回転中であるため、当該微小片は、その入り込んだ溝を通過することができ、よって、溝付きローラ21の左側または右側に向かって排出される。また、樹脂フィルム20と溝付きローラ21との密着性が向上するという利点もある。
<第11実施形態>
図25は、本発明の樹脂フィルム加工装置(第11実施形態)が備える溝付きローラの拡大平面図である。
以下、この図を参照して本発明の樹脂フィルム加工装置の第11実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、溝の形成状態が異なること以外は前記第6実施形態と同様である。
図25に示すように、本実施形態では、各第1の溝212は、それぞれ、その幅w1が当該第1の溝212の形成方向に沿って変化した、すなわち、中心軸214回りの回転方向に向かって漸減した幅変化部219を有している。幅変化部219は、第1の溝212の形成方向に沿って多数設けられている。
このような幅変化部219により、樹脂フィルム20の搬送方向と反対方向への滑りを防止することができ、よって、当該樹脂フィルム20を確実に搬送することができる。
<第12実施形態>
図26は、本発明の樹脂フィルム加工装置(第12実施形態)が備える溝付きローラの斜視図である。
以下、この図を参照して本発明の樹脂フィルム加工装置の第12実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、溝の形成状態が異なること以外は前記第6実施形態と同様である。
図26に示すように、本実施形態では、溝付きローラ21は、当該溝付きローラ21の長手方向に沿って直線状に形成され、各第1の溝212とそれぞれ直交する複数本の横溝(第4の溝)220を有している。これらの横溝220は、溝付きローラ21の外周部211の周方向に沿って等間隔に配置されている。
各横溝220の底部2201には、それぞれ、中空部210と連通する複数の連通孔2202が形成されている。これにより、各横溝220は、それぞれ、連通孔2202を介して中空部210と連通する。なお、各横溝220では、それぞれ、複数の連通孔2202が、当該横溝220の形成方向、すなわち、溝付きローラ21の長手方向に沿って等間隔に配置されている。
このように中空部210を介して溝内吸引手段7と連通する溝は、本実施形態では横溝220となっている。また、この横溝220を介して、第1の溝212も連通している。
そして、樹脂フィルム20の搬送中に溝内吸引手段7が作動することにより、横溝220および第1の溝212で樹脂フィルム20を十分に吸い寄せることができ、よって、樹脂フィルム20と溝付きローラ21との間に空気が巻き込まれるのを確実に防止することができる。これにより、波打ち状態を解消することができ、よって、孔201が安定して形成される。
<第13実施形態>
図27は、本発明の樹脂フィルム加工装置(第13実施形態)が備える溝付きローラの縦断面図である。
以下、この図を参照して本発明の樹脂フィルム加工装置の第13実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、搬送手段の構成が異なること以外は前記第6実施形態と同様である。
図27に示すように、本実施形態では、搬送手段2は、シャッタ機構12を有している。シャッタ機構12は、シャッタ部材121Lおよび121Rと、シャッタ部材121Lおよび121Rをそれぞれ一括して移動操作する操作部(図示せず)とを有している。
シャッタ部材121Lは、溝付きローラ21の中空部210の図27中の左側に内蔵されており、シャッタ部材121Rは、溝付きローラ21の中空部210の図27中の右側に内蔵されている。シャッタ部材121Lおよび121Rは、それぞれ、円筒状をなす部材であり、例えばステンレス鋼等のような金属材料で構成されているのが好ましい。
そして、シャッタ部材121Lおよび121Rは、それぞれ、中空部210内での位置に応じて、連通孔2122を気密的に封止したり、その封止を解放したりすることができる。これにより、各第1の溝212の中空部210に対する連通状態と、連通状態を遮断する遮断状態とに切り換えることができる。例えば、図27(a)に示す状態では、幅が最小の樹脂フィルム20を吸引しており、図27(c)に示す状態では、幅が最大の樹脂フィルム20を吸引しており、図27(b)に示す状態では、幅が中間の樹脂フィルム20を吸引している。このように樹脂フィルム20の幅に応じて、吸引を行なうことができ、無駄なところを吸引するのを防止することができる。
前記操作部は、シャッタ部材121Lおよび121Rを溝付きローラ21の長手方向に沿って摺動させるものである。この操作部の構成としては、特に限定されず、例えば、モータを有する構成とすることができる。
<第14実施形態>
図28は、本発明の樹脂フィルム加工装置(第14実施形態)で樹脂フィルムに孔が形成される状態を示す断面図である。図29は、図28に示す樹脂フィルム加工装置の主要部のブロック図である。図30は、図28に示す樹脂フィルム加工装置が備えるレーザ光照射部と噴出用ポンプと吸引用ポンプの各作動タイミングを示すタイミングチャートである。
以下、これらの図を参照して本発明の樹脂フィルム加工装置の第14実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、樹脂フィルム加工装置がガス噴出手段とガス吸引手段とを備えること以外は前記第1実施形態と同様である。
図28、図29に示すように、本実施形態では、加工装置1は、ガス(空気)Gを噴出するガス噴出手段5と、ガス(空気)G’を吸引するガス吸引手段6とをさらに備えている。
図28に示すように、ガス噴出手段5は、ガスGを噴出するよう構成されており、配管51と、噴出用ポンプ52とを有している。
配管51は、その一端が開口し、ガスGを噴出する噴出口511を有している。なお、配管51は、ステンレス鋼等のような硬質材料で構成されているのが好ましい。
配管51の他端側には、噴出用ポンプ52が連結されている。この噴出用ポンプ52が作動することにより、ガスGは、配管51内を流下して、噴出口511を介して排出される。なお、噴出用ポンプ52としては、特に限定されず、例えば、渦巻きポンプ等を用いることができる。
配管51の噴出口511は、レーザ光照射部31の照射口311に対し、搬送方向上流側に配置されている。そして、噴出口511は、レーザ光照射部31の照射口311と、溝付きローラ21に掛け回された樹脂フィルム20の接触部203との間に、搬送方向下流側を向いて開口している。これにより、噴出口511からのガスGは、溝付きローラ21上での樹脂フィルム20(接触部203)の面方向、すなわち、本実施形態では搬送方向に沿って噴出されることとなる。
なお、噴出口511の開口径(大きさ)は、照射口311と溝付きローラ21との間の間隙距離と同じかまたはそれよりも小さいのが好ましい。
また、噴出口511は、配管51の中心軸が照射口311と溝付きローラ21との間の中央部を通るように配されるのが好ましい。
前述したように、孔201の形成時に接触部203が溶融したことで多数の微小片が生じる。そして、これらの微小片には、揮散しつつ第1の溝212から排出されるものがあるが、その他に、レーザ光照射部31の照射口311に付着するおそれがあるものもある。
そこで、加工装置1では、このような噴出口511が設けられていることにより、前記照射口311に付着しそうな微小片を搬送方向下流側に向かって確実に吹き飛ばすことができる。これにより、微小片が照射口311に付着して、当該照射口311が微小片で覆われたり、塞がれたりするのを確実に防止することができる。その結果、樹脂フィルム20に形成される孔201の大きさにばらつきが生じてしまったり、孔201の形成が不可能となったりするのを確実に防止して、孔201の形成を安定して行なうことができる。また、孔201の形成直前で樹脂フィルム20の接触部203上の塵や埃も吹き飛ばすことができる。これも孔201の安定的な形成に寄与する。
また、ガスGの噴き出し方向と搬送方向とは、同じ方向となっている、すなわち、「パラレルフロー」となっている。これにより、搬送される樹脂フィルム20が、微小片の吹き飛ばしを補助することとなり、よって、微小片の照射口311への付着をより確実に防止することができる。また、樹脂フィルム20の接触部203の溝付きローラ21への密着性をより高めることができる。また、ガスGの流速は、樹脂フィルムの搬送速度vより大きいことが望ましい。
図30に示すように、レーザ光照射部31の作動によるレーザ光Lの照射は、間欠的に行なわれている。そして、ガス噴出手段5では、噴出口511は、この照射に連動して、すなわち、本実施形態では同期してガスGを噴出する。この制御は、制御手段10で行なわれる。このような制御により、例えば、噴出用ポンプ52を連続的に作動させる場合に比べて、省エネルギに寄与する。
図28に示すように、ガス噴出手段5に対し搬送方向下流側、すなわち、微小片が吹き飛ばされる方向には、ガス吸引手段6が配置されている。ガス吸引手段6は、ガスG’を吸引するよう構成されており、配管61と、吸引用ポンプ62と、フィルタ63とを有している。なお、ガスG’には、ガス噴出手段5から噴出されたガスGの他に、当該ガスGで吹き飛ばされた微小片等も含まれている。
配管61は、その一端が開口し、ガスG’を吸引する吸引口611を有している。なお、配管61は、ステンレス鋼等のような硬質材料で構成されているのが好ましい。
配管61の他端側には、噴出用ポンプ52と独立して作動する吸引用ポンプ62が連結されている。この吸引用ポンプ62が作動することにより、ガスG’は、吸引口611を介して配管61内を流下する。なお、吸引用ポンプ62としては、特に限定されず、例えば、渦巻きポンプ等を用いることができる。
配管61の長手方向の途中には、フィルタ63が配置されている。フィルタ63は、微小片の他、塵や埃を捕捉するエアフィルタである。これにより、吸引用ポンプ62が目詰まりを起こすのを防止することができる。
図28に示すように、配管61の吸引口611は、レーザ光照射部31の照射口311に対し搬送方向下流側に、レーザ光Lの光路を介して噴出口511と対向して配置されている。また、吸引口611は、搬送方向上流側を向いて開口しており、配管61の中心軸が配管51の中心軸の延長線と一致するように配されている。
なお、吸引口611の開口径は、噴出口511の開口径よりも大きいのが好ましい。
このような吸引口611により、噴出口511からのガスGで吹き飛ばされた微小片を確実に吸い込むことができる。これにより、当該吹き飛ばされた微小片が例えば搬送方向下流側で孔付き樹脂フィルム20A等に付着するのを防止することができる。
図30に示すように、ガス吸引手段6では、吸引口611は、樹脂フィルム20の搬送中、レーザ光Lの照射、照射の停止に関わらず、ガスG’を吸引し続ける。この制御は、制御手段10で行なわれる。このような制御は、例えば、制御プログラムの簡素化に寄与する。また、連続した空気の流れにより、樹脂フィルム20の接触部203の溝付きローラ21への密着性をより高めることができると言う利点がある。
<第15実施形態>
図31は、本発明の樹脂フィルム加工装置(第15実施形態)で樹脂フィルムに孔が形成される状態を示す断面図である。
以下、この図を参照して本発明の樹脂フィルム加工装置の第15実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、ガス噴出手段とガス吸引手段との位置関係が異なること以外は前記第14実施形態と同様である。
図31に示すように、本実施形態では、配管51の噴出口511は、レーザ光照射部31の照射口311に対し、搬送方向下流側に配置されている。そして、噴出口511は、搬送方向上流側を向いて開口している。これにより、噴出口511からのガスGは、溝付きローラ21上での樹脂フィルム20の面方向、すなわち、本実施形態では搬送方向と反対方向に沿って噴出されることとなる。従って、ガスGの噴き出し方向と搬送方向とは、互いに反対方向となっている、すなわち、「カウンタフロー」となっている。
また、配管61の吸引口611は、レーザ光照射部31の照射口311に対し搬送方向上流側に、レーザ光Lの光路を介して噴出口511と対向して配置されている。そして、吸引口611は、搬送方向下流側を向いて開口している。
以上のような構成により、例えば、孔201の形成直前で樹脂フィルム20の接触部203上の塵や埃を巻き上げることができ、よって、これらを接触部203上から除去して吹き飛ばすことができる。これにより、孔201の安定的な形成を行なうことができる。また、樹脂フィルム20の接触部203の溝付きローラ21への密着性をより高めることができると言う利点がある。
<第16実施形態>
図32は、本発明の樹脂フィルム加工装置(第16実施形態)で樹脂フィルムに孔が形成される状態を示す平面図である。
以下、この図を参照して本発明の樹脂フィルム加工装置の第16実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、ガス噴出手段とガス吸引手段との位置関係が異なること以外は前記第14実施形態と同様である。
図32に示すように、本実施形態では、配管51の噴出口511は、レーザ光照射部31の照射口311に対し、図中の左側に配置されている。そして、噴出口511は、搬送方向と直交する方向(図32中の右側)を向いて開口している。これにより、噴出口511からのガスGは、溝付きローラ21上での樹脂フィルム20の面方向、すなわち、本実施形態では搬送方向と直交する方向(図32中の右方)に沿って噴出されることとなる。
また、配管61の吸引口611は、レーザ光照射部31の照射口311に対し図中の右側に、照射口311を介して噴出口511と対向して配置されている。そして、吸引口611は、図32中の左側を向いて開口している。
以上のような構成により、例えば、孔201の形成直前で樹脂フィルム20の接触部203上の塵や埃を巻き上げることができ、よって、これらを接触部203上から除去して吹き飛ばすことができる。これにより、孔201の安定的な形成を行なうことができる。また、樹脂フィルム20の接触部203の溝付きローラ21への密着性をより高めることができる。
なお、本実施形態は、ガスGの流れが搬送方向と平行でなければよく、正確な直交を示すものではない。
<第17実施形態>
図33は、本発明の樹脂フィルム加工装置(第17実施形態)が備えるレーザ光照射部と噴出用ポンプと吸引用ポンプの各作動タイミングを示すタイミングチャートである。
以下、この図を参照して本発明の樹脂フィルム加工装置の第17実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、ガス噴出手段の作動タイミングが異なること以外は前記第14実施形態と同様である。
図33に示すように、本実施形態では、ガス噴出手段5は、噴出口511が、レーザ光Lの照射に連動して、すなわち、本実施形態ではレーザ光Lの照射開始直後に時間u[sec]遅れてガスGを噴出する。このような時間差をもって同期した制御は、制御手段10で行なわれる。
孔201は、レーザ光Lの照射開始後に形成され、その形成タイミングは、レーザ光照射開始直後の時間u[sec]経過してからとなっている。このため、ガスGをレーザ光照射開始直後に時間u[sec]遅れて噴出すれば、孔201の形成と同時に微小片を吹き飛ばすことができる。これにより、ガスGの無駄な噴出を抑制することができる。
また、レーザ光Lの照射開始直前に時間u[sec]早めてガスGを噴出してもよい。
そして、何れの場合でも時間uとしては、搬送速度vや孔201の間隔の大きさ等にもよるが、例えば、0.05[sec]以上、1.0[sec]以下であるのが好ましく、0.1[sec]以上、0.5[sec]以下であるのがより好ましい。
以上、本発明の樹脂フィルム加工装置および樹脂フィルムの加工方法を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、樹脂フィルム加工装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、本発明の樹脂フィルム加工装置および樹脂フィルムの加工方法は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。例えば、ガス噴出手段の作動によるガスによって樹脂フィルムが溝付きローラに押し付けられる。これにより、樹脂フィルムが溝付きローラの第2の溝や第3の溝に係合して、樹脂フィルムに張力がかかるのを補助することができる。
また、溝付きローラでの第1の溝の形成数は、前記各実施形態では樹脂フィルムの幅方向に沿った孔の個数と同じとなっているが、これに限定されず、樹脂フィルムの幅方向に沿った孔の個数よりも多ければよい。この場合、各孔の樹脂フィルムの幅方向の加工位置の自由度を向上させることができる。
また、溝付きローラでの第1の溝、第2の溝、第3の溝の形成数は、それぞれ、特に限定されず、複数本であるが、1本以上であればよい。
また、溝付きローラの中心軸方向に隣り合う第1の溝同士の間には、第2の溝および第3の溝がそれぞれ複数ずつ配置されているが、配置本数はこれに限定されず、1本ずつ配置されていればよい。
また、樹脂フィルムに対するレーザの照射方向は、前記各実施形態では溝付きローラでの溝に向けているが、これに限定されず、樹脂フィルムが波打ち状態となっていない場合には、溝付きローラに接する手前に向けていてもよい。
また、樹脂フィルムの搬送方向上流側にあるテンショナと、樹脂フィルムの搬送方向下流側にあるテンショナとは、前記各実施形態では溝付きローラに関して対称的に配置されているが、これに限定されず、非対称であってもよい。
また、搬送手段では、テンショナ同士の間にアイドラが配置されていてもよい。
また、抱き角調整機構の抱き角調整用ローラは、前記各実施形態では溝付きローラに対して樹脂フィルムの搬送方向上流側および下流側の双方に配置されているが、これに限定されず、例えば、搬送方向上流側および下流側の一方に配置されていてもよい。
また、抱き角調整機構は、前記各実施形態では2つの抱き角調整用ローラを一括して同じ方向に移動させるよう構成されているが、これに限定されず、各抱き角調整用ローラをそれぞれ独立して移動させるよう構成されていてもよい。
また、樹脂フィルム加工装置は、抱き角調整機構を構成するローラ(テンショナ)が上下可動する際に、ローラ間の平行を維持する機構を備えていてもよい。この場合、各ローラの平行度のズレを防止することができる。これにより、樹脂フィルムの弛みや波打ちの誘発を低減することができる。
また、本発明の樹脂フィルム加工装置では、抱き角調整機構を省略してもよい。
また、ガス噴出手段は、噴出口がレーザ光照射部の照射口に対して接近・離間可能に構成されていてもよい。
また、ガス噴出手段は、レーザ光の照射と同期してガスを噴出しているが、これに限定されず、レーザ光の照射、照射の停止に関わらず、ガスを噴出し続けてもよい。
また、ガス吸引手段は、吸引口がレーザ光照射部の照射口に対して接近・離間可能に構成されていてもよい。
また、ガス吸引手段は、レーザ光の照射、照射の停止に関わらず、ガスを吸引し続けているが、これに限定されず、レーザ光の照射と同期してガスを吸引してもよい。
また、孔形成手段は、レーザ光照射部から照射されるレーザ光の樹脂フィルムに対する照射角度を変更可能に構成されていてもよい。