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JP2016078801A - 自動車用耐衝突部品 - Google Patents

自動車用耐衝突部品 Download PDF

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JP2016078801A JP2014215429A JP2014215429A JP2016078801A JP 2016078801 A JP2016078801 A JP 2016078801A JP 2014215429 A JP2014215429 A JP 2014215429A JP 2014215429 A JP2014215429 A JP 2014215429A JP 2016078801 A JP2016078801 A JP 2016078801A
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Abstract

【課題】長さ方向端部の外形寸法を小さくしたバンパーリインフォース等の自動車用耐衝突部品において、端部の強度低下を防止して、耐衝突性能が低下するのを防止する。【解決手段】自動車用耐衝突部品は、衝突側フランジ6a及び車体側フランジ7aと、両フランジに接続するウエブ4,5,4a,5aを有する金属製中空形材からなる。金属製中空形材の長さ方向の端部2は、スエージング加工により断面形状が変形し、両フランジ6a,7a間の寸法が小さくなっている。端部2におけるウエブの肉厚をtWとし、断面形状を変形させていない中央部3におけるウエブの肉厚をTWとしたとき、tW>TWであり、中央部3におけるウエブとフランジのなすコーナー部の内側コーナー半径をRCIとしたとき、RCI≧(tW−TW)である。【選択図】図4

Description

本発明は、例えばバンパーリインフォース、ドアインパクトビーム、ルーフリインフォース、トラック用FUP(フロントアンダーランプロテクタ)、同RUP(リアアンダーランプロテクタ)等の自動車用耐衝突部品に関する。
近年、自動車の衝突基準が強化されてきており、オーバーラップ量が小さい前面又は後面衝突(オフセットバリア衝突又はスモールラップ衝突とも言う)、斜め衝突(端部振り子衝突、またはオブリーク衝突とも言う)、側面衝突(サイドインパクトとも言う)への部材としてのバンパーリインフォース、ドアインパクトビーム、ルーフリインフォース、FUP、RUP等の耐衝突部品が設置されるようになっている。
これらの耐衝突部品は、長さ方向端部の外形寸法を小さくすることが求められることがある。より具体的にいうと、バンパーリインフォースやFUP、RUP等は、例えば自動車の旋回最小半径を小さくする等の操作性向上の目的、及びデザイン上の要求から、長さ方向端部の車体前後方向寸法(L寸法)を小さくすることが求められる。ドアインパクトビームは、例えばドアのインナーパネルへの取り付けのため又はデザイン上の要求から、長さ方向端部の車体幅方向寸法(W寸法)を小さくすることが求められる。ルーフリインフォースは、例えばルーフサイドレールへの取り付けのため又はデザイン上の要求から、、長さ方向端部の車体高さ方向寸法(H寸法)を小さくすることが求められる。
これら耐衝突部品は、自動車の重心から遠い位置に設置されるため、慣性モーメントへの影響が大きい。従って、耐衝突部品は、燃費向上だけでなく、運動性能を向上する目的でも軽量化が要求されており、アルミニウム押出形材などが使用されている。
特許文献1には、アルミニウム押出形材の端部を潰し加工して、断面のL寸法を小さくしたバンパーリインフォースが記載されている。特許文献2には、アルミニウム押出形材の端部を斜めに切り落として断面のL寸法を小さくし、そこに前面側から溝形の補強部材を宛がったバンパーリインフォースが記載されている。特許文献3には、アルミニウム押出形材の端部を潰し加工して、断面のW寸法を小さくしたドアビームが記載されている。特許文献4には、アルミニウム押出形材の端部を斜めに切り落として断面のW寸法を小さくしたドアビームが記載されている。特許文献5には、アルミニウム押出形材の端部を潰し加工し又は斜めに切り落として、断面のH寸法を小さくしたルーフリインフォースが記載されている。
特開平07−025296号公報 特開平2006−151095号公報 特開平09−58386号公報 特開平10−94844号公報(図8) 特開2010−36746号公報(段落0019)
バンパーリインフォースなどの耐衝突部品には、長さ方向端部の外形寸法が小さく、かつ、変形強度が高い構造が求められている。しかし、例えばアルミニウム押出形材からなるバンパーリインフォースにおいて、長さ方向端部を潰し加工して断面のL寸法を小さくすると、ウェブを屈曲させているため(特許文献1参照)、衝突時の変形荷重が小さくなる。このため、例えばオーバーラップ量が小さい前面衝突において、衝突物が車体に侵入し車体損傷が大きくなるという問題がある。また、衝突時の変形荷重を大きくするため、別部材を取り付けて端部の強度を増大させることもできるが(特許文献2参照)、部品数の増加や溶接工数増などにより、コストアップが大きくなるという問題がある。
ドアビームやルーフリインフォースについても、端部を潰し加工し又は斜め切断して断面のW寸法又はH寸法を小さくした場合、端部の強度が低下する。また、強度の低下を補うため、例えばブラケットなどの補強部品を大型化すると、コストや重量が増大するという問題がある。
本発明は、長さ方向端部の外形寸法を小さくしたバンパーリインフォース等の耐衝突部品において、端部の強度低下を防止して、別部品を用いることなく耐衝突性能が低下するのを防止することを目的とする。
本発明は、衝突側フランジ及び車体側フランジと、前記両フランジに接続するウエブを有する金属製中空形材からなり、前記中空形材の長さ方向の端部の断面形状を変形させて前記両フランジ間の寸法を小さくした自動車用耐衝突部品を改良したもので、前記端部がスエージング加工で変形され、前記端部におけるウエブの肉厚をtとし、断面形状を変形させていない部位におけるウエブの肉厚をTとしたとき、t>Tであり、断面形状を変形させていない部位における前記ウエブと前記フランジのなすコーナー部の内側コーナー半径をRCIとしたとき、RCI≧(t−T)であることを特徴とする。
なお、形材とは、長さ方向に実質的に同じ断面形状を有する長手材を意味する。
上記自動車用耐衝突部品は、例えば次のような具体的な実施の形態を有する。
(1)上記中空形材は、互いに平行な一対のウエブを有し、前記一対のウエブが前記両フランジに接続している。
(2)上記(1)の場合において、上記中空形材が断面内部に前記一対のウエブに平行な中間ウェブを1つ以上有し、前記端部における前記中間ウエブの肉厚をtとし、断面形状を変形させていない部位における前記中間ウエブの肉厚をTとし、断面形状を変形させていない部位における前記中間ウェブと前記両フランジとの接続部のフィレット半径をRとしたとき、R≧(t−T)である。
(3)上記中空形材がアルミニウム合金押出形材である。
(4)上記中空形材が鋼板をロールフォームにより成形したものである。
本発明に係る耐衝突部品は、金属製中空形材の長さ方向端部にスエージング加工を施し、同端部における両フランジ間の寸法を小さく(ウエブの長さを短く)するとともに、同端部におけるウエブの肉厚tを当初の(スエージング加工前の)肉厚Tより大きく(t>T)している。これにより、この耐衝突部品を用いた自動車のデザイン性や操作性を向上させると同時に、別部品を用いることなく、耐衝突部品の長さ方向端部の強度低下を防止し、耐衝突性能の低下を防止することができる。
本発明に係る耐衝突部品は、前記ウエブと前記フランジのコーナー部の内側コーナー半径(当初のコーナー半径)RCIを、前記端部におけるウエブのスエージング加工前後の肉厚の差(t−T)以上の大きさ(RCI≧(t−T))とした。また、前記中間ウェブと前記両フランジとの接続部のフィレット半径(当初のフィレット半径)Rを、前記端部における中間ウエブのスエージング加工前後の肉厚の差以上の大きさ(R≧(t−T))とした。これにより、スエージング加工時に前記コーナー部又は接続部において材料が滑らかに流動し、スエージング加工後のウエブ及び中間ウエブがその全厚みにおいて両フランジと接続された状態となる。その結果、スエージング加工後の前記端部において衝突時の割れ等が防止され、耐衝突性能が向上する。
アルミニウム合金押出材をスエージング加工したバンパーリインフォース(曲げ加工前)の平面図である。 図1のA−A断面図である。 図2のB−B断面図である。 金属製中空形材の当初の内側コーナー半径RCIを、ウエブのスエージング加工前後の肉厚の差(t−T)以上の大きさ(RCI≧(t−T))とすることの理由を説明する図である。 本発明に係るバンパーリインフォースを含むバンパー構造体の平面図である。 本発明に係る金属製中空形材の断面形状の他の例を示す図である。 本発明に係る金属製中空形材のスエージング前後の断面図の他の例である。 本発明に係る金属製中空形材のスエージング前後の断面図の他の例である。 CAE(Computer Aided Engineering)解析に用いた試験材A(本発明例)の端面図である。 CAE解析に用いた試験材B(従来例)の端面図である。 オーバーラップ量が小さい前面衝突を模したCAE解析モデルを示す図である。 CAE解析の結果得られた荷重−変位曲線である。
次に、図1〜8を参照して、本発明に係る自動車用耐衝突部品について、具体的に説明する。
図1〜3に、本発明に係る自動車用耐衝突部品の具体例として、アルミニウム合金押出形材からなるバンパーリインフォース1(曲げ加工前)の右半分を示す。バンパーリインフォース1は、端部2がスエージング加工されて断面形状が変形され(衝突面側が傾斜)、中央部3は当初のアルミニウム合金押出形材の断面形状を保っている。
バンパーリインフォース1の中央部3(又は当初のアルミニウム合金押出形材)は、図2の断面図に示すように、押出方向に垂直な断面の輪郭が四角形で、想定される衝突荷重方向(水平面内)に平行なウエブ4,5と、ウエブ4,5に接続する衝突側フランジ6及び車体側フランジ7と、中間ウエブ8からなる。衝突側フランジ6及び車体側フランジ7は互いに平行で、かつウエブ4,5に垂直である。中間ウエブ8は前記断面内に存在し、ウエブ4,5に平行で、前記フランジ6,7に垂直に接続する。
図2に示す断面形状において、断面の車体前後方向の寸法をL、車体高さ方向の寸法をH、ウエブ4,5の肉厚をT、中間ウエブ8の肉厚をT、衝突側フランジ6の肉厚をTFF、車体側フランジ7の肉厚をTFRとする。また、ウエブ4,5とフランジ6,7のコーナー部の内側コーナー半径をRCI、前記コーナー部の外側コーナー半径をRCO、中間ウエブ8とフランジ6,7の接続部のフィレット半径をRとする。なお、ウエブ4の肉厚とウエブ5の肉厚は同一である必要はなく、衝突側フランジ6の肉厚と車体側フランジ7の肉厚は同一である必要はない。また、前記コーナー部(4箇所)の各内側コーナー半径は同一である必要はなく、同じく前記コーナー部(4箇所)の各外側コーナー半径は同一である必要はなく、前記フィレット半径も4箇所で同一である必要はない。
バンパーリインフォース1の端部2は、図3の断面図に示すように、断面の輪郭が同じく四角形で、想定される衝突荷重方向に平行なウエブ4a,5aと、ウエブ4a,5aに接続する衝突側フランジ6a及び車体側フランジ7aと、中間ウエブ8aからなる。衝突側フランジ6a及び車体側フランジ7aは、ウエブ4a,5aに垂直である。中間ウエブ8aは前記断面内に存在し、ウエブ4a,5aに平行で前記フランジ5a,6aに垂直に接続する。なお、端部2の断面の各部位に付与した番号には、中央部3又は当初のアルミニウム合金押出形材の断面の各部位と区別するため、番号の後にaを付与している。
図3に示す断面形状において、断面の車体前後方向の寸法をl、車体高さ方向の寸法をh、ウエブ4a,5aの肉厚をt、衝突側フランジ6aの肉厚をtFF、車体側フランジ7aの肉厚をtFR、中間ウエブ8aの肉厚をtとする。また、ウエブ4a,5aとフランジ6a,7aのコーナー部の内側コーナー半径をrCI、前記コーナー部の外側コーナー半径をrCO、中間ウエブ8aとフランジ6a,7aの接続部のフィレット半径をrとする。
バンパーリインフォース1は、スエージング加工により、端部2の衝突側フランジ6aが押出方向から傾斜し、かつ車体前後方向の寸法lが全体的に当初の寸法Lより小さくなっている。端部2において、両フランジ6a,7a間の寸法は当初の寸法(両フランジ6,7間の寸法)より小さく、かつ端に近いほど小さく、ウエブ4a,5a及び中間ウエブ8aの車体前後方向の長さは端に近いほど短い、ということもできる。また、ウエブ4a,5aの肉厚tと中間ウエブ8aの肉厚tは、元の肉厚T,Tより厚く(t>T,t>T)、かつ端に近いほど厚さが増している。
このようなスエージング加工は、例えば特許第3023657号公報、特開2004−25214号公報に記載された方法により実施することができる。スエージング加工において芯金及び加工量を変えることにより、端部2の輪郭(前後方向寸法l及び車体高さ方向寸法h)や、ウエブ4a,5a、中間ウエブ8aの肉厚を種々調整できる。
このスエージング加工を好適に実施するため、当初のアルミニウム合金押出形材において、前記コーナー部の内側コーナー半径RCIを、スエージング後のウエブ4a,5aの肉厚と当初のウエブ4,5の肉厚の差(t−T)以上の大きさ(RCI≧(t−T))に設定する。また、前記接続部のフィレット半径Rについても、スエージング後の中間ウエブ8aの肉厚と当初の中間ウエブ8の肉厚の差(t−T)以上の大きさ(R≧(t−T))に設定する。
図4に、スエージング加工後の端部2の断面と当初(スエージング加工前)の断面を重ね合わせて示す。図4に両矢印で示すように、この例では、コーナー部の内側コーナー半径RCIの大きさが、スエージング加工後のウエブ4aの肉厚tと当初(スエージング加工前)のウエブ4の肉厚Tの差(t−T)より小さく設定されている(RCI<(t−T))。この場合、前記コーナー部のうち((t−T)−RCI)の範囲内では、スエージング加工の際に材料が滑らかに流動しにくく、いわば前記範囲内においてウエブ4aと両フランジ6a,7aの間にクラックが生じたような状態となる。衝突時はこの箇所を起点に割れが発生しやすく、耐衝突性能が低下する。この例では、ウエブ5aでも同様のことが生じている。
スエージング加工後のウエブ4a及び中間ウエブ8aが、その全厚み(t,t)において両フランジ6a,7aと接続された状態となる(前記クラックが生じたような状態になるのを回避する)には、前記関係式(RCI≧(t−T),R≧(t−T))を満たしている必要がある。
スエージング加工により、ウエブ4a,5aとフランジ6a,7aのコーナー部の内側コーナー半径rCIは、当初の(スエージング加工前の)内側コーナー半径(RCI)より小さくなる。そして、当初の内側コーナー半径RCIが1mmより小さい場合には、スエージング加工時に前記コーナー部で材料が滑らかに流動しにくく、図4を参照して説明したと同じ現象が生じるおそれがある。従って、当初の内側コーナー半径RCIは、上記関係(RCI≧(t−T))を満たすと同時に、1mm以上であることが好ましい。当初の内側コーナー半径RCIは、より好ましくは2mm以上である。
また、中間ウエブ8aとフランジ6a,7aの接続部のフィレット半径rも、当初の(スエージング加工前の)フィレット半径(R)より小さくなる。そして、当初のフィレット半径Rが1mmより小さい場合には、スエージング加工時に前記接続部で材料が滑らかに流動しにくく、図4を参照して説明したと同じ現象が生じるおそれがある。従って、当初のフィレット半径Rは、上記関係(R≧(t−T))を満たすと同時に、1mm以上であることが好ましい。元のフィレット半径Rは、より好ましくは1.5mm以上である。
バンパーリインフォース1において、ウエブ4,5とフランジ6,7のコーナー部の当初の外側コーナー半径RCOは、1mm以上とすることが好ましい。外側コーナー半径RCOが1mmより小さい場合には、スエージング加工時にダイスに発生する局所応力が増大するため、ダイスの寿命が著しく低下する。バンパーリインフォース1が強度の高い材料からなる場合は、ダイスの損傷が特に著しい。このため、当初の外側コーナー半径RCOは、好ましくは1mm以上とし、より好ましくは2mm以上とする。
バンパーリインフォース1は、厚肉化したウェブ4a,5a及び中間ウエブ8aにより、端部2の強度低下が防止される。このため、オーバーラップ量が小さい前面又は後面衝突、若しくは斜め衝突において、衝突物の車体への侵入量が低減され、車体や乗員の損傷を軽減することができる。
上記の例はバンパーリインフォースであったが、他の自動車用耐衝突部品でも同様に、長さ方向端部にスエージング加工を加え、衝突荷重方向に平行なウエブを圧縮して肉厚を増大させる。ドアビームの場合、衝突荷重方向は車体幅方向、ルーフリインフォースメントの場合、衝突荷重方向は車両の高さ方向である。他の自動車用耐衝突部品も、上記関係式(RCI≧(t−T),R≧(t−T))を満たす必要がある。これにより、例えばドアビーム及びルーフリインフォースメントの場合でも、衝突時の曲げ変形に対抗する強度が高くなる。また、他の自動車用耐衝突部品に対しても、好ましい内側コーナー半径RCI、フィレット半径R、及び外側コーナー半径RCOの値として、バンパーリインフォースに関して示した上記の数値が適用される。
バンパーリインフォース(又は他の自動車用耐衝突部品)において、スエージング加工を施す部位は、一方の端部のみでも、両側の端部でもよい。例えば、中央分離帯のない道路での事故が多い国においては、対向車と衝突した際の損傷を低減する目的のため、バンパーリインフォースの運転席側のみに特に大きい耐衝突性能が求められる場合がある。その場合、バンパーリインフォースの一方の端部のみにスエージング加工を加え、他方の端部は他の手段により加工することができる。他の手段としては、特許文献1〜4に記載された潰し加工、斜め切り落とし、斜め切断箇所に別部材を取り付ける等、従来の方法が適用できる。
バンパーリインフォース(又はその他の自動車用耐衝突部品)の両方の端部にスエージング加工を加えた場合には、運転席側及び助手席側両方のウエブ厚を大きくでき、どちらの側にオーバーラップの少ない正面衝突又は斜め衝突があった場合でも、衝突物の車体への進入量を抑制できる。
自動車用耐衝突部品の両方の端部にスエージング加工を行う場合、特開2004-25214号公報に記載された方法が好適に利用できる。この方法では、中空形材の一方の端部にスエージング加工を加えた後、前記一方の端部から分割式の芯金を中空形材内に挿入し、他方の端部にスエージング加工を加える。
スエージング加工は一般的に冷間で行われるが、金属材料は高強度になるほどスエージング加工時に割れが発生しやすくなる。これを防止するため、必要に応じて、温間加工を適用することができる。この場合、例えば、素材である金属製中空形材を加熱した直後にスエージング加工し、又は加熱したダイス又は/及び芯金を用いてスエージング加工を行う。
また、金属製中空形材として、6000系又は7000系の熱処理型アルミニウム合金押出形材を用いる場合、押出直後、溶体化焼入れ直後、又は復元処理をした直後にスエージング加工を加えることが望ましい。押出直後、溶体化焼入れ直後、又は復元処理をした直後は材料の伸びが高く、スエージング加工時に割れが発生するのを防止することができる。
バンパーリインフォース等の自動車用耐衝突部品は、自動車の外形に合わせて曲げ加工を施される場合がある。曲げ加工後のアルミニウム合金押出形材はスエージング加工が困難であり、スエージング加工後に中子なしで曲げ加工することになる。曲げ加工後のバンパーリインフォース1を図5に示す。図5において、11はバンパーステイ、12はバンパーフェイシャー(プラスチック外皮)である。アルミニウム合金押出形材を中子なしで曲げ加工すると、両フランジ6,7(図2参照)が座屈しやすくシワが大きくなりやすい。これを改善するため、アルミニウム合金押出形材は、フランジ6,7の肉厚をウェブ4,5及び中間ウエブ8の肉厚より大きくする方が好ましい。
バンパーリインフォース等の自動車用耐衝突部品の製造工程の一部として、必要に応じて、曲げ加工や穴加工(作業穴、ボルト穴の加工)、又は時効処理等の工程が行われる。自動車用耐衝突部品の素材として、例えば6000系又は7000系の熱処理型アルミニウム合金押出形材を用いる場合、製造工程は例えば次のようなものとなる。スエージング加工の前に必要に応じて復元(加熱軟化)処理を行うことができる。なお、穴加工をプレスで行う場合、中子が必要になるため、穴加工はスエージング加工前に行う必要がある。
(1)押出加工→穴加工(プレス)→スエージング加工→曲げ加工→時効硬化処理。
(2)押出加工→スエージング加工→曲げ加工→穴加工(ドリル)→時効硬化処理。
図1〜5を参照した説明では、自動車用耐衝突部品の素材(金属製中空形材)として、一対のウエブ4,5、一対のフランジ6,7及び中間ウエブ8を有するアルミニウム合金押出形材を用いたが、別の断面形状を有するアルミニウム合金押出形材を用いることができる。図6に他の断面形状を例示する。図6に示すように、四角形の輪郭の内部に2つの中間ウエブを有するもの(図6(a))、中間ウエブを有しないもの(図6(b))、突出フランジ13を有するもの(図6(c),(d),(e))等が考えられる。
アルミニウム合金の材質としては、6000系又は7000系のアルミニウム合金,及びその他のアルミニウム合金を用いることができる。また、アルミニウム合金のほか、高張力鋼板を用いることができる。高張力鋼板の場合、ロールフォーム工法により、四角形断面やB形断面等を有する中空形材を成形し、これを素材とする。
図1〜5を参照した説明では、スエージング加工により、アルミニウム合金押出形材の全てのウェブ(ウエブ4,5及び中間ウエブ8)の肉厚を大きく(長さを短く)したが、図7に示すように、一部のウェブの肉厚が大きくなるように、断面形状を変化させることができる。図7では、断面の半分のみがスエージング加工され、ウエブ14aのみ肉厚が大きくかつ長さが短くされている。
図1〜5を参照した説明では、スエージング加工において、ウェブ(ウエブ4,5)の肉厚を大きくした。スエージング加工において、ウエブの肉厚の増分(t−T)を、元の輪郭の外側に流動させて外形寸法(フランジ幅)を広げることもできる。図8はこれを示すもので、フランジ15a,16a側に広い取付面を確保できる。
本発明に係る自動車用耐衝突部品の効果を検討するために、CAE(Computer Aided Engineering)解析を用いて、本発明例と従来例のバンパーリインフォースについて、オーバーラップ量が小さい前面衝突時の変形荷重を求めた。
金属製中空形材は7000系アルミニウム押出形材からなり、図2に示す断面形状を有する。外形寸法は40mm×110mmで、車体前後方向寸法Lが40mm、車体高さ方向寸法Hが110mmである。ウエブ4,5の肉厚T及び中間ウエブ8の肉厚Tが共に3.5mm、衝突側フランジ6の肉厚TFFが4.0mm、車体側フランジ7の肉厚TFRが4.5mmである。ウエブ4,5とフランジ6,7のコーナー部(4箇所)の内側コーナー半径RCI及び中間ウエブ8とフランジ6,7の接続部(4箇所)のフィレット半径Rがいずれも6mm、前記コーナー部の外側コーナー半径RCOが1mmである。
本発明例に係るバンパーリインフォースの試験材(試験材A)は、前記アルミニウム押出形材の端部に実際にスエージング加工を加えて作成した。試験材Aの端部(端から200mmまでの範囲)の車体前後方向寸法l(図3参照)は、図1に示すバンパーリインフォース1と同様に、端に近いほど小さい。図3に示す断面形状と同じく、ウエブ4a,5aの肉厚tと中間ウエブ8aの肉厚tが、元の肉厚T,Tより厚く、かつ端に近いほど厚い。また、ウエブ4,5とフランジ6,7のコーナー部の内側コーナー半径rCI及び中間ウエブ8とフランジ6,7の接続部のフィレット半径rは、元の内側コーナー半径RCI及びフィレット半径Rより小さく、かつ端に近いほど小さい。
図9に、スエージング加工後の試験材Aの端面(車体前後方向寸法lが最も減少した箇所)の図を示す。図9に示すように、車体前後方向寸法lが20mm、ウエブ4a,5aの肉厚t及び中間ウエブ8aの肉厚tが共に7.0mmであった。また、ウエブ4a,5aとフランジ6a,7aのコーナー部(4箇所)の内側コーナー半径rCI、及び中間ウエブ8aとフランジ6a,7aの接続部(4箇所)のフィレット半径rがいずれも2mmであった。
従来例に係るバンパーリインフォースの試験材(試験材B)としては、前記アルミニウム押出形材の端部に潰し加工(特許文献1参照)を加えたものを想定した。試験材Bでも、試験材Aと同様に、端部(端から200mmまでの範囲)の車体前後方向寸法lを減少させ、かつ車体前後方向寸法lが端に近いほど小さくなるようにした。
図10に、外形寸法が最も減少した端面の図を示す。図10に示すように、試験材Bの端面の車体前後方向寸法lは20mmであり、ウエブ4a,5aは断面の外側に曲げ変形させた。ウエブ4a,5a及び中間ウエブ8aは、潰し加工前後で肉厚の変化はない。
以上説明した試験材A,Bを、CAE解析の解析条件として選定した。
試験材Aと試験材Bについて、図11に示すように、長さ300mmの片持ち梁と仮定し、クラッシュボックス又はサイドメンバーの外側壁を想定して、各試験材の端から200mmの位置で背面側を拘束し、前方から荷重を付加した場合の荷重−変位関係を計算した。前記荷重は、オーバーラップ量が小さい前面衝突を模したものである。その他の解析条件として、試験材A,Bは7000系アルミニウム合金押出形材を想定し、その機械的特性は耐力310MPa、引張強さ365MPa、延び14%とした。CAE解析には汎用の静的陰解法ソフトABAQUSを用いた。得られた荷重−変位曲線を図12に示す。
図12に示すとおり、従来例のバンパーリインフォースに相当する試験材Bは、変形荷重が30kN程度であり、本発明例のバンパーリインフォースに相当する試験材Aは、変形荷重が約2倍の60kN程度であった。端部を潰し加工した試験材Bは、ウエブが当初から屈曲しているため変形荷重が小さくなった。一方、端部をスエージング加工した試験材Aは、ウェブの肉厚が増加しているため強度が高く、変形荷重が大きくなった。
1 バンパーリインフォース(曲げ加工前)
2 端部
3 中央部
4,5,4a,5a ウエブ
6,6a 衝突側フランジ
7,7a 車体側フランジ
8,8a 中間ウエブ

Claims (5)

  1. 衝突側フランジ及び車体側フランジと、前記両フランジに接続するウエブを有する金属製中空形材からなり、前記中空形材の長さ方向の端部の断面形状を変形させて前記両フランジ間の寸法を小さくした自動車用耐衝突部品であり、前記端部がスエージング加工で変形され、前記端部におけるウエブの肉厚をtとし、断面形状を変形させていない部位におけるウエブの肉厚をTとしたとき、t>Tであり、断面形状を変形させていない部位における前記ウエブと前記フランジのなすコーナー部の内側コーナー半径をRCIとしたとき、RCI≧(t−T)であることを特徴とする自動車用耐衝突部品。
  2. 前記中空形材が互いに平行な一対のウエブを有し、前記一対のウエブが前記両フランジに接続していることを特徴とする請求項1に記載された自動車用耐衝突部品。
  3. 前記中空形材が断面内部に前記一対のウエブに平行な中間ウェブを有し、前記端部における前記中間ウエブの肉厚をtとし、断面形状を変形させていない部位における前記中間ウエブの肉厚をTとし、断面形状を変形させていない部位における前記中間ウェブと前記両フランジとの接続部のフィレット半径をRとしたとき、R≧(t−T)であることを特徴とする請求項2に記載された自動車用耐衝突部品。
  4. 前記中空形材がアルミニウム合金押出形材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された自動車用耐衝突部品。
  5. 前記中空形材が、鋼板をロールフォームにより成形したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載された自動車用耐衝突部品。
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