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JP2016051615A - リチウム金属二次電池 - Google Patents

リチウム金属二次電池 Download PDF

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JP2016051615A JP2014176623A JP2014176623A JP2016051615A JP 2016051615 A JP2016051615 A JP 2016051615A JP 2014176623 A JP2014176623 A JP 2014176623A JP 2014176623 A JP2014176623 A JP 2014176623A JP 2016051615 A JP2016051615 A JP 2016051615A
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Popovici Daniel
ダニエル ポポビッチ
周作 柴田
Shusaku Shibata
周作 柴田
中村 年孝
Toshitaka Nakamura
年孝 中村
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Nitto Denko Corp
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Abstract

【課題】正極と負極との間に配置される固体電解質層に破損が生じた場合であっても、短絡を抑制することができるリチウム金属二次電池を提供すること。【解決手段】リチウム金属二次電池1は、リチウム金属を含有する負極活物質層6と、 正極活物質層8と、負極活物質層6と正極活物質層8との間に配置される第1固体電解質層4とを備え、第1固体電解質層4が、イオン伝導性を備える無機酸化物を含有し、負極活物質層6と第1固体電解質層4との間に、酸化剤9が配置されている。【選択図】図1

Description

本発明は、リチウム金属二次電池に関する。
リチウム金属は、理論容量密度が非常に高いため、従来から、リチウム金属を用いたリチウム金属二次電池が開発されている。リチウム金属二次電池は、負極にリチウム金属、正極にリチウムマンガン複合酸化物などからなる多孔質体、セパレータに多孔質ポリマーをそれぞれ用い、これらを液状の有機電解質で満たした構造が採用されている。
一方、近年では、リチウム金属を用いた新しい形式の二次電池として、全固体二次電池が提案されている。全固体電池は、液体の有機電解質および多孔質ポリマーの代わりに固体の電解質膜を用いている(特許文献1参照。)。
特許文献1に提案の全固体電池は、負極としてリチウム金属を、正極としてリチウムバナジウム酸化物を、負極と正極との間に配置される固体電解質膜としてリン酸リチウムオキシナイトライドをそれぞれ備えている。
米国公開公報2010/0285372
ところで、リチウム金属を用いた二次電池には、破損に対しても高い安全性が求められている。特に、正極と負極との間に配置される固体電解質などのセパレータにおいて、製造過程や電池使用中にクラックやピンホールなどの破損が発生する場合がある。その場合、リチウム金属(負極)にて析出するデンドライトが、破損部(間隙)を通じて正極側に容易に成長し、短絡する不具合が生じる。
本発明の目的は、正極と負極との間に配置される固体電解質層に破損が生じた場合であっても、短絡を抑制することができるリチウム金属二次電池を提供することにある。
本発明のリチウム金属二次電池は、リチウム金属を含有する負極活物質層と、正極活物質層と、前記負極活物質層と前記正極活物質層との間に配置される固体電解質層とを備え、前記固体電解質層が、イオン伝導性を備える無機酸化物を含有し、前記負極活物質層と前記固体電解質層との間に、酸化剤が配置されていることを特徴としている。
また、本発明のリチウム金属二次電池では、前記酸化剤の平均粒子径が、10nm以上1000nm以下であることが好適である。
本発明のリチウム金属二次電池では、前記酸化剤が、硝酸リチウムを含有することが好適である。
本発明のリチウム金属二次電池は、正極と負極との間に配置される固体電解質層に破損が生じた場合において、短絡を抑制することができる。
図1は、本発明の第1実施形態のリチウム金属二次電池の概略図を示す。 図2は、本発明のリチウム二次電池の製造方法に用いられるエアロゾルデポジション装置の概略構成図である。 図3は、本発明の第2実施形態のリチウム金属二次電池の概略図を示す。
<第1実施形態>
第1実施形態は、負極にリチウム金属を用いた新しいシステムのリチウム金属二次電池1であり、図1に示すように、リチウム金属二次電池1は、負極2と、正極3と、固体電解質層の一例としての第1固体電解質層4と、酸化剤9と、電解液30と、外装体32とを備える。
負極2は、負極集電体5および負極活物質層6を備えている。
負極集電体5は、電子伝導性を備え、負極活物質層6を保持できるものであればよく、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、金箔などが挙げられる。
負極集電体5の厚みは、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.25μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、35μm以下である。
負極活物質層6は、負極集電体5の表面(下面)に積層されており、リチウム金属(Li)から構成されている。
負極活物質層6の厚みは、例えば、0.05μm以上、好ましくは、0.1μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、35μm以下である。
正極3は、正極集電体7および正極活物質層8を備えている。
正極集電体7は、電子伝導性を備え、正極活物質層8を保持できるものであればよく、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、金箔などが挙げられる。
正極集電体7の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、100μm以下、好ましくは、50μm以下である。
正極活物質層8は、正極集電体7の表面(上面)に積層されている。
正極活物質層8は、正極組成物から形成されている。正極組成物は、例えば、正極活物質を含有する。
正極活物質は、特に制限されず、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、硫酸鉄リチウムおよびそれらの変性体などのリチウム系複合酸化物、例えば、金属硫黄物、硫化リチウム、単体硫黄などの硫黄系材料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用することもでき、また、2種以上を使用することもできる。
好ましくは、リチウム系複合酸化物が挙げられ、より好ましくは、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウムなどが挙げられる。
正極活物質の形状は、粒子状(粉末状)であれば特に限定されず、例えば、バルク状、針形状、板形状、層状であってもよい。バルク形状には、例えば、球形状、直方体形状、破砕状またはそれらの異形形状が含まれる。
正極活物質の平均粒子径は、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.2μm以上であり、また、例えば、15μm以下、好ましくは、8μm以下である。
本発明において、平均粒子径はメジアン径(D50)であって、例えば、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(日機装社製、マイクロトラックMT3000)によって測定される。
正極組成物は、例えば、集電剤、バインダーなどの添加物を含有することもできる。
集電剤は、正極3の導電性を向上するものであり、例えば、炭素材料、金属材料などが挙げられる。炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、ニードルコークスなどの無定形炭素などが挙げられる。金属材料としては、例えば、銅、ニッケルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用することもでき、また、2種以上を使用することもできる。
好ましくは、炭素材料が挙げられ、より好ましくは、カーボンブラックが挙げられる。
集電剤の含有割合は、正極活物質100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
バインダーは、正極活物質を結着するものであればよく、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリルゴム、カルボキシメチルセルロースなどのポリマーが挙げられる。これらは、1種単独で使用することもでき、また、2種以上を使用することもできる。
バインダーの含有割合は、正極活物質100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上であり、また、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下である。
正極活物質層8は、好ましくは、多孔質体である。
正極活物質層8の多孔度は、例えば、10%以上、好ましくは、20%以上、より好ましくは、35%以上であり、また、例えば、80%以下、好ましくは、65%以下である。
本発明において、多孔度は、測定対象(正極活物質層8など)の質量wおよび体積v(=幅×長さ×厚み)から相対密度ρ(=w/v)を計算し、次いで、下記式により算出することができる。
多孔度={1−(ρ/ρ´)}×100
なお、ρ´は、理論密度を示し、例えば、測定対象の材料から、内部に空隙が全く存在しないフィルムを成形した際における密度とすることができる。
これにより、電解液30(後述)を正極活物質層8の内部に充填することができ、より一層イオン伝導性に優れる。
正極活物質層8の厚みは、例えば、30μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、例えば、200μm以下、好ましくは、100μm以下である。
第1固体電解質層4は、第1固体電解質層4の一方の表面(上面)が負極活物質層6と接触し、第1固体電解質層4の他方の表面(下面)が正極活物質層8と接触するように、負極活物質層6と正極活物質層8との間に配置されている。第1固体電解質層4は、イオン伝導性無機酸化物を含有しており、好ましくは、イオン伝導性無機酸化物の多孔質体からなる。
イオン伝導性無機酸化物としては、リチウムイオンを伝導することができる無機酸化物であれば限定的でなく、例えば、ケイ酸四リチウムとリン酸リチウムとの混合物(LiSiO・LiPO)、リン酸ホウ素リチウム(LiBPO、ただし、0<x≦0.2)、リン酸リチウムオキシナイトライド(LiPON)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用することもでき、また、2種以上を使用することもできる。
好ましくは、ケイ酸四リチウムとリン酸リチウムとの混合物が挙げられる。
ケイ酸四リチウムとリン酸リチウムとの混合割合は、ケイ酸四リチウム:リン酸リチウムとして、質量比で、例えば、10:90〜90:10、好ましくは、30:70〜70:30である。
イオン伝導性無機酸化物のイオン伝導度は、例えば、1×10−8S/cm以上、好ましくは、1×10−7S/cm以上であり、また、例えば、1×10−1S/cm以下である。イオン伝導度は、電気化学インピーダンス分析法(EIS)によって測定される。例えば、インピーダンス/ゲインフェースアナライザー(Solartron Analytical社製)を用いることができる。
イオン伝導性無機酸化物は、好ましくは、粒子状に形成されている。粒子状としては、具体的には、バルク状、針形状、板形状、層状などが挙げられる。バルク形状には、例えば、球形状、直方体形状、破砕状またはそれらの異形形状が含まれる。
イオン伝導性無機酸化物の平均粒子径は、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、2.5μm以下である。
第1固体電解質層4の多孔度は、例えば、4%以上、好ましくは、8%以上であり、また、例えば、85%以下、好ましくは、75%以下、より好ましくは、50%以下、とりわけ好ましくは、30%以下である。
第1固体電解質層4の平均孔径は、例えば、1nm以上、好ましくは、10nm以上であり、また、例えば、2000nm以下、好ましくは、700nm以下、より好ましくは、100nm以下である。
平均孔径は、例えば、第1固体電解質層4を厚み方向に切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)によってその切断面の拡大SEM画像を観察し、そのSEM画像に表示される空隙の孔径の最大長さにおける平均値である。
第1固体電解質層4の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、2μm以上であり、また、例えば、20μm以下、好ましくは、15μm以下、さらに好ましくは、10μm以下である。
第1固体電解質層4と負極活物質層6との間には、酸化剤9が設けられている。好ましくは、負極活物質層6の表面(下面)に、酸化剤9が付着されている。
酸化剤9としては、例えば、硝酸リチウム(LiNO)、硝酸ナトリウム(NaNO)などのアルカリ金属硝酸塩、例えば、過酸化リチウム(Li)、過酸化ナトリウム(Na)などのアルカリ金属過酸化物、例えば、臭素酸ナトリウム(NaBrO)、臭素酸リチウム(LiBrO)などのアルカリ金属臭素酸化物、例えば、二酸化マンガン(MnO)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用することもでき、また、2種以上を使用することもできる。
好ましくは、アルカリ金属硝酸塩が挙げられ、より好ましくは、硝酸リチウムが挙げられる。
酸化剤9は、好ましくは、粒子状に形成されている。粒子状としては、具体的には、バルク状、針形状、板形状、層状などが挙げられる。バルク形状には、例えば、球形状、直方体形状、破砕状またはそれらの異形形状が含まれる。
酸化剤9の平均粒子径は、好ましくは、第1固体電解質層4の平均孔径よりも大きく形成されている。具体的には、例えば、1nm以上、好ましくは、10nm以上、より好ましくは、100nm以上であり、また、例えば、2000nm以下、好ましくは、1000nm以下、より好ましくは、800nm以下である。酸化剤の平均粒子径を上記範囲内とすることにより、第1固体電解質層4の孔の閉塞を防止し、第1固体電解質層4および酸化剤9の機能をそれぞれ効果的に発揮させることができる。
酸化剤9の付着量は、負極活物質層6または第1固体電解質層4の表面に対して、例えば、0.005mg/cm以上、好ましくは、0.01mg/cm以上であり、また、例えば、5mg/cm以下、好ましくは、2mg/cm以下である。
酸化剤9の付着量は、例えば、精密天秤を用いて、酸化剤9が付着前の負極活物質層6と、酸化剤9が付着後の負極活物質層6との質量差を測定することにより、算出される。
酸化剤9は、図1に示すように、厚み方向と直交する平面方向に断続的に点在するように部分的に形成されていてもよく、また、図示しないが、平面方向に連続して延びる層状(シート状)に形成されていてもよい。
酸化剤9が層状である場合は、酸化剤層の厚みは、例えば、5〜200nmである。
第1固体電解質層4の内部には、電解液30が存在している。
好ましくは、第1固体電解質層4および正極活物質層8の内部には、電解液30が存在している。すなわち、第1固体電解質層4および正極活物質層8のそれぞれの内部の空隙が、電解液30で満たされている。より具体的には、電解液30は、負極2、正極3および第1固体電解質層4を浸漬するようにリチウム金属二次電池1に充填されている。
電解液30は、負極2と正極3との間でリチウムイオンを移動させることができる液体であればよく、例えば、従来のリチウムイオン二次電池、リチウム金属二次電池などに用いられる電解質が挙げられる。
電解液30は、例えば、非水電解液であり、好ましくは、有機溶媒およびイオン電解質を含有する。
有機溶媒は、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート、例えば、メチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのフラン類、例えば、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用することもでき、また、2種以上を使用することもできる。
好ましくは、環状カーボネート、鎖状カーボネートなどが挙げられ、より好ましくは、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの併用が挙げられる。
イオン電解質は、イオン伝導性を向上するために用いられ、例えば、リチウム塩が挙げられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiAsF、LiSiF、LiClO、LiB(C、LiSbSO、LiCHSO、LiCFSO、LiCSO、Li(CFSON、LiC(SOCF、LiAlCl、LiClなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用することもでき、また、2種以上を使用することもできる。
高いイオン伝導性の観点から、好ましくは、LiPF、Li(CFSONなどが挙げられる。
電解液30に対する、イオン電解質の含有割合は、例えば、0.1mol/L以上、好ましくは、0.4mol/L以上であり、また、例えば、10mol/L以下、好ましくは、5mol/L以下である。
電解液30は、好ましくは、イオン液体を含有する。これにより、リチウム金属電池の安全性がより一層優れる。
イオン液体としては、例えば、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−ブチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用することもでき、また、2種以上を使用することもできる。
電解液30における、イオン液体の含有割合は、例えば、10体積%以上、好ましくは、30体積%以上、より好ましくは、40体積%以上であり、また、例えば、100体積%以下、好ましくは、90体積%以下、より好ましくは、60体積%以下である。
外装体32は、第1電池セル33(すなわち、負極2/第1固体電解質層4/正極3の構造体)および電解液30を、外装体32の内部に封止している。
外装体32は、公知または市販品を用いればよく、例えば、ラミネートフィルム、金属缶などが挙げられる。
ラミネートフィルムを形成する層としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、チタン、ステンレスなどの金属層、酸化ケイ素、酸化アルミニウムなどの金属酸化物層、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ABS樹脂などのポリマー層などが挙げられる。これらは、1層単独で使用することもでき、また、2層以上を使用することもできる。
金属缶の材料としては、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、チタン、ステンレスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用することもでき、また、2種以上を使用することもできる。
次いで、リチウム金属二次電池1の製造方法について説明する。
リチウム金属二次電池1は、例えば、正極集電体7に正極活物質層8を積層し、正極3を得る工程、正極活物質層8に第1固体電解質層4を積層し、第1固体電解質層/正極積層体(第1SEA31)を得る工程、負極2に酸化剤9を付着する工程、負極2を第1SEA31に積層する工程によって得られる。
まず、正極集電体7に正極活物質層8を積層する。
具体的には、正極組成物を含有するスラリーを正極集電体7の表面に塗布する。
スラリーは、正極組成物および溶媒を混合することにより得られる。
溶媒としては、上記した有機溶媒に加えて、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどケトン類、例えば、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。また、溶媒として、例えば、水、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコールなどの水系溶媒も挙げられる。これらは、1種単独で使用することもでき、また、2種以上を使用することもできる。
塗布方法は、公知の方法が挙げられ、例えば、例えば、ドクターブレード、ロールコート、スクリーンコート、グラビアコートなどが挙げられる。
塗布量は、正極活物質を基準として、例えば、3.5〜50mg/cmである。
次いで、スラリーを乾燥し、塗布膜を形成する。
必要に応じて、塗布膜を圧縮する。圧縮方法は、公知の方法が挙げられ、例えば、ローラ、平板などで塗膜をプレスする方法が挙げられる。
これにより、正極集電体7と、その一方面に積層され、多孔質体である正極活物質層8とを備える正極が得られる。
次いで、正極活物質層8に第1固体電解質層4を積層する。
第1固体電解質層4の積層方法は、例えば、エアロゾルデポジション法、コールドスプレー法、ホットスプレー法、プラズマスプレー法などが挙げられる。
好ましくは、エアロゾルデポジション法(AD法・ガスデポジション法・気体堆積法)が挙げられる。これにより、イオン伝導性無機酸化物からなる多孔質体を正極活物質層8の表面に確実に形成させることができる。また、孔径の小さい多孔質体を形成することができる。
以下、エアロゾルデポジション法(以下、AD法とする。)を用いて第1固体電解質層4を形成する方法を説明する。
AD法によって第1固体電解質層4を形成するには、例えば、図2に示すエアロゾルデポジション装置10が用いられる。
エアロゾルデポジション装置10は、成膜チャンバー11、エアロゾルチャンバー12およびキャリアガス輸送装置13を備えている。
成膜チャンバー11は、正極3の表面(詳しくは、正極活物質層8の表面)に、第1固体電解質層4を形成するための成膜室であって、基板ホルダー14、成膜チャンバー11内の温度を測定するための温度計(図示せず)、および、成膜チャンバー11内の圧力を測定するための圧力計(図示せず)を備えている。
基板ホルダー14は、支柱15、台座16およびステージ17を備えている。
支柱15は、台座16およびステージ17を連結させるために、成膜チャンバー11の天井壁を貫通して下方(鉛直方向下方)に突出するように設けられている。
台座16は、正極3を成膜チャンバー11内に保持および固定するために、支柱15の長手方向一端部(下端部)に設けられている。
ステージ17は、第1固体電解質層4の形成時において、正極3を任意の方向(x方向(前後方向)、y方向(左右方向)、z方向(上下方向)およびθ方向(回転方向))に移動可能とするために、成膜チャンバー11の天井壁の上面に設けられ、支柱15の長手方向他端部(上端部)に接続されている。これにより、ステージ17は、支柱15を介して台座16に接続され、ステージ17により、台座16を移動可能としている。
また、成膜チャンバー11には、メカニカルブースターポンプ18およびロータリーポンプ19が接続されている。
メカニカルブースターポンプ18およびロータリーポンプ19は、成膜チャンバー11内を減圧するとともに、成膜チャンバー11に連結管20(後述)を介して連通されるエアロゾルチャンバー12内を減圧するために、成膜チャンバー11に、順次接続されている。
エアロゾルチャンバー12は、第1固体電解質層4の材料(すなわち、イオン伝導性無機酸化物の粉末)を貯留する貯留槽であって、振動装置21、および、エアロゾルチャンバー12内の圧力を測定するための圧力計(図示せず)を備えている。
振動装置21は、エアロゾルチャンバー12、および、エアロゾルチャンバー12内の第1固体電解質層4の材料を振動させるための装置であって、公知の振盪器が用いられる。
また、エアロゾルチャンバー12には、連結管20が接続されている。
連結管20は、エアロゾル化された材料(以下、エアロゾル)を、エアロゾルチャンバー12から成膜チャンバー11に輸送するための配管であって、その一方側端部(上流側端部)がエアロゾルチャンバー12に接続されるとともに、他方側が成膜チャンバー11の底壁を貫通して台座16に向かって延びるように配置されている。また、成膜チャンバー11内において、連結管20の他方側端部(下流側端部)には、成膜ノズル22が接続されている。
成膜ノズル22は、エアロゾルを正極活物質層8の表面に噴き付けるための噴射装置であって、成膜チャンバー11内において、噴射口が鉛直方向上側の台座16に向かうように、配置されている。具体的には、成膜ノズル22は、その噴射口が台座16(特に、台座16に配置される正極活物質層8などの被着体の表面)と所定間隔(例えば、1〜100mm、特に20〜80mm)を隔てるように上下方向において対向配置されている。これにより、エアロゾルチャンバー12から供給されるエアロゾルを、正極活物質層8の表面に噴き付け可能としている。
なお、成膜ノズル22の噴射口形状としては、特に制限されず、エアロゾルの噴射量、噴射範囲などに応じて、適宜設定される。
また、連結管20の流れ方向途中には、連結管開閉弁23が介在されている。連結管開閉弁23としては、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。
キャリアガス輸送装置13は、キャリアガスボンベ25を備えている。
キャリアガスボンベ25は、例えば、酸素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス、空気ガスなどのキャリアガスを貯留するボンベであって、ガス管26を介して、エアロゾルチャンバー12に接続されている。
ガス管26は、キャリアガスをキャリアガスボンベ25からエアロゾルチャンバー12に輸送するための配管であって、その上流側端部がキャリアガスボンベ25に接続されるとともに、下流側端部がエアロゾルチャンバー12に接続されている。
また、ガス管26の流れ方向途中には、ガス流量計27が介在されている。ガス流量計27は、ガス管26内のガスの流量を調整するとともに、その流量を検知するための装置であって、特に制限されず、公知の流量計が用いられる。
さらに、ガス管26の流れ方向途中には、ガス流量計27よりも下流側において、ガス管開閉弁28が介在されている。ガス管開閉弁28としては、例えば、電磁弁など、公知の開閉弁が用いられる。
このようなエアロゾルデポジション装置10により第1固体電解質層4を形成するためには、まず、成膜ノズル22と、正極活物質層8とを間隔を隔てて対向配置する(配置工程)。具体的には、台座16に、正極活物質層8の表面が、成膜ノズル22側(下側)に向かうように配置する。
一方、エアロゾルチャンバー12には、上記した第1固体電解質層4の材料(イオン伝導性無機酸化物の粉末)を投入する。
なお、投入の前に、第1固体電解質層4の材料を予め乾燥させることもできる。
乾燥温度としては、例えば、50〜150℃であり、乾燥時間としては、例えば、1〜24時間である。
次いで、この方法では、ガス管開閉弁28を閉とし、また、連結管開閉弁23を開とするとともに、メカニカルブースターポンプ18およびロータリーポンプ19を駆動させることにより、成膜チャンバー11内およびエアロゾルチャンバー12内を減圧する。
成膜チャンバー11内の圧力は、例えば、5〜80Paであり、エアロゾルチャンバー12内の圧力は、例えば、5〜80Paである。
次いで、この方法では、第1固体電解質層4の材料を、エアロゾルチャンバー12内において、振動装置21により振動させるとともに、ガス管開閉弁28を開として、キャリアガスボンベ25からキャリアガスをエアロゾルチャンバー12に供給する。これにより第1固体電解質層4の材料をエアロゾル化させるとともに、発生したエアロゾルを、連結管20を介して成膜ノズル22に輸送することができる。このとき、エアロゾルは、成膜ノズル22の内壁に衝突して破砕され、より粒径の小さな粒子となる。
また、ガス流量計27により調整されるキャリアガスの流量は、例えば、0.1L/分以上、好ましくは、30L/分以上であり、また、例えば、80L/分以下、好ましくは、50L/分以下である。
次いで、この方法では、破砕された材料の粒子を、成膜ノズル22の噴射口から正極活物質層8の表面に向けて噴射する(噴射工程)。
エアロゾル噴射中のエアロゾルチャンバー12内の圧力は、例えば、50〜80000Paである。また、成膜チャンバー11内の圧力は、例えば、10〜1000Pa以下である。
また、エアロゾル噴射中のエアロゾルチャンバー12内の温度は、例えば、0〜50℃である。
また、エアロゾル噴射中、好ましくは、ステージ17を適宜移動させることにより、正極活物質層8の表面に均等にエアロゾルを噴き付ける。
このような場合において、ステージ17の移動速度(すなわち、成膜ノズル22の移動速度)は、例えば、0.1〜50mm/秒である。
これにより、正極活物質層8の表面(鉛直方向下側)に、第1固体電解質層4を形成することができる。
その結果、正極3および第1固体電解質層4を備える第1SEA31を得ることができる。
なお、上記では、噴射工程において、ステージ17を移動させていたが、エアロゾルデポジション装置10に応じて、成膜ノズル22を移動させて、正極活物質層8と成膜ノズル22との相対速度を0.1〜50mm/秒とさせることもできる。
また、相対速度や第1固体電解質層4の厚みに応じて、上記噴射工程を複数回繰り返して実施してもよい。繰返回数は、好ましくは、1〜10回である。
また、上下方向に成膜ノズル22と台座16とを対向配置していたが、例えば、左右方向(上下方向と直交する方向)に成膜ノズル22と台座16とを対向配置することもできる。
次いで、負極2に酸化剤9を付着する。
まず、負極2を用意する。負極2は、負極集電体5に負極活物質層6(リチウム金属)を積層することにより得られる。
続いて、負極2に酸化剤9を付着する。詳しくは、負極活物質層6の表面に酸化剤9を付着する。
具体的には、酸化剤9を含有する環境に、負極2を晒す。すなわち、酸化剤9を空気中に浮遊させた酸化剤含有雰囲気下に、負極2を配置する。
酸化剤含有雰囲気における温度は限定的でなく、例えば、室温である。
配置する時間は限定的でなく、例えば、2〜10秒である。
必要に応じて、酸化剤9を確実にかつ強固に負極活物質層6の表面に付着させる観点から、酸化剤含有雰囲気下で、負極活物質層6の表面にブラッシングを実施し、次いで、圧延ロールで負極活物質層6を圧縮する。
これにより、負極活物質層6の表面に、酸化剤9が付着される。
なお、酸化剤の付着は、例えば、パウダースプレー法、AD法などにより実施することもできる。
次いで、第1SEA31に負極2を積層する。
具体的には、負極活物質層6側が第1固体電解質層4と接触するように、負極2を第1SEA31に積層する。
これにより、第1電池セル33(すなわち、負極2/第1固体電解質層4/正極3の構造体)が得られる。
なお、上記方法では、負極2の負極活物質層6の表面に酸化剤9を付着して、第1電池セル33を製造したが、第1SEA31の第1固体電解質層4の表面に酸化剤9を付着して、第1電池セル33を製造することもできる。
次いで、正極リード(図示せず)を正極集電体7に、負極リード(図示せず)を負極集電体5に取り付け、その後、第1電池セル33に電解液30を供給するとともに、ラミネートフィルムなどの外装体32で第1電池セル33を封止する。
第1電池セル33を外装体32で封止する際に、第1電池セル33に電解液30を供給する。具体的には、電解液30が第1固体電解質層4および正極活物質層8のそれぞれの内部に十分に存在するように、第1電池セル33に電解液30を供給する。好ましくは、第1固体電解質層4および正極活物質層8のそれぞれの内部の空隙を、電解液で満たす。
電解液30を供給した後に、ラミネートフィルムなどの外装体32を公知の方法で完全に封止する。
これにより、リチウム金属二次電池1が得られる。
そして、このようなリチウム金属二次電池1では、負極活物質層6としてリチウム金属、正極活物質層8としてLiCoOをそれぞれ用いた場合は、次の反応式(1)〜(3)で表す電気化学反応が生ずる。
Figure 2016051615
このようなリチウム金属二次電池1では、負極活物質層6(リチウム金属)と第1固体電解質層4との間に、酸化剤9を備えている。このため、第1固体電解質層4に、クラックやピンホールなどの破損が生じていても、短絡を抑制することができる。
この機構は、下記のように推察される。破損部には、液体電解液のみ存在するため、リチウム金属のデンドライトが成長し易く、そのデンドライト周辺には局所的に熱が発生する。その一方、酸化剤9は、酸素を放出する。そのため、その酸素とデンドライトとが熱反応し、デンドライトの表面に良好な絶縁層(酸化リチウム層)を形成される。その絶縁層で被覆されたデンドライトは、クラックやピンホールなどの細かい破損を閉塞する。その結果、正極−破損部−負極での電子移動を阻止され、第1固体電解質層4の破損が実質的に修復される(自己回復特性)。
また、このようなリチウム金属二次電池1では、第1固体電解質層4は、イオン伝導性の無機酸化物を含有する多孔質体である。また、第1固体電解質層4は、セパレータとしての役割を果し、その内部に電解液30を含有している。そのため、充放電を繰り返しても、負極2において、デンドライトの発生、および、デンドライトによる短絡を抑制することができる。また、第1固体電解質層4のみならず、電解液30によっても、リチウムイオンの移動を可能としているため、第2実施形態の全固体電池に比べて、イオン伝導性が良好である。
リチウム金属二次電池1の形態は、限定的でなく、例えば、角型電池や円筒型電池などの巻回型電池であってもよく、また、積層型電池であってもよい。
<第2実施形態>
第2実施形態は、負極にリチウム金属を用いた全固体リチウム金属二次電池40(以下、単に全固体電池という。)であり、図3に示すように、全固体電池40は、負極2と、正極3aと、固体電解質層の一例としての第2固体電解質層42と、酸化剤9と、外装体32とを備える。
図3において、図1の実施形態と同様の部材については、同一の参照符号を付し、その詳細を省略する。
正極3aは、正極集電体7および正極活物質層8aを備える。
第2実施形態における正極活物質層8aは、第1実施形態における正極活物質層8と同様に、正極組成物から形成されている。
好ましくは、第2実施形態における正極活物質層8aは、非多孔質である。
これにより、全固体電池40の薄膜化を図ることができる。
正極活物質層8aの厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、2μm以上であり、また、例えば、30μm未満、好ましくは、10μm以下である。
第2固体電解質層42は、第2固体電解質層42の一方の表面(上面)が負極活物質層6と接触し、第2固体電解質層42の他方の表面(下面)が正極活物質層8aと接触するように、負極活物質層6と正極活物質層8aとの間に配置されている。
第2固体電解質層42は、イオン伝導性無機酸化物を含有し、かつ、非多孔質体である。第2固体電解質層42は、好ましくは、イオン伝導性無機酸化物の非多孔質体からなる。
第2固体電解質層42を形成するイオン伝導性無機酸化物としては、第1固体電解質層4で例示したものと同一のものが挙げられる。
第2固体電解質層42の厚みは、例えば、0.5μm以上、好ましくは、1.0μm以上であり、また、例えば、20μm以下、好ましくは、10μm以下である。
第2固体電解質層42と負極活物質層6との間には、酸化剤9が設けられている。好ましくは、負極活物質層6の表面(下面)に、酸化剤9が付着されている。
酸化剤9の付着量は、例えば、負極活物質層6または第2固体電解質層42の表面に対して、0.005mg/cm以上、好ましくは、0.01mg/cm以上であり、また、例えば、5mg/cm以下、好ましくは、2mg/cm以下である。
全固体電池40は、電解液を備えていない。すなわち、外装体32の内部、特に第2固体電解質層42の内部には、電解液が存在しない。
次いで、全固体電池40の製造方法について説明する。
全固体電池40は、例えば、正極集電体7に正極活物質層8aを積層し、正極3aを得る工程、正極活物質層8aに第2固体電解質層42を積層し、第2固体電解質層/正極積層体(第2SEA41)を得る工程、負極2に酸化剤9を付着する工程、負極2を第2SEA41に積層する工程によって得られる。
まず、第1実施形態と同様にして、正極集電体7に正極活物質層8aを積層する。
この工程では、好ましくは、AD法を用いて、正極集電体7に正極活物質層8aを形成する。AD法の具体的な条件は、後述する第2固体電解質層42の形成と同様にすればよい。
次いで、正極活物質層8aに第2固体電解質層42を積層する。
この工程では、AD法を用いて、正極活物質層8aに第2固体電解質層42を形成する。
非多孔質体である第2固体電解質層42を形成する場合、成膜ノズル22から噴射される材料(イオン伝導性無機酸化物)の衝突速度を、多孔質体である第1固体電解質層4を形成する場合と比較して、低くなるように設定すればよい。
具体的には、材料などに応じて適宜決定されるが、成膜ノズル22の噴射口と、台座16(特に、台座16に配置される正極活物質層8aなどの被着体の表面)との間隔は、例えば、3mm以上、好ましくは、5mm以上、また、例えば、30mm以下、好ましくは、20mm以下、より好ましくは、15mm以下である。
キャリアガスの流量は、例えば、2L/分以上、好ましくは、3L/分以上、より好ましくは、8L/分以上であり、また、例えば、15L/分以下、好ましくは、10L/分以下である。
これにより、正極活物質層8aの表面(鉛直方向下側)に、第2固体電解質層42を形成することができる。
その結果、正極3aおよび第2固体電解質層42を備える第2SEA41を得ることができる。
次いで、第1実施形態と同様にして、負極2に酸化剤9を付着する。
次いで、第2SEA41に負極2を積層する。
具体的には、負極活物質層6側が第2固体電解質層42と接触するように、負極2を第2SEA41に積層する。
これにより、第2電池セル43(すなわち、負極2/第2固体電解質層42/正極3aの構造体)が得られる。
次いで、正極リード(図示せず)を正極集電体7に、負極リード(図示せず)を負極集電体5に取り付け、その後、ラミネートフィルムなどの外装体32で第2電池セル43を封止する。
これにより、全固体電池40が得られる。
このような全固体電池40では、負極活物質層6(リチウム金属)と第2固体電解質層42との間に、酸化剤9を備えている。このため、第2固体電解質層42に、クラックやピンホールなどの破損が生じていても、短絡を抑制することができる。
この機構は、下記のように推察される。第2固体電解質層42の破損部(空孔)において成長するデンドライトと、酸化剤9から放出される酸素とが熱反応し、絶縁層(酸化リチウム層)がデンドライトの表面に形成され、その絶縁性のデンドライトが破損部を閉塞する。その結果、第2固体電解質層42の破損が実質的に修復される(自己回復特性)。
全固体電池40の形態は、限定的でなく、例えば、角型電池や円筒型電池などの巻回型電池であってもよく、また、積層型電池であってもよい。
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。以下に示す実施例の数値は、実施形態において記載される数値(すなわち、上限値または下限値)に代替することができる。
<第1実施形態>
(正極の作製)
正極活物質としてLiCoO(平均粒子径(D50)5μm)90質量部、導電剤としてカーボン粉末5質量部、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン5質量部、溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)400質量を混合して、正極組成物スラリーを調製した。
スラリーをドクターブレード法によって、アルミニウム箔(正極集電体、厚みが15μm)の片面に塗布し、乾燥させて、塗布膜を作製した。
その後、塗布膜を圧縮ローラで圧縮して、厚みが50μmである正極活物質層を形成した。正極活物質層は、多孔質体であり、多孔度は50%であった。
これにより、正極を作製した。
(第1固体電解質層の形成)
エアロゾルデポジション法を用いて、正極の正極活物質層に、第1固体電解質層を直接形成した。
具体的には、図2に示すエアロゾルデポジション装置(キャリアガス:空気ガス)を用意し、その成膜チャンバー(22℃)内において、基板ホルダーの台座に、正極を設置した。
なお、このとき、成膜ノズルの噴射口と正極活物質層の表面との間隔が、20mmとなるように調節した。
一方、リチウムイオン伝導材(LiSiO・LiPO(50:50wt%)、平均粒子径(D50)0.75μm、イオン伝導度2×10−6S/cm)を用意し、500mLのガラス製エアロゾルチャンバーに投入した。
その後、ガス管開閉弁を閉とし、また、連結管開閉弁を開とするとともに、メカニカルブースターポンプおよびロータリーポンプを駆動させることにより、成膜チャンバー内およびエアロゾルチャンバー内を、50Paまで減圧した。
次いで、空気ガスの流量が50L/分となるようにガス流量計により調整し、また、エアロゾルチャンバーを振盪器により振動させながら、ガス管開閉弁を開とした。これによって、エアロゾルチャンバー内において、粉末混合物をエアロゾル化し、得られたエアロゾルを、成膜ノズルから噴射させた。
なお、このときのエアロゾルチャンバー内の圧力は、約1000〜50000Paであり、成膜チャンバー内の圧力は、約200Paであった。
そして、基板ホルダーのステージによって、正極が固定された台座を移動速度5mm/秒でx−y方向に移動させるとともに、成膜ノズルから噴射されるエアロゾルを、正極活物質層の表面に噴き付けた。
これにより、第1固体電解質層(イオン伝導性無機酸化物からなる多孔質体)を、正極活物質層の表面に形成した。第1固体電解質層の厚みは5μm、多孔度は10%、平均孔径は20nmであった。
続いて、短絡試験のために、第1固体電解質層に、厚み方向に貫通するクラック(開口の幅3mm)を形成した。
このようにして、第1固体電解質層/正極積層体(第1SEA)を得た。
(負極の作製)
銅箔(負極集電体、厚さ30μm)に、リチウム金属箔(負極活物質層、厚さ25μm)を押圧することにより、負極を作製した。
(酸化剤の付着)
負極を酸化剤粒子含有環境下に配置して、LiNO粒子をリチウム金属箔の表面に付着させた。
具体的には、硝酸リチウム粒子(LiNO、平均粒子径(D50)500nm)を、空気(室温)中に浮遊させた雰囲気下にリチウム金属箔を配置した。次いで、ブラシでリチウム金属箔表面をこすり、圧延ロールでリチウム金属箔表面を圧縮した。
硝酸リチウム粒子の付着量は、精密天秤により測定したところ、0.01〜0.05mg/cmであった。
(電解液の調製)
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とを50:50(体積比)で混合した混合溶液に、2.0mol/LとなるようにLiPFを溶解させて、電解質含有有機溶媒を調製した。
N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PP13−TFSI、イオン液体)に、0.4mol/Lとなるようにリチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(Li(CFSON;Li−TFSI)を溶解させて、電解質含有イオン液体を調製した。
電解質含有有機溶媒と電解質含有イオン液体とを60:40の体積比で混合することにより、電解液を調製した。
(リチウム金属二次電池の製造)
実施例1
第1SEAおよび負極を、第1固体電解質層がリチウム金属箔に接触するように積層させることにより、第1電池セルを得た。
第1電池セルをアルミニウムのラミネートフィルムで封止した。完全に封止する前に、第1固体電解質層および正極活物質層が完全に湿潤するように電解液を十分に加えて、ラミネートフィルム内部を電解液で満たした。
これにより、実施例1のリチウム金属二次電池を製造した。
比較例1
酸化剤の付着を実施しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例1のリチウム金属二次電池を製造した。
(破損による内部短絡測定試験)
以下の条件で充放電サイクル試験を実施し、そのときの開放回路電圧(Open Cercuit Potential:OCP)を測定した。
測定機械:商品名「Solartron Analytical」、Modulab社製
電流:0.2C超(CCモードのみ)
電圧:2.7〜4.2V
最大充電時間:10時間
なお、記録電圧が異常値に達した場合、電池がそれ以上に充電されないようにオフ安全性パラメータを選択した。
結果を表1に示す。
Figure 2016051615
実施例1の電池では、第1固体電解質層にクラックが形成されているにもかかわらず、一定の高いOCPを維持していた。このことから、クラックは実質的に修復され、短絡の発生が抑制されていることが分かる。
一方、比較例1の電池では、充放電を繰り返すと、直ちにOCPが低下し、8サイクル後には、0(V)となった。このことから、第1固体電解質層のクラックに大電流が流れ、クラックにデンドライトが発生し、最終的に短絡したことが分かる。
(リチウム金属箔表面の観察)
短絡試験後の実施例1の電池から、負極を取り出し、リチウム金属箔の表面(固体電解質層と接していた側)をSEM(走査型電子顕微鏡)およびEDX(エネルギー分散側X線分光法)にて観察した。
この結果、リチウム金属箔と第1固体電解質層との間に、固体電解質界面層(SEI層)が形成されていたことが確認されていた。また、そのSEI層は、EDXにより、高密度で炭素リッチであることが確認された。
これにより、リチウム金属箔表面にデンドライトの発生をより一層抑制できることが分かる。
<第2実施形態>
(正極の作製)
正極活物質としてリン酸鉄リチウム(LiFePO、平均粒子径(D50)0.9μm)と、導電材としてアセチレンブラック(平均粒子径(D50)0.02μm)とを、質量比で97.5:2.5となるように配合し、ボールミルにて1時間混合して、混合物を得た。
正極集電剤としてアルミニウム箔(厚み20μm)を用い、アルミニウム箔の上に、混合物を材料として、AD法にて、厚みが2μmの正極活物質層を積層した。
測定条件は、材料として上記混合物を使用し、成膜ノズルの噴射口と正極集電剤の表面との間隔を20mmとし、キャリアガスの流量を8L/分とした以外は、第1固体電解質層の形成と同様の条件で実施した。
正極活物質層は、非多孔質体であった。
(固体電解質層の形成)
上記正極の正極活物質層の表面に、AD法により、第2固体電解質層を形成した。
測定条件は、成膜ノズルの噴射口と正極活物質層の表面との間隔を15mmとし、キャリアガスの流量を8L/分とした以外は、第1固体電解質層の形成と同様の条件で実施した。
これにより、厚みが1.5μmの第2固体電解質層を正極活物質層の表面に形成した。
第2固体電解質層は、非多孔質体であった。
続いて、自己修復試験のために、第2固体電解質層に、厚み方向に貫通するピンホール(平均直径1μm)を形成した。
このようにして、第2固体電解質層/正極積層体(第2SEA)を得た。
(負極の作製、および、酸化剤の付着)
実施例1と同様にして、負極を作製し、その負極活物質層(リチウム金属箔)の表面に酸化剤を付着させた。
硝酸リチウム粒子の付着量は、精密天秤により測定したところ、0.01〜0.05mg/cmであった。
(全固体電池の製造)
実施例2
第2SEAおよび負極を、第2固体電解質層がリチウム金属箔に接触するように積層させることにより、第2電池セルを得た。第2電池セルをアルミニウムのラミネートフィルムで封止した。
これにより、実施例2の全固体電池を製造した。
比較例2
酸化剤の付着を実施しなかった以外は、実施例2と同様にして、比較例2の全固体電池を製造した。
(破損による内部短絡測定試験)
以下の条件で、実施例2および比較例2の電池に対し、電圧を印加し、そのときの開放回路電圧(OCP)および電池抵抗(R)を測定した。
測定機械:商品名「Solartron Analytical」、Modulab社製
結果を表2に示す。
Figure 2016051615
実施例2の電池では、第2固体電解質層にピンポールが形成されているにもかかわらず、電圧印加した直後に、電圧が向上し、12時間後には、予測理論OCPである3.4Vに達した。このことから、ピンホールが実質的に修復され、短絡が抑制されていることが分かる。
一方、比較例2の電池では、電圧直後および12時間後においても、電圧は向上しなかった。このことから、第2固体電解質層のピンホールにおいて、短絡していたことが分かる。
1 リチウム金属二次電池
4 第1固体電解質層
6 負極活物質層
8 正極活物質層
9 酸化剤
40 全固体電池
42 第2固体電解質層

Claims (3)

  1. リチウム金属を含有する負極活物質層と、
    正極活物質層と、
    前記負極活物質層と前記正極活物質層との間に配置される固体電解質層と
    を備え、
    前記固体電解質層が、イオン伝導性を備える無機酸化物を含有し、
    前記負極活物質層と前記固体電解質層との間に、酸化剤が配置されている
    ことを特徴とする、リチウム金属二次電池。
  2. 前記酸化剤の平均粒子径が、10nm以上1000nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウム金属二次電池。
  3. 前記酸化剤が、硝酸リチウムを含有することを特徴とする、請求項1または2に記載のリチウム金属二次電池。
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