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JP2015514742A - β−アミロイドにより誘発された毒性と関連する疾患の治療における、3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピランの使用 - Google Patents

β−アミロイドにより誘発された毒性と関連する疾患の治療における、3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピランの使用 Download PDF

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JP2015514742A JP2015506307A JP2015506307A JP2015514742A JP 2015514742 A JP2015514742 A JP 2015514742A JP 2015506307 A JP2015506307 A JP 2015506307A JP 2015506307 A JP2015506307 A JP 2015506307A JP 2015514742 A JP2015514742 A JP 2015514742A
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モーダク,スワナンダ・アール
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Abstract

本発明は、β−アミロイドにより誘発された毒性と関連する疾患又は状態、例えばアルツハイマー病等を治療するために、化合物3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピランを新たに使用することに関連する。

Description

本発明は、公知化合物の新規の治療的使用に関連する。より具体的には、本発明は、例えばアルツハイマー病等の、β−アミロイドにより誘発された毒性と関連する疾患又は状態を治療するために公知化合物を使用することに関連する。
β−アミロイド(Aβ)は、アミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein、APP)の細胞内タンパク質分解により生成される39〜43個のアミノ酸を含むペプチドである。APPは、最初にβ−セクレターゼにより切断されて膜結合型C99ペプチドとなり、次にγ−セクレターゼによりAβとなる。
Aβは、これがアルツハイマー病と関連することが臨床的に最も一般的に知られている。アルツハイマー病は、死滅ニューロン及び末期ニューロンにおける異常に高レベル(濃度)の脳病変(老人斑)及び神経原線維のもつれ、並びに大脳血管壁内におけるアミロイド沈積物の数の増加により、病理学的に特徴付けられる。老人斑の主要な成分はAβタンパク質であり、これはアミロイド原線維に容易に自己組織化する。Aβの変異体が長くなるほど、アミロイドを形成する傾向が強い。有力な証拠は、Aβの生成を高める因子、特にそのアミロイド生成性がより強い変異体、又はアミロイド沈積物の沈着を促進する又は除去を阻害する因子は、アルツハイマー病を引き起こす、又は同病のリスク因子であることを示唆する
β−アミロイドの凝集及び沈着は、封入体筋炎、及び血管性認知症、及び脳アミロイド血管障害等のその他の疾患又は状態とも関わっている。
インビトロ及びインビボでの証拠から、可溶性でオリゴマー型のAβであることが明らかにされており4〜8、そのAβは、強力な神経毒活性を有し、またアルツハイマー病に生ずる神経細胞障害及び細胞死の主原因である。従って、Aβに基づく療法では、その他の低毒性又は無毒性の種ではなく、Aβオリゴマーを一次標的とすべきことが提案された。
従って、Aβにより誘発された毒性を低下させる又は除去することができる新規の療法が必要である。
本発明は、化合物、3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピランは、β−アミロイドにより誘発された毒性の強力な阻害剤であるという認識に依拠する。
この化合物の特定の形態、(1R,3S)3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピラン塩酸塩は、「A−77636」と呼ばれるドーパミン1(D1)受容体作動薬として当技術分野において公知である。A−77636は、動物モデルを対象としてパーキンソン病に対して活性を有することが明らかにされており、またコカイン中毒治療についても提案されている10。A−77636は、血液脳関門を通過することも公知であり、それはアルツハイマー病治療薬の重要な要件である16
従って、第1の態様では、本発明は、β−アミロイドにより誘発された毒性と関連した疾患又は状態の治療に使用するための、3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピラン、又はその薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和化合物を提供する。
更なる態様では、本発明は、β−アミロイドにより誘発された毒性と関連した疾患又は状態の治療に使用するための、3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピラン、又はその薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和化合物と、1つ又は複数の薬学的に許容される添加剤とを含む医薬組成物を提供する。
更なる態様では、本発明は、β−アミロイドにより誘発された毒性と関連した疾患又は状態の治療に使用するための薬剤の製造における、3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピラン、又はその薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和化合物の使用を提供する。
別の態様では、本発明は、β−アミロイドにより誘発された毒性と関連した疾患又は状態を治療する方法を提供し、前記方法は、3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピラン、又はその薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和化合物の治療上有効な量を、かかる治療を必要とする対象に投与するステップを含む。
別の態様では、本発明は、β−アミロイドにより誘発された毒性と関連した疾患又は状態を治療する方法を提供し、前記方法は、3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピラン、又はその薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和化合物と、1つ又は複数の薬学的に許容される添加剤とを含む医薬組成物の治療上有効な量をかかる治療を必要とする対象に投与するステップを含む。
更なる態様では、本発明は、β−アミロイドにより誘発された毒性の阻害に使用するための、3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピラン、又はその薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和化合物を提供する。
更なる態様では、本発明は、(インビトロ又はインビボでの)β−アミロイドにより誘発された毒性を阻害する方法を提供し、前記方法は、3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピラン、又はその薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和化合物について、その有効量を投与するステップを含む。
[定義]
別途記載がなければ、本明細書及び特許請求の範囲で用いられる下記の用語は、以下に記載する意味を有する。
「治療すること」又は「治療」は、疾患又は状態の確立した症状を予防並びに緩和することを意味するものと理解される。従って、「治療すること」又は「治療」は、(1)疾患若しくは状態に苦しんでいる若しくは罹患していると考えられるが、疾患若しくは状態の臨床的若しくは亜臨床的症状をまだ経験していない若しくは呈さない対象において発症している疾患若しくは状態の臨床症状の発現を予防する若しくは遅延させるステップ、(2)疾患若しくは状態を阻害するステップ、すなわち、疾患若しくは状態の発症若しくはその再発(維持療法の場合)、若しくはその少なくとも1つの臨床的若しくは亜臨床的症状を阻止する、抑える、若しくは遅延させるステップ、又は(3)疾患若しくは状態を軽減若しくは減弱するステップ、すなわち、疾患若しくは状態若しくはその少なくとも1つの臨床的若しくは亜臨床的症状の後退を引き起こすステップが含まれる。
「治療上有効な量」は、本明細書において参照する疾患又は状態を治療するために対象に投与した際に、疾患又は状態に対するそのような治療を有効とするのに十分な化合物の量を意味する。「治療上有効な量」は、化合物の形態(例えば、塩の形態)や、対象とする疾患又は状態及びその重症度、並びに治療される対象の年齢、体重等に応じて変化する。
用語「対象」は、本明細書では、温血の哺乳動物を意味する。従って、本発明の化合物は、ヒト及び/又は獣医学的用途で利用可能である。特定の実施形態では、対象はヒトである。
[本発明の化合物]
本発明の化合物は、3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピランである。この化合物の構造を以下に示す。
本発明の化合物は、1つ又は複数のエナンチオマー型又はジアステレオマー型として存在し得る。特に、本発明の化合物は、ベンゾピラン環の1位及び3位において、R又はSの立体配置で存在し得る。
化合物は、単一のエナンチオマー型/ジアステレオマー型、又はエナンチオマー型/ジアステレオマー型の混合物として存在し得る。
β−アミロイドにより誘発された毒性を阻害する能力を有する全てのエナンチオマー型/ジアステレオマー型の3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピラン化合物は、本発明に含まれる。
一実施形態では、化合物は、(1R,3S)3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピラン、又はその薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和化合物である。この化合物は以下の構造を有する。
本発明の化合物に適する薬学的に許容される塩は、例えば塩化水素、臭化水素、硫酸、リン酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、クエン酸、又はマレイン酸等の酸を用いて形成される化合物の酸付加塩である。
特定の実施形態では、本発明の化合物は、塩酸塩の形態である。
本発明の特定の実施形態では、本発明の化合物は、(1R,3S)3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピラン塩酸塩である。
また、本発明の化合物は、溶媒和形態並びに非溶媒和形態で、例えば水和した形態等でも存在し得ると、やはり理解される。本発明は、β−アミロイドにより誘発された毒性を阻害する能力を有する、全てのかかる溶媒和形態を含むものと理解される。
また、本発明の化合物は、多形性(polymorphism)も示す可能性があり、また、本発明は、β−アミロイドにより誘発された毒性を阻害する能力を有する全てのかかる多形形態を含むものと、やはり理解される。
本発明の化合物は、ヒト又は動物の体内で分解されて本発明の化合物を放出するプロドラッグの形態でも投与可能である。プロドラッグは、本発明の化合物の物理的特性及び/又は薬物動態的特性を変化させるのに利用可能である。プロドラッグは、本発明の化合物が、特性修飾基(property−modifying group)が連結可能な適当な基又は置換基を含有する場合に、形成可能である。プロドラッグの例として、本発明の化合物のヒドロキシ基の1つにおいて形成可能であるインビボで開裂可能なエステル誘導体、及び/又は、本発明の化合物のアミノ基において形成可能であるインビボで開裂可能なアミド誘導体が挙げられる。
従って、本発明には、プロドラッグが開裂した時にヒト又は動物の体内で利用可能となる、本明細書でこれまでに規定した本発明の化合物が含まれる。従って、本発明には、前駆体化合物の代謝によりヒト又は動物の体内で生成される本発明の化合物が含まれ、すなわち本発明の化合物は代謝的に生成され得る。
本発明の化合物に適する薬学的に許容されるプロドラッグは、望ましくない薬理活性もまた過度の毒性も有さず、ヒト又は動物の身体に投与するのに適するという合理的な医学的な判断に基づくものである。
プロドラッグの様々な形態について、例えば下記の文献に記載されている。
a)Methods in Enzymology、第42巻、309〜396頁、K.Widderら編(Academic Press、1985年);
b)Design of Pro−drugs、H.Bundgaard編、(Elsevier、1985年);
c)A Textbook of Drug Design and Development、Krogsgaard−Larsen及びH.Bundgaard編、H.Bundgaardによる第5章「Design and Application of Pro−drugs」、113〜191頁(1991年);
d)H.Bundgaard、Advanced Drug Delivery Reviews、第8巻、1〜38頁(1992年);
e)H.Bundgaardら、Journal of Pharmaceutical Sciences、第77巻、285頁(1988年);
f)N.Kakeyaら、Chem.Pharm.Bull.、第32巻、692頁(1984年);
g)T.Higuchi及びV.Stella、「Pro−Drugs as Novel Delivery Systems」、A.C.S.Symposium Series、第14巻;及び
h)E.Roche(編者)、「Bioreversible Carriers in Drug Design」、Pergamon Press、1987年。
本発明の化合物のインビボでの効果は、本発明の化合物を投与した後に、ヒト又は動物の体内で形成される1つ又は複数の代謝物により、一部分発揮され得る。本明細書においてこれまでに記載したように、本発明の化合物のインビボでの効果は、前駆体化合物(プロドラッグ)の代謝によっても発揮され得る。
[合成]
本発明の化合物は、商業的に調達可能であり、及び/又は、当技術分野において公知の合成技術により調製可能である。
[医薬組成物]
本発明の更なる態様によれば、β−アミロイドにより誘発された毒性と関連した疾患又は状態の治療に用いるための、薬学的に許容される賦形剤又は担体と関連する、本明細書でこれまでに規定した本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和化合物を含む医薬組成物が提供される。
本発明の組成物は、経口用途(例えば、錠剤、ロゼンジ、ハード又はソフトカプセル、水性又は油性の懸濁物、エマルジョン、分散型の粉末又は粒剤、シロップ又はエリキシル剤)、局所用途(例えば、クリーム、軟膏、ゲル、又は水性若しくは油性の溶液若しくは懸濁物)、吸入法による投与用途(例えば、微粉末又は液体エアゾールとして)、通気法による投与用途(例えば、微粉末として)、又は非経口投与用途(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、又は筋肉内投与用途の滅菌された水性若しくは油性の溶液として、又は直腸投与用途の坐薬として)に適する形態であり得る。
本発明の組成物は、当技術分野において周知の従来型の医薬品添加剤を用いて、従来方式の手順により取得可能である。従って、経口用途として意図されている組成物は、例えば1つ又は複数の着色料、甘味料、香味料、及び/又は防腐剤を含み得る。
1つ又は複数の添加剤と併用して単一の剤形を形成する有効成分の量は、治療される個人及び個々の投与経路に依存して必然的に変化する。例えば、ヒトに経口投与するように意図されている処方物は、一般的に、例えば0.5mg〜0.5gの活性薬剤(より好適には0.5〜100mg、例えば1〜30mg)を含み、活性薬剤は全組成物の約5〜約98重量百分率(%)で変化し得る適切で好都合な量の添加剤と調合されている。
治療又は予防を目的とした本発明の化合物の用量サイズは、薬剤に関する周知の原則に基づき、状態の性質及び重症度、動物又は患者の年齢及び性別、及び投与経路に応じて当然変化する。
治療又は予防を目的として本発明の化合物を用いる際には、当該化合物は、例えば体重1kg当たり0.1mg〜75mgの範囲の日用量が服用されるように一般的に投与され、必要な場合には分割した用量で投与される。非経口経路が採用される場合には、一般的に低めの用量が投与される。従って、例えば静脈内又は腹腔内投与の場合、例えば体重1kg当たり0.1mg〜30mgの範囲の用量が一般的に用いられる。同様に、吸入法により投与する場合、例えば体重1kg当たり0.05mg〜25mgの範囲の用量が用いられる。経口投与も、特に錠剤形態の場合、適すると考えられる。一般的に、単位投与剤形は、約0.5mg〜0.5gの本発明の化合物を含む。
[β−アミロイドにより誘発された毒性と関連した疾患又は状態]
下記の実施例に記載する生物学的アッセイ(分析)法により、本発明の化合物が、β−アミロイドにより誘発された毒性の強力な阻害剤であることは実証される。
従って、本発明の化合物は、β−アミロイドにより誘発された毒性と関連した疾患又は状態の治療(予防療法を含む)に適する。かかる状態の例として、アルツハイマー病、封入体筋炎、及び血管性認知症、及び脳アミロイド血管障害が挙げられる。
特定の実施形態では、本発明の化合物は、アルツハイマー病の治療(予防療法を含む)に使用可能である。
本発明の化合物は、治療を必要とする患者に治療上有効な量で好適に投与される。
[作用機序]
これまでに記載したように、本発明の化合物は、D1受容体作動薬として公知である。しかし、本発明の化合物がβ−アミロイドにより誘発された毒性を阻害する機構は、同化合物が有するD1受容体作動薬活性により介在されるとは考えられていない。その他のD1受容体作動薬に関するデータは、本明細書の実施例5に提示されており、このデータは、Aβ毒性の阻害は、D1ドーパミン受容体作動薬の一般的特性ではないことを明確に示している。
本明細書の実施例4に提示するデータは、本発明の化合物が作用していると考えられる1つの説明可能な機構は、RACK1タンパク質との結合によることを示唆する。RACK1は、グルタミン酸作動性及びドーパミン作動性神経伝達物質系を調節する他、Aβ42が凝集し、その結果破綻(disrupt)すると思われるCa2+ホメオスタシスの維持にも役立つことが公知である18、19、21。RACK1の下方制御も、ADと関連した公知の現象である20。従って、いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、本発明の化合物は、β−アミロイドの存在下でもRACK1のレベル回復に役立ち、同様にこの化合物は、β−アミロイドの凝集と関連して変化を受けた神経伝達物質系を間接的に改善可能であり、それによっておそらくはβ−アミロイドに誘発された細胞毒性(cytotoxicity)の発現を低減するものと考えることができる。
[投与経路]
本発明の化合物又はこの化合物を含む医薬組成物は、任意の好都合な投与経路により対象に投与可能である。投与経路として、経口(例えば、摂取による);バッカル;舌下;経皮的(例えばパッチ、膏薬等による場合を含む);経粘膜的(例えば、パッチ、膏薬等による);鼻腔内(例えば、鼻腔スプレーによる);眼球(例えば、点眼薬による);肺(例えば口腔又は鼻腔を経由する、例えばエアゾールを用いた、例えば吸入又は通気療法による);直腸(例えば、坐薬又は浣腸剤による);膣(例えば、ペッサリーによる);非経口、例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、クモ膜下腔内、髄腔内、嚢内、嚢下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、クモ膜下、及び胸骨内を含む注射による;デポ又はリザーバーの、例えば皮下又は筋肉内インプラントによる投与が挙げられるが、但しこれらに限定されない。
[併用療法]
本発明の化合物は、単独療法として使用可能、又は本発明の化合物に加えて1つ若しくは複数の追加の治療薬を用いる療法と関係し得る。
従って、別の態様では、本発明は、1つ又は複数の追加の治療薬と併用して、β−アミロイドにより誘発された毒性と関連した疾患又は状態の治療に用いられる、本明細書で規定した本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和化合物を提供する。
別の態様では、本発明は、β−アミロイドにより誘発された毒性と関連した状態の治療における、1つ又は複数の追加の治療薬と併用して用いられる薬剤の製造での、本明細書で規定した本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和化合物の使用を提供する。
かかる共同(conjoint)の治療は、個々の治療成分を同時に、連続又は分離して投与することにより達成され得る。かかる複合製剤は、本発明の化合物を本明細書にすでに記載した用量範囲内で、及びその他の薬学的に活性な薬剤をその承認された用量範囲内で使用する。
本発明の更なる態様によれば、本明細書ですでに規定した本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和化合物と、1つ若しくは複数の追加の治療薬とを含む、β−アミロイドにより誘発された毒性の治療で使用するのに適する併用物が提供される。
本明細書において、用語「併用」が用いられる場合、これは同時投与、分離又は連続投与を意味するものと理解される。本発明の1つの態様では、「併用」は同時投与を意味する。本発明の別の態様では、「併用」は、分離した投与を意味する。本発明の更なる態様では、「併用」は、連続投与を意味する。投与が連続又は分離している場合、第2の成分の投与が遅延した場合、かかる遅延は、併用の有益な効果を損なうようであってはならない。
本発明の更なる態様によれば、本発明の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和化合物と、1つ若しくは複数の追加の治療薬と、薬学的に許容される賦形剤若しくは担体とを含む医薬組成物が提供される。
本発明について、以下の付随する図を参照しながら更に記載する。
SHSY5Y細胞を用いた時の、細胞外Aβ42凝集に対する(1R,3S)3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピラン塩酸塩(A−77636)の濃度依存性の反応を示す図である。 実施例3の表3に示すデータを図式的に示す図である。 Aβ42及びA−77636処理後のRACK1タンパク質発現を分析するためのIn Cell Westernアッセイを示す図である。SH−SY5Y細胞を1.5×10個/ウェルで播種した。細胞を2条件、すなわちAβ42(1μM)のみ、及び、Aβ42(1μM):A−77636(1μM)で、24時間処理した。また、並行対照細胞もA−77636(1μM)のみで処理した。(A)In Cell Westernアッセイでは、Aβ42で処理した場合、対照細胞と比較してRACK1の発現量について55%の低下が認められることから、RACK1発現が下方制御されることが実証された。1μMのA−77636をAβ42(1μM)で処理したSH−SY5Y細胞に投与すると、Aβ42(1μM)のみと比較して、RACK1のレベルについて31%の増加を示すことから、かかる投与はRACK1発現の部分的なエンハンサーとして作用する。(B)Aβ42及びA−77636で処理したSH−SY5Y細胞についてのRACK1発現レベルの差異を、強度を4.5に設定して700nmで取得したOdyssey赤外線画像システムにより測定した。データを、ローディング対照のα−チューブリンに標準化した後、n=3での、RACK1発現量に比例する蛍光強度の平均割合(%)で表し、エラーバーは標準誤差を表し、対照細胞(Aβ−ve)と比較した場合、p<0.05であったが、A−77636(1μM)で処理されたAβ42−ve細胞の場合、p>0.05であった。 Aβ42毒性阻害剤に該当するものを識別するために行われた更なるドーパミン受容体作動薬のスクリーニングを示す図である。D1受容体に対して選択性を有するドーパミン受容体作動薬として作用する9個の化合物を、Aβ42(1μM)で処理したSH−SY5Y細胞上で24時間スクリーニングした。化合物及び標的ペプチドを同時に添加し、37℃でインキュベーションした後、MTTアッセイを用いて細胞生存率を測定した。化合物Aは、81%の細胞生存率を示し、Aβ42毒性の部分的阻害を示したが(p<0.05)、残りの他の化合物は、細胞外Aβ42毒性からSH−SY5Y細胞を救済することができなかった。データを、無処理対照を100%に設定して、n=3での、平均生存率(%)として示し、エラーバーは標準誤差を表す。
本発明を下記の実施例にて説明する。
[材料]
(1R,3S)3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピラン塩酸塩(A−77636)を、市販のLopac化合物ライブラリ(極めて多様な構造及び作用機序を有する1280種類の薬学的に活性な化合物のコレクション)から調達した。Lopacライブラリは、Lumophore Ltd.より寄贈品として提供されたが、もともとはSigma Ltd.から購入された。
Aβ42ペプチドは、rPeptideから購入した(http://www.rpeptide.com/)。SH−SY5Y細胞は、ATCCから購入した(http://www.atcc.org/ATCCAdvancedCatalogSearch/ProductDetails/tabid/452/Default.aspx?ATCCNum=CRL−2266&Template=cellBiology)。
[Aβペプチドのストック調製物:]
Aβ42を高グレード100%の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)(Sigma)に溶解した後、3サイクルのボルテックス処理を各30秒間行って、ペプチドを単量体の状態で維持した。これに続いて、Aβ42をしかるべき容積のHFIPに溶解して1mMの濃度とし、必要とされる時まで4℃で保管した。次に、ペプチドを液体N中で乾燥し、一晩中凍結乾燥した。次に、凍結乾燥形態のAβ42をパラフィルムで密閉し、更なる実験アッセイで必要となる時まで−20℃で保管した。
<実施例1>
[Aβ42存在下におけるSYSHY5Y細胞生存率のMTT毒性評価。]
MTT毒性アッセイ法は、Aβ毒性を測定する試験で幅広く用いられる11、12
[MTTアッセイ:]
MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウム臭化物)アッセイ法を、細胞外Aβ42で処理した細胞に対する化合物の効果を観察するために、SH−SY5Y細胞を実験対象として実施した。MTTアッセイ法は、ミトコンドリア酵素のコハク酸デヒドロゲナーゼによりMTTをホルマザン生成物に変換し、この変換に基づき細胞生存率の比色分析を提供する。細胞の毒性実験では、細胞をDulbeccoのPBSで2回洗浄し、これに続いて細胞のトリプシン処理をし、1800rpmにて遠心分離を行い、そして細胞を、96ウェル平底プレート(Costar)上の、1.5%のFCS、1%のL−グルタミン、1%のペニシリン−ストレプトマイシン(P/S)、及び1%の非必須アミノ酸(NEAA)が補充されたフェノールレッドを含まないOpti−MEM培地内に播種した。
細胞を1×10個/mlの密度で96ウェル平底プレート(Costar)に播種し、そして5%のCOを含む37℃の加湿インキュベーター内で24時間インキュベーションした。これに続いて培地を取り出し、そして細胞に、1μMのAβ42及び1μMのA−77636を含有する、新鮮な培地を添加した。
24時間後、50μlの培地を除去し、そして10μlのMTT(2.5mg/ml)を細胞に添加した。これに続いて、37℃、5%のCOで更に4時間インキュベーションした。MTTの還元は、イソプロピルアルコール50mlと37%のHCl197μlとを含有する可溶化溶液を100μl添加することにより特徴付けた。細胞毒性は、Polarstar BMG labtechプレートリーダーを用いて、570nmでの吸収を測定することにより評価した。Aβ42を含まない細胞(健康な細胞)の平均生存率を、各実験で100%とみなし、一方、0.1%のトリトンX−100を生存細胞に添加して0%の生存細胞を得、これを100%生存不能細胞又は死滅細胞に対応する対照とした。
[結果]
MTT結果を下記の表1に示す。
上記結果から、本発明の化合物(A−77636)は、(A−77636を含む及び含まないAβ42と比較して)Aβ42の毒性効果を阻害する能力を有することが実証される。
<実施例2>
[Aβ42及び種々の濃度の(1R,3S)3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピラン塩酸塩(A−77636)が存在した時のSYSHY5Y細胞生存率のMTT毒性評価。]
化合物A−77636を、細胞外Aβ42で処理したSH−SY5Y細胞を実験対象として種々の濃度でスクリーニングした。MTT細胞毒性分析では、A−77636を、1.5%のFCS、1%のP/S、1%のL−グルタミン、及び1%のNEAAが補充されたOpti−MEM培地で希釈した。標的の化合物を、100μM、10μM、1μM、100nM、10nM、及び1nMの濃度でSH−SY5Y細胞に添加した。
細胞を1×10個/mlの密度で96ウェル平底プレート(Costar)に播種し、そして5%のCOを含む37℃の加湿インキュベーター内で24時間インキュベーションした。これに続いて培地を取り出し、そして細胞に、Aβ42及びA−77636を含有する、新鮮な培地を添加した。細胞内の標的のペプチド及び化合物A−77636の最終濃度は、1μM:100μM、1μM:10μM、1μM:1μM、1μM:100nM、1μM:10nM、及び1μM:1nMであった。次に、細胞を5%のCOを含む37℃の加湿インキュベーター内で24時間インキュベーションした。
24時間後、50μlの培地を取り出し、そして10μlのMTT(2.5mg/ml)を細胞に添加した。これに続いて、37℃及び5%のCOで更に4時間インキュベーションした。MTTの還元は、イソプロピルアルコール50mlと37%のHCl197μlとを含有する可溶化溶液を100μl添加することにより特徴付けた。96ウェルプレートを室温で6時間保って、ホルマザン結晶を溶解した。細胞毒性は、Polarstar BMG labtechプレートリーダーを用いて、570nmでの吸収を測定することにより評価した。Aβ42を含まない細胞(健康な細胞)の平均生存率を、各実験で100%とみなし、一方、0.1%トリトンX−100を生存細胞に添加して0%の生存細胞とし、これを100%生存不能細胞又は死滅細胞に対応する対照とした。
[結果]
MTT結果を下記の表2及び図1に示す。
本発明の化合物(A−77636)は、100μMで毒性を有し、10nM〜10μMで活性、及び1nMでは不活性である。
<実施例3>
[Aβ42及び種々の濃度の(1R,3S)3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピラン塩酸塩(A−77636)が存在した時のSYSHY5Y細胞生存率のLDH毒性評価。]
[化合物A−77636を用いたSHSY5Y細胞を対象とする濃度依存性LDHアッセイ:]
Aβ42(1μM)で処理したSHSY5Y細胞を実験対象として、種々の濃度のA−77636を用いて、LDH(乳酸脱水素酵素、lactate dehydrogenase)アッセイを実施した。LDHは、遍在的に存在する細胞質の酵素であり、神経細胞株内でも豊富にみられる14。LDHアッセイは、細胞毒性の指標を提供し、放出されるLDHの量から、アポトーシス又は壊死により引き起こされる細胞膜の損傷が定量化される13,15。ここでは、LDH放出の蛍光測定を可能にする市販のCyto Tox−Oneアッセイ(Promega;G7890)を用いたが、この場合、レサズリン色素のレゾフリンへの還元反応は、NADHが関与する酵素的変換を経由して組み合わせられる。蛍光色素のレゾフリンの生成量は、LDH放出量に比例する。
1μMの細胞外Aβ42で処理したSHSY5Y細胞を実験対象として、A−77636を種々の濃度でスクリーニングした。LDH細胞毒性分析では、A−77636を、1.5%のFCS、1%のP/S、1%のL−グルタミン、及び1%のNEAAが補充されたOpti−MEM培地で希釈した。A−77636を、100μM、10μM、1μM、100nM、10nM、及び1nMの濃度でSHSY5Y細胞に添加した。
細胞を1×10個/mlの密度で96ウェル黒色平底プレート(BD Biosciences)に播種し、そして5%のCOを含む37℃の加湿インキュベーター内で24時間インキュベーションした。これに続いて培地を取り出し、そして細胞に、Aβ42:A77636を含有する、新鮮な培地を添加した。細胞内の標的のペプチド及びA−77636の最終濃度は、それぞれ1μM:100μM、1μM:10μM、1μM:1μM、1μM:100nM、1μM:10nM、及び1μM:1nMであった。次に、細胞を、5%のCOを含む37℃の加湿インキュベーター内で24時間インキュベーションした。
24時間後、96ウェルプレートをインキュベーターから取り出し、22℃で30分間平衡化(equilibrate)した。Cyto Tox−One試薬を、製造業者のプロトコールに基づいて、基質混合物を22℃で平衡化し、アッセイバッファーを水浴中、37℃で解凍することにより調製した。これに続き、11mlのアッセイバッファーを基質混合物の各バイアルに添加した。100μlのCyto Tox−One試薬を各ウェルに添加した。Cyto Tox−One試薬の調製及び添加は、バックグラウンドの蛍光が増加するのを避けるために暗所で実施し、そして必要とされる時まで−20℃で保管した。細胞を22℃で10分間、更にインキュベーションした後、結果の変動の増加を避けるために、Cyto Tox−One試薬の場合と同じ順番で、停止溶液をウェルに添加した。停止溶液は、蛍光生成物であるレゾフリンの形成を停止する。Cyto Tox−One試薬添加前に、2μlの溶解溶液(9%トリトンX100、Promega)を細胞に添加して、各実験の最大LDH放出量(100%として設定される)を評価して、死滅細胞対照とした。Aβ42を含まない細胞(健康な細胞)を、LDH放出量が最小の対照又は生存細胞対照とみなした。次に、96ウェルプレートをシェイカー上で10秒間保持し、そしてPolarstar BMGプレートリーダーを用いて、560nmでの励起及び590nmでの発光による蛍光を速やかに測定した。
LDHアッセイの結果を下記の表3及び図2に示す。
SHSY5Y細胞を1μMのAβ42で処理し、種々の濃度の化合物A−77636の効果を、Cyto Tox−One LDHアッセイ法を用いて24時間後に測定した。その結果より、Aβ−ve又は健康な細胞については9%のLDH放出、また1μMのAβ42で処理した細胞については89%のLDH放出が実証され、すなわち細胞外Aβ42(1μM)で処理した場合、89%の細胞毒性を示すことが実証された。A−77636は、100μM〜1nMの全ての濃度においてAβ42毒性を低減する。100μMのA−77636は、1μMのAβ42単独と比較して、なおも1μMのAβ42毒性を低減するが、LDH放出量の増加(59%)が示す通り、A−77636は、100μMでは毒性を有する可能性がある。
従って、本発明の化合物(A−77636)は、アルツハイマー病及びAβ毒性により引き起こされるその他の疾患の治療用途に適する候補薬物である。
<実施例4>
[細胞外Aβ42及びA−77636処理の存在下におけるRACK1タンパク質の差次的発現。]
[In Cell Westernアッセイ:]
In Cell Westernアッセイ(ICW)は、細胞ベースの免疫蛍光検査技法であり、マイクロプレートを用いた迅速かつ高感度のタンパク質発現の指標を提供する。マイクロプレートを用いて、SH−SY5Y細胞をAβ42で24時間処理した後、固定して、一次抗体及び蛍光標識された二次抗体を用いた細胞の免疫染色を行い、その後、Odyssey赤外線画像システムを用いてプレートをスキャニングした。このアッセイは、Aβ42及びA−77636存在下でSH−SY5Y細胞を用いて、RACK1タンパク質の発現(発現量)を測定するために実施した。化合物A−77636はLOPACライブラリに属し、細胞外Aβ42で処理したSH−SY5Y細胞に投与すると、細胞外Aβ42が介在する細胞毒性を阻害することが実証された。ICWアッセイにより、Aβ42(1μM)及びA−77636(1μM)で処理されたSH−SY5Y細胞についてRACK1の差次的発現が実証され、これは妥当性のある作用機序の解明に役立ち、A−77636はその作用機序を通じて細胞外Aβ42細胞毒性の低減に作用すると考えられる。
[方法:]
[RACK1発現を確認するためのIn Cell Westernアッセイ:]
RACK1発現を、Aβ42及びA−77636で処理したSH−SY5Y細胞を実験対象として、ICWアッセイ法を用いて分析した。ICWアッセイでは、96ウェル透明平底マイクロプレート(Costar)を用いて、1ウェル当たり1.5×10個の細胞を、1.5%のFCS、1%のL−グルタミン、及び1%のペニシリン−ストレプトマイシンが補充されたフェノールレッドを含まないOpti−MEMに播種(inoculate)した。これに続いて、培地を取り出し、Aβ42(1μM)を含有する新鮮な培地を添加した。並行して、Aβ42(1μM)及び化合物A−77636(1μM)を含有する新鮮な培地に細胞を添加し、一方、対照細胞には1μMのA−77636のみを添加した。更に24時間後、培地を廃棄し、そして4%のホルムアルデヒドを含むPBSで細胞を速やかに固定した。固定は、4℃で一晩中行われた。細胞をPBSで3回洗浄し、0.1%トリトンX−100を含むPBSを200μl添加して透過処理した。細胞を5分ずつ3回洗浄した。これに続いて、Odysseyブロックキングバッファー(LI−COR)中、室温にて1.5時間、70rpmのプレートシェイカー上で緩やかに揺動させながら、細胞をブロックキングした。Odysseyブロックキングバッファー(LI−COR)で希釈したウサギ抗ヒトRACK1抗体(1:300)(ab72483)を細胞に添加した後、4℃で一晩中インキュベーションした。α−チューブリン(1:200)(ab15246)をこれらの実験のローディング対照として用いた。これに続いて、細胞を0.1%のツイーン20を含むPBSで各5分間、3回洗浄した。細胞に、Odysseyブロックキングバッファーで1:800に希釈した蛍光標識された二次抗体、抗ウサギIRDye 680 LT(LI−COR)を50μl添加した後、緩やかに揺動させながら、室温で1時間インキュベーションした。この段階では、細胞を光から保護した。次に、細胞を0.1%のツイーン20を含むPBSで、各5分間、3回洗浄した。最終洗浄した後、ツイーン20を含有する洗浄溶液を完全に除去した。マイクロプレートをペーパータオル上で軽く拭い、そしてOdyssey赤外線スキャナー(LI−COR)を用いて速やかにスキャンした。上記実験では、700nmチャンネルとして感度4.5に設定した。Odysseyソフトウェアを用いてデータを取得し、エクセルにエクスポートして分析を行い、そして二次抗体のみで処理した細胞から得たバックグラウンドを数値から差し引いた。
[結果:]
[細胞外Aβ42及びA−77636処理の存在下におけるRACK1タンパク質の差次的発現:]
RACK1タンパク質の発現を調べるために、ICWアッセイを、Aβ42(1μM)及びA−77636(1μM)で処理したSH−SY5Y細胞を実験対象として実施した。RACK1は、PKCの活性化及び転位に必要であることが公知である17。更に、RACK1は、グルタミン酸作動性及びドーパミン作動性神経伝達物質系を調節すること、並びにAβ42が凝集した結果、破綻すると思われるCa2+ホメオスタシスを維持するのに役立っていることも公知である18、19、21。RACK1の下方制御は、ADと関連した公知の現象である20。本試験では、Aβ42(1μM)のみで処理した細胞、及びA−77636(1μM)で処理した細胞について、ICWアッセイを通じてRACK1タンパク質の差次的発現が認められた。
Aβ42(1μM)のみで処理したSH−SY5Y細胞、細胞内の最終濃度が1μM:1μMのAβ42:A−77636で処理した同細胞、及びA−77636(1μM)のみで処理した同細胞について、RACK1発現を24時間測定した。結果を無処理対照細胞と比較した。SH−SY5Y細胞を1μMのAβ42で24時間処理すると、対照細胞(136%)と比較してRACK1タンパク質の発現の低下(81%)、p<0.05が実証された。一方、Aβ42(1μM)で処理されたSH−SY5Y細胞を、A−77636を用いて1μMで処理すると、RACK1のレベルが112%まで部分的に改善することが実証された。このことから、この作用機序を通じてA−77636は、Aβ42が介在する細胞毒性を改善するのに役立っているものと考え得る(図3)。ICWアッセイは、MTT及びLDH細胞毒性アッセイから得られた結果を確認するのに更に役立ち、両細胞毒性アッセイにより、A−77636は、細胞外Aβ42細胞毒性の部分的な阻害剤として潜在能力を有することが実証された。更に、対照細胞に1μMのA−77636を単独投与しても、対照細胞と比較して、RACK1の発現(130%)、p>0.05に何らの変化も認めることはできなかった。これは、細胞外Aβ42細胞毒性の低減におけるA−77636の考え得る役割を示唆しており、A−77636は、RACK1タンパク質との結合により、また更にRACK1のレベル回復に役立つことにより作用しているものと考えられる。こうして、Aβ42凝集と関連して変化を受けた神経伝達物質系を間接的に改善しておそらくはAβ42細胞毒性を低減する。
<実施例5>
[Aβにより誘発された毒性に対する代替的D1受容体作動薬の効果。]
更なるD1ドーパミン受容体作動薬(下記の表4に詳記する)について、これらが細胞外Aβ42毒性の阻害剤として作用するかを評価するために、スクリーニングした。これらの化合物は、Aβ42細胞毒性に対するその効果を観察するために、Aβ42(1μM)で処理したSH−SY5Y細胞を実験対象として、個別にスクリーニングした。SH−SY5Y細胞を実験対象として、合計9個の化合物を、Aβ42(1μM)で同時処理してスクリーニングした。化合物Aが、81%の細胞生存率を示すことにより(p<0.05)、Aβ42毒性を部分的に阻害することが実証されたが、他の全ての化合物は、統計的に有意性のない結果から明らかなようにAβ42毒性を阻害することができなかった(図4)。
このデータから、Aβ毒性の阻害は、D1ドーパミン受容体作動薬の一般的特性ではないことが明らかである。

Claims (11)

  1. β−アミロイドにより誘発された毒性と関連した疾患又は状態の治療に使用するための、化合物3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピラン、又はその薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和化合物。
  2. 前記化合物が、(1R,3S)3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピラン、又はその薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和化合物である、請求項1に記載の化合物。
  3. 前記化合物が、(1R,3S)3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピラン塩酸塩である、請求項2に記載の化合物。
  4. β−アミロイドにより誘発された毒性と関連した疾患又は状態の治療に使用するための、請求項1から3のいずれか1項に規定した化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和化合物と、1つ又は複数の薬学的に許容される添加剤とを含む、医薬組成物。
  5. 前記β−アミロイドにより誘発された毒性と関連した疾患又は状態が、アルツハイマー病、封入体筋炎、及び血管性認知症、及び脳アミロイド血管障害より選択される、請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物、又は請求項4に記載の医薬組成物。
  6. 前記β−アミロイドにより誘発された毒性と関連した疾患又は状態が、アルツハイマー病である、請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物、又は請求項4に記載の医薬組成物。
  7. β−アミロイドにより誘発された毒性と関連した疾患又は状態を治療する方法であって、請求項1から3に規定した化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和化合物、又は請求項4に記載の医薬組成物の治療上有効な量を、かかる治療を必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
  8. 前記β−アミロイドにより誘発された毒性と関連した疾患又は状態が、アルツハイマー病、封入体筋炎、及び血管性認知症、及び脳アミロイド血管障害より選択される、請求項7に記載の方法。
  9. 前記β−アミロイドにより誘発された毒性と関連した疾患又は状態が、アルツハイマー病である、請求項7に記載の方法。
  10. β−アミロイドにより誘発された毒性の阻害に使用するための、化合物3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピラン、又はその薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和化合物。
  11. (インビトロ又はインビボでの)β−アミロイドにより誘発された毒性を阻害する方法であって、前記方法が、3−(1’−アダマンチル)−1−アミノメチル−3,4−ジヒドロ−5,6−ジヒドロキシ−1H−2−ベンゾピラン、又はその薬学的に許容される塩若しくはそれらの溶媒和化合物の有効量を投与するステップを含む、方法。
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