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JP2015503330A - 多重遺伝子バイオマーカーの同定 - Google Patents

多重遺伝子バイオマーカーの同定 Download PDF

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JP2015503330A JP2014549052A JP2014549052A JP2015503330A JP 2015503330 A JP2015503330 A JP 2015503330A JP 2014549052 A JP2014549052 A JP 2014549052A JP 2014549052 A JP2014549052 A JP 2014549052A JP 2015503330 A JP2015503330 A JP 2015503330A
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Abstract

目的の抗癌薬に対する感受性または耐性の予測のための多重遺伝子バイオマーカーの同定方法または多重遺伝子癌予後徴候バイオマーカーを開示する。開示の方法は、哺乳動物ゲノムの51種の転写クラスター(すなわち、その群内転写物レベルが高度に相関する非重複の機能的に関連する遺伝子群)への分類に基づく。チボザニブまたはラパマイシンに対する感受性または耐性の予測のための特異的多重遺伝子バイオマーカーおよび乳癌予後決定のための特異的多重遺伝子バイオマーカー(これらのバイオマーカーの全てを本明細書中に開示の方法を使用して同定した)も開示する。

Description

関連出願への相互参照
この出願は、2011年12月22日に出願された米国仮出願第61/579,530号(この完全な内容は、参考として本明細書に援用される)の利益およびそれに対する優先権を主張する。
発明の分野
本発明の分野は、分子生物学、遺伝学、腫瘍学、バイオインフォマティクス、および診断試験である。
背景
ほとんどの抗癌剤は、患者によって有効であったり、有効でなかったりする。これは腫瘍間の遺伝的変異に起因し、同一患者内の腫瘍間でさえも認められる。患者の応答の変動は、標的治療法に関して特に顕著である。したがって、どの患者がどの薬物から恩恵を受けるかを決定するのに適切な試験を使用せずに標的療法の最大の能力を発揮することはできない。国立衛生研究所(NIH)によれば、用語「バイオマーカー」は、「通常の生物学的過程、病理学的過程、または治療的介入に対する薬理学的応答の指標として客観的に測定され評価される特性」と定義されている。
バイオマーカーの発見に基づいた改良された診断の開発は、所与の薬物に臨床反応を示す可能性が最も高い患者を予め同定することによって新規の医薬品開発を促進する可能性がある。これは、臨床試験の規模、期間、および費用を有意に減少させるであろう。ゲノミクス、プロテオミクス、および分子イメージングなどのテクノロジーにより、現在、特異的遺伝子変異、特定の遺伝子の発現レベル、および他の分子バイオマーカーを迅速で高感度の信頼できる検出が可能である。腫瘍の分子キャラクタリゼーションのための種々のテクノロジーが利用可能であるにもかかわらず、わずかな癌バイオマーカーしか発見されていないので、癌バイオマーカーの臨床的利用は依然としてほとんど実現されていない。例えば、最近の総説は以下のように記述されている:
癌の診断および処置を改良するためのバイオマーカーおよびその使用が早急に開発されることが非常に必要とされている(Cho,2007,Molecular Cancer 6:25)。
癌バイオマーカーに関する別の最近の総説には、以下のコメントが含まれている:
癌バイオマーカーを発見することが課題である。分子標的剤を使用していくつかの腫瘍型(慢性骨髄性白血病、消化管間質腫瘍、肺癌、および多形性膠芽細胞腫など)の分子的に定義されたサブセットのターゲティングが成功しているにもかかわらず、患者において標的剤が評価されるための効率的なストラテジーを欠くことにより、より広範な状況でかかる成功を収めるには大きな制限がある。問題は、主に、これらの刺激的な新薬を評価するための臨床試験用の分子的に定義された癌を有する患者を選択できないことにある。その解決には、特定の薬剤から恩恵を受ける可能性が最も高い患者を確信を持って同定するバイオマーカーが必要である(Sawyers,2008,Nature 452:548−552,at 548)。
上記などのコメントは、特に腫瘍学分野において臨床的に有用な予測バイオマーカーの発見が必要であるとの認識を例示している。
どの患者が所与の薬物または治療法を使用した処置に適切な候補であるのかを同定するための多重遺伝子バイオマーカーの同定方法が必要であると十分に認識されている。これは、標的癌治療に関して特に当てはまる。
Cho、Molecular Cancer(2007)6:25 Sawyers、Nature(2008)452:548−552
概要
遺伝子発現プロファイリングテクノロジー、専売のバイオインフォマティクスツール、および応用統計学を使用して、本発明者らは、哺乳動物ゲノムを、その群内転写物レベルが種々のマイクロアレイデータセットにわたって協調的に調節されるか(すなわち、強く相関する)、「コヒーレントな」51種の非重複性の機能的に関連した遺伝子群によって有用に代表することができることを発見した。本発明者らは、これらの遺伝子群を転写クラスター1〜51(TC1〜TC51)と命名した。この発見に基づいて、本発明者らは、(a)目的の抗癌薬に対する感受性または耐性についての多重遺伝子予測バイオマーカー;または(b)多重遺伝子癌予後徴候バイオマーカーを迅速に同定するための広範に適用可能な方法を発見した。本発明者らは、かかる多重遺伝子バイオマーカーを予測遺伝子セットまたはPGSと呼ぶ。
PGSは、1つの転写クラスターまたは複数の転写クラスターに基づき得る。いくつかの実施形態では、PGSは、その全体のうちの1つ以上の転写クラスターに基づく。他の実施形態では、PGSは、単一の転写クラスター中の遺伝子のサブセットまたは複数の転写クラスターのサブセットに基づく。任意の所与の転写クラスター由来の遺伝子のサブセットは、このサブセットが採用された全転写クラスターを代表する。なぜなら、その転写クラスター内の遺伝子の発現がコヒーレントであるからである。したがって、転写クラスター内の遺伝子のサブセットを使用する場合、このサブセットは転写クラスター由来の遺伝子の代表的なサブセットである。
癌性組織を特定の抗癌薬または薬物クラスに対して感受性または耐性に分類するための予測遺伝子セット(「PGS」)を同定するための方法を本明細書中に提供する。本方法は、(a)(i)抗癌薬に対して感受性と同定された癌性組織集団に由来する組織サンプルのセット、および(ii)抗癌薬に対して耐性と同定された癌性組織集団に由来する組織サンプルのセットにおける表1中の転写クラスターに由来する代表的な数の遺伝子(10、15、20、または20を超える遺伝子など)の発現レベルを測定する工程;および(b)前記感受性集団に由来する組織サンプルのセット中の代表的な数の遺伝子の発現レベルと前記耐性集団に由来する組織サンプルのセット中の代表的な数の遺伝子の発現レベルとの間に統計的有意差が存在するかどうかを決定する工程を含む。前記感受性集団中のその遺伝子発現レベルが前記耐性集団中のその遺伝子発現レベルと有意に異なる代表的な数の遺伝子が、サンプルを抗癌薬に対して感受性または耐性に分類するためのPGSである。スチューデントt検定または遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)を、前記感受性集団に由来する組織サンプルのセット中の代表的な数の遺伝子の発現レベルと前記耐性集団に由来する組織サンプルのセット中の代表的な数の遺伝子の発現レベルとの間に統計的有意差が存在するかどうかを決定するために使用することができる。いくつかの実施形態では、工程(a)および(b)を、本明細書中に開示の51の各転写クラスターについて行う。組織サンプルは、腫瘍サンプルまたは血液サンプルであり得る。
癌性組織を特定の抗癌薬または薬物クラスに対して感受性または耐性に分類するためのPGSを同定するための別の方法を本明細書中に提供する。本方法は、(a)(i)抗癌薬に対して感受性と同定された癌性組織集団に由来する組織サンプルのセット、および(ii)抗癌薬に対して耐性と同定された癌性組織集団に由来する組織サンプルのセット中の51の各転写クラスターを代表する図6中の10遺伝子の発現レベルを測定すること;および(b)51の各転写クラスターについて、前記感受性集団に由来する組織サンプルのセット中のクラスターを代表する図6中の10遺伝子の発現レベルと前記耐性集団に由来する組織サンプルのセット中のクラスターを代表する図6中の10遺伝子の発現レベルとの間に統計的有意差が存在するかどうか決定することを含む。いくつかの実施形態では、図6中のクラスター由来の10遺伝子によって代表される転写クラスターおよび耐性集団における遺伝子発現レベルと有意に異なる感受性集団における遺伝子発現レベルの表示は、サンプルを抗癌薬に対して感受性または耐性に分類するためのPGSである。他の実施形態では、PGSは複数の転写クラスターに基づく。組織サンプルは腫瘍サンプルまたは血液サンプルであり得る。
癌患者を予後良好または予後不良に分類するためのPGSを同定するための方法を本明細書中に提供する。本方法は、(a)(i)前記予後良好と同定された癌患者集団に由来する組織サンプルのセット、および(ii)前記予後不良と同定された癌患者集団に由来する組織サンプルのセットにおける表1中の転写クラスターに由来する代表的な数の遺伝子(10、15、20、または20を超える遺伝子など)の発現レベルを測定する工程;および(b)前記予後良好集団に由来する組織サンプルのセット中の代表的な数の遺伝子の発現レベルと前記予後不良集団に由来する組織サンプルのセット中の代表的な数の遺伝子の発現レベルとの間に統計的有意差が存在するかどうかを決定する工程を含む。前記予後良好集団中のその遺伝子発現レベルが前記予後不良集団中のその遺伝子発現レベルと有意に異なる代表的な数の遺伝子は、患者を予後良好または予後不良に分類するためのPGSである。スチューデントt検定または遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)を、前記予後良好集団に由来する組織サンプルのセット中の代表的な数の遺伝子の発現レベルと前記予後不良集団に由来する組織サンプルのセット中の代表的な数の遺伝子の発現レベルとの間に統計的有意差が存在するかどうかを決定するために使用することができる。いくつかの実施形態では、工程(a)および(b)を、本明細書中に開示の51の各転写クラスターについて行う。組織サンプルは腫瘍サンプルまたは血液サンプルであり得る。
癌患者を予後良好または予後不良に分類するためのPGSを同定するための別の方法を本明細書中に提供する。本方法は、(a)(i)前記予後良好と同定された癌患者集団に由来する組織サンプルのセット、および(ii)前記予後不良と同定された癌患者集団に由来する組織サンプルのセット中の51の各転写クラスターを代表する図6中の10遺伝子の発現レベルを測定すること;および(b)51の各転写クラスターについて、前記予後良好集団に由来する組織サンプルのセット中のクラスターを代表する図6中の10遺伝子の発現レベルと前記予後不良集団に由来する組織サンプルのセット中のクラスターを代表する図6中の10遺伝子の発現レベルとの間に統計的有意差が存在するかどうか決定することを含む。いくつかの実施形態では、前記予後良好集団中のその遺伝子発現レベルが前記予後不良集団中のその遺伝子発現レベルと有意に異なる図6中のクラスター由来の10遺伝子によって代表される転写クラスターは、患者を予後良好または予後不良に分類するためのPGSである。他の実施形態では、PGSは複数の転写クラスターに基づく。組織サンプルは、腫瘍サンプルまたは血液サンプルであり得る。
ヒト腫瘍を抗癌薬チボザニブでの処置に対して感受性または耐性である可能性が高いと同定する方法を本明細書中に提供する。本方法は、(a)腫瘍由来のサンプル中で、TC50由来の遺伝子のうちの少なくとも10遺伝子を含むPGS中の各遺伝子の相対発現レベルを測定する工程;および(b)以下のアルゴリズム:
(式中、E1、E2、…EnはPGS中のn遺伝子の発現値であり、nはPGS中の遺伝子数である)に従ってPGSスコアを計算する工程であって、規定された閾値未満のPGSスコアは前記腫瘍がチボザニブに対して感受性である可能性が高いことを示し、前記規定された閾値を超えるPGSスコアは前記腫瘍がチボザニブに対して耐性である可能性が高いことを示す、計算する工程を含む。1つの実施形態では、PGSは、TC50の10遺伝子サブセットを含む。例示的なTC50由来の10遺伝子サブセットは、MRC1、ALOX5AP、TM6SF1、CTSB、FCGR2B、TBXAS1、MS4A4A、MSR1、NCKAP1L、およびFLI1である。別の例示的なTC50由来の10遺伝子サブセットは、LAPTM5、FCER1G、CD48、BIN2、C1QB、NCF2、CD14、TLR2、CCL5、およびCD163である。
いくつかの実施形態では、ヒト腫瘍をチボザニブでの処置に対して感受性または耐性である可能性が高いと同定する方法は、閾値決定解析を行い、それによって規定された閾値が生成される工程を含む。閾値決定解析は、受信者動作特性曲線解析を含むことができる。PGS中の各遺伝子の相対遺伝子発現レベルを、DNAマイクロアレイ解析、qRT−PCR解析、qNPA解析、分子バーコードベースのアッセイ、またはマルチプレックスビーズベースのアッセイによって決定する(例えば、測定する)ことができる。
ヒト腫瘍をラパマイシンでの処置に対して感受性または耐性である可能性が高いと同定する方法を本明細書中に提供する。本方法は、(a)前記腫瘍由来のサンプル中で、(i)TC33由来の少なくとも10遺伝子;および(ii)TC26由来の少なくとも10遺伝子を含むPGS中の各遺伝子の相対発現レベルを測定する工程;および(b)以下のアルゴリズム:
(式中、E1、E2、…Emは、感受性腫瘍で上方制御されるTC33由来のm遺伝子(例えば、mは少なくとも10遺伝子である)の発現値であり、F1、F2、…Fnは、耐性腫瘍で上方制御されるTC26由来のn遺伝子(例えば、nは少なくとも10遺伝子である)の発現値である)に従ってPGSスコアを計算する工程を含む。規定された閾値を超えるPGSスコアは前記腫瘍がラパマイシンに対して感受性である可能性が高いことを示し、前記規定された閾値未満のPGSスコアは前記腫瘍がラパマイシンに対して耐性である可能性が高いことを示す。例示的なPGSは以下の遺伝子を含む:FRY、HLF、HMBS、RCAN2、HMGA1、ITPR1、ENPP2、SLC16A4、ANK2、PIK3R1、DTL、CTPS、GINS2、GMNN、MCM5、PRIM1、SNRPA、TK1、UCK2、およびPCNA。
いくつかの実施形態では、ヒト腫瘍をラパマイシンでの処置に対して感受性または耐性である可能性が高いと同定する方法は、閾値決定解析を行い、それによって規定された閾値が生成される工程を含む。閾値決定解析は、受信者動作特性曲線解析を含むことができる。PGS中の各遺伝子の相対遺伝子発現レベルを、DNAマイクロアレイ解析、qRT−PCR解析、qNPA解析、分子バーコードベースのアッセイ、またはマルチプレックスビーズベースのアッセイによって決定する(例えば、測定する)ことができる。
ヒト乳癌患者を予後良好または予後不良に分類する方法を本明細書中に提供する。本方法は、(a)前記患者から得た腫瘍由来のサンプル中で、(i)TC35由来の少なくとも10遺伝子;および(ii)TC26由来の少なくとも10遺伝子を含むPGS中の各遺伝子の相対発現レベルを測定する工程;および(b)以下のアルゴリズム:
(式中、E1、E2、…Emは、予後良好患者で上方制御されるTC35由来のm遺伝子(例えば、mは少なくとも10遺伝子である)の発現値であり、F1、F2、…Fnは、予後不良患者で上方制御されるTC26由来のn遺伝子(例えば、nは少なくとも10遺伝子である)の発現値である)に従ってPGSスコアを計算する工程を含む。規定された閾値を超えるPGSスコアは前記患者が予後良好を有することを示し、前記規定された閾値未満のPGSスコアは前記患者が予後不良を有することを示す。例示的なPGSは以下の遺伝子を含む:RPL29、RPL36A、RPS8、RPS9、EEF1B2、RPS10P5、RPL13A、RPL36、RPL18、RPL14、DTL、CTPS、GINS2、GMNN、MCM5、PRIM1、SNRPA、TK1、UCK2、およびPCNA。
いくつかの実施形態では、ヒト乳癌患者を予後良好または予後不良に分類する方法は、閾値決定解析を行い、それによって規定された閾値が生成される工程を含む。閾値決定解析は、受信者動作特性曲線解析を含むことができる。PGS中の各遺伝子の相対遺伝子発現レベルを、DNAマイクロアレイ解析、qRT−PCR解析、qNPA解析、分子バーコードベースのアッセイ、またはマルチプレックスビーズベースのアッセイによって決定する(例えば、測定する)ことができる。
表1中の各転写クラスター由来の少なくとも10遺伝子に対するプローブを含むプローブセットであって、但し、前記プローブセットが全ゲノムマイクロアレイチップではないことを条件とする、プローブセットを本明細書中に提供する。適切なプローブセットの例には、マイクロアレイプローブセット、PCRプライマーのセット、qNPAプローブセット、分子バーコードを含むプローブセット(例えば、NanoString(登録商標)Technology)、またはプローブがビーズに貼り付けられたプローブセット(例えば、QuantiGene(登録商標)Plex assay system)が含まれる。1つの実施形態では、プローブセットは、図6に列挙した各510遺伝子に対するプローブを含む。別の実施形態では、プローブセットは、図6に列挙した各510遺伝子に対するプローブおよびコントロールプローブからなる。別の実施形態では、プローブセットは、表1中の各転写クラスター由来の10遺伝子に対するプローブを含み、ここで、プローブセットは、図6に示す各転写クラスター由来の少なくとも5つの遺伝子および表1中の各転写クラスターから無作為に選択されたそれぞれ対応する転写クラスター由来の5つまでの遺伝子に対するプローブ、ならびに、任意選択的に、コントロールプローブを含む。一定の実施形態では、プローブセットは、約510〜1,020プローブ、510〜1,530プローブ、510〜2,040プローブ、510〜2,550プローブ、または510〜5,100プローブを含む。
本発明のこれらおよび他の態様ならびに利点は、以下の図面、詳細な説明、および特許請求の範囲を考慮して明らかとなるであろう。
図1は、実施例2で同定されたチボザニブPGSの予測力を証明している試験である実施例3由来のデータをまとめたウォーターフォールプロットである。各バーは、25の腫瘍集団中の1つの腫瘍を示す。腫瘍を、PGSスコアによって配置する(低から高)。各腫瘍のPGSスコアを、バーの高さによって示す。実際の応答体(チボザニブ感受性)を黒色バーで示し、実際の非応答体(チボザニブ耐性)を灰色バーで識別する。予測応答体は、1.62であると計算されたPGSスコアの最適閾値(水平の点線で示す)未満の応答体である。予測非応答体は、閾値を超える応答体である。 図2は、図1中のデータに基づいた受信者動作特性(ROC)曲線である。一般に、ROC曲線を使用して最適閾値を決定する。図2中のROC曲線は、この実験における最適閾値PGSスコアが1.62であることを示していた。この閾値を適用する場合、試験により25腫瘍のうちの22腫瘍が正確に分類され、偽陽性率25%および偽陰性率0%であった。 図3は、実施例4で同定されたラパマイシンPGSの予測力を証明している試験である実施例5由来のデータをまとめたウォーターフォールプロットである。各バーは、66の腫瘍集団中の1つの腫瘍を示す。腫瘍を、PGSスコアによって配置する(低から高)。各腫瘍のPGSスコアを、バーの高さによって示す。実際の応答体を黒色バーで示し、実際の非応答体を灰色バーで識別する。予測応答体は、0.011であると計算されたPGSスコアの最適閾値(水平の点線で示す)未満の応答体である。予測非応答体は、閾値を超える応答体である。 図4は、図3中のデータに基づいた受信者動作特性(ROC)曲線である。図4中のROC曲線は、この実験における最適閾値PGSスコアが−0.011であることを示した。この閾値を適用する場合、試験により66腫瘍のうちの45腫瘍が正確に分類され、偽陽性率16%および偽陰性率41%であった。 図5は、実施例7に記載のようにWang乳癌データセット中に示した286人の乳癌患者集団を分類するための実施例6中のPGSの使用によって作成されたカプラン・マイヤー生存曲線の比較である。このプロットは、時間(月数)に対する患者の生存率を示す。上の曲線は、患者の実際の生存が比較的長かった高PGSスコア(閾値を超えるスコア)を有する患者を示す。下の曲線は、患者の実際の生存が比較的短かった低PGSスコア(閾値未満のスコア)を有する患者を示す。コックス比例ハザード回帰モデル分析は、TC35およびTC26から作成したPGSが有効な予後徴候バイオマーカー(p値4.5e−4およびハザード比0.505)であることを示した。ハッシュマークは打ち切り患者を示す。 図6は、表1中の51の各転写クラスターを10遺伝子のサブセットで示す510種のヒト遺伝子を列挙した表である。 図6は、表1中の51の各転写クラスターを10遺伝子のサブセットで示す510種のヒト遺伝子を列挙した表である。
詳細な説明
定義
本明細書中で使用する場合、「コヒーレンス」は、遺伝子セットに適用する場合、セットのメンバーの発現レベルが所与の組織型(例えば、腫瘍組織)内で協力して増加または減少する統計的に有意な傾向を示すことを意味する。理論に拘束されることを意図しないが、本発明者らは、コヒーレンスはコヒーレント遺伝子が1つ以上の生物学的機能に共通して関与することを示す可能性が高いことに留意する。
本明細書中で使用する場合、「最適閾値PGSスコア」は、分類子によって偽陰性細胞のコストと偽陽性細胞のコストとの間の最も望ましいバランスが得られる閾値PGSスコアを意味する。
本明細書中で使用する場合、「予測遺伝子セット」または「PGS」は、所与の表現型(例えば、特定の抗癌剤に対する感受性または耐性)に関して、所与の組織サンプル型におけるそのPGSスコアが所与の組織型における所与の表現型と有意に相関する10以上の遺伝子のセットを意味する。
本明細書中で使用する場合、「予後良好」は、患者が最初の癌診断から5年以内に腫瘍の遠隔転移が無いと予想されることを意味する。
本明細書中で使用する場合、「予後不良」は、患者が最初の癌診断から5年以内に腫瘍の遠隔転移を有すると予想されることを意味する。
本明細書中で使用する場合、「プローブ」は、特定の遺伝子の発現の測定のために使用することができる分子を意味する。例示的なプローブには、PCRプライマーおよび遺伝子特異的DNAオリゴヌクレオチドプローブ(マイクロアレイ基板に貼り付けたマイクロアレイプローブ、定量的ヌクレアーゼ保護アッセイプローブ、分子バーコードに連結させたプローブ、およびビーズに貼り付けたプローブが含まれるなど)が含まれる。
本明細書中で使用する場合、「受信者動作特性」(ROC)曲線は、二項分類子システムのための偽陽性率(感受性)対真陽性率(特異度)のグラフィカルプロットを意味する。ROC曲線の構築では、以下の定義を適用する:
偽陰性率:FNR=1−TPR
真陽性率:TPR=真陽性/(真陽性+偽陰性)
偽陽性率:FPR=偽陽性/(偽陽性+真陰性) 。
本明細書中で使用する場合、処置に「応答」または「応答すること」は、処置した腫瘍に関して、腫瘍が、(a)成長の遅延、(b)成長の休止、または(c)後退を示すことを意味する。治療法に対して応答する腫瘍は「応答体」であり、処置に対して「感受性を示す」。治療法に対して応答しない腫瘍は「非応答体」であり、処置に対して「耐性を示す」。
本明細書中で使用する場合、「閾値決定解析」は、所与の腫瘍型(例えば、ヒト腎細胞癌)を示すデータセットの解析であって、その特定の腫瘍型についての閾値PGSスコア(例えば、最適閾値PGSスコア)を決定するための解析を意味する。閾値決定解析の文脈では、所与の腫瘍型を示すデータセットには、(a)実際の応答データ(応答または非応答)、および(b)腫瘍を保有するマウスまたはヒトの群由来の各腫瘍のPGSスコアが含まれる。
転写クラスター
哺乳動物で発現されるおよそ25,000遺伝子が生物の発生および機能を実施するための複雑な制御を受けるということが多数の生物学者における最新の概念である。遺伝子群は、協調系(DNA複製、タンパク質合成、神経発生など)で共に機能する。現在、転写レベルでゲノム全体にわたる遺伝子の協調された発現を研究および特徴付けるための包括的方法論は存在しない。
本発明者らは、発現マイクロアレイデータに基づいた遺伝子の異なる機能群または経路への分類または「瓶」に着手した。本発明者らは、協調的に制御される遺伝子セットを同定するための段階的統計方法論を開発した。第一段階は、8つの各ヒトデータセット中のあらゆる他の遺伝子に関するあらゆる遺伝子の発現レベルについての相関係数を計算することであった。これにより、市販のマイクロアレイチップ(Affymetrix U133A)由来のデータに基づいた相関スコアの13,000×13,000行列が得られた。次いで、相関スコアの13,000×13,000行列にわたってK平均クラスタリングを行った。マイクロアレイチップ上の13,000遺伝子がヒトゲノム全体にわたって分散されており、且つこれらの13,000遺伝子が一般に最も重要なヒト遺伝子を含むと見なされるので、13,000遺伝子チップを「全ゲノム」マイクロアレイと見なす。
歴史的に、多くの研究者が一定の遺伝子の発現レベルと目的の生物学的状態または表現型との間の相関を見出している。しかし、かかる相関の有用性は非常に制限されていた。これは、相関が、典型的には、データセットにわたって維持されていないためである(例えば、ヒト乳房腫瘍対マウス乳房腫瘍;ヒト乳房腫瘍対ヒト肺腫瘍;または1つの遺伝子発現テクノロジープラットフォーム(Affymetrix)対別の遺伝子発現テクノロジープラットフォーム(Agilent))。
本発明者らは、複数の多様なデータセットにわたって認められる遺伝子発現相関の同定によってこの落とし穴を回避した。複数の独立したデータセットにわたってK平均クラスター分析(Lloydら,1982,IEEE Transactions on Information Theory 28:129−137)を全13,000ヒト遺伝子の測定したRNA発現値に適用することにより、本発明者らは、転写ヒト遺伝子領域「トランスクリプトーム」を、転写の流れに関してその発現レベルが共に移動する(増加または減少する)100の固有の遺伝子の非重複セットに分類した。複数のデータセットにわたって認められた遺伝子転写レベルにおける調和された変動は、本発明者らが「コヒーレンス」と呼ぶ経験的現象である。
K平均クラスター分析による100の非重複遺伝子群の同定後、本発明者らは、最適化過程を行った。これは以下の工程を含んでいた:(a)各100群内の外れ値(個別の遺伝子)が排除されるコヒーレンス閾値の適用;(b)AffymetrixシステムとAgilentシステムとの間で試験した場合にその発現値が過剰に変動した個別の遺伝子の同定および除去;および(c)工程(a)および(b)後の任意のクラスター中の最小数の遺伝子の閾値の適用。この最適化過程の最終結果が、51セットの定義した高コヒーレントな非重複の遺伝子リストであった。このリストを本発明者らは「転写クラスター」と呼ぶ。群あたり10遺伝子の少なさで代表することができる51群の遺伝子に集約して何万もの遺伝子を含む生物システムの複雑さを数学的に軽減することにより、この51セットの転写クラスターが遺伝子発現データを解釈および利用するための強力なツールであることが証明された。各転写クラスター中の遺伝子を表1(以下)に列挙し、ヒトゲノム機構(HUGO)シンボルおよびEntrez識別子の両方によって同定する。
転写クラスターを数理解析によって同定したが、本発明者らは、転写クラスターが生物学的意義を有することを証明した。本発明者らは、転写クラスターが広範な種々の基本的な生物学的構造または機能が高度に富化されていることを見出した。転写クラスターと基本的な生物学的構造または機能との間の関連の例を、以下の表2に列挙する。
いくつかの転写クラスターについて、関連する生物学(構造および/または機能)は存在すると推定されるが、依然として同定されていない。しかし、本明細書中に開示の方法(例えば、癌性組織を抗癌薬に対する感受性または耐性に分類するためのPGSの同定)の実施には任意の転写クラスターに関連するいかなる生物学的な構造または機能の知識も必要としないことに留意することが重要である。本明細書中に記載の方法の利用は、以下の2つの相関型に専ら依存する:(1)各転写クラスター内の転写レベル間の相関;および(2)転写クラスターの平均発現スコアと表現型との間の相関(例えば、薬物感受性対薬物耐性または予後良好対予後不良)。多数の異なる基本的な生物学的構造および機能が開示の転写クラスターに関連するか代表されるという本発明者らの発見は、過度の実験を行うこと無く当業者が多数および種々の表現型形質を1つ以上の転写クラスターと容易に相関させることができることの強い証明である。
一旦転写クラスターが目的の表現型(特定の薬物に対する腫瘍の感受性または耐性など)と関連付けられると、その転写クラスター(またはその転写クラスターのサブセット)を、その表現型のための多重遺伝子バイオマーカーとして使用することができる。換言すれば、転写クラスターまたはそのサブセットは、その転写クラスターに関連する表現型のPGSである。任意の所与の転写クラスターを、1つを超える表現型に関連付けることができる。
1つの表現型を、1つを超える転写クラスターに関連付けることができる。1つを超える転写クラスターまたはそのサブセットは、これらの転写クラスターに関連する表現型のPGSであり得る。
一定の実施形態では、表1由来の1つ以上の転写クラスターを、任意選択的に解析から排除することができる。例えば、TC1、TC2、TC3、TC4、TC5、TC6、TC7、TC8、TC9、TC10、TC11、TC12、TC13、TC14、TC15、TC16、TC17、TC18、TC19、TC20、TC21、TC22、TC23、TC24、TC25、TC26、TC27、TC28、TC29、TC30、TC31、TC32、TC33、TC34、TC35、TC36、TC37、TC38、TC39、TC40、TC41、TC42、TC43、TC44、TC45、TC46、TC47、TC48、TC49、TC50、またはTC51を、解析から排除することができる。
本明細書中に開示の方法を実施するために、当業者は、(a)目的の表現型について陽性であることが示されている集団、および(b)目的の表現型について陰性であることが示されている集団由来の遺伝子発現データ(例えば、従来のマイクロアレイデータまたは定量的PCRデータ)(集合的に、「応答データ」)を必要とする。応答データを作成するために使用することができる集団の例には、ヒト患者または動物モデル(例えば、癌マウスモデル)の集団を代表する組織サンプル(腫瘍サンプルまたは血液サンプル)の集団が含まれる。組織サンプル中の遺伝子発現または転写産物量の測定のための従来の方法、材料、および装置ほどしか使用せずに、当業者は、必要な応答データを容易に得ることができる。適切な方法、材料、および装置は、周知であり、市販されている。一旦応答データが入手されると、本明細書中に記載の方法を、上の表1に記載の転写クラスター中の遺伝子リストの使用および本明細書中に記載の数学的計算によって行うことができる。
以下の実施例2にさらに詳細に記載するように、本発明者らは、チボザニブ感受性であることが示された腫瘍サンプル集団およびチボザニブ耐性であることが示された腫瘍サンプル集団に由来する組織サンプル中の51種全ての転写クラスター由来の遺伝子のサブセットの転写レベルを測定した。次に、本発明者らは、各集団の各個人における各クラスターのクラスタースコアを計算した。次いで、各転写クラスターに関して、本発明者らは、スチューデントt検定を使用してチボザニブ感受性集団のクラスタースコアがチボザニブ耐性集団のクラスタースコアと有意に異なるかどうかを計算した。本発明者らは、TC50に関して、チボザニブ感受性集団のクラスタースコアとチボザニブ−耐性集団のクラスタースコアとの間に統計的有意差が存在することを見出した。
本明細書中に開示の転写クラスターはゲノムワイド分析に起因し、この転写クラスターは癌生物学に特有ではない非常に多岐にわたる構造および機能を示す。チボザニブに対する応答の予測に有用な転写クラスター(TC50)は、一定の腫瘍に浸潤する特定の造血細胞クラスによって発現される遺伝子が豊富である。造血細胞は、多数の生物学的過程に重要である。原理上は、この造血細胞クラスによって媒介される任意の表現型を、TC50発現についての試験によって同定することができる。
表現型で定義された集団
集団。本明細書中に開示の方法を、(a)目的の表現型形質(例えば、特定の薬物に対する応答または癌予後)に陽性を示すヒト患者、動物モデル、または腫瘍の集団由来の遺伝子発現データ(転写産物量データ)に、(b)目的の表現型形質(特定の抗癌剤に対する感受性および/または癌処置における予後全体など)に関して異なることが示された集団由来の相対遺伝子発現データまたは相対転写産物量データと共に基づいて使用することができる。好ましくは、目的の表現型形質が異なる分類された集団は、その他の点では一般に類似している。例えば、薬物感受性集団が特定のマウス系統の群である場合、耐性集団は同一のマウス系統の群であるべきである。別の例では、感受性集団がヒト腎臓腫瘍生検サンプルのセットである場合、耐性集団はヒト腎臓腫瘍生検サンプルのセットであるべきである。
表現型の定義。表現型分類に適切な基準は、目的の表現型に依存するであろう。例えば、目的の表現型が特定の抗腫瘍剤での処置に対する腫瘍の感受性および耐性である場合、腫瘍を、1つ以上のパラメーター(単一のエンドポイントで評価した腫瘍成長阻害(TGI)、成長曲線に関して経時的に評価したTGI、または腫瘍組織学など)に基づいて分類することができる。所与のパラメーターについて、陽性の表現型と陰性の表現型とを区別するために閾値またはカットオフ値を設定することができる。特定のTGI率を、時折、閾値またはカットオフとして使用する。例えば、これは、ヒト臨床試験においてTGIを測定するための臨床的に定義したRECIST基準(固形癌における応答評価基準)であり得る。別の例では、腫瘍成長曲線の屈曲点を使用する。別の例では、組織学的評価における所与のスコアを使用する。表現型定義に適切なパラメーターおよび適切な閾値の選択においてかなりの自由度がある。抗腫瘍薬応答分類のために、適切な表現型定義は、関与する腫瘍型および特定の薬物が含まれる要因に依存するであろう。表現型定義に適切なパラメーターおよび適切な閾値の選択は、当業者の範囲内である。
遺伝子発現データ
組織サンプル。ヒト患者中の腫瘍またはマウスモデル中の腫瘍由来の組織サンプルを、各転写クラスターについての個別の平均発現スコアおよび各転写クラスターについての集団平均発現スコアを決定することができるようにRNAの供給源として使用することができる。腫瘍の例は、癌腫、肉腫、神経膠腫、およびリンパ腫である。組織サンプルを、従来の腫瘍生検装置および手順の使用によって得ることができる。内視鏡下生検、切除生検、切開生検、細針生検、パンチ生検、薄片生検、および皮膚生検は、発明の実施で用いる腫瘍サンプルを得るための当業者によって使用することができる認識された医学的手順の例である。腫瘍組織サンプルは、個別の遺伝子発現レベルの測定に十分なRNAを提供するのに十分に巨大であるべきである。
腫瘍組織サンプルは、遺伝子発現または転写産物量を定量的に分析可能な任意の形態であり得る。いくつかの実施形態では、RNAを、定量分析前に組織サンプルから単離する。しかし、いくつかのRNA分析方法は、RNA抽出を必要としない(例えば、High Throughput Genomics,Inc.(Tucson,AZ)から販売されているqNPA(商標)テクノロジー)。したがって、組織サンプルは、新鮮であり得るか、適切な低温保存技術によって保存することができるか、非低温保存技術によって保存することができる。本発明で使用される組織サンプルは、しばしば、ホルマリン中で固定し、次いでパラフィン包埋される臨床生検標本であり得る。この形態のサンプルは、一般に、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織として公知である。本発明での使用に適切な組織調製および組織保存の技術は、当業者に周知である。
所与の転写クラスターに由来する代表的な数の遺伝子の発現レベルは、所与の組織サンプル中のその転写クラスターの個別の平均発現スコアを計算するために使用される入力値である。各組織サンプルは、集団(例えば、感受性集団または耐性集団)のメンバーである。次いで、所与の集団中の全個体についての個別の平均発現スコアを使用して、所与の集団内の所与の転写クラスターについての集団平均発現スコアを計算する。それにより、各組織サンプルについて、転写クラスター内の個別の遺伝子の発現レベルを決定する(すなわち、測定する)ことが必要である。遺伝子発現レベル(転写産物量)を、任意の適切な方法によって決定することができる。例示的な個別の遺伝子発現レベルの測定方法には、DNAマイクロアレイ解析、qRT−PCR、qNPA(商標)、NanoString(登録商標)テクノロジー、およびQuantiGene(登録商標)Plexアッセイシステムが含まれ、これらの各々を以下で考察する。
RNA単離。DNAマイクロアレイ解析およびqRT−PCRは、一般に、組織サンプルからのRNA単離を含む。組織サンプルからの真核生物mRNA(すなわち、ポリ(a)RNA)の迅速且つ効率的な抽出方法は十分に確立されており、当業者に公知である。例えば、Ausubelら,1997,Current Protocols of Molecular Biology,John Wiley & Sonsを参照のこと。組織サンプルは、新鮮であるか、凍結されているか、固定パラフィン包埋(FFPE)臨床研究腫瘍標本であり得る。一般に、新鮮または凍結した組織サンプルから単離したRNAは、FFPEサンプル由来のRNAよりあまり断片化していない傾向がある。しかし、腫瘍材料のFFPEサンプルがより容易に利用可能であり、FFPEサンプルは、本発明の方法で用いるRNAの適切な供給源である。RT−PCRによる遺伝子発現プロファイリングのためのRNAの供給源としてのFFPEサンプルの考察については、例えば、Clark−Langoneら,2007,BMC Genomics 8:279を参照のこと。De Andresら,1995,Biotechniques 18:42044;およびBakerら,米国特許出願公開第2005/0095634号も参照のこと。RNAの抽出および調製のための販売者による説明書を有する市販のキットの使用は、広く知られており、且つ一般的である。種々のRNA単離製品および完全キットの販売者には、Qiagen(Valencia,CA)、Invitrogen(Carlsbad,CA)、Ambion(Austin,TX)、およびExiqon(Woburn,MA)が含まれる。
一般に、RNA単離は、組織/細胞破壊から始める。組織/細胞破壊中、RNアーゼによるRNA分解を最小にすることが望ましい。RNA単離過程中のRNアーゼ活性を制限する1つのアプローチは、細胞を破壊するとすぐに変性剤を細胞内容物と接触させることを確実にすることである。別の一般的な方法は、RNA単離過程中に1つ以上のプロテアーゼを含めることである。任意選択的に、新鮮な組織サンプルを、サンプル回収後直ちに室温でRNA安定化溶液中に浸漬する。安定化溶液は、迅速に細胞に浸透し、次の単離のための4℃での保存のためにRNAを安定化する。1つのかかる安定化溶液は、RNAlater(登録商標)(Ambion,Austin,TX)として市販されている。
いくつかのプロトコールでは、総RNAを、塩化セシウム密度勾配遠心分離によって破壊した腫瘍材料から単離する。一般に、mRNAは、総細胞RNAのおよそ1%〜5%を構成する。一般に、固定化オリゴ(dT)(例えば、オリゴ(dT)セルロース)を使用してリボゾームRNAおよび伝令RNAからmRNAを分離する。単離後に保存する場合、RNAを、無RNアーゼ条件下で保存しなければならない。単離RNAの安定な保存方法は当該分野で公知である。RNAの安定保存のための種々の市販の製品を利用可能である。
マイクロアレイ解析。複数の遺伝子のmRNA発現レベルを、従来のDNAマイクロアレイ発現プロファイリングテクノロジーを使用して測定することができる。DNAマイクロアレイは、個体の表面または基板(ガラス、プラスチック、またはケイ素など)に貼り付けられた一連の特異的DNAセグメントまたはプローブであり、各特異的DNAセグメントはアレイ中の既知の位置を占有する。通常はストリンジェントなハイブリッド形成条件下での標識RNAサンプルとのハイブリッド形成により、アレイ内の各プローブに対応するRNA分子が検出および定量される。非特異的に結合したサンプル材料を除去するためのストリンジェントな洗浄後、マイクロアレイを、共焦点レーザー顕微鏡法または他の適切な検出法によってスキャンする。しばしばDNAチップとして公知の現在の市販のDNAマイクロアレイは、典型的には、数万のプローブを含むので、数万の遺伝子発現を同時に測定することができる。かかるマイクロアレイを、開示の方法の実施時に使用することができる。あるいは、転写クラスターの遺伝子発現を測定するために必要な少数のプローブおよび任意の所望のコントロールまたはスタンダードを含むカスタムチップを使用することができる。
データ正規化を容易にするために、二色マイクロアレイリーダーを使用することができる。二色(2チャンネル)システムでは、サンプルを第1の波長を放射する第1のフルオロフォアで標識する一方で、RNAまたはcDNA標準を異なる波長を放射する第2のフルオロフォアで標識する。例えば、Cy3(570nm)およびCy5(670nm)を、しばしば、二色マイクロアレイシステムで共に使用する。
DNAマイクロアレイテクノロジーは、十分に開発され、市販され、広く使用されている。したがって、本明細書中に開示の方法の実施では、当業者は、マイクロアレイテクノロジーを使用して過度の実験を行うこと無く転写クラスター内の遺伝子の発現レベルを測定することができる。DNAマイクロアレイチップ、試薬(RNAまたはcDNA調製、RNAまたはcDNA標識、ハイブリッド形成、および洗浄液のための試薬など)、装置(マイクロアレイリーダーなど)、およびプロトコールは当該分野で周知であり、種々の販売元から利用可能である。マイクロアレイシステムの販売者にはAgilent Technologies(Santa Clara、CA)およびAffymetrix(Santa Clara,CA)が含まれるが、他のマイクロアレイシステムを使用することができる。
定量的RT−PCR。転写クラスター内の個別の遺伝子を示すmRNAのレベルを、従来の定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)テクノロジーを使用して測定することができる。qRT−PCRの利点には、感度、柔軟性、定量的精度、および密接に関連したmRNAを識別する能力が含まれる。定量的PCRのための組織サンプル処理に関するガイダンスは、種々の供給元(qRT−PCRの市販品の製造者および販売者(例えば、Qiagen(Valencia,CA)およびAmbion(Austin,TX))が含まれる)から利用可能である。qRT−PCRの自動化のための計器システムが利用可能であり、多くの研究所で日常的に使用されている。周知の市販のシステムの例は、Applied Biosystems 7900HT Fast Real−Time PCR System(Applied Biosystems,Foster City,CA)である。
一旦単離mRNAが入手されると、RT−PCRによる遺伝子発現プロファイリングにおける第1の工程は、mRNAテンプレートのcDNAへの逆転写であり、その後に、PCR反応において指数関数的に増殖させる。2つの一般的に使用される逆転写酵素は、トリ(avilo)骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV−RT)およびモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV−RT)である。逆転写反応を、典型的には、特異的プライマー、ランダム六量体、またはオリゴ(dT)プライマーを使用してプライミングする。適切なプライマーは市販されている(例えば、GeneAmp(登録商標)RNA PCRキット(Perkin Elmer,Waltham,MA))。得られたcDNA産物を、その後のポリメラーゼ連鎖反応におけるテンプレートとして使用することができる。
PCR工程を、熱安定性DNA依存性DNAポリメラーゼを使用して行う。PCRシステムで最も一般的に使用されるポリメラーゼは、Thermus aquaticus(Taq)ポリメラーゼである。PCRの選択性は、増幅のためにターゲティングされたDNA領域(すなわち、転写クラスターの遺伝子から逆転写されたcDNA領域)に相補的なプライマーの使用に起因する。したがって、本発明でqRT−PCRを使用する場合、所与の転写クラスター内の各遺伝子に特異的なプライマーは、遺伝子のcDNA配列に基づく。SYBR(登録商標)グリーンまたはTaqMan(登録商標)(Applied Biosystems,Foster City,CA)などの市販のテクノロジーを、販売者の説明書にしたがって使用することができる。伝令RNAレベルを、ハウスキーピング遺伝子(β−アクチンまたはGAPDHなど)のレベルとの比較によってサンプル間のローディングの相違について正規化することができる。mRNA発現レベルを、任意の単一のコントロールサンプル(正常な非腫瘍組織または細胞由来のmRNAなど)と比較して示すことができる。あるいは、mRNA発現レベルを、腫瘍サンプルもしくは腫瘍細胞株のプールまたは市販のコントロールmRNAセット由来のmRNAと比較して示すことができる。
転写クラスター内の遺伝子の発現レベルのPCR解析に適切なプライマーセットを、当業者は過度の実験を行わずにデザインし、合成することができる。あるいは、表1に列挙した転写クラスター内の遺伝子の同一性に基づいて、開示の方法の実施のための完全なPCRプライマーセットを販売元(例えば、Applied Biosystems)から購入することができる。PCRプライマーは、好ましくは、約17〜25ヌクレオチド長である。プライマーを、従来のTm推定アルゴリズムを使用して、特定の融点(Tm)を有するようにデザインすることができる。プライマーデザインおよびTm推定のためのソフトウェアは市販されており(例えば、Primer Express(商標)(Applied Biosystems))、インターネット上でも利用可能である(例えば、Primer3(Massachusetts Institute of Technology))。PCRプライマーデザインの確立された原理の適用により、多数の異なるプライマーを使用して、任意の所与の遺伝子の発現レベルを測定することができる。したがって、開示の方法は、転写クラスター内の任意の所与の遺伝子用の特定のプライマーを使用することに関して制限されない。
定量的ヌクレアーゼ保護アッセイ。RNA抽出工程を行わずに転写クラスター内の遺伝子の発現レベルを決定するための適切な方法の例は、High Throughput Genomics,Inc.(aka “HTG”;Tucson,AZ)から市販されている定量的ヌクレアーゼ保護アッセイ(qNPA(商標))である。qNPA法では、サンプルを96ウェルプレート中で専売のLysis Buffer(HTG)で処理し、総RNAを溶液に放出させる。遺伝子特異的DNAオリゴヌクレオチド(すなわち、所与の転写クラスター内の各遺伝子に特異的)をLysis Buffer溶液に直接添加し、これらはLysis Buffer溶液中に存在するRNAとハイブリッド形成する。DNAオリゴヌクレオチドを過剰に添加して、DNAオリゴヌクレオチドに相補的な全RNA分子がハイブリッド形成されるのを確実にする。ハイブリッド形成工程後、S1ヌクレアーゼを混合物に添加する。S1ヌクレアーゼは、標的RNAの非ハイブリッド部分、全非標的RNA、および過剰なDNAオリゴヌクレオチドを消化する。次いで、S1ヌクレアーゼ酵素を不活性化する。RNA::DNAヘテロ二重鎖を、二重鎖のRNA部分を除去して事前に保護したオリゴヌクレオチドプローブのみが残存するように処理する。残存するDNAオリゴヌクレオチドは、元のRNAサンプルの化学量論的に代表的なライブラリーである。qNPAオリゴヌクレオチドライブラリーを、ArrayPlate Detection System(HTG)を使用して定量することができる。
NanoString(登録商標)nCounter(登録商標)解析。転写クラスター内の遺伝子の発現レベルの決定に適切なテクノロジーの別の例は、分子「バーコード」を有するプローブに基づいた市販のアッセイシステムである(NanoString(登録商標)nCounter(商標)解析システム(NanoString(登録商標)Technologies,Seattle,WA))。このシステムは、単一反応における数百の固有の転写物を検出およびカウントするようにデザインされている。各色分けされたバーコードが、目的の遺伝子(例えば、転写クラスター内の遺伝子)に対応する単一の標的特異的プローブに連結されている。コントロールと混合した場合、プローブは多重「CodeSet」を形成する。NanoString(登録商標)テクノロジーは、溶液中でハイブリッド形成するmRNAあたりおよそ50塩基の2つのプローブを使用する。「レポータープローブ」はシグナルを保有し、「キャプチャープローブ」によってデータ収集のために複合体を固定することが可能である。ハイブリッド形成後、過剰なプローブを除去し、プローブ/標的複合体を、デジタル分析器内に配置されたnCounter(登録商標)カートリッジ内で整列させ、固定する。nCounter(登録商標)解析システムは、自動化サンプルprep station、デジタル分析器、CodeSet(分子バーコード)、ならびに解析の実施に必要な全ての試薬および消耗品を含む統合システムである。
QuantiGene(登録商標)Plexアッセイ。転写クラスター内の遺伝子の発現レベルの決定に適切なテクノロジーの別の例は、QuantiGene(登録商標)Plexアッセイ(Panomics,Fremont,CA)として公知の市販のアッセイシステムである。このテクノロジーは、分岐DNAシグナル増幅をxMAP(多分析物プロファイリング)ビーズと組み合わせることにより、新鮮であるか、凍結されているか、FFPEの組織サンプル、または精製RNA調製物から直接複数のRNA標的を同時定量することが可能である。このテクノロジーのさらなる説明については、例えば、Flagellaら,2006,Anal.Biochem.352:50−60を参照のこと。
本明細書中に開示の方法の実施は、遺伝子発現データの生成のための任意の特定のテクノロジーの使用に制限されない。上記で考察するように、プロトコール、試薬、および装置を含む種々の正確且つ信頼できるシステムが市販されている。本明細書中に記載の方法で用いる遺伝子発現データの生成に適切なシステムの選択および使用は単なる設計変更であり、当業者が過度の実験を行わずに達成することができる。
クラスタースコアおよび集団の間の統計的差異
各組織サンプル中の任意の所与の転写クラスターのクラスタースコアを、以下のアルゴリズム:
(式中、E1、E2、...Enは、各転写クラスターを代表するn遺伝子の各々に関して得た相対発現値である)にしたがって計算することができる。
クラスタースコアを、薬物感受性集団中の各組織サンプルおよび薬物耐性集団中の各メンバー組織サンプル中の51の各転写クラスターについて計算することができる。
統計的有意性を、当該分野で周知の種々の方法(例えば、t検定またはコルモゴロフ・スミルノフ検定)で計算することができる。例えば、スチューデントt検定を、各個体のクラスタースコアの使用、その後の薬物感受性集団と薬物耐性集団との間の2標本t検定を使用したp値の計算によって行うことができる。以下の実施例2を参照のこと。別の適切な方法は、Subramanian,Tamayoら,2005,Proc.Nat’l Acad.Sci USA 102:15545−15550)に記載のGSEAアルゴリズムなどでコルモゴロフ・スミルノフ検定を行うことである。統計的有意性を、フィッシャーの正確検定(Fisher,1922,J.Royal Statistical Soc.85:87−94;Agresti,1992,Statistical Science 7:131−153)を適用して薬物感受性集団と薬物耐性集団との間のp値を計算することによって計算することもできる。
統計的有意差は、当該分野で周知の一般的に使用されている統計学的カットオフに基づき得る。例えば、統計的有意差は、0.05、0.01、0.005、0.001以下のp値であり得る。p値を、スチューデントt検定、コルモゴロフ・スミルノフ検定、またはフィッシャーの正確検定などのアルゴリズムを使用して計算することができる。適切なアルゴリズムを使用した統計的有意差の決定は当業者の範囲内であり、試験される薬物および集団(例えば、腫瘍サンプルまたは患者集団)に基づいて、当業者は有意性の決定のために適切な統計学的カットオフを選択することができることが本明細書中で意図される。
転写クラスターのサブセット
いくつかの実施形態では、転写クラスターの発現と目的の表現型(例えば、薬物耐性)との間の相関を、転写クラスター内の全遺伝子についての発現測定の使用によって確立する。しかし、転写クラスター内の全遺伝子についての発現測定の使用は任意である。いくつかの実施形態では、転写クラスターの発現と表現型との間の相関を、転写クラスター由来のサブセット(すなわち、代表的な数の遺伝子)についての発現測定の使用によって確立する。転写クラスターのサブセットを、転写クラスター全体を代表するために信頼性をもって使用することができる。なぜなら、各転写クラスター内で、遺伝子がコヒーレントに発現されるからである。定義によって、所与の転写クラスター内の遺伝子発現レベル(転写産物量によって示される)が相関する。一般に、サブセットが大きいほど、一般に、多くの正確なクラスタースコアが得られるが、サブセットのサイズが増加するにつれてさらに遺伝子が増加しても正確性の増加はわずかになる。より小さなサブセットが便利且つ経済的である。例えば、各転写クラスターが10遺伝子によって代表される場合、51種の転写クラスターの全セットをたった510プローブで効率的に代表することができ、510プローブを、現時点で販売者から利用可能なテクノロジーを使用して、単一のマイクロアレイチップ、単一のPCRキット、単一のnCounter Analysis(商標)アッセイ(NanoString(登録商標)Technologies)、または単一のQuantiGene(登録商標)Plexアッセイ(Panomics、Fremont、CA)に組み込むことができる。図6は、51の各転写クラスターがたった10遺伝子のサブセットで代表される510ヒト遺伝子を列挙している。
かかるプローブ数の減少は、バイオマーカー発見プロジェクト(すなわち、腫瘍学における臨床的表現型(薬物応答または予後)の生物学的に関連する遺伝子の特異的セット(バイオマーカー)との関連)および臨床アッセイで有利であり得る。しばしば、臨床業務において、サンプル中のRNAの完全性の保護を問わずに少量の組織を回収する。結果的に、RNAの量および質は、多数の遺伝子発現の正確な測定には不十分であり得る。アッセイすべき遺伝子数の大幅な減少(例えば、1/100)により、転写クラスターのサブセットの使用によって少量のRNAが得られる少量の組織から頑健な転写クラスター解析が可能である。
各転写クラスターを代表するために使用される最適な遺伝子数を、アッセイの頑健性と利便性との間のバランスとして考慮することができる。転写クラスターのサブセットを使用する場合、サブセットは、好ましくは、10以上の遺伝子を含む。適切な代表的な数の選択を、当業者は、過度の実験を行わずに行うことができる。
数学的厳密さをもって、転写クラスター1〜51のいずれか1つ由来の少なくとも10遺伝子の本質的に任意のサブセットが採用された転写クラスター全体の非常に有効な代用であることを証明しようと試みた。換言すれば、本発明者らは、任意の無作為に選択した10遺伝子サブセットが各転写クラスターのあらゆるメンバーについての発現スコアから計算した個別の平均発現スコアと高度に相関する個別の平均発現スコアを生じるかどうかを決定することを試みた。これを達成するために、本発明者らは、各転写クラスターから10,000の無作為に選択した10遺伝子サブセットを作製した。次いで、本発明者らは、10,000の個別の平均発現スコアのそれぞれと転写クラスターの全遺伝子についての個別の平均発現スコアとの間の相関を計算した。
表3は、あらゆる転写クラスターについての10,000のピアソン相関比較の最悪相関p値を示す。51の各転写クラスターについて、10,000の無作為に選択した10遺伝子サブセットの全てが完全な転写クラスターから計算した個別の平均発現スコアと有意に相関する個別の平均発現スコアを生じる。これは、51種の転写クラスターのいずれか由来の本質的に任意の10遺伝子サブセットが転写クラスター全体を十分に代表しており、このサブセットを転写クラスター全体のための高度に有効な代用として使用することができ、それにより、転写クラスターと目的の表現型との間の関連を確立するのに必要な遺伝子発現測定数(したがって、プローブ数)を大幅に減少させることができることを数学的に厳密に証明している。
サブセットベースの実施形態のさらなる例では、本発明者らは、転写クラスターのいずれかについて、図6中のそのクラスターを代表するサブセット由来の少なくとも5遺伝子および問題の転写クラスターから無作為に選択したせいぜい5つの異なる遺伝子を含む任意の10遺伝子サブセットがその転写クラスターのあらゆるメンバーについての発現スコアから計算した個別の平均発現スコアと有意に相関する個別の平均発現スコアを生じることを数学的に厳密に証明している。換言すれば、図6に代表される51の各転写クラスターについて、10遺伝子サブセット中の5つまでの遺伝子を表1中の同一の転写クラスターから選択した異なる遺伝子と置換することができる。
この証明では、51の各転写クラスターについて、本発明者らは、10,000の新規の10遺伝子サブセットを作製し、ここで、このサブセットは、少なくとも5遺伝子を図6中のそのクラスターを代表する10遺伝子サブセットから採用し、せいぜい5つのさらなる遺伝子をそのクラスターから無作為に選択した。次いで、本発明者らは、10,000の個別の平均発現スコアのそれぞれと転写クラスターの全遺伝子についての個別の平均発現スコアとの間の相関を計算した。TC1−25、TC27−36、およびTC38−51についての10,000のピアソン相関比較の最悪相関p値は、5.40E−267未満であった。TC26についての10,000のピアソン相関比較の最悪相関p値は3.7E−126であり、TC37については2.3E−128であった。51の各転写クラスターについて、10,000の新規の10遺伝子サブセットの全てが、完全な転写クラスターから計算した個別の平均発現スコアと有意に相関する個別の平均発現スコアを生じる。これは、図6中の10遺伝子例由来の少なくとも5遺伝子および同一の転写クラスターから無作為に選択した5つまでの遺伝子を含む本質的に任意の10遺伝子サブセットが転写クラスター全体を十分に代表しており、その結果、このサブセットを転写クラスター全体のための高度に有効な代用として使用することができることを数学的に厳密に証明している。転写クラスターと目的の表現型との間の関連を確立するのに必要な遺伝子発現測定数(したがって、プローブ数)が大幅に減少されるので、これは有利である。当業者は、このことが表1中の任意の転写クラスター由来の本質的に任意の10遺伝子サブセットを転写クラスター全体のための代用として使用することができることが上記のより広範な証明(表3および関連する考察)の範囲内の例であると認識するであろう。
予測遺伝子セット(PGS)
予測遺伝子セット(PGS)は、特定の表現型に関して組織型(例えば、哺乳動物腫瘍)を分類するのに有用な多重遺伝子バイオマーカーである。特定の表現型の例は、以下である:(a)特定の抗癌剤に感受性を示す表現型;(b)特定の抗癌剤に耐性を示す表現型;(c)処置の際に良好な結果(予後良好)を有する可能性が高い表現型;および(d)処置の際に不良な結果(予後不良)を有する可能性が高い表現型。
本明細書中に記載の51種の転写クラスターのうちの1つ以上の使用による新規の予測遺伝子セットの一般的な同定方法を本明細書中に開示する。転写クラスターが目的の表現型と有意に相関するクラスタースコアを生じることを示す場合、PGSは、その転写クラスターに基づくか由来する。いくつかの実施形態では、PGSは、転写クラスター中の全遺伝子を含む。他の実施形態では、PGSは、転写クラスター全体よりもむしろ転写クラスター由来の遺伝子のサブセットのみを含む。好ましくは、本明細書中に記載の方法を使用して同定したPGSは、転写クラスター由来の10以上の遺伝子(例えば、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、42、44、46、48、または50遺伝子)を含むであろう。
いくつかの実施形態では、1つを超える転写クラスターが目的の表現型と関連する。かかる状況では、PGSは、関連する転写クラスターのうちのいずれか1つまたは複数の関連する転写クラスターに基づき得る。
PGSスコア
PGSの予測値を、PGS中の少なくとも10遺伝子のそれぞれの発現レベルを測定し(組織サンプルに関して)、以下のアルゴリズム:
(式中、E1、E2、...Enは、PGS中のn遺伝子の発現値である)にしたがって組織サンプルについてのPGSスコアを計算することによって得る。
任意選択的に、内部標準として使用されるさらなる遺伝子(例えば、ハウスキーピング遺伝子)の発現レベルを、PGSに加えて測定することができる。
クラスタースコアおよびPGSスコアを計算するためのアルゴリズムが本質的に同一であり、両方の計算が遺伝子の発現値を含むにもかかわらず、クラスタースコアがPGSスコアと同一ではないことを留意すべきである。使用される状況が異なる。クラスタースコアは既知の表現型のサンプルに関連し、これはサンプルをPGS同定方法で使用する。対照的に、PGSスコアは未知の表現型のサンプルと関連し、これはサンプルを試験し、可能性の高い表現型に分類する。
PGSスコアの解釈
PGSスコアを、閾値PGSスコアに関して解釈する。閾値PGSスコアより高いPGSスコアは、第1の表現型を有する可能性が高いと分類される組織サンプル(例えば、特定の薬物での処置に感受性を示す可能性が高い腫瘍)を示すと解釈されるであろう。閾値PGSスコアより低いPGSスコアは、第2の表現型を有する可能性が高いと分類される組織サンプル(例えば、薬物での処置に耐性を示す可能性が高い腫瘍)を示すと解釈されるであろう。腫瘍に関して、所与の閾値PGSスコアは、腫瘍型に応じて変化し得る。開示の方法の文脈では、用語「腫瘍型」は、(a)種(マウスまたはヒト);および(b)起源となる器官または組織を考慮する。任意選択的に、腫瘍型は、遺伝子発現特性に基づいた腫瘍分類(例えば、HER2陽性乳房腫瘍、または特定のEGFR変異を発現する非小細胞肺腫瘍)をさらに考慮する。
任意の所与の腫瘍型について、最適閾値PGSスコアを、閾値決定解析を行うことによって経験的に決定する(または、少なくとも概算する)ことができる。好ましくは、閾値決定解析には、受信者動作特性(ROC)曲線解析が含まれる。
ROC曲線解析は周知の統計的技術であり、その適用は当業者の範囲内である。ROC曲線解析の考察については、一般に、Zweigら,1993,“Receiver operating characteristic(ROC)plots:a fundamental evaluation tool in clinical medicine,”Clin.Chem.39:561−577;およびPepe,2003,The statistical evaluation of medical tests for classification and prediction,Oxford Press,New York.を参照のこと。
PGSスコアおよび最適閾値PGSスコアは、腫瘍型によって変動し得る。したがって、閾値決定解析を、好ましくは、開示の方法を使用して試験すべき任意の所与の腫瘍型を代表する1つ以上のデータベースに関して行う。閾値決定解析のために使用されるデータベースには、以下が含まれる:(a)実際の応答データ(応答または非応答)、および(b)ヒト腫瘍群またはマウス腫瘍群由来の各腫瘍サンプルについてのPGSスコア。一旦所与の遺伝子型に関するPGSスコア閾値が決定されると、その閾値をその腫瘍型の腫瘍由来のPGSスコアを解釈するために適用することができる。
ROC曲線解析を、本質的に以下のように実施する。閾値を超えるPGSスコアを有する任意のサンプルを非応答体と同定する。閾値以下のPGSスコアを有する任意のサンプルを応答体と同定する。試験したサンプルセット由来のあらゆるPGSスコアについて、「応答体」および「非応答体」(仮定の呼称)を、そのPGSスコアを閾値として使用して分類する。この過程により、仮定の呼称をデータセットの実際の応答データと比較することによって各潜在的閾値についてのTPR(yベクトル)およびFPR(xベクトル)を計算することができる。次いで、ROC曲線を、TPRベクトルおよびFPRベクトルを使用してドットプロットを作成することによって構築する。ROC曲線が(0,0)ポイントから(1.0,1.0)ポイントまでの対角を超える場合、PGS試験結果が無作為よりも良好な試験であることを示す(例えば、図2および4を参照のこと)。
ROC曲線を使用して、最良の動作点を同定することができる。最良の動作点は、加重した偽陽性のコストと偽陰性のコストとの間で最良のバランスが得られる動作点である。これらのコストは等しい必要はない。ROC空間中のポイントx,yでの分類の平均期待コストを、以下の式:
C=(1−p)アルファx+pベータ(1−y)
(式中、
アルファ=偽陽性のコスト、
ベータ=陽性喪失(偽陰性)のコスト、および
p=陽性症例の割合)で示す。
偽陽性および偽陰性を、アルファおよびベータの異なる値の割り当てによって別々に加重することができる。例えば、目的の表現型形質が薬物応答であり、且つ非応答体であるより多くの患者の処置のコストで応答体群内により多くの患者を含めると決定する場合、アルファにより多く加重することができる。この場合、偽陽性および偽陰性のコストは同一である(アルファはベータと等しい)と想定される。したがって、ROC空間中のポイントx,yでの分類の平均期待コストは、以下である:
C’=(1−p)x+p(1−y)
最小のC’を、偽陽性および偽陰性の全ペア(x,y)の使用後に計算することができる。最適PGSスコア閾値を、C’での(x,y)のPGSスコアとして計算する。例えば、実施例2に示すように、このアプローチを使用して決定した最適PGSスコア閾値は、1.62であることが見出された。
腫瘍が特定の薬物(例えば、チボザニブ)での処置に対して感受性または耐性を示すかどうかの予測に加えて、PGSスコアは、PGSスコアの規模にしたがって、腫瘍が感受性または耐性を示す可能性がどの程度あるかをおよそであるが、有用に示す。
本発明を、以下の実施例によってさらに例示する。実施例を例示のみを目的として提供し、実施例は、本発明の範囲または内容を制限すると決して解釈すべきではない。
実施例1:マウス腫瘍−BHアーカイブ
100を超えるマウス乳房腫瘍の遺伝的に多様な集団(BHアーカイブ)を使用して、目的の薬物に感受性を示す腫瘍(応答体)および同一の目的の薬物に耐性を示す腫瘍(非応答体)を同定した。BHアーカイブを、HER2依存性の誘導型自発性乳房腫瘍を発症する操作キメラマウス由来の100を超える自発性マウス乳房腫瘍由来の初代腫瘍材料のin vivo増殖および低温保存によって確立した。
マウスを、本質的に以下のように作製した。Ink4aホモ接合体nullマウスES細胞を、個別のフラグメントとして以下の4つの構築物で同時トランスフェクションした:MMTV−rtTA、TetO−HER2V659Eneu、TetO−ルシフェラーゼ、およびPGK−ピューロマイシン。これらの構築物を保有するES細胞を3日齢C57BL/6胚盤胞に注入し、これを偽妊娠雌マウスに移植して妊娠期間を経てキメラマウスを誕生させた。マウス乳癌ウイルス長末端反復(MMTV)を使用して、逆テトラサイクリントランス活性化因子(rtTA)の乳房特異的発現を駆動した。rtTAにより、ドキシサイクリンをマウスに飲料水から提供した場合にHER2活性化癌遺伝子の乳房特異的発現が得られた。ドキシサイクリンによるテトラサイクリン応答性プロモーターの誘導後、マウスは、約2〜6ヶ月間の潜伏期間で浸潤性乳癌を発症した。
100を超える腫瘍のBHアーカイブを、本質的に以下のように作製した。初代腫瘍細胞を、セルストレーナーを使用した腫瘍の物理的破壊によってキメラ動物から単離した。典型的には、1×105細胞をMatrigel(体積比50:50)と混合し、雌NCr nu/nuマウスに皮下注射した。これらの腫瘍がおよそ500mm3に成長した時(典型的には、2〜4週間必要)、腫瘍を回収してさらに1ラウンドin vivo増殖させ、その後、腫瘍材料を液体窒素中で低温保存した。増殖および保存した腫瘍を特徴付けるために、個別の腫瘍株由来の1×105細胞を解凍し、BALB/cヌードマウスに皮下注射した。腫瘍平均サイズが500〜800mm3に到達した時、動物を屠殺し、さらなる分析のために腫瘍を外科的に取り出した。
BH腫瘍アーカイブを、組織レベル、細胞レベル、および分子レベルで特徴づけた。解析には、一般的な組織病理学(構造、細胞学、結合組織形成、壊死範囲、脈管構造の形態学)、IHC(例えば、腫瘍脈管構造についてのCD31、腫瘍細胞増殖についてのKi67、経路活性化についてのシグナル伝達タンパク質)、および包括的分子プロファイリング(RNA発現についてのマイクロアレイ、DNAコピー数についてのアレイCGH)、ならびに特異的遺伝子についてのRNAおよびタンパク質の発現レベル(qRT−PCR、免疫アッセイ)を含んでいた。かかる解析により、重要な表現型パラメーター(腫瘍成長率、微小脈管構造、および異なる抗癌剤に対する可変の感受性など)で明白な顕著な分子変動度が明らかとなった。
例えば、およそ100のBHマウス腫瘍の間で、病理組織学的解析により、それぞれ顕著な形態学的特徴(間質細胞性レベル、サイトケラチン染色、および細胞構造が含まれる)を有するサブタイプが明らかとなった。1つのサブタイプは増殖速度がより遅いコラーゲン陽性線維芽細胞様間質細胞で取り囲まれた入れ子状態のサイトケラチン陽性上皮細胞を示した一方で、第2のサブタイプはわずかな間質性の充実性シート状の上皮悪性細胞およびより早い増殖速度を示した。これらおよび他のサブタイプもその遺伝子発現プロフィールによって識別可能である。
実施例2:チボザニブPGSの同定
BHマウス腫瘍アーカイブ中の腫瘍を、チボザニブでの処置に対する感受性について試験した。この薬物処置に対する腫瘍応答の評価を、本質的に以下のように行った。皮下移植腫瘍を、(Matrigelと混合した)物理的に破壊した腫瘍細胞を6週齢の雌BALB/cヌードマウスに注射することによって確立した。腫瘍がおよそ100〜200mm3に到達した時、20匹の腫瘍を保有するマウスを2群に無作為に分けた。群1にビヒクルを投与した。群2に経口細管栄養によって5mg/kgのチボザニブを毎日投与した。腫瘍をカリパスによって1週間に2回測定し、腫瘍容積を計算した。
これらの研究により、チボザニブに応答した成長阻害において腫瘍毎の顕著な変動が明らかとなった。マウスモデル腫瘍が自然発生した腫瘍から増殖しており、したがって、腫瘍形成に寄与する異なる二次的de novo変異セットを含むことが予想されたので、応答の変動は予想されていた。天然に存在するヒト腫瘍によって示される腫瘍毎の薬物応答の変動をモデル化したので、薬物応答の変動は有用且つ望ましかった。チボザニブ感受性腫瘍およびチボザニブ耐性腫瘍を、腫瘍成長阻害、組織病理学、およびIHC(CD31)に基づいて同定(分類)した。典型的には、腫瘍保有マウスを5mg/kgチボザニブを使用して試験した場合、チボザニブ感受性腫瘍は腫瘍進行が認められず(カリパス測定による)、周辺を除いてほぼ完全に腫瘍が死滅した。
BHアーカイブ中の各腫瘍由来の伝令RNA(およそ6μg)を、カスタムAgilentマイクロアレイ(Agilentマウス40Kチップ)を使用して増殖およびハイブリッド形成した。従来のマイクロアレイテクノロジーを使用して、66腫瘍のそれぞれに由来する組織サンプル中でのおよそ40,000遺伝子の発現を測定した。マウス腫瘍サンプルのコントロールサンプル(Stratagene,カタログ番号740100−41の一般的なマウス基準RNA)との遺伝子発現プロフィールの比較を行い、市販の特徴抽出ソフトウェア(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)を特徴抽出およびデータ正規化のために使用した。
異なる転写クラスター内の遺伝子の平均(集合)発現に関するチボザニブ感受性腫瘍とチボザニブ耐性腫瘍との間の相違を、スチューデントt検定を使用して評価した。t検定を本質的に以下のように行った。上記のマイクロアレイ解析由来の遺伝子の発現値を使用して、各腫瘍中の各転写クラスターのクラスタースコアを計算した。次いで、各転写クラスターのp値を、チボザニブ感受性腫瘍およびチボザニブ耐性腫瘍を比較する2標本t検定の適用によって計算した。誤発見率(FDR)も計算した。10の最高スコアの転写クラスターのp値および誤発見率を表4に示す。
誤発見率が0.005を超える転写クラスターを、さらなる検討材料から排除した。2つの転写クラスター(すなわち、TC50およびTC48)を、誤発見率0.005未満と同定した。TC50を、最低の誤発見率(すなわち、0.003)を有すると同定した。TC50の高発現はチボザニブ耐性と相関する。
本実施例は、開示の方法の能力を証明している。本実施例では、従来のマイクロアレイ発現プロファイリングの数理解析によってTC50が得られ、このTC50は非VEGF依存性血管形成を媒介することができる骨髄性細胞の一定のサブセットに関与し、それにより、チボザニブ耐性機構が得られる。
実施例3:チボザニブに対するマウス応答の予測
実施例2で同定されたチボザニブPGS(TC50)の予測力を、実施例1および2に記載のようにチボザニブを使用した実際の薬物応答試験に基づいて、チボザニブ感受性またはチボザニブ耐性と事前に分類された25腫瘍の集団を含む実験で評価した。これらの25腫瘍は、駆動癌遺伝子がHER2である初代マウス腫瘍の専売アーカイブに由来していた。本実施例では、使用したPGSは、以下のTC50由来の10遺伝子サブセットであった。
MRC1
ALOX5AP
TM6SF1
CTSB
FCGR2B
TBXAS1
MS4A4A
MSR1
NCKAP1L
FLI1 。
各腫瘍のPGSスコアを、従来のマイクロアレイ解析によって得た遺伝子発現データから計算した。本発明者らは、以下のアルゴリズム:
(式中、E1、E2、...Enは、PGS中のn遺伝子の発現値である)にしたがってチボザニブPGSスコアを計算した。
本実験由来のデータを、図1に示すウォーターフォールプロットとしてまとめている。最適閾値PGSスコアを、ROC曲線解析を使用した閾値決定解析において1.62であると経験的に決定した。ROC曲線解析由来の結果を図2にまとめている。
この閾値を適用した場合、試験により、25腫瘍のうち22腫瘍についてチボザニブ感受性(応答)またはチボザニブ耐性(非応答)が正確に予測された(図1)。チボザニブ耐性の予測では、偽陽性率は25%であり、偽陽性率は0%であった。この結果の統計的有意性を、フィッシャーの正確検定(Fisher,1922,J.Royal Statistical Soc.85:87−94;Agresti,1992,Statistical Science 7:131−153)の適用によって評価して、応答体の富化のp値を評価した。この場合のフィッシャーの正確検定の分割表を、表5(以下)に示す。
本実施例では、フィッシャーの正確検定のp値は0.00722であった。これは、試験結果が偶然のみに起因する確率である。このp値は、統計的有意性の従来のカットオフ(すなわち、p=0.05)より6.9倍良好である。
実施例4:ラパマイシンPGSの同定
BHマウス腫瘍アーカイブ由来の腫瘍を、ラパマイシン(シロリムスまたはラパミューン(登録商標)としても公知)での処置に対する感受性について試験した。ラパマイシン処置に対する腫瘍応答の評価を、本質的に以下のように行った。皮下移植腫瘍を、Matrigelと混合した物理的に破壊した腫瘍細胞(初代腫瘍材料)を6週齢の雌BALB/cヌードマウスに注射することによって確立した。腫瘍がおよそ100〜200mm3に到達した時、20匹の腫瘍を保有するマウスを2群に無作為に分けた。群1にビヒクルを投与した。群2に腹腔内注射によって0.1mg/kgのラパマイシンを毎日投与した。腫瘍をカリパスによって1週間に2回測定し、腫瘍容積を計算した。これらの研究により、ラパマイシンに応答した成長阻害において腫瘍毎の顕著な変動が明らかとなった。ラパマイシン耐性腫瘍を、50%以下の腫瘍成長阻害を示す腫瘍と定義した。ラパマイシン感受性腫瘍を、50%を超える腫瘍成長阻害を示す腫瘍と定義した。試験した66腫瘍のうち、41腫瘍がラパマイシン感受性であることが見出され、25腫瘍がラパマイシン耐性であることが見出された。
腫瘍由来のmRNAの調製およびマイクロアレイ解析を、上の実施例2に記載した。51種の転写クラスターの発現の富化に関してラパマイシン感受性腫瘍とラパマイシン耐性腫瘍との間の相違を同定するために、本発明者らは、遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)を41のラパマイシン感受性腫瘍および25のラパマイシン耐性腫瘍由来のRNA発現データに適用した(GSEAの考察については、Subramanianら,2005,“Gene set enrichment analysis:A knowledge−based approach for interpreting genome−wide expression profiles,”Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102:15545−15550を参照のこと)。
GSEAのRNA発現データへの適用により、51種の転写クラスターの発現に関するラパマイシン感受性群とラパマイシン耐性群との間の有意差が明らかとなった。表6(以下)は、感受性腫瘍群についてのGSEAの結果を示す。誤発見率q値によって順位付けした場合、高発現について最も富化された転写クラスターがTC33であることが見出された。
表7(以下)は、耐性腫瘍群についてのGSEAの結果を示す。誤発見率q値によって順位付けした場合、高発現について最も富化された転写クラスターがTC26であることが見出された。
ラパマイシン感受性腫瘍についての最高の富化転写クラスター(TC33)およびラパマイシン耐性腫瘍についての最高の富化転写クラスター(TC26)を使用して、TC33由来の10遺伝子およびTC26由来の10遺伝子からなる20遺伝子ラパマイシンPGSを作製した。この特定のラパマイシンPGSは、以下の20遺伝子を含む。
PGSが感受性腫瘍で上方制御される10遺伝子および耐性腫瘍で上方制御される10遺伝子を含むので、以下のアルゴリズム:
(式中、E1、E2、...Emは、感受性腫瘍で上方制御されるm遺伝子特性(TC33)の発現値であり、F1、F2、...Fnは、耐性腫瘍で上方制御されるn遺伝子特性(TC26)の発現値である)を使用してラパマイシン(rapamcin)PGSスコアを計算した。上記実施例では、mは10であり、nは10である。
実施例5:ラパマイシンに対するマウス応答の予測
実施例4で同定されたラパマイシンPGSの予測力を、実施例4に記載のようにラパマイシンを使用した実際の薬物応答試験に基づいて、ラパマイシン感受性またはラパマイシン耐性と事前に分類された66腫瘍の集団を含む実験で評価した。これらの66腫瘍は、駆動癌遺伝子がHER2である初代マウス腫瘍の専売アーカイブに由来していた。各腫瘍のラパマイシンPGSスコアを、従来のマイクロアレイ解析によって得た遺伝子発現データから計算した。本実験由来のデータを、図3に示すウォーターフォールプロットとしてまとめている。最適閾値PGSスコアを、ROC曲線解析を使用した閾値決定解析において0.011であると経験的に決定した。ROC曲線解析由来の結果を図4にまとめている。
この閾値を適用した場合、試験により、66腫瘍のうち45腫瘍(すなわち、68.2%)に関してラパマイシン感受性(応答)またはラパマイシン耐性(非応答)が正確に予測された(図3)。ラパマイシン耐性の予測では、偽陽性率は16%であり、偽陽性率は41%であった。この結果の統計的有意性を、フィッシャーの正確検定(Fisher,前出;Agresti,前出)の適用によって評価して、応答体の富化のp値を評価した。この場合のフィッシャーの正確検定の分割表を、表8に示す。
本実施例では、フィッシャーの正確検定のp値は0.000815であった。これは、この試験が偶然のみに起因する確率が0.000815であったことを意味し、この試験結果が偶然のみに起因する確率である。このp値は、統計的有意性の従来のカットオフ(すなわち、p=0.05)より61.4倍良好である。
実施例6:乳癌予後PGSの同定
295の乳房腫瘍の集団(NKI乳癌データセット)を使用して、短い間隔で遠隔転移する腫瘍(予後不良、5年以内に転移)を長い間隔で遠隔転移する腫瘍(予後良好、5年以内に転移なし)と分離した。295のNKI乳房腫瘍のうち、196サンプルが予後良好であり、78サンプルが予後不良であった。
NKI乳癌データセット由来の196の予後良好腫瘍をNKI乳癌データセット由来の78の予後不良腫瘍と比較した場合に生物学的経路を代表する差分的に発現される遺伝子セットを同定した。予後良好腫瘍と予後不良腫瘍との間の経路遺伝子リストの富化の相違を、51種の転写クラスターに関して遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)を使用することによって評価した。予後良好腫瘍の予後不良腫瘍との比較における本発明者らの解析により、そのメンバー遺伝子が発現で有意差を示す転写クラスターであるTC35(リボソームに関連)が予後良好群において最高に過剰発現された転写クラスターであることが証明された(表9)。
表10に示したGSEAの結果に示すように、TC26(増殖に関連)は、予後不良群において最高に過剰発現された転写クラスターである。
予後良好腫瘍についての最も富化された転写クラスター(TC35)および予後不良腫瘍についての最も富化された転写クラスター(TC26)を使用して、20遺伝子乳癌予後PGSを作製した。これは、TC35由来の10遺伝子およびTC26由来の10遺伝子からなる。この特定の乳癌PGSは、以下の20遺伝子を含む。
乳癌予後PGSが予後良好腫瘍で上方制御される10遺伝子および予後不良腫瘍で上方制御される10遺伝子を含むので、以下のアルゴリズム:
(式中、E1、E2、...Emは、予後良好腫瘍で上方制御されるm遺伝子特性(TC35)の発現値であり、F1、F2、...Fnは、予後不良腫瘍で上方制御されるn遺伝子特性(TC26)発現値である)を使用して、乳癌予後PGSスコアを計算した。上記実施例では、mは10であり、nは10である。
実施例7:乳癌予後PGSの確認
実施例6で同定した予後徴候PGS(上記)を、独立した乳癌データセット(すなわち、Wang乳癌データセット)で確認した(Wangら,2005,Lancet 365:671−679)。Wang乳癌データセット由来の286の乳房腫瘍集団を、独立した確認データベースとして使用した。Wangデータセット中のサンプルは、全生存時間および事象を含む臨床的注釈付け(死亡または死亡せず)を有していた。実施例6で同定した20遺伝子乳癌予後徴候PGSは、患者の結果の有効な予測因子であった。これを、図5(カプラン・マイヤー生存曲線の比較である)に示す。このカプラン・マイヤープロットは、時間(月数)に対する患者の生存率を示す。上の曲線は、患者の実際の生存が比較的長かった高PGSスコア(閾値を超えるスコア)を有する患者を示す。下の曲線は、患者の実際の生存が比較的短かった低PGSスコア(閾値未満のスコア)を有する患者を示す。コックス比例ハザード回帰モデル分析は、TC35およびTC26から作成したPGSが有効な予後徴候バイオマーカー(p値4.5e−4およびハザード比0.505)であることを示した。
実施例8:ヒト応答の予測
以下のデータ裏付けのない実施例は、どのようにして当業者が開示のTaqMan(登録商標)データを使用してチボザニブに対するヒト応答を予測する方法を使用することができるのかを詳細に例示している。
所与の腫瘍型(例えば、腎細胞癌)に関して、チボザニブでの患者の処置前に、腫瘍サンプル(保存FFPEブロック、新鮮なサンプル、または凍結サンプル)を、ヒト患者から(病院または臨床検査室から直接)入手する。標準的な組織学的手順にしたがって、新鮮または凍結した腫瘍サンプルを10%中性緩衝ホルマリン中に5から10時間入れた後、アルコール脱水し、パラフィン包埋する。
RNAを10μm FFPE切片から抽出する。キシレン抽出およびその後のエタノール洗浄によってパラフィンを除去する。RNAを、市販のRNA調製キットを使用して単離する。RNAを、適切な市販のキット(例えば、RiboGreen(登録商標)蛍光法(Molecular Probes,Eugene,OR))を使用して定量する。RNAサイズを、従来の方法によって分析する。
逆転写を、qRT−PCR(Invitrogen)のためのSuperScript(商標)First−Strand Synthesis Kitを使用して行う。総RNAおよびプールした遺伝子特異的プライマーは、それぞれ、10から50ng/μlおよび100nM(各々)で存在する。
PGS中の各遺伝子について、qRT−PCRプライマーを、市販のソフトウェア(例えば、Primer Express(登録商標)ソフトウェア(Applied Biosystems,Foster City,CA)を使用してデザインする。オリゴヌクレオチドプライマーを、装置の製造者または販売者が推奨する市販の合成装置および適切な試薬を使用して合成する。プローブを、適切な市販の標識キットを使用して標識する。
TaqMan(登録商標)反応を、製造者の説明書にしたがってApplied Biosystems7900HT装置を使用して、384ウェルプレート中で行う。PGS中の各遺伝子の発現を、反応ウェルあたり1ngの総RNAから合成したcDNAを使用して二連の5μl反応物中で測定する。プライマーおよびプローブの最終濃度は、それぞれ0.9μM(各プライマー)および0.2μMである。PCRサイクリングを標準操作手順にしたがって行う。qRT−PCRシグナルが夾雑DNAよりもむしろRNAに起因することを確認するために、試験した各遺伝子について、非RTコントロールを並行して行う。qRT−PCR中の所与の増幅曲線についてのサイクル閾値は、プローブ切断由来の蛍光シグナルが特定の蛍光閾値設定を超えて増大する時点で生じる。初期温度がより高い試験サンプルは、より早い増殖サイクルで閾値を超える。
前サンプルにわたって遺伝子発現レベルを比較するために、5つの基準遺伝子(その発現レベルが評価される腫瘍型の全サンプルにわたって類似するハウスキーピング遺伝子)に基づいた正規化を使用して、各アッセイウェルにおけるRNAの質およびRNAの総量の変動から生じる相違を補正する。各サンプルの基準CT(サイクル閾値)を、基準遺伝子の平均測定Cと定義する。試験遺伝子の正規化mRNAレベルを、ΔC(式中、ΔC=基準遺伝子C−試験遺伝子C)と定義する。
各腫瘍サンプルのPGSスコアを、上記のアルゴリズムにしたがって遺伝子発現レベルから計算する。試験した腫瘍サンプルに関連する実際の応答データを、腫瘍サンプルを供給している病院または臨床検査室から入手する。臨床応答を、典型的には、適切なイメージング技術(例えば、CTスキャン)によって決定される腫瘍の縮小(例えば、30%縮小)に関して定義する。いくつかの場合、ヒト臨床応答を、時間(例えば、無進行生存期間)に関して定義する。所与の腫瘍型についての最適閾値PGSスコアを上記のように計算する。次いで、この最適閾値PGSスコアを使用して、新規に試験した同一腫瘍型のヒト腫瘍がチボザニブ処置に対して応答性または非応答性のいずれであるかを予測する。
参照による引用
本明細書中で引用した各特許書類および科学論文の全開示は、全ての目的のために参考として援用される。
均等物
本発明を、その本質的な特徴から逸脱する他の特定の形態で具体化することができる。したがって、前述の実施形態は、本明細書中に記載の発明の制限よりもむしろ例示と見なすべきである。本発明の範囲を、前述の説明よりもむしろ添付の特許請求の範囲によって示し、特許請求の範囲と同等の意味および範囲内の全ての変更形態が本発明に含まれることを意図する。

Claims (30)

  1. 癌性組織を特定の抗癌薬または薬物クラスに対して感受性または耐性に分類するための予測遺伝子セット(「PGS」)を同定するための方法であって、前記方法は、以下:
    (a)(i)前記抗癌薬に対して感受性と同定された癌性組織集団に由来する組織サンプルのセット、および(ii)前記抗癌薬に対して耐性と同定された癌性組織集団に由来する組織サンプルのセットにおける表1中の転写クラスターに由来する代表的な数の遺伝子の発現レベルを測定する工程;ならびに
    (b)前記感受性集団に由来する組織サンプルのセット中の前記代表的な数の遺伝子の発現レベルと前記耐性集団に由来する組織サンプルのセット中の前記代表的な数の遺伝子の発現レベルとの間に統計的有意差が存在するかどうかを決定する工程;
    を含み、
    ここで、前記感受性集団中のその遺伝子発現レベルが前記耐性集団中のその遺伝子発現レベルと有意に異なる代表的な数の遺伝子がサンプルを前記抗癌薬に対して感受性または耐性に分類するためのPGSである、方法。
  2. 前記感受性集団の平均クラスタースコアおよび前記耐性集団の平均クラスタースコアを比較するスチューデントt検定を、前記感受性集団に由来する組織サンプルのセット中の前記代表的な数の遺伝子の発現レベルと前記耐性集団に由来する組織サンプルのセット中の前記代表的な数の遺伝子の発現レベルとの間に統計的有意差が存在するかどうかを決定するために使用する、請求項1に記載の方法。
  3. 遺伝子セットエンリッチメント解析(GSEA)を、前記感受性集団に由来する組織サンプルのセット中の前記代表的な数の遺伝子の発現レベルと前記耐性集団に由来する組織サンプルのセット中の前記代表的な数の遺伝子の発現レベルとの間に統計的有意差が存在するかどうかを決定するために使用する、請求項1に記載の方法。
  4. 前記代表的な数の遺伝子が10種またはそれより多い、請求項1に記載の方法。
  5. 前記代表的な数の遺伝子が15種またはそれより多い、請求項4に記載の方法。
  6. 前記代表的な数の遺伝子が20種またはそれより多い、請求項5に記載の方法。
  7. 前記組織サンプルが腫瘍サンプルおよび血液サンプルからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
  8. 工程(a)および(b)を、51の各転写クラスターについて行う、請求項1に記載の方法。
  9. 工程(a)が、以下:
    (i)前記抗癌薬に対して感受性と同定された癌性組織集団に由来する組織サンプルのセット、および(ii)抗癌薬に対して耐性と同定された癌性組織集団に由来する組織サンプルのセット中の51の各転写クラスターを代表する図6中の10遺伝子の発現レベルを測定することを含み、かつ
    工程(b)が、以下:
    51の各転写クラスターについて、前記感受性集団に由来する組織サンプルのセット中のクラスターを代表する図6中の10遺伝子の発現レベルと前記耐性集団に由来する組織サンプルのセット中のクラスターを代表する図6中の10遺伝子の発現レベルとの間に統計的有意差が存在するかどうか決定することを含み、
    ここで、前記感受性集団中のその遺伝子発現レベルが前記耐性集団中のその遺伝子発現レベルと有意に異なる図6中のクラスター由来の10遺伝子によって代表される転写クラスターが、サンプルを前記抗癌薬に対して感受性または耐性に分類するためのPGSである、請求項1に記載の方法。
  10. 前記PGSが複数の転写クラスターに基づく、請求項9に記載の方法。
  11. 癌患者を予後良好または予後不良に分類するための予測遺伝子セット(「PGS」)を同定するための方法であって、前記方法は、以下:
    (a)(i)予後良好と同定された癌患者集団に由来する組織サンプルのセット、および(ii)予後不良と同定された癌患者集団に由来する組織サンプルのセットにおける表1中の転写クラスターに由来する代表的な数の遺伝子の発現レベルを測定する工程;ならびに
    (b)前記予後良好集団に由来する組織サンプルのセット中の前記代表的な数の遺伝子の発現レベルと前記予後不良集団に由来する組織サンプルのセット中の前記代表的な数の遺伝子の発現レベルとの間に統計的有意差が存在するかどうかを決定する工程;
    を含み、
    ここで、前記予後良好集団中のその遺伝子発現レベルが前記予後不良集団中のその遺伝子発現レベルと有意に異なる代表的な数の遺伝子が、患者を予後良好または予後不良に分類するためのPGSである、方法。
  12. 前記予後良好集団の平均クラスタースコアおよび前記予後不良集団の平均クラスタースコアを比較するスチューデントt検定を、前記予後良好集団に由来する組織サンプルのセット中の前記代表的な数の遺伝子の発現レベルと前記予後不良集団に由来する組織サンプルのセット中の前記代表的な数の遺伝子の発現レベルとの間に統計的有意差が存在するかどうかを決定するために使用する、請求項11に記載の方法。
  13. GSEAを、前記予後良好集団に由来する組織サンプルのセット中の前記代表的な数の遺伝子の発現レベルと前記予後不良集団に由来する組織サンプルのセット中の前記代表的な数の遺伝子の発現レベルとの間に統計的有意差が存在するかどうかを決定するために使用する、請求項11に記載の方法。
  14. 前記代表的な数の遺伝子が10種またはそれより多い、請求項11に記載の方法。
  15. 前記代表的な数の遺伝子が15種またはそれより多い、請求項14に記載の方法。
  16. 前記代表的な数の遺伝子が20種またはそれより多い、請求項15に記載の方法。
  17. 前記組織サンプルが腫瘍サンプルおよび血液サンプルからなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
  18. 工程(a)および(b)を、51の各転写クラスターについて行う、請求項11に記載の方法。
  19. 工程(a)が、以下:
    (i)予後良好と同定された癌患者集団に由来する組織サンプルのセット、および(ii)予後不良と同定された癌患者集団に由来する組織サンプルのセット中の51の各転写クラスターを代表する図6中の10遺伝子の発現レベルを測定することを含み、かつ
    工程(b)が、以下:
    51の各転写クラスターについて、前記予後良好集団に由来する組織サンプルのセット中のクラスターを代表する図6中の10遺伝子の発現レベルと前記予後不良集団に由来する組織サンプルのセット中のクラスターを代表する図6中の10遺伝子の発現レベルとの間に統計的有意差が存在するかどうか決定することを含み、
    ここで、前記予後良好集団中のその遺伝子発現レベルが前記予後不良集団中のその遺伝子発現レベルと有意に異なる図6中のクラスター由来の10遺伝子によって代表される転写クラスターが、患者を予後良好または予後不良に分類するためのPGSである、請求項11に記載の方法。
  20. 前記PGSが複数の転写クラスターに基づく、請求項19に記載の方法。
  21. 表1中の各転写クラスター由来の少なくとも10遺伝子に対するプローブを含むプローブセットであって、但し、前記プローブセットが全ゲノムマイクロアレイチップではないことを条件とする、プローブセット。
  22. 前記プローブセットが、(a)マイクロアレイプローブセット;(b)PCRプライマーのセット;(c)qNPAプローブセット;(d)分子バーコードを含むプローブセット;および(d)プローブがビーズに貼り付けられたプローブセットからなる群より選択される、請求項21に記載のプローブセット。
  23. 前記プローブセットが図6に列挙した各510遺伝子に対するプローブを含む、請求項21に記載のプローブセット。
  24. 前記プローブセットが、図6に列挙した各510遺伝子に対するプローブおよびコントロールプローブからなる、請求項23に記載のプローブセット。
  25. ヒト腫瘍をチボザニブまたはラパマイシンでの処置に対して感受性または耐性である可能性が高いと同定するか、あるいはヒト乳癌患者を予後良好または予後不良に分類する方法であって、前記方法は、以下:
    (a)ヒト腫瘍をチボザニブでの処置に対して感受性または耐性である可能性が高いと同定する方法であって、以下:
    (i)前記腫瘍由来のサンプル中で、予測遺伝子セット(PGS)中の各遺伝子の相対発現レベルを測定する工程であって、前記PGSがTC50由来の遺伝子のうちの少なくとも10遺伝子を含む、工程;および
    (ii)以下のアルゴリズム:
    (式中、E1、E2、…Enは前記PGS中のn遺伝子の発現値である)に従ってPGSスコアを計算する工程を含み、
    ここで、規定された閾値未満のPGSスコアは前記腫瘍がチボザニブに対して感受性である可能性が高いことを示し、かつ前記規定された閾値を超えるPGSスコアは前記腫瘍がチボザニブに対して耐性である可能性が高いことを示す、方法;
    (b)ヒト腫瘍をラパマイシンでの処置に対して感受性または耐性である可能性が高いと同定する方法であって、以下:
    (i)前記腫瘍由来のサンプル中で、予測遺伝子セット(PGS)中の各遺伝子の相対発現レベルを測定する工程であって、前記PGSが(A)TC33由来の少なくとも10遺伝子;および(B)TC26由来の少なくとも10遺伝子を含む、工程;
    (ii)以下のアルゴリズム:
    (式中、E1、E2、…Emは、感受性腫瘍で上方制御されるTC33由来の少なくとも10遺伝子の発現値であり、F1、F2、…Fnは、耐性腫瘍で上方制御されるTC26由来の少なくとも10遺伝子の発現値である)に従ってPGSスコアを計算する工程を含み、
    規定された閾値を超えるPGSスコアは前記腫瘍がラパマイシンに対して感受性である可能性が高いことを示し、かつ前記規定された閾値未満のPGSスコアは前記腫瘍がラパマイシンに対して耐性である可能性が高いことを示す、方法;ならびに
    (c)ヒト乳癌患者を予後良好または予後不良に分類する方法であって、以下:
    (i)前記患者から得た腫瘍由来のサンプル中で、予測遺伝子セット(PGS)中の各遺伝子の相対発現レベルを測定する工程であって、前記PGSが(A)TC35由来の少なくとも10遺伝子;および(B)TC26由来の少なくとも10遺伝子を含む、工程;
    (ii)以下のアルゴリズム:
    (式中、E1、E2、…Emは、予後良好患者で上方制御されるTC35由来の少なくとも10遺伝子の発現値であり、F1、F2、…Fnは、予後不良患者で上方制御されるTC26由来の少なくとも10遺伝子の発現値である)に従ってPGSスコアを計算する工程を含み、
    規定された閾値を超えるPGSスコアは前記患者が予後良好を有することを示し、かつ前記規定された閾値未満のPGSスコアは前記患者が予後不良を有する可能性が高いことを示す、方法
    からなる群より選択される、方法。
  26. 前記PGSが、以下:
    (a)MRC1、ALOX5AP、TM6SF1、CTSB、FCGR2B、TBXAS1、MS4A4A、MSR1、NCKAP1L、およびFLI1;ならびに
    (b)LAPTM5、FCER1G、CD48、BIN2、C1QB、NCF2、CD14、TLR2、CCL5、およびCD163
    からなる群より選択されるTC50の10遺伝子サブセットを含む、請求項25(a)に記載の方法。
  27. 前記PGSが、以下の遺伝子:FRY、HLF、HMBS、RCAN2、HMGA1、ITPR1、ENPP2、SLC16A4、ANK2、PIK3R1、DTL、CTPS、GINS2、GMNN、MCM5、PRIM1、SNRPA、TK1、UCK2、およびPCNAを含む、請求項25(b)に記載の方法。
  28. 前記PGSが、以下の遺伝子:RPL29、RPL36A、RPS8、RPS9、EEF1B2、RPS10P5、RPL13A、RPL36、RPL18、RPL14、DTL、CTPS、GINS2、GMNN、MCM5、PRIM1、SNRPA、TK1、UCK2、およびPCNAを含む、請求項25(c)に記載の方法。
  29. 閾値決定解析を行い、それによって規定された閾値が生成される工程をさらに含み、前記閾値決定解析が受信者動作特性曲線解析を含む、請求項25に記載の方法。
  30. 前記PGS中の各遺伝子の相対発現レベルを、(a)DNAマイクロアレイ解析、(b)qRT−PCR解析、(c)qNPA解析、(d)分子バーコードベースのアッセイ、および(e)マルチプレックスビーズベースのアッセイからなる群より選択される方法によって測定する、請求項25に記載の方法。
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