本発明の実施の形態による打込機について図1乃至図10に基づき説明する。
最初に本発明の第1の実施の形態による釘打機1について図1乃至図4に基づき説明する。本発明の第1の実施の形態による釘打機1は、電動式であって、止具である図示せぬ釘を木材や石膏ボードなどの被打込材Wに打ち込むための工具である。釘打機1は、ハウジング2と、モータ3と、駆動機構4と、ウェイト5と、第1滑車6と、第1ワイヤ7と、プランジャ8と、コイルスプリング9と、ノーズ部10と、マガジン11とから主に構成されている。なお、図1においてノーズ部10に対してマガジン11や電池23Bが設けられている方向を後方向、後方向と逆の方向を前方向と定義する。また、プランジャ8が移動する方向を上下方向と定義し、プランジャ8がコイルスプリング9により付勢されて図示せぬ止具を被打込材に打撃する方向を下方向と定義する。釘打機1を後方から見た場合の左を左方向、右を右方向と定義する。
図1に示すように、ハウジング2は、ナイロンまたはポリカーボネイト等の樹脂から構成されており、ハウジング2の前部に設けられた上下方向に延びる本体部21と、本体部21の下部後側から後方に延出するモータ収容部22と、本体部21の上部後側から後方に延びるハンドル部23とを有している。
ハンドル部23は、釘打機1をユーザが使用する際に把持する部分であって、ハンドル部23の前部下側にはモータ3の制御を行うトリガ23Aが設けられている。また、ハンドル部23の後端部にはモータ3に電力を供給する着脱式の電池23Bが設けられている。
モータ収容部22は、その内部にモータ3及び減速機構30を収容している。モータ3は、モータ収容部22内部の前方に設けられ、回転軸3Aを有している。回転軸3Aは、前後方向に延びる軸であってモータ3により回転駆動される。
減速機構30は、遊星歯車機構により構成されており、モータ3の前方において回転軸3Aに接続されている。また、減速機構30は、回転軸3Aの周囲に配置された2つの遊星ギヤ30Aと、回転軸3Aと同軸に配置されたリングギア30Bと、回転軸3Aと同軸回転するキャリアギヤ30Dを備えるキャリア30Cとを備えている。遊星ギヤ30Aは、キャリア30Cに回転可能に支承されており、回転軸3Aの周りを公転する。遊星ギヤ30Aが当該公転を行うことで回転軸3Aの回転は、減速されると共にキャリア30Cを介してキャリアギヤ30Dに回転が伝達される。
本体部21は、その内部に駆動機構4と、ウェイト5と、第1滑車6と、第1ワイヤ7と、プランジャ8と、コイルスプリング9とを備えており、ガイド部21Aが形成されている。
駆動機構4は、本体部21の後部下側に設けられており、ギヤホルダ41と、第1ギヤ42と、第2ギヤ43とにより構成されている。ギヤホルダ41は、本体部21に固定されており、支持軸41A及び41Bを有している。支持軸41Aは、ギヤホルダ41の下部において前方に突出するように設けられており、支持軸41Bは支持軸41Aの上方において前方に突出するように設けられている。
第1ギヤ42は、支持軸41Aに回転可能に支承されており、減速機構30のキャリアギヤ30Dと噛合している。図3に示すように、第1ギヤ42はキャリアギヤ30Dが回転することにより、前方から見て時計回りに回転駆動される。また、第1ギヤ42は、第1ギヤ42の軸心に対して偏心し前方に突出する第1ローラカム42Aを有している。
第2ギヤ43は、支持軸41Bに回転可能に支承されており、第1ギヤ42と噛合している。図3に示すように、第2ギヤ43は第1ギヤ42が回転することにより、前方から見て反時計回りに回転駆動される。また、第2ギヤ43は、第2ギヤ43の軸心に対して偏心し前方に突出する第2ローラカム43Aを有している。
ガイド部21Aは、本体部21の内側面と本体部21の上部から下方に延出した部分によって上下方向に延びる筒形状に形成されており、摺接部材21Bと、仕切板21Cとを備えている。摺接部材21Bは、金属材料からなり、ガイド部21Aの内周面に形成されている。仕切板21Cは、ガイド部21Aの上部においてガイド部21Aの内周面からガイド部21Aの半径方向内方に延出した部分であって、上面視において環状に形成されている。仕切板21Cの下面にはウェイト5と当接可能なウェイトバンパ21Dが設けられており、仕切板21Cの後部には第1ワイヤ7が挿通可能な孔が上下方向に貫通して形成されている。
ウェイト5は、動作時の反動を低減する、いわゆるカウンターウェイトとしての役割を果たす部材であり、金属材料により一体成形され、ガイド部21A内部に摺接部材21Bを介して上下方向に摺動可能に設けられている。また、ウェイト5は、筒部5Aと、蓋部5Bとを有している。
筒部5Aは、上下方向に延びる筒状形をなす部分であり、第1当接部5C及び第2当接部5Dを備えている。また、筒部5Aの軸心はガイド部21Aの軸心と略一致する。筒部5Aは筒状部に相当する。
図3に示すように、第1当接部5Cは、平板形状をなしており、筒部5Aの後部下端部の右側において筒部5Aの外周面から後方に突出するように設けられている。また、第1当接部5Cの上面は、第1ギヤ42の第1ローラカム42Aと当接可能に構成されている。第2当接部5Dは、平板形状をなしており、筒部5Aの後部左側において筒部5Aの外周面から後方に突出するように設けられている。また、第2当接部5Dは、第1当接部5Cよりも上方に位置しており、第2ギヤ43の第2ローラカム43Aと当接可能に構成されている。
蓋部5Bは、筒部5Aの上端部を閉塞する上面視において略円形状の部分であって、その略中央には上下方向に貫通する貫通孔5aが形成されている。また、蓋部5Bの下面には環状のスプリング当接部5Eが設けられている。
第1滑車6は、仕切板21Cの上方において本体部21に回転可能に支承されており、第1ワイヤ7が掛けられている。
第1ワイヤ7は、本実施の形態では、繊維状の鋼線を束ねて形成されており、一端側においてプランジャ8と接続され、他端側においてウェイト5の蓋部5Bと接続されている。第1ワイヤ7が第1滑車6を介してウェイト5とプランジャ8とを連結しているため、プランジャ8が図示せぬ止具を打撃する方向すなわち下方に移動した際には、第1ワイヤ7の張力によってウェイト5はプランジャ8の移動方向とは反対の方向すなわち上方に移動する。また、ウェイト5をプランジャ8が図示せぬ止具を打撃する方向すなわち下方に移動させた際には、第1ワイヤ7の張力によってプランジャ8はウェイト5の移動方向とは反対の方向すなわち上方に移動する。第1ワイヤ7は第1線材に相当する。
プランジャ8は、図示せぬ止具を打撃する部材であって、本体部21内部において上下方向に移動可能且つウェイト5の筒部5A内部に収容可能に設けられており、付勢部81とブレード82とにより構成されている。またプランジャ8は、ウェイト5の筒部5Aの軸心上に配置されており、上下方向から見てプランジャ8とウェイト5とは重なっている。
図3に示すように付勢部81は、基部81Aと、第1筒部81Bと、第2筒部81Cと、スプリング当接部81Hと、接続部81Dと、により構成されている。基部81Aは、円板形状をなし、基部81Aの外径はウェイト5の筒部8Aの内径よりも僅かに小さく構成されており、基部81Aの軸心は、ウェイト5の軸心と略一致する。
第1筒部81Bは、基部81Aの上面の外縁部から上方に延出する筒形状の部分であって、基部81Aと一体に形成されている。第2筒部81Cは、第1筒部81Bの半径方向内方において基部81Aの上面から上方に延出する筒形状の部分であって、基部81Aと一体に形成されている。スプリング当接部81Hは、第1筒部81Bと第2筒部81Cとの間に設けられており、上面視において環状をなしている。スプリング当接部81Hは、その上面においてコイルスプリング9と当接している。
接続部81Dは、第1ワイヤ7と接続される部分であり、基部81Aの略中央且つ第2筒部81Cの内方に設けられている。接続部81Dは、第3筒部81Eと、規制部81Fと、により構成されている。また、接続部81Dには、移動部材収容空間81aと、ワイヤ挿通孔81bとが形成されており、移動部材収容空間81aには移動部材81Iが収容されている。
第3筒部81Eは、基部81Aの上面から上方に延びる筒状部材であって、その内周面の上部にはネジ溝が形成されている。規制部81Fは螺合部81Jと、移動部材当接部81Gとにより構成されている。螺合部81Jは、第3筒部81Eの上端の開口を閉塞する部材であって、第3筒部81Eのネジ溝に螺合している。移動部材当接部81Gは、螺合部81Jの下方に設けられている。また、第3筒部81Eの軸心は、ウェイト5の軸心と略一致する。
移動部材収容空間81aは、第3筒部81Eの内周面と移動部材当接部81Gの下面と基部81Aの上面とにより画成されており、移動部材81Iを移動部材当接部81Gの下面と基部81Aの上面との間において上下方向において所定量移動可能に収容している。移動部材81Iは、略球体をなしており、プランジャ8に対して相対移動可能である。また、移動部材81Iの上方向への移動は規制部81Fによって規制されており、下方向への移動は基部81Aによって規制されている。
ワイヤ挿通孔81bは、規制部81Fの螺合部81Jの上面から移動部材収容空間81aまで貫通する孔である。ワイヤ挿通孔81bの直径は、第1ワイヤ7が挿通可能であり、且つ移動部材81Iが挿通不可能な大きさに設計されている。第1ワイヤ7の一端側は、第1ワイヤ7がワイヤ挿通孔81bに挿通された状態において、移動部材収容空間81aに収容された移動部材81Iに接続されている。ワイヤ挿通孔81bは線材挿通孔に相当する。
図1乃至図3に示すように、ブレード82は、金属材料を細長いプレート形状に成形したものであり、付勢部81の下面の略中央から下方に延出している。ブレード82の下部は、ノーズ部10内部において摺動可能に構成されている。また、本体部21内部においてプランジャ8の付勢部81の下面に対向する部分には、プランジャバンパ21Eが設けられている。プランジャバンパ21Eは、プランジャ8が図示せぬ止具を打撃した際の衝撃を緩和する緩衝材である。
コイルスプリング9は、圧縮されることで弾性エネルギを蓄積し、圧縮状態が解除された際に弾性エネルギを解放する圧縮バネであり、ウェイト5とプランジャ8との間に設けられている。コイルスプリング9の上端部はウェイト5のスプリング当接部5Eと当接しており、下端部はプランジャ8のスプリング当接部81Hと当接している。コイルスプリング9は圧縮された状態においては、プランジャ8を下方に付勢し且つウェイト5を上方に付勢しており、当該圧縮が解除された際には、蓄積された弾性エネルギの解放によってプランジャ8を下方に移動させると共にウェイト5を上方に移動させる。コイルスプリング9は、弾性部材に相当する。
図1及び図2に示すように、ノーズ部10は、本体部21の下方に設けられており、その内部には射出孔10aが形成されている。射出孔10aは、上下方向に延びる孔であって、ブレード82の下部を摺動可能に支持している。また、射出孔10aの下端には、図示せぬ止具が打ち出される射出口10bが形成されている。
マガジン11は、ノーズ部10の後部から後方に延出するように設けられており、複数本の図示せぬ止具を内蔵している。図示せぬ止具は、マガジン11からノーズ部10に設けられた射出孔10aに供給される構成となっている。
次に釘打機1の動作を説明する。図1に示す状態は、動作開始前すなわち釘打機1の初期状態である。
初期状態において、プランジャ8は下死点に位置しプランジャバンパ21Eと当接しており、ウェイト5はウェイトバンパ21Dに当接した状態である。また、移動部材81Iは、プランジャ8内部の移動部材収容空間81aの上下方向における略中間に位置しており、移動部材当接部81Gに当接していない状態である。第1ワイヤ7の長さは、当該初期状態すなわちプランジャ8が下死点に位置し且つウェイト5がウェイトバンパ21Dに当接している状態において、移動部材81Iが移動部材収容空間81aの上下方向における略中間に位置するように設計されている。
さらに、図4(a)に示すように、初期状態において第1ギヤ42の第1ローラカム42Aは、第1ギヤ42の下部において左右方向の中央から僅かに左方向寄りに位置しており、第2ギヤ43の第2ローラカム43Aは、第2ギヤ43の上部において左右方向の略中央に位置している。ウェイト5の第2当接部5Dは、第2ローラカム43Aの左方に位置している。
当該初期状態において、ユーザがハンドル部23を把持して釘打機1を被打込材Wの上面に対して略直交するように保持し、トリガ23Aを引くとモータ3が駆動を開始する。モータ3が駆動を開始すると、回転軸3Aが回転駆動され、減速機構30を介して回転軸3Aの回転が駆動機構4に伝達される。回転が伝達された駆動機構4はウェイト5を下方に移動させる。ウェイト5が下方に移動すると、プランジャ8は第1ワイヤ7に牽引され上方に移動し、ウェイト5とプランジャ8との間に配置されたコイルスプリング9は圧縮される。コイルスプリング9が圧縮され弾性エネルギが蓄積されると、プランジャ8は下方に付勢され、ウェイト5は上方に付勢される。駆動機構4は、コイルスプリング9の付勢力に抗しながらウェイト5を下方に移動させている。
駆動機構4がウェイト5を下方に移動させる機構を説明する。駆動機構4に回転が伝達されると、第1ギヤ42は時計回りに回転駆動を開始し、同時に第2ギヤ43は反時計回りに回転駆動を開始する。第2ギヤ43が回転駆動を始めると第2ローラカム43Aの位置は、図4(a)の状態から第2ギヤ43の円周方向に沿って反時計回りに移動し、第2当接部5Dの上面と当接し且つ第2当接部5Dを下方に押圧しながら、図4(b)の位置に移動する。当該移動と同時に第1ローラカム42Aは、第1ギヤ42の円周方向に沿って時計回りに移動している。
図4(b)の状態から図4(c)の状態まで第1ギヤ42及び第2ギヤ43が回転すると、第1ローラカム42Aは第1ギヤ42の上部において左右方向の略中央に位置しており、第1当接部5Cは第1ローラカム42Aの僅かに右方に位置している。図4(c)の状態から第1ギヤ42及び第2ギヤ43が回転すると、第1ローラカム42Aは第1当接部5Cの上面と当接し且つ第1当接部5Cを下方に押圧しながら図4(d)の位置に移動する。当該移動と同時に第2ローラカム43Aと第2当接部5Dとの当接は解除されている。
図4(d)の状態から更に第1ギヤ42及び第2ギヤ43が回転すると、図4(e)の状態となる。図4(e)の状態は、図2の状態と対応しており、プランジャ8が上死点に位置し且つウェイト5の第1当接部5Cが上下方向においてプランジャバンパ21Eと略一致する位置である。第1ローラカム42Aは第1ギヤ42の下部において左右方向略中央に位置すると共に第1ローラカム42Aと第1当接部5Cとの当接は解除される。
上述のように、駆動機構4はコイルスプリング9の付勢力に抗しながら第1当接部5C及び第2当接部5Dを押し下げることでウェイト5を下方に移動させている。
図4(e)に示すように、第1ローラカム42Aと第1当接部5Cとの当接は解除されると、コイルスプリング9に蓄積された弾性エネルギが解放され、コイルスプリング9はプランジャ8を下方に加速させ、且つウェイト5を上方に加速させる。下方に加速されたプランジャ8は図示せぬ止具を打撃し、プランジャバンパ21Eに当接し図1の状態すなわち下死点に戻る。当該動作と同時にウェイト5はプランジャ8の打撃方向とは反対の方向に移動し、図1の状態に戻る。このように、プランジャ8が上死点まで移動し、コイルスプリング9に蓄積された弾性エネルギによって下死点まで瞬時に移動する一連の動作によって打込動作は行われている。
このように、本発明の第1の実施の形態による釘打機1によると、ウェイト5とプランジャ8とは第1滑車6を介して第1ワイヤ7によって連結され、弾性エネルギの解放によってプランジャ8が第1の方向(下方)に移動する際にウェイト5は第1の方向とは反対の第2の方向(上方)に移動するため、図示せぬ止具を打撃して被打込材Wに打ち込む際の反動をウェイト5がプランジャ8の反対方向に移動することで抑制又は相殺することができ、操作性を良好にすることができる。また、第1滑車6を利用してプランジャ8とウェイト5とを相反する方向へ移動させることができるため、釘打機1本体の反動の抑制をシンプルな構成且つ低コストで実現できる。さらに、打込時の反動が抑制され操作性が良好となるため、ユーザは、射出口10bを被打込材Wに必要以上に押し付けることなく打込作業を行うことができ、仕上げ程度を良好にすることができる。
また、駆動機構4によってモータ3の回転力を弾性エネルギに変換すると共にウェイト5をコイルスプリング9の付勢力に抗しながら第1の方向(下方)へ移動させることができる。
また、第1ワイヤ7は、コイルスプリング9に弾性エネルギが蓄積される際に張力が生じるように構成されているため、コイルスプリング9に弾性エネルギが蓄積される際に、第1ワイヤ7の張力によってプランジャ8とウェイト5とを相反する方向へ移動させることができる。
また、第1ワイヤ7は、コイルスプリング9に蓄積された弾性エネルギが解放される際に張力が生じるように構成されているため、弾性エネルギの開放によってプランジャ8が第1の方向(下方)へ移動する際に、第1ワイヤ7の張力によってウェイト5を第2の方向(上方)へ移動させることができる。
また、プランジャ8は、ウェイト5の軸心上に配置されているため、プランジャ8とウェイト5とは打込時に同軸上で相反する方向(プランジャ8は第1の方向、ウェイト5は第2の方向)へ移動するため、釘打機1本体を釘打機1本体の重心を中心として回転させるモーメントを抑制することがき、操作性をより向上させることができる。
また、ウェイト5は、第1の方向に延びる筒部5Aを有し、プランジャ8は、第2の方向へ移動する際に筒部5Aの内部に収容可能に構成されているため、打込時におけるプランジャ8の移動距離を長くすることが可能となる。それゆえに、打込時においてプランジャ8が弾性エネルギによって加速される距離を長くすることが可能となり打込力を向上させることができる。
さらに、第1ワイヤ7はプランジャ8に対して所定量相対移動可能であるため、打込時に図示せぬ止具が被打込材Wに打ち込みきれずにプランジャ8が打込途中で急激に停止してしまった場合に、プランジャ8に対する第1ワイヤ7の慣性による移動を許容することができる。このため、プランジャ8と第1ワイヤ7とが相対移動不可能な構成と比較して、プランジャ8の急激な停止時における第1ワイヤ7内部にかかる応力を低減することができ、第1ワイヤ7を保護することができる。
また、コイルスプリング9は、プランジャ8とウェイト5との間に設けられているため、プランジャ8とウェイト5とを相反する方向へ移動させることができる。それゆえにプランジャ8を移動させるための弾性部材とウェイトを移動させるための弾性部材とを別個に設ける必要がない。このため、部品点数を減少させることができ、製造時のコストを低減し且つ製造の容易化を図ることができる。
また、コイルスプリング9の下端部はプランジャ8に当接し、上端部はウェイト5に当接しているため、コイルスプリング9がハウジング2に当接しておらず、コイルスプリング9に蓄積された弾性エネルギはプランジャ8とウェイト5とを相反する方向へ移動させるためにそのほとんどが利用される。このため、打込時のハウジング2に対する反動をより抑制することができ、より操作性を良好にすることができる。
次に、図5及び図6に基づいて本発明の第1の実施の形態の変形例による釘打機200について説明する。基本的な構成は第1の実施の形態の釘打機1と同様である。以下の説明において、上述した第1の実施の形態による釘打機1の構成要素と同じ部材や要素は同じ参照番号を付して、説明を省略する。
図5及び図6に示すように、釘打機200は、プランジャ208と、ウェイト205と、ノーズ部210とを備えている。プランジャ208は、ブレード282を有しており、ブレード282は、金属材料を細長いプレート形状に成形したものであり、付勢部81の前方において外周面に下方に延出するように接続されている。ブレード282の下部は、ノーズ部210内部において摺動可能に構成されている。
ウェイト205は、上下方向に延びる筒部205Aを有しており、筒部205Aにはスリット205bが形成されている。スリット205bは、筒部205Aの前側下端部から上方に延びて形成されており、プランジャ208が下死点から上死点に移動する際にブレード282と付勢部81との接続部を挿通可能としている。筒部205Aは、筒状部に相当する。
ノーズ部210は、本体部21の下側前端部に設けられており、その内部には射出孔10aが形成されている。射出孔10aは、上下方向に延びる孔であって、ブレード282の下部を摺動可能に支持している。
このように、本発明の第1の実施の形態の変形例による釘打機200のノーズ部210の位置は、釘打機1とノーズ部10の位置と異なり、ノーズ部10よりも前側に位置している。このため、釘打機1においては本体部21の前側が障害物に当接してしまい図示せぬ止具を打込めない場所であっても図示せぬ止具を打込むことができる。
釘打機200の動作は、本発明の第1の実施の形態による釘打機1と同様であり、同一の構成及び要素からは本発明の第1の実施の形態による釘打機1と同様の作用及び効果を生じる。
次に、図7及び図8に基づいて本発明の第2の実施の形態による釘打機300について説明する。基本的な構成は第1の実施の形態の釘打機1と同様である。以下の説明において、上述した第1の実施の形態による釘打機1の構成要素と同じ部材や要素は同じ参照番号を付して、説明を省略する。
図7及び図8に示すように、釘打機300は、第2滑車306と、第2ワイヤ307とを備えている。第2滑車306は、ウェイト5に関して第1滑車6の反対側に設けられており、プランジャバンパ21Eの後部下方において本体部21に回転可能に支承されている。また、第2滑車306には第2ワイヤ307が掛けられている。
第2ワイヤ307は、繊維状の鋼線を束ねて形成されており、一端側においてとウェイト5の筒部5Aの後部下端部に接続され、他端側においてプランジャ8のブレード82の後方に接続されている。また、第2ワイヤ307の長さはプランジャ8が下死点に位置し且つウェイト5の蓋部5Bがウェイトバンパ21Dの当接している状態(図7の状態)において僅かに撓む程度に設計されている。第2ワイヤは第2線材に相当する。
第2ワイヤ307が第2滑車306を介してウェイト5とプランジャ8とを連結しているため、ウェイト5が上方に移動した際にはプランジャ8は第2ワイヤ307の張力によって下方に移動する。また、プランジャ8を上方に移動させた際には、第2ワイヤ307の張力によってウェイト5は下方に移動する。
このように、本発明の第2の実施の形態による釘打機300は、ウェイト5に関して第1滑車6の反対側に設けられた第2滑車306と、第2滑車306に掛けられ一端側においてウェイト5と接続され他端側においてプランジャ8と接続された第2ワイヤ307と備えているため、打込時においてウェイト5が第2の方向(上方)へ移動する際に第2ワイヤ307に発生する張力によってプランジャを第1の方向(下方)へ牽引することができる。このため、第2ワイヤ307の張力を打込力として利用することができ、打撃力を向上させることができる。
釘打機300のプランジャ8が下死点から上死点に移動しコイルスプリング9に蓄積された弾性エネルギが解放されるまでの動作は、本発明の第1の実施の形態による釘打機1と同様であり、同一の構成及び要素からは本発明の第1の実施の形態による釘打機1と同様の作用及び効果を生じる。
釘打機300においては、打込途中でプランジャ8が急激に停止した場合においても、ウェイト5が慣性によって上方に移動することで第2ワイヤ307に張力が発生し、第2ワイヤ307の張力が停止したプランジャ8を下方に牽引するように働くため、打込力を安定させることができる。
次に、図9及び図10に基づいて本発明の第3の実施の形態による釘打機400について説明する。基本的な構成は第1の実施の形態の釘打機1と同様である。以下の説明において、上述した第1の実施の形態による釘打機1、第1の実施の形態の変形例による釘打機200及び第2の実施の形態による釘打機300の構成要素と同じ部材や要素は同じ参照番号を付して、説明を省略する。
図9及び図10に示すように、釘打機400は、ウェイト405と、コイルスプリング409とを備え、本体部21内部には、ガイド筒部421Aと、スプリング当接部421Bとが形成されている。
ウェイト405は、拡径部405Eを有している。拡径部405Eは筒部205Aの上端部において筒部205Aの半径方向外方に拡径する部分であって、その下面においてコイルスプリング409と当接している。
ガイド筒部421Aは、本体部21の下部から上方に延びる筒状の部材であって、金属材料から構成されている。ガイド筒部421Aの内径は、ウェイト405の外径よりも僅かに大きく設計されており、ウェイト405をガイド筒部421Aの内部において上下方向に摺動可能に支持している。また、ガイド筒部421Aには、第1スリット421aと第2スリット421bとが形成されている。
スリット421aは、ガイド筒部421Aの前側下端部から上方に延びて形成されており、プランジャ208が下死点から上死点に移動する際にブレード282と付勢部81との接続部を挿通可能としている。また、スリット421bは、ガイド筒部421Aの後側下端部から上方に延びて形成されており、ウェイト5が下死点から上死点に移動する際にウェイト5の筒部5Aと第1当接部5C及び第2当接部5Dとの接続部を挿通可能としている。
スプリング当接部421Bは、本体部21の上下方向略中央の内面から本体部21と一体にガイド筒部421Aの外周面まで延出して形成された部分であって、上面視において環状をなしている。スプリング当接部421Bの上面はコイルスプリング409と当接している。
コイルスプリング409は、圧縮されることで弾性エネルギを蓄積し、圧縮状態が解除された際に弾性エネルギを解放する圧縮バネであり、ウェイト405の拡径部405Eとスプリング当接部421Bとの間に設けられている。コイルスプリング409の直径はガイド筒部421Aの直径よりも大きく設計されており、ガイド筒部421Aの半径方向外方に設けられている。また、コイルスプリング409の上端部はウェイト405の拡径部405Eの下面と当接しており、下端部はスプリング当接部421Bの上面と当接している。コイルスプリング409は圧縮された状態においては、ウェイト405を上方に付勢しており、当該圧縮が解除された際には、蓄積された弾性エネルギの解放によってウェイト405を上方に移動させる。コイルスプリング409は、弾性部材に相当する。
次に、釘打機400の動作を説明する。図9の状態から、ユーザがハンドル部23を把持して釘打機1を被打込材Wの上面に対して略直交するように保持し、トリガ23Aを引くとモータ3が駆動を開始する。モータ3が駆動を開始すると、回転軸3Aが回転駆動され、減速機構30を介して回転軸3Aの回転が駆動機構4に伝達される。回転が伝達された駆動機構4はウェイト405を下方に移動させる。ウェイト405が下方に移動すると、第1ワイヤ7に張力が発生し、プランジャ208は第1ワイヤ7に牽引され上方に移動する。また、同時にウェイト405の拡径部405Eとスプリング当接部421Bとの間でコイルスプリング9は圧縮される。コイルスプリング409が圧縮され弾性エネルギが蓄積されると、ウェイト405は上方に付勢される。
図10に示すように、プランジャ208が上死点に達し、第1ローラカム42Aと第1当接部5Cとの当接は解除されると、コイルスプリング409に蓄積された弾性エネルギが解放され、コイルスプリング409はウェイト405を上方に加速させる。コイルスプリング409によってウェイト405が上方に加速されると、第2ワイヤ307に張力が生じ、当該張力によってプランジャ208は下方に牽引され加速される。下方に加速されたプランジャ208は図示せぬ止具を打撃し、プランジャバンパ21Eに当接し図9の状態すなわち下死点に戻る。
このように、本発明の第3の実施の形態による釘打機400においては、コイルスプリング409に弾性エネルギを蓄積させる際に第1ワイヤ7に負担がかかり、弾性エネルギの解放の際に第2ワイヤ307に負担がかかる。このため、コイルスプリング409に弾性エネルギを蓄積させる際及び弾性エネルギの解放の際に1つの線材に負担がかかる場合と比較して第1ワイヤ7及び第2ワイヤ307共に長寿命となり、釘打機400を長寿命とすることができる。
本発明による打込機は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、コイルスプリング9及び409を空気バネに置き換えてもよく、また、磁力を用いてプランジャ8に付勢力を付加する構成としてもよい。また、コイルスプリング9及び409は圧縮バネであったが、伸延することで弾性エネルギを蓄積し、伸延状態が解除されることで弾性エネルギを解放する引張バネであってもよい。さらに、ワイヤの種類は限定されるものではなく、例えば、上記実施形態における鋼線を束ねたものの他に単芯でもよく、材料に関しても、金属に限定されず、プラスチック等のアラミド繊維をひも状に束ねたものなどでもよい。また、ワイヤロープに限定されず、鎖やチェーンなどのひも状の部材であってもよい。