以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、公園における犯罪の発生を防止するべく当該公園を監視する犯罪防止システムに適用した場合について説明する。
まず、図1を参照して、本発明が適用された犯罪防止システム10の全体構成を説明する。
同図に示すように、本形態に係る犯罪防止システム10は、当該システム10の中心的な役割を担う犯罪防止装置20と、当該システム10において監視対象としている領域(ここでは公園であり、以下、「監視対象領域」という。)内を撮影する複数のカメラ40と、を有しており、各カメラ40は犯罪防止装置20に電気的に接続されている。
一方、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、図2に示されるように、カメラ40が、監視対象領域60の周囲における複数の位置(本実施の形態では、4箇所)に、当該監視対象領域60を撮影可能な位置および状態で設けられている。なお、カメラ40は監視対象領域60を監視するためのものであるため、監視対象領域60の全域に対して死角を生じない状態で設けることが好ましく、監視対象領域の形状、監視対象領域内の障害物の配設状態、用途等に応じて設置数や設置位置を決定する。また、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、カメラ40として、カラーで動画像の撮影を行うことのできるデジタルカメラを適用しており、当該カメラ40にて、監視対象領域60の画像を示す画像情報を取得することができる。
次に、図3を参照して、犯罪防止システム10において特に重要な役割を有する犯罪防止装置20の電気系の要部構成を説明する。
同図に示すように、本実施の形態に係る犯罪防止装置20は、犯罪防止装置20全体の動作を司るCPU(Central Processing Unit)20Aと、CPU20Aによる各種処理プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)20Bと、各種制御プログラムや各種パラメータ等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)20Cと、各種情報を記憶するために用いられる記憶手段としての二次記憶部(ここでは、ハードディスク装置)20Dと、各種情報を入力するために用いられるキーボード20Eと、各種情報を表示するために用いられるディスプレイ20Fと、外部装置等との間の各種信号の授受を司る外部I/F(インタフェース)20Gと、が備えられており、これら各部はシステムバスBUSにより電気的に相互に接続されている。
従って、CPU20Aは、RAM20B、ROM20C、および二次記憶部20Dに対するアクセス、キーボード20Eを介した各種入力情報の取得、ディスプレイ20Fに対する各種情報の表示、および外部I/F20Gを介した外部装置等との間の各種信号の授受を各々行うことができる。なお、前述した各カメラ40は、外部I/F20Gを介して犯罪防止装置20に電気的に接続されている。
一方、図4には、犯罪防止装置20に備えられた二次記憶部20Dの主な記憶内容が模式的に示されている。
同図に示すように、二次記憶部20Dには、各種データベースを記憶するためのデータベース領域DBと、犯罪防止装置20を制御するための制御プログラムや各種処理を行うためのプログラム等を記憶するためのプログラム領域PGと、が設けられている。
また、データベース領域DBには、位置情報データベースDB1、障害物情報データベースDB2、および犯罪リスク値データベースDB3が含まれる。以下、各データベースの構成について詳細に説明する。
上記位置情報データベースDB1は、一例として図5に示されるように、カメラID(Identification)、画素位置、および位置座標の各情報が、カメラ40の各々毎に記憶されるように構成されている。
なお、上記カメラIDは、カメラ40を識別するために、カメラ毎に異なる情報(本実施の形態では、アルファベットと数字を組み合わせた情報)として予め付与されたものである。
ところで、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、各カメラ40を、撮影方向および拡大率を固定とすることにより、撮影範囲(画角)を予め定められた範囲で固定としておき、その状態で各カメラ40に内蔵された固体撮像素子による画素位置と、これに対応する、監視対象領域60を平面視した場合の予め定められた基点位置を原点としたX−Y座標系における位置座標とを関連付けて記憶しておき、この情報に基づいて、カメラ40から得られた画像情報により示される監視対象領域60の画像に存在する人の位置を特定するようにしている。
位置情報データベースDB1における画素位置および位置座標は、上記固体撮像素子による画素位置および上記X−Y座標系における位置座標に相当するものであり、これらの情報を参照することによって、各カメラ40により撮影された画像内に存在する人の位置を特定することができる。
なお、本実施の形態に係る位置情報データベースDB1では、図5に示されるように、上記画素位置として、上記固体撮像素子における矩形状とされた画素領域(撮像領域)の一対の対角の座標値を適用し、撮影画像内に存在する人の領域が最も多く含まれる上記画素領域に対応する位置座標を参照することによって当該人の上記X−Y座標系における位置を特定している。このように、本実施の形態では、上記画素位置として、予め定められた範囲を有する情報を適用しているが、これに限らず、例えば、画素位置として上記固体撮像素子における画素領域の1点の座標値を適用し、撮影画像内の人の所定位置(例えば、体全体の重心位置や、頭部の中心位置等)が最も近い画素位置に対応する位置座標を当該人の上記X−Y座標系における位置であるものとして特定する形態等とすることができることも言うまでもない。
一方、上記障害物情報データベースDB2は、一例として図6に示されるように、障害物ID(Identification)、領域、および種別の各情報が、監視対象領域60に存在する、人の歩行の妨げとなる障害物の各々毎に記憶されるように構成されている。
なお、上記障害物IDは、監視対象領域60に存在する障害物(一例として図2に示される植え込みとされた障害物62)を識別するために、障害物毎に異なる情報(本実施の形態では、アルファベットと数字を組み合わせた情報)として予め付与されたものである。
また、上記領域は、対応する障害物が存在する領域(位置)を示す情報である。同図に示されるように、本実施の形態に係る障害物情報データベースDB2では、上記領域を、上記X−Y座標系により、対応する障害物の外接矩形枠の一対の対角の座標値で表しているが、これに限るものではなく、例えば、対応する障害物の輪郭位置の上記X−Y座標系による座標値で表す形態等、他の形態とすることができることは言うまでもない。
また、上記種別は、対応する障害物の、植え込み、噴水、塀といった種別を示す情報である。
一方、上記犯罪リスク値データベースDB3は、一例として図7に示されるように、後述する被守備者に対する、後述する不審者による犯罪リスクの高さを示す犯罪リスク値が、時系列順に記憶されるように構成されている。なお、同図において、・・・,tx,tx+1,tx+2,・・・は犯罪リスク値の導出時刻を表し、S1,S2,・・・は各々異なる不審者を表し、V1,V2,・・・は各々異なる被守備者を表す。
ところで、通常、平常時の人の行動状態には、ある程度の範囲がある。例えば、一例として図8に示すように、歩行者の移動速度は、0.5(m/s)程度から2.3(m/s)程度の範囲内とされている。また、歩行者の移動速度の頻度は正規分布に近いものとなる(例えば、「犬飼洋平他,計測に基づく避難行動マルチエージェントシミュレータの開発,土木学会応用力学論文集 Vol.8,2005」等参照。)。
これに対し、犯罪企図者の犯罪を実行する際の行動状態は、平常時の行動状態の範囲から逸脱する可能性が高い。
そこで、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、監視対象領域60に存在する人の平常時の行動状態を示す物理量(以下、「平常時物理量」ともいう。)を予め計測しておき、この平常時物理量から逸脱した行動をとっている人を不審者として検出する。
より具体的には、本実施の形態に係る犯罪防止システム10は、監視対象領域60に存在する人の上記平常時物理量と同一種類の物理量を導出し、当該物理量の上記平常時物理量からの乖離量(差分)に応じて、当該人の不審度を特定する。そして、犯罪防止システム10は、特定した不審度が予め定められた閾値を超えている人が不審者であるとして検出する。なお、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、監視対象領域60に存在する全ての人を不審者か否かの判定対象とするため、以下では、監視対象領域60に存在する全ての人を「判定対象者」ともいう。
表1に示すように、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、不審者の検出に用いる行動状態の項目として、人の移動状態に関する項目である「移動関連項目」と、人の滞留状態に関する項目である「滞留関連項目」の2種類を採用している。また、上記移動関連項目には、「人の移動速度」、「人の移動方向」、「人の通過位置」等の物理量が含まれ、上記滞留関連項目には、「停止した場合の滞留時間」、「監視対象領域内に滞在する時間」、「滞留する位置」等の物理量が含まれる。
なお、上記「人の移動速度」は、単に人が移動する速度を示す物理量である。また、上記「人の移動方向」は、人が移動する方向を示す物理量であり、上記「人の通過位置」は、人が通過する位置を示す物理量である。すなわち、通勤路や通学路等においては、平常時に人は、ほぼ同一の方向に、ほぼ同一の位置を歩行する。このため、これらに相当する物理量として「人の移動方向」および「人の通過位置」の各物理量を、不審者による行動状態が平常時から逸脱される物理量として採用することができる。
一方、上記「停止した場合の滞留時間」は、一定の位置に滞留し続けた時間を示す物理量である。また、上記「監視対象領域内に滞在する時間」は、監視対象領域60に滞在し続けた時間を示す物理量であり、上記「滞留する位置」は、平常時に滞留してもよい位置を示す物理量である。なお、上記平常時に滞留してもよい位置としては、監視対象領域60に自動販売機が設けられている場合における当該自動販売機の前面近傍の位置や、同様に売店が設けられている場合における当該売店の店内等を例示することができる。
すなわち、人が一定の位置に滞留し続ける時間、人が監視対象とする領域に滞在し続ける時間、および人が平常時に滞留してもよい位置は、監視対象とする領域の用途や時期等に応じて、ある程度固定化される。このため、これらに相当する物理量として上記「停止した場合の滞留時間」、「監視対象領域内に滞在する時間」、「滞留する位置」の各物理量を、不審者による行動状態が平常時から逸脱される物理量として採用することができる。
なお、本実施の形態に係る犯罪防止システム10において、「移動関連項目」および「滞留関連項目」の2つの項目を採用している理由は次の通りである。すなわち、判定対象者が移動している場合には「移動関連項目」に属する物理量のみでも不審者を検出することができるが、判定対象者が移動していない場合には、この物理量では不審者を検出することはできない。これを補うために、「移動関連項目」に加えて「滞留関連項目」に属する物理量を採用しているのである。以下では、「移動関連項目」に属する物理量を示す情報を「移動関連情報」ともいい、「滞留関連項目」に属する物理量を示す情報を「滞留関連情報」ともいう。
本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、上述したように、監視対象領域60として公園を採用している。このため、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、上記「移動関連情報」として、公園における不審者の検出に寄与する度合いが低いと考えられる「人の移動方向」および「人の通過位置」を除き、「人の移動速度」の物理量のみを採用する。これに対し、上記「滞留関連情報」としては、いずれも上記寄与する度合いが高いと考えられる「停止した場合の滞留時間」、「監視対象領域内に滞在する時間」、および「滞留する位置」の3種類の物理量を採用する。
本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、平常時物理量として、次の式(1)によって得られる、平常時物理量を計測する期間(以下、「行動状態計測期間」という。)に監視対象領域60から検出された全ての人の上記物理量の平均値xaを適用している。なお、式(1)におけるxは各人における上記物理量の値そのものを表し、nはサンプル数(xの数)を表す。
このように、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、上記平常時物理量として、単純な平均値を適用しているが、これに限るものではない。例えば、監視対象領域60において犯罪が発生したタイミングで得られた物理量については著しく信頼性が低いため、この物理量を除外した平均値を、上記平常時物理量として適用してもよい。また、上記行動状態計測期間における上記物理量の最大値および最小値の少なくとも一方を除外した平均値を、上記平常時物理量として適用してもよい。
また、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、判定対象者の不審度hとして、次の式(2)によって得られる、判定対象者自身の上記行動状態を示す物理量x’と平均値xaとの差分を適用している。
このように、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、不審度hとして物理量x’と平均値xaとの差分そのものを適用しているが、これに限るものではない。例えば、一例として図8に示されるように、上記物理量xの確率分布D(x)を導出し、一例として図9に示されるように、次の式(3)によって得られる評価値E(x)の、判定対象者自身の物理量x’に対応する値を不審度hとして適用する形態としてもよい。なお、図8および図9に示す例は、平均歩行速度が1.3(m/s)で、標準偏差がσ=0.3である場合の歩行速度の確率分布D(x)と評価値E(x)の一例である。
そして、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、不審者を検出する際に適用する閾値として、次の式(4)によって得られる、上記行動状態計測期間における上記行動状態を示す物理量xの標準偏差σに基づく値を適用している。
なお、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、上記閾値として、標準偏差σの3倍である3σを適用しているが、これに限らない。例えば、監視対象領域に対して要求されるセキュリティ・レベルや、監視対象領域の用途等に応じて、固定値を適用したり、ユーザにキーボード20E等を介して入力させたりする形態等としてもよい。
本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、上述したように、「人の移動速度」、「停止した場合の滞留時間」、「監視対象領域内に滞在する時間」、および「滞留する位置」の4種類の物理量を採用している。このため、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、これら4種類の物理量の各々について対応する閾値との比較を行い、異常であるか否かを判定する。そして、犯罪防止システム10では、上記4種類の物理量による判定結果を総合的に判定するため、一例として図10に示されるフォールトツリーを用いた解析を実行する。
同図に示す例では、「人の移動速度」が異常である場合、すなわち、これに対応する物理量が対応する閾値を超えている場合には、判定対象者を無条件に不審者として検出する。また、同様に、「停止した場合の滞留時間」が異常か、または「監視対象領域内に滞在する時間」が異常で、かつ「滞留する位置」が異常である場合にも、判定対象者を不審者として検出する。
そして、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、以上の処理によって検出した不審者に基づいて、犯罪から守りたい人である被守備者と、被守備者に対する犯罪の発生を防止することが可能な人である守備者と、を特定する。
すなわち、人を対象とした犯罪の場合、被害者に対して物理的に接近することで犯罪が成立する。そこで、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、監視対象領域60内で不審者Sの位置に最も近い人を被守備者Vとし、不審者Sと被守備者Vを除く人を守備者Gとして特定する。
ここで、本実施の形態では、一例として図11に示すように、被守備者Vの上記X−Y座標上の位置を(XV,YV)と表し、守備者Gの上記X−Y座標上の位置を(XG,YG)と表し、不審者Sの上記X−Y座標上の位置を(XS,YS)と表す。そのうえで、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、被守備者Vと守備者Gとの距離DVGと、被守備者Vと不審者Sとの距離DVSとを、次の式(5)および式(6)により求める。
そして、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、距離DVGと距離DVSとの比DVG/DVSに基づいて犯罪リスクを評価する。
ここで、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、犯罪リスク値を正規化するための定数をCとして、次の式(7)によって犯罪リスク値Rを演算する。
ここで、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、被守備者Vに対して不審者Sと守備者Gとが等距離に存在する場合に犯罪リスク値Rを0.5とする、すなわち、距離DVSと距離DVGとが等しく、比DVG/DVSが1となるときに式(7)の演算結果を0.5とする場合には、C=1とする。
定数C=1とし、距離DVSおよび距離DVGを1から10まで変化させたときの犯罪リスク値Rの値の一部を表2に示し、全体の分布状態を図12に示す。守備者Gが被守備者Vに近い(距離DVGが小さい)ほど犯罪リスク値Rが小さくなり、不審者Sが被守備者Vに近い(距離DVSが小さい)ほど犯罪リスク値Rが大きくなる。
ここで、比DVG/DVSを計算する際に距離DVSが0(零)になると発散する。しかしながら、この場合、被守備者Vと不審者Sの距離が0(零)ということは被守備者Vと不審者Sが接触していることになり、既に犯罪が発生したと見なし、犯罪リスク値Rの演算では扱わないこととする(0<DVS<∞)。
式(7)によって犯罪リスク値Rを演算することで、監視対象領域60における犯罪リスクを定量的に評価することができる。
次に、図13および図14を参照して、本実施の形態に係る犯罪防止システム10の作用を説明する。なお、ここでは、錯綜を回避するために、位置情報データベースDB1が予め構築されている場合について説明する。
まず、図13を参照して、前述した平常時物理量を計測する際の犯罪防止システム10の作用を説明する。なお、図13は、犯罪防止装置20のキーボード20E等を介して平常時物理量の計測を開始する旨の指示が受け付けられた際に、CPU20Aにより実行される行動分布計測プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。なお、当該プログラムは二次記憶部20Dのプログラム領域PGに予め記憶されている。
同図のステップ100では、位置情報データベースDB1から全ての情報を読み出し、次のステップ102では、全てのカメラ40から撮影画像を示す画像情報を取得して、二次記憶部20Dの所定領域に記憶する。
次のステップ104では、上記ステップ102の処理によって取得した画像情報により示される画像から当該画像に存在する人を検出する。そして、ステップ104では、当該ステップ104の処理によって検出した人の位置を、上記ステップ100の処理によって位置情報データベースDB1から読み出した情報を用いた前述した方法により検出し、二次記憶部20Dの所定領域に記憶する。なお、上記画像からの当該画像に存在する人の検出は、一例として、FieldAnalyst(登録商標)(NECソフト株式会社)、IMS(Intelligent Monitoring System、エクジット株式会社)等で用いられている技術等の従来既知の技術によって行うことができる。
次のステップ106では、上記ステップ102〜ステップ104の処理の実行が本行動分布計測プログラムの実行を開始してから1回目の実行であるか否かを判定する。ここで、肯定判定となった場合は後述するステップ118に移行する一方、否定判定となった場合にはステップ108に移行する。
ステップ108では、直前の上記ステップ104の処理によって検出した人と同一人物を、本行動分布計測プログラムの実行を開始してから、それまでに得られた画像情報により示される画像に存在する人から検出する。次のステップ110では、上記ステップ108の処理において同一人物が検出されたか否かを判定し、否定判定となった場合は後述するステップ118に移行する一方、肯定判定となった場合にはステップ112に移行する。なお、上記ステップ108の処理における同一人物の特定は、上記ステップ102の処理によって前回までに得られた画像情報(以下、「過去画像情報」という。)と、今回得られた画像情報(以下、「現在画像情報」という。)を用いた従来既知のパターン・マッチング技術等の画像認識技術により行うことができる。
ステップ112では、上記ステップ108の処理によって検出した同一人物に関する移動関連情報および滞留関連情報の各物理量を以下に示すように導出する。
移動関連情報における「人の移動速度」の物理量については、まず、上記過去画像情報により示される画像のうち、上記同一人物が存在する最も新しい(直近の)画像での位置と今回得られた画像での位置との当該同一人物間の距離(以下、「同一人物間距離」という。)を得る。そして、この距離を、これらの各画像に対応する画像情報を取得した時刻の差によって示される経過時間で除算することにより「人の移動速度」の物理量を導出する。なお、以下では、上記同一人物の過去側の画像での位置と今回得られた画像での位置との同一人物間の距離を、「同一人物間距離」という。
また、滞留関連情報における「停止した場合の滞留時間」の物理量については、まず、上記同一人物間距離が、予め定められた期間(本実施の形態では、5秒)を超えて連続して予め定められた第1閾値以下である画像の組み合わせが存在するか否かを判定する。そして、この判定の結果、この組み合わせが存在すると判定された場合に、当該組み合わせの上記連続した画像の数に、上記ステップ102の処理によって画像情報を取得する間隔に相当する時間(以下、「取得間隔時間」という。)を乗算することにより「停止した場合の滞留時間」の物理量を導出する。なお、上記第1閾値としては、上記同一人物間距離が当該第1閾値以下であれば、対応する人がその場から移動していないと見なすことのできる値として予め記憶された値を適用することができる。但し、この形態に限らず、犯罪防止システム10の用途や、犯罪防止システム10に求められるセキュリティ・レベル等に応じた値を上記第1閾値として、ユーザに対しキーボード20E等を介して入力させる形態等としてもよい。
さらに、滞留関連情報における「監視対象領域内に滞在する時間」の物理量は、上記過去画像情報により示される画像のうち、上記同一人物が存在する画像の数に、上記取得間隔時間を乗算することにより導出する。
一方、滞留関連情報における「滞留する位置」の物理量は、前述したように、平常時に滞留してもよい位置を示す物理量であり、事前に平常時物理量として得るべきものではないため、ここでは処理の対象から除外する。なお、本実施の形態に係る犯罪防止システム10では、上記平常時に滞留してもよい位置を示す情報(以下、「滞留可能位置情報」という。)が二次記憶部20Dの所定領域に予め記憶されている。
なお、以上の各物理量の導出方法は一例であって、本発明はこれに限定されるものではないことは言うまでもない。
次のステップ114では、この時点で犯罪が発生していないか否かを判定し、否定判定となった場合は後述するステップ118に移行する一方、肯定判定となった場合はステップ116に移行する。なお、本行動分布計測プログラムでは、本ステップ114の判定処理を、計測対象とする各物理量の平常時の一般的な範囲を示す情報を予め記憶しておき、対応する範囲内に導出した物理量が入っているか否かを判定することにより行っている。しかしながら、この形態に限るものではなく、例えば、それまでに得られている対応する物理量の平均値からの差分が予め定められた閾値以内である場合に犯罪が発生していないと判定する形態等、他の形態としてもよいことは言うまでもない。
ステップ116では、上記ステップ112の処理によって導出した移動関連情報および滞留関連情報の各物理量を二次記憶部20Dの所定領域に記憶し、その後にステップ118に移行する。
ステップ118では、予め定められた終了条件を満足したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ120に移行して所定時間(本実施の形態では、1秒)の経過待ちを行い、その後に上記ステップ102に戻る。また、上記ステップ118において肯定判定となった場合には、ステップ122に移行する。
なお、本実施の形態に係る行動分布計測プログラムでは、上記終了条件として、当該プログラムの実行が開始されてからのステップ104の処理によって検出された人の数が予め定められた人数(本実施の形態では、1000人)を超えたとの条件を適用している。しかしながら、これに限らず、例えば、本行動分布計測プログラムの実行が開始されてから予め定められた期間(例えば、1週間)が経過した、との条件を上記終了条件として適用してもよい。また、キーボード20E等を介して本行動分布計測プログラムの終了を指示する指示入力が行われたとの条件、二次記憶部20Dの残記憶容量が所定量以下となったとの条件等、他の条件を上記終了条件として適用してもよい。
なお、本実施の形態に係る行動分布計測プログラムでは、ステップ102からステップ120までの処理を繰り返し実行する際にステップ116では、それまでに記憶した情報に重複する人の滞留関連情報を記憶する場合がある。この場合、本行動分布計測プログラムでは、それまでに記憶した情報により示される物理量を上回る物理量に限り、当該人に関する滞留関連情報に上書き記憶する。
ステップ122では、上記ステップ116の処理によって記憶された全ての情報を二次記憶部20Dから読み出す。そして、次のステップ124にて、読み出した情報に基づいて、移動関連情報および滞留関連情報の各物理量の各々毎に、前述した式(1)および式(4)を用いて平均値xaおよび標準偏差σを演算する。また、ステップ124では、演算した平均値xaおよび標準偏差σを二次記憶部20Dの所定領域に記憶し、その後に本行動分布計測プログラムを終了する。
次に、図14を参照して、監視対象領域60における犯罪の発生を防止する犯罪防止処理を実行する際の犯罪防止システム10の作用を説明する。なお、図14は、キーボード20E等を介して犯罪防止処理の実行指示が受け付けられた際に、CPU20Aにより実行される犯罪防止プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。このプログラムも二次記憶部20Dのプログラム領域PGに予め記憶されている。
同図のステップ200では、位置情報データベースDB1の全ての情報と、上記行動分布計測プログラムの処理によって記憶された移動関連情報および滞留関連情報の各物理量に関する平均値xaおよび標準偏差σを二次記憶部20Dから読み出す。次のステップ202では、全てのカメラ40から撮影画像を示す画像情報を取得して、二次記憶部20Dの所定領域に記憶する。
次のステップ204では、上記ステップ202の処理によって取得した画像情報により示される画像から当該画像に存在する人(判定対象者)を、上記行動分布計測プログラムのステップ104の処理と同様の処理により検出する。そして、ステップ204では、検出した判定対象者の各々の位置を、上記ステップ200の処理によって位置情報データベースDB1から読み出した情報を用いた前述した方法により検出し、二次記憶部20Dの所定領域に記憶する。
次のステップ206では、上記ステップ202〜ステップ204の処理の実行が本犯罪防止プログラムの実行を開始してから1回目の実行であるか否かを判定する。ここで、肯定判定となった場合は後述するステップ228に移行する一方、否定判定となった場合にはステップ208に移行する。
ステップ208では、上記行動分布計測プログラムのステップ108の処理と同様に、直前の上記ステップ204の処理によって検出した判定対象者と同一人物を、本犯罪防止プログラムの実行を開始してから前回までに得られた画像情報により示される画像から検出する。次のステップ210では、上記ステップ208の処理において同一人物が検出されたか否かを判定し、否定判定となった場合は後述するステップ228に移行する一方、肯定判定となった場合にはステップ212に移行する。
ステップ212では、上記ステップ208の処理によって検出した同一人物に関する移動関連情報および滞留関連情報を、上記行動分布計測プログラムのステップ112の処理と同様に導出する。
次のステップ214では、上記同一人物が検出された全ての判定対象者について、前述した式(2)を用いて移動関連情報および滞留関連情報の物理量毎に不審度hを導出する。
次のステップ216では、以上によって得られた不審度hおよび対応する物理量の閾値(本実施の形態では、対応する標準偏差σの3倍の値)に基づき、前述したフォールトツリー(図10も参照。)を用いて、判定対象者に不審者Sが存在するか否かを判定する。ここで、否定判定となった場合は後述するステップ228に移行し、肯定判定となった場合にはステップ218に移行する。なお、この際、滞留関連情報における「滞留する位置」の物理量に関しては、前述した滞留可能位置情報により示される位置を含む予め定められた領域を除く領域に、判定対象者が存在する場合に異常であるものと判定する。
ステップ218では、上記ステップ204の処理によって検出された判定対象者のうち、上記ステップ216の処理において存在すると判定された不審者Sの位置に最も近い人を被守備者Vとし、不審者Sと被守備者Vを除く人を守備者Gとして特定する。次のステップ220では、以上の処理によって得られた守備者Gと被守備者Vとの距離DVGを前述した式(5)により演算した後、次のステップ222では、以上の処理によって得られた不審者Sと被守備者Vとの距離DVSを前述した式(6)により演算する。
次のステップ224では、以上の処理によって得られた距離DVGおよび距離DVSを用いて、前述した式(7)を用いて不審者S毎に犯罪リスク値Rを演算した後、犯罪リスク値データベースDB3に記憶(登録)する。次のステップ226では、上記ステップ224の処理によって得られた犯罪リスク値Rを用いて、犯罪を防止するものとして予め定められた処理を実行し、その後にステップ228に移行する。
なお、本実施の形態に係る犯罪防止プログラムでは、上記ステップ226における予め定められた処理として次の3種類の処理を適用している。
処理1.犯罪リスク値Rを対応する人の映像に対応付けてディスプレイ20Fにより表示する処理。
処理2.犯罪リスク値Rに所定閾値以上であるものが存在する場合に警告を発する処理。
処理3.犯罪リスク値Rが所定閾値以上である場合に、対象となる被守備者に最も近い守備者に対して犯罪リスクが高いことを報知する処理。
なお、上記処理2を適用する場合は、監視対象領域60にスピーカを設けておき、当該スピーカにより警告を発する形態を適用することができる。また、この場合、監視対象領域60の監視者や警備員に対し、PDA(Personal Digital Assistant,携帯情報端末)等の端末装置を介して警告を発する形態等、様々な形態を適用することができる。
また、上記処理3の処理を適用する場合は、監視対象領域60にスピーカを設けておき、当該スピーカにより、上記対象となる被守備者に最も近い守備者に対して犯罪リスクが高いことを報知する形態を適用することができる。また、この場合、当該守備者に対し、PDA等の端末装置を介して犯罪リスクが高いことを報知する形態等、様々な形態を適用することができる。
ここで、上記処理2〜処理3の各処理を適用する場合の上記所定閾値は、要求されるセキュリティ・レベル、用途等に応じて自動的に設定する形態の他、犯罪防止システム10のユーザによってキーボード20E等を介して入力させる形態とすることもできる。
このように、本実施の形態に係る犯罪防止プログラムでは、上記予め定められた処理として上記処理1〜処理3の3種類の処理を適用しているが、これに限らず、例えば、これらの処理の何れか1つや、2つの組み合わせを適用する形態とすることもできる。
ステップ228では、予め定められた終了条件を満足したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ230に移行して所定時間(本実施の形態では、1秒)の経過待ちを行い、その後に上記ステップ202に戻る。また、上記ステップ228において肯定判定となった場合には、本犯罪防止プログラムを終了する。
なお、本実施の形態に係る犯罪防止プログラムでは、上記ステップ228の処理において適用する終了条件として、監視対象領域60の監視を終了する時刻として予め定められた時刻に達した、との条件を適用しているが、これに限らず、例えば、キーボード20E等を介して本犯罪防止プログラムの終了を指示する指示入力が行われた、との条件、二次記憶部20Dの残記憶容量が所定量以下となった、との条件等、他の条件を適用することもできることは言うまでもない。
上記犯罪防止プログラムのステップ216の処理が本発明の検出手段に、ステップ218の処理が本発明の特定手段に、ステップ224の処理が本発明の導出手段に、ステップ226の処理が本発明の処理実行手段に、各々相当する。
以上詳細に説明したように、本実施の形態では、対象領域(ここでは、監視対象領域60)を連続的に撮影する撮影手段(ここでは、カメラ40)により得られた複数の撮影画像により示される、前記対象領域に存在する人の行動状態に基づいて、当該対象領域における不審者を検出し、前記撮影画像に存在する人のうち、前記検出した不審者を除く人で、かつ当該不審者に最も近い人から予め定められた順位まで近い人(ここでは、1番近い人)を被守備者とし、他の人を守備者として特定し、前記不審者、前記被守備者、および前記守備者の位置関係に基づいて、前記不審者の前記被守備者に対する犯罪リスクの高さを示す犯罪リスク値を導出しているので、守備者や被守備者に対して特別な装備を義務づけることなく、犯罪リスクの高さを示す犯罪リスク値を導出することができる。
また、本実施の形態では、前記撮影手段により得られた複数の撮影画像に基づいて、前記対象領域に存在する人の行動状態と当該対象領域の平常時における不特定多数の人による行動状態との差分に基づいて、当該対象領域における不審者を検出しているので、より簡易かつ高精度で不審者を検出することができる。
また、本実施の形態では、前記犯罪リスク値を用いて、犯罪を防止するものとして予め定められた処理を実行しているので、より効果的に犯罪の発生を防止することができる。
特に、本実施の形態では、前記予め定められた処理として、前記犯罪リスク値を報知する処理、前記犯罪リスク値が予め定められた閾値以上である場合に警報を発する処理等を実行しているので、より効果的に犯罪の発生を防止することができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
例えば、上記実施の形態では、犯罪リスク値Rを式(7)により導出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、次の式(8)により犯罪リスク値Rを導出する形態としてもよい。
ここで、式(8)におけるPは、不審者Sが犯行に及ぶ確率である。なお、確率Pは、一例として本発明の発明者らによる特開2010−250775号公報や、「近藤正芳他,犯罪リスク評価のための人の属性に基づく犯罪確率の評価手法 −犯罪リスク評価手法の研究(その6)−,日本建築学会大会学術講演梗概集,2010,pp.1017−1018」等に記載の方法で得ることができる。この場合、上記実施の形態に比較して、より高精度で犯罪リスク値Rを導出することができる。
また、上記実施の形態では、不審者の検出に移動関連情報および滞留関連情報の双方の物理量を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、これらの情報の何れか一方のみの物理量を用いて不審者の検出を行う形態としてもよい。この場合、上記実施の形態に比較して、不審者の検出精度は低下するものの、演算負荷は低減することができる。
また、上記実施の形態では、不審度の導出に移動関連情報および滞留関連情報の2種類の物理量を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、顔を隠している場合に、他の場合と比較して不審度を上げる形態としてもよい。
すなわち、犯罪企図者は、周囲の人に顔を見られることや、監視カメラに撮影されて人相を特定されることを避けるため、ヘルメット、サングラス、マスク等で顔を隠している可能性が高いと考えられる。また、フルフェイスのヘルメットとマスクとでは顔を隠している部分の面積が異なるが、隠している部分の面積が大きいほど不審者である可能性が高いと考えられる。
その一方で、時期によっては、花粉症やインフルエンザ対策等のため、普段からマスクを着用している人が増えている場合もある。このため、この形態では、監視対象領域内の人のうち、顔を隠しており、年齢および性別の少なくとも一方が推定できない人の割合fhを、一例として次の式(9)により演算する。なお、式(9)におけるnhは年齢および性別の少なくとも一方が推定できない人の数で、nは監視対象領域に存在する人の数である。
ここで、年齢および性別の推定は、一例として上記IMS等で用いられている技術等の従来既知の技術によって行うことができる。
そして、この形態では、判定対象者の年齢および性別の少なくとも一方が推定できない場合、当該判定対象者の不審度として、割合fhが小さいほど大きな値を適用する。なお、この形態における不審度は、単独で用いても、上記実施の形態に記載の不審度と併用してもよいことは言うまでもない。これらの場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態では、フォールトツリーを用いて判定対象者が不審者であるか否かを総合的に判定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、不審度の導出のために採用した物理量の各々毎に不審者か否かを判定し、その結果、予め定められた数以上で不審者であると判定された場合に最終的に不審者であるものと判定する形態としてもよい。
また、上記実施の形態では、移動関連情報として「人の移動速度」の物理量のみを用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、当該「人の移動速度」の物理量に加えて、「人の移動方向」および「人の通過位置」の各物理量の1つ、または複数の組み合わせを用いる形態としてもよい。この場合、上記実施の形態に比較して、より高精度で不審者を検出することができる。
また、上記実施の形態では、不審者Sに最も近い人を被守備者Vとして特定する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、不審者Sに最も近い人から予め定められた順位まで近い人を被守備者Vとして特定する形態としてもよい。なお、この形態における上記順位は、監視対象領域60の用途や要求されるセキュリティ・レベル等に応じて固定的に設定してもよいし、ユーザにキーボード20E等を介して入力させる形態等としてもよい。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態では、不審度hを上記式(2)または式(3)によって演算する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、次の式(10)により不審度h’を導出する形態としてもよい。なお、式(10)におけるAは採用する物理量の平均値xaを表し、Bは当該物理量に対応する上記実施の形態に係る不審度hを表し、αは平均値Aの重み付け値を表し、βは不審度Bの重み付け値を表す。ここで、重み付け値αと重み付け値βの合計値は1とする。
なお、この形態では、セキュリティ・レベルを高くしたいほど、重み付け値βの値を大きくする。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態では、平常時物理量を計測した後に犯罪防止処理を実行する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、犯罪防止処理を実行しつつ、平常時物理量を計測する形態、すなわち、平常時物理量を逐次更新する形態としてもよい。この場合、上記実施の形態に比較して、より高精度で不審度を導出することができる。
また、上記実施の形態では、平常時物理量を、犯罪防止処理の実行対象とする監視対象領域60を対象として計測する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、監視対象領域60とは異なる領域を対象として平常時物理量を計測する形態としてもよい。但し、この場合に適用する領域は、監視対象領域60の用途、位置、使用される時間帯等の条件ができるだけ近い領域とすることが好ましい。
また、上記実施の形態では、監視対象領域60に存在する障害物については何ら考慮することなく、犯罪リスク値を導出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、当該障害物を考慮して、犯罪リスク値を導出する形態とすることもできる。
この場合の形態例としては、被守備者Vと守備者Gの距離DVGと、被守備者Vと不審者Sの距離DVSとを導出する際に、被守備者Vと守備者Gの間に、障害物情報データベースDB2に登録されている領域情報により示される障害物の領域が存在する場合は、当該障害物の領域を迂回するものとして距離DVGを導出し、被守備者Vと不審者Sとの間に上記障害物の領域が存在する場合は、当該障害物の領域を迂回するものとして距離DVSを導出する形態を例示することができる。これにより、より高精度に犯罪を防止することができる。
また、上記実施の形態では、平常時物理量を計測する時期については特に言及しなかったが、例えば、季節、月、月内の上旬・中旬・下旬、1日内の所定時間毎(一例として、1時間毎)といった期間毎に予め計測しておく形態としてもよい。この形態では、犯罪防止処理を実行する際には、当該実行する時期に対応する時期に取得した平常時物理量を適用する。この場合も、より高精度に犯罪を防止することができる。
また、上記実施の形態では、犯罪が発生したタイミングで得られた物理量を平常時物理量の導出対象から除外する場合について説明したが、この物理量を除外しない形態としてもよい。この形態により、不審者の検出精度はやや低下するものの、当該物理量の除外のための演算負荷を削減することができる。
また、上記実施の形態では、複数の物理量を総合的に判断することにより、不審者を検出する場合について説明したが、単一の物理量によって不審者を検出する形態としてもよい。
また、上記実施の形態では、犯罪を防止するための処理として、犯罪リスク値を報知する処理や、犯罪リスク値が所定閾値以上である場合に警告や警報を発する処理を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、犯罪リスク値が最も高い不審者に対して注目度を上げる(マークする)ための処理や、犯罪リスク値が急激に変化した場合に警報を発する処理等を、犯罪を防止するための処理として適用する形態としてもよい。
また、上記実施の形態では、カメラ40を4台設ける場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、カメラ40は1台のみ設けてもよく、4台以外の複数台設けてもよいことは言うまでもない。これらの場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態では、距離DVGおよび距離DVSとしてユークリッド距離を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、マンハッタン距離等の他の距離を適用する形態とすることもできる。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態では、撮影手段としてカラーで動画像の撮影を行うことのできるカメラを適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、モノクロで動画像の撮影を行うことのできるカメラ、赤外線カメラ等の他のカメラを適用する形態とすることもできる。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、上記実施の形態では、本発明の対象領域として公園を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、公開空地、通学路、通勤路等の他のオープンスペースの他、建物の内部等のクローズされた空間も適用することができる。この場合も、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
その他、上記実施の形態で説明した犯罪防止システム10の構成(図1〜図4参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な構成要素を削除したり、新たな構成要素を追加したりすることができることは言うまでもない。
また、上記実施の形態で示した各プログラムの処理の流れ(図13,図14参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な処理ステップを削除したり、新たな処理ステップを追加したり、処理ステップの順序を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。
また、上記実施の形態で示した各種データベースの構成(図5〜図7参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、一部の情報を削除したり、新たな情報を追加したり、記憶位置を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。
さらに、上記実施の形態で示した各種演算式(式(1)〜式(10)参照。)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要なパラメータを削除したり、新たなパラメータを追加したり、演算の順序を入れ替えたりすることができることは言うまでもない。