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JP2015192656A - D−乳酸の製造方法 - Google Patents

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JP2015192656A JP2015042235A JP2015042235A JP2015192656A JP 2015192656 A JP2015192656 A JP 2015192656A JP 2015042235 A JP2015042235 A JP 2015042235A JP 2015042235 A JP2015042235 A JP 2015042235A JP 2015192656 A JP2015192656 A JP 2015192656A
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Abstract

【課題】木質バイオマスを原料として使用し、D−乳酸生産菌を用いて、高い光学純度のD−乳酸を高い生産量で製造する方法を提供すること。【解決手段】本発明は、D−乳酸生産菌を用いて木質バイオマスからD−乳酸を発酵生産するD−乳酸の製造方法であって、D−乳酸生産菌による発酵が、マグネシウム濃度が32mg/L 以上180mg/L以下である培地中で行われる、D−乳酸の製造方法を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、木質バイオマスを原料として使用し、D−乳酸生産菌を用いてD−乳酸を製造する方法に関する。
セルロースを含む木質系バイオマスを原料とし、微生物の働きにより、エタノール、ブタノール等の燃料として利用可能な物質や、有用物質を発酵生産する方法が実施されている。発酵生産されるもののうち、乳酸は、生物の解糖系によりグルコースなどの糖分が分解されて生産される有機酸であり、TCA回路に誘導されて生体エネルギー産生の起点になる重要な化合物である。乳酸をエステル化した乳酸メチルや乳酸エチルはバイオ燃料として利用できる可能性がある。また乳酸は溶剤、食品の原料になりうる。さらに光学純度の高い乳酸は、ポリ−L−乳酸又はポリ−D−乳酸を合成するための原料モノマーとなる。原料モノマーの光学純度は、重合度やガラス転移点に影響するため、ポリ乳酸製造のためには原料乳酸の光学純度が高いこと、例えば98%ee以上であることが必要とされる。
乳酸の発酵生産を効率的に行うため方法が種々検討されている。例えば、特許文献1は、高い収率でしかも安価に乳酸を製造できる方法として、乳酸菌の培養における培地が窒素源として乾燥酵母を含むことを特徴とする、乳酸菌による乳酸の製造方法を提案している。また特許文献2は、リグノセルロース系バイオマスから、効率よく糖化液を製造する方法として、リグノセルロース系バイオマスを粉砕する工程と、得られた粉砕物を加水分解酵素を用いて加水分解する工程とを含む、糖化液の製造方法を提案する。さらに該糖化液を含む培地で微生物を培養することによる、乳酸などの微生物代謝産物の製造方法を提案する。
特開2007−215428号公報 特開2010−104361号公報
本発明は、木質バイオマスを原料として使用し、D−乳酸生産菌を用いて、高い光学純度のD−乳酸を高い生産量で製造する方法を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らはバイオマス原料からのD−乳酸の製造について種々検討してきた。その中で、乳酸菌の培養においては添加することが常識とされてきたマグネシウムに着眼した。従来、乳酸菌の培養のための培地には、通常マグネシウム源として硫酸マグネシウムが添加されてきた。そして硫酸マグネシウムを添加しない場合は、乳酸菌は増殖せず、また発酵(有用物質生産)もしないと考えられてきた。しかしながら本発明者らは、バイオマス原料由来のマグネシウムを利用することとし、比較的低濃度のマグネシウムを含む培地を用いた場合であっても良好な乳酸菌の培養を実施することができることを見出した。そしてそればかりでなく、予想外にも低濃度のマグネシウムを含む培地により、高い光学純度のD−乳酸を高い生産量で製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] D−乳酸生産菌を用いて木質バイオマスからD−乳酸を発酵生産するD−乳酸の製造方法であって、D−乳酸生産菌による発酵が、マグネシウム濃度が32mg/L 以上180mg/L 以下である培地中で行われる、D−乳酸の製造方法。
[2] D−乳酸生産菌を用いて木質バイオマスからD−乳酸を発酵生産するD−乳酸の製造方法であって、D−乳酸生産菌による発酵が、マグネシウム濃度が6500mg/L以下 であり、かつ木質バイオマスを含む培地中で行われる、D−乳酸の製造方法。
[3] D−乳酸生産菌を用いて木質バイオマスからD−乳酸を発酵生産するD−乳酸の製造方法であって、D−乳酸生産菌による発酵が、マグネシウム濃度が32mg/L以上6500mg/L以下であり、かつアルミニウム、マンガン、鉄、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択される一つ以上を含む培地中で行われる、D−乳酸の製造方法。
[4] D−乳酸菌による発酵が、酵素及びD−乳酸生産菌を同時に作用させて糖化及び発酵を併行して行うものである、[1]から[3]の何れか1項に記載のD−乳酸の製造方法。
[5] 糖化の前、又は糖化及び発酵を併行して行う前に、木質バイオマスに前処理を施す、[1]から[4]の何れか1項に記載のD−乳酸の製造方法。
[6] D−乳酸生産菌が、ラクトバシラス属に属する乳酸菌である、[1]から[5]の何れか1項に記載のD−乳酸の製造方法。
[7] D−乳酸生産菌が、ラクトバシラス・デルブルキに属する乳酸菌である、[1]から[6]の何れか1項に記載のD−乳酸の製造方法。
[8] D−乳酸菌による発酵が、酵素及びD−乳酸生産菌を同時に作用させて糖化及び発酵を併行して行うものであり、前記の糖化及び発酵を塩基の存在下において行う、[1]から[7]の何れか1項に記載のD−乳酸の製造方法。
[9] 塩基が炭酸カルシウムである、[8]に記載のD−乳酸の製造方法。
[10] 嫌気条件下で糖化及び発酵を併行して行う、[7]又は[8]に記載のD−乳酸の製造方法。
[11] D−乳酸生産菌による発酵が、ペプトン、牛肉エキス、及び酵母エキスからなる群より選択される一つ以上が添加された培地中で行われる、[1]から[10]の何れか1項に記載の製造方法。
[12] 酵母エキスがビール酵母由来の酵母エキスであることを特徴とする、[1]から[11]の何れか1項に記載の製造方法。
[13] ビール酵母由来の酵母エキスが酵素によって分解された分解物であることを特徴とする、[12]に記載の製造方法。
[14] 酵素によって分解された分解物が、アミノ酸、ペプチド、及び核酸を含有する分解物であることを特徴とする、[13]に記載の製造方法。
本発明によれば、木質バイオマスを原料として、D−乳酸生産菌を用いて、高い光学純度のD−乳酸を高い生産量で製造することができる。
以下、本発明について更に詳細に説明する。
<木質バイオマス>
本発明の方法で原料として使用する木質バイオマスとしては、製紙用樹木、林地残材、間伐材等のチップ又は樹皮、木本性植物の切株から発生した萌芽、製材工場等から発生する鋸屑又はおがくず、街路樹の剪定枝葉、建築廃材等が挙げられる。さらに、木材由来の紙、古紙、パルプ等を原料として利用することができる。これらの木質バイオマスは、単独、あるいは複数を組み合わせて使用することができる。また、木質バイオマスは、乾燥固形物であっても、水分を含んだ固形物であっても、スラリーであっても用いることができる。
木質バイオマスの原料としては、ユーカリ(Eucalyptus)属植物、ヤナギ(Salix)属植物、ポプラ属植物、アカシア(Acacia)属植物、スギ(Cryptomeria)属植物等が利用できる。特に、ユーカリ属植物、アカシア属、ヤナギ属植物が原料として大量に採取し易いため好ましい。例えば、製紙原料用として一般に用いられるユーカリ(Eucalyptus)属又はアカシア(Acacia)属等の樹種の樹皮は、製紙原料用の製材工場やチップ工場等から安定して大量に入手可能であるため、特に好適に用いられる。
本発明においては、原料である木質バイオマスは、D−乳酸生産菌が資化する糖類の源(炭素源)であるのみならず、D−乳酸生産菌の増殖及び発酵に重要なマグネシウム源でもある。また、木質バイオマスは、場合によりアルミニウム、マンガン、鉄、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択される一つ以上の供給源としても重要である。
(前処理)
本発明においては、木質バイオマスに、糖化処理及び発酵処理に適した前処理を施すことができる。木質バイオマスに前処理を行ったものを、「前処理原料」と称することがある。前処理としては、以下に何れかの処理を挙げることができる。このような前処理を行うことにより、木質バイオマス中のリグノセルロースは、糖化発酵可能な状態となる。機械的処理、化学的処理、水熱処理、加圧熱水処理、二酸化炭素添加水熱処理、蒸煮処理、湿式粉砕処理、希硫酸処理、水蒸気爆砕処理、アンモニア爆砕処理、二酸化炭素爆砕処理、超音波照射処理、マイクロ波照射処理、電子線照射処理、γ線照射処理、超臨界処理、亜臨界処理、有機溶媒処理、相分離処理、木材腐朽菌処理、グリーン溶媒活性化処理、各種触媒処理、ラジカル反応処理、オゾン酸化処理。
これらの処理は、各単独処理もしくは複数を組み合わせた処理のいずれであってもよい。中でも、木質バイオマスに対し、アルカリ処理、加圧熱水処理、機械的処理から選択される1つ以上の前処理を行うことが好ましい。
機械的処理としては、破砕、裁断、磨砕等の任意の機械的手段が挙げられ、木質バイオマス中のリグノセルロースを糖化発酵処理工程で糖化発酵され易い状態にすることである。使用する機械装置については特に限定されないが、例えば、一軸破砕機、二軸破砕機、ハンマークラッシャー、レファイナー、ニーダー等を用いることができる。
化学的処理は、酸やアルカリ等の薬品の水溶液に木質バイオマスを浸漬して、酵素糖化処理に適した状態にする処理である。化学的処理に使用する薬品等については特に限定されないが、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、硫酸、希硫酸などの硫化物、炭酸塩又は亜硫酸塩から1種以上選択されたものである。水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、硫化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、亜硫酸ナトリウム等から選択された1種以上の薬品の水溶液に浸漬してなるアルカリ処理等が化学処理として好適である。また、オゾン、二酸化塩素などの酸化剤による化学的処理も可能である。化学的処理は、前記機械的処理と組み合わせてそれらの前処理の後処理として行うことが好適である。化学的処理に使用する薬品の添加量は、状況に応じて任意に調整可能であるが、薬品コスト低下の面から、またセルロースの溶出・過分解による収率低下防止の面から、木質バイオマスの絶乾100質量部に対して50質量部以下であることが望ましい。化学的処理における薬品の水溶液への浸漬時間及び処理温度は、使用する原料や薬品によって任意に設定可能であるが、処理時間30分〜1時間、処理温度80〜130℃が好ましい。処理条件を厳しくすることで、原料中のセルロースの液側への溶出又は過分解が起こる場合もあるため、処理時間は1時間以下、処理温度は130℃以下であることが好ましい。
糖化及び発酵処理に適した前処理が施されている木質バイオマスに対しては、リグノセルロース原料を含む懸濁液の調製に使用する前に、殺菌処理を行ってもよい。木質バイオマス原料中に雑菌が混入していると、酵素による糖化を行う際に雑菌が糖を消費して生成物の収量が低下してしまうという問題が発生する。殺菌処理は、酸やアルカリなど、菌の生育困難なpHに原料を晒す方法でも良いが、高温下で処理する方法でも良く、両方を組み合わせても良い。酸、アルカリ処理後の原料については、中性付近、もしくは、糖化・発酵工程に適したpHに調整した後に原料として使用することが好ましい。また、高温殺菌した場合も、室温もしくは糖化・発酵工程に適した温度まで降温させてから原料として使用することが好ましい。このように、温度やpHを調整してから原料を送り出すことで、好適pH、好適温度外に酵素が晒されて、失活することを防ぐことができる。
(広葉樹クラフトパルプ)
本発明の特に好ましい態様においては、広葉樹クラフトパルプを、木質バイオマスとして使用することができる。該パルプを製造するための原料として使用する木材チップとしては、ユーカリ、オーク、アカシア、ビーチ、タンオーク、オルダー等の広葉樹材であれば特に限定されない。また、使用する広葉樹材に多少の針葉樹材を含まれていても構わない。
上記した木材チップをクラフト蒸解処理に供することによって、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)を得ることができる。次いで、酸素脱リグニン工程により酸素脱リグニンパルプを得ることができる。さらに、酸素脱リグニンパルプを漂白処理に供することによって、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)を得ることができる。
クラフト蒸解は公知の方法により行うことができる。例えば、木材をクラフト蒸解する場合、クラフト蒸解液の硫化度は5〜75%、好ましくは20〜35%であり、有効アルカリ添加率は絶乾木材質量当たり5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%であり、蒸解温度は140〜170℃である。しかし、クラフト蒸解の条件はこれらに限定されるものではない。また、クラフト蒸解方式は、連続蒸解法あるいはバッチ蒸解法のどちらでもよく、連続蒸解釜を用いる場合は、蒸解白液を分割で添加する蒸解法でもよく、その方式は特に限定されない。
蒸解に際して使用する蒸解液には、蒸解助剤が添加されてもよい。例として、公知の環状ケト化合物、例えばベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、アントロン、フェナントロキノン及び前記キノン系化合物のアルキル、アミノ等の核置換体が挙げられる。或いは前記キノン系化合物の還元型であるアントラヒドロキノンのようなヒドロキノン系化合物が挙げられる。さらにはディールスアルダー法によるアントラキノン合成法の中間体として得られる安定な化合物である9,10−ジケトヒドロアントラセン化合物等が挙げられる。これらから選ばれた1種又は2種以上が添加されてもよい。添加率は特に限定されないが、一般的には、木材チップの絶乾質量当たり0.001〜1.0質量%である。
クラフト蒸解法により得られた未漂白化学パルプは、所望により、洗浄工程を経て、公知の酸素脱リグニン法により脱リグニンすることができる。酸素脱リグニン法に用いるアルカリとしては苛性ソーダあるいは酸化されたクラフト白液を使用することができる。酸素ガスとしては、深冷分離法からの酸素、PSA(PRESSURE Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorption)からの酸素等が使用できる。
酸素脱リグニン工程では、前記酸素ガスとアルカリが中濃度ミキサーにおいて中濃度のパルプスラリーに添加され、混合が十分に行われた後、加圧下でパルプ、酸素及びアルカリの混合物を一定時間保持できる反応塔へ送られ、脱リグニンされる。酸素ガスの添加率は特に限定されないが、絶乾パルプ質量当たり0.5〜3質量%であり、アルカリ添加率は0.5〜4質量%である。また、反応温度は80〜120℃で、反応時間は15〜100分であり、パルプ濃度は8〜15質量%であるが、これらの条件は特に限定されない。
酸素脱リグニンを施されたパルプは洗浄工程へ送ることができる。酸素脱リグニン後の洗浄工程で使用する洗浄機、及び多段漂白工程中の洗浄に使用する洗浄機は、特に限定されるものではない。例えば、プレッシャーディフューザー、ディフュージョンウオッシャー、加圧型ドラムウオッシャー、水平長網型ウオッシャー、プレス洗浄機等を挙げることができる。
上記の通り脱リグニン処理されたパルプは多段漂白工程へ供することができる。多段漂白工程は、二酸化塩素(D)、アルカリ(E)、酸素(O)、過酸化水素(P)、オゾン(Z)といった公知のECF漂白法を組合せて行うことができる。また、多段漂白工程中に、高温酸処理段(A)や酸洗浄段、酵素処理段、高温二酸化塩素漂白段、過硫酸や過酢酸等による過酸漂白段を導入することもできる。多段漂白工程中には、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)やジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)等によるキレート剤処理段等を導入することもできる。
上記により、本発明の特に好ましい態様において原料として使用できる広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)を得ることができる。
<乳酸菌>
本発明には、D−乳酸生産菌が用いられる。本発明に用いられるD−乳酸生産菌は、糖類(六炭糖、五炭糖)を発酵して、D−乳酸を製造できるものであれば特に限定はされない。D−乳酸生産菌としては、例えば、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、エンテロコッカス属 (Enterococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、リューコノストック属(Leuconostoc)、又はスポロラクトバシラス属(Spololactobacillus属)に属する細菌を挙げることができる。しかしながら、これらに限定されない。具体的には、ラクトバシラス・デルブルキ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバシラス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)などを挙げることができる。しかしながらこれらに限定されない。また、遺伝子組換え技術を用いて作製した遺伝子組換え微生物(細菌等)を用いることもできる。遺伝子組換え微生物としては、六炭糖又は五炭糖を発酵してD−乳酸を生産できる微生物を特に制限なく用いることができる。
微生物は固定化して用いても良い。微生物を固定化しておくと、次工程で微生物を分離して再回収するという工程を省くことができるため、少なくとも回収工程に要する負担を軽減することができ、微生物のロスが軽減できるというメリットがある。また、凝集性のある微生物を選択することにより微生物の回収を容易にすることができる。
<糖化処理、及び発酵処理>
本発明の実施態様においては、酵素による糖化とD−乳酸生産菌を用いた発酵とを順次行ってもよく、また木質バイオマスに酵素及びD−乳酸生産菌を同時に作用させて糖化及び発酵を併行して行ってもよい。なお、本明細書では、本発明の実施態様のうち、糖化及び発酵を併行して行う態様を例に、D−乳酸生産菌による発酵工程を説明することがある。しかしながらその説明は、特に記載した場合を除き、酵素による糖化とD−乳酸生産菌を用いた発酵とを順次行う場合の発酵工程にも当てはまる。
D−乳酸生産菌が用いられ、原料木質バイオマスから酵素の作用で生成された糖類が、D−乳酸生産菌によりD−乳酸に変換される。このようなD−乳酸生産菌が用いられる工程において使用される液を、培地ということがある。なお、本発明において、培地に関し、成分濃度をいうときは、特に記載した場合を除き、培養開始時の濃度(初濃度)をいう。
(原料バイオマスの量)
糖化工程又は併行糖化発酵工程で用いる木質バイオマスの懸濁濃度は、典型的には、1.0質量%以上とすることができ、好ましくは1.5質量%以上とすることができる。より好ましくは3.0質量%以上とすることができ、さらに好ましくは4.5質量%以上とすることができ、さらに好ましくは5.0質量%以上とすることができる。これより低い場合、マグネシウム源として十分でない場合があり、用いる乳酸菌によっては、増殖や発酵が十分に行われないからである。また、最終的に生産物の濃度が低すぎて生産物の濃縮のコストが高くなるという問題が発生するからである。懸濁濃度の上限は、例えば30質量%以下であり、好ましくは25質量%以下とすることができ、より好ましくは20質量%以下とすることができ、さらに好ましくは15質量%以下とすることができ、さらに好ましくは10質量%以下とすることができる。30質量%を超えて高濃度となるにしたがって原料の攪拌が困難になり、生産性が低下するという問題が生じうるからである。
(硫酸マグネシウム等)
本発明においては、培地に硫酸マグネシウム等の水溶性のマグネシウム塩を添加することができる。本発明者らの検討によると、D−乳酸生産菌の培養においては、培地中に添加されるマグネシウム塩は、以下で説明するように、通常必要と考えられていた量よりも少なくてよいことを見出した。そのため、マグネシウム塩を添加する場合は、培地中の濃度が、以下で説明する範囲内となる程度の比較的少量を添加することが好ましい。培地中のマグネシウム濃度が、懸濁されている木質バイオマスにより十分確保されていると考えられる場合は、マグネシウム塩は添加する必要はない。あるいはアルミニウム、マンガン、鉄、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択される一つ以上の成分の濃度が、懸濁されている木質バイオマスにより十分確保されていると考えられる場合は、マグネシウム塩は添加する必要はない。本発明の好ましい態様においては、硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩は培地に添加されない。
(培地中のマグネシウム等の濃度)
本発明においては、培地中のマグネシウムの濃度を6500mg/L以下とする。なお本発明で培地中のマグネシウムの量及び濃度についていうときは、特に記載した場合を除き、培地中に含まれるあらゆる形態のマグネシウムの総和の量及び濃度である。培地に含まれる原料であってマグネシウム源となりうるのは、主として、木質バイオマス、酵母エキス、添加される硫酸マグネシウムであるから、培地中のマグネシウム濃度は、これらの原料にそれぞれ含まれる総和として計算することもできる。アルミニウム、マンガン、鉄、ストロンチウムおよびバリウムについても同様である。
本発明者らの検討によると、D−乳酸生産菌の培養においては、培地中のマグネシウム濃度は通常必要と考えられている濃度よりも低くすることができる。本発明者らの検討によると、本発明においては、培地におけるマグネシウム濃度は適宜とすることができるが、典型的には、1000mg/L以下であり、好ましくは500mg/L以下とすることができる。より好ましくは180mg/L以下とすることができ、さらに好ましくは100mg/L以下とすることができ、さらに好ましくは75mg/L以下とすることができる。この範囲であれば、予想外にも、高い光学純度のD−乳酸が生産され、かつD−硫酸の生産量も高いからである。培地中のマグネシウムの下限値は、典型的には、32mg/L以上とすることができ、好ましくは35mg/L以上とすることができる。より好ましくは40mg/L以上とすることができ、さらに好ましくは45mg/L以上とすることができ、さらに好ましくは47.5mg/L以上とすることができる。これより低い場合、用いる乳酸菌によっては、増殖や発酵が十分に行われないからである。
培地中のアルミニウムの下限値は、典型的には、0.41mg/L以上とすることができ、好ましくは0.82mg/L以上とすることができる。培地中の鉄の下限値は、典型的には、0.33mg/L以上とすることができ、好ましくは0.66mg/L以上とすることができる。 培地中のストロンチウムの下限値は、典型的には、0.15mg/L以上とすることができ、好ましくは0.29mg/L以上とすることができる。 培地中のマンガンの下限値は、典型的には、0.13mg/L以上とすることができ、好ましくは0.26mg/L以上とすることができる。 培地中のバリウムの下限値は、典型的には、0.09mg/L以上とすることができ、好ましくは0.18mg/L以上とすることができる。
いずれの場合も、培養や発酵を阻害しない限り、培地中の上限値は適宜とすることができるが、典型的には、50mg/L以下であり、好ましくは25mg/L以下とすることができる。
なお、培地中のマグネシウム、アルミニウム等の成分の量及び濃度は、当業者には周知の方法により、測定することができ、また用いる原料中のそれらの量から、計算値として求めることができる。
(ペプトン、牛肉エキス、酵母エキス)
本発明の好ましい態様においては、D−乳酸生産菌を培養するための培地は、酵母エキス、ペプトン(ポリペプトンも含む)、及び牛肉エキスからなる群より選択されるいずれか一つ以上を含んでいてもよい。酵母エキスとしては、例えば、市販のイーストイクスト(Difco Laboratories) 酵母エキスL(MCフードスペシャリティーズ株式会社)、酵母エキスSL−W(MCフードスペシャリティーズ株式会社)、リボネックスB2−P(サッポロビール株式会社)、リボネックスN7−P(サッポロビール株式会社)、ミーストP1G(アサヒフードアンドヘルスケア)、ミーストP2G(アサヒフードアンドヘルスケア)、ミーストAP−1122(アサヒフードアンドヘルスケア)、イーストック S-Pd (Yeastock株式会社)、酵味(酵味ペースト、酵味粉末:MCフードスペシャリティーズ株式会社)など特に限定なく用いることができる。酵母エキスを用いる場合、種々のものを選択できるが、サッカロマイセス属に属する酵母(例えば、サッカロマイセス・セレビシエ、サッカロマイセス・ロゼイ、サッカロマイセス・ウバルム、サッカロマイセス・シバリエリに属する酵母)を用いることができる。又はキャンディダ属に属する酵母(例えば、キャンディダ・ユティルスに属する酵母)を用いることができる。ビール酵母又はパン酵母であるサッカロマイセス・セレビシエに分類される酵母から得られたエキスを用いることができる。前記酵母エキスの中で、ビール酵母由来の酵母エキスを用いるのが好ましい。また、ビール酵母由来の酵母エキスの中で、酵素によって分解された分解物を含有する酵母エキスを用いるのが好ましい。ビール酵母由来の酵母エキスの中で、酵素によって分解された分解物(アミノ酸、ペプチド、核酸)を含有する酵母エキスとして、例えば、酵味(酵味ペースト、酵味粉末)が挙げられる。ペプトンとしては、例えば、ハイポリペプトン(日本製薬株式会社)が挙げられる。
ペプトン、牛肉エキス、及び酵母エキスからなる群より選択されるいずれか一つ以上を用いる場合、培地におけるその濃度(複数用いる場合は、各々の濃度)は適宜とすることができる。典型的には、0.1〜10質量%とすることができ、好ましくは0.2〜7.5質量%とすることができ、より好ましくは0.4〜5.0質量%とすることができる。この範囲であれば、D−乳酸生産菌の増殖及び発酵が十分に達成され、かつ経済的でもあるからである。
(塩基の存在)
本発明の好ましい態様においては、糖化及び発酵を塩基の存在下においてpH4.0〜7.0で行うことができる。pHは、より好ましくはpH4.5〜5.8であり、さらに好ましくpH4.6〜5.6であり、さらに好ましくはpH4.9〜5.5である。
使用する塩基の種類は、培養液のpHをpH4.0〜7.0に調節できるものであれば特に限定されず、無機塩基でも有機塩基でもよい。無機塩基としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。有機塩基としては、例えば、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、リジンなどが挙げられる。塩基は好ましくは、上記の中でも無機塩基であり、特に好ましくは炭酸カルシウムである。
糖化及び発酵を併行して行う際、木質バイオマスに酵素及びD−乳酸生産菌を同時に作用させる方法は、培養液のpHをpH4.0〜7.0に調節できる限り特に限定されない。但し、本発明の好ましい態様によれば、培養容器の底部から、塩基を含む第1層、木質バイオマスを含む第2層、並びに酵素及びD−乳酸生産菌を含む第3層を、この順番で配置して、糖化及び発酵を併行して行うことができる。上記の通り、第1層〜第3層をこの順番で配置することにより、培養液のpHをpH4.0〜7.0に調節するという塩基の作用を上手く達成することができる。
(嫌気・好気条件)
糖化及び発酵は、嫌気条件下又は好気条件下の何れで行ってもよいが、好ましくは嫌気条件下で行うことができる。糖化及び発酵を、嫌気条件下で行うことにより、好気条件下で行う場合と比較してより高い光学純度のD−乳酸を製造することが可能になる。嫌気条件としては、例えば、糖化及び発酵処理中に培養液の回転振とうは行わないという条件を挙げることができ、この場合でも1日に1回〜数回程度培養液を攪拌することは構わない。一方、好気条件としては、培養液の回転振とうしながら糖化及び発酵処理を行うことが挙げられる。培養液を回転振とうする際の回転速度は特に限定されないが、例えば、10〜200rpmなどを挙げることができる。
(糖化酵素)
糖化で使用する酵素は、セルロース分解酵素であれは、セロビオヒドロラーゼ活性、エンドグルカナーゼ活性、ベータグルコシダーゼ活性を有する、所謂セルラーゼと総称される酵素である。各セルロース分解酵素は、夫々の活性を有する酵素を適宜の量で添加しても良いが、市販されているセルラーゼ製剤は、上記の各種のセルラーゼ活性を有すると同時に、ヘミセルラーゼ活性も有しているものが多いので市販のセルラーゼ製剤を用いれば良い。
市販のセルラーゼ製剤としては、トリコデルマ(Trichoderma)属、アクレモニウム(Acremonium)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ファネロケエテ(Phanerochaete)属、トラメテス(Trametes)属、フーミコラ(Humicola)属、バシラス(Bacillus)属などに由来するセルラーゼ製剤がある。このようなセルラーゼ製剤の市販品としては、全て商品名で、例えば、セルロイシンT2(エイチピィアイ社製)、メイセラーゼ(明治製菓社製)、ノボザイム188(ノボザイム社製)、ジェネンコア社製のセルラーゼ製剤等が挙げられる。
原料固形分100質量部に対するセルラーゼ製剤の使用量は、0.5〜100質量部が好ましく、1〜50質量部が特に好ましい。
(培養条件)
糖化及び発酵処理の温度は、酵素及び発酵の至適温度の範囲内であれば特に制限はなく、通例25℃〜50℃が好ましく、37℃〜50℃がさらに好ましい。培養は、連続式が好ましいが、バッチ方式でも良い。培養時間は、酵素濃度などによっても異なるが、バッチ式の場合は10〜240時間、さらに好ましくは15〜160時間である。連続式の場合も、平均滞留時間が、10〜150時間、さらに好ましくは15〜100時間である。
<他の工程>
本発明の実施態様においては、D−乳酸の回収工程を含んでいてもよい。上記した発酵により生産されたD−乳酸は、発酵液から公知の方法により分離・精製することにより回収することができる。例えば、発酵液を、遠心分離や濾過等によって不溶な物質(菌体など)を除去した後、イオン交換樹脂などで脱塩し、その溶液から、結晶化やカラムクロマトグラフィー等の常法に従って所望の乳酸を分離・精製することができる。
<本発明の製造方法で得られるD−乳酸>
本発明の製造方法によれば、高い光学純度でD−乳酸を産生することができる。具体的には本発明の製造方法によれば、D−乳酸を96%ee以上の光学純度、好ましくは97%ee以上の光学純度、より好ましくは98%ee以上の光学純度で製造することができる。D−乳酸の光学純度は、本技術分野で知られた種々の手段を用いることができる。本発明でD−乳酸の光学純度をいうときは、特に示した場合を除き、実施例の項中の式により算出した値をいう。
本発明の製造方法によれば、D−乳酸の生産量を高めることができる。具体的には本発明の製造方法によれば、培養3日目において、培地中のD−乳酸濃度を、84g/L以上とすることができ、好ましくは85g/L以上とすることができ、より好ましくは86g/L以上とすることができる。D−乳酸の量は、本技術分野で知られた種々の手段を用いることができる。
本発明の方法を用いて産生したD−乳酸は、例えば、ポリD−乳酸や、ポリL−乳酸とポリD−乳酸とのステレオコンプレックスを製造するための原料として使用することができる。ポリL−乳酸とポリD−乳酸とのステレオコンプレックスは、耐熱性が高い生分解性プラスチックとなり得る。D−乳酸には、農業中間体としての用途もあることが知られている。
本発明の効果を以下の実施例等を挙げて具体的に説明する。但し、本発明の範囲はこれらの実施例等によって制限されない。
[実施例1]
<広葉樹クラフトパルプ(LBKP)の製造>
広葉樹混合木材チップ(ユーカリ70%、アカシア30%)を用い、液比4、硫化度28%、有効アルカリ添加率17%(Na2Oとして)となるように調製した蒸解白液に木材チップに加えた後、蒸解温度160℃にて2時間クラフト蒸解を行なった。クラフト蒸解終了後、黒液を分離し、得られたチップを解繊後、遠心脱水と水洗浄を3回繰り返し、次いでスクリーンにより未蒸解物を除き、蒸解未漂白パルプ(LUKP)を得た。この未漂白パルプ絶乾質量に対して、NaOHを2.0%添加し、酸素ガスを注入し、100℃で60分間酸素脱リグニン処理を行ない、酸素脱リグニンパルプ(LOKP)を得た。続いて、酸素脱リグニンパルプを、D−E−P−Dの4段漂白処理に供した。漂白時のパルプ濃度は全て10質量%に調製し、最初の二酸化塩素処理(D)は、対絶乾パルプの二酸化塩素添加率1.0質量%、70℃、40分間処理を行ない、イオン交換水にて洗浄、脱水した。次いで、パルプ絶乾質量に対してNaOH添加率を1質量%として、70℃、90分間のアルカリ抽出処理(E)を行ない、イオン交換水にて洗浄、脱水した。次いで、パルプ絶乾質量に対して過酸化水素添加率を0.2%、NaOH添加率を0.5%とし、70℃、120分間の過酸化水素処理(P)を行ない、イオン交換水にて洗浄、脱水した。次いで、パルプ絶乾質量に対して二酸化塩素添加率を0.2%とし、70℃、120分間の二酸化塩素処理(D)を行ない、イオン交換水にて洗浄、脱水後、白色度85%の漂白パルプ(LBKP)を得た。
<D−乳酸生産菌の前培養>
−80℃で凍結保存したD−乳酸生産菌であるLactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii NBRC3202株[独立行政法人製品評価技術基盤機構(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)から入手可能]を用いた。解凍後、オートクレーブにより滅菌した前培養培地(培地組成は下記表1参照、オートクレーブ前に70%硫酸でpHを5.5に調整)10mlに一白金耳接種し、37℃、48-72時間静置培養を行ない、前々培養液を調製した。さらに、滅菌処理した前培養培地30mlに、前々培養液を0.9ml接種した。これを37℃、48時間静置培養を行ない、前培養液(以下、「乳酸菌前培養液」という。)を調製した。
Figure 2015192656
<酵味ペースト>
ビール酵母を100%使用した酵素分解型酵母エキス(キリン協和フーズ社製)。固形分61〜67%、固形分当たりの全窒素5.5%以上、pH4.8〜6.0。
<併行糖化発酵>
次に、培養容器(250mlの滅菌フィルター付きキャップのプラスチック製三角フラスコ)にpH調整剤として炭酸カルシウム6g、LBKP7.5gを添加した後、オートクレーブで滅菌した。
次に窒素源として、酵味ペースト(固形分80g/Lに希釈後、70%硫酸でpHを5.5に調整し、オートクレーブ滅菌)の濃度が1.4質量%になるようにクリ−ンベンチ内で添加した。その後、ジェネンコア社製セルラーゼ製剤2ml、乳酸菌前培養液2mlを添加し、蒸留水で全量が100mlになるように培地(以下「培地A」)を調製した。
前記培養容器(フラスコ)のキャップに付属している滅菌フィルター上に切り込みを入れたテープを張り、発酵により生産される乳酸と炭酸カルシウムが反応して発生する炭酸ガスをフラスコ外へ放出した。そして外部からの空気流入を極力抑制するように施し、フラスコに該キャップで締め、外部との通気を遮断した。
前記培養容器を48℃で3日間培養した。培養の最初の1日間は静置し、残り2日間は回転振とうさせた。培養液のpH、グルコース、D−乳酸を経時的に測定した。尚、グルコース及び乳酸は下記の方法で分析した。結果を表2に示す。なお、LBKP中のマグネシウム量は、2回の測定でそれぞれ213ppm、214ppmであり、平均213.5ppmであるので、7.5%LBKPの培地中のマグネシウム量は0.016g/Lと計算される。なお、LBKP等中のマグネシウム量の測定は、下記の方法にしたがった。
LBKP等は灰化(約525℃、約2時間)し、濃硝酸5ml加え、約10間煮沸する。
注1)濃硝酸沸点121℃。
注2)煮沸時間10分間:工場排水試験方法JIS K102より。硝酸による煮沸処理は、有機物や懸濁物が極めて少ない試料に適用する。
煮沸後、50mlにメスアップし、メンブレンフィルター(0.45μm)でろ過した後、ICP―ОES(リガク製CIROS120)にて測定した。
<グルコース及び乳酸の分析>
培養開始直後、1日目、2日目、3日目の培養液を2ml採取し、遠心分離後、上清を22μmのディスクフィルター(DISMIC 13HP020AN、ADVANTEC社製)でろ過した。次いで、脱塩水で20倍希釈し、グルコース及び乳酸定量用試料(以下、「定量用試料」という。)とした。
(グルコースの定量)
前記定量用試料300μLを専用セルに採取し、バイオセンサー(BF-5/王子計測機器社製)のオートサンプラーにセットして自動計測した。尚、電極は、プレナ電極交換用グルコース電極EDO05-0003/王子計測機器社製)を使用した。
(乳酸の定量)
前記定量用試料1mlをマイクロバイアルに採取してオートサンプラーにセットし、高速液体クロマトグラフHPLC(alliance・2695/Waters社製)を用い、以下の条件で測した。
カラム:住友分析センター社製SUMICHIRAL OA-5000(内径4.6mm、カラム長25.0cm)温度:30℃
移動相:2mM CuSO4・7H2Oの水−2-プロパノール混液(98:2)溶液
流速:1.0ml/min
検出波長:254nm
<光学純度の測定>
D−乳酸の光学純度を次式で計算した。
光学純度(%ee) = (D−L)/(D+L)×100
ここで、DはD−乳酸濃度、LはL−乳酸濃度を表す。
D−乳酸量は培養3日目で84.3g/Lであり、良好に発酵していることが確認できた。尚、光学純度は98.0%eeであった。
[実施例2]
<前処理原料の調整>
チップ状のユーカリ・グロブラスの林地残材(樹皮70%、枝葉30%)を20mmの丸孔スクリーンを取り付けた一軸破砕機(西邦機工社製、SC−15)で破砕し原料として用いた。
上記原料1kg(絶乾重量)に対して97%亜硫酸ナトリウム200g及び水酸化ナトリウム10gを添加後、水を添加し水溶液の容量を8Lに調製した。前記原料懸濁液を混合後、170℃で1時間加熱した。加熱処理後の原料懸濁液をレファイナー(熊谷理器工業製、KRK高濃度ディスクレファイナー)でディスク(プレート)のクリアランスを1.0mmで磨砕した。次に20メッシュ(847μm)のスクリーンを用いて磨砕処理後の原料懸濁液を固液分離(脱水)することにより溶液の電気伝導度が30μS/cmになるまで水で洗浄した。固液分離後の固形分を原料(以下、「前処理原料」という。)として併行糖化発酵を行った。
<併行糖化発酵>
実施例1において、LBKPの代わりに前記で調製した前処理原料を用いた以外は実施例1と同様の方法で試験した。結果を表2に示す。
D−乳酸量は培養3日目で79.8g/Lであり、実施例1と同様に良好に発酵していることが確認できた。尚、光学純度は96.1%eeであった。
[参考例1]
実施例1において、LBKPの代わりにグルコースの濃度が6質量%になるように添加した以外は実施例1と同様の方法で試験した。結果を表3に示す。
D−乳酸生産量は実施例1の79.8g/Lと比較し2.9g/Lと非常に低く、殆ど発酵できなかった。
[参考例2]
実施例1において、培地Aに硫酸マグネシウム・7水和物の最終濃度が0.14質量%になるように添加した以外は実施例1と同様の方法で試験した。結果を表2に示す。
D−乳酸生産量は培養3日目で83.5g/L、光学純度は97.7%eeであった。以上の結果から、LBKPを原料として用いた場合、培地に硫酸マグネシウムを添加しなくてもD−乳酸が効率的に生産されることが確認できた。
[参考例3]
実施例1において、培地Aに硫酸マグネシウム・7水和物の最終濃度が7.0質量%になるように添加した以外は実施例1と同様の方法で試験した。結果を表2に示す。
D−乳酸生産量は培養3日目で83.9g/L、光学純度は95.7%eeであった。
Figure 2015192656
表中、「Mg濃度」として示した値は、マグネシウム分についての値
(硫酸マグネシウム・7水和物としての添加量は、参考例2は1,400mg/L、参考例3は70,000mg/L)
[実施例3]
実施例1(<併行糖化発酵>)において、酵味ペーストの濃度が3.0質量%になるように添加した以外は、全て実施例1と同様の方法で試験した。結果を表3に示す。
[実施例4]
実施例1(<併行糖化発酵>)において、酵味ペーストの濃度が2.0質量%になるように添加した以外は、全て実施例1と同様の方法で試験した。結果を表3に示す。
[実施例5]
実施例1(<併行糖化発酵>)において、酵味ペーストの濃度が1.0質量%になるように添加した以外は、全て実施例1と同様の方法で試験した。結果を表3に示す。
[実施例6]
実施例1(<併行糖化発酵>)において、酵味ペーストの濃度が0.75質量%になるように添加した以外は、全て実施例1と同様の方法で試験した。結果を表3に示す。
Figure 2015192656
[実施例7]
実施例1(<併行糖化発酵>)において、酵味(粉末)の濃度が3.0質量%になるように添加した以外は、全て実施例1と同様の方法で試験した。結果を表4に示す。
[実施例8]
実施例1(<併行糖化発酵>)において、酵味(粉末)の濃度が2.0質量%になるように添加した以外は、全て実施例1と同様の方法で試験した。結果を表4に示す。
[実施例9]
実施例1(<併行糖化発酵>)において、酵味(粉末)の濃度が1.0質量%になるように添加した以外は、全て実施例1と同様の方法で試験した。結果を表4に示す。
[実施例10]
実施例1(<併行糖化発酵>)において、酵味(粉末)の濃度が0.5質量%になるように添加した以外は、全て実施例1と同様の方法で試験した。結果を表4に示す。
Figure 2015192656

Claims (14)

  1. D−乳酸生産菌を用いて木質バイオマスからD−乳酸を発酵生産するD−乳酸の製造方法であって、D−乳酸生産菌による発酵が、マグネシウム濃度が32mg/L以上180mg/L以下である培地中で行われる、D−乳酸の製造方法。
  2. D−乳酸生産菌を用いて木質バイオマスからD−乳酸を発酵生産するD−乳酸の製造方法であって、D−乳酸生産菌による発酵が、マグネシウム濃度が180mg/L以下であり、かつ木質バイオマスを含む培地中で行われる、D−乳酸の製造方法。
  3. D−乳酸生産菌を用いて木質バイオマスからD−乳酸を発酵生産するD−乳酸の製造方法であって、D−乳酸生産菌による発酵が、マグネシウム濃度が32mg/L以上180mg/L以下であり、かつアルミニウム、マンガン、鉄、ストロンチウムおよびバリウムからなる群より選択される一つ以上を含む培地中で行われる、D−乳酸の製造方法。
  4. D−乳酸菌による発酵が、酵素及びD−乳酸生産菌を同時に作用させて糖化及び発酵を併行して行うものである、請求項1から3の何れか1項に記載のD−乳酸の製造方法。
  5. 糖化の前、又は糖化及び発酵を併行して行う前に、木質バイオマスに前処理を施す、請求項1から4の何れか1項に記載のD−乳酸の製造方法。
  6. D−乳酸生産菌が、ラクトバシラス属に属する乳酸菌である、請求項1から5の何れか1項に記載のD−乳酸の製造方法。
  7. D−乳酸生産菌が、ラクトバシラス・デルブルキに属する乳酸菌である、請求項1から6の何れか1項に記載のD−乳酸の製造方法。
  8. D−乳酸菌による発酵が、酵素及びD−乳酸生産菌を同時に作用させて糖化及び発酵を併行して行うものであり、前記の糖化及び発酵を塩基の存在下において行う、請求項1から7の何れか1項に記載のD−乳酸の製造方法。
  9. 塩基が炭酸カルシウムである、請求項8に記載のD−乳酸の製造方法。
  10. 嫌気条件下で糖化及び発酵を併行して行う、請求項8又は9に記載のD−乳酸の製造方法。
  11. D−乳酸生産菌による発酵が、ペプトン、牛肉エキス、及び酵母エキスからなる群より選択される一つ以上が添加された培地中で行われる、請求項1から10の何れか1項に記載の製造方法。
  12. 酵母エキスがビール酵母由来の酵母エキスであることを特徴とする、請求項1から11の何れか1項に記載の製造方法。
  13. ビール酵母由来の酵母エキスが酵素によって分解された分解物であることを特徴とする、請求項12に記載の製造方法。
  14. 酵素によって分解された分解物が、アミノ酸、ペプチド、及び核酸を含有する分解物であることを特徴とする、請求項13に記載の製造方法。
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