JP2015162279A - カソード電極構造体及び膜・電極接合体 - Google Patents
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Abstract
Description
燃料電池の電極に用いられる触媒としては、性能の点から白金触媒が使用されてきたが、資源量の制約や価格が高価なことから、PEFCシステムを普及させる上での大きな制約条件の一つとなっている。特に、PEFCのカソード(空気極又は酸素極とも呼ばれる)における白金触媒の使用については、カソードが酸素還元反応により強い酸化性雰囲気になるので、白金触媒から白金が溶出し易いという重大な問題がある。
そこで、わが国はもとより米国をはじめとする世界中で、白金等の高価な貴金属を低減した触媒やこれら貴金属を必要としない、PEFCの電極用触媒(以下、非白金触媒と称することがある)について、精力的にその研究開発が行われている。
そのような非白金触媒のうち、白金類ではない金属を用いたものとしては、タンタル、ジルコニウムなどの酸化物、窒化物などの使用が提案されている。
また、実質的に金属を使用しない炭素触媒としては、古くより窒素やホウ素を含む炭素触媒が研究されている(特許文献1〜8、非特許文献1〜4)。
MEAを用いた燃料電池の発電の際、触媒の活性点と電子伝導性材料及びプロトン伝導性材料であるアイオノマーからなる3相界面の形成が重要であり、とりわけ炭素触媒の場合、触媒の担持量の増量と触媒の活性点とプロトン伝導部の界面形成のために十分な量のアイオノマーの添加が非常に重要である。
しかしながら、MEAで用いられるアイオノマーは白金触媒同様に高価であり、燃料電池の普及のため特性を落とすことなく、システムに用いられるアイオノマーの量を低減させることも非常に重要な課題である。
1. 炭素触媒及びアイオノマーを含み、
下記式(1)〜(3)を満たす、燃料電池に用いられるカソード電極構造体。
0.1≦X2/Y2<5 (2)
1.1≦(X1/Y1)/(X2/Y2)≦5 (3)
(式中、X/Yを電極構造体中の炭素触媒(X)とアイオノマー(Y)との質量比とするとき、X1/Y1は電極構造体の一方の表面におけるX/Yを表し、X2/Y2は電極構造体の他方の表面におけるX/Yを表す。)
3. 炭素触媒及びアイオノマーを含む層を2層以上有し、各層における炭素触媒とアイオノマーの質量比(X/Y)が、電極構造体の一方の表面側の層から他方の表面側の層に向かって漸減する、上記1に記載の電極構造体。
1.5≦X1/Y1≦3.5 (4)
(式(4)中、X1/Y1は式(1)中のX1/Y1と同じである。)
0.5≦X2/Y2≦2.5 (5)
(式(5)中、X2/Y2は式(2)中のX2/Y2と同じである。)
6. さらに下記式(6)を満たす、上記1〜5のいずれか一項に記載の電極構造体。
1.2≦(X1/Y1)/(X2/Y2)≦3 (6)
(式(6)中、X1/Y1及びX2/Y2は、それぞれ、式(1)及び(2)中のX1/Y1及びX2/Y2と同じである。)
8. 基材と、基材の一方の面上に積層された上記1〜7のいずれか一項に記載の電極構造体とを有する、膜・電極接合体を製造するための転写シートであって、式(1)〜(3)中、X1/Y1は電極構造体の基材側の表面におけるX/Yを表し、X2/Y2は電極構造体の他方の表面におけるX/Yを表す、転写シート。
(b)電解質膜の一方の表面上に積層された上記1〜7のいずれか一項に記載の電極構造体からなるカソード、及び
(c)電解質膜の他方の表面上に積層されたアノード、
を有する膜・電極接合体であって、
式(1)〜(3)中、X1/Y1は電極構造体の電解質膜側ではない方の表面におけるX/Yを表し、X2/Y2は電極構造体の電解質膜側の表面におけるX/Yを表す、前記膜・電極接合体。
10. カソード及び/又はアノードの電解質膜を有していない表面上にガス拡散層を有する、上記9に記載の膜・電極接合体。
11. カソード及び/又はアノードとガス拡散層との間に、マイクロポーラス層を有する、上記10に記載の膜・電極接合体。
12. 上記9〜11のいずれか一項に記載の膜・電極接合体と、膜・電極接合体の両面にセパレータとを有する、燃料電池。
本発明のカソード電極構造体は、下記式(1)〜(3)を満たす。
0.1≦X2/Y2<5 (2)
1.1≦(X1/Y1)/(X2/Y2)≦5 (3)
式中、X/Yを電極構造体中の炭素触媒(X)とアイオノマー(Y)との質量比とするとき、X1/Y1は電極構造体の一方の表面におけるX/Yを表し、X2/Y2は電極構造体の他方の表面におけるX/Yを表す。
本発明のカソード電極構造体は、触媒層を2層以上有していることが好ましい。 層数については特に制限はないが、多層構造の製造上のコストの観点から、好ましくは2〜10層、さらに好ましくは2〜5層である。多層構造とは炭素触媒とアイオノマーの質量比が異なる複数層からなるものである。
X1/Y1及びX2/Y2が0.1より小さい場合アイオノマーが過剰となりガスの拡散性が低下し燃料電池の電極としての特性が低下し好ましくない。X1/Y1及びX2/Y2が5より大きいとアイオノマーの量が少ないため電極の接着性が低下するほか、電極中の活性点が形成されず燃料電池の電極としての特性が低下し好ましくない。
X1/Y1の下限は、好ましくは1.0、より好ましくは1.5である。X1/Y1の上限は、好ましくは4.5、より好ましくは3.5である。
X2/Y2の下限は、好ましくは0.2、より好ましくは0.5である。X2/Y2の上限は、好ましくは3.5、より好ましくは2.5である。
(X1/Y1)/(X2/Y2)が1以下、すなわち電解質膜側ではない方のアイオノマーの重量組成が電解質膜側と比べて等しいかあるいは大きい場合、電極へ活物質である酸素が十分に供給されないほか電極反応で発生する水を排出できないため燃料電池の電極としての特性が低下し好ましくない。
(X1/Y1)/(X2/Y2)が5より大きい場合、電解質膜側ではない方のアイオノマーの重量組成が著しく低くなるため電極の接着性が低下し電極構造の形成が難しくなるほか電解質膜側ではない方の活性点が著しく低下し燃料電池の電極としての特性が低下し好ましくない。
(X1/Y1)/(X2/Y2)の下限は、好ましくは1.1、より好ましくは1.2である。(X1/Y1)/(X2/Y2)の上限は、好ましくは4.0、より好ましくは3.0である。
本発明の電極構造体に用いられる炭素触媒は、窒素原子の含有量が炭素原子に対して0.1原子%以上10原子%以下であることが好ましい。窒素原子の含有量は、従来公知の技術により測定される元素比率を使用する。窒素原子の含有量が炭素原子に対して0.1原子%より大きい場合には、触媒作用を発揮し、有用な粒子状炭素触媒として使用することできる。
窒素原子の含有量としては、炭素原子に対して0.2原子%より大きいことがさらに好ましく、0.5原子%より大きいことがより好ましい。逆に窒素原子の含有量が炭素原子に対して10原子%より多い場合には、比較的低温での触媒の製造が必要となるために、十分なグラファイト化が進まず、触媒内の電子伝導が損なわれる傾向があり、触媒特性の高いものが得られても、燃料電池電極としての性能が損なわれる懸念がある。
本発明に用いる炭素触媒における窒素原子の含有量は、炭素原子に対して9原子%より小さいとさらに好ましく、8原子%より小さいとより一層好ましい。なお、上記の、原子比率で表された、炭素原子に対する窒素原子の含有量を、窒素/炭素原子比率、又はN/C比と称することがある。
当該金属量の下限としては、特に厳密な制限は無いが、炭素触媒の製造において、検出されなくなるまで金属成分を完全に除去しようとすると操作が煩瑣になる等の恐れがある。そのような点を考慮すると、炭素触媒としては、炭素原子に対し金属原子が原子%で0.001以上のものも好ましい。本発明に用いる炭素触媒における鉄原子の含有量は、上限として炭素原子に対して1.5原子%より小さいとさらに好ましく、1.0原子%より小さいとより一層好ましい。下限としては炭素原子に対して0.01原子%より大きいことがさらに好ましく、0.05原子%より大きいことがより好ましい。なお、上記の、原子比率で表された、炭素原子に対する鉄原子の含有量を、鉄/炭素原子比率、又はFe/C比と称することがある。
なお、上記の金属原子としては公知の種々の金属が対象となるが、代表的なものとしては、後述のとおり、高活性の粒子状炭素触媒を得るために製造時に添加されることがある、鉄、コバルト、ニッケル、銅、スズ、マンガン、及び亜鉛からなる群より選ばれる1種類以上の金属原子が挙げられる。
炭素触媒は例えば、特許文献8、非特許文献6、7及び8のような、含窒素微粒子と鉄化合物の組成物を出発物質とした触媒の作製方法、含窒素有機化合物、鉄化合物と導電助剤との組組成物を出発物質触媒の作製方法、アンモニア等の活性ガスを用いた熱処理、多段階での熱処理など従来公知の手法を用いることで好適に製造することが出来る。
なお、上記の鉄原子以外に公知の種々の金属を用いることもできる。代表的なものとしては、後述のとおり、高活性の炭素触媒を得るために製造時に添加されることがある、コバルト、ニッケル、銅、スズ、マンガン、及び亜鉛からなる群より選ばれる1種類以上の金属原子が挙げられる。
本発明の電極構造体に用いられるアイオノマーはプロトン伝導性を有する電解質で、例えば、ナフィオン(登録商標)、フレミオン(登録商標)、アシプレックス(登録商標)、ダウ膜などのパーフルオロスルホン酸電解質ポリマー、スルホン化トリフルオロポリスチレンなどの部分フッ素化電解質ポリマー、ポリイミドやポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等のエンジニアリングプラスチックのスルホン化体や、ポリベンズイミダゾールのリン酸ドープ体などの炭化水素系高分子電解質等のプロトン伝導性を有する電解質、この他、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、を分子中に有する水酸化物イオン伝導性を有する電解質からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
本発明の電極構造体は炭素触媒とアイオノマーを溶媒に分散あるいは溶解させた触媒インクを用い種々の基材に塗布することにより製造することが出来る。本発明の電極構造体は多層構造からなるため、炭素触媒とアイオノマーの質量比の異なる複数のインクを作製し、複数回、基材へ塗布する方法が好ましく用いられる。
塗布方法としてはスクリーン印刷、スピンコーティング、インクジェット印刷、スプレードライ法など従来公知の塗布技術を用いることが出来る。
塗布する基材としてはテフロン、ポリエステル、ポリイミド、ポリカーボネート等のプラスチックフィルムやアルミ、銅、鉄、ステンレス等の金属製のフィルム、GDLやMPL付GDL、上述のアイオノマーからなるプロトン伝導性を有する膜などが挙げられる。
上述のようにして、テフロン、ポリエステル、ポリイミド、ポリカーボネート等のプラスチックフィルムやアルミ、銅、鉄、ステンレス等の金属製のフィルム等の基材に塗布した電極構造体はホットプレス等の公知の手段により電解質膜へ転写することで後述のMEAを作製することが出来る。
カソード電極構造体は、下記式(1)〜(3)を満足する。
0.1<X1/Y1≦5 (1)
0.1≦X2/Y2<5 (2)
1.1≦(X1/Y1)/(X2/Y2)≦5 (3)
式(1)〜(3)中、X1/Y1は電極構造体の基材側の表面における炭素触媒とアイオノマーの質量比(X/Y)を表し、X2/Y2は電極構造体の他方の表面における炭素触媒とアイオノマーの質量比(X/Y)を表す。
カソード電極構造体と、アノードとを、イオン伝導性を有する電解質膜の両表面上に設けることにより、燃料電池用の膜/電極接合体(MEA)とすることができる。
膜/電極接合体(MEA)は、(a)電解質膜、(b)電解質膜の一方の表面上に積層された電極構造体からなるカソード、及び(c)電解質膜の他方の表面上に積層されたアノード、を有する。
この際、カソード電極構造体は下記式(1)〜(3)を満足する。
0.1<X1/Y1≦5 (1)
0.1≦X2/Y2<5 (2)
1.1≦(X1/Y1)/(X2/Y2)≦5 (3)
式(1)〜(3)中、X1/Y1は電極構造体の電解質膜側ではない方の表面における炭素触媒とアイオノマーの質量比(X/Y)を表し、X2/Y2は電極構造体の電解質膜側の表面における炭素触媒とアイオノマーの質量比(X/Y)を表す。
膜・電極接合体は、カソード及び/又はアノードの電解質膜を有していない表面上にガス拡散層を有することが好ましい。また膜・電極接合体は、カソード及び/又はアノードとガス拡散層との間に、マイクロポーラス層を有することが好ましい。
MEAを構成するイオン電解質膜は、すでに述べたようなアイオノマーの面状体を用いることが出来る。またアイオノマーとイオン電解質膜は同じ素材の組み合わせ、異なる素材の組み合わせいずれも好ましく用いることが出来る。
アノードは、触媒金属及びアイオノマーを導電材に担持したものである。触媒金属としては、水素の酸化反応を促進する金属であればいずれのものでもよい。例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、あるいはそれらの合金からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。特に白金が多くの場合用いられ、これらはカーボンブラック、活性炭、黒鉛等などの導電材に坦持された状態で用いられる。触媒金属の担持量は電極が成形された状態で0.01〜10mg/cm2が好ましい。
触媒金属の担持量が0.01mg/cm2より小さいと、十分な発電性能を示すことができず、10mg/cm2より大きいと、得られるMEAの厚みが大きくなり、燃料電池の発電効率が小さくなる場合がある。
本発明で用いられるガス拡散層(GDL)は燃料である水素や空気の電極への供給、電極での化学反応により生じた電子の集電、電解質膜の保湿などを担い、カーボンペーパー、カーボンクロスなどガス透過性、対酸性、電気伝導製、機械強度に優れた従来公知の材料を用いることができる。またGDLの水の排出や保湿を促進するために電極側のGDL表面にマイクロポーラス層(MPL)を配することも好ましく利用できる。
本発明のガス拡散層付電極構造体(GDE)はホットプレス法など従来公知の技術を用いることでイオン電解質膜に接着させることでGDL付きMEAを作製することが出来る。すなわち本発明はGDL付きMEAを含む。
上述の電極構造体の製造方法で、GDLやMPLに触媒インクを塗布して得られる電極構造体を含有する成形品は電極付GDL(GDE)を形成する。すなわち本発明は多層構造を有する電極構造体から構成されるガス拡散層付電極構造体(GDE)を含む。
この場合、電極構造体は下記式(1)〜(3)を満たす。
0.1<X1/Y1≦5 (1)
0.1≦X2/Y2<5 (2)
1.1≦(X1/Y1)/(X2/Y2)≦5 (3)
式中、X1/Y1はGDL側の電極構造体の表面における炭素触媒とアイオノマーの質量比(X/Y)を表し、X2/Y2はGDL側ではない側の表面における炭素触媒とアイオノマーとの質量比(X/Y)を表す。
すなわち本発明のGDEを構成する多層構造を有するカソード電極構造体はGDL側のアイオノマーの重量組成がもう一面側よりも小さい構造体であることを特徴とする。
上述のような本発明のMEAの外側に、GDLやセパレータを配したものを単セルとし、この様な単セル単独でもちいるか、複数個を、冷却板等を介して積層して使用するなどして燃料電池とすることが可能である。
GDLは燃料である水素や空気の電極への供給、電極での化学反応により生じた電子の集電、電解質膜の保湿などを担い、カーボンペーパー、カーボンクロスなどガス透過性、対酸性、電気伝導製、機械強度に優れた従来公知の材料を用いることができる。
セパレータとしては、燃料電池積層体間の燃料や空気を遮断し、燃料流路を配したもので、従来公知の炭素材料やステンレスなどの金属材料を用いることができる。
なお、本発明の粒子状炭素触媒を用いたMEAを有する燃料電池としては、特に固体高分子型燃料電池が好ましい。
<炭素触媒の元素分析>
Perkin Elmer社製 2400IIを用い測定を行った。得られた炭素、水素、窒素の元素の組成から窒素原子の炭素原子に対するモル比率(窒素/炭素原子比率、又はN/C比と略記する場合がある)を百分率にて算出した。
<炭素触媒のEPMA分析>
該炭素触媒における炭素原子に対する鉄原子のモル比率を電子プローブマイクロアナライザ(EPMA、島津製作所製EPMA−1400)による元素分析結果から求めた。EPMAによる元素分析は、得られた粒子状炭素触媒の粉末を、バインダーを用いずにペレット状に加工したものを用いて行った。得られた炭素、鉄の元素の組成から鉄原子の炭素原子に対するモル比率(鉄/炭素原子比率、又はFe/C比と略記する場合がある)を百分率にて算出した。
溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いて調製したポリマー濃度0.5g/dLの試料溶液の30℃における相対粘度(溶液の粘度を溶媒の粘度で割った値:ηrel)を求め、これを基に下記式により還元粘度ηsp/Cを求めた。
ηsp/C=(ηrel−1)/C
(上記式中、ηsp/Cは還元粘度、ηrelは相対粘度、Cは溶液中ポリマー濃度を表す)
<燃料電池セルの発電試験>
アノード側に水素、カソード側に酸素を供給し加湿条件下、大気圧に対し100kPa加圧した水素、酸素をアノード、カソードにそれぞれ供給し、80℃にて発電試験を行なった。開回路電圧を5分間測定後、セル電圧を0.9Vから0.45Vまで0.05Vごとに各5分間保持して電流密度を測定し、IV曲線を得た。0.5Vにて観察される電流密度を燃料電池の特性の指標とした。
(ポリアクリロニトリルの合成)
窒素気流下、トルエン280mlが入ったフラスコにアクリロニトリル56.35質量部を加え溶解させた後、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.75質量部を加えた。65℃に昇温撹拌し、3.5時間反応させ、白色沈澱が発生したのを確認した後、反応を終了した。反応物にテトラヒドロフランを加え、ろ過し、ろ物をテトラヒドロフランにて洗浄、ろ過乾燥を行うことでし、ポリアクリロニトリルを得た。
得られたポリアクリロニトリルの濃度が0.5g/dLとなるようにNMPを加え、試料溶液を調製し、上記の方法で測定した特有粘度(ηinh)は1.34dL/gであった。
(炭素触媒の作製)
参考例1で得られたポリアクリロニトリル粒子を190℃から徐々に昇温し、230℃で、1時間空気中で熱処理することにより、ポリアクリロニトリル粒子の不融化体を得た。得られた不融化体に対し、鉄原子が0.3質量%の組成になるよう塩化鉄(II)4水和物を担持し、得られたポリアクリロニトリルの不融化体−塩化鉄(II)4水和物組成物を窒素気流下600℃で5時間熱処理を行った後、ボールミルによる分散処理を施した。次に、アンモニア気流下800℃で1時間、1000℃で1時間アンモニア気流下、熱処理(賦活処理)を行うことで粒子状の炭素触媒を得た。
得られた粒子状の炭素触媒の元素分析による窒素/炭素原子比率(N/C比)は3.22%、EPMA測定による鉄/原子比率(Fe/C)は0.24%であった。
(触媒インク−1の作製)
参考例2で得られた炭素触媒を秤量し、エタノールを加え、そこにアイオノマー(Aldrich社製、Nafion)の分散液を、炭素触媒とNafionの質量比が2となるように加え、超音波で分散させることにより、触媒インク−1を作製した。
(触媒インク−2の作製)
炭素触媒とNafionの質量比を3に変更した以外は、参考例3−1と同様の方法で触媒インク−2を作製した。
マイクロポーラス層付ガス拡散層(SGLカーボン社製、25BCH)のマイクロポーラス層側の表面に、参考例3−2で製造した触媒インク−2を炭素触媒の担持量が1.74mg・cm−2となるように塗布し、熱風乾燥器にて溶媒を除去した。
さらにその上から参考例3−1で製造した触媒インク−1を炭素触媒の担持量が1.87mg・cm−2となるように塗布し熱風乾燥器にて溶媒を除去することで、(X1/Y1)/(X2/Y2)=1.5の多層構造を有する触媒電極を含むガス拡散電極(GDE)を得た。このGDEをカソードとして用いた。
マイクロポーラス層付ガス拡散層(SGLカーボン社製、25BCH)のマイクロポーラス層側の表面に、参考例3−1で製造した触媒インク−1を炭素触媒の担持量が3.52mg・cm−2となるように塗布し、熱風乾燥器にて溶媒を除去し、熱風乾燥器にて溶媒を除去することで、カソード側ガス拡散電極(GDE)を得た。このGDEをカソードとして用いた。
マイクロポーラス層付ガス拡散層(SGLカーボン社製、25BCH)のマイクロポーラス層側の表面に、参考例3−2で製造した触媒インク−2を炭素触媒の担持量が3.58mg・cm−2となるように塗布し、熱風乾燥器にて溶媒を除去し、熱風乾燥器にて溶媒を除去することで、カソード側ガス拡散電極(GDE)を得た。このGDEをカソードとして用いた。
マイクロポーラス層付ガス拡散層(SGLカーボン社製、25BCH)のマイクロポーラス層側の表面に、参考例3−1で製造した触媒インク−1を炭素触媒の担持量が1.715mg・cm−2となるように塗布し、熱風乾燥器にて溶媒を除去した。
さらにその上から参考例3−2で製造した触媒インク−2を炭素触媒の担持量が1.955mg・cm−2となるように塗布し熱風乾燥器にて溶媒を除去することで、(X1/Y1)/(X2/Y2)=0.67の多層構造を有する触媒電極を含むガス拡散電極(GDE)を得た。このGDEをカソードとして用いた。
(アノード側ガス拡散層電極の作製)
マイクロポーラス層付ガス拡散層(SGLカーボン社製、25BCH)のマイクロポーラス層側の表面に、白金担持カーボンの分散液を塗布し、熱風乾燥器にて溶媒を除去し、アノード側ガス拡散層電極(GDE)を作製した。
(MEA、燃料電池の作製及び発電特性評価)
実施例1−1で作製したカソード側ガス拡散電極(GDE)及び参考例4で作製したアノード側ガス拡散層電極(GDE)を、それぞれ2cm角に切り出し、プロトン伝導性電解質膜(DuPont社製、Nafion NR211)の両面にガス拡散層が外側になるように配置し、ホットプレスにて貼り付けることで、GDL付きMEAを得た。得られたGDL付きMEAの両面をカーボン製セパレータで挟み、燃料電池セルを作製した。
得られた燃料電池セルにて上記の方法で発電特性の評価を行った。得られたGDL付きMEAの構成と、発電特性としてセル電圧0.5Vにおける電流密度を下記表1に示す。また、発電試験で得られたIV曲線を図1に示す。
比較例1−1で作製したカソード側ガス拡散電極(GDE)及び参考例4で作製したアノード側のGDEを用いて実施例1−2と同様の操作を行った。得られたGDL付きMEAの構成と、発電特性としてセル電圧0.5Vにおける電流密度を下記表1に示す。また、発電試験で得られたIV曲線を図1に示す。
比較例2−1で作製したカソード側ガス拡散電極(GDE)及び参考例4で作製したアノード側ガス拡散層電極(GDE)を用いて実施例1−2と同様の操作を行った。得られたGDL付きMEAの構成と、発電特性としてセル電圧0.5Vにおける電流密度を下記表1に示す。また、発電試験で得られたIV曲線を図1に示す。
比較例3−1で作製したカソード側ガス拡散電極(GDE)及び参考例4で作製したアノード側ガス拡散層電極(GDE)を用いて実施例1−2と同様の操作を行った。得られたGDL付きMEAの構成と、発電特性としてセル電圧0.5Vにおける電流密度を下記表1に示す。また、発電試験で得られたIV曲線を図1に示す。
当該金属量の下限としては、特に厳密な制限は無いが、炭素触媒の製造において、検出されなくなるまで金属成分を完全に除去しようとすると操作が煩瑣になる等の恐れがある。そのような点を考慮すると、炭素触媒としては、炭素原子に対し金属原子が原子%で0.001以上のものも好ましい。本発明に用いる炭素触媒における鉄原子の含有量は、上限として炭素原子に対して1.5原子%より小さいとさらに好ましく、1.0原子%より小さいとより一層好ましい。下限としては炭素原子に対して0.01原子%より大きいことがさらに好ましく、0.05原子%より大きいことがより好ましい。なお、上記の、原子比率で表された、炭素原子に対する鉄原子の含有量を、鉄/炭素原子比率、又はFe/C比と称することがある。
なお、上記の金属原子としては公知の種々の金属が対象となるが、代表的なものとしては、後述のとおり、高活性の粒子状炭素触媒を得るために製造時に添加されることがある、鉄、コバルト、ニッケル、銅、スズ、マンガン、及び亜鉛からなる群より選ばれる1種類以上の金属原子が挙げられる。
炭素触媒は例えば、特許文献8のような、含窒素微粒子と鉄化合物の組成物を出発物質とした触媒の作製方法の他、含窒素有機化合物、鉄化合物と導電助剤との組成物を出発物質とした触媒の作製方法、アンモニア等の活性ガスを用いた熱処理、多段階での熱処理など従来公知の手法を用いることで好適に製造することが出来る。
なお、上記の鉄原子以外に公知の種々の金属を用いることもできる。代表的なものとしては、後述のとおり、高活性の炭素触媒を得るために製造時に添加されることがある、コバルト、ニッケル、銅、スズ、マンガン、及び亜鉛からなる群より選ばれる1種類以上の金属原子が挙げられる。
溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を用いて調製したポリマー濃度0.5g/dLの試料溶液の30℃における相対粘度(溶液の粘度を溶媒の粘度で割った値:ηrel)を求め、これを基に下記式により還元粘度ηsp/Cを求めた。
ηsp/C=(ηrel−1)/C
(上記式中、ηsp/Cは還元粘度、ηrelは相対粘度、Cは溶液中ポリマー濃度を表す)
<燃料電池セルの発電試験>
加湿条件下、大気圧に対し100kPa加圧した水素、酸素をアノード、カソードにそれぞれ供給し、80℃にて発電試験を行なった。開回路電圧を5分間測定後、セル電圧を0.9Vから0.45Vまで0.05Vごとに各5分間保持して電流密度を測定し、IV曲線を得た。0.5Vにて観察される電流密度を燃料電池の特性の指標とした。
Claims (12)
- 炭素触媒及びアイオノマーを含み、
下記式(1)〜(3)を満たす、燃料電池に用いられるカソード電極構造体。
0.1<X1/Y1≦5 (1)
0.1≦X2/Y2<5 (2)
1.1≦(X1/Y1)/(X2/Y2)≦5 (3)
(式中、X/Yを電極構造体中の炭素触媒(X)とアイオノマー(Y)との質量比とするとき、X1/Y1は電極構造体の一方の表面におけるX/Yを表し、X2/Y2は電極構造体の他方の表面におけるX/Yを表す。) - 炭素触媒とアイオノマーの質量比(X/Y)が、電極構造体の一方の表面側から他方の表面側に向かって漸減する、請求項1に記載の電極構造体。
- 炭素触媒及びアイオノマーを含む層を2層以上有し、各層における炭素触媒とアイオノマーの質量比(X/Y)が、電極構造体の一方の表面側の層から他方の表面側の層に向かって漸減する、請求項1に記載の電極構造体。
- さらに下記式(4)を満たす、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電極構造体。
1.5≦X1/Y1≦3.5 (4)
(式(4)中、X1/Y1は式(1)中のX1/Y1と同じである。) - さらに下記式(5)を満たす、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電極構造体。
0.5≦X2/Y2≦2.5 (5)
(式(5)中、X2/Y2は式(2)中のX2/Y2と同じである。) - さらに下記式(6)を満たす、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電極構造体。
1.2≦(X1/Y1)/(X2/Y2)≦3 (6)
(式(6)中、X1/Y1及びX2/Y2は、それぞれ、式(1)及び(2)中のX1/Y1及びX2/Y2と同じである。) - 炭素触媒中の窒素原子の含有量が炭素原子に対して0.1原子%以上10原子%以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電極構造体。
- 基材と、基材の一方の面上に積層された請求項1〜7のいずれか一項に記載の電極構造体とを有する、膜・電極接合体を製造するための転写シートであって、式(1)〜(3)中、X1/Y1は電極構造体の基材側の表面におけるX/Yを表し、X2/Y2は電極構造体の他方の表面におけるX/Yを表す、転写シート。
- (a)電解質膜、
(b)電解質膜の一方の表面上に積層された請求項1〜7のいずれか一項に記載の電極構造体からなるカソード、及び
(c)電解質膜の他方の表面上に積層されたアノード、
を有する膜・電極接合体であって、
式(1)〜(3)中、X1/Y1は電極構造体の電解質膜側ではない方の表面におけるX/Yを表し、X2/Y2は電極構造体の電解質膜側の表面におけるX/Yを表す、前記膜・電極接合体。 - カソード及び/又はアノードの電解質膜を有していない表面上にガス拡散層を有する、請求項9に記載の膜・電極接合体。
- カソード及び/又はアノードとガス拡散層との間に、マイクロポーラス層を有する、請求項10に記載の膜・電極接合体。
- 請求項9〜11のいずれか一項に記載の膜・電極接合体と、膜・電極接合体の両面にセパレータとを有する、燃料電池。
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