JP2015161023A - 冷延鋼板 - Google Patents
冷延鋼板 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2015161023A JP2015161023A JP2014039092A JP2014039092A JP2015161023A JP 2015161023 A JP2015161023 A JP 2015161023A JP 2014039092 A JP2014039092 A JP 2014039092A JP 2014039092 A JP2014039092 A JP 2014039092A JP 2015161023 A JP2015161023 A JP 2015161023A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- less
- steel sheet
- rolling
- cold
- retained austenite
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Classifications
-
- Y02P10/212—
Landscapes
- Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)
Abstract
【解決手段】所定の化学組成を有し、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における鋼組織が、面積%で、ベイナイトを50%以上、ポリゴナルフェライトを2%以上30%未満、残留オーステナイトを3%以上有し、残部が15.0%以下であって、かつ残留オースナイトを除く鋼組織において15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径が7μm以下であるとともに、下記式(1)および式(2)を満足する鋼組織を有する。
Vαs>1.1Vαq (1)
Ds<Dq (2)
【選択図】なし
Description
(a)高い強度を得るためには鋼組織は硬質であることが好ましく、優れた伸びフランジ性を得るためには鋼組織は均質であることが好ましい。したがって、高い強度と優れた伸びフランジ性とを兼備させるためには、硬質かつ均質な組織であるベイナイトが最も適しており、ベイナイトを主体とする鋼組織とすることが重要である。
(b)しかし、ベイナイトは延性に乏しい組織であるため、単にベイナイトを主体とする鋼組織とするだけでは、優れた延性を確保することが困難である。
(c)優れた延性を兼備させるためには、適量のポリゴナルフェライトと残留オーステナイトとを含有させることが効果的であるが、板厚方向の全域にわたって均一な組織とするよりも、鋼板の表層近傍のフェライト量を増加することにより伸びフランジ性を維持でき、一層の延性向上を図ることができる。
(d)鋼板の表層近傍に軟質なフェライトを鋼板の内部に比べて多く生成させることによって鋼板の表層近傍の加工性が増加し、打ち抜き加工時の微小クラックの生成を抑制することが可能となる。さらに、鋼板内部をベイナイト主体の組織とすることにより、微小なクラックの伝播を抑制することが可能となる。これにより、延性および伸びフランジ性が高められる。
(e)また、適量の残留オーステナイトを含有させることにより変態誘起塑性(TRIP)により延性が高められる。
(f)ここで、残留オーステナイトは、変態誘起塑性(TRIP)により延性を高めることができる反面、変態誘起塑性(TRIP)により硬質なマルテンサイトに変態して伸びフランジ性を低下させる。このため、残留オーステナイトを単に有するのでは、ベイナイトが主体の鋼組織とすることによる伸びフランジ性の向上作用が減殺されてしまい、優れた伸びフランジ性を確保することが困難となる。
(g)残留オーステナイトは、主として15°以上の結晶方位差を有する粒の間に生成する粒状のものと、ベイナイトラス間に生成するラス状のものに分類されるが、後者は残留オーステナイト中の炭素濃度がより高まる傾向にあり、変態誘起塑性(TRIP)により、粒状の残留オーステナイトよりも硬質なマルテンサイトを生じ易く、伸びフランジ性を低下させる。
(h)粒状の残留オーステナイトは、ラス状の残留オーステナイトに比べて、粗大化し易い傾向にあり、打ち抜き加工時に粗大なクラックを生じて伸びフランジ性を低下させる。このため、15°以上の結晶方位差を有する粒の平均粒径を小さくして、粒状の残留オーステナイトの生成サイトを増加させ、微細に生成させることが有効である。
(i)さらに、鋼板の表層部において15°以上の結晶方位差を有する粒の平均粒径を小さくして、粒状の残留オーステナイトを微細に生成させることにより、打ち抜き加工時に粗大なクラックを抑制することで、鋼板の表層部の延性を維持でき、一層の伸びフランジ性向上を図ることができる。
(1)質量%で、C:0.020%超0.30%未満、Si:0.10%超3.00%以下、Mn:1.00%超3.50%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下、sol.Al:2.00%以下およびN:0.010%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における鋼組織が、面積%で、ベイナイトを50%以上、ポリゴナルフェライトを2%以上30%未満、残留オーステナイトを3%以上有し、残部が15.0%以下であって、かつ残留オースナイトを除く鋼組織において15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径が7μm以下であるとともに、下記式(1)および式(2)を満足する鋼組織を有することを特徴とする冷延鋼板。
Ds<Dq (2)
ここで、
Vαsは鋼板表面から50μm深さ位置でのフェライトの面積率(%)であり、
Dsは鋼板表面から50μm深さ位置での残留オースナイトを除く鋼組織における15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径(μm)であり、
Vαqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのフェライトの面積率(%)であり、
Dqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置での残留オースナイトを除く鋼組織における15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径(μm)である。
(2)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.20%未満、Nb:0.10%未満およびV:0.50%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする上記(1)に記載の冷延鋼板。
(3)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:1.0%以下、Mo:0.50%以下およびB:0.010%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする上記(1)または上記(2)に記載の冷延鋼板。
(4)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.050%以下およびBi:0.050%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする上記(1)から上記(3)のいずれかに記載の冷延鋼板。
(1−1)C:0.020%超0.30%未満
Cは、ベイナイトの生成を促進する作用と残留オーステナイトを安定化する作用とを有する。C含有量が0.020%以下では、目的とするベイナイト面積率や残留オーステナイト面積率を確保することが困難となる。したがって、C含有量は0.020%超とする。好ましくは0.070%超、さらに好ましくは0.10%超、特に好ましくは0.14%超である。一方、C含有量が0.30%以上では鋼板の伸びフランジ性が損なわれるばかりか溶接性が劣化する。したがって、C含有量は0.30%未満とする。好ましくは0.25%未満、さらに好ましくは0.20%未満、特に好ましくは0.17%未満である。
Siは、Alと同様に、セメンタイトの析出を遅延させる作用を有し、これにより、オーステナイトが未変態で残留する量、すなわち残留オーステナイトの面積率を高めることを可能とするとともに、固溶強化により鋼板の強度を高めることを可能とする。また、Siは脱酸により鋼を健全化する作用を有する。Si含有量が0.10%以下では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Si含有量は0.10%超とする。好ましくは0.60%超、さらに好ましくは0.90%超、特に好ましくは1.20%超である。一方、Si含有量が3.00%超では鋼板の表面性状が劣化する。さらに、化成処理性およびめっき性が著しく劣化する。したがって、Si含有量は3.00%以下とする。好ましくは2.00%未満、さらに好ましくは1.80%未満、特に好ましくは1.60%未満である。後述するAlを含有する場合は、Si含有量とsol.Al含有量が下記式(3)を満足することが好ましく、下記式(4)を満足するとさらに好ましく、下記式(5)を満足すると特に好ましい。
Si+sol.Al>0.90・・・(4)
Si+sol.Al>1.20・・・(5)
ここで、式中のSiは鋼中でのSi含有量を、sol.Alは酸可溶性のAl含有量を質量%にて表したものである。
Mnは、フェライト変態を抑制してベイナイトの生成を促進する作用を有する。Mn含有量が1.00%以下では、目的とするベイナイト面積率を確保することが困難である。したがって、Mn含有量は1.00%超とする。好ましくは1.50%超、さらに好ましくは1.80%超、特に好ましくは2.10%超である。一方、Mn含有量が3.50%超では、フェライト変態が過度に抑制され、目的とするポリゴナルフェライト面積率を確保することが困難となる。また、ベイナイト変態の完了が遅延するためにオーステナイトへの炭素濃化が促進されず、残留オーステナイトの生成が不十分となり、目的とする残留オーステナイト面積率を確保することが困難となるとともに、残留オーステナイト中の炭素濃度を高めることが困難となる。したがって、Mn含有量は3.50%以下とする。好ましくは3.00%未満、さらに好ましくは2.80%未満、特に好ましくは2.60%未満である。
Pは、一般に不純物として含有される元素であるが、固溶強化により強度を高める作用を有する元素でもある。したがって、Pを積極的に含有させてもよい。しかし、Pは、偏析し易い元素であり、その含有量が0.10%を超えると、粒界偏析に起因する成形性や靭性の低下が顕著となる。したがって、P含有量は0.10%以下とする。好ましくは0.050%未満、さらに好ましくは0.020%未満、特に好ましくは0.015%未満である。P含有量の下限は、特に規定する必要はないが精錬コストの観点から、0.001%以上とすることが好ましい。
Sは、不純物として含有される元素であり、鋼中に硫化物系介在物を形成して伸びフランジ性を劣化させる。このため、S含有量は少ないほど好ましい。したがって、S含有量は0.010%以下とする。好ましくは0.005%未満、さらに好ましくは0.003%未満、特に好ましくは0.002%未満である。S含有量の下限は特に規定する必要はないが、精錬コストの観点からはS含有量は0.0001%以上とすることが好ましい。
Alは、Siと同様に、鋼を脱酸して鋼板を健全化する作用を有する。本発明においては、Alと同様に脱酸作用を有するSiを含有させるため、Alは必ずしも含有させる必要はない。脱酸の促進を目的として含有させる場合には、sol.Alとして0.0050%以上含有させることが好ましい。さらに好ましいsol.Al含有量は0.020%超である。また、Alは、Siと同様にオーステナイトからのセメンタイトの析出を抑制することで残留オーステナイトの生成を促進する作用を有する。残留オーステナイトの生成を促進を目的として含有させる場合には、sol.Al含有量は好ましくは0.040%超、さらに好ましくは0.050%超、特に好ましくは0.060%超である。一方、sol.Al含有量が0.010%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、sol.Al含有量は、0.010%以上であり、好ましくは0.20%以上である。一方、sol.Al含有量が高すぎると、アルミナに起因する表面疵が発生しやすくなるばかりか、変態点が大きく上昇し、焼鈍後にベイナイトを主相とする金属組織を得ることが困難となる。したがって、sol.Al含有量は2.00%以下とする。好ましくは0.60%未満、さらに好ましくは0.20%未満、特に好ましくは0.10%未満である。
Nは、不純物として含有される元素であり、鋼板の成形性を低下させる作用を有する。N含有量が0.010%超では成形性の低下が著しくなる。したがって、N含有量は0.010%以下とする。好ましくは0.006%以下であり、さらに好ましくは0.005%以下である。N含有量の下限は特に規定する必要はないが、後述するようにTi、NbおよびVの1種または2種以上を含有させて鋼組織の微細化を図る場合を考慮すると、炭窒化物の析出を促進させるためにN含有量は0.0010%以上とすることが好ましく、さらに好ましくは0.0020%以上である。
(1−8)Ti:0.20%未満、Nb:0.10%未満およびV:0.50%以下からなる群から選択される1種または2種以上
Ti、NbおよびVは、いずれも、鋼中に炭化物または窒化物として析出し、そのピン止め効果によって鋼組織を微細化する作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、過剰に含有させても、上記作用による効果が飽和して不経済となる。したがって、Ti含有量は0.20%未満、Nb含有量は0.10%未満、V含有量は0.50%以下とする。これらの元素の上記作用による効果をより確実に得るには、Ti:0.005%以上、Nb:0.002%以上、およびV:0.005%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
Cr、Mo、Bは、いずれも、焼入性を高める作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。
Ca、MgおよびREMは介在物の形状を調整することにより、Biは凝固組織を微細化することにより、ともに伸びフランジ性を改善する作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有させても上記作用による効果が飽和して不経済となる。したがって、Ca含有量は0.010%以下、Mg含有量は0.010%以下、REM含有量は0.050%以下、Bi含有量は0.050%以下とする。好ましくは、Ca含有量は0.0020%以下、Mg含有量は0.0020%以下、REM含有量は0.0020%以下、Bi含有量は0.010%以下である。上記作用をより確実に得るには、Ca:0.0005%以上、Mg:0.0005%以上、REM:0.0005%以上およびBi:0.0010%以上のいずれかを満足させることが好ましい。なお、REMとは希土類元素を意味し、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REM含有量はこれらの元素の合計含有量である。
2.鋼組織
本発明に係る冷延鋼板の組織は、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置および鋼板表面から50μm深さ位置での鋼組織に特徴を有する。ここで、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置は、鋼板表面と鋼板の板厚中心との中間点であるので、この位置での鋼組織は鋼板の平均的な組織を示している。一方、鋼板表面から50μm深さの位置での鋼組織は、鋼板の表面近傍における組織を示す。鋼板の表層は、酸化スケールや冷却の影響によって組織が乱れる可能性があるので、そのような乱れを避けるために、表面から50μm深さ位置での組織によって鋼板表面近傍の組織を規定する。
上述したように、ベイナイトは、硬質かつ均質な組織であり、高い強度と優れた伸びフランジ性とを兼備させるのに最も適した組織である。ベイナイト面積率が50%未満では高い強度と優れた伸びフランジ性とを鋼板に兼備させることが困難である。したがって、ベイナイト面積率は50%以上とする。好ましくは60%以上である。ベイナイト面積率の上限は特に規定する必要はない。しかし、後述する他の相や組織の面積率の下限値より、ベイナイト面積率は95%以下となる。なお、本発明におけるベイナイトには上部ベイナイトおよび下部ベイナイトの双方が含まれる。
軟質なポリゴナルフェライトを含有させることにより、鋼板の変形初期の加工硬化指数が向上する。さらに、反射的効果として残留オーステナイトへの炭素濃化が促進されるため、変形後期の加工硬化指数も向上する。その結果、鋼板の延性および伸びフランジ性が向上する。ポリゴナルフェライト面積率が2.0%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、ポリゴナルフェライト面積率は2.0%以上とする。
残留オーステナイトは、変態誘起塑性(TRIP)により延性を高める作用を有する。残留オーステナイト面積率が3%未満では、上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、残留オーステナイト面積率は3%以上とする。好ましくは5%以上、さらに好ましくは7%以上である。残留オーステナイト面積率の上限は特に規定する必要はないが、上記化学組成において確保し得る残留オーステナイト面積率は概ね40%未満である。
本発明に係る冷延鋼板の組織は、上述したベイナイト、ポリゴナルフェライトおよび残留オーステナイトから構成されることが成形性の観点から好ましいが、マルテンサイト、パーライト、セメンタイトなど上記以外の組織が混在したとしても、その面積率が15%以下であれば許容できる。上記残部の面積率は好ましくは10%以下である。
上述したように、残留オーステナイトは、主に15°以上の結晶方位差を有する粒の間とベイナイトラス間とに形成される。そして、前者の方が後者に比して粗大化する傾向にあるため、前者の残留オーステナイトを微細に分散させることが重要である。そのためには、15°以上の結晶方位差を有する粒の平均粒径を小さくして、残留オーステナイトの生成サイトを増加させることが有効である。
伸びフランジ成形や曲げ成形等のように、鋼板内部に比して鋼板表層部における歪量が大きい成形法では、鋼板表層部における変形能を高めるとともに、打ち抜き加工時の微小クラックの生成を抑制することが重要である。そのため、本発明に係る冷延鋼板の組織は、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における鋼組織を以上のように規定するほかに、鋼板表面から50μm深さ位置での鋼組織と板厚の1/4深さ位置での鋼組織との関係を以下のように規定する。
Ds<Dq (2)
ここで、
Vαsは鋼板表面から50μm深さ位置でのフェライトの面積率(%)であり、Dsは鋼板表面から50μm深さ位置での残留オースナイトを除く鋼組織における15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径(μm)であり、Vαqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのフェライトの面積率(%)であり、Dqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置での残留オースナイトを除く鋼組織における15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径(μm)である。
本発明に係る冷延鋼板は、上述した化学組成と板厚方向の傾斜組織を含む鋼組織を有するものであればよく、その製造方法は特に限定されないが、本発明に係る冷延鋼板を得るのに好適な製造方法を以下に説明する。
ここで、各記号の意味は次の通りである。
t:最終圧延パスの1つ前の圧延パスの圧延完了から最終圧延パスの圧延開始までのパス間時間(秒)
T:最終圧延パスの1つ前の圧延パスの圧延完了温度(℃)
このような方法にて製造した熱延板を母材として採用し、焼鈍工程において、加熱速度、均熱温度、冷却速度等を制御することで、組織の粗大化を抑制し、上記化学組成、板厚方向の傾斜組織を含む鋼組織を有する冷延鋼板を製造することが容易になる。以下に製造方法についてより詳しく説明する。
熱間圧延に供するスラブは、連続鋳造により得られたスラブや鋳造・分塊により得られたスラブなどを用いることができ、必要によってはそれらに熱間加工または冷間加工を加えたものを用いることができる。
最終圧延パス、最終圧延パスの1つ前の圧延パスおよび最終圧延パスの2つ前の圧延パスにおける圧下率は30%以上50%以下とすることが好ましい。
圧延完了温度は860℃以上1050℃以下とすることが好ましい。圧延完了温度を860℃以上とすることにより、圧延時の変形抵抗が低減され、圧延が容易になる。したがって、圧延完了温度は860℃以上とすることが好ましい。さらに好ましくは880℃以上、特に好ましくは900℃以上である。
上記式(7)を満足することにより、最終圧延パスの1つ前の圧延パスの圧延完了から最終圧延パスの圧延開始までのパス間において、オーステナイトの再結晶が促進されるとともにオーステナイトの粒成長が抑制されるため、圧延中の再結晶オーステナイト粒の微細化が図られ、熱延鋼板の金属組織が微細化し、冷間圧延および焼鈍後の金属組織を微細化し、延性、伸びフランジ性を向上させる。
圧延により導入した歪による駆動力を効率的に活用して変態させるため、圧延完了の一次冷却は0.3秒間以内に冷却を開始して、200℃/秒以上の冷却速度で850℃未満Ar3点以上の温度域まで冷却することが好ましい。
850℃未満Ar3点以上の温度域での滞留時間は1秒間以上3秒間未満とすることが好ましい。これによって、鋼板の表層近傍でのフェライト変態駆動力を残したまま、鋼板の内部の蓄積歪みを解放されることが可能となり、鋼板表層部が鋼板内部よりも細粒となる傾斜組織を有する熱延鋼板を容易に得ることができる。1秒間未満では、鋼板の内部の歪み解放が不十分なため所望の傾斜組織を有する熱延鋼板を得ることができない。一方、3秒間以上では鋼板の表面に導入された歪みが解放してしまい、同様に所望の傾斜組織を有する熱延鋼板を得ることができない。したがって、850℃未満Ar3点以上の温度域での滞留時間は1秒間以上3秒間未満とすることが好ましい。
上述した鋼板表層部と鋼板内部の蓄積歪みの差を有効に利用して、熱延板の傾斜組織を得る為には、フェライト変態が活発となる600℃以上750℃未満の温度域まで20℃/秒以上の冷却速度で冷却し、この温度域にて1秒間以上15秒間以内滞在させることが好ましい。冷却速度が20℃/秒未満の場合、鋼板の内部で冷却中に一部フェライト変態が生じ、混粒組織となりやすいために、微細均一な熱延板組織と成り難い。したがって、この温度域への冷却速度は20℃/秒以上とすることが好ましく、より好ましくは40℃/秒、さらに好ましくは60℃/秒、特に好ましくは80℃/秒である。
巻取温度までの平均冷却速度は、オーステナイトに導入された歪みの解放による粗大なフェライトの析出を抑制するため、30℃/秒以上とすることが好ましい。平均冷却速度は、40℃/秒以上であればさらに好ましく、50℃/秒であれば特に好ましい。
熱延鋼板の板厚は1.2mm超6mm以下が好ましい。熱延鋼板の板厚が1.2mm以下では、圧延完了温度の確保が困難になるとともに圧延荷重が過大となって、熱間圧延が困難となる場合がある。したがって、本発明に係る熱延鋼板の板厚は1.2mm超が好ましい。さらに好ましくは1.4mm以上である。一方、板厚が6mm超では、熱延板組織の微細化が困難となるだけでなく、上述した傾斜組織を得ることも困難となる。したがって、板厚は6mm以下とする。好ましくは5mm以下である。
熱間圧延された鋼板は、酸洗等により脱スケールされた後に、常法に従って冷間圧延される。冷間圧延は、再結晶を促進して冷間圧延および焼鈍後の金属組織を均一化し、伸びフランジ性をさらに向上させるために、冷圧率を40%以上とすることが好ましい。冷圧率が高すぎると、圧延荷重が増大して圧延が困難となるため、冷圧率の上限を70%未満とすることが好ましく、60%未満とすることはさらに好ましい。
冷間圧延後の鋼板は、必要に応じて公知の方法に従って脱脂等の処理が施された後、焼鈍される。
電気めっき鋼板を製造する場合には、上述した方法で製造された冷延鋼板に、常法に従って電気めっきを行えばよく、めっき皮膜の化学組成は限定されない。電気めっきの種類として、電気亜鉛めっき、電気Zn−Ni合金めっき等が例示される。
光学顕微鏡やSEMによる観察像では、ベイナイト、残留オーステナイトおよびマルテンサイトの区別が困難な場合があるため、以下の方法で各々の相および組織の面積率を定量した。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.020%超0.30%未満、Si:0.10%超3.00%以下、Mn:1.00%超3.50%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下、sol.Al:2.00%以下およびN:0.010%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における鋼組織が、面積%で、ベイナイトを50%以上、ポリゴナルフェライトを2%以上30%未満、残留オーステナイトを3%以上有し、残部が15.0%以下であって、かつ残留オースナイトを除く鋼組織において15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径が7μm以下であるとともに、下記式(1)および式(2)を満足する鋼組織を有することを特徴とする冷延鋼板。
Vαs>1.1Vαq (1)
Ds<Dq (2)
ここで、
Vαsは鋼板表面から50μm深さ位置でのフェライトの面積率(%)であり、
Dsは鋼板表面から50μm深さ位置での残留オースナイトを除く鋼組織における15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径(μm)であり、
Vαqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのフェライトの面積率(%)であり、
Dqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置での残留オースナイトを除く鋼組織における15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径(μm)である。 - 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.20%未満、Nb:0.10%未満およびV:0.50%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の冷延鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:1.0%以下、Mo:0.50%以下およびB:0.010%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷延鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.050%以下およびBi:0.050%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の冷延鋼板。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014039092A JP6217455B2 (ja) | 2014-02-28 | 2014-02-28 | 冷延鋼板 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014039092A JP6217455B2 (ja) | 2014-02-28 | 2014-02-28 | 冷延鋼板 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2015161023A true JP2015161023A (ja) | 2015-09-07 |
JP6217455B2 JP6217455B2 (ja) | 2017-10-25 |
Family
ID=54184335
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2014039092A Active JP6217455B2 (ja) | 2014-02-28 | 2014-02-28 | 冷延鋼板 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6217455B2 (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2021139012A (ja) * | 2020-03-06 | 2021-09-16 | Jfeスチール株式会社 | プレス用鋼板の製造方法、プレス部品の製造方法、鋼板、伸びフランジ成形性の評価方法 |
KR20220002485A (ko) * | 2019-05-31 | 2022-01-06 | 닛폰세이테츠 가부시키가이샤 | 핫 스탬프 성형체 |
CN115244205A (zh) * | 2020-03-13 | 2022-10-25 | 日本制铁株式会社 | 风力发电设施用钢板及其制造方法 |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN112853223B (zh) * | 2021-01-04 | 2022-06-28 | 邯郸钢铁集团有限责任公司 | 免回火超高强工程机械用钢q890d及其生产方法 |
Citations (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011214070A (ja) * | 2010-03-31 | 2011-10-27 | Sumitomo Metal Ind Ltd | 冷延鋼板およびその製造方法 |
JP2011214073A (ja) * | 2010-03-31 | 2011-10-27 | Sumitomo Metal Ind Ltd | 冷延鋼板およびその製造方法 |
WO2012133563A1 (ja) * | 2011-03-28 | 2012-10-04 | 新日本製鐵株式会社 | 冷延鋼板及びその製造方法 |
WO2013118679A1 (ja) * | 2012-02-08 | 2013-08-15 | 新日鐵住金株式会社 | 高強度冷延鋼板及びその製造方法 |
WO2013154071A1 (ja) * | 2012-04-10 | 2013-10-17 | 新日鐵住金株式会社 | 衝撃吸収部材に適した鋼板とその製造方法 |
JP2013249501A (ja) * | 2012-05-31 | 2013-12-12 | Kobe Steel Ltd | 機械的特性ばらつきの小さい高強度冷延鋼板およびその製造方法 |
-
2014
- 2014-02-28 JP JP2014039092A patent/JP6217455B2/ja active Active
Patent Citations (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011214070A (ja) * | 2010-03-31 | 2011-10-27 | Sumitomo Metal Ind Ltd | 冷延鋼板およびその製造方法 |
JP2011214073A (ja) * | 2010-03-31 | 2011-10-27 | Sumitomo Metal Ind Ltd | 冷延鋼板およびその製造方法 |
WO2012133563A1 (ja) * | 2011-03-28 | 2012-10-04 | 新日本製鐵株式会社 | 冷延鋼板及びその製造方法 |
WO2013118679A1 (ja) * | 2012-02-08 | 2013-08-15 | 新日鐵住金株式会社 | 高強度冷延鋼板及びその製造方法 |
WO2013154071A1 (ja) * | 2012-04-10 | 2013-10-17 | 新日鐵住金株式会社 | 衝撃吸収部材に適した鋼板とその製造方法 |
JP2013249501A (ja) * | 2012-05-31 | 2013-12-12 | Kobe Steel Ltd | 機械的特性ばらつきの小さい高強度冷延鋼板およびその製造方法 |
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR20220002485A (ko) * | 2019-05-31 | 2022-01-06 | 닛폰세이테츠 가부시키가이샤 | 핫 스탬프 성형체 |
US20220195557A1 (en) * | 2019-05-31 | 2022-06-23 | Nippon Steel Corporation | Hot-stamping formed body |
KR102603447B1 (ko) | 2019-05-31 | 2023-11-21 | 닛폰세이테츠 가부시키가이샤 | 핫 스탬프 성형체 |
US11884989B2 (en) * | 2019-05-31 | 2024-01-30 | Nippon Steel Corporation | Hot-stamping formed body |
JP2021139012A (ja) * | 2020-03-06 | 2021-09-16 | Jfeスチール株式会社 | プレス用鋼板の製造方法、プレス部品の製造方法、鋼板、伸びフランジ成形性の評価方法 |
JP7264090B2 (ja) | 2020-03-06 | 2023-04-25 | Jfeスチール株式会社 | プレス用鋼板の製造方法、プレス部品の製造方法、及び伸びフランジ成形性の評価方法 |
CN115244205A (zh) * | 2020-03-13 | 2022-10-25 | 日本制铁株式会社 | 风力发电设施用钢板及其制造方法 |
CN115244205B (zh) * | 2020-03-13 | 2023-11-03 | 日本制铁株式会社 | 风力发电设施用钢板及其制造方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP6217455B2 (ja) | 2017-10-25 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6241273B2 (ja) | 熱延鋼板 | |
JP6241274B2 (ja) | 熱延鋼板の製造方法 | |
JP2009209451A (ja) | 加工性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 | |
WO2013005618A1 (ja) | 冷延鋼板 | |
JP6390273B2 (ja) | 熱延鋼板の製造方法 | |
JP5825206B2 (ja) | 冷延鋼板の製造方法 | |
JP5825205B2 (ja) | 冷延鋼板の製造方法 | |
JP6390274B2 (ja) | 熱延鋼板 | |
JP6601253B2 (ja) | 高強度鋼板 | |
JP5862591B2 (ja) | 高強度鋼板およびその製造方法 | |
JP2017145469A (ja) | 高強度鋼板の製造方法 | |
WO2013005670A1 (ja) | 溶融めっき冷延鋼板およびその製造方法 | |
JP2013014824A (ja) | 冷延鋼板の製造方法 | |
JPWO2019151017A1 (ja) | 高強度冷延鋼板、高強度めっき鋼板及びそれらの製造方法 | |
JP6696208B2 (ja) | 高強度鋼板の製造方法 | |
JP6417841B2 (ja) | 冷延鋼板の製造方法 | |
JP2010013700A (ja) | 加工性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 | |
JP6398210B2 (ja) | 冷延鋼板の製造方法 | |
JP5664482B2 (ja) | 溶融めっき冷延鋼板 | |
JP6217455B2 (ja) | 冷延鋼板 | |
JP5648596B2 (ja) | 冷延鋼板の製造方法 | |
KR20240023431A (ko) | 냉연 강판 및 그 제조 방법 | |
JP5825204B2 (ja) | 冷延鋼板 | |
JP5708320B2 (ja) | 冷延鋼板 | |
JP6326837B2 (ja) | 冷延鋼板 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
RD01 | Notification of change of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7421 Effective date: 20151016 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20161005 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20170808 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20170829 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20170911 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 6217455 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |