[実施形態]
図1に示すエレベータ群管理制御装置としての群管理制御装置1は、エレベータ群2を含むエレベータ群管理制御システム100に適用される。群管理制御装置1は、当該エレベータ群2を群管理し複数の乗りかご120の運行を管理することで効率的な運行サービスを行い、これにより、サービス性能の向上を図るものである。
ここで、サービス性能とは、エレベータ群2を利用する利用者の利便性に関する性能である。サービス性能は、例えば、利用者が乗場124に設けられた乗場入力装置160を操作して乗場呼びを登録してから乗りかご120に乗車するまでの待ち時間、利用者が乗りかご120に乗車してから降車するまでの乗車時間、あるいは、待ち時間と乗車時間とを加算したサービス時間等で表すことができる。このサービス性能は、例えば、いわゆる未応答時間を短くすることで向上させることができる傾向にある。ここで、未応答時間とは、乗場呼びを登録してから当該乗場呼びに乗りかごが応答するまでの時間であり、典型的には、利用者が乗場呼びを登録してから乗りかご120が戸開するまでの時間に相当する。このため、群管理制御装置1は、基本的には、この未応答時間がなるべく短くなるように、乗場呼びに割当てる乗りかご120を決定することで、サービス性能の向上を図ることができる。ここで、乗場呼びとは、利用者によって乗場入力装置160を介してなされる乗りかご120の呼び操作である。また、乗りかご120が戸開したタイミングとしては、戸の開き始めのタイミングを用いてもよいし、戸が開ききったタイミングを用いてもよい。
一方で、このようなエレベータ群管理制御システム100においては、環境に配慮して省エネルギの実現も望まれている。本実施形態の群管理制御装置1は、上記サービス性能を維持しながら省エネルギ目標値を設定して見通しのよい省エネルギの実現を図るものである。
ここでまず、群管理制御装置1が適用されるエレベータ群管理制御システム100について説明する。エレベータ群管理制御システム100は、群管理制御装置1と、エレベータ群2とを備え、群管理制御装置1によってエレベータ群2が群管理される。エレベータ群2は、例えば、1号機〜4号機の複数のエレベータ3からなり、複数の乗りかご120がそれぞれ昇降路を昇降することで、例えば、1階〜10階の複数の階床に対して運行サービスを行う。群管理制御装置1は、これらエレベータ群2を統括的に制御する。群管理制御装置1は、複数の乗りかご120それぞれの運行予定を生成し、各乗りかご120それぞれに対応して設けられる各かご制御装置122に送信する。
なお、以下の説明では、エレベータ群2は、1号機から4号機の4つのエレベータ3を備えるものとして説明するが、これに限らず、3つのエレベータ3を備えるものであってもよいし、5つ以上のエレベータ3を備えるものであってもよい。また、運行サービスの対象階床も1階〜10階に限られない。また、以下の説明では、1号機から4号機の4つのエレベータ3は、特に断りのない限り、単にエレベータ3として説明する。
具体的には、各エレベータ3は、それぞれ、乗客を乗せる乗りかご120、かご制御装置122等を含む。各エレベータ3は、例えば、乗りかご120とカウンタウェイトとをメインロープで連結したいわゆるつるべ式のエレベータである。各エレベータ3は、共通の乗場124が設けられる。
各乗りかご120は、それぞれかご入力装置(かご呼び登録装置)120a、かご案内装置120b、荷重検出器120c等を含む。かご入力装置120aは、利用者による操作入力に応じて行先階のかご呼び登録等を行う。かご案内装置120bは、例えば、報知音を出力可能なブザー、種々の音声情報をアナウンス可能なスピーカ、種々の表示情報を表示可能な表示装置(表示部)等を含む。荷重検出器120cは、乗りかご120内の積載荷重を検出する。荷重検出器120cが検出する積載荷重は、主に、乗りかご120に乗車している利用者の荷重(重量)を表す。積載荷重は、利用者の手荷物などの荷重の影響も受けるが、典型的には、利用者人数(乗車人数)に応じて変動する傾向にある。荷重検出器120cは、例えば、乗りかご120の戸開中の積載荷重の変動を検出することで、乗車荷重及び降車荷重を測定することができる。ここで、乗車荷重とは、ある階床で乗りかご120に乗車した利用者の荷重である。降車荷重とは、ある階床で乗りかご120から降車した利用者の荷重である。
例えば、ある階床で乗場124から乗りかご120に乗車した利用者は、かご入力装置120aを操作して行先階を入力する。かご入力装置120aは、利用者からの行先階の入力をかご呼びの発生として検出し、検出したかご呼びに関するかご呼び情報を、かご制御装置122を介して群管理制御装置1に送信し、かご呼び登録を行う。かご呼び情報は、例えば、利用者が入力した行先階、乗りかご120の識別番号(以下、「かご番号」、「CarID」という場合がある。)、かご呼びの発生時刻などの情報を含む。
各かご制御装置122は、それぞれ、かご入力装置120a、かご案内装置120b、荷重検出器120c等の他、乗りかご120を昇降させる巻上機等が電気的に接続される。各かご制御装置122は、乗りかご120の昇降制御、ドアの開閉制御といった種々の制御を行う。また、各かご制御装置122は、群管理制御装置1にも電気的に接続されている。各かご制御装置122は、群管理制御装置1から受信する各乗りかご120の運行予定にしたがって各乗りかご120の各部をそれぞれ制御する。各かご制御装置122は、例えば、通常の形式の双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU(中央演算処理装置)、ROM、RAM、バックアップRAM及び入出力ポート装置を有するマイクロコンピュータ及び駆動回路を備えている。ROM(Read Only Memory)は、所定の制御プログラム等を予め記憶している。RAM(Random Access Memory)は、CPUの演算結果を一時記憶する。バックアップRAMは、予め用意されたマップデータ、対応するエレベータ3の仕様等の情報を記憶する。各エレベータ3は、それぞれかご制御装置122によって各部の駆動が制御されて乗りかご120が昇降路内を昇降することで、任意の目的階に移動することができる。
乗場124は、乗りかご120が着床可能な各エレベータ停止階床(ここでは1階〜10階)にそれぞれ設けられる。各乗場124は、乗場入力装置(乗場呼び登録装置)160、乗場案内装置170等が設けられる。乗場入力装置160は、利用者による操作入力に応じて行先方向(上方向又は下方向)の乗場呼び登録等を行う。乗場案内装置170は、例えば、報知音を出力可能なブザー、種々の音声情報をアナウンス可能なスピーカ、種々の表示情報を表示可能な表示装置(表示部)等を含む。
例えば、ある階床にいる利用者は、その階床の乗場124の乗場入力装置160を操作して所望の行先方向を入力する。具体的には、乗場入力装置160には上方向ボタン及び下方向ボタンが設けられており、利用者は、所望の行先方向に応じたボタン(上方向ボタン又は下方向ボタン)を押下する。乗場入力装置160は、利用者からの行先方向の入力を乗場呼びの発生として検出し、検出した乗場呼びに関する乗場呼び情報を群管理制御装置1に送信し、乗場呼び登録を行う。乗場呼び情報は、例えば、乗場呼びの発生時刻、乗場呼びの発生階床、乗場呼びの方向(上方向又は下方向)などの情報を含む。
なお、以下では、上述したかご入力装置120aから入力される呼びを「かご呼び」といい、乗場入力装置160から入力される呼びを「乗場呼び」といい、両者を区別する場合がある。
群管理制御装置1は、各かご制御装置122、乗場入力装置160、乗場案内装置170等が電気的に接続され、種々の制御を行う。群管理制御装置1は、各かご制御装置122と相互に検出信号や駆動信号、制御指令等の情報の通信、授受を行い、エレベータ群2を群管理する。群管理制御装置1は、乗場入力装置160から乗場呼び情報を受け取ると、複数の乗りかご120の中から、乗場呼びに応答させる乗りかごを120を選定、決定する。群管理制御装置1は、割当かごの運行予定を生成、更新して、対応するかご制御装置122に送信する。群管理制御装置1は、例えば、通常の形式の双方向コモン・バスにより相互に連結されたCPU(中央演算処理装置)、ROM、RAM、バックアップRAM及び入出力ポート装置を有するマイクロコンピュータ及び駆動回路を備えている。ROM(Read Only Memory)は、所定の制御プログラム等を予め記憶している。RAM(Random Access Memory)は、CPUの演算結果を一時記憶する。バックアップRAMは、予め用意されたマップデータ、エレベータ3の仕様等の情報を記憶する。
なお、以下では、乗場呼びに応答させる乗りかご120を選定することを「割当て(割当)」と呼び、選定された乗りかご120を「割当かご」と呼ぶ場合がある。
群管理制御装置1は、機能概念的に、群管理制御部130と、稼動時間制御部140と、表示制御部150とを含む。群管理制御部130は、典型的には、乗場呼びをいずれかの乗りかご120に割当てる割当処理を行うものである。稼動時間制御部140は、典型的には、群管理制御部130が割当てを行う際に用いる種々の制御パラメータを設定するものである。本実施形態の群管理制御部130は、後述するように稼動時間制御部140の稼動時間管理部144が生成したかごマスクに基づいて、複数の乗りかご120の運行を管理するものである。表示制御部150は、かご案内装置120bや乗場案内装置170の表示装置等を制御するものである。
群管理制御部130は、機能概念的に、かご状態記録部131、割当かご選定部132、かご運行制御部133、マスク管理部134等を含む。
かご状態記録部131は、各かご制御装置122から、各乗りかご120に関する情報であるかご情報を継続的に収集する。かご情報は、例えば、運行中の乗りかご120の位置、進行方向、ドアの開閉状態、荷重データなどの情報を含む。荷重データは、上述した階床毎の乗車荷重及び降車荷重などを含む。また、かご情報には、例えば、乗りかご120の稼動に関わる稼動消費電力量も含まれる。ここでは、かご状態記録部131は、これらかご情報を統合した運行記録を生成する。かご状態記録部131が生成する運行記録は、例えば、後述の図2に一例を例示する。
割当かご選定部132は、乗場入力装置160から乗場呼び情報を受信し、乗場呼びに応答する乗りかご120を割当てる。割当方法としては、種々の手法を用いることができる。割当かご選定部132は、例えば、乗りかご120それぞれについて、所定の評価関数を用いて、割当て時のかご状態から未応答時間の予測値を算出し、予測値が最小になる乗りかご120を割当かごとして割当てる割当方法を利用することができる。ここで、未応答時間は、典型的には、乗場呼びが発生してから、この乗場呼びに乗りかご120が応答するまで、すなわち、乗場呼びの発生階に乗りかご120が到着して戸開するまでの時間間隔に相当する。
かご運行制御部133は、割当かご選定部132による割当結果、未応答の乗場呼び、及び、未応答のかご呼び等に基づいて、各乗りかご120の運行予定を生成する。ここで、未応答の乗場呼び、未応答のかご呼びとは、それぞれ応答が未完了である乗場呼び、かご呼びである。かご運行制御部133は、各乗りかご120の運行予定を、対応するかご制御装置122にそれぞれ送信する。
マスク管理部134は、割当かご選定部132による割当ての際、割当かごの候補となる乗りかご120を指定する。割当かごの候補となる乗りかご120は、全台とは限らない。言い換えれば、マスク管理部134は、割当かご選定部132による割当ての際に、乗場呼びに対する応答を制限する乗りかご120(割当て不可とする乗りかご120)を指定する。一例として、マスク管理部134は、例えば、高層階と低層階とで割当かごの候補を限定するような制御の場合、乗りかご120毎に階床の乗場呼び、かご呼びを割当て可あるいは不可の情報を管理している。そして、マスク管理部134は、例えば、乗場呼びの割当て時にはその階床の乗場呼び割当て可の乗りかご120を候補とし、当該候補の中から割当かごを選定する。本実施形態のマスク管理部134は、後述する稼動時間制御部140から送信されるマスク情報等の制御パラメータに基づいて、割当かごの候補となる乗りかご120を指定する。
次に、稼動時間制御部140は、群管理されるエレベータ群2に関する実績値として、運行記録から予め設定される所定の一定時間間隔での乗車人数、平均未応答時間、稼動消費電力量等を算出する。稼動時間制御部140は、算出した実績値と、予め設定される省エネルギ目標値とを比較して、比較結果に基づいて稼動時間制御パラメータ(稼動時間を制御するためのパラメータ)を変更する。そして、稼動時間制御部140は、変更した稼動時間制御パラメータから各乗りかご120の稼動時間スケジュールを作成しマスク情報に変換しマスク管理部134に送信する。ここで、上記所定の一定時間間隔は、省エネルギ単位時間間隔に相当し、以下の説明では、単に「単位時間間隔」という場合がある。当該単位時間間隔は、省エネルギのレベルを調整する際の単位時間間隔であり、任意に設定されればよい。単位時間間隔は、例えば、30分間隔であるものとして説明するが、これに限らず、5分間隔、10分間隔、60分間隔等であってもよい。
具体的には、稼動時間制御部140は、機能概念的に、実績集計部141、目標設定部142、稼動時間調整部143、稼動時間管理部144等を含む。
実績集計部141は、単位時間間隔毎の群管理性能実績値をかご状態記録部131から集計する。実績集計部141は、乗場呼びを登録してから当該乗場呼びに前記乗りかご120が応答するまでの時間である未応答時間の実績値である未応答時間実績値を集計する。本実施形態の実績集計部141は、群管理されるエレベータ群2に関する実績値(群管理性能実績値)として、少なくとも予め設定された単位時間間隔毎の乗りかご120の未応答時間実績値の平均値である平均未応答時間実績値を集計する。ここではさらに、実績集計部141は、エレベータ群2に関する実績値として、単位時間間隔毎の利用者人数実績値、単位時間間隔毎の稼動消費電力量実績値を集計するようにしてもよい。ここで、利用者人数実績値とは、エレベータ群2を利用する人数の実績値である。稼動消費電力量実績値とは、エレベータ群2が稼動する際に消費する電力量の実績値である。実績集計部141は、例えば、かご状態記録部131から運行記録を読み出し、当該運行記録に基づいて、上記エレベータ群2に関する実績値として、実績集計データを生成して記憶する。
ここで、図2は、かご状態記録部131が生成する運行記録の一例を表す図である。かご状態記録部131は、乗りかご120毎に所定の動作(Action)が起こると、図2に例示するようなデータを記録していく。ここで、所定の動作としては、例えば、乗場呼び追加(Add Hall Call)、乗場呼び消去(Delete Hall Call)、昇降開始(Start Run)、昇降停止(Stop Run)、戸開(Door Open)、戸閉(Door Closed)等が挙げられる。ここで、乗場呼び追加とは、利用者によって乗場入力装置160が操作された場合にこれに応じて新たな乗場呼びを登録する動作である。乗場呼び消去とは、乗場入力装置160が操作されることによって登録された乗場呼びに対して、いずれかの乗りかご120が応答し当該乗場呼びがなされた階床に到着した際に、当該応答が完了した乗場呼びを消去する動作である。また、記録するデータとしては、例えば、所定の動作が起こった時刻(time[sec])、乗場呼びID番号(Hall Call)、乗りかご120の走行方向/乗場呼びの方向(Direction)、乗りかご120の昇降開始・昇降停止がなされた階床/乗場呼び追加がなされた階床(At Floor)、かご呼びのID番号(Car Call)、行先階床(To Floor)、乗車荷重(Load Weight)、降車荷重(Unload Weight)、稼動消費電力量(Energy[kWh])等が挙げられる。なお、稼動消費電力量は、乗りかご120を稼動させる際に消費される電力量であり、例えば、所定の時間毎(ここでは、30秒毎)に記録される。
図2の例示は、CarID=1の乗りかご120(1号機の乗りかご120)が1階で空車の状態から、1階→7階→9階→5階→1階→10階の順で移動することを示している。ここで、7階、5階、10階での停車は乗場呼びへの対応であり、9階、1階での停車は、かご呼びへの対応である。ここで、CarIDとは、上述したように各乗りかご120に対してそれぞれ設定されている識別番号である。例えば、1号機の乗りかご120はCarID=1、2号機の乗りかご120はCarID=2、、、というように、各号機の乗りかご120を区別できるように、各乗りかご120に対してそれぞれCarIDが付与されている。かご状態記録部131は、各昇降開始(Start Run)の動作の際に、各階床で停止直前と移動開始直後のかご積載荷重の変化から乗車荷重(Load Weight)、及び、降車荷重(Unload Weight)を記録している。図2の例示は、例えば、時刻(time)=18にて7階で135kgを乗せて、時刻(time)=31にて9階で135kgを降ろしていることを示している。
実績集計部141は、かご状態記録部131が記録した図2のような運行記録から、単位時間間隔毎の乗りかご120の平均未応答時間実績値、単位時間間隔毎の利用者人数実績値、単位時間間隔毎の稼動消費電力量実績値等を集計する。
ここで、未応答時間実績値は、例えば、乗場呼びID番号(Hall Call)毎の、乗場呼び追加(Add Hall Call)から乗場呼び消去(Delete Hall Call)までの時間として定義することができる。実績集計部141は、単位時間間隔毎に当該未応答時間実績値の平均値(例えば、算術平均値)を算出することで、単位時間間隔毎の平均未応答時間実績値を算出することができる。なお、実績集計部141は、平均未応答時間実績値を算出する単位時間間隔において、乗場呼びのない乗場呼びID番号については当該単位時間間隔での平均値の算出には含めないようにするとよい。逆に、実績集計部141は、平均未応答時間実績値を算出する単位時間間隔において、乗場呼び追加がない乗場呼びID番号については前の時間間隔から当該単位時間間隔での平均値を算出するようにするとよい。
また、実績集計部141は、単位時間間隔毎の利用者人数実績値を算出する場合、下記のようにして当該利用者人数実績値を算出することができる。すなわち、実績集計部141は、当該単位時間間隔で乗車した利用者人数として、乗車荷重(Load Weight)の和を求め、当該和を予め設定される一人当たりの推定体重(例えば、65kg程度)で除算して四捨五入する。実績集計部141は、各単位時間間隔においてこのようにして推定した人数の和を求めることで、単位時間間隔毎の利用者人数実績値を算出することができる。
また、実績集計部141は、単位時間間隔毎の稼動消費電力量実績値を算出する場合、各単位時間間隔において、所定の時間毎に記録された稼動消費電力量(Energy[kWh])の和を求めることで、単位時間間隔毎の稼動消費電力量実績値を算出することができる。ここで、運行記録に記録される稼動消費電力量は、例えば、乗りかご120毎に設置された電力量計の値を用いることができる。このような電力量計が設けられていない場合には、実績集計部141は、下記のようにして単位時間間隔毎の稼動消費電力量実績値を算出すればよい。すなわち、実績集計部141は、図2に示す運行記録等から1回の昇降開始(Start Run)から昇降停止(Stop Run)の移動距離、方向、かご積載荷重等から所定の電力量計算式で算出される稼動消費電力量推定値を算出する。そして、実績集計部141は、算出した稼動消費電力量推定値に基づいて単位時間間隔毎の稼動消費電力量実績値を算出する。
実績集計部141は、単位時間間隔毎の平均未応答時間実績値、単位時間間隔毎の利用者人数実績値、単位時間間隔毎の稼動消費電力量実績値の集計を、全ての乗りかご120に対して行う。そして、実績集計部141は、集計した単位時間間隔毎の平均未応答時間実績値、単位時間間隔毎の利用者人数実績値、単位時間間隔毎の稼動消費電力量実績値を稼動時間管理部144に送信し、登録する。
目標設定部142は、エレベータ群2における省エネルギ目標値を設定する。省エネルギ目標値は、当該エレベータ群管理制御システム100が設けられるビル管理者、システム管理者等によって、要求される省エネルギの程度等に応じて予め設定される。目標設定部142は、省エネルギ目標値として、未応答時間の目標値である未応答時間目標値を設定する。本実施形態の目標設定部142は、省エネルギ目標値として、単位時間間隔毎の平均未応答時間実績値の目標値である平均未応答時間目標値を設定する。この平均未応答時間目標値は、典型的には、当該目標値までは省エネルギを優先して利用者を待たせても許容される未応答時間に相当する。概略的にいうと、本実施形態の群管理制御装置1は、上述の単位時間間隔毎の平均未応答時間実績値がこの平均未応答時間目標値に対して余裕があれば、後述の省エネルギレベルを上げてさらなる省エネルギを図る。一方、群管理制御装置1は、上述の単位時間間隔毎の平均未応答時間実績値がこの平均未応答時間目標値に対して余裕がなければ、省エネルギレベルを下げてサービス性能の確保を図る。目標設定部142は、種々の方法で省エネルギ目標値を設定することができる。
目標設定部142は、第1の設定方法として、例えば、入力装置等を介して管理者等によって任意に設定された平均未応答時間目標値を、直接的に省エネルギ目標値として設定してもよい。この場合、平均未応答時間目標値は、単位時間間隔の時間帯に応じて異なる値が設定されてもよい。つまり、平均未応答時間目標値は、例えば、早朝と深夜は20秒、昼間はこれよりも長い30秒のように時間帯毎に異なる値にしてもよい。
また、目標設定部142は、第2の設定方法として、例えば、入力装置等を介して管理者等によって任意に設定された一日の目標の稼動消費電力量削減率(%)に基づいて、許容できる平均未応答時間目標値を算出し、これを省エネルギ目標値として設定してもよい。ここで、一日の目標の稼動消費電力量削減率は、例えば、[(一日の稼動消費電力量実績値−一日の稼動消費電力量目標値)/一日の稼動消費電力量実績値]×100で表すことができる。この場合、目標設定部142は、例えば、基準となる日の省エネルギなしでの一日の稼動消費電力量実績値と、予め設定される一日の目標の稼動消費電力量削減率とに基づいて稼動消費電力量目標値を算出する。そして、目標設定部142は、実績集計部141によって集計された単位時間間隔毎の稼動消費電力量実績値が稼動消費電力量目標値に収束するように、許容できる平均未応答時間目標値を設定する。まりこの場合、群管理制御装置1は、平均未応答時間目標値を増減させながら単位時間間隔毎の省エネルギレベルを調整することとなる。なお、上述の基準となる日は、例えば、管理者等が任意の日を特定してもよいし、あるいは毎月1日としてもよく、種々の手法で決定すればよい。また、基準となる日の省エネルギなしでの一日の稼動消費電力量実績値は、実績集計部141によって集計された値を用いればよく、また、例えば、1週間の平均値を用いてもよい。また、稼動消費電力量実績値が稼動消費電力量目標値に収束したことの判断基準は、稼動消費電力量実績値=稼動消費電力量目標値となった場合だけに限られない。目標設定部142は、例えば、下記の条件式(1)を満たした場合に稼動消費電力量実績値が稼動消費電力量目標値に収束したと判断するようにしてもよい。条件式(1)において、「β」は予め設定される許容誤差を表している。
|稼動消費電力量実績値−稼動消費電力量目標値|≦β ・・・ (1)
大別すると、上述の第1の設定方法は、サービス性能の許容限界を指定した上で、その範囲内で省エネルギを図る方法である。一方、上述の第2の設定方法は、省エネルギの達成率を直接指定し、サービス性能には限界を設けない方法である。
なお、本実施形態の稼動時間制御部140は、後述するように、単位時間間隔毎に省エネルギレベルを変更し、かご稼動時間を動的に変更して、平均未応答時間実績値が平均未応答時間目標値になるように制御する。このとき、稼動時間制御部140は、事前に省エネルギを実施しない時間帯を設定することができ、これにより、その時間帯のサービス性能低下のリスクを回避することができる。この場合、省エネルギを実施しない時間帯は、例えば、入力装置等を介して管理者等によって任意に登録される。登録する時間帯は複数あってもよい。例えば、混雑が予測される出勤時(例えば、8時−9時)の時間帯、退勤時(例えば、17時−18時)の時間帯においてサービス性能の低下を防止する場合には、当該時間帯を、省エネルギを実施しない時間帯として登録すればよい。
ここで、図3は、目標設定部142による目標設定の入力画面の一例を表す図である。図3に例示する入力画面は、例えば、入力装置の表示部等に表示される。図3の例示は、上述の第2の設定方法によって省エネルギ目標値が設定された場合を示しており、一日稼動消費電力量削減率が10%、比較対象となる消費電力基準日が毎月1日に設定されている。なお、図3の例示は、朝8時から9時まで、及び、夕方17時から18時までの時間帯が省エネなし時間帯(省エネルギを実施しない時間帯)として登録されていることを示している。
稼動時間調整部143は、群管理性能実績値と省エネルギ目標値とから各乗りかご120の稼動時間を調整することで、平均未応答時間実績値を調整する。稼動時間調整部143は、単位時間間隔毎の省エネルギレベルを調整することで、各乗りかご120の稼動時間を調整する。稼動時間調整部143は、実績集計部141によって集計された未応答時間実績値が目標設定部142によって設定された未応答時間目標値に収束するように、省エネルギレベルを調整する。ここではより詳細には、稼動時間調整部143は、実績集計部141によって集計された単位時間間隔毎の平均未応答時間実績値が目標設定部142によって設定された平均未応答時間目標値に収束するように、単位時間間隔毎の省エネルギレベルを調整する。これにより、稼動時間調整部143は、各乗りかご120の稼動時間を調整し、単位時間間隔毎の平均未応答時間実績値を調整する。
以下では、まず、第1の設定方法によって省エネルギ目標値が設定される場合、すなわち、直接的に平均未応答時間目標値が設定される場合を説明する。
この場合、稼動時間調整部143は、実績集計部141によって集計された単位時間間隔毎の平均未応答時間実績値が目標設定部142によって設定された平均未応答時間目標値より大きい場合に当該単位時間間隔の省エネルギレベルを相対的に小さくする。一方、稼動時間調整部143は、実績集計部141によって集計された単位時間間隔毎の平均未応答時間実績値が目標設定部142によって設定された平均未応答時間目標値より小さい場合に当該単位時間間隔の省エネルギレベルを相対的に大きくする。これにより、稼動時間調整部143は、単位時間間隔毎の平均未応答時間実績値が平均未応答時間目標値に収束するように、単位時間間隔毎に省エネルギレベルを調整する。
ここで、省エネルギレベルの定義について説明する。省エネルギレベルとは、エレベータ群2における省エネルギの度合を表す指標である。この省エネルギの度合いは、上述した未応答時間実績値に影響を与えるものであり、当該省エネルギの度合いが相対的に高くなるほど、上述の未応答時間実績値が相対的に長くなる傾向にある。ここでは、省エネルギレベルは、単位時間間隔毎の省エネルギの度合を表す。そして、省エネルギレベルは、相対的に大きくなるほど省エネルギの度合いが相対的に高くなるように設定される。言い換えれば、省エネルギレベルは、相対的に大きくなるほど稼動消費電力量実績値が相対的に小さくなるように設定される。
本実施形態の省エネルギレベルは、少なくとも乗りかご120の稼動台数に応じて定められる。省エネルギレベルは、例えば、図4に例示するように、全台稼動の省エネレベル0(Level0)から省エネレベル1(Level1)、省エネレベル2(Level2)、・・・と、レベルが高くなるにつれて順に稼動台数を下げていくように定義される。図4に例示するレベル表は、例えば、管理者等の意向を反映させて事前に作成される。これにより、省エネルギレベルは、相対的に大きくなるほど、稼動台数が相対的に少なくなり、稼動消費電力量実績値が相対的に小さくなり、省エネルギの度合いが相対的に高くなるように設定されることとなる。
図4は、乗りかご120が全部で4台ある場合のレベル表を示している。図4のレベル表において、省エネレベル0(Level0)は、稼動台数が4台であり、言い換えれば、省エネルギなしの状態に相当する。そして、図4のレベル表では、省エネレベル0(Level0)を含めて、稼動台数が1台となるまで、7つのレベルが定義されている。
ここでは、省エネルギレベルは、より細かなレベル分けを可能とすべく、乗りかご120の稼動台数と、ピッチとに応じて定められる。そして、省エネルギレベルを定義する乗りかご120の稼動台数は、単位時間当たりの平均稼動台数であり、小数値をとり得るパラメータとして表すことができる。当該稼動台数は、省エネルギレベルの最低レベル、すなわち、省エネレベル0(Level0)においてエレベータ群2の全ての乗りかご120の台数に応じた値(ここでは4台)をとり、省エネルギレベルが最低レベルから上がる毎に減少する。ここでは、当該稼動台数は、省エネルギレベルが1つ上がるごとに0.5台ずつ減少する。当該稼動台数は、整数の場合、その台数が割当て対象になっており、すなわち、当該整数台が割当て可となっていることを示す。一方、当該稼動台数は、小数値の場合は、単位時間間隔の中での割当て可の時間の割合を表す。また、上記ピッチとは、稼動台数が小数値をとる場合に規定される数値である。上記ピッチとは、所定の乗りかご120を呼びに応答させる状態と応答させない状態との切り替え間隔に関するパラメータである。すなわち、上記ピッチは、所定の乗りかご120における単位時間間隔での割当て可/割当て不可の繰り返し数を表わす。
ここで、図5、図6を参照して、省エネルギレベルを定義する乗りかご120の稼動台数とピッチとの関係についてより具体的に説明する。図5、図6は、横軸を時間軸t、縦軸をON/OFFとしている。ここでは、一例として、単位時間間隔は、60分としている。また、図5、図6中、ONは、乗場呼びを割当ててもよい(割当て可)ことを示し、OFFは、乗場呼びを割当てない(割当て不可)ことを示す。
図5は、稼動台数が3.5台、ピッチが1である場合を示している。この場合、3台の乗りかご120は、常に割当て可(ON)の状態である一方、残りの1台の乗りかご120は、後半30分だけ割当て不可(OFF)となることを表している。この場合、単位時間間隔における稼動台数は、前半30分は4台、後半30分は3台を割当て対象にするので平均して3.5台稼動となる。
一方、図6は、稼動台数が3.5台、ピッチが6である場合を示している。この場合、3台の乗りかご120は、常に割当て可(ON)の状態である一方、残りの1台の乗りかご120は、単位時間間隔において、5分毎の割当て可(ON)と割当て不可(OFF)との切り替えを、6回繰り返すことを表している。この場合も、単位時間間隔における稼動台数は、平均して3.5台稼動となる。ただし、所定の乗りかご120において割当て可から割当て不可になっても、当該乗りかご120は、その時点ですぐ停止するとは限らない。例えば、当該乗りかご120は、利用者が乗車中であれば降車するまで稼動し、当該乗りかご120内に利用者がいなくなってから停止する。この場合、当該乗りかご120は、全ての乗場呼び、かご呼びに対応後、かご積載荷重が0となったことを検知した後に停止する。
各省エネルギレベルにおいて、稼動台数が整数(例えば3台)である場合には、その時間帯は常にその台数で稼動するので、上記のようなピッチ数は不要である。一方、各省エネルギレベルにおいて、稼動台数が小数値をとる場合、ピッチ数によってその時間帯内でのON/OFFの切り替え回数を指定することで、上記のようにON/OFFのスケジュールが決まる。つまり、この群管理制御装置1は、各省エネルギレベルにおける稼動台数とピッチとの2つのパラメータが適宜設定されることで、各単位時間間隔における乗りかご120のON/OFFの稼動時間スケジュールのパターンを様々に設定することができる。群管理制御装置1は、図4で示したような省エネルギレベルのレベル表を事前に設定することで、このような乗りかご120のON/OFFの稼動時間スケジュールのパターンを設定することができる。群管理制御装置1は、省エネルギなしの省エネレベル0から順次レベルを上げると少しずつ乗りかご120の停止時間が長くなるような稼動時間スケジュールとなり省エネルギの度合が強くなることとなる。また、群管理制御装置1は、上記のように当該省エネルギレベルをより細かく設定することで省エネルギの微調整が可能となる。またこのとき、群管理制御装置1は、図6で説明したように、ピッチ数を相対的に大きくし、単位時間間隔において4台稼動と3台稼動とを細かく切り替えるように設定することで、当該単位時間間隔内においてサービス性能が大きく変動することを抑制できる。
なお、上述のように割当て可(ON)と割当て不可(OFF)とが切り替わる所定の乗りかご120は、管理者等によって予め設定されてもよいし、各乗りかご120に状況に応じて選定されてもよい。
次に、稼動時間調整部143によって省エネルギレベルを調整する方法を説明する。
稼動時間調整部143は、例えば、単位時間間隔で群管理制御を行なった後、実績集計部141によって集計されたその時間帯の単位時間間隔の平均未応答時間実績値と、目標設定部142によって設定された平均未応答時間目標値とを読み込む。そして、稼動時間調整部143は、当該時間帯の単位時間間隔の平均未応答時間実績値と平均未応答時間目標値とを比較する。稼動時間調整部143は、当該平均未応答時間実績値が平均未応答時間目標値より大きい場合に当該単位時間間隔の省エネルギレベルを相対的に小さくする。稼動時間調整部143は、当該平均未応答時間実績値が平均未応答時間目標値より小さい場合に当該単位時間間隔の省エネルギレベルを相対的に大きくする。
ここでは、稼動時間調整部143は、例えば、一日単位で、単位時間間隔毎の省エネルギレベルを一段階ずつ変更する。つまり、稼動時間調整部143は、ある時間帯の単位時間間隔の平均未応答時間実績値が平均未応答時間目標値より大きい場合、次の日の当該時間帯の単位時間間隔の省エネルギレベルを1段階小さくする。一方、稼動時間調整部143は、ある時間帯の単位時間間隔の平均未応答時間実績値が平均未応答時間目標値より小さい場合、次の日の当該時間帯の単位時間間隔の省エネルギレベルを1段階大きくする。なお、稼動時間調整部143は、変動等を考慮して、平均未応答時間実績値と平均未応答時間目標値との差が予め設定される許容差δ(例えば3秒)以内である場合には、省エネルギレベルを変更しないようにしてもよい。稼動時間調整部143は、省エネルギレベルを変更した場合には、稼動時間管理部144に省エネルギレベルを送信し、稼動時間管理部144に登録されているその時間帯の省エネルギレベルを更新する。
なお、稼動時間調整部143は、上述したように、省エネルギを実施しない時間帯を設定することができる。稼動時間調整部143は、単位時間間隔毎の省エネルギレベルを調整しない時間帯を事前に設定可能である。稼動時間調整部143は、例えば、図3で設定したように、混雑が予測される出勤時、退勤時等の時間帯を、省エネルギレベルを調整しない時間帯として設定可能である。これにより、この群管理制御装置1は、混雑時等の時間帯においてサービス性能が著しく低下することを抑制することができる。
また、稼動時間調整部143は、単位時間間隔毎の省エネルギレベルの初期値を事前に個別に設定可能である。稼動時間調整部143は、例えば、明らかに閑散が予想される時間帯の省エネルギレベルの初期値を予め高めに設定可能である。逆に、稼動時間調整部143は、例えば、混雑が予想される時間帯の省エネルギレベルの初期値を予め低めに設定可能である。これにより、この群管理制御装置1は、単位時間間隔毎の省エネルギレベルを早期に適切なレベルに調整可能とすることができる。
稼動時間管理部144は、稼動時間調整部143によって調整された単位時間間隔毎の省エネルギレベルに応じて、エレベータ群2における稼動時間制御パラメータを変更し、稼動時間等を管理する。稼動時間管理部144は、当該稼動時間制御パラメータとして、稼動時間調整部143によって調整された単位時間間隔毎の省エネルギレベルに基づいてかごマスクを生成し、更新管理する。ここで、かごマスクとは、乗場呼びに応答可能な乗りかご120を制限するための稼動時間制御パラメータである。言い換えれば、かごマスクとは、生成された乗場呼びを割当てる乗りかご120の候補を絞り込むための稼動時間制御パラメータである。稼動時間管理部144は、変更した稼動時間制御パラメータから、各乗りかご120の稼動時間スケジュール等に応じたマスク情報を作成し、マスク管理部134に当該マスク情報を送信する。これにより、稼動時間管理部144は、単位時間間隔毎のかご稼動時間、平均未応答時間実績値等を動的に更新管理する。
ここで、図7のフローチャートを参照して、群管理制御装置1による制御の一例について説明しつつ、稼動時間管理部144等についてより詳細に説明する。本図7は、ある一日の処理フローを示している。本実施形態のエレベータ群管理制御方法は、基本的には、当該群管理制御装置1によって実行される。エレベータ群管理制御方法は、実績集計工程と、目標設定工程と、稼動時間調整工程と、稼動時間管理工程とを含む。
まず、目標設定部142は、目標設定工程として、管理者等からの入力に応じて省エネルギ目標値、ここでは、許容できる平均未応答時間目標値を設定し、稼動時間管理部144は、当該平均未応答時間目標値を読み込んで、単位時間間隔毎に書き込む(ステップS1)。
次に、稼動時間管理部144は、当該日がエレベータ群管理の稼動初日であるか否かを判定する(ステップS2)。稼動時間調整部143は、稼動時間管理部144によって当該日が稼動初日であると判定された場合(ステップS2:Yes)、一日の全ての単位時間間隔毎の省エネルギレベルを予め設定された初期値に設定し(ステップS3)、処理をステップS5にすすめる。稼動時間調整部143は、稼動時間管理部144によって当該日が稼動初日でないと判定された場合(ステップS2:No)、一日の各単位時間間隔毎の省エネルギレベルを前日に調整された値に設定し(ステップS4)、処理をステップS5にすすめる。
次に、稼動時間管理部144は、ステップS5では、一日のエレベータ稼動が終わったか否かを判定する(ステップS5)。稼動時間管理部144は、一日のエレベータ稼動が終わったと判定した場合(ステップS5:Yes)、当該日の制御を終了する。
稼動時間管理部144は、一日のエレベータ稼動が終わっていないと判定した場合(ステップS5:No)、稼動時間管理工程として、単位時間間隔毎の省エネルギレベルに基づいて、かごマスクを生成する(ステップS6)。ここでは、稼動時間管理部144は、例えば、図4に例示したようなレベル表から次の時間帯の単位時間間隔の省エネルギレベルの稼動台数、ピッチを読み出す。そして、稼動時間管理部144は、読み出した当該省エネルギレベルの稼動台数、ピッチからかごマスクを生成し、当該かごマスクに応じたマスク情報をマスク管理部134に送信する。
ここで、かごマスクは、任意の時刻で各乗りかご120毎に、各階床でのUP乗場呼び、DOWN乗場呼び毎の割当て可/割当て不可を定義したものである。図8、図9は、稼動時間管理部144によって生成されるかごマスクの一例であり、1階〜10階を対象の階床としている。かごマスクは、基本的には、図8のもの、又は、図9のもののいずれかが全ての乗りかご120に対して対象時刻(対象時間帯)とともに設定される。図8は、割当て可のかごマスクである。当該割当て可のかごマスクは、最上階の10階から上方向への乗場呼び(UP)、最下階の1階から下方向への乗場呼び(DOWN)はないので当該乗場呼びに対しては常に「0(割当て不可)」となっている。そして、当該割当て可のかごマスクは、他の乗場呼びに対してはすべて「1(割当て可)」となっている。一方、図9は、割当て不可のかごマスクである。当該割当て不可のかごマスクは、すべての乗場呼びに対して「0(割当て不可)」となっている。これにより、当該割当て不可のかごマスクが割当てられた乗りかご120は、すべての乗場呼びに対する応答が制限される。
例えば、単位時間間隔が30分、対象の時間帯が10時から10時30分である場合を仮定する。この場合、省エネルギレベルが図4で例示した省エネレベル1(Level1)であれば、当該省エネレベル1の稼動台数が3.5、ピッチが1であるので、稼動時間管理部144は、以下のようにしてマスク生成し、マスク管理部134に送信する。すなわち、稼動時間管理部144は、10時から10時15分までの最初の15分を4台、つまり全ての乗りかご120のかごマスクとして、割当て可のかごマスク(図8)を生成し、これに基づいて時刻情報と共にマスク情報をマスク管理部134に送信する。一方、稼動時間管理部144は、10時15分から10時30分までの後半15分を3台の乗りかご120のかごマスクとして割当て可のかごマスク(図8)を生成し、残りの1台のかごマスクとして割当て不可のかごマスク(図9)を生成する。そして、稼動時間管理部144は、生成した各かごマスクに基づいて時刻情報と共にマスク情報をマスク管理部134に送信する。マスク情報を受信したマスク管理部134は、省エネルギとは別の要因、例えば、分割運転用に保持しているかごマスクがあれば、稼動時間管理部144が送信したかごマスクとの要素毎のAND演算をしてかごマスクを更新する。稼動時間管理部144は、次の単位時間間隔になれば、同様に省エネルギレベルからかごマスクを生成する。稼動かご台数が整数の場合は、その単位時間間隔の途中で、上記のようにかごマスクを変更する必要はない。そして、割当かご選定部132は、更新されたかごマスクの値が「1(割当て可)」の乗りかご120の中から所定の評価関数で最適な乗りかご120かごを割当てることになる。
なお、稼動時間管理部144は、省エネルギレベルに応じて割当て不可とする乗りかご120を、管理者等によって予め設定されたものとしてもよいし、各乗りかご120の状況等に応じて適宜選定してもよいし、ランダムに選定してもよい。稼動時間管理部144は、例えば、1台割当て不可の場合は1号機、2台割当て不可の場合は2号機、3号機というように、事前に割当て不可とする乗りかご120を指定しておいてもよい。稼動時間管理部144は、割当て不可とする乗りかご120を各乗りかご120の状況等に応じて選定する場合、例えば、その時点で割当てられている乗場呼びの数やその時点での乗車人数等に応じて当該乗りかご120を選定するようにしてもよい。この場合、稼動時間管理部144は、割当てられている乗場呼びの数が相対的に多い乗りかご120や乗車人数が相対的に多い乗りかご120を、割当て不可とする乗りかご120に選定しないようにしてもよい。また、稼動時間管理部144は、当該割当て不可とされる乗りかご120を、単位時間間隔内において適宜ローテションするようにしてもよい。この場合、稼動時間管理部144は、例えば、4台すべての乗りかご120を0.875台相当として稼動させ、合計で3.5台相当の稼動台数を実現させてもよい。また、稼動時間管理部144は、かごマスクを生成する際に、予め設定した候補の中から、呼びに対する応答を制限する乗りかご120、すなわち、割当て不可とする乗りかご120を選択するようにしてもよい。この場合、例えば、管理者等の要望に応じて事前に状況に応じて割当て不可とする乗りかご120の候補リストを作成しておき、稼動時間管理部144は、当該候補リストの中から割当て不可にするかごを選択するようにしてもよい。これにより、群管理制御装置1は、例えば、複数の乗りかご120が高層階対応、低層階対応というようにゾーニングされているような場合等に、割当て不可となる乗りかご120を予め計画しておくことができるので、サービス性能の低下を抑制することができる。また、群管理制御装置1は、特定の乗りかご120だけが劣化しないように各乗りかご120の稼動率を平準化することもできる。
図7に戻って、実績集計部141は、ステップS6の処理の後、次の時間帯の単位時間間隔稼動した後、実績集計工程を実行する。すなわち、実績集計部141は、群管理されるエレベータ群2に関する実績値、ここでは、単位時間間隔毎の平均未応答時間実績値、利用者人数実績値、稼動消費電力量実績値を集計し、稼動時間管理部144に送信し記録する(ステップS7)。そして、稼動時間管理部144は、ステップS1で読み込んだ該当単位時間間隔の平均未応答時間目標値、ステップS7で記録された該当単位時間間隔毎の平均未応答時間実績値を稼動時間調整部143に送信する(ステップS8)。
そして、稼動時間調整部143は、当該平均未応答時間目標値、及び、当該平均未応答時間実績値に基づいて、ステップS9からステップS13の処理を実行することで、次の日の該当単位時間間隔の省エネルギレベルを調整する。つまり、稼動時間調整部143は、稼動時間調整工程として、単位時間間隔毎の平均未応答時間実績値が平均未応答時間目標値に収束するように、エレベータ群2における単位時間間隔毎の省エネルギレベルを調整する(ステップS9からステップS13)。
ここでは、稼動時間調整部143は、平均未応答時間実績値から平均未応答時間目標値を差し引いた値が予め設定される許容差δより大きいか否かを判定する(ステップS9)。
稼動時間調整部143は、平均未応答時間実績値から平均未応答時間目標値を差し引いた値が許容差δ以下であると判定した場合(ステップS9:No)、当該差し引いた値が許容差δより小さいか否かを判定する(ステップS10)。
稼動時間調整部143は、平均未応答時間実績値から平均未応答時間目標値を差し引いた値が許容差δ以上であると判定した場合(ステップS10:No)、ステップS5の処理に移行し以降の処理を繰り返し実行する。
稼動時間調整部143は、ステップS9で平均未応答時間実績値から平均未応答時間目標値を差し引いた値が許容差δより大きいと判定した場合(ステップS9:Yes)、次の日の該当単位時間間隔の省エネルギレベルを1つ下げる(ステップS11)。その後、稼動時間調整部143は、該当単位時間間隔の省エネルギレベルを稼動時間管理部144に送信し記録し(ステップS13)、ステップS5の処理に移行し以降の処理を繰り返し実行する。
稼動時間調整部143は、平均未応答時間実績値から平均未応答時間目標値を差し引いた値が許容差δより小さいと判定した場合(ステップS10:Yes)、次の日の該当単位時間間隔の省エネルギレベルを1つ上げる(ステップS12)。その後、稼動時間調整部143は、該当単位時間間隔の省エネルギレベルを稼動時間管理部144に送信し記録し(ステップS13)、ステップS5の処理に移行し以降の処理を繰り返し実行する。
図10は、上記の稼動時間管理部144で管理される記録データの一例を表す図である。図10の例示は、単位時間間隔を30分としており、平均未応答時間目標値は一律20秒としている。ただし、8時から9時までは省エネルギなしの設定(つまり、省エネレベル0)である。平均未応答時間実績値、利用者人数実績値、稼動消費電力量実績値は、過去2日分が記録されており、現在時刻が8時であるときの状態を表している。この時点で、7時30分から8時までの30分間の集計がされている。当日の平均未応答時間実績値が25.4秒で目標値(20秒)を上回っているので、次の日の省エネルギレベルは省エネレベル3(Level3)から省エネレベル2(Level2)に下げられる。8時台は省エネルギなしなので、稼動時間管理部144は、この時間帯では、例えば、上述の図9で例示したかごマスクをマスク管理部134に送信することになる。このため、8時台は、省エネルギレベルは変更されずに実績値が記録される。そして9時になると省エネレベル2(Level2)に設定されているので、稼動時間管理部144は、1台を図9で例示したかごマスク、残りを図8で例示したかごマスクとし、マスク情報を時刻情報と一緒にマスク管理部134に送信する。そして、稼動時間調整部143は、9時30分になると、9時から9時30分までの実績を踏まえて、次の日の9時から9時30分までの省エネルギレベルの調整を行う。稼動時間制御部140は、これらの操作を行なって、一日のエレベータ稼動終了の24時まで調整を行なって終了となる。翌日は、前日に調整された省エネルギレベルを実行前省エネルギレベルとして開始する。
以上が第1の設定方法によって省エネルギ目標値が設定される場合、すなわち、直接的に平均未応答時間目標値が設定される場合である。次に、第2の設定方法によって省エネルギ目標値が設定される場合、すなわち、一日の目標の稼動消費電力量削減率に基づいて平均未応答時間目標値が設定される場合を説明する。なお、以下の説明では、第1の設定方法と重複する説明については可能な限り省略する。
この場合、目標設定部142は、例えば、設定した一日の目標の稼動消費電力量削減率を達成可能な平均未応答時間目標値を算出する。そして、目標設定部142は、算出した平均未応答時間目標値では設定した目標の稼動消費電力量削減率を達成できなかった場合には、再度、平均未応答時間目標値を算出し、当該目標値を増減調整する。
例えば、目標設定部142は、基準となる日の省エネルギなしでの一日の稼動消費電力量実績値を読み込む。当該基準となる日の省エネルギなしでの一日の稼動消費電力量実績値は、例えば、省エネルギなしの設定(つまり、省エネレベル0)で一日あるいは一定期間稼動した後、実績集計部141によって集計されたものを用いればよい。そして、目標設定部142は、管理者等によって任意に設定された一日の目標の稼動消費電力量削減率に応じて平均未応答時間目標値の初期値を設定する。
この場合、目標設定部142は、例えば、平均未応答時間目標値の初期値=一日の平均未応答時間実績値×(1+一日の目標の稼動消費電力量削減率)としてもよい。一日の平均未応答時間実績値は、例えば、実績集計部141によって集計された基準となる日の平均未応答時間実績値を用いればよい。例えば、平均未応答時間実績値が30秒で一日の目標の稼動消費電力量削減率が10%である場合、平均未応答時間目標値の初期値=30×(1+0.1)=33秒となる。そして、群管理制御装置1は、平均未応答時間目標値の初期値が決まれば、上述の第1の設定方法の場合と同様に省エネルギを実行する。
そして、目標設定部142は、一日終了毎に一日の総稼動消費電力量実績値を算出し、一定の範囲で変化が少なくなった段階(例えば、10%以内の変動)で収束したと判断し、稼動消費電力量削減率実績値を計算する。目標設定部142は、算出した稼動消費電力量削減率実績値と、予め設定された一日の目標の稼動消費電力量削減率と比較して、実績値が目標を上回っていれば、平均未応答時間目標値を所定量下げ、下回っていれば所定量上げる。ここで、所定量は、予め設定された一定量でもよいし、稼動消費電力量削減率実績値と一日の目標の稼動消費電力量削減率との差に応じた量としてもよい。
例えば、X(t)、Y、Y(t)をそれぞれt日目の平均未応答時間目標値、稼動消費電力量目標値、稼動消費電力量実績値とする。そして、目標設定部142は、例えば、t日目に一日の総稼動消費電力量実績値が収束したとしてt+1日目の平均未応答時間目標値をX(t+1)=K×(Y−Y(t))+X(t)、K=−X(0)/Y(0)と設定する。X(0)、Y(0)は、省エネルギなしで実行した場合の値であり、稼動消費電力量目標値は、Y=Y(0)×(1+α)である。ここで、αは、一日の目標の稼動消費電力量削減率である。したがって、目標設定部142は、省エネルギなしでの一日の稼動消費電力量実績値Y(0)と、予め設定される一日の目標の稼動消費電力量削減率αとに基づいて稼動消費電力量目標値Yを算出することができる。そして、目標設定部142は、実績集計部141によって集計された単位時間間隔毎の稼動消費電力量実績値Y(t)が稼動消費電力量目標値Yに収束するように、許容できる平均未応答時間目標値X(t+1)を増減させることができる。そして、群管理制御装置1は、このように増減設定される平均未応答時間目標値に基づいて省エネルギレベルを省エネレベル0(Level0)に戻さずに継続して実行し、これを繰り返すことでの目標の稼動消費電力量削減率を達成することができる。
次に、図1に示す表示制御部150は、目標設定部142によって設定されたエレベータ群2における省エネルギ目標値に関連する情報と、実績集計部141によって集計されたエレベータ群2に関する実績値に関連する情報とを表示部に表示させる制御を実行する。ここで、表示部は、かご案内装置120b、乗場案内装置170等の表示装置を用いることができる。表示制御部150は、各かご制御装置122を介してかご案内装置120bを制御し、省エネルギ目標値に関連する情報、実績値に関連する情報等を案内、表示させる。また、表示制御部150は、乗場案内装置170を制御し、省エネルギ目標値に関連する情報、実績値に関連する情報等を案内、表示させる。図11は、表示制御部150が表示させる実績値表示の一例である。また、表示制御部150は、図10で例示した記録データから省エネルギ目標値に関連する情報、実績値に関連する情報等を適宜抽出してかご案内装置120b、乗場案内装置170に案内、表示させてもよい。これにより、群管理制御装置1は、省エネルギ目標値や実績値等を表示し、実際の成果を利用者等に周知、アピールすることができる。
上記の群管理制御装置1は、平均未応答時間目標値や一日の目標の稼動消費電力量削減率を管理者等が設定することで、省エネルギの目標値を任意に設定することができる。そして、群管理制御装置1は、省エネルギレベルを適宜調整することで、任意に設定された省エネルギ目標値に対して実績値を収束させ、省エネルギを実現することができる。この結果、群管理制御装置1は、適正なサービス性能を維持した上で、省エネルギを実現することができる。
このとき、群管理制御装置1は、省エネルギレベルが小数値をとり得る稼動台数とピッチとによって定められるので、当該省エネルギレベルをより細かく設定し、省エネルギの度合をより細かく微調整することができる。この結果、群管理制御装置1は、例えば、各乗りかご120の割当て可/割当て不可の稼動時間スケジュール等をより細かく動的に変更することができるので、より見通しのよい省エネルギを実現することができる。
また、この群管理制御装置1は、一日単位で、単位時間間隔毎の省エネルギレベルを一段階ずつ変更することで、サービス性能の急変を抑制しつつ、サービス性能が体感できる程度に変動してしまわないように徐々に省エネルギ性能を最適化することができる。
以上で説明した群管理制御装置1は、実績集計部141と、目標設定部142と、稼動時間調整部143と、稼動時間管理部144とを備える。実績集計部141は、平均未応答時間実績値を集計する。目標設定部142は、平均未応答時間目標値を設定する。稼動時間調整部143は、平均未応答時間実績値が平均未応答時間目標値に収束するように、省エネルギレベルを調整する。稼動時間管理部144は、省エネルギレベルに基づいて、かごマスクを生成する。
以上で説明したエレベータ群管理制御方法は、実績集計工程と、目標設定工程と、稼動時間調整工程と、稼動時間管理工程とを含む。実績集計工程では、平均未応答時間実績値を集計する。目標設定工程では、平均未応答時間目標値を設定する。稼動時間調整工程では、平均未応答時間実績値が平均未応答時間目標値に収束するように、省エネルギレベルを調整する。稼動時間管理工程では、省エネルギレベルに基づいて、呼びに応答可能な乗りかご120を制限するかごマスクを生成する。
したがって、群管理制御装置1、エレベータ群管理制御方法は、適正なサービス性能を維持した上で、省エネルギを実現することができるので、サービス性能と省エネルギ性能とのバランスを適正化することができる。
なお、上述した実施形態に係るエレベータ群管理制御装置、及び、エレベータ群管理制御方法は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
以上の説明では、省エネルギレベルは、稼動台数とピッチとによって定められるものとして説明したがこれに限らず、大きくなるほど、省エネルギの度合いが高くなり、稼動消費電力量実績値が相対的に小さくなるように設定されればよい。省エネルギレベルは、例えば、昇降行程(停止可能階床)や昇降速度をパラメータとして定められてもよい。また、以上で説明した省エネルギレベルを定義する乗りかご120の稼動台数は、省エネルギレベルに応じて0.5台きざみで変化するものとして説明したが、これに限らず、整数台(例えば、1台)きざみで変化してもよい。逆に、省エネルギレベルを定義する乗りかご120の稼動台数は、より細かく例えば、0.1台きざみで変化してもよい。また、以上で説明した省エネルギレベルは、省エネレベル0(Level0)から省エネレベル6(Level6)までの7段階に変更可能であるものとして説明したがこれに限らない。省エネルギレベルは、複数段階に変更可能であればよく、2から6段階に変更可能であってもよいし、8段階以上に変更可能であってもよい。
以上の説明では、稼動時間調整部143は、一日単位で、単位時間間隔毎の省エネルギレベルを一段階ずつ変更するものとして説明したがこれに限らない。稼動時間調整部143は、所定期間単位、例えば、数日単位、一週間単位、一月単位等で、省エネルギレベルを変更するようにしてもよい。
また、稼動時間調整部143は、一日の単位時間間隔毎で省エネルギレベルを設定するものとして説明したが、これに限らない。稼動時間調整部143は、例えば、エレベータ群2の交通需要が平日と休日とで大きく異なることから、平日用の省エネルギレベルと休日用の省エネルギレベルとを別個に分けて調整するようにしてもよい。同様に、稼動時間調整部143は、例えば、一日の交通需要のパターンが異なる日として、曜日毎に事前に分けておいてそれぞれで省エネルギレベルを別個に分けて調整するようにしてもよい。
また、稼動時間調整部143は、省エネルギレベルを一段階ずつ変更するものとして説明したがこれに限らず、複数段階で変更するようにしてもよい。稼動時間調整部143は、例えば、一日単位で、単位時間間隔毎の平均未応答時間実績値と平均未応答時間目標値との偏差に応じて単位時間間隔毎の省エネルギレベルを変更するようにしてもよい。この場合、稼動時間調整部143は、単位時間間隔の平均未応答時間実績値が平均未応答時間目標値より大きい場合、次の日の当該時間帯の単位時間間隔の省エネルギレベルを、平均未応答時間実績値と平均未応答時間目標値との偏差に応じて小さくする。一方、稼動時間調整部143は、単位時間間隔の平均未応答時間実績値が平均未応答時間目標値より小さい場合、次の日の当該時間帯の単位時間間隔の省エネルギレベルを、平均未応答時間実績値と平均未応答時間目標値との偏差に応じて大きくする。
この場合、群管理制御装置1は、例えば、実験等によって省エネルギレベル(ここでは稼動台数)の変化幅と平均未応答時間実績値の変化量との関係を事前に把握しておく。そして、群管理制御装置1は、これを踏まえて平均未応答時間実績値と平均未応答時間目標値との偏差と、省エネルギレベルの変化幅との対応関係を予め設定し、マップ化(あるいは数式モデル化)しておく。そして、稼動時間調整部143は、当該マップに基づいて、平均未応答時間実績値と平均未応答時間目標値との偏差に応じた省エネルギレベルの変化幅を算出し、当該変化幅に応じて一段階ずつ、あるいは、複数段階で省エネルギレベルを変更する。
この場合、この群管理制御装置1は、よりすばやく省エネルギ性能を最適化することができる。なおこの場合、稼動時間調整部143は、さらに、省エネルギレベルの変化幅に上限値(上限ガード値)を設けるようにしてもよい。これにより、群管理制御装置1は、サービス性能の急変を抑制し、サービス性能が体感できる程度に変動してしまわないようにした上で、すばやく省エネルギ性能を最適化することができる。また、上記偏差と省エネルギレベルの変化幅との対応関係を規定したマップは、例えば、交通需要、時間帯(混雑時間帯、閑散時間帯)、利用者人数実績値等に応じて異なる対応関係のマップが用いられてもよい。これにより、群管理制御装置1は、交通需要、時間帯、利用者人数実績値等に応じて適正に省エネルギレベルを変更することができる。さらに言えば、稼動時間調整部143は、例えば、交通需要、時間帯、利用者人数実績値等に応じて省エネルギレベルの変化幅を設定するようにしてもよい。
また、群管理制御装置1は、図12の変形例に示すように、突発交通需要検知部145を備えてもよい。この場合、稼動時間制御部140は、上述の実績集計部141、目標設定部142、稼動時間調整部143、稼動時間管理部144に加えて、さらに当該突発交通需要検知部145を含む。
突発交通需要検知部145は、実績集計部141によって集計された単位時間間隔毎の平均未応答時間実績値、又は、利用者人数実績値の変化に基づいて突発交通需要の発生を検知する。突発交通需要検知部145は、実績集計部141によって集計された単位時間間隔毎の平均未応答時間実績値、利用者人数実績値を読み込む。そして、突発交通需要検知部145は、現在の単位時間間隔の平均未応答時間実績値、又は、利用者人数実績値の少なくとも一方がその直前の単位時間間隔での値に対して大幅に変化した場合に、これを突発交通需要の発生として検知する。突発交通需要検知部145は、例えば、予め設定される判定値等を基準として、平均未応答時間実績値、又は、利用者人数実績値の大幅な変化を検知すればよい。また、突発交通需要検知部145は、例えば、単位時間間隔の集計で平均未応答時間実績値や利用者人数実績値が過去3回の平均と比較して2倍以上に増えた場合や瞬間的に乗りかご120が満員になった場合に突発交通需要の発生を検知するようにしてもよい。例えば、乗りかご120の満員は、図2の運行記録の、乗車荷重(Load Weight)がかご定格積載量の90%を超えた場合等に検知することができる。突発交通需要検知部145は、突発交通需要の発生を検知すると、当該検知結果を稼動時間調整部143に送信する。
そして、稼動時間調整部143は、突発交通需要検知部145によって突発交通需要の発生が検知された場合に省エネルギレベルを最低レベル、ここでは、省エネルギなしに相当する省エネレベル0(Level0)とする。そして、稼動時間調整部143は、突発交通需要検知部145によって突発交通需要の終了が検知された場合に省エネルギレベルを当該突発交通需要の発生前の前日のレベルに戻す。突発交通需要検知部145は、例えば、上述の突発交通需要の発生検知の条件を満たさなくなった場合に突発交通需要の終了を検知してもよいし、これとは異なる判断基準で突発交通需要の終了を検知するようにしてもよい。終了判定基準は、発生判定基準より厳しくして、稼動時間調整部143は、十分平常に戻ってから省エネルギレベルを前日のレベルに戻すようにしてもよい。稼動時間調整部143は、突発交通需要の終了後、一定時間経過後に省エネルギレベルを元に戻すようにしてもよい。この結果、群管理制御装置1は、突発交通需要が発生すると、省エネルギレベルを最低レベルにして十分なサービス性能を確保することができると共に、突発交通需要が終了すると、突発交通需要が発生前の省エネルギ性能に復帰することができる。
なおこの場合、一旦、最低レベルの省エネレベル0(Level0)に戻した単位時間間隔の省エネルギレベルは、翌日、再度、最低レベルの省エネレベル0(Level0)から再調整されることとなる。そして、仮に、翌日も同じ時間帯で再度、突発交通需要が発生した場合であっても、今度は省エネルギレベルが最低レベルの省エネレベル0(Level0)となっているので、この群管理制御装置1は、適正なサービス性能を確保することができる。一方、再度の突発交通需要が発生しなければ、群管理制御装置1は、徐々に省エネルギレベルが上がることになり、最終的には再び適正な省エネルギレベルまで調整されることとなる。
また、以上で説明した群管理制御装置1では、省エネルギレベルの初期値は省エネレベル0(Level0)に限らない。例えば、事前に「早朝、深夜は1台で稼動させれば十分」ということであれば、群管理制御装置1は、早朝(例えば、6:00−7:00)、深夜(例えば、22:00−24:00)の省エネルギレベルの初期値を省エネレベル6(Level6)としてもよい。この場合、群管理制御装置1は、早期に十分な省エネルギ性能を確保することができる。群管理制御装置1は、当該初期値を省エネレベル0(Level0)以外に設定する時間帯と、当該時間帯における初期値を設定することで上記を実現することができる。なお、群管理制御装置1は、初期値について何も設定しなければ、すべての時間帯の省エネルギレベルの初期値を省エネレベル0(Level0)とすればよい。また、群管理制御装置1は、一日の目標の稼動消費電力量削減率に基づいて省エネルギ目標値が与えられる場合(すなわち、上述の第2の設定方法の場合)、基準となる一日の稼動消費電力量が必要なので該当する日の全ての時間帯の省エネルギレベルを省エネレベル0(Level0)とすればよい。
また、以上で説明した群管理制御装置1は、図13の変形例に示すように、エレベータ群2が乗場行先階登録方式であるいわゆるDCS(Destination Control System)と呼ばれるシステムに適用されてもよい。この場合、エレベータ群管理制御システム100は、乗場124にて行先階を登録可能である乗場行先階登録装置180を備える。エレベータ群管理制御システム100は、乗場124にて利用者によって当該乗場行先階登録装置180を介して行先階が指定されると共に、当該利用者に対して割当かごを乗場案内装置170等によって案内することで、当該割当かごに利用者を誘導する。図13に示すエレベータ群管理制御システム100は、所定の階床(例えば、基準階となる1階)の乗場124に乗場行先階登録装置180が設けられ、他の階床の乗場124には上述の乗場入力装置160が設けられたハイブリッドDCSを例示している。エレベータ群管理制御システム100は、全階床の乗場124に乗場行先階登録装置180が設けられるフルDCSであってもよい。
群管理制御装置1は、このようなDCSに適用される場合、乗場行先階登録装置180が設けられている乗場124では利用者毎の待ち時間が計測可能である。このため、群管理制御装置1は、単位時間間隔毎の平均未応答時間実績値を、単位時間間隔毎の平均待ち時間実績値、あるいは、当該平均待ち時間に応じた擬似平均未応答時間実績値に置き換える。ここで、擬似平均未応答時間実績値とは、平均待ち時間を平均未応答時間相当に変換した時間に相当する。さらに言えば、擬似平均未応答時間実績値とは、ある階床に発生する利用者の中で特定の乗りかご120に初めて割当てられた利用者の待ち時間を未応答時間とするものである。例えば、1号機の乗りかご120が1階の呼びには対応していない場合を仮定する。この場合、利用者P1が1階に発生し、1号機の乗りかご120が割当てられた場合に、この利用者P1の待ち時間が擬似未応答時間になる。この割当て後、利用者P2が再度、1号機の乗りかご120に割当てられても利用者P2の待ち時間は擬似未応答時間には該当せず集計対象外となる。擬似平均未応答時間実績値は、この擬似未応答時間の平均値に相当する。
したがってこの場合、実績集計部141は、単位時間間隔毎の平均未応答時間実績値として、乗場行先階登録装置180の設置された階床での単位時間間隔毎の平均待ち時間実績値、あるいは、当該平均待ち時間に応じた擬似平均未応答時間実績値を集計する。実績集計部141は、乗場行先階登録装置180がない階床においては、上述と同様に未応答時間を用いて平均未応答時間実績値を集計する。このように、群管理制御装置1は、エレベータ群2が乗場行先階登録方式である場合であっても、適正なサービス性能を維持した上で、省エネルギを実現することができるので、サービス性能と省エネルギ性能とのバランスを適正化することができる。
なお、以上で説明した群管理制御装置1は、一定時間間隔毎の平均未応答時間実績値、一定時間間隔毎の平均未応答時間目標値等に基づいて、一定時間間隔毎の省エネルギレベルの調整、及び、かごマスクの生成を行うものとして説明したがこれに限らない。この群管理制御装置1では、稼動時間調整部143は、一定時間間隔毎の平均値等でなく、単純に実績集計部141によって集計された未応答時間実績値が目標設定部142によって設定された未応答時間目標値に収束するように瞬時的な省エネルギレベルを調整するようにしてもよい。そして、稼動時間管理部144は、当該瞬時的な省エネルギレベルに基づいて、かごマスクを生成するようにしてもよい。同様に、以上で説明したエレベータ群管理制御方法は、一定時間間隔毎の平均値等でなく、単純に未応答時間実績値を集計する実績集計工程と、未応答時間目標値を設定する目標設定工程とを含むものとしてもよい。そして、エレベータ群管理制御方法は、未応答時間実績値が未応答時間目標値に収束するように、省エネルギレベルを調整する稼動時間調整工程と、省エネルギレベルに基づいてかごマスクを生成する稼動時間管理工程とを含むものとしてもよい。
以上で説明した実施形態、変形例に係るエレベータ群管理制御装置、及び、エレベータ群管理制御方法によれば、サービス性能と省エネルギ性能とのバランスを適正化することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
稼動時間調整部143は、平均未応答時間実績値から平均未応答時間目標値を差し引いた値が許容差δ以下であると判定した場合(ステップS9:No)、当該差し引いた値が許容差−δより小さいか否かを判定する(ステップS10)。
図10は、上記の稼動時間管理部144で管理される記録データの一例を表す図である。図10の例示は、単位時間間隔を30分としており、平均未応答時間目標値は一律20秒としている。ただし、8時から9時までは省エネルギなしの設定(つまり、省エネレベル0)である。平均未応答時間実績値、利用者人数実績値、稼動消費電力量実績値は、過去2日分が記録されており、現在時刻が8時であるときの状態を表している。この時点で、7時30分から8時までの30分間の集計がされている。当日の平均未応答時間実績値が25.4秒で目標値(20秒)を上回っているので、次の日の省エネルギレベルは省エネレベル3(Level3)から省エネレベル2(Level2)に下げられる。8時台は省エネルギなしなので、稼動時間管理部144は、この時間帯では、例えば、上述の図8で例示したかごマスクをマスク管理部134に送信することになる。このため、8時台は、省エネルギレベルは変更されずに実績値が記録される。そして9時になると省エネレベル2(Level2)に設定されているので、稼動時間管理部144は、1台を図9で例示したかごマスク、残りを図8で例示したかごマスクとし、マスク情報を時刻情報と一緒にマスク管理部134に送信する。そして、稼動時間調整部143は、9時30分になると、9時から9時30分までの実績を踏まえて、次の日の9時から9時30分までの省エネルギレベルの調整を行う。稼動時間制御部140は、これらの操作を行なって、一日のエレベータ稼動終了の24時まで調整を行なって終了となる。翌日は、前日に調整された省エネルギレベルを実行前省エネルギレベルとして開始する。