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JP2015000505A - 平板状セキュリティカード用転写原版およびセキュリティカードの製造方法 - Google Patents

平板状セキュリティカード用転写原版およびセキュリティカードの製造方法 Download PDF

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JP2015000505A
JP2015000505A JP2013125486A JP2013125486A JP2015000505A JP 2015000505 A JP2015000505 A JP 2015000505A JP 2013125486 A JP2013125486 A JP 2013125486A JP 2013125486 A JP2013125486 A JP 2013125486A JP 2015000505 A JP2015000505 A JP 2015000505A
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永田 昌博
Masahiro Nagata
昌博 永田
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Dai Nippon Printing Co Ltd
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Dai Nippon Printing Co Ltd
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Abstract

【課題】本発明は、視認性の高いセキュリティカードを安価で簡単に作製することができ、さらにセキュリティカードの転写形成時に絵柄層から移行してきた揮発成分を容易に除去可能な平板状セキュリティカード用転写原版の提供を主目的とする。
【解決手段】本発明は、平面部およびレンチキュラーレンズ形成部を一方の表面上に有する金属基板と、上記金属基板の上記平面部の絵柄層形成領域を覆うように形成された防汚層と、を有し、上記絵柄層形成領域が、レンチキュラーレンズシートおよび上記レンチキュラーレンズシートのシート平坦部上に形成された揮発成分を含む絵柄層を有するセキュリティカードの上記絵柄層に対応する領域であり、上記防汚層が、上記金属基板よりも上記揮発成分に対する密着性が低いことを特徴とする平板状セキュリティカード用転写原版を提供することにより上記目的を達成する。
【選択図】図2

Description

本発明は、視認性の高いセキュリティカードを安価で簡単に作製することができ、さらにセキュリティカードの転写形成時に絵柄層から移行してきた揮発成分を容易に除去可能な平板状セキュリティカード用転写原版に関するものである。
従来より身分証明証や各種会員証、クレジットカード等のセキュリティカードにおいて、カードの所有者とカード使用者との同一性を確認する、いわゆる個人識別機能として、カード表面に所有者の個人情報や写真等の画像が表示されたものが一般的に用いられている。また、近年では、これらの画像が改ざんおよび偽造されることを防止するために、画像表面に偽造防止機能を付与したセキュリティカードが用いられている。
偽造防止機能を付与する方法としては、例えば、セキュリティカードのカード基材上にレンチキュラーレンズを設ける方法がある。レンチキュラーレンズとは、断面が凸レンズ状であり、側面が略半円柱の直線形状を有するものであり、凸レンズの厚さ方向の一方向にのみに屈折を行なうものである。セキュリティカードにおいては、表示される個人情報等の画像上にレンチキュラーレンズを設けることにより、特定の観察角度からレンチキュラーレンズを介してセキュリティカードを観察する際に、カード基材上の画像を立体的に表示することができ、また、観察角度に応じて立体的に表示される画像を変化させることができるため、視認性の高いセキュリティカードとすることができる(特許文献1〜3)。
特開平9−311204号公報 特開2000−298319号公報 特開2008−77711号公報
しかしながら、上述のようなセキュリティカードを多品種かつ小ロットで作製する場合においては、例えば、レンチキュラーレンズのみを金型ロールで別途形成した後に貼り付けることにより、カード表面上にレンチキュラーレンズを設ける等の方法が用いられており、安価で簡単に精度良くレンチキュラーレンズ付きのセキュリティカードを作製することができる転写原版については知られていない。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、視認性の高いセキュリティカードを安価で簡単に作製することができ、さらにセキュリティカードの転写形成時に絵柄層から移行してきた揮発成分を容易に除去可能な平板状セキュリティカード用転写原版を提供することを主目的とする。
本発明は、平面部およびレンチキュラーレンズ形成部を一方の表面上に有する金属基板と、上記金属基板の上記平面部の絵柄層形成領域を覆うように形成された防汚層と、を有し、上記絵柄層形成領域が、レンチキュラーレンズシートおよび上記レンチキュラーレンズシートのシート平坦部上に形成された揮発成分を含む絵柄層を有するセキュリティカードの上記絵柄層に対応する領域であり、上記防汚層が、上記金属基板よりも上記揮発成分に対する密着性が低いことを特徴とする平板状セキュリティカード用転写原版(以下、単にカード用原版とする場合がある。)を提供する。
本発明によれば、金属基板の表面上に平面部とレンチキュラーレンズ形成部とが直接形成されており、安価で精度の良い平板状セキュリティカード用転写原版とすることができる。また、上記平板状セキュリティカード用転写原版を用いることにより、カード基材表面の所望の位置にレンチキュラーレンズを形成することができ、上記レンチキュラーレンズを介して出現される画像は、観察角度によって異なるものとすることができる。そのため、視認性の高いセキュリティカードを簡単且つ安価で作製することが可能となる。
また、上記防汚層を有することにより、絵柄層から移行してきた揮発成分を容易に除去可能なものとすることができる。
本発明においては、上記防汚層が、金めっき層であることが好ましい。上記防汚層を揮発成分の拭き取りがより容易なものとすることができるからである。
本発明においては、上記金属基板に用いられる金属の種類がオーステナイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、またはマルテンサイト系ステンレスであることが好ましい。耐久性に優れており、エッチング等の加工がしやすく、安価だからである。
本発明は、シート基材上に揮発成分を含む絵柄層を形成する絵柄層形成工程と、上記シート基材の上記絵柄層が形成された表面側から平板状セキュリティカード用転写原版を接触させることにより、上記シート基材を、シート平坦部を有するレンチキュラーレンズシートとする転写工程と、上記平板状セキュリティカード用転写原版に上記絵柄層から移行した揮発成分を洗浄する洗浄工程と、を有するセキュリティカードの製造方法であって、上記絵柄層形成工程が、上記シート基材の上記シート平坦部が形成される領域上に上記絵柄層を形成するものであり、上記平板状セキュリティカード用転写原版が、平面部およびレンチキュラーレンズ形成部を一方の表面上に有する金属基板と、上記金属基板の上記平面部の絵柄層形成領域を覆うように形成された防汚層と、を有し、上記絵柄層形成領域が上記絵柄層に対応する領域であり、上記防汚層が上記金属基板よりも上記揮発成分に対する密着性が低いものであることを特徴とするセキュリティカードの製造方法を提供する。
本発明によれば、上記平板状セキュリティカード用転写原版を用いるものであるため、上記洗浄工程において揮発成分を容易に除去できる。
このため、上記平板状セキュリティカード用転写原版に移行した揮発成分が、転写工程時にセキュリティカードに付着することを防止することができる。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、視認性の高いセキュリティカードを安価で簡単に作製することができ、さらにセキュリティカードの転写形成時に絵柄層から移行してきた揮発成分を容易に除去可能な平板状セキュリティカード用転写原版を提供できるといった効果を奏する。
本発明の平板状セキュリティカード用転写原版の一例を示す概略断面図である。 図1のX−X線断面図である。 本発明の平板状セキュリティカード用転写原版の他の例を示す概略断面図である。 本発明の平板状セキュリティカード用転写原版を用いたセキュリティカードの製造方法の一例を示す工程図である。 半円柱形レンズを介したレーザー光照射による印字についての説明図である。 隔壁部の縦断面形状の例を説明するための説明図である。 本発明の平板状セキュリティカード用転写原版を用いて形成されたセキュリティカードの一例を示す説明図である。 本発明における金属基板の形成方法の一例を示す工程図である。 本発明における印字工程の一例を示す工程図である。
以下、本発明の平板状セキュリティカード用転写原版およびセキュリティカードの製造方法について説明する。
A.平板状セキュリティカード用転写原版
まず、本発明の平板状セキュリティカード用転写原版について説明する。本発明の平板状セキュリティカード用転写原版は、平面部およびレンチキュラーレンズ形成部を一方の表面上に有する金属基板と、上記金属基板の上記平面部の絵柄層形成領域を覆うように形成された防汚層と、を有し、上記絵柄層形成領域が、レンチキュラーレンズシートおよび上記レンチキュラーレンズシートのシート平坦部上に形成された揮発成分を含む絵柄層を有するセキュリティカードの上記絵柄層に対応する領域であり、上記防汚層が、上記金属基板よりも上記揮発成分に対する密着性が低いことを特徴とするものである。
本発明の平板状セキュリティカード用転写原版について、図を例示して説明する。図1は本発明の平板状セキュリティカード用転写原版の一例を示す概略平面図であり、図2は、図1のX−X線断面図である。図3は、本発明の平板状セキュリティカード用転写原版の他の例を示す概略断面図である。図1〜図3に例示されるように、本発明の平板状セキュリティカード用転写原版10は、平面部2およびレンチキュラーレンズ形成部3を一方の表面上に有する金属基板1と、上記金属基板1の上記平面部2の絵柄層形成領域を覆うように形成された防汚層7と、を有し、上記絵柄層形成領域が、レンチキュラーレンズシートおよび上記レンチキュラーレンズシートのシート平坦部上に形成された揮発成分を含む絵柄層を有するセキュリティカードの上記絵柄層に対応する領域であり、上記防汚層が、上記金属基板よりも上記揮発成分に対する密着性が低いものである。
また、図4は、図1〜2の本発明の平板状セキュリティカード用転写原版を用いたセキュリティカードの製造方法の一例を示す工程図である。
本発明の平板状セキュリティカード用転写原版を用いたセキュリティカードの製造方法は、図4に例示するように、まず、カード基材12、シート基材11a、シート基材11aの上記レンチキュラーレンズシートのシート平坦部となる領域に形成された揮発成分を含む絵柄層21および絵柄層21を覆うように形成された保護層22がこの順で積層した基板を準備する(図4(a))。次いで、上記シート基材11aの上記絵柄層21が形成された表面側から上記平板状セキュリティカード用転写原版10を加熱圧着することにより、上記平板状セキュリティカード用転写原版10の平面部2と、直線状凹曲面部4と隣り合う上記直線状凹曲面部4の間に形成される隔壁部5とを有するレンチキュラーレンズ形成部3と、のパターンを上記シート基材11aに転写する(図4(b))。次いで、冷却した後に平板状セキュリティカード用転写原版10を剥離することにより、画像部を有するカード基材12と、上記カード基材12の上記画像部が形成される側の表面に配置されるレンチキュラーレンズシート11とを有し、上記レンチキュラーレンズシート11が、シート平坦部15およびレンチキュラーレンズ16を有し、上記レンチキュラーレンズ16が、複数本が並列に配置された半円柱形レンズ13と、隣接する半円柱形レンズ13の間に形成されたレンズ間溝部14と、を有するセキュリティカード20を得る(図4(c))。その後、剥離した平板状セキュリティカード用転写原版10の防汚層7上に付着した、絵柄層21から移行してきた揮発成分21aを拭き取り(図4(d))、揮発成分が除去された平板状セキュリティカード用転写原版10とするものである(図4(e))。
なお、図4(a)が絵柄層形成工程であり、(b)が転写工程であり、(d)〜(e)が洗浄工程である。また、この例においては、防汚層7の平面視形状および平面視上の形成位置が絵柄層21の平面視形状および平面視上の形成位置と同一のものである。
本発明によれば、金属基板の表面上に平面部およびレンチキュラーレンズ形成部が形成されており、安価で精度の良い平板状セキュリティカード用転写原版とすることができる。また、本発明の平板状セキュリティカード用転写原版を用いてセキュリティカードを作製する場合、カード基材表面にレンチキュラーレンズとレンチキュラーレンズを有さない平坦な領域とを一括形成することができるため、レンチキュラーレンズを別途作製して後貼り等を行う必要がない。さらに、形成されるレンチキュラーレンズを介して出現される画像は、観察角度によって異なるものとすることができるため、視認性の高いセキュリティカードを簡単且つ安価で作製することが可能となる。
また、金属基板よりも揮発成分の密着性の低い防汚層が絵柄層形成領域に形成されていることにより、図4に例示するように、本発明の平板状セキュリティカード用転写原版を用いてセキュリティカードを製造した際に、上記絵柄層21から平板状セキリュティカード用転写原版10に揮発成分21aが移行した場合であっても、揮発成分21aが平板状セキリュティカード用転写原版10の防汚層7に付着するものとすることができ(図4(c))、揮発成分21aを容易に除去することができる(図4(d)〜(e))。
また、このようなことから、揮発成分がカード用原版に残存することを抑制することができ、揮発成分が残存した場合にシート基材や絵柄層等の樹脂層を含むセキュリティカードがカード用原版から引き剥がしが困難となる不具合を防止することができる。
本発明の平板状セキュリティカード用転写原版は、金属基板および防汚層を有するものである。
以下、本発明の平板状セキュリティカード用転写原版の各構成について詳細に説明する。
1.防汚層
本発明における防汚層は、金属基板の上記平面部内の絵柄層形成領域を覆うように形成され、金属基板よりも揮発成分に対する密着性が低いものである。
上記防汚層を構成する防汚材料としては、上記揮発成分との密着性が上記金属基板より低いもの、より具体的には、上記金属基板の平面部の表面より低いものであれば特に限定されるものではなく、上記金属基板に用いられる金属の種類および揮発成分の種類に応じて適宜設定できるものである。
このような揮発成分との密着性の評価方法としては、揮発成分との密着性を精度良く測定できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、金属基板を構成する材料(以下、単に金属基板材料とする場合がある。)からなるサンプル片および防汚材料からなるサンプル片を準備し、サンプル片の一部に揮発成分を付着させた後、5%NaOH水溶液に温度50℃の温度条件で、3分程度浸漬する。その後、それぞれのサンプル片の揮発成分を付着した箇所および付着させなかった箇所のXPS表面分析を行うことにより、サンプル片の揮発成分付着量を比較する方法を用いることができる。
例えば、防汚材料が金であり、揮発成分が炭素元素を含む場合には、揮発成分を付着させなかった箇所での表面のAu元素および揮発成分に含まれる炭素元素の比率(C/Au)に対する、揮発成分を付着させた箇所での表面のAu元素および揮発成分に含まれる炭素元素の比率(C/Au)の割合(付着箇所/未付着箇所)を、金属基板材料に含まれる元素および揮発成分に含まれる炭素元素の比率の割合(付着箇所/未付着箇所)と比較する方法を用いることができる。
本発明においては、上記金属基板の構成材料がSUSであり、上記揮発成分が、シクロヘキサノンである場合には、種々の金属材料および無機材料を用いることができ、具体的には、ニッケル、銀、金、パラジウム、白金、銅、Ti(チタン)、TiN(チッカチタン)、TiCN(炭チッカチタン)、TiAlN(チッカチタンアルミ)、CrN(チッカクロム)、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、あるいは、無機材料としてフッソ樹脂などが挙げられるが、なかでも、イオン化傾向の小さいことや、処理簡易性から、金であることが好ましい。上記揮発成分との密着性が低く、防汚層に絵柄層から揮発成分が移行してきた場合であっても容易に除去できるからである。また、酸化劣化が少なく、安定的に防汚層としての機能を発揮できるからである。
上記防汚層の形成方法としては、上記防汚層を所定の箇所に精度良く形成できるものであれば特に限定されるものではなく、防汚材料により異なるものである。
例えば、防汚材料が、金属材料や無機材料等の場合にはスパッタリング法、真空蒸着法、プラズマCVD法のドライプロセス処理等を用いることができ、金属材料である場合にはさらにめっき処理を用いることができる。また、防汚材料を含む組成物を塗布して硬化させる方法を用いることができる。
本発明においては、なかでも、ニッケル、銀、金、パラジウム、白金、銅等の水溶性めっき液を前提にめっき処理可能な金属材料である場合にはめっき処理を用いることが好ましく、Ti(チタン)、TiN(チッカチタン)、TiCN(炭チッカチタン)、TiAlN(チッカチタンアルミ)、CrN(チッカクロム)、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、あるいは、無機材料としてフッソ樹脂などの場合にはドライプロセス処理を用いることが好ましい。
本発明においては、防汚材料が金である場合には、めっき処理であること、すなわち、金属材料が金の場合には金めっき層であることが好ましい。防汚層を位置精度良く形成できたり、簡易的に処理ができるからである。また、厚みの制御が容易だからである。
本発明におけるめっき処理としては、電解めっき法を用いても良く、無電解めっき法を用いてもよい。電解めっき法を用いる場合、短時間で防汚層を形成することができるという利点を有し、一方、無電解めっき法を用いる場合は、本発明により得られる防汚層の硬度を高いものとすることができるという利点を有する。
本発明においては、電解めっき法を用いることが好ましい。
なお、防汚層として金めっき層を形成する場合、電解めっき法に用いる電解金めっき浴としては、シアン化金浴、酸性金浴等を挙げることができる。また、無電解金めっき浴としては、シアン化金浴、非シアン化金浴等を挙げることができる。
また、無電解めっき法を用いる場合には、防汚層(めっき層)の形成後に、加熱処理を行うことが好ましい。硬度を高いものとすることができるからである。なお、加熱処理条件については、一般に無電解めっき法を用いてめっき層を形成する際に使用される条件を用いることができるため、ここでの説明は省略する。
上記防汚層の層構造としては、最表面の層の揮発成分に対する密着性が上記金属基板よりも低いものであれば特に限定されるものではなく、単層構造であっても良く、2層以上が積層した積層構造であっても良い。
防汚層の硬度としては、剥離等のないものとすることができるものであれば特に限定されるものではなく、防汚層を構成する材料により異なるものであるが、例えば、防汚層の表面のビッカース硬さ(Hv)としては、250〜400程度とすることができる。
なお、ビッカース硬さの測定方法としては、JIS Z 2244に示す方法を用いることができる。
防汚層の十点平均表面粗度としては、金属基板よりも揮発成分の密着性を低いものとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、0.05μm〜1.5μm程度とすることができる。表面粗度が上記範囲内であることにより、揮発成分の拭き取りの容易なものとすることができるからである。また、このような表面粗度は、例えば、防汚層が無電解めっき法により形成されるものである場合には、熱処理を行うことにより小さいものとすることができる。
なお、上記十点平均表面粗度は、光干渉式の非接触表面粗さ計を用いて測定した値である。具体的には、菱化システム(株)製のバートスキャンR3300H Liteを使い、プロファイル範囲を+/−5ミクロンとして測定することにより得られる。
上記防汚層の厚みとしては、上記防汚層の剥離等を防止できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、0.05μm〜5.0μmの範囲内とすることができ、なかでも、0.1μm〜2.5μmの範囲内であることが好ましく、特に0.15μm〜0.5μmの範囲内であることが好ましい。上記厚みが上述の範囲内であることにより防汚層の剥離の少ないものとすることができ、また、防汚層が形成された領域の形状がセキュリティカードに転写されることを抑制できるからである。
上記防汚層の形成箇所は、上記金属基板の上記平面部内の絵柄層形成領域を覆うように形成されるものである。
また、上記絵柄層形成領域は、上記平面部内のレンチキュラーレンズシートおよび上記レンチキュラーレンズシートのシート平坦部上に形成された揮発成分を含む絵柄層を有するセキュリティカードの上記絵柄層に対応する領域をいうものである。
ここで、絵柄層に対応する領域とは、シート基材の絵柄層が形成された表面側から本発明のセキュリティカード用転写原版のパターンを接触させることにより、シート基材を、シート平坦部を有するレンチキュラーレンズシートとした際に、レンチキュラーレンズシートのシート平坦部上に形成された絵柄層と平面視上重なる領域をいうものである。
また、上記絵柄層形成領域を覆うように形成されるとは、上記絵柄層形成領域の少なくとも一部と平面視上重なるように形成されることをいうものである。
本発明においては、上記防汚層が、上記絵柄層に対応する全領域を覆うように形成されるものであることが好ましい。上記形成箇所であることにより、本発明のセキュリティカード用転写原版表面に揮発成分が付着した場合に揮発成分の除去が容易なものとすることができるからである。また、本発明においては、特に、上記絵柄層に対応する領域のみに形成されるものであることが好ましい。低コスト化を図ることができるからである。
また、本発明においては、上記平面部の全てを覆うように形成されるものであっても良い。絵柄層が複数形成される場合などに、形成される防汚層のパターンが複雑な場合であっても形成が容易だからである。また、防汚層の剥離を抑制できるからである。
2.金属基板
本発明における金属基板は、一方の表面上に平面部およびレンチキュラーレンズ形成部を有するものである。
(1)レンチキュラーレンズ形成部
本発明におけるレンチキュラーレンズ形成部とは、金属基板の一方の表面上に形成されるものである。
本発明においては、レンチキュラーレンズ形成部としては、その凹凸形状が転写されることによりレンチキュラーレンズを有するセキュリティカードを形成可能なものであれば特に限定されるものではないが、直線状に複数本が並列に配置された直線状凹曲面部と、隣り合う上記直線状凹曲面部の間に形成される隔壁部とを有するものであることが好ましい。
このようなレンチキュラーレンズ形成部であることにより、上記レンチキュラーレンズ形成部のパターンに対応した、複数本が並列に配置された半円柱形レンズと、隣り合う上記半円柱形レンズの間に形成されたレンズ間溝部とを有するレンチキュラーレンズを有するセキュリティカードとすることができ、上記レンチキュラーレンズを介して画像部を視認する際に、観察角度によって出現する画像を異なるものとすることができる。また、上記レンズ間溝部の幅を所定の範囲内となるように調整することにより、上記レンチキュラーレンズを介して画像部を視認する際に、視認される画像上に線状ノイズ等が出現することを抑制し、視認性に優れたセキュリティカードとすることができるからである。
なお、上記レンチキュラーレンズ形成部は、上述した金属基板の表面が上記直線状凹曲面部および隔壁部の形状に成形されてなるものである。
(a)直線状凹曲面部
本発明における直線状凹曲面部は、金属基板の表面に、直線状に複数本が並列に配置されるものである。なお、上記直線状凹曲面部は、本発明のカード用原版を用いてセキュリティカードを作製する際に転写されて半円柱形レンズを形成する部分である。また、複数本の半円柱形レンズが並列に配置されることにより、1つのレンチキュラーレンズが形成される。
本発明における直線状凹曲面部の幅は、転写によりセキュリティカードに形成されるレンチキュラーレンズの形状に応じて適宜設定されるものであるが、例えば、20μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、中でも40μm〜120μmの範囲内であることが好ましく、特に、50μm〜70μmの範囲内であることが好ましい。
直線状凹曲面部の幅が上記範囲よりも大きいと、フォトリソグラフィによりカード用原版を製造する場合に直線状凹曲面部の高さも相対的に大きくなる。そのため、転写により形成される半円柱形レンズおよびレンチキュラーレンズの高さも大きくなり、規格等で決められたカードの厚さを超えてしまう場合があるからである。
一方、上記範囲よりも小さいと、フォトリソグラフィによりカード用原版を製造する場合に、パターニングに際して解像度の安定性が確保できず、直線状凹曲面部の形状のばらつきが大きくなる可能性がある。そのため、転写により形成される半円柱形レンズの形状にもばらつきが生じ、レンチキュラーレンズを介して画像部を視認する際に、画像の均一性が確保できない場合があるからである。
なお、直線状凹曲面部の幅とは、直線状凹曲面部の短尺方向の側面間の長さを指し、図3においてaで示される部分をいう。
上記直線状凹曲面部の幅は、光干渉式表面形状測定装置(例えば、菱化システム社製 VertScan2.0、Veeco社製 Wyko NT9000シリーズ等)を用いて、非接触法により測定することができる。具体的には、光干渉式表面形状測定装置の測定ステージ上に上記直線状凹曲面部を測定ヘッドに向けて載置し、上記直線状凹曲面部の表面形状データを3次元座標データの集合の形式で非接触に取得し、上記表面形状データを元に算出することができる。
なお、以降の説明において、特段の記載が無い限り、本発明のカード用原版の各構成部位における測定方法は、各構成部位を測定ヘッドに向けて載置し、上記測定方法と同様の方法を用いて測定されたものとする。
上記直線状凹曲面部のピッチ幅は小さいことが好ましいが、上述した直線状凹曲面部の幅より大きいことが好ましい。上記ピッチ幅の大きさとしては、30μm〜200μmの範囲内であることが好ましく、中でも50μm〜130μmの範囲内であることが好ましく、特に60μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
直線状凹曲面部のピッチ幅が上記範囲よりも大きいと、隣り合う直線状凹曲面部の配置間隔が大きくなり、セキュリティカード上に形成される半円柱形レンズの配置間隔も大きくなる。そのため、個々の半円柱形レンズが視覚的に目立つようになり、カードの外観上好ましくない場合がある。一方、上記範囲よりも小さいと、上記直線状凹曲面部の幅も小さくなってしまい、転写により半円柱形レンズを形成する際にレンズ形状が欠損してしまう場合があるからである。
なお、直線状凹曲面部のピッチ幅とは、隣り合う直線状凹曲面部の中心間の距離をいい、図3においてbで示される部分をいう。
上記直線状凹曲面部は、その底部に曲率を有するものであるが、上記直線状凹曲面部の底部の曲率(以下、単に「直線状凹曲面部の曲率」と略する場合がある。)の大きさによっては、規格等で定められる寸法形状を有するセキュリティカードを製造できない場合や、カードの視認性が低下する場合等がある。そのため、上記直線状凹曲面部は所望の曲率を有する必要がある。
以下、その理由について図を例示して説明する。
図5は、セキュリティカードを作製する際の、半円柱形レンズを介したレーザー光照射による印字方法に関する説明図である。図5に例示されるように、セキュリティカードへの印字方法として、半円柱形レンズ13を介してカード基材12に含有される発色材料にレーザー光(Z1およびZ2)等の照射を行う。これにより、照射部分が発色し、画像部を形成することができる。
上述したように、直線状凹曲面部は転写されて半円柱形レンズを形成する部位である。すなわち、上記直線状凹曲面部の曲率により、半円柱形レンズの頂部の曲率も定まるものである。
ここで、例えば、上記直線状凹曲面部の曲率が大きいと、形成される半円柱形レンズの曲率も大きいものとなる。すなわち、上記半円柱形レンズは曲率半径が小さい形状となる。
この場合、図5(a)で例示されるように、半円柱形レンズ13を透過したレーザー光Z1およびZ2はレンチキュラーレンズシート11内に焦点Fを有してしまい、カード基材12まで到達することができず、カード基材12において印字が行えない可能性がある。
このとき、レーザー光の焦点をカード基材に有するためには、レンチキュラーレンズシートの厚さを薄くする必要があり、当該シートの強度が低下する可能性がある。
一方、例えば、上記直線状凹曲面部の曲率が小さいと、形成される半円柱形レンズの曲率も小さいものとなる。すなわち、上記半円柱形レンズは曲率半径の大きい形状となる。
この場合、図5(b)で例示されるように、半円柱形レンズ13を透過したレーザー光Z1およびZ2は、カード基材12を越えた位置に焦点Fを有するため、上記カード基材12において印字が行えない可能性がある。
このとき、カード基材に焦点が位置するようにレンチキュラーレンズシートの厚さを大きくする方法も考えられる。しかし、実際にレーザー光の届く範囲は決まっていることから、上記焦点Fまで十分にレーザー光が届かず、また、焦点Fにおけるレーザー光の強度が低下すると推量される。そのため、カード基材に明瞭に印字することが困難となる場合がある。
また、レンチキュラーレンズシートの厚さを大きくすると、セキュリティカード全体の厚さも大きくなるため、国際規格等で規定される寸法形状のカードを作製することができない場合がある。
上述の理由から、カード基材の所定の箇所に明瞭な画像部を有し、視認性の高いセキュリティカードとするためには、半円柱形レンズの曲率が所望の範囲内となるように、カード用原版の直線状凹曲面部の曲率を規定する必要がある。
上記直線状凹曲面部の曲率半径としては、10μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、中でも30μm〜90μmの範囲内であることが好ましく、特に50μm〜80μmの範囲内であることが好ましい。
なお、直線状凹曲面部の曲率半径とは、図3においてcで示される部分をいう。
上記直線状凹曲面部の深さとしては、5μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、中でも7μm〜60μmの範囲内であることが好ましく、特に、10μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。
直線状凹曲面部の深さが上記範囲よりも大きいと、転写により形成される半円柱形レンズのレンズ厚が大きくなるからである。すなわち、レンチキュラーレンズのレンズ厚も大きくなるため、国際規格等で決められたカード全体の厚みを超えてしまう可能性があるからである。一方、上記範囲よりも小さいと、転写により形成される半円柱形レンズが所望のレンズ厚とならず、画像情報の表示を切り替えるレンズとしての機能を十分発揮できない場合があるからである。
また、直線状凹曲面部の深さが上記範囲外となると、セキュリティカードの作製において、レーザー光の照射によりカード基材へ画像の印字を行う場合、半円柱形レンズを透過したレーザー光がカード基材において焦点を結べず、所望の位置に印字が行えない可能性があるからである。
なお、直線状凹曲面部の深さとは、直線状凹曲面部の最下点から後述する隔壁部の頂部(最頂点)までの長さをいい、図3においてdで示される部分をいう。
上記直線状凹曲面部は、図1で例示されるように金属基板の表面上に直線状に複数本が並列に形成されるものであり、上記直線状凹曲面部の本数としては適宜選択することができる。
また、直線状凹曲面部の長尺方向の長さとしては特に限定されるものではなく、金属基板の大きさおよび所望のレンチキュラーレンズの大きさに応じて適宜選択されるものである。なお、直線状凹曲面部の長尺方向とは、図1においてAで示される方向をいう。
(b)隔壁部
本発明における隔壁部とは、金属基板上の隣り合う直線状凹曲面部の間に形成されるものである。なお、上記隔壁部も金属基板の表面上に直線状に形成されるものであり、その数は上記直線状凹曲面部の形成される数に応じて決まるものである。
本発明における隔壁部の形状は、所望の幅や高さ等を有するものであれば特に限定されるものではない。図6は、隔壁部の縦断面形状の例を説明するための説明図である。
上記隔壁部の断面形状としては、図6(a)で例示されるように通常、金属基板の底面に対して上記隔壁部の側面が直角を成す形状であるが、図6(b)および(c)で例示されるように、鈍角を成す形状(テーパー形状)であってもよい。上記隔壁部の両側面がなす角度(図6(b)および(c)中のθ)の大きさとしては、5°〜120°の範囲内が好ましく、中でも10°〜90°の範囲内が好ましく、特に15°〜45°の範囲内が好ましい。
上記隔壁部の両側面が上記範囲内の角度を成すことにより、転写の際にカード用原版からカードが離型しやすくなるからである。
また、上記隔壁部の頂部の幅は小さいことが好ましい。上記隔壁部は、転写によりレンズ間溝部を形成する部位であるが、上記レンズ間溝部が大きい場合、レンチキュラーレンズを介して所定の角度から画像部を観察した際に、表示される画像上に線状ノイズ等が出現する現象が生じる。このため、表示すべき画像が不鮮明な像として観察され、セキュリティカードの視認性の低下を招くこととなるからである。
ここで、本発明の平板状セキュリティカード用転写原版を用いて形成されたセキュリティカードについて、図を例示しながら説明する。図7(a)は、本発明の平板状セキュリティカード用転写原版を用いて転写により形成されたセキュリティカードの一例を示す概略断面図である。本発明におけるセキュリティカード20は、カード基材12と、カード基材12上に形成されるレンチキュラーレンズシート11とを有するものである。カード基材12は画像部18(18aおよび18b)を有しており、レンチキュラーレンズシート11は、シート平坦部15と、レンチキュラーレンズ16と、を有している。
レンチキュラーレンズ16は、複数本が並列に配置された半円柱形レンズ13と、隣接する半円柱形レンズ13の間に形成されるレンズ間溝部14とを有するものである。また、レンチキュラーレンズシート11は、カード基材12の画像部18が形成された側の表面に配置されているものである。さらに、カード基材12上の画像部18は、半円柱形レンズ13の下側に位置し、レンチキュラーレンズ16と平面視上に重なるように配置されているものである。
そして、図7(a)〜(c)に例示するように、一方の観察角度E1においてはレンチキュラーレンズ16を介してカード基材上の画像部18aの情報(図7(b))のみを画像として視認することができ、別の観察角度E2においてはレンチキュラーレンズ16を介してカード基材上の画像部18bの情報(図7(c))のみを画像として視認することが可能となる。
このようなセキュリティカードにおいて、「レンチキュラーレンズを介して表示される画像上に線状ノイズ等が出現」するとは、図7(d)で例示されるように、レンチキュラーレンズを介してセキュリティカード上の画像を確認する際に、画像部18aの画像上に半円柱形レンズ13の長尺方向に従って線状に画像の薄い部分が生じる現象や、所定の角度において表示すべき画像の他に、上記表示すべき画像以外の画像が複数本の線状ノイズLとして同時に表示される現象等をいう。
視認される画像上に線状ノイズ等が出現する要因としては、レンズ間溝部の底幅の大きさによるものと考えられる。
所定の角度からセキュリティカードを視認する際、カード基材における画像部はレンチキュラーレンズを介して視認される。しかし、レンズ間溝部の底幅が大きい場合、レンズ間溝部の表面の屈折率と上記レンズ間溝部の底幅との関係から、レンズ間溝部を介して上記画像部が形成されていない領域や、レンチキュラーレンズを介して視認させようとしている画像部以外の領域(これらを非画像部領域とする場合がある。)も視認することとなる。このため、観察者は、レンチキュラーレンズを介して視認されるべき画像部の像と、レンズ間溝部を介して視認される非画像部領域とを同時に視認することになる。
このとき、上記非画像部領域は、上述のように視認される画像上に線状ノイズ等として出現するため、視認される画像が損なわれ、画像全体として不鮮明なものとして認識される。
そこで、本発明においては、上記レンズ間溝部の底幅の大きさを所定の範囲内となるように調整することにより、上記現象の発生を防止するものである。
上記隔壁部の頂部の幅としては、5μm〜20μmの範囲内であることが好ましく、中でも5μm〜15μmの範囲内であることが好ましく、特に5μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。
隔壁部の頂部の幅が上記範囲よりも小さいと、上記隔壁部が決壊して上述した直線状凹曲面部の深さにばらつきが生じるため、転写により形成される半円柱形レンズおよびレンチキュラーレンズがレンズとしての機能を有さない場合がある。一方、上記範囲よりも大きいと、上記レンズ間溝部の底幅も大きくなるため、レンチキュラーレンズを介して画像部を観察する際に、表示画像上に線状ノイズ等が出現し、視認性が損なわれる場合がある。
なお、隔壁部の頂部の幅とは、隔壁部の頂部に有する平面のうち短尺方向の長さをいい、図3においてeで示される部分をいう。また、後述するように隔壁部の頂部が曲率を有する場合は、隔壁部の頂部の曲面を金属基板の表面と平行な平面で切断した時に形成される面の幅をいう。
上記隔壁部の頂部の幅の測定箇所については、図6(a)で例示されるように、金属基板の表面に対して隔壁部の側面が直角を成す形状である場合は、上記側面間の距離を隔壁部の幅とする。
また、図6(b)で例示されるように、金属基板の表面に対して隔壁部の側面が鈍角を成す場合は、上記隔壁部の頂部に有する平面における短尺方向の長さを隔壁部の幅とする。
さらに、図6(c)で例示されるように、隔壁部の頂部が曲率を有するものであり、直線状凹曲面部と隔壁部の頂部の曲面とが連続した形状で、隔壁部の頂部の曲面の区分される位置が明確でない場合は、非接触法の測定により作成されたグラフにおいて直線状凹曲面部と隔壁部の頂部の曲面とが形成する曲面の変曲点を特定する。すなわち、対象曲面において直線状凹曲面部および隔壁部の短尺方向の断面が形成する曲線の曲率の符号が変化する点の位置を、直線状凹曲面部と隔壁部の頂部とが区分される位置とし、上記変曲点における短尺方向の長さを隔壁部の幅とする。ここで、短尺方向の断面が形成する曲線から曲率を算出する一つの方法としては、上記曲線を微小区間に分け、曲率を算出する微小区間における上記曲線を構成する測定データに対し最小二乗法を用いて円弧を当てはめ、得られた円弧の半径から曲率を得る方法が例示できる。
なお、上記変曲点に直線部が接している場合は直線部も直線状凹曲面部の一部とする。
さらに、上記隔壁部の頂部は曲率を有することが好ましい。隔壁部の頂部が曲率を有することにより、隔壁部の頂部が曲率を有することにより、転写の際にカード用原版からカードが離型しやすくなるからである。また、上記カードにおいて、レンチキュラーレンズを介して視認される画像上に出現する線状ノイズ等を、より目立たなくすることができるからである。
上記隔壁部の頂部の曲率半径としては、2.5μm〜10.0μmの範囲内であることが好ましく、中でも2.5μm〜7.5μmの範囲内であることが好ましい。特に2.5μm〜5.0μmの範囲内であることが好ましい。
なお、隔壁部の頂部の曲率半径とは、図3においてRで示される部分をいう。
上記隔壁部の高さとは、上述した直線状凹曲面部の深さと同様である。
また、上記隔壁部の頂部に有する平面は、後述する金属基板の表面上に有する平面部と同じ高さにあることが好ましい。すなわち、本発明の金属基板の底面から、上記隔壁部の頂部に有する平面までの高さが、本発明の金属基板の厚さと同じであることが好ましい。
本発明におけるレンチキュラーレンズ形成部の形成数としては、金属基板の表面上の一部に形成されるものであり、その数は1つでも良く、複数あっても良い。
また、上記レンチキュラーレンズ形成部を複数有する場合、一方のレンチキュラーレンズ形成部における直線状凹曲面部の長尺方向と、他方のレンチキュラーレンズ形成部における直線状凹曲面部の長尺方向とが同じ方向であっても良く、異なる方向であっても良いが、同じ方向であることが好ましい。
さらに、レンチキュラーレンズ形成部における直線状凹曲面部の長尺方向は、本発明の平板状セキュリティカード用転写原版を用いて作製されるセキュリティカードの長尺方向、すなわち、上記セキュリティカードをカードリーダーに通して磁気情報を読み取る方向と同じ方向であることが好ましい。セキュリティカードをカードリーダーに通す際に、上記レンチキュラーレンズの部分が障害となる場合があるからである。
また、本発明におけるレンチキュラーレンズ形成部の金属基板の一方の表面に占める面積の割合は、金属基板の一方の表面の面積を100%とした時に、1%〜30%程度の割合を占めることが好ましい。
(2)平面部
本発明における平面部とは、金属基板の一方の表面上において、上述したレンチキュラーレンズ形成部を有さない領域をいう。なお、上記平面部は、上述した金属基板の表面が直接上記平面部の形状に形成されてなるものである。
上記平面部は、図3に例示されるように、文字図柄転写部6が形成されていることが好ましい。上記文字図柄転写部は凹凸で表現された文字、記号、図柄等の画像情報を有するものである。そのため、本発明のカード用原版を用いてセキュリティカードを作製する際に、カード表面にレンチキュラーレンズを形成するのと同時に、上記文字図柄転写部の画像情報を転写することができるからである。
上記文字図柄転写部における文字や図柄等の線幅は、80μm〜500μm程度の大きさであることが好ましい。また、上記文字図柄転写部の大きさとしては、特に限定されるものではなく、目的とするセキュリティカードの大きさ等に応じて適宜設定することができる。なお、平面部上の文字図柄転写部の個数は、1つであっても良く、複数あっても良い。
(3)金属基板
上記金属基板は、単一の金属から形成される単層構造であっても、積層構造であっても良いが、単層構造であることが好ましい。低コスト化を図ることができるからである。
上記金属基板に用いられる金属の種類としては、転写により安定的にセキュリティカードを製造できるものであれば特に限定されるものではないが、ステンレス鋼、鉄、銅、アルミニウム、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金、ニオブ、タンタル、ジルコニウム、コバルト合金、クロム合金、モリブデン合金、タングステン合金、低熱膨張係数を有する鉄合金等の金属が好ましく、なかでもステンレス鋼が好ましく、特に、オーステナイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレスが好ましい。金属の中でも耐久性に優れており、エッチング等の加工がしやすく、安価だからである。
なお、上記金属基板の厚さとしては、レンチキュラーレンズ形成部に形成される直線状凹曲面部を形成可能なものであり、転写により安定的にセキュリティカードを製造できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、0.05mm〜10mmの範囲内の大きさであることが好ましい。
金属基板の厚さを上記範囲内とすることが好ましい理由については、以下の通りである。
本発明のカード用原版の製造方法として、例えば、当該金属基板にフォトリソグラフィによるパターニングを行い、その後エッチングを行う方法を用いる場合、その過程において金属基板にマスクを介して紫外線等の露光を行うことによりパターンが複製される。このとき、金属基板とマスクとを真空密着させることによって、安定したパターンを得ることが必要である。そこで、金属基板の厚さを上記範囲内とすることにより、上記真空密着を安定的に行うことが可能となるからである。
一方、金属基板の厚さが上記範囲より薄いと、カードの作製の際に本発明のカード用原版が変形しやすく、耐久性が不足する場合があるからである。
なお、金属基板の大きさ(面積)としては、所望のセキュリティカードの大きさに応じて適宜設定することができる。
また、上記金属基板の厚さとは、金属基板の底面から平面部までの高さをいうものであり、具体的には、既に説明した図3中のhで示される距離である。
金属基板の表面としては、その表面が平滑性を有するものであることが好ましく、中でも光沢面であることが好ましい。上記カード用原版の表面が転写されて、セキュリティカードの表面を光沢面とすることができるからである。
上記金属基板の十点平均表面粗度(Rz)については、Rz=0.05μm〜1.5μmの範囲内であることが好ましく、中でもRz=0.1μm〜0.5μmの範囲内であることが好ましい。
本発明における金属基板の形成方法としては、金属基板の一方の表面上に平面部とレンチキュラーレンズ部とを直接形成することができる方法であれば特に限定されないが、中でも、金属基板上にフォトリソグラフィを用いてレジストパターンを形成した後、エッチングを行うことにより形成する方法であることが好ましい。
具体的には、図8に例示するように、まず平板状の金属基板1aを準備し、レジスト層形成工程として、金属基板1aの一方の表面上にレジスト膜23aを製膜し(図8(a))、マスク24を介してレジスト膜23aを露光および現像することにより(図8(b))、パターン状のレジスト層23を形成する(図8(c))。この時、レジスト層23において、複数本の開口部23bが、直線状凹曲面部の配列に相当するパターンで直線状に並列に形成されている。
次に、エッチング工程として、レジスト層23をマスクとして、金属基板1aにエッチング液を用いてエッチングを行い、金属基板1の表面上に直線状凹曲面部4および隔壁部5を有するレンチキュラーレンズ形成部を形成する方法を挙げることができる(図8(d)および(e))。
従来、レンチキュラーレンズの転写原版の作製方法としては、MEMSやエレクトロフォーミング(EF)、金属切削等が用いられている。これらの方法は、高精度のレンチキュラーレンズの大判転写原版を作製することができるが、安価かつ簡単な方法ではなく、セキュリティカードのような多品種小ロット用の転写原版の作製方法には適していない。
また、上述した方法とは異なる方法としてレーザー光により直接描画する方法(以下、レーザー法と称する場合がある。)が用いられる。レーザー法を用いて転写原版を作製する場合、上述の方法よりも多品種小ロット用の転写原版の作製には適しているが、レーザー光の照射部分において溶融された基板材料等の飛散が生じるため、転写原版の表面の平滑性が損なわれる場合がある。また、レーザーの照射熱により転写原版の全域が加熱されるため、隔壁部の欠損や変形等が生じる場合がある。
そのため、このような転写原版により作製されるセキュリティカードは、レンチキュラーレンズの表面に凹凸やレンズ厚の異なる部分が生じ、レンチキュラーレンズを介してセキュリティカード上の画像を視認すると、形状が損なわれた不鮮明な画像となり、視認性の低いセキュリティカードとなる場合がある。
一方、上述のようなフォトリソグラフィを用いてレジストパターンを形成した後、エッチングを行うことにより形成する方法では、金属基板を直接エッチングすることで直線状凹曲面部および隔壁部を形成する方法であるため、従来の方法よりも安価で且つ簡単に転写原版を作製することができる。また、レーザー法等とは異なり、基板材料等の溶融物の飛散により表面の平滑性が損なわれることがなく、隔壁部の変形や欠損等も生じないため、レーザー法よりも安価で簡単に且つ精度良く、平面部およびレンチキュラーレンズ形成部を形成することができる。そのため、高い視認性を有するセキュリティカードを作製することができるからである。
上記レジスト層形成工程におけるレジストパターンの形成方法としては、金属基板上にレジスト材料を塗布してレジスト膜を製膜し、所望の位置に開口部を有するようにレジストパターンの形成を行う方法を挙げることができる。
上記レジスト層形成工程で用いられるレジストの材料としては、感光性を有するものであれば良く、ポジ型でもネガ型でもよい。中でも、液状レジストやドライフィルムレジストを用いることが好ましく、特に、液体レジストを用いることが好ましい。これは、膜厚が一定に保たれたフィルム状のレジストであり、解像度が安定することが期待でき、直線状凹曲面部を安定した形状で形成することができるからである。
液状レジストおよびドライフィルムレジストの材料としては、一般的にフォトリソグラフィで用いられるものが挙げられる。なお、レジスト材料が液状である場合、金属基板上にレジスト材料を塗布しレジスト膜を成膜する方法として、スピンコート法、ブレードコート法、デイッピング法等の一般的な方法を用いることができる。
上記レジスト層形成工程において形成されるレジスト層の厚さとしては、3μm〜25μmの範囲内であることが好ましい。レジスト層の厚さが上記範囲よりも大きいと、後述するエッチング工程において、レジスト層のパターン間にエッチング液が十分に回り込まず、所望の深さの直線状凹曲面部を形成することができない場合があるからである。
なお、パターン状のレジスト層を形成する前の、レジスト膜の厚さについても、上記レジスト層の厚さと同様である。
なお、本発明において、エッチングの後に研磨処理を有する場合は、上記金属基板の厚さは研磨される分の厚さを考慮した大きさとすることが好ましい。
上記レジスト層形成工程におけるレジスト層のパターン形成方法としては、所望のパターンが形成できる方法であれば特に限定はなく、例えば、フォトリソグラフィ法や印刷法を用いることができる。中でも、フォトリソグラフィ法を用いることが好ましい。高いパターン精度で形成することができるからである。
なお、本発明における露光条件および現像条件については、一般的なフォトリソグラフィにおける条件を用いることができる。
また、本発明により形成されるレジストパターンの開口部の大きさや、並列する開口部の間隔、およびその本数については、本発明におけるレンチキュラーレンズ形成部に含まれる直線状凹曲面部の形状や本数等に応じて適宜選択することができる。
上記エッチング工程におけるレジスト層を介して金属基板をエッチングするエッチング方法としては、金属基板の一方の表面に平面部およびレンチキュラーレンズ形成部を精度良く形成できるものであれば特に限定されるものではないが、ウェットエッチングであることが好ましい。ドライエッチングと比較して加工効率が高く、直線状凹曲面部および隔壁部の様々なデザインに対し柔軟に形成することができるからである。
上記ウェットエッチングの方法としては、レジスト層を有する金属基板上にエッチング液を塗布する方法でも良く、エッチング液にレジスト層を有する金属基板を浸漬させる方法でも良い。
本工程において用いられるエッチング液としては、金属基板をエッチングできるものであれば良く、用いられる金属材料に応じて、適宜選択することが好ましい。例えば、金属基板にステンレス鋼を用いる場合は、塩化第二銅液、塩化第二鉄液、塩酸−硝酸−リン酸混合液等を用いることが好ましい。なお、エッチング時間は、所望の直線状凹曲面部の形状に応じて適宜調整することができる。
また、上記エッチング工程においては、レンチキュラーレンズ形成部が形成されると共に、平面部に文字図柄転写部が形成されることが好ましい。
従来、上記文字図柄転写部を転写原版上に形成する場合、レーザー法が用いられている。しかし、上記方法の場合、レーザー光が照射された箇所の照射跡の残存や溶融物の飛散が生じることや、レーザー光の照射により未照射領域も加熱されることで、文字図柄転写部の形状が変形して鮮明に表示されないといった問題がある。
本発明では文字図柄転写部もエッチングにより形成することにより、上述の問題を生じることなく、より精細なものとすることが可能となる。また、セキュリティカードを作製する際に上記文字図柄転写部の形状を損なうことなく転写することができ、転写された文字等の品質が良好となる。
また、本発明においては、レジスト層形成工程とエッチング工程とを有するものであるが、その他の工程を有していても良い。その他の工程としては、例えば、金属基板の表面を整面するための酸系水溶液あるいはアルカリ系水溶液による処理工程、エッチング工程後にレジスト層を除去するレジスト層除去工程や、エッチング工程後にカード用原版の表面を研磨する研磨工程等を挙げることができる。
以下、上述した工程のうち、研磨工程について説明する。
本発明における研磨工程とは、上述したエッチング工程の後に、上記レジスト層を除去した上記金属基板に対し研磨を行う工程である。本工程を行うことによりエッチング工程により形成された隔壁部の頂部に高い曲率を持たせることができるからである。
また、本工程により、カード用原版の表面を光沢面とすることができ、転写により作製されるセキュリティカードの表面に光沢性を付与することができるからである。
なお、本工程は、隔壁部の頂部の表面のみに対して行っても良く、レンチキュラーレンズ形成部および平面部を有する金属基板表面の全面に対して行っても良い。
本工程で用いられる研磨方法としては、例えば、電解研磨法、化学研磨法、電解と化学研磨を同時に行う複合研磨法、バフ研磨等を用いることができ、中でも電解研磨法を用いることが好ましい。カード用原版において対象の突起部分を選択的に研磨することができ、表面の平滑化および光沢化を図ることができるからである。
上記研磨方法において用いられる研磨液としては、酸系研磨液が好ましく、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などの水溶液、硫酸と過酸化水素を含む水溶液、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩を含む水溶液等が挙げられる。
本工程において隔壁部が研磨される割合としては、上記隔壁部の頂部の幅の大きさに対して5%〜50%の範囲内であることが好ましく、中でも5%〜25%の範囲内であることが好ましく、特に5%〜10%の範囲内であることが好ましい。
隔壁部が研磨される割合を上記範囲とすることにより、カード用原版の表面を光沢面とすることができ、また、隔壁部の頂部を曲面とすることができるからである。
本工程において、隔壁部を研磨することにより上記隔壁部の頂部は所望の曲率を有することが好ましい。その理由および隔壁部の頂部の曲率半径については、上述した「(1)レンチキュラーレンズ形成部」の項で説明した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
また、本工程において、金属基板の表面を研磨することにより、表面の平滑性を高めることが好ましく、中でも平滑且つ光沢面とすることが好ましい。金属基板の表面を光沢面とすることにより、本発明により得られるカード用原版を用いて転写する際に、セキュリティカードの表面に光沢性を付与することができるからである。
本工程後の光沢面の程度としては、#400以上の砥粒で研磨した時の光沢を有することが好ましい。
3.平板状セキュリティカード用転写原版
本発明の平板状セキュリティカード用転写原版は上記金属基板および防汚層を有するものであるが、必要に応じて他の構成を有するものであっても良い。
4.セキュリティカード
本発明の平板状セキュリティカード用転写原版を用いて転写により形成されるセキュリティカードは、レンチキュラーレンズシートおよび上記レンチキュラーレンズシートのシート平坦部上に形成された揮発成分を含む絵柄層を有するものである。
また、セキュリティカードは、通常、上記レンチキュラーレンズシートを支持すると共に、絵柄層を覆うように樹脂材料を用いて形成された保護層を有するものである。
(1)絵柄層
本発明における絵柄層は、レンチキュラーレンズシートのシート平坦部上に形成された揮発成分を含む層である。
上記揮発成分としては、上記カード用原版の形状を転写する際に絵柄層から移行可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソノナン等の有機溶媒等を挙げることができ、なかでもシクロヘキサノン、イソノナンであることが好ましく、特に、シクロヘキサノンであることが好ましい。上記揮発成分であることにより、意匠性に優れたセキュリティカードとすることができるからである。また、保護層が形成された場合であっても、転写の際に保護層を透過し易い性質を有するため、本発明の効果をより効果的に発揮できるからである。
上記絵柄層の形成方法としては、上記揮発成分を含む層を形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、上記揮発成分を含む組成物を塗布して硬化させる方法を挙げることができる。
また、硬化させる方法としては、上記組成物に含まれる揮発成分や溶媒を乾燥除去することにより硬化する方法や、UV硬化型樹脂を含む組成物を用い、組成物塗布後のUV照射により硬化する方法等を挙げることができる。
なお、このような組成物については、セキュリティカードの絵柄層の形成に一般的に用いられるインクを使用することができるため、ここでの説明は省略する。
上記絵柄層の厚みとしては、所望の絵柄を描くことができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、10μm〜500μmの範囲内とすることができ、なかでも、50μm〜250μmの範囲内であることが好ましく、特に70μm〜150μmの範囲内であることが好ましい。上記厚みが上述の範囲内であることにより、上記絵柄層による意匠性に優れたものとすることができるからである。
上記絵柄層の形成箇所としては、レンチキュラーレンズシートのシート平坦部上に形成されるものであれば特に限定されるものではないが、上記シート平坦部内のみに形成されるものであることが好ましい。レンチキュラーレンズおよびレンズ間溝部を所望の形状での形成の容易なものとできるからである。
(2)レンチキュラーレンズシート
本発明におけるレンチキュラーレンズシートは、シート平坦部を少なくとも有するものである。
また、上記レンチキュラーレンズ形成部が直線状に複数本が並列に配置された直線状凹曲面部および隣り合う上記直線状凹曲面部の間に形成される隔壁部を有するものである場合には、このパターンに対応するように、直線状に複数本が並列に配置された半円柱形レンズと、隣り合う上記半円柱形レンズの間に形成されたレンズ間溝部と、を有するものとなる。
このようなレンチキュラーレンズシートの材料としては、平板状セキュリティカード用転写原版のレンチキュラーレンズ形成部の形状に追従できる柔軟性を有するものが好ましく、加熱により軟化する材料、すなわち熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、透明性を有することが好ましい。
このような熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、セルロースエステル、フッ化ポリマー、ポリアセタール、ポリオレフィン、アラミド、フッ素樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、PLA(ポリ乳酸)等を用いることができ、中でもポリカーボネートを用いることが好ましい。
上記レンチキュラーレンズシートの厚さとしては、所望のレンチキュラーレンズ形状等を形成可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば30μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、中でも50μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。上記範囲よりも大きいと、国際規格等により規定されるカードの厚さを超えてしまう場合があり、一方、上記範囲よりも小さいと、カードの強度が得られない場合があるからである。
なお、レンチキュラーレンズシートの厚さとは、後述するカード基材と接する面から、レンチキュラーレンズの最頂部までの長さをいう。
(3)保護層
本発明における保護層は、絵柄層を覆うように樹脂材料を用いて形成されるものである。
このような保護層を構成する樹脂材料としては、上記絵柄層により表示される絵柄を平面視上視認できるものであれば特に限定されるものではなく、上記レンチキュラーレンズシートの材料と同様とすることができる。
上記保護層の厚みとしては、上記絵柄層を保護できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、0.05μm〜500μmの範囲内とすることができ、なかでも、0.1μm〜250μmの範囲内であることが好ましく、特に0.15μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。上記厚みが上述の範囲内であることにより、上記絵柄層を安定的に保護できるからである。
上記保護層の形成箇所としては、絵柄層上に形成されるものであれば特に限定されるものではないが、絵柄層の全表面を覆うものであることが好ましく、なかでも上記シート平坦部内のみに形成されるものであることが好ましく、特に、平面視上、絵柄層よりも面積が広いものであることが好ましい。上記形成箇所が上述のものであることにより、上記絵柄層を安定的に保護できるからである。
(4)カード基材
本発明で用いられるカード基材の材料としては、一般的なセキュリティカード用のカード基材として用いられる樹脂材料を挙げることができる。なお、上記カード基材に用いられる材料は透明性を有するものであっても良く、有しないものであっても良い。
このような材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、アラミド、ポリイミド、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、PLA(ポリ乳酸)等を用いることができる。中でも、ポリカーボネートが好ましい。
また、上記カード基材は発色材料を含むことが好ましい。発色材料を含むことにより、レーザー光を照射して上記カード基材に画像部を形成することができるからである。
上記画像部の形成方法としてレーザー光を用いる場合、上記発色材料としては、レーザー光を吸収する材料であれば良く、例えば、カーボンブラック、チタンブラック、黒色酸化鉄、雲母等を用いることができ、中でもカーボンブラックが好ましい。
上記カード基材の厚さは、50μm〜800μmの範囲内であることが好ましく、中でも300μm〜700μmの範囲内であることが好ましい。
カード基材の厚さが上記範囲よりも大きいと、国際規格等により規定されるセキュリティカードの厚さを超えてしまう場合があり、一方、上記範囲よりも小さいと、セキュリティカードの強度が得られない場合があるからである。
上記カード基材は、通常、上述したレンチキュラーレンズと平面視上に重なるように配置された画像部を有するものである。
上記画像部は、文字や記号、絵柄等の情報を有するものである。また、上記画像部は上述したレンチキュラーレンズと平面視上に重なるように配置されるものである。そのため、上記画像部の大きさとしては、レンチキュラーレンズに覆われた領域を超えない大きさであることが好ましい。また、レンチキュラーレンズの下側に位置する画像部は、通常2種類の異なる画像部分で構成されるが、2種類以上の画像部分を有していても良い。
(5)セキュリティカード
本発明におけるセキュリティカードの大きさおよび厚さについては、用途に応じて適宜設定することができるが、セキュリティカードのサイズは国際規格(例えばISO7816)等により規定されているため、上記国際規格で定められる寸法の範囲内とする必要がある。
本発明におけるセキュリティカードは、上述したカード基材およびレンチキュラーレンズシート、絵柄層、および保護層を少なくとも有するものであるが、必要に応じてその他の部材を有していても良い。その他の部材としては、例えば、磁気シート、ICチップ等を有していても良い。
本発明により得られるセキュリティカードの用途としては、視認性および偽造防止性が求められる分野に用いることが可能であり、例えば、クレジットカード等の個人情報管理カード、政府文書等の機密性を要する情報媒体に用いることが可能である。
B.セキュリティカードの製造方法
次に、本発明のセキュリティカードの製造方法について説明する。本発明のセキュリティカードの製造方法は、シート基材上に揮発成分を含む絵柄層を形成する絵柄層形成工程と、上記シート基材の上記絵柄層が形成された表面側から平板状セキュリティカード用転写原版を接触させることにより、上記シート基材を、シート平坦部を有するレンチキュラーレンズシートとする転写工程と、上記平板状セキュリティカード用転写原版に上記絵柄層から移行した揮発成分を洗浄する洗浄工程と、を有するセキュリティカードの製造方法であって、上記絵柄層形成工程が、上記シート基材の上記シート平坦部が形成される領域上に上記絵柄層を形成するものであり、上記平板状セキュリティカード用転写原版が、平面部およびレンチキュラーレンズ形成部を一方の表面上に有する金属基板と、上記金属基板の上記平面部の絵柄層形成領域を覆うように形成された防汚層と、を有し、上記絵柄層形成領域が上記絵柄層に対応する領域であり、上記防汚層が上記金属基板よりも上記揮発成分に対する密着性が低いものであることを特徴とするものである。
このようなセキュリティカードの製造方法については、具体的には、既に説明した図4と同様とすることができる。
本発明によれば、上述の構造を有する平板状セキュリティカード用転写原版を用いて転写することにより、レーザー光による印字に適した所望の形状のレンチキュラーレンズおよびレンズ間溝部等を、精度良く簡単に形成することができる。
また、上記レンチキュラーレンズと平面視上に重なるようにカード基材に画像部を形成することにより、本発明により得られるセキュリティカードは、レンチキュラーレンズを介してセキュリティカード上の画像を観察する際に、観察角度によって視認される画像部を異なるものとすることができ、視認性に優れたものとすることができる。
これにより視認性に優れたセキュリティカードとすることができる。
また、金属基板よりも揮発成分の密着性の低い防汚層が、上記絵柄層に対応する領域に形成されていることにより、洗浄工程において平板状セキュリティカード用転写原版からの揮発成分の除去を容易なものとすることができる。
本発明のセキュリティカードの製造方法は、絵柄層形成工程、転写工程および洗浄工程を少なくとも有するものである。
以下、本発明のセキュリティカードの製造方法について、工程ごとに説明する。
1.絵柄層形成工程
本発明における絵柄層形成工程は、シート基材上に揮発成分を含む絵柄層を形成する工程であり、より具体的には、シート基材の上記シート平坦部が形成される領域上に上記絵柄層を形成する工程である。
本工程におけるシート基材は、上記転写工程において絵柄層が形成された表面側から平板状セキュリティカード用転写原版を接触させることにより、シート平坦部を有するレンチキュラーレンズシートとすることができるものである。
このようなシート基材の材料、厚み等については、上記「A.平板状セキュリティカード用転写原版」の「4.セキュリティカード」の「(2)レンチキュラーレンズシート」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本工程における絵柄層の形成方法および本工程により形成される絵柄層については、上記「A.平板状セキュリティカード用転写原版」の「4.セキュリティカード」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
2.転写工程
本発明における転写工程とは、上記シート基材の上記絵柄層が形成された表面側から平板状セキュリティカード用転写原版を接触させることにより、上記シート基材を、シート平坦部を有するレンチキュラーレンズシートとする工程である。
なお、本工程において用いられる平面状平板状セキュリティカード用転写原版は、上記「A.平板状セキュリティカード用転写原版」の項に記載されたものと同様の内容であるため、ここでの説明は省略する。
本工程における上記シート基材の上記絵柄層が形成された表面側から平板状セキュリティカード用転写原版を接触させることにより、上記シート基材を、シート平坦部を有するレンチキュラーレンズシートとする方法としては、上記シート基材の表面に平板状セキュリティカード用転写原版に形成された平面部およびレンチキュラーレンズ形成部のパターンを精度よく転写できるものであれば特に限定されるものではないが、中でも熱転写が好ましく、特に加熱加圧による転写が好ましい。加熱によりシート基材が軟化し、加圧により上記カード用原版表面の凹凸形状に追従させることができるため、レンチキュラーレンズシートを精度良く作製することができるからである。また、シート基材およびカード基材を未接着で積層させた場合、加熱および加圧により接着させることができるからである。
加熱加圧による転写方法としては、一般的な方法を用いることができ、特に限定されるものではなく。例えば、熱プレス機等を用いて行うことができる。
熱プレス機を用いる方法としては、まず、熱プレス機の上盤にカード用原版を設置し、熱プレス機の下盤にシート基材を設置する。次に加熱および加圧しながら上記カード用原版をシート基材に押し当て、所望の時間保持した後に、上記熱プレス機の上盤を解放する。シート基材上に上記カード用原版が押し当てられた状態で冷却し、その後上記カード用原版を離型することにより、シート基材上に上記カード用原版表面の凹凸形状を転写し、レンチキュラーレンズシートとすることができる。
本工程における加圧条件としては、カード用原版表面の凹凸形状を十分に転写できる圧力であれば特に限定されるものではなく、シート基材の厚さ等に応じて適宜設定することができる。
また、本工程における加熱条件としては、カード用原版表面の凹凸形状を転写できる程度にシート基材の材料を十分に軟化させることができる温度であれば特に限定されるものではない。加熱温度としては、例えば200℃程度が好ましい。
さらに、加熱時間としては、加圧条件および加熱条件によって適宜設定されるものであり、例えば20分程度であることが好ましい。
また、本工程では、カード用原版表面の凹凸形状が転写されたシート基材を硬化させるために、加熱加圧による転写後に冷却処理を行うものである。冷却方法としては、カード用原版を押し当てた状態で全体を冷却する方法が好ましく、例えば、加熱加圧を行った環境下で放冷する方法や、冷風を当て冷却する方法等を用いることができる。
本工程における冷却時間としては、特に限定されるものではない。なお、短時間で急冷すると、シート基材とカード用原版との熱収縮率が異なるため、得られるレンチキュラーレンズシートが所望の形状とならない場合や、表面の平滑性が損なわれる場合がある。
3.洗浄工程
本発明における洗浄工程は、上記平板状セキュリティカード用転写原版に上記絵柄層から移行した揮発成分を洗浄する工程である。
本工程における平板状セキュリティカード用転写原版の洗浄方法としては、上記平板状セキュリティカード用転写原版に付着した揮発成分を除去できるものであれば特に限定されるものではなく、公知の洗浄方法を用いることができる。具体的には、不織布を用いて拭き取るドライ払拭、溶剤を含ませた不織布を用いて拭き取るウエット払拭、揮発成分を溶解または分散可能な溶剤中に溶解または分散させる方法等を挙げることができる。
なお、溶剤中に溶解または分散させる方法としては、上記溶剤を上記防汚層に吹き付けるスプレー法等や、上記防汚層を上記溶剤中に浸漬させる浸漬法等を挙げることができる。また、防汚層を溶剤中に浸漬させる場合には、超音波を併用するものであっても良い。
また、上記方法を単独で用いるものであっても良く、複数を組み合わせて用いるものであっても良い。
上記溶剤としては、上記揮発成分を溶解または分散できるものであれば特に限定されるものではなく、上記揮発成分に応じて適宜選択できるものである。
本発明においては、なかでも、沸点が100℃未満の有機溶剤であること好ましく、例えば、エチルアルコール、メチルアルコール、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等を好ましく用いることができ、特に、エチルアルコールを好ましく用いることができる。上記溶剤であることにより上記防汚層からの溶剤の除去が容易だからである。
本工程の実施タイミングとしては、防汚層上に付着した揮発成分がセキュリティカード表面に付着することを防止できるものであれば特に限定されるものではなく、上記転写工程前に行われるものでも、転写工程後に行われるものであっても良い。
また、本工程の実施回数としては、防汚層上に付着した揮発成分がセキュリティカード表面に付着することを防止できるものであれば特に限定されるものではなく、上記転写工程が1回実施される毎に行うものであっても良く、複数回実施された後に行われるものであっても良い。
本工程において、上記溶剤を用いる場合には、上記平板状セキュリティカード用転写原版に上記絵柄層から移行した揮発成分を洗浄後に、上記平板状セキュリティカード用転写原版に付着した溶剤の乾燥除去を行うことが好ましい。
4.セキュリティカードの製造方法
本発明のセキュリティカードの製造方法は、絵柄層形成工程、転写工程および洗浄工程を有するものであるが、通常、上記転写工程後に、上記シート基材を支持するカード基材上に上記レンチキュラーレンズと平面視上に重なるように画像部を形成する印字工程を有するものである。
本発明における印字工程の画像部の形成方法としては、カード基材上に上記レンチキュラーレンズと平面視上に重なるように画像部を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、上述した転写工程により形成された上記レンチキュラーレンズを介して、上記カード基材に異なる2方向からレーザー光を照射して、上記レンチキュラーレンズと平面視上に重なるように上記カード基材に画像部を形成する方法を挙げることができる。
なお、図9は、印字工程の一例を示す工程図である。図9(a)に例示するようにカード基材12に対して上記半円柱形レンズ13を介してレーザー光Z1およびZ2を照射することにより、カード基材12に含有される発光材料が炭化され、カード基材に文字や数字等の情報を印字された画像部18aおよび18bを形成することができる(図9(b))。
なお、図9中の符号については、図4のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
本工程において使用されるレーザー光の種類としては、上記発色材料により吸収されるものであればよく、例えばガスレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザー、面発光レーザー等の波長700nm〜1300nmの赤外線を発する光源を挙げることができる。
なお、レーザー光の照射角度や照射時間等の条件については、所望の画像部が印字できるものであれば特に限定されるものではない。
また、本工程におけるカード基材については、上記「A.平板状セキュリティカード用転写原版」の「4.セキュリティカード」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
(セキュリティカード用転写原版の作製)
<レジスト層形成工程>
カード用原版に使用する金属基板として、板厚0.5mm、300mm角サイズの圧延材料であるSUS304材を準備した。上記金属基板の一方の表面を、アルカリ脱脂(NaOH水溶液5%、60℃)、硫酸電解(硫酸水溶液5%、常温、電流密度dk=3)、塩酸ディップ(塩酸水溶液10%、常温)により整面処理を行った。
次に、整面処理を行った金属基板の表面に、ドライフィルムレジストをラミネートし、15μm程度の厚さを有するフォトレジスト層を形成した。
次に、平行光露光機を使い、マスクを介して紫外線照射によるパターン露光を行った後、40℃の温水で現像を行いフォトレジスト層をパターン形成した。
上記マスクについては、上述した金属基板のサイズ内でレンチキュラーレンズを形成するために、カード1枚当たりに、85mm×50mm程度の外形を有するデザインを具備し、且つ、そのカード内に縦および横のサイズが各々20mm程度となる矩形のレンチキュラーレンズ形成部を、得られるセキュリティカードにおいてレンチキュラーレンズを左下部に配置できるように具備した。なお、レンチキュラーレンズ形成部以外の領域は平面部とした。
<エッチング工程>
当該パターニング面に対して、フォトレジスト層をパターン形成した後、エッチングを行うことにより、直線状凹曲面部および隔壁部を有するレンチキュラーレンズ形成部および平面部の形状を得た。
<検証>
上記マスクによるレンチキュラーレンズ形成部の設計については、上述のようにコーティングされたレジスト層の解像度およびエッチング条件等に依存するため、マスクのパターンのみではレンズ形状は決まらない。このため、最終的に得られたエッチング後の形状で、マスクのパターン形状およびエッチング条件の検証を行った。
エッチング後の形状としては、隔壁部の頂部の幅、直線状凹曲面部の幅、深さ、ピッチ幅および底部の曲率半径の大きさが、加工形状として主に制御できるものと想定して加工した。
検証の結果、上記隔壁部の頂部の幅5μm〜20μmの範囲に対して、5μmごとに段階的に変えた形状が得られた。
また、その他の直線状凹部曲面部の形状については、浸漬時間やスプレー噴射圧力などのエッチング条件によって、10μmごとに段階的に変えた形状が得られた。
<研磨工程>
上述の工程を経た複数枚の金属基板について、隔壁部の頂部に曲率を形成するため当該金属基板を処理時間等の条件を変えて硝酸5%水溶液に浸漬して酸洗した後、バフ研磨の#400で光沢面に処理した。これにより、隔壁部の頂部の曲率2.5μm〜10μmに対して、1μm〜2μmごとに段階的に変えることができた。
<防汚層形成工程>
上記研磨工程後に、金属基板の平面部上に、シアン化金浴を用いて、厚さ0.3μmの電解金めっき層を形成した。
上述の一連の工程を経て、金めっき層である防汚層が平面部の絵柄層形成領域上に形成された、複数枚の本発明のカード用原版を得た。
[実施例2]
(セキュリティカードの作製)
<転写工程>
カーボンブラックを含有したカード基材(厚さ50μm〜100μm)と、レンチキュラーレンズシートとしてポリカーボネートを主成分としたシート基材(厚さ50μm〜100μm)との積層体を予め準備した。
次いで、上記シート基材上に、揮発成分として、汎用性のあるシクロヘキサノンを含む塗工液を印刷し、厚さ50μmの絵柄層を形成した。
その後、上記絵柄層を覆うように、主成分がデンプンである、溶液系接着剤であり、厚さ50μmの保護層を形成した。
実施例1により得られたカード用原版を平面プレス機に装着し、当該積層体に対して200℃で20分、1kg/cmでプレスを行った後、30分程度冷却を行い、シート基材が硬化する温度まで低下させた。
冷却後、平面プレス機を開放し、上記シート基材からカード用原版を離脱させた。この実施により、上述のシート基材上に上記カード用原版表面の凹凸形状が転写され、シート平坦部およびレンチキュラーレンズを有し、上記レンチキュラーレンズが、複数本が並列に配置された半円柱形レンズおよびレンズ間溝部を有するレンチキュラーレンズシートを形成することができた。
<印字工程>
続いて、レンチキュラーレンズシート上において、レンチキュラーレンズを構成する半円柱形レンズに対してYAGレーザー照射を行い、画像部の印字を行った。この実施により、カード基材上に画像部を形成することができ、観察角度に応じて上記画像部の視認画像が異なる目的のセキュリティカードを作製することができた。
[比較例1]
防汚層形成工程を通らない以外は、実施例1と同様にして、カード用原版を得た。
<評価>
実施例1および比較例1で得られたカード用原版を用いて、上記実施例2の転写工程、すなわち、繰り返しレンチキュラーレンズシートを形成した結果、約50回の繰り返し使用により、カード用原版の絵柄層形成領域に対して、揮発成分が転写していることを目視で確認した。
その後、当該揮発成分が転写しているカード用原版と、5%NaOH水溶液、液温50%に3分浸漬し、その後、水洗して乾燥を行った、カード用原版についてXPS(X線光電子分光分析法)を用いて、元素成分の比較を行った。縦軸に電子の個数、横軸にX線を基準したときの光電子のエネルギーをとった、X線光電子分光スペクトルから得られた、C/Au比は、揮発成分を洗浄後のカード用原版は、0.72/1となったが、揮発成分が転写している、すなわち、洗浄前のカード用原版は、2.2/1となった。また、未使用のカード用原版は、C/Au比が0.75/1となり、洗浄による効果も確認できた。
1 … 金属基板
2 … 平面部
3 … レンチキュラーレンズ形成部
4 … 直線状凹曲面部
5 … 隔壁部
7 … 防汚層
10 … 平板状セキュリティカード用転写原版
11 … レンチキュラーレンズシート
12 … カード基材
13 … 半円柱形レンズ
14 … レンズ間溝部
15 … シート平坦部
16 … レンチキュラーレンズ
20 … セキュリティカード
21 … 絵柄層
22 … 保護層

Claims (4)

  1. 平面部およびレンチキュラーレンズ形成部を一方の表面上に有する金属基板と、
    前記金属基板の前記平面部の絵柄層形成領域を覆うように形成された防汚層と、
    を有し、
    前記絵柄層形成領域が、レンチキュラーレンズシートおよび前記レンチキュラーレンズシートのシート平坦部上に形成された揮発成分を含む絵柄層を有するセキュリティカードの前記絵柄層に対応する領域であり、
    前記防汚層が、前記金属基板よりも前記揮発成分に対する密着性が低いことを特徴とする平板状セキュリティカード用転写原版。
  2. 前記防汚層が、金めっき層であることを特徴とする請求項1に記載の平板状セキュリティカード用転写原版。
  3. 前記金属基板に用いられる金属の種類がオーステナイト系ステンレス、フェライト系ステンレス、またはマルテンサイト系ステンレスであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の平板状セキュリティカード用転写原版。
  4. シート基材上に揮発成分を含む絵柄層を形成する絵柄層形成工程と、
    前記シート基材の前記絵柄層が形成された表面側から平板状セキュリティカード用転写原版を接触させることにより、前記シート基材を、シート平坦部を有するレンチキュラーレンズシートとする転写工程と、
    前記平板状セキュリティカード用転写原版に前記絵柄層から移行した揮発成分を洗浄する洗浄工程と、
    を有するセキュリティカードの製造方法であって、
    前記絵柄層形成工程が、前記シート基材の前記シート平坦部が形成される領域上に前記絵柄層を形成するものであり、
    前記平板状セキュリティカード用転写原版が、平面部およびレンチキュラーレンズ形成部を一方の表面上に有する金属基板と、前記金属基板の前記平面部の絵柄層形成領域を覆うように形成された防汚層と、を有し、前記絵柄層形成領域が前記絵柄層に対応する領域であり、前記防汚層が前記金属基板よりも前記揮発成分に対する密着性が低いものであることを特徴とするセキュリティカードの製造方法。
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