JP2015073523A - 核酸の検出方法、検出プローブ、マイクロアレイ、核酸検出キット、核酸‐検出プローブ‐捕捉プローブ複合体、核酸固定化担体、及び流体デバイス - Google Patents
核酸の検出方法、検出プローブ、マイクロアレイ、核酸検出キット、核酸‐検出プローブ‐捕捉プローブ複合体、核酸固定化担体、及び流体デバイス Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】(a)第1の部分及び第2の部分からなる核酸を含有する核酸試料と、ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されている検出プローブと、前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、該配列中に第1の光反応性塩基誘導体を含む捕捉プローブと、を接触させる工程と、(b)核酸−検出プローブ‐捕捉プローブ複合体を形成させる工程と、(c)第一の波長帯域の光によって、前記第1の光反応性塩基誘導体と前記核酸とを架橋させる工程と、(d)前記核酸−検出プローブ‐捕捉プローブ複合体中の標識物質を検出する工程と、を有する核酸の検出方法。
【選択図】なし
Description
miRNA標的DNAマイクロアレイを用いたmiRNAの定量方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。先ず、生体サンプルからmiRNAを抽出し、該miRNAを蛍光標識した後に、miRNA標的DNAマイクロアレイに添加し、基板上の核酸プローブにハイブリダイズさせる。次いで、基板に非特異的に吸着したmiRNAを洗浄した後、蛍光強度を指標にmiRNA量を見積もる。
生体サンプルからmiRNAを調製する際には、生体サンプルから全RNAを抽出・精製し、miRNAを含む全RNAを蛍光標識した後に、蛍光標識miRNAを含む蛍光標識全RNAを、miRNA標的DNAマイクロアレイに接触させる。
Mechanical Systems)技術を用いて、チップ上に微小な流路や反応室、混合室を設け、一つのチップ上で核酸を分析するマイクロ流体デバイスを意味する。
しかしながら、以下のように蛍光標識法がボトルネックとなり、全自動化への組み込みが進んでいない。
しかし、これらの方法では全ての核酸が非特異的に蛍光標識されるため、基板上の核酸プローブにハイブリダイゼーションさせる前に、予め蛍光標識された標的miRNAから未反応の蛍光試薬等を取り除く必要がある。これらの分離にはゲルろ過クロマトグラフィーを用いるのが一般的であり、約22塩基と短いmiRNAを、未反応の蛍光試薬から精度良く分離する必要がある。例えば、μ−TASを用いて分離する場合には、生体サンプルを、樹脂の詰まった領域を長距離移動させる工程が必要であり、スペースの限られたチップ内でかかる工程を行うのは極めて難しい。また、例え可能であっても、連続して実験を繰り返すためには、未反応の蛍光試薬を洗い流すために長時間の洗浄が必要であり、現実的ではない。
係るサンドイッチ型マイクロアレイ法の第1の方法として、具体的には、以下の工程が挙げられる。先ず、第1の部分300及び第2の部分301からなる各miRNA303に相補的な配列を有する核酸プローブを二分割し、捕捉プローブ304(Capture
probe)と検出プローブ305(Detect probe)とする。そして、各miRNA303の第1の部分300に相補的な配列を有する捕捉プローブ304群を基板306上に配列させてマイクロアレイを作製する(図18参照)。
次いで、各miRNA303を、作製したマイクロアレイ基板(基板306)に接触させた後、各miRNA303の第2の部分301に相補的な配列を有する検出プローブ305群を含む溶液をマイクロアレイ基板(基板306)に接触させることで、miRNA303、捕捉プローブ304、検出プローブ305の3者をハイブリダイゼーションさせる(図18参照)。検出プローブ305は、miRNA303の第2の部分301を認識して結合するため、捕捉プローブ304への非特異的な結合は起こらず、未反応の検出プローブ304をクロマトクラフィーなどで分離する必要がない。
また、生体サンプル中には約70塩基のpre−miRNA(miRNAの前駆体)が含まれている。pre−miRNAは約22塩基のmiRNAの配列を含んでいるため、特許文献1の第1の方法では両者を区別できず、遺伝子発現制御機能を有するmiRNAのみを正確に定量できないという根本的な問題を抱えている。
(1)本発明の一実施態様における核酸の検出方法は、
(a)第1の部分及び第2の部分からなる核酸を含有する核酸試料と、
ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されている検出プローブと、
前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、該配列中に第1の光反応性塩基誘導体を含む捕捉プローブと、を接触させる工程と、
(b)前記第2の部分を前記検出プローブにハイブリダイズさせ、前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、核酸−検出プローブ‐捕捉プローブ複合体を形成させる工程と、
(c)前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、第一の波長帯域の光によって、前記第1の光反応性塩基誘導体と前記核酸とを架橋させる工程と、
(d)前記核酸−検出プローブ‐捕捉プローブ複合体中の標識物質を検出する工程と、を有することを特徴とする。
(2)本発明の一実施態様における検出プローブは、
核酸試料中の第1の部分及び第2の部分からなる核酸を検出するために用いられる検出プローブであって、
相補鎖を形成する2つのステム部と、
前記2つのステム部間の領域であり、標識物質により標識されているループ部と、
前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列からなり、該第2の部分とハイブリダイズし得る配列中に光反応性塩基誘導体を含み、5’突出末端又は3’突出末端と、を備えることを特徴とする。
(3)本発明の一実施態様におけるマイクロアレイは、
核酸と検出プローブと複合体を形成可能で、配列中に光反応性塩基誘導体を含む捕捉プローブが基板に固定されており、
前記核酸は、前記捕捉プローブとハイブリダイズし得る第1の部分と、前記検出プローブとハイブリダイズし得る第2の部分とを含み、
前記検出プローブは、ステムループ構造を形成し、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されていることを特徴とする。
(4)本発明の一実施態様における核酸検出キットは、
捕捉プローブおよび検出プローブを備えた核酸検出キットであって、
前記捕捉プローブは、標的核酸を第一の部分と第二の部分に分割した場合に、前記第一の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、該配列中に光反応性塩基誘導体を含み、
前記検出プローブは、ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されていることを特徴とする。
(5)本発明の一実施態様における核酸‐検出プローブ‐捕捉プローブ複合体は、
第1の部分及び第2の部分からなる核酸を介して、
ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されている検出プローブと、
前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、該配列中に光反応性塩基誘導体を含む捕捉プローブとが、連結されてなることを特徴とする。
(6)本発明の一実施態様における核酸固定化担体は、
先に記載の核酸‐検出プローブ‐捕捉プローブ複合体が基板に固定化されてなることを特徴とする。
(7)本発明の一実施態様における流体デバイスは、
捕捉プローブが固定されてなる基板と、検出プローブ導入用インレットと、を有する核酸検出部を備えた流体デバイスであって、
前記捕捉プローブは、標的核酸を第一の部分と第二の部分に分割した場合に、前記第一の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、該配列中に光反応性塩基誘導体を含み、
前記検出プローブは、ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されていることを特徴とする。
[第一実施形態]
本実施形態の核酸の検出方法は、
(a)第1の部分及び第2の部分からなる核酸を含有する核酸試料と、
ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されている検出プローブと、
前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、該配列中に第1の光反応性塩基誘導体を含む捕捉プローブと、を接触させる工程と、
(b)前記第2の部分を前記検出プローブにハイブリダイズさせ、前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、核酸−検出プローブ‐捕捉プローブ複合体を形成させる工程と、
(c)前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、第一の波長帯域の光によって、前記第1の光反応性塩基誘導体と前記核酸とを架橋させる工程と、
(d)前記核酸−検出プローブ‐捕捉プローブ複合体中の標識物質を検出する工程と、を有する。
本実施形態において、前記捕捉プローブは基板に固定されている。
光反応性塩基誘導体が捕捉プローブに含まれることにより、捕捉プローブと核酸との間が架橋され得るため、高精度な核酸の検出が実現される。
光反応性塩基誘導体が捕捉プローブに加えて、検出プローブに含まれることにより、検出プローブと核酸との間にも架橋がされ得るため、より高精度に核酸の検出が実現される。
なお、本実施形態では、捕捉プローブは固相、たとえば基板に固定されていてもよい。固相としては、基板の他に、担体を好ましいものとして例示できる。固相担体としては、たとえば、磁気ビーズ、金ナノ粒子、アガロースビーズ、プラスチックビーズ等が挙げられる。固相基板としては、たとえば、ガラス基板、シリコン基板、プラスチック基板、金属基板等が挙げられる。
第1の部分1及び第2の部分2からなるmiRNA3を含有する核酸試料と、ステムループ構造を形成し、前記第2の部分2とハイブリダイズし得る配列5bを含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質5aにより標識されている検出プローブ5と、
前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、該配列中に第1の光反応性塩基誘導体7aを含む捕捉プローブ4と、を接触させる工程であり、捕捉プローブ4は基板6に固定されている。
図1に示すように、検出対象のmiRNA3を、第1の部分1及び第2の部分2に二分割する。即ち、miRNA3は、第1の部分及び第2の部分からなる。
捕捉プローブ4及び検出プローブ5は、それぞれ、miRNA3の第1の部分1及び第2の部分2にハイブリダイズし得るものである。そのため、第1の部分1及び第2の部分2の長さは、5〜17塩基が好ましく、約22塩基からなるmiRNAを2分割した塩基数という観点から、7〜15塩基がより好ましい。
これら第1の部分1及び第2の部分2の長さは、配列特異性が保たれることが担保されていれば上記塩基数に限定されない。上記点は、第1の部分1及び第2の部分2のGC含有量や標的miRNAに類似の核酸の存在などによって影響される。
本実施形態においては、miRNA3の5’側の部分を第1の部分1とし、miRNA3の3’側の部分を第2の部分2とする。
図1に示される態様では、捕捉プローブ4は、前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列中に第1の光反応性塩基誘導体7aを含み、検出プローブ5は、miRNA3の第2の部分2とハイブリダイズし得る配列5b中に第2の光反応性塩基誘導体7bを含む。
miRNA3を高精度に定量する観点から、捕捉プローブ4は、miRNA3の第2の部分2とハイブリダイズしないように、miRNA3の第2の部分2に相補的な配列を含まないことが好ましい。
基板6に固定された捕捉プローブ4が、miRNA3とハイブリダイゼーションするためには、分子的な自由度が必要であることから、捕捉プローブ4は、基板6と結合する3’末端にスペーサー4aを有していることが好ましい。スペーサー4aの長さとしては、特に限定されないが、3〜50塩基が好ましく、5〜25塩基がより好ましい。ただし、スペーサーに用いられる塩基は、同程度の長さと柔らかさを持ったPEG等のリンカーで代替可能である。係る場合には、スペーサー4aに用いられる塩基数は0塩基でもよい。
捕捉プローブ4の長さは、プローブとして機能するために必要な長さであれば特に限定されないが、第1の部分1及びスペーサー4aの塩基数を勘案し、3〜50塩基が好ましく、5〜40塩基がより好ましい。
光リソグラフ技術を利用する場合には、基板6上で捕捉プローブ4を合成してもよい。
スポッティングにより捕捉プローブ4を固定する場合には、捕捉プローブ4に固相結合部位を設け、基板6に固相結合部位認識部位を設けておくことが好ましい。
このような固相結合部位/固相結合部位認識部位の組み合わせとしては、捕捉プローブ4をアミノ基、ホルミル基、SH基、スクシミジルエステル基等の官能基で修飾して設けられた固相結合部位と、基板6をアミノ基、ホルミル基、エポキシ基、マレイミド基等を有するシランカップリング剤で表面処理して設けられた固相結合部位認識部位との組合わせや、金-チオール結合を利用した組合せが挙げられる。
また、スポッティングにより捕捉プローブを固定する他の方法として、シアノール基を有する捕捉プローブを、ガラス基板に吐出し、配列させ、シランカップリング反応により共有結合させる方法も挙げられる。
miRNA3を高精度に定量する観点から、検出プローブ5は、miRNA3の第1の部分1とハイブリダイズしないように、miRNA3の第1の部分1に相補的な配列を含まないことが好ましい。
本実施形態において、検出プローブ5は、5’末端側から、相補鎖を形成する2つのステム部5c,5dと、該2つのステム部5c,5d間の領域であるループ部5eと、第2の部分2とハイブリダイズし得る配列5bとからなる。即ち、検出プローブ5は、3’突出末端を有している。検出プローブは、突出末端を有しており、検出プローブが有する突出末端が、5’突出末端であるか3’突出末端であるかは、捕捉プローブと基板とが捕捉プローブの5’末端を介して結合しているか3’末端を介して結合しているかによる。
検出プローブ5におけるループ部の長さは、ステム部の長さとの兼ね合いによって決まる。検出プローブ5におけるループ部の長さは、検出プローブ5が安定してステムループ構造を形成できる長さであれば特に限定されないが、たとえば、3〜200塩基が好ましく、5〜100塩基がより好ましい。
検出プローブ5の長さは、ステムループ構造を形成でき、プローブとして機能するために必要な長さであれば特に限定されないが、第2の部分2の塩基数及びステムループ構造形成に必要な塩基数を勘案し、14〜200塩基が好ましく、24〜150塩基がより好ましい。
捕捉プローブ4及び検出プローブ5の少なくともいずれか一方が、LNA又はBNAを含むことが好ましく、捕捉プローブ4及び検出プローブ5の両方が、LNA又はBNAを含むことがより好ましい。
標識物質としては、例えば、蛍光色素、蛍光ビーズ、量子ドット、金ナノ粒子、ビオチン、抗体、抗原、エネルギー吸収性物質、ラジオアイソトープ、化学発光体、酵素等が挙げられる。
蛍光色素としては、FAM(カルボキシフルオレセイン)、JOE(6−カルボキシ−4’,5’−ジクロロ2’ ,7’−ジメトキシフルオレセイン)、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、TET(テトラクロロフルオレセイン)、HEX(5'−ヘキサクロロ−フルオレセイン−CEホスホロアミダイト)、Cy3、Cy5、Alexa568、Alexa647等が挙げられる。
全RNA中、miRNAはごく微量しか存在しないため、分画せずにmiRNAを高効率に標識することは困難である。一方、本実施形態においては、予め標識した検出プローブを用いるため、高効率に、miRNAを定量することができる。
標的miRNAの有する配列や長さによって、FRET効率が異なるという観点からは、FRETが起こり得ない組合せが好ましい。FRETが起こり得る標識物質の組合せを用いる場合であっても、例えば、捕捉プローブの基板に近い末端をFAMで標識し、検出プローブの基板から最も遠いループ部分をAlexa647で標識する等、両者間でFRETが起きないように設計することもできる。
また、検出プローブが捕捉プローブに連結された場合と基板に吸着した場合とを区別することができるという観点からは、FRETが起こり得る組合せが好ましい。
FRETが起こりうる標識物質の組合せとしては、励起波長が490nm付近の蛍光色素(例えば、FITC、ローダミングリーン、Alexa(登録商標)fluor 488、Bodipy FL等)と励起波長が540nm付近の蛍光色素(例えば、TAMRA、テトラメチルローダミン、Cy3)、または、励起波長が540nm付近の蛍光色素と励起波長が630nm付近の蛍光色素(例えば、Cy5等)の組み合わせが好ましい。
従って、当該領域では両miRNAが合算されたシグナルが検出され、誤った結果を導く場合がある。これは、例えば特許文献1において、致命的な問題である。
本発明者らは、以下の2点によりこの問題を解決できることを見出した。
これは、let−7aとlet−7fの第2の部分とそれぞれハイブリダイズする検出プローブ(let−7a)と検出プローブ(let−7f)を異なる標識物質により標識し、それぞれのシグナルを個別に定量する方法である。標識物質として、例えば波長の異なる蛍光物質であるAlexa532又はAlexa647を用いて、両検出プローブを標識する方法が挙げられる。
これは、類似miRNAのうち、配列の異なる部分にハイブリダイズするプローブを捕捉プローブとして用いる方法である。let−7aおよびlet−7fを例にすると、配列の異なる3’末端側の5’−GUUGUAUAGUU−3’及び5’−AUUGUAUAGUU−3’を第1の部分とし、共通の配列である5’末端側の5’−UGAGGUAGUAG−3’を第2の部分とする。図1に記載の5’末端と3’末端の配置を反転させることで、補足プローブ4の5’末端側を基板上に固定した捕捉プローブ4−検出プローブ5−miRNA3複合体を形成させることが可能になる。この場合、let−7a及びlet−7bに対する検出プローブ5は同一の配列であり、標識される標識物質も同一となる。
ハイブリダイゼーションは、特に限定されるものではなく、各プローブのTm値等を考慮した上で、温度、pH、塩濃度、緩衝液等の通常の条件下で行うことができる。高精度にmiRNAを定量する観点から、ハイブリダイゼーションはストリンジェントな条件で行うことが好ましい。
ストリンジェントな条件とは、例えば、30℃程度の温度条件(プローブの配列のTmより5℃〜10℃程高い温度条件)、1M未満の塩濃度条件等が挙げられる。
光反応性塩基誘導体とは、所定の波長の光が照射されることにより、反応性が活性化され、任意の標的核酸と検出プローブ、及び任意の標的核酸と捕捉プローブとを架橋可能な塩基誘導体を意味する。光反応性塩基誘導体の一例として、ソラーレン(psoralen)を付加した塩基、3−Cyanovinylcarbazole Nucleoside(以下、CNVKともいう。)、4-チオチミジン、アデニン反応性基のケージド物 (Kobori ら、Bioorganic & Medicinal Chemistry, 20:5071-5076 (2012))、3−carbonylvinyl phenol nucleoside (CVP) (Yoshimuraら、 Nucleic Acids Symposium Series , 48:81-82 (2004))、p‐carbamoylvinyl phenol nucleoside (p−CVP) (Amiら、Org. Biomol. Chem., 5: 2583-2586(2007)))、5‐carboxyvinyldeoxyuridine (CVU) (Ogasawaraら、Chem Bio Chem, 6:1756-1760 (2005))、carbazole‐tethered 5‐carboxyvinyl‐2'‐deoxyuridine (YCVU)(Fujimotoら、Organic Letters, 10: 397-400 (2008))、5-cyanovinyl‐1’‐α‐2’- deoxyuridine (α‐CU), β‐CU(Oginoら、Angew. Chem. Int. Ed. 45:7223-7226(2006))、5‐vinyl‐2’‐deoxyuridine (VU), 5‐heptenyl‐2’―deoxyuridine (HU), 5‐cyclohexyl vinyl‐2’‐deoxyuridine (HVU), 5‐t‐butylvinyl‐2’‐deoxyuridine (BuVU)(Oginoら、Org. Biomol. Chem., 7:3163-3167 (2009))、 BTVU, PTVU, MPTVU, NTVU (Amiら、ChemBioChem 9, 2071-2074 (2008))、N3‐methyl−5−cyanovinyl‐2’‐deoxyuridine (MCVU)(Fujimotoら、Chem. Commun., 3177-3179 (2005))、7‐deaza‐2’‐deoxyadenosine (VZA) (Saitoら、Tetrahedron Letters 46:97-99 (2005))などが挙げられる。
検出プローブが含む第1の光反応性塩基誘導体と、捕捉プローブが含む第2の光反応性塩基誘導体とは、同一の化合物であってもよく、互いに異なる化合物であってもよい。すなわち、第1の光反応性塩基誘導体と第2の光反応性塩基誘導体とが同一の化合物の場合を、前記第1の波長帯域光と前記第2の波長帯域光が同じ波長帯域であって、任意の標的核酸と検出プローブ、及び任意の標的核酸と捕捉プローブとを架橋可能な場合として例示できる。
一方、本実施形態の核酸検出方法では、核酸と検出プローブ、又は核酸と捕捉プローブとの連結に光反応性塩基誘導体を用いることにより、酵素が機能しない条件で、又は酵素を失活させる条件を経ていても、核酸の検出を行うことができる。当該条件の一例としては、上述の、miRNAは立体構造を解くための95℃で5分間程度インキュベーションがある。また、別の例として、プローブと核酸とのハイブリダイズを行う際に、溶液中に界面活性剤が含有された場合が挙げられる。溶液中に界面活性剤を含有させることにより、核酸の検出をより高精度に行うことができる。このように、本実施形態の核酸検出方法では、酵素を用いる代わりに光反応性塩基誘導体を用いるので、核酸の検出を高精度に行うための種々の条件を幅広く選択することができる。また、連結の反応の前に酵素が失活することを避けるために、本実施形態で用いる一連の試薬類の保管等を厳密に行う必要性を低減することができ、製品の品質管理がより容易となる。
本実施形態の核酸検出方法では、酵素を用いる代わりに光反応性塩基誘導体を用いて核酸の連結を行うので、酵素反応では制御困難である連結反応時間の厳密な制御、および微細な範囲ごとの連結反応の制御を行うことが可能である。微細な範囲ごとの連結反応の制御とは、たとえば、光照射時に、光反射効率に勾配を有するようコーティングが施されたフィルターを用い、極狭い面積ごとに光照射ドース条件を変化させることが挙げられる。
上記の様に、検出プローブ5は標識物質5aで標識されているため、miRNA3―検出プローブ5−捕捉プローブ4複合体中の標識物質5aを定量的に検出する。その際、段階希釈した既知量のmiRNAを用いて、標準曲線を作製し、該標準曲線を利用することが好ましい。かかる検出結果を用いて核酸試料中のmiRNA3を定量することができる。
工程(d)における、標識物質の検出方法は、特に限定されるものではなく、例えば、核酸マイクロアレイ自動検出装置を用いて、複合体の蛍光強度を測定する等、核酸を検出する場合に通常行われる方法を用いて行うことができる。
また、本実施形態のmiRNAの検出方法によれば、ステムループ構造を形成する検出プローブを用いるため、pre−miRNAを認識することなく、高精度に標的miRNAを定量することができる。
本実施形態の核酸の検出方法は、
(a)第1の部分及び第2の部分からなる核酸を含有する核酸試料と、
ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されている検出プローブと、
前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、該配列中に第1の光反応性塩基誘導体を含む捕捉プローブと、を接触させる工程と、
(b)前記第2の部分を前記検出プローブにハイブリダイズさせ、前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、核酸−検出プローブ‐捕捉プローブ複合体を形成させる工程と、
(c)前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、第一の波長帯域の光によって、前記第1の光反応性塩基誘導体と前記核酸とを架橋させる工程と、
(d)前記核酸−検出プローブ‐捕捉プローブ複合体中の標識物質を検出する工程と、を有し、
前記検出プローブが、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列中に第2の光反応性塩基誘導体を含み、前記工程(c)において、さらに、前記第2の部分を前記検出プローブにハイブリダイズさせ、第2の波長帯域光によって前記第2の光反応性塩基誘導体と前記核酸とを架橋させるものである。
すなわち、本実施形態の核酸の検出方法では、先に記載の第一実施形態で固相に固定されていた捕捉プローブが、固相に固定されていなくともよい。そのため、捕捉プローブを基板に固定させる工程を実施せずともよく、捕捉プローブが固定された基板を用いずとも実施可能であり、検出対象の核酸種類が少ない場合など、より手軽に核酸の検出を行うことができるという利点がある。
本実施形態の核酸の検出方法は、先に記載の第二実施形態の核酸の検出方法において、さらに、第3の部分を有する複合体捕捉プローブが固定化されてなる基板を用いる核酸の検出方法であって、検出プローブがさらに、前記第3の部分とハイブリダイズし得る配列を有し、
(c−2)前記第3の部分を検出プローブにハイブリダイズさせる工程
を有する核酸の検出方法である。
まず、miRNA3と検出プローブ5と捕捉プローブ4’とを液相中で接触させる(図2(a))。次いで、第2の部分2を前記検出プローブ5にハイブリダイズさせ、第1の部分1を捕捉プローブ4’にハイブリダイズさせ、核酸−検出プローブ‐捕捉プローブ複合体を形成させ、第1の波長帯域光及び/又は前記第2の波長帯域光を当該複合体へと照射し、第1の光反応性塩基誘導体7aとmiRNA3、及び第2の光反応性塩基誘導体7bとmiRNA3をそれぞれ架橋させる。(図2(b))。そして基板6’に固定化された複合体捕捉プローブ8が有する第三の部分8bに捕捉プローブ4’をハイブリダイズさせ、核酸−検出プローブ‐捕捉プローブ複合体中の標識物質を検出し、検出結果からmiRNA3を検出する(図2(c)、図2(d))。
本実施形態の核酸の検出方法は、先に記載の第一実施形態における工程(c)において、該工程が前記基板の一部領域に選択的に前記第一の波長帯域の光を照射し、前記光反応性塩基誘導体と前記核酸とを架橋させる工程を含む。
本実施形態の核酸の検出方法の一例を図3〜図4を参照して説明する。図3は、本実施形態の核酸の検出方法に用いられる流体デバイスの一例を表す模式図である。流体デバイス201は、核酸精製部203と、前記捕捉プローブが固定化されてなる基板204と、核酸精製部203と基板204とをつなぐ流路206と、流路206上のバルブ204fとを備える。図4に示されるように、核酸精製部203、203’、203’’にはそれぞれ異なる検体1〜3が配置されている。また、基板204は3つの領域A〜領域Cに分けられている。当該検体には、検出対象のmiRNAが含有され、基板204は、検出プローブを含有する溶液と接触しているものとする。まず、バルブ204fを開き、検体1を基板204へと送液する(図4(a))。そして、領域Aのみに光を照射し、光反応性塩基誘導体とmiRNAとを架橋させ、核酸−検出プローブ‐捕捉プローブ複合体を形成させる(図4(b))。次に、バルブ204f’を開き、検体2を基板204へと送液する。そして、領域Bのみに光を照射し、光反応性塩基誘導体とmiRNAとを架橋させ、核酸−検出プローブ‐捕捉プローブ複合体を形成させる(図4(c))。
まず、バルブ204fを開き、検体1を基板204へと送液する(図5(a))。そして、領域Aのみに光を照射し、光反応性塩基誘導体とmiRNAとを架橋させ、核酸−検出プローブ‐捕捉プローブ複合体を形成させる(図5(b))。そして、領域Bのみに光を照射し、光反応性塩基誘導体とmiRNAとを架橋させ、核酸−検出プローブ‐捕捉プローブ複合体を形成させる(図5(c))。このとき、バルブ204f’を開き、再度検体1を基板204へと送液してもよい。
基板の一部領域に選択的に光を照射する方法は、公知のパターン露光の方法を用いればよく、基板と露光装置の間へのマスクの配置、縮小投影型露光装置の使用等を行うことが例示できる。
本実施形態の核酸の検出方法は、先に記載の第一実施形態の核酸検出方法において、さらに、第3の波長帯域光によって前記捕捉プローブと前記核酸との架橋を開裂させる工程(e)と、
前記捕捉プローブとの架橋を開裂させた前記核酸を回収する工程(f)と、
を有するものである。
なお、可逆的光連結性塩基の一例として、CNVKを用いる場合、短時間で効率よく架橋できる。
光反応性塩基誘導体7としてCNVKを用いる場合、miRNA3と捕捉プローブ4との複合体に、光連結する第一の波長帯域の光及び又は第二の波長帯域の光と、光開裂する第三の波長帯域の光とを照射することで可逆的な架橋反応が可能である。CNVKを用いる場合、第一及び/又は第二の波長帯域は340nm以上の光である。一例として、340〜380nmの波長帯域の光を照射することにより、CNVKの5’側 に隣接するプリン塩基と塩基対を形成しているmRNA3中のピリミジン塩基を構成する原子とCNVKを構成する原子とが架橋構造を形成する。第三の波長帯域は350nm未満の光である。一例として、280〜345nmの波長帯域の光を照射することにより、架橋は解除される。第一及び/又は第二の波長帯域と第三の波長帯域は、波長帯域の一部が互いに重複していてもよいとする。
CNVKを用いることで、所定の波長帯域の光を短時間(例えば30秒)照射することで高い架橋効率が得られ、照射対象の核酸を損傷するおそれがない。また、CNVKは、効率のよい可逆的な架橋反応が可能であるという点において優れている。
本実施形態の検出プローブは、核酸試料中の第1の部分及び第2の部分からなる核酸を検出するために用いられる検出プローブであって、相補鎖を形成する2つのステム部と、前記2つのステム部間の領域であり、標識物質により標識されているループ部と、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列からなり、該第2の部分とハイブリダイズし得る配列中に光反応性塩基誘導体を含み、5’突出末端又は3’突出末端と、を備えるものであり、上述した検出プローブ5に代表されるものである。
他の実施形態として、標的核酸を個別に検出するとの観点から、検出プローブは、前記ループ部の標識は、前記第2の部分の塩基配列と対応づけられていてもよい。検出プローブが含む前記光反応性塩基誘導体は異なる波長帯域で光連結と光開裂することが好ましい。また、前記核酸は、miRNAであることが好ましい。
前記核酸は、前記捕捉プローブとハイブリダイズし得る第1の部分と、前記検出プローブとハイブリダイズし得る第2の部分とを含み、
前記検出プローブは、ステムループ構造を形成し、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されている。検出プローブは、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列中に光反応性塩基誘導体を含んでもよい。
検出プローブは、上述した検出プローブ5に代表されるものであり、捕捉プローブは上述した捕捉プローブ4に代表されるものである。捕捉プローブが基板に固定されたものとしては、上記≪核酸の検出方法≫において説明したものが例示できる。
ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されている検出プローブと、
前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、該配列中に光反応性塩基誘導体を含む捕捉プローブとが、連結され、前記検出プローブが、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列中に光反応性塩基誘導体を含むものである。当該複合体としては、先に記載の≪核酸の検出方法≫の工程(b)において形成された複合体を例示できるが、係る工程に限定されない。
[第一実施形態]
本実施形態の流体デバイス(たとえばマイクロ流体デバイス(マイクロTAS)、ミリ流体デバイス(ミリTAS)など)は、捕捉プローブが固定化されてなる基板と、検出プローブ導入用インレットと、を有する核酸検出部を備えた流体デバイスであって、
前記捕捉プローブは、標的核酸を第一の部分と第二の部分に分割した場合に、前記第一の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、該配列中に光反応性塩基誘導体を含み、
前記検出プローブは、ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されているものである。また、本実施形態の流体デバイスは、前記検出プローブが、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列中に光反応性塩基誘導体を含むことが好ましい。
捕捉プローブが固定化されてなる基板としては、先に記載のマイクロアレイを例示することができる。
図6に本実施形態の流体デバイスの構成を模式的に示す。流体デバイス11は、捕捉プローブが固定化されてなる基板104cと、検出プローブ導入用インレット104aと、を有する核酸検出部104を備えている。核酸検出部104は、核酸試料を導入するためのサンプル導入用インレット102bをさらに備えていてもよい。
また、本実施形態によれば、酵素を用いる代わりに光反応性塩基誘導体を用いて核酸の連結を行うので、酵素反応では制御困難である核酸の連結反応時間の厳密な制御、および微細な範囲ごとの連結反応の制御を行うことが可能である。このように本実施形態によれば、核酸の連結反応に温度による制御が必要とされず、また連結反応の厳密な制御が容易であるので、連結反応が行われる部位の流体デバイス中における配置の自由度を高めることができる。また連結反応の厳密な制御に必要な流体デバイスの構成も簡略化され得る。
本実施形態の流体デバイスは、一例としてサンプル中のエキソソームが内包する核酸を検出するデバイスであって、図7に示すように、流体デバイス101は、疎水性鎖と親水性鎖を有する化合物で修飾された層を有するエキソソーム精製部102と、核酸精製部103と、核酸検出部104とを備える。
したがって、本実施形態の流体デバイスは、一例として、図7に示されるように、疎水性鎖と親水性鎖を有する化合物で修飾された層を有するエキソソーム精製部102と、エキソソーム精製部102と核酸精製部103を繋ぐ第一の流路105と、核酸精製部103と核酸検出部104を繋ぐ第二の流路106と、を備えたものである。
尚、図7においては三つの廃液槽を示しているが一つ又は二つの廃液槽にまとめたものであってもよい。
図7に示すように、エキソソームの分析において、まず上述したエキソソーム精製部において、サンプル導入用インレット102bにサンプルを注入し、流路102iのバルブ102fを開き、吸引によりサンプルをエキソソーム固定部102dに導入する。
エキソソーム固定部2dに導入されたサンプル中のエキソソームは、疎水性鎖と親水性鎖を有する化合物によって捕捉される。
次いで、エキソソーム固定部102dに固定されたエキソソームを破砕する。図7に示すように、図示略の流路102j上のバルブ102gを開き、破砕液導入用インレット102cに破砕液を注入し、吸引により破砕液をエキソソーム固定部102dへ導入する。破砕液としては、例えば細胞溶解に用いられる従来公知のものが挙げられる。
破砕液がエキソソーム固定部102dを通ることにより、エキソソーム固定部102d上に捕捉されたエキソソームが破砕され、エキソソームに内包される核酸が放出される。エキソソームから放出された核酸は、バルブ105aを介して第一の流路105を通り核酸精製部103へ送られる。
核酸固定部103cは、核酸を固定可能なものであれば特に限定されないが、一例として核酸を固定するシリカメンブレンが挙げられる。
核酸固定部103cをエキソソーム破砕液が通過することにより、核酸固定部103c上に核酸が捕捉される。
次いで、核酸固定部103cに固定された核酸を溶出させる。図7に示すように、流路103gのバルブ103fを開け、核酸回収液導入用インレット103bに核酸回収液を注入し、核酸回収液を核酸固定部103cに導入する。次いで、核酸固定部103cから核酸を回収する。核酸は第二の流路106を通り、核酸検出部104へ送られる。
核酸の溶液混合器104への送液は、図8中のバルブ104g、104hを閉じて行うことが好ましい。こうすることで、溶液混合器の流路内で、核酸を含む溶液が定量される。
標識物質の強度の測定は、一例として、図示略の顕微鏡、光源、パソコンなどの制御部により行われる。
更には、本実施形態によれば、従来は1日以上要したエキソソームの分析をわずか一時間程度で迅速に行うことができる。
本実施形態の流体デバイスを図9において模式的に示す。流体デバイス101’は先に記載の流体デバイス101の変形例である。流体デバイス101’は先の≪核酸の検出方法≫の第二実施形態の核酸の検出方法に好適に用いることができる。当該方法では、捕捉プローブは固相に固定されていなくともよいため、検出プローブ及び捕捉プローブ導入用インレット104a’に検出プローブ5および捕捉プローブ4を注入し、核酸固定部103cへと導入し、miRNA3―検出プローブ5−捕捉プローブ4複合体を形成させる。核酸固定部103cへと光を照射し、光反応性塩基誘導体とmiRNAとを架橋させる。
本実施形態の流体デバイスを図10において模式的に示す。流体デバイス101’’は先に記載の流体デバイス101’の変形例である。流体デバイス101’は先の≪核酸の検出方法≫の第三実施形態の核酸の検出方法に好適に用いることができる。当該方法では、基板上に固定されていない捕捉プローブを用いて核酸−検出プローブ‐捕捉プローブ複合体を形成させた後に、当該複合体を基板上に捕捉する。したがって、流体デバイス101’’は、複合体捕捉プローブ8が固定化されてなる基板104c’を備える。検出プローブ及び捕捉プローブ導入用インレット104a’に検出プローブ5および捕捉プローブ4’を注入し、核酸固定部103cへと導入し、miRNA3―検出プローブ5−捕捉プローブ4’複合体を形成させる。核酸固定部103cへと光を照射し、光反応性塩基誘導体とmiRNAとを架橋させる。その後、miRNA3―検出プローブ5−捕捉プローブ4’複合体を基板104c’へと送液し、複合体中の標識物質を検出し、検出結果からmiRNA3を検出することができる。
検出対象の標的miRNAとして、miR−141及びmiR−200aを選定した。両者の配列はほぼ同一であるが2塩基の差異がある。以下に示す材料をつくばオリゴサービス株式会社に委託し、自動核酸合成装置を使用して、ホスホロアミダイト法に従って合成した。
(実施例1)
標的miRNAとして、miR−141の配列を有するRNAを合成した。また、これに相補的な配列を有する捕捉プローブと検出プローブの2種の核酸プローブを設計・合成した。
用いた標的miRNA、捕捉プローブ、及び検出プローブの配列を以下に示す。
(1)標的miRNA:miR−141[配列:5’−UAACACUGUCUGGUAAAGAUGG−3’] (配列番号1:22mer)
X1:ACCAGACA(8mer)
X2:TGTTAACAACAACAACAACAACAACA(配列番号2:26mer)
X3、X4、X5は以下の配列を表す。
X3:CTCAACTGGTGTCGTGG(配列番号3:17mer)
X4:GTCGGCAATTCAGTTGAGCCA(配列番号4:21mer)
X5:CTTT(4mer)
表1に示す組成で標的miRNA、補足プローブ、検出プローブを含有するハイブリダイゼーション反応溶液を調整した。
標的miRNAとして、miR−200aの配列を有するRNAを合成した。また、これに相補的な配列を有する捕捉プローブと検出プローブの2種の核酸プローブを設計・合成した。
用いた標的miRNA、捕捉プローブ、及び検出プローブの配列を以下に示す。なお、検出プローブ‐141と検出プローブ‐200aでは、両者の塩基配列は2塩基異なっており、蛍光標識の種類が異なる。
(1)標的miRNA:miR−200a[配列:5’−UAACACUGUCUGGUAACGAUGU−3’] (配列番号5:22mer)
(2)捕捉プローブ−141/200a(Capture probe−141/200a)[配列:5’−X1−CNVK−X2−fS−3’]
X1、X2は以下の配列を表し、Sはチオール基を表し、fは6−FAM(6−カルボキシフルオロセイン)を表す。
X1:ACCAGACA(8mer)
X2:TGTTAACAACAACAACAACAACAACA(配列番号2:26mer)
X6、X7、X8は以下の配列を表す。
X6:CTCAACTGGTGTCGTGG(配列番号6:17mer)
X7:GTCGGCAATTCAGTTGAGACA(配列番号7:21mer)
X8:CGTT(4mer)
これらの標的miRNA、補足プローブ、検出プローブを用いて、実施例1と同様にハイブリダイゼーション汎用溶液を調整し、ハイブリダイゼーション操作、及び紫外線照射を行った。
標的miRNAとしてmiR−200aを、検出プローブとして検出プローブ‐141を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、ハイブリダイゼーション及び紫外線照射を行った。
(比較例2)
標的miRNAとしてmiR−141を、検出プローブとして検出プローブ‐200aを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、ハイブリダイゼーション及び紫外線照射を行った。
(比較例3)
ハイブリダイゼーション後に紫外線照射を行わなかった以外は、実施例1と同様の方法で、ハイブリダイゼーションを行った。
(比較例4)
ハイブリダイゼーション後に紫外線照射を行わなかった以外は、実施例2と同様の方法で、ハイブリダイゼーションを行った。
実施例1〜2、比較例1〜4で得られたサンプルを、尿素を含む変性アクリルアミドゲル上で電気泳動し、蛍光像のバンドの濃淡からmiRNA−C−probe−D−probe複合体(Tertiary complex)の形成率を調べた。変性PAGE ゲル上での6‐FAMおよびCy5の蛍光像を合成した写真を図12に示す。蛍光像は、蛍光イメージャー(Molecular Imager FX、BioRad社)で観察し、励起波長および蛍光フィルターはそれぞれCy3:532nm,555nm LP、Cy5:635nm,690nm BP、6FAM:488nm,530nm BPを用いた。なお、Cy3標識の検出プローブ‐200aを用いた実施例2、比較例2、比較例4のレーンでTertiary complexやD−probeのバンドがわずかに検出されたのは、Cy3−D−probeの蛍光がわずかに6‐FAMフィルターに漏れてきているためと考えられる。
図15のmiRNA−C−probe複合体のバンドは6‐FAM−C−probeの蛍光が漏れたものである。実施例2のレーンでは、そのわずかに上方にmiRNA−D−probe複合体のバンドがみられた。
ハイブリダイゼーション後に紫外線照射を10分間で行った以外は、実施例1と同様の方法で、ハイブリダイゼーションを行った。C−probe−D−probe−miRNAの3者複合体の形成率は2.7%であった。
(実施例4)
ハイブリダイゼーション後に紫外線照射を10分間で行った以外は、実施例2と同様の方法で、ハイブリダイゼーションを行った。C−probe−D−probe−miRNAの3者複合体の形成率は2.5%であった。
<マイクロアレイの作製>
まず、以下の表3に示す組成で、前記捕捉プローブ−141/200aを溶解した。
(実施例5)
前記検出プローブ‐141を含有する1.5x Hybridization bufferを下記の表6に示す組成で調整した。
前記標的miRNA(miR−141)の代わりに前記標的miRNA(miR−200a)を用いた以外は、実施例5と同様の方法でハイブリダイゼーションを行った。
実施例5及び比較例5のハイブリダイゼーション後の基盤を乾燥させ、蛍光顕微鏡で観察した。観察結果を図16に示す。図16に示された画像のCy5の蛍光強度から算出したD−probeの結合密度は、miR−141存在下で1.5±0.25 copy/μm2、miR−200a存在下で0.064±0.097 copy/μm2(検出感度以下)となり、少なくとも24倍の差があった。このことから、CNVKを有する核酸プローブは、配列特異性が保たれていることが示された。以上のように、CNVKを有する検出プローブ及び基板に固定化されCNVKを有する補足プローブを用いることで、酵素による標的核酸と核酸プローブとの連結を行わずに、2塩基の差異を検出可能なほど高精度に核酸を定量できることが示された。
(実施例6)
CNVKの利点として、312nm紫外線によりCNVKと塩基との間の架橋を開裂可能であることが挙げられる。上記実施例5において標的miRNAおよび検出プローブのハイブリダイゼーションを行った後のマイクロアレイ基板に、紫外線照射装置(ATTO製)を用い、装置のガラス面の上方1cmにマイクロアレイ基盤を置き、基板に312nm紫外線を5分間照射した。この際、紫外線照射によりCNVKが開裂した後、C−probeからD−probeが解離しやすいように8M 尿素水溶液存在下で照射を行った。マイクロアレイ基板を超純水で洗浄後、蛍光顕微鏡で観察した。312nm紫外線照射前後の補足プローブおよび検出プロ―ブの蛍光像を図17に示す。照射前に結合していた検出プローブは、照射後全く観察されなかった。
一方、ガラス基板に固定した捕捉プローブは、付加されている蛍光色素6−FAMが312nmの光を若干吸収し、一部退色するために、紫外線照射前より暗くは見えていたが、蛍光像が観察され、捕捉プローブのみが基板上に残っている様子が確認された。しがたって、標的miRNAの定量後に標的miRNAおよび検出プローブを解離させ、捕捉プローブが固定されたDNAマイクロアレイを再利用可能であることを確認できた。
11,101’,101’,101’’…流体デバイス、102…エキソソーム精製部、102a…洗浄液導入用インレット、102b…サンプル導入用インレット、102c…破砕液導入用インレット、102d…エキソソーム固定部、102e,102f,103f,104d,104f,105a,110a,111a,112a…バルブ、102h,102i,103g,110,111,112…流路、103、203…核酸精製部、103b…核酸回収液導入用インレット、103c…核酸固定部、104,…核酸検出部,溶液混合器、104a…検出プローブ導入用インレット、104c…基板、105…第一の流路、106…第二の流路、107…第一の廃液槽、108…第二の廃液槽、109…第三の廃液槽、110…第三の流路、111…第四の流路、112…第五の流路、
201…流体デバイス、203,203’、203’’…核酸精製部、204…基板、204f,204f’,204f’’…バルブ、206…流路
Claims (23)
- (a)第1の部分及び第2の部分からなる核酸を含有する核酸試料と、
ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されている検出プローブと、
前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、該配列中に第1の光反応性塩基誘導体を含む捕捉プローブと、を接触させる工程と、
(b)前記第2の部分を前記検出プローブにハイブリダイズさせ、前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、核酸−検出プローブ‐捕捉プローブ複合体を形成させる工程と、
(c)前記第1の部分を前記捕捉プローブにハイブリダイズさせ、第一の波長帯域の光によって、前記第1の光反応性塩基誘導体と前記核酸とを架橋させる工程と、
(d)前記核酸−検出プローブ‐捕捉プローブ複合体中の標識物質を検出する工程と、
を有することを特徴とする核酸の検出方法。 - 前記検出プローブが、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列中に第2の光反応性塩基誘導体を含み、前記工程(c)において、さらに、前記第2の部分を前記検出プローブにハイブリダイズさせ、第2の波長帯域光によって前記第2の光反応性塩基誘導体と前記核酸とを架橋させる請求項1に記載の核酸の検出方法。
- 前記捕捉プローブは基板に固定されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の核酸の検出方法。
- 前記工程(a)において、前記溶液は、異なる種類の標識物質により標識されている複数種類の検出プローブを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の核酸の検出方法。
- 前記工程(a)において、前記核酸試料は、検出対象の複数種類の核酸を含有し、前記複数種類の核酸の第1の部分がそれぞれ重複しないように、前記捕捉プローブの5’末端と3’末端のうち、どちら側が基板に固定されるかを選択される請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸の検出方法。
- 前記工程(c)は、前記基板の一部領域に選択的に前記第一の波長帯域の光を照射し、前記光反応性塩基誘導体と前記核酸とを架橋させる工程である請求項1〜5のいずれか一項に核酸の検出方法。
- 前記第1の波長帯域光と前記第2の波長帯域光とは、同じ波長帯域である請求項1〜6のいずれか一項に記載の核酸の検出方法。
- 前記第1の光反応性塩基誘導体及び/又は前記第2の光反応性塩基誘導体は可逆的光連結性塩基である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の核酸の検出方法。
- 第3の波長帯域光によって前記捕捉プローブと前記核酸との架橋を開裂させる工程(e)と、
前記捕捉プローブとの架橋を開裂させた前記核酸を回収する工程(f)と、
を有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の核酸の検出方法。 - 前記第1の光反応性塩基誘導体及び/又は前記第2の光反応性塩基誘導体は異なる波長帯域で光連結と光開裂する請求項1〜9のいずれか一項に記載の核酸の検出方法。
- 前記第1の光反応性塩基誘導体及び/又は前記第2の光反応性塩基誘導体が3−Cyanovinylcarbazole Nucleosideである請求項1〜10のいずれか一項に記載の核酸の検出方法。
- 前記核酸は、miRNAである請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸の検出方法。
- 前記捕捉プローブ及び/又は前記検出プローブはLNA(Locked Nucleic Acid)又はBNA(Bridged Nucleic Acid)を含む請求項1〜12のいずれか一項に記載の核酸の検出方法。
- 核酸試料中の第1の部分及び第2の部分からなる核酸を検出するために用いられる検出プローブであって、
相補鎖を形成する2つのステム部と、
前記2つのステム部間の領域であり、標識物質により標識されているループ部と、
前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列からなり、該第2の部分とハイブリダイズし得る配列中に光反応性塩基誘導体を含み、5’突出末端又は3’突出末端と、を備えることを特徴とする検出プローブ。 - 前記ループ部の標識は、前記第2の部分の塩基配列と対応づけられている請求項14に記載の検出プローブ。
- 前記光反応性塩基誘導体は異なる波長帯域で光連結と光開裂する請求項14又は15に記載の検出プローブ。
- 前記核酸は、miRNAである請求項14〜16のいずれか一項に記載の検出プローブ。
- 核酸と検出プローブと複合体を形成可能で、配列中に光反応性塩基誘導体を含む捕捉プローブが基板に固定されており、
前記核酸は、前記捕捉プローブとハイブリダイズし得る第1の部分と、前記検出プローブとハイブリダイズし得る第2の部分とを含み、
前記検出プローブは、ステムループ構造を形成し、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されていることを特徴とするマイクロアレイ。 - 捕捉プローブおよび検出プローブを備えた核酸検出キットであって、
前記捕捉プローブは、標的核酸を第一の部分と第二の部分に分割した場合に、前記第一の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、該配列中に光反応性塩基誘導体を含み、
前記検出プローブは、ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されていることを特徴とする核酸検出キット。 - 第1の部分及び第2の部分からなる核酸を介して、
ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されている検出プローブと、
前記第1の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、該配列中に光反応性塩基誘導体を含む捕捉プローブとが、連結されてなることを特徴とする核酸‐検出プローブ‐捕捉プローブ複合体。 - 請求項20に記載の核酸‐検出プローブ‐捕捉プローブ複合体が基板に固定化されてなることを特徴とする核酸固定化担体。
- 捕捉プローブが固定化されてなる基板と、検出プローブ導入用インレットと、を有する核酸検出部を備えた流体デバイスであって、
前記捕捉プローブは、標的核酸を第一の部分と第二の部分に分割した場合に、前記第一の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、該配列中に光反応性塩基誘導体を含み、
前記検出プローブは、ステムループ構造を形成し、前記第2の部分とハイブリダイズし得る配列を含み、5’突出末端又は3’突出末端を有し、標識物質により標識されていることを特徴とする流体デバイス。 - 前記核酸はサンプル中のエキソソームが内包する核酸である請求項22に記載の流体デバイス。
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