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JP2015067489A - 結晶の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 成長した結晶の品質を向上させること。
【解決手段】 本発明の結晶の製造方法は、炭化珪素の種結晶3の下面に炭化珪素の結晶2を成長させる結晶の製造方法であって、種結晶3の下面を、炭素および珪素を含む溶液6に接触させる工程と、溶液6に接触した種結晶3を引き上げて、種結晶3の下面と溶液6との接触部を溶液6の液面16よりも上方に位置させることによって、種結晶3の下面に溶液6の液面16よりも上方で炭化珪素の第1結晶7を成長させる第1成長工程と、成長した第1結晶7の下面を溶液6に浸けることによって、第1結晶7の下面から、溶液6の液面16よりも下方で炭化珪素の第2結晶8を成長させる第2成長工程とを備えるとともに、少なくとも第2成長工程の前に、溶液6中における炭化珪素の下方への結晶成長を促進する促進材を溶液6に添加する。これによって、成長した結晶2の品質を向上させることができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、炭化珪素の結晶の製造方法に関する。
現在、トランジスタ等のデバイスを形成する基板材料として、炭素と珪素との化合物である炭化珪素(Silicon Carbide:SiC)が注目されている。炭化珪素は、バンドギャ
ップがシリコンに比べて広く、絶縁破壊に至る電界強度が大きいこと等を理由に注目されている。炭化珪素の結晶は、炭素および珪素を含む溶液を用いて溶液成長法で製造される(例えば、特許文献1参照)。
特開2000―264790号公報
特許文献1に記載された発明では、成長した結晶を溶液から引き離す際に、溶液が結晶の下面に付着する。そして、付着した溶液が冷めて固化するときに溶液の固化に伴って生じる収縮によって、成長した結晶に対して圧縮応力が平面方向に加わり、成長した結晶の表面に亀裂または転位等が発生するおそれがあった。
本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法は、炭化珪素の種結晶の下面に炭化珪素の結晶を成長させる結晶の製造方法であって、前記種結晶の下面を、炭素および珪素を含む溶液に接触させる工程と、前記溶液に接触した前記種結晶を引き上げて、前記種結晶の下面と前記溶液との接触部を前記溶液の液面よりも上方に位置させることによって、前記種結晶の下面に前記溶液の液面よりも上方で炭化珪素の第1結晶を成長させる第1成長工程と、成長した前記第1結晶の下面を前記溶液に浸けることによって、前記第1結晶の下面から、前記溶液の液面よりも下方で炭化珪素の第2結晶を成長させる第2成長工程とを備えるとともに、少なくとも該第2成長工程の前に、前記溶液中における炭化珪素の下方への結晶成長を促進する促進材を前記溶液に添加することを特徴とする。
本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法によれば、第2結晶を溶液の液面よりも下方で成長させつつ、溶液に添加された促進材によって下方への結晶成長が促進されていることから、第2結晶の平面方向への成長速度よりも下方への成長速度の方が大きくなるため、第2結晶の横断面積を第2結晶の成長につれて小さくすることができる。その結果、成長した結晶を溶液から引き離す際に、結晶に付着する溶液の量を少なくすることができる。したがって、付着した溶液の量が少なくなるので、この溶液が固化する時に成長した結晶の下面における亀裂または転位等を発生させることを抑えることができ、成長した結晶の品質を向上させることができる。
本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法に使用する結晶製造装置の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法の一工程を説明する断面図である。 本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法の一工程を説明する断面図である。 本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法の一工程を説明する断面図である。 本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法の一工程を説明する断面図である。 本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法の一工程を説明する断面図である。 本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法の一工程を説明する断面図である。 本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法の一工程を説明する断面図である。 本発明の一実施形態の変形例に係る結晶の製造方法の一工程を説明する断面図である。 本発明の一実施形態の変形例に係る結晶の製造方法の一工程を説明する断面図である。
<結晶製造装置>
以下に、本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法に使用する結晶製造装置の一例について、図1を参照しつつ説明する。図1は、本例の結晶製造装置の概略を示している。なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
結晶製造装置1は、半導体部品等に使用される炭化珪素の結晶2を製造する装置であり、種結晶3の下面に結晶2を成長させて、結晶製造を行なう。結晶製造装置1は、図1に示すように、主に保持部材4、坩堝5、保持部材4に固定された種結晶3、および坩堝5内にある溶液6を含んでいる。結晶製造装置1は、種結晶3の下面を溶液6に接触させて、種結晶3の下面に結晶2を成長させる。
結晶2は、製造された後に加工されてウェハーになり、半導体部品製造プロセスを経て半導体部品の一部となる。結晶2は、炭化珪素からなる。結晶2は、種結晶3の下面に成長した炭化珪素の結晶の塊である。結晶2は、図1に示したように、種結晶3の下面に成長した第1結晶7と第1結晶7の下端に形成された第2結晶8とを含む。
第1結晶7は、図1に示したように、結晶2のうち種結晶3の下端から柱状に形成される部分を指す。第1結晶7は、例えば円柱状または多角柱状に形成される。本実施形態では、第1結晶7は、円柱状に形成されている。第1結晶7の高さは、例えば2cm以上10cm以下である。第1結晶7の幅は、例えば5cm以上10cm以下である。なお、第1結晶7の「幅」とは、第1結晶7が円柱状に形成される場合は第1結晶7の下面の直径を指す。また、第1結晶7が多角柱状に形成される場合は第1結晶7の下面の最大の直線長さを指す。
第2結晶8は、結晶2のうち第1結晶7の下面から横断面積が下端に向かって小さくなる形状に形成される部分を指す。第2結晶8は、下端部が先細りの形状に形成される。第2結晶8は、例えば円錐状または多角錐状に形成される。本実施形態では、第2結晶8は、六角錐状に形成されている。また、本実施形態では、第2結晶8は、縦断面視したときに、第1結晶7の下面の幅よりも高さの方が長い形状を有している。すなわち、本実施形態では、第2結晶8の縦断面の形状は、底辺が高さよりも大きい三角形状となっている。第2結晶8の高さは、例えば2cm以上9cm以下である。
なお、結晶の「横断面」とは、例えば第2結晶8の場合は、第2結晶8を横方向すなわち平面方向(XY平面方向)に切断したときの断面を指す。また、結晶の「縦断面」とは、例えば第2結晶8の場合は、第2結晶8を縦方向すなわち上下方向(Z軸方向)に切断したときの断面を指す。
種結晶3は、結晶製造装置1で成長させる結晶2の種となる。種結晶3は、例えば円状または多角形状の平面形状を有する平板状に形成されている。種結晶3は、結晶2と同じ材料からなる結晶である。すなわち、本実施形態では、炭化珪素の結晶2を製造するため、炭化珪素の結晶からなる種結晶3を用いる。また、本実施形態では、種結晶3は単結晶からなる。
種結晶3は、炭化珪素の結晶を構成する珪素原子および炭素原子のうち、主に珪素原子が表面に並んだ珪素面および主に炭素原子が表面に並んだ炭素面を有している。本実施形態では、種結晶3の上面を珪素面とし、種結晶3の下面を炭素面としている。また、種結晶3の上面と下面を繋ぐ側面には、炭素原子および珪素原子が表面に並んでいる。本実施形態では、種結晶3の炭素面を種結晶3の下面としている。
炭素面または珪素面の判別は、例えばX線光電子分光法または水酸化カリウムによるエッチング法等で行なうことができる。エッチング法を使用する場合であれば、種結晶3の表面を水酸化カリウムでエッチングした際に、例えば光学顕微鏡を用いて20倍の倍率で種結晶3を観察したときに、平坦性を保っている表面は珪素面であると判別することができる。これに対して、上記と同様にして種結晶3を観察したときに、凹凸にエッチングされている表面は炭素面であると判別することができる。
種結晶3は、保持部材4の下面に固定されている。種結晶3は、例えば炭素を含んだ接着材(図示せず)によって、保持部材4に固定されている。また、種結晶3は、保持部材4によって、上下方向に移動可能となっている。
保持部材4は、種結晶3を保持して、溶液6に対して種結晶3の搬出入を行なう。具体的に、保持部材4は、種結晶3を溶液6に接触させたり、溶液6から結晶2を遠ざけたりする機能を有する。保持部材4は、図1に示すように、移動装置9の移動機構(図示せず)に固定されている。移動装置9は、移動装置9に固定されている保持部材4を例えばモータを利用して上下方向に移動させる移動機構を有している。その結果、移動装置9によって、保持部材4は上下方向に移動する。その結果、種結晶3は保持部材4の移動に伴って上下方向に移動する。
保持部材4は、例えば柱状に形成されている。保持部材4は、例えば炭素の多結晶体または炭素を焼成した焼成体等からなる。保持部材4は、上下方向の軸の周囲に回転可能な状態で移動装置9に固定されていてもよい。
溶液6は、坩堝5の内部に溜められており、結晶2の原料を種結晶3に供給して結晶2を成長させるものである。溶液6は、結晶2と同じ材料を含む。すなわち、結晶2は炭化珪素の結晶であるから、溶液6は炭素と珪素とを含む。本実施形態では、溶液6は、炭素(溶質)を珪素の液体(溶媒)に溶かして溶液6としている。
なお、本実施形態では、溶液6には、炭化珪素の結晶成長を促進させる促進材が添加される。促進材は、例えばアルミニウム、タンタル、インジウム、鉄、スズ、チタン、ニッケルおよびゲルマニウム等で構成される群から選択される少なくとも1つを含んだものからなる。中でも、結晶2の品質を向上させる観点から、ニッケルまたはタンタルを添加す
ることが好ましい。なお、溶液6は、炭素の溶解度を向上させるために、例えばクロム等の金属材料を含んでいてもよい。
坩堝5は、溶液6を貯留するものである。また、坩堝5は、結晶2の原料を内部で融解させる器としての機能を担っている。坩堝5は、例えば黒鉛で形成されている。本実施形態では、坩堝5は、坩堝5の中で結晶2の原料のうち珪素を融解させて溶媒とし、珪素の溶媒に坩堝5の一部(炭素)が溶解することで、炭素と珪素とを含む溶液6となっている。坩堝5は、溶液6を貯留するために、例えば上面に開口を有する凹状に形成されている。
本実施形態では、炭化珪素の結晶2を成長させる方法として溶液成長法を用いている。溶液成長法では、溶液6を、種結晶3の下面において局所的に準安定状態(熱力学的に非平衡状態であるが、その状態で一時的に安定している状態)にすることによって、種結晶3の下面に結晶2として析出させている。すなわち、溶液6では、珪素(溶媒)に炭素(溶質)を溶解させており、炭素の溶解度は、溶媒の温度が高くなるほど大きくなる。ここで、加熱して高温になった溶液6が種結晶3への接触で冷えると、溶解した炭素が過飽和状態となって、溶液6が局所的に準安定状態となる。そして、溶液6が安定状態(熱力学的に平衡状態)に移行しようとして、種結晶3の下面に炭化珪素の結晶2として析出する。その結果、種結晶3の下面に結晶2が成長する。
坩堝5は、坩堝容器10の内部に配置されている。坩堝容器10は、坩堝5を保持する機能を担っている。この坩堝容器10と坩堝5との間には、保温材11が配置されている。この保温材11は、坩堝5の周囲を囲んでいる。保温材11は、坩堝5からの放熱を抑制し、坩堝5の温度を安定して保つ。坩堝5は、回転可能な状態で坩堝容器10の内部に配置されていてもよい。
坩堝5は、加熱装置12によって、熱が加えられる。本実施形態の加熱装置12は、コイル13および交流電源14を含んでおり、例えば電磁波を利用した電磁加熱方式によって坩堝5の加熱を行なう。なお、加熱装置12は、例えば、カーボン等の発熱抵抗体で生じた熱を伝熱する方式等の他の方式を採用することができる。この伝熱方式の加熱装置を採用する場合は、(坩堝5と保温材11との間に)発熱抵抗体が配置される。
コイル13は、導体によって形成され、坩堝5の周囲を囲んでいる。コイル13は、坩堝5を円筒状に囲むように、坩堝5の周囲に配されている。すなわち、コイル13を有する加熱装置12は、コイル13による円筒状の加熱領域を有している。交流電源14は、コイル13に交流電流を流すためのものであり、交流電流の周波数が高いものを用いることによって、坩堝5内の設定温度までの加熱時間を短縮することができる。
本実施形態では、交流電源14および移動装置9が制御装置15に接続されて制御されている。つまり、この結晶製造装置1は、制御装置15によって、溶液6の加熱および温度制御と、種結晶3の搬入出とが連動して制御されている。制御装置15は、中央演算処理装置およびメモリ等の記憶装置を含んでおり、例えば公知のコンピュータからなる。
<結晶の製造方法>
本発明の実施形態に係る結晶の製造方法について、図2から図6を参照しつつ説明する。結晶の製造方法は、準備工程、接触工程、第1成長工程、第2成長工程および引き離し工程を有する。なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
図2は、本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法の一工程を説明する断面図であり、
種結晶3を溶液6に接触させた様子を示している。図3は、本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法の一工程を説明する断面図であり、種結晶3の下面に第1結晶7が成長している様子を示している。図4は、本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法の一工程を説明する断面図であり、第1結晶7の下面が溶液6の液面16よりも上方に位置している様子を示している。図5は、本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法の一工程を説明する断面図であり、第1結晶7の下面を溶液6に浸けた様子を示している。図6は、本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法の一工程を説明する断面図であり、第1結晶7の下面に第2結晶8が成長している様子を示している。図7は、本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法の一工程を説明する断面図であり、結晶2を溶液6から引き離している様子を示している。図8は、本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法の一工程を説明する断面図であり、引き離し工程において結晶2を一時停止させている様子を示している。図9は、本発明の一実施形態の変形例に係る結晶の製造方法の一工程を説明する断面図であり、第2結晶8を成長させたときの様子を示している。図10は、本発明の一実施形態の変形例に係る結晶の製造方法の一工程を説明する断面図であり、第2結晶8を成長させたときの様子を示している。
(準備工程)
種結晶3を準備する。種結晶3は、例えば昇華法または溶液成長法等によって製造された炭化珪素の結晶の塊に切断等の加工を行なって平板状に形成したものを用いる。本実施形態では、種結晶3の下面を炭素面としている。
炭化珪素の結晶構造は、例えば、4つの珪素原子が三角錐の各頂点に位置しつつ、4つの珪素原子のそれぞれと結合した1つの炭素原子が三角錐の略中央に位置した三角錐状の単位格子を有している。そして、複数の単位格子が同じ向きで平面方向に並びつつ、ある単位格子の珪素原子が他の単位格子の炭素原子と結合することによって、種結晶3を形成している。ここで、単位格子において、ある1つの結合(第1結合)の距離は、他の3つの結合(複数の第2結合)の距離よりも長くなっており、第1結合は第2結合よりも切断され易くなっている。また、複数の単位格子の各第1結合の結合方向は、平面方向に直交している。それゆえ、結晶の塊を加工する際に、複数の単位格子の各第1結合を、平面方向に一様に切断することで、種結晶3の一主面を珪素面、他主面を炭素面にしやすくなる。
保持部材4を準備し、保持部材4の下面に種結晶3を固定する。具体的には、保持部材4の下面に炭素を含有する接着材を塗布する。その後、接着材を挟んで保持部材4の下面上に種結晶3を配して、種結晶3を保持部材4に固定する。その結果、保持部材4の下面に固定された種結晶3を準備することができる。なお、本実施形態では、種結晶3を保持部材4に固定した後、保持部材4の上端を移動装置9に固定する。
坩堝5と、坩堝5内に溜まった、炭素および珪素を含む溶液6とを準備する。具体的には、まず、坩堝5を準備する。次いで、坩堝5内に、珪素の原料となる珪素粒子を入れて、坩堝5を珪素の融点(1420℃)以上に加熱する。このとき、液化した珪素(溶媒)内に坩堝5を形成している炭素(溶質)が溶解する。その結果、坩堝5内に炭素および珪素を含む溶液6を準備することができる。なお、溶液6に含まれる炭素は、予め原料として炭素粒子を加えることによって、珪素を融解させると同時に炭素を溶解させてもよい。
本実施形態では、坩堝5は加熱装置12のコイル13に囲われた坩堝容器10内に設置される。そして、加熱装置12によって坩堝5を加熱することで、溶液6を形成することができる。なお、予め、坩堝5を結晶製造装置1の外で加熱して溶液6を形成した後に、坩堝5を坩堝容器10内に配置してもよい。また、溶液6を坩堝5以外の他の容器等で形成した後、坩堝容器10内に設置された坩堝5に溶液6を注ぎ込んでもよい。
(接触工程)
種結晶3の下面を溶液6に接触させる。種結晶3は、図2に示すように、保持部材4を下方に移動させることで溶液6に接触させる。なお、本実施形態では、種結晶3を下方向へ移動させることで種結晶3を溶液6に接触させているが、坩堝5を上方向へ移動させることで種結晶3を溶液6に接触させてもよい。
種結晶3は、下面の少なくとも一部が溶液6の液面16に接触していればよい。それゆえ、種結晶3の下面全体が溶液6に接触するようにしてもよいし、種結晶3の側面または上面が浸かるように溶液6に接触させてもよい。種結晶3の側面または上面が浸かるように溶液6に入れた場合には、種結晶3の下面全体を確実に溶液6に接触させることができ、生産性を向上させることができる。
(第1成長工程)
接触工程で溶液6に接触させた種結晶3の下面に、溶液6から第1結晶7(結晶2)を成長させる。第1結晶7は、種結晶3の下面に炭化珪素の結晶が層状に積み重なるように成長する。第1結晶7の成長は、上記の接触工程にて、種結晶3の下面を溶液6に接触させたときから始まる。すなわち、種結晶3の下面を溶液6に接触させることによって、種結晶3の下面と種結晶3の下面付近の溶液6との間に温度差ができる。そして、その温度差によって、炭素が過飽和状態になり、溶液6中の炭素および珪素が第1結晶7として種結晶3の下面に析出し始める。
図3に示すように、種結晶3を引き上げることによって、第1結晶7を柱状に成長させることができる。種結晶3の引き上げは、第1結晶7が溶液6の液面16よりも上方で成長するように行なう。なお、「液面16よりも上方で成長する」とは、図4に示すように、第1結晶7の下面と溶液6との間で、溶液6の一部が第1結晶7に向かって盛り上がるように第1結晶7の周囲の液面16にメニスカス17が形成された状態を維持しつつ、第1結晶7を成長させることを指す。
第1結晶7の成長は以下のように行なう。まず、種結晶3を溶液6に接触させた状態を維持しつつ引き上げる。具体的には、溶液6の表面張力によって、溶液6が種結晶3に引き寄せられて、種結晶3の下面と溶液6との接触部を溶液6の液面16よりも上方に位置させるように種結晶3を引き上げる。次いで、種結晶3の下面に成長する第1結晶7の下面が、溶液6の液面16よりも上方で溶液6と接触した状態を保つように、種結晶3を引き上げ続ける。その結果、第1結晶7の下面の表面温度が溶液6よりも低い温度で維持され、第1結晶7を連続的に成長させて長尺化させることができる。
種結晶3の引き上げは、第1結晶7が柱状に成長するように行なう。すなわち、第1結晶7の平面方向および下方への成長速度を調整しながら種結晶3を上方向に少しずつ引き上げることによって、一定の径を保った状態で第1結晶7を成長させることができる。なお、種結晶3の引き上げの速度は、例えば50μm/h以上150μm/h以下に設定することができる。
溶液6の温度は、例えば1400℃以上2000℃以下となるように設定されている。溶液6の温度が変動する場合には、溶液6の温度として、例えば一定時間において複数回測定した温度を平均した温度を用いることができる。溶液6の温度を測定する方法としては、例えば熱電対で直接的に測定する方法、または放射温度計を用いて間接的に測定する方法等を用いることができる。
(第2成長工程)
第1結晶7の下面に第2結晶8を成長させる。第2結晶8は、溶液6の液面16よりも下方で成長させる。具体的に、図5および図6に示すように、第1結晶7の下面を溶液6に浸け、第1結晶7の下面から第2結晶8を成長させる。このとき、第1結晶7の下面に成長する第2結晶8の下面が溶液6の液面16よりも下方に位置した状態を維持して成長させる。なお、少なくとも第2成長工程の前に、溶液6中における炭化珪素の下方への結晶成長を促進する促進材を溶液6に添加しておく。
ここで、成長した結晶2を溶液6から引き離す際に、溶液6が結晶2の下面に付着する。従来は付着した溶液6が冷めて固化するときに溶液6の固化に伴って生じる平面方向への収縮によって、結晶2に圧縮応力が加わり、結晶2の表面に亀裂または転位等が発生するおそれがあった。
これに対して、本実施形態では、促進材の添加によって、第2結晶8の下方への結晶の成長速度を向上させることができる。そして、第2結晶8を液面16よりも下方で成長させることによって、液面16よりも上方で成長させる場合と比較して、成長する第2結晶8の下面の縁部において温度を低下しにくくすることができる。その結果、第2結晶8の平面方向への成長速度よりも下方への成長速度の方が大きくなるため、平面方向への成長よりも下方への成長が大きくなる。すなわち、第2結晶8の横断面積は成長するにつれて小さくなり、結晶2の下端部を先細りの形状にすることができる。
よって、後述する引き離し工程で、成長した結晶2を溶液6から引き離す際に結晶2に付着した溶液6を、先細りの形状を形成する斜面を伝って横断面積の小さい結晶2(第2結晶8)の下面に集中させることができる。その結果、結晶2に付着する溶液6の量が低減し、溶液6の固化時に結晶2の下面に生じる圧縮応力が低減するため、成長した結晶2の下面に亀裂または転位等が発生することを低減することができる。したがって、成長した結晶2の品質を向上させることができる。
なお、第2結晶8は、第2結晶8の上面側にある第1結晶7、種結晶3および保持部材4等を介して放熱している。すなわち、第2結晶8の下面の熱は、溶液6より引き上げられることで雰囲気中に位置した種結晶3または第1結晶7、あるいは保持部材4を介して放出される。それゆえ、第2結晶8の下面は溶液6よりも低い温度になり、溶液6の液面16よりも下方においても、良好に第2結晶8を成長させることができる。
第1結晶7の下面は、図5に示すように、第1成長工程で成長した第1結晶7を下方に移動させることによって溶液6に浸ける。その結果、第1結晶7の下面からの第2結晶8の成長を迅速に開始させることができ、結晶2の成長時間を短縮することができる。なお、第1結晶7の下面は、溶液6を追加して溶液6の液面16を上昇させることによって、溶液6に浸けてもよい。
上述した通り、種結晶3の下面を炭素面としている場合には、第1結晶7の下面を炭素面とすることができる。すなわち、炭化珪素の結晶は、炭素原子および珪素原子の集合を1つの塊として1層ずつ成長する。それゆえ、種結晶3の下面が炭素面の場合は、種結晶3の下面には珪素原子が引き寄せられ、成長する第1結晶7の下面には炭素原子が並び、第1結晶7の下面は炭素面となる。そして、促進材は、炭素面からの炭化珪素の結晶成長を促す材料からなるものを用いる。その結果、第2結晶8を、第1結晶7の下面の縁に特定の角度で内側に傾く特定の結晶面(ファセット面)を形成しつつ成長させることができ、容易に第2結晶8を先細りの形状に形成することができる。
すなわち、炭素面からの結晶成長が促進されるため、炭素面である下面からの成長速度は、側面からの成長速度よりも大きくなる。このとき、下方への成長が平面方向への成長
に比べて大きくなり、結晶構造上、安定状態にあるファセット面が形成されやすくなる。そして、ファセット面を保ったまま第2結晶8が下方に向かって成長するため、第2結晶8を先細りの形状にすることができる。
種結晶3の下面を炭素面とした場合、促進材としては、アルミニウム、タンタル、インジウム、鉄、スズ、チタン、ニッケルまたはゲルマニウムで構成される群から選択される少なくとも1つを含むものを用いるとよい。これらの材料は、炭素面からの炭化珪素の結晶成長を促す効果を有しているからである。
第2結晶8は、図6に示すように、第1結晶7を引き上げつつ、溶液6の液面16よりも下方で成長させてもよい。その結果、成長する第2結晶8の下面と加熱された坩堝5との距離を大きくすることができ、第2結晶8の下面の温度上昇を低減することができる。したがって、第2結晶8の成長時間を短縮することができる。なお、第1結晶7の引き上げは、保持部材4を上方へ移動させて種結晶3を引き上げることによって行なう。
また、上記の製法によれば、第2結晶8の先端を尖らせることができる。すなわち、成長した第2結晶8を縦断面視したときに、第2結晶8の一対の側辺同士が交わって第2結晶8の先端を形成している。その結果、第2結晶8の先端に溶液6が集まり易くなるので、第2結晶8から溶液6が容易に除去され、結晶2に付着する溶液6の量を低減することができる。
第2結晶8は、坩堝5の上端部を加熱装置12の加熱領域外に位置させた状態で成長させてもよい。その結果、坩堝5内にある溶液6の上側の温度を溶液6の下側の温度と比較して低くすることができ、第2結晶8の下面の温度上昇を抑制することができる。したがって、第2結晶8の成長速度を向上させることができる。
本実施形態では、坩堝5を引き上げることによって、坩堝5の上端部を加熱装置12の加熱領域外に位置させることができる。一方、坩堝5の周囲にある加熱装置12の位置を坩堝5に対して下げることによって、坩堝5の上端部を加熱装置12の加熱領域外に位置させてもよい。
(引き離し工程)
第2結晶8を成長させた後、図7に示すように、成長した第2結晶8(結晶2)を溶液6から引き離し、結晶成長を終了する。このとき、第2成長工程で第2結晶8を先細りの形状に形成していることから、成長した結晶2の下面に対する溶液6の付着量を少なくすることができる。これにより、結晶2に亀裂が生じることを抑えることができる。
第2結晶8を溶液6から引き離す際に、図8に示すように、第2結晶8の引き上げを、第2結晶8の先端が溶液6の液面16よりも上方で溶液6と接触した状態で一時停止させてもよい。その結果、第2結晶8に付着した溶液6を、坩堝5に溜まった溶液6の表面張力によって坩堝5内に引き戻すことができ、第2結晶8に付着する溶液6の量を低減することできる。
(結晶の製造方法の変形例1)
第2成長工程において、第1結晶7の下面を溶液6に浸けたまま、溶液6の下面よりも下方で第2結晶8を成長させてもよい。すなわち、第1結晶7の下面を浸けた後、第1結晶7の移動を止めた状態で第2結晶8を成長させてもよい。その結果、第1結晶7を引き上げつつ第2結晶8を成長させる場合と比較して、第1結晶7の引き上げ速度と第2結晶8の成長速度とを調整する必要がなく、結晶2の製造効率を向上させることができる。
なお、上記の製法によれば、第2結晶8は成長するにつれて加熱された坩堝5に近づき、徐々に第2結晶8は成長しなくなる。すなわち、図9に示すように、成長した第2結晶8を縦断面視したときに、第2結晶8の下部に向かって幅が狭くなった台形状に形成される。
(結晶の製造方法の変形例2)
第1成長工程において、第1結晶7の引き上げ速度を第1結晶7の結晶成長速度よりも小さくして、第1結晶7の下面が溶液6の液面16よりも下方に達するまで第1結晶7を成長させ続けることによって、第2成長工程における第1結晶7の下面の溶液6への浸漬を行なってもよい。
また、第1成長工程において、第1結晶7の引き上げを停止して、第1結晶7の下面が溶液6の液面16よりも下方に達するまで第1結晶7を成長させることによって、第2成長工程における第1結晶7の下面の溶液6への浸漬を行なってもよい。
上記の製法によれば、図10に示すように、第1結晶7の下面が液面16よりも下方に達するまでメニスカス17が形成されていることになる。その結果、第1結晶7の下面の縁部が冷やされ、第1結晶7の下端部は幅広になるように成長する。したがって、第1結晶7の下面に成長する第2結晶8の体積を大きくすることができ、結晶2への後のウェハー加工においてウェハーの生産量を増やすことができる。
(結晶の製造方法の変形例3)
第1成長工程において、第1結晶7の結晶成長速度を第1結晶7の引き上げ速度よりも大きくして、第1結晶7の下面が溶液6の液面16よりも下方に達するまで第1結晶7を成長させることによって、第2成長工程における第1結晶7の下面の溶液6への浸漬を行なってもよい。その結果、結晶2への後のウェハー加工においてウェハーの生産量を増やすことができる。なお、第1結晶7の結晶成長速度の向上は、例えば第1結晶7の引き上げ速度を第1成長工程の条件のまま、促進材を添加することによって行なう。
(結晶の製造方法の変形例4)
促進材は、溶液6の準備工程において添加されていてもよい。また、促進材は、第1成長工程の前に含まれていてもよい。上記の製造方法によれば、第1結晶7の下方への成長を促すことができ、結晶2の成長時間を短縮することができる。
なお、この場合、第1結晶7を溶液6の液面16よりも上方で成長させて、成長する第1結晶7の下面の縁部の温度を低下させることができる。その結果、第1結晶7の平面方向への成長速度を向上させて、第1結晶7の横断面積が成長するにつれて小さくなることを低減することができ、第1結晶7を柱状に形成することが可能となる。なお、促進材を準備工程時または第1成長工程時に溶液6に添加した場合は、促進材を第2成長工程の前にさらに添加してもよい。
(結晶の製造方法の変形例6)
炭化珪素の結晶成長を促進させるために、溶液6に酸素を溶かしてもよい。上記の製造方法によれば、溶液6中に投入された酸素が溶液6を含んでいる珪素と化学反応を起こして酸化珪素を形成する。その結果、溶液6中の珪素を消費することができ、溶液6中の炭素が過飽和となり、第2結晶8の成長を促進させることができる。酸素の投入は、例えばシリカなどの酸化物を溶液6中に投入することによって行なう。
1 結晶製造装置
2 結晶
3 種結晶
4 保持部材
5 坩堝
6 溶液
7 第1結晶
8 第2結晶
9 移動装置
10 坩堝容器
11 保温材
12 加熱装置
13 コイル
14 交流電源
15 制御装置
16 液面
17 メニスカス

Claims (5)

  1. 炭化珪素の種結晶の下面に炭化珪素の結晶を成長させる結晶の製造方法であって、
    前記種結晶の下面を、炭素および珪素を含む溶液に接触させる工程と、
    前記溶液に接触した前記種結晶を引き上げて、前記種結晶の下面と前記溶液との接触部を前記溶液の液面よりも上方に位置させることによって、前記種結晶の下面に前記溶液の液面よりも上方で炭化珪素の第1結晶を成長させる第1成長工程と、
    成長した前記第1結晶の下面を前記溶液に浸けることによって、前記第1結晶の下面から、前記溶液の液面よりも下方で炭化珪素の第2結晶を成長させる第2成長工程とを備えるとともに、
    少なくとも該第2成長工程の前に、前記溶液中における炭化珪素の下方への結晶成長を促進する促進材を前記溶液に添加することを特徴とする結晶の製造方法。
  2. 請求項1に記載の結晶の製造方法において、
    前記第2成長工程において、前記第1結晶を引き上げつつ前記溶液の液面よりも下方で前記第2結晶を成長させる、結晶の製造方法。
  3. 請求項1に記載の結晶の製造方法において、
    前記第2成長工程において、前記第1結晶の下面を前記溶液に浸けたまま前記溶液の液面よりも下方で前記第2結晶を成長させる、結晶の製造方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれかに記載の結晶の製造方法において、
    前記種結晶の下面を、炭化珪素の結晶を構成する珪素原子および炭素原子のうち主に炭素原子が表面に並んだ炭素面にすることによって、前記第1結晶の下面を炭素面とし、
    前記促進材として、前記第1結晶の炭素面からの炭化珪素の結晶成長を促す材料からなるものを用いる、結晶の製造方法。
  5. 請求項4に記載の結晶の製造方法において、
    前記促進材として、アルミニウム、タンタル、インジウム、鉄、スズ、チタン、ニッケルおよびゲルマニウムで構成される群から選択される少なくとも1つを含むものを用いる、結晶の製造方法。
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