以下、一実施形態を図1(a)〜図21に基づいて説明する。図1(a)には、画像形成装置の一例としてカラープリンタ100が概略的に示されている。本実施形態のカラープリンタ100は、いわゆるタンデム型のプリンタである。カラープリンタ100は、転写ベルト11、光走査装置13、カセット15、2次転写ローラ17、定着装置19、作像ユニットUY、UM、UC、UB等を有している。後述するように、光走査装置13は、走査光LY〜LBにより作像ユニットUY〜UBが有する感光体ドラムを走査露光する。以下、走査光LY〜LBの主走査方向をX軸方向、鉛直方向をZ軸方向、X軸及びZ軸に直交する方向をY軸方向として説明を行う。
中間転写体である転写ベルト11は、複数(本実施形態では、例えば3本)のローラに掛け回されている。転写ベルト11は、例えば3本のローラのうちの1本である駆動ローラに駆動され、紙面反時計回りに回転するようになっている。ここで、転写ベルト11の紙面下側の部分は、所定の2次元平面(例えば水平面)と平行となるように平面的に張られている。
上述した転写ベルト11の平面的に張られた部分が通過する領域には、作像ユニットUY、UM、UC、UBが配設されている。ここで、符号中のY、M、C、Bは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色を表す。作像ユニットUYは、イエロー画像を作像するユニット、作像ユニットUMは、マゼンタ画像を作像するユニット、作像ユニットUCは、シアン画像を作像するユニット、作像ユニットUBは、ブラック画像を作像するユニットである。
作像ユニットUY〜UBの下方(−Z側)には、画像書き込み装置である光走査装置13が配備され、更にその下方には、カセット15が配置されている。
上記作像ユニットUY〜UBの構造は、実質的に同一であるので、作像ユニットUYを例に取り、図1(b)を参照して簡単に説明する。
図1(b)に示されるように、作像ユニットUYは、光導電性の感光体として感光体ドラム20Yを有し、感光体ドラム20Yの周囲には、接触式の帯電ローラとしての帯電器30Y、走査光LYによる画像書き込み部としての現像ユニット40Y、転写ローラ50Y、クリーニングユニット60Yが配置されている。転写ローラ50Yは、転写ベルト11を介して感光体ドラム20Yの反対側に配置され、転写ベルト11の裏面に接触している。なお、図1(b)において、破線で示される長方形は、作像ユニットUYのユニットを一まとめに示すものであり、例えばケーシング等の実体を示すものでは必ずしも無い。
図1(a)に示される他の作像ユニットUM〜UBは、作像ユニットUYと同様に構成されている。以下、それぞれ不図示であるが、作像ユニットUM〜UBが有する要素について、感光体ドラム20M〜20B、帯電器30M〜30B、現像ユニット40M〜40B、転写ローラ50M〜50B、クリーニングユニット60M〜60Bとして説明する。また、作像ユニットUM〜UBに対する走査光を走査光LM〜LB(図1(a)参照)として説明する。
次に、カラープリンタ100によるカラー画像プリントのプロセスについて簡単に説明する。
カラー画像形成のプロセスが開始すると、感光体ドラム20Y〜20B、転写ベルト11(それぞれ図1(b)参照)が回転を開始する。各感光体ドラム20Y〜20Bの回転方向は、紙面時計回り、転写ベルト11の回転方向は、紙面反時計回り(図1(b)の矢印参照)である。
感光体ドラム20Y〜20Bの感光面は、帯電器30Y〜30Bにより、それぞれ均一帯電される。光走査装置13(図1(a)参照)は、それぞれの感光体ドラム20Y〜20Bに対して、走査光LY〜LBによる光走査で画像書き込みを行なう。なお、このような画像書き込みを行なう光走査装置13は、従来から種々のものが良く知られており、光走査装置13としては、これら周知のものが適宜利用される。
感光体ドラム20Yに対しては、イエロー画像に応じて強度変調されたレーザビームを走査光LYとして光走査が行われる。これにより、感光体ドラム20Yにイエロー画像が書き込まれ、イエロー画像に対応する静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、いわゆるネガ潜像であり、現像ユニット40Yによるイエロートナーを用いた反転現像によって、イエロートナー画像として可視化される。可視化されたイエロートナー画像は、転写ローラ50Yにより、転写ベルト11の表面側に静電的に1次転写される。
感光体ドラム20Mに対しては、マゼンタ画像に応じて強度変調されたレーザビームを走査光LMとして光走査が行われる。これにより、感光体ドラム20Mに、マゼンタ画像が書き込まれ、マゼンタ画像に対応する静電潜像(ネガ潜像)が形成される。形成された静電潜像は、現像ユニット40Mによるマゼンタトナーを用いた反転現像によって、マゼンタトナー画像として可視化される。
感光体ドラム20Cに対しては、シアン画像に応じて強度変調されたレーザビームを走査光LCとして光走査が行われる。これにより、感光体ドラム20Cに、シアン画像が書き込まれ、シアン画像に対応する静電潜像(ネガ潜像)が形成される。形成された静電潜像は、現像ユニット40Cによるシアントナーを用いた反転現像によって、シアントナー画像として可視化される。
感光体ドラム20Bに対しては、ブラック画像に応じて強度変調されたレーザビームを走査光LBとして光走査が行われる。これにより、感光体ドラム20Bに、ブラック画像が書き込まれ、ブラック画像に対応する静電潜像(ネガ潜像)が形成される。形成された静電潜像は、現像ユニット40Bによるブラックトナーを用いた反転現像によって、ブラックトナー画像として可視化される。
マゼンタトナー画像は、転写ローラ50Mにより転写ベルト11側へ静電的に1次転写されるが、このとき、転写ベルト11上に先に転写されているイエロートナー画像に重ね合わせられる。同様に、シアントナー画像は、転写ローラ50Cにより、転写ベルト11上に先に重ね合わせて転写されたイエロートナー画像、マゼンタトナー画像に重ね合わせられて1次転写される。ブラックトナー画像は、転写ローラ50Bにより、転写ベルト11上のイエロー、マゼンタ、シアンの各色トナー画像に重ね合わせて1次転写される。
このようにして、転写ベルト11上で、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー画像が重ね合わせられてカラートナー画像が形成される。各感光体ドラム20Y〜20Bは、トナー画像転写後にそれぞれ、クリーニングユニット60Y〜60Bによりクリーニングされ、残留トナーや紙粉等が除去される。
転写紙Sは、カセット15内に積載されて収容されている。転写紙Sは、それぞれ図示しない周知の給紙機構により給紙され、タイミングローラ(レジストローラとも言う)により尖端部を保持された状態で待機し、転写ベルト11上のカラートナー画像の移動にタイミングを合わせて2次転写部へ送り込まれる。ここで、2次転写部とは、転写ベルト11と、これに接して連れ回りする2次転写ローラ17との当接部を意味する。転写ベルト11上のカラートナー画像が2次転写部に到達するのにタイミングを合わせて、転写紙Sがタイミングローラにより2次転写部に送り込まれる。
かくして、カラートナー画像と転写紙Sが重ね合わせられ、カラートナー画像は転写紙S上に静電転写(2次転写)される。カラートナー画像が2次転写された転写紙Sは、定着装置19を通過する。この際に、定着装置19が転写紙Sにカラートナー画像を定着させる。その後、転写紙Sは、カラープリンタ100の上部のトレイTR上に排出される。
以上がカラープリンタ100によるカラー画像プリントのプロセスの概略説明である。すなわち、図1(a)に示されるカラープリンタ100は、電子写真プロセスにより1種以上のトナー画像(イエロー〜ブラックトナー画像)を形成し、これらトナー画像を転写紙S上に転写し、転写紙Sに担持されたトナー画像(カラートナー画像)を定着装置19により転写紙Sに定着させる画像形成装置である。
次に、図1(a)に示されるカラープリンタ100が有する定着装置19の構成について、図1(c)を参照して説明する。定着装置19は、いわゆるベルト定着方式の定着装置であり、定着を行なう部分は、定着部材としての定着ベルト61とともに、加熱ローラ62、加圧ローラ63、定着用ローラ64、テンションローラ65、剥離爪66、表面状態変更ローラ67等を有している。
定着ベルト61は、ニッケル、ポリイミド等により形成された基材(基層)と、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル樹脂)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等により形成された離型層とを有し、更には、これら基材と離型層との間にシリコンゴム等により形成された弾性層を有している。従って、定着ベルト61の表面は、離型層を成すPFAやPTFE等の樹脂により形成されており、その表面が、後述する傷の検出の対象面となる。
定着ベルト61は、無端ベルトであり、加熱ローラ62と定着用ローラ64とに巻き掛けられ、テンションローラ65により所定の張力(必要な張り)を与えられている。加熱ローラ62は、例えばアルミ(あるいは鉄など)により形成された中空ローラであり、ハロゲンヒータなどの熱源Hを内包している。加熱ローラ62は、熱源Hにより定着ベルト61を加熱する。なお、不図示であるが、定着ベルト61の表面温度を検出するための温度センサ(サーモパイル等)が、定着ベルト61の表面に非接触で設けられている。なお、非接触の温度センサに代えて、接触型の温度センサ(サーミスタ)を用いることも可能である。
定着用ローラ64は、金属の芯金の上にシリコンゴムなどの弾性層が設けられたものである。定着用ローラ64は、定着ベルト61を反時計回りに回転駆動する。加圧ローラ63は、アルミ又は鉄等の芯金の上にシリコンゴムなどの弾性層を設け、表層はPFA、あるいはPTFE等の離型層により構成されている。加圧ローラ63は、定着用ローラ64と対向する位置で、定着ベルト61に圧接する。この圧接は、定着用ローラ64を変形させ、ニップ部を形成する。このニップ部が、転写紙S上に静電的に2次転写されたカラートナー画像の定着部となる。
テンションローラ65は、金属の芯金の上にシリコンゴムなどの弾性層が設けられたものである。剥離爪66は、定着用ローラ64の軸方向(紙面に垂直な方向)に複数個配設されており、その尖端部が、定着ベルト61の表面に当接する。
表面状態変更ローラ67は、金属の芯金に所定の粗さを有する表層が設けられたものである。表層は、例えば数10μmオーダーの凹凸形状を有しており、表面状態変更ローラ67を定着ベルト61の表面に接触させて回転させると、定着ベルト61と表面状態変更ローラ67との摺擦により、定着ベルト61の表面が削られ、新たな面が露呈する。表面状態変更ローラ67は、後述するように、定着ベルト61に対して接離可能となっている。
定着装置19では、転写紙Sに対してカラートナー画像の定着が行なわれるときは、定着ベルト61が熱源Hにより加熱されつつ紙面反時計回りに回転するとともに、加圧ローラ63が紙面時計回りに回転する。そして、定着ベルト61の表面温度が所定の定着可能温度になると、カラートナー画像が転写された転写紙Sが、図1(c)の矢印方向へ搬送されて定着部(ニップ部)に進入する。カラートナー画像は、転写部において定着ベルト61側から熱を受けるとともに、加圧ローラ63により定着ベルト61に対して押圧されて圧力を受け、これにより、転写紙Sに定着される。
また、不図示であるが、カラープリンタ100は、転写ベルト11(図1(a)参照)をクリーニングするクリーニング装置を有している。このクリーニング装置は、図1(a)において作像ユニットUYの紙面左方において、転写ベルト11がローラに巻き掛けられた部分に対向して、転写ベルト11に当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードとを有し、転写ベルト11上の残留トナー及び紙粉等の異物を掻き取り、除去して、転写ベルト11をクリーニングするようになっている。クリーニング装置は、転写ベルト11から除去した残留トナーを搬出、廃棄するための排出手段も有している。
ここで、転写紙Sの切断部(エッジ部)は、鋭く、且つ粒状の添加剤(例えば炭酸カルシウムなど)が表出していることがある。このため、定着装置19において、定着ベルト61の表面は、当初は無傷であるが、定着動作が繰り返されるに従い、転写紙Sとの摺動に起因して表面に筋状の傷などが発生する。また、定着装置19において、定着ベルト61の表面には、定着動作が繰り返されるに従い、いわゆるオフセット(トナーの定着ベルト61への固着)が発生する。また、上記筋状の傷は、剥離爪66等との接触によっても発生する。また、上記筋状の傷は、シート状記録媒体がオーバヘッドプロジェクタ用のプラスチックシートの場合には、容易に生じ得る。以下、定着ベルト61の表面におけるオフセットの有無及び程度、並びに傷の状態及び位置を、まとめて定着ベルト61の表面情報と称する。
定着装置19は、定着ベルト61の表面情報を検出するための表面情報検出装置を有する。表面情報検出装置は、定着ベルト61の表面上に、該定着ベルト61にレーザ光を照射し、該レーザ光の反射光を受光する反射型光センサ200と、該反射型光センサ200の検知結果に基づいて定着ベルト61の表面情報を検出する表面情報検出部300とを有する。
反射型光センサ200は、定着ベルト61の加熱ローラ62に巻き掛けられた部分に対向して配置されている。反射型光センサ200は、定着ベルト61の表面に向かって、定着ベルト61の幅方向と平行な方向に複数のレーザ光を照射する照射部と、該レーザ光の定着ベルト61からの反射光を受光するセンサ部とを有している(照射部及びセンサ部は、図1(c)では不図示)。反射型光センサ200の構成及び動作は、後に詳述する。なお、上記定着ベルト61の幅方向は、走査光LY〜LB(図1(a)参照)による画像書き込みの際の主走査方向に平行であるので、定着ベルト61の幅方向を適宜主走査方向とも言う。
表面情報検出部300は、カラープリンタ100(図1(a)参照)内に配置されている。表面情報検出部300は、反射型光センサ200に接続され、反射型光センサ200からの検知信号を受けて、定着ベルト61の表面状態を表面情報として検出する。また、表面情報検出部300は、反射型光センサ200の動作を制御する機能も有する。
図2には、反射型光センサ200を含み、定着装置19が模式的に示されている。本実施形態のカラープリンタ100(図1(a)参照)では、例えばA4サイズの転写紙を縦長、又は横長にした状態で定着装置19に搬送することができるようになっている。図2において、符号A4Tは、A4サイズの転写紙Sを縦長にして搬送するときの紙幅を示し、符号A4Lは、A4サイズの転写紙Sを横長にして搬送するときの紙幅を示している。
定着ベルト61の幅方向(X軸方向)寸法は、紙幅A4Lに略等しく設定されている。従って、A4サイズの転写紙Sを横長にして搬送するときには、定着ベルト61長手方向の端部に生じる筋状の傷は、実際上殆ど問題とならない。これに対し、紙幅A4Tは、定着ベルト61の幅方向寸法よりも短いので、A4サイズの転写紙Sを縦長にして搬送するときには、上述した筋状の傷などの問題が生じ得る。
また、複数枚のA4サイズの転写紙Sを縦長にして搬送するとき、定着ベルト61の幅方向に平行な方向(紙面上下方向)に関して、該複数枚の転写紙Sの位置を完全に一致させることは実質的にできない。したがって、定着ベルト61上における転写紙Sの両側端部の位置は、該定着ベルト61の幅方向にわずかながら変動する。また、定着ベルト61自体も、いわゆるベルト寄りが発生することがあり、この場合にも定着ベルト61上における転写紙Sの両側端部の位置がわずかながら変動する。さらに、転写紙Sと定着ベルト61の接触する位置の変動幅が狭いと、筋状の傷も狭い範囲に集中して発生するため、複数の転写紙Sを搬送する際、転写紙Sごとに定着ベルト61に対する位置を意図的にずらす場合もある。
このように、定着ベルト61と縦長の転写紙Sの幅方向両端部とは、定着ベルト61の幅方向に平行な方向に関して所定の幅を持った範囲W1、W2(以下、接触範囲W1、W2と称する)内で接触する。本実施形態における上記接触範囲W1、W2の寸法は、例えば10mm程度である。このような接触範囲W1、W2を考慮すると、A4サイズの転写紙Sを縦長にして搬送する場合、定着ベルト61上の表面状態(筋状の傷の有無、及び位置など)を検出するのであれば、検知領域Aは、上記接触範囲W1、W2の幅方向寸法よりも大きく設定する必要がある。
そこで、定着装置19において、反射型光センサ200による定着ベルト61の表面情報の検知領域Aは、接触範囲W1、W2のうち、接触範囲W2よりも広い範囲に設定されている。本実施形態において、傷の幅は、数100μm〜数mm程度で、傷の位置の変動範囲は10mm程度であることから、検知領域Aの大きさとしては、15mm程度が好適である。なお、本実施形態において、検知領域A(すなわち反射型光センサ200)は、接触範囲W1に対応する位置には、設けられていない。これは、定着ベルト61に発生する筋状の傷は、接触範囲W1と、接触範囲W2とで、略同様に発生するであろうと考えられるためであり、一方の接触範囲でのみ定着ベルト61の表面情報を求めれば実用上は十分であると考えられるからである。勿論、接触範囲W1、W2のそれぞれに対して検知領域Aを設定しても良く、さらには、検知領域Aの大きさを定着ベルト61の幅全体に亘るように設定しても良い。
反射型光センサ200は、定着ベルト61の幅方向に平行な方向(X軸方向)に所定間隔で複数の検出光を照射する。これら複数の検出光が照射される領域が検知領域Aを形成する。反射型光センサ200は、長い検知領域Aを形成できるため、反射型光センサ200と転写紙Sの幅方向端部との相対的な位置関係(反射型光センサ200の設置位置)は、比較的ラフでよい。
表面情報検出部300は、反射型光センサ200からの検知信号を受けて、転写紙Sの幅方向端部により形成される筋状の傷の位置、及び傷レベルを定着ベルト61の表面情報として定量化する(定量化の手順については後述する)。ここで傷レベルとは、傷の程度、すなわち傷の深さ(傷部と傷なし部の表面粗さの差)、及び傷の幅(大きさ)を言う。
次に、反射型光センサ(反射型光学検知装置)200の構成の一例を、図3(a)〜図3(d)を用いて説明する。
図3(a)〜図3(d)から分かるように、反射型光センサ200は、基板201、側板202、203、側板205、206(それぞれ図3(a)では不図示。図3(b)参照)、レンズ素子204を有している。
図3(c)に示されるように、基板201上には、複数のLED(Light Emitting Diode)211、及び複数のフォトダイオード212(以下「PD212」と表記する)がX軸方向に所定間隔で配列されている。LED211の配列個数は、設計条件により定められ、一般には数十個〜数百個に設定できる。PD212の個数は、LED211の個数と同数であり、配列ピッチもLED212の配列ピッチと同一である。
以下、説明の便宜上、LED211の個々に、図3(c)の紙面左側から1つずつ順次に番号を振り、紙面左側から数えてn番目のものをLED211nと表す。LED211の総数をNとすると、全LED211は、LED2111、2112、・・・、211n、・・・211Nの順次の配列である。同様に、PD212についても、図3(c)の紙面左側から1つずつ順次に番号を振り、紙面左側から数えてn番目のものをPD212nと表す。PD212の総数はNであって、全PD212は、2121、2122、・・・、212n、・・・212Nの順次の配列である。
LED211n(n=1〜N)と、PD212n(n=1〜N)とは1対1に対応する。図3(c)に示されるように、互いに対応するLED211nとPD212nとは、互いにX軸方向の同一位置に配置されている。
レンズ素子204は、図3(a)に示される照射用レンズ204n(n=1〜N)をアレイ配列した照射用レンズアレイの領域と、図3図(d)に示される受光用レンズ204Cによる領域とを含む2つの領域部分から構成されている。
照射用レンズ204nの個数は、LED211と同数個(N個)であり、LED211の+Y側に個々のLED211nと照射用レンズ204nとが1対1に対応するようにして、X軸方向に所定間隔で配列されている。受光用レンズ204Cは、図3(d)に示されるように、Z軸方向にのみ正のパワーを有する単一のシリンドリカルレンズであり、PD2121〜212Nの+Y側に配置される。照射用レンズ204n(n=1〜N)が形成された照射用レンズアレイの部分と、受光用レンズ204Cが形成された部分とは、例えば合成樹脂材料を用いた樹脂成形により一体化できる。
また、反射型光センサ200は、図3(a)及び図3(d)に示されるように、LED211nと照射用レンズ204nとの組の互いに隣接する組間でのフレア光を防止するための遮光壁231n(n=1〜N−1)を有している。また、反射型光センサ200は、図3(b)に示されるように、LED211nの配列と、PD212nの配列との間でのフレア光を防止するための遮光壁232を有している。
また、側板202、203(図3(a)参照)、205、206(図3(b)参照)は、一体化して反射型光センサ200のケースを形成している。ケース(側板202、203、205、206)、遮光壁231n(図3(a)参照)、232(図3(b)参照)、及びレンズ素子204は、例えば合成樹脂材料を用いた樹脂成形により一体化できる。
反射型光センサ200では、図3(a)に示されるように、LED211nを点灯させると、放射された発散性の光束は、LED211nに対応する照射用レンズ204nにより集光され、定着ベルト61の表面を照射する。定着ベルト61の表面におけるLED211nからの光束により照射された部分(光スポットと称する)からの反射光は、図3(b)に示されるように、受光用レンズ204CによりZ軸方向にのみ集光されて、PD212nに入射する。
図1(c)に戻り、定着装置19は、表面状態変更ローラ67の動作を制御する表面状態変更制御装置400を有している。表面状態変更制御装置400は、カラープリンタ100(図1(a)参照)内に配置されている。表面状態変更制御装置400は、表面状態変更ローラ67に接続され、表面情報検出部300の検知結果(反射型光センサ200からの検知信号)を受けて、表面状態変更ローラ67の動作を制御する。この制御については後述する。
表面状態変更ローラ67は、図1(c)では不図示の駆動手段により定着ベルト61への接離と摺擦駆動を行なうようになっている。不図示の駆動手段と表面状態変更ローラ67とは、表面状態変更装置を構成し、上記駆動手段は、表面状態変更制御装置400により制御されるようになっている。
ここで、表面状態変更ローラ67は、定着ベルト61の筋状の傷が発生する部位の表面状態を変更するのであるから、この目的を達成できるように配置される必要があることは言うまでもない。本実施形態では、図4に示されるように、一対の表面状態変更ローラ67A、67Bが、接触範囲W1、W2に対応する位置に配置されている。表面状態変更ローラ67A、67Bは、共に回動軸68上に設けられ、一方が接触範囲W1を含む領域に対して接離し、他方が接触範囲W2を含む領域に対して接離するようになっている。表面状態変更ローラ67A、67Bは、何れも、回動軸68方向の長さが、検知領域Aよりやや狭く、且つ接触範囲W1、W2よりもやや大きく設定されている。また、本実施形態では、反射型光センサ200(図4では不図示。図2参照)が、転写紙の幅方向寸法に応じて、定着ベルト61の幅方向に移動可能となっており(これにより検知領域Aの位置も変化する)、表面状態変更ローラ67A、67Bも、回動軸68に沿って移動可能となっている。
表面情報検出部300、及び表面状態変更制御装置400において、それぞれ反射型光センサ200及び表面状態変更ローラ67の制御を行なう部分は、マイクロコンピュータ、あるいはCPUとして構成することができる。上記制御を行なう部分は、同一のコンピュータに制御プログラムとして内蔵されていることができる。
次に、反射型光センサ200を用いた表面情報検出部300による定着ベルト61の表面状態の検出動作を、図5に示されるフロー図を用いて説明する。
本実施形態において、表面情報検出部300は、図3(a)に示されるLED2111からLED211Nまで、順に1個ずつ点灯と消灯を繰り返す、いわゆる、順次点灯を行う。このため、表面情報検出部300は、ステップS01でn=1とした後、ステップS03に進み、LED211n(ここではLED2111)を点灯させ、ステップS05に進む。
ステップS05において、表面情報検出部300は、n番目のLED211nの点灯に同期して、定着ベルト61からの反射光を受光するPD212を選択する。ここで、定着ベルト61からの反射は、鏡面反射ではなく、X軸方向にも広がるので、LED211nが点灯したときの反射光は、これに対応するPD212nと、PD212nに隣接する他のPD212により受光される。本実施形態では、説明の簡略化のため、受光用のPD212の数は、奇数であるとし、mを整数として(2m+1)個であるとする。すなわち、LED211nが点灯したときの反射光は、これに対応するPD212nと、その両側に配列された2m+1個のPDとで受光される。例えば、m=2であるとすれば、反射光を受光するPDは、PD212n−2、PD212n−1、PD212n(これがLED211nに対応する)、PD212n+1、PD212n+2の5個である。ただし、n=1の場合であって、LED2111が点灯するときは、m=2であっても受光するPDは5個ではなく、PD2121、PD2122、PD2123の3個である。また、n=Nの場合も、受光するPDは5個ではなく、PD212N−2、PD212N−1、PD212Nの3個である。
表面情報検出部300は、定着ベルト61からの反射光を受光するのに十分な所定の時間の経過後、ステップS07に進み、LED211n(ここではLED2111)を消灯させる。LED211の点灯・消灯が行なわれると、反射光を受光した複数個のPD212は、受光量を光電変換する。光電変換された信号は、増幅されて検知信号となる。PD212の各検知信号は、検知のつど、表面情報検出部300に送られ、表面情報検出部300は、ステップS09でこれを受信してステップS11に進む。
ステップS11において、表面情報検出部300は、複数のLED211の順次点灯が終了したか否かの判定を行う。すなわち、n<Nであれば、全てのPD2121〜PD212nからの検知信号を受信していないと判定し、ステップS13に進み、nをインクリメントした後、ステップS03に戻る。以下、全てのLEDについて、順次点灯が繰り返されて、n=Nとなり、LED211Nが点灯・消灯すると、これを1周期として順次点灯は終了する。n=Nであれば、ステップS11において、表面情報検出部300は、ステップS15に進む。
ここで、本実施形態では、各PD2121〜212Nの検知精度を上げるために、上述したLED211の順次点灯(ステップS1〜S13)を複数周期に亘って行い、各周期での検知結果の平均値処理などを行うこともできる。ステップS15において、表面情報検出部300は、上記LED2111〜211Nの順次点灯を繰り返し行うか否かの判定を行い、行う場合には、ステップS01に戻り、以下の処理を繰り返し、行わない場合には、処理を終了する。なお、点灯・消灯するLED211は、全てのN個を用いる必要はなく、そのうち任意のN’(≦N)個を用いても良い。例えば順次点灯するLEDを、LED2111〜211NのN個とするのではなく、両端の2個ずつを外し、LED2113からLED211N−2までの計N−4個のLEDについて順次点灯を行なうようにしても良い。
また、PD212からの検知信号が表面情報検出部300に送られると、表面情報検出部300は、該検知信号に基づいて、図6に示す如くして定着ベルト61の表面情報を求める。
表面情報検出部300は、各PD(2121〜212N)の検知信号(検知信号数は原則として、LEDが1個点灯・消灯する度に(2m+1)個)を受信すると、ステップS21において、上記検知信号を受信するごとに(2m+1)個の検知信号の和を演算算出し、これを検出結果Rn(n=1〜N)とする。このようにして、表面情報検出部300は、定着ベルト61の幅方向に所定間隔で配列された複数のLED211に対応する、定着ベルト61上の複数点(光スポット)についての検出結果Rnを得ることができる(ステップS23に進む)。
ステップS23以降において、表面情報検出部300は、ステップS21で求めた検出結果Rnに基づいて、定着ベルト61の表面情報を検出する。以下では、検出結果Rnを反射光強度Rnとも言う。
ここで、一般に、定着ベルト61の表面に傷がある場合には、傷がない場合に比べ、定着ベルト61からの反射光は、正反射成分が減少し、且つ拡散反射成分が増加する。上述した例で言えば、LED211nを点灯したときに、反射位置(光スポット)に傷があれば、この部分では正反射光成分が減少するので、PD212nが受光する光量は、傷がない場合に比べ減少し、その周辺のPD212n−m〜PD212n−1、PD212n+1〜PD212n+mでは、傷がない場合に比べ受光量が増大する。ただし、総合的には、傷がある部位に対応する検出結果Rnの値は、傷が無い部位のものに比して減少する。このような検知信号の特性に基づき、表面情報検出部300は、表面情報として、傷の有無と、傷レベルと、傷の位置と、を表面情報として定量化する。
このために、表面情報検出部300は、ステップS23において、上記の如くして得られた検出結果Rnを微分し、ステップS25に進む。微分操作には、種々のやり方があるが、ここでは最も簡単な操作として、隣接する検出結果Rn、Rn+1の差分(Rn+1)−(Rn)を、複数のPD212の配列ピッチPで割算するものとして説明する。すなわち、隣接する検知結果の傾きを演算する操作である。
ステップS25において、表面情報検出部300は、定着ベルト表面上の傷の有無について判定する。以下、図7(a)を用いて傷の有無の判定手法について説明する。図7(a)には、LED211の1周期の順次点灯により得られた検出結果Rn(縦軸の「反射光強度」)の一例が示されている。なお、図7(a)では、図示の簡単化のため、データ点が実際よりも少なく示されている。そして、検出結果Rn(反射光強度)は、検知領域A(図2参照)において、定着ベルト61の幅方向(X軸方向)の互いに離間する複数位置に対応して得られるので、図7(a)で隣接する反射光強度を比較すると、反射光強度が低下している位置には傷があることが分かる。図7(a)においては、検知領域Aの中央部近傍で、検出結果Rn(反射光強度)の値が減少しており、この事実により、定着ベルト61の表面に傷が存在することが分かる。このようにして、表面情報として、傷の存在が検出される。図6に戻り、定着ベルト61の表面上に傷が検出された場合には、ステップS27に進み、傷が検出されない場合には、処理を終了する。
ステップS27において、表面情報検出部300は、傷の位置を特定する。以下、図7(b)を用いて傷の位置の特定手法について説明する。図7(b)には、図7(a)に示される検出結果Rn(反射光強度)に対して、前述の微分操作(ステップS23参照)を行なった結果がグラフで示されている。微分理論一般から明らかなように、極小位置では、微分値が0であって、極小の前後では、微分値は負から正に向かって変化する。従って、図7(b)に示されるグラフにおいて、微分値が負から正に大きく変化するゼロクロス位置を求めることで、傷の位置を検出(判定)できる。また、微分値の絶対値が、予め設定した所定の値(閾値)より小さい場合は、反射光強度の低下が問題とならない程に小さいことを示しており、傷は無いと判定される。
以下、上記傷の位置の特定手法を、具体例に即して説明する。本具体例では、図3(a)〜図3(d)に示される反射型光センサ200が、以下の構成である場合について説明する。すなわち、反射型光センサ200において、LED211、PD212の配列数:N=24、順次点灯させるLED:n=3〜22、LED211、PD212の配列ピッチ:P=1mmとした。この反射型光センサ200では、定着ベルト61表面に1mmピッチで光スポットが形成される。そして、40万枚の転写紙(A4サイズの長手方向への搬送)に対して定着を行なった後の定着ベルト61に対して、上述の反射型光センサ200を用いて得られた検出結果Rnと、定着ベルト61の幅方向の位置との関係が、図8(a)に示されている。光スポットは、定着ベルト表面に配列ピッチP=1mmで形成されるので、図8(a)における横軸のnは、光スポットの位置(LEDによる照射位置)をmm単位で表したのと同等である。
図8(b)には、図8(a)の検知結果Rnを微分した結果が示されている。なお、微分値を平滑化するため、Rn−1、Rn、Rn+1の3点での傾きを算出することもできる。図8(b)に示されるグラフのゼロクロス位置を求めると、n=12.5となり、LED21112とLED21113とに対応する光スポット照射位置の中間である、12.5mmの位置を傷の位置として検出(判定)できる。
傷の位置の特定(ステップS27)が完了すると、表面情報検出部300は、ステップS29に進み、定着ベルト61上の傷のない位置を求める。傷のない位置は、検出結果Rnの変動が小さい位置、すなわち、検出結果Rnの微分値が0付近に集まる位置である。本実施形態では、図10(a)に示されるように、傷のない位置(微分値0付近に集まる位置)としてn=6とn=15とを選択できる(ステップS31に進む)。
表面情報検出部300は、ステップS31及びS33において、傷レベルの検出(判定)動作を行う。ここで、傷レベルとしては、傷の深さ(傷部と傷なし部の表面粗さの差)と、傷の幅とがあるが、先ずは、傷の深さの検出をステップS31で行う。
ここで、定性的に見て、傷の深さが深いほど、定着ベルト61表面の粗さが大きく、反射光強度の低下が大きいと考えられる。従って、傷の深さを検出するには、反射光強度の低下量を求めれば良い。例えば、検出結果Rn(反射光強度)の変化が、図9に示されるような結果となっている場合、単純に検出結果Rnの最小値を求め、該最小値を傷の深さとするとこもできる。しかし、反射型光センサ200の取り付け状態(傾き)、あるいは定着ベルト61の傾き等に起因して、検出結果Rnに当該傾き成分が重畳されることも考えられる。
そこで、本実施形態の表面情報検出部300は、検出結果Rnに重畳される可能性がある上記傾き成分を差し引いて定着ベルト61上の傷の深さを求める。以下、その手法について説明する。先ず、定着ベルト61上の傷の位置は、前述のステップS27で、定着ベルト61上の傷のない位置は、前述のステップS29でそれぞれ検出できている。そして、上記傾き成分を差し引くためには、図10(b)に示されるように、複数の傷のない位置での検知結果を結んだ近似直線と、傷のある位置での検知結果との距離を求めれば良い。図10(b)における破線は、Rn1(ここではn=6)とRn2(ここではn=15)を結んだ近似直線であり、破線の矢印は、傷の深さに対応している。図10(b)から分かるように、この例では、傷の深さを示す検出結果Rnの差分は63.1である。また、傷の位置における反射光強度の低下の比率は、0.16(16%)である。
表面情報検出部300は、ステップS31で定着ベルト61上の傷の深さを推定すると、ステップS33に進み、定着ベルト61上の傷の幅(大きさ)を推定する。以下、傷の幅の推定方法について説明する。
傷の中心位置は、前述のステップS27で検出されている。そこで、傷のある位置での検出結果Rnから、傷の深さ(粗さ)に相当する反射光強度が所定量(例えば50%)低下する位置を算出する。図11は、図10(b)の縦軸を拡大した図である。図11の結果から、傷の幅を、3mmと推定(判定)することができる(処理終了)。
なお、上記の表面情報(傷の深さ、傷の幅など)は、すべて検出しても良いし、必要な情報のみを求めても良い。また、本実施形態では、定着ベルト61上において、図12(a)に示されるように、複数の光スポットSP(反射型光センサ200による検出位置)が、定着ベルト61の幅方向に平行な方向(X軸方向)に沿って形成される構成であったが、これに限られず、例えば図12(b)に示されるように、X軸に対して、例えば45°交差していても良い。この場合の検知領域A′のX軸方向の長さは、検知領域A(図12(a)参照)に比べて1/√2に短くなるが、隣接する光スポットの配列ピッチも、図12(a)に示される場合に比べ、1/√2に小さくでき、検知結果の位置分解能を向上させることができる。
次に、表面状態変更装置(表面状態変更ローラ67)を用いた定着ベルト61の表面状態の変更動作について説明する。
図13(a)及び図13(b)に模式的に示されるように、表面状態変更ローラ67は、ロッド69に支持されている。ロッド69は、回動軸68に接続されており、これらロッド69と回動軸68とは、表面状態変更制御装置400によって制御駆動されるようになっている。図13(a)には、表面状態変更ローラ67が定着ベルト61の表面に接した状態が示され、図13(b)には、表面状態変更ローラ67が定着ベルト61から離れた状態が示されている。このように表面状態変更ローラ67は、定着ベルト61に対して接離可能である。定着ベルト61の表面状態の変更は、図14に示される図の手順で実行される。
図14に示されるように、印刷ジョブが終了(画像形成プロセスが終了)すると、ステップS41において、定着ベルト61が回転駆動された状態で、反射型光センサ200が図5のフロー図に従って動作する。反射型光センサ200の動作が終了すると、ステップS43に進み、表面情報検出部300が定着ベルト61の表面状態を検出(判定)する。この判定の結果、傷が存在しない場合(No)には、表面状態変更ローラ67が駆動されることなく、処理が終了する。これに対し、表面情報検出部300が定着ベルト61上の傷の存在を検出した場合(Yes)には、ステップS45に進み、表面情報検出部300からの検知結果を受けて、表面状態変更制御装置400が表面状態変更ローラ67の動作を以下のように制御する。
図15は、表面状態変更ローラ67の動作を表す図である。表面状態変更ローラ67は、通常時(例えば印刷ジョブ時)には、定着ベルト61から離れた位置に退避しているので、表面状態変更制御装置400は、動作開始後、まず、ステップS51で表面状態変更ローラ67を回転駆動させ、続いて、表面状態変更ローラ67を定着ベルト61に接触させ、ステップS53に進む。この間、定着ベルト61は、常に回転駆動された状態にされる。表面状態変更ローラ67は、予め傷のレベルに応じた回動時間が設定されており、表面状態変更制御装置400は、ステップS53において、表面情報検出部300によって検出された傷のレベルに応じた所定時間、表面状態変更ローラ67を回転駆動する。
これにより、表面状態変更ローラ67の所定の粗さを持った表層が、定着ベルト61の表面に接しながら回動するので、定着ベルト61の表面において、転写紙の紙幅端部によって形成された筋状の傷の部分が削られて、定着ベルト61には、新たな表面部分が露呈する。即ち、定着ベルト61の表面状態が変更される。変更の程度は、表面状態変更ローラ67の回動時間に依存する。
上記表面状態変更ローラ67を所定時間の回動させた後、表面状態変更制御装置400は、ステップS55に進み、表面状態変更ローラ67を定着ベルト61から離隔させるとともに、回転を停止させる。また、表面状態変更ローラ67を元の位置に退避させ、表面状態変更ローラ67の動作を終了させる。
図16(a)には、印刷ジョブが終了(画像形成プロセスが終了)した後、定着ベルト61の表面状態を検出(判定)し、判定の結果、傷が存在した場合の検出結果の1例が示されている。また、図16(a)に示される検出結果を受け、表面状態変更ローラ67を定着ベルト61に接触させ、所定時間、回転駆動した後、表面状態変更ローラ67を定着ベルト61から離接し、再び表面状態の検出(判定)を行い、判定の結果、傷なしと判定された場合の検出結果が図16(b)に示されている。図16(a)及び図16(b)から、表面状態変更ローラ67により、定着ベルト61の表面の筋状の傷が削りとられ、新たな表面部分が露呈していることがわかる。
また、図17には、センサ検出値であるRn(任意強度)と、定着ベルト61上の表面粗さを表面粗さ計を用いて計測した結果との関係を表すグラフが示されている。なお、ここで示される表面粗さは、定着ベルト61上のある領域での表面粗さの平均値である。図17から分かるように、定着ベルト61の表面粗さとセンサ検出値であるRnとは相関関係が成り立ち、指数関数によくフィッティングすることが分かる。その為、定着ベルト61表面の傷なし部と傷部でのセンサ検出値から、傷なし部と傷部の表面粗さの差を算出することができる。
また、図17から、定着ベルト61表面の表面粗さが、0.4μm以上では、センサ検出値の変化が微小になることが分かる。その為、定着ベルト61表面の筋状の傷の表面粗さよりも粗い表面粗さを持つ表面状態変更ローラ67で定着ベルト61表面を粗し、定着ベルト61表面の表面粗さを0.4μm以上にしてしまうと、再び通紙を行い、筋状の傷が生じた場合に、傷部と傷なし部の表面粗さがどちらとも0.4μm以上となってしまい、傷部と傷なし部の表面粗さの差を、センサ検出値を用いて算出することが難しくなってしまう。したがって、表面状態変更ローラ67を用いて定着ベルト61表面を削り、あらたな面を露呈させた状態での定着ベルト61の表面の表面粗さが0.2μm以上になるように、表面状態変更ローラ67を選定することが望ましい。
以上説明した実施形態では、定着ベルト61(定着部材)に発生した筋状の傷の位置及び幅を、表面情報として検知し、該傷の存在が検知された場合にのみ、表面状態変更ローラ67を用いて定着ベルト61の表面状態を変更するので、形成画像の品質の劣化を未然に防止しつつ、定着ベルト61の寿命を延ばすことが可能である。
また、定着ベルト61表面の状態を改善することで、傷の進行を遅らせ、定着ベルト61の交換間隔を長くでき、コストおよびダウンタイムを低減できる。
また、表面状態変更ローラ67を定着ベルト61表面に接して表面を摺擦する時間を制御することで、傷レベルに応じた表面状態変更が可能になる。
また、定着ベルト61の表面状態を変更した後に、再度、定着ベルト61の表面情報を検出することにより、表面状態の変更程度を確認でき、確実に良好な表面状態を得ることができる。
また、反射型光センサ200は、定着ベルト61の幅方向に平行な方向に検知領域Aを有するので、比較的ラフに配置できる。また、反射型光センサ200が接触範囲W2にのみ対応して1つ設けられているので、仮に反射型光センサ200を複数個用いる場合に比べ、反射型光センサ200の特性ばらつき、あるいは取付ばらつきの影響を受けることなく、定着ベルト61の表面情報を良好に検知することができる。また、表層にPFA等の表面硬度が高い材料が用いられた定着ベルト61は、傷つきやすいが、反射型光センサ200により確実に表面情報を検知することができるので、ベルト交換等の管理が容易になる。
また、反射型光センサ200は、転写紙Sと定着ベルト61表面との接触に起因する筋状の傷の傷レベル(傷の深さや傷の幅)と、傷の位置とを同時に検知可能である。反射型光センサ200は、定着ベルト61の幅方向の一方向に複数のLED211を順次照射するので、仮に複数のLED211を同時に照射する場合に比して、クロストーク(1つのPD212から見たとき、複数のLED211からの反射光を同時に受光してしまうこと)がなくなり、各光スポット位置に対応して得られる検知結果の検知精度を向上させることができる。
なお、以上説明した実施形態における装置の構成、制御などは、適宜変更が可能である。例えば、表面状態変更ローラ67による表面状態変更動作は、図18に示されるような態様も可能である。図18に示される表面状態変更動作の変形例では、印刷ジョブが終了(画像形成プロセスが終了)すると、ステップS61に進み、定着ベルト61を回転させた状態で、反射型光センサ200を図5のフロー図に従って動作させる。反射型光センサ200の動作が終了すると、ステップS63に進み、図6に示すフロー図の如くに表面情報検出部300が定着ベルト61の表面状態を検出(判定)する。この判定の結果、傷が存在しない場合(No)には、表面状態変更ローラ67を駆動することなく、表面状態変更制御の工程を終了させる。これに対し、表面情報検出部300が定着ベルト61に傷の存在を検出した場合(Yes)には、ステップS65に進み、反射型光センサ200からの検知結果を受けて、表面状態変更制御装置400に表面状態変更ローラ67の動作を上述の場合(図15参照)と同様に制御する。
そして、ステップS65における表面状態変更ローラ67の動作が終了した後、再びステップS61に戻り、反射型光センサ200を動作させて定着ベルト61の表面状態を判定する。この動作の制御のため、図1(c)に示されるように、表面状態変更制御装置400は、反射型光センサ200と表面情報検出部300とを制御できるようになっている。このようにして、定着ベルト61の表面状態が、傷のない状態に変更されたか否かを確認できる。反射型光センサ200は、傷の位置だけでなく、すべての照射領域で傷のない均一な状態になったか否かを確認可能である。そして、確認後、まだ傷が残っているようであれば、再び表面状態変更ローラ67を動作させ、筋状の傷がなくなるまで一連の動作は繰り返すことができる。このようにして、定着ベルト61に傷の無い状態を確実に得ることができる。
また、表面状態変更動作は、図19に示される図のような態様も可能である。図19に示される変形例では、印刷ジョブが終了(画像形成プロセスが終了)すると、ステップS71に進み、定着ベルト61を回転させた状態で、反射型光センサ200を図5のフロー図に従って動作させる。反射型光センサ200の動作が終了すると、ステップS73に進み、図6に示すフロー図の如くに表面情報検出部300が定着ベルト61の表面状態を検出(判定)する。この判定の結果、傷が存在しない場合(No)には、表面状態変更ローラ67を駆動することなく、表面状態変更制御の工程を終了させる。
これに対し、表面情報検出部300が定着ベルト61に筋状の傷の存在を検出した場合(Yes)には、ステップS75に進み、反射型光センサ200からの結果を受けて、表面状態変更制御装置400が表面状態変更ローラ67を駆動制御する。このステップS75において、表面状態変更ローラ67は、図15に示されるフロー図に従って駆動制御されるが、このとき、表面状態変更ローラ67の回転駆動(ステップS75A)と並行して、反射型光センサ200も動作させ(ステップS75B)、定着ベルト61の表面状態をリアルタイムで判定(ステップS75C)する。すなわち、表面状態を判定しつつ表面状態変更ローラ67を回転駆動し、傷がないと判定されるまで回転駆動を継続する。そして、ステップS75Cにおいて、傷が無い状態が検出されたら、表面状態変更ローラ67を定着ベルト61から離隔させて回転駆動を停止し、反射型光センサ200の動作を終了させて表面状態変更プロセスを終了する。このようにすると、表面状態変更ローラ67の必要最小限の回転駆動で、定着ベルト61表面に傷のない表面状態を確実に得ることができる。また、本変形例では、定着ベルト61の表面状態を変更しつつ、定着ベルト61の表面情報を検出することにより、表面状態の変更度合いを常に確認でき、表面状態変更ローラ67の必要最小限の動作で(定着ベルト61の劣化を最低限に抑えて)確実に良好な表面状態を得ることができる。
また、表面状態変更動作は、図20に示される図のような態様も可能である。図20に示される変形例では、主走査方向の幅が小サイズの用紙の印刷Iが行われ、その印刷ジョブが終了した後、印刷Iよりも主走査方向の幅が大きいサイズの用紙の印刷IIが行われる。本変形例では、印刷Iのジョブが終了(画像形成プロセスが終了)すると、ステップS81に進み、定着ベルト61を回転させた状態で、反射型光センサ200を図5のフロー図に従って動作させる。反射型光センサ200が動作を終了すると、ステップS83に進み、図6に示すフロー図の如くに表面情報検出部300が定着ベルト61の表面状態を検出(判定)する。この判定の結果、傷が存在しない場合(No)には、表面状態変更ローラ67を駆動することなく、ステップS85に進み、印刷IIのジョブを開始する。
これに対し、表面情報検出部300が定着ベルト61に筋状の傷の存在を検出した場合(Yes)には、ステップS87に進み、反射型光センサ200からの結果を受けて、表面状態変更制御装置400により表面状態変更ローラ67を駆動制御させる。このステップS87において、表面状態変更ローラ67は、図15に示されるフロー図に従って駆動制御されるが、このとき、表面状態変更ローラ67の回転駆動(ステップS87A)と並行して、反射型光センサ200も動作させ(ステップS87B)、定着ベルト61の表面状態をリアルタイムで判定(ステップS87C)する。すなわち、表面状態を判定しつつ表面状態変更ローラ67を回転駆動し、傷がないと判定されるまで回転駆動を継続する。そして、ステップS87Cにおいて、傷が無い状態が検出されたら、表面状態変更ローラ67を定着ベルト61から離隔させて回転駆動を停止し、反射型光センサ200の動作を終了させ後、ステップS85に進んで印刷IIのジョブを開始する。
また、図21には、表面状態変更ローラの変形例が示されている。図21に示される変形例では、表面状態変更ローラ67Cは、定着ベルト61上を通過する大サイズの用紙幅よりもやや長い長さを持ち、従って、定着ベルト61の幅方向のほぼ全域に亘って表面状態を変更させることができる。このようにすると、転写紙の幅方向両端部との摺動に起因して定着ベルト61に形成された筋状の傷を削り取って該定着ベルト61の表面を改良できるのみならず、定着ベルト61の幅方向のほぼ全域に渡って、定着ベルト61の表面を均一に改善することができ、分離爪や温度センサによる傷、あるいはオフセットに対しても有効に表面状態の変更を実現できる。
また、上記実施形態の表面情報検出部300は、複数のPD212の検出信号を受信するごとに、検出信号の和を演算算出した(ステップS21参照)が、これに限られない。例えば、反射型光センサ200は、複数のLED211を同時点灯することもできるので、複数のLED211の同時点灯のタイミングに同期して、複数のPD212が、それぞれ反射光を受光するようにしても良い。この場合、表面情報検出部300は、検知信号の和を取ることなく、各LED211nに対応した各PD212nの検出結果Rnを使用し、定着ベルト61表面上の幅方向に離間した複数位置について反射光強度Rnを得ることとしても良い。
また、上記実施形態では、定着ベルト61における筋状の傷による表面情報を主たる検出対象とする場合を説明したが、検出対象は、これに限られず、前述のオフセット、あるいはサーミスタや剥離爪との接触に起因する傷であることもできる。例えば、オフセットの場合、定着ベルト61表面に固着したトナーの状態がフィルム状である場合であると、検知結果である反射光強度Rnの低下は、比較的小さくて、且つ、広い範囲にわたるので、このような特性から検出できる。また、筋状の傷の幅は、数100μm〜数mm程度であるのに対し、サーミスタや剥離爪との接触に起因する傷の幅は、数10μm〜数100μmであり、その発生位置もほぼ決まっているので、検出位置と傷の幅とにより、筋状の傷と区別できる。
また、上記実施形態では、定着部材として、定着ベルト61の場合を説明したが、定着部材はこれに限られず、例えば定着ローラであっても良い。
また、上記実施形態において、表面状態変更ローラ67は、定着ベルト61のうち、定着用ローラ64に接していない部分で定着ベルト61への接離と摺擦駆動を行っているが、定着用ローラ64に接している部分上で行っても良い。
また、反射型光学検知装置の形態は、上記実施形態の反射型光センサ200に限定されるものではなく、定着ベルト61の幅方向に複数の光を照射し、その反射光を受光できる構成であれば良い。例えば、上記実施形態の反射型光センサ200は、複数のLED211と複数のPD212とが1対1に対向するアレイタイプであったが、これに限られず、レーザを光偏向器で偏向し、定着ベルト61の表面からの反射光を1つないしは複数のPDで受光するような光偏向タイプも可能である。また、1つのLEDと1つのPDとから成る光センサを駆動手段により定着ベルト61の幅方向に移動させるセンサ駆動タイプでも良い。
また、反射型光センサ200は、上記実施形態の構成に限られず、例えば1方向に配列されたN(≧1)個のLED211と、これらN個のLED211の個々からの光を定着ベルト61の表面に集光させて光スポットを形成するM(N≧M≧1)個のレンズと、各光スポットにおける定着ベルト61からの反射光を受光するK(N≧K≧1)個のフォトセンサとを有する構造のものとすることができる。この場合、1個の集光レンズに対して複数個のLED211が対応することになり、集光レンズアレイの構造が簡単化される。このような場合、フォトセンサとしては単一の受光面をもつものでも良い。集光レンズは、大きくなることにより、フォトセンサへの受光レンズとしての兼用が可能となる。
また、上記実施形態におけるカラープリンタ100における転写方式は、転写ベルト11上に各感光体ドラム20Y〜20Bに形成されたカラートナー画像を順次重畳して1次転写し、転写されたカラートナー画像を2次転写ローラ17により転写紙S上に一括転写する方式であったが、転写方式はこれに限らない。例えば、転写ベルト11上に転写紙Sを担持して搬送し、この転写紙Sを各感光体ドラムに対向接触させて各色のトナー画像を、各感光体ドラムから転写紙S上に直接的に重畳して転写する方式とすることも可能である。この場合も、カラートナー画像の定着は、上記実施形態と同様で良い。
なお、カラープリンタ100が、例えばA3サイズ、A4サイズ、A5サイズなどの複数のサイズの転写紙を印刷可能である場合には、最大通紙できる転写紙はA3サイズとなり、これを長手方向に搬送する場合が多い。この場合、A3サイズを除くサイズの転写紙による筋状の傷による表面情報の検出が対象となる。また、カラープリンタ100が、仮にA2サイズを長手方向に通紙可能である場合には、A2サイズを除くサイズの転写紙による筋状の傷による表面情報が検出の対象となる。なお、本明細書において、例えばA4サイズの転写紙を縦長で搬送する場合と、横長で搬送する場合とでは、同一サイズの転写紙が、幅が異なる状態で搬送されるのであるが、このような場合も、幅の異なる複数サイズのシート状記録媒体が搬送されるものとする。
また、上記実施形態では、画像形成装置がカラープリンタである場合を説明したが、画像形成装置は、これに限られず、例えばモノクロ複写機、カラー複写機、ファクシミリ装置、プロッタ装置等であっても良いし、あるいはこれらの各機能を複合させた、いわゆるMFP(Multi Function Printer)等であっても良い。