関連出願
本出願は米国仮特許出願第60/970,529号(2007年9月6日出願)(これは参照することにより本明細書に組み込まれる)の優先権を主張する。
開示の分野
本開示は、癌と臨床的関連のある遺伝子発現プロフィール又はパターンの同定と使用に関する。特に本開示は、一部は腫瘍グレードと相関して発現される遺伝子の本体に基づく。遺伝子発現のレベルは、ある患者の腫瘍グレードを決定し、臨床転帰を予測し、従って患者の予後を予測することができる分子指数を構成する。癌の分子的グレード分類は場合により、癌とその予後を診断するための第2の分子指数と組合せて使用してもよい。
遺伝子発現プロフィールは、核酸発現、タンパク質発現、もしくは他の発現フォーマットに埋め込まれていても、癌に罹った対象の臨床転帰を予測し、癌の再発を予測し、及び/又は転移癌の発生を予測するのに使用される。このプロフィールはまた、癌細胞と組織の研究及び/又は診断に、ならびに対象の予後の研究にも使用される。診断又は予後診断について使用される時、このプロフィールは、余命、癌再発、及び/又は癌転移の可能性に基づいて、癌の治療法を決定するのに使用される。
開示の背景
ゲノムの発現プロフィーリング研究により、乳癌の予後遺伝子シグネチャ(signature、特徴)の「小さな洪水」が発生している。重要な問題は、これらのシグネチャが予後スペース中で重複するかどうか、及びこれらのいくつかを組合せることがより正確な予後診断を与えるかどうかである。ある比較試験では、異なる患者コホート(群)と方法を使用して開発された4つのシグネチャ(固有のサブタイプ、70遺伝子シグネチャ、創傷応答シグネチャ、及び再発スコア)が、低リスク群と高リスク群への異なる患者の分類によく一致することが見いだされた。さらにこれらのシグネチャの組合せが予測の正確性に大きな改善を与えることはなく、これらのシグネチャによりつながった予後情報スペースが極めて重複していることを示唆している。
腫瘍グレードの予後的重要性は確立されている(ClanfroccaM. Goldstein LJ Oncologist 9:606-16, 2004)。癌の予後診断のための種々の分子指数がすでに報告されている。
例としては、97腫瘍グレード関連遺伝子(これは予後診断性が強いことが証明されている)(Sotiriou C, Wirapati P, Loi S, et al. J Natl Cancer Inst 98:262-72, 2006);70遺伝子シグネチャ(van't Veer LJ, Dai H, van de Vijver MJ, et al. Nature 415:530-6, 2002);及びOncotype DX21遺伝子再発スコアアルゴリズム(Paik S, Shak S, Tang G, et al N Engl J Med 351:2817-26, 2004)に基づくゲノムグレード指数(GGI)がある。
97遺伝子腫瘍グレードシグネチャは、独立したコホートで70遺伝子シグネチャと再発スコアアルゴリズムに匹敵することが報告され、これらのシグネチャの予後診断能力のほとんどは、細胞増殖に関連する遺伝子に由来すると仮定されている。
上記シグネチャの比較は、腫瘍グレード関連遺伝子がこれらのシグネチャの共通要素であることを示唆している(例えば、Sotiriou C, Wirapati P, Loi S. et al J Natl Cancer Inst 98:262-72, 2006; Desmedt C, Sotiriou C Cell Cycle 5:2198-202, 2006; Loi S, Haibe-Kains B, Desmedt C, et al J Clin Oncol 25:1239-46, 2007; 及びSotiriou C, Piccart MJ Nat Rev Cancer 7:545-53, 2007を参照)。
さらに最近は、腫瘍発生CD44+CD24−/低乳癌細胞を正常な乳房上皮と比較することにより得られる186遺伝子「侵襲性遺伝子シグネチャ」(IGS)が、増殖ベースの予後スペースを超えて拡張されると提唱されている。しかし注意深い観察は、IGSが腫瘍グレードシグネチャと高度に相関(r=0.81)するため、これもまたその予後診断能力を増殖関連遺伝子から得ていることを示唆している。
予後診断における腫瘍グレードの重要性と、その発現レベルが腫瘍グレードと増殖とに高度に相関する数百の遺伝子の存在を考慮すると、多数の一見明確な予後シグネチャが開発できることは驚くべきことではないかも知れない。さらにこれらの遺伝子の予後診断の強固さと重複は、数個の遺伝子を含むはるかに単純なアッセイで充分かも知れないことを示唆する。例えば、予後診断にはCGIの97個の遺伝子のうちのほんの一部しか必要でないことが認められている。独立した試験で、Ivshina et al.はまた、264遺伝子腫瘍グレードシグネチャがコンピュータで6遺伝子に低減できることを証明した(Ivshina AV, George J, Senko O, et al: 組織学的グレードの遺伝子再分類は乳癌の新しい臨床的サブタイプを明確に説明する、Cancer Res 66:10292-301, 2006)。
本明細書における文献の引用は、これらが関連技術であると認めることを反映していると理解してはならない。さらにこれらの引用は、関連する開示の検索を示すものではない。文献の日付又は内容に関するすべての記載は、入手できる情報に基づいており、これらの正確性又は正しさを認めているものではない。
本開示は、一部は、腫瘍グレードと相関する腫瘍細胞の遺伝子発現レベルの発見と測定に基づく。同定された遺伝子の発現レベルの腫瘍グレードシグネチャとしての使用以外に、発現レベルは予後情報(例えば癌再発)や予測情報(例えばある治療法に対する応答性)を与えるために使用される。
本開示により同定される1つの遺伝子は、Bub1Bをコードする。すなわち本開示の第1の態様において、腫瘍グレードを研究又は測定し、予後情報を提供し、及び/又は臨床的応答性の予測を与えるためのBub1B遺伝子発現の使用についての、組成物と方法が記載される。ある場合には、グレードI、グレードIII、又は中間グレードの腫瘍の診断に対応するという診断に達するために、対象からの腫瘍細胞を用いて測定が行われる。
本開示で使用される細胞の非限定例には、対象から新たに単離されたもの、単離後凍結されたもの、及び固定及び/又は包埋されたもの(例えばホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE))がある。ある実施態様において細胞は乳房細胞、例えば乳癌細胞である。
第2の態様において、腫瘍グレードを測定し、予後情報を提供し、及び/又は臨床的応答性の予測を提供するための4つの他の遺伝子発現レベルの使用のための、組成物と方法が開示される。これらの追加の遺伝子は、CENPA、NEK2、RACGAP1、及びRRM2をコードする。すなわち本開示は一部は、その発現レベルが癌に罹った対象の腫瘍グレードの決定と、対象の予後及び予測測定を提供するのに有用な5つの遺伝子の発見に基づく。
これらの5つの遺伝子の各発現レベルは、追加の情報を与えるための研究もしくは測定で単独で使用されるが、本開示の第3の態様は、5つの開示された遺伝子の任意の組合せの使用を含む。すなわちある実施態様において、Bub1Bと、これらの追加の4つの遺伝子の任意の1つ、2つ、もしくは3つの発現レベルの組合せが使用される。同様にCENPAと、Bub1B、NEK2、RACGAP1、もしくはRRM2の任意の1つ、2つ、もしくは3つの発現レベルの組合せ;NEK2と、Bub1B、CENPA、RACGAP1、もしくはRRM2の任意の1つ、2つ、もしくは3つの発現レベルの組合せ;RACGAP1と、Bub1B、CENPA、NEK2、もしくはRRM2の任意の1つ、2つ、もしくは3つの発現レベルの組合せ;RRM2と、Bub1B、CENPA、NEK2、もしくはRACGAP1の任意の1つ、2つ、もしくは3つの発現レベルの組合せが使用される。
ある実施態様においてすべての5つの発現レベルの組合せが、5遺伝子腫瘍グレードシグネチャ(又は分子グレード指数)として開示される。この指数、すなわちMGIは、2つの独立したコホートにおける97遺伝子CGIに匹敵する性能で腫瘍グレードを再現し臨床転帰を予測することができる。MGIはまた、癌再発及び/又は生存転帰の予後診断因子として機能する。
さらなる態様において本開示は、癌の第2の分子指数と組合せた5遺伝子MGIの使用を含む。ある実施態様においてこの組合せは、第2の分子指数とすべての5つの開示した遺伝子との組合せである。別の実施態様においてこの組合せは、本明細書の5つの開示した遺伝子のうちの1、2、3、又は4つとの組合せである。ある場合には第2の分子指数は、2つの遺伝子HoxB13とIL17BRの発現レベルに基づくものである。特にHoxB13発現とIL17BR発現の2遺伝子比(又は、HoxB13:IL17BR比)は、第2の分子指数として使用される(US2005/0239079A1号;US2005/0239083A1号;及びUS2006/0154267A1号を参照)。別の実施態様において第2の指数は、HoxB13発現対CHDH発現の2遺伝子比でもよい。
HoxB13:IL17BR(H:I)比は、標準的予後診断因子を超える臨床転帰の予測のための新規バイオマーカーの研究に基づいて発見された。腫瘍ステージとグレードについて、癌が再発した患者とそうでないものとを並べた。単純なH:I比が、アジュバントタモキシフェン療法を受けているエストロゲン受容体陽性(ER+)乳癌患者で癌再発を予測するのに適していることがわかった。以後の研究(Ma XJ, Hilsenbeck SG, Wang W, et al J Clin Oncol 24:4611-9, 2006; Goetz MP, Suman VJ, Ingle JN, et al Clin Cancer Res 12:2080-7, 2006; Jerevall PL, Brommesson S, Strand C, et al Breast Cancer Res Treat, 2007;and Jansen MP, Sieruwerts AM, Look MP, et al J Clin Oncol 25:662-8, 2007)はさらに、後向き研究との無作為臨床治験の両方で、この比が予後診断的(腫瘍の悪性度の指標)であり、及びタモキシフェン効果(すなわち、タモキシフェン応答/抵抗性)に対して予測的であることが証明された。
リアルタイム逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を使用して、開示された5遺伝子MGIとH:I比の両方を分析すると、この組合せは、いずれか単独よりも再発リスクの優れた層別を与えることがわかった。これは、H:I比が腫瘍グレードに依存しないことを示すため、予想外の発見である。従って2つの指数の組合せは、癌に関連する独立したパラメータを効率的に分析することにより、癌診断を改善し、その予後のより正確な決定を可能にする。
別の実施態様において、開示された5遺伝子シグネチャ中の1つ又はそれ以上の遺伝子の発現は、癌の予後診断のために他の遺伝子もしくは他の分子指数と組合せて使用される。非限定例には、97腫瘍グレード関連遺伝子(Sotiriou et al.、前述)とこれらの97遺伝子内の遺伝子のサブセット;MammaPrint 70遺伝子シグネチャ(van't Veer et al.、前述)とこれらの70遺伝子内のサブセット;Oncotype DX 21遺伝子再発スコアアルゴリズム(Paik et al.、前述)とこれらの21遺伝子内の遺伝子のサブセット;及びVeridex 76遺伝子アッセイ(Wang et al. Lancet, 365 (9460):671-679, 2005)とこれらの76遺伝子内の遺伝子のサブセット、に基づくゲノムグレード指数(GGI)がある。他の場合には、開示された5遺伝子腫瘍グレードシグネチャの1つ又はそれ以上の発現が、増殖表現型と相関して発現される1つ又はそれ以上の遺伝子の発現レベルと組合せて使用される。ある場合には、増殖表現型と相関して発現される遺伝子は、上記した97、70、21、及び76遺伝子内にある。増殖表現型と相関して発現される遺伝子の非限定例には、Ki−67、STK15、Survivin、Cyclin B1、及びMYBL2がある。従って、癌の予後診断のための又は臨床転帰の予測因子として、5MGI遺伝子のうちの任意の1、2、3、又は4つの発現レベルは、他の遺伝子もしくは分子指数とともに使用される。もちろんMGIとしてのすべての5つの遺伝子の発現レベルは、上記の及び後述の追加の遺伝子又は別の指数と組合せて使用してもよい。さらにMGI遺伝子の1つ、一部、又はすべての発現レベルと他の遺伝子の組合せもまた、上記のH:I比と、及び後述の臨床転帰の予後診断因子又は予測因子として、さらに組合わされる。
本開示の実施態様は、MGI遺伝子の1つ、一部、又はすべての発現を、随時上記の1つ又はそれ以上の追加の遺伝子とともに、及び随時予後診断因子もしくは治療結果の予測因子としてH:I比と組合せて、測定する方法を含む。かかるアッセイ法は、予後診断価値及び予測価値についてER+対象を層別するのに使用される。予後診断因子として層別は、非限定例として、腫瘍悪性度と相関するか又はこれを示す発現レベルの差に基づく。予測因子として層別は、化学療法応答性(又は感受性)及び/又は非応答性(又は抵抗性)と相関し、従ってこれを示す発現レベルの差に基づき、これはまた化学療法効果の予測因子とも見なされる。非限定例として、層別(発現レベルに基づく)は、内分泌抵抗性(例えば、非限定例としてタモキシフェンに対する抵抗性)を予測するために、及び/又は内分泌抵抗性乳癌を標的とするインヒビターからの効果の予測のために、使用される。かかるインヒビターの非限定例には、mTOR(ラパマイシンの哺乳動物標的、セリン/スレオニンプロテインキナーゼ)、P13K(ホスホイノシチド3−キナーゼ)、AKTファミリーセリン/スレオニンプロテインキナーゼ(ヒトのAkt1、Akt2、及びAkt3を含むメンバー)、及び/又はEGFR(表皮増殖因子受容体;ヒトのHER1)を標的とするものがある。遺伝子発現の検出はもちろん、本明細書に記載の任意の適切な細胞含有試料で行われる。
本開示のさらに別の実施態様において、腫瘍グレード非依存性H:I比は、癌予後診断のための異なる分子指数と組合せて使用される(1つ、一部、又はすべてのMGI遺伝子の代わりに)。かかる指数の非限定例には、97腫瘍グレード関連遺伝子(Sotiriou et al.、前述)とこれらの97遺伝子内の遺伝子のサブセット;MammaPrint 70遺伝子シグネチャ(van't Veer et al.、前述)とこれらの70遺伝子内のサブセット;Oncotype DX 21遺伝子再発スコアアルゴリズム(Paik et al.、前述)とこれらの21遺伝子内の遺伝子のサブセット;及びVeridex 76遺伝子アッセイ(Wang et al. Lancet, 365 (9460):671-679, 2005)とこれらの76遺伝子内に遺伝子のサブセット、に基づくゲノムグレード指数(GGI)がある。他の場合には、H:I比は、増殖表現型と相関して発現される1つ又はそれ以上の遺伝子の発現レベルと組合せて使用される。ある場合には増殖表現型と相関して発現される遺伝子は、上記した97、70、21、及び76遺伝子のセット内にある。増殖表現型と相関して発現される遺伝子の非限定例には、Ki−67遺伝子、STK15、Survivin、Cyclin B1、及びMYBL2である。
従ってある実施態様において、本開示は、1つ又はそれ以上の追加の遺伝子(Ki−67、STK15、Survivin、Cyclin B1、及びMYBL2から選択される1つ又はそれ以上)の発現レベルと組合せたH:I比の発現について測定することを含む。このアッセイ法は、予後診断価値及び予測価値のためにER+対象を層別するのに使用される。予後診断として、層別は、非限定例として腫瘍悪性度と相関する、従ってこれを示す発現レベルの差に基づく。予測因子として層別は、化学療法応答性(又は感受性)及び/又は非応答性(又は抵抗性)と相関し、従ってこれを示す発現レベルの差に基づき、これはまた化学療法効果の予測因子とも見なされる。非限定例として、層別(発現レベルに基づく)は、内分泌抵抗性を予測するために、及び/又は内分泌抵抗性乳癌を標的とするインヒビターからの効果の予測のために、使用される。かかるインヒビターの非限定例には、mTOR(ラパマイシンの哺乳動物標的、セリン/スレオニンプロテインキナーゼ)、P13K(ホスホイノシチド3−キナーゼ)、AKTファミリーセリン/スレオニンプロテインキナーゼ(ヒトのAkt1、Akt2、及びAkt3を含むメンバー)、及び/又はEGFR(表皮増殖因子受容体;ヒトのHER1)を標的とするものがある。遺伝子発現の検出は、本明細書に記載の任意の適切な細胞含有試料で行われる。
さらなる態様において、Bub1B、CENPA、NEK2、RACGAP1、及びRRM2から選択される1つ又はそれ以上の遺伝子の発現が、臨床転帰の予後診断因子もしくは予測因子として、又は良性乳房疾患を有する対象(例えば、本発明の開示の非存在下で良性の乳房疾患を有すると診断される対象)の腫瘍グレードを測定するために、使用される。良性の乳房疾患の重要な役割は、Hartmann et al. (N. Engl. J. Med., 2005, 353:3)により議論されている。良性の乳房疾患の非限定例には、非増殖性病変、異型性の無い増殖性病変、および異型過形成の病理検査知見がある。
良性の乳房疾患の診断後に乳癌が起きることが観察されているため、良性の乳房疾患の一部の症例には乳癌の前駆体(例えば、異型性の無い病変、又は異型過形成)が存在していると推測されている。従って本開示は、対象の乳房細胞(例えば、良性の乳房疾患を診断するのに使用される病理検査試料からの細胞)中の腫瘍グレードを決定するための方法を含む。この方法は、Bub1B、CENPA、NEK2、RACGAP1、及びRRM2の発現レベルについて、対象の乳房細胞試料を測定することを含んでよく、ここで該発現レベルは、グレードI又はグレードIII腫瘍と、又は中間グレードの腫瘍と相関する。あるいはこの方法は、グレードI、グレードIII、又は中間グレードの腫瘍細胞の存在可能性を測定するために、任意の1つの遺伝子までこれらの5つの遺伝子の任意のサブセットについて測定することを含んでよい。ある実施態様において細胞は、異型性の無い病変
又は異型過形成の存在を診断するために使用される試料からでもよい。
もちろん本開示はさらに、対象が乳癌の以後の進展のリスクがあるかどうかを調べるために、良性の乳房疾患の対象からの試料のMGIとH:I比を使用することを含む。あるいは本開示は、乳癌進展のリスクを調べるための試料を用いて、H:I比のみの使用を提供する。
さらなる態様において、Bub1B、CENPA、NEK2、RACGAP1、及びRRM2から選択される1つ又はそれ以上の遺伝子の発現は、非浸潤性乳管癌(又はDCIS)を有する対象の腫瘍グレードを測定するために、臨床転帰の予後診断因子又は予測因子として使用される。すなわち本開示は、DCISに罹患しているか又は持っている疑いがある対象の乳房細胞の腫瘍グレードを測定するための方法を含む。細胞は、対象のDCISを診断するのに使用される病理検査試料からの細胞でもよい。この方法は、Bub1B、CENPA、NEK2、RACGAP1、及びRRM2の発現レベルについて、対象の乳癌細胞の試料を測定することを含んでよく、ここで該発現レベルは、臨床転帰の予後診断因子もしくは予測因子として使用されるか、又はグレードIもしくはグレードIII腫瘍、又はさらに中間グレードと相関する。あるいは、この方法は、グレードI、グレードIII、又は中間グレードの腫瘍細胞の存在を測定するために、臨床転帰の予後診断因子又は予測因子として、これらの5つの遺伝子のサブセットについて、任意の1つの遺伝子まで測定することを含んでよい。
別の態様において本開示は、DCISの癌の局所的再発の予後診断因子として使用されるBub1B、CENPA、NEK2、RACGAP1、及びRRM2から選択される1つ又はそれ以上の遺伝子の発現を検出するための、組成物と方法を含む。ある実施態様において、発現レベルに基づく方法は、DCISの対象からの乳癌細胞含有試料について有利に使用される。非限定例として、細胞は、対象の癌を診断するのに使用される手術前病理検査試料からのものでもよい。そのような対象について、標準的治療は手術であり、DCISを除去するために根治的乳房切除術より乳房温存手術が好ましい。この後にしばしば、術後放射線療法が行われ、場合により内分泌療法[例えば、タモキシフェン、選択的エストロゲン受容体調節物質(SERM)、選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(SERD)、又はアロマターゼインヒビター(AI)による治療]、及び/又は化学療法による治療が行われる。しかし癌再発の可能性に対応するためのこのプロトコールは、癌再発を引き起こさない多くの対象で過剰治療を招き、癌再発の場合には失敗を招く。
従って本開示は、これらの5つすべての遺伝子の発現を検出することを含み、ここで高MGI発現は、乳房温存手術及び以後の放射線療法及び/又は内分泌療法又は化学療法の失敗により、対象の局所的癌再発の可能性が上昇している指標である。別の実施態様においてこのような方法は、高MGI発現の代替指標としてH:I比の検出を利用する。もちろん本開示は、DCISの治療後の局所的癌再発の可能性の上昇の指標として、高MGIとH:I比の検出を組合せる方法を含む。あるいは本方法は、DCISの治療後の局所的癌再発の可能性の上昇の指標として、随時H:I比と組合せて、5つのMGI遺伝子の任意のサブセットについて任意の1つの遺伝子まで測定することを含んでよい。
この方法はさらに、対象が局所的癌再発を経験する可能性があるか又は無いかを同定することを含み、場合によりさらに、予測される転帰に対応するために対象の治療法を調整することを含む。非限定例として、随時術後療法の縮小(例えば、放射線照射の省略、及び/又は内分泌療法もしくは化学療法の省略)を伴う乳房温存手術の適切性を確認するために又はこれを選択するために、再発の可能性の低さの測定が行われる。別の非限定例として、術後療法(例えば、放射線照射、及び/又は内分泌療法もしくは化学療法)を伴う根治的乳房切除術の適切性を確認するために又はこれを選択するために、再発の可能性の高さの測定が行われる。
さらに別の態様において本開示は、臨床転帰の予後診断因子又は予測因子として、又は早期乳癌の一次療法についての2005 St. Gallen専門家合意(Goldhirsch et al. Ann. Oncol., 2005, 16:1569-1583参照)に基づいて評価中の対象の腫瘍グレードを測定するために、Bub1B、CENPA、NEK2、RACGAP1、及びRRM2から選択される1つ又はそれ以上の遺伝子(又はすべての5つの遺伝子)の使用を含む。すなわち本開示は、鑑別診断と専門家合意に基づく選択の一環として、対象の乳房細胞中の1つ、一部、又はすべてのMGI遺伝子の発現を評価するための方法を含む。開示された方法で使用される合意の一部の非限定例には、早期乳癌のアジュバント全身性療法の選択のためのアルゴリズム;内分泌療法に対する応答性もしくは非応答性、又は不明確な内分泌応答性;及び結節状態がある。もちろん全体として合意中の本開示の1つ又はそれ以上の態様を含めることも企図される。別の実施態様において、低及び高リスク群の分類を確認するために、ならびに少なくとも一部の中間リスク群の対象を低又は高リスク遺伝子に分けるために、分子遺伝子発現プロフィーリングの開示された方法が使用される。
ある場合には、癌を有すると診断された更年期前又は更年期後の女性について治療を選択又は排除するために、開示された方法が使用される。更年期前の女性は、約35才未満の女性を含む。これらの対象において、高MGI発現は癌再発の指標である。従って本開示は、更年期前対象の乳癌、例えばDCISの場合の乳癌の再発の予後診断因子として、Bub1B、CENPA、NEK2、RACGAP1、及びRRM2から選択される1つ又はそれ以上の遺伝子の発現レベルを使用することを含む。場合によりH:I比も測定され、MHCクラスI遺伝子と組合せて使用される。本方法は、これらの遺伝子の発現について、対象からの乳癌細胞含有試料を測定することを含む。非限定例として細胞は、対象の癌を診断するのに使用される手術前病理検査試料からのものでもよい。他の場合には方法は、例としてこれらの遺伝子の5つすべての発現を使用することを含み、ここで高MGI発現は、更年期前対象の癌再発の可能性の上昇の指標である。
この方法は、更年期前対象が癌再発を経験する可能性があるか又は無いかを同定することを含み、場合によりさらに、予測される転帰に対応するために対象の治療法を調整することを含む。非限定例として、随時術後療法の縮小(例えば、放射線照射の省略、及び/又は内分泌療法もしくは化学療法の省略)を伴う乳房温存手術の適切性を確認するために又はこれを選択するために、再発の可能性の低さの測定が行われる。別の非限定例として、術後療法(例えば、放射線照射、及び/又は内分泌療法もしくは化学療法)を伴う根治的乳房切除術の適切性を確認するために又はこれを選択するために、再発の可能性の高さの測定が行われる。
他の場合には、本方法は、治療法、例えば内分泌療法、化学療法、放射線療法、又はこれらの組合せの選択を補助するために使用される。ある実施態様において本開示は、内分泌療法の有効性の予測因子として、5つのMGI遺伝子の1つ又はそれ以上、又はこれらの5つすべての発現レベルを測定するための組成物と方法を含む。ある場合には、予測因子は、SERM、例えばタモキシフェン、又はSERDに対する応答性又は非応答性でもよい。これは、対象からの乳癌細胞含有試料の測定が高MGIを証明する場合を含み、タモキシフェンに対する非応答性の可能性を示す。別の場合には予測因子は、別の型に対するある型の内分泌療法の有効性についてである。これは、タモキシフェン又は他のSERMもしくはSERDと比較してアロマターゼインヒビター(AI)に対するより大きな応答性の指標として、MGI遺伝子の1つ、一部、又はすべての発現レベルを測定する方法を含む。この方法は、タモキシフェンよりAIに対してより大きな応答性の可能性を示す、1つ又はすべての5つの遺伝子の発現における高MGIの同定を含む。AIの非限定例には、非ステロイドインヒビター(例えばレトロゾール及びアナストロゾール)及び不可逆的ステロイドインヒビター(例えばエクセメスタン)がある。
さらに別の場合に本開示は、化学療法転帰の予測因子として、5つのMGI遺伝子の1つ又はそれ以上又はこれらの5つすべての発現レベルを使用するための組成物と方法を含む。場合によりH:I比も測定され、MGI遺伝子との組合せで使用される。遺伝子の発現レベルは、非限定例として、化学療法、例えばパクリタキセル/FAC(パクリタキセルの次に5−フルオロウラシル、ドキソルビシン、及びシクロホスファミド)又はタキソール又はアントラサイクリン療法に対する化学感受性を予測するために使用される。従って本開示は、これらの遺伝子の5つすべての発現を検出することを含み、ここで高MGI発現は、化学療法、非限定例としてパクリタキセル/FACによる例えば術後(手術的介入後)治療に対する完全な病理的応答(pCR)の可能性が上昇した指標である。非限定例として、対象の癌を診断するのに使用される手術前の細胞含有試料から癌細胞の発現が検出される。あるいはこの方法は、5つのMGI遺伝子の任意のサブセットについて任意の1つの遺伝子まで測定することを含んでよい。
この方法はさらに、対象がpCRを経験する可能性があるか又は無いかを同定することを含み、場合によりさらに、予測される転帰に対応するために対象の治療法を調整することを含む。非限定例として、化学療法、例えばパクリタキセル/FACによる治療の適切性を確認するために又はこれを選択するために、pCRの可能性の低さの測定が行われる。別の非限定例として、化学療法を省略(例えばパクリタキセル/FACの省略)して、他の治療法(例えば、放射線照射のような術後療法を含む根治的乳房切除)を採用することの適切性を確認するために又はこれを選択するために、pCRの可能性の高さの測定が行われる。
本開示はさらに、放射線治療に対する癌の応答性(感受性)の予測因子として、5つのMGI遺伝子の1つ又はそれ以上又はこれらの5つすべての発現レベルを使用するための、組成物と方法を含む。場合によりH:I比も測定され、MGI遺伝子との組合せで使用される。すなわち高MGI発現は、放射線治療(例えば術後介入)に対して乳癌患者が応答するかどうかを予測するために使用される。従って本開示は、これらの遺伝子の5つすべての発現を検出することを含み、ここで高MGI発現は、放射線治療に対する術後感受性の指標である。非限定例として癌細胞は、対象の癌を診断するのに使用される手術前の病理検査試料からのものでもよい。あるいはこの方法は、放射線療法に対する応答性の予測因子として、5つのMGI遺伝子の任意のサブセットについて任意の1つの遺伝子まで
測定することを含んでよい。
この方法はさらに、対象が、手術的介入後の放射線療法に応答するかどうかを同定することを含み、場合によりさらに、予測される転帰に対応するために対象の治療法を調整することを含む。非限定例として、放射線療法の適切性を確認するために又はこれを選択するために、術後放射線照射に対する応答性(感受性)の可能性が測定される。別の非限定例として、放射線療法を省略して随時化学療法を採用することの適切性を確認するために又はこれを選択するために、術後放射線照射に対する応答性(感受性)の可能性の低さの測定が行われる。
パートAは、非管理主成分分析(unsupervised principle component analysis)により、5遺伝子発現パターンを単一の指標スコア(分子グレード指数又はMGI)へ組合せることを例示する。MGIは腫瘍グレードと強く相関する。図1のパートBは、完全なデータセットのMGIのモデルベースのクラスタリング(clustering)を例示し、自然のカットオフがほぼ0である二峰性分布を与える。このカットポイントは、グレード1とグレード3の腫瘍のほとんどを正確に分類し(89%の全体的正確性)、グレード2腫瘍を2群に層別した(それぞれ低MGI遺伝子と高MGI群で59%と41%)。グレード2腫瘍対象からの12年を超える生存確率データを、図1のパートC中でMGI値≦0とMGI値>0に基づいてプロットして、MGIの予後診断能力を示した。
腫瘍グレード及び臨床転帰との相関についての、MGIとGGIの比較を示す。パートA〜Cは、Uppsalaコホートにおける5遺伝子発現パターンとGGIとの比較を示し、パートD〜Fは、Stockholmコホートに対応する。パートAとDは、グレード1腫瘍とグレード3腫瘍を区別するための、MGIとGGIの受信者動作特性(ROC)曲線解析である。パートB〜Fは、MGI又はGGI状態(高対低)に従う乳癌特異的死滅の確率を示す、Kaplan-Meier生存曲線を示す。
TRANSBIGコホートにおける76遺伝子予後シグネチャ又はMGIのKaplan-Meier生存曲線を示す。パートAとBはすべての患者についてである。パートCとDは、ER+腫瘍グレード1又は2サブグループに対応する。
MGHコホートにおけるRT-PCR TaqMan(登録商標)アッセイにより測定されたMGIを示す。パートAは、MGIと腫瘍グレードとの相関を示す。パートB〜Dは、すべての患者(パートB)、リンパ節転移陰性患者(パートC)、又はリンパ節転移陽性患者(パートD)を使用する、MGIに従う遠隔転移の無い生存のKaplan-Meier解析を示す。
MGI(パートA)、H:I比(パートB)、又はMGHコホートにおけるMGIとH:I比を組合せて作成した3群(低−、中間−、及び高−リスク)(パートC)、又はOxfordコホートにおける同じ3つのリスク群の、遠隔転移の無い生存のKaplan-Meier解析を示す。
表1のコホートのMGIとH:I比との相互作用を示す。コホートのリンパ節転移陰性の内分泌療法治療患者、又は内分泌療法+化学療法治療患者(n=93)を、MGIとH:I比間の相互作用について解析した。MGIは高HOXB13:IL17BR患者の遠隔転移を予測するのに最も確実であり、同様にH:I比は高MGI患者で最も確実であった。
表1のコホートのリンパ節転移陰性の内分泌療法治療患者の、H:I比及びMGIと、ER、PR及びHER2発現(リアルタイムRT−PCRにより測定した)との相関を示す。X軸は、H:I比、MGI又はこれらの組合せにより規定される群。Y軸は、記載のER、PR、又はHER2の相対的発現レベル。
最後のコホートにおけるMGIとH:I比との相互作用を示す。表1のコホートと同様に、MGIとH:I比は互いに追加の予後情報を与える。両方の指数で高値を有する腫瘍は、1つのみの高い指数を有するものより、はるかに悪い転帰を引き起こした。
St. Gallenプロトコールで中間の及び低リスク集団を、高リスク、中間リスク、及び低リスク集団に、より正確に同定するためのMGIの適用を示す。
MGI値2.1の仮定の結果と、5年以内に癌再発が19%のリスクとのその相関を示す。
臨床的治療によるか又はその治療が無い場合のMGIによる患者層別のKaplan-Meier曲線解析を示す。パネルAは、全身性治療を受けなかった患者の結果を示す。パネルBは、内分泌療法のみを受けた患者の結果を示す。HR=一変量Cox回帰分析からの障害比、そしてp値はlog順位検定からである。
化学療法に対する感受性についてのMGIの予測能力を示す。
更年期前又は更年期後状態によるMGIによる患者層別のKaplan-Meier曲 線解析を示す。パネルAは、更年期後女性(年齢≧50)の結果を示す。パネルBは、更年期前女性(年齢<50)の結果を示す。HR=一変量Cox回帰分析からの障害比、そしてp値はlog順位検定からである。
使用される用語の定義:
遺伝子発現「パターン」又は「プロフィール」又は「シグネチャ」は、以下を区別するとができることに関連している、2つまたはそれ以上の臨床転帰、癌転帰、癌再発、及/又は生存転帰の間の、1つ又はそれ以上の遺伝子の相対的発現を意味する。ある場合、転帰は乳癌の転帰である。
「遺伝子」は、本質がRNAであってもタンパク質性であって、個別の生成物をコードするポリヌクレオチドである。2つ以上のポリヌクレオチドが1つの個別の生成物をコードすることができることは理解されたい。この用語は、同じ生成物をコードする遺伝子、又は染色体位置および正常な有糸分裂中の組換え能力に基づき機能的に関連する(機能の獲得、喪失、調節を含む)その類似体の、対立遺伝子と多型体を含む。
用語「相関する」又は「相関」又はその同等語は、1つ又はそれ以上の遺伝子の発現と、本明細書に記載の方法の使用により同定される1つ又はそれ以上の状態の排除に対する細胞の生理的状態との関連を意味する。遺伝子は高レベルでも又は低レベルでも発現されるが、それでも1つ又はそれ以上の癌状態又は転帰と相関している。
「ポリヌクレオチド」は、任意の長さのヌクレオチド(リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド)のポリマー型である。この用語は、分子の一次構造のみに言及する。すなわちこの用語は、2本鎖及び1本鎖DNA及びRNAを含む。これはまた、当該分野で公知の標識物、「キャップ」、類似体による1つ又はそれ以上の天然に存在するヌクレオチドの置換、及び非荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)のようなヌクレオチド間修飾、ならびにポリヌクレオチドの非修飾型を含む公知のタイプの修飾を含む。
用語「増幅する」は、広い意味で、増幅産物の作成がDNAポリメラーゼ又はRNAポリメラーゼを用いて酵素的に行われることを意味するために使用される。本明細書において「増幅」は一般に、所望の配列、特に試料の配列の複数のコピーを作成するプロセスを意味する。「複数のコピー」は少なくとも2つのコピーを意味する。「コピー」は必ずしも、鋳型配列との完全な配列相補性又は同一性を意味しない。
対応するとは、核酸分子が別の核酸分子と多量の配列同一性を共有することを意味する。多量とは、少なくとも95%、一般的に少なくとも98%、さらに一般的少なくとも99%を意味し、配列同一性は、Altschul, S.F.ら、1990, J. Mol. Biol. 215:403-410に記載されたBLASTアルゴリズムを使用して(公表されたデフォールト設定を使用して、すなわちパラメータw=4、t=17)決定される。mRNAを増幅する方法は一般に当該分野で公知であり、逆転写PCR(RT−PCR)、米国特許出願第10/062,857号(2001年10月25日出願)、ならびに米国仮特許出願第60/298,847号(2001年6月15日出願)、及び60/257,801号(2000年12月22日出願)(これらのすべては参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されたものがある。使用される別の方法は、定量PCR(又はQ−PCR)である。あるいはRNAは、当該分野で公知の方法により対応するcDNAとして直接標識される。
「マイクロアレイ」は、好ましくは個別の領域の線状又は2次元アレイであり、それぞれが固体支持体(特に限定されないがガラス、プラスチック、又は合成膜)の表面上に形成された一定の領域を有する。マイクロアレイ上の個別の領域の密度は、単一の固相支持体の表面上で検出される固定化ポリヌクレオチドの総数により決定され、好ましくは少なくとも約50/cm2、さらに好ましくは少なくとも約100/cm2、さらに好ましくは少なくとも約500/cm2であるが、好ましくは約1,000/cm2未満である。好ましくはアレイは、全部で約500未満、約1000、約1500、約2000、約2500、又は約3000の固定化ポリヌクレオチドを含む。本明細書においてDNAマイクロアレイは、試料からの増幅もしくはクローン化ポリヌクレオチドにハイブリダイズするのに使用されるチップもしくは他の表面上に置かれた、オリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドのアレイである。アレイ中のプライマーの各特定の群の位置がわかっているため、試料ポリヌクレオチドの本体は、マイクロアレイ中の特定の位置への結合に基づいて決定することができる。
本開示は、過剰発現又は過小発現される遺伝子の同定に依存するため、本開示の1つの実施態様は、同定の遺伝子配列にユニークなポリヌクレオチドへの、試料のmRNA又はその増幅もしくはクローン化したもののハイブリダイゼーションにより、発現を測定することを含む。このタイプの好適なポリヌクレオチドは、他の遺伝子配列中では見つからない少なくとも約20、少なくとも約22、少なくとも約24、少なくとも約26、少なくとも約28、少なくとも約30、又は少なくとも約32の連続した塩基対の遺伝子配列を含有する。前文において用語「約」は、記載の数値からの1の増加又は減少を意味する。さらに好適なものは、他の遺伝子配列中では見つからない少なくとも約50、少なくとも約100、少なくとも約150、少なくとも約200、少なくとも約250、少なくとも約300、少なくとも約350、又は少なくとも約400塩基対の遺伝子配列のポリヌクレオチドである。前文で使用される用語「約」は、記載の数値からの10%の増加又は減少を意味する。このようなポリヌクレオチドはまた、本明細書に記載の遺伝子の配列又はそのユニークな部分にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドプローブと呼ばれる。好ましくは配列は、遺伝子にコードされるmRNA配列、かかるmRNAに対応するcDNA配列、及び/又はこのような配列の増幅物である。本開示の好適な実施態様において、ポリヌクレオチドプローブは、アレイ上、他の装置上、又はプローブを局在化する個々のスポット上に固定化される。
本開示の別の実施態様において、開示された配列のすべてまたは一部は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及びその変法、例えば特に限定されないが、定量的PCR(Q−PCR)、逆転写PCR(RT−PCR)、及びリアルタイムPCR、場合によりリアルタイムRT−PCRのような方法により増幅され検出される。このような方法は、開示された配列の一部に相補的な1つまたは2つのプライマーを利用し、ここでプライマーは核酸合成をプライムするのに使用される。新たに合成された核酸は随時標識され、直接検出され、又は本開示のポリヌクレオチドへのハイブリダイゼーションにより検出される。この新たに合成された核酸は、そのハイブリダイゼーションを可能にする条件下で、本開示のポリヌクレオチド(配列を含有する)と接触される。
あるいは、及び本開示の別の実施態様において遺伝子発現は、該細胞試料中の個々の遺伝子産物(タンパク質)の1つ又はそれ以上のエピトープに特異的な1つ又はそれ以上の抗体の使用により、目的の細胞試料中で発現されたタンパク質の分析により測定される。
このような抗体は好ましくは標識されて、遺伝子産物への結合後の容易な検出を可能にする。
用語「標識物」は、標識分子の存在を示す検出可能なシグナルを生成できる組成物を意味する。適切な標識物には、ラジオアイソトープ、ヌクレオチド発色団、酵素、基質、蛍光分子、化学発光成分、磁性粒子、生物発光成分などがある。従って標識物は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、又は化学的手段により検出可能な任意の組成物である。
用語「支持体」は、ビーズ、粒子、ディップスティック、ファイバー、フィルター、膜、及びシランもしくはケイ酸塩支持体(例えばガラススライド)のような通常の支持体を意味する。
本明細書において「癌組織試料:又は「癌細胞試料」は、対応する癌に罹った個体から単離した組織の細胞含有試料を意味する。試料は、手術(例えば生検)により取り出された物質由来でもよい。このような試料は(培養細胞に対して)初代単離物であり、当該分野で認識されている任意の適切な手段により採取される。ある実施態様において「試料」は、特に限定されないが、研磨微細針吸引を含む非侵襲的方法により採取される。
「乳房組織試料」又は「乳房細胞試料」は、乳癌に罹っていることが疑われるか又は発症するリスクのある個体から単離された乳房組織もしくは液体の試料を意味する。このような試料は(培養細胞に対して)初代単離物であり、特に限定されないが、管洗浄、微細針吸引、針生検、米国特許第6,328,709号に記載された器具や方法、又は当該分野で認識されている任意の他の適切な手段を含む任意の非侵襲的方法により採取される。あるいは「試料」は、特に限定されないが、外科的生検を含む侵襲的方法により採取してもよい。
「発現」及び「遺伝子発現」は、核酸物質の転写及び/又は翻訳を含む。もちろんこの用語は、記載があれば、核酸の転写にのみ関するように限定される。
本明細書において用語「含む(comprising)」及びその同種の用語は、包括的な意味で使用される。すなわち用語「含む(including)」及びその同種の用語と同等である。
ある事象(例えばハイブリダイゼーション、鎖の伸長など)が起きることを「可能にする」条件、又はある事象が起きるのに「適した」条件は、そのような事象が起きることを妨害しない条件である。すなわちこれらの条件は、その事象を可能にする増強する、促進する、又は誘導する。当該分野で公知であり本明細書に記載のそのような条件は、例えばヌクレオチド配列の性質、温度、及び緩衝液条件に依存する。これらの条件はまた、どの事象(例えばハイブリダイゼーション、切断、鎖の伸長又は転写)が所望であるかに依存する。
本明細書において配列の「変異」は、参照配列と比較して、目的の本明細書に開示の遺伝子配列の配列変化を意味する。配列の変異には、置換、欠失、又は挿入などによる、単一ヌクレオチド変化、又は配列中の2つ以上のヌクレオチドの変化を含む。単一ヌクレオチド多型(SNP)はまた、本明細書において配列変異である。本開示は、遺伝子発現の相対的レベルに基づくため、本明細書に開示の遺伝子の非コード領域の変異もまた、本開示の実施において測定される。
「検出」は、遺伝子発現及びその変化の直接及び間接的検出を含む任意の検出手段を含む。例えば「検出可能に少ない」生成物が直接または間接に観察されることがあり、この用語は任意の低下(検出可能なシグナルの欠如を含む)を示す。同様に「検出可能に多い」生成物は、直接にまたは間接に観察されても、任意の上昇を意味する。
開示された配列の発現の上昇及び低下は、正常な細胞中の発現に対してパーセント変化又は倍変化に基づいて、以下の用語で定義される。上昇は、正常な細胞中の発現レベルに対して、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180、又は200%の上昇でもよい。あるいは倍数上昇は、正常な細胞中の発現レベルに対して、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、又は10倍の上昇でもよい。低下は、正常な細胞中の発現レベルに対して、10、20、30、40、50、55、60、65、70、75、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98、99、又は100%の低下でもよい。
特に明記しない場合は、本明細書においてすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
総論
本開示において、データ主導及び情報主導のアプローチにより、5遺伝子腫瘍グレードシグネチャ(MGI)が開発され、強固なRT−PCRアッセイで実施された。MGIの1つの重要な特徴は、その計算が臨床転帰について行われる複雑な重み付けを含まないことである。その代わりにこれは、腫瘍グレードの分子的相関物であり、ここからその予後診断能力を得る(いわゆる「ボトムアップ」アプローチ)。組織学的腫瘍グレードに対するMGIの利点は2つある。第1にCGIと同様に、これはグレード2腫瘍をグレード1様又はグレード3様に分類し、病理的腫瘍グレード分類の曖昧さのほとんどを排除する。第2に、RT−PCRベースのアッセイは臨床検査室で標準化できるため、これはまた主観を排除し、病理的分類に伴う観察者間/内の変動を排除する。
開示された結果はまた、MGIの予後診断正確性が、H:I比を考慮することによっても増強され、その逆も真であることを示し、患者を3つのリスク群に層別する簡単なアルゴリズムであることを示唆する。H:I比はMGIと異なり、エストロゲンシグナル伝達に関連するという観察結果により示唆されるように、MGIとH:I比は、乳癌における2つの異なる予後診断モジュールのようである。
これらの予後診断能力以外に、MGIとH:I比はまた、それぞれ化学療法や内分泌療法の治療効果の予測因子候補である。高腫瘍グレード又は分裂指数は、リンパ節転移陰性の乳癌患者の化学療法の効果を予測する。同様に再発スコアアルゴリズムにおける遺伝子の増殖群は、ER+リンパ節転移陰性患者における化学療法の効果を予測することが証明されている。実際高MGIは、術前パクリタキセルと次に5−フルオロウラシル、ドキソルビシン、及びシクロホスファミドで治療されたER+乳癌患者における完全な病理的応答を予測する。
2つの最近のH:I比研究は、エストロゲンやプロゲステロン受容体を超える内分泌応答性の新規バイオマーカーとしての可能性を証明した。再発性乳癌の研究では、低H:Iは一次タモキシフェン療法に対する応答に強く関連していた。同様に2年間と5年間のタモキシフェン療法を比較する前向き無作為試験からの腫瘍試料の分析では、低HOXB13又は低H:I比は、長期タモキシフェン療法の効果を有意に予測した。これらの結果は、エストロゲンがHOXB13を負に制御し、IL17BR発現を正に制御するという観察結果と一致する。すなわちER+腫瘍では、高HOXB13又はH:I比は、機能不全エストロゲンシグナル伝達のマーカーと見なすことができる。
MGIとH:I比の二重の役割は、早期乳癌の治療法選択のための最近(2005)のSt. Gallen合意ガイドラインの文脈に特に関係する。St. Gallenガイドラインは、ER+リンパ節転移陰性乳癌患者を低リスク群と中間リスク群に分類し、大部分は後者に分類される。重要な治療法決定は、中間リスク群の患者の一部について化学療法を控えるかどうかであり、これは2つの新しい前向き臨床治験の対象とされている問題である。本明細書に記載の表1のコホートでは、St. Gallenガイドラインを適用すると、86%の患者が中間リスク群に分類され、これは、MGIとH:I比を使用して低(43%)、中間(26%)、又は高(31%)リスクに分類することができた。
低リスク患者の優れた無病生存確率は、彼らが毒性の高い化学療法を受けなくても予後を悪くしない可能性があり、一方高リスク群にはより強力な化学療法処方もしくは新しい治療薬が加えるべきであることを示唆する。従ってMGIとH:I比及びその各予測能力に基づくリスクの層別が既存のガイドラインに加えて、現在の治療法のリスク−効果比のバランスを改良できるであろう。
すなわち本開示は、ER+乳癌の強力予後診断因子として、認証されたMGIを含む。さらにMGIとH:I比は一緒になって、それぞれ単独よりも正確な予後情報を提供することができる。これらの2つのバイオマーカーを使用して、転帰の悪い患者のサブセットを同定することは、高MGIと高H:I比の両方を用いて癌患者を標的とする臨床治験の計画を促進する。
MGI
特定の腫瘍グレードに相関して発現される開示された遺伝子は、互いに、特定の予後又は臨床転帰を有する可能性のある対象を同定する能力に寄与する遺伝子にのみに、遺伝子発現分析を集中させる能力を提供する。癌細胞中の他の遺伝子の発現は、これらの区別についての情報を与えることができず、従ってあまりこれらの補助にならないであろう。
本開示の実施において遺伝子の発現レベルを測定するために、当該分野で公知の任意の方法が使用される。ある実施態様では、本明細書で同定され開示される遺伝子にハイブリダイズするRNAの検出に基づく発現が使用される。これは、任意のRNA検出法又は当該分野で同等であると認識されている増幅+検出法、例えば特に限定されないが、逆転写PCR、米国特許出願第10/062,857号(2001年10月25日出願)、ならびに米国仮特許出願第60/298,847号(2001年6月15日出願)、及び60/257,801号(2000年12月22日出願)に開示された方法、及びRNA安定化もしくは不安定化配列の有無を検出する方法により、容易に行われる。
あるいはDNA状態の検出に基づく発現が使用される。メチル化されか又は欠失しているとして同定された遺伝子のDNAの検出は、発現が低下している遺伝子について使用される。これは、当該分野で公知の方法に基づくPCR(特に限定されないがQ−PCRを含む)により容易に行われる。逆に増幅されているとして同定された遺伝子のDNAの検出は、特定の乳癌転帰に相関して発現が上昇している遺伝子について使用される。これは、PCRベースの、当該分野で公知の蛍光インサイチューハイブリダイゼーションアッセイ(FISH)及び染色体インサイチューハイブリダイゼーション(CISH)により容易に行われる。
タンパク質レベルもしくは活性の存在、上昇、又は低下の検出に基づく発現もまた使用される。検出は、タンパク質の検出について当該分野で公知であり適切であると認識されている免疫組織化学試験(IHC)、血液(特に分泌されたタンパク質について)、抗体(タンパク質に対する自己抗体を含む)、剥離細胞(癌から)、質量スペクトル、及び画像(標識リガンドの使用を含む)、に基づく方法により行われる。抗体に基づく方法と画像に基づく方法は、非侵襲的方法(例えば、管洗浄又は微細針吸引)により得られた細胞(ここで癌細胞の起源は不明である)の使用による癌の測定後の腫瘍の局在化に、さらに有用である。標識抗体又はリガンドは、患者内の癌を局在化するのに使用される。
発現を測定するのに核酸ベースのアッセイを使用する1つの実施態様は、固体支持体(特に限定されないが、当該分野で公知のアレイとしての固体基質、ビーズ、又はビーズに基づく方法を含む)上で同定される遺伝子の1つ又はそれ以上の配列の固定化により行われる。あるいは当該分野で公知の溶液ベースの発現アッセイも使用される。
固定化された遺伝子は、ポリヌクレオチドが、遺伝子に対応するDNA又はRNAにハイブリダイズすることができるように、遺伝子にユニークな又は特異的なポリヌクレオチドの形でもよい。これらのポリヌクレオチドは、遺伝子に対応するDNA又はRNAとのハイブリダイゼーションが影響を受けないように、場合により妨害(例えば、ミスマッチ又は挿入された非相補的塩基対による)が最小である完全長の遺伝子又は遺伝子の短い配列(配列の5’末端又は3’末端からの欠失により、当該分野で公知の完全長配列より1ヌクレオチド短いものまで)でもよい。ある場合には、使用されるポリヌクレオチドは遺伝子の3’末端からであり、例えば遺伝子又は発現される配列のポリアデニル化シグナル又はポリアデニル化部位から約350、約300、約250、約200、約150、約100、又は約50ヌクレオチド以内である。ポリヌクレオチドに変異が存在してもハイブリダイゼーションにより検出可能なシグナルが生成されるなら、開示された遺伝子と比較して変異を含有するポリヌクレオチドも使用される。
試料の対象(例えば、そこから試料が得られる患者)の転帰が不明な癌細胞又は乳房細胞から調製される核酸試料の状態を測定するために、又は試料の対象にすでに割り当てられている転帰の確認のために、固定化遺伝子が使用される。本開示を特に限定するものではないが、このような細胞はER+乳癌患者由来でもよい。固定化ポリヌクレオチドは、試料から得られる対応する核酸分子に、適切な条件下で特異的にハイブリダイズするのに充分であることのみが必要である。
本開示は、一部は臨床転帰と腫瘍グレードの、遺伝子発現ベースの予後診断因子及び予測因子の発見に基づき、例えばFFPE組織、凍結試料、又は新鮮な試料からの癌試料を利用する。これらの遺伝子の発現レベルは、本明細書に記載の腫瘍グレードと臨床転帰に相関し、ならびに対象の予後を決定する。同定された遺伝子は、細胞サイクル中で役割を有し、以下のように報告されたピーク発現を有する:
遺伝子 発現ピーク 細胞サイクル中の役割
BUB1B G2/M 分裂紡錘体集合チェックポイント
CENPA G2/M 動原体の集合
NEK2 G2/M 動原体の複製
RACGAP1 未測定 細胞質分裂の開始
RRM2 S DNA複製
これらの遺伝子の配列はすでに報告されており、この分野で解析されている。例えばヒトBUB1B遺伝子はUnigene Hs.631699により同定され、これは、2007年9月6日に273個の対応する配列により解析された。
またこの日に、ヒトCENPA、NEK2、RACGAP1、及びRRM2遺伝子が、それぞれHs.1594(129個の対応配列を用いて)、Hs.153704(221個の対応配列を用いて)、Hs.696319(349個の対応配列を用いて)、及びHs.226390(1348個の対応配列を用いて)により同定される。Unigene識別子のそれぞれに対応する配列は、本発明にあたかも完全に記載され、当業者により適切であるとして本開示で使用されているように、参照することにより本明細書に組み込まれる。
Unigene Hs.631699により同定される12個の代表的BUB1B mRNA配列のうちの2つは、配列リストに開示される;Hs.1594により同定される11個の代表的CENPA mRNA配列のうちの2つは、配列リストに開示される;Hs.15704により同定される17個の代表的NEK2 mRNA配列のうちの2つは、配列リストに開示される;Hs.696319により同定される15個の代表的RACGAP1 mRNA配列のうちの2つは、配列リストに開示される;Hs.226390により同定される24個の代表的RRM2 mRNA配列のうちの2つは、配列リストに開示される。リストに開示される配列は、開示された発明の実施を限定するものではないが、開示された遺伝子である配列に関する分野の重要な情報証拠として提供される。さらに当業者は、これらの遺伝子のそれぞれについて2つまたはそれ以上の公知の配列を整列させて、これらの遺伝子のそれぞれを同定する領域として同一性又は保存された変化の領域を同定することができる。
同じ遺伝子の配列はまた、他の動物種から同定され解析されている。すなわち当業者は、他の動物の遺伝子に対して開示された遺伝子の同定法を明らかに理解している。当業者はまた、異なる動物源からの開示された遺伝子の公知の配列を随時比較して、保存された領域と、他の遺伝子に比較してこれらの遺伝子にユニークな配列とを同定してもよい。
同様に本明細書に記載のSTK15、Survivin、Cyclin B1、及びMYBL2の使用は、これらの遺伝子と、当業者に公知のこれらの遺伝子のそれぞれの代表的配列についての以前の報告により支持される。
当業者には理解されるように、上記の対応する配列のいくつかは、開示された配列の独自性には寄与しない3’ポリA(又は相補鎖上のポリT)ストレッチを含まない。従ってこの開示は、3’ポリA(又はポリT)ストレッチが欠如した配列を用いて行われる。開示された配列の独自性は、開示された遺伝子の核酸中にのみ見つかる配列の一部又はすべて(遺伝子の3’非翻訳部分に存在するユニークな配列を含む)を意味する。本開示の実施に好適なユニークな配列は、ユニークな配列が、一部の個体中に存在する多型に対して特異的であるより、種々の個体中の発現を検出するのに有用であるように、3つのセットのそれぞれについてコンセンサス配列に寄与するものである。あるいは個体又は亜集団にユニークな配列が使用される。好適なユニークな配列は、好ましくは本明細書の開示のポリヌクレオチドの長さの配列である。
本開示の実施において上記配列の(上昇又は低下した)発現レベルを測定するために、当該分野で公知の任意の方法が使用される。本開示のある実施態様において、上記配列を含むポリヌクレオチドにハイブリダイズするRNAの検出に基づく発現が使用される。これは、RNA検出法又は当該分野で同等であると認識されている増幅+検出法、例えば特に限定されないが、逆転写PCR、米国特許出願第10/062,857号(標題「核酸増幅」、2001年10月25日出願)、ならびに米国仮特許出願第60/298,847号(2001年6月15日出願)、及び60/257,801号(2000年12月22日出願)に開示された方法、米国特許第6,291,170号に開示された方法、及び定量的PCRにより容易に行われる。上昇したRNA安定性(発現上昇が観察される)又は低下したRNA安定性(発現低下が観察される)を同定するための方法も使用される。これらの方法は、遺伝子の配列を含むmRNAの安定性を上昇又は低下させる配列の検出を含む。これらの方法はまた、上昇したmRNA分解の検出も含む。
本開示のある実施態様において、上記開示配列の3’非翻訳領域及び/又は非コード領域中に存在する配列を有するポリヌクレオチドは、癌細胞又は乳房細胞中の遺伝子配列の発現レベルを検出するのに使用される。そのようなポリヌクレオチドは、上記開示配列のコード領域の3’部分に存在する配列を随時含有する。コード領域及び3’非コード領域からの配列の組合せを含むポリヌクレオチドは好ましくは、異種配列が介在することなく連続的に配置された配列を有する。
あるいは本開示は、癌細胞又は乳房細胞中の遺伝子配列の5’非翻訳領域及び/又は非コード領域中に存在する配列を有するポリヌクレオチドを用いて、これらの発現レベルを検出するために行われる。そのようなポリヌクレオチドは、コード領域の5’部分に存在する配列を随時含有する。コード領域及び5’非コード領域からの配列の組合せを含むポリヌクレオチドは好ましくは、異種配列が介在することなく連続的に配置された配列を有する。本開示はまた、開示された遺伝子配列のコード領域中に存在する配列を用いて行われる。
非限定性のポリヌクレオチドは、少なくとも約20、少なくとも約22、少なくとも約24、少なくとも約26、少なくとも約28、少なくとも約30、少なくとも約32、少なくとも約34、少なくとも約36、少なくとも約38、少なくとも約40、少なくとも約42、少なくとも約44、又は少なくとも約46個の連続ヌクレオチドの3’又は5’非翻訳領域及び/又は非コード領域からの配列を含む。前文において用語「約」は、記載の数値からの1の増加又は減少を意味する。さらに好適なものは、少なくとも約50、少なくとも約100、少なくとも約150、少なくとも約200、少なくとも約250、少なくとも約300、少なくとも約350、又は少なくとも約400個の連続ヌクレオチドの配列を含むポリヌクレオチドである。前文において用語「約」は、記載の数値からの10%の上昇又は減少を意味する。
本開示のポリヌクレオチド中に存在する上記コード領域の3’末端又は5’末端からの配列は、これらがコード領域の長さにより自然に限定される場合を除いて、上記したものと同じ長さである。コード領域の3’末端は、コード領域の3’側の半分までの配列を含んでよい。逆に、コード領域の5’末端は、コード領域の5’側の半分までの配列を含んでよい。もちろん上記配列又はコード領域、及びこれらの一部を含むポリヌクレオチドは、これらを完全に使用することができる。
3’非翻訳領域及び/又は非コード領域からの配列とコード領域の関連する3’末端とを組合せたポリヌクレオチドは、少なくとも約100、少なくとも約150、少なくとも約200、少なくとも約250、少なくとも約300、少なくとも約350、又は少なくとも約400個の連続ヌクレオチドでもよい。好ましくは使用されるポリヌクレオチドは、遺伝子の3’末端からであり、例えば遺伝子又は発現される配列のポリアデニル化シグナル又はポリアデニル化部位から、約350、約300、約250、約200、約150、約100、又は約50ヌクレオチド以内である。開示された遺伝子の配列に対して変異を含むポリヌクレオチドもまた、変異が存在しても、ハイブリダイゼーションが検出可能なシグナルを生成することができるなら、使用可能である。
本開示の別の実施態様において、上記開示配列の5’末端及び/又は3’末端からのヌクレオチドの欠失を含むポリヌクレオチドが使用される。欠失は、好ましくは、5’末端及び/又は3’末端から、1〜5、5〜10、10〜15、15〜20、20〜25、25〜30、30〜35、35〜40、40〜45、45〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100、100〜125、125〜150、150〜175、又は175〜200ヌクレオチドであるが、欠失の程度は、開示された配列の長さと、発現レベルの検出のためにポリヌクレオチドを使用できる必要性により当然限定される。
上記の開示された配列の3’末端からの本開示の他のポリヌクレオチドには、定量的PCRのためのプライマー及び随時のプローブのポリヌクレオチドがある。ある実施態様においてプライマーとプローブは、遺伝子又は発現される配列のポリアデニル化シグナル又はポリアデニル化部位から、約350ヌクレオチド未満、約300ヌクレオチド未満、約250ヌクレオチド未満、約200ヌクレオチド未満、約150ヌクレオチド未満、約100ヌクレオチド未満、約100ヌクレオチド未満、又は約50ヌクレオチド未満の領域を増幅するものである。
本開示のさらに別の実施態様において、3’末端を含む上記開示配列の一部を含むポリヌクレオチドが使用される。このようなポリヌクレオチドは、開示配列の3’末端から、少なくとも又は約50、少なくとも又は約100、少なくとも又は約150、少なくとも又は約200、少なくとも又は約250、少なくとも又は約300、少なくとも又は約350、又は少なくとも又は約400個の連続ヌクレオチドを含有する。
本開示はまた、乳房細胞中の遺伝子発現を検出するのに使用されるポリヌクレオチドを含む。このポリヌクレオチドは、上記遺伝子中に存在する配列からなるより短いポリヌクレオチドを、自然には組合せでは存在しない異種配列と組合せて含んでよい。非限定例には、クローニングベクターからの、又は本明細書に記載の標識プローブもしくはプライマーを調製するのに使用される制限断片中に存在する短い配列を含む。
方法
本明細書において本開示は、その発現が癌に関する予後情報を提供するのに使用できる遺伝子の本体を含む。特にこれらの遺伝子の発現レベルは、乳癌に関連して使用される。ある方法において遺伝子発現プロフィールは、良好な又は悪い癌再発及び/又は生存転帰を有する患者と相関する(従って、患者を区別できる)。別の実施態様において本開示は、患者からの癌細胞試料中の遺伝子発現を遺伝子発現プロフィールと比較して、介入の無い場合の患者の臨床転帰もしくは治療転帰、又は自然の生物学的転帰を決定する方法を含む。本開示のこれらの実施態様は、患者があるタイプの治療法から利益を受ける可能性があるか、又は患者が別のタイプの治療法が有益であるかを予測する能力についての重要なまだ満たされていない診断ニーズを満たすのに有利に使用される。例えば低いH:I比は、一次タモキシフェン療法への応答と強く関連している。2年間対5年間のタモキシフェン療法を比較する前向き無作為臨床治験からの腫瘍試料の分析は、低HOXB13又は低HOXB13:IL17BRは、長期タモキシフェン療法からの効果を有意に予測する。
同様にグレードI対グレードIIIの腫瘍の存在を予測するMGIの能力は、関連分野の臨床家が、これらの2つのグレードの癌に適切な治療法を選択することを可能にする。MGIは、他の手段により行われたグレードIとグレードIII分類を確認するのみでなく、これはH:I比と組合せて、他の方法により不正確に分類されていた腫瘍を低リスク、中間リスク、又は高リスクとして正確に分類することができる。これは図8に示され、ここで、2005 St. Gallenプロトコールに基づく層別は、開示されたMGIとH:I比の使用により大きく補正される。
従って本開示は、癌細胞を有する患者集団から、予後が良好な患者の亜集団又は予後が悪い患者の亜集団に属するとして、患者を同定する方法を含む。予後の良好な亜集団は、グレードI腫瘍を有するとして同定される対象と同様であることと比較して、予後の悪い患者の亜集団は、グレードIII腫瘍を有するとして同定される対象と同様である。もちろん開示された方法はその応用において必ずしも完全ではなく、ある患者はグレードIとグレードIIIの間の「中間の」腫瘍グレードを有するとして同定されるであろう。この場合、熟練した医師は対象を適切に治療するであろう。
しかし本開示は、グレードI、中間、又はグレードIIIの腫瘍を有する患者の同定のための非主観的手段を与え、この同定は、熟練医師が患者の利益になるように使用することができる。重要なことは、開示された方法は、他の方法による「中間」グレードの腫瘍をグレードI又はグレードIII状態に分類することができることである。これは、(「中間」グレード腫瘍を有するとして治療されていた)対応する患者亜集団にとって大きな利益である。すなわちある実施態様において、「中間」グレード分類の数を減少させる方法が、開示された5遺伝子MGIの使用により提供される。
すなわち本開示は、本明細書に開示の発現パターンを測定することにより、予後及び/又は生存転帰を測定する方法を含む。従って癌患者の予後及び/又は治療法を決定するのに以前は主観的解釈が使用されていたが、本開示は、客観的遺伝子発現パターンを与え、これは、単独で又は主観的基準と組合せて使用されて、患者の転帰(生存及び癌再発を含む)のより正確な評価を与える。ある場合にこの測定は、Bub1Bの発現レベルの検出を含む(ここで発現レベルはグレードI又はグレードIII腫瘍と相関する)。
開示された遺伝子は、腫瘍グレード及び臨床転帰と相関するとして同定され、従ってその発現レベルは、患者の治療プロトコールの決定に関係する。従ってある実施態様において本開示は、本明細書に記載の発現レベルについて患者からの癌細胞試料を測定して腫瘍グレードを決定し、かかるグレードの腫瘍を有する患者の治療法を選択することにより、該患者の予後を決定することにより、癌患者の治療法を決定する方法を提供する。ある場合にはこの測定は、Bub1Bの発現レベルの検出を含む(ここで発現レベルはグレードI又はグレードIII腫瘍と相関する)。
ある実施態様のセットで本開示の方法は、Bub1Bの発現レベルについて癌に罹った対象からの癌細胞試料を測定することを含み、ここで発現レベルは、癌をグレードI又はグレードIII腫瘍に対応するとして分類するか、又は対象を、癌再発の可能性の予後を有するとして同定するか、内分泌療法、化学療法、又は放射線療法に対する対象の応答性を予測する。この測定は、本明細書に記載の又は当業者に公知の適切な手段で、遺伝子の発現レベルを測定又は検出又は決定することを含む。多くの場合、癌は乳癌であり、対象はヒト患者である。さらに癌細胞は、腫瘍及び/又はリンパ節転移陰性(癌についてリンパ節転移陰性)もしくはリンパ節転移陽性(癌についてリンパ節転移陽性)の対象からのものでもよい。
もちろん本方法は、MGIの他の4つの遺伝子の1つ又はそれ以上の発現の測定とともに行われ、ここで組合せて使用される遺伝子の発現レベルは、本方法により提供されるように分類、同定、又は予測に使用される。発現レベルの必要なレベルは、使用される遺伝子について本明細書に記載の方法により同定されるものでもよい。さらに測定は、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)で又は本明細書に記載の他の分析法で随時使用される試料からのRNAの調製を含む。PCR法は、随時RT−PCR(逆転写PCR)でも定量的PCR(例えばリアルタイムRT−PCR)でもよい。あるいは測定は、関連分野で公知のアレイ(例えばマイクロアレイ)の使用により行われる。場合により癌細胞の試料は、該対象から取り出されたか又は得られた組織から分離される。本明細書において種々のタイプの試料が使用され、非限定例としてホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料がある。本明細書において本方法は、本明細書に開示の試料中のH:I比(HOXB13とIL17BR発現レベルの比)を測定又は決定することを含む。
非限定例においてMGIのすべての5つの遺伝子が測定され、本明細書に記載のように、MGIについて「高リスク」(カットオフより上)である値に対応する発現レベルを検出するのに、又はMGIについて「低リスク」(カットオフより下)である値に対応する発現レベルを検出するのに使用される。ある場合には、MGIカットオフ閾値は0(ゼロ)であり、ここで、発現レベルの測定値は0(ゼロ)で標準偏差が1に標準化される。別の実施態様においてカットオフは、ちょうどもしくはほぼ0.05、ちょうどもしくはほぼ0.10、ちょうどもしくはほぼ0.15、ちょうどもしくはほぼ0.20、ちょうどもしくはほぼ0.25、ちょうどもしくはほぼ−0.05、ちょうどもしくはほぼ−0.10、ちょうどもしくはほぼ−0.15、ちょうどもしくはほぼ−0.20、ちょうどもしくはほぼ−0.25、ちょうどもしくはほぼ−0.30、ちょうどもしくはほぼ−0.35、ちょうどもしくはほぼ−0.40、ちょうどもしくはほぼ−0.45、ちょうどもしくはほぼ−0.50、ちょうどもしくはほぼ−0.55、ちょうどもしくはほぼ−0.60、ちょうどもしくはほぼ−0.65、ちょうどもしくはほぼ−0.70、ちょうどもしくはほぼ−0.80、ちょうどもしくはほぼ−0.85、ちょうどもしくはほぼ−0.90、ちょうどもしくはほぼ−0.95、ちょうどもしくはほぼ−1.0、ちょうどもしくはほぼ−1.1、ちょうどもしくはほぼ−1.2、ちょうどもしくはほぼ−1.3、ちょうどもしくはほぼ−1.4、ちょうどもしくはほぼ−1.5、ちょうどもしくはほぼ−1.6、ちょうどもしくはほぼ−1.7、ちょうどもしくはほぼ−1.8、ちょうどもしくはほぼ−1.9、又はちょうどもしくはほぼ−2.0、又はそれ以下でもよい。H:I比について、その測定は本明細書で参照されるMa et al. (2004)とMa et al. (2006)に記載されたように行われる。例えば0.06の値は、試料が「高リスク」(>0.06)、又は「低リスク」(≦0.06)H:I比を有するかどうかを測定するのに使用される。
閾値又はカットオフの0(ゼロ)をすべての5つの遺伝子のMGIについての非限定例として使用することにより、開示された方法は、ある試料について2つの測定結果を与える:0(ゼロ)より大きい値に対応する「高リスクMGI」と値≦0に対応する「低リスクMGI」。「高リスクMGI」は「高リスク」癌(乳癌を含む)を示し、これは当該分野で公知の方法と基準により規定されるグレードIIIの癌と同様である。「低リスクMGI」は「低リスク」癌(乳癌を含む)を示し、これは当該分野で公知の方法と基準により規定されるグレードIの癌と同様である。
2つの群への癌の層別又は分類は、図1のパネルCと図4のパネルBに示され、ここで「高リスクMGI」により同定されるリスクレベルは、癌再発の可能性が高いこと(例えば、癌転移、又は乳癌の再発を含む遠隔転移)を示す。多くの実施態様において、タモキシフェン又は他の内分泌療法が有るか無いかの治療に関係なく、この再発のリスクは存在する。本明細書に開示の実施態様において、再発はDCISの局所的再発でもよい。「低リスクMGI」により同定されるリスクレベルは、癌再発の可能性が低いこと(乳癌再発の可能性が低いことを含む)を示す。多くの実施態様において、タモキシフェンが有るか無いかの治療に関係なく、この低下リスクは存在する。再発リスク又は再発の可能性の無いことは、経時的なリスクと見なされる(例えば、約1年、約2年、約3年、約4年、約5年、約6年、約7年、約8年、約9年、約10年、約11年、約12年又はそれ以上の期間)。従ってMGIにより与えられるリスク評価は、対象について癌再発及び/又は生存転帰の予後診断指標として使用される。
本開示はさらに、本明細書に記載の方法により測定される再発リスクに対して、MGI値に基づく経時的な再発の測定を含む。図9は、MGI値2.1の非限定例と、5年以内の癌再発の19%リスクの指標を示す。この図はさらに、再発リスクがMGIの値に関連すること、及び閾値又はカットオフ値として0(ゼロ)の選択は、他の値も使用されるため、非限定的であることを示す。
H:I比と組合せると、4つの可能なアッセイ結果は以下の通りである:
1)「高リスクMGI」と「高リスクH:I」、これは「高リスクMGI」単独のように「高リスク」と見なされる;
2)「高リスクMGI」と「低リスクH:I」、これは癌再発の「中間リスク」と同様と見なされる; 3)「低リスクMGI」と「高リスクH:I」、これは「低リスクMGI」単独のよう
に「低リスク」と見なされる;及び
4)「低リスクMGI」と「低リスクH:I」、これは「低リスクMGI」単独のように「低リスク」と同様と見なされる;
従ってMGIとH:Iの組合せは、その腫瘍生物学が異なり、異なる患者転帰を引き起こすことが観察されている3つの異なるサブタイプを同定する。例えば患者が利益を受けるであろうという予測に基づいて、腫瘍患者を内分泌療法(例えば非限定例としてタモキシフェン)で治療するのに、中間リスクが使用される。これに対して「高リスクMGI」及び「高リスクH:I」の患者は、内分泌単独療法から利益を受ける可能性は低い。従ってこの評価は、リスクの単純な連続ではない。この評価は、治療法選択にあたって有用な基礎となる生物学を特定するため、熟練臨床家の助けになる。治療法を選択するために臨床家は、患者が高リスク(すなわち高/高)である時、この患者が内分泌単独療法により利益を受けない可能性があることを知ることは必須情報であると、決定できる。これは臨床家が、より積極的な治療を考慮及び/又は選択又は適用することを可能にするか、又はこの患者が内分泌単独療法に抵抗性の腫瘍を標的とする試験に参加することを示唆する。図5のパネルCとDは、異なる患者集団中のこれらの3つのリスク群の応用を証明する。あるいは、これらのMGIとH:I測定値の可能な組合せは、上記したMGI単独の使用と同じように指標として使用される。
タモキシフェンによる治療にもかかわらず再発のリスクを示すMGIの能力はまた、図10のパネルAとBに示され、ここで「高リスク」MGIは、単独療法としてのタモキシフェンによる治療にもかかわらず再発の指標として使用される。もちろんMGIとH:I測定値の組合せも、この目的に使用される。本開示はさらに、本明細書に記載の内分泌抵抗性癌を標的とするインヒビターに対する応答性を予測するために、MGI単独、H:I単独、又はMGIとH:Iとの組合せの使用を含む。内分泌療法に対する非応答性と、開示されたインヒビターに対する応答性の可能な指標は、開示方法により測定される予後診断及び予測指標に基づく治療法を選択するための方法である、本開示の別の態様と組合せてもよい。従って上記した「高リスクMGI」、「高リスク」H:I、又はMGIとH:I測定値の組合せにおいて、本開示の実施態様は、タモキシフェン又は他の型の内分泌療法に対する応答性を改善するためのインヒビターで対象を選択し随時治療することをさらに含む方法を含む。ある場合には本方法は、タモキシフェン又は他の型の内分泌療法による治療をさらに含む。内分泌抵抗性癌を標的とするインヒビターに対する応答性に関連する上記記載はまた、本明細書に記載のH:I比単独について測定する場合にも適用される。
本開示はさらに、他の型の内分泌療法(例えば、SERM、SERD、又はAIによる治療)に対する非応答性の指標として、随時H:I測定とともに「高リスク」MGIについて測定することを含む。もちろん本開示はまた、タモキシフェン及び他のSERMならびにSERD又はAIに対する応答性の指標として、随時H:I測定とともに「低リスク」MGIについて測定することを含む。
内分泌療法に対してこれらの可能な予測はまた、本明細書に開示の治療法を選択する方法に関連して使用される。例えば方法は、内分泌療法ではない化学療法及び/又は放射線療法(ここで応答の欠如が予測される)のような他の治療法を含んでよい。逆にこの方法は、応答が予測される場合、内分泌療法の選択を含む。
さらなる実施態様において、「高リスク」MGI、「高リスク」H:I、又はMGIとH:I値の組合せについてのアッセイはまた、内分泌療法内の相対的応答性(例えば、SERMと比較してAIによる治療に対する良好な応答性)の指標として使用される。非限定例として、「高リスク」MGI値は、タモキシフェンと比較してAI(例えば、レトロゾール)に対する応答性の指標として使用される。もちろん本開示はさらに、このような予測に基づくAIによる治療法を選択する方法を含む。
内分泌療法以外に、MGI単独、H:I単独、又はMGIとH:I測定値の組合せはまた、化学療法に対する非応答性を示すのに使用される。図11に示すように、「高リスク」MGIは、非限定例としてパクリタキセル、5−フルオロウラシル、ドキソルビシン、及びシクロホスファミドを用いる化学療法に対する抵抗性を予測する。もちろん本開示はさらに、単独療法として化学療法を選択しないで、非限定例として他の治療法(例えば放射線療法)を選択する方法を含む。
内分泌療法や化学療法以外に、本開示は、放射線治療に対する癌の応答性の予測因子として、MGI単独、H:I単独、又はMGIとH:I測定値の組合せを含む。「高リスク」MGIは、例えば手術介入後の放射線療法に対して癌患者が応答性であることを予測するのに使用される。この方法はさらに、手術介入後の放射線療法に対して対象が応答性である可能性があるか又は可能性が無いことを同定することを含む。もちろん本開示はさらに、その応答性の予測に基づいて、放射線療法を選択する方法を含む。
本開示はさらに、更年期前女性及び更年期後女性の臨床的応答性の予後診断因子又は予測因子として、MGI単独、H:I単独、又はMGIとH:I測定値の組合せを測定する方法を含む。図12は、生存転帰に基づいて両方の群の女性を層別する「高リスク」MGIの能力を示す。更年期後女性は年齢≧50才の女性として定義され、更年期前女性は50才未満の女性として定義される。両方の群において「高リスク」MGIは、「低リスク」MGIに対して経時的に癌再発の可能性が上昇した指標である。もちろん本開示はさらに、女性の試料から測定されたMGI値、H:I値、又は両方の値の組合せに基づいて、更年期前及び更年期後女性について適切な治療法を選択しない方法を含む。
さらに一般的には、癌患者の治療法を決定する方法は、上記のMGIについて測定することから始まる。測定された値は、グレードIもしくはグレードIII腫瘍に対応して癌を分類するか、又は癌再発の可能性の予後を有するとして、又は本明細書に記載の治療法に対する応答性もしくは非応答性を有するとして対象を同定するのに使用される。従ってこの方法は、そのような腫瘍又はそのような予後、又はそのような応答性もしくは非応答性を有する患者について、治療法を選択することを含む。ある場合には、予後が悪く、及び/又は他の治療法に非応答性であるため、選択される治療法は、手術、及び化学療法、及び/又は放射線療法を含むことがある。
本開示のさらなる実施態様は、良性遺伝子を有すると診断された対象の腫瘍グレード又は癌リスクを決定する方法を含む。この方法は、Bub1B、CENPA、NEK2、RACGAP1、及びRRM2の発現レベルについて、対象からの乳房細胞の試料を測定することを含み、ここで該発現レベルは、グレードIもしくはグレードIII腫瘍又は癌の「高リスク」もしくは「低リスク」と相関する。この方法の実施態様は、発現レベルに基づいてMGI値を測定すること、及び場合によりこれを使用して対象の治療法を選択することを含む。
別の実施態様において本開示は、DCISを有するとして診断された対象の腫瘍グレード又は局所的癌再発のリスクを決定する方法を含む。この方法は、Bub1B、CENPA、NEK2、RACGAP1、及びRRM2の発現レベルについて、対象からの乳房細胞試料を測定することを含み、ここで該発現レベルは、グレードIもしくはグレードIII腫瘍又は局所的癌再発の「高リスク」もしくは「低リスク」と相関する。
上記の一部は、MGIのすべての5つの遺伝子を組合せて使用することで説明されているが、本開示は特に、開示方法の実施において5つの中からの5つ未満の個々の遺伝子の使用を含む。さらに、MGIもしくはH:I比の1つ又はそれ以上の遺伝子とともに他の遺伝子を上記に含めることも、明示的に開示される。同様に、MGI遺伝子について、全体にもしくは一部に他の指数の置換を含むH:Iの使用も明示的に開示される。
従ってMGIの5つの遺伝子は、分子的発現表現型を腫瘍グレード及び/又は癌転帰と正確に相関させる能力を上昇させるために、高い正確度で単独で又は組合せで使用される。この相関は、本明細書に開示された癌再発及び/又は生存転帰の決定を分子的に提供する方法である。相関遺伝子は、細胞と組織の分類:診断及び/又は予後の決定;及び治療法の決定及び/又は修正において、追加的に使用される。
鑑別能力は、関連するとして個々の遺伝子の発現の同定により付与されるのであって、実際の発現レベルを測定するのに使用されるアッセイの方によってではない。アッセイは、「トランスクリプトーム(transcriptome)」(ゲノム中の遺伝子の転写部分)又は「プロテオーム(proteome)」(ゲノム中の発現された遺伝子の翻訳部分)中の遺伝子の発現を定量的又は定性的に反映する限り、同定される個々の遺伝子の同定性特徴を利用する。同定性特徴には、特に限定されないが、エンコード(DNA)又は発現(RNA)するのに使用されるユニークな核酸配列、該遺伝子もしくはこれに特異的なエピトープ、又は該遺伝子にコードされるタンパク質の活性がある。かならず必要なものは、癌転帰と、発現アッセイで使用される適切な細胞含有試料とを区別するのに必要な遺伝子の本体である。
同様に細胞含有試料の性質は限定されず、本開示の方法では、新鮮な組織、新たに凍結された組織、及び固定組織(例えばホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織)が使用される。
ある実施態様において本開示は、単一の細胞、又は混入細胞から分離、単離もしくは精製された(単純な生検によって可能なものより)均一な細胞集団からの、全体的又はほぼ全体的遺伝子発現を分析することによる、遺伝子発現パターンの同定を提供する。無数の遺伝子の発現は、異なる患者からの細胞間でならびに同じ患者試料からの細胞間で変動するため、遺伝子発現のレベルは、患者の細胞でもしくは患者間でその発現が比較的一定である1つ又はそれ以上の「対照」もしくは「標準化」遺伝子と比較して測定される。
別の態様において本開示は、個々の発現パターンによって作成されるモデルにより同定される遺伝子の発現を検出するための、物理的及び方法論的手段を含む。これらの手段は、遺伝子の発現を基礎となるDNA鋳型、遺伝子を発現するための中間体としてのRNA、又は遺伝子により発現されるタンパク質生成物の1つ又はそれ以上の側面を測定することに関する。
本開示により与えられる1つの利点は、患者の癌再発及び/又は生存転帰を同定するための、同定される遺伝子又はその遺伝子発現の以後の解析に影響を与える可能性のある、混入した非癌細胞(例えば、浸潤性リンパ球又は他の免疫系細胞)が存在しないことである。遺伝子発現パターンを測定するのに多くのタイプの細胞を含む生検が使用される場合、このような混入が存在する。
本開示は、主にヒトの癌(例えば乳癌)について説明されるが、動物の癌について実施してもよい。本開示の適用のための好適な動物は、哺乳動物、特に農業応用に重要な哺乳動物(例えば、特に限定されないが、ウシ、ヒツジ、ウマ、及び他の「家畜動物」)、癌の動物モデル、及びヒトのペット動物(例えば、特に限定されないが、イヌやネコ)である。
本開示により提供される方法はまた、全体又は一部を自動化してもよい。
キット
本開示の方法で使用される材料は、理想的には公知の方法で作成されるキットの調製に適したものである。すなわち本開示は、腫瘍のグレード分類又は癌転帰の測定用に開示された遺伝子の発現を検出するための物質を含むキットを提供する。このようなキットは、本開示の方法での使用に関する、同定的記載、又は標識物、又は説明書とともに、随時薬剤を含む。このようなキットは、本方法で使用される種々の試薬(典型的には濃縮物の形で)、例えばあらかじめ調製されたマイクロアレイ、緩衝液、適切なヌクレオチド三リン酸(例えば、dATP、dCTP、dGTP、及びdTTP;又はrATP、rCTP、rGTP、及びrUTP)、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、及び本開示の1つ又はそれ以上のプライマー複合体(例えば、RNAポリメラーゼと反応性のプロモーターに結合した適切な長さのポリ(T)又はランダムプライマー)の1つ又はそれ以上をそれぞれ有する容器を含んでよい。典型的には説明書のセットも含まれる。
本開示を一般的に説明し、これは以下の例を参照することによってより容易に理解できるが、これらは例示目的であり、特に明記しない場合は、決して本開示を限定するものではない。
総論
患者と腫瘍試料
公のすでに公表されているマイクロアレイデータセット(受け入れ番号GSE3494、GSE1456)をGene Expression Omnibus (GEO, http://ncbi.nih.gov/geo)からダウンロードした。GSE3494(Uppsalaコホート)は、1987年〜1989年までUppsala County, Swedenで行われた集団ベースのコホートからの251人の患者からなり、彼らは、受けているアジュバント全身性療法において不均一であった(未治療、又は内分泌療法及び/又は化学療法で治療された)。Miller LD,Smeds J,George J, et al Proc. Natl. Acad.Sci. USA 102:13550-5,2005を参照。臨床転帰データ(乳癌特異的死亡)は、平均追跡調査が10年の236人の患者から得られた。GSE1456(Stockholmコホート)は、1994年〜1996年にKarolinska Hospital, Stockholm Swedenで行われた、159人の乳癌患者の同様のシリーズからなる。GSE3494とGSE1456ともに、Affymetrix U133AとU133Bアレイ(Affymetrix, Santa Clara,CA)で分析した凍結腫瘍試料からの遺伝子発現データを含む。
239人の患者の第2のコホートは、後ろ向き症例コホート計画(Pawitan Y, Bjohle J, Amler L, et al Breast Cancer Res 7:R953-64, 2005)を使用し、1991年〜1999年にマサチューセッツ総合病院(Massachusetts Genera Hospital)で治療されたエストロゲン受容体陽性乳癌の683人のステージI〜ステージIII患者から得られた。臨床的追跡調査データは、腫瘍記録と病院の記録から得られた。症例はすべて、追跡調査中に遠隔転移を発症した患者であり、対照は、最後の追跡調査で無病のままであった患者からランダムに選択され、対照対症例の比は2:1であった。さらに対照は、アジュバント療法と診断の時点について、症例と頻度一致させた。約80%の症例と対照について、両方の臨床転帰データと、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍ブロックはうまく受領された。
最後のコホートは、79の症例と160の対照からなり、その患者と腫瘍の特徴を表1に要約した。この試験は、地域の治験審査委員会(Institutional Review Boards)により認可された。この最後のコホートは、既に記載されているOxfordシリーズの84からなった(Loi S, Haibe-Kains B, Desmedt C, et al:ゲノムグレードによるエストロゲン受容体陽性乳癌における臨床的に明確な分子サブタイプの定義、J Clin Oncol 25:1239-46,2007)。すべての患者はエストロゲン受容体陽性乳癌を有し、リンパ節転移陰性であり、腫瘍アジュバント単独療法で治療された。この試験は、あらかじめ単離された凍結腫瘍試料からの総RNAの一部を使用した。
H/IとMGIのリアルタイムRT−PCRアッセイ
HOXB13とIL17BRのプライマーとプローブ配列、ならびに対照遺伝子ESR1、PGR、CHDH、ACTB、HMBS、SDHA、及びUBCを、既に記載されているように使用した(Ma XJ, Hilsenbeck SG, Wang W, et al J Clin Oncol 24:4611-9, 2006)。5つの分子グレード遺伝子(BUB1B、CENPA、NEK2、RACGAP1、及びRRM2)ならびにERBB2(HER2)のプライマーとプローブ配列は、Primer Express(ABI)を使用して調製した。
各FFPE試料について、2つの7μm組織切片をRNA抽出に使用した。腫瘍含量を濃縮するために肉眼的切開を行った。既に記載されているように(Ma et al.,同上)、ABI 7900HT装置(Applied Biosystems, Inc.)を使用してRNA抽出、逆転写、及びTaqMan RT-PCRを行った。サイクリング閾値数(CT)は、4つの参照遺伝子(ACTB、HMBS、SDHA、及びUBC)についての平均CTに標準化した。これらの遺伝子の使用は、これらの遺伝子と当業者に公知のこれらの遺伝子のそれぞれの代表的配列に関する以前の報告により支持される。標準化されたCTを取って、相対的遺伝子発現レベルとした。
H/I、MGI、及びGGIの計算
一般に及びMGIについて、開示された遺伝子の発現レベルを組合せて、臨床転帰の強い予後診断因子及び予測因子として機能する単一の指数を作成することが好ましい。この指数は、使用される遺伝子の発現レベルの要約であり、主成分解析から決定される係数を使用して、2つ以上の開示された遺伝子を組合せて単一の指数にまとめる。この係数は、代表的データセット全体の各遺伝子の発現レベルの標準偏差、および各試料中の各遺伝子の発現値のような因子により決定される。代表的データセットは、本明細書に開示された参照遺伝子の平均発現値に基づいて品質管理される。例えば、1。
言い換えると、及びMGIについて、マイクロアレイ又はRT−PCRからの5つの遺伝子の標準化発現レベルが、各データセット内の試料全体に平均0で標準偏差1に標準化され、次に一次主成分を使用して主成分分析(PCA)を使用して、試料について1つの指数にまとめた。各データセット内の一次発現データの標準化は、異なるプラットフォーム(マイクロアレイ及びRT−PCR)と試料のタイプ(凍結及びFFPE)を考慮するのに必要であった。その結果及びスケール化パラメータに従って、指数を規定する発現値の要約の式が作成される。次に、データセット全体の遺伝子の発現レベルの平均、標準誤差、及び標準偏差(信頼区間を有する)に基づいて、スケール化パラメータの精度を試験することができる。従ってこの指数の式の作成は、データセット、参照遺伝子、及びMGIの遺伝子に依存する。
HOXB13:IL17BR比は、既に記載されているように(Ma et al.,同上)HOXB13とIL17BRとの標準化発現レベルの差として計算された。表1のコホートを標準化するために使用されるHOXB13とIL17BRの平均と標準偏差は、エストロゲン受容体陽性リンパ節転移陰性乳癌患者の別の集団ベースのコホートからの190のFFPE組織切片の解析から得られた。
各遺伝子と各試料について二重測定の値を平均するまえに、MGIについて明らかに異常な生CT値を除去した。次に、各遺伝子について平均した生CT値を、4つの参照遺伝子(ACTB、HMBS、SDHA、及びUBC)の平均したCT値により標準化した。5つの遺伝子についての標準化発現レベル(ΔCT)を組合せて、試料当たり1つの指数として、これはあらかじめ決められたカットオフ値(例えば0)と比較することができる(ここで高MGIはカットオフより大きく、低MGIはカットオフより小さい)。
ゲノムグレード指数(GGI)は、97個の遺伝子を示す128個のAffymetrixプローブセットを使用してマイクロアレイデータから計算し、既に記載されているように(Sotiriou et al., 前述)、グレードI腫瘍について平均が−1でグレードIII腫瘍について+1になるように、各データセット内でスケール化した。
カットポイントと統計解析
H/Iカットポイント:アジュバントタモキシフェンで治療した患者を、再発の低リスクと高リスクに層別するために、すでに規定したHOXB13:IL17BR比についてカットポイント0.06を、この試験に直接適用した。
MGIカットポイント:MGIの計算とカットポイントは、臨床転帰データを使用せずに規定し、代わりに自然のカットポイントを使用した。Uppsalaコホート中のMGIの初期の解析は、平均(0)をカットポイントとして使用してグレードIとグレードIIIの良好な区別を示し、MGIのMCLベースのクラスタリングもまた、自然のカットポイントが約0の二峰性分布を示した。このカットポイントはさらに、受信者動作特性(ROC)解析により支持された。
ゲノムグレード指数(GGI):GGIは、既に記載されているように(Sotiriou et al.,前述)、カットポイント0で二分された。
統計解析:対数順位検定を用いるKaplan-Meier解析とCox比例障害回帰を行って、遺伝
子発現指数と臨床転帰の関連を評価した。多変量Cox回帰モデルを使用して、既知の予後診断因子について調整後、遺伝子発現指数の予後診断能力を評価した。
比例障害(PH)推定を、スケール化Schoenfeld 残差によりチェックした。PH推定に一致しない変数を、層別によりモデル内で調整した。表1のコホートの症例コホート計画を説明するために、我々は加重Kaplan-Meier解析とCox回帰モデルを、症例コホート計画を扱うための変更を加えて使用した(R(www.r-project.org)の調査パッケージで実施されたように19、20参照)。Cox回帰モデル中の二分されたMGIとH:I比の相互作用を検定するために、表1のコホートでWald統計量を使用し、最後のコホートで確率比検定を使用した。
連続変数とカテゴリー要因との相関を、2水準を超える要因についてのノンパラメトリック2試料Wilcoxon検定又はkruskal-Wallis検定を使用して調べた。
すべての統計解析は、R統計環境で行った。すべての有意検定は両側検定で、p<0.05を有意と見なした。
乳癌患者のMGIの予後診断性能
乳癌患者中の臨床転帰を予測するMGIの能力を、公に利用可能なマイクロアレイデータセットを使用して調べた。まずMGIを、2つの独立したデータセット中の既に記載された97遺伝子ゲノムグレード指数(GGI)と比較した。ROC解析は、グレードI腫瘍とグレードIII腫瘍の区別においてMGIとGGIが同等であることを示した(図2)。Kaplan-Meier解析では、カットポイント0で二分したMGIは、両方のデータセットで患者を、有意に異なる乳癌死亡リスクを有する2つのサブグループに分類し、生存曲線と障害比(HR)は、GGIにより作成されたものに匹敵した(図2)。すなわちこれらの結果は、5遺伝子指数が、はるかに多い複雑な97遺伝子シグネチャの予後診断性能を再現できることを証明した。MGIはGGIからは完全に独立して開発されたが、5つの遺伝子の内の4つ(BUB1B、CENPA、RACGAP1、及びRRM2)は97遺伝子シグネチャ中であり、第5の遺伝子(NEK2)は、GGIに含まれる112のグレードIII関連プローブからわずかに2位下であることが指摘されている。
次に、Rotterdam76遺伝子予後診断シグネチャを検証するために行われたTRANSBIG試験でMGIを調べた(Desmedt C, Piette F, Loi S, et al: TRANSBIG多施設独立検証シリーズのリンパ節転移陰性乳癌患者の76遺伝子予後診断シグネチャの強い時間依存性、Clin Cancer Res 13:3207-14, 2007)。これは、MGIと他の検証予後診断シグネチャとを公平に比較することを可能にした。全コホートで、MGIについてカットポイント0を適用することは、異なるリスクの遠隔転移を有する2つの患者群を与え(HR=2.3、95%CI 1.2〜4.2、p=0.0064)、ここで76遺伝子シグネチャによるリスク層別はほんのわずかに有意であった(p=0.046)。図3を参照。
さらに、ER+グレードIもしくは2サブセット(n=97)のリスク層別がより困難な患者群では、MGIは、より再発リスクが有意に高い患者のサブグループ(HR=3.3,95%CI 1.3〜8.4、p=0.0085)を同定し、76遺伝子シグネチャはこれをできなかった(HR=1.4,p=0.57)。
まとめると、全部で608人の患者の3つの大きなマイクロアレイデータセットでは、MGIは、はるかに多い複雑なシグネチャと同等の又はこれを超える強い予後診断因子として一貫して機能した。
MGIのRT−PCRアッセイの開発と検証
5MGI遺伝子のプライマーとプローブを、TaqManリアルタイムPCR(RT−PCR)アッセイフォーマットのために設計した(表2)。
マイクロアレイベースのプラットフォームと比較して、リアルタイムRT−PCRは定量において、特にホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料からの部分的に分解されたRNA試料(Cronin M, Pho M, Dutta D, et al:長期保存パラフィン包埋組織における遺伝子発現の測定:92遺伝子逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応アッセイの開発と性能、Am J Pathol 164:35-42,2004)(これは臨床の場で最も一般的なタイプの試料である)の分析においてより高い精度を与えた。
RT−PCRベースのMGIアッセイを検証するために、後ろ向き症例コホート試験を行った。症例は、1991年〜1999年にマサチューセッツ総合病院(Massachusetts General Hospital)で治療されたが、追跡調査中に遠隔転移を発症した患者であり、対照は同じ期間にクリニックに入り、最後の追跡調査で無病のままであった患者からランダムに選択された(上記表1参照)。患者は、全身性療法無し、ホルモン療法、化学療法の標準的治療により治療した。MGIの治療法非依存性の予後診断有用性を調べるために、対照は全身治療に関する。
上記で解析したマイクロアレイデータセットと同様に、RT−PCRベースのMGIもまた、上記と同じカットポイントの0を使用して、グレードI腫瘍とグレードIII腫瘍を正確に区別した(86%の正確度)。Kaplan-Meier解析は、高MGIが、リンパ結節状態に無関係に遠隔転移の高リスクと有意に関連していることを示した(図4、パートB〜D)。腫瘍サイズ、腫瘍グレード、リンパ節転移状態、全身性治療について調整された多変量Cox回帰モデルでは、MGIは障害比4.7(2.1〜10.8)で高度に有意なままであった(表3)。
従ってRT−PCRにより測定されるMGIは、腫瘍グレードとの高い相関と、全部の独立したコホートでの強固な予後診断性能を維持した。
MGIとHoxB13:IL17BRの相補的予後診断的価値 HoxB13:IL17BR比が、MGIに追加の予後診断的情報を与えるかどうか、そしてその逆があるかどうかを証明するために、我々は、リンパ節転移陰性の内分泌療法治療患者において両方の指数を解析した(n=93)。この比率はリンパ節転移陽性患者では予後診断的でないことが証明されており、これはこのコホートでも確認された。この
患者群では、MGIとH:I比はそれぞれ、遠隔転移のリスクに強く関連していた(図5、パートAとB)。
両方をまとめて考慮すると、腫瘍が高いH:Iを有する時のみ、MGIは患者を低リスク群と高リスク群に層別するのに非常に有効であり、同様にH:I比は、高MGIを有する腫瘍の患者を層別する時のみ有効であった(図5E)が、これらの2つの指数の相互作用の正式な検定では、有意に達しなかった(p=0.09)。従ってMGIとこの比率を組合せて、患者を3つのリスク群に層別した(低リスク=両方の指数が低いか又はH:Iのみ高い;中間リスク=MGIのみ高い;高リスク=両方が高い、それぞれ患者の48%、24%、28%を占める)。
これらの3群のKaplan-Meier解析は、高MGIとH:Iは一緒に、高リスク群の非常に悪い転帰を予測することを示した(障害比対低リスク群=40.2、95%CI 5.0〜322.6)。これは図5のパートCに例示される。10年間遠隔転移の無い生存確率のKaplan-Meier推定値は、低リスク群、中間リスク群、高リスク群についてそれぞれ98%(96〜100%)、87%(77〜99%)、及び60%(47〜78%)であった。さらに多変量Cox回帰モデルで全身性療法と標準的予後診断因子(年齢、腫瘍サイズ、及びグレード)について調整した後は、組合せ指数は統計的に有意性が高いまま(表4)であり、MGIとH:Iの組合せの強い独立した予後診断的価値を証明している。
MGIとH:I比の組合せの予後診断力をさらに証明するために、我々はこれらの2つの指数を、別々の独立したコホートで、アジュバントタモキシフェン療法で均一に治療された84人のER+リンパ節転移陰性患者について調べた(最後のコホート)。これらの2つの指数に上記と同じカットポイントと同じ組合せアルゴリズムを適用後、低リスク群、中間リスク群、及び高リスク群は、患者のそれぞれ44%、24%、及び32%からなり、表1のコホートで見られる比率と一致した。再度Kaplan-Meier解析は、両方の指数が高い腫瘍を有する高リスク群が最も悪い転帰を有し(HR対低リスク群=7.9(2.2〜28.2)(図5D)、確率比検定は、これらの2つの指数の統計的に有意な相互作用を示した(p=0.036)。
これらをまとめると、2つの独立したコホートで、MGIとH:I比は、互いに追加の予後診断情報を与え、両方の指数を組合せると、内分泌療法にもかかわらず非常に悪い転帰を有する患者のサブセット(約30%)を同定するのに特に有効であり、これらの患者において追加の療法の必要性を示していた。
HoxB13:IL17BR及びMGIとER及びPR発現との示差的相関
HOXB13とIL17BRは両方ともエストロゲン受容体に制御される。ER+乳癌細胞株ではエストロゲンにより、HOXB13発現は抑制されるが、IL17BR発現は刺激される(Zuncai W, Dahiya S, Provencher H, et al:予後診断バイオマーカーHOXB13、IL17BR、及びCHDHは乳癌においてエストロゲンにより制御される、Clin Cancer Res, 2007)。すなわちMGIにおける5遺伝子の発現を、エストロゲンシグナル伝達による同様の制御可能性について試験した。上記で分析したER+リンパ節転移陰性の内分泌療法治療患者群(ここで高H:Iは低PR発現と強く相関した)において、MGIはER又はPR mRNA発現ともあまり関連しなかった(図6)。
上記したようにH:I比とMGIを組合せて作成した3つのリスク群において、高リスク群は低PR発現に関連した。興味深いことに高リスク群はまた、HER2過剰発現腫瘍について特に強化された(図6)。これは高HER2発現を有する7つの腫瘍のうちの6つを含有した(0をカットオフとして使用して、フィッシャーの正確度検定p=0.001)。従って高リスク群は、PR発現が低下しHER2発現が上昇した(両方とも内分泌療法抵抗性のマーカー)腫瘍を有した(Shou J, Massarweh S, Osborne CK, et al:タモキシフェン耐性の機構:ER/HER2陽性乳癌におけるエストロゲン受容体−HER2/neuクロストークの上昇、J Natl Cancer Inst 96:926-35,2004)。これは、内分泌療法にもかかわらず、その悪い転帰と一致する。これらの結果はまた、H:I比とMGIが明確な生物学的経路である可能性を示唆し、これは一緒に使用した時の、腫瘍悪性度の決定における有用性を説明する。
MGIはpCRと有意に関連している
術前にパクリタキセル、次に5−FU、ドキソルビシン、及びシクロホスファミド(パクリタキセル/FAC)(乳癌で一般的に使用される治療法)で治療された82人のER+患者からの腫瘍試料を使用して、化学療法への感受性に対するMGIの相関を調べた。82人のER+患者のうちの7人(8.5%)は、完全な病理的応答(pCR)を有し、すべての7人の患者は高MGIを有した。低MGIを有する腫瘍(約55%)は、対応する患者中でpCRは無かった。図9を参照。高MGI腫瘍の約20%はpCRを有し、2.3倍の強化及び100%の陽性予測値であった。
従って高MGIは、ER+腫瘍中の病理的に完全な応答(pCR)と有意に関連している(p=0.0053).MGIは、どの腫瘍が化学療法に対して感受性であるか又は抵抗性であるかの可能性を示す。この結果は、MGIとOncotype DXが、術前状況で化学療法応答性を予測するのに同様の性能を有することを示す(Chang, J. et al. 「ホルマリン固定パラフィン包埋コア生検における遺伝子発現パターンは、乳癌患者のドセタキセル化学療法感受性を予測する」、Breast Cancer Research and Treatment 10. 1007/s10549-007-9590,
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特許、特許出願、及び刊行物を含む本明細書で引用したすべての文献は、すでに具体的に取り込まれているか否かに拘わらず、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
本発明の主題を詳細に説明したため、当業者は、過度に実験をすることなく、本開示の精神と範囲から逸脱することなく、広範囲の同等のパラメータ、濃度、及び条件内で、本発明を実施できるであろう。
本開示をその具体例について説明したが、これはさらなる変更が可能であることは理解されるであろう。本出願は一般的に開示の原理に従って、本開示が関係する分野内の公知の又は慣習内であり、本明細書に記載の基本的な特徴に適用されるような本開示からの逸脱を含む、本開示の変更態様、使用、又は本開示の適用を含むことを企図する。