以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線(EB)等を意味する。また、本発明において光とは、活性光線又は放射線を意味する。
また、本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、EUV光などによる露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
本発明のパターン形成方法は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を基板上に塗布して感活性光線性又は感放射線性膜を形成する工程、前記感活性光線性又は感放射線性膜を露光する工程、及び、露光した前記感活性光線性又は感放射線性膜を、有機溶剤を含む現像液で現像し、ネガ型パターンを形成する工程を含み、上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物として、酸基とラクトン構造を有する繰り返し単位(a)を含み、酸の作用により極性が増大して有機溶剤を含む現像液に対する溶解性が減少する樹脂(以下、「樹脂(A)」又は「酸分解性樹脂」ともいう)を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を使用する。
本発明者等は、有機溶剤を含む現像液(以下、「有機溶剤系現像液」ともいう)を用いてネガ型パターンを形成することを含むパターン形成方法において、上記樹脂(A)を含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いることにより、ラインウィズスラフネス(LWR)等のラフネス性能、露光ラチチュード(EL)およびパターン形状に優れるパターンが得られることを見出した。このように、ラフネス性能、露光ラチチュード(EL)およびパターン形状のいずれにも優れるパターンが得られる理由は定かではないが以下のように推定される。
有機溶剤系現像液を用いてネガ型パターンを形成する系では、酸分解前後の溶解コントラストが低いためにLWR、ELが悪化しやすいが、樹脂中の酸分解基の比率を上げるかもしくはより現像液溶解性の高い酸分解基にすることでLWR及びELはある程度改良できる。しかし、樹脂全体として現像液溶解性が高すぎると、露光部のパターンも溶けやすくなってしまい、LWR及びパターン形状が悪化してしまう。これに対し、適度に現像液溶解性の低い繰り返し単位として、酸基とラクトン構造とを有する繰り返し単位を含む樹脂を使用することで、露光部のパターンの現像液溶解性が抑えられ、LWR、EL及びパターン形状のいずれにも優れるパターンが得られると推察している。
まず、本発明に係るパターン形成方法において用いられる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物について説明し、次いで、この組成物を用いたパターン形成方法について説明する。
<感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物>
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、ネガ型の現像(露光されると現像液に対して溶解性が減少し、露光部がパターンとして残り、未露光部が除去される現像)に用いられる。即ち、本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、有機溶剤を含む現像液を用いた現像に用いられる有機溶剤現像用の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物とすることができる。ここで、有機溶剤現像用とは、少なくとも、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程に供される用途を意味する。
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、典型的にはレジスト組成物であり、ネガ型のレジスト組成物(即ち、有機溶剤現像用のレジスト組成物)であることが、特に高い効果を得ることができることから好ましい。また本発明に係る組成物は、典型的には化学増幅型のレジスト組成物である。
本発明に係る感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、酸基とラクトン構造を有する繰り返し単位を有し、酸の作用により極性が増大して有機溶剤を含む現像液に対する溶解性が減少する樹脂(以下「樹脂(A)」などともいう)を含有するものであるが、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物も含有することが好ましい。
また、この感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、溶剤、疎水性樹脂、塩基性化合物、界面活性剤、及びその他の添加剤の少なくとも1つを更に含んでいてもよい。以下、これら各成分について、順に説明する。
<酸の作用により極性が増大して有機溶剤を含む現像液に対する溶解性が減少する樹脂(A)>
樹脂(A)は、酸基とラクトン構造を有する繰り返し単位(a)を含有する。
繰り返し単位(a)が有する酸基としては、例えば、カルボン酸、スルホン酸、スルホンアミド構造などが挙げられ、繰り返し単位(a)は2以上の酸基を含んでいてもよい。本発明の一形態において、少なくとも1つの酸基は、カルボン酸であることが好ましい。
繰り返し単位(a)が有するラクトン構造としては、例えば、5〜7員環ラクトン構造が好ましく、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものがより好ましい。具体的には、後掲の一般式(LC1−1)〜(LC1−21)のいずれかで表されるラクトン構造が挙げられる。
本発明の一形態において、ラクトン構造に酸基が結合している形態が好ましい。この場合、酸基は、ラクトン構造に直接結合していてもよいし、連結基を介してラクトン構造に結合していてもよい。また、ラクトン構造は、酸基以外の置換基を更に有していてもよい。
繰り返し単位(a)は、下記一般式(I−1)もしくは(I−2)で表される構造を含むことが好ましい。
一般式(I−1)及び(I−2)中、
R1は、酸基を表し、複数存在する場合は互いに同一でも異なっていてもよい。
R2は、1価の有機基を表し、複数存在する場合は互いに同一でも異なっていてもよい。
nは、1以上の整数を表し、mは0以上の整数を表す。
Wは、メチレン基、エチレン基又は酸素原子を表す。
*は、繰り返し単位(a)の残部との連結部位を表す。
R1としての酸基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基(−SO3H)、スルホンアミド基(−SO2NH2)などが挙げられ、これら酸基とラクトン構造との間に連結基がある基も含まれる。連結基としては、例えば、アルキレン基(炭素数1〜3が好ましい)、−O−、−S−、−CO−、−SO2−やこれらの2以上を組み合わせた基などが挙げられる。
本発明の一形態において、R1としての酸基は、カルボキシル基であることが好ましい。
R2としての有機基は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基が挙げられる。
R2としてのアルキル基は、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、へキシル基、オクチル基等を挙げることができる。
R2としてのシクロアルキル基は、単環型でも、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基等を挙げることができる。多環型としては、炭素数6〜20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、アンドロスタニル基等を挙げることができる。なお、シクロアルキル基中の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
アルコキシ基におけるアルキル部位、及び、アルコキシカルボニル基におけるアルキル部位としては、例えば、炭素数1〜8のアルキル基が好ましい。
nは、1以上の整数を表し、好ましくは1〜3の整数である。
mは、0以上の整数を表し、好ましくは0〜2の整数である。
繰り返し単位(a)は、一形態において、酸基を有するラクトン構造が、樹脂の主鎖に連結基を介して結合している形態でもよいし、あるいは樹脂の主鎖に直接結合している形態でもよい。
以下、酸基とラクトン構造とを有する繰り返し単位(a)の具体例を示すが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。下式において、RXaはメチル基、トリフルオロメチル基、水素原子を表す。
酸基とラクトン構造を有する繰り返し単位(a)の含有率は、樹脂(A)を構成する全繰り返し単位に対して3〜60モル%が好ましく、5〜55モル%がより好ましく、10〜50モル%が更に好ましい。
樹脂(A)は、更に、酸の作用により分解する酸分解性基を含有することが好ましく、酸分解性基を有する繰り返し単位を含有することが好ましい。
酸分解性基は、極性基を、酸の作用により分解し脱離する基で保護した構造を有することが好ましい。
極性基としては、有機溶剤を含む現像液中で難溶化又は不溶化する基であれば特に限定されないが、フェノール性水酸基、カルボキシル基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基(従来レジストの現像液として用いられている、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中で解離する基)、又はアルコール性ヒドロキシ基等が挙げられる。
ここで、アルコール性ヒドロキシ基とは、炭化水素基に結合した水酸基であって、芳香環上に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基)以外の水酸基をいい、酸基としてα位がフッ素原子などの電子求引性基で置換された脂肪族アルコール基(例えば、フッ素化アルコール基(ヘキサフルオロイソプロパノール基など))は除くものとする。
上記のアルコール性ヒドロキシ基を生じる酸分解性基が酸の作用により分解して生じ得るアルコール性ヒドロキシ基のpKaは、例えば12以上であり、典型的には12以上且つ20以下である。このpKaが過度に小さいと、酸分解性樹脂を含んだ組成物の安定性が低下し、レジスト性能の経時変動が大きくなる場合がある。なお、ここで「pKa」とは、富士通株式会社製「ACD/pKa DB」を用いて、カスタマイズをしていない初期設定のもとで計算した値である。
好ましい極性基としては、カルボキシル基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、スルホン酸基、及び、アルコール性ヒドロキシ基が挙げられる。
酸分解性基として好ましい基は、これらの基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
酸で脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R36とR37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
R01及びR02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
R36〜R39、R01及びR02のアルキル基は、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、へキシル基、オクチル基等を挙げることができる。
R36〜R39、R01及びR02のシクロアルキル基は、単環型でも、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基等を挙げることができる。多環型としては、炭素数6〜20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、アンドロスタニル基等を挙げることができる。なお、シクロアルキル基中の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
R36〜R39、R01及びR02のアリール基は、炭素数6〜10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等を挙げることができる。
R36〜R39、R01及びR02のアラルキル基は、炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を挙げることができる。
R36〜R39、R01及びR02のアルケニル基は、炭素数2〜8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロへキセニル基等を挙げることができる。
R36とR37とが結合して形成される環としては、シクロアルキル基(単環若しくは多環)であることが好ましい。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。炭素数5〜6の単環のシクロアルキル基がより好ましく、炭素数5の単環のシクロアルキル基が特に好ましい。
本発明の一態様において、酸分解性基としては好ましくは、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、第3級のアルキルエステル基等である。更に好ましくは、第3級アルキルエステル基である。
酸分解性基として、例えば、下記一般式(II)で表される構造を含むことが好ましい。
式中、R3、R4及びR5はそれぞれ独立にアルキル基を表し、アルキル基の一部のCH2がエーテル結合に置き換わってもよい。
R3、R4及びR5により表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、ter−ブチル基等を挙げることができる。
本発明の他の態様において、樹脂(A)は、酸分解性基として酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基を含有することが好ましく、そのような基として、少なくとも下記一般式(OR−1)〜(OR−9)により表される構造のいずれかを含むことが好ましい。このうち一般式(OR−1)〜(OR−4)により表される基は、酸の作用により分解して1個のアルコール性ヒドロキシ基を生じる基であり、一般式(OR−5)〜(OR−9)は、酸の作用により分解して2個又は3個のアルコール性ヒドロキシ基を生じる基である。
上記一般式(OR−1)中、
Rx1は、各々独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。Rx1は、互いに結合して、環を形成していてもよい。
Rx2は、1価の有機基を表す。Rx1とRx2とは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
Rx1同士が互いに結合して形成する環、又は1つのRx1とRx2とが互いに結合して形成する環を構成する炭素原子(環形成に寄与する炭素原子)の少なくとも1つは酸素原子又はスルフィニル基で置き換わっていてもよい。
上記一般式(OR−2)中、
Rx3は、各々独立に、1価の有機基を表す。Rx3は、互いに結合して、環を形成していてもよい。
上記一般式(OR−3)中、
Rx4は、水素原子又は1価の有機基を表す。
Rx
5は、各々独立に、1価の有機基を表す。Rx
5は、互いに結合して、環を形成していてもよい。Rx
4とRx
5とは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
上記一般式(OR−4)中、
Rx
6は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。2つのRx
6は、互いに結合して、環を形成していてもよい。但し、3つの前記Rx
6のうち1つ又は2つが水素原子である場合は、残りの前記Rx
6のうち少なくとも1つは、アリール基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。
上記一般式(OR−5)中、
Rx7は、各々独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。Rx7は、互いに結合して、環を形成していてもよい。
上記一般式(OR−6)中、
Rx8は、各々独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。Rx8は、互いに結合して、環を形成していてもよい。
上記一般式(OR−7)中、
Rx9は、1価の有機基を表す。
上記一般式(OR−8)中、
Rx10は、各々独立に、1価の有機基を表す。Rx10は、互いに結合して、環を形成していてもよい。
上記一般式(OR−9)中、
Rx11は、各々独立に、1価の有機基を表す。Rx11は、互いに結合して、環を形成していてもよい。
上記一般式(OR−5)〜(OR−9)中、*は、樹脂の主鎖又は側鎖に連結する結合手を表す。
酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基は、一般式(OR−1)〜(OR−3)から選択される少なくとも1つにより表されることがより好ましく、一般式(OR−1)又は(OR−3)により表されることが更に好ましく、一般式(OR−1)により表されることが特に好ましい。(OR−1)の構造が好ましい理由としては、酸不安定基の熱的安定性が高い上にアルコール性ヒドロキシル保護基を有する樹脂にしては膜Tgが高いことに起因している。
Rx1、Rx4は、上述した通り、各々独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。Rx1、Rx4は、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。
Rx1、Rx4のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。Rx1、Rx4のアルキル基の炭素数は、1〜10であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
Rx1、Rx4のシクロアルキル基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。Rx1、Rx4のシクロアルキル基の炭素数は、3〜10であることが好ましく、4〜8であることがより好ましい。
また、一般式(OR−1)において、Rx1の少なくとも一方は、1価の有機基であることが好ましい。このような構成を採用すると、特に高い感度を達成することができる。
Rx1、Rx4は、置換基を有していてもよく、このような置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1〜4)、シクロアルキル基(炭素数3〜10)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)、アリール基(炭素数6〜10)などが挙げられ、炭素数8以下が好ましい。
Rx2、Rx5は、上述の通り、1価の有機基を表す。Rx2、Rx5は、アルキル基又はシクロアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。これらアルキル基及びシクロアルキル基は、更に置換基を有していてもよく、このような置換基としては、例えば、上記Rx1、Rx4が有していても良い置換基について説明した基と同様のものが挙げられる。
Rx2、Rx5のアルキル基は、置換基を有していないか、又は、1つ以上のアリール基及び/又は1つ以上のシリル基を置換基として有していることが好ましい。無置換アルキル基の炭素数は、1〜20であることが好ましい。1つ以上のアリール基により置換されたアルキル基におけるアルキル基部分の炭素数は、1〜25であることが好ましい。
Rx2、Rx5のアルキル基の具体例としては、例えば、Rx1、Rx4のアルキル基の具体例として説明した基と同様のものが挙げられる。また、1つ以上のアリール基により置換されたアルキル基におけるアリール基としては、炭素数6〜10のものが好ましく、具体的には、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
1つ以上のシリル基により置換されたアルキル基におけるアルキル基部分の炭素数は、1〜30であることが好ましい。また、Rx2、Rx5のシクロアルキル基が置換基を有していない場合、その炭素数は、3〜20であることが好ましい。
Rx2、Rx5のシクロアルキル基の具体例としては、Rx1、Rx4のシクロアルキル基の具体例として説明したものを同様に挙げることができる。
Rx3は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であることが好ましく、アルキル基又はシクロアルキル基であることがより好ましく、アルキル基であることが更に好ましい。
Rx3についてのアルキル基及びシクロアルキル基の具体例及び好ましい例としては、上記Rx1、Rx4について前述したアルキル基及びシクロアルキル基と同様のものが挙げられる。
Rx3のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基を挙げることができる。
これらアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、更に置換基を有していてもよく、このような置換基としては、例えば、上記Rx1、Rx4が有していても良い置換基について説明した基と同様のものが挙げられる。
Rx6は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。但し、3つのRx6のうち1つ又は2つが水素原子である場合は、残りのRx6のうち少なくとも1つは、アリール基、アルケニル基、又はアルキニル基を表す。Rx6は、水素原子又はアルキル基であることが好ましい。Rx6としてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルケニル基、及びアルキニル基は、更に置換基を有していてもよく、このような置換基としては、上記Rx1、Rx4が有していても良い置換基で説明したものと同様の基を挙げることができる。
Rx6としてのアルキル基及びシクロアルキル基としては、例えば、Rx1、Rx4のアルキル基及びシクロアルキル基について説明したものを同様に挙げることができる。特に、アルキル基が置換基を有していない場合、その炭素数は、1〜6であることが好ましく、1〜3であることが好ましい。
Rx6のアリール基としては、Rx3のアリール基について前述したアリール基と同様のものが挙げられる。
Rx6のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、アリル基等の炭素数2〜5のアルケニル基を挙げることができる。
Rx6としてのアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等の炭素数2〜5のアルキニル基を挙げることができる。
Rx7は、上述した通り、水素原子又は1価の有機基を表す。Rx7は、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましく、水素原子又は置換基を有していないアルキル基であることが更に好ましい。Rx7は、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜10であり且つ置換基を有していないアルキル基であることが更に好ましい。
Rx7としてのアルキル基及びシクロアルキル基は、更に置換基を有していてもよく、このような置換基としては、上記Rx1、Rx4が有していても良い置換基で説明したものと同様の基を挙げることができる。
Rx7のアルキル基及びシクロアルキル基の具体例としては、例えば、Rx1、Rx4のアルキル基及びシクロアルキル基の具体例として説明したものを同様に挙げることができる。
Rx8は、上述した通り、各々独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。Rx8は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。
Rx8のアルキル基及びシクロアルキル基としては、例えば、Rx1、Rx4のアルキル基及びシクロアルキル基について前述したものを同様に挙げることができる。
Rx9、Rx10及びRx11は、上述した通り、各々独立に、1価の有機基を表す。Rx9、Rx10及びRx11は、各々独立に、アルキル基又はシクロアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
Rx9、Rx10及びRx11のアルキル基及びシクロアルキル基としては、例えば、Rx1、Rx4のアルキル基及びシクロアルキル基について前述したものを同様に挙げることができる。
以下に、酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基の具体例を示す。
本発明の一態様において、酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基を有する繰り返し単位は、多環の脂環式炭化水素基を有していてもよい。
酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(b−1)〜(b−8)からなる群より選択される少なくとも1つにより表されることが好ましい。この繰り返し単位は、下記一般式(b−1)〜(b−3)からなる群より選択される少なくとも1つにより表されることがより好ましく、下記一般式(b−1)により表されることが更に好ましい。
上記式中、
Raは、各々独立に、水素原子、アルキル基又は−CH2−O−Ra2により表される基を表す。ここで、Ra2は、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。
R1、R2及びR3は、各々独立して、単結合又は(n+1)価の有機基を表す。R2が複数存在する場合、複数のR2は同じであっても異なっていてもよい。R3が複数存在する場合、複数のR3は同じであっても異なっていてもよい。
OPは、各々独立に、酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる前記酸分解性基を表す。n≧2及び/又はm≧2の場合、2以上のOPが互いに結合して、環を形成していてもよい。
Wは、メチレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。
n及びmは、1以上の整数を表す。なお、一般式(b−2)又は(b−3)においてR2が単結合を表す場合、nは1である。また、一般式(b−6)においてR3が単結合を表す場合、nは1である。
kは、0以上の整数を表す。
lは、1以上の整数を表す。
L1は、−COO−、−OCO−、−CONH−、−O−、−Ar−、−SO3−又は−SO2NH−により表される連結基を表す。ここで、Arは、2価の芳香環基を表す。
Rは、各々独立に、水素原子又はアルキル基を表す。
R0は、多環の脂環式炭化水素基を表す。
L3は、(m+2)価の連結基を表す。
RLは、(n+1)価の多環の脂環式炭化水素基を表す。RLが複数存在する場合、複数のRLは同じであっても異なっていてもよい。
RSは、置換基を表し、RSが複数存在する場合、複数のRSは同じであっても異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
pは、0〜3の整数を表す。
Raは、上述したように、水素原子、アルキル基又は−CH2−O−Ra2により表される基を表す。
Raのアルキル基の炭素数は6以下であることが好ましく、Ra2のアルキル基及びアシル基の炭素数は5以下であることが好ましい。Raのアルキル基、及び、Ra2のアルキル基及びアシル基は、置換基を有していてもよい。
Raは、水素原子、炭素数が1〜10のアルキル基、又は、炭素数が1〜10のアルコキシアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
Wは、メチレン基、酸素原子又は硫黄原子を表す。Wは、メチレン基又は酸素原子であることが好ましい。
R1、R2及びR3は、上述したように、単結合又は(n+1)価の有機基を表す。
本発明の一形態において、R1、R2及びR3は、単結合又は非芳香族性の炭化水素基であることが好ましい。この場合、R1、R2及びR3は、鎖状炭化水素基であってもよく、脂環式炭化水素基であってもよい。
R1、R2及びR3が鎖状炭化水素基である場合、この鎖状炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。また、この鎖状炭化水素基の炭素数は、1〜8であることが好ましい。例えば、R1、R2及びR3がアルキレン基である場合、R1、R2及びR3は、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基又はsec−ブチレン基であることが好ましい。
R1、R2及びR3が脂環式炭化水素基である場合、この脂環式炭化水素基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。この脂環状炭化水素基は、例えば、モノシクロ、ビシクロ、トリシクロ又はテトラシクロ構造を備えている。この脂環式炭化水素基の炭素数は、通常は5以上であり、6〜30であることが好ましく、7〜25であることがより好ましい。
R
1、R
2及びR
3ついての脂環式炭化水素基としては、例えば、以下に列挙する部分構造を備えたものが挙げられる。また、R
1及びR
3についての(n+1)価の多環の脂環式炭化水素基としては以下に列挙する部分構造のうちの2以上の環を有する部分構造を備えたものが挙げられる。これら部分構造の各々は、置換基を有していてもよい。また、これら部分構造の各々において、メチレン基(−CH
2−)は、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、カルボニル基〔−C(=O)−〕、スルホニル基〔−S(=O)
2−〕、スルフィニル基〔−S(=O)−〕、又はイミノ基〔−N(R)−〕(Rは水素原子若しくはアルキル基)によって置換されていてもよい。
また、本発明の他の形態において、R1、R2及びR3は、(n+1)価の多環の脂環式炭化水素基であることが好ましい。
R1、R2及びR3についての(n+1)価の多環の脂環式炭化水素基としては、アダマンチレン基、ノルボルニレン基、テトラシクロドデカニレン基又はトリシクロデカニレン基であることがより好ましい。
R1、R2及びR3についての(n+1)価の多環の脂環式炭化水素基、非芳香族性の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜4のアルコキシ基、カルボキシ基、及び炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基が挙げられる。上記のアルキル基、アルコキシ基及びアルコキシカルボニル基は、置換基を更に有していてもよい。この置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、及びアルコキシ基が挙げられる。
L1は、−COO−、−OCO−、−CONH−、−O−、−Ar−、−SO3−又は−SO2NH−により表される連結基を表す(これらの連結基において左側の“−”が、樹脂の主鎖に接続することを意味する)。ここで、Arは、2価の芳香環基を表し、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等の炭素数6〜10の2価の芳香環基であることが好ましい。L1は、好ましくは−COO−、−CONH−又は−Ar−により表される連結基であり、より好ましくは−COO−又は−CONH−により表される連結基である。
Rは、水素原子又はアルキル基を表す。アルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。このアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜6であり、より好ましくは1〜3である。Rは、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。
R0は、多環のシクロアルキル基を表す。多環のシクロアルキル基としては、例えば、アダマンチル基、ノルアダマンチル基、デカヒドロナフチル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基などが挙げられる。
L3は、(m+2)価の連結基を表す。即ち、L3は、3価以上の連結基を表す。
L3は、好ましくは、非芳香族性の炭化水素基であり、鎖状炭化水素基であってもよく、脂環式炭化水素基であってもよい。鎖状炭化水素基の具体例としては、例えば、R1、R2及びR3についてのアルキレン基として例示した上記の基から任意の水素原子をm個除した基を、脂環式炭化水素基の具体例としては、例えば、R1、R2及びR3についての脂環式炭化水素基として例示した上記の基から任意の水素原子をm個取り除いた基を挙げることができる。
RLは、(n+1)価の多環の脂環式炭化水素基を表す。即ち、RLは、2価以上の多環の脂環式炭化水素基を表す。このような多環の脂環式炭化水素基としては、R1、R2及びR3についての(n+1)価の多環の脂環式炭化水素基として前述した多環の脂環式炭化水素基と同様のものが挙げられる。RLは、互いに結合して又は下記RSと結合して、環構造を形成していてもよい。
RSは、置換基を表す。この置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、及びハロゲン原子が挙げられる。
nは、1以上の整数である。nは、1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。また、nを2以上とすると、有機溶剤を含んだ現像液に対する溶解コントラストを更に向上させることが可能となる。これにより、限界解像力及びラフネス特性を更に向上させることができる。
mは、1以上の整数である。mは、1〜3の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
kは、0以上の整数である。kは、0又は1であることが好ましい。
lは、1以上の整数である。lは、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
pは、0〜3の整数である。
以下に、アルコール性ヒドロキシ基を生じる酸分解性基を有する繰り返し単位の具体例を示す。なお、具体例中、Ra及びOPは、一般式(b−1)〜(b−3)における各々と同義である。また、複数のOPが互いに結合して環を形成している場合、対応する環構造は、便宜上「O−P−O」と表記している。
上述した通り、酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる酸分解性基を有する繰り返し単位は、上記一般式(b−1)により表されることが特に好ましい。また、酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる基は、上記一般式(OR−1)又は(OR−3)により表されることがより好ましく、上記一般式(OR−1)により表されることが特に好ましい。
本発明の一態様において、酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる酸分解性基を有する繰り返し単位は、下記一般式(IV−1)又は(IV−2)により表されることが特に好ましい。
上記一般式(IV−1)及び(IV−2)中、
R01及びR02は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。
R11は、(n1+1)価の多環の脂環式炭化水素基を表す。
R12は、(n2+1)価の多環の脂環式炭化水素基を表す。
A1及びA2は、各々独立に、単結合又はアルキレン基を表す。
Rx4’は、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rx5’は、各々独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。Rx5は互いに結合して、環を形成していても良い。また、Rx4’とRx5’とは互いに結合して、環を形成していても良い。
Rx1’は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。Rx1’は、互いに結合して、環を形成していてもよい。
Rx2’は、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。Rx1’とRx2’とは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
n1及びn2は、各々独立に、1〜3の整数を表す。
n1が2又は3のとき、複数のA1、複数のRx4’及び複数のRx5’は、各々独立に、互いに同じであっても異なっていてもよい。
n2が2又は3のとき、複数のA2、複数のRx1’及び複数のRx2’は、各々独立に、互いに同じであっても異なっていてもよい。
R11についての(n1+1)価の多環の脂環式炭化水素基及びR12についての(n2+1)価の多環の脂環式炭化水素基としては、ノルボルナン環基、テトラシクロデカン環基、テトラシクロドデカン環基、アダマンタン環基、ジアマンタン環基などが挙げられ、炭素数7〜20の多環の脂環式炭化水素基であることが好ましく、炭素数7〜15の多環の脂環式炭化水素基であることがより好ましく、炭素数10〜15の多環の脂環式炭化水素基であることが特に好ましい。
A1及びA2についてのアルキレン基としては、直鎖又は分岐状のアルキレン基(例えば、−CH2−、−C(CH3)2−、−(CH2)2−、−(CH2)3−、−(CH2)4−、−(CH2)10−等)が挙げられ、炭素数1〜8のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜4のアルキレン基がより好ましく、炭素数1若しくは2のアルキレン基が特に好ましい。
A1及びA2としては、単結合又は炭素数1若しくは2のアルキレン基であることが最も好ましい。
Rx1’、Rx2’、Rx4’及びRx5’についてのアルキル基及びシクロアルキル基の具体例及び好ましい例としては、Rx1、Rx4についてのアルキル基及びシクロアルキル基として前述した具体例及び好ましい例と同様なものが挙げられる。
Rx1’同士が互いに結合して形成する環、又はRx1’とRx2’とが互いに結合して形成する環を構成する炭素原子(環形成に寄与する炭素原子)の少なくとも1つは酸素原子又はスルフィニル基で置き換わっていても良い。
酸の作用により分解してアルコール性ヒドロキシ基を生じる酸分解性基を有する繰り返し単位の好ましい具体例として、例えば以下を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。下記具体例中、Xa
1は、水素原子、CH
3、CF
3、又はCH
2OHを表す。
また、樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位を有することが好ましい。
一般式(AI)に於いて、
Xa1は、水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。
Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Rx1〜Rx3は、それぞれ独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rx1〜Rx3の2つが結合して環構造を形成してもよい。
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、−COO−Rt−基、−O−Rt−基、フェニレン基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は−COO−Rt−基が好ましい。Rtは、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、−CH2−基、−(CH2)2−基、−(CH2)3−基がより好ましい。Tは、単結合であることがより好ましい。
Xa1のアルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)が挙げられる。
Xa1のアルキル基は、炭素数1〜4のものが好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ヒドロキシメチル基又はトリフルオロメチル基等が挙げられるが、メチル基であることが好ましい。
Xa1は、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
Rx1、Rx2及びRx3のアルキル基としては、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが好ましい。
Rx1、Rx2及びRx3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx1、Rx2及びRx3の2つが結合して形成する環構造としては、シクロペンチル環、シクロヘキシル環などの単環のシクロアルカン環、ノルボルナン環、テトラシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、アダマンタン環などの多環のシクロアルキル基が好ましい。炭素数5又は6の単環のシクロアルカン環が特に好ましい。
Rx1、Rx2及びRx3は、各々独立に、アルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキル基であることがより好ましい。
上記各基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1〜4)、シクロアルキル基(炭素数3〜8)、ハロゲン原子、アルコキシ基(炭素数1〜4)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素数2〜6)などが挙げられ、炭素数8以下が好ましい。なかでも、酸分解前後での有機溶剤を含有する現像液に対する溶解コントラストをより向上させる観点から、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を有さない置換基であることがより好ましく(例えば、水酸基で置換されたアルキル基などではないことがより好ましく)、水素原子及び炭素原子のみからなる基であることが更に好ましく、直鎖又は分岐のアルキル基、シクロアルキル基であることが特に好ましい。
以下に一般式(AI)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
具体例中、Rxは、水素原子、CH
3、CF
3、又はCH
2OHを表す。Rxa、Rxbはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基を表す。Xa
1は、水素原子、CH
3、CF
3、又はCH
2OHを表す。Zは、置換基を表し、複数存在する場合、複数のZは互いに同じであっても異なっていてもよい。pは0又は正の整数を表す。Zの具体例及び好ましい例は、Rx
1〜Rx
3などの各基が有し得る置換基の具体例及び好ましい例と同様である。
下記具体例において、Xaは、水素原子、アルキル基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。
酸分解性基を有する繰り返し単位は、1種類であってもよいし、2種以上を併用してもよい。
樹脂(A)に含まれる酸分解性基を有する繰り返し単位の含有率(酸分解性基を有する繰り返し単位が複数存在する場合はその合計)は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがより好ましく、50モル%以上であることが更に好ましく、55モル%以上であることが特に好ましい。中でも、樹脂(A)が上記一般式(AI)で表される繰り返し単位を有するとともに、上記一般式(AI)で表される繰り返し単位の樹脂(A)の全繰り返し単位に対する含有量が40モル%以上であることが好ましい。
また、酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)の全繰り返し単位に対して、例えば、80モル%以下であることが好ましく、75モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。
樹脂(A)は、更に、上述した繰り返し単位(a)とは異なるラクトン構造を有する繰り返し単位、又は、スルトン構造を有する繰り返し単位を含有していてもよい。
ラクトン構造又はスルトン構造としては、ラクトン構造又はスルトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造又は5〜7員環スルトン構造であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているもの、又は、5〜7員環スルトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているもの、がより好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−21)のいずれかで表されるラクトン構造、又は、下記一般式(SL1−1)〜(SL1−3)のいずれかで表されるスルトン構造、を有する繰り返し単位を有することがさらに好ましい。また、ラクトン構造又はスルトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−13)、(LC1−14)、(LC1−17)であり、特に好ましいラクトン構造は(LC1−4)である。このような特定のラクトン構造を用いることでLER、現像欠陥が良好になる。
ラクトン構造部分又はスルトン構造部分は、置換基(Rb2)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、酸分解性基である。n2は、0〜4の整数を表す。n2が2以上の時、複数存在する置換基(Rb2)は、同一でも異なっていてもよい。また、複数存在する置換基(Rb2)同士が結合して環を形成してもよい。
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位は、通常、光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体を混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90%以上のものが好ましく、より好ましくは95%以上である。
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位は、下記一般式(III)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
上記一般式(III)中、
Aは、エステル結合(−COO−で表される基)又はアミド結合(−CONH−で表される基)を表す。
R0は、複数個ある場合にはそれぞれ独立にアルキレン基、シクロアルキレン基、又はその組み合わせを表す。
Zは、複数個ある場合にはそれぞれ独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合
を表す。ここで、Rは、各々独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表す。
R8は、ラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基を表す。
nは、−R0−Z−で表される構造の繰り返し数であり、0〜5の整数を表し、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。nが0である場合、−R0−Z−は存在せず、単結合となる。
R7は、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
R0のアルキレン基、シクロアルキレン基は置換基を有してよい。
Zは好ましくは、エーテル結合、エステル結合であり、特に好ましくはエステル結合である。
R7のアルキル基は、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
R0のアルキレン基、シクロアルキレン基、R7におけるアルキル基は、各々置換されていてもよく、置換基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子やメルカプト基、水酸基、アルコキシ基、アシルオキシ基が挙げられる。
R7は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシメチル基が好ましい。
R0における好ましい鎖状アルキレン基としては炭素数が1〜10の鎖状のアルキレンが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。好ましいシクロアルキレン基としては、炭素数3〜20のシクロアルキレン基であり、例えば、シクロヘキシレン基、シクロペンチレン基、ノルボルニレン基、アダマンチレン基等が挙げられる。本発明の効果を発現するためには鎖状アルキレン基がより好ましく、メチレン基が特に好ましい。
R8で表されるラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基は、ラクトン構造又はスルトン構造を有していれば限定されるものではなく、具体例として一般式(LC1−1)〜(LC1−21)及び、(SL1−1)〜(SL1−3)の内のいずれかで表されるラクトン構造又はスルトン構造が挙げられ、これらのうち(LC1−4)で表される構造が特に好ましい。また、(LC1−1)〜(LC1−21)におけるn2は2以下のものがより好ましい。
また、R8は無置換のラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基、或いはメチル基、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を置換基として有するラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基が好ましく、シアノ基を置換基として有するラクトン構造(シアノラクトン)を有する1価の有機基がより好ましい。
以下にラクトン構造又はスルトン構造を有する基を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の効果を高めるために、2種以上のラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位を併用することも可能である。
樹脂(A)がラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位(繰り返し単位(a)を除く)を含有する場合、ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、5〜60モル%が好ましく、より好ましくは5〜55モル%、更に好ましくは10〜50モル%である。
また、樹脂(A)は、環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位を有していてもよい。
環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位は、下記一般式(A−1)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
一般式(A−1)中、RA 1は、水素原子又はアルキル基を表す。
RA 2は、nが2以上の場合は各々独立して、置換基を表す。
Aは、単結合、又は2価の連結基を表す。
Zは、式中の−O−C(=O)−O−で表される基と共に単環又は多環構造を形成する原子団を表す。
nは0以上の整数を表す。
一般式(A−1)について詳細に説明する。
RA 1で表されるアルキル基は、フッ素原子等の置換基を有していてもよい。RA 1は、水素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基を表すことが好ましく、メチル基を表すことがより好ましい。
RA 2で表される置換基は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基である。
nは置換基数を表す0以上の整数である。nは、例えば、好ましくは0〜4であり、より好ましくは0である。
Aにより表される2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、又はその組み合わせ等が挙げられる。アルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
本発明の一形態において、Aは、単結合、アルキレン基であることが好ましい。
Zにより表される、−O−C(=O)−O−を含む単環としては、例えば、下記一般式(a)で表される環状炭酸エステルにおいて、nA=2〜4である5〜7員環が挙げられ、5員環又は6員環(nA=2又は3)であることが好ましく、5員環(nA=2)であることがより好ましい。
Zにより表される、−O−C(=O)−O−を含む多環としては、例えば、下記一般式 (a)で表される環状炭酸エステルが1又は2以上の他の環構造と共に縮合環を形成している構造や、スピロ環を形成している構造が挙げられる。縮合環又はスピロ環を形成し得る「他の環構造」としては、脂環式炭化水素基であってもよいし、芳香族炭化水素基であってもよいし、複素環であってもよい。
樹脂(A)には、一般式(A−1)で表される繰り返し単位のうちの1種が単独で含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
樹脂(A)において、環状炭酸エステル構造を有する繰り返し単位(好ましくは、一般式(A−1)で表される繰り返し単位)の含有率は、樹脂(A)を構成する全繰り返し単位に対して、3〜80モル%であることが好ましく、3〜60モル%であることが更に好ましく、3〜30モル%であることが特に好ましく、10〜15モル%であることが最も好ましい。このような含有率とすることによって、レジストとしての現像性、低欠陥性、低LWR、低PEB温度依存性、プロファイル等を向上させることができる。
以下に、一般式(A−1)で表される繰り返し単位の具体例(繰り返し単位(A−1a)〜(A−1w))を挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
なお、以下の具体例中のR
A 1は、一般式(A−1)におけるR
A 1と同義である。
樹脂(A)は、水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位を有していても良い。これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位は、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが好ましく、酸分解性基を有さないことが好ましい。
また、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位は、酸分解性基を有する繰り返し単位とは異なることが好ましい(すなわち、酸に対して安定な繰り返し単位であることが好ましい)。
水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造に於ける、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。
より好ましくは、下記一般式(AIIa)〜(AIIc)のいずれかで表される繰り返し単位を挙げることができる。
式中、RXは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、又は、トリフルオロメチル基を表す。
Abは、単結合、又は2価の連結基を表す。
Abにより表される2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、ウレア結合、又はその組み合わせ等が挙げられる。アルキレン基としては、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、炭素数1〜5のアルキレン基がより好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
本発明の一形態において、Abは、単結合、又は、アルキレン基であることが好ましい。
Rpは、水素原子、ヒドロキシル基、又は、ヒドロキシアルキル基を表す。複数のRpは、同一でも異なっていても良いが、複数のRpの内の少なくとも1つは、ヒドロキシル基又はヒドロキシアルキル基を表す。
樹脂(A)は、水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位を含有していても、含有していなくてもよいが、樹脂(A)が水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位を含有する場合、水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、1〜40モル%が好ましく、より好ましくは3〜30モル%、更に好ましくは5〜25モル%である。
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
その他、国際公開2011/122336号明細書の〔0011〕以降に記載のモノマー又はこれに対応する繰り返し単位なども適宜使用可能である。
樹脂(A)は、酸基を有する繰り返し単位(繰り返し単位(a)を除く)を有してもよい。酸基としてはカルボキシル基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビススルホニルイミド基、ナフトール構造、α位が電子求引性基で置換された脂肪族アルコール基(例えばヘキサフロロイソプロパノール基)が挙げられ、カルボキシル基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。酸基を有する繰り返し単位を含有することによりコンタクトホール用途での解像性が増す。酸基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接酸基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖に酸基が結合している繰り返し単位、更には酸基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入、のいずれも好ましく、連結基は単環又は多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位である。
樹脂(A)は、酸基を有する繰り返し単位を含有してもしなくても良いが、含有する場合、酸基を有する繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、25モル%以下であることが好ましく、20モル%以下であることがより好ましい。樹脂(A)が酸基を有する繰り返し単位を含有する場合、樹脂(A)における酸基を有する繰り返し単位の含有量は、通常、1モル%以上である。
酸基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。具体例中、RxはH、CH
3、CH
2OH又はCF
3を表す。
本発明における樹脂(A)は、更に極性基(例えば、前記酸基、ヒドロキシル基、シアノ基)を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を有することができる。これにより、液浸露光時にレジスト膜から液浸液への低分子成分の溶出が低減できるとともに、有機溶剤を含む現像液を用いた現像の際に樹脂の溶解性を適切に調整することができる。このような繰り返し単位としては、一般式(IV)で表される繰り返し単位が挙げられる。
一般式(IV)中、R5は少なくとも1つの環状構造を有し、極性基を有さない炭化水素基を表す。
Raは水素原子、アルキル基又は−CH2−O−Ra2基を表す。式中、Ra2は、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。Raは、水素原子、メチル基、ヒドロキシメチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
R5が有する環状構造には、単環式炭化水素基及び多環式炭化水素基が含まれる。単環式炭化水素基としては、たとえば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基などの炭素数3〜12のシクロアルキル基、シクロへキセニル基など炭素数3〜12のシクロアルケニル基が挙げられる。好ましい単環式炭化水素基としては、炭素数3〜7の単環式炭化水素基であり、より好ましくは、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
多環式炭化水素基には環集合炭化水素基、架橋環式炭化水素基が含まれ、環集合炭化水素基の例としては、ビシクロヘキシル基、パーヒドロナフタレニル基などが含まれる。架橋環式炭化水素環として、例えば、ピナン、ボルナン、ノルピナン、ノルボルナン、ビシクロオクタン環(ビシクロ[2.2.2]オクタン環、ビシクロ[3.2.1]オクタン環等)などの2環式炭化水素環及び、ホモブレダン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン環などの3環式炭化水素環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、パーヒドロ−1,4−メタノ−5,8−メタノナフタレン環などの4環式炭化水素環などが挙げられる。また、架橋環式炭化水素環には、縮合環式炭化水素環、例えば、パーヒドロナフタレン(デカリン)、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロアセナフテン、パーヒドロフルオレン、パーヒドロインデン、パーヒドロフェナレン環などの5〜8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環も含まれる。
好ましい架橋環式炭化水素環として、ノルボルニル基、アダマンチル基、ビシクロオクタニル基、トリシクロ[5、2、1、02,6]デカニル基、などが挙げられる。より好ましい架橋環式炭化水素環としてノルボニル基、アダマンチル基が挙げられる。
これらの脂環式炭化水素基は置換基を有していても良く、好ましい置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、水素原子が置換されたヒドロキシル基、水素原子が置換されたアミノ基などが挙げられる。
樹脂(A)は、極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、この繰り返し単位の含有量は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、1〜50モル%が好ましく、より好ましくは5〜50モル%である。
極性基を持たない脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。式中、Raは、H、CH
3、CH
2OH、又はCF
3を表す。
本発明の組成物に用いられる樹脂(A)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更に感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有することができる。
このような繰り返し構造単位としては、下記の単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
これにより、本発明に係る組成物に用いられる樹脂に要求される性能、特に、
(1)塗布溶剤に対する溶解性、
(2)製膜性(ガラス転移点)、
(3)アルカリ現像性、
(4)膜べり(親疎水性、アルカリ可溶性基選択)、
(5)未露光部の基板への密着性、
(6)ドライエッチング耐性、等の微調整が可能となる。
このような単量体として、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
本発明の組成物に用いられる樹脂(A)において、各繰り返し構造単位の含有モル比は感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物のドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更には感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
本発明の組成物が、ArF露光用であるとき、ArF光への透明性の点から本発明の組成物に用いられる樹脂(A)は実質的には芳香環を有さない(具体的には、樹脂中、芳香族基を有する繰り返し単位の比率が好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下、理想的には0モル%、すなわち、芳香族基を有さない)ことが好ましく、樹脂(A)は単環又は多環の脂環炭化水素構造を有することが好ましい。
本発明における樹脂(A)の形態としては、ランダム型、ブロック型、クシ型、スター型のいずれの形態でもよい。樹脂(A)は、例えば、各構造に対応する不飽和モノマーのラジカル、カチオン、又はアニオン重合により合成することができる。また各構造の前駆体に相当する不飽和モノマーを用いて重合した後に、高分子反応を行うことにより目的とする樹脂を得ることも可能である。
本発明の組成物が、ArF露光用であるとき、ArF光への透明性の点から本発明の組成物に用いられる樹脂(A)は実質的には芳香環を有さない(具体的には、樹脂中、芳香族基を有する繰り返し単位の比率が好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下、理想的には0モル%、すなわち、芳香族基を有さない)ことが好ましく、樹脂(A)は単環又は多環の脂環炭化水素構造を有することが好ましい。
本発明の組成物が、後述する樹脂(D)を含んでいる場合、樹脂(A)は、樹脂(D)との相溶性の観点から、フッ素原子及びケイ素原子を含有しないことが好ましい。
本発明の組成物に用いられる樹脂(A)として好ましくは、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されたものである。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがアクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位とアクリレート系繰り返し単位とによるもののいずれのものでも用いることができるが、アクリレート系繰り返し単位が全繰り返し単位の50モル%以下であることが好ましい。
本発明の組成物にKrFエキシマレーザー光、電子線、X線、波長50nm以下の高エネルギー光線(EUVなど)を照射する場合には、樹脂(A)は、更に、ヒドロキシスチレン系繰り返し単位を有することが好ましい。更に好ましくはヒドロキシスチレン系繰り返し単位と、酸分解性基で保護されたヒドロキシスチレン系繰り返し単位、(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル等の酸分解性繰り返し単位を有するが好ましい。
ヒドロキシスチレン系の好ましい酸分解性基を有する繰り返し単位としては、例えば、t−ブトキシカルボニルオキシスチレン、1−アルコキシエトキシスチレン、(メタ)アクリル酸3級アルキルエステルによる繰り返し単位等を挙げることができ、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート及びジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレートによる繰り返し単位がより好ましい。
本発明における樹脂(A)は、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種及び開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、更には後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の組成物を溶解する溶媒が挙げられる。より好ましくは本発明の感光性組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加し、反応終了後、溶剤に投入して粉体あるいは固形回収等の方法で所望のポリマーを回収する。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、更に好ましくは60〜100℃である。
反応終了後、室温まで放冷し、精製する。精製は、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。
例えば、上記樹脂が難溶或いは不溶の溶媒(貧溶媒)を、該反応溶液の10倍以下の体積量、好ましくは10〜5倍の体積量で、接触させることにより樹脂を固体として析出させる。
ポリマー溶液からの沈殿又は再沈殿操作の際に用いる溶媒(沈殿又は再沈殿溶媒)としては、該ポリマーの貧溶媒であればよく、ポリマーの種類に応じて、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、エーテル、ケトン、エステル、カーボネート、アルコール、カルボン酸、水、これらの溶媒を含む混合溶媒等の中から適宜選択して使用できる。これらの中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくともアルコール(特に、メタノールなど)又は水を含む溶媒が好ましい。
沈殿又は再沈殿溶媒の使用量は、効率や収率等を考慮して適宜選択できるが、一般には、ポリマー溶液100質量部に対して、100〜10000質量部、好ましくは200〜2000質量部、更に好ましくは300〜1000質量部である。
沈殿又は再沈殿する際の温度としては、効率や操作性を考慮して適宜選択できるが、通常0〜50℃程度、好ましくは室温付近(例えば20〜35℃程度)である。沈殿又は再沈殿操作は、攪拌槽などの慣用の混合容器を用い、バッチ式、連続式等の公知の方法により行うことができる。
沈殿又は再沈殿したポリマーは、通常、濾過、遠心分離等の慣用の固液分離に付し、乾燥して使用に供される。濾過は、耐溶剤性の濾材を用い、好ましくは加圧下で行われる。乾燥は、常圧又は減圧下(好ましくは減圧下)、30〜100℃程度、好ましくは30〜50℃程度の温度で行われる。
なお、一度、樹脂を析出させて、分離した後に、再び溶媒に溶解させ、該樹脂が難溶或いは不溶の溶媒と接触させてもよい。即ち、上記ラジカル重合反応終了後、該ポリマーが難溶或いは不溶の溶媒を接触させ、樹脂を析出させ(工程a)、樹脂を溶液から分離し(工程b)、改めて溶媒に溶解させ樹脂溶液Aを調製(工程c)、その後、該樹脂溶液Aに、該樹脂が難溶或いは不溶の溶媒を、樹脂溶液Aの10倍未満の体積量(好ましくは5倍以下の体積量)で、接触させることにより樹脂固体を析出させ(工程d)、析出した樹脂を分離する(工程e)ことを含む方法でもよい。
また、組成物の調製後に樹脂が凝集することなどを抑制する為に、例えば、特開2009−037108号公報に記載のように、合成された樹脂を溶剤に溶解して溶液とし、その溶液を30℃〜90℃程度で30分〜4時間程度加熱するような工程を加えてもよい。
本発明における樹脂(A)の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、上記のように7,000以上であり、好ましくは7,000〜200,000であり、より好ましくは7,000〜50,000、更により好ましくは7,000〜40,000,000、特に好ましくは7,000〜30,000である。重量平均分子量が7000より小さいと、有機系現像液に対する溶解性が高くなりすぎ、精密なパターンを形成できなくなる懸念が生じる。
分散度(分子量分布)は、通常1.0〜3.0であり、好ましくは1.0〜2.6、更に好ましくは1.0〜2.0、特に好ましくは1.4〜2.0の範囲のものが使用される。分子量分布の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、かつ、レジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物において、樹脂(A)の組成物全体中の配合率は、全固形分中30〜99質量%が好ましく、より好ましくは60〜95質量%である。
また、本発明において、樹脂(A)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
<活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物>
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「化合物(B)」又は「酸発生剤」ともいう。)を含有することが好ましい。
本発明の一態様において、酸発生剤としては、下記一般式(ZI)、(ZII)又は(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
上記一般式(ZI)において、
R201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
R201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
なお、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201〜R203の少なくとも1つが、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201〜R203の少なくとも1つと、単結合又は連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
Z−は、非求核性アニオン(求核反応を起こす能力が著しく低いアニオン)を表す。
Z−としては、例えば、スルホン酸アニオン(脂肪族スルホン酸アニオン、芳香族スルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオンなど)、カルボン酸アニオン(脂肪族カルボン酸アニオン、芳香族カルボン酸アニオン、アラルキルカルボン酸アニオンなど)、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン等を挙げられる。
脂肪族スルホン酸アニオン及び脂肪族カルボン酸アニオンにおける脂肪族部位は、アルキル基であってもシクロアルキル基であってもよく、好ましくは炭素数1〜30の直鎖又は分岐のアルキル基及び炭素数3〜30のシクロアルキル基が挙げられる。
芳香族スルホン酸アニオン及び芳香族カルボン酸アニオンにおける芳香族基としては、好ましくは炭素数6〜14のアリール基、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等を挙げることができる。
上記で挙げたアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。この具体例としては、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜15)、アルキルイミノスルホニル基(好ましくは炭素数2〜15)、アリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数6〜20)、アルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数7〜20)、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基(好ましくは炭素数10〜20)、アルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数5〜20)、シクロアルキルアルキルオキシアルキルオキシ基(好ましくは炭素数8〜20)等を挙げることができる。各基が有するアリール基及び環構造については、置換基として更にアルキル基(好ましくは炭素数1〜15)を有していてもよい
アラルキルカルボン酸アニオンにおけるアラルキル基としては、好ましくは炭素数7〜12のアラルキル基、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、ナフチルブチル基等を挙げることができる。
スルホニルイミドアニオンとしては、例えば、サッカリンアニオンを挙げることができる。
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。これらのアルキル基の置換基としてはハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基等を挙げることができ、フッ素原子又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
その他のZ−としては、例えば、弗素化燐(例えば、PF6 −)、弗素化硼素(例えば、BF4 −)、弗素化アンチモン(例えば、SbF6 −)等を挙げることができる。
Z−としては、スルホン酸の少なくともα位がフッ素原子で置換された脂肪族スルホン酸アニオン、フッ素原子又はフッ素原子を有する基で置換された芳香族スルホン酸アニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、アルキル基がフッ素原子で置換されたトリス(アルキルスルホニル)メチドアニオンが好ましい。
本発明の一形態において、Z−としてのアニオンに含まれるフッ素原子数は2又は3であることが好ましい。これにより、本発明の効果を高めることができる。
酸強度の観点からは、発生酸のpKaが−1以下であることが、感度向上のために好ましい。
R201、R202及びR203の有機基としては、アリール基(炭素数6〜15が好ましい)、直鎖又は分岐のアルキル基(炭素数1〜10が好ましい)、シクロアルキル基(炭素数3〜15が好ましい)などが挙げられる。
R201、R202及びR203のうち、少なくとも1つがアリール基であることが好ましく、3つ全てがアリール基であることがより好ましい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などの他に、インドール残基、ピロール残基などのヘテロアリール基も可能である。
R201、R202及びR203としてのこれらアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は更に置換基を有していてもよい。その置換基としては、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜7)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜7)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、R201、R202及びR203から選ばれる2つが、単結合又は連結基を介して結合していてもよい。連結基としてはアルキレン基(炭素数1〜3が好ましい)、−O−,−S−,−CO−,−SO2−などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
R201、R202及びR203のうち少なくとも1つがアリール基でない場合の好ましい構造としては、特開2004−233661号公報の段落0046,0047、特開2003−35948号公報の段落0040〜0046、米国特許出願公開第2003/0224288A1号明細書に式(I−1)〜(I−70)として例示されている化合物、米国特許出願公開第2003/0077540A1号明細書に式(IA−1)〜(IA−54)、式(IB−1)〜(IB−24)として例示されている化合物等のカチオン構造を挙げることができる。
一般式(ZI)で表される化合物の更に好ましい例として、以下に説明する一般式(ZI−3)又は(ZI−4)で表される化合物を挙げることができる。先ず、一般式(ZI-3)で表される化合物について説明する。
上記一般式(ZI−3)中、
R1は、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又はアルケニル基を表し、
R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、R2とR3が互いに連結して環を形成してもよく、
R1とR2は、互いに連結して環を形成してもよく、
RX及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アルコキシカルボニルシクロアルキル基を表し、RXとRyが互いに連結して環を形成してもよく、この環構造は酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケトン基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。
Z−は、非求核性アニオンを表す。
R1としてのアルキル基は、好ましくは炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基であり、アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-オクタデシル基などの直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、2-エチルヘキシル基などの分岐アルキル基を挙げることができる。R1のアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基を有するアルキル基としては、シアノメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基等が挙げられる。
R1としてのシクロアルキル基は、好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基であり、環内に酸素原子又は硫黄原子を有していてもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などを挙げることができる。R1のシクロアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アルキル基、アルコキシ基が挙げられる。
R1としてのアルコキシ基は、好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基、t−ブチルオキシ基、t−アミルオキシ基、n−ブチルオキシ基が挙げられる。R1のアルコキシ基は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基が挙げられる。
R1としてのシクロアルコキシ基は、好ましくは炭素数3〜20のシクロアルコキシ基であり、シクロヘキシルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、アダマンチルオキシ基などを挙げることができる。R1のシクロアルコキシ基は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基が挙げられる。
R1としてのアリール基は、好ましくは炭素数6〜14のアリール基であり、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられる。R1のアリール基は置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基が挙げられる。置換基がアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はシクロアルコキシ基の場合、上述したR1としてのアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基及びシクロアルコキシ基と同様のものが挙げられる。
R1としてのアルケニル基は、ビニル基、アリル基が挙げられる。
R2及びR3は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を表し、R2とR3が互いに連結して環を形成してもよい。但し、R2及びR3のうち少なくとも1つは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基を表す。R2、R3についてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基の具体例及び好ましい例としては、R1について前述した具体例及び好ましい例と同様のものが挙げられる。R2とR3が互いに連結して環を形成する場合、R2及びR3に含まれる環の形成に寄与する炭素原子の数の合計は、4〜7であることが好ましく、4又は5であることが特に好ましい。
R1とR2は、互いに連結して環を形成してもよい。R1とR2が互いに連結して環を形成する場合、R1がアリール基(好ましくは置換基を有してもよいフェニル基又はナフチル基)であり、R2が炭素数1〜4のアルキレン基(好ましくはメチレン基又はエチレン基)であることが好ましく、好ましい置換基としては、上述したR1としてのアリール基が有していても良い置換基と同様のものが挙げられる。R1とR2が互いに連結して環を形成する場合における他の形態として、R1がビニル基であり、R2が炭素数1〜4のアルキレン基であることも好ましい。
RX及びRyにより表されるアルキル基は、好ましくは炭素数1〜15のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等を挙げることができる。
RX及びRyにより表されるシクロアルキル基は、好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等を挙げることができる。
RX及びRyにより表されるアルケニル基は、好ましくは、2〜30のアルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基、及びスチリル基を挙げることができる。
RX及びRyにより表されるアリール基としては、例えば、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アズレニル基、アセナフチレニル基、フェナンスレニル基、ペナレニル基、フェナントラセニル基、フルオレニル基、アントラセニル基、ピレニル基、ベンゾピレニル基等が挙げられる。好ましくは、フェニル基、ナフチル基であり、更に好ましくは、フェニル基である。
RX及びRyにより表される2-オキソアルキル基及びアルコキシカルボニルアルキル基のアルキル基部分としては、例えば、先にRX及びRyとして列挙したものが挙げられる。
RX及びRyにより表される2-オキソシクロアルキル基及びアルコキシカルボニルシクロアルキル基のシクロアルキル基部分としては、例えば、先にRX及びRyとして列挙したものが挙げられる。
Z−は、例えば、前述の一般式(ZI)におけるZ−として列挙したものが挙げられる。
一般式(ZI−3)で表される化合物は、好ましくは、以下の一般式(ZI−3a)及び(ZI−3b)で表される化合物である。
一般式(ZI−3a)及び(ZI−3b)において、R1、R2及びR3は、上記一般式(ZI−3)で定義した通りである。
Yは、酸素原子、硫黄原子又は窒素原子を表し、酸素原子又は窒素原子であることが好ましい。m、n、p及びqは整数を意味し、0〜3であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。S+とYを連結するアルキレン基は置換基を有してもよく、好ましい置換基としてはアルキル基が挙げられる。
R
5は、Yが窒素原子である場合には1価の有機基を表し、Yが酸素原子又は硫黄原子である場合には存在しない。R
5は、電子求引性基を含む基であることが好ましく、下記一般式(ZI−3a−1)〜(ZI−3a−4)で表される基であることが特に好ましい。
上記(ZI−3a−1)〜(ZI−3a−3)において、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、好ましくはアルキル基である。Rについてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基の具体例及び好ましい例としては、上記一般式(ZI−3)におけるR1について前述した具体例及び好ましい例と同様のものが挙げられる。
上記(ZI−3a−1)〜(ZI−3a−4)において、*は一般式(ZI−3a)で表される化合物中のYとしての窒素原子に接続する結合手を表す。
Yが窒素原子である場合、R5は、−SO2−R4で表される基であることが特に好ましい。R4は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、好ましくはアルキル基である。R4についてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基の具体例及び好ましい例としては、R1について前述した具体例及び好ましい例と同様のものが挙げられる。
Z−は、例えば、前述の一般式(ZI)におけるZ−として列挙したものが挙げられる。
一般式(ZI−3)で表される化合物は、特に好ましくは、以下の一般式(ZI−3a’)及び(ZI−3b’)で表される化合物である。
一般式(ZI−3a’)及び(ZI−3b’)において、R
1、R
2、R
3、Y及びR
5は、上記一般式(ZI−3a)及び(ZI−3b)で定義した通りである。
Z
−は、例えば、前述の一般式(ZI)におけるZ
−として列挙したものが挙げられる。
一般式(ZI−3)で表される化合物のカチオン部分の具体例を以下に挙げる。
次に、一般式(ZI−4)で表される化合物について説明する。
一般式(ZI−4)中、
R13は、水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
R14は複数存在する場合は各々独立して、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表す。これらの基は置換基を有してもよい。
R15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はナフチル基を表す。2個のR15が互いに結合して環を形成してもよく、環を構成する原子として、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子などのヘテロ原子を含んでも良い。これらの基は置換基を有してもよい。
lは0〜2の整数を表す。
rは0〜8の整数を表す。
Z−は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるZ−と同様の非求核性アニオンを挙げることができる。
一般式(ZI−4)において、R13、R14及びR15のアルキル基としては、直鎖状若しくは分岐状であり、炭素原子数1〜10のものが好ましい。
R13、R14及びR15のシクロアルキル基としては、単環若しくは多環のシクロアルキル基が挙げられる。
R13及びR14のアルコキシ基としては、直鎖状若しくは分岐状であり、炭素原子数1〜10のものが好ましい。
R13及びR14のアルコキシカルボニル基としては、直鎖状若しくは分岐状であり、炭素原子数2〜11のものが好ましい。
R13及びR14のシクロアルキル基を有する基としては、単環若しくは多環のシクロアルキル基を有する基が挙げられる。これら基は、置換基を更に有していてもよい。
R14のアルキルカルボニル基のアルキル基としては、上述したR13〜R15としてのアルキル基と同様の具体例が挙げられる。
R14のアルキルスルホニル基及びシクロアルキルスルホニル基としては、直鎖状、分岐状、環状であり、炭素原子数1〜10のものが好ましい。
上記各基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子)、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基等を挙げることができる。
2個のR15が互いに結合して形成してもよい環構造としては、2個のR15が一般式(ZI−4)中の硫黄原子と共に形成する5員又は6員の環、特に好ましくは5員の環(即ち、テトラヒドロチオフェン環又は2,5−ジヒドロチオフェン環)が挙げられ、アリール基又はシクロアルキル基と縮環していてもよい。この2価のR15は置換基を有してもよく、置換基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基等を挙げることができる。前記環構造に対する置換基は、複数個存在しても良く、また、それらが互いに結合して環を形成しても良い。
一般式(ZI−4)におけるR15としては、メチル基、エチル基、ナフチル基、及び2個のR15が互いに結合して硫黄原子と共にテトラヒドロチオフェン環構造を形成する2価の基等が好ましく、2個のR15が互いに結合して硫黄原子と共にテトラヒドロチオフェン環構造を形成する2価の基が特に好ましい。
R13及びR14が有し得る置換基としては、水酸基、アルコキシ基、又はアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子(特に、フッ素原子)が好ましい。
lとしては、0又は1が好ましく、1がより好ましい。
rとしては、0〜2が好ましい。
以上説明した一般式(ZI−3)又は(ZI−4)で表される化合物が有するカチオン構造の具体例としては、上述した、特開2004−233661号公報、特開2003−35948号公報、米国特許出願公開第2003/0224288A1号明細書、米国特許出願公開第2003/0077540A1号明細書に例示されている化合物等のカチオン構造の他、例えば、特開2011−53360号公報の段落0046、0047、0072〜0077、0107〜0110に例示されている化学構造等におけるカチオン構造、特開2011−53430号公報の段落0135〜0137、0151、0196〜0199に例示されている化学構造等におけるカチオン構造などが挙げられる。
一般式(ZII)、(ZIII)中、
R204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
R204〜R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基としては、前述の化合物(ZI)におけるR201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基と同様である。
R204〜R207のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、置換基を有していてもよい。この置換基としても、前述の化合物(ZI)におけるR201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基が有していてもよいものが挙げられる。
Z−は、例えば、前述の一般式(ZI)におけるZ−として列挙したものが挙げられる。
また、一般式(ZI−3)又は(ZI−4)で表される化合物の他、下記一般式(ZI−5)で表される化合物も酸発生剤として好ましい。下記一般式(I’)で表される化合物を使用することにより、露光光の透過性が向上し、LWR、DOFが良化する。
上記一般式(ZI−5)中、
X’は、酸素原子、硫黄原子又は−N(Rx)−を表す。
R1’及びR2’はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
R3’〜R9’はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基又はアリールカルボニルオキシ基を表す。
Rxは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アシル基、アルケニル基、アルコキシカルボニル基、アリール基、アリールカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基を表す。
R1’及びR2’は互いに連結して環を形成していても良い。また、R6’〜R9’中のいずれか2つ以上、R3’とR9’、R4’とR5’、R5’とRx、R6’とRxは、それぞれ、互いに連結して環を形成していても良い。
X’は、吸光性(例えば、波長193nmにおける吸光度)を低く抑える観点から、硫黄原子又は−N(Rx)−であることが好ましい。
Z−は、例えば、前述の一般式(ZI)におけるZ−として列挙したものが挙げられる。
R1’〜R9’、Rxとしてのアルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基であり、アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有していてもよい。
なお、Rxについての置換基を有するアルキル基としては、シアノメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基等が挙げられる。
R1’、R2’についての置換基を有するアルキル基としては、メトキシエチル基等が挙げられる。
また、特に直鎖又は分岐アルキル基にシクロアルキル基が置換した基(例えば、アダマンチルメチル基、アダマンチルエチル基、シクロヘキシルエチル基、カンファー残基など)なども挙げられる。
R1’〜R9’、Rxとしてのシクロアルキル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基であり、環内に酸素原子を有していてもよい。
R3’〜R9’、Rxとしてのアシル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜10のアシル基である。
Rxとしてのアルケニル基は、炭素数2〜8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。
R3’〜R9’としてのアルコキシ基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基である。
R3’〜R9’としてのアルコキシカルボニル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基である。
R3’〜R9’としてのアルキルカルボニルオキシ基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数2〜20のアルキルカルボニルオキシ基である。
R1’〜R9’、Rxとしてのアリール基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数6〜14のアリール基である。
R3’〜R9’としてのアリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数6〜14のアリールオキシ基である。
R3’〜R9’、Rxとしてのアリールオキシカルボニル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数7〜15のアリールオキシカルボニル基である。
R3’〜R9’としてのアリールカルボニルオキシ基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数7〜15のアリールカルボニルオキシ基である。
Rxとしてのアリールカルボニル基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数7〜15のアリールカルボニル基である。
R3’〜R9’としてのアルキル基、R1’〜R9’、Rxとしてのシクロアルキル基、R3’〜R9’、Rxとしてのアシル基、R3’〜R9’としてのアルコキシ基、R3’〜R9’としてのアルコキシカルボニル基、R3’〜R9’としてのアルキルカルボニルオキシ基、R1’〜R9’、Rxとしてのアリール基、R3’〜R9’としてのアリールオキシ基、R3’〜R9’、Rxとしてのアリールオキシカルボニル基、R3’〜R9’としてのアリールカルボニルオキシ基、Rxとしてのアリールカルボニル基各々が更に有していてもよい置換基としては、アルキル基(直鎖、分岐、環状のいずれであっても良く、炭素数1〜12が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、ニトロ基、フッ素原子などのハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜15)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜15)、アシル基(好ましくは炭素数2〜12)等が挙げられる。
R1’及びR2’が互いに結合して形成してもよい環構造としては、2価のR1’及びR2’(例えば、エチレン基、プロピレン基、1,2−シクロヘキシレン基等)が一般式(I’)中の硫黄原子と共に形成する5員又は6員の環、特に好ましくは5員の環(即ち、テトラヒドロチオフェン環)が挙げられる。ただし、酸アニオン発生の分解効率の観点から、R1’及びR2’は互いに結合して環を形成しないことが好ましい。
R6’〜R9 ’中のいずれか2つ以上、R3’とR9’、R4’とR5’、R5’とRx、R6’とRxが互いに結合して形成してもよい環構造としては、好ましくは5員又は6員の環、特に好ましくは6員の環が挙げられる。
R1’、R2’としては、アルキル基又はアリール基であることが特に好ましい。
R3’〜R9’の特に好ましい例としては、置換基を有してもよいアルキル基、又は水素原子が挙げられるが、ArFレジスト用途で用いる場合には、193nmの吸収強度の点で水素原子が特に好ましい。
Rxとしては、アルキル基又はアシル基であることが特に好ましい。
次に、非求核性アニオンZ
-の好ましい構造について説明する。
非求核性アニオンZ
-は、一般式(2)で表されるスルホン酸アニオンであることが好ましい。
一般式(2)中
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
R7及びR8は、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、複数存在する場合のR7及びR8は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Lは、二価の連結基を表し、複数存在する場合のLは同一でも異なっていてもよい。
Aは、環状構造を含む有機基を表す。
xは、1〜20の整数を表す。yは、0〜10の整数を表す。zは、0〜10の整数を表す。
一般式(2)のアニオンについて、更に詳しく説明する。
Xfは、上記の通り、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基であり、フッ素原子で置換されたアルキル基におけるアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。また、Xfのフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
Xfとして、好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。具体的には、フッ素原子、CF3が好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが好ましい。
R7及びR8は、上記の通り、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、アルキル基は、炭素数1〜4のものが好ましい。さらに好ましくは炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。R7及びR8の少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基の具体例としては、CF3、C2F5、C3F7、C4F9、C5F11、C6F13、C7F15、C8F17、CH2CF3、CH2CH2CF3、CH2C2F5、CH2CH2C2F5、CH2C3F7、CH2CH2C3F7、CH2C4F9、CH2CH2C4F9が挙げられ、中でもCF3が好ましい。
Lは、2価の連結基を表し、−COO−、−OCO−、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−N(Ri)−(式中、Riは水素原子又はアルキルを表す)、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3〜10)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2〜6)又はこれらの複数を組み合わせた2価の連結基などが挙げられ、−COO−、−OCO−、−CO−、−SO2−、−CON(Ri)−、−SO2N(Ri)−、−CON(Ri)−アルキレン基−、−N(Ri)CO−アルキレン基−、−COO−アルキレン基−又は−OCO−アルキレン基−であることが好ましく、−COO−、−OCO−、−SO2−、−CON(Ri)−又は−SO2N(Ri)−であることがより好ましい。複数存在する場合のLは同一でも異なっていてもよい。
Riとしてのアルキル基は、好ましくは炭素数1〜20の直鎖又は分岐アルキル基であり、アルキル鎖中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基などの直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、2−エチルヘキシル基などの分岐アルキル基を挙げることができる。置換基を有するアルキル基としては、シアノメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基等が挙げられる。
Aの環状構造を含む有機基としては、環状構造を有するものであれば特に限定されず、脂環基、アリール基、ステロイド骨格を有する基(シクロペンタヒドロフェナントレンの炭素骨格を有する基)、複素環基(芳香属性を有するものだけでなく、芳香族性を有さないものも含み、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環構造も含む。)等が挙げられる。
脂環基としては、単環でも多環でもよく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、ノルボルネン−イル基、トリシクロデカニル基(例えば、トリシクロ[5.2.1.0(2,6)]デカニル基)、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。また、ピペリジン基、デカヒドロキノリン基、デカヒドロイソキノリン基等の窒素原子含有脂環基も好ましい。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基、デカヒドロキノリン基、デカヒドロイソキノリン基といった炭素数7以上のかさ高い構造を有する脂環基が、PEB(露光後加熱)工程での膜中拡散性を抑制でき、露光ラチチュード向上の観点から好ましい。
アリール基としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナンスレン環、アントラセン環が挙げられる。中でも193nmにおける光吸光度の観点から低吸光度のナフタレンが好ましい。
複素環基としては、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ピリジン環が挙げられる。中でもフラン環、チオフェン環、ピリジン環が好ましい。
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基(直鎖、分岐、環状のいずれであっても良く、炭素数1〜12が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、スルホン酸エステル基、シアノ基等が挙げられる。
なお、環状構造を含む有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であっても良い。
xは1〜8が好ましく、1〜4がより好ましく、1が特に好ましい。yは0〜4が好ましく、0又は1がより好ましく、0が更に好ましい。zは0〜8が好ましく、0〜4がより好ましく、1が更に好ましい。
また、本発明の一形態において、一般式(2)で表されるアニオンに含まれるフッ素原子数は2又は3であることが好ましい。これにより、本発明の効果を更に高めることができる。
一般式(2)で表されるスルホン酸アニオン構造の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
Z
−としては、下記一般式(B−1)で表されるスルホン酸アニオンも好ましい。
上記一般式(B−1)中、
Rb1は、各々独立に、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基(CF3)を表す。
nは0〜4の整数を表す。
nは0〜3の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。
Xb1は単結合、アルキレン基、エーテル結合、エステル結合(−OCO−若しくは−COO−)、スルホン酸エステル結合(−OSO2−若しくは−SO3−)、又はそれらの組み合わせを表す。
Xb1はエステル結合(−OCO−若しくは−COO−)又はスルホン酸エステル結合(−OSO2−若しくは−SO3−)であることが好ましく、エステル結合(−OCO−若しくは−COO−)であることがより好ましい。
Rb2は炭素数6以上の有機基を表す。
Rb2についての炭素数6以上の有機基としては、嵩高い基であることが好ましく、炭素数6以上の、アルキル基、脂環基、アリール基、複素環基などが挙げられる。
Rb2についての炭素数6以上のアルキル基としては、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素数6〜20の直鎖又は分岐のアルキル基であることが好ましく、例えば、直鎖又は分岐ヘキシル基、直鎖又は分岐ヘプチル基、直鎖又は分岐オクチル基などが挙げられる。嵩高さの観点から分岐アルキル基であることが好ましい。
Rb2についての炭素数6以上の脂環基としては、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環基としては、例えば、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの炭素数7以上の嵩高い構造を有する脂環基が、PEB(露光後加熱)工程での膜中拡散性の抑制及びMEEF(Mask Error Enhancement Factor)の向上の観点から好ましい。
Rb2についての炭素数6以上のアリール基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基及びアントリル基が挙げられる。中でも、193nmにおける光吸光度が比較的低いナフチル基が好ましい。
Rb2についての炭素数6以上の複素環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよいが、多環式の方がより酸の拡散を抑制可能である。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよく、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、及びジベンゾチオフェン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、スルトン環、及びデカヒドロイソキノリン環が挙げられる。
上記Rb2についての炭素数6以上の置換基は、更に置換基を有していてもよい。この更なる置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐のいずれであっても良く、炭素数1〜12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、スピロ環のいずれであっても良く、炭素数3〜20が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及びスルホン酸エステル基が挙げられる。なお、上述の脂環基、アリール基、又は複素環基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であっても良い。
一般式(B−1)で表されるスルホン酸アニオン構造の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。なお、下記具体例には、上述した一般式(2)で表されるスルホン酸アニオンに該当するものも含まれている。
非求核性アニオンZ
-は、一般式(2’)で表されるジスルホニルイミド酸アニオンであってもよい。
一般式(2’)中、
Xfは、上記一般式(2)で定義した通りであり、好ましい例も同様である。一般式(2’)において、2つのXfは互いに連結して環構造を形成してもよい。
Z−についてのジスルホニルイミド酸アニオンとしては、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンであることが好ましい。
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンにおけるアルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。
ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンにおける2つのアルキル基が互いに連結してアルキレン基(好ましくは炭素数2〜4)を成し、イミド基及び2つのスルホニル基とともに環を形成していてもよい。ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオンが形成していてもよい上記の環構造としては、5〜7員環であることが好ましく、6員環であることがより好ましい。
これらのアルキル基、及び2つのアルキル基が互いに連結して成すアルキレン基が有し得る置換基としてはハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、シクロアルキルアリールオキシスルホニル基等を挙げることができ、フッ素原子又はフッ素原子で置換されたアルキル基が好ましい。
酸発生剤として、更に、下記一般式(ZV)で表される化合物も挙げられる。
一般式(ZV)中、
R208はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
R208のアリール基の具体例としては、上記一般式(ZI)におけるR201〜R203としてのアリール基の具体例と同様のものを挙げることができる。
R208のアルキル基及びシクロアルキル基の具体例としては、それぞれ、上記一般式(ZI)におけるR201〜R203としてのアルキル基及びシクロアルキル基の具体例と同様のものを挙げることができる。
Aのアルキレン基としては、炭素数1〜12のアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基など)を、Aのアルケニレン基としては、炭素数2〜12のアルケニレン基(例えば、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基など)を、Aのアリーレン基としては、炭素数6〜10のアリーレン基(例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基など)を、それぞれ挙げることができる。
酸発生剤の例を以下に挙げる。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
酸発生剤は、1種類単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
酸発生剤の組成物中の含有率は、組成物の全固形分を基準として、0.1〜30質量%が好ましく、より好ましくは5〜28質量%、更に好ましくは10〜25質量%である。
<塩基性化合物>
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減するために、塩基性化合物を含有することが好ましい。使用可能な塩基性化合物は特に限定されないが、例えば、以下の(1)〜(5)に分類される化合物を用いることができる。
(1)塩基性化合物(N)
塩基性化合物としては、好ましくは、下記式(A)〜(E)で示される構造を有する化合物(N)を挙げることができる。
一般式(A)及び(E)中、
R200、R201及びR202は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(炭素数6〜20)を表し、ここで、R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
R203、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、炭素数1〜20個のアルキル基を表す。
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1〜20のシアノアルキル基が好ましい。
これら一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
好ましい化合物(N)として、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン等を挙げることができ、更に好ましい化合物(N)として、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物(N)、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
イミダゾール構造を有する化合物(N)としてはイミダゾール、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−フェニルベンゾイミダゾール等が挙げられる。ジアザビシクロ構造を有する化合物(N)としては1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン等が挙げられる。オニウムヒドロキシド構造を有する化合物(N)としてはテトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2−オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシド等が挙げられる。オニウムカルボキシレート構造を有する化合物(N)としてはオニウムヒドロキシド構造を有する化合物(N)のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えばアセテート、アダマンタン−1−カルボキシレート、パーフロロアルキルカルボキシレート等が挙げられる。トリアルキルアミン構造を有する化合物(N)としては、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等を挙げることができる。アニリン化合物(N)としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
好ましい塩基性化合物(N)として、更に、フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物及びスルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物を挙げることができる。これら化合物の例としては、米国特許出願公開第2007/0224539A1号明細書の段落[0066]に例示されている化合物(C1−1)〜(C3−3)などが挙げられる。
また、下記化合物も塩基性化合物(N)として好ましい。
塩基性化合物(N)としては、上述した化合物のほかに、特開2011−22560号公報[0180]〜[0225]、特開2012-137735号公報[0218]〜[0219]、国際公開パンフレットWO2011/158687A1[0416]〜[0438]に記載されている化合物等を使用することもできる。塩基性化合物(N)は、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下する、塩基性化合物又はアンモニウム塩化合物であってもよい。
これらの塩基性化合物(N)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の組成物は、塩基性化合物(N)を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、塩基性化合物(N)の含有率は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
酸発生剤と塩基性化合物(N)の組成物中の使用割合は、酸発生剤/塩基性化合物(モル比)=2.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時によるレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。酸発生剤/塩基性化合物(N)(モル比)は、より好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。
(2)活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下する、塩基性化合物又はアンモニウム塩化合物(E)
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下する、塩基性化合物又はアンモニウム塩化合物(以下、「化合物(E)」ともいう)を含有することが好ましい。
化合物(E)は、塩基性官能基又はアンモニウム基と、活性光線又は放射線の照射により酸性官能基を発生する基とを有する化合物(E−1)であることが好ましい。すなわち、化合物(E)は、塩基性官能基と活性光線若しくは放射線の照射により酸性官能基を発生する基とを有する塩基性化合物、又は、アンモニウム基と活性光線若しくは放射線の照射により酸性官能基を発生する基とを有するアンモニウム塩化合物であることが好ましい。
化合物(E)又は(E−1)が、活性光線又は放射線の照射により分解して発生する、塩基性が低下した化合物として、下記一般式(PA−I)、(PA−II)又は(PAIII)で表される化合物を挙げることができ、LWR、局所的なパターン寸法の均一性及びDOFに関して優れた効果を高次元で両立できるという観点から、特に、一般式(PA−II)又は(PA−III)で表される化合物が好ましい。
まず、一般式(PA−I)で表される化合物について説明する。
Q−A1−(X)n−B−R (PA−I)
一般式(PA−I)中、
A1は、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、−SO3H、又は−CO2Hを表す。Qは、活性光線又は放射線の照射により発生する酸性官能基に相当する。
Xは、−SO2−又は−CO−を表す。
nは、0又は1を表す。
Bは、単結合、酸素原子又は−N(Rx)−を表す。
Rxは、水素原子又は1価の有機基を表す。
Rは、塩基性官能基を有する1価の有機基又はアンモニウム基を有する1価の有機基を表す。
次に、一般式(PA−II)で表される化合物について説明する。
Q1−X1−NH−X2−Q2(PA−II)
一般式(PA−II)中、
Q1及びQ2は、各々独立に、1価の有機基を表す。但し、Q1及びQ2のいずれか一方は、塩基性官能基を有する。Q1とQ2は、結合して環を形成し、形成された環が塩基性官能基を有してもよい。
X1及びX2は、各々独立に、−CO−又は−SO2−を表す。
なお、−NH−は、活性光線又は放射線の照射により発生する酸性官能基に相当する。
次に、一般式(PA−III)で表される化合物を説明する。
Q1−X1−NH−X2−A2−(X3)m−B−Q3 (PA−III)
一般式(PA−III)中、
Q1及びQ3は、各々独立に、1価の有機基を表す。但し、Q1及びQ3のいずれか一方は、塩基性官能基を有する。Q1とQ3は、結合して環を形成し、形成された環が塩基性官能基を有していてもよい。
X1、X2及びX3は、各々独立に、−CO−又は−SO2−を表す。
A2は、2価の連結基を表す。
Bは、単結合、酸素原子又は−N(Qx)−を表す。
Qxは、水素原子又は1価の有機基を表す。
Bが、−N(Qx)−の時、Q3とQxが結合して環を形成してもよい。
mは、0又は1を表す。
なお、−NH−は、活性光線又は放射線の照射により発生する酸性官能基に相当する。
以下、化合物(E)の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。また、これら化合物以外にも、US2010/0233629A号公報の(A−1)〜(A−44)の化合物や、US2012/0156617A号公報の(A−1)〜(A−23)の化合物も好適に用いることができる。
化合物(E)の合成は、特に、特開2006−330098号公報及び特開2011−100105号公報の合成例などに準ずることができる。
化合物(E)の分子量は、500〜1000であることが好ましい。
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は化合物(E)を含有してもしていなくてもよいが、含有する場合、化合物(E)の含有量は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の固形分を基準として、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。
また、化合物(E)の一態様として、活性光線または放射線の照射により分解し、樹脂(A)の酸分解基を酸分解させない程度の強度の酸(弱酸)を発生する化合物(E−2)も挙げることができる。
この化合物としては、例えば、フッ素原子を有さないカルボン酸のオニウム塩(好ましくはスルホニウム塩)、フッ素原子を有さないスルホン酸のオニウム塩(好ましくはスルホニウム塩)をなど挙げることができる。スルホニウム塩のカチオン構造として好ましくは、酸発生剤(B)で挙げているスルホニウムカチオン構造を好ましく挙げることができる。
化合物(E−2)として、より具体的には、WO2012/053527Aの[0170]で挙げられている化合物、特開2012−173419号公報の[0268]〜[0269]の化合物などが挙げられる。
(3)窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(F)
本発明の組成物は、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する化合物(以下「化合物(F)」ともいう)を含有してもよい。
酸の作用により脱離する基としては特に限定されないが、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、ヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、ヘミアミナールエーテル基であることが特に好ましい。
酸の作用により脱離する基を有する化合物(N’’)の分子量は、100〜1000が好ましく、100〜700がより好ましく、100〜500が特に好ましい。
化合物(F)としては、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体が好ましい。
化合物(F)は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有しても良い。カルバメート基を構成する保護基としては、下記一般式(d−1)で表すことができる。
一般式(d−1)において、
Rbは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30)、アリール基(好ましくは炭素数3〜30)、アラルキル基(好ましくは炭素数1〜10)、又はアルコキシアルキル基(好ましくは炭素数1〜10)を表す。Rbは相互に連結して環を形成していてもよい。
Rbが示すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基は、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Rbが示すアルコキシアルキル基についても同様である。
Rbとして好ましくは、直鎖状、又は分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基である。より好ましくは、直鎖状、又は分岐状のアルキル基、シクロアルキル基である。
2つのRbが相互に連結して形成する環としては、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環式炭化水素基若しくはその誘導体等が挙げられる。
一般式(d−1)で表される基の具体的な構造としては、米国特許出願公開第2012/0135348A1号明細書の段落[0466]に開示された構造を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
化合物(F)は、下記一般式(6)で表される構造を有するものであることが特に好ましい。
一般式(6)において、Raは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。lが2のとき、2つのRaは同じでも異なっていてもよく、2つのRaは相互に連結して式中の窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。該複素環には式中の窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。
Rbは、前記一般式(d−1)におけるRbと同義であり、好ましい例も同様である。
lは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数を表し、l+m=3を満たす。
一般式(6)において、Raとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基は、Rbとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基が置換されていてもよい基として前述した基と同様な基で置換されていてもよい。
前記Raのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(これらのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、上記基で置換されていてもよい)の好ましい例としては、Rbについて前述した好ましい例と同様な基が挙げられる。
また、前記Raが相互に連結して形成する複素環としては、好ましくは炭素数20以下であり、例えば、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、1,2,3,6−テトラヒドロピリジン、ホモピペラジン、4−アザベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、5−アザベンゾトリアゾール、1H−1,2,3−トリアゾール、1,4,7−トリアザシクロノナン、テトラゾール、7−アザインドール、インダゾール、ベンズイミダゾール、イミダゾ[1,2−a]ピリジン、(1S,4S)−(+)−2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デック−5−エン、インドール、インドリン、1,2,3,4−テトラヒドロキノキサリン、パーヒドロキノリン、1,5,9−トリアザシクロドデカン等の複素環式化合物に由来する基、これらの複素環式化合物に由来する基を直鎖状、分岐状のアルカンに由来する基、シクロアルカンに由来する基、芳香族化合物に由来する基、複素環化合物に由来する基、ヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基の1種以上或いは1個以上で置換した基等が挙げられる。
本発明における特に好ましい化合物(F)の具体的としては、米国特許出願公開第2012/0135348A1号明細書の段落[0475]に開示された化合物を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
一般式(6)で表される化合物は、特開2007−298569号公報、特開2009−199021号公報などに基づき合成することができる。
本発明において、低分子化合物(F)は、一種単独でも又は2種以上を混合しても使用することができる。
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物における化合物(F)の含有量は、組成物の全固形分を基準として、0.001〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは0.001〜10質量%、更に好ましくは0.01〜5質量%である。
(4)オニウム塩
また、本発明の組成物は、塩基性化合物として、下記一般式(6A)又は(6B)で表されるオニウム塩を含んでもよい。このオニウム塩は、レジスト組成物で通常用いられる光酸発生剤の酸強度との関係で、レジスト系中で、発生酸の拡散を制御することが期待される。
一般式(6A)中、
Raは、有機基を表す。但し、式中のカルボン酸基に直接結合する炭素原子にフッ素原子が置換しているものを除く。
X+は、オニウムカチオンを表す。
一般式(6B)中、
Rbは、有機基を表す。但し、式中のスルホン酸基に直接結合する炭素原子にフッ素原子が置換しているものを除く。
X+はオニウムカチオンを表す。
Ra及びRbにより表される有機基は、式中のカルボン酸基又はスルホン酸基に直接結合する原子が炭素原子であることが好ましい。但し、この場合、上述した光酸発生剤から発生する酸よりも相対的に弱い酸とするために、スルホン酸基又はカルボン酸基に直接結合する炭素原子にフッ素原子が置換することはない。
Ra及びRbにより表される有機基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアラルキル基又は炭素数3〜30の複素環基等が挙げられる。これらの基は水素原子の一部又は全部が置換されていてもよい。
上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基及び複素環基が有し得る置換基としては、例えば、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ラクトン基、アルキルカルボニル基等が挙げられる。
一般式(6A)及び(6B)中のX+により表されるオニウムカチオンとしては、スルホニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、ジアゾニウムカチオンなどが挙げられ、中でもスルホニウムカチオンがより好ましい。
スルホニウムカチオンとしては、例えば、少なくとも1つのアリール基を有するアリールスルホニウムカチオンが好ましく、トリアリールスルホニウムカチオンがより好ましい。アリール基は置換基を有していてもよく、アリール基としては、フェニル基が好ましい。
スルホニウムカチオン及びヨードニウムカチオンの例としては、前述の、化合物(B)における一般式(ZI)のスルホニウムカチオン構造や一般式(ZII)におけるヨードニウム構造も好ましく挙げることができる。
一般式(6A)又は(6B)で表されるオニウム塩の具体的構造を以下に示す。
本発明の組成物が一般式(6A)又は(6B)で表されるオニウム塩を含有する場合、その含有率は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の固形分を基準として、通常、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
(5)ベタイン化合物
更に、本発明の組成物は、特開2012−189977号公報の式(I)に含まれる化合物、特開2013−6827号公報の式(I)で表される化合物、特開2013−8020号公報の式(I)で表される化合物、特開2012−252124号公報の式(I)で表される化合物などのような、1分子内にオニウム塩構造と酸アニオン構造の両方を有する化合物(以下、ベタイン化合物ともいう)も好ましく用いることができる。このオニウム塩構造としては、スルホニウム、ヨードニウム、アンモニウム構造が挙げられ、スルホニウムまたはヨードニウム塩構造であることが好ましい。また、酸アニオン構造としては、スルホン酸アニオンまたはカルボン酸アニオンが好ましい。この化合物の例としては、例えば以下が挙げられる。
(6)含窒素化合物(C)
本発明の組成物は、一形態において、塩基性化合物として、下記一般式(5)により表される含窒素化合物(C)を含有してもよい。
式中、
R9は、水素原子または酸の作用により分解する有機基を表す。
R10は、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。
R9により表される基としては、水素原子が好ましい。
R10により表されるアルキル基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、イソプロピル基等が挙げられる。
R10により表されるアリール基としては、例えば、炭素数6〜14のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
上記アルキル基及びアリール基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、例えば、フッ素原子等が挙げられる。
含窒素化合物(C)の具体例として、例えば、下記化合物を挙げることができる。
<疎水性樹脂>
本発明の組成物は、フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを含む疎水性樹脂(以下、「疎水性樹脂(HR)」又は「樹脂(HR)」ともいう。)を含有してもよい。
疎水性樹脂(HR)におけるフッ素原子及び/又は珪素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
疎水性樹脂(HR)がフッ素原子を含んでいる場合、この樹脂は、フッ素原子を含んだ部分構造として、フッ素原子を含んだアルキル基、フッ素原子を含んだシクロアルキル基、又はフッ素原子を含んだアリール基を備えていることが好ましい。
フッ素原子を含んだアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖又は分岐鎖アルキル基である。このアルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数が1〜4であることがより好ましい。このフッ素原子を含んだアルキル基は、フッ素原子以外の置換基を更に有していてもよい。
フッ素原子を含んだシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環式又は多環式のシクロアルキル基である。このフッ素原子を含んだシクロアルキル基は、フッ素原子以外の置換基を更に有していてもよい。
フッ素原子を含んだアリール基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアリール基である。このアリール基としては、例えば、フェニル基及びナフチル基が挙げられる。このフッ素原子を含んだアリール基は、フッ素原子以外の置換基を更に有していてもよい。
フッ素原子を含んだアルキル基、フッ素原子を含んだシクロアルキル基及びフッ素原子を含んだアリール基の好ましい例として、下記一般式(F2)〜(F4)により表される基が挙げられる。
一般式(F2)〜(F4)中、R57〜R68は、各々独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基を表す。但し、R57〜R61のうち少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R62〜R64のうち少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。R65〜R68のうち少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。これらアルキル基は、炭素数が1〜4であることが好ましい。
R57〜R61及びR65〜R67は、全てがフッ素原子であることが好ましい。
R62、R63及びR68は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であることが更に好ましい。なお、R62とR63とは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
以下に、フッ素原子を含んだ繰り返し単位の具体例を示す。
具体例中、X
1は、水素原子、−CH
3、−F又は−CF
3を表す。X
2は、−F又は−CF
3を表す。
疎水性樹脂(HR)が珪素原子を含んでいる場合、この樹脂は、珪素原子を含んだ部分構造として、アルキルシリル構造又は環状シロキサン構造を備えていることが好ましい。このアリキルシリル構造は、好ましくは、トリアルキルシリル基を含んだ構造である。
アルキルシリル構造及び環状シロキサン構造の好ましい例として、下記一般式(CS−1)〜(CS−3)により表される基が挙げられる。
一般式(CS−1)〜(CS−3)中、R12〜R26は、各々独立に、直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、又はシクロアルキル基を表す。このアルキル基は、炭素数が1〜20であることが好ましい。このシクロアルキル基は、炭素数が3〜20であることが好ましい。
L3〜L5は、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、フェニレン基、エーテル結合、チオエーテル基、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、又はこれらの組合せが挙げられる。
nは、1〜5の整数を表す。nは、好ましくは、2〜4の整数である。
以下に、一般式(CS−1)〜(CS−3)により表される基を有する繰り返し単位の具体例を挙げる。具体例中、X
1は、水素原子、−CH
3、−F又は−CF
3を表す。
疎水性樹脂(HR)は、一形態において、塩基性基又は酸の作用により塩基性が増大する基(以下、「塩基性部位」ともいう)を備えた繰り返し単位を有することが好ましい。その態様としては、フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方を有する繰り返し単位と、塩基性部位を備えた繰り返し単位とを有する樹脂(以下、「樹脂(HR−a)」ともいう)であってもよいし、フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方と、塩基性部位とを備えた繰り返し単位を有する樹脂(以下、「樹脂(HR−b)」ともいう)であってもよい。
樹脂(HR−a)において、フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方を有する繰り返し単位の具体例としては前掲のものが挙げられる。
樹脂(HR−a)において、塩基性基又は酸の作用により塩基性が増大する基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(B−I)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
一般式(B−I)において、Xaは、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基又は−CH2−R9で表わされる基を表す。R9は、水酸基又は1価の有機基を表し、1価の有機基としては、例えば、炭素数5以下のアルキル基、炭素数5以下のアシル基が挙げられ、好ましくは炭素数3以下のアルキル基であり、更に好ましくはメチル基である。Xaは好ましくは水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基、より好ましくは水素原子、メチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
Abは、塩基性基を有する基、又は、酸の作用により塩基性が増大する基を有する基を表す。
Abにおいて、塩基性を有する基、及び、酸の作用により塩基性が増大する基は、いずれも窒素原子を含むことが好ましい。
Abとしての塩基性基を有する基は、前述の「塩基性化合物」で説明した塩基性化合物の骨格を有する基や、アンモニウム基であることが好ましい。
また、樹脂(HR−b)において、フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方と、塩基性部位とを備えた繰り返し単位としては、例えば、以下に示す具体例が挙げられる。
以下、樹脂(HR)における塩基性基又は酸の作用により塩基性が増大する基を有する繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。具体例中、Xは、水素原子、−CH
3、−CH
2OH、−F又は−CF
3を表す。
樹脂(HR)は、下記一般式(III’)により表される繰り返し単位を更に含んでいてもよい。
Rc31は、水素原子、アルキル基(フッ素原子等で置換されていても良い)、シアノ基又は−CH2−O−Rac2基を表す。式中、Rac2は、水素原子、アルキル基又はアシル基を表す。
Rc31は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基が好ましく、水素原子、メチル基が特に好ましい。
Rc32は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、又はアリール基を有する基を表す。これら基は珪素原子を含む基、フッ素原子等で置換されていてもよい。
Lc3は、単結合又は2価の連結基を表す。
Rc32のアルキル基は、炭素数3〜20の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基であることが好ましい。
シクロアルキル基は、炭素数が3〜20であることが好ましい。
アルケニル基は、炭素数が3〜20であることが好ましい。
シクロアルケニル基は、炭素数が3〜20であるシクロアルケニル基が好ましい。
Rc32は、無置換のアルキル基又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基であることが好ましい。
Lc3は、単結合又は2価の連結基を表す。この2価の連結基としては、例えば、エステル基、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜5)、オキシ基、フェニレン基、エステル結合(−COO−により表される基)、又はこれらの2種以上が組み合わされてなる基が挙げられ、総炭素数が1〜12の連結基が好ましい。
樹脂(HR)は、下記一般式(CII−AB)により表される繰り返し単位を更に含んでいてもよい。
式(CII−AB)中、
Rc11’及びRc12’は、各々独立に、水素原子、シアノ基、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。Zc’は、Rc11’及びRc12’が結合している2つの炭素原子(C−C)と共に脂環式構造を形成するために必要な原子団を表す。
Rc32は、上記脂環式構造に対する置換基であり、その定義は一般式(III’)におけるRc32と同様である。
pは、0〜3の整数を表し、0又は1が好ましい。
以下に、一般式(III’)又は(CII−AB)により表される繰り返し単位の具体例を挙げる。具体例中、Raは、H、CH
3、CH
2OH、CF
3又はCNを表す。
以下、樹脂(HR)の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
疎水性樹脂(HR)がフッ素原子を含んでいる場合、フッ素原子の含有量は、疎水性樹脂(HR)の分子量を基準として、5〜80%であることが好ましく、10〜80%であることがより好ましい。
疎水性樹脂(HR)がケイ素原子を含んでいる場合、ケイ素原子の含有量は、疎水性樹脂(HR)の分子量を基準として、2〜50%であることが好ましく、2〜30%であることがより好ましい。
疎水性樹脂(HR)の分子量を基準としたフッ素原子又は珪素原子の含有量が前記の範囲であることによって、フッ素原子又は珪素原子が疎水性樹脂(HR)に充分に含まれていることになるので、疎水性樹脂(HR)の表面自由エネルギーを充分に低減でき、疎水性樹脂(HR)をより確実にレジスト膜の表層部に偏在させることができる。これにより、露光部の表層において発生した過剰の酸をより確実に捕捉することができ、レジスト膜の露光部の厚み方向における酸濃度分布をより確実に均一にすることができるので、前述したようなT−top形状やブリッジ欠陥という不具合をより確実に抑制することができると考えられる。
樹脂(HR−a)における“フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方を有する繰り返し単位”の含有量は、疎水性樹脂(HR)を構成する全繰り返し単位に対して、好ましくは20〜99モル%、より好ましくは25〜95モル%、特に好ましくは30〜90モル%である。
樹脂(HR−a)における“塩基性基又は酸の作用により塩基性が増大する基を有する繰り返し単位”の含有量は、疎水性樹脂(HR)を構成する全繰り返し単位に対して、好ましくは15モル%、より好ましくは8モル%以下、特に好ましくは1〜8モル%である。
樹脂(HR−b)における“フッ素原子及び珪素原子の少なくとも一方と、塩基性基又は酸の作用により塩基性が増大する基とを有する繰り返し単位”の含有量は、疎水性樹脂(HR)を構成する全繰り返し単位に対して、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは25〜100モル%、特に好ましくは30〜100モル%である。
疎水性樹脂(HR)における一般式(III’)又は(CII−AB)により表される繰り返し単位の含有量は、疎水性樹脂(HR)を構成する全繰り返し単位に対して、好ましくは20〜80モル%、より好ましくは25〜70モル%、特に好ましくは30〜60モル%である。
樹脂(HR)の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜100,000であり、より好ましくは1,000〜50,000であり、更に好ましくは7,500〜15,000である。
樹脂(HR)の分散度は、1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましく、1〜2であることが更に好ましい。こうすると、より優れた解像度、パターン形状及びラフネス特性を達成することが可能となる。
疎水性樹脂(HR)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
疎水性樹脂(HR)の含有率は、組成物中の全固形分を基準として、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜8質量%であることがより好ましく、0.1〜5質量%であることが更に好ましい。
疎水性樹脂(HR)としては、市販品を使用してもよく、常法に従って合成したものを使用してもよい。疎水性樹脂(HR)の一般的な合成方法としては、例えば、先に樹脂(B)について説明したのと同様の方法が挙げられる。
疎水性樹脂(HR)は、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、単量体及びオリゴマー成分の残存量が0〜10質量%であることが好ましく、0〜5質量%であることがより好ましく、0〜1質量%であることが更に好ましい。これにより、液中異物の量を減少させ、感度等の経時変化を低減することが可能となる。
<溶剤>
本発明の組成物は溶剤を含有し得る。この溶剤としては、本発明の組成物を調製する際に使用することができる溶剤であれば特に限定されるものではなく、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4〜10)、環を有しても良いモノケトン化合物(好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤を挙げることができる。
これらの溶剤の具体例は、米国特許出願公開2008/0187860号明細書[0441]〜[0455]に記載のものを挙げることができる。
本発明においては、有機溶剤として構造中に水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を含有する溶剤、水酸基を含有しない溶剤としては前述の例示化合物が適宜選択可能であるが、水酸基を含有する溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME、別名1−メトキシ−2−プロパノール)、乳酸エチルがより好ましい。また、水酸基を含有しない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を含有しても良いモノケトン化合物、環状ラクトン、酢酸アルキルなどが好ましく、これらの内でもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、別名1−メトキシ−2−アセトキシプロパン)、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチルが特に好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノンが最も好ましい。
水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。水酸基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
本発明の一形態において、溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含むことが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独溶媒、又は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤であることが好ましい。
また、他の形態において、溶剤は、γ−ブチロラクトン(下記式(7)の化合物)を含有する混合溶剤であることが好ましい。その場合のγ−ブチロラクトンの含有率は、溶剤の全質量を基準として10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。下限値は特に限定されるものではないが、典型的には0.1質量%以上である。
<界面活性剤>
本発明の組成物は、更に界面活性剤を含有してもしなくてもよく、含有する場合、フッ素及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することがより好ましい。
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が界面活性剤を含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤として、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0276]に記載の界面活性剤が挙げられ、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431、4430(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120、R08(DIC(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106、KH−20(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)、GF−300、GF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製)、エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、EF352、EF801、EF802、EF601((株)ジェムコ製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520(OMNOVA社製)、FTX−204G、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218D、222D((株)ネオス製)等である。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)若しくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることが出来る。フルオロ脂肪族化合物は、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することが出来る。
上記に該当する界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(DIC(株)製)、C6F13基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C3F7基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体等を挙げることができる。
また、本発明では、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の[0280]に記載の、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。
これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また、いくつかの組み合わせで使用してもよい。
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の使用量は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.0001〜2質量%、より好ましくは0.0005〜1質量%である。
一方、界面活性剤の添加量を、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物全量(溶剤を除く)に対して、10ppm以下とすることで、本発明に係る樹脂(D)の表面偏在性があがり、それにより、レジスト膜表面をより疎水的にすることができ、液浸露光時の水追随性を向上させることが出来る。
<その他添加剤>
本発明の組成物には、必要に応じて更に染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止剤及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物)等を含有させることができる。
このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号、特開平2−28531号、米国特許第4,916,210、欧州特許第219294等に記載の方法を参考にして、当業者において容易に合成することができる。
カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物の具体例としてはコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸などのステロイド構造を有するカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本発明の組成物は、解像力向上の観点から、膜厚30〜250nmで使用されることが好ましく、より好ましくは、膜厚30〜200nmで使用されることが好ましい。組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性、製膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
本発明の組成物の固形分濃度は、通常1.0〜10質量%であり、好ましくは、2.0〜5.7質量%、更に好ましくは2.0〜5.3質量%である。固形分濃度を前記範囲とすることで、レジスト溶液を基板上に均一に塗布することができ、更にはラインウィズスラフネスに優れたレジストパターンを形成することが可能になる。その理由は明らかではないが、恐らく、固形分濃度を10質量%以下、好ましくは5.7質量%以下とすることで、レジスト溶液中での素材、特には光酸発生剤の凝集が抑制され、その結果として、均一なレジスト膜が形成できたものと考えられる。
固形分濃度とは、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の総重量に対する、溶剤を除く他のレジスト成分の重量の重量百分率である。
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは前記混合溶剤に溶解し、フィルター濾過した後、所定の支持体(基板)上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、更に好ましくは0.03μm以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。フィルター濾過においては、例えば特開2002−62667号公報のように、循環的な濾過を行ったり、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ったりしてもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理などを行ってもよい。
<パターン形成方法>
次に、本発明に係るパターン形成方法について説明する。
本発明のパターン形成方法は、
−感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を基板上に塗布して感活性光線性又は感放射線性膜を形成する工程、
−上記膜を露光する工程、及び
−露光した上記活性光線又は放射線膜を、有機溶剤を含む現像液で現像し、ネガ型パターンを形成する工程、
を少なくとも含む。
本発明のパターン形成方法において、露光は液浸露光であってもよい。
本発明のパターン形成方法は、露光工程を、複数回含んでいてもよい。
また、本発明のパターン形成方法は、加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
また、本発明のパターン形成方法は、現像工程を複数回含んでいてもよい。
本発明のパターン形成方法に於いて、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて感活性光線性又は感放射線性膜を基板上に形成する工程、感活性光線性又は感放射線性膜を露光する工程、及び現像工程は、一般的に知られている方法により行うことができる。
本発明のパターン形成方法は、製膜後、露光工程の前に、前加熱工程(PB;Prebake)を含むことも好ましい。
また、露光工程の後かつ現像工程の前に、露光後加熱工程(PEB;Post Exposure Bake)を含むことも好ましい。
加熱温度はPB、PEB共に70〜130℃で行うことが好ましく、80〜120℃で行うことがより好ましい。
加熱時間は30〜300秒が好ましく、30〜180秒がより好ましく、30〜90秒が更に好ましい。
加熱は通常の露光・現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
ベークにより露光部の反応が促進され、感度やパターンプロファイルが改善する。
本発明における露光装置に用いられる光源波長に制限は無いが、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光、X線、電子線等を挙げることができ、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下、特に好ましくは1〜200nmの波長の遠紫外光、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)、X線、EUV(13nm)、電子線等であり、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV又は電子線が好ましく、ArFエキシマレーザーであることがより好ましい。
また、上述したように、本発明の露光を行う工程においては液浸露光方法を適用することができる。液浸露光方法は、位相シフト法、変形照明法などの超解像技術と組み合わせることが可能である。
液浸露光を行う場合には、(1)基板上に膜を形成した後、露光する工程の前に、及び/又は(2)液浸液を介して膜に露光する工程の後、膜を加熱する工程の前に、膜の表面を水系の薬液で洗浄する工程を実施してもよい。
液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう、屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー(波長;193nm)である場合には、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。
水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させる添加剤(液体)を僅かな割合で添加しても良い。この添加剤はウエハー上のレジスト層を溶解させず、かつレンズ素子の下面の光学コートに対する影響が無視できるものが好ましい。
このような添加剤としては、例えば、水とほぼ等しい屈折率を有する脂肪族系のアルコールが好ましく、具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。水とほぼ等しい屈折率を有するアルコールを添加することにより、水中のアルコール成分が蒸発して含有濃度が変化しても、液体全体としての屈折率変化を極めて小さくできるといった利点が得られる。
一方で、193nm光に対して不透明な物質や屈折率が水と大きく異なる不純物が混入した場合、レジスト上に投影される光学像の歪みを招くため、使用する水としては、蒸留水が好ましい。更にイオン交換フィルター等を通して濾過を行った純水を用いてもよい。
液浸液として用いる水の電気抵抗は、18.3MQcm以上であることが望ましく、TOC(有機物濃度)は20ppb以下であることが望ましく、脱気処理をしていることが望ましい。
また、液浸液の屈折率を高めることにより、リソグラフィー性能を高めることが可能である。このような観点から、屈折率を高めるような添加剤を水に加えたり、水の代わりに重水(D2O)を用いたりしてもよい。
本発明における感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成したレジスト膜の後退接触角は温度23±3℃、湿度45±5%において70°以上であり、液浸媒体を介して露光する場合に好適であり、75°以上であることが好ましく、75〜85°であることがより好ましい。
前記後退接触角が小さすぎると、液浸媒体を介して露光する場合に好適に用いることができず、かつ水残り(ウォーターマーク)欠陥低減の効果を十分に発揮することができない。好ましい後退接触角を実現する為には、前記の疎水性樹脂(HR)を前記感活性光線性または放射線性組成物に含ませることが好ましい。あるいは、感活性光線性又は感放射線性膜の上に、疎水性の樹脂組成物によるコーティング層(いわゆる「トップコート」)を形成することにより後退接触角を向上させてもよい。
液浸露光工程に於いては、露光ヘッドが高速でウェハ上をスキャンし露光パターンを形成していく動きに追随して、液浸液がウェハ上を動く必要があるので、動的な状態に於けるレジスト膜に対する液浸液の接触角が重要になり、液滴が残存することなく、露光ヘッドの高速なスキャンに追随する性能がレジストには求められる。
本発明において膜を形成する基板は特に限定されるものではなく、シリコン、SiN、SiO2やSiN等の無機基板、SOG等の塗布系無機基板等、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造工程、更にはその他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程で一般的に用いられる基板を用いることができる。更に、必要に応じて、レジスト膜と基板の間に反射防止膜を形成させてもよい。反射防止膜としては、公知の有機系、無機系の反射防止膜を適宜用いることができる。
本発明のパターン形成方法における現像工程は、有機溶剤を含有する現像液(以下、「有機溶剤系現像液」ともいう)を用いて行われる。これによりネガ型のパターンが形成される。
本発明のパターン形成方法は、上述したように、現像工程を複数回含んでもよく、その場合、有機溶剤系現像液を用いた現像とアルカリ現像液を用いた現像とを組み合わせてもよい。
本発明において、有機溶剤系現像液を用いて現像する工程を行った場合は、ネガ型のパターンが形成され、アルカリ現像液を用いて現像する工程を行った場合は、ポジ型のパターンが形成される。有機溶剤系現像液を用いた現像とアルカリ現像液を用いた現像の両方を行った場合は、US8227183BのFIG.1〜FIG.11などに説明されているように、光学空間像の周波数の2倍の解像度のパターンを得ることも可能である。
本発明のパターン形成方法における、有機溶剤系現像液を用いて現像する工程における有機系現像液としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤及び炭化水素系溶剤を用いることができる。
ケトン系溶剤としては、例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、2−ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等を挙げることができる。
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルー3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等を挙げることができる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、n−デカノール等のアルコールや、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤等を挙げることができる。
エーテル系溶剤としては、例えば、上記グリコールエーテル系溶剤の他、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が使用できる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
特に、有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有する現像液であるのが好ましく、とりわけ、エステル系溶剤としての酢酸ブチルまたケトン系溶剤としてのメチルアミルケトン(2-ヘプタノン)を含む現像液が好ましい。
溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤や水と混合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するためには、現像液全体としての含水率が10質量%未満であることが好ましく、実質的に水分を含有しないことがより好ましい。
すなわち、有機系現像液に対する有機溶剤の使用量は、現像液の全量に対して、90質量%以上100質量%以下であることが好ましく、95質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
有機系現像液の蒸気圧は、20℃に於いて、5kPa以下が好ましく、3kPa以下が更に好ましく、2kPa以下が特に好ましい。有機系現像液の蒸気圧を5kPa以下にすることにより、現像液の基板上あるいは現像カップ内での蒸発が抑制され、ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウェハ面内の寸法均一性が良化する。
有機系現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。
界面活性剤としては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤として、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5824451号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を用いることが更に好ましい。
界面活性剤の使用量は現像液の全量に対して、通常0.001〜5質量%、好ましくは0.005〜2質量%、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
また、有機系現像液には、特開2013−11833号公報の特に段落0032〜段落0063付近に説明されているように、含窒素化合物を含んでもよい。
現像方法としては、たとえば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)などを適用することができる。
上記各種の現像方法が、現像装置の現像ノズルから現像液をレジスト膜に向けて吐出する工程を含む場合、吐出される現像液の吐出圧(吐出される現像液の単位面積あたりの流速)は、一例として、好ましくは2mL/sec/mm2以下、より好ましくは1.5mL/sec/mm2以下、更に好ましくは1mL/sec/mm2以下である。流速の下限は特に無いが、スループットを考慮すると0.2mL/sec/mm2以上が好ましい。この詳細については、特開2010−232550号公報の特に段落0022〜段落0029等に記載されている。
また、有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
本発明のパターン形成方法が、アルカリ現像液を用いて現像する工程を有する場合、使用可能なアルカリ現像液は特に限定されないが、一般的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38質量%の水溶液が用いられるが、これ以外の濃度(例えば、より薄い濃度)のものも使用可能である。また、アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
アルカリ現像の後に行うリンス処理におけるリンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
また、現像処理又はリンス処理の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
有機溶剤系現像液を用いて現像する工程の後には、リンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。このリンス液としては、レジストパターンを溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用することができる。前記リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤の具体例としては、有機溶剤を含む現像液において説明したものと同様のものを挙げることができる。
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に、より好ましくは、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行い、更に好ましくは、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行い、特に好ましくは、1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行い、最も好ましくは、炭素数5以上の1価アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。
ここで、リンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノールなどを用いることができる。
前記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。含水率を10質量%以下にすることで、良好な現像特性を得ることができる。
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程の後に用いるリンス液の蒸気圧は、20℃に於いて0.05kPa以上、5kPa以下が好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下が更に好ましく、0.12kPa以上、3kPa以下が最も好ましい。リンス液の蒸気圧を0.05kPa以上、5kPa以下にすることにより、ウェハ面内の温度均一性が向上し、更にはリンス液の浸透に起因した膨潤が抑制され、ウェハ面内の寸法均一性が良化する。
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
リンス工程においては、有機溶剤を含む現像液を用いる現像を行ったウェハを前記の有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、たとえば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)、などを適用することができ、この中でも回転塗布方法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2000rpm〜4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むことも好ましい。ベークによりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程は、通常40〜160℃、好ましくは70〜95℃で、通常10秒〜3分、好ましくは30秒から90秒間行う。
本発明に使用される有機系現像液、アルカリ現像液、および/またはリンス液は、各種微粒子や金属元素などの不純物が少ないことが好ましい。このような不純物が少ない薬液を得るためには、これら薬液をクリーンルーム内で製造し、また、テフロン(登録商標)フィルター、ポリオレフィン系フィルター、イオン交換フィルター等の各種フィルターによるろ過を行うなどして、不純物低減を行うことが好ましい。金属元素は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、及び、Znの金属元素濃度がいずれも10ppm以下であることが好ましく、5ppm以下であることがより好ましい。
また、現像液やリンス液の保管容器については、特に限定されず、電子材料用途で用いられている、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン−ポリプロピレン樹脂などの容器を適宜使用することができるが、容器から溶出する不純物を低減する為、容器の内壁から薬液へ溶出する成分が少ない容器を選択することも好ましい。このような容器として、容器の内壁がパーフルオロ樹脂である容器(例えば、Entegris社製 FluoroPurePFA複合ドラム(接液内面;PFA樹脂ライニング)、JFE社製 鋼製ドラム缶(接液内面;燐酸亜鉛皮膜))などが挙げられる。
本発明は、上記した本発明のネガ型パターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法、及び、この製造方法により製造された電子デバイスにも関する。
本発明の電子デバイスは、電気電子機器(家電、OA・メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)に、好適に、搭載されるものである。
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の内容がこれにより限定されるものではない。
<合成例:酸分解性樹脂(P−1)の合成>
窒素気流下、シクロヘキサノン24.2gを3つ口フラスコに入れ、これを85℃に加熱した。このようにして、溶剤1を得た。次に、下記monomer−1(5.33g)、monomer−2(2.24g)、monomer−3(2.48g)、monomer−4(20.19g)を、シクロヘキサノン(96.8g)に溶解させ、モノマー溶液を調製した。更に、重合開始剤V−601(和光純薬工業製)を、モノマーの合計量に対し4.2mol%を加え、溶解させた溶液を、上記溶剤1に対して6時間かけて滴下した。滴下終了後、更に85℃で2時間反応させた。反応液を放冷後、メタノール953g/水106gの混合溶媒に滴下し、析出した粉体をろ取及び乾燥して、25.2gの後掲に示す樹脂(P−1)を得た。得られた樹脂(P−1)につき、GPC(溶媒:THF)測定により、重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)、数平均分子量(Mn:ポリスチレン換算)及び分散度(Mw/Mn)を算出した。また、
13C−NMRにより、樹脂(P−1)の組成比(モル比)を算出した。樹脂(P−1)の重量平均分子量は6900であり、分散度(Mw/Mn)は1.57であり、組成比は20/21/9/60であった。
樹脂(P−1)と同様にして、樹脂(P−2)〜(P−7)及び(PA−1)を合成した。これら樹脂の重量平均分子量、分散度(Mw/Mn)及び組成比は、下表の通りであった。
<酸発生剤>
酸発生剤としては先に挙げた酸発生剤z1〜z101から適宜選択して用いた。
<塩基性化合物>
塩基性化合物として、下記化合物(N−1)〜(N−9)を準備した。
<疎水性樹脂>
疎水性樹脂としては、先に挙げた樹脂(HR−1)〜(HR−66)及び(C−1)〜(C−28)から、適宜選択して用いた。
<界面活性剤>
界面活性剤として、以下のものを準備した。
W−1: メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製;フッ素系)
W−2: メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製;フッ素及びシリコン系)
W−3: ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製;シリコン系)
W−4: トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)
W−5: KH−20(旭硝子(株)製)
W−6: PolyFox PF−6320(OMNOVA Solutions Inc.製;フッ素系)
<溶剤>
溶剤として、以下のものを準備した。
(a群)
SL−1: プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
SL−2: プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート
SL−3: 2−ヘプタノン
(b群)
SL−4: 乳酸エチル
SL−5: プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
SL−6: シクロヘキサノン
(c群)
SL−7: γ−ブチロラクトン
SL−8: プロピレンカーボネート
<現像液>
現像液として、以下のものを準備した。
SG−1:酢酸ブチル
SG−2:メチルアミルケトン
SG−3:エチル−3−エトキシプロピオネート
SG−4:酢酸ペンチル
SG−5:酢酸イソペンチル
SG−6:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
SG−7:シクロヘキサノン
<リンス液>
リンス液として、以下のものを用いた。
SR−1:4−メチル−2−ペンタノール
SR−2:1−ヘキサノール
SR−3:酢酸ブチル
SR−4:メチルアミルケトン
SR−5:エチル−3−エトキシプロピオネート
<レジスト調製>
表4に示す成分を同表に示す溶剤に固形分で3.8質量%溶解させ、それぞれを0.03μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターでろ過して、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(レジスト組成物)を調製した。
<パターン形成>
シリコンウエハ上に有機反射防止膜ARC29SR(日産化学社製)を塗布し、205℃で60秒間ベークを行い、膜厚98nmの反射防止膜を形成した。その上に調製した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を塗布し、100℃で60秒間に亘ってベーク(Prebake:PB)を行い、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。
得られたレジスト膜に対し、ArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製;XT1700i、NA1.20、C−Quad、アウターシグマ0.900、インナーシグマ0.812、XY偏向)を用い、パターン露光を行った。なお、レクチルとしては、ラインサイズ=45nmであり且つライン:スペース=1:1である6%ハーフトーンマスクを用いた。また、液浸液としては超純水を用いた。その後、表5に記載の温度で60秒間加熱(Post Exposure Bake:PEB)した。次いで、表5に記載の有機溶剤系現像液で30秒間パドルして現像し、500rpmの回転数でウェハを回転させながら、表5に記載のリンス液で2秒間パドルしてリンスした。次いで2500rpmでスピン乾燥した後、90℃で60秒間加熱(Post Bake)することで完全に乾燥させ、スペース幅45nmの1:1のラインアンドスペースのレジストパターンを得た。
<評価方法>
下記評価方法により、感度、ラフネス特性(LWR)、露光ラチチュード(EL)及びパターン形状を評価し、結果を後掲の表5に示した。
[感度]
線幅45nmの1:1ラインアンドスペースのパターンを解像する時の照射エネルギーを感度(Eop)とした。この値が小さいほど性能が良好であることを示す。
[LWR]
得られた線幅45nmの1:1ラインアンドスペースのパターンについて、走査型顕微鏡(日立社製S9380)で観察し、ラインパターンの長手方向のエッジ2μmの範囲について、線幅を50ポイント測定し、その測定ばらつきについて標準偏差を求め、3σを算出した。値が小さいほどラフネス特性が良好であることを示す。
[露光ラチチュード(EL)]
線幅45nmの1:1ラインアンドスペースのマスクパターンを再現する露光量を最適露光量とし、露光量を変化させた際にパターンサイズが45nm±10%を許容する露光量幅を求め、この値を最適露光量で割って百分率表示した。値が大きいほど露光量変化による性能変化が小さく、露光ラチチュードが良好であることを示す。
[パターン形状]
上記の感度を示す照射量における線幅45nmの1:1ラインアンドスペースパターンの断面形状を走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製S−4300)を用いて観察し、矩形、テーパー、逆テーパーの3段階評価を行った。
上掲の表に示す結果から明らかなように、本発明のパターン形成方法により得られたネガ型パターンは、感度、LWR、EL及びパターン形状に関する各性能が優れていることがわかる。
更に、実施例1において、現像液(酢酸ブチル)に、トリn−オクチルアミンを少量加えた以外は同様にして評価を行ったところ、これにおいても良好なネガ型パターンを得ることができた。
また、下表に示す実施例15、16のレジスト組成物を用いて基板上に膜形成し、EUV光で露光を行った後、酢酸ブチルで現像処理を行い、上述した例と同様にして評価を行ったところ、これについても良好なパターン形成を行うことができた。
また、実施例1のレジスト組成物を用い、米国特許第8,227,183号明細書に記載のExample7を参考に、ラインアンドスペースのマスクパターンをEUV光で露光した後、酢酸ブチル現像とアルカリ現像の両方を行ったところ、マスクパターンの1/2のピッチのパターンを形成することができた。