JP2014218876A - 後施工アンカー、後施工アンカーの施工方法および後施工アンカーシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】引抜き強度が経時的に低下するのを防止することができる後施工アンカーを提供する。【解決手段】所定の深さ位置に拡径部4を有するアンカー穴1にアンカリングされる後施工アンカー6であって、アンカー穴1に挿入される円筒状の筒状本体8と、筒状本体8の先端側に連なり、拡開したアンカリング状態で拡径部4に係止される拡開部11と、拡開部11を内側から拡開させるコーン12と、を備え、拡開部11は、筒状本体8に対し太径に形成されている。【選択図】図1
Description
本発明は、コンクリート等の躯体に穿孔した下穴にアンカリングされる後施工アンカー、後施工アンカーの施工方法および後施工アンカーシステムに関する。
従来、この種の後施工アンカーとして、天井板などの吊り下げ物をコンクリートスラブなどの躯体に固定する場合に用いられる後施工アンカー(以下、「アンカー」と言う)が知られている(特許文献1参照)。このアンカーは、特殊形状の下孔に打ち込まれるものであり、下孔は、下孔一般部と、下孔一般部に連なる拡径されたテーパー孔部と、テーパー孔部に連なると共に下孔一般部より小径のストレート孔部と、を有している。
アンカーは、基部側の大径軸部と、大径軸部に連なるプラグと、プラグに装着されたスリーブとを備えている。プラグは、環状突起部およびこれに連なるテーパー面を有し、スリーブは、この環状突起部およびテーパー面に対応して嵌合溝および拡張部を有している。そして、アンカーを下孔に投入すると、拡張部の下端がテーパー孔部の底に当接するようになっている。
この状態で、大径軸部を打ち込むと、プラグのテーパー面がスリーブの拡張部を押し開くと同時に、プラグの環状突起部がスリーブの嵌合溝に嵌合する。押し開かれた拡張部はテーパー孔部に圧接され、これによりスリーブが躯体にアンカリングされる。また、嵌合溝に嵌合した環状突起部は抜止め状態となり、引き抜き方向において、スリーブ、プラグおよび大径軸部が一体化する。
上記従来のアンカーでは、大径軸部およびプラグに対し、スリーブが別部材で構成され、打ち込みにより、スリーブがアンカリングされると同時にスリーブがプラグに抜止め状態となる。このため、各部材の製造誤差により、下孔のテーパー面に対する拡張部の圧接状態が緩くなると、或いはスリーブに対するプラグの嵌合状態が緩くなると、引き抜き強度が低下してアンカーが下孔から抜け落ち易くなる。特に、地震等による揺れを繰り返し受けると、経時的にアンカーが下孔から抜け落ちるおそれがある。
本発明は、上記の問題点に鑑み、引抜き強度が経時的に低下するのを防止することができる後施工アンカー、後施工アンカーの施工方法および後施工アンカーシステムを提供することを課題としている。
本発明の後施工アンカーは、所定の深さ位置に拡径部を有するアンカー穴にアンカリングされる後施工アンカーであって、アンカー穴に挿入される円筒状の筒状本体と、筒状本体の先端側に連なり、拡開したアンカリング状態で拡径部に係止される拡開部と、拡開部を内側から拡開させるコーンと、を備え、拡開部は、筒状本体に対し太径に形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、筒状本体に対し拡開部が太径に形成されているため、コーンにより拡開部が拡開すると、拡開部は、アンカー穴の拡径部に無理なく係止(圧接)される。また、拡開部の近傍に位置する筒状本体の部位も、拡径部の近傍に位置するアンカー穴の部位に圧接される。特に、拡開部は、拡径部の環状段部の部分に対し抜止め状態となるため、振動等により緩みを生じても抜け落ちてしまうことがない。したがって、後施工アンカーをアンカー穴に強固に固定することができるだけでなく、引抜き強度が経時的に低下するのを有効に防止することができる。なお、「筒状本体に対し太径」は、拡開部の外径が太径の意であって、拡開部の一部が太径であってもよい。
この場合、拡開部の先端から延設された延設部を、更に備え、延設部は、筒状本体に対し細径に形成されていることが好ましい。
この構成によれば、拡開部が拡開したときに、拡開部に優先して延設部がアンカー穴の内周面に圧接されることがなく、拡開部をアンカー穴の拡径部に確実に圧接させることができる。
同様に、拡径部は、軸方向においてストレート形状に形成され、拡開部は、拡開したアンカリング状態で拡径部に合致するストレート形状となるように、先細りのテーパー形状に形成されていることが好ましい。
この構成によれば、拡開部が拡開したときに、拡開部は略ストレート形状に拡開される。このため、拡開部の全域を拡径部に圧接することができ、アンカー穴に対し、より強固に抜止め状態とすることができる。
また、コーンの外周面は、軸方向において断面鋸歯状に形成されていることが好ましい。
同様に、拡開部の内周面は、軸方向において断面鋸歯状に形成されていることが好ましい。
これらの構成によれば、拡開状態の拡開部の内周面とコーンの外周面との間の摩擦力が大きくなるため、地震等の振動により、コーンが抜け方向に移動してしまうのを、有効に防止することができる。
また、筒状本体の基端側に設けられ、アンカー穴の開口部に嵌合する嵌合部を、更に備えることが好ましい。
拡開部が、筒状本体に対し太径に形成されているため、筒状本体の基端部とアンカー穴の開口部との間には、比較的広い環状間隙が生ずる。このため、施工後の後施工アンカーは、この環状間隙分、グラつき易いものとなる。そして、繰り返しグラつきが生ずると、拡開部が抉られて引抜き強度が低下する。
この構成によれば、筒状本体の基端側に設けた嵌合部が、上記の環状間隙を埋めるようにアンカー穴の開口部に嵌合されるため、施工後の後施工アンカーのグラつきを防止することができる。
この構成によれば、筒状本体の基端側に設けた嵌合部が、上記の環状間隙を埋めるようにアンカー穴の開口部に嵌合されるため、施工後の後施工アンカーのグラつきを防止することができる。
この場合、嵌合部の外周面は、先細りのテーパー形状に形成されていることが好ましい。
この構成によれば、嵌合部を、アンカー穴の開口部に喰い込ませることができる。これにより、施工後の後施工アンカーのグラつきを、確実に防止することができる。
また、筒状本体の基端部とアンカー穴の開口部との間の環状間隙に嵌合装着されるカラーを、更に備えることが好ましい。
この構成によれば、上記の嵌合部と同様に、カラーが、上記の環状間隙を埋めるようにアンカー穴の開口部に嵌合されるため、施工後の後施工アンカーのグラつきを防止することができる。
この場合、カラーには、周方向の1箇所に割スリットが形成されていることが好ましい。
この構成によれば、カラーをそのばね力を利用して、筒状本体の基端側に装着しておくことができる。
そして、コーンは、筒状本体に対し相対的に押し込まれることにより、前記拡開部を拡開させることが好ましい。
この構成によれば、引抜き強度が経時的に低下することのない、いわゆる内部コーン打込み式や心棒打込み式の後施工アンカーを提供することができる。
同様に、コーンは、筒状本体に対し相対的に引き込まれることにより、拡開部を拡開させることが好ましい。
この構成によれば、引抜き強度が経時的に低下することのない、いわゆる本体打込み式、スリーブ打込み式、各種締付け式の後施工アンカーを提供することができる。
本発明の他の後施工アンカーは、所定の深さ位置に拡径部を有するアンカー穴にアンカリングされる後施工アンカーであって、アンカー穴に挿入される円筒状の筒状本体と、筒状本体の先端側において径方向にスライド可能に構成され、拡開したアンカリング状態で拡径部に係止される複数の拡開片と、複数の拡開片が拡開するように、各拡開片を径方向の外方にスライドさせるコーンと、を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、筒状本体に対し複数の拡開片が径方向にスライド可能に構成されているため、コーンにより複数の拡開片が拡開すると、これら拡開片は、アンカー穴の拡径部に無理なく係止(圧接)される。これにより、複数の拡開片は、拡径部の環状段部の部分に対し抜止め状態となるため、振動等により緩みを生じても抜け落ちてしまうことがない。したがって、後施工アンカーをアンカー穴に強固に固定することができるだけでなく、引抜き強度が経時的に低下するのを有効に防止することができる。
本発明の後施工アンカーの施工方法は、上記した後施工アンカーの施工方法であって、アンカー穴を穿孔する穿孔工程と、アンカー穴に拡径部を形成する拡径工程と、アンカー穴に、後施工アンカーを挿入すると共に前記拡開部を拡開させるアンカリング工程と、を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、拡開部を拡開(アンカリング)させると、拡開部は、アンカー穴の拡径部に無理なく係止(圧接)される。また、拡開部の近傍に位置する筒状本体の部位も、拡径部の近傍に位置するアンカー穴の部位に圧接される。特に、拡開部は、拡径部の環状段部の部分に対し抜止め状態となるため、振動等により緩みを生じても抜け落ちてしまうことがない。したがって、後施工アンカーをアンカー穴に強固に固定することができるだけでなく、引抜き強度が経時的に低下するのを有効に防止することができる。
この場合、拡径工程とアンカリング工程との間に、アンカー穴に接着剤を注入する注入工程を、更に備えることが好ましい。
この構成によれば、後施工アンカーを、アンカー穴に対しメカニカルに定着させ得るだけでなく、接着剤によって定着させることができる。したがって、後施工アンカーをアンカー穴により強固に固定(定着)することができ、且つ引抜き強度が経時的に低下するのを有効に防止することができる。
本発明の後施工アンカーシステムは、上記した後施工アンカーと、先端部において、アンカー穴に拡径部を研削する切刃部を有する拡径用ドリルビットと、を備え、後施工アンカーの先端から拡開部の基端までの距離と、拡径用ドリルビットの先端から切刃部の基端までの距離と、が同一であることを特徴とする。
この構成によれば、拡径用ドリルビットによりアンカー穴に形成した拡径部の位置と、アンカー穴にアンカリングされた後施工アンカーの拡開部の位置と、を合致させることができる。したがって、アンカー穴にアンカリングされた後施工アンカーは、拡径部の環状段部の部分に対し抜止め状態となるため、振動等により緩みを生じても抜け落ちてしまうことがない。したがって、後施工アンカーをアンカー穴に強固に固定することができるだけでなく、引抜き強度が経時的に低下するのを有効に防止することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係る後施工アンカー、後施工アンカーの施工方法および後施工アンカーシステムについて説明する。この後施工アンカーは、スラブ、外壁、内壁等のコンクリートの躯体に対し、構造体を支持するために設けられる、いわゆる金属拡張アンカーである。特に、本実施形態の後施工アンカーは、建物の耐震補強や設備機器の設置に用いられ、特殊形状のアンカー穴と協働して、地震等の振動による経時的な引抜き強度の低下を防止し得るものである。そこで、後施工アンカーの説明の前に、この特殊形状のアンカー穴について、簡単に説明する。
図1(c)は、コンクリート等の躯体に形成されたアンカー穴を表している。同図に示すように、アンカー穴1は、躯体2に穿孔されたストレート部3と、ストレート部3の最奥部(先端部)に、ストレート部3よりも太径に形成された拡径部4とを有している。この場合、拡径部4は、環状段部5を存してストレート部3から外側に張り出した円筒状の部分で構成されている。
図1(a)および(b)は、第1実施形態に係る後施工アンカー6の構造図であり、図1(a)は正面図であり、図1(b)は断面図である。両図に示すように、第1実施形態の後施工アンカー6は、いわゆる内部コーン打込み式のアンカーである。この後施工アンカー6は、基端側に形成され、アンカー穴1の開口縁部に着座するフランジ部7と、フランジ部7に連なり、アンカー穴1に挿入される円筒状の筒状本体8と、筒状本体8の基端側に設けられ、アンカー穴1の開口部9に嵌合する嵌合部10と、筒状本体8の先端から延設された拡開部11と、拡開部11の先端から延設された延設部31と、筒状本体8に収容され、拡開部11を内側から拡開させるコーン12と、を備えている。
筒状本体8は、一体に形成した基端側の上部本体13と先端側の下部本体14とから成り、上部本体13の内周面には雌ねじ15が形成されている。この雌ねじ15には、図示しないが、支持対象物のための吊りボルトや繋ぎボルトなどの連結ボルトがねじ込まれる。下部本体14の先端には拡開部11が連なっており、下部本体14には、拡開部11および延設部31から延びる2つのスリット16が形成されている。詳細は後述するが、2つのスリット16は、拡開部11の拡開を許容すると共に、これに伴う下部本体14の拡開をも許容する。
嵌合部10は、アンカー穴1と筒状本体8との間に形成された環状間隙17を埋める部位であり、上記の上部本体13およびフランジ部7と一体に形成されている。嵌合部10の外周面は、先細りのテーパー形状に形成されており、嵌合部10は、アンカー穴1の開口部9に食い込むように嵌合する。これにより、アンカー穴1にアンカリングされた後施工アンカー6のグラつきが防止される。なお、この後施工アンカー6において、フランジ部7の無い構造であってもよい。
拡開部11は、アンカー穴1の拡径部4に係止されるようにアンカリングされる部位であり、筒状本体8の下部本体14に連なると共に、筒状本体8より太径に形成されている。すなわち、拡開部11は、後施工アンカー6をアンカー穴1に投入したときに、拡径部4の深さ位置に合致するように設けられている。また、ストレート部3に対する拡径部4の拡径寸法に対応して、拡開部11は、ほぼこの拡径寸法分、筒状本体8より太径に形成されている。
拡開部11の外周面は、例えば軸方向に波形状に形成され、アンカー穴1の拡径部4にリング状に複数個所押しつけられて、拡径部4に係止(アンカリング)される。一方、拡開部11の内周面18は、打ち込まれるコーン12の形状に合わせて先細りのテーパー形状を為し、且つ軸方向において滑り止めとなるように断面鋸歯状に形成されている。これにより、拡開部11は、アンカー穴1の拡径部4の形状に倣って拡開され、且つ打ち込まれたコーン12の拡開部11から抜けが防止される。なお、拡開部11の内周面18は、ストレート形状であってもよい。
また、拡開部11には、延設部31の先端から切り込むようにして2つのスリット16が形成されている。2つのスリット16は、周方向において180°点対称位置に配設されており、打ち込まれたコーン12により、2つ割りの状態で外方に拡開される。上述のように、2つのスリット16は、筒状本体8の下部本体14まで延在しているため、拡開部11の拡開に伴って、下部本体14も拡開することになる。なお、スリット16の数は2つに限定されるものではなく、例えば互いに角度120°ずつまたは90°ずつ離れた3つまたは4つのスリットとしてもよい。
延設部31は、アンカー穴1との関係で、筒状本体8と同径に形成されている。詳細は後述するが、延設部31の先端は、コーン12を打ち込む際にアンカー穴1の穴底に突き当てられる。一方、アンカー穴1の拡径部4の穴底からの位置は、拡径装置との関係で規定される(図2(b)参照)。このため、延設部31の軸方向の長さは、拡径装置との関係で設計されている。
コーン12は、基端側から先端側にかけて先細りのテーパー形状(円錐台形状)に形成され、その外周面19は、軸方向において断面直線状ではなく断面鋸歯状に形成されている。上述のように、拡開部11の内周面18は、コーン12の形状と対応するようにテーパー形状に形成されているため、コーン12を打ち込むと、鋸歯同士が噛み合って、コーン12の抜けが防止される。なお、コーン12は、拡開部11に軽く打ち込まれて固定されているか、または接着剤により、その先端側が拡開部11に弱く接着されていることが好ましい。
また、コーン12は、軸方向において断面直線状の単純なテーパー形状としてもよい。さらに、拡開部11の内周面18がテーパー形状の場合には、コーン12は、先端を面取りしたストレート(円柱状)形状であってもよい。特に、本実施形態(本発明)では、構造上、拡開部11を拡径部4に係止して引抜き強度を高め得るため、コーン12の機能は、拡開部11を拡径部4の内周面に強く圧接することよりも、拡開部11の内面全域に接触して拡開部の拡開形状を維持することが優先される。したがって、コーン12は、常に拡開部11の全域に添う位置まで打ち込まれるように設計されている(従来のものより細い)ことが好ましい。
次に、図2および図3を参照して、後施工アンカー6の施工方法(施工手順)について説明する。この施工方法は、穿孔装置33を用いてアンカー穴1を穿孔する穿孔工程と、拡径装置34を用いてアンカー穴1に拡径部4を形成する拡径工程と、注入装置35を用いてアンカー穴1に接着剤Aを注入する注入工程と、アンカー穴1に後施工アンカー6を挿入する挿入工程、挿入した後施工アンカー6の拡開部11を拡開させるアンカリング工程と、を備えている。なお、請求項に言う「アンカリング工程」は、挿入工程をも含むものである。
穿孔装置33は、電動ドリル(図示省略)にダイヤモンドコアビット36を装着して構成されている。ダイヤモンドコアビット36は、例えば円筒状の切刃部37と、切刃部37を支持するシャンク部38とから成り、切刃部37によりコンクリートのコアを抜くようにして、アンカー穴1(ストレート部3)を穿孔する(図2(a)参照)。
拡径装置34は、電動ドリル(図示省略)に拡径用ドリルビット39を装着して構成されている。拡径用ドリルビット39は、例えば一対の切刃部40と、一対の切刃部40を径方向に移動自在に保持する切刃保持部41と、切刃保持部41を支持するシャンク部42とから成り、遠心力により一対の切刃部40を径方向に拡開して、拡径部4を形成する(図2(b)参照)。なお、後施工アンカー6の先端(延設部31の先端)からの拡開部11の位置は、拡径用ドリルビット39の先端(切刃保持部41の先端)からの切刃部40の位置と同一になるように設計されている。より厳密には、後施工アンカー6の先端から拡開部11の基端までの距離と、拡径用ドリルビット39の先端から切刃部40の基端までの距離と、が同一なるようにしている。
注入装置35は、ポンプ部(図示省略)とノズル部43とから成り、ポンプ部のポンピングにより、ポンプ部に貯留されている接着剤Aが、ノズル部43の先端から吐出しアンカー穴1に注入される(図2(c)参照)。
図2(a)の穿孔工程では、電動ドリルによりダイヤモンドコアビット36を回転させ、後施工アンカー6の長さに対応する深さのアンカー穴1(ストレート部3)を穿孔する。この場合、アンカー穴1の径(直径)が、後施工アンカー6の径より0.5〜1.0mm太い径となるダイヤモンドコアビット36を用いるものとする。なお、このダイヤモンドコアビット36では、シャンク部38を介して切刃部37に冷却液を供給するようになっている。
図2(b)の拡径工程では、拡径用ドリルビット39を、穴底に突き当てるようにアンカー穴1に挿入し、電動ドリルにより拡径用ドリルビット39を回転させて、拡径部4を研削する。なお、この拡径用ドリルビット39でも、一対の切刃部40に冷却液を供給するようになっている。そして、拡径部4を形成した後にも、僅かな時間、冷却液の供給を続行し、アンカー穴1の洗浄を行うようにしている。これにより、注入工程に先立つアンカー穴1の清掃は不要となる。
図2(c)の注入工程では、ノズル部43を穴底に突き当てるようにアンカー穴1に挿入し、接着剤Aをアンカー穴1の最奥部から注入する。この場合、接着剤Aは、例えばエポキシ樹脂系の接着剤Aを用いる。また、接着剤Aの注入量は、アンカー穴1(拡径部4を含む)の体積から後施工アンカー6の体積を減算した量とする。これにより、アンカー穴1に後施工アンカー6を挿入したときに、接着剤Aがアンカー穴1からはみ出すのを防止することができる。
図3(d)の挿入工程では、フランジ部7がアンカー穴1の開口縁部に着座するように、後施工アンカー6を、アンカー穴1内に軽く叩くようにして挿入する。この挿入により、嵌合部10は、上記の環状間隙17を埋めるように、アンカー穴1の開口部9に嵌合する。また、拡開部11の位置と拡径部4の位置とが合致した状態となる。
図3(e)のアンカリング工程では、打込み棒を、コーン12に当接するように筒状本体8に挿入し、ハンマー等により、打込み棒を介してコーン12を打ち込む。これにより、コーン12が拡開部11に強く押し込まれ、拡開部11が径方向に拡開する。また、拡開部11の拡開に伴って、下部本体14も幾分拡開する。これにより、拡開部11が、拡径部4の周壁に圧接されると共に、下部本体14が拡径部4近傍のストレート部3の部位に圧接される。すなわち、後施工アンカー6は、拡径部4の環状段部5の前後においてもアンカリングされることとなる。
以上のように、第1実施形態によれば、後施工アンカー6が、拡径部4およびその近傍おいて強固にアンカリングされるため、後施工アンカー6をアンカー穴1に十分な引抜き強度をもって固定することができる。また、引抜き強度が経時的に低下するのを有効に防止することができる。
図4は、第1実施形態の変形例である後施工アンカー6を示している。図4では、テーパー形状の嵌合部10に代えて、ストレート形状のカラー20が筒状本体8の基端側の外周面に密接して設けられている(図4(a)参照)。このカラー20は、周方向の1箇所に割スリット21を有して円筒状に形成されている(図4(b)参照)。
このようなカラー20を用いると、第1実施形態におけるテーパー状の嵌合部10に比べ、アンカー穴1のストレート部3との接触面が大きくなるので、さらに後施工アンカー6のグラつきを防止することができる。なお、カラー20の下端部外周面を、面取り形状とすることが好ましい。また、割スリット21は、軸方向に対し平行に延在するもの、斜めに延在するもののいずれであってもよい。
次に、図5を参照して、第2実施形態に係る後施工アンカー6について説明する。図5は、第2実施形態に係る後施工アンカー6の構造図であり、図5(a)は正面図であり、図5(b)は断面図である。以下、第1実施形態と異なる部分のみを主に説明する。第2実施形態の後施工アンカー6は、いわゆる本体打込み式のアンカーである。この実施形態では、コーン12が逆向きの状態で、拡開部11の下端部に差し込むようにして取付けられている。また、拡開部11の内周面18は、ストレート形状に形成されている。さらに、フランジ部を有していない構造となっている。
この場合には、コーン12に対し筒状本体8を打ち込むことにより、拡開部11が拡開する。またこの場合も、拡開部11の内周面18は断面鋸歯状に形成される一方、コーン12の外周面19も、拡開部11の内周面18と対応するように断面鋸歯状に形成されている。
図6に示すように、第2実施形態の後施工アンカー6の施工では、先ずコーン12がアンカー穴1の孔底に当接するように、後施工アンカー6をアンカー穴1に挿入する(図6(a)参照)。次いで、打込み棒を後施工アンカー6の基端部に宛がって、打ち込みの手応えや音が変わるまで、打込み棒を介して筒状本体8を打ち込む。これにより、筒状本体8に対しコーン12が相対的に前進し、拡開部11が拡開する(図6(b)参照)。そして、筒状本体8の基端が、アンカー穴1の開口縁部と面一になったところで、打ち込みを終了する。この場合も、後施工アンカー6は、拡径部4およびその近傍において強固にアンカリングされる。
このように、第2実施形態の後施工アンカー6においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、第2実施形態では、拡開部11をストレート形状としたが、コーン12と対応するようなテーパー形状としてもよい。
次に、図7を参照して、第3実施形態に係る後施工アンカー6について説明する。図7は、第3実施形態に係る後施工アンカー6の構造図であり、図7(a)は正面図であり、図7(b)は断面図である。これらの図に示すように、第3実施形態の後施工アンカー6は、テーパーボルト式のアンカーであり、先端にコーンに相当するテーパー部22が形成されたテーパー部付きボルト23と、テーパー部付きボルト23の基端側にねじ込まれたナット24と、ナット24の緩みを防止するワッシャー25と、アンカー穴の開口縁部に着座するフランジ部7と、フランジ部7よりも小径であり、アンカー穴の開口部に嵌合する先細りのテーパー形状である嵌合部10と、ストレート形状の筒状本体8と、先端側に形成され、筒状本体8よりも太径の拡開部11と、を備えている。
特に図示しないが、第3実施形態の後施工アンカー6の施工では、先ず、フランジ部7がアンカー穴1の開口縁部に着座するように、後施工アンカー6を、アンカー穴1内に挿入する。次いで、ナット24を締め付け、テーパー部付きボルト23を引き付ける。テーパー部付きボルト23を引き付けると、そのテーパー部22が拡開部11に喰い込んでゆき、拡開部11を拡開する。そして、この場合も、後施工アンカー6は、拡径部4およびその近傍において強固にアンカリングされる。したがって、第3実施形態の後施工アンカー6においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
次に、図8を参照して、第4実施形態に係る後施工アンカー6について説明する。図8(a)は第4実施形態に係る後施工アンカー6の断面図、図8(b)は打込み前の状態を示す断面図、図8(c)は、打込み後の状態を示す断面図である。これらの図に示すように、第4実施形態の後施工アンカー6は、第1実施形態と類似の構造を有する内部コーン打込み式のアンカーであり、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。
この後施工アンカー6では、上記の拡開部11に代えて、一対の拡開片26が設けられている。筒状本体8と一対の拡開片26とは、別部材で構成されており、一対の拡開片26は、筒状本体8の先端部、すなわち下部本体14から延設した延設部本体27に取り付けられている。延設部本体27には、一対の拡開片26が径方向にスライド自在に支持された一対の拡開開口部28が設けられている。一対の拡開開口部28は、周方向において180°点対称位置に配設されており、一対の拡開片26は、この拡開開口部28から径方向外側に突出するようにして拡開する。
各拡開片26は、上面視略扇状に形成され、上記の拡開部11と同様に、外周面は断面波形状に、内周面は断面鋸歯状に形成されている。なお、各拡開片26は、初期状態において、筒状本体8の外周面から突出していてもよいし、面一であってもよい。また、拡開片26は、3つあるいは4つ設けられていてもよい。
後施工アンカー6をアンカー穴1に挿入した状態で、コーン12を打ち込むと、一対の拡開片26は、外方にスライドするように拡開する。これにより、一対の拡開片26は、それぞれ拡径部4の周壁に圧接される。この場合も、後施工アンカー6は、拡径部4に強固にアンカリングされる。したがって、第4実施形態の後施工アンカー6においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
次に、図9を参照して、第5実施形態に係る後施工アンカー6について説明する。この後施工アンカー6では、上記の延設部31が、筒状本体8に対し細径に形成されている。コーン12を用いるメカニカルな後施工アンカー6では、構造上、先端部が円錐状に拡開する。このため、延設部31の径が大きいと、拡開したときに、拡開部11に優先して延設部31がアンカー穴1に圧接され、拡開部11の圧接が甘くなるそれがある。
第5実施形態の後施工アンカー6では、延設部31が、筒状本体8に対し細径に形成されているため、拡開したときに、拡開部11が延設部31に優先してアンカー穴1に圧接される。したがって、拡開した拡開部11が拡径部4になじむように係止され、後施工アンカー6がアンカー穴1に強固にアンカリングされる。なお、この延設部31の構造は、第2実施形態および第3実施形態にも適用可能である。
次に、図10を参照して、第6実施形態に係る後施工アンカー6について説明する。この後施工アンカー6では、拡開部11は、拡開したアンカリング状態で拡径部4に合致するストレート形状となるように、先細りのテーパー形状に形成されている。すなわち、この後施工アンカー6では、コーン12を打ち込むと、テーパー形状の拡開部11が、ストレート形状(円筒状)に拡開し、その全体が拡径部4に喰い込むように圧接される。この場合、拡開部11の肉厚は均一に形成されるため、拡開部11の内周面は外周面に倣ってテーパー形状に形成されている。したがって、コーン12は、先端を面取りしたストレート形状であってもよい。
第6実施形態の後施工アンカー6では、コーン12を打ち込むと、拡開部11は拡径部4に倣う形状に拡開し、且つこの拡開状態を維持する。このため、拡開した拡開部11が拡径部4に全域で密接するように係止され、後施工アンカー6がアンカー穴1に強固に且つ安定にアンカリングされる。なお、この拡開部11の構造も、第2実施形態および第3実施形態にも適用可能である。
なお、内部コーン打ち込み式アンカー、本体打ち込み式アンカーおよびテーパーボルト式アンカーに本発明を適用して説明したが、本発明はこれらのアンカーに限定されるものではなく、心棒打ち込み式アンカーやスリーブ打ち込み式アンカーなど、他のアンカーにも適用可能である。
1…アンカー穴 4…拡径部 6…後施工アンカー 8…筒状本体 10…嵌合部 11…拡開部 12…コーン 17…環状間隙 20…カラー 21…割スリット 26…拡開片 31…延設部 39…拡径用ドリルビット 40…切刃部 A…接着剤
Claims (15)
- 所定の深さ位置に拡径部を有するアンカー穴にアンカリングされる後施工アンカーであって、
前記アンカー穴に挿入される円筒状の筒状本体と、
前記筒状本体の先端側に連なり、拡開したアンカリング状態で前記拡径部に係止される拡開部と、
前記拡開部を内側から拡開させるコーンと、を備え、
前記拡開部は、前記筒状本体に対し太径に形成されていることを特徴とする後施工アンカー。 - 前記拡開部の先端から延設された延設部を、更に備え、
前記延設部は、前記筒状本体に対し細径に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の後施工アンカー。 - 前記拡径部は、軸方向においてストレート形状に形成され、
前記拡開部は、拡開したアンカリング状態で前記拡径部に合致するストレート形状となるように、先細りのテーパー形状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の後施工アンカー。 - 前記コーンの外周面は、軸方向において断面鋸歯状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の後施工アンカー。
- 前記拡開部の内周面は、軸方向において断面鋸歯状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の後施工アンカー。
- 前記筒状本体の基端側に設けられ、前記アンカー穴の開口部に嵌合する嵌合部を、更に備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の後施工アンカー。
- 前記嵌合部の外周面は、先細りのテーパー形状に形成されていることを特徴とする請求項6に記載の後施工アンカー。
- 前記筒状本体の基端部と前記アンカー穴の開口部との間の環状間隙に嵌合装着されるカラーを、更に備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の後施工アンカー。
- 前記カラーには、周方向の1箇所に割スリットが形成されていることを特徴とする請求項8に記載の後施工アンカー。
- 前記コーンは、前記筒状本体に対し相対的に押し込まれることにより、前記拡開部を拡開させることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の後施工アンカー。
- 前記コーンは、前記筒状本体に対し相対的に引き込まれることにより、前記拡開部を拡開させることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の後施工アンカー。
- 所定の深さ位置に拡径部を有するアンカー穴にアンカリングされる後施工アンカーであって、
前記アンカー穴に挿入される円筒状の筒状本体と、
前記筒状本体の先端側において径方向にスライド可能に構成され、拡開したアンカリング状態で前記拡径部に係止される複数の拡開片と、
前記複数の拡開片が拡開するように、各拡開片を径方向の外方にスライドさせるコーンと、を備えたことを特徴とする後施工アンカー。 - 請求項1に記載の後施工アンカーの施工方法であって、
前記アンカー穴を穿孔する穿孔工程と、
前記アンカー穴に拡径部を形成する拡径工程と、
前記アンカー穴に、前記後施工アンカーを挿入すると共に前記拡開部を拡開させるアンカリング工程と、を備えたことを特徴とする後施工アンカーの施工方法。 - 前記拡径工程と前記アンカリング工程との間に、前記アンカー穴に接着剤を注入する注入工程を、更に備えたことを特徴とする請求項13に記載の後施工アンカーの施工方法。
- 請求項1に記載の後施工アンカーと、
先端部において、前記アンカー穴に拡径部を研削する切刃部を有する拡径用ドリルビットと、を備え、
前記後施工アンカーの先端から前記拡開部の基端までの距離と、前記拡径用ドリルビットの先端から前記切刃部の基端までの距離と、が同一であることを特徴とする後施工アンカーシステム。
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- 2013-05-16 JP JP2013103993A patent/JP2014218876A/ja active Pending
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